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【場】『松前 総合病院』

1ようこそ、名無しの世界へ…:2012/01/23(月) 22:47:37
ここは『黄金町』最大の病院施設です。

『心霊治療』は『民間療法』の類は
取り扱いがございません。ご了承ください。

※この病院のスタッフに、『スタンド使い』はいません。


■入院患者への注意事項

・ミッション、バトル(リアル)などで負傷したPCが運び込まれる病院です。
・治療費は『生活費』から支払われ、『ミッションマネー』は不要です。
・ただし、『全治何ヶ月』などの指示がある場合、
 リアルタイムで期間が過ぎるまで、PCは拘束されます。
 (病院にレスがあった日から数えます。)
・この期間中、このスレ内とパラレルを除いて、PCの活動は禁止されます。

・『フープル・マーケッツ』や『闇医者』などを利用して、
 病院に隠れて『治療』し、退院するのは構いません。
 病院では『奇跡的な回復』として扱われます。
・退院時は、退院の旨を必ずレスしてください。

・『再起不能』について。
・『再起不能』は、原作にある通りの、
 『死んではいないが、もう動けない』状態です。
・『フープル・マーケッツ』または、回復系のスタンド能力で
 治療しなければ、二度とベッドから降りられません。
・パラレルを除く場スレ、ミッションに参加出来ません。
・動けるのは『見舞い客』が来た場合のみです。
 意識の有無はPC次第ですが、病院内ですら動けません。

932フェール『マシーン・ドラム』:2015/07/18(土) 23:51:24
>>931

 >『そういう発想』が最初に出て来るってことは、
 テメェの方も満更『心当たりがねえ』ってわけじゃあ、ねえんだよな?

     ――pi pi pi……

 『仮に、と仮定文を置いて』

 『もし、自分にしか見えないものがあり。
それが目の前で知人や学友を二度と社会生活が不可能な事故を発生し
且つ物音や会話が少しでもしただけで襲い掛かるような怪物であるならば
声を出す事も至難になるだろう』

 pi pi pi pi

 『だが、それは仮定だ。私の身に起きた訳でない。
もし、その子がその怪物を生まれつき見る事が出来たとして、そして
怪物が使えるような力がありながらも何も出来ずその事故が起きたとしても
それはその子の身に起きた出来事だ、その子の無念や後悔はその子のもので
私ではない。その子自身の背負うべき罪だ』

 pi pi pi pi pi……

 『君の言葉に一つだけ同意出来る言葉がある。
It's my responsibility(責任は自身にある)
 その子もその子自身の問題は自分で解決すべきだ。誰かの手を借りるべきではない』

 そう、強い意志を込めた瞳で携帯は掲げられる。

933稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/07/18(土) 23:56:49
>>932
「……………ま、言う通りだわな」

そう言って、フェールから視線を逸らす。
…『自分ではない誰かの話だが』って前置き。
そいつは、自分の悩みを打ち明ける時の枕詞みてえなモンだぜ。
だが、そういう『男の意地』ってヤツは嫌いじゃねえ。
そこに首を突っ込むほど、この稲積誇生は無粋にはならねえよ。

…あー、タバコが吸いてえ気分だ。
入院するときに取り上げられちまったけど。

「ま、ひとつハッキリしてんのは、
 互いに解決すべき問題があって、ソイツの解決に
 他人の力を借りるのは望むところじゃねえってことだ」

そう言って、右手を差し出す。
ニイ、と笑って、

「お互い、頑張ろうぜ」

934フェール『マシーン・ドラム』:2015/07/19(日) 00:07:14
>>933

 ―ニッ

 差し出された右手に同じく右手を重ねる。

 名乗りもしなかったが、互いに掲げた静かなる目的は
誰にも邪魔立ては出来ない。それは稲積もフェールも同じだ

 次に相まみえる時に共闘するかも知れない。
或は敵になるかも知れない、ただ どちらであっても

 『機械』仕掛けの歯車(運命)を 壊す事は出来ないのだ。

935稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/07/19(日) 00:14:05
>>934
  クル!

手を離した後、オレは踵を返して院内に戻って行く。
怪しまれたりしねえよう、ある程度入院期間を
消費してから『フープル』で治療をする腹積もりだったが…、

考えが変わった。
そんな悠長なことはしていられねえ。
とっとと治して、とっとと病院を出て、
そしてこの手に愛銃を取り戻す。そう決めたぜ。

オレも、『バイト・ザ・ブリット』も、やられっぱなしは性に合わねえからな…。

936久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/07/20(月) 23:10:29
【ミ】『黄金体験 その3』-初心者用スレッド-【戦】
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1434987782/104
より


『スーパーFLY』での『カビ使い』との激戦のあと――――

消防隊員Dが呼んでくれた救急車(人生初)に乗せてもらい、
そのまま病院に『直行』した墨彦。
(どっから連絡が回ったのか、病院につくとすでに母親が待っていた。)



 「だ、大丈夫だってば母さん……

  ちょっと変なコケかたをしちゃって
  指の骨を折っただけだって―――」

                     クルリ


         「指の骨なんて包帯グルグル巻いて
          しっかり固定しとけばすぐ治りますよね――?
          ねっ、先生、ねっ?」



       「えっ………………
        『入院』…………」



              「しかも『一ヶ月』も………
               …………………………」




   「そ、そんなあ―――――〜〜〜〜〜〜〜〜」


                      シオシオ… ↓↓



久染 墨彦『インク・フィッシュ』
 ⇒ 『右手指骨折』 『全治一か月』

937稲積 誇生『バイト・ザ・ブリット』:2015/07/29(水) 01:01:09
「よし…」 「『フープル・マーケッツ』で怪我も治したし」

             「――――行くか」

                    バ
                     ン /
                       ・

               稲積 誇生 『バイト・ザ・ブリット』 =⇒ 『退院』

938久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/07(金) 00:18:16


  「ううううう〜〜〜〜…………」



                「暇だ!!」



                     ジタバタ


がらがらの病室に置かれたベッドでジタバタする少年がひとり。
彼の名前は久染墨彦15才。おとなしく療養なんてできないお年ごろ。(運ばれた経緯は>>936



  「『指勘』なんて一日ペンに触れないだけでも鈍っちゃうのに、
   もうかれこれ『半月』だよ―――これじゃ右手の指がスライムになっちゃうよ!」


 「うぐぐ…………暇だ…………誰かお見舞い来ないかな……」

939鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/07(金) 00:26:29
>>938

カラコロカラ
              カラコロカラ
     
                          カラコロカラ

下駄がなる。
病院の廊下を和服の少年が歩いていく。
手に和傘と大きな風呂敷包みを持っている。
肩まで伸びた黒い癖毛をゆらしている少年は華奢でどこか女性的だ。

「久染さん。いはる?」

病室だから気を遣ったのか小さな声で聞いてみる。

「お見舞いにきた鈴元やけど。覚えてはる?」

鈴元は久染とカビ使いと戦った仲である。

「あ、おった。」

久染の側にゆっくりと近づいていく。

940久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/07(金) 00:45:34
>>939

「うぐぐぐ…………うぐ……  ぐ?」

  廊下を歩く下駄の音…………その耳慣れない響きに、
  枕にうずめていた顔を思わずガバっと持ちあげる。

  風流というかなんというか。珍しいな………と思っていたら、
  下駄の音は自分のいる病室の前にまでカラコロ近づいてくる。

「ムムム?」

  …………誰だろう。
  下駄を履いてお見舞いに来る人なんて、
  自分には心当たりが…………

      …………

   …………


  あ、一人だけあった。


  もしかして…………


                  ガバ! 


      ・
      ・
      ・



病室入り口にはたしかに『久染』の名札がかかっているが、
鈴元の呼びかけに返事はない。
ちなみに同室の入院患者は他にいない様子。

頭から布団をかぶって爆睡でもしているのか、
『久染』の名札がついているベッドの上には、こんもり盛り上がった布団があるだけだ。

941鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/07(金) 00:56:26
>>940

(久染さんしか、おらん……よなぁ?)

聞いたとおりの病室に来たし、名札も確認した。
だからあの塊が久染であると鈴元は確信していた。
だが、返事が無い。

「久染さん……?お腹痛いん?」

恐る恐る声をかける。
別人か?それともなにか悪化したか?
それとも純粋に寝ているのか?

「寝てはる?」

とんとんと弱弱しく布団を叩いてみる。

「……日ぃ改めよかな。」

誰に言うとでもなく呟く。

942久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/07(金) 01:06:16
>>941

病室入り口、そしてベッドのネームプレート。
ダブルの名札で久染の所在はしっかり確認済みだ。

鈴元の認識に間違いはない――――ないはずなのに、
病室にいるはずの墨彦から肝心の返事がない。


いろんな不安図が一瞬よぎり、
とにかく反応を見ようと布団を叩いてみたところ……

フワッそしてスカァーッ。



手応えがない――というか、布団にくるまれていたのは『枕』だけだった!
これはいわゆる…………『もぬけの空』というヤツだ。
カモフラージュとも言う。『わざと』ベッドにいるフリをしていたってことだ。

では墨彦は一体どこに…………?

943久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/07(金) 01:08:10
>>942
メール欄の文字化け修整。

944鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/07(金) 01:23:40
>>942-943

「あら。」

布団は『もぬけの空』だ。
確かにいたはずなのだが、消えた。

(本家でもないのに。)

人が消えることが簡単にあってもらっては困る。
                                  
「やっぱり日ぃ改めよかな。」

「お土産置いていってまた今度取りに行くんもエエし。」

帰るかどうか悩む。
いないのはしょうがないことだ。
誰が悪いわけではない。いないのだからしょうがない。

「……久染さんのスタンド能力?」

「や、でも……」

きょろきょろと辺りを見回す。
久染がどこかに隠れていないかを調べるためだ。

(どないしよかな。)

945久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/07(金) 01:44:06
>>944

墨彦の姿を探してあたりをぐるっと見回すが、
他に使用者がいない病室内には、
5つの『空きベッド』が見通しよく並んでいるだけだ。

墨彦の姿は見当たらない……すくなくとも『三次元上』には。


「(フフフ、探してる探してる………
 悩んでるな涼くん…………フヘヘ。
 さあ〜〜て僕はどこにいるでしょーかッ?)」


               プカァ……


「(せっかくだし、まだ姿を見せずに、
 もうちょっとキョロキョロする涼くんの様子を見ておこう……

 フヘヘ、楽しいな〜〜〜〜〜〜
 『スタンド使い』の友達がいると『こういう遊び』ができるんだな〜〜〜〜)」



退屈な入院生活に暇を持て余していた墨彦は、
                            . .. ...
久しぶりにやってきたお見舞い客――それもスタンド使いの――に
あふれ出るワクワクを隠し切れないのだった!


…………だから…………
お願いだから…………


か、帰らないでね…………!!

946鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/07(金) 01:59:24
>>945

「久染さん?」

久染のベッドの上の枕を頭のところに戻す。

「どこにおんの?」

掛け布団を綺麗に戻す。
他の『空きベッド』と同じ見た目になった。
これで同じ『空きベッド』が6つだ。

「……会いたないんやね。」

「ちゅうか、久染さんの怪我の原因、僕やし……」

「会いたなくて、当然やんねぇ。」

こんこんと下駄で床を鳴らす。
視線を下に落とした顔はいつものような笑顔ではなかった。
久染にとっての鈴元は鈴元にとっての久染とか違うものだった。
そういうことなのかもしれない。

「ごめんねぇ。」

「これ、お見舞いの品なんやけど、置いてくね。」

近くの丸いすに風呂敷包みを置き、出口へと向かっていく。

947久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/07(金) 02:20:16
>>946

                / ゴソゴソ \


「(ん? ベッドの上に物音………フフ、違うよ涼くん、
 そこじゃないんだよな〜〜〜〜ッ。惜しい惜しい。)」

               プカ プカ  



「(まっ……そろそろ頃合いかな……
  あんまり焦らすと涼くんも困っちゃうだろうからな〜〜〜)」


  「(ヘヘヘ……どんな感じで出ていくのがいいかな〜〜〜〜っ。

    たとえばこのままガシィって『足首』掴んだりしたら、
    涼くんびっくりして『ぎゃ――――っ』て言って腰抜かしたりして?
    『ぎゃ――――』って。フフフ……)」



        「(よーし。
          それじゃあ涼くんの『ぎゃ――』までカウントダウンいこっかな――ッ。
          フフフ。せーの、
          3,
          2,……)」



>「……会いたないんやね。」


  「(1……)」

       「(………………)」


                    「(んっ?)」



>「ちゅうか、久染さんの怪我の原因、僕やし……」


       「(えっ)」

            「(えっ?)」



>「会いたなくて、当然やんねぇ。」
>「ごめんねぇ。」


     「(ちょ…………)」




>「これ、お見舞いの品なんやけど、置いてくね。」



  「『ぎゃ、ぎゃ――――――――――――――――――ッ!!』」



    断末魔めいた叫び声とともに
    『ベッドの下』に『沈没』して張り付いていた墨彦がばっと勢い良く飛び出してきた。

    そのまま出口に向かいつつあった鈴元の足元にガッシとすがりつく。



「ま、待ってぇぇぇ〜〜〜〜〜〜いますぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜っ
 墨彦ここにいますぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 だから待ってぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」



右手が使えないので左腕を絡めて鈴元の退去を必死に妨害する墨彦。
その目からはデフォルメされた涙がビヨビヨ流れている。


 「お、お願いだから帰らないでぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

948鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/07(金) 02:41:44
>>947

「ひゃんっ!」

急に足に衝撃があり、前に倒れかける。
なんとか堪えたものの、口からは奇妙な悲鳴が出てしまった。
悲鳴が恥ずかしいのか鈴元の顔が赤らんだ。

「久染さん……?」

「心臓に悪いわぁ。」

そう言っていつものように優しく微笑んだ。
顔は相変わらず赤いままではある。

「ちゅうか、よかった。ホンマに嫌われたか思うたから。」

「ホンマによかった。」

足にすがり付いている久染を引っ張り起こすためにしゃがんだ。
そして久染を抱き起こそうとする。

「あ、お土産においしいの持ってきたから食べる?」

949久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/07(金) 03:07:02
>>948

「わ、わ――――っ。ご、ごめんよお。
 ちょっとしたイタズラのつもりだったんだよお………よよよ」

     「スタンド使いの男友達なんて、
      今までぜんぜんいなかったからつい………」


 デフォルメ顔でよよよ泣きしつつ鈴元に抱き起こされる墨彦。15才。
 色々と問題ありすぎな絵面である。
 そのままベッドに腰かけさせてもらおう………。


「涼くんを嫌いになるって?
 …………さっきも言ってたけど、そんなことあるわけないじゃないか。

 この手のことなら、これは僕が勝手にしたことだよ。
 だからぜんぜん気にしないで大丈夫ッ」


鈴元に向かって右腕をめいっぱいグルグル振り回してみせる。


「『おいしいの』……?
 あっ、ひょっとしてそれが涼くんの言ってた和菓子屋さんの?
 食べる食べる!

 ………の前に、涼くんもどーぞ座って座って」


ベッド奥に収納してあったパイプの丸椅子を
左手でなんとかひっつかんで取りだそうとする墨彦。

950鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/07(金) 03:23:49
>>949

「なんや、スタンド使いの女友達やったら、ようけおるみたいな言い方やねぇ。」

「……うふふ。久染さん隅に置けんねぇ。」

何を思ったのかくすくす笑っている。

「それと、おおきに。」

笑ってそう告げる。
なにをとは言わない。照れくさいからだ。

「あぁ、無理せんといて。」

「椅子くらい自分で取るから。」

丸椅子を取り出すのを手伝い、座る。
そうして、風呂敷の包みを解き始めた。
中から出てきたのは二段重ねのタッパーとフォークである。
                        コ
「えっとやねぇ。かとう青果店さんから買うたドラゴンフルウツ?とか言うんと、葛饅頭と若鮎。」

「どれから食べはる?」

久染に優しく問いかける。
上段のタッパーの透明な側面から綺麗に切られたドラゴンフルーツが
下段のタッパーの側面からは葛饅頭となにやら不思議な形をした焼き菓子が見える。

「どれもおいしいで。」

951久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/07(金) 03:43:40
>>950

「そっ、そんなことは………!
 もー、からかわないでよ涼くん………」

 無意識に放った言葉尻を掴まれてうろたえる墨彦。
 鈴元の感謝のことばも、
 そういった世間話の延長線上で自然と受け取ることにする。


     グッ グッ
                ガコッ

「うぐぐ………
 椅子ぐらい僕が…………
 と言いたかったけど、めっちゃベッドの角に引っかかってた………」


おとなしく椅子から手を引いて鈴元に任せることにする。
病室では病人は病人らしく振る舞うのがいい、
それが結果として見舞客のためなる……と、思おう。



「えーっと、どれどれ――――  って、
 ど、どどど、ドラゴンフルーツゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」


      パアアアア ―――――― ッ


墨彦の顔がみるみる明るくなる。
鈴元がそれを選んだのはまったくの偶然だろうが、
実はドラゴンフルーツは『墨彦的・もらってうれしい果物ランキング』ベスト3のうちの1つ!
どれから食べたいかは人目見てまるわかりって感じだが……


「ん〜〜〜〜〜〜。
 でもいい機会だし、普段食べない和菓子から食べてみようかな。
 えっと、くずまんじゅうと……わか……? あゆ?

 …………なにこれ?」

 見慣れない和菓子に興味津々だ。下段のタッパーを真横から覗きこんでいる。

952鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/07(金) 04:07:55
>>951

「あぁ、ドラゴンフルウツ好きなん?よかったわぁ。」

顔色を伺うまでも無く分かった。
上段のタッパーを開けようとするが、久染の言葉に踏みとどまる。
どうやら久染は下の和菓子の方が気になるらしい。
上下を入れ替え、和菓子のタッパーを開ける。

透明な葛に包まれた黒や桜色の餡、葛饅頭だ。
その横に仕切りで分けられた焼き菓子が見える。
その形は鮎のようであり、なにかを挟んだ形をしている。

「若鮎っちゅうてねぇ、調布の生地で求肥を挟んであるんよぉ。
 優しいっちゅうか柔らかい甘さなんよ。」

流暢に和菓子の解説を始める鈴元。
どこか楽しげな雰囲気がある。
和菓子屋ゆえか、彼自身が和菓子がすきなのか。
それはまだ分からない。

「後、葛饅頭の桜色なんは桜餡なんよ。
 餡子に桜の葉ぁ練りこんで食紅で色づけしてあるん。」

「まぁ、若鮎から食べてみてぇ?」

そう言って鈴元は若鮎を1つ手に取り

「はい。」

すっと久染の顔の前まで差し出した。

953久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/07(金) 12:02:35
>>952

「好きもなにも、大好きだよ!
 かとう青果店のドラゴンフルーツ、おいしいんだよ〜〜〜」


初めて食べたあのミスコン会場の思い出が蘇り、
自然と顔がほころぶ。


とはいえ、いま墨彦の好奇心は
鈴元が持ち込んだ珍しい和菓子にがっちり掴まれている。

解説する鈴元がどこか楽しげな雰囲気なのも墨彦には心地よく、
興味津々な様子でタッパーから出てきた若鮎を覗きこむ。


      「へえ――――
       どっちも単においしそーってだけじゃなく、
       すっごく綺麗な見た目。」


 「にしても『魚』と『桜』の和菓子かあ。
  なんかちょうど僕のスタンドと涼くんのスタンドみたいだね。

  ………… ん?
  あ、このチョイスってひょっとしてそれで?」


おいおい涼くん、
だとしたらなかなか洒落たことをするじゃないか。
+1ポインツ。



「ヘヘヘ……じゃあさっそく一個もらおっかな〜〜〜。
 やっぱり病院食じゃあぜんぜん物足りなくってさ、
 だからこういう差し入れがホントに楽しみで―――って、あ、あれ?」


          ヒョイッ


和菓子のタッパーへ伸ばそうとした左手に先んじて、
若鮎をおさめた鈴元の手が墨彦の鼻先に差し出される。

一瞬その意図をはかりかね、
目の前の若鮎と鈴元の顔を交互にチラチラ見比べる墨彦。


「え……た、食べていいってこと?」


い、いやでもそれは。

954鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/08(土) 00:18:51
>>953

「へぇ。僕は食べたことないんよぉ。そないに美味しいんやったら
 今度家で食べるように買うとこかな。」

久染の言葉に対してうんうん頷いている。
興味深いようだ。

「食べて味わう前に目で味わう。」

「それも和菓子の楽しみ方のひとつなんよ。」

ちょっと誇らしげである。
和菓子屋の息子らしく一家言ある、ということなのだろうか。

「うふふ。そうやでぇ。ホンマは川を若鮎が泳いでる風にしよかとも思たんやけどぉ。
 まぁ、簡単にきれぇにまとめてみたんよ。」

どうやらそういうことらしい。
鈴元のちょっとした遊び心だ。

「?食べてもエエっちゅうか、食べて欲しいから持って来たんやけどぉ。」

久染の反応に小首をかしげる。
その行動の意図をはかりかねているようだ。

「別に毒とか入ってへんよぉ?」

「ほら、おあがりやすぅ。」

優しく微笑んでそう言った。

955久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/08(土) 01:45:40
>>954

「フフフ、あそこのドラゴンフルーツはほんとおすすめだよ。
 でもまあ、今は果物よりも和菓子な気分かな〜〜〜」


  『食べて味わう前に目で味わう』という鈴元の言葉を
  数回そらんじる墨彦。
  そのフレーズをなんだか気に入ったみたいだ。
  タッパーのなかのお菓子をさながら美術品のように眺めている。


「あ、やっぱり!
 おもしろいことするね〜〜〜〜涼くん。
 なんだろ、『粋』っていうのかな?」


    「あのとき見上げた『桜』はほんとに
     キレイだったなあ……」


 目を細めてしみじみつぶやく墨彦。
 しかし今、彼の目の前には別の問題が……


        ズズゥゥ―――― ム



 鼻先でちらつく鈴元の手。
 いやちょっと……
 涼くん何がおかしいのか分からない顔してるけどこれアレじゃん……

    ..
 もろアレじゃん!



「いっ、いや、
 食べてほしいのは分かるんだけど……」



 りょ、涼くん分かってないのか?
 それとも僕が意識しすぎなのか?
 涼くんの住んでたとこだとこういうの別にフツーなのか?

 わ、わからない………断るのは失礼なのか? この場合。


「え、えっと。
 だ、大丈夫だよ涼くん。
 普通に左手で食べれるよ――――」

   
       グー パー グー パー


 でもまずは15才の一般少年らしく
 素直な抵抗のセリフをまず口にしてみるぞ。左手の開閉を鈴元に見せる。

956鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/08(土) 02:02:37
>>955

「そう言われると照れるねぇ。でも久染さんは、カッコよかったで?」

桜を褒められ少し照れる。
スタンドといえど彼の一部だ。そして桜は彼の誇りでもある。
それを褒められ、そっけない反応を取れようはずがない。

「うん。動くねぇ。左手。」

だから?とでも言いたそうである。
鈴元にとって久染の悩みは悩みでないのかもしれない。
普通に手の開閉を見つめる。

「あ。」

「もしかしてぇ……」

「久染さん、潔癖症?」

優しく微笑んだまま問いかける。
どうやら久染が潔癖症だから若鮎を食べないと思ったらしい。

「いや、すんません。他の人の手ぇで触ったモンは食べられへんよねぇ。」

鈴元涼。久染の抵抗を意に介さず、別の方へと意識を向ける。
どうやら気付いていないようだ。

957久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/08(土) 02:25:24
>>956

「お? 涼くん照れてる? フフ。
 でもホントだよ―――あの一瞬。
 なんか目に焼き付いて離れないっていうか、
 僕もあのときはほんと、無我夢中でさ……」


 と包帯でグルグル巻きになった自分の右手をみつめる墨彦。


 (※ ちなみに二人が出会ったきっかけについては、
    【ミ】『黄金体験 その2』-初心者用スレッド-【戦】
    ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/netgame/9003/1372600821/880-998
    『フィルシィ・エンパイア』は繁栄する を読もう!(今更感))



 そして一方、左手は無傷でこうして自由に動かせるし、
 こうやって和菓子をつまむくらいなら不便なくこなせるのであるが…………
 まったく僕の言いたいことが涼くんに伝わってねえッ!


「い、いや別に、そういうわけではぁ〜〜〜!
 涼くんの手が汚いとか、そ、そういうことを思っているわけでもなくて……」


 そして涼くんはこの状況、一切気にしてもないことが確定ィ〜〜〜〜〜ッ!


 うぐ〜〜〜〜〜ッ
 となると…………やっぱり単純に僕が意識しすぎ?
 こういうのって涼くんの人柄なら自然なのか?
 あるいは利き手をケガしてる人には善意でみんなこうするもんかな?

 わ、わからない……
 (画面の前の皆さまはいかがお考えでしょうか)



「じゃ、じゃあ…………うう…………」


      チラ (鈴元の手を見る)


    「え、えーっと…………」
 
             チラ (鈴元の顔を見る)


「…………い、いただきます……?」


鈴元の手のなかの若鮎に、そろそろと口を近づける……

958鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/08(土) 02:45:24
>>957

「……ホンマにごめんね。」

久染の右手に視線を向ける。
包帯に巻かれ、右手は本来の姿ではない。

おそらく不便であろう。
利き手がどうとかもあるが、純粋に使えていた手が使えないのは不便なのではなかろうか。
久染がどう思っているかは知らないが、少なくとも鈴元はそう思う。
そしてその怪我の原因を作ったのは自分だとも思う。

「あ、違うんや。やったらエエんやけどぉ。」

相変わらずにこにこ笑っている。
そして気付いていない。
いや、そもそもそういう意識があるのかどうかも怪しい。

手と顔を見る久染が何を言いたいのか、彼にはわからない。
ただただ、その目を見ているだけだ。

「はいはい。おあがりやすぅ。」

やはりじっと久染を見つめるている。
きちんと食べるところを見るつもりのようだ。

959久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/08(土) 03:33:45
>>958

 「…………
  …………」

若鮎に近づけていた顔を止める墨彦。
ゆっくり顔を引き戻すと、右手の甲でコツンと鈴元の頭を軽くはたく。


  「…………も―――、今の話で
   なんでそういう表情になるかな〜〜〜〜〜っ?」


唇を尖らせ半眼になって鈴元をにらむ。
(もちろん目の奥は笑っている)


「さっきも言ったけど、
 僕が勝手にやったことでできたケガなんだから、
 涼くんが謝ることなんて全然ないんだよ。

 それとも涼くんまったく気にしないってのが難しい?
 そういう性格なら仕方ないけど―――」


     「でもお見舞いに来ておいしい和菓子を今からつつこうってときぐらい、
      そういう辛気臭い顔しなくったっていいんじゃない?
      せっかくの自慢のおみやげがもったいないよ――――?」


  オーバーに両手を広げながら、
  おどけた様子で鈴元の自罰思考をつっつく墨彦。



結果、それはすんでのところでアレを回避することにもなったわけだが……
………………
…………
な、なぜ胸の奥で『ちょっと惜しい気持ち』が湧いているのか。
いや……やっぱり和菓子は普通に自分の手で食べるのがいいってことだよ……
きっとそうだよ…………普通に普通に……

960鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/08(土) 04:05:06
>>959

「……すんません。」

鈴元は謝る。彼は久染を癒す力を持たない。
スタンドも和菓子も人柄も、何一つとして久染の治療をする助けにはならない。

「生来こういう性分で……や。ん、むぅ。」

「久染さん。手ぇ使ったらアカンよぉ。」

相変わらず笑っていいるが、上手く言葉が出ない。
それをごまかすためか、左手で久染の右手首を押さえ
細く白い指が久染の手をベッドの近くまで下ろして離れる。

「その、おおきに。優しいんやね、久染さん。」

両手を広げておどける久染に対して
鈴元がかけたのはお辞儀をしての感謝の言葉であった。

「……僕はこういう男やけど、仲良くしたってぇ?」

そう言った後、大きく深呼吸をして―――

「じゃあ、気ぃ取り直そかぁ。久染さんが言うみたいに、辛気臭かったら和菓子もおいしなくなるわぁ。」

座りなおして、明るく目を見て話す。
無理をしている様子は無い。完全に切り替えたようだ。

「ほら、久染さん。僕の若鮎食べたってぇ。」

そう言ってまた若鮎を差し出す。
先ほどと同じように。つまりそれは久染の懸念が戻ってきたということだ。
心なしか先ほどよりも距離が近い。座りなおす際に近づいていたようだ。

961久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/08(土) 14:20:58
>>960

「ヘヘヘ………たたいちゃってゴメンね。
                  .. .. .. . .
 でも困ったことに、こっちも生来こういう性分だからさ。
 考えなしに『手が出ちゃう』っていう………でも知ってたでしょ?
 なあ〜〜〜〜んてね。フフ」


包帯の巻かれた手を指さしながら、鈴元の呟きにイタズラっぽく笑って返す。
そうして鈴元の手が自分の右手に触れるのに任せる。
こんなケガごとき、君が深刻な顔になる必要は1つもないってことだ。


 「ヘヘヘ。
  じゃあこのことについてはもうチャラだね。
  こっからは普通に友達〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ

  …………っと
  言いたいところだけど、
  個人的に今の涼くんにはちょっと『気になるところ』があるんだよね―――」


フッフッフと再びイタズラっぽい笑みを鈴元に向ける墨彦。


  「仲良くなりたいっていうんなら、
   まずその『呼び方』を直してもらわないとね〜〜〜〜〜?」


和菓子を食べるのはそれからってことだよ涼くん。
(決して『あーん』への『覚悟』をキメるための時間稼ぎではない)

962鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/08(土) 21:24:19
>>961

「別にエエよ。」

「でも、怪我した手ぇを使うんは、アカンよぉ。」

「安静にせんとねぇ。」

純粋に体を気遣う言葉だ。
先ほどまでの深刻さは無く、ただただ優しい気持ちがあるだけだ。

「ん?なんで和服着てるん、とか?」

『気になるところ』と言われてそう答える。
確かに和服を普段着にしている人間はあまりいない気もする。
が、久染の言いたいところはそこではない。

「呼び方ぁ?別に今のまんまでも変わらん……
 まぁ、久染さんがそういうんやったら……そうするけど……」

(期待っちゅうか、頼まれた以上嫌って言えんのよなぁ……)

それもまた、彼の性分らしい。
悩んでいるのか何度か首をかしげている。

「久染……は、馴れ馴れしいしぃ。久染君、は変わらんしぃ。
 ……墨彦さん、でエエ?それやったらかまんよねぇ?」

微笑んで墨彦さんと呼んでいいかと、久染に尋ねた。
しかし忘れてはいけない、久染の身に迫っている問題はいまだ解決していないことを。

963久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/08(土) 23:29:37
>>962

「はーい。気をつけます……」

  自分の手を気遣う鈴元の優しさに、
  半分おどけて、半分は素直な気持ちで墨彦は答える。


「ん〜〜〜〜〜〜〜、ヘヘへ。
 墨彦………………『さん』、かあ」 

  個人的にはもっと馴れ馴れしくってもいいんだけど。
  まあ………こういうのは相手なりのペースってのもあるしね。


「うんうん。まー今はそれでよろしい!」


大げさな芝居と身振りでわざとらしく胸を張る墨彦。
そこにあるのは同級生どうし、歳相応のじゃれあいだ。
穏やかな会話と笑い声がふたりだけの病室に満ちていく……

そんなやり取りの隙間に、墨彦はふと窓の外の景色を眺める。
鮮烈な太陽と入道雲―――空はすっかり夏の色。


『エンディングロール』が流れるならきっと『今がBEST』……



   ふたりだけの病室で、楽しげに笑いあう鈴元と墨彦。
   少年たちの確かな友情が芽生えた夏の昼下がり―――

   時に付き添い、時に離れ、時に歩みを違うこともあるだろう。
   けれどこれからもきっと、ふたりの友情の物語は続いていく。

   その物語はいつかどこかで語られることだろう。ここではないどこかで……
   名残惜しいこともあるけれど、今はひととき、舞台の幕をここで降ろそう。


   めでたし めでたし……


      ┌──────────────────────────┐
      │  鈴元涼の黄金町ぶらり旅 ・ 松前お見舞い編  〜 完 〜  │
      └──────────────────────────┘

964鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/09(日) 00:04:34
>>963

「うふふ。おおきに。」

暖かな昼の日差しが病室に差し込む。
太陽に負けぬ輝きを持った二人の笑顔は、これからの未来を暗示するかのように明るい。
これからあらゆる困難が彼らの前に立ちはだかるだろう。
しかし、彼らにとって、鈴元と久染にとってそれは小さな問題であるはずだ。
心に夢を持つ、この二人なら何が相手でも大丈夫なのだ。

      ┌──────────────────────────┐
      │  鈴元涼の黄金町ぶらり旅 ・ 松前お見舞い編  〜完〜    │
      └──────────────────────────┘

「……墨彦さん?」

      ┌──────────────────────────┐
      │  鈴元涼の黄金町ぶらり旅 ・ 友殺桜地獄編   〜始動〜   │
      └──────────────────────────┘

「僕はおあがりやすって言うたよねぇ?」

人生は長い。エンディングロールというものは人生の終わり、走馬灯と共に見るものだ。
つまり、今ここで死ぬのならエンディングロールをじっくり流そう。
しかし死なぬのなら、物語は終わらない。つまり、久染と鈴元の状況は依然変らない。

「うふふ。無理に食べぇとはいわんよぉ?
 でも、食べるっちゅうて食べへんのは、『和菓子に失礼』とちゃう?」

「鈴元家家訓『礼を失するは人間性を失するに似たり』」

鈴元の左手が久染の右脇を通り、服の腰あたりを掴む。
左腕を曲げ、足を動かし久染に接近すると、また鼻先まで若鮎が差し出した。

「墨彦さん?食べるか食べへんか、どっちかなんよぉ?」

「何を迷ってはんの?」

鈴元の顔は優しい微笑みを浮かべている。
そして和菓子を食べるか聞いている。ただ、それだけだ。

965久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/09(日) 01:03:50
>>964

鮮やかな陽光に目を細める墨彦。
スゲー爽やかな気分だぜ……

いま僕は目の前に立ちふさがっていた『強大な試練』を
また1つ乗り越えたような気がする……
………………



     ┌─────────────━━━━━━───────┐
     │  鈴元涼の黄金町ぶらり旅 ・ 友殺桜地獄編    〜始動〜  │
     └─────────────━━━━━━───────┘


            ゴ ゴ  ゴ      ゴ     ゴゴゴ  ゴ ゴ




                  「ハッ!?」



       グィィィイイイイイ イイイ ―――――ッ



          「はうっ!?」


            . . .             . . .. ..
気づいた瞬間にはすでにッ! 強引に腰に手を回されていた!
がっちり『固定』して身動きひとつとれない『ゼロ距離』に迫る鈴元の姿!
さながらラテン・ダンスの『ホールド姿勢』…………ってなんで僕が『女役』なんだよ!!




>「食べるっちゅうて食べへんのは、『和菓子に失礼』とちゃう?」
 

     「は…… はうっ!」


>「鈴元家家訓『礼を失するは人間性を失するに似たり』」


          「はううううううううう!!」



そして動けない墨彦の耳元に、鈴元の『正論』が次々と突き立っていく。
さながら言葉の銃弾……っていうか普通に言葉責めだ!!


    ズイイイイイイイ―――――― ッ



 そして墨彦の鼻先にひたひたと触れる死の刃……じゃなかった若鮎だった。
 だが今の墨彦の目からすれば、その恐怖レベルはもはや血染めのナイフと同等!


   「(い、今の涼くんこわすぎだよ!
    顔は笑ってるけどぜったい目の奥は笑ってないよ――――!!)」



「た、食べます食べます食べます食べます、っけ、けど、その…」


 鈴元の顔が至近距離すぎて真正面から見れず、
 もごもごと口ごもりながら鈴元の目から顔をそむけようとする墨彦。



「な、なんか…………あ、改めて考えてみたら…………
 その、や、やっぱり………………は、恥ずかしくって!」


   この言い方だと一体この状況の何が恥ずかしいのか
   肝心な部分がやっぱり鈴元には理解してもらえない気がするが、
   しかし他にこれ以上どう説明したらいいんだよ!!!!

966鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/09(日) 01:33:34
>>965

鈴元涼は男性だ。女役が似合いそうでも男だ。女役はできない。

「うふふ。墨彦さん?」

気をつけなければもっと接近されそうな雰囲気すらある。
柔らかく優しげな言葉と表情をしているが、見る人にとっては恐ろしいものになるかもしれない。

「墨彦さん。僕から目ぇ離さんといて。僕の目ぇ見て。」

久染と視線を合わせようとする鈴元。
久染がなぜどもっているかはわかっていない。

「なにが恥ずかしいんよぉ。若鮎近づけただけよぉ?」

「……あ。」

何かを察したようだ。

「もしかして、僕に『あーん』ってされてるって思うてはる?」

「うふふ。別にそないなつもりやないんよ。普通に左手で受け取ってくれてよかったのに。」

おめでとう。久染の思いは今この瞬間鈴元に通じた。
心で通じ合い、言葉すらいらぬ関係に一歩近づいたとさえ言える。
心と心で通じ合ったのだ。

ただし、だから危険を回避できた、という訳ではない。

ぎゅっ

鈴元の左手が腰から離れ、久染の左手首を掴もうとする。
距離が足りなくて掴めないなら『ザ・ギャザリング』を出して押さえるだろう(パス精CCC)。

「男同士なんやし、恥ずかしがることあらへんやん?」

鈴元涼は男だ。女性に間違えられたこともあるが、男だ。
女性的な雰囲気をもっているが、男だ。視覚的な情報はどうであれ、男だ。

「ほら、『あーん』。」

キジも鳴かねば撃たれまい。
楽しそうに笑う鈴元の若鮎が久染の口に差し出される。

967久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/09(日) 02:28:26
>>966

「う…………ううッ!?」


 『僕の目を見て』
 その鈴元の眩惑の言葉になぜか抵抗の力を失う墨彦………
 顔を背けきることができず、鈴元と目があう。


  「(い……今のは一体? なんだ? この涼くんから立ちのぼる
    形容しがたい『妖しい雰囲気』はあ〜〜〜〜〜〜〜ッ)」


       人生経験の浅い墨彦は知るよしもないが、
       それこそが鈴元に生まれ持って備わった1つの才能……
       『色気』とかいうヤツだろう。
       よくわからんが、たぶんそうだろう。


  そうして鈴元の妖気にあてられ
  自由な身動きをとれないでいると………


>「もしかして、僕に『あーん』ってされてるって思うてはる?」
>「うふふ。別にそないなつもりやないんよ。普通に左手で受け取ってくれてよかったのに。」



  「( な に ィィィィィィ ―――――――― ッ !? )」


今明かされる衝撃の真実!
………なんという叙述トリック!


   「(じゃああのまま左手でフツーに
     受け取ってればよかったのかァ――――――ッ!)」



 ………ていうかこれって僕が単純に意識しすぎて
 自爆したってことじゃないか!バカバカ!このマンガ脳!


 そうやって自分の短慮をなじりつけても後の祭り。
 唯一無事な左手首を鈴元に掴まれ、
 さらに『ギャザリング』が墨彦の身体を押られる。


            「ギャ、ギャー!?」


唯一正解に辿りつけたはずの左手も今は封じられ、
死神の鎌が眼前まで迫り来るのを黙って見ているだけのこの状況……



 「む、むぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」


          ブン ブン


  しかしそれでもできることはある。
  口を真一文字に結んでブンブン首を振り、若鮎の侵入をかたくなに拒む。
  そう簡単にやらせるか! 墨彦にとって大事な初めての『あーん』だぞ!

  それをこんな……なかば無理矢理に失ってたまるか!

968鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/09(日) 02:51:43
>>967

鈴元の持つ謎の雰囲気により、久染は拘束されてしまった。
もはや久染の膝の上に乗りそうな距離の鈴元は、自分の側に立つ『ザ・ギャザリング』に目をやる。

「スタンドの便利使いはあんまりしたないんやけどぉ。
 墨彦さん多分スタンド使って隠れとったし、おあいこやね。」

スタンドを使ったという部分が同じでも
スタンドを拘束に使うか隠れるのに使うかでは意見が分かれそうなものである。
が、鈴元はこの点については黙殺している。

「好き嫌いはアカンよぉ。」

『ギャザリング』に左手の拘束の役目を変わってもらう。
人並みの力を持つ『ギャザリング』だ。そう易々と離しはしない。
そしてその空いた左手で、久染の鼻をつまみにかかる。

真一文字に閉めた口では口呼吸は出来ない。
そんな人間の鼻呼吸を封じたらどうなるだろうか。
苦しいだろう。

「ほら。墨彦さん。」

若鮎が久染へと迫る。ゆっくりとしかし確実に。
が、突然鈴元の動きが止まる。

「もしかして墨彦さん。僕にこうされるん、嫌やった?」
 嫌やったら、言ってくれてかまんよ。その、止めるから。」

「そら嫌やんね。友達言うても男同士やもん。女の子にしてもろたほうが、嬉しいよねぇ。」

相変わらず拘束はしているが、無理やり口に放り込もうとはしない。
あくまで本人の意思を尊重するつもりらしい。

「エエ経験かなって思うたんやけどぉ。度が過ぎたみたいやね。」

黒髪を少し揺らし、申し訳なさそうにそう言った。
相変わらず妖しげな雰囲気をまといながら。

969久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/09(日) 11:33:36
>>968

  「(こ、これでおあいこだとォ!?)」


            グムムムム ―――――― ッ  ブン ブンッ


       「ふがぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」


  鈴元の黙殺部分に厳重抗議をいれようとしたまさにその瞬間、
  『ギャザリング』とスイッチした鈴元の左手にグィィと鼻を抓まれる。
  

           「フガ !?」 
 

 一瞬自分の身になにが起こったのか分からず目をパチクリさせる墨彦。
 だが自身の呼吸がみるみる苦しくなっていくのを感じると、
 微笑みの裏に隠された鈴元のクレバーかつしたたかな狙いを悟る……


                「ウググ……!?」


   「(…………い、いやいやいや!
     いくらなんでも『手口』が慣れすぎてないか涼くんッ!
      これ『常習犯』の動きッ!)」


 底の見えない鈴元の人間性に背筋がブルつく墨彦。
 いっそ無駄な抵抗はやめて、
 おとなしく鈴元の若鮎(寓意)を受け入れてしまおうかと思ったそのとき――

 口元に迫る彼の指先がピタリと停止した。
 そしてそれにつづくのは、申し訳なさそうな鈴元の謝罪の声……


      「…………
       (りょ、涼くん……)」


  僕は彼のことを、ひどく誤解していた――――の、だろうか。
  これは彼なりの『友好表現』の1つ、
  彼にとって友達との『じゃれあい』の延長線上に過ぎなかったのか。

  だとしたら…………僕はそれを、
  しょうもない勘違いから本気で抵抗してしまって…………


    「……………
     ち、違うんだ、涼くん。
     嫌いとかそんなんじゃあなくって、
     ただちょっと僕が勝手にビックリしちゃって…………」


 「だけど、こんな風に口を閉じるのは失礼だったよね……
  君にも、そして君が選んでくれた和菓子にも……」


  目を閉じ、墨彦もまた謝罪の言葉を口にする。
  そして左手を差し出し、鈴元の若鮎を受け取ろうとする。

  誤解からくる多少のドタバタはあったけれど、
  これでなんとか元の鞘。二人の友情は一件落着か―――

970鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/09(日) 15:52:52
>>969

「エエんよぉ。別に。」

鈴元は友達がいない。
彼にとって友達と胸を張って言える人間は片手で足りるほどの人数しかいない。
そんな数少ない友達である久染と鈴元はいるのだ。
同年代の同性の友達といるのだ。
じゃれあったりしている内に白熱してしまってもしょうがないのかもしれない。

「あ、墨彦さん。連絡先教えてもろてエエ?」

だから鈴元は久染の拘束を解く。
所詮は遊び、じゃれあいだ。
無理強いするつもりもない。

「あ、そうそう。今度店でも家でも遊びに来てなぁ。」

「歓迎するわぁ。」

そう言って鈴元は若鮎を久染に手渡そうとした。
そう、渡そうとしたのだ。
クロスカウンターのように鈴元の右腕は久染の左腕を横切り
まっすぐに気の抜けた久染の口めがけ、若鮎を向かわせる。

「墨彦さんって、和菓子やったら何好き?」

『ギャザリング』で『目を奪う』必要は無い。
ほんの少しの油断、鈴元家の人間はそれだけあればイタズラが出来る。
それは鈴元涼にとっても例外ではない。

「なんでも用意するわぁ。」

(これでアカンかったら、イタズラ失敗やねぇ。)

一件落着?するだろう。
全てが終われば、一件落着だ。
しかしこの一件、いまだ終わってはいない。

971久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/09(日) 22:30:02

 墨彦の謝罪を受けいれる鈴元の顔は―――

 はじめて出会ったあの日と同じように、
 どこまでも穏やかで涼しげな表情だった……(と墨彦は思った)。


        パッ


 鈴元が拘束を解き、四肢の自由が戻ってくる。
 やっぱり…………。
 墨彦はうんうんと納得顔でうなづく。
 ほんのちょっとの『ボタンの掛け違い』だったんだなあ……。


 こんな優しい涼くんが、
 僕を動けないようにしてからムリヤリ口に『若鮎』をブチ込んでくるなんて、
 いくらなんでもそんなバカなことがあるわけないじゃないか……。


     「え…………ヘヘヘ。えっと……連絡先?
      それはもちろん、いいけど…………」



  『なぜにこのタイミングで?』と少々疑問に思わないでもなかったが、
  これまでの誤解の反動もあって、なんでも素直に答えようと墨彦は口を開く。
  だが次の瞬間、墨彦の視界に飛びこんできたものは―――




          「えっ」



                 バッ シュオ ―――――z______ ッ !




  風を切って眼前に迫る『右』! その『若鮎』ッ!
  差し出した左手をすり抜けてガラ空きの口内を狙う『クロスカウンター』ッ!


  
        「バ…………バカなッ!」



  墨彦がそのときビビリ上がったのはその軌道じゃあなく!
   . .. . .. . . . . . . . ..
   なんでもない日常会話が囮だったという事実ッ!

  (そして涼くんは今もなお平然と日常会話を続行している―――クレイジーすぎるッ!)



    だが息を呑む時間さえ今の墨彦にはないッ!



       「(後手をとらされた僕に回避以外に選択肢はない―――
         だが右手の『延長線上』、『伸長方向』に逃げるのはダメだ!)」


     右腕の可動域の『内側』――――『生存圏』があるとすればきっとそこッ!
     『口内に入りさえしなければいい』のなら……!


 「(避けるんだ、久染墨彦ッ!
   君ならできるッ! やれッ! やってやれえええええええええ――――――)」



     コンマ数秒! ほんの数センチ! 墨彦は身体をひねるッ!
     回避方向は『鈴元の左半身側』!
  

  間に合うか――――――――――――!?

972久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/09(日) 22:33:16
>>971 (自レス安価抜け)
>>970

973鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/09(日) 23:34:25
>>971-972

「まだ暑いし水羊羹とか、おいしいんよぉ。」

顔色1つ変えず、笑顔で行動を実行する鈴元。
凄腕の暗殺者の動きに無駄は無い。
そしてこの和菓子屋の次男坊の動きにも無駄は無い。
無駄を省いたその動きは鋭く、久染の口を狙う。

久染は鈴元の腕の内側、『生存圏』を求めて動く。
咄嗟の判断、そして咄嗟の動きであったが―――

―――間に合った。

見事に体は鈴元の左半身側にひねられた。
鈴元はなにもしない。
回避は成功し、鈴元の腕は空を切る……はずであった。

>>970メ欄 和服を花びら化

『ギャザリング』は和服の花びらを久染に向かって舞わせる。
息を呑む時間さえ無かった久染。
しかしそんな彼が息を呑む美しさの桜を見るとどうなるか。
答えは『目を奪われる』。鈴元の『ギャザリング』の花びらは『心も奪い』スタンドの操作すら禁じる。
たった一秒の停止だが成功すれば、確実な拘束を行える。

「あーん。」

左手を久染の顔に添えよう。添えるだけの左手ではあるが、それ以上の軌道を禁ずる。
そして後は『あーん』と口を開けて、鏡写しのように空いた久染の口に若鮎を放り込むだけだ。

「うふふ。墨彦さん。」

974久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/10(月) 00:49:23
>>973

       シバァァ ァ ――――


墨彦が感じたのは、頬の横を通り抜ける風。
まさか、まさかって感じだけど、まさかホントに避けきれるとは―――ッ!


    「フ、フフフ!」

             「や、やっ……」


しかし幸福と勝利の笑い声をあげることは
墨彦には許されていなかった。



   「(……………あ、あれ?)」



          「(うご…………けない?)」




    フ  ワ   ア ア ア ア ア    ア      ア





       「(これ……は……
         あのとき……見たのと同じ………
         りょ、涼くんの…………『桜』……


         と、ということは、ま、まさか……
         い、今の僕って、もしかして…………こ、『心を』…………)」



          ピ  タ ァ


   「ひィっ………!」


鈴元の左手が頬に触れると、情けない吐息が反射的に漏れる。
鈴元のうふふ、という妖しげな笑いが耳元をくすぐると、
今まで感じたことのないような種類のゾクゾクとした震えを背筋に覚える。


    「(な、なに? この涼くんの雰囲気は……?)」


しかし顔を背けることも、瞳を閉じることもできない……
今や墨彦の心は『桜』の中だ。


      あーん。


 そして自分の意思とは無関係に、鏡写しに開く口元………
 これ以上ないほど隙だらけな自分の顔貌に、墨彦は羞恥で泣きそうだ!


  「(う、うう、う……
   母さん、父さん、ごめんよ……)」


 墨彦はそっと目を閉じる。

 …………………………
 ………………

 優しくしてね…………。

975鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/10(月) 01:09:42
>>974

「うふふ。エエ子エエ子。」

鈴元涼は優しい人間だ。
生まれてこの方他人を罠にかけたことも手を上げたこともない。
虫を殺さず花を手折らず生きてきた人間だ。

「墨彦さん。なんで目ぇ閉じはんのぉ?」

ほんのちょっぴりイジワルな部分もあるかもしれない。
しかしそれは優しい彼のほんの少しの遊び心なのだ。
だから、心配しなくていい。

「はい。おあがりやすぅ。」

もう今日何度言ったか分からない言葉が発され、
無事若鮎は久染の口に差し込まれた。

「墨彦さんは甘えん坊さんやねぇ。」

「うふふ。冗談冗談。」

優しく微笑む鈴元であった。
右手を伸ばし次の若鮎を久染の口に放り込む準備―――を途中でやめ
懐からスマホを取り出した。

すこしぎこちなく操作し、画面を久染に向ける。

「これ僕の連絡先、登録してもらえる?」

どうやらただ囮として話していたのではないらしい。
スマホの画面には携帯電話の番号とメールアドレスが表示されている。

976久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/10(月) 01:31:55
>>975

何かしらの『覚悟』をキメて固く瞳を結んだ墨彦の口の中に、
優しくねじ込まれる鈴元の若鮎。

その瞬間、病室脇に飾ってあった『百合』の花弁がポトリ……と落ちた(メタファー)。



やがて『桜』の時間も終わり、
拘束が解除された墨彦は、
しかしまだ半ば心ここにあらずといった表情で
モムモムと反射生理的に口を動かす…………すると。



  「………………
   ………………
   ………………お、おいしい……」



そう――――
『初めては誰でも怖いもの』だが、
一度体験してみたら意外とこれぐらいなんてことのないもの。

今回の鈴元との交流は、墨彦にとって
そのような非常に『寓意』に満ちた体験となった。



 「…………モムモム。
  あ――――連絡先。
  そういえばそんなことを言っていたような……」


 墨彦も慌ててベッド脇の収納テーブルからスマホを取り出し、
 スイスイ操作する。


 「えーっと……涼くん、と。よし、登録完了。
  じゃあ、僕のも一応教えとくね…………」

 そういってスマホの画面を見せ返す墨彦。



 なんだかんだ果てしない紆余曲折があったものの、
 二人の友情は今度こそ一件落着―――と言ったところだろうか。

977鈴元 涼『ザ・ギャザリング』:2015/08/10(月) 01:45:51
>>976

「うん。ウチの和菓子は美味しいんよぉ。」

嬉しそうに照れる。
彼にとって和菓子を褒められることはそういうことなのだ。
無論、彼が作った和菓子ではないのだが。

「はい。墨彦さんやね。」

久染の連絡先をスマホに登録する鈴元。
やはりどこかぎこちない。
が、無事に登録が完了したらしい。

「さてとぉ。次はどれに……って言いたいんやけどぉ。」

「飲みモン持ってくるん忘れてたわぁ。」

そう言えば鈴元の風呂敷の中に飲み物は存在していなった。
ドラゴンフルーツの果汁だけでは心もとないだろう。

「買いにいってくるわ。あ、好きに食べといてくれてエエよぉ。」

出口へと向かう鈴元。
……なぜか扉が少し開いている。
閉め忘れだろうか。

(や、でも、開けたら閉めるはきっちりしたはず。)

少し疑問に思いながら扉を開ける。

         キャイキャイ    
                          キャイキャイ

パタパタと忙しげな足音が聞こえた。
しかし足音は遠ざかっていく。
足音と共に発せられる声は婦女子のものらしい。

(のぞき……?や、まさか。なにが楽しいんよぉ。)

「じゃあ、待っといてねぇ。」

さて、飲み物を買いに行こう。

978久染 墨彦『インク・フィッシュ』:2015/08/10(月) 02:14:22
>>977

「なんかフワッフワでモチモチしてて、
 中の求肥もプルプルしてておいしいよ――――!」


 食べるまでにかかった紆余曲折のおかげで、
 初めて口にしたときの感動も大きく膨らんだのだろう。

 ボキャブラリーの貧相さを感じさせる擬音だらけの感想だが、
 それでもその味にひどく感激していることだけは伝わるハズだ。

 この日食べた若鮎は墨彦にとって
 生涯お気に入りの和菓子の1つになった。



「あ、えーっと……」


 飲み物を買うために立ち上がった鈴元を見て、
 一緒についていこうかと思ったが、
 ついさっき病室のベッドに腰掛ける際に
 『病人は病人らしく』……と意識させられたばっかりだ。

 ここは黙ってお見舞い人の厚意に甘えさせてもらおう。


「じゃあ、お願いしていいかな…………いってらっしゃーい」


 ふたつめの若鮎をモムモム食みながら、鈴元の背中を見送る。
 なにやら鈴元とは別の遠ざかる足音が聴こえた気もするが……
 あれ? 看護師さんの検診……は何時からだったっけ?

 …………まあいいか。



 窓の外は入道雲、そして鮮烈な夏の日差し。
 ほんの数時間前までは病院の外の景色が恋しくてしょうがなかったけれど……

 膝の上で鮮やかな桜色を見せる葛饅頭を眺めながら、
 案外入院生活も悪くないかな、と思う墨彦なのだった。

979烙『クライムウェイヴ』:2015/09/10(木) 21:37:18
忘れていたが『退院』だ。

980ハイジ『クールボーン・スウィング・トループ』:2015/09/14(月) 00:06:24
オレも忘れていたが『退院』だぜ。

981ようこそ、名無しの世界へ…:2015/09/14(月) 00:10:42
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