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原則学・痕跡学・運気学・帰霊学・ロリコン研究で真実解明

791メシア・エステバン:2016/03/18(金) 03:45:02
阿関は少し不安そうな声を出しながら録之助に問いかけた。
ええまあ。あっしも仕事と割り切れるようになったんで構いやしませんが。
ぶっきらぼうに返事する録之助だが、内心はわざわざ会いにきてくれただけでなく、これからも会ってほしいと嘆願する
阿関の自分への態度がうれしかった。

女房子供に逃げられてこんなに落ちぶれてはいる自分に対して阿関の変わらぬやさしさが身に染みた。
自暴自棄になっていた時、この場所で阿関に会い励まされながらなんとか立ち直るきっかけができた。
あれから二度と会えないものだと覚悟していたが、阿関の方からこんな自分に会いに来てくれるだけで、
録之助の心に生きる力がみなぎってきた。

あらまぁ坂も一気にお登りなさるとは、阿関は感心したように録之助のたくましい仕事ぶりをほめちぎった。
録之助は息を切らしているのを悟られまいと、ちょっとカッコイイ自分を見せられて満足げであった。
お客さん着きました。呼吸をようやく整えて録之助は人力車を止めると、阿関の手を取り大事そうに降ろした。
あらありがとう。これお駄賃ね。はた目から見れば車夫とお客さんの普通の会話のように見えたが。

阿関と録之助が一瞬握った手の感触には言葉にできない懐かしい思ひ出が甦っていた。
阿関も録之助も手に残る懐かしい感触の余韻に浸りながら互いに別々の方向へ去っていった。

阿関と録之助が再開を果たして数ヶ月経った。あれから幾度も神田岩本町から御茶ノ水の送り迎えで
会っては、昔話、最近の話、子供太郎の話、夫原田勇の愚痴と、だんだんと阿関の話す内容が濃くなってきた。
あいも変わらず録之助は聞き手に回るばかりではあったが、阿関の話をいろいろ聞くだけで人力車を引く力がみなぎっていった。

ある日の事。毎夜夜遅くに帰宅する原田勇の帰宅を玄関先で迎える阿関。
原田勇は玄関の扉を閉めるやいなや、阿関に静かな口調でこう切り出した。
高坂録之助。とかいう車夫。おまえの幼なじみだそうじゃないか。


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