[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
ザ・ワールド
1
:
Sa
:2004/04/22(木) 14:59
またまた、お邪魔しに来てしまいました
自分でもどう転ぶのか、わかっていない作品なのですが
書きたい気持ちに負けて、スレ立てしてしまいました
よろしければお付き合い下さい
80
:
アナザ・ワールド
:2004/05/17(月) 21:31
闇のタミの全体を覆っていた、大きな漆黒の布が滑り落ちた
その下に纏っているのは、薄く柔らかな布
なだらか肩、しなやかな腕・・・そして、優美な身体の曲線が露になった
ヒトミがお気に入りの、憂う眼差しと同じ色をした、濡れるように
艶めく髪も薄闇の風を孕んで、しっとりと揺れる
「もうっ 悪戯っ子なんだから!返してちょうだい?」
ヒトミはプイッと横を向くと、ロープの上に乗って体を丸める
ように座り込む
闇のタミは小さく溜息をついた
「・・・お前は本当に頭がいいわね?」
そう言ってヒトミの横に座ると、温かな手でヒトミの頭を慈しむように
撫で始めた
81
:
アナザ・ワールド
:2004/05/17(月) 21:31
「私・・・お前と会ってから遊んでばかりよ?・・・どうしてくれるの?」
闇のタミはクスクスと楽しげな笑い声を立てた
「・・・お前は本当に綺麗ね?・・・純白の体も、金色の瞳も・・・
羨ましいくらいだわ・・・」
溜息のような声が頭上から聞えてきて、ヒトミは顔を上げると首を
小さく傾げてみせた
・・・おかしな事を言う
お前ほど、美しいものを、ワタシは見たことがないと言うのに・・・
ヒトミはジッと闇のタミの瞳をみつめた
「お前のその目・・・まるで、私の言葉がわかっているようだわ・・・
それとも・・・わかっているのかしら?」
闇のタミはヒトミの首に両腕を回すと、そっと頬を寄せた
「私ね?・・・お前といる時が一番幸せだわ
こうしているとね・・・なんだか、すごく安心するの・・・」
82
:
アナザ・ワールド
:2004/05/17(月) 21:32
ヒトミは首を傾けて、闇のタミの鼻先をペロリと舐めた
「ふふっ くすぐったい!」
闇のタミが上げる、高くはしゃいだ甘い声音は、ヒトミの心を
とろりと溶かしてゆく
そして、闇のタミがその身体を・・・その心を、ヒトミへと添わせる時
ヒトミは自分の全てが満ちて行くのを感じる事が出来た
このまま闇の時間を過ごすことを続けていれば、ヒトミの光を主と
する精神体は、輝きを失い消滅してしまうだろう
・・・けれど
この、闇のタミとの逢瀬を止めてしまえば、ヒトミがヒトミでなくなる
ような気がしていた
自分以外の魂を、自分の為に必要とする事
それは・・・どこまでも甘くヒトミを酔わせて・・・
そして初めて恐怖した
自分が光のタミであることを、このかけがえのない命を宿す者が
闇のタミだという事を・・・
83
:
Sa
:2004/05/17(月) 21:34
もそっと続きを更新してみたりしました(w
84
:
名無し(0´〜`0)
:2004/05/18(火) 02:28
2回更新お疲れ様です!1回目はPDAで読みました。
2回目は何故か、また見に行ってみようと思った時間帯でした。
突然エスパーになったのかもしれません(笑)
静かな情景ともに、真っ白いヒトミの毛並みまでがくっきりと頭に浮かびます。
相当嵌ってきました!
85
:
54@約束
:2004/05/18(火) 15:42
更新、お疲れ様です。
おぉ〜、何とも素敵な逢瀬ですねぇ(うっとり)。
絵になるなぁ・・
(昔「レディ・ホーク」って映画があったんですけど、ふとそれを思い出しました)
美しい情景とストーリーにワクワクしております、ハイ。
次回も楽しみです。
86
:
JUNIOR
:2004/05/19(水) 00:36
更新お疲れ様です。
大×∞大好きっす。こういうの。
お二人方の戯れる姿を想像してると
なんだか切なくなってしまいました。
がんばってください。
87
:
リアル・ワールド
:2004/05/21(金) 21:16
ひとみはHRが終わると、梨華の机へと近づいて行った
「梨華ちゃん・・・昨日さ・・・」
梨華は肩をビクッと震わせると、振り返り、取って付けた様な
ぎこちない笑顔を浮かべながらひとみを見た
「・・・ん、なぁに?」
「あたし・・・覚えてないんだけど・・・
気がついたらさー 自分の部屋で普通に寝てた、なんで?」
「・・・なんでって言われても・・・吉澤さん、自分で帰ったのよ?」
梨華がひとみの顔から目を背けた時、その頬がうっすらと
染まって見えた
・・・おかしい
いや、あたしの記憶が曖昧になるのはよくある事だけど・・・
てか、よくあるってのも、かなりマズいんだけどさ
それより今、気になるのは梨華ちゃんの態度・・・変だ
まるで照れてるみたいじゃん?
なんでだよ?・・・昨日はあんな迷惑そうだったのに・・・
・・・何かあったんだ・・・たぶん・・・あたし、と
88
:
リアル・ワールド
:2004/05/21(金) 21:17
自室で目覚めた時、その刹那まで見ていた夢の名残を、ひとみは
覚えていた
黒い小さな猫を肩に乗せていた・・・あれは、自分だった
夢の中のひとみは、その黒猫を溺愛していた
そして、ひとみ自身もそれはわかる気がした
何故ならその黒猫は、とても愛らしい顔をしていて、闇夜を
思わせる瞳は小さな宝石のように輝き、その全体が醸し出す雰囲気は
あどけなさとしなやかさを兼ね備えた、まるで美しい少女・・・
そんな、イメージだったから・・・
これなら溺愛するよな、と思えたのだ
そこまではいい、と、ひとみは思い出しながら考える
問題なのは・・・
月の光を浴びると、その黒猫が・・・黒猫が・・・人間になったのだ
それも・・・今まさに、ひとみの目の前にいる
・・・石川梨華に
ヤバイだろ? あたし・・・
とうとう・・・夢までおかしくなりやがって・・・
ったく、あたしにどうしろって言うんだよっ
89
:
リアル・ワールド
:2004/05/21(金) 21:17
ひとみが頭を掻き毟りたくなる衝動と戦っていると、梨華が
ためらいがちな声をかけてきた
「・・・また頭が、痛むの?」
「今んとこ、大丈夫」
・・・梨華ちゃんが傍にいてくれれば、なんつって
ダメだ、あたし・・・
軽口をたたく気にもなんねぇー
ひとみが梨華の顔を見ていると、見上げてくる眼差しが不安定に
揺れてるように見えた
・・・梨華ちゃん・・・何か知ってるんだ・・・絶対に
ひとみが梨華の眼の奥に映る何かを探るように、目を細めると
梨華は、そっと視線を外した
「・・・吉澤さん、まだ体調がよくないんじゃないの?
早く帰って休んだ方がいいよ?・・・わたしも帰るし・・・」
「じゃぁさ〜 一緒に帰ってよ?」
「・・・いいけど」
「決まりっ!・・・んじゃ、帰ろ〜ぜぇ」
ひとみは明るい声を出してみたけれど、それは自分の耳にさえ
上滑りに聞えた
90
:
リアル・ワールド
:2004/05/21(金) 21:18
並木道を並んで歩いていると、時折、チラチラと梨華が自分の顔を
盗み見ているのを、ひとみは感じた
・・・昨日、記憶を無くしたのも確かこの辺り
ひとみの足は自然と止まった、つられた様に梨華の足も止まる
午後の陽射しは強く、梅雨もまだだというのに、こうして日の光を
全身に浴びていると、衣替え前の重い制服の下で地肌が汗ばんでくる
ひとみは、瑞々しい葉を太陽に向かい、大きく広げている樹木を
見上げた
そして、その下に濃く浮かぶ、樹木達の影に視線を移した
「・・・日の光が強いとさ、その下に出来る影も濃く感じるよね?」
ひとみが何気なく言った一言に、梨華が隣りで息を呑む気配がした
そしてポツリと呟いた
「・・・ほんとうに覚えてないの?」
「残念ながら・・・」
「・・・そう」
91
:
リアル・ワールド
:2004/05/21(金) 21:18
ひとみの口許を見ていた梨華は、安堵と落胆の狭間にいるような表情を
つかの間浮かべて、慌てたように俯いた
その黒髪に包まれた、小さな頭にひとみは聞いた
「・・・昨日のこと、覚えてないってことは・・・いいこと?悪いこと?
梨華ちゃんは、どっちだと思う?」
梨華は顔を上げると、何かを思い出し考えるように視線を動かした後
ひとみを見た
「・・・わからない・・・わからないわ、吉澤さんにとって、どちらが
いいことなのかなんて、わたしには・・・ただ・・・」
「ただ?」
「生まれ変わり・・・って言うのかしら?
・・・前世の記憶・・・とか、そう言うのって信じられる?」
突拍子もないことを言い出す梨華にひとみは笑おうとした
けれど、梨華があまりにも真面目な顔をして、自分を見ているので
笑顔はひとみの顔に浮かぶ前に消えてしまった
92
:
リアル・ワールド
:2004/05/21(金) 21:19
ふっと、ひとみの脳裏に誰かの影が浮かぶ
小さなひとみ、膝を抱えるひとみ、孤独なひとみ
その前に突然現れて、話しかけてきた誰か・・・
薄く笑った唇が、幼いひとみに何かを言い聞かせている
まるで体そのものが発光しているようで、よくわからない全体の
シルエット・・・
・・・誰だよ?・・・あんた、誰なんだ?
ひとみは小さく頭を振った・・・これ以上、思い出せそうになかった
「・・・ごめんね?変なこと言って忘れて?」
小さな声が聞えてきて、ひとみは彷徨いそうになる意識を、目の前に
いる梨華へと戻した
「・・・梨華ちゃんは・・・どう思ってんの? そーゆうの信じてるタイプ?」
「・・・んー・・・・・・」
93
:
リアル・ワールド
:2004/05/21(金) 21:20
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・なんだよー? 深刻な顔しちゃって・・・ひょっとして
うちらが前世で恋人同士・・・だったりして?」
ひとみがふざけて言ったつもりの言葉を聞くと、梨華の薄く色づく唇は
色を無くし、頬が強張っていく
うっそ?!・・・ビンゴ?
てか・・・なんで梨華ちゃんはそんな風に思うようになっちゃったわけ?
あたしが記憶を無くしてる数時間の間に?
・・・前世?・・・生まれ変わり?
・・・記憶にない、だけどあたし自身の行動
・・・昨日とあきらかに違う、梨華ちゃんの態度
ひょっとして・・・?
「・・・口説かれちゃった?・・・もう一人のあたしに・・・」
梨華の目が驚きで見開かれ、次第に開かれていく唇は何かを
訴えるように小さく震えた
94
:
リアル・ワールド
:2004/05/21(金) 21:20
・・・わかりやすっ
しっかし、なぁー・・・記憶無くしてる間もやってることが変わんねーって
とこが我ながら、情けなっ・・・
その上、恋敵は自分ですか?・・・シャレになんねっーつーのっ
・・・けどそいつは、この、あたしでいる時の記憶もあったりする?
そう思いつくとひとみは、自分自身が消えて行くような恐怖を感じた
いつか乗っ取られちゃったりして・・・?
・・・はぁ・・・もっとシャレになってねーじゃんっ
ひとみは不吉に広がっていく、自分自身の影を笑い飛ばそうと
したけれど、上手く出来そうにもなかった
95
:
Sa
:2004/05/21(金) 21:21
更新しました。
84様
エスパー降臨?!・・・てか、もっとチガウ能力がイイっすよね(w
嵌って頂けるとは嬉しい限り!二回もチェックしに来て下さるとは
さらに嬉しさ倍増中!!!
54@約束様
キターーーッ!てか、バレターーーッ!!!・・・その映画、昔、作者も
見たんですよ・・・昔すぎてあんま覚えてナイんですが・・・
このハナシを思いついた時、その映画がアタマを掠めたのでした(汗
JUNIOR様
大好きっすか?・・・作者も結構好きです♪
んで、いつか書いてみたいなぁーーーって、書いてるじゃんっ(w
・・・と、今に至るワケでございますよ(・・・汗
96
:
54@約束
:2004/05/21(金) 23:54
更新、お疲れ様です。
覚醒しない吉はちょっと脆くて、そこがまたイイ感じですね。
自分であって自分でないもどかしさと、戸惑う石がもうまさに「いしよし」ですw
いやぁ〜、読むごとにどんどん引き込まれます。本当に毎回楽しみです。
てか、Saさんもあの映画ご覧になってたんですか!?いやぁ〜、奇遇ですね。
(あれは究極のラブストーリーではないかと思ってるんですが・・確かにちと古い映画ですがw)
宿命で結びついてるふたりのこの先、ワクワクしてお待ちしております。
97
:
JUNIOR
:2004/05/22(土) 23:55
更新お疲れ様です。
自分自身の記憶がないって
シャレになんないっすよね。
自分もあるのですが・・・(何か問題でも?
そんな思いがあったんですか。
思ってたことを実行できるなんて、すんげーカッケーっす。
尊敬します。(などと、いってもSaさんの小説読んだときからSaさんのことは尊敬してました。w)
これからも楽しみにしてます。(深夜の楽しみになりつつありますw)
98
:
名無し(0´〜`0)
:2004/05/23(日) 00:09
更新お疲れ様で〜す。
”エスパー”の命名者はSaさんですよ、某所にて。
この能力はすごく欲しいかも。
だって1日2回じゃきかないくらいチェックしに来る日あるし。
ここ最近は偶然更新時に見に来れてるから、かなり幸せです!
99
:
リアル・ワールド
:2004/05/25(火) 14:00
なんだか元気がないみたい・・・
放課後
机の上を拭く手を動かしながら、梨華はひとみの横顔を盗み見た
ひとみはさっきから箒を持つ手を止めて、ぼんやりと窓の外に
視線を向けていた
金色の髪に午後の明るい陽射しが反射して、その強い輝きに縁取られた
表情は、なぜだかとても儚げで脆く見える
あんな事がいきなり起こった、ひとみの転校初日
その前と後では、ひとみは何年かの歳月を飛び越えた人のように
醸し出す雰囲気が変わって見える
その姿はあの日、梨華があなたは誰なのだと言う問いかけに、ヒトミと短く
答えた誰かの面影が重なって見えた
ひとみが時々、自分の記憶がなくなると音楽室で聞いた時、ただ
からかわれてるのだと思った
けれど、その後の出来事を考えると、梨華はひとみの言葉をそのまま
信じることが出来た
自分の記憶がなくなるって・・・どう言う気持ちがするのかしら?
100
:
リアル・ワールド
:2004/05/25(火) 14:00
・・・想像出来なかった
けれど、普通では起こりえない物事が起こった時
人は不安に思うものだ、それぐらいのことは平凡に過ごしてきた梨華にもわかる
梨華が雑巾を洗いに行って戻ってきても、ひとみはまだのろのろと
同じ場所で箒を動かしていた
「・・・いつまで同じとこ、掃除してるつもり?」
梨華がおどけた声をかけて、塵取りを手にしゃがみ込むと
ひとみは夢から醒めたばかりの人のように、瞬きをして梨華の顔に
目の焦点を合わせた
そして梨華の手にある塵取りを見て、・・・ぁあ、と掠れた声で答える
梨華が塵取りのゴミをゴミ箱に落とすと、後ろから長い腕が伸びてきた
「・・・あたしが捨ててくるよ」
「場所、わかるの?」
「・・・わかんねー・・・かも?」
ひとみはばつが悪そうな笑顔を浮かべながら、梨華の顔を見た
101
:
リアル・ワールド
:2004/05/25(火) 14:01
ひとみがゴミ捨て場の大きな容器に、ゴミ箱を傾けながらポツリと言った
「・・・どんなヤツ?」
「・・・えっ?!」
梨華がひとみの後姿を見ていると、ひとみはゴミ箱を傍らに置いて
振り返ると梨華の顔を真っ直ぐに見た
「・・・もう一人の、あたし」
「・・・ぁあ」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・えぇーと・・・」
・・・どんな?・・・どんなって・・・
あの感じはなんて言えばいいのかしら?
梨華は目の前のひとみと、もう一人のヒトミとの違いを考えてみた
眼の色が違う・・・
それはそうだけど・・・そういう目に見えることじゃなくて
別人だと思ったのは・・・
纏う空気が違うからだ、と梨華は思った
102
:
リアル・ワールド
:2004/05/25(火) 14:02
このひとみは、普通なのだ・・・変な言い方だけど
見かけが目立とうとも、自分と対等の高校生の女の子だと思える
けれどあのヒトミは・・・
威厳・・・というのだろうか?
ただ自分に自信がある、と言うのとは違う
制服を着ていても、およそ十代の女の子には見えない
顔はこのままなのに・・・まるで世の中に自分の知らない事柄など
一つもないと言うように物語っていた眼の色
あの普通では考えられない能力も、超能力者と言うよりも
もっと現実離れしていて・・・そう、あれは
あれはまるで・・・まるで空想の世界とか神話に出てくる人みたいだった
梨華はあの魅惑的な微笑みを思い出すと、体温が急に上がって感じた
あの眼で見つめられて乞われたら、どんなに無理なことでも頷いて
しまいそうだった
103
:
リアル・ワールド
:2004/05/25(火) 14:02
ひとみが溜息をつく音が聞えて、梨華はハッとした
「・・・会いたい?・・・もう一人の、方に」
・・・会いたい?・・・・会いたいの?わたし?
梨華が言葉に詰まると、ひとみは子供が泣き出寸前のように顔を歪めて
笑った
「・・・梨華ちゃん・・・あっちのがいいんだ?」
「・・・そんなこと・・・」
「いいよ、無理しなくて・・・顔に書いてある」
その時、梨華の身体は自然に動いていた
ひとみを自分の腕の中に抱きしめる
「・・・そんなこと、思ってないよ?」
「・・・嘘だ」
「嘘じゃない」
梨華は急に自分の胸の内に、このひとみへの愛おしさがどこからか
湧き出て、胸一杯に溢れてくる事に戸惑った
けれどなぜか、この目の前のひとみを自分が守ってあげなければ
いけない気というがした
守る?いったい何から?・・・わからない、けれど・・・
けれどそれは、自分にしか出来ないことのように思えるのだった
104
:
リアル・ワールド
:2004/05/25(火) 14:03
「・・・誤解しちゃうんだけど?」
「・・・誤解?」
「んー こんな風にされちゃうと・・・期待するでしょ?フツーに・・・」
梨華が腕を放して、ひとみの顔を見るとひとみは照れくさそうに
笑っていた
「・・・あたしが・・・あたしが梨華ちゃんを好きになったことに
理由があるのか、ないのかなんてわからない
・・・けどそんな事、どーでもいいってゆーか・・・だってさ
もうこんなに・・・どーしょうもないくらい好きになっちゃってるんだから・・・」
今度はひとみが、梨華を自分の腕の中に抱きしめた
「・・・だから、だからあたしを繋ぎとめておいてよ?
梨華ちゃんが呼んでてくれてれば、あたしはきっと、あたしで
いられる・・・そんな気がする」
「・・・ん・・・わかった」
「あたしのこと・・・呼んでみて?」
「・・・ひ、とみ・・・ちゃん?」
「オッケー 最高!」
梨華はひとみの腕にギュッと力が入るのを感じた
そして、ひとみの軽やかに笑う吐息が梨華の髪を、そっと揺らした
105
:
Sa
:2004/05/25(火) 14:03
更新しました
最近、新しく聞えて来る事柄や、一昨日の出来事に我を失いそうな二日間でした
けれど、作者の真実は一つだと再認識致しましたので、それを固く信じて
作者の書くものにお付き合い頂ける方がいらっしゃるなら、変わらずに書いて
行こうと思っておりまする
54@約束様
今回、自分であって自分でないというのはナニも記憶を失くさなくとも
あることなのではないかなぁ〜と思ったりする作者です
ワクワクして頂ける、愛の物語を描ける様、精進致しますね?
JUNIOR様
シャレにならない問題につっこんでいいのか、迷ったりする作者です
そんな思いと言うほど、大層な事ではないのですよ?
ただの見境のないセッカチなので、こんなオトナになってはいけません(w
98様
やはり・・・そうでしたか?!
頭をよぎったのですが、頂いたレスの雰囲気が違うように感じたもので…
こんな未熟者の書く物を楽しみに来ていただけて、作者こそかなり幸せです!
106
:
54@約束
:2004/05/25(火) 16:02
更新、お疲れ様です。
う〜ん、ここのふたりは自分が思ったように、やっぱり運命に導かれて出会ったふたりです。
何があろうと「離れないで」欲しいです。
自分はSaさんについていきますよ!
次回も楽しみにお待ちしております。
107
:
名無し(0´〜`0)
:2004/05/25(火) 19:05
毎回楽しみにしています。
これからもヨロシクです。
108
:
JUNIOR
:2004/05/25(火) 23:05
更新お疲れさまです。
2人は別々の道を歩んでいきますが、
運命で出会った2人です。
なにがあっても「いしよしは不滅!」と信じています。
たとえどんなことがあっても
自分はSaさんについていきます。
今、ここで「約束」します。
109
:
ホワイト・ナイト
:2004/05/26(水) 18:06
ここの所、ひとみにとって眠るという行為は憂鬱以外の何物でも
なくなっていた
夥しい数の夢を見るのだ
全ては繋がっているようで、脈絡がなく、目覚めた時には
忘れている
それなのに、長い時間どこかを彷徨い続けていたように
翌朝は、眠る前よりも身体に疲れを蓄積し続けていた
それならば、眠らなくてもよさそうなものだが、結局は引きづられる様に
眠りに落ちて行くのも毎晩のことだった
110
:
ホワイト・ナイト
:2004/05/26(水) 18:06
・・・この光景は何度も見たことがある
どこか懐かしいような部屋・・・誰もいない部屋
抱えた膝に、顔を埋める子供
・・・そう・・・あの子はあたし、だ
111
:
ホワイト・ナイト
:2004/05/26(水) 18:07
ひとみの前に、小さく発光する白い粒子が集まると、それはやがて
人の姿になった
・・・ひとみ、と呼びかけられて、ひとみは涙に濡れた顔を上げると
驚きに目を見開いた
「・・・だあれ?」
・・・誰だと思う?
ひとみは、知らないと言う様に左右に首を大きく振ってから
発光する人物を見上げて、口を開いた
「でも、きれい・・・きらきらしてる・・・おそらのおひさまみたいだ」
光の粒子が柔らかく煌いた・・・まるで笑っているように
112
:
ホワイト・ナイト
:2004/05/26(水) 18:07
・・・そうか・・・お前の目には、ワタシが美しく見えるのか?
ひとみは、さっきまで泣いていたことなど忘れたように
その声の人物に魅入られている
・・・ワタシのようになりたいか?
ひとみは小さく頷いた後、小首を傾げた
「・・・なれるの?」
・・・もちろん
・・・けれど、今のままではダメだ・・・亡くしたものの大きさで
お前は生きることを諦めようとしている
・・・ワタシの言うことがわかるか?
「・・・だってぇ・・・うっ・・・うぇ・・・ぐ・・・」
ひとみはその人物が言う言葉を理解出来た訳ではない
けれど自分が、いなくなってしまった父母の所へ行きたいと思っていること
そう思うと、不思議と食べ物はおろか、飲み物さえも口にしたくなくなってしまうこと
それを言っているのだ、と感じた
113
:
ホワイト・ナイト
:2004/05/26(水) 18:08
・・・泣くな、ひとみ
・・・お前は一人ではないのだ・・・なぜなら
・・・ワタシは・・・お前、なのだから
「・・・え?」
ひとみは訳がわからくなって、瞬きを繰り返す
・・・ワタシはお前の内に在る
・・・お前が望むなら、ワタシはお前の声に答えよう
・・・だから、けして生きる事を諦めてはいけない
「・・・いまみたいに、ひとみとおはなし、してくれるってこと?」
ひとみは思いついて聞いてみた
・・・そうだ
114
:
ホワイト・ナイト
:2004/05/26(水) 18:08
「・・・ひとみ・・・ひとりぼっちじゃないの?
ほんとに?・・・そばにいてくれるの?」
・・・あぁ
・・・お前が抱えた孤独を乗り越えられる時がくるまで傍にいよう
・・・そして、ワタシを必要としなくなったのなら、全てを忘れるのだ
・・・なぜなら・・・お前がワタシなのだから
・・・いいな
ひとみは不思議そうな顔をしながら、それでもコクンと頷いた
発光する人物のシルエットが一際眩く輝くと、それは小さな光の粒子に
姿を変え、ひとみの中に吸い込まれるように入ってくる
なんだか・・・げんきがでてきたみたい?
ひとみの涙で濡れていた目が金色に輝いて、微笑んだ
そしてそれは、一瞬でもとの薄茶色に戻っていった
115
:
ホワイト・ナイト
:2004/05/26(水) 18:09
ひとみが閉じていた目をゆっくり開けると、辺りはまだ暗闇に
包まれていた
目覚める刹那まで、誰かと話をしていた気がする
懐かしい誰かと・・・
そのせいだろうか、自分以外誰もいないはずの部屋に人の気配を
感じるのは・・・
・・・ヒトミ
ふいに、懐かしげに優しく名前を呼ばれて、暗い部屋を見回すと
壁の隅が白く輝きだして、ひとみは大きく目を見開いた
それは見る間に人に姿を変えていく
子供の読む絵本に出てくる天使のような笑顔を浮かべた小柄な女性へと
・・・まだ寝てんの?・・・あたし?
てか、夢だろ?・・・これ?・・・
116
:
ホワイト・ナイト
:2004/05/26(水) 18:09
薄い蝶の羽を何枚も重ねたような豪奢なドレスに身を包んだ女性は
優しく微笑んだ
それは・・・女神のように神々しくてひとみは息を呑んだ
・・・ヒトミ?
・・・忘れてしまったのね?・・・ワタクシのことを・・・
・・・いくらアナタでも、これだけ転生を重ねたら無理もないこと
転生?・・・何言ってんだ、この人・・・
ひとみは見開いたままだった目をゆっくりと瞬きさせた
・・・時間がないのです
・・・ワタクシの力は、もう・・・あまり時間は残されていない
・・・ストーンを探して、ヒトミ
・・・そうしないと・・・アナタは・・・アナタだけではなく・・・
117
:
ホワイト・ナイト
:2004/05/26(水) 18:10
そこまで言うと、発光した美しい幻の女性は力尽きた様に
フッと消えてしまった
光をなくして、暗闇へと戻った室内で、ひとみは自分の身体中の血液が
やけにドクドクと大きな音を立てて流れているのを感じた
・・・夢だ・・・夢だよ?
ただの夢に決まってる、なのに重大な秘密を打ち明けられた後の様に
興奮しているのはどうしてだ?
今、あたしは・・・眠りの中にいる筈なのに、眠れそうにもないと
感じてるのは、いったい何故なんだ?
・・・ストーン?・・・石?
・・・何かが胸に引っかかった
背中をツッーと、汗が流れる
その感触は不気味な程、リアルだった
118
:
Sa
:2004/05/26(水) 18:11
更新しました
54@約束様
もちろんっ!何があろーとなかろーと離すつもりはありませんっ
てか、離れない二人なので♪
ついてきて下さるんですか???うれすぃ〜なぁ〜!!!
107様
楽しみにして下さってると言う言葉をかけて頂けることが
作者には最高の喜びですので!
こちらこそ、これからも宜しゅうに♪
JUNIOR様
いしよしは不滅!!! 作者にも、それ以外ありえませんっ
例えどんなことがあっても・・・ですか?
・・・そのお言葉に恥じないでいられる様に前進、努力致しますね
119
:
JUNIOR
:2004/05/27(木) 01:30
更新お疲れ様です。
やっぱし話しに吸い込まれていきます。
う〜ん。天使のような女性はあのお方ですか?
その人が出てくれば少し感激かも。
えぇ、例えどんなことがあってもです。
自分も恥じないように頑張りますので、よろしくです。
120
:
ホワイト・ナイト
:2004/06/01(火) 22:08
梨華は部屋の窓を開け放ち、夜空にぽっかりと浮かぶ
クリーム色した月を見ていた
昔から、月を見るのが好きだった
月を見上げていると、その柔らかい光を全身に浴びていると
自分が慈しまれ、守られている様な気さえした
夜の闇は怖いものではない、と、梨華は思う
それは万物を休息させ、明日への活力を蓄える為に必要な闇なのだ、と
そして、その夜の闇は真の暗闇な訳ではなく
いつでも空から控えめに届けられる、一筋の月光に見守られているのだから・・・
ふっと、ひとみの顔が梨華の頭の片隅に浮かぶ
最近、よく眠れないんだ、と、ひとみは言っていた
そう言った、ひとみの青い程に白い顔・・・
梨華は月に向かって、心の中で願ってみた
どうか・・・ひとみちゃんが、ゆっくり眠れますように・・・と
121
:
ホワイト・ナイト
:2004/06/01(火) 22:09
梨華が就寝の支度を整え、ベッドに横になると、間もなく
コトリ、と安らかな眠りが梨華のもとに訪れた
122
:
ホワイト・ナイト
:2004/06/01(火) 22:09
・・・明るい月だった
どこまでも優しく、控えめな光
けれど、暗いことはない
美しい場所・・・梨華は回りをぐるりと見回した
注ぐ月光を浴びて、見上げる樹木がまるで寝息を立てている様に
さわさわと揺れている
目の前に大きな・・・いったいどのくらいの大きさなのかわからない
くらい大きな湖が見える
まるで湖自体が島みたい・・・
梨華は近づいて行こうとして、僅かに戸惑った
それはその水面を覗いている先客がいたからではなく、その湖を
間近で見なくても、そこに張っている水がどれだけ澄んでいるのかを
自分自身がよく知っている気がしたから・・・すると、その時
静かな水面を覗いていた人影が梨華へと振り返った
・・・いらっしゃい
その人物は梨華に微笑みかけた
梨華は思わず、身構えて立ちすくんだ
呆然と開けたままの唇から言葉にならない声が漏れる
123
:
ホワイト・ナイト
:2004/06/01(火) 22:10
「・・・ぁ・・・あ、ぁ・・・」
自分に向かって微笑んでいるのは・・・それは、まぎれもなく
・・・梨華自身だった
うそぉ〜〜〜?!
・・・夢だから?・・・そう、夢なんだからっ
一つ大きく息をつくと、ざわめく心を落ち着かせる為に、梨華は
自分自身に言い聞かせる
そう、だから・・・
何が起こったって不思議じゃないじゃない?
梨華は、それでもざわめき続ける心の内と向き合う様に
ぎこちなく、目の前にいる自分自身に微笑み返してみた
わたしって・・・他の人が見たらこんな感じなのかしら?
けれど、なんだか・・・鏡で見る印象と違うものだな、と、梨華は思った
・・・座らない?
もう一人の梨華は湖のほとりに腰を下ろすと、自分の横に
ふわり、と手を置いた
梨華が頷いて、その横に腰掛けると、彼女−もう一人の梨華−は
クスクスと面白そうに笑った
124
:
ホワイト・ナイト
:2004/06/01(火) 22:10
・・・あの人が、昔・・・言っていた通り
・・・私は案外、腹が据わっているって
・・・アナタを見て、少しわかった気がするわ・・・自分のこと
彼女は美しく微笑んだ
自分の顔に見惚れるなんて、変な話だけど・・・
この梨華の微笑みは、あたりが薄闇だからそう見えるのだろうか?
艶めく色を纏っている・・・と、梨華は思った
彼女はその微笑みをひっそりと浮かべたまま、梨華を見た
・・・ほんとうはね?
・・・私、アナタの前に現れる気はなかったの
・・・けれど一度、あまりにあの人が懐かしくて
・・・思わず、表層意識に出てしまったわ・・・ごめんなさいね
・・・ちゃんと謝りたかった・・・アナタを混乱させてしまった事
・・・だから少し、お話をするべきかな?って思ったの
・・・それにこれから・・・これから起こるだろう事があったし・・・
彼女の美しい微笑みに、僅かな影が落ちた
その影は、梨華の胸の奥底に小石を落とし、波紋を呼んだ
これから、起こる事?
始めは小さく、そして次第に大きく広がるそれは・・・漠然とした
・・・不安、というものかも知れなかった
125
:
ホワイト・ナイト
:2004/06/01(火) 22:11
・・・私、とあの人は・・・彼女はそこで言葉を止めて、わかる?と
言う様に小首を傾げて見せた
梨華はゆっくりと頷いた
金色の眼を持つ、もうひとりのヒトミ
ひとみであって、ひとみではないと言っていた人
・・・私達は昔、ここではないアナザというワールドにいたの
・・・けれど私達は、ここで生きて行く事を望んだ
・・・アナザには万能の女王がいて、ある条件と引き換えに
私達がリアル・・・ここのワールドに転生出来る様にしてくれたの
彼女の眼差しが愛しいなにかを懐かしむように、揺れた
何もかも現実離れしている、と梨華は思った
美しくどこか悲しみの色に染まった景色、自分と同じ顔をした彼女
・・・そして転生、だなんて
夢なんだから当たり前だわ・・・
そう自分を納得させたいのに、どこか懐かしんでる自分がいる事が
梨華を落ち着かない気持ちにさせた
それに・・・彼女が言うあの人を梨華は知っているのだ
・・・その条件とは・・・ストーンを探すこと
126
:
ホワイト・ナイト
:2004/06/01(火) 22:12
「・・・ストーンって・・・石・・・のことですか?」
梨華が初めて口にした問いかけに彼女は、その顔に浮かべた微笑みを
一際柔らかく開かせると頷いた
・・・私とあの人は、ここでそれを見つけたわ
・・・そして、転生を許された
・・・けれど、また同じことが繰り返されているみたいなの
・・・たぶん貴女が・・・現世の梨華、貴女と現世のひとみが、失われた
ストーンを探すことになるかも知れない
な、なんなの?!・・・石を探すって、いったい?
深刻な表情で、自分の目を見据える彼女に気圧されて、梨華は
身体を後ろへと仰け反らせた
・・・シャドーが貴女達を襲ったでしょう?
・・・それはアナザの女王の力が失われつつあるというサインなの
・・・だから気をつけて梨華
・・・アナザの女王の力が弱まるとリアルも均衡を崩してしまう
・・・けれど梨華、私は貴女と共にある
・・・だから、私の力が必要になった時・・・貴女が望めば
・・・きっとアナザの力を使う事が出来る
127
:
ホワイト・ナイト
:2004/06/01(火) 22:12
・・・それを忘れないで
・・・それを忘れないで・・・
梨華が混乱している間に、彼女は薄いグレーの霧に次第に包まれる
様に姿が消えて行こうとしている
「ちょ・・・ちょっと待ってよーーー!」
梨華は半分泣きそうになりながら、消え行く彼女に手を伸ばした
けれど、その指先はただ、くうをもがくように何も捕まえる事は
出来なかった
なんなのよ?・・・いったいなんなの
訳のわからない事ばっかり・・・聞きたいことは山ほどあるのに
違うっ これは夢でしょう?
わたしは何をむきになっているの?
そう思いなおそうとしても、梨華の耳には最後に彼女が言った
言葉がいつまでも木霊のように繰り返されていた
128
:
Sa
:2004/06/01(火) 22:13
・・・それを忘れないで
・・・それを忘れないで・・・
梨華が混乱している間に、彼女は薄いグレーの霧に次第に包まれる
様に姿が消えて行こうとしている
「ちょ・・・ちょっと待ってよーーー!」
梨華は半分泣きそうになりながら、消え行く彼女に手を伸ばした
けれど、その指先はただ、くうをもがくように何も捕まえる事は
出来なかった
なんなのよ?・・・いったいなんなの
訳のわからない事ばっかり・・・聞きたいことは山ほどあるのに
違うっ これは夢でしょう?
わたしは何をむきになっているの?
そう思いなおそうとしても、梨華の耳には最後に彼女が言った
言葉がいつまでも木霊のように繰り返されていた
129
:
Sa
:2004/06/01(火) 22:16
更新しました・・・がっ
す、す、すみませーーーんっっっ!
最後に同じ文章二回上げてしまいました・・・寝ぼけてるのかっ?!
JUNIOR様
引き込まれるというのはとてつもなく作者の心に
響くオコトバです♪
・・・あのお方?・・・ダレかしらん???・・・タブン違うと思われ(w
130
:
JUNIOR
:2004/06/01(火) 23:41
更新お疲れ様です。
当った・・・・・・・・(ニヤニヤ)
それは、もう一人のお方ですよ。
だって、もう一人の自分が現れれば感激でしょ。
ブラックだった自分の心をSaさんが
ホワイトにしてくれました。
ありがたや、ありがたや。(キャラ違いますね自分)
131
:
アナザ・ワールド
:2004/06/02(水) 11:54
ヒトミは、地の丘の外れにある洪水のような深い緑の中に沈む
カオリの家にいた
カオリは風変わりなタミだった
属性も分からず、誰とも係わらず、いつも一人で深い森の中にいる
けれど強い予知能力があり、時折訪れる迷いビトをむげに追い払ったりは
しなかった
ヒトビトがたてる、無責任な噂では現女王ナツミが選ばれた時
もう一人の女王候補だったと伝えられていた
ヒトミはそのことについて確認したことは無かったし、カオリの
過去について詮索する気もなかった
ただ、誰とも係わろうとしないカオリといることは、ヒトミにとって
とても気楽だったのだ
132
:
アナザ・ワールド
:2004/06/02(水) 11:55
「ヒトミ・・・お前、闇の時間をうろついてるそうじゃないの?」
「・・・・・・・・・・」
「何かいいものでも見つけたの?
まさかお前が、闇のタミに恋をしたなんてバカなこと言わないでしょ?」
カオリは普段、無口だった
姿はそこにあっても、源である精神体がどこかへ浮遊しているのでは
ないかと、時折疑いたくなるほど・・・
そして、反動のようによく話す日もあった
今日はどうやら数少ない方の日にあたったらしい
ヒトミはカオリに軽く視線を投げて、どうでもよいことのように
投げやりに答えた
「・・・もう行くことはないさ」
ヒトミの脳裏に闇のタミ−リカ−のひっそりとした微笑が浮かんだ
133
:
アナザ・ワールド
:2004/06/02(水) 11:55
あの日、いつものように水の島で闇のタミと逢っていた
ヒトミの純白の毛皮に寄りかかるようにして、おしゃべりを楽しんでいた
闇のタミが小さな寝息を立て始めた
その安らかな鼓動を聞いている内に、ヒトミまでも眠りに落ちて
しまったのだ
気づいた時には星の時間になっていた
天空は濃い蒼を過ぎ、眩しく輝く太陽が昇りだす前特有の朱を
ぼかし始めた白に染まっていた
ヒトミは自らの身体が変化を始めて、唐突に目覚めた
そしてヒトの姿に変化し終わったヒトミの前には、驚きに目を
見開いた闇のタミが身体を硬直させていた
「・・・あ・・・お前・・・光の、タミだったの?」
ヒトミは闇のタミの顔を見て、薄く笑いながら殊更そっけなく
言葉を返した
「・・・それがなにか?」
134
:
アナザ・ワールド
:2004/06/02(水) 11:56
「・・・なにかって・・・知らないわけではないでしょう?」
闇のタミは目を見開いたまま呆然と呟くと、信じられないと言うように
首を横に振った
「・・・タミが死ぬことのない、このワールドでの唯一の禁忌じゃないの?
光のタミが日の光のない闇の時間を過ごすなんて・・・
お前は自らの消滅を願っているとでも言うの?」
「・・・まさか・・・けれど、まあそれも、そう悪くはないか・・・」
「・・・なんの為に?・・・なぜ、こんな無謀なことを・・・」
「・・・なんの為?」
困惑の表情で自分を見る闇のタミの頬に、ヒトミはそっと手を伸ばした
「お前の為だ・・・違うな・・・お前に逢いたいと願うワタシの為に
・・・この姿のワタシが嫌いなのか?」
「・・・・・・・・・」
闇のタミは俯くと小さく首を横に振った
「・・・そういうことではないでしょう?」
「ではどういうことだ?
・・・お前、名はなんと言う?ワタシはヒトミ・・・」
「・・・リカ」
135
:
アナザ・ワールド
:2004/06/02(水) 11:56
ヒトミは俯いたままのリカの顔を上げさせると、そっと唇を寄せた
リカはヒトミの唇が自らの唇の上に届く前に顔を背けると
静かに立ち上がった
「・・・もう帰らなくては・・・光の時間になってしまう」
ヒトミは軽く頭を振って立ち上がると、歩き出そうとするリカの
腕を掴んで引き寄せると抱きしめた
「・・・ワタシは・・・お前が・・・リカが欲しいのだ」
ヒトミの腕の中でリカが大きく息を呑んだ
そして震えるように小さく息を吐きながら呟く
「・・・それは無理なこと・・・貴方、ヒトミもわかっているでしょう?
もう・・・もう、ここには来ないで・・・」
リカはヒトミの腕の中からするりと抜けると、そのまま走りだした
ヒトミは俯くと唇を噛んで、ただその場に立ち尽くすことしか
出来ずにいた
136
:
Sa
:2004/06/02(水) 11:57
更新しました。
JUNIOR様
もう一人の自分・・・怖くないっすか?
夢なら笑えるけど(w
キャラ違うかな?・・・そんなこともナイよ〜な・・・
ヒトは皆、混沌と矛盾のナカにありますからなぁ〜って、ナンジャソリャ・・・(w
137
:
54@約束
:2004/06/02(水) 16:03
更新、お疲れ様です。
いやぁ、何とも美しいお話ですねぇ(うっとり)。
新しいキャラが登場ですね。女王も自分のイメージにピッタリですw
ふたりを結び付けるキーになりそうな探し物は一体どこにあるのか・・
じっくりと見守らせていただきます。
138
:
JUNIOR
:2004/06/02(水) 22:01
更新お疲れ様です
>もう一人の自分・・・怖くないっすか?
いえいえ、全然恐くないです(大笑)
会えるものだったら会ってみたいです。(霊感あるけど会った事ないので
全くキャラ違いますよ。(w
もっとなんか、アホ炸裂な人なんで。(バカでもあります
139
:
アナザ・ワールド
:2004/06/04(金) 12:02
ヒトミは次の日も、そのまた次の日も闇の時間に水の島を訪れた
けれど、何度足を運んでみても、あのお互いの名前を知り合った日
以降、リカを見つけることは出来なかった
逃げられたか・・・ヒトミは自嘲的に笑った
リカを責めることは出来ない
自らの魂を削ってまで、闇のタミであるリカに光のタミである自分を
選べとは、さすがのヒトミも言うことなど出来はしない
ただ許して欲しかった
ヒトミが禁忌を犯し、自らの消滅が進む道の先に待っていようとも
それでも止めることの出来ない、逢いたいと言う気持ちを
リカの傍にいたいと願う想いを・・・
ワタシが誰かに許しを乞うなど・・・
なんと愚かで馬鹿馬鹿しい・・・ワタシは首座に位置する光のタミの中でも
比類なき誇りの宿るモノだと言われていたではないか?
それほど、リカが必要か?
あのモノが、いったいワタシに何をしてくれたと言うのだ?
140
:
アナザ・ワールド
:2004/06/04(金) 12:02
ヒトミは自分自身に問いかけた
けれど、どれ程、自分の内に問いかけてみたところで、その答えは
返ってはこなかった
そしてヒトミは自堕落な日々に溺れて行った
ヒトミは自分に色目を使うタミと次々に肌を重ねてみた
自分が与える快楽に反応する身体
自分の全てを褒め称える隠微な唇
自分に奉仕することに恍惚となっていくその表情
相手が自分との関係にのめり込めばのめり込むほど、ヒトミの
体温は下がり続けていった
141
:
アナザ・ワールド
:2004/06/04(金) 12:03
そしてヒトミは気づかずにはいられなかった
リカが何かをしてくれるかどうかなど、自分には問題ではないことを
ただ自分がリカにとって、必要な存在でありたいと望んでいたことを
望まれるのであらば、自分の全てを捧げてもかまわないと思っていることを
・・・そう、この魂さえも・・・
だからこそ、ヒトミにとってリカに望まれないということは
何よりも耐え難い仕打ちなのだった
そしてヒトミはその痛みに耐える為に、次々に新しい誰かと
肌を重ね続けた
142
:
アナザ・ワールド
:2004/06/04(金) 12:06
女王の側近という全貌の位置でさえ、今のヒトミにはどうでもよい
事のように思えた
ヒトビトの目が煩わしくなったヒトミは、少し前にカオリのもとを
現れて、こうしてまた、違った意味で無意味な毎日を送っていた
フフッとカオリが笑った
「お前に遠まわしな事を言っても仕方がないわね?
・・・ヒトミは魂を奪われてしまった
それが運の悪いことに相手は闇のタミだった・・・それだけの事
けれどさすがのお前も、今度ばかりはどうにも出来ないようね」
「カオリ・・・お前、ワタシを怒らせたいのか?」
「フフッ・・・まさか、ヒトミと戦いたがるほど、カオリは物を
知らなくはない・・・戦闘術も剣も得意ではないのよ」
「・・・なら、余計な事を言うな」
「余計なこと?・・・そうかしら・・・」
眼の色をギラギラと苛立たせるヒトミの顔をカオリは覗き込む
何もかも承知しているという表情が、尚更ヒトミを苛立たせた
ヒトミがプイッと顔を背けた時、カオリの声が水面を震わす振動の様に
ヒトミの頭に直接、響いた
143
:
アナザ・ワールド
:2004/06/04(金) 12:07
・・・もうすぐ、その時がくる
144
:
アナザ・ワールド
:2004/06/04(金) 12:07
「・・・その時?」
ヒトミが背けた顔をカオリへと移すと、カオリの眼には何も映って
いなかった
まるで水晶のように、意志の感じられない空虚で透明な眼差しとぶつかる
予知の術を使ってるのか?
ヒトミがカオリの目の前にあるものを何も映さない、虚無の眼差しを
食い入るように見つめていると、また声がヒトミの頭の中に響いてきた
・・・ストーンが失われた
・・・女王ナツミはお前に乞うだろう、探して欲しいと
・・・お前がそれに答えた時、お前の願いは叶えられる
「・・・ワタシの願いが、叶う?」
ヒトミが呆然と、そう繰り返した時
カオリの家のドアを少し乱暴に叩く音が聞えた
145
:
Sa
:2004/06/04(金) 12:09
更新しました。
54@約束様
ウットリ・・・だなんて、うれすぃ〜なっ♪
女王の方は作者の話、初登場ですわ(w
今回、暗中模索な作品なので、この様にご感想を頂けると
大変、励みになりますです(ペコリ)
JUNIOR様
もう一人のジブンと言うか、前世というモノを
もしも知るコトが出来たなら、知りたいですな〜
作者も、しょっちゅうキャラ変わりますですよ(w
まぁ、根本は変わりませんが・・・
146
:
54@約束
:2004/06/04(金) 13:53
更新、お疲れ様です。
ふ〜む、こう繋がって来るのですか・・まさに「浪漫」全開ですねw
そういえば女王は作品初登場ですよね。
Saさんがこの人をどう描くのかも、今回は楽しみのひとつでもあります。
(シャドーの存在も結構気になっていたりもしますがw)
次回も楽しみです。
147
:
JUNIOR
:2004/06/04(金) 22:51
更新お疲れチャン。(バカ丸出しです
ぬわー!続きが激しく気になる。
女王きましたねぇ。この方は要注目ですよね?
がんばってください。
148
:
アナザ・ワールド
:2004/06/05(土) 15:17
遣いの者に急かされて、カオリの家を後にしたヒトミは
女王との謁見の為に、天空の塔の最上階の部屋で、方膝を付くと
頭を垂れていた
音もなく、ナツミが入ってくるのが気配だけでヒトミにはわかった
それは何もヒトミが剣の使い手だからではなく、ナツミの周りは
いつも、眩い光のヴェールで包まれているからだ
「・・・ヒトミ、顔をお上げなさい」
「・・・ハッ」
ヒトミは顔を上げて、一瞬、その眩しさに目を細めた
ナツミの纏う豪奢なドレスは、その布の一枚一枚がまるで生を宿している
ように、光を放って見えた
「・・・久しぶりね?」
「・・・はい」
ナツミが一番、女王らしく見える臆することのない微笑みが、今日は
何故だか寂しげに見えた
149
:
アナザ・ワールド
:2004/06/05(土) 15:18
「ヒトミ・・・お前、随分、派手に遊んでいたそうではないの?」
「・・・お耳に入りましたか?」
「ワタクシを誰だと思っているの?
・・・ワタクシの知らない事など、ありはしないわ」
「そうですね?・・・失礼」
ヒトミが口許を歪めて、ニヤリと笑うと、ナツミも顔に浮かべた微笑みを
明るいものに変えた
けれど、ナツミの微笑みはあっという間に曇り、温和なようでいて、その内に
強い志を秘めた眼差しに影が落ちた
ナツミはヒトミの顔から、そっと視線を外して呟いた
「・・・ストーンが盗まれたわ」
「・・・はい」
「驚かないのね?」
一度外した視線を、もう一度ヒトミの上へと戻しながら、ナツミは言った
「知っていたのね?・・・そう・・・ヒトミはカオリのところにいたのですものね?
カオリは・・・あの子は元気だった?」
「はい・・・カオリは・・・カオリの周りはいつでも、何も変わらなく見えます」
「・・・そう」
ナツミの眼差しが、何かを懐かしむように優しく揺れた
けれど、次にヒトミへと向けられたナツミの視線は揺るぎない女王の
ものへと戻っていた
150
:
アナザ・ワールド
:2004/06/05(土) 15:18
「ではもう、わかっているかも知れないけれど・・・
お前に頼みがあるのです
ストーンを探しなさい・・・ストーンはリアルに持ち去られた」
「・・・いったい誰が?何の為にです?」
「わからない・・・けれど恐らくシャドーの仕業でしょう
お前はストーンの本当の意味を知っていますか?」
意味?・・・あれに意味などあるのか?
ヒトミは僅かに眉を寄せた
ストーンは何度か、この目で見たことがある
美しい四つの宝石
「・・・ワタクシは、アナザを治める全ての力を持っている
もともと資質はあったのでしょう・・・けれど万能な訳ではない
四つのストーンは、あの石はそれぞれがアナザの意志の結晶なのです
ワタクシは・・・もともとは光のタミでした
ワタクシが女王に選ばれた時、共に女王候補として学んでいたカオリは
その力のほとんどをワタクシへと譲ってくれました
カオリは闇のタミだったのです
アナザを形成している残りの力、風と炎、水と大地は、それぞれの
大いなる力をストーンに込めて、ワタクシに力を貸してくれていたのです」
151
:
アナザ・ワールド
:2004/06/05(土) 15:19
「ワタクシの力だけでは、そう長い間アナザを支え続けるのは不可能
なのです
ストーンは莫大な力を持っている、けれど持つ者を選びます
シャドーには、それを持つことも力を使うことも出来ない・・・」
「・・・なら、なぜ盗まれたのです?」
「シャドーとは・・・影
光の傍らに常に在るもの・・・日の強い光の下には濃く
月の柔らかい光の下には控えめに・・・
生、宿るものは、全てその内に光と影を持っている
その内服された影が光を超える時、その者はシャドーに操られてしまう
そしてリアルのタミはワタクシ達アナザのタミよりも精神が脆いのです
それがストーンに魅入られたら・・・」
「・・・魅入られたら?」
「扱いきれない強い力と、己が隠し持っていた影に・・・おそらく
食い潰されてしまうでしょう・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「ワタクシがアナザを支えきれなくなれば、その不満はタミ達の心の内の
影を広げ、そしてリアルでもストーンに魅入られたものが、その大いなる
力を使えばリアルの均衡は崩れてしまう
アナザとリアル、この二つのワールドの崩壊をシャドーは目論んで
いるのだと、ワタクシは思います
その意志だけが、実態の無いシャドーそのものなのだ、と・・・」
152
:
アナザ・ワールド
:2004/06/05(土) 15:19
ヒトミは気付かぬうちに奥歯を噛締めていた
・・・だからヒトミ、とナツミが自分の名を呼んだ時
知らずに垂れていた頭を上げて、ヒトミは強く頷いた
ナツミも力強く頷き返した後、言葉を続けた
「けれど・・・ワタクシの力は、弱まっているのです
リアルではお前を庇護する光の時間と、お前の力を奪う闇の時間が
交互にやってきます
今のワタクシでは、闇の時間までも今のお前を留める事は無理でしょう
だからヒトミ、闇のタミの中から力ある者をお前と共にリアルへ
送り出そうと考えています」
ヒトミはナツミの強い視線をしっかりと受け止めながら、もう一度
大きく頷いた
「わかりました・・・女王ナツミ
ワタシの存在全てにかけて、必ずやストーンを見つけだしましょう
けれど、条件が二つある・・・それを叶えて下さいますか?」
ナツミは、ほんの少し小首を傾げた
ふいにあどけない、子供のような表情を浮べたナツミの顔を見ながら
ヒトミは自らの望みを口にした
153
:
Sa
:2004/06/05(土) 15:20
更新しました
54@約束様
うぅ〜ん、そうですねー 今回キャラのイメージを書くのがとても
ムズカシイんです・・・作者の頭の中では繋がる部分がある方に
お出まし願っているのですが・・・ホントムズいッス(w
JUNIOR様
バカ丸出しとゆーよりも、作者が自分に年を感じますな(w
激しく気になって頂けてうれすぃ〜限りですわ
きましたねぇ〜女王・・・注目なんですか?
154
:
JUNIOR
:2004/06/06(日) 00:20
更新お疲れサマー。
はい、すげぇ〜気になってます。(w
勉強が手につかなくなるほど(ダメじゃん
女王、注目ですよ。自分の中ではですけど。
なにしろSaさんの小説初登場ですから。
155
:
54@約束
:2004/06/06(日) 00:36
更新、お疲れ様です。
光あるところに影は出来るもの・・深いですね。
(フロイトのシャドーを思い出しましたw)
登場キャラが少ない分、キッチリと内面を描き出すという、Saマジック
を今回も堪能させていただいてます。
ここまで繋がって来た今、リアルのあの二人が待ち遠しくなりました。
続きも楽しみです。
156
:
アナザ・ワールド
:2004/06/09(水) 14:42
ずっと・・・考えてた
考えずにいられなかった
考えずにいられない私自身の事、また、なんでなの?って
考え続けてた
157
:
アナザ・ワールド
:2004/06/09(水) 14:43
あのコが、あの美しい真っ白な獣が・・・光のタミだったなんて・・・
確かにショックだった・・・けれど、それよりも・・・
一度見ただけで、瞼に焼き付いてしまった・・・あの姿・・・
何度も何度も思い出した
・・・逢いたかった
何故逢いたいのかわからないけれど、逢いたくて逢いたくて
仕方なかった・・・けれど、逢いに行く事はしなかった
・・・出来なかった
夢も見た
夢の中では自由に、あのコと遊ぶ事が出来た
けれど、あのコはあのコのままでヒトの姿に変わってはくれなくて
それが少し、残念だった
158
:
アナザ・ワールド
:2004/06/09(水) 14:43
「・・・リカ、真面目にやる気ある?」
カオリの呆れた声にリカはハッとして、カオリの顔を見た
リカはもともと治癒の術のレベルを上げようと、気を高める為に水の島に
行き、ヒトミと出逢ったのだ
ヒトミを避ける為に、水の島に行くことが出来なくなったリカは
カオリの下に通って、浄化の術を学ぼうとしていた
カオリは昔、比類なき力を持っていたという噂を、リカは聞いた事がある
けれど、今は乞われればこうして教えてくれるのだか、自分が
術を使う事はなくなってしまったらしい
それはなぜなのかしら?・・・ふと、リカはそう思った
予知の術だけは使うみたいだけど・・・
あればっかりは、教えて貰って出来るようになる訳じゃないし
カオリについて色々噂はあったけれど、リカにはどれが真実なのか
知るすべはなかったし、それを不満にも思っていなかったのだ
不思議なカオリ・・・掴み所のないヒト
リカは改めてカオリの過去というものに、一瞬想いを馳せると
今、自分を雁字搦めにしている事柄について、話をしてみようかと思った
159
:
アナザ・ワールド
:2004/06/09(水) 14:44
「・・・ねぇ?カオリ・・・カオリは誰かを忘れられなくなった事、ある?」
「・・・は?」
「一目見ただけなのに・・・頭から離れなくなった事ってある?」
思いつめた顔をするリカをマジマジと見つめて、カオリはブッと
噴出した
「・・・な、なにが可笑しいのよ〜」
カオリはムッとするリカを横目で見ながら、なんでもない、と
言う様に手を顔の前で振りながら、笑い続けた
「もぉ〜〜〜」
「いや・・・ごめん
笑いごとではないのか?・・・けれど、簡単な事だよ、リカ・・・」
「・・・?・・・」
眼差しで、なぁに?と問いかれるリカに、カオリは優しく微笑んだ
「リカ・・・お前は恋に落ちた、それだけの事だ」
「・・・・え?」
リカは目を驚きに見開かせると、首を小さく横に振った
160
:
アナザ・ワールド
:2004/06/09(水) 14:44
「違うわっ!」
「・・・何故違うと思う?」
カオリの穏やかな眼差しに見つめ返されて、リカは・・・だって、と
口ごもった
「・・・一度しか会ってないのよ?
どんなヒトかもわからない・・・それに・・・それに・・・そのヒト
光のタミなんだもの・・・」
「恋とはそんなに親切なモノではないのだよ・・・
訳のわからない内に魂をわし掴みにされて、気づけば相手を
想う事に、時間ばかりを費やしてしまう」
「・・・でも」
困ったように眉を八の字に寄せるリカに、カオリはフフッと
小さく声に出して笑った
「相手が闇のタミならば、お前は納得するのか?
いや、せめて、光のタミ以外のものならば・・・と願うのか?
相手がこうだから、恋に落ちたなど、自分を納得させる為の
言い訳にしか過ぎないのだよ・・・」
「・・・・・・・・」
「リカ・・・お前が、そう思えないのならば、無理する事など何もない
全てはお前の・・・心が、魂が決めることなのだから」
161
:
Sa
:2004/06/09(水) 14:45
更新しました
JUNIOR様
アハハッ 気になって頂けるのは光栄ですが、この作品の更新は
気まぐれですので、あまり期待なさらないで下さいませね?
54@前作様
54@前作様は博学そうで羨ましいですな〜
内面ですか?今回まだヒトが増えるのでご期待に添えるかどうか(w
162
:
アナザ・ワールド
:2004/06/09(水) 18:34
リカはこの間、カオリに言われた事がずっと心に引っかかっていた
そのせいで、カオリの家からも足が遠のいてしまっている
ぼんやりとそのことで、また物思いに耽りそうになる頭を
軽く振ると、リカは歩き出した
水の島へと向かって・・・
悪戯に時間を過ごしても仕方の無い事・・・
多分、あのコはもう来ない・・・そう望んで口にしたのは
自分自身なのだから
水の島へ向かう途中の深い木立の間で、ふいに辺りが明るく
なった気がして、リカは闇夜を仰いだ
そこには満月に、まだ時間がある月がひっそりと浮かんでいる
その傍らに、天空の彼方から光の柱が裾を広げ、ゆっくりと降りて
来るのが見えた
163
:
アナザ・ワールド
:2004/06/09(水) 18:35
光の柱は、細かい粒子を撒き散らしながら、リカのすぐ目の前で
輝く円陣を作った
そこに、一際眩しい何かが、天空から降りてくる
あまりの眩しさにリカが目をギュッと閉じると、閉じた瞼の先から
穏やかでいて、威厳に満ちた声がした
「・・・リカ
月の光に愛される闇のタミよ、瞳を開けなさい」
リカがそっと瞼を上げていくと、目の前には響く声、そのままに
全てを慈しむような中に、とても強固なものを覗かせる眼差しをした
ヒトが、少し寂しそうに微笑んでいた
「ワタクシはアナザの女王ナツミです」
「・・・?!・・・」
アナザの女王っ?!
うそ・・・女王様?!
・・・いったい、私になんの用が?
口を開いてはみるものの、あまりの驚きでリカは言葉を発する事が
出来なかった
口だけではなく、瞬きするのも忘れたように、目までも大きく
見開いたままのリカに、ナツミはフッと表情を和ませた
「恐れる事はないのよ?
・・・ワタクシは・・・リカ、お前に頼みがあって、こうして会いに
来たのですから・・・」
164
:
アナザ・ワールド
:2004/06/09(水) 18:35
ナツミの話を聞けば聞くほど、自分とは縁遠い大きな事柄な気がした
リカは術の腕が、さほど悪くないと自負しているが、アナザや
見たことも無いリアルという、二つの大きなワールドの大事に
係われるほどの使い手であるなどど、自惚れるほど自信家な訳ではなかった
リカは躊躇いがちにナツミに言葉を返した
「・・・女王様、なぜ私なのでしょう?」
「それは・・・ヒトミが望んだ事だからです」
その名前を聞いた瞬間、リカの心臓がドクンッと大きく波打った
「・・・ヒトミは・・・ワタクシの側近
あのモノ以上の適任者は光のタミの中にいないでしょう
ヒトミは必ず、ワタクシの願い通りに働いてくれるはずです
けれど・・・」
ナツミは遠い目をして、何かを懐かしむような表情を浮かべた後
また寂しげな微笑みを浮かべた
「・・・交換条件を出されてしまったのです
共に行く者を、リカ・・・お前にすること
そして、ストーンを持ち帰ったその時には、もう一つの望みを
叶えて欲しい、と
リカ・・・無事、ストーンがワタクシの手に戻ったならば、お前の
望みも一つだけ叶えましょう」
「・・・ヒトミは・・・光のタミは何を願ったのですか?」
165
:
アナザ・ワールド
:2004/06/09(水) 18:36
ナツミは目を細めて、ほんの僅かにどこかが痛むような顔をして
リカを見た
「・・・それは・・・ワタクシの口から言うべき事ではありません
ヒトミと行動を共にする内にいずれわかる事でしょう・・・
リカ・・・どうしますか?
ワタクシの願いを聞き入れてくれますか?」
リカはすぐに頷くことは出来なかった
出来れば、逃げ出してしまいたい
見知らぬリアルと言うワールドに行かなくてはいけない事も
途方もない探し物からも・・・ヒトミという名の光のタミからも
けれど、それは出来ない事だということもわかっていた
自分は必ず行くだろう・・・あの光のタミの行く所ならば・・・
リカはそっと目を閉じると、ゆっくりと頷いた
そして次に顔を上げた時は、頑なささえ感じさせる真っ直ぐな
眼差しでナツミを見つめ返した
「・・・どこまでお役に立てるかわかりませんが・・・私の出来る限りで
女王様にお答えします」
166
:
アナザ・ワールド
:2004/06/09(水) 18:36
ナツミは一瞬、僅かに目を見開いた後、少し眩しそうな表情でリカを見た
「・・・ありがとう
ワタクシ達には、あまり時間が無いのです
明日、星の時間に、カオリの家へ行きなさい
ストーンを見つけ出す、なんらかの知恵を授けてくれるかも
知れません
その後、ワタクシがリアルへの道、夢の道を開きましょう」
そう言い終わると、ナツミの身体自体が発光を始めて、光の粒子に姿を
変えると、パッと弾ける様に消えてしまった
穏やかな月光だけに戻った薄闇の中で、リカは震える口許を開いて
大きく深呼吸した
考えても仕方がないわ・・・
行けばわかる・・・わかる気がする
私の心の行方が・・・取るべき行動が
きっと・・・すべてが・・・
あの光のタミがいる処へ・・・
167
:
Sa
:2004/06/09(水) 18:38
あまりに更新量が少なかったので、キリのいいトコまで追加で行かせて頂ました(w
168
:
JUNIOR
:2004/06/10(木) 21:29
更新おつかれさんです。
気まぐれでも気になってしまうものは仕方がないのです(w
『好きなことにはとことん、嫌いなものにはさっぱり』
と、いうのが自分の性分ですので(w
Saさんの小説は好きだからとことん読むのです。
169
:
54@約束
:2004/06/11(金) 00:16
更新、お疲れ様です。
今回、いしよし以外のキャラにもかなり注目しておるのですw
これだけの壮大なお話の中で、キャラたちがどう動いて行くのか・・
あくまで自分の中でですが、女王は脆さと強さが共存しているイメージがあったので、
今回はスっと入り込めるような気がしてます。
もうひとりの人とはある意味「宿命」を感じますねw
次回も楽しみです。
170
:
日と月のリング
:2004/06/17(木) 12:06
心ここにあらず、という顔つきで黙々と足を前に出し続ける
ひとみを横目で見ながら、梨華は、ふぅと小さな溜息を付いた
梨華は朝があまり得意では無いけれど、起きて時間が経つにつれ
いつもだったら、はっきりしてくる頭も、今日は一日中ぼんやりと
鈍く霞ががっているようだった
いつも通りの道をいつも通り歩く
見慣れた学園からの帰り道
隣りを歩くひとみの存在も、今では梨華の日常の一コマだった
なのに一日中、梨華は自分の意識というか、存在自体さえもが
ここに在る様でここに無い、というなんとも心もとない気持ちに
襲われていた
理由はわかってる
昨夜の夢のせいだ、と梨華は思った
171
:
日と月のリング
:2004/06/17(木) 12:07
いまだかつて、あんなに生々しく覚えていた夢などない
自分と同じ顔をした彼女が、移り変る眼差しを梨華に向けていた
薄闇の湖面の上から、滑るように吹いてくる風に、同じ長さの髪が
肩先で揺れていた
そして何よりも、台本を丸暗記した芝居のように、彼女の口から出た
言葉の一つ一つを、はっきりと思い出すことが出来た
ひとみちゃんにも話してみようかな?
何度か口にしかけて、止めてしまったことを梨華はもう一度考える
昨日の彼女の話は、ただの夢と笑え無いほど、今の自分達とシンクロ
してる気がしたから
「・・・あのね、ひとみちゃん?
わたし昨夜、夢を見たの・・・それが・・・」
梨華は足を止めると、上目遣いでひとみを見上げた
ひとみはぼんやりしたままの視線で梨華に顔を向けた
「・・・?・・・それが?」
172
:
日と月のリング
:2004/06/17(木) 12:07
梨華が話終わると、俯いていたひとみはゆっくりと前髪を
掻き揚げてから顔を上げると、梨華を見た
「・・・あのさ」
「ん?」
「・・・今日・・・今日さ、うちに泊まりに来ない?」
「・・・はい?」
ひとみの脈絡なく感じるいきなりの誘いに、梨華が驚いて
目を見開くと、ひとみはフッと目を細めて笑った
その大人びた表情に、梨華の心音がドクンと上がった
ここのところ、ひとみは思慮を廻らすような表情ばかりしていて
初めて会った日と比べると、別人のようだった
よく眠れないと言っていたし、白い頬の丸みも削がれたみたいに
細くなってみえる
それはそうだよね・・・
自分よりも、ひとみの方が心中は複雑に違いない
「・・・あたし、ずっと考えてたんだけど・・・
ま、考えても仕方ないじゃん?ってのもあるんだけど
やっぱさー 考えずにいれねーってゆーか・・・」
ひとみは自嘲的にニヤリと頬を歪めた
173
:
日と月のリング
:2004/06/17(木) 12:08
「・・・なんつーか、格好わりーけど、ぶっちゃけ怖かった訳よ
どー考えたって普通じゃねーじゃん?
けど、ま・・・目ぇ逸らしてても仕方ないかな、と
この状況からは逃れられないみたいだし?
・・・運命?・・・転生?・・・んなの知んねーけど、とりあえず戦って
みますかーとか、思ったりしてね
もともとバトル系嫌いじゃないし〜
守らなきゃいけないお姫さまがいるんなら、そこそこ楽しめるかな・・・と」
お姫さまのところで、自分をちらりと見て、少し照れくさそうに
笑って見せるひとみを見て梨華は思った
ひとみという人は、自信ありげに見せていても、実はとても脆いのかも知れない
だからこそ、色んな表情を持っているんじゃないか、と
そして、誰かを守れると言うことだけが、自分を強く見せる、その誇りみたいものを
支えていけるすべなのかも知れない、と
それなら、わたしは・・・
わたしはひとみちゃんの傍にいて、頼ることが大事なのかな?
それがひとみちゃんに力を与えて、最後にはひとみちゃんを守ることに
繋がって行けるのかな?
いつでも寄り添い、その時々で姿を変えていく月のように・・・
174
:
日と月のリング
:2004/06/17(木) 12:08
梨華がそんなことを考えながら、ぼんやりとひとみの顔を見ていると
ひとみはニヤニヤと笑った
「なんだよー 人の顔、じーっと見ちゃってさー
そんなに格好いい?」
「・・・バカみたい」
「むーかーつーくー」
ひとみは梨華の首に腕を回すと、軽く握った拳で梨華の頭を
グリグリと押した
「やぁだ〜 止めてよぉ」
梨華がクスクス笑いながら、首を竦めるとひとみも声をたてて
笑った
自分達には、こうやって笑い合うことが、とても大切なんだと梨華は思った
大きすぎる、正体のわからないことに負けない為には・・・
ひとみが首に回していた腕を、頭へと動かして、梨華の唇に
自分の唇を軽くあてた
それはくちづけと言うよりも、軽く掠りあった場所が、たまたま
唇だったというような、他愛無いキスだった
175
:
日と月のリング
:2004/06/17(木) 12:09
あまりに突然だし、そんなことをされる雰囲気でもなかったしで
梨華は、どんなリアクションも返せないで、ただボケッと立ち
竦んでいた
「・・・・・・・・」
「・・・傍にいてよ・・・離れないで」
思いつめたような声が頭上から落ちてきて、梨華がひとみの顔を
見ようと、顔を上げかけた時、ひとみの手の平が梨華の頭を上から
押さえて、髪の毛をグシャグシャと、少し乱暴に撫でた
梨華は急に切なさに襲われて、ただ、コクンと頷いた
梨華が頷くと、頭の上に置かれていた手が下りてきて、梨華の片手を
しっかりと握ると、ひとみは歩き出した
「・・・家、帰ったら、キスの続き・・・しよっか?」
「・・・はぁ?!」
梨華が足を止めると、腕を後ろに引っ張られながら、ひとみも立ち止まり
振り返ると、仏頂面をする梨華を見て、ニヤニヤ笑った
「冗談だってー
・・・あたしもさ、夢見たんだ
けどあれ、夢じゃなかったかも知んない
もし・・・今晩もあの人が現れたら・・・二人で見ることが出来たら
それはもう、夢じゃないじゃん?
それを、試してみたい・・・あの人、なんか言いたそうだったし」
「・・・あの人?
もう一人のひとみちゃん?」
176
:
日と月のリング
:2004/06/17(木) 12:09
「違うよ
見たことも無い人・・・小柄でオーラあって・・・
微笑んでるんだけど・・・なんつーか、寂しそうな人」
「・・・そう」
梨華が視線をひとみの顔から、足元に落とすと、ひとみは
豪快な笑い声をたてた
「アハハッ!暗い顔すんなよー 大丈夫だって!
あたしもう、腹括ったからさ
梨華ちゃん、そんな顔してると・・・あたし、忘れさせて
やりたくなっちゃうじゃん?」
「・・・・・・?」
「あーんなこととか、こーんなこととかして〜♪」
梨華の頬がボッと赤く染まると、ひとみは意地悪そうにニヤリとした
「・・・何、想像しちゃってんのかなー?
あたしはほら、ゲームとか?そーゆうつもりで言ったんだけど?」
「・・・わたし、自分の家に帰るっ
ひとみちゃんちになんて、絶っ対行かない!」
自分の手と繋がれていたひとみの手を振り解くと、梨華は湯気が
上がりそうな真っ赤な顔で、サッサと歩き出した
「うそうそっ!
ごめんって、梨華ちゃんっ もうからかったりしないからー」
ひとみは梨華と歩調を合わせると、片手で拝む真似をした
177
:
Sa
:2004/06/17(木) 12:10
更新しました。
JUNIOR様
アハハッ! 好きになって頂けて嬉しいですわ〜
作者もとことん書かなければ・・・(w
54@約束様
女王ともうひとりの人は内面的ライバルですね、作者の中では(w
今回、話の性質上、まだまだ人数増えるんですよ〜
霞そうになるかも知れませんが、基本はいしよしですんで!
178
:
54@約束
:2004/06/17(木) 22:21
更新、お疲れ様です。
現世のふたりは何か可愛いですねぇ。特に吉はさすがSaさん!って感じですw
何かが動き出しそうな予感が・・
キャラがまだ増えるんですか?
これだけ壮大なドラマになると、誰がどんなキャラなのか考えるとワクワクします。
次回も楽しみにお待ちしております。
179
:
JUNIOR
:2004/06/17(木) 23:28
更新お疲れ様です。
吉の言動に笑ってしまいました。
石は何を考えてしまったのでしょうか?
キャラが増えるんですか・・・・・・・。
がんばって頭で整理しときます。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板