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I LOVE YOU
1
:
クロイツ
:2003/06/22(日) 23:26
はじめまして!!クロイツと申します!!
いしよし小説を、書かせて頂きたいと思います!!
未熟ですが、がんばりますので…どうぞよろしくお願いしますッ!!
271
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:31
「・・・・・・あ…たし、ほんと…に、寝て…たの?」
ガラガラの声で言うと、女はこくりと頷く。両親の顔を見て見れば、二人とも涙いっぱ
いの目でこくりと頷いて見せた。
「…今から車で、お前を吉澤邸に運び込む。まだしばらく寝てて良いぞ。頭ハッキリして
ないだろ。」
「・・・・・・はい。」
両親が車の手配をする為にあわただしく部屋から出て行くと、吉澤ひとみは女に聞いて
みた。
「…あの。」
「なんだよ。」
この女は、何故こんなに苛立っているんだろう?
そんな事を考えつつ、続ける。
「…寝てたって事は、夢…見てたって可能性もあります…よね?」
「・・・・・・ああ、あるな。それがどうした?」
吉澤ひとみは、笑った。
「なんだか、良く覚えてないんだけど…夢を見た気が…するから…。」
「・・・・・・夢、か。」
閉じた瞳から、涙が溢れた。
「…あれ?何で涙が出るんだろ?」
「・・・・・・いきなり目ぇ開いたからな。疲れたんだろ。視神経が。」
もっともらしい理由を言い、女は吉澤ひとみに背を向けた。
272
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:31
「…そっか。それでか。」
「・・・・・・。」
「…覚えてないんだけど…。」
「・・・・・・何だ?」
「すっごく・・・・・・幸せな夢を見た気がします。」
女の肩が、ぴくりと震えた。
「なんで…かな?胸の奥がじんわり熱い感じ。…涙、止まらない…。」
「・・・・・・。」
「なんで覚えて…ないのに、幸せだったってわかるんだろ…。」
「決まってるだろ。」
女は、声を震わせないようにする事に必死だった。
「魂が覚えてるんだよ。その『夢』を。」
冷たい声。しかも、非現実的な言葉。
だけど、吉澤ひとみは…涙を流しながら微笑んだ。
273
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:32
****************************************
それから、二年後。
大きなホールに、正装した紳士・淑女が溢れかえる。
立食形式のパーティーだ。テーブルの上には、最高のシェフが最高の素材を使って作っ
た料理が無数に並んでいる。
『それでは皆様、グラスをお持ち下さい。』
司会者の声で、全員がグラスを手に取った。そして全員の視線が、一人の少女に注がれ
る。
『吉澤ひとみお嬢様の、二十歳のお誕生日を祝して…乾杯!!』
光の加減でキラキラと色を変える、可愛らしいブルーのドレスを身にまとった吉澤ひと
みは、その真っ白な頬を恥ずかしそうにピンクに染めた。
乾杯、と人々の声が重なる。
『お嬢様から皆様に一言、お願い致します。』
「…はい。」
壇上に上がり、緊張と喜びで胸を弾ませながら…吉澤ひとみは喋りだす。
『皆様、本日はあたしの為にわざわざ来て下さって…本当にありがとうございます。』
タキシードにスーツ、色取り取りのドレスの軍団。
軽く数百人はいるであろう客達。彼らは全員、一人残らず『エリート』と呼ばれる人間
たちである。例外がいるとすれば、彼らのSPくらいだろうか。
『まだまだ幼く、未熟ではありますが…あたしももう、二十歳です。』
スピーチの内容は、かなり前にできあがっていた。頭の中に叩き込まれている。
274
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:32
客に、視線を投げる。一通り見回して…はっと気付く。
吉澤ひとみは、自分の中に違和感を感じた。
どうして自分は、『誰かを探している』のだろう?
誰を探しているのかもわからない。探すような相手はいないのだ。
友達は全員招待してあるが、居場所は全て把握している。
気のせいだ、と自分に言い聞かせて、吉澤ひとみは続けた。
『未熟ながらも、今日を迎えるまでには色々な事がありました。…三年間眠り続けたり。』
会場から、どっと笑いの声があがる。
このお嬢様が、二年前まで三年間眠り続けていたのは周知の事実。『眠り姫』などと言
うあだ名までついている程なのだ。
冗談を交えつつ、感謝の言葉を述べて…吉澤ひとみは拍手の中で壇上から降りた。
そこに。
「お誕生日、おめでとうございます!吉澤先輩!!」
聞き覚えのある声に、くるりと振り向く。
「・・・・・・松浦さん!!?」
吉澤ひとみは、満面の笑顔で花束を差し出す後輩に驚きを隠せない。
「来てくれたんだ!!」
「ええ、もちろん!!このあたくしが、来ないはずないじゃありませんの。」
「ふふふ、ありがとう。」
花束を受け取る。
275
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:32
「今日は、あたくしの従姉妹も一緒に来ましたのよ?」
「え?松浦さんの…従姉妹?」
「ええ。…あゆみちゃん。」
呼ばれて、一歩前に出てきた少女も花束を抱えていた。
「はじめまして、吉澤ひとみさん。柴田あゆみです。」
「…ああ!あの柴田家の!!そうだ、松浦さんの従姉妹さんだったんですよね!!」
右手を差し出して、輝くような笑顔で言った。
「あたし、今年の二月にあった柴田さんのお誕生日パーティーには行かせて頂いてたんで
すよ。でも直接お話するチャンスがなくて…ですから、はじめまして、ですね!!」
その言葉に、亜弥とあゆみの胸に悲しさがこみ上げた。
しかし、それを表に出す程馬鹿ではない。
「…そう、ですわね。どうぞよろしくお願い致しますわ。」
「ええ、こちらこそ!」
すっと、亜弥とあゆみの背後に二人の人影があらわれた。
「…マサオ?」
「みきたん?」
亜弥とあゆみがそれぞれのボディーガード名前を呼ぶと、緊張した声が返って来た。
276
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:33
「…不審者が発見されました。数人は拘束しましたが、仲間がまだあと一人いるそうです。」
「…えぇ!?」
あゆみが不安気な声を漏らした、その時。
「死ね、吉澤ひとみィィィィィィィィィィ!!!!!」
ズガァァァァァァァァァァァン
『!!!?』
銃声が響き、その場にいた全員が凍りついた。
天井に向けて撃たれた銃弾は、シャンデリアに直撃。欠片がパラパラとふり注ぐ。
銃を持った、ボーイの姿をした男は…今度は吉澤ひとみに向けて銃を突き出したのだ。
雅恵と美貴は、自分の主人を抱きかかえて床に転がる。
「な…っ!!ちょ、ちょっとみきたん!!吉澤先輩が…!!!」
抗議の声を上げた亜弥に、美貴は言う。
「大丈夫。…『彼女』がいる。」
「!!」
亜弥の視界に、真っ黒のスーツを着た少女が飛び込んで来た。
「・・・・・・!!」
彼女はためらいもせず、ボーイ姿の男の手首を掴みあげる。
「ぅあッ!!」
男はたまらずうめき声を上げ、銃を落とした。彼女は床に落ちた銃を蹴って、雅恵へと
渡す。
流れるような動きで、足を払って男を床に転がした。そこで吉澤家のボディーガード達
や警備員が到着し、男は連行されて行く。
「・・・・・・。」
あっと言う間の出来事。まるで、映画を見ているような気分だ。自分の命が狙われた事
に対する恐怖など、生まれる前に終わってしまった。
277
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:33
呆然とする吉澤ひとみに、彼女は言った。
「…お怪我はありませんね。」
「・・・・・・は、はい。」
「それは良かった。」
可愛い顔。自分よりも背が低く華奢な少女。
今目の前で起きた事が、ますます信じられなくなった。
「…ありがとうございます…。」
「いいえ、無事で良かった。」
それだけ言い残すと、彼女はぺこりと頭を下げて…すぐにすっと姿を消した。
「ああ、吉澤先輩!本当にご無事で良かった…!!」
「ま、松浦さん…ええ、無事だけど…。」
心臓が早鐘のようにドキドキと言っている。
息苦しい。
目が回る。
「…い、今の…あの方は…!?」
亜弥は言った。
「柴田家のボディーガードの内の一人ですわ。すごく腕が立つんですの。」
「・・・・・・そ、そう…。」
どうしてだろう。
あの可愛い顔。華奢な身体。…独特の声。
胸が熱い。痛い。苦しい。
「…あゆみさんの…専属なの?」
「いいえ、違います。言い方が悪かったですわね。」
「え?」
278
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:34
「彼女は、フリーのボディーガードですのよ。現在は柴田家に雇われてますけど。」
「…フリー…?」
どうしちゃったんだろう。
知らなければいけない事がある。
いや、新たに知るのではない。そんな気がする。
「ご存知ありません?『石川梨華』って言うフリーのボディーガード。」
どくん。
身体の中で、何かが弾けた。
光の洪水が、身体の中に流れ込んで来た。
279
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:34
****************************************
会場を出で、走り出す。
「…はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・・・はぁっ!!!」
しばらく走った所で、壁に手をついて息を整えた。
そんなに長く走ったわけではない。そんなに速く走ったわけでもない。
それなのに、息が乱れる。…心拍数のせいだ。
「・・・・・・はぁっ!!」
梨華は、ぎゅっと目を閉じた。
あの後、ストリート・ファイトを無敗のまま引退した。
『ひーちゃん』がいなければ、続ける意味なんてなかったから。
そして今度はフリーのボディーガードとなった。…戦い以外では、食べて行けないから。
「・・・・・・ひーちゃん…。」
来るんじゃなかった。
今、梨華は激しく後悔していた。
「・・・・・・ひーちゃん…!」
幸せそうだった。笑っていた。…元気そうだった。
「・・・・・・ひーちゃん…!!」
梨華が、望んだ通りの姿だった。絵に描いたように幸せなお嬢様。
「…ひーちゃん…ひーちゃん!ひーちゃん!!ひーちゃん!!!」
まるで、傷や痛みをそのまま吐き出すような叫び。
胸が痛い。張り裂けるように痛い。
280
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:34
梨華は自分のてのひらを見つめた。
何度も何度も血を浴びて、何度も何度も誰かを痛めつけた手。
吉澤ひとみの手を思い出す。
真っ白で、冷たさも熱さも知らない綺麗な手。
「・・・・・・。」
梨華は壁を殴りつけた。
もう、届かない。
あんなに側にいたのに。ずっと一緒にいたのに。
自分でその幸せを手放した。
「…良かったんだよ。ひーちゃんは幸せになった。これからもずっと幸せに生きて行く。
…良かったんだ、それで。」
だから、もうあきらめなくてはいけない。そのつもりで、今日ここに来たのだ。
一目見たら、あきらめる。そう決めたのだ。
顔を見せる気なんてなかった。会話を交わす気も。…あんな事さえなければ。
「・・・・・・ッ!!」
壁をもう一度だけ殴って、梨華は顔を上げた。
「・・・・・・さよなら。『ひーちゃん』。」
小さく呟いた、その直後。
「…梨華ちゃん!!!」
涙が混じったような声が、響き渡る。
281
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:35
「・・・・・・。」
幻聴だと思った。
だって、そんなはずないのだ。
彼女が梨華の名前を、そんな風に呼ぶなど。
「待って、梨華ちゃん!!」
今度こそ、梨華は振り返った。
幻聴でも良い。幻影でも良い。
逢いたい。
「・・・・・・!!」
気がついたら、梨華は抱きしめられていた。
「梨華ちゃん!!梨華ちゃん!!!」
「・・・・・・なん…で…!?」
ひとみは、力いっぱい梨華の身体を抱きしめた。
「…梨華ちゃん!!」
「…嘘でしょ?幻覚でしょ…?」
ひとみは梨華を離し、梨華の手を取った。そして自分の頬にくっつける。
「…思い出したんだ。梨華ちゃんの事。…あたしの愛する人の事。」
「・・・・・・。」
「ひどいよ、梨華ちゃん!!なんで無理矢理手術受けさせたりしたのさ!!」
「・・・・・・。」
涙でぼろぼろの瞳で、ひとみは梨華を見る。
「…あたし、幸せだよ。両親の元で、元気に暮らせてる。」
「・・・・・・。」
「だけどね、不幸でもある。…一番愛してる人が、側にいてくれないから。」
「・・・・・・。」
282
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:35
「梨華ちゃん…!!!」
ひとみは、もう一度梨華をぎゅっと抱きしめる。
「やっと…抱きしめられた…!!!」
「え…?」
「…ずっとずっと、望んでたんだ。梨華ちゃんを抱きしめたいって。ずっと…。」
「・・・・・・。」
「いっつも無理ばっかして、ギリギリまで自分を追い込んでる梨華ちゃんを。
本当はそんなに強くないクセに、強がってる梨華ちゃんを。
・・・・・・抱きしめたかった。ずっと、ずっと。」
梨華の目から、涙が溢れた。
「…なんで、抱き返してくれないの?」
「・・・・・・抱き返したいけど…。」
「けど?」
「消えて、なくなりそうで。」
ぷっと吹き出して、ひとみは言った。
「…大丈夫。そんなに簡単に消えてあげないから。」
「・・・・・・。」
梨華がそっと抱き返すと、ひとみはもっと強く抱きしめ返した。
「ほらね?消えないでしょ?」
「・・・・・・っ!!」
梨華は、想いを吐き出すように口を開いた。
「…ひーちゃん!!」
どちらからともなく、唇が重なる。
もう、言葉なんていらなかった。
その存在を確かめ合えるだけで、気持ちは十分伝え合えた。
283
:
I LOVE YOU
:2003/12/23(火) 22:36
****************************************
伝説が、ある。
裏の世界で、今一番人気のある『娯楽』…ストリート・ファイトと、この国の上流階級
の女性たちとの間で語り告げられる、伝説。
互いに手を取り合い、最強を保持し続けたファイターとその相棒の伝説。
真実の愛を見つけた、恋人同士の伝説。
「梨華ちゃん。」
「ひーちゃん。」
彼女達を語る際に、必ず前置きされる言葉。
二人の間で、一番重要で大切な言葉。
『I LOVE YOU』
〜END〜
284
:
クロイツ
:2003/12/23(火) 22:36
…はいっ!!最終回でございます!!!
いかがでしたでしょうか〜?なんか書き上げた感想としては・・・・・・
『未熟者でごめんなさい』
ですかね(大汗)
あああ〜!!書ききれない所とか反省点がいっぱいありまくりでんもぅ(泣)
しかし、『I LOVE YOU』はこれで終わりです。
読んで下さった皆様方、本ッッッ当にありがとうございました!!
>管理人様
ご心配、ありがとうございますぅぅ〜!!!
なんとか回復はして来ております!!早く完治したいです…(泣)
>いつもありがとうございますm(_ _)m
いえいえいえ、こちらこそいつもありがとうございますですよ!!
また今度、新たに連載させて頂きたいと思っておりますので、その時はどうぞよろしくです(笑)
本当に、ありがとうございました!!
>タロイモ様
いかがでしたか〜?最終回〜…。
私もちょっと寂しさを感じています。あと、物足りなさも(泣)
ああ、自分の力量不足が悲しい…(号泣)
体調、なんとか回復して来ております!!ご心配ありがとうございます!!
今まで読んで下さって、本当にありがとうございました!!
>名無し(0´〜`0)様
最終回、いかがだったでしょうか〜?
満足して頂けたら幸いなんですが、私自身ちょっと反省の残る所がありまして…(大汗)
でもでも、楽しんでいただけたら本当にうれしいです!!
今まで本当にありがとうございました!!
285
:
タロイモ
:2003/12/24(水) 00:14
うぅぅ〜最高でした。泣けますねー(号泣)
梨華ちゃんとひーちゃんが幸せになってよかったです。
クロイツ様も順調に回復されているようでホッとしてます。
次回作と「愛人」も期待してます!
286
:
フェンリル
:2003/12/25(木) 19:06
更新&完結お疲れ様でした。
最悪な体調の中の更新でご苦労が偲ばれます。
一時期に比べれば快方に向かっている印象を受けますが
直りかけが肝心なのでくれぐれもご自愛を。
他の方同様次回作&『愛人』楽しみに待っていますね。
287
:
チップ
:2003/12/27(土) 23:07
もぉぉ〜大好きですこのお話、お疲れ様でした。
石川さんよかったね・゜・(ノД`)・゜・感動したっちゃ・゜・(ノД`)・゜・
個人的に松浦さんが救われたのもすごく嬉しかったです(w
気が早いですけど、お正月ゆっくり休んでお身体大事にしてくださいませ。
次回作、愛人、私も楽しみに待ってます。頑張ってください。
288
:
本庄
:2004/01/22(木) 13:07
遅ればせながら脱稿お疲れ様です。
梨華ちゃんとひーちゃんの愛の深さに感動いたしました・・・。
みんな幸せそうでよかったです・・・・゜・(ノД`)・゜・
愛人のほうもがんがってくださいね。
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