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【場】『ネオンストリート』 その2

1ようこそ、『黄金町』へ:2014/02/24(月) 00:57:41
歓楽街を南北へ抜ける、『黄金町』の裏舞台。
途中の『弁天橋』はナンパのメッカ。
露天や、怪しい売人もよく見かける。
橋を越えれば、網目のような路地が広がり、
さらに怪しい店の看板が、すし詰めに並ぶ。
海岸付近は無法の『倉庫街』。一般人は『立ち入り禁止』。


―┘          ┌┘   ◎
―┐ H湖     ┌┘   ┌┐   住  宅  街   
  │      ┌┘   .┌ ..│...      ‖
   ┐     │    ┌ ┌┘       ‖←メインストリート
   │    │   ┌  │         ‖
    ┐   │  ┌  ┌..       黄金原駅
     │  └─┘┌―      ┏ ━■■━ ━ ━
  ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛    ‖←ネオンストリート
       │      └―┐黄金港.. 繁 華 街  
       └┐   ┌――┘       倉庫街
 ─────┘   └――――――――――――

     太 平 洋

前スレはこちら

【場】『ネオンストリート』
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/netgame/9003/1324473143/

951朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2015/06/25(木) 19:03:21
>>950
「う、え!?」
いいな〜と思った、と、その言葉を聞いて眼の色が変わる。

「ま、まじですか!?
 そ、その言葉、めっちゃ嬉しいんですが!」
かなり上機嫌になりながら久染の言葉を聞いた。

「んふふー、まぁそうですね〜。
 シューティングも格ゲーも基本は一緒ですからねー。
 慣れれば大体のゲームをできるようになるんですよー。」
いい笑い方、みたいなことを言われてすっかり上機嫌だ。

「えー、あ、そうですね…
 ガチな人って言うと…確かウチの学校の先生の…烙先生…でしたっけ?
 あの人はなかなか強い人でしたね…それともう一人…」
そう言ってどこか嬉しそうな顔になる。

「恋姫さんもなかなかの腕のゲーマーさんですよ。
 あと一歩の所で…私はなかなか勝てないんですよねー…」
と、言いつつも其の表情はどこか楽しげなものであった。

952久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/06/25(木) 19:39:45
>>951

「う、うん?」 ササッ

明らかに眼の色が変わった朱鷺宮を見て一瞬身構えるものの。

「あッ、そ、そうなの?
 え、えーっと、ほんとにすごく素敵だと思うよ……(ギャップ萌えってヤツ?)
 僕のマンガでいつか使いたいくらい」


や、やった――――ッ。よかった。
一瞬ヒヤッとしたが正直言って正解だった。
上機嫌顔をつくる朱鷺宮を見て、心の中でニコニコガッツポーズ。
帰るまでにもう一回あの笑い声を聴くことはできるだろうか。


     テクテク    テクテク…


「えーっと、洛先生……? って、もしかしてあの『不思議先生』?」

『事故って眼帯&屋上ズタボロ』の話、僕もウワサぐらいは聞いたことがある。
個人的にはちょっとニガテな雰囲気の先生で、あまり詳しいことは知らない。
あの人もアケゲーマーだったのか。意外なような、少し納得感あるような……


「って涙音ちゃん、ゲーセンで恋姫ちゃんと対戦したことあるのォ!?
 マッママママママジでか!? どどどどこで?」

思わず目玉がビョーンと飛び出す戯画的リアクションだ!

953朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2015/06/25(木) 20:00:33
>>952
「いやー、嬉しいですよ本当に!
 他の人はだいたい私が笑った辺りで
 だいたい場が凍りついたり、友達止まりになったりばっかりで…
 初めてですよそんなこと言われたの!マジで!」
そのまま一気に近寄りそうな勢いだ。

「えーっと…はい、あの先生です…
 私も話でしか聞いたことなかったんですが…
 見た感じ少し怖い先生でしたね…」
あの時のことを思い返して答える。
「私が見た時には、態度の悪いゲーマーの人に
 首絞めそうな勢いで掴みかかってましたから…」
『スタンドで』というのは抜かして答える。
言ってもわからない、と考えてのことだ。

「え、あ…っはいその…」
今度は久染くんのリアクションに一気に押され始める。
「以前あった時には駅前のゲーセンで出会いましたね…
 多分いろんなゲーセンに現れると思いますよ?」
そう言って軽く笑ってみせる。

「まぁ、どこに居るかまではわかりませんけどね。」
そう言ってまた、待望のフヒヒ笑いをしてみせた。

954久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/06/25(木) 21:02:06
>>953

「えッ、あの笑い声ひとつでそんな扱いをォ?
 なんつーヒドイ話……って」

ち、近い! 近いよ涙音ちゃん!
うおォォォ、桃のフワァーっとした香りが! 香りが!

…………
あ、先生の話になって遠ざかっていった。 (クソォ)



「えええ? 『首絞め?』 『掴みかかった?』
 ちょ……それかなりヤバくない?
 オフではそんなノリなんだ、あの先生……。
 うえー、あんまり学校でも近づかないようにしよ」

朱鷺宮の配慮など知るよしもなく、
のんきに両手で二の腕をさするジェスチャーをする墨彦。


  テクテク  テクテク


「そしてよし。駅前ね……駅前、よし、墨彦おぼえた(キモい)。

 いやー、これでますますゲーセンめぐりする理由ができたよ。
 ありがとう涙音ちゃ、…………ッ!!」


ああ、やったッ! 本日二度目のフヒヒ笑いだァ――――ッ!
ありがとうございます! ありがとーございまーす!


「…………ッ、ハァ、ハァ……。あっ。
 ここたぶん地図にあった分かれ道だね」

どうやら二人の冒険はここでひとまず終了のようだ。

955朱鷺宮 涙音『フォートレス・アンダー・シージ』:2015/06/25(木) 21:12:55
>>954
「まぁその…普通の人から見たらやっぱり変っぽいですし…」
ちょっと落ち込み気味の顔である。

「うむ…あんまり学校の外では関わらないほうが…
 いえ、まぁ親切なときもあるんですがね」
あの時ゲーセンに居た先生のことを思い返す。
いい話をしていたとも感じられる。先生のことはまだよくわからない。

てくてくてく

「はい、…出会えたら恐らく幸運です。」
軽く頷いて…

「う?うん?あ、はい…
 なんか、このまま行かせてだいじょうぶか…
 心配になってきましたが…」
自分の笑い声に何らかの反応を示す彼に対し、
若干心配そうな視線を向けるが…

「…とりあえず、今日はゆっくり休んだほうがいいと思います…よ?
 そ、それじゃあ…」
とりあえず白亜荘へ続く道の方に向けて歩き出し、
「求○を飲んでおいたほうが良さそう…かも…
 あ、いえ。さようならー!」
少し不安げに思いながらも手を振りながら別れていった。

956久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/06/25(木) 23:27:20
>>955
「し、心配してくれてありがとう………
 だけど大丈夫……大丈夫だよ……」

不安そうな朱鷺宮を手で制す墨彦。

さっきから謎の昂ぶりを見せている墨彦だが、
まあマンガ家志望にはよくある創作欲の発作的なヤツだろう。
大丈夫大丈夫。


「あ。うん……それじゃあ。今日は色々聞けて楽しかった。
 今度は学校か、ひょっとしたらどこかのゲーセンで会うかも?」

と笑顔を見せつつ。

「じゃあ、バイバイ。帰り道気をつけてねー!」

最後まで朱鷺宮の背中に手を振り返し、
やがて夜灯ともる通りをひとり帰路につくのだった。

957坂下 佳侑希『レイルウェイ・チルドレン』:2015/07/05(日) 22:13:04

「〜〜♪」

私は鼻歌混じりにネオンストリートを闊歩する。
メロディも歌詞も曖昧な、昔一度聴いたっきりの曲。
居場所の要らない女の子が、人の間を渡って行くような歌だったと思う。

今の私には、やりたいことがあったり会いたい人が居たりして、
まあそんなこととは特に関係なく、今日は家に帰る途中ってわけなんだ。

私の借りてるマンションはネオンストリートにあって、
決して治安の良い方じゃあ無いから、私は私の『時刻表』、
『レイルウェイ・チルドレン』を、常に右手で開いているんだけど。

958新『バーデン・バーデン』:2015/07/05(日) 22:23:07
>>957
「ふぅ……」

長い黒髪の女性が下を向いて歩いている。
大きなため息をつき、陰鬱そうな雰囲気を醸し出していて、
まるでホラー映画のテレビから出てくる女幽霊みたいに陰気だ。

「もう嫌になる……行きたくな……キャッ!」

ため息をつき、ぶつぶつと呟きながら下を向いていたせいで前が見えなかったのか、
坂下とぶつかりそうになり、陰気な彼女は悲鳴を上げてぐるりと回転し、
その場に派手に尻餅をついた。

959坂下 佳侑希『レイルウェイ・チルドレン』:2015/07/05(日) 22:33:24
>>958
「えっ」

   「あ、ちょっ」

やってしまった!
歩きスマホならぬ歩きスタンドに気を取られていた私の落ち度だ!
転ぶにしたってこんな派手にぐるっと転んじゃうなんてよっぽどだし、
私の方がもうちょい早く気付けてれば少しはマシだったんじゃないかって思う。

「ごめんなさい!」

考えるより先に咄嗟に謝罪が口に出るのは、なんというか癖みたいなもんで、
謝ってからようやく、目の前の人――髪の長いお姉さん(?)を、マトモに見れたんだ。

「え、えっと、大丈夫……ですか?」

知らない人と口きいちゃいけないって思いと、
このまま知らんぷりして心が傷まないのかってのを秤に掛けて、
重たい方に従ってみた。決めた。

私にはこの人を転ばせちゃった責任があって、声を掛ける義務があるんだ。

960新『バーデン・バーデン』:2015/07/05(日) 22:49:01
>>959
「ご、ごめ、ごめんなさい……わ、私が下を向いてたから……」

慌てて起き上がり、坂下にぶつかりそうになって、身体をすくめながら
何度も頭を下げる。まるでコメツキバッタみたいだった。

「う、うう……何やってんだろう……ごめんなさい、ごめんなさい……
私が悪いから、その、本当、気にしないで……」

乱れた髪をかきあげ、頭を下げたまま目を伏せた。

「その、人と、約束があるんだけど、行きたくないなあ……って思ってたから……。
それで、だらだら歩いてたから……本当にごめんなさい……」

961坂下 佳侑希『レイルウェイ・チルドレン』:2015/07/05(日) 23:05:26
>>960

「いや、私も余所見してたから、その、こっちこそごめんなさい!」

思わずまた謝ってしまったけど、ちょっとこれはキリがないかも知れない。
ええと、ごめんなさいじゃなくて、何か別のお話を振らないと。
でないとずっとごめんなさいのキャッチボールになってしまう。

私は左右で二つに括った髪を揺らして、思い切って口を開いてみる。

「ええっと、ほんと気にしないで!事情があったんなら仕方ないって思うし。
 私ってばもー約束なんて破ってばっかしだし。
 や、どんな約束だか分かんないから、破っちゃえとは言えないけどさ」

行かなきゃ行けないけど、行きたくないっていう、そういうのに、
どうやら私は弱いみたいなんだよねえ。


髪に隠れてよく見えなかったけど、
このお姉さん(?)幾つっくらいのひとなんだろう。
私は見た目で人の年齢を判別するのが苦手だから、よく分からないかも知れないけれど。

962新『バーデン・バーデン』:2015/07/05(日) 23:31:44
>>961
「約束を破る……そんなこと、考えたことなかったな……」

黒髪の女は20代前半から真ん中位に見える。
長い黒髪がホラー映画の女幽霊のような陰気な女だ。
軽快な目の前の少女と比べて自分に嫌悪感を覚えてまた下を向いたが、
それでも新はとぎれとぎれに言葉を捜した。

「えっと……友達と会うだけなの……でも、その子はいつも同じ話して……
彼女、『不毛な恋愛』、してるんだよね……。
相談してる風を装って、『不毛』な自分の不幸に酔ってて……、
……そんな『非生産的』で『後ろ向き』な話ばっかりしてて、
馬鹿みたいって思ってて……。友達なのに……。
だって、『女』って『生産的』な生き物のはずなのに……。すっごく無駄で無駄で……。
そんな彼女も自分も嫌で、これ以上話も聞きたくないのに、でも約束しちゃって……」

人に聞かせる気がないような小さな声でくどくどと説明していたが、
急に顔を上げた。

「そう、約束とか破っちゃってもいいんですよね」

ぎこちなく笑って繰り返す。何か、すごく素敵な事を言われた気がした。
この女の子に。

「すごく行きたくなくて、すごく『非生産的』で、すごく嫌な事だったら……
いやだ、って言っても……いいんですね」

963坂下 佳侑希『レイルウェイ・チルドレン』:2015/07/05(日) 23:53:23
>>962

このお姉さんは、多分、私よりずっとずっと真面目なひとなんだろうな。
私みたいなちゃらんぽらんでも色々嫌なことあるんだから、
こんなに真面目だと、きっともっと大変だなって思う。

「『恋愛相談』は、うん、面倒だよねえ。
 その『不毛な』ってのは、向こうにはもう相手の人がいる、とか?」

悩み事って、言葉に乗せて口から出しちゃった時点で、半分くらい片付いちゃうんじゃないのかな。
多分その友達ってひともそうなんだと思う。

だから、私はこの『お姉さん』のお話も、聞いてみようって思うんだ。
それがたとえ私に向けられていなかったとしても、
独り言でも、話すだけでマシになることってあると思わない?

「気が乗らない時に学校サボったりとかさ、そういうの、私はいいと思うんだよね。
 ただ、ま、『生産的』とかってお話になると、私はちょっと自信ないんだけど……」

学校行ってるわけでもないし、会社に行ってるわけでもないし、
私みたいな半端者には、なんとも耳の痛い感じなんだよね。
生産性。生産的。
『私になにができるのか』ってのは、確かに私の課題かなと、ちょうど最近思っていたところだけに。

「それにほんとに友達だったらさ、やだって言っても、全然大丈夫だと思うんだよね」

無責任かなって思うけど、何かの気休め程度に、私はそんなことを言ってみるわけだ。

964新『バーデン・バーデン』:2015/07/06(月) 00:13:39
>>963
「その子の彼氏は……」

ちょっと息を吸って、吐いて、一気に喋り出した。
胸に溜まってた黒いものを全部ぶちまけるみたいに。

「鬱病で働けなくなって彼女に金銭面かなり頼ってるくせに
自分の好きなことだけはしたいってオフ会とかイベントとかは遊びに行ってて
小説家になりたいって小説書いて落ちて落ち込んでを繰り返してて
ずっと面倒見ている彼女はそれでも欝になる前から付き合ってたし
元の彼は面白くてやさしくて素敵な人で、まだ彼の事が大好きだからって尽くしてて
でも尽くすのに疲れて私に愚痴をぶちまけてでも解決は望んでなくて
健気にがんばってる自分がかわいそうでその状況に酔ってるだけで
もう話を聞くのはッ!友達でもいい加減うんざりしていてッ!!
彼氏をまず病院に連れて行ったらと言うと彼にお金がないからって言うし
絶対別れたほうがいいんじゃとかせめて距離置けばっていうとでもでもだってで
最初から返事を求めてなくて話を聞いてもらって自分への共感しか求めてなくて
こんな『不毛』で『非生産』な話を繰り返されるうちにもう話聞くのも何か言うのも嫌で
彼女の事本当に友達なのかなって思ってッ!!!!」

だんだん声が大きくなって、厚い前髪の向こうの眼がぐるぐると回り出し

「もうあの子と顔を合わせたら私はいつかあの子をあの女をいつかしてしまうんじゃないかって
あんな『不毛』な『非生産』な事を続けられるぐらいならいっそ私が『非生産』になっても
世界的にはプラスマイナスで+なんじゃないかってッ!!!」

すっと、眼が落ち着き、ぶるぶると震えてた身体からふっと力が抜けた。

「そう、思ってたんです。私視野狭窄で。なんか思いつめちゃって。
でもやだって、話聞いてあげない、って言っちゃいますね。
フフ、学校サボっちゃうとか、全然思いつかなかったつまんない学生だったです」

にこりと坂下に笑いかけ、ふかぶかとおじきをした。

「ありがとう、なんだか力が抜けました……とっても楽になった気分。
女の子って、本当は貴方みたいに『生産的』で『前向き』で素敵な生き物ですものね」

965坂下 佳侑希『レイルウェイ・チルドレン』:2015/07/06(月) 00:54:24
>>964

「そ、それは……」

なんというか、自分の考えの浅さというか、不用意さというか、
いろんな事を一瞬で考えさせられるような、そういう圧力を感じたんだ。
言葉に圧力があるって実感したのは、多分初めてのことだったと思う。

油断、してたんだと思う。
妙な慣れがあったっていうか、初対面の人とおはなしする機会が最近多かっただけに、
ちょっと距離感を見誤っていたというか。でも。

「本当の友達だったら『嫌だ』って言っちゃっても関係が傷付くことはないし、
 もしそれで気まずくなっちゃうようならそれは本当の友達じゃないって思えばどっちに転んでもだいじょぶだし」

「その彼女さんはかわいそうな自分大好きって部分と、それをお姉さんに話して共感してもらえるってとこ、
 セットでようやく楽しいってことだと思うから、共感切れると自分かわいそうも続かなくなるかもって思うし」

「彼女さんの対応が変わってくると彼氏さんはそもそも生活が立ち行かなくなるから、
 良い方にでも悪い方にでも、現状を変えなきゃいけなくなるんだろうし」

「ひょっとすると彼氏さんは夢見るのもいい加減にやめてバイトなり始めるのかもしれないし、
 働いてる内に生活リズムなんかが改善して病気もどっか行っちゃうかもしれないし」

見誤りついでにこっちも一歩踏み込んで、
息継ぎしながらなるべく平静に冷静に淡々と話すように気をつけて、私は言葉を返してみる。

「なあんて。全部『かもしれない』って、もしももしものお伽話なんだけど、
 投げたコインが全部表向いたら、こんな感じにトントン拍子、ないとも限らないじゃない?」

退くのは簡単だ。変な人と関わっちゃったって割りきって、
曖昧に笑って手をふって2回くらい後ろ振り返りながら家に帰るのは簡単だ。

でもやっぱりそれは、なんだか違うと思う。不実って感じがする。

「この内半分くらいが『表』でも、なんだか勝ち越しって感じしない?
 しないかな、私だけ?
 私のこういうとこ、『前向き』っていうんなら、そうだね、そうかも知れない」

そこまで言って、おじぎをするお姉さんへ、にいっと笑って見せるんだ。
素敵で前向きな女の子って言われてしまったから、なるべくそれに似合うようなスマイルで。

966新『バーデン・バーデン』:2015/07/06(月) 01:23:27
>>965
初対面の年下の女の子をドン引きさせ、気を使わせてしまい、
あまつさえ悲痛な義務感すら抱かせてしまったのも気がつかずに、
新(あらた)という女は、まるで抱えている暗闇が貼れた様ににこやかに微笑む。

「なんて素敵な考え方。なんて『前向き』で『生産的』。
もしかしたら……『表』がたとえ半分以下でも、いいえ、100のうちの1だけでも、
マイナスの中で一つプラスがあれば、それって『勝ち越し』ですよね……。
ふふ、それって本当に素敵。『勝ち越し』。なんて『生産的』……」

会話が成り立っているかといえば、疑問だ。
もはや坂下の言葉の本当の意味など咀嚼もせずに、ただ拾いたい単語を拾い、
自分勝手に組み立てて、お気に入りの言葉だけを抽出して、
そうやって自分では会話している気になっている。
そんな、『どうにもかみ合わない』気持ち悪さを残したまま、
女は少女に自分の名を名乗る。

「素敵なお話を、考え方を、ありがとう……。私の名前は新槙(あらた まき)。
今日聞かせてもらった言葉で、私はなんだか軽くなった気がします。
きっと、これからは、素敵な事が起こるって、そう思ったの……。
どうか、貴方にこの先、良いことが、素晴らしい『生産的』な『前向き』な未来が、
起こりますように。
私はもうきっと、『非生産的』で『くだらない』『不毛な』事を思い煩う事はないわ。
貴方が羽根をくれたの」

一方的にまくしたて、彼女の手を握り、深々と礼をする。
そして、まるで口付けでもするかのように顔を近づけ、そっと囁いた。

「いつか、貴方にきっと、この『羽根』を返せますように」

手を離すと、そのまま顔を上げ、踊るような足取りで去っていく。

967坂下 佳侑希『レイルウェイ・チルドレン』:2015/07/06(月) 03:33:34
>>966

「へへへ、『ありがとう』って言われるのは、そうだね、嬉しいねえ」

私はなにもお節介を積み上げてみんなにお礼を言ってもらいたいってわけではないんだけど、
それでも、『これが私だ』って胸を張って言えるような、
そんな生き方――っていうと大げさだけど、そういうことがしたいんだ。
だから、お礼を言ってもらえるのは素直に嬉しいって思う。

独り言でもいいんだって、最初から決めていたから、会話が噛み合わなくって構わないんだよね。
ただ、言葉にするだけで楽になることってあると思うって、私は信じていたわけだから。

「どういたしまして。私は坂下というんだよ。坂下、佳侑希(かゆき)。
 うんうん。よろしくねえ」

笑顔のまま、握手を交わし、自己紹介もばっちり終える。
変わった人だけど、『変な人』じゃあない、と、思う。
そこには、私にしかわからない線引きがあるんだ。

ただ、急に顔を近付けられると、びっくりするしどっきりするよ。
咄嗟に反応できず、あっと思った時には既に、
『新さん』は背中を向けて視界の向こうへと去っていく所だったんだ。

だから私もくるりと踵を返して、改めて帰路につくんだよ。
帰り道、ふと思うのは私の名前のことで。
『佳き希みを侑ける(よきのぞみをたすける)』。なあんて父さんがくれた名前の事で、
まあ、きっと私は人助けとか悩み相談とか、そんな感じがお似合いなのかなって思う。


ただ、私は私ののぞみにも叶って欲しいんだよ。恨むぜ父さん。



そんな感じで夜道に消えていく私なんだよね。ぐんない。

968ジェイク『一般人』:2015/07/19(日) 00:59:19
夜の街。
子供は寝る時間だが、大人たちは活性化しはじめる。
しょぼくれた顔してデスクワークに励む人間の顔も酒が入れば晴れやかだ。

そんな街の片隅に、一人の男が座っていた。

地面に何も敷かずに胡坐をかいている。
白いズボン、黒い靴。袖のない黒いシャツ。そして長く伸びたヒゲと髪。
右腕には刺青が入っている。
そして座る彼の前には火のついたランタンと『スタンド』と書かれた紙が置いてあった。

「……う、ら、な、い。」

手に持った紙に何かを書きながら、ぶつぶつ呟いている。

969鶫『ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト』:2015/07/19(日) 23:47:09
>>968
「…スタンドォ?」
と、そこにたまたま通りかかった女性が近寄ってくる。
髪の色は若草色で、蛇のような鋭い目つきが目立つ。
片手にはワンカップを持っており、若干顔が赤い。

「…なぁ、そこのニイちゃん。
 そこに有るランタンを…売りますってことか?」
そう言って火のついたランタンを指さしてみる。

970ジェイク『一般人』:2015/07/20(月) 00:02:06
>>969

どうやら紙に『うらない』と書いていたらしい。
占いのことだろうか。

「酔っ払いか。」

「ははっ、警察よりマシだ。」

鶫の持ち物や表情を男はそう捉えた。
不気味な笑みを顔に貼り付けていたが、鶫の言葉を聞くと男からすっと笑いが消えた。
一瞬で、何事も無かったかのように無表情へと変わる。

「このランタンは妹の形見で、俺にとっての聖遺物だ。」

「うらない。なにもな。」

『うらない』と書かれた紙を見せ付ける。
売らないということだろう。

「ところで、お前。スタンドを知っているか?」

唐突な問いであった。

971鶫『ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト』:2015/07/20(月) 00:05:34
>>970
「…っとと、すまねぇ。
 『うらない』んだから、そりゃあ売りもんじゃねぇかぁ。」
少しケラケラと笑ってから、少し真剣な顔になる。

「や、すまねぇ。
 大事なものならそんな笑いもんにするのはワリィよなぁ。」
そう言って改めて頭を下げた。

「…スタンド?」
唐突に問いかけられた言葉。
少し表情も酔いが冷めたふうなものになる。

「…ウチにゃぁ二つほど、
 覚えがあるぜ。…ただあんたが知りたいのがどっちかはわかんねぇな。
 …『どっち』のスタンドのことを聞きてぇんだ?」
そう言って軽く視線を合わせてみる。
結構眼力が有る視線だ。

972ジェイク『一般人』:2015/07/20(月) 01:09:05
>>971

「そうだ。売らない、なにもな。」

「そして、別に構わん。俺にとってそれは『羊が草を食べるぐらいにどうでもいい』。」

意味不明な言葉を吐き、立ち上がる。
と、同時にどこから取り出したのか黒いハットを頭の上に乗せる。
ランタンも、右手に持っている。

「『スタンド』は『スタンド』だ。」

はっきりと言い切った。
青い瞳が鶫の顔を見据える。
鶫の眼力に怯える様子も無い。むしろ、面白がっているようにも見える。

「『どっち』とかそういうのは知らん。俺は『超能力じみた力』の『スタンド』について聞いている。
 もちろん、『どっちとも』語ってもらって構わないが。」

「自己紹介しておこう。俺はジェイコブ・ケイディ・ワイアット。人はジェイクと呼ぶ。」

鰐か大蛇が微笑めばこんな笑顔なのだろうか。
そう思わせる笑みを浮かべ男は鶫と見詰め合う。
顔の横に持ち上げたランタンの火で、不気味な顔がいっそう不気味に感じられる。

973鶫『ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト』:2015/07/20(月) 01:16:59
>>972
「そうかぁ、以外に無愛想だなぁあんた。」
不思議そうな顔で答える。
そういう鶫はちょっとヅケヅケ言い過ぎである。

「へぇ、目つきいいなぁ。」
と、冗談を飛ばしつつも返答に答える。

「あぁ、なるほどぉ。超能力のほうねぇ。
 それだったらウチ自身が持ってるなぁ。
 …あんたも『そう』なのか?」
どうやら彼女はどこか興味をもったらしい。
スタンド使いは思ったよりもいっぱいいるかもしれない。などとも考える。

「あぁ、よろしくなぁ。ジェイク。ウチの名前は代々薙 鶫っていうんだ。
 まぁフレンドリィに鶫で構わねぇぜ。」
軽く顔を上げて自分を指さして自己紹介した。
ランタンの火に照らされて、鶫の顔も若干怖く見える。

974ジェイク『一般人』:2015/07/20(月) 01:34:37
>>973

「ブアイソウ?まぁ、なんでもいい。」

どうでもいいらしい。
きっと鶫の物言いもどうでもいいのだろう。

「お前はいい面構えをしている。
 ただの羊じゃあなさそうだ。」

不気味な笑みを貼り付けてそういう。
言っていることは少し意味が分からないところもある。

「俺は『スタンド』を持っていない。」

「しかし、得方を探している。」

それは男が鶫にスタンドについてきいた理由であった。
目を見れば本気であることが分かる。
顔を見ればふけていることが分かる。

「まぁ、これから会うことがあればよろしく、といったところだ。」

「さて、お前は得方を知っているか?」

975鶫『ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト』:2015/07/20(月) 01:39:48
>>974
「ふぅん、うちの場合は、羊にしちゃぁちょいと危険な力を持ってるけどなぁ。」
軽く微笑みながら答える。

「…持ってねぇのかぁ。
 得方…得方なぁ?そいつはウチにはちょいと難しぃなぁ。」
ちょっと複雑そうな表情を浮かべている。

「ウチは、気がついてたら持ってたって感じさ。
 そのせいでガキの頃からよくねぇことばっかりだった。
 …自覚したのはつい最近のことなんだがよぉ。」
そう言って軽く自分のスタンドを出現させる。
当然ジェイクには見えない。

「得方…まぁウチは引き篭もり歴がなげぇからなぁ。
 妙な噂っていうくらいなら知ってる。」
そう言って軽く顔を上げる。
そして、彼の腕に掘られた刺青をじっと見てから、口を開いた

「…そうだなァ。
 刺青を彫ってるやつぁ、たいていその『スタンド』ってのを持ってた気がするぜ。」

976ジェイク『一般人』:2015/07/20(月) 01:58:11
>>975

「そうか。だが、1つ知れた。『生まれつきスタンドを持つものもいる』ということだ。」

にやりと笑う。
スタンドを知れたことが嬉しいというかのように。

「しかし、よくないことか。興味は無いが……
 自分に害をなすことも、あるのか?」

スタンドを得る工程で死ぬこともある的な事を聞いたことがある気がする男だ。
多少の害は目をつぶるつもりではある。

「引き篭もりか、日本文化……でもないか。」

はは、と乾いた笑いを発する。
別に愉快でもなんでもないのに笑っているようだ。

「『刺青』?こういうのか?」

そう言って、右腕を鶫に見せる。
その腕には文字が書かれていた。

Ginger is danger
 赤毛は危険

「体にも彫っているが、これではないのか。」

977鶫『ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト』:2015/07/20(月) 02:06:51
>>976
「あぁ、そうだな。
 多分ウチはその『生まれつき』の人間だぜ。」
軽く頭を掻いて答える。
ちょっと照れくさそうだ。

「ん?そうだなァ…
 ウチの場合はガキの頃自覚してなかったから色々と…
 災難な目にあってきたが。
 自覚してからはそういうことはなくなったぜ。」
そう言って改めて視線を彼に集中させ
「だからまぁ…知ってたら害をなすなんてこたぁ無いんじゃねえか?
 他のやつの能力はよく知らねぇがよ。」
軽く笑ってみせた。

「わかんねぇ。神様も引きこもる国だからもしかしたら文化かもしれねぇな。」
そんな軽口で、彼の乾いた笑いに返事を返す。

「たしかにそれは刺青だがなぁ…
 この町で彫ってもらったもんじゃねぇんじゃねえか?」
ジーっと、その腕に刻まれた文字を確認する。

「この街のどこかに居るってぇ噂なんだよ。
 その妙な力を得られる『刺青』ってのを彫ってくれる奴が。
 …まぁネットの噂だがな。普通の人ニャァ眉唾だろうぜ。」

978ジェイク:2015/07/20(月) 02:27:55
>>977

「なかなかに奥の深い話だ。」

スタンドは人類にとって未知の領域なのだろう。

「災難は俺にとって問題ではない。
 が、お前はどんな災難を受けてきたんだ?」

少し興味があるらしい。
鶫の災難に。
だから、男は特に溜める様子も視線を集中させることもせず聞いた。

「いつ彫ったかもわからん。
 興味も無い。ただ昔の俺が戒めかなにかに彫ったのだろう。」
 
刺青にはそこそこの思い入れがありそうではあるが、真実は分からない。
男の表情からは何も読み取れそうも無い。

             チアーズ
「この街の刺青師か。Cheers」

「知ってる人間を探すとしよう。眉唾など問題ではない。」

にやりと笑った。
少年ならいいが、ふけ顔の男の顔である。
人によっては気持ちが悪いと感じるだろう。
ランタンの火がすこし揺らめいた気がした。

979鶫『ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト』:2015/07/20(月) 02:40:35
>>978
「ん?あぁ…まぁ話せば長くなるけど…」
そう言って彼女は自分の過去について話し始めた。

…子供の時から自分の周囲の人間が急に
肉を過剰なまでにほしがったり、自分ちの肉屋の客が
突然生肉を欲しがったり…更に通っていた学校でも、友だちになりそうだった生徒が
急に肉を求めたりなどといったことがあって、とにかく関係の悪化を招いてしまい
それ以来引きこもってしまうようになったということなど…
とにかく生肉関連のことを話した。

「ま、こんなもんサァ。あんたもきぃつけなよ」
そう言って軽く笑う。

「なるほど、自分でもわからねえってわけか。
 何か秘密がある…なんてこたぁないか。」
ちょっと興味がわいたのか、しきりに刺青を見つめている。

「…あぁ、それがいいと思うぜ。
 他にも『力を与えてくれる』人がいるって噂だから
 …まぁ、手っ取り早いのはそういう『貰った』人間だと思うぜ。」
そう言って軽く、酒を飲んでみる。

「ウチはそういうのと関わりなかったから
 詳しくは知らねぇんだ。ワリィな。」

980ジェイク『一般人』:2015/07/21(火) 00:27:49
>>979

「ふふ。」

「ふふはははははははは!」

鶫の過去を聞き、男は大声で笑い出した。
天を仰ぎ、両腕を広げ、まるで何かを浴びているような、そんなポーズだった。

「『面白い』。お前にとっては災難だが、傍から見れば喜劇だな。」

「『じゃじゃ馬ならし』とは違うがな。」

軽く下を向く。もう先ほどのように笑い声を上げることは無い。
吊るされた人間のように静かである。
ばっ、と顔を上げる。ランタンの火が再び男を照らした。

「刺青に興味があるか?止めたほうがいい。
 なにせ『Ginger is danger』」

ランタンを持つ手の甲で帽子を持ち上げる。
男の髪は赤かった。

「俺はGingerだ。」

つまりは、危険なのだ。

「最後に1つ聞いておこうか。」

そう言うとランタンを彼女の目の前に突き出した。
ランタンの中の火が少し揺れる。

「『この火の中に何が見える?』」

「お前がこの火に興味が無いなら刺青について話そう。
 『スタンド』についての情報。その礼だ。」

危険を恐れぬのなら、刺青の話は好きなだけ聞ける。

981鶫『ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト』:2015/07/21(火) 00:35:37
>>980
「…無表情なやつかと思ってたけど、
 案外笑えんだなぁアンタ。」
ちょっと驚いた表情だ。

「まぁ、笑い事じゃねぇ話だったんだが…
 アンタの笑顔見れたなら儲けモンかなぁ」
軽く頭をかきむしりながらその様子を確認していた。

「…危険、ねェ。
 気に障った訳じゃなきゃこっから先も聞きてぇところだが…」
と、自分に差し出されたランタンの火の中を軽く確認する。

「火の中…妙な炎だけど、
 何か見えるかって言われると…まだわかんねぇ。」
まだチラッと見ただけのためか、
鶫にはまだ何も見えていない。
一体どういうものが見えるのだろうか。

982ジェイク『一般人』:2015/07/21(火) 00:58:07
>>981

「人間は笑う。今の俺は狼ではない。」

「それと、すまなかったな。笑って。」

悪びれる様子も無くそう言い放つ。
鶫の顔色を伺う様子は無い。
もっとも、そういうことをする男でもないのかもしれない。

「気に障ったどうこうはあまり問題ではない。
 『お前が俺に語らせる。』それが『重要』」

などと意味不明なことを言いつつ、ランタンに目を向ける。
橙色の火は弱まることなく燃え続けている。

「この火の中には『吉良』があり、『未来』がある。」

「『自分にとってプラスになるもの』や『未来の自分らしきもの』がうつる可能性がある。」

「当然、何も見えない者も『いる』。」

ふっ、と軽く笑い。

「よく目を凝らせ。この火の中に、この光の中に『何が見える』?」

そう、問うた。

983鶫『ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト』:2015/07/21(火) 01:04:17
>>982
「今の俺、ねェ。
 ま、ウチは過去を興味本位で探ったりゃしねぇさ。」
「…問題ねぇよ。
 能力知った今となっちゃ、ウチにだって笑い話になるさ、いつかな」
そう言って軽く微笑んでみせた。
こっちもこっちで相手の顔色をうかがう様子はなかった。

「…未来か…
 アンタの言うことはよくわからねぇが…まさに占いってやつかな?」
そう言って目を凝らしてみる。

…火の中に、光の中に見えたものは…

「…なんだろうなぁ、いっぱい刺青が見える気がするぜ…
 形がてんでバラバラ…そんでもって彫ってる人間もバラバラだぁ。」
そうつぶやく。火の中に写っていたのは数多くの刺青を彫った人々の姿だった。
いずれも見たことがない…いや、忘れているだけかもしれないが…

「よくわかんねぇが、これがウチに必要なもんってわけかなぁ。」
そう言って軽く頭をかきむしった。

984ジェイク『一般人』:2015/07/21(火) 01:21:45
>>983

「そう。売らないが、占う。それだけだ。」

「そして、『見えたか』」

不敵な笑みを浮かべる。
男の目はランタンの火に釘付けだ。

「そうだな。刺青を持つものがお前にとっての『吉良』だ。
 そうでなければ、お前自身が『刺青師』になる暗示か。」

「まぁ、どう思うかはお前次第。そしてどうなるかは、運次第だ。
 もしかしたら、見えたのもは刺青でなかったかもしれない。」

そういうと、ランタンのホヤを上げ、火を消してしまった。
街頭の光が二人の頭上から降ってくる。

「『光を追え』」

「今見たものが、どういう意味を持つのか知りたいのなら。
 今見たものが、人生にとっての『吉良』であると思ったなら。」

そういうと、また地面に座り込んだ。

985鶫『ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト』:2015/07/21(火) 01:29:55
>>984
「…あァ。はっきりと、ってわけじゃねぇがな。」
そう言って顔をジェイクに向けて答える。

「そうだなァ…刺青を彫ってもらったスタンド使いか…
 或いはウチが刺青を彫る側に回るか…
 よくわかんねぇが前途多難だろうってことはわかったぜ。」
軽く背筋を反らせ、火の消えたランタンを見る。

「光を追え…か。
 くらいところでジメジメしてたウチにゃぁまさしく『転機』と言って良さそうなメッセージだ。」
その顔はどこか嬉しそうで。

「分かった。
 いずれウチが見たその光景にぶつかるかもしれねぇ。
 取り敢えずはのんびりと待つことにするさ。
 向こうから、来てくれるかもしれねぇしな。」
そこまで言ったところで背を向ける。

「アンタにも『転機』となる出会いがあればいいなぁ。
 刺青か…或いはもっと別の何かとな。んじゃぁ。」
手を軽くパタパタ振らせながら、鶫はその場からゆっくりと歩きさっていった。

986ジェイク『一般人』:2015/07/30(木) 01:10:26
夜の街に一人の男の姿があった。
地面に胡坐をかき、夜空を見上げている。
道行く人々は無意識なのかわざとなのかは分からないが
みな、彼を見ないようにして歩いてるように感じられた。

黒いハット、黒い袖のないシャツ。
白いズボンにボロボロの革靴。
そして長く伸びた赤毛の髪とヒゲ。
不審者っぽい雰囲気をまとっている。

「湖畔の水は飲むべきではない。刺青師を探す。」

なにかぶつぶつ呟いている。

987関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/07/31(金) 00:07:31
>>986

関東也哉子は、優等生である。
であれば、どう考えてもネオンストリートという場所はそぐわない。
それも、こんな夜中のネオンストリートというのは、関東也哉子という少女のイメージとまったくそぐわない。

  (いかんいかん、遅くなってまったわぁ……はよぅ帰らにゃあ)

しかし、関東也哉子はその日ネオンストリートにいた。
帽子を目深にかぶり、サングラスをかけて、服装も普段と違うパンツルックで。
艶やかな黒髪をポニーテールにした姿は、知り合いでも一見して関東也哉子とわからないだろう。
わざわざこんな変装までしてネオンストリートにいるワケは、小脇に抱えた『買い物袋』にあるのだが……
ともあれそうして歩いていると、途中でジェイクの姿を見つけるわけだ。

   (あ……えっと、浮浪者の人かな……
    あ、あんまり目とか合わせ無いようにしないと……)

別に目を合わせたからなにがある、というわけではないのだが。
しかしブツブツと独り言を言っている浮浪者と関わり合いになりたいと言う女子中学生は中々いないだろう。
そういうわけで、也哉子はジェイクから目を逸らしてそそくさと帰路に…………


              ガッ
                 「きゃっ」
                        ガッ
                       カラカラカラカラ……


…………躓いた。
別に転びはしないが、少しバランスを崩し……そして運悪く、躓いた拍子にポケットからスマホが飛び出してしまった。
スマホはカラカラと地面を滑り、ジェイクの目の前へ。

   「あ」「えっと……」

……………………どうしよう。視線が泳ぐ。

988ジェイク『一般人』:2015/07/31(金) 00:19:58
>>987

「刺青師、スタンド。湖畔の水は飲むべきではない。」

「星屑の光は、俺の光ではない。」

ぶつぶつと呟き続けている。
通報されてもおかしくないレベルであった。

突然、男は地面へと視線を向ける。
首を曲げ、視線は落ちたスマホへと吸い込まれる。
獲物を狙うハゲタカのようにじっくりとスマホを見つめ。

ゆっくりと、スマホを手に取った。
スマホを見つめる人間が他にいないか探していると、也哉子が目に入った。
男はニヤリと怪しく笑うと口を開いた。

「これは、お前のか?」

蛇のような瞳が也哉子を見つめる。

989関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/07/31(金) 00:31:38
>>988

   (す、スタンド……? 湖畔の水……星屑の光……?
    ……な、なにを言うとるのかなーんもわからんてぇ……お、おそぎゃあよぉ……)

也哉子は察した。
この人は『ヤバい人』だ。
出来る限り関わり合いになりたくない人種だが……ああ、なぜ自分はスマホを落としてしまったのか!
吸い込まれるように転がっていくスマホが、なぜこの男の前に行ってしまったのか!
……運命を呪っても仕方ないが、呪いたくなるような気分だ。

     「え、っと……」

獰猛で狡猾な肉食の獣のような瞳。
あまりにも不気味な笑みで声をかけられ、半ば反射的に一歩後退する。
本能的な恐怖。だがそれをグッと堪え、意を決して言葉を返す。

  「す、すみません。
   それは、その、そうです。あたしのです。
   あ、あはは、お、落としちゃって……」

そう、スマホを拾ってくれたのだ。
あまり怯えるというのも、失礼だし。勇気を奮い立たせ、無理に笑顔を作る。

990ジェイク『一般人』:2015/07/31(金) 00:44:54
>>989

「そうか。」

動かない。立ちもしない。
不思議そうにスマホを眺めている。

「お前、女か。それも、若い。」

そう言ったあたりでやっと立ち上がった。
……大きい。一般的な日本人男性よりも大きい。
190cmはあるだろうか。
そんな巨体がのそのそと近づいてくる。

「ジャック・ザ・リッパーを知っているか?
 夜に出歩くふしだらな女を切り刻む。」

いつの間にか、片手にランタンを持っている。
銀のネームタグが彼の動きに合わせてゆれる。

「ちょうど今のお前のような、女をな。」

そう言って、スマホを突き出してきた。
不気味な男である。
也哉子に合わせて浮かべた笑みはまるで誘拐犯だ。

「こんな時間になにしてる。」

991関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/07/31(金) 00:59:44
>>990

    「……………!」

立ち上がるジェイクとの身長差に気圧される。
也哉子の身長はおよそ150cmと少し。
女子中学生としては平均的な数値で、目の前の男と比べれば圧倒的な数値だ。
無論、男の方が大きいと言う意味で。

   「ジャ、ジャック・ザ・リッパー……」

反芻するように、オウム返しに呟く。
切り裂きジャック。ロンドンの殺人鬼。最低でも五人の娼婦を殺した存在。
也哉子は別に売春婦ではないが……確かに、こんな時間にこんなところを出歩く女は、ふしだらだ。
その自覚はあった。よくないことをしている背徳感があった。危険なことをしている意識はあった。
だが、その危険な果実の誘惑に負けて出歩いて、これだ。
一歩二歩と足が後ろに進む。その足は確かに震えていた。
この男は、切り裂きジャックなのか?
それとも婦女子が夜に出歩くことを咎める、善意の人なのか?
也哉子の顔は青ざめていた。肉食獣を目の前にした草食動物のように怯えている。

     「あ、ありがとう、ございます」

それでも、突き出されたスマホを受け取ることができたのは賞賛すべきことだろう。
あるいは愚行と罵るべきだっただろうか。也哉子にはこのまま逃げ出すという選択肢があった。
しかし逃げ出せば肉食獣が牙を剥いてしまうような錯覚があって、逃げるに逃げられない。
だから、結果的に也哉子は男の問いに答えることしかできない。銃を突き付けられた無力な市民のように。

   「あの、あたしは……ほ、ほしいものがあって、買い物に……」

小脇に抱えた『買い物袋』を示す。
買い物袋というよりは、ショッピングバッグという方が正しいか。飾り気のない、無地のバッグ。
中に物がたくさん詰まっている様子はないが、よく観察すれば確かに物が入っているような膨らみは確認できるだろう。

992ジェイク『一般人』:2015/07/31(金) 01:12:13
>>991

「何を恐れることがある。」

「今の俺は狼じゃあない。」

両手を広げる。敵意がないことをアピールしているのだろうか。
熊が両手を挙げて威嚇しているようには見えるかもしれない。
顔は相変わらず怪しい笑顔を浮かべている。

「ほう。買い物か。」

買い物袋を一瞥する。
冷めた瞳で見据えている。すでに笑みは消えてしまっていた。

「人には言えないものか?」

首をゴキリと鳴らしてたずねる。
怒っているとかそういうのは感じられない。
淡々としている。

993関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/07/31(金) 01:30:10
>>992

    (い、『今の』!?
     『今の』言うたがや今ぁ……!)

『今の』ということは、狼になる時があるということで。
思わずへたり込みそうになる。もう立っていられないほど足が震える。
両手を広げる所作は、まるでカマを振り上げるカマキリか、翼を広げる鷲だろうか。
恐ろしく怖い。也哉子はどうしようもなく無力だ。
だが……堪える。無様に倒れたりは、しない。

       (さっきこの人……『スタンド』言うとったげな。
        『スタンド使い』、なのかも)

関東也哉子は知っている。
スタンド使いの存在を知っている。その恐ろしさだけを、知っている。

    (でも………)

        (だったら、だとしたらあたしは、ただ怯えとるわけにゃあいかんて……ッ!)

也哉子は以前、親友に誓った。
逃げないと。理不尽から逃げない自分でいることを、親友と自分に誓った。
だから也哉子は顔を蒼褪めさせたまま、足を震えさせたまま、しかし気合いを入れ直す。
感情の感じられない大男の姿は、狩りのためにジッと身を潜める獅子のように見える。
それでも目を塞ぐことも耳を塞ぐこともすまいと自分に喝を入れ、也哉子はここで初めて目の前の大男の瞳を見据えた。
絞り出す声は、まだ震えていたが。

     「は、はい」「あんまり、人には言えない買い物です」

  「…………そ、そういう貴方は、なにをしてらしたんですか?」

994ジェイク『一般人』:2015/07/31(金) 01:40:35
>>993

「はぁ……お前は正直だな。」

人には言えない買い物だと言ってのけた也哉子を見て、ため息混じりに言葉を返す。

「ごまかしを知らないのか?」

ニヤニヤと笑っているが目の奥は笑っていない。
じっくりと、也哉子の瞳を見つめる。
彼の青い瞳は美しいが、彼自身からは美しさを感じられない。

「なにをしていたか?」

ぴっと人差し指を空に向ける。
ネオンの光に消えそうになりながら星が光っている。

「何が見える?」

「お前に見えるものを俺は見ていた。」

「それと、確認だ。今まで知ったことのな。」

995関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/07/31(金) 01:54:35
>>994

   「お、女の子は……秘密を、もってるものですから」

          「言えないことがあるのは当たり前ですし……
           で、でも、隠してることを隠すのは、フェアじゃないので」

震える声で答える。
也哉子の瞳の色は黒だ。ごく普通の黒目。
全てを吸い込む闇ではなく、かといって全てを寄せ付けぬほど濁っているわけでもない。
ただ、怯える身体や声とは対照的に、強い意志のある瞳だった。
何の変哲もない瞳の中に、きらりと輝く決意がある。

     「何が見えるって……」

その瞳が、空を向く。
そこにあるのは夜空だ。都市の光にかき消された星と、雲と、月の世界だ。
也哉子の黒い瞳に、その僅かな光が映り込む。

   「……夜空の、光、ですか?」

視線を大男に戻した。
意外とロマンチストなのか? それとも、そこになにかあるのか?
ぶつぶつと何か呟いていたのは、今まで知ったことの確認だと言う。
まるで子供か野人だと也哉子は思った。
一つ一つ世界の在り方を知り、確認して反芻して咀嚼する、子供か野人のようだと。

      「……………………貴方は、何者なんですか?」

也哉子の中で好奇心が首をもたげた。
危険な好奇心である自覚はある。おい、それ以上踏み込むのは危ないぞ、と自分の理性が警鐘を鳴らす。
だが、也哉子はその甘い果実をもいでしまう女だった。
危険や背徳という果実に魅力を感じてしまう女だから、つい、聞いてしまった。

996ジェイク『一般人』:2015/07/31(金) 02:07:15
>>995

「フェアか……俺とお前が?
           まぁ、いいか。」

何がいいのだろうか。
青い瞳も巨体も動きはしない。

「そうだ、光だ。」

男は夜空を見上げない。
見上げる必要が今はない。
いずれまた見上げるのかもしれない。

「俺が誰か、という質問に適切な答えは『ない』」

「名前も経歴も全ては無意味だ。記号でしかない。」

「ただ、質問に答えないのはフェアじゃあない。」

すうっと息を吸い込む。

「ジェイコブ・ケイディ・ワイアット。人は俺を『ジェイク』と呼ぶ。」

「イギリス生まれ。歳は25。元農夫。色々やったことがある。
 赤毛。ケルトだと言われたことがある。両親、養親ともに死別。妹もいたが死んだ。」

「それと、狼を野に放ったことがある。」

言い終わると、くっくっと笑う。

「どれも俺を構成する記号でしかない。俺は俺だ。」

「ところで、お前は誰だ?」

お前の記号を聞こうと呟いた。

997関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/07/31(金) 02:29:15
>>996

    「……そうです。『フェア』じゃ、ないから」

……どう贔屓目に見ても、二人の関係は『フェア』ではない。
どう考えても精神的・肉体的優位に立っているのはジェイクの方だ。
二人はどこも『フェア』じゃない。
だが、だからこそ――――也哉子は『フェア』になろうという意志を見せた。
敵対心というには弱すぎる。虚勢というには強すぎる。
ただちょっとした反抗心と対抗心を、也哉子は捨てずに相手に示したのだ。

      「……………………」

そして、ジェイクは問いに答えた。
そうしないのは『フェア』じゃないと言って答えた。
本当にそう思っての発言なのか、あるいは也哉子を嘲笑っているのか。
いずれにせよ、ジェイクは自らの『記号』を話し、そして也哉子にもそれを求めた。

  「あたしは――――」

也哉子はジェイクの『記号』に反応を示さなかった。
意外と若いことだとか、家族のことだとか、狼は飼っていたのかとか、気になることはたくさんあったが。
どれ一つ明確なリアクションを返さずに、自らの返答に移った。
他ならぬジェイクがそれを求めていないと思ったからだ。それは失礼ないことだと思ったからだ。
こんな怪しい人物に、自らのパーソナリティを話していいのか?
一瞬そんな考えが也哉子の脳裏を過り、しかしそれを即座に振り払う。
やめて。あたしはそんな卑怯な女にはなりたくない。

     「――――『関東也哉子(かんとう・ややこ)』。仲のいい友達はあたしのことを『ヤーコ』って呼びます」

   「生まれは名古屋で、去年この街に引っ越してきました。
    14歳で、『秋映学園中等部』に通ってます。二年生」

            「家族はお母さんとお父さんとの三人家族。
             両親は共働きで、お父さんは少し前に何者かに襲われて大怪我をして入院中」

        「それと、人に言えない趣味を一つ持っています」

全部、正直に話す。自分の記号を。相手の目を見て。

   「これがあたしの『記号』です。
    それで、この『記号』の集まりが『あたし』です。
    同じ人なんてどこにもいない、あたしだけの記号の組み合わせでできた、『あたし』です」

998ジェイク『一般人』:2015/07/31(金) 02:49:00
>>997

「そうか。それがお前か。」

「関東也哉子。」

また二度、三度と首をならす。
薄ら笑いを浮かべながら、也哉子を見つめる。

「羊のくせに、成長の兆しを感じる。」

「来い。面白いものを見られるかも知れない。」

そう言うと先ほど自分がいた地点まで戻っていく。
そして先ほどと同じように地面に胡坐をかいた。

「ちょっとした占いだ。」

ランタンを地面に置いて、火をつける準備を始める。

「見てみるか?」

999関東 也哉子/ヤーコ『一般人』:2015/07/31(金) 03:02:41
>>998

  「そうです。それが、『あたし』です」

何も恥じる事はない。
恐れることはたくさんあっても、恥じ入るべきことなど一つもない。
声はまだ僅かに震えている。
瞳は真っ直ぐジェイクを見ている。

    「…………羊、ですか」

では、この男は『狼』なのだろうか。
それとも、狼の振りをした『牧羊犬』なのだろうか。
わからない。いずれにせよ、也哉子が羊だという点については異論はなかった。

      (……でも、羊が狼から逃げ惑わにゃいかんて決まりはにゃあでよ。
       あたしはあたし。羊でも、あたし)

逃げないと決めた自分である限りは、也哉子は也哉子だ。

……と、そんなことを考えている内に、ジェイクが踵を返している。

   「えっと……」

来い。
……来いと言われてる。

     「占い?」

占いをすると言っている。
様子からするに……ランタンで?
急にそんなことを言われて困惑するが……しかし、ここでも好奇心に従うことにした。
おずおずと、ゆっくりとジェイク、そしてジェイクのランタンに近づいていく。

  「見てみるか、って……何か見えるんですか?」

1000ようこそ、名無しの世界へ…:2015/07/31(金) 03:04:28
次スレ
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