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Kinecty

1名無しAKB:2011/01/10(月) 13:54:57
松井JRです。

2名無しAKB:2011/01/10(月) 13:55:35
引っ込み思案のはにかみ屋で泣き虫屋。
通知表にはよく、もっと積極的に行動しましょう、って書かれていた。
そんな自分を少しでも変えたい。そう思って私は。

アイドルへの、オーディションに。

3名無しAKB:2011/01/10(月) 13:56:08
☆☆☆

キネクトでのお仕事が終わったのは、計ったように夜9時ちょっと前。
スタッフさん達にお疲れ様でしたの挨拶をした私達は着替えのために
更衣室へと向かう。ブラウスのボタンを2個まで外したところで視線を
感いてそちらを見ると、まだ胸のリボンさえ外していない珠理奈が
私を、私の顔を見ていた。
「どうしたの?」
「玲奈ちゃん」と、真剣な顔。
「んっ?」
「今日この後さ、聞いて欲しいことああるんだけど、つきあってくれる?」
お仕事の後だというのに、珠理奈の顔に笑みはなくて、私もつい真剣に。
「勿論、いいよ」
そう言うとにこーっと、いつもの珠理奈になったのだけれども。

4名無しAKB:2011/01/10(月) 13:57:47
着替えてお化粧も直して明日のお仕事内容も確認して最終的に
スタジオを出たのは9時半過ぎ。未成年の私達は当然喫茶店へ。
こんな時間でも喫茶店でもまだちらほらと人がいて、私達は
すみっこの目立たなさそうな席に決めた。
「コーヒーでいい?」
お姉さんの私がおごってあげる気持ちで言うけど。
「珠理奈が行ってくる!玲奈ちゃんコーヒー?」
すっくと席を立つ行動力に私はつい引っ込んでしまう。
「あ、じゃあカフェオレをお願い…」
珠理奈がおっとなだーと呟いてカウンターへ小走りに向かう。
大人…かなあ、私?

5名無しAKB:2011/01/10(月) 13:58:18
大人かも、とトレイの上のカフェオレとオレンジジュースを見て思う。
コーヒー飲んだら眠れなくなりそうと珠理奈が小さく笑った。
そこからはSKEのことやAKBさん、NMBちゃん達の話からテレビの
ことラジオのこと、仕事に関係ないことまで話した。
相談事は珠理奈が話したくなるまで、こちらから催促するのは
やめておこうと思ったけれどももうすぐ閉店の音楽が流れて時間も
そろそろ11時。珠理奈の顔から視線を一度、自分の爪に落としてから
また顔を上げて聞いた。
「ねぇ珠理奈、聞いて欲しいことがあるんだよね?」
ちょっとの沈黙の後で。
「玲奈ちゃん」
予想外の答えが来た。
「今日玲奈ちゃん家にお泊りしたい」

6名無しAKB:2011/01/10(月) 13:58:50
☆☆☆

「玲奈ちゃん、ポテチ買おう!」
親御さんのご心配とかワンルームで狭いとかお泊りスペースが無いとか
多少は反撃してみたけど珠理奈がひるむ訳もなく、もう私の家の
最寄りのコンビニに居たりする。
「ダメ」
「えーっ」と唇を尖らせる珠理奈。歯ブラシ買うだけのはずでしょ。
って言うかもう12時も近いんだから。
「夜更かしはお肌の敵!夜中のお菓子なんて以ての外」
「えー。明日だって日曜じゃん」
「私達はお仕事でしょ!」
しょんぼりされて、ひるむ。
「じゃあ朝ごはん買う」
「トーストとお紅茶ならあるよ」
「珠理奈がお泊りに来るのに、そんだけ?」
またひるむ。珠理奈の淋しい顔。これには、勝てない。
「じゃあハムエッグ作ったげる」
ころっと「わーい」なんて言っちゃう珠理奈にふぅと息なんかつきながらも、
久々の自分だけじゃないご飯の用意がなんとなく嬉しかった。

7名無しAKB:2011/01/10(月) 13:59:20
☆☆☆

おじゃましますの声もそぞろに家に上がる珠理奈。わーきれーって声が
聞こえてきて普段からそこそこ片付けておいて良かったと思う。
「玲奈ちゃんキャラの通りの部屋だね。清楚ーって」
「清楚ってか、地味なんで私」
「地味ってか、お姉さーんって感じ」
そう言いながらベッド脇のぬいぐるみをぽこぽこ叩いてる珠理奈。
本当に?
冷蔵庫からお茶を取り出し、ふたつのマグカップにあけて持って行く。
「あ、玲奈ちゃんごめんねー」
立ち上がろうとしかける球理奈をふるふる首を振って制する。
「お客様は座ってて」
ぱーっと花のような笑顔で自分を指差し「お客様?」と珠理奈。
「うん」
「お客様?」
「そうそう」
「お客様!?」
「しつこい」

8名無しAKB:2011/01/10(月) 14:00:27
☆☆☆

ユニットバスに一緒に入りましょうってお誘いは丁重に断った。
珠理奈が入ってる間、私が入ってる間、つまり一人の間。考えても
しょうがないけれどずっと考えてしまっていた。
ベッドがひとつしかないこと。

9名無しAKB:2011/01/10(月) 14:01:02
☆☆☆

「ま、こうなるよね」
シングルベッドの上に狭く並ぶ私と珠理奈。
「うへへー」
「ギュってしないギュってしない」
「だって落ちちゃうもーん」
もう、なんて思いながらも、嬉しそうな声を、私も悪く思わない。
真っ暗の中でぽつぽつと話しながら、ふと降りる沈黙の中で、珠理奈の
純粋な甘えが、好意が嬉しくなる。
SKEに入る前の、珠里奈達と出会う前の私は、私個人が求められる
ことなんて全然なくて、それは高校生だったからなんて訳じゃないと思う。

10名無しAKB:2011/01/10(月) 14:02:41
電気製品のあまりない私の部屋は、灯りを消すと本当に真っ暗になる。
その中で話していると言葉を紡ぎ出すという作業がひとつ省かれるように、
心から直接言葉が発せられている会話のように感じられる。
私から珠理奈への、珠理奈から私への心がより近くなっていく感覚。
だから解ってしまう。
解ってしまった。
急に珠理奈が泊まりに来たいと言い出したこと。断るための言い訳を
すべて潜り抜けてきたこと。
顔を天井から左向きにすると、暗闇に慣れた私の瞳が珠理奈の瞳を
見つけ出す。ここにあるだろうと思う場所に私が左手を伸ばすと、そこに
珠理奈の右手が見つかる。きゅっと握ると握る返してくる。

11名無しAKB:2011/01/10(月) 14:03:31
「玲奈ちゃん。今日はありがとうね」
「うん」
「玲奈ちゃん大人だし」
「そうでもないよ」
「いつも一人が好きって言うから」
「うん」
瞳が潤んでるよ。
「今日のお仕事中、急になんか絶対一緒に居てやる!って思って」
「うん」
伝わってるよ。
「迷惑じゃなかった?」
「うん」
「本当に?」
「うん」
「珠理奈が今日泊まりに来たの嬉しかった?」
「うん」
「玲奈ちゃん、あのね」
「うん?」

12名無しAKB:2011/01/10(月) 14:07:35
「ちゅーしたくなっちゃった」
「来ると思った」
「ほんと!?」
「ダメ」
「ほっぺでも我慢するけど」
「ダメ」
「ちゅ、ってすぐ終わるんだけど」
「ダメ」
「痛くないんだけど」
私は沈黙を作る。そして。
「珠理奈」
「なに?」
年上の反撃。くらえ。
「おねしょしちゃダメだからね」
「しないもん!もうしてないもん!」
予想外だったのか慌て過ぎる珠理奈に笑いが零れてくる。
明日の朝ごはんを私が作るのも、それを珠里奈が待ってるのも、
そして一緒に食べるのも。
楽しみなのにまるで今夜は時が止まって動かない気さえしてしまう。

13名無しAKB:2011/01/10(月) 14:08:10
☆☆☆

ずっと前の私へ。少し前の私へ。私が手に入れたものは
私にこんな強さをくれて、そして今、私はあの頃より自分が、
ずっとずっと好きです。

14名無しAKB:2011/01/10(月) 14:09:54
おわり。


参考文献:ショージキ将棋の珠理奈vs玲奈の回

15名無しAKB:2011/01/10(月) 18:28:06
素敵な話でした。
二人のやり取りがイメージ通りでめちゃくちゃかわいかったです。
次も期待しています。

16名無しAKB:2011/01/10(月) 22:23:26
書いた者です。レスありがとうございます!
このふたり大好きなので、いつかまたぜひ書きたいです。

18名無しAKB:2012/06/23(土) 07:23:25


19名無しAKB:2012/06/23(土) 07:25:19
 
solitude

20名無しAKB:2012/06/23(土) 07:31:39
リハーサルの内容とタイムスケジュールを頭の中で繰り返しつつ、
私は舞台袖へと移動する。柏木さんと同じ高さまで上がってなかった手、ターンのタイミングの一瞬の遅れ、
クールな顔は作れていたか?
既に次の曲の準備も進んでいて、暗幕の後ろの、真っ暗な中を歩く私。
目が慣れてきてもちょっと怖くて、右手だけは前に、探りながら進んでく。
後ろからたたたっ、と駆け足の音。この暗い中を。危ないかも、と思った
私はとりあえず壁際に体を寄せる。急ぐ方を優先させてあげなくちゃ、と。
ただその人が私の後ろ近くまで来て、 通り抜けて行くまでは、とぼーっとそれだけを考えていた。
のに。

21名無しAKB:2012/06/23(土) 07:35:08
がしっ、と。
腰にお腹に圧迫を感じて、鼓動が跳ね上がって、頭真っ白になって、
自分のものとは思えない声が自分の喉 から出て、膝から崩れた。
うずくまる私の耳に飛び込む「えへへっ、ゆーきりん」の声。
ゆき、、、、えっ?

「うわぁ!ゆきりんじゃなかった!」

驚きの声。暗くて目が効かない中、私は――私たちは、顔をそっと近づけあう。
「玲奈ちゃん?」
「平嶋さん?」
同時に理解し、同時にぺこぺこ謝り、やがて同時にくすっと吹き出し、笑い合う。
目が合って、また笑った。

22名無しAKB:2012/06/23(土) 07:36:34
◆◆◆

23名無しAKB:2012/06/23(土) 07:41:44
それから間もなく。
一度も平嶋さんに会うこともなく、久々に誰かと仲良くなれた喜びを
大して噛みしめることもなく、その知らせは淡々と、
人づてに、というか誰かが別の誰かに話すのが偶然私の耳にも届いてしまった。
そんな味気無さでやってきた。
仕事に打ち込まなければと、集中しようとしている私の頭の
隅にかすかな陰。まばゆい光が輝かせてくれてる今、私の中では諦観が
張り付けたような微笑みを作り出してくれる。今日はなんか。
これ以上楽しそうに笑うこと、頑張れないよ。

24名無しAKB:2012/06/23(土) 07:44:44
撮影が終わる。途中たかみなさんが何度かはなをすすっていた。まゆゆさんは
見る限りずっと柏木さんの裾や手や体のどこかを触っていた。
私は皆さんほど近づけてなかった。涙なんて出ないし、悲しむのもおこがましい。

25名無しAKB:2012/06/23(土) 07:46:53
おわり。

参考資料:玲奈のモバメとなっちゃんのぐぐたす


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