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ザ・ワールド
1
:
Sa
:2004/04/22(木) 14:59
またまた、お邪魔しに来てしまいました
自分でもどう転ぶのか、わかっていない作品なのですが
書きたい気持ちに負けて、スレ立てしてしまいました
よろしければお付き合い下さい
2
:
序章
:2004/04/22(木) 15:00
夢を、見た
3
:
序章
:2004/04/22(木) 15:01
大きな大きなまるい月が出てた
発光して輝く白い月
その下で、コンクリートの灰色が鈍く浮かび上がって見える
黒い影が・・・
疾風のように走って行く
乱れることのない規則的な呼吸音だけが、総てを包み込む様に
流れ続けて、響いている
見たい、もっと近くで・・・
願う声が聞き届いたと言う様に、黒い影は四本の足の動きを止めた
4
:
序章
:2004/04/22(木) 15:01
月が照らし出す・・・その姿
眩い純白の毛皮に包まれたまるで狼の様に、大きな大きな犬だった
瞳は侵すことを許さない誇りと、強い意志を持ち黄金に輝いている
一目見ただけで、心を奪われるほど・・・
それは美しい、美しい姿だった
5
:
リアル・ワールド
:2004/04/22(木) 15:02
今日はなんだか、ぼぅーとしてる
6
:
リアル・ワールド
:2004/04/22(木) 15:03
朝から調子が悪かったのよね、石川梨華は、ふぅと息を吐いた
朝方、夢を見てた気がする
とても、とても大事な夢、忘れてはいけない何か・・・だけど、思い出せない
梨華は眉を寄せた、自分でも気がつかない間に唇が尖っていく
7
:
リアル・ワールド
:2004/04/22(木) 15:03
朝のHRで担任が緊張した面持ちで、梨華のクラスに今日、転入生が
来る予定だと言った
一時限目が始まって少しすると、廊下をせかせかと急ぎ足で進む音がして
教室のドアが、ガラリと開けられた
そして、一時限目は自習になった
後ろの席のクラスメートがたてる、噂話は声だかで、聞く気は無くても
梨華の耳まで届いた
「ねー? 転入生の噂、聞いた?」
「なんか、すっごくお金持ちの子なんでしょ?」
「その子が来ないから、先生達、慌ててんのかな〜?」
「まっさか〜 うちら、高校生じゃんっ?」
転入生・・・ね?
しばらくは話題の的だろうなぁ〜
お金があろうと、無かろうと、転入生とはそう言うものだ
梨華は頬杖をつきながら、窓の外を見た
8
:
リアル・ワールド
:2004/04/22(木) 15:04
窓が、自分を映し出すもっとも効果的なスクリーンだと、言わんばかりに
五月の樹木は活き活きとして見える
窓ガラスに隔たれて感じることは出来ないが、そよそよと吹く風が
うららかな春の光で歌を奏でるように緑が揺れた
梨華を誘う様にゆらゆら揺れていて、時折、光を放つ緑の濃淡
「ね、ごめん
わたし保健室に行ってくる、朝から頭が痛くって・・・
先生、来たらそう言っておいてくれる?」
自習とは名ばかりで、思いもよらないプレゼントのような自由時間を
ファション雑誌を捲りながら、顔をつき合わせてるクラスメイトに
そう言うと、梨華は静かに教室から出て行った
9
:
リアル・ワールド
:2004/04/22(木) 15:05
梨華の通う学園の周りは、このご時世では贅沢すぎるくらいの
緑に囲まれていた
外は気持ちいい・・・、梨華の髪がさらさらと風に揺れる
梨華はそのまま裏庭に抜けると、古い教会の前に出た
この教会、前から不思議だったんだけど・・・?
今はカトリック系じゃないけれど、昔はそうっだったのかしら?
梨華は思い立って、扉を押してみた
ビクともしなかった
「・・・開かないよ・・・たぶんね
いまはまだ、その時じゃないから」
10
:
リアル・ワールド
:2004/04/22(木) 15:05
頭の上から突然声がして、梨華は空を仰いだ
大木が広げる枝に、青々と瑞々しい葉を広げざわざわと揺れている
緑が眩しい・・・
洩れては零れる木漏れ日を、片手で遮るように目をこらした
ザザザーッと、連なる葉が大きな音を立てた瞬間
梨華の目の前にひとりの女生徒が立っていた
・・・まるでいま、空の上から落ちてきたみたい
色素があまり濃くない、日の光をそのまま閉じ込めて着色した様な
短めの髪をさらりと振ると、女生徒はまっすぐ梨華を見た
うちの生徒?・・・知らない、見たことがないよ
こんな目立つ人
11
:
リアル・ワールド
:2004/04/22(木) 15:06
梨華もまっすぐに、女生徒の顔を見つめ返した
その瞬間、声が聞えた
・・・やっと・・・会えたね
梨華は驚きに目を見開いた
女生徒の唇は薄く微笑む様に、引き上げられているだけで
言葉を発していなかったから・・・
その声が梨華の頭の中で響いた刹那
女生徒の瞳が金色に輝くように見えた と、梨華は思った
12
:
Sa
:2004/04/22(木) 15:07
まだ頭の中で、全てがまとまってないので
長さが自分でわかっておりません
更新は不定期で、作者の今までのペースから考えたら
かなり遅くなりそうです
とても我がままで、申し訳ないのですが
それでも読んで下さる方がいらっしゃれば光栄です
管理人様
ご無沙汰しております
作者自身で話の長さが掴めないもので、またまたスレを
立てさせて頂きました
お世話をおかけしますが、よろしくお願い致します
13
:
JUNIOR
:2004/04/22(木) 23:07
わぉ。Saさんの新作だ!!
楽しみにしてます。Myペースで更新頑張ってくらさい。
その女生徒って・・・。多分あの人ですよね。
絶対最後まで読みます。(何があっても)
14
:
54@約束
:2004/04/23(金) 01:36
おぉ〜、新作が始まりましたね!
お待ちしておりました。ヒサブリにお邪魔してビンゴ!で嬉しいです。
いきなりのドラマティックな導入部に引き込まれました。
速度は気になりませんので、まったり進めていただければ・・と思います。
15
:
リアル・ワールド
:2004/04/24(土) 18:00
最近・・・マジおかしーよ
吉澤ひとみは、これから自分が新しい高校生活を送ることになる
教室へと、教師に連れられて廊下を歩きながら首を傾げていた
今日だってさー・・・
朝のHRに間に合うはずだった
こんな時期はずれの転校で、ただでさえ目立つっていうのに・・・
目立つことは嫌いではない、むしろ好きなくらいだ
だけど・・・
ひとみは頭を軽く振ると、渡り廊下から見える緑の絨毯を
敷き詰めたような中庭を見た
16
:
リアル・ワールド
:2004/04/24(土) 18:01
ひとみは年老いた祖父と二人暮らしだった
祖父は寡黙で、とても慈悲深い目の色をしていた
現役を退いたと言っても、その発言はいまだ誰よりも
所有するグループ、またはその傘下の子会社に絶大なる
影響力を持っている
ひとみは子供の頃のことを、あまりよく覚えていなかった
物心がついた時には、広い屋敷で祖父と二人で暮らしていた
自分には何故この人しかいないのだろう?
子供のひとみは、そんなあたり前の疑問を持った
そして聞いてみた
祖父は子供のひとみが、思わず手を差し伸べたくなるほど
悲しい目をして言った
すべて私のせいなのだと、許して欲しいと
それ以上聞くことは、ひとみには出来なかった
ひとみはそう学校の成績が良い方ではなかったけれど、それ以上
年老いた祖父に詰め寄るほど、頭の悪い子供ではなかったから
17
:
リアル・ワールド
:2004/04/24(土) 18:01
それから時が経つにしたがって、自然と耳に入ってくる噂で
ひとみは自分の置かれている境遇を推測することが出来た
それは笑えるくらいお決まりの恋愛話だった
ひとみの母親は一人娘で、箱入りのお嬢様だった
そして、どんなロマンスがあったかは知らないが、ひとみの父親と
恋に落ちた
それは祖父の逆鱗に触れ、二人は駆落ちした
そしてひとみが生まれる
どういう状況だったのか、今となってはわからないことだけど
あまり上等とは言えない生活の果てに両親は死んでしまったらしい
会社の業績は飛ぶ鳥を落とす勢いで、娘は今に泣きついてくるに
違いないと高をくくってた祖父が、年老いて娘を捜し出した時
そこには孫にあたる自分しか残されていなかった
・・・そういうことだ
18
:
リアル・ワールド
:2004/04/24(土) 18:02
そんなことはひとみにとってはどうでもいいことだった
薄情だと言われるかも知れないが、顔も覚えていない両親の事で
目の前にいる祖父の顔が、悲しく歪むとこなど見たくはなかったから
あまり寂しいと感じたこともなかったし・・・
祖父はひとみに対して、けして甘くはなかったけれど
いつでも穏やかで優しかった
そんな祖父が、ちょうど一年前、現役を引退した
そして今年の春、ひとみが高校の二年に上がる頃、こう言い出したのだ
「私はもう年寄りだし、もう少し緑の多い場所で暮らしたい
ひとみも、もう十七になった 何も私に付き合うことはないのだから
お前はこのままここで暮らしなさい」
そう言われて、自由になれて嬉しい、などと単純に喜ぶほど、ひとみは
もう子供ではなくなっていた
祖父に、この場所が候補地の一つだと連れられて来た時
ひとみは心の中で、すでに決めていたのだ
自分もここで暮らそう、と
そして問題なのはそんなことではなく、どういう訳か自分自身が
知らない間に、この学園を選んでいたと言うことだった
19
:
リアル・ワールド
:2004/04/24(土) 18:02
・・・今朝もそうだ
充分時間があったのだ、ひとみにしてはめずらしい程
だからこそ、春の日差しに誘われてフラフラと散策を始めた
そして古ぼけた教会を見つけて・・・そこまでは確かに覚えていた
・・・だけど
「吉澤さん、今日からここが貴女のクラスよ」
そう言われて、ひとみは我に返ると反射的に頷いた
そして教師の後について教室へと足を踏み入れた
ひとみが教室に入ると、ザワザワしていた教室がつかの間
しん、と静まって、またざわめきに包まれた
「見て見てっ すっごぉい、あの子金髪だよ〜」
「目も茶色いよね?ハーフとかかなぁ?」
「でもでもぉ すっごく格好いいぃ〜」
新しくクラスメートになる女生徒達が口々にする言葉は
ひとみにとっては聞きなれたものばかりだ
20
:
リアル・ワールド
:2004/04/24(土) 18:03
誰も信じはしないだろうが、ひとみは髪を染めてはいなかった
まだ今より幼くて、自分に向けられる視線に耐えられなかった頃
何回か、黒く染めたことさえある
けれどあっさりと落ちてしまい、結局面倒になったひとみは
開き直ることにしたのだ
「吉澤ひとみさんです
吉澤さんは引っ越して来たばかりで、ここら辺には不慣れなのよね?
皆さん、仲良くしてあげてね・・・さぁ、吉澤さん・・・」
教師に急かされながら、ひとみは、わざとゆっくり髪を掻き揚げた
「吉澤ひとみです・・・以後、よろしく」
教室のあちこちから小さな悲鳴が上がって、教師は咳払いをした
「吉澤さんの席は、あそこよ・・・窓際の一番後ろ」
ひとみは小さく頷くと、教師が示す机に向かって殊更ゆっくりと
教室を後方に進んで行った
21
:
リアル・ワールド
:2004/04/24(土) 18:04
・・・リ・・・カ・・・
ふいに誰かがひとみに囁くように言う
・・・リカ?
ひとみが足を止めて、声の主を確かめようと辺りを見回した時
真っ直ぐに自分を見つめる視線とぶつかった
22
:
リアル・ワールド
:2004/04/24(土) 18:04
漆黒の宝石のような美しい瞳が驚いたようにひとみを見ていた
情感豊かそうな淡く色づく唇が、何か言いたげに開かれている
おやまぁー これは、なかなか・・・
ひとみは教室中の注目が自分に集まってることを意識しながら
自分を見つめる女生徒に向かってニッコリと微笑んだ
「初めまして、リカちゃん」
ひとみがそう声をかけると、その女生徒は一瞬身体を小さく震わせ
信じられないと言うように、更にその目を見開いた
なんだよ?
いま自分でそう言ったくせに・・・
ひとみは白けた気分になって、片眉を小さく上げるとそのまま
自分の席に着いた
23
:
Sa
:2004/04/24(土) 18:05
更新致しました
JUNIOR様
ハイッ!!!またまた登場してしまいました(汗)
ですねぇ〜 作者は基本的にこのCP以外
書く気がないので(w
これからもどうぞご贔屓に♪
54@約束様
HNが変わられて、時の流れを感じました(w
新作など始めて、作者よ大丈夫なのか?ってのが
ありますが・・・(汗
引き続きのお付き合い切望っす♪
24
:
JUNIOR
:2004/04/24(土) 19:07
更新お疲れ様です。
いしよし大好き人間なんで嬉しい限りです。
2人ともどんなキャラなんでしょうか?
他の出演者も楽しみにしてます。
頑張ってくださ〜い!!
25
:
54@約束
:2004/04/25(日) 00:25
更新、お疲れ様です。
メチャイイです。この時点で名作になることを確信いたしました。
川o・-・)ノ<今回わたくしは出番が(ry 完璧です!
運命に導かれた二人・・
某所の作品とのあまりにテイストの違いに感心しまくりですw
26
:
ちゃみ
:2004/04/28(水) 04:57
はい、こちらにもへばり付かせて頂きますよ。
導入部からこのタッチ、どうなるのか楽しみでたまりません。
>作者は基本的にこのCP以外書く気がないので
私はこのCP以外読む気がないので、どんどん書いてください。(w
27
:
リアル・ワールド
:2004/04/28(水) 11:11
梨華は授業が終わると、いてもたってもいられず
ひとみの席に向かった
なんであなたは、わたしの名前を知ってるの?
やっと会えたねってどう言うこと?
それに・・・
さっき会ったばっかりなのに、初めまして、だなんて・・・
ひとみは自分の席の回りを、すでに女生徒に囲まれながら
寛いだ様子で、清潔そうな笑顔を浮かべていた
そして梨華と目が合うと、素早くウィンクしてみせ
その後、傍にいる女生徒に申し訳なさそうな顔をした
「悪いけど・・・
彼女に案内してもらう約束なんだ・・・ね?リカちゃん」
28
:
リアル・ワールド
:2004/04/28(水) 11:11
そんな約束した覚えないわよっ!
梨華は、喉元まで出かかった言葉をどうにか飲み込むと
曖昧に微笑んで、頷いた
彼女には聞きたいことがあるのだ
それも出来れば、こんなにざわついた教室などではないとこで・・・
「そう・・・なの
さっき・・・さっきね、先生に転校生だからって頼まれたから・・・」
「そう言う訳なんだ
ごめんね、次はキミにお願いするよ」
ひとみが気障にそう言って立ち上がると、傍にいた女生徒は
恨みがましい目をして梨華を見た
な、何なのこの人・・・
梨華があっけにとられてる間に、その横にスッとひとみは立って
自分達に向けられる視線の意味になど、まるで気がつかないと
言うように朗らかに笑った
「で、どこから案内してもらえるんですかね?」
29
:
リアル・ワールド
:2004/04/28(水) 11:12
梨華は取りあえず、必要だと思われる場所を次々案内していった
ひとみはどうでもよさそうな顔で、黙ってついてくる
最後は音楽室だった
教室の中を覗き込んだひとみは、ふいに何かに興味を引かれた様に
その中に入っていく
そして窓際に立つと振り返って、梨華を呼んだ
「ねぇ・・・」
呼ばれて梨華も教室に入ろうとすると、ひとみが囁く様に
小さな声で言った
「あたしに用があるんでしょ
・・・ドア、閉めた方がいいんじゃないの?」
やっぱりこの人・・・わざとなのね?
やっと会えた、の次が初めましてだなんて・・・
人のこと、からかったつもりかしら?・・・悪趣味だわ
梨華は小さく息を吐くと静かにドアを閉めた
30
:
リアル・ワールド
:2004/04/28(水) 11:13
梨華が傍まで行くと、ひとみは窓の外の教会を見ていた
「ねぇ?さっき・・・」
梨華がひとみの視線の先を追いかけて、そう口に出した時
遮るように、ひとみが言った
「あのさ、名前・・・何?」
「え?・・・だって、あなた知ってたじゃない」
「リカちゃん?・・・どんな字?苗字は?」
「石川梨華・・・いしかわは普通に石に川
りかは果物の梨に、華・・・あ、はなは華道の華よ」
「そ・・・あぁ、あたしはね
あなたって名前じゃないんだよね・・・聞いてた? 担任の話」
ひとみは窓から梨華へと視線を移すと、唇の片側を上げ
皮肉げに笑った
「あな・・・吉澤さんって、いい根性してるわねっ」
「そう?・・・なんにも知らない転校生に、そっと自分の名前を囁いて
アプローチして来るのも、いい根性だと思うけど?」
囁いた?・・・わたしが自分の名前を?
この人、なに言ってるの?
身に覚えのない言葉に戸惑って梨華が眉を寄せると、その片頬に
ひとみの手が、そっと添えられた
31
:
リアル・ワールド
:2004/04/28(水) 11:13
「今さらそんな顔しないでよ?
・・・梨華ちゃんさ、かなりイケてるから、転校初日にも拘らず
お誘いに乗ることにしたんだし」
「やめてよっ」
梨華は自分の頬に当たるひとみの手を振り解くと、その顔を
睨みつけた
「あ、あなた 頭おかしいんじゃないのっ!
わたしはあなたに自分の名前なんか教えてないわよ
教室でも、教会の前で会った時もっ」
「・・・は?」
それまでどこか、高見から梨華を見下してる様に浮かべてた
薄笑いが、ひとみの顔からスゥーと消えた
「・・・あたしと会った、だって?」
ひとみは恐ろしいほどの真剣さで、窓の外を見た
そこには、忘れられることだけを望んでいると言う様に
ひっそりと佇む教会があった
「・・・いつ?」
「え?」
「いつ会ったの?・・・あたしと」
「朝よっ それも今日のっ・・・あなた、もう忘れたって言うの?」
32
:
リアル・ワールド
:2004/04/28(水) 11:14
梨華の投げつける様な強い言葉に、ひとみは顔を歪めると
天井を見上げた
「忘れるもなんも・・・」
そして、そのままズルズルと座り込むと俯いた
「・・・知らねーっつーの」
膝を抱えて丸まるひとみを、梨華は息を呑んで見ていた
・・・なによ、なんなの?
この人、本気でやばいんじゃないかしら?
「・・・あのさ」
くぐもった声に梨華が身構えると、ひとみはゆっくりと
顔を上げた
「わりーんだけど、話してくんない?」
「・・・何を?」
「だからー あたしと会った時のことを、だよ」
「な、なんでよ?」
「ヘンなこと言ってるのはわかってるよ
けど・・・頼むよ、マジで・・・」
33
:
Sa
:2004/04/28(水) 11:16
更新致しました
JUNIOR様
うぅ〜む・・・どんな二人なのでしょう?(w
この作品は作者にとって、ある意味冒険なんで
どうなることやら・・・(汗
トコロで昨日、バースデーだったそうで、一日遅れですが
お誕生日おめでとうございましたぁ〜♪
この一年が貴方様にとって素晴らしい日々になる事を
心より願っております
54@約束様
イヤ・・・先物取引はキケンなので、気をつけて下さいませ(w
書ける限りはいろんな作風にチャレンジしてみたいなぁ〜と
今回ワタクシ出番なさそう、と、許すまじ作者>φ(・-・o川
ちゃみ様
無事お着き頂けたみたいで、ホッとしております
まだ作者の中で混沌としてるハナシなので
なんだか時間がかかりそうですが(w
34
:
ru-ku
:2004/04/28(水) 15:25
こんにちは、はじめまして。
少し前から小説読ませていただいていたのですが、
約束を今日やっと読み終えました。
今更な感じではありますが、感動しました。
病気絡みのものは、悲しい結末が多い中、
本当のハッピーエンドいうものを見せて頂けたと思いました。
こちらの方は、まだ話が動き出す手前なので、
これからの展開を楽しみにしています。
それでは、長文となりましたが、
これで失礼させていただきます。
35
:
54@約束
:2004/04/28(水) 15:49
更新、お疲れ様です。
先物買いはそのリターンこそが何よりの魅力でございますよw
チャラ男(?)と繊細さが混じっていそうな吉のキャラがイイですねぇ。
このふたりの運命はいかに・・
次回も楽しみです。
36
:
JUNIOR
:2004/04/29(木) 23:02
更新お疲れ様です。
吉澤さんイイ!繊細っぽい所がイイ!
あぁ〜続きが気になって仕方ない。
はい、無事に14歳になりましたです。
もうすぐ受験生・・・・・_| ̄|○
1年がいかに素晴らしくなるかはSaさんに結構かかわっております。
これからもSaさんの素敵な文章が読めると嬉しいです。
37
:
リアル・ワールド
:2004/05/06(木) 21:41
・・・やっべ
マジ、わかんねーよ
それが自分のしたことだなんてさー
なんか、笑える
ひとみは渋る梨華から、今朝の話を聞き終わると、肩と唇を
引きつる様に細かく奮わせた
梨華が怪訝な顔で自分を見ている、その視線を痛い程、感じる
けれど、ひとみは今度は身体までもが小刻みに震え出すのを
止める事が出来なかった
「・・・ねぇ、大丈夫? なんか・・・顔色悪いみたいだよ?」
「いま冬だっけ?・・・なんかさー さみーんだよ」
ひとみは梨華を見上げて、唇の片側を僅かに引き上げた
あたし、上手く笑えてねーよなぁ?・・・正直、ビビッてるし
・・・あ〜あぁ 格好わりぃ
「・・・春だけど? 寒気がするの?」
梨華は憮然とした顔の中の瞳にだけ、僅かに心配するような色を
覗かせた
ひとみはぼんやりと、その瞳を見ていた
38
:
リアル・ワールド
:2004/05/06(木) 21:42
このまま見続けていたら、梨華の瞳には、今ここにいる自分以外の
誰かが映る気がする
目を逸らしてしまえばいい・・・そう思うのに、何故だか出来ない
ひとみの身体がブルッと大きく震えた
「・・・大丈夫?」
ひとみが返事を返さないで、ただ梨華を見つめて返していると
梨華は腰を屈めて、ひとみの額にそっと手を当てた
その瞬間
ひとみの身体の中に熱風が吹き上がる
そして自分でも、訳がわからないうちに梨華の身体を抱き寄せていた
「ちょっ、ちょっとーっ!」
「・・・このままでいてよ・・・お願い」
「そ、そんなぁー だって」
「なんもしないから・・・ほんとに・・・さみーんだよ」
「・・・もうっ、なんなのよぉ」
「・・・なんなんでしょ?」
ひとみは梨華を抱きしめる腕に力を入れた
39
:
リアル・ワールド
:2004/05/06(木) 21:42
・・・ほんとに、なんだって言うんだよ
梨華が自分の腕の中にいる
それを感じているとひとみは、自分の頭の中や身体中の全て、心の内部にまで
今まで経験した事のないくらい、温かい何かが流れ込んでくる
それは陶酔する程、心地よい感覚だった
トクトクトク・・・
梨華の心臓の音と、自分の心臓の音が重なると、あまりの幸福感に
ひとみは眩暈を起こしそうになった
怖えーーっ ヤバイってマジで、こんなん・・・さ
・・・ありえねーよ
なにがなんだかさっぱりわからない・・・けれど
一つだけ、はっきりしたことがある
自分はこれから、梨華なしでは生きていけそうにもない
・・・違う、そうではない・・・たぶん
梨華と会う為だけに生まれてきたのだ
理由なんてわからない、それでもひとみはそう確信していた
40
:
リアル・ワールド
:2004/05/06(木) 21:43
リカ・・・は、ワタシのモノ
ワタシだけのモノ
41
:
リアル・ワールド
:2004/05/06(木) 21:43
ふいに、鼓膜が直に振動する様にして、頭の中に誰かの声が響いた
すると、ひとみの身体中を流れる血液が沸点を超えた様に熱くなって行く
違うっ!
この子はあたしのもの
誰にも、渡さない・・・
いきなり身体の芯に火を点けられ暴風に煽られて、直、消える事無く
ひとみの内で脹らみ続けていく熱い塊は、他の全ての思考を薙ぎ払い
一つの強い想いだけをひとみに残した
そう・・・
なぜかなんて考えるだけ無駄・・・きっと、理由なんてものは無いのだ
少なくとも今の自分には
梨華を手に入れたい・・・心も身体も、その全てを・・・
ただ、そうしたい・・・それだけのことだ
・・・なにもしないなんて、言うんじゃなかったな
42
:
リアル・ワールド
:2004/05/06(木) 21:44
ひとみに預けられた梨華の身体は柔らかく、どこか甘い果実の様に
匂いたち、唇を寄せたい衝動を抑えるのが難しく思える
・・・やっちゃう?
ハァ〜 いきなりそれはヤバイだろ?
普通、嫌われるよなぁー・・・んなことしたら
地道に行くか?・・・面倒だけど、仕方ねー
「・・・あ」
「ん、どした?」
「空・・・変なの、さっきまで晴れてたのに・・・」
梨華のどこか恐ろしいものを見た様な声音に、ひとみは梨華を
抱きしめたまま、首だけ回して窓の外を見た
広がる空は、灰色を通り越して禍々しい程、どす黒く染まっている
「・・・帰ろう、送ってく」
「・・・え?・・・なんでよ?」
ひとみが梨華の身体に回していた腕を解きながら、そう言うと
梨華は困惑した様に眉を寄せる
43
:
リアル・ワールド
:2004/05/06(木) 21:44
「帰りたくねーの? もしかしてぇ、あたしと一緒にいたい、とか?」
「そんな事、ある訳ないじゃないのっ・・・送る、なんて言うから・・・」
「・・・ぁあ あのさぁ〜・・・あたし・・・あたし、さ 梨華ちゃんに
惚れちゃったんだよねー」
「・・・は?」
「運命感じちゃったんですよ つーか、大事にするからさぁ〜
・・・あたしのもんになってくんない?」
「なっ・・・なに言ってるの?自分が言ってることわかってる?
それ・・・冗談のつもりなら全然面白くないわよ?」
「マジもマジ、超マジ!・・・スゲーお勧めなんですけど?」
「・・・信じられない」
梨華は、どこか自信ありげにニヤついた顔をするひとみを睨みながら
立ち上がるとドアに向かって歩き出した
「ちぇっ・・・置いてくなっつーの」
ひとみは梨華の後姿を見ながら、僅かに耳にかかる髪に指を通して
掻き揚げた
そして、ゆっくりと立ち上がり、一度、窓の外に視線を投げると
そのまま真っ直ぐに音楽室を後にした
44
:
Sa
:2004/05/06(木) 21:45
更新致しました
ru-ku様
初めまして♪
前作をお読み頂けたそうで、さぞお疲れになった
ことでしょう・・・結構、長いですよね?
こちらも、お付き合い頂けるなら光栄でございます
54@約束様
アハハッ! 通なオコトバですなぁ〜
その上、吉澤さんのキャラ考察も参考になりまする〜
運命(w・・・どうなるコトやら
JUNIOR様
イイっすか? それなら良かったデスわ(w
続きが気になって仕方ナイっつーのは嬉しいオコトバですなぁ〜
お読み頂けるのは嬉しゅうゴザイマスが、多大なご期待は・・・(汗
45
:
JUNIOR
:2004/05/07(金) 18:14
更新お疲れ様です。
ココの吉澤さんは軽い人!?
これからの行動に期待(・∀・)大!
がんばってくださ〜い。
46
:
リアル・ワールド
:2004/05/08(土) 15:41
「梨〜華ちゃんっ」
「・・・・・」
「あれれぇー? 梨華ちゃん、口が聞けなくなっちゃったみたーい」
能天気なひとみの声が、急ぎ足で歩く梨華を追いかけてくる
梨華は振り向かずに、足を運ぶスピードを上げた
・・・なんなのよぉ〜
この人も・・・この空も・・・
ほんとに今日は変な一日だわ・・・
梨華が重くなりそうな足に力を入れると、ひとみが追いついて来て横に並んだ
腰を折る様に、梨華より高い背の上体を傾けて顔を覗きこんでくる
「あのさー?
あたしって、そこらの男よりずぅーっと格好いいと思わない?
スポーツも得意だしぃ〜 その上、お金持ちだしっ
・・・勉強は得意じゃないけどさ、頭の回転は悪くないよ
って、あのさぁ〜 聞いてる?」
「・・・自惚れてるのね」
「んー? さっきまではねぇ 自分が一番好きだったもんで・・・けど
いまは梨華ちゃんが一番っ!」
47
:
リアル・ワールド
:2004/05/08(土) 15:41
目の前に人差し指を立てて見せるひとみに、梨華は溜息をついた
「それで?・・・また、明日になったら忘れてるのかしら?」
「そんなこと気にしてたんだ? かーわい〜」
「き、気になんてしてないわよっ 振り回されるのは今日だけで
たくさんなのっ!」
「・・・それは無理っしょ? 言ったじゃん、あたし
運命、ってヤツ? 感じちゃったって、ねぇ?」
「勝手に感じてれば?・・・わたしには関係ないわ」
「つれないなーぁ」
ひとみは梨華の冷たい態度にも、怯む様子は全くなかった
それどころか、どこか愉しんでいるようにすら見える
おかしな人・・・やっぱり、からかってるつもり?
けど、残念ね? もう、その手には乗らないわ
梨華がひとみを斜めに見上げると、何?と言うように眉を上げて見せる
梨華は唇を強く引き結ぶと、真っ直ぐ前を向いて一層早足で歩き出した
48
:
リアル・ワールド
:2004/05/08(土) 15:42
ビュッーーーゥウ、と、強い風が吹いた
制服のスカートが強い力に抗って翻る
通学路を彩る優しげな緑の樹木が、空一面に広がる不吉な色を映して
なぜだか影のように暗く平坦に伸びて見える
風に煽られ、…ギィ…ギシィと悲鳴じみた音をたてた
なに?・・・なんなの?・・・気味が悪い
梨華は思わず足を止めて、大きく揺れる樹木を見上げた
「・・・うっ!!!」
唐突に耳に飛び込んできたうめき声に横を向くと、ひとみが頭を抱えて
膝から崩れて倒れこんで行くのが見える
「やぁっ・・・やだぁーっ ね、ねぇっ!どうしたのっ?」
梨華が膝を付いて、ひとみの顔を覗きこむと、その目は宙を彷徨った後
苦しげに閉じられた
「・・・あぁっ・・・止、めろ・・・い、やだ・・・」
「・・・えっ?なにっ?苦しいの?」
梨華がひとみの唇から微かに洩れる呟きを聞き取ろうと、さらに
顔を近づけた時、ひとみが目を閉じたままゆらりと上体を起こした
49
:
リアル・ワールド
:2004/05/08(土) 15:42
梨華が呆然とその様子を見ていると、ひとみは静かに瞼を開けた
「・・・来る」
ひとみが並木道を見上げた瞬間
連なる木々は、広がる枝をまるで鞭のように撓らせると、一斉に
その先を梨華へと向けて伸ばしてきた
梨華は目を見開くと、両手で口許を押さえた
唇からは押さえようとしても押さえきれない悲鳴が上がる
「…っ…やぁぁぁーーーっ!!!」
ひとみの両腕が素早く伸びてきて、梨華を抱き上げた
梨華は驚きで見開かれたままの目で、ひとみの横顔を見上げると
息を呑んだ
金色・・・吉澤さんの目の色が・・・目の色が・・・
「落ちるぞ・・・つかまってろ、ワタシに」
ひとみは駆け出した
梨華を抱えたままで、軽々と
背後から襲い掛かる枝葉さえも見えているかのように・・・
それはあまりにも速く、まるで空を飛ぶようで
梨華はひとみの首に回した腕に力を込めながら、自分の意識が遠のいて
いくのを感じていた
50
:
リアル・ワールド
:2004/05/08(土) 15:43
春独特のどこか甘い宵風に、頬を撫でられて梨華は静かに瞼を開けた
ゆっくり起き上がると、自分へと掛けられていたらしい制服の
ブレザーがぽとりと落ちた
辺りを見回すと、ビルの屋上らしい
身体の脇に置いた手の平から、コンクリートの硬質な冷たさが
伝わってくる
「・・・お目覚めかい?」
・・・えっと・・・あっ
背後から声がして振り返ると、ひとみが制服の白いシャツの裾を腰の上で
はためかせ、顔にかかる髪を掻き揚げて立っていた
梨華はとっさにひとみの顔を、目の色を、見た
そこには色素は薄いけれど、金色の輝きは無く、ライトブラウンに
染まって、優しげに揺らいで見える
・・・けど・・・どこか違う、みたい・・・
音楽室で一緒にいた吉澤さんと・・・どこ?・・・わからないわ
それに・・・
51
:
リアル・ワールド
:2004/05/08(土) 15:43
常識では考えられない異常な体験をしたというのに
自分が落ち着いていられることの方が、梨華の思考を混乱させる
いくらわたしより身体が大きくても、吉澤さんは女の子なのよ?
あんなに軽々とわたしを抱き上げて・・・
景色が飛ぶほどのスピードで駆け抜けてた
どう考えたって普通じゃないわ
けれど、梨華の胸中にはひとみに対して恐怖心というものが
湧き上がってきそうな気配はまるで無かった
あれは怖かったけれど・・・まるで影が意志を持ったような樹木
でも・・・この人は怖くない
・・・わたしは知っている気がする・・・この人のこと
「・・・あなたは誰?」
「・・・ヒトミ」
「吉澤さん?」
「・・・そうだね、でも・・・違うのかな?」
ひとみの微笑む目許は謎めいていて、そのまま吸い込まれそうな程
魅惑的だった
52
:
リアル・ワールド
:2004/05/08(土) 15:44
・・・やっぱり・・・違う
吉澤さんはこんな表情をしない
・・・見たい・・・もっと近くで・・・
梨華はひとみの前に立ち上がった
ひとみはこの上なく愛おしげに目を細めると、梨華の身体を
ふわりと包んだ
「リカ、お前を愛している・・・永久の愛しい人」
ひとみの温かい腕に包まれると、梨華の心の奥底に甘やかな
花の香が匂いたつ気がした
さっきは・・・吉澤さんに運命だって言われた
・・・同じ声なのに・・・同じ腕なのに
この人に言われると・・・抱きしめられると
・・・何かが違う・・・それは何?・・・それは・・・
それこそが吉澤さんが言っていた運命ってものなの?
梨華は躊躇いがちに口を開いた
「・・・それは・・・運命?」
「・・・違う」
ひとみは梨華に回していた腕をはらりと解くと、強い光を宿す眼を
熱く煌かせた
53
:
リアル・ワールド
:2004/05/08(土) 15:44
「宿命さ」
「宿命?」
「・・・運命など変えられるモノ、ワタシとリカは・・・
同じように、互いの命を宿す場所を選んだ」
「・・・え?」
「お前は覚えていなくともかまわない・・・ワタシが覚えているから・・・
リカ・・・お前はワタシのモノ、それは不変だ
そしてワタシは・・・この命さえも、全て、お前だけのモノ」
ひとみの白く長く美しい指先が、梨華の細い顎を持ち上げると
ひとみの唇はゆっくりと梨華の唇に近づき、そのままくちづけた
梨華の胸は高鳴り、身体の芯から今まで感じたことのない悦びが
湧き上がり、体中を駆け巡る
・・・待ってた・・・あなただけを・・・ずっと・・・ずうっと
悦びに震える梨華の、胸のずっと奥底で誰かが溜息のような息遣いの
声を漏らすのが聞えた気がした
54
:
Sa
:2004/05/08(土) 15:45
更新致しました
JUNIOR様
軽いッスか?・・・うぅ〜ん、軽いか?(w
これからの行動は・・・ガンバレーーーッってなカンジですかね(汗
55
:
レオナ
:2004/05/08(土) 16:54
更新お疲れ様です。
う〜ん?なんか、謎ですね。
いい感じです。
次回も、たのしみにしてま〜す。
56
:
JUNIOR
:2004/05/08(土) 17:45
更新お疲れ様です。
よっすぃ〜の目が金色?かっけー!!
結構好きなタイプの話かも・・・・・・・。
でも、Saさんの話は今までどれも当りだったから
ハズレなんてないのかも・・・・・・・。
これからもがんばってくださ〜〜い。
57
:
ちゃみ@あっちこっち
:2004/05/09(日) 06:11
更新、乙でーす。
私このタイプの物は余り読まなかったのですが
ひじょーに読みたくなってます。
『宿命』良い言葉ですね、今度誰かに使ってみます。(w
58
:
54@約束
:2004/05/09(日) 18:41
更新、お疲れ様です。
おぉ〜、劇的ですねぇ〜!一気に加速しましたね。
いやぁ〜、先物買いしといてヨカッタですw
壮大なスケールのお話に負けていないいしよしが素敵すぎです。
嫉妬するほどこういった展開が似合いますね、このふたりはw
「本能」の部分に目覚めたふたりのこの先、すごく楽しみです。
59
:
アナザ・ワールド
:2004/05/13(木) 21:09
エア・ホースはいつでも気まぐれだ
60
:
アナザ・ワールド
:2004/05/13(木) 21:10
風のタミが生み出した天空を翔る馬
それなのに、風のタミの中でも、上手く乗りこなせるのは怖いもの
知らずの子供くらいのものだ
透明なカラダは突風の様に止まることを知らず、ヒトを乗せることを嫌う
けれど、ヒトミが女王との謁見を終え、天空の塔の最上階の窓から
身体を乗り出し、両手を天に向かい差し上げ、果てることなく広がる
その懐に抱かれるがごとく、目を閉じて全身に風を受けていると
声をかけてきた
・・・光の守護を持つ子よ・・・お前は空を飛びたいのか?
ヒトミは静かに閉じた瞼を開けた、その瞳は陽光の輝きそのままの金色
光のタミの中でも、その瞳に宿る光の強さ、気高さは類を見ない
61
:
アナザ・ワールド
:2004/05/13(木) 21:11
エア・ホースをまじかで見たのは初めてだ
透明なカラダの輪郭がおぼろげに浮き出して見える
真っ直ぐにヒトミとぶつかる眼差しは、淡い、とても淡い
アイスブルーに縁取られていた
「あぁ、飛びたいね」
ヒトミは媚びることなく高飛車に言い捨てた
・・・私に乗るか?
「・・・乗せてくれんの?」
エア・ホースのアイスブルーの目が愉しげに細められた
・・・飛び降りろ・・・その窓から・・・自ら身を投げるのだ
62
:
アナザ・ワールド
:2004/05/13(木) 21:11
「ふーん、いいけど?・・・落ちるワタシが見たいのか?」
・・・そうだ・・・愉しめそうだろう?
「・・・そうだね、で、オマエはワタシを拾う?」
・・・わからんな・・・私は気まぐれだ
「フッ、アハハッ・・・別にかまわないよ」
ヒトミは笑いながら窓の柵を飛び越えた、ささやかな躊躇も見せずに・・・
そして大きく両手を広げて、落下していく
空に抱かれてる・・・なかなかの気分だ
違うか?ワタシが空を抱いているのだ
ヒトミのカラダにかかっていた風の圧力がフッと消えた
大きく遠のきながら、縦へと広がり続けたヒトミの視界の空は
いまは横へとスピードを増しながら流れて行く
63
:
アナザ・ワールド
:2004/05/13(木) 21:12
ヒトミはカラダを起こして、エア・ホースに跨ると肩から首へと続く
細い絹糸の様な毛並みを撫でた
・・・お前は・・・傷を負いたいのか?
「さぁ、どうかな?・・・どっちでもいいよ
・・・どうせ、このアナザではヒトは死ぬことはないからね」
・・・それはそうだ・・・しかし、体に傷を負えば痛みを感じるだろう?
「痛み・・・ね、 どんなモンだっけ?・・・忘れたよ」
エア・ホースの喉が上下に細かく振動してる、笑っているのだ
・・・お前は変わっているな?・・・光の子、名はなんと言う?
「・・・ヒトミ」
・・・ヒトミ、どこに行きたい?
「・・・どこでもいいよ・・・たださ、帰りは送ってよね?」
エア・ホースの喉がまた振動した
64
:
アナザ・ワールド
:2004/05/13(木) 21:12
エア・ホースは自由だ
それから時折、唐突にヒトミの前へ現れてその背に乗るかと聞いた
縛られることを何よりも嫌い、群れることもしない
だが、たまには誰かとコトバを交わしたくなるのかも知れない
次があるのかがわからない、エア・ホースとの一時をヒトミは
気に入っていた
今日もそうだった
ただ、いつもと違ったのは、ヒトミが風の谷に行きたいと
言ったこと、それだけだ
エア・ホースは、止めておけ、と言った
今日は風の機嫌がかなり悪いらしい
それでもヒトミが行きたいと言うと、エア・ホースは言った
落ちるぞ、と、ヒトミは、かまわない、と返事を返した
65
:
アナザ・ワールド
:2004/05/13(木) 21:13
そしてヒトミは落ちたのだ、エア・ホースから
高度が低かったので、大怪我はしなかったが、どうやら気を
失っていたらしい
エア・ホースは戻ってくるだろうか?
・・・たぶん、来ない・・・少なくとも明けの明星が消えるまでは
まずいな・・・
天空に在る太陽は光を無くし、その姿の全てが隠れてしまえば
闇の時間だ
闇の中に身を置くことは、ヒトミの力をかなり消耗させる
第一、月が浮かべばヒトミはヒトの姿を保つことも出来ない
やれやれ、足をやってしまったらしい
自由にならない片足を叩きながら、ヒトミは溜息をついた
光のタミは治癒の術を使うことが苦手だ
ましてや、ヒトミは今まで成功した試しがないのだ
どうするかな・・・
ヒトミはそのままごろりとカラダを横たえて、沈み行く太陽を
見ていた
66
:
アナザ・ワールド
:2004/05/13(木) 21:14
ヒトミの住むアナザは、光と闇、水と火、風と土、それぞれのタミが
共存している
光のタミが居る場所は天空に浮かび、沈まない太陽と共にある
その下には風の谷、火の崖、水の島、地の丘が広がり、その上を
太陽が照らす光の時間と、月が昇る闇の時間、その合間にある
星の時間を繰り返し送っている
闇のタミは月の時間になると姿を現して、光の時間になると
眠れる城跡に帰って行くらしい
それが何処にあるのか、光のタミであるヒトミは知らない
そもそも闇のタミと光のタミは顔を合わせることなど無いのだから
67
:
アナザ・ワールド
:2004/05/13(木) 21:14
アナザを統べる女王はその核になっている、この六つ総ての要素を持っている
もともとはどの種族だったのかヒトミにもわからない
そして語り継がれる話では、このアナザの反対側にはリアルという
もう一つのワールドがあるらしい
アナザのヒトビトは無限なる精神体で、カラダは精神の姿を投影して
造り出しているにすぎない、なので死という概念はないのだ
けれど、アナザと反対側に在るリアルには有限の命しか持たない
ヒトビトが住むのだと言う
姿形はアナザのヒトビトと変わらないらしいが、能力にはかなりの
差があり、ヒトビトは二種類に分けられ、違う特徴を持っているらしい
この二つのワールドの間には、夢の道という通路があり、何処かで
繋がっていて、その場所への道筋は女王だけが示せるのだという
ややこしい話だな・・・けれど、一度行ってみたいものだ
68
:
アナザ・ワールド
:2004/05/13(木) 21:15
まずは、それよりも・・・
今日は闇のタミをこの目で見ることが出来るかも知れない
ヒトミは自分自身のカラダの輪郭が霞んで、小さく姿を変えて
いくのを感じながら思った
この姿になるのは久しぶりだな
幼い頃は遠出して走り回ることが面白くて、この姿によくなった
ものだけど・・・
天空の頂上に大きな白い月が昇った
・・・この姿は嫌いではないが、疲れやすいのが問題だな
ヒトミは白い犬の姿に変化した体を丸めて、静かに目を閉じた
69
:
Sa
:2004/05/13(木) 21:15
更新しました
今回分をお読みになって、は?と思われたか、来たな・・・(ニヤリ)と
思われたかが、結構気になったりする作者です(w
レオナ様
ハイ♪謎ですねぇ〜 そしてそれに作者自身が埋まってしまいそうですが(w
これからも楽しんで頂けたらよいのですが…
JUNIOR様
アハハッかっけーっすか?チト怖かろーと思っておりましたが(w
イヤ、毎回ハズしやしないかと内心ヒヤヒヤ・・・
ちゃみ@あっちこっち様
あっちこっち・・・(w←ツボ、うけましたっっっ♪
このよーなコトバをあっちこっちでお使いにならないで下さいませねん☆
54@約束様
加速しすぎでしたか?全体図は考えてあるのですが、どこから書いていったらよいものか(w
そーですね、ベタも大掛かりもホントに似合うカッポォ〜です♪
70
:
JUNIOR
:2004/05/13(木) 23:43
更新お疲れまっす。
キターーーーーーーーって感じっすね。
そうっすね、こういう手の作品
結構好きで好きで、しょうがなくて
マンガも立ち読みしまくってたり(w
これからもがんばってください。
71
:
ちゃみ@うろちょろ
:2004/05/14(金) 06:18
何か壮大なスケールの話になってきましたね。
私の8086クラスの脳内変換機能でついて行けるか心配です。
光り輝くよっちゃんの姿までは何とか・・・・。
72
:
54@約束
:2004/05/14(金) 17:36
更新、お疲れ様です。
ロマン溢れる大叙事詩という感じです。
脳内再生はプラズマテレビですw
なるほど、こう繋がって来るんですね・・
ただただ圧倒されておりますが、次回も楽しみです。
73
:
アナザ・ワールド
:2004/05/17(月) 18:05
うとうとしていたらしい
ヒトミはゆっくり頭を上げると、天空から柔らかい月の光が落ちて
くるのを感じた
・・・おかしなものだ
ヒトミは初めて味わう、どこか儚い月の光に魅入られたように
月を仰ぎ続ける
ワタシを守護し、ワタシの内にある、日の光はいつでも力強く傲慢だ
けれど、淡く柔らかい月の光に抱かれたこの気持ちは、なんと言えば
いいのだろう?
ヒトミは三本の足に力を入れて立ち上がると、言うことをきかない
一本の足を引きづりながら、歩き出した
74
:
アナザ・ワールド
:2004/05/17(月) 18:05
・・・喉が渇いた
エア・ホースに跨り上空から見た時は、水の島はすぐ近くに見えた
けれど、一本の足を引きづりながらだと、いったいどのくらい
かかるのか?
重く圧し掛かり、熱く主張し続ける場所
その上、引き攣れるような感覚
・・・そうか、これが痛みと言うものだっただろうか?
ヒトミは何故か笑い出したくなってきた
光のタミは首座の位置にある、タミは皆、自意識が強く自信家だ
日の光と共に、輝き続けることは何処か乾いて殺伐としている
誰もが皆、自分が一番優れているという誇りを胸に抱き、好戦的だった
けれどこの薄闇の中、力ない姿で彷徨っていると、そんなことに日々
囚われている自分達が、言い様もなく悲しい存在に思えてくる
このままの姿でここに留まり、いくつかの闇の時間を越えたなら
ワタシの精神体は絶え切れずに消滅してしまうだろうに・・・
75
:
アナザ・ワールド
:2004/05/17(月) 18:06
「・・・お前、どうかしたの?」
ふいに、今ヒトミへと降り注ぐ、月の光そのものを思わせる柔らかい
声が響いて、ヒトミはその体を固くした
黒くしなやかな布を纏った声の主が、ヒトミへと近づいてくると
腰を屈めた
「足を怪我してるのね・・・引きずっていたでしょう?」
フードを目深に被った顔から覗く口許が、気遣うような優しげな声を出す
たやすく折れそうに細い指を伸ばしてきて、ヒトミの後ろ足にそっと触れた
「・・・ここね」
その時、風がヒュゥゥゥと吹いて、声の主は目深に被っていたフードを
はらり、と落とした
あらわになった、その顔と・・・その中で、黒々と憂う眼差しとが
ヒトミの体を、心を大きく揺さぶった
これが・・・闇のタミ、なんだろうか?
76
:
アナザ・ワールド
:2004/05/17(月) 18:06
声の主は長い睫を伏せて、胸元で細い指を組み、小さく呪文を唱え始めた
その濡れたように艶かしい唇から、ヒトミは目が離せないでいる
そして
美しい・・・ただ・・・美しいと、そう思った
声の主の組んだ手の隙間から、白銀の光が零れて溢れ出す
淡く浮かび上がるように発光する両手を開くと、ヒトミの傷口に
優しく触れた
その手が触れると、ヒトミの傷口は見る間に塞がり、疼くような熱も
消え、折れたらしい足に力が漲ってくる
声の主はヒトミに向かって微笑んだ
「・・・もう、痛まないでしょう?」
その密やかな微笑みは、アナザに咲き誇るどんな花を見た時よりも
ヒトミの心に安らぎを運んだ
77
:
アナザ・ワールド
:2004/05/17(月) 18:07
「お前は、狼かしら?・・・真っ白だなんて、珍しいこと・・・綺麗ね」
声の主はヒトミの背をゆっくりと撫でた
ヒトミは目を細めて、その手の感触を楽む
こんな自分の姿を光のタミが見たなら、なんと思うだろう?
タミの中でも腕に覚えがあり、幼い頃から女王の側近なのだ
いつも醒めた目でヒトビトを見下してる、このワタシ、が・・・
ジブンが望む時にだけ、快楽の相手を求めることはあるけれど
素性もわからない相手に、この身に触れることを許すなんて・・・
おまけに・・・どうやらワタシは嬉しいらしい
ヒトミは小さく、・・・クルルと喜びの声を上げていた
78
:
Sa
:2004/05/17(月) 18:08
更新しました・・・ちと短いですが(w
この後に及んで、話をどう進めて行くか、今だ迷っておりまする
JUNIOR様
お好きなんですか? ソレは良かった!
がっかりさせるような展開にならないようガムバりまする(w
ちゃみ@うろちょろ様
アハハッ!所詮作者の書いてるモンなんで壮大ぶってるダケかと…
ココまではよろしいでしょうか?(w
54@約束様
プラズマ・・・素敵♪
作者も才能があったなら画像付でお送りしたいトコなんですよん(w
79
:
アナザ・ワールド
:2004/05/17(月) 21:30
水の島の中間に位置する、森林に囲まれた大きな湖のほとりに出ると
ヒトミは足元に落ちている小枝を踏んだ
大きな森の木々達は静かで、ヒトミが立てた小さなパチンという音を
湖の水面にまで響かせる
「お前・・・また来たのね?」
闇のタミは水面に向けていた視線をヒトミへと変えると、優しく微笑んだ
ヒトミはその傍まで寄って行くと、甘えるようにわき腹を足元に寄せた
「・・・しょうのない子」
闇のタミは呆れた声を出したけれど、その眼は笑っている
ヒトミは、足元まで流れ落ちるローブの裾を咥えると、思いっきり
引っ張った
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