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【ファンキル】SSスレPart3

896兵器になれない彼女たち:2022/01/24(月) 23:35:10
(あれは……カリス?)

 その一団の一人はソロモンがこの任務に着く前にハルモニアで共に過ごしていた斬ル姫だった。スキップ気味に進むカリスの隣には彼女のオートアバターであるキプルの姿もある。
 他のメンバーは一房だけ紫色が混じる浅葱髪の小柄な斬ル姫にそのオートアバターらしき紫の馬。その後ろに薄灰色の長い髪をした赤い目の斬ル姫。見たところ彼女が一番強そうだった。その手にはドラゴンを小さくしたようなオートアバターが物のように乱雑に握られている。

『あ! ティルヘルムとの国境が見えてきたよ!』
『そういや国境じゃなくてティルヘルムの監視をしてるって言ってたな……ソロモンの他にもハルモニア兵がいるんじゃねえか?』

 彼らの目的はどうやら自分らしい。カリスを脅すか何かして案内に使っているに違いない。許せない。
 ソロモンの胸に義憤の炎が燃える。

『……レヴァ、何か気になんのか?』
『……何でもない。それより、あの小屋』
『きっとあそこだよ! ソロモン、元気にしてるかなっ?』

 とうとう自分の拠点まで辿り着いてしまった。

(行くしかない)

 ソロモンはランスを構え、ついに彼らに接触する決意を固める。

「君達、その場で止まって」

 それが、運命が大きく変わる瞬間だとも知らずに。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「いっちばーん!」
「負けました」

 とんでもない量の土煙を上げながら砂漠を爆進する二つの影が同時に停止した。土煙の中から二人の斬ル姫の姿が現れた。
 アイムールと妹のヤグルシである。

「久しぶりにやると楽しいね! 追いかけっこ!」

 満面の笑みではしゃぐヤグルシと対照的にアイムールは周囲を冷静に観察していた。砂で隠れてはいるが地肌が黒い岩のような岩盤で覆われている。地上に露出したマグマが冷えて固まった跡だった。

「私が戦闘を行った爪痕ですね」

 ここはトレイセーマ軍が陣を張っていた場所だった。数日前にアイムールが突撃して壊滅させた。地形ごと爆破してしまったので当時の面影はない。
 あの戦闘がなければシストルムと行動することもなかった。

「おねーちゃんはさ。ようはいいことがしたいんでしょ?」

 思い出を振り返っていたがヤグルシの声で現実に引き戻される。

「いいこと?」
「まあ言い方はなんだっていいや。自分のせいで不幸になった、本来だったらおねーちゃんの敵にならずにすんだイミテーションたちのために何かしたいんでしょ」
「そうかもしれませんね」

 奪いばかりではなく他の事だってできるはず。とシストルムは言っていた。
 自分のせいで飢え、自分によって狩られた多くの村の住民たち。彼らのために自分にまだできることがあるかもしれない。

「うん! だからここに来たんだよ!」
「……ここで何ができるのですか?」
「おねーちゃんの話だと。ここは元々荒野のオアシスでトレイセーマ軍が湖の水を補給するために陣を敷いていたんだよね?」
「シストルムはそう言っていました」
「ならやってみる価値はあるね」

 頷くとヤグルシは戦斧を担ぎあげた。

「……地形解析完了。フィールドを掌握。バエルとのD. plug信号適正値へ移行」

 先ほどまでとは打って変わって冷たい声色で淡々と事実のみを述べていく。ヤグルシの瞳の奥で小さな光点がチカチカと瞬いた。

897兵器になれない彼女たち:2022/01/24(月) 23:36:02
 その頬が、望ましい数値を叩き出せた研究者のように喜びで吊り上がる。
 ヤグルシの体から闇色のマナが噴き出し、それを衣のように纏う。

「自己強化完了、自陣にフィールドを展開。さあおねーちゃん! ヤグが導いてあげる!」

 そして戦斧を思い切り大地に叩きつけた。

 ビキ、ビキビキバキゴリバキ―――――!

 鈍い破砕音が大地の中で連続して、最後にバン! という炸裂音と共に地面からシャワーのように水が噴出した。

「やっぱり出口が塞がっただけで水脈は生きてた! さあ、おねーちゃん! この土地を全力で焼け野原にしちゃってよ! できるだけ広範囲でね!」
「え? はい。制限を解除――――稼働率を100パーセントまで引き上げます」

 その瞬間。
 地上に太陽が顕現したかのような灼熱が一帯を襲った。
 さらに火炎が溢れ濁流が如く地面を飲み込んでいく。
 それは上空から見ると花が咲く様を思わせた。アイムールを中心に炎で形作られた鮮やかな花弁が広がっていく。
 火災旋風を伴いながら空間そのものに拡散していく熱量は水源から噴き上がる大量の水分を水蒸気爆発と共に蒸発させていく。
 さらに地面が溶けるほどの暑熱はアイムールを中心とした低気圧を、強烈な上昇気流を発生させ全てのものを空へ舞い上げた。

「うん。そろそろ全部飛んだかなー。もういいよーやめて」
「わかりました」

 ブツン、とスイッチを切るようにアイムールは熱の放出を止める。しかし空は上昇気流と舞い上げた砂や灰で暗い雲ができていた。

「あの、これで何ができるのですか?」
「まあ見てて」

 すっ、と暗い空へ手をかざすヤグルシ。その手にポツリと水の雫が落ちた。
 雫はさらに勢いを増していく。見ると雲はアイムールが炎を広げた範囲以上に広がっているようでこの土地一帯に達しているかに見えた。

「……雨?」
「そう。言葉にするなら人工降雨とかになるのかなー」

 ヤグルシが解説する。
 広範囲の地面と空気が強く熱せられると上昇気流が発生し、空へ巻き上げられた水分は砂や粉塵と凝結しあい雲ができる。そこに大量の水分が含まれていれば雨となって地上に落ちてくることもあるだろう。

「地下水源の水をチマチマ汲んで撒くのも涙ぐましくて素敵だけど。雨にして一気に降らした方が手っ取り早いし効率的だよね」

 ヤグルシが地下水脈を刺激し地上に噴出させる。そこへアイムールが空気と大地を加熱して人工的に雲を作った。その中に一気に蒸発したオアシスの水分が溶け込んで雨が降ったのだ。

「うふふ。これがバエルの力。知恵の領域」

 ヤグルシが得意げに笑う。

「これを定期的にやれば、きっとここにも緑が戻ってくるよ」
「そう、ですか」

 モートはウガリット神話においてバアルの存在なしに語れない存在だ。
 彼らは常に戦いを続けており、豊穣神であるバアルがモートに敗れると自然世界からは一切の恵みが消え去り、逆にバアルがモートに勝利すると地上には雨が降り作物は実り豊穣が約束されるという。またどちらが死んでも必ず生き返り戦いは続く。
 その戦いは雨季と乾季を象徴しているともいわれている。

「ヤグルシ」
「なあに?」

 アイムールのキラーズの持ち主はバアル。・D. plugされたのはモート。
 命を奪う冥界の力。命を与え育む豊穣の力。
 彼女はどちらの力も持ち合わせ、きっと力の使いようでどちらにでもなれるのだろう。

「私はもうしばらくここにいることにします」
「いいよ。おねーちゃんが望むなら。ヤグは本国でいつまでも待ってるからさ。気が済んだら帰ってきてね」
「感謝します」

 アイムールは濡れた大地に腰を下ろした。湿った砂に体が沈む。

「そういえば……お腹が空きました」

 食べられるという赤い花のことを思い出しながら。雨音に耳を傾けて。
 そっと瞼を閉じた。


『END』

898兵器になれない彼女たち:2022/01/24(月) 23:39:38
SSというにはとてつもなく長いですが楽しんでいただけると嬉しいです。
こちらは何年も前に書いたやつを手直しした長編となります。書いた当時はモラベガが実装された辺りでした。

899名無しさん:2022/05/15(日) 03:49:00
ここ久々に来たけど廃れに廃れてるな〜

900名無しさん:2022/05/15(日) 03:50:14
まあ気に入らないのは排除しようとしてたやつ居るし読む側が偉いとか言う頭ネジぶっとんでる理論がまかり通ってたしまとめ記事でも追い出す流れあったしSSスレの初期から居た人に盛り上げてくれてた人も引/退してるし公式からの供給なんて人気キャラか新キャラぐらいでSSを書く気力とかあっても推しの情報がチョロチョロしかないなら書くにも限界はあるしで廃れるのはほぼほぼ必然だったな

901やす、:2022/07/04(月) 12:33:51
ロスラグアルマス×まどか☆マギカのssです!

良かったら読んでください


https://syosetu.org/novel/234368/183.html

902名無しさん:2022/07/04(月) 21:00:10
なぜさやかちゃんとアルマスを・・

903やす、:2022/07/04(月) 22:29:52
髪色が同じなのでつい、、、

904やす、:2023/01/19(木) 18:11:13
エルキュール×シンフォギアのSSです!至らぬ文ですが良かったら読んで下さい。https://syosetu.org/novel/234368/193.html

905やす、:2023/04/28(金) 20:31:24
キル姫達とマスターとのイチャラブを書いたSSです。

良かったら読んで下さい

https://syosetu.org/novel/312704/


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