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I LOVE YOU

1クロイツ:2003/06/22(日) 23:26
はじめまして!!クロイツと申します!!
いしよし小説を、書かせて頂きたいと思います!!
未熟ですが、がんばりますので…どうぞよろしくお願いしますッ!!

2プロローグ:2003/06/22(日) 23:26

 黒いカーテンの揺れる、黒い部屋。
 病院の一室のはずなのに、病院には一番似合わない色で彩られた部屋。
「…ひとみ。」
 黒一色のベッドに横たわる、真っ白な肌の少女。
 『ひとみ』と呼ばれたその少女は、その名の由来にもなった大きな瞳をゆっくりと開く。
「・・・・・・。」
 彼女の名前を呼んだ中年男性──ひとみの父親は、ともすれば溢れ出そうになる涙を必
死に抑えた。
 ガリガリの身体。機械に頼らなければ息もできない程に衰弱した身体。
「…ごめんな、ひとみ…!!お父さん、何も…お前に何もしてやれなくて…!!!」
「・・・・・・。」
 ひとみは、ちょっとだけ手を振る。
 そんな何気ない仕種をするのにも、渾身の力を込めているのがわかる。
 父親は、ひとみの手を握り締めた。
「ひとみ!!何か…何か、欲しい物はないか!?お父さん、何としてでも手に入れてやる!!
どんな望みでも、叶えてやるから!!」
「・・・・・・。」
 ひとみは、漆黒のカーテンが揺れる窓に視線を移した。
 そして、消え入りそうな声で…ぽつりと言う。
「…次に生まれ変わったら…恋がしてみたいな…。」
 父親は、はっと目を見開く。
「ひ、ひとみ?」
「本…でしか、読んだ事…ない…けど…恋が…した、いな…。」
苦しそうな声。しかし、その笑顔はとても幸せそうだった。
「…もう…『あたし』は…できない…から…。次…の人生では…必ず…。燃えるみたいな、
ドラマチックな…。」
「ひ、ひとみ…!!もう喋るな!!」
 父親の制止の声も聞こえていないような口調で、まるで歌うように口ずさむ。

「・・・・・・そう、恋がしたい。」

 その言葉の直後、ひとみは目を閉じる。
 ふぁさ、と軽い音がして、ひとみの手が布団に落ちた。
「・・・・・・ひ…とみ…!?」
 父親の悲痛な嘆きの叫びが、真っ黒な病室に響き渡った。

3プロローグ:2003/06/22(日) 23:27

****************************************

 ストリート・ファイト。
 裏の世界で、今一番人気のある『娯楽』。
 ストリート、と言いながらも、戦いの舞台となるのは専用の『闘技場』。都内某所の地
下に作られた『闘技場』には、数百台のカメラの設置されている。
 観客は、そのカメラから送られて来る映像でファイトを楽しみながら、金を賭けるのだ。
 ストリート・ファイトは『スポーツ』ではない。何故ならこの『娯楽』には、ルールな
どと言うものはないからだ。
 禁じ手は一切無し。凶器の使用可。急所攻撃も可。死ねば、事故として処理される。
 警察の手など入らない。何故なら、この『娯楽』の主催者は、政界を影で牛耳る大物な
のだから。
 今日も今日とて、その『闘技場』のリングでファイター達は戦う。
 物々しい雰囲気の大男が多い中…一人だけ、違和感を放つファイターがいた。

 その名を、石川梨華と言う。

 黒いシャツに黒い皮パンツに包まれた、小柄な身体。黒い細身のサングラスも隠し切れ
ていない、美しい容姿。
 どこからどう見ても、場違いである。
 しかしそんな外見とは裏腹に、彼女はこのストリート・ファイトでは一番の有名人だ。
「あっははは♪やっぱ今夜も注目浴びてるねぇ、梨華ちゃん♪」
 彼女の肩に、ちょこんと座る天使がいた。
 雪のように白い肌と、大きな瞳が印象的な整った顔。身長30cm前後で、背中には天
使の羽がついている。
「…わたしだって、目立ちたくて目立ってるワケじゃないのよ、ひーちゃん…。」
 梨華がげんなりと言うと、『ひーちゃん』と呼ばれた天使は、空中でくるりと一回転し
て見せる。
 彼女は、ロボットだ。
 正式名称は『Y−0412:HITOMI』と言うのだが、梨華はいつも『ひーちゃん』
と呼ぶ。

 この二人こそ、このストリート・ファイトの最強コンビ。
 初参加以来、一度も負けた事がなく勝ち続けている伝説のコンビだ。

 ちなみに、戦うのは梨華。対戦相手の情報収集をするのがひとみ。
「ま、今日もちゃっちゃと行こうぜ!ちゃっちゃと!!」
「…簡単に言わないでよ。」
「だーいじょうぶ!!あたしの梨華は、最強だもん!!絶対絶対負けたりしない!!」
 梨華は苦笑した。
「…ま、ひーちゃんの期待に答えられるよーに頑張りましょうか。」
「おー!!頑張って梨華ちゃん!!」
 ひとみは、梨華の頬に軽くキス。いつもの『おまじない』である。
 梨華はにこっと微笑んで見せた。
「…それじゃ、言って来ますか。」
「ふぁいとぉ!!!」
 梨華は、黒い皮の手袋をはめなおした。
 そして…今日も、リングに上がる。

4クロイツ:2003/06/22(日) 23:28


 …はい、プロローグ終了です!!次回から本編が始まりますっ!!
 今まで私が書いて来たいしよしとは、ちょっとだけ色を変えようと思っています。いや、本当にちょっとだけなんですが…(大汗)
 がんばります!!皆様、どうぞよろしくお願いいたしますー!!!

5名無し(0´〜`0):2003/06/23(月) 01:20
うぉ〜!!すごい面白そうです!!
超超たのしみです!!
がんばってください!!

6CA:2003/06/23(月) 01:36
なんか、今までのクロイツさんの作品と違いますね。
いい意味で期待を裏切られそうです。
カッケー梨華ちゃんにロボットひーちゃん…
でも、最初のよっちぃが切なくて…

こんなに早く連載初めていただけるなんて感謝感激雨霰れす。ありがとうれす。

7YUNA:2003/06/23(月) 13:15
クロイツさんだぁ〜〜〜〜!!!!!
おつですっっっ♪♪♪
うちの駄文にレス、ありがとぉございました。
おまけに、うちの書く梨華ちゃんを気に入っていただけた様で...
マジ、感動っす...(号泣
どんないしよしになるのか、楽しみです!!!
頑張ってくださいっっっ!!!!!!

8曇り、のち、晴れ:2003/06/24(火) 15:16

 豪華な内装──見るものが見れば、一目でそれの製作者がわかるような、高価な調度品。
天井から大きなシャンデリアがぶら下がっているが、見上げないとそれの存在にすら気付
けないくらいに高い天井。絨毯は足首まで埋まりそうなくらいにふわふわで、ソファも身
体が沈みそうなくらいにフカフカだ。
「昨夜も、圧勝だってみたいね。」
 その、豪華絢爛としか表現できない部屋の主──柴田あゆみは、上品に微笑んで言った。
「おかげでわたくしも、たっぷり稼がせてもらったわ。」
 そのあゆみの目の前に座っている客──梨華は、落ち着かなさそうに足を組みかえる。
その肩に座るひとみは、不機嫌そうにそっぽを向いていた。
「…てゆーか良いの?柴田家のお嬢様が、表立って社会に顔を出せないような下品なギャ
ンブルにハマるなんてさ。」
「あら、そんな事ないわよ!ギャンブルは決して下品なんかじゃないわ。競馬をごらんな
さい。あれはもともと、貴族の遊びなのよ?」
「・・・・・・そーゆー問題じゃなくてさ。」
呆れる梨華。また、足を組みかえる。
 あゆみはくすっと笑った。
「…それにあのギャンブルでは、誰もわたくしには文句を言えないはずよ?なんと言って
も、わたくしは主催者の孫娘なのだから。」
「…お祖父さん、よく文句言わないね。」
「言えないわよ!お祖父様だって、ストリート・ファイトに夢中なんだもの!…それにわ
たくしは、一番お気に入りの孫だしね。」
そしてあゆみは、上品だが人目で高価だとわかる応接セットの、テーブルの上に置かれた
ティーカップを見て眉をしかめる。
「…あら、また全然飲んでくれてないのね。あなたの為に、わざわざ取り寄せた超高級品
なのに。」
「悪いけど、他所の家で出されたモノは、何であれ口にしない主義だから。」
「そーだそーだ!!」
ひとみがようやく、口を開く。
「梨華ちゃんは、あたしが特別に作ったモノしか食べないんだからねっ!!」
「まあ、ロボットさん。ようやくわたくしと口をきいてくださるのね?」
ひとみはまた、口を閉ざしてそっぽを向く。
「でも、その身体のサイズじゃ…お料理するのも大変じゃないの?」
 ひとみは、無視。
「…こら、ひーちゃん。」
たしなめるような口調の梨華に、ひとみはますます頬を膨らませた。
 あゆみはコロコロと、鈴を転がすように笑った。そして梨華はため息を吐く。
「ごめんね、お嬢様。」
「いいえ、かまわないわ。」

9曇り、のち、晴れ:2003/06/24(火) 15:16
「それじゃ、わたしは失礼するよ。」
「ええ?もう?」
おっとりと、しかしあからさまに不満の声をあげるあゆみ。
「もうちょっと、わたくしのお話し相手になってよ。」
「悪いけど、トレーニングがあるからね。不敗にして最強の名を守るには、努力が必要な
んだよ。」
「・・・・・・。」
そう言われては、ストリート・ファイトの大ファンであるあゆみは何も言えなくなってし
まう。
 ひとみは『さっさと帰りたい』と言うのをアピールするためか、羽を羽ばたかせて扉の
前へと向かって行った。
 それを見計らったかのように、あゆみはすっと梨華に近寄る。
「…ねえ、梨華ちゃん?」
「…何?」
「今日のその格好も可愛いんだけど…」
あゆみはちらりと、梨華の服を見る。
 薄いピンクのカットソーに、純白のフレアスカート。足元は素足にピンクのミュールで、
髪はひとつに束ねてピンでアップにしてある。
 あゆみは、夢を見ているような…とろんとした目で梨華をみつめた。
「次は、ストリート・ファイトの時に着ている服を着て来て。」
「…それじゃ、わたしが柴田家の孫娘の家に出入りしてるってバレちゃうんじゃ?」
「かまわないわ。誰にも文句なんか言わせない。…そして、その姿でわたくしを抱きしめ
て。」
梨華は苦笑した。
「…無理、だよ。ひーちゃんが許さないだろうし。」
 あゆみの顔が、不機嫌にゆがむ。
「…それじゃ、あのロボットは置いて来て。」
「それこそ、無理だよ。」
梨華は微笑みながら、しかりきっぱりとあゆみを自分から引き離した。

「わたしとひーちゃんは、二人でひとりだから。」

あゆみの顔に、くっきりと嫉妬の色が浮かんだ…その時。
「ちょっと、梨華ちゃーん!!早く帰るよ!?スーパーの特売が終わっちゃうじゃん!!」
「はいはい、今行く。…それじゃあね、お嬢様。」
 梨華は背中を向け、そそくさと部屋から出て行った。
 残されたあゆみは…そばに置いてあった花瓶──ひとつ一億円は下らない高級品──を
床に叩き付けた。

10曇り、のち、晴れ:2003/06/24(火) 15:17

****************************************

 梨華とひとみが暮らすマンションから、五分程歩いた所にあるスーパー。夕方と言う時
間帯だと言う事もあり、店内は特売を知らせる店員の声や、殺気立った主婦達の姿で溢れ
ていた。
「あたし、あの女大ッ嫌い!!」
 梨華の肩に座ったひとみは、不機嫌そうにそう言い捨てる。
「なんかさー、いかにも『わたくし、上品ですのよ!その辺に転がってる小娘どもとは、
格が違いますのよ!』ってオーラ出しててさー!!」
「ひーちゃん、言い過ぎだよ?」
「何!?梨華ちゃんはあの女の肩持つっての!?」
「そういう問題じゃなくって…いくらなんでも言い過ぎって話。」
 ロボットが、社会に普及してもう十年が経過している。
 それでもひとみのような小型の人間型は珍しく、さっきから何人かがひとみを振り返っ
ては見とれていた。
 ひとみはそんな事は気にも止めず、梨華の顔の前で腰に手を当てて叫んだ。
「あたしが悪いっての!?梨華ちゃんはッ!!」
「いや、だからそうじゃなくて…。」
「あーあーそうかい!!あたしよかあの女の方が好きだってのかい!!」
「そんなワケないでしょ!?」
梨華は慌てる。
「わたしにとって、ひーちゃん以上の存在なんているはずないじゃない!!」
「…本当にぃ?」
「本当だって。…お嬢様がいなくなっても別に『ふーん、大変だ』くらいしか思わないけ
ど、ひーちゃんいなくなったら…」
 梨華はぽつりと、泣きそうな表情で言う。

「死に物狂いで探すよ。…ひーちゃんいなくなったら、生きていけないもん。」

 ひとみは梨華の顔にしがみついた。
「本当!?本当に!!?」
「い、いひゃい!いひゃいよ、ひーひゃん。」
「本当だね!?」
「本当、本当に決まってるじゃん。」
「・・・・・・じゃあ、許してあげる。」
ひとみはちゅ、と梨華の頬にキス。そして上機嫌に、梨華の肩に座りなおした。梨華は空
の籠を持ち直した。
「さーて、まずは野菜♪野菜♪」
「はいはい。」
 野菜売り場に着くと、ひとみは目を閉じる。
「…視覚モード切り替え。通常から特殊へ。」
そう呟いて目を開くと、薄茶だったひとみの目が深紅に変わっていた。
 ひとみの目には、数々のセンサーが埋め込まれている。通常モードでは人間の十倍の視
力を持ち、特殊モードでは爆発物、毒物等、危険性があるモノを見ただけで見つけられる
ようになっているのだ。
「…危険物反応無し。…ヨシ。このアスパラガス取って。」
「はーい。」
「それから、トマトも。」
「はいはい。」
「…いや、こっちのよりもあっちのが良いな。新鮮っぽい。」
「はーい。」
 ひとみの言うままに籠に放り込む梨華。微笑ましいその光景に、店員の頬が思わずほこ
ろんだ。

11曇り、のち、晴れ:2003/06/24(火) 15:18

****************************************

 ストリート・ファイトが行われるのは、週二回。金曜日と土曜日の深夜である。
 次回の対戦相手が発表されるのは、月曜日の夜だ。
「・・・・・・!」
 黙々と腕立て伏せをする梨華の横で、ひとみがふっと天井を見る。
「ひーちゃん?」
「…来たよ。JFAから、メールが。」
 JFAとは、ストリート・ファイトの管理をしている組織だ。競馬のJRAと同じよう
なモノである。相違点はいくつかあるが。
「次の対戦相手?」
「うん、そう。・・・・・・うげっ。」
ひとみが苦い顔をする。
「ひーちゃん?どうしたの?」
腕立て伏せを中断し、梨華は汗を拭きながらひとみを見た。
 ひとみは、苦い顔のまま答える。

「…加護亜依、だって。」

 梨華は、ひとみの苦い表情の理由がわかった。
「…あの、関西から来た『期待の新人』?」
「そう。デビューしてまだ半年。一敗はしているものの、小さな身体で大男をぶちのめす
って事で人気の子。」
ひとみはこめかみを押さえた。情報を検索している時の癖だ。
「えっと…年齢は、十二歳。あたしらみたいにコンビ組んでて、相棒の名前は辻希美。柔
道系の出身。」
「へー。」
「お団子頭がトレードマークだって。…今夜中に、もっと詳しい情報を集めておくね。」
「うん、よろしく。」
ひとみはちらりと、梨華を横目で見る。
「…余裕じゃん。」
「もちろん。」
梨華は微笑んだ。
「誰が来ても同じ事。わたしはいつも通り戦うだけ。…ひーちゃんがいてくれるんだもの。
負けるはずなんかないよ。」
ひとみはまた、梨華の顔に抱きつく。
「いひゃいっっへは、ひーひゃん。」
「うん!うん!!あたし、ずっと梨華ちゃんと一緒にいるよ!!」
「わたし今、すっごい汗臭いから。あんまひっつかない方が良いよ?」
「かまわないもん!!」
 そして、頬にキス。
 二人は目を合わせて、微笑みあった。

12クロイツ:2003/06/24(火) 15:18


 本編はじまりです♪
 ああ、いつもと勝手が違う…!!梨華ちゃんが…(大汗)
 でも、書いててスゲェ楽しいのは何故でしょう…(笑)

>名無し(0´〜`0)様
 ありがとうございます!!楽しみだなんて…すっごい嬉しいです!!
 ご期待に沿えるよう、がんばります!!どうぞよろしくお願いします♪

>CA様
 ありがとうございます!!
 >なんか、今までのクロイツさんの作品と違いますね。
 そうなんです。ガラっと変えてみました☆
 最初のヨッスィーは、後々いろいろと出て来る予定ですので…♪
 >こんなに早く連載初めていただけるなんて感謝感激雨霰れす。ありがとうれす。
 いえいえ、言って頂けるなんて…こちらこそ大感激・大感謝です!!
 がんばります!!どうぞよろしくお願いします!!

>YUNA様
 おおっ!どーも♪私もここで書かせて頂くようになりました♪
 YUNA様の書かれる梨華ちゃん、私のツボ押しまくりなんですよー♪
 がんばります!!っどうぞよろしくお願いします!!
 そして、YUNA様もがんばってくださいませっ♪

13名無し(0´〜`0):2003/06/25(水) 19:35
(・∀・) イイ!(・∀・) イイ!
クロイツさんだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
続き楽しみにしています。

14名無し(0´〜`0):2003/06/28(土) 01:30
ののも、やっぱりロボ(rなのかなぁ〜?
4期総出演ですね。続きが楽しみです。
がんばってください!

15お団子頭のおちびちゃん:2003/06/28(土) 10:43

 梨華はいつも、早朝ランニングをする。
 身体を鍛える目的もあるが…何よりも、だんだんと頭がスッキリして行く感覚が好きな
のだ。
「・・・・・・。」
 走りながら、次の対戦相手の事を考えて見る。
 加護亜依。まだたった十二歳の、ファイター。
 しかし、梨華がストリート・ファイトにデビューしたのは九歳の時だった。それを考え
ると、『幼過ぎる』とは言い難いかもしれない。
 ひとみの情報によると、一応柔道出身となっているが、道場に通っていたのは半年間だ
けらしい。異常なスピードで柔道の基本を身体に叩き込んだ後、すぐに道場を去ったそう
だ。
 そして…道場をやめた三年後、ストリート・ファイトにデビューする。
 デビュー戦で彼女が見せたのは…恐るべき技の数々。
『あたしも映像見てみたんだけど…たしかに、柔道っぽい所もあったよ。だけど、全然柔
道なんかじゃなかった。独自にアレンジしたんだろうね。…なんか…すごく、危険な感じ。
相手を殺そうと思えば殺せるよ、あの技って。』
 淡々と言ったひとみだったが、その表情にはくっきりと『心配』の文字が浮かんでいた。
 思い出して、梨華はふっと微笑む。
 と、その時。

「うひゃ!」
「うきゃあ!」

 前から走って来たランナーと激突して来そうになり、梨華はあわてて避けた。しかし梨
華がよけたせいで、相手はつんのめって転んでしまっている。
「ご、ごめんなさい!!わたし、ぼーっとしてて…大丈夫ですか!?」
「大丈夫じゃないわ!!」
 地面に転がった、ピンクのトレーナーの少女は起き上がってわめいた。

16お団子頭のおちびちゃん:2003/06/28(土) 10:43
「いったい!!顔面強打したわ!!」
「ご、ごめんなさい…あ、血が…。」
その額には痛々しい擦り傷が出来ていて、そこから血がにじんでいた。
「…あああああっ!!ウチのプリキュート☆な顔に傷がっ!!」
「ご、ごめんなさい、本当に…。」
 梨華は眉を八の字に寄せて言う。
「あの…もしよかったら、わたしの家で治療して行かれませんか?この近所なので…。」
「ええい!!どこの世界に、知らないヤツの家にほいほい上がる若い娘がおるっちゅーね
ん!!かっわゆぅいウチをたぶらかそうったって…」
 そこまで言って、梨華の顔を見た少女は…目をぱちくりさせた。
「…石川、梨華…!?」
 フルネームを言い当てられて、梨華は警戒する。
 確かにストリート・ファイトでは有名人の梨華だが、一般での知名度はほぼないハズだ。
「・・・・・・何の話ですか?」
 戦闘モードで切り返すと、少女はこめかみに青筋を立てながら拳を握る。
 そして、力の限り叫んだ。

「あんた──────────!!!!自分の次の対戦相手の顔も覚えとらんのか────────!!?」

 今度は梨華が目をぱちくりする番だった。
「ウチは加護亜依や!!あんたの次の対戦相手の!!」
 亜依は、額から血を流しながら梨華に詰め寄った。

17お団子頭のおちびちゃん:2003/06/28(土) 10:44

****************************************

 「はい、完了〜♪」
ひとみは小さな身体で、救急箱の蓋を閉めた。そしてにこにこ笑顔で言う。
「ほんっとごめんね〜?ウチの梨華ちゃんってば。」
「・・・・・・。」
むくれ顔の亜依に、ひとみも苦笑する。
「…なんで対戦相手の顔も覚えてないねん。」
「梨華ちゃん、試合当日まで対戦相手の顔は見ない主義でさ。」
「ご、ごめんなさい…。」
恥ずかしそうに目を閉じる梨華。ひとみはそんな梨華の肩に座る。
「・・・・・・ったく、噂とは大違いや。こんなボケたねーちゃんだとは思わんかった。」
「ぼ…ボケ…!?」
少なからずショックを受ける梨華。
「そうや。…柴田家のお嬢様に言わせればあんた、『クールで美しく、理知的な方』なハ
ズやのに…。」
「お、お嬢様の中で、わたしってそんなんなんだ…。」
たらりと汗を流す梨華に、あゆみの名前が出た時点で膨れ顔のひとみ。
「…こんなのが、歴代最強のファイターやなんて。」
亜依はふぅ、とため息をつく。
「…なんか、超期待はずれって感じィー。『強いお姉様』みたいなタイプを想像してたの
に。実際あってみたら、ただのほそっこいねーちゃんやないか。」
「そーなんだよ。梨華ちゃん、細くてスタイル超良いんだ〜♪」
「・・・・・・いや、天使さん。そう言う意味やないし。」
「あ、でもね。胸はちゃんとあるんだよ?試合ん時はサラシ巻いてるからあんまわかんな
いんだけど。」
「ちょ、ちょっとひーちゃん!」
「いや、だからそーゆー意味やないし。」
 亜依は再び、ため息。

18お団子頭のおちびちゃん:2003/06/28(土) 10:44
「・・・・・・まあ、ええわ。対戦相手が想像よか貧弱だろーと、ウチはウチで戦うだけ
や。」
「ひ、貧弱!?梨華ちゃんのどこが貧弱だって言うのさ!!」
「貧弱や。…戦う身体には見えん。」
亜依はすっくと立ち上がった。
「…言っとくで、石川梨華。」
「・・・・・・何?」
「ウチは、弱い相手は大嫌いや。弱い相手は、殺す。…ウチ相手にまぐれの勝利はないと
思うんやな。」
 わなわなと震えるひとみの背中を、なだめるようにすっと撫で…梨華は微笑む。
「そうね。肝に銘じておく。」
「…ま、手当てしてくれたのは礼を言うわ。ありがとな。」
「いえいえ。」
 そして、亜依は梨華の家を去って行った。
「…何なんだよ!あのがきんちょはッ!!」
「まあまあ、ひーちゃん。」
「梨華ちゃんも梨華ちゃんだ!!なんで言い返さないんだよ!!?」
梨華は微笑んだまま、ひとみを見つめた。
 その真剣な眼差しに、ひとみは戸惑う。
 梨華は、静かに言った。
「わたしはね、誰にも理解されなくてもかまわないの。」
「・・・・・・。」
「ひーちゃんさえ、理解していてくれればそれで良いの。…ひーちゃん以外の人の評価な
んて、わたしには意味のないものなのよ。」
「…梨華ちゃん…。」

「わたしは…ひーちゃんだけが、味方でいてくれれば良いの。」

 その真剣な瞳には、空虚な色が浮かんでいた。
「…梨華ちゃんは、誰も信じてないの…?」
「ひーちゃんは信じてる。」
「あたし以外は?」
「興味ないから。」
ひとみは、嬉しさと切なさ…二つの感情で梨華に抱きつき、頬にキスをした。

19クロイツ:2003/06/28(土) 10:44


 今日でございますね、27時間TV!!
 …私、見れないかも知れないんですが(泣)梨華ちゃん・ヨッスィー・ミキティは、果
たして深夜組に入っているのでしょうかっ!?

>>13名無し(0´〜`0)様
 ありがとうございます!!
 こちらでもがんばりますので、どうぞよろしくです♪

>>14名無し(0´〜`0)様
 ののたんは、生身の人間にする予定です☆(しかし、予定は未定…笑)
 四期総出演なんですよー!四期大好きなので…(笑)次回はののたんも出て来ます♪
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

20名無し(0´〜`0):2003/06/28(土) 18:22
いよいよ対戦ですね。こういう作品今までなかったんで(私が読んだ中では…。)
すっごく、続きが楽しみです。
ひーちゃんほしい!!

21名無し(0´〜`0):2003/07/01(火) 05:58
朝からいいもの読まさせていただきました。
楽しみに応援しています。
がんがってください。

22試合、直前:2003/07/01(火) 14:53

 遠くから、歓声が聞こえる。
 しかし、この会場に観客などいない。この歓声は、都内各所のモニター設置場所に集まっ
ている人々のものである。それをマイクで拾い、リアルタイムで会場内に放送しているだ
けだ。
「…雰囲気作りにまで金かけるなんて。柴田のじーさんは凝り性だね。」
 ひとみがいつも通りにぽつりとつぶやくと、梨華もいつも通りにくすっと笑う。
 そして梨華も、いつも通りの事を言う為に口を開く。
「でも、ひーちゃん。ここは危険だよ?控え室で待っていた方が良いんじゃない?」
 ひとみは、最新機能がてんこ盛りに搭載されたロボットだ。解体してその技術をひとつ
でも取り出せれば、一生遊んで暮らせるだけの大金が手に入るだろう。
 ここは、金目的で戦っているファイターが多い。なので、ひとみのような『金の成る木』
には危険なのだ。
 しかしひとみは明るく、いつも通りの事を言ってのける。
「じょーだん!自分の身くらい自分で守れるから、大丈夫だよ。」
 その言葉通り。ひとみの小さな身体には、その可愛らしい外見に似合わない数々の兵器
が仕込まれている。うかつに手を出せば、殺されかねない。
 そしてひとみはそれを、何度も何人ものファイターに実践して見せていた。
 つまりこの『いつものやりとり』は、ただのじゃれあいなのだ。

23試合、直前:2003/07/01(火) 14:54
「まったく、毎回毎回。心配性だね、梨華ちゃん。」
「それはもう。大切な大切なひーちゃんの事だもん。」
 ひとみはちょっと照れたような顔をして…ほっぺにキス。
 いつもの『おまじない』。
「…あたしも、梨華ちゃんが何よりも大切。」
「うん。」
「頑張ってね、梨華ちゃん。」
 反対側のほっぺにも、キス。
 梨華は柔らかい笑顔を浮かべた。

「大丈夫。わたしには、『天使の御加護』があるんだから。」

 ライトが、梨華の姿を照らす。
『さあ、本日の最終試合です!!石川梨華VS加護亜依…勝利の女神は、どちらに微笑む
のかっ!!』
「…勝利の女神のご機嫌なんか、わたしには関係ないわ。」
 そう。梨華には、天使がついているのだから。

24試合、直前:2003/07/01(火) 14:54

****************************************

 梨華の立っているリングの外の、丁度正反対に位置する場所。
 加護亜依は、しきりにとなりの人物に話しかけていた。
「…のの、大丈夫か?こんな所まで来て…。」
「大丈夫なのれす。今日は、気分が良いのれす。」
 亜依の言葉に、清らかな笑顔で答えた少女。

 少女は、車椅子に座っていた。

 彼女の名は、辻希美。亜依のパートナーである。
「…やっぱのの、控え室に帰ってた方がええ。今日はなんと言っても、あの石川梨華が相
手なんや。もしかしたら…流血沙汰になるかも知れん。」
「大丈夫れすってば。…見てたいのれす。」
「けど…っ!!」
 ライトが、亜依の姿を照らす。
『さあ、本日の最終試合です!!石川梨華VS加護亜依…勝利の女神は、どちらに微笑む
のかっ!!』
 そのアナウンスの声に、亜依ははっとなる。
「ほら、あいぼん。出番なのれす。」
「・・・・・・っ!!」
亜依は、希美の手を取った。
「…わかった。そこで見ててや。…せやけど、わかっとるな!?誰か話しかけて来たりし
ても、返事したらあかんで!?無理矢理連れて行かれそうになったら、迷わず拳銃取り出
して発砲するんやで!?」
「やだなぁ、あいぼん。わかってるのれす。」
握り返される手が、じんわりと暖かい。その事に、亜依は少し安心する。
「…ののが、ここで見守っているのれす。れすから、思う存分戦って来てくらさい。」
「・・・・・・ああ。わかっとる。」
亜依は、希美に背を向けた。
「…勝利の女神なんぞ、アテにならん。ウチが欲しいのは──。」
 彼女が欲しいのは、ただひとつ。
 希美を、救う力。

25試合、直前:2003/07/01(火) 14:55

****************************************

 リングに上がった梨華の背中を見ながら、ひとみは『加護亜依』の情報をもう一度引き
出してみる。
 加護亜依、12歳。出身地は奈良県。
 生まれてすぐに養護施設に入れられ、3歳の時に現在の両親にもらわれて行った。
 しかし義理の両親の姓は名乗らず、養護施設時代の苗字を貫いている。
 義理の両親の姓は、辻。
 パートナーの辻希美とは、義理の姉妹らしい。
 辻家の家族とは仲良くやっているようだ。家族とのトラブルがあったと情報は皆無だっ
た。どうやら実の娘と同じくらい愛されているようだ。
「それなのになんで、ストリート・ファイトなんかに出てるんだろう?」
 そう思ったひとみだったが、答えはすぐにわかった。

 辻希美の、病気である。

 車椅子に乗っているのは、足が動かないわけではない。ただ、立って歩けるだけの体力
がないのだ。
 希美が発病したのは、1年前。十一歳になったばかりの頃。
 もともとけっこう裕福だった辻家だが…希美の病気により、それは一変した。
 病気の治療にはとても金がかかるものだ。辻家の生活は、たちまち厳しくなった。

26試合、直前:2003/07/01(火) 14:55
「・・・・・・義理の姉の治療費と…それから、手術代か。」
 ひとみは、車椅子の辻希美を見てぽつりと呟く。
「…確かに状況的には可哀想だけどね。」
 ふぅ、と軽いため息。
 ちなみにこのデータ、全て梨華には伝えてある。
「それでもきっと…梨華ちゃんは、手加減も容赦もしないんだろうな。」
 最強のファイター、石川梨華。彼女の別名は──『氷の薔薇』。
 大輪の薔薇のごとき美しさと、氷のように冷たい心を持つ女。
「…だからこそ最強なんだよね。梨華ちゃんは。」
 その『氷の薔薇』が唯一その氷を溶かす相手は、小さな羽をふわりと動かしながら微笑
む。
 試合が、始まる。

27クロイツ:2003/07/01(火) 14:56


 27時間TV、グランドフィナーレだけ見れました(泣)
 マコ…!!車椅子のマコ…!!!
 彼女の姿を見た直後、『I LOVE YOU』のののたんの設定が決まりました。
 ありがとうマコ。マコ見てののたん思い出してごめんよマコ。
 …そのうちマコも出したいです。

>>20名無し(0´〜`0)様
 すみません、対戦次回です(大汗)
 ありがとうございます!!私もこーゆーの書くの初めてなんで、どきどきしてます(笑)
 がんばります!!どうぞよろしくです!!

>>21名無し(0´〜`0)様
 ありがとうございます!!
 まだまだ未熟者ですが、頑張りますっ!どうぞよろしくお願いします!!

28名無し(0´〜`0):2003/07/02(水) 14:56
続きが楽しみ楽しみ(w

29フェンリル:2003/07/02(水) 19:13
今日教えてもらったので早速見に来ましたよ。
今までの作風とガラっと趣を変えてますね。別鯖の方でも格闘系ではありますが。
別鯖の方に2度ほど別の名前で書き込みさせてもらいましたが今後はこの名前で
いきますね。(軽い荒しが入ったときです)こちらもチェックしますので頑張ってくださいね。

30VS加護亜依:2003/07/04(金) 20:37

 試合開始の、鐘が鳴る。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
 先に動いたのは亜依の方だった。梨華の右手に狙いを定め、突進する。
「…背負い投げでもする気?」
梨華はぽつりと呟いて、ひょいっと亜依を避ける。しかし亜依は、避けられる事を見越し
ていたらしい。すっとしゃがみこんで、足払いをかける。
 だが、そんな技にひっかかる梨華ではない。足払いもひらりと避け、距離を取る。
 亜依は諦めずに、くるりと体勢を直すと…また梨華に向かって行く。それを梨華が避け
る。
 それをしばらく繰り返していると、亜依がイラついた声を発する。
「ウチをナメとんのか!?コラァ!!」
「別に。こう言う戦法もあるって事。」
「ウチがこんな事で頭に血ィのぼらせて、ミスると思ったら大間違いやで!?」
「それが狙いじゃないから。」
 静かだが、激しい攻防。
 柔道は、柔術から独立した『スポーツ』だ。
 手または武器を持つ相手を攻撃し、またはそれから自分を防御すると言う実戦的な格闘
技である柔術から、危険なところを除き工夫と研究を加えられたのが柔道なのだ。
 つまり『柔道』には、相手に致命的なダメージを追わせる技はない。
 梨華は気付いた。
(…柔術、って感じじゃない。やっぱり基本は柔道…だけど、かなりのアレンジを加えて
るみたいね。)
 梨華が、動いた。
 無言で拳を前に突き出す。
「ぐぶっ!!」
 鈍い音と共に、亜依が後ろに吹っ飛ぶ。梨華の拳が、顔面に命中したのだ。

31VS加護亜依:2003/07/04(金) 20:37
 亜依はなんとか踏みとどまり、梨華をにらみつける。
「…さすがにすごいね。」
 梨華は苦笑する。亜依は口の端と鼻の穴から血を流していた。
「一発で決めようと思って、結構本気で殴ったのに。」
 本来だったら、顔面が半分陥没しているはずだった。しかし亜依は、ヒットする直前に
後ろに飛び、衝撃を弱めたのだ。
「…そう簡単にやられてたまるか!!」
口の端を拭う。
「ウチは、負けない!!お前に勝てば…!!」
 亜依は言い終わらない内に、もう一度梨華に突進する。梨華は今度は片足を浮かす。亜
依の動きを予測して、蹴りを入れるつもりなのだ。
 梨華が左足を踏ん張り、右足を繰り出そうとした…その瞬間。
「!?」
 亜依の姿が消えた。
 梨華は慌てて気配を探り、左を見る。
 それと同時に、亜依は梨華の左手をつかむ。
「梨華ちゃん!!!」
 ひとみの悲鳴のような声と同時。
「・・・・・・っ!!!」
 梨華の体が宙に浮く。しかしそれは一瞬の事。すぐに地面に叩き付けられた。
「く…っは…!!」
 瞬間的に息が詰まり、梨華は苦しげな声を出す。
 背中から地面に叩き付けられた衝撃が、全身を覆う。そこを見逃す亜依ではない。
「でりゃぁ!!」
 梨華の左手を離し、右手に飛び掛った。

ぼき。

 重いような、軽いような。どちらとも取れる音。
「・・・・・・梨華ちゃん!!!」
 ひとみの顔が、真っ青に染まる。
 梨華の右腕の骨が、折られた。

32VS加護亜依:2003/07/04(金) 20:38
「・・・・・・ぐっ!!」
梨華は険しい顔で、それでもなんとか足を繰り出す。
 ぼくっと言う音と共に、その足が亜依の腹部にヒット。亜依は吹っ飛ばされた。
「げほっ!!うぇ、げほっ!!!」
 さすがは梨華。とっさの攻撃ながらも、確実に胃を狙ったらしい。凄まじい吐き気が亜
依を襲う。その隙に、梨華はよろりと立ち上がった。
 右手がだらりと垂れている。完全に折れたらしい。
「…わたしとした事が、その可愛い外見に騙されたみたい。」
笑ってはいるものの、顔には脂汗が浮いている。
 梨華は、目を閉じた。
 そして、その目を開いた時には…すでにその顔に、表情はなかった。

33VS加護亜依:2003/07/04(金) 20:38

****************************************

 ひとみの全身がぶるぶると震える。
「…あいつ…!!あのガキ!!梨華ちゃんに…あたしの梨華ちゃんに!!!!」
 わかっている。ここはストリート・ファイトの会場。怪我をするのもさせるのもお互い
様。したくなかったら参加しないか、それとももっと強くなれば良いのだ。
 そして怪我をしようが殺されようが、それは全て『事故』となる。
 それに、骨折程度の怪我だったら、試合終了後にすぐ手当てをすれば明日の朝には完全
に元通りになるくらい、医学は発達している。
 しかしひとみにはその理論は通用しない。
 梨華の右手を、ひとみは歯を食いしばりながら見た。
「…梨華ちゃん!!!」
 と、ひとみが切なそうに呟いたその時。
「!!」
 ひとみは、メールを受信した。
 その文面を読んで、がばっと顔を上げる。
 メールの送信元は、VIPルーム。ひとみのデータによると、今夜そこにいるのは…。
「柴田あゆみ…!!」
 VIPルームの窓を見上げる。すると、携帯端末を手ににこにこと手を振るあゆみの姿。
『何の用だよ!!今あんたの相手してられる程、あたし暇じゃないんだけど!!』
 メッセンジャーを飛ばすと、返事はすぐに返って来た。
『そう言わないで。わたくしだってわかっているけど、どうしても伝えたい事があって。』
『あんたからの情報なんていらないよ!!信用できないね!!』
『まあ、ひどい。』
コロコロと、鈴を転がすような笑い声が聞こえて来そうだ。ひとみの機嫌が、更に悪くな
る。

34VS加護亜依:2003/07/04(金) 20:38
『じゃあ、ただの独り言だと思って聞いて。』
 嫌がらせのようにゆっくりと、流れて来る文章。
『実はね、加護亜依は騙されているのよ。辻家の人々に。』
「・・・・・・!?」
『辻希美は、病気なんかじゃない。実の両親に、殺されそうになっているの。』
『…で、デタラメ言うなよ!!』
『デタラメじゃないわよ。わたくしが個人的に、色々な手段を駆使して仕入れたんだもの。』
 柴田あゆみの情報収集能力は、信用できる。ただ、あゆみが嘘をついていなければの話
だが。
『…嘘だろ。』
『何故そう思うの?』
『だって…実の親が、実の娘を殺そうとするなんて…!!!』
『あら。梨華ちゃんだってそうだったじゃない。』
ひとみの目が、かっと見開かれる。
『なんであんたが、その事を…!?』
『今はその話をしたいんじゃないわ。辻希美の事よ。』
ぴしゃりとそう言い、またしてもゆっくり文章を打ち出す。
『…なんで辻希美は実の両親に殺されそうになってるのか、教えてあげましょうか?』
 ひとみは黙る。
 確かに、知りたい。しかし、この女に教えてもらうのは癪に障る。
 そんなひとみの気持ちを読み取ったかように、あゆみから文章が送信されて来た。

35VS加護亜依:2003/07/04(金) 20:39
『まあ、信じる信じないはあなたの勝手。だけど、一つだけ教えておいてあげる。』
『・・・・・・なんだよ。』

『辻希美の身体を蝕んでいるのは、砒素よ。』

ひとみは唇を噛む。
『母親が、食事に少しずつ混ぜているの。彼女はその砒素によって、内臓障害を引き起こ
されているのよ。』
『なんで…そんな事を!!!』
『ここから先は、自分で調べなさい。これ以上は教えてあげない。』
『…てゆーか、なんで教えてくれたんだよ。そんな情報。』
するとしばらく黙った後、あゆみはメッセージを送って来た。
『あなたの怒った顔、わたくしは嫌いじゃないのよ。』
 ひとみは一方的に接続を切る。
「…あたしは嫌いだ!!」
 そして、回線を別の所につなぐ。
 ここまで知ってしまったら、最後まで知らなくてはスッキリできないから。

36クロイツ:2003/07/04(金) 20:39


 ののたんが大変な事になって参りました(汗)
 …本当は今回、とある人物を初登場させようと思ってたのに…出せませんでした(泣)
 くそう…恥ずかしがり屋さんめ…。

>名無し(0´〜`0)様
 ありがとうございます!!頑張ります♪
 どうぞよろしくお願いしまっす!!

>フェンリル様
 おおっ!ありがとうございます〜♪
 >別鯖の方に2度ほど別の名前で書き込みさせてもらいましたが
 おおおおおっ!!あの時の!!その節はどうも、ありがとうございました〜!!
 こちらも頑張りますので、どうぞよろしくです!!

37名無し(0´〜`0):2003/07/05(土) 22:14
とある人物…。
うぅ〜ん。気になります

38名無し(0´〜`0):2003/07/06(日) 13:50
。・゜・(ノД`)・゜・。 のの〜。
しかし、柴ちゃんがあなどれませんな。(w

39フェンリル:2003/07/08(火) 12:31
 ををっ。中々ダークな話ですなぁ。ブラピの某映画チックですごい。
 クロイツさん的に今は格闘系がマイブーム?
 続き楽しみです。

40匿名匿名希望:2003/07/08(火) 23:59
BSラジオを聞きながら、読んでます☆
何だかいつもと『ていすと』の違った感じですねぇ。
こっちもめっちゃ楽しみにしてます☆
しかしのの&あいぼん・・・・。
気になることが沢山あるなぁ・・・
次回の更新もまったり楽しみにまっています。

41こども:2003/07/09(水) 22:14

 母親はいつも、自分に冷たかった。
『亜依は良い子ね。…それに比べて、希美は…。』
 実の娘である自分より、養女の亜依の方がいつでも優遇されていた。
『お義母さん、あかんで。ののだって頑張ってるんや。』
 亜依はいつでも希美を庇ってくれていた。それが、希美のプライドを激しく傷つけてい
るとも知らずに。
(ママの実の子供は、のののはずなのに!!!)
 亜依が辻家に来てから、ずっと抱いていた想い。
 口にも態度にも絶対出さなかったが、ずっとずっと抱き続けていた。
 努力していないわけではない。
 家の手伝いだって学校の成績だって、極限まで努力をした。しかし、それが結果に表れ
ようとも…母の態度は変わらなかった。

 それが全てひっくり返ったのは、身体が弱り始めてから。

 母親は、優しくなった。自分には無関心だった父親も、自分を見てくれるようになった。
そして亜依は…日に日に弱って行く希美の為に泣いてくれた。
「…ののは、幸せれす。」
 膝の上で両手を握りあわせながら、希美は呟く。
「ママもパパも、ののに優しくしてくれるのれす。それにあいぼんも、ののを大切に想っ
てくれて…命をかけてまで、ののの為にお金を作ってくれているのれす。」
目を閉じる。熱い塊が、こみ上げて来た。
 胸からこみ上げて来たソレは、喉の奥、鼻の奥を通って涙に変わる。
 頬に、熱いモノが流れる感覚。
「…ののは、幸せなのれす。」
 それが例え、計算された事であっても。
 自分の身体を蝕んでいるモノが、母親の盛った毒であっても。
 希美は今、最高に幸せだった。

42こども:2003/07/09(水) 22:15

****************************************

 あゆみからの情報を得て、視点を変えて調べて見ると…とんでもない事が判明した。
 辻希美は、母親の実の娘ではない。父親が外に作った愛人の子供だった。
 そして…加護亜依こそが、辻家の夫婦の実の娘だと言う。
 ひとみは目を見開く。
「…うっそ、だろ…!?…なんで、そんな…!!」
 その事実に、ひとみは頭がくらくらとするのを感じた。
 そんなひとみに、まるで計ったかのようなタイミングでメッセンジャーが飛んで来る。
『どう?わかった?』
 VIPルームの、あゆみだ。
『・・・・・・ああ!わかったよ!!!』
 ひとみは、吐き捨てるように言い放つ。
『…こんなのあたしに知らせて…どうするつもりなんだよ!!』
『どうするつもりもないわ。わたくしは、あなたがどんな顔をするか見たかっただけよ。』
『性格悪っ。』
『梨華ちゃんほどではないわ。』
 きっとまた、コロコロと笑っているのだろう。それを想像するだけで、ものすごく腹が
立つ。
『で、どうするの?この情報。』
『どうって?』
『梨華ちゃんには伝えないの?』
 ひとみは黙った。
 梨華のピアスに埋め込んである通信機を使えば、この情報を送る事も可能だ。
『・・・・・・伝えたって、梨華ちゃんは変わんないよ。』

43こども:2003/07/09(水) 22:15
『あら、そうかしら。』
あゆみの意外そうな表情が、見えた気がした。

『さすがの梨華ちゃんでも、同じ「母親に殺されそうになってる」子供は放っておけない
んじゃなくて?』

 ひとみはギリ、と歯軋りをする。
(なんでコイツが知ってるんだよ!!)
 梨華と自分だけの、秘密のはずだ。
 二人だけで共有しているはずの秘密を知られていると言う不快感に加え、それを軽々し
く話題に出すその無神経さに、ひとみは小さな拳を握る。
『・・・・・・それでも、梨華ちゃんは変わらない。』
 断定する。
『…何故そう言い切れるの?』
 あゆみの不機嫌な顔が見えるようだ。ひとみは不敵に微笑んだ。
『…あたしはね、あんたなんかよりもずーっとずーっと梨華ちゃんの事をよく知ってるん
だよ。』
 そしてまた、一方的に回線を切った。そうしてから、視線をリングに戻す。
 丁度、梨華が動き出した所だった。

44こども:2003/07/09(水) 22:16

****************************************

 音も、声もなく。
 だから、観客も誰も…梨華が何をしたのか、わからなかった。
「…ぁあああああああああああああああああああ!!!!!」
 響き渡ったのは、亜依の悲鳴。
 そこで全員が、はっと梨華の姿を見つける事ができた。
「・・・・・・。」
冷たく、何の表情も見せない美しい顔。
 その目線の先には…梨華に踏まれた亜依の右手。
「…ハムラビ法典って、知ってる?」
「あああああああ!!!うああああああああああ!!!!!」
 足をぐりぐりと動かす度、亜依の悲鳴が響き渡る。どうやら亜依の右手の骨は、粉々に
砕けているようだ。
 複雑骨折──現代の医学でも、完治までにはかなり時間がかかる。悪くすれば、障害が
残るかも知れない。亜依は涙こそ流していなかったが、その顔は血が引いて真っ青になっ
ていた。
 それを見つめる、冷たい梨華の表情。
 まさに、『氷の薔薇』。
(負ける…かも知れん…!!!)
 亜依は、ぐっと唇をかみ締めた。
「…嫌や!!」
 激痛に耐え、亜依が叫ぶ。
「負けん!!ウチは絶対負けへんのや!!負けたらあかんのや!!!」
 左手で、梨華の足をつかもうとする。寝技に持ち込めば、片手一本でも梨華を倒す事が
できる。
 梨華はそれを察知したのか…足をどけて、背後に飛び退った。それと同時に、亜依もよ
ろけながらも立ち上がる。

45こども:2003/07/09(水) 22:16
「…あんたに勝てば…勝てば!!ののの手術費が手に入るんや!!!」
「・・・・・・知らないわね。そんなの。」
「あんたにわかってもらおうなんて思っとらん!!気合入れてるだけや!!」
 両者とも、右手がだらりと垂れている。そして、激痛が走っている。
「・・・・・・これで、おあいこってワケやな…!!」
「そうだね。」
「おもろいやないか…!!」
「…本当に。面白い。」
 亜依が、またしても梨華に突進しようとした…その時。
「・・・・・・のの!?」
 亜依が、気付いた。

 希美が、ぐったりとしている。

「ののッ!!!!」
亜依は、梨華に背を向けた。
「…ちょっと。」
梨華が呼び止めるが、亜依はそのまま走り出し…リングから飛び降りた。
 ちなみにストリート・ファイトでは、リングの外に出て10カウントを数えられると、
負けと判定される。
 それでも、亜依は止まらなかった。

46クロイツ:2003/07/09(水) 22:16


 VSあいぼん、次回で決着がつく予定です♪
 …今回も、出そうと思ってた人が出ませんでした。…実は恥ずかしがりやさん…?(笑)

>>37名無し(0´〜`0)様
 すみません、今回も出せなくて(大汗)
 次回かその次くらいには必ず出す予定ですので…そうぞよろしくです☆

>>38名無し(0´〜`0)様
 ののたん、またしても大変な事になっておりますねぇ(汗)
 そんなののたんが書きやすいのは何故…?(爆笑)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>フェンリル様
 ダークになり過ぎで、自分でビビッてるくらいです(汗)
 >クロイツさん的に今は格闘系がマイブーム?
 うーむ。もともと好きなんですよ、格闘系(笑)初めてハマった漫画が幽○だったんで(汗)
 ありがとうございます!!頑張ります!!

>匿名匿名希望様
 おおおおお!!こちらにも来て下さったんですかっ!?ありがとうございます!!
 >何だかいつもと『ていすと』の違った感じですねぇ。
 がらっと変えてみました♪私としては、『愛人。』が陽ならこちらは陰にするつもりな
んです〜!!
 ありがとうございます!!頑張ります!!

47名無し(0´〜`0):2003/07/11(金) 15:21
ののぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
あぁ、あいぼんも・・・。(涙
しかし4期総出演は嬉しいですが、皆不幸だ〜(涙涙
続き楽しみに待っております。

48大切な人:2003/07/15(火) 17:44

 『8…9…10!!加護亜依、場外10カウント!!石川梨華の勝利です!!』
 スピーカーから怒号が飛ぶ。亜依に賭けていた客の声が、リアルタイムで流れて来てい
るのだ。
「ののぉ!!!」
 しかし亜依は、それを気にしている余裕はない。ぐったりとした希美を抱きしめ、涙を
流す。
「加護さん、右手の治療を…」
「うるさい!ウチはええねん!!のの!ののぉ!!しっかりせぇ、のの!!!」
 怒号に混ざる、亜依の悲痛な叫び。
 それを聞きながら、ひとみは羽をはばたたかせて梨華に向かって行った。
「梨華ちゃん!」
「ひーちゃん。」
「右腕、治療しないと!!」
「うん、そうだね。」
そう言って、にっこりとひとみに微笑みかけた。
 そして…ふと、亜依の腕の中の希美の姿を見る。
「どうしたんだろうね、あの子。もともと身体が弱ってたみたいだけど。」
「・・・・・・。」
「ひーちゃん?」
ひとみはぎゅっと、梨華の服を掴む。
「…ひーちゃん、どうしたの?」

49大切な人:2003/07/15(火) 17:44
「・・・・・・あの子…辻希美はね…。」
 苦しむような表情で、ひとみは口を開く。

「…母親に盛られた毒で、死にそうになってるんだよ。」

梨華の目に、衝撃が走る。
「・・・・・・砒素、だって。」
「母親って、実の母親?」
「ううん…あの子は実の母親だって思ってるみたいだけど…本当は違うみたい。」
「…どう言う事?」
そこでひとみは、だらりと垂れた梨華の右腕を思い出した。
「…そっ!それよりも!!早く手当てしないと!!痛いでしょ!?」
「うん、まぁ…でも…。」
「詳しい事は、梨華ちゃんが治療してる間に調べておくから。」
 梨華は、ふわりと微笑んだ。

50大切な人:2003/07/15(火) 17:44

****************************************

 父親は、昔から愛し合っていた女性がいた。
 しかしその女性は、施設の出。それなりの地位と財産を持っていた辻家の嫁には相応し
くないと、家族中から大反対され…父親は、泣く泣くその女性と別れさせられた。
 その直後に見合いをし、結婚。それが現在の夫人である。
 夫人は身ごもり、辻家の家庭は一見とても幸せそうに見えた。
 しかし、それは誤解だった。
 実は父親は、前の女性と別れていなかったのだ。結婚後も関係は続いていて…彼女も、
父親の子供を身ごもっていたのだ。
「…だけどその女の人は、末期がんに侵されてたんだって。」
「・・・・・・。」
「自分が孤児で、すごく苦労したから…生まれた子供には、苦労してほしくないって思っ
たらしいよ。…それで…ある日、生まれたばかりの赤ん坊をかかえて病院を抜け出したん
だって。」
 梨華は目を閉じた。そこまで聞けば、あとは全て推測できる。
 つまりその女性は、本妻の子供と我が子を取り替えたのだ。
「・・・・・・その女の人、それからすぐに亡くなっちゃったんだって。…本妻は、いつ
からか気付いてたみたい。辻希美が、自分の産んだ娘じゃないって。」
「それで…どこからか、実の娘を探し出して引き取ったってワケ?」
「そう。」
ため息が、漏れた。しかしどちらが漏らしたのかはわからない。

51大切な人:2003/07/15(火) 17:45
 ふと、ひとみが顔を上げた。
「…ひーちゃん?どうしたの?」
 なにか、新しい情報を受信したらしい。
「・・・・・・。」
 ひとみの大きな目に、大粒の涙が溜まる。
「梨華ちゃぁん。」
「ひーちゃん?」

「辻希美が…息を引き取ったって…。」

 梨華は、ひとみの小さな背中を優しく撫でた。
「…次は、幸せになれると良いね。」
「そうね。…でも、もしかしたら幸せだったかも知れないよ?」
「なんでだよぉ。」
「だってさ…加護亜依がいたじゃん。」
梨華は左手で、ひとみの背中を撫でながら言った。
「わたしも…過去に何があっても、ひーちゃんと出会えたって事だけで、十分幸せだよ。」
「梨華ちゃん…!!」
 ひとみは、梨華の頬にキスをした。

52大切な人:2003/07/15(火) 17:45

****************************************

 「…で、お祖父様。何です?用事って。」
あゆみは不機嫌そうに、足を組みなおす。するとあゆみの目の前に座っている老人は、し
わがれた声で笑う。
 影で政界をあやつり、その影響力は海外にまで及ぶと言う巨大な権力を持つ老人だ。彼
の弱点はただ一つ。この、一番若い孫娘だけ。
「わたくし、こう見えても忙しいんですのよ?」
「ほっほっほ。そう言うな、あゆみ。」
 老人はさんざん笑った後、いきなり真面目な表情になった。
「お前に、引き合わせたい人間がいるんじゃ。」
「・・・・・・引き合わせたい、人間…?わたくしに…?」
「そうじゃ。」
老人は、パンパンと手を叩く。すると、分厚い扉が待っていたかのように開く。
 あゆみはいぶかしげな顔で、その扉から入って来た人物を見た。
 最初に目に付いたのは、金髪。
「…こいつじゃ。」
「・・・・・・この方って、最近ストリート・ファイトにデビューしたばっかりのファイター
じゃありません事?」
「おお、おお。そうじゃ。あゆみはよく知っておるな。」
 金髪のファイターは、ぺこりと頭を下げた。
「はじめまして、大谷雅恵です。」
 あゆみは祖父の顔を見る。

53大切な人:2003/07/15(火) 17:45
「…で?わたくしに何をさせたいの?お祖父様。」
「ほっほっほ。そう、結論を焦るなあゆみ。」
老人の目に、抜き身の白羽のような光が走る。あゆみはびくっと身体を強張らせた。
「大谷には、石川梨華を倒してもらう。」
「…なんですって!?」
「ワシと賭けをしよう、あゆみ。ワシは大谷に賭ける。お前は石川梨華に賭けろ。」
「言われなくてもそのつもりですわ!!…それで、賭けるモノは何?」
 老人は笑った。

「結婚、だ。」

「!?」
「ワシが勝ったら、お前はワシが決めた男と結婚するんじゃ。」
「・・・・・・何故…!?」
「お前に、ワシのあとを継がせる為に。」
 あゆみは、目の前が暗くなりそうなのを必死で食い止めていた。

54クロイツ:2003/07/15(火) 17:46


VSあいぼん終了〜。次回からはVSマサオです!!
柴マサ好きさん、集まれー!!!つーか集まってー!!(笑)

>名無し(0´〜`0)様
 ごめんなさい、ののたんこんな形で終わってしまって…(泣)
 あいぼんはこの先、まだまだ出て来ますので…(汗)
 ありがとうございます!!がんばります!!

55匿名匿名希望:2003/07/15(火) 23:00
更新お疲れ様でした。
そして私涙しました・・・(号泣)
だぁ・・・悲しいでしね・・・・だけど続きが気になって気になって・・・
お布団の中じっと次回更新を待たせていただきます(ぺこり)

56名無し(0´〜`0):2003/07/16(水) 04:42
。・゚・(ノД`)・゚・。
ののぉぉぉぉぉぉぉ〜
涙を、流しながら読んでしまいました。。・゚・(ノД`)・゚・。
続きを、泣きながら待っています。

57キモチ:2003/07/18(金) 18:56

 加護亜依が、梨華とひとみの家を訪ねて来たのは…あの試合から五日経ってからだった。
 右手には白い包帯、そして左手には白い小さな箱を抱えて。
「・・・・・・悪かったな。大口叩いた割りに、マトモに戦えなくて。」
「別に、わたしは勝てればそれで良いから。」
「…うっわ。正直やな、アンタ。」
 真っ赤に腫れた目で、亜依は苦笑する。
「・・・・・・なあ、そこのロボットのねーちゃん。」
 亜依に呼ばれ、ひとみは手を腰に当てて言う。
「あたしは『ひとみ』!ロボットって言うなー!」
「…それじゃ、ひとみサン。」
「ん。何?」
 亜依の顔が、急に真面目になる。
「アンタ…ののとウチの事、どこまで知ってるん?」
「・・・・・・。」
ひとみは返答に困り、ちょっと俯くが…亜依があまりにも真剣な目線で見て来るので、諦
めて口を開いた。
「…全部、だよ。」
「・・・・・・そうか…。」
亜依は、小さな箱を抱きかかえる手にちょっと力を込めた。
「ウチはののが死んだ日に、全部聞かされたんや。両親から。」
「・・・・・・。」
「知らんかった。…全然、知らんかった。」
 梨華は、亜依が泣くかと予想した。それ程までに、苦しそうな声だった。
 しかし亜依は梨華の予想を裏切り、ぐっと唇をかみ締めた。
「…なあ、石川梨華。アンタの意見が聞きたいねん。アンタの意見が聞きたくて…ウチは、
わざわざここに来たんや。」
「・・・・・・何?」

「ウチがした事、無駄やったと思うか?」

 梨華は少しだけ、目を見開く。

58キモチ:2003/07/18(金) 18:56
「…ののの治療費の為に、ウチずっと闘ってた。…せやけど…治療費なんて、本当は必要
なかったんや。…ウチが稼いだ金は全部…両親が勝手に作ったウチの銀行口座に貯金して
あった…。…ウチは…ウチは結局、ののの為には何もしてやれなかったんや!!」
 ひとみは目を閉じる。
「ののを助けたかったらウチは…本当なら、ののを連れて逃げるべきやったんや…!!そ
んな事にも気付かないで…!!ただただ、金さえあればののが助かるって思い込んで…!!!」
 亜依は、知ってしまったのだ。他でもない母親が、希美を殺したと言う事を。
 それを感じて、ひとみは胸を押さえる。
「…わたしの意見を聞いて、どうするつもり?」
 梨華の冷静の言葉に、亜依は疲れたようなため息を吐いてから言った。
「どうもせん。…どうもせんけど…でも、聞きたい。アンタの意見を。」
 ひとみに、助けを求めるような視線を送る。しかしひとみはにっこり笑って、梨華を促
した。
「…希美さん、だっけ?あなたのパートナー。…なんであんな身体であなたのパートナー
になんかなったの?」
「え?…ああ…ウチは反対したんやけど、のの自身が『やる』ってきかなくって…。」
「それは、自分の為にあなたを一人で闘わせるのが忍びなかったからじゃない?」
「・・・・・・そう、やな。そう言ってた。…ソレが、どうかしたんか?」
 梨華は、ふわりと微笑んだ。

「無駄なんかじゃ、なかったはずだよ。きっと。」

「・・・・・・!!」
「希美さんがどう思ってたか、なんて、わたしは知らない。でも…」
 梨華はひとみを見つめた。
「私が希美さんだったら、きっと嬉しいだろうな。敵だらけの中で、最期の最期まで『味
方』がいてくれるなんて。」
 亜依は、静かに涙を流し始めた。
 白い小さな箱を、抱きしめながら。

59キモチ:2003/07/18(金) 18:57

****************************************

 帰り際、亜依は貴重な情報をくれた。
『…アンタの次の対戦相手、柴田の爺さんの秘蔵っ子やで。』
 そして、一枚のメモを投げて寄越した。そこにあったのは…暗号化された文章。
「…柴田のお嬢様の結婚がかかってる、だってぇ!?」
 亜依が帰った後にそれを開き、解読していたひとみが上げた声に、梨華もぴくりと反応
する。
「・・・・・・なんだって?」
「結婚だよ!結婚ッ!!…梨華ちゃんが負けると、柴田あゆみは…政略結婚させられちゃ
うんだって!!」
 梨華はダンベルを左右交互に持ち上げながら、神妙な顔つきになる。
「…元々、負ける気はないけど…それじゃあますます負けられないね。」
「・・・・・・。」
ひとみの顔に、複雑な色が浮かび上がった。
「要するに、わたしが勝てばその縁談はなくなるんだよね?」
「・・・・・・まあ、そうだけど。」
「ま、負ける事はないと思うけど…そう言う事なら圧勝しなくちゃね。」
「…ちょっと!梨華ちゃん!?」
ひとみが、耐え切れなくなったように叫び、羽をはばたたかせて梨華の前に来る。
「うわっ!!…ちょっと、ひーちゃん!ダンベル上げしてる時に来たら危ないってば!!」
「なんでそんなに張り切るんだよ!!いいじゃん別に!!」
「は?」
ひとみは、不機嫌をモロ顔に出す。
「いいじゃん、別に!!あのお嬢様が結婚させられよーが何しよーが!!梨華ちゃんには
関係ないじゃん!!」
「…ひ、ひーちゃん。あるから。バリバリあるから。」
「なんで!?なんで梨華ちゃんは、あの嫌味な女の結婚を食い止めようとするワケ!?…
そ、そりゃー政略結婚は可哀想だけどさぁ…でも、梨華ちゃんには関係ないじゃん!!」
「だから、あるんだって。理由が。」
「・・・・・・ッ!!」
 ひとみの顔が、泣きそうにゆがむ。

60キモチ:2003/07/18(金) 18:57
 それを見て、梨華は慌ててダンベルを床に下ろした。
「…ひーちゃん?」
「・・・・・・関係、ないよ!結婚しようがしまいが!!梨華ちゃんには絶対関係ない!!」
「落ち着いて、ひーちゃん。よく考えて。」
大きな瞳に涙をいっぱい溜めている天使に、梨華は優しく言った。

「あゆみお嬢様はわたしのファンで、わたしのスポンサーでもあるのよ?」

「・・・・・・あ。」
「ね?もしも結婚して、ストリート・ファイトを禁止されたりしたら…わたし達はまた、
スポンサーを探さなきゃいけなくなるでしょ?アテがないわけじゃないけど…あゆみお嬢
様ほど気前と条件の良い人はいないだろうし。」
「・・・・・・。」
ひとみは顔を真っ赤にして、俯いた。
「ご、ごめん。あたし…。」
「…もしかして、妬いちゃった?」
「・・・・・・うん。」
 梨華は、くすっと笑ってひとみの顔を覗き込んだ。
「まだわかんないの?わたしにはひーちゃんより大切なひとなんかいないんだよ?」
「・・・・・・。」
真っ赤になって目を潤ませるひとみの髪を、梨華は心底愛しげに撫でた。

61キモチ:2003/07/18(金) 18:58

****************************************

 鍛える。鍛えて鍛えて鍛えぬく。
 勝利の為に。
「・・・・・・。」
 大谷雅恵は、シャドーをする手を止めて…苦しそうな表情をした。
「勝てば、あゆみさんが結婚する。負ければ…私は、スポンサーを失う。」
 そう呟いて、ぐっと拳を握り締めた。
「くそ…ッ!!!」
 吐き捨てるように、彼女は言った。
「自分がどうしたいのか、全くわからない…!!」
 駆け出しの新人が、政界の大物をスポンサーにできたのは奇跡に近いラッキーだ。しか
しそれは、諸刃の剣。柴田老を失ってしまえば最後、彼女にはスポンサーはつかなくなる
だろう。『政界の大物の顔に、泥を塗ったファイター』となるのだから。
 しかし雅恵は、それでも『勝ちたい』とは言えなかった。
 柴田あゆみ。
「…結婚なんて!!幸せなんて望めない結婚なんて…ッ!!!あの子が…!!!」
食いしばった歯から、ギリ、と嫌な音がする。
「・・・・・・せめて、幸せになってほしいのに…!!!」
 それができる相手が、自分ではなくても。

「…くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 自分の権力のなさに、雅恵は怒りの咆哮を上げた。
「力が欲しい!!誰にも負けない…何も諦めたり失ったりしなくても良い、絶対的な力が!!」
 それさえあれば、自分はこんなに苦しまなくても良いのだ。
 それさえあれば、彼女を自分の手で救えるのだ。
 雅恵の目から、涙が溢れた。

62クロイツ:2003/07/18(金) 18:58


 VSマサオ、始動です!!柴マサ好きさん、集まってー!!(爆笑)
 さーて、これからどうするつもりなんだクロイツ(笑)

> 匿名匿名希望様
 ありがとうございまっす♪
 暗くてごめんなさい(汗)こちらはギャグなしで突っ走ろうと思ってるんで…(大汗)
 でもそんな風に言って頂けて…嬉しいです!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>名無し(0´〜`0)様
 >涙を、流しながら読んでしまいました。。・゚・(ノД`)・゚・。
 ああっ!そんなに話に入り込んで頂けて嬉しいのと、泣かせてしまった事が申し訳ない
のが混ざっております!!…でも、ありがとうございます♪嬉しいです♪
 がんばります!!どうぞよろしくです!!

63名無し(0´〜`0):2003/07/18(金) 22:08
柴マサキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
楽しみです♪

てか、ひーちゃんほしい!!

64チップ:2003/07/19(土) 01:25
柴マサ好きさん?ハーイ!ハイハーイ!!
ってゆーかのの!(遅 ののぉ・゜・(ノД`)・゜・あいぼん!ママのバカ!バ(ry
のののご冥福を祈りつつマーくんファイトォ。

65フェンリル:2003/07/19(土) 22:51
ののかご痛すぎます・・・加護には再登場を期待です。
何だか今回はCP総受難ですなぁ。
大柴には幸せになってほしいなぁ・・
って柴ちゃん大谷さんの気持ち知ってるのかな?
次回も楽しみにしてます。

66オガマー:2003/07/21(月) 06:16
はぁ〜〜〜〜い!!

柴マサ大好きでーす!!
マサオの片想いキタ―――――――(゜∀゜)―――――――!!!!

67初恋:2003/07/24(木) 09:35

 あゆみは試合が近づくにつれて、目に見えるようにやつれて行った。
「…信じているわ。信じているのよ、梨華ちゃんの事は…!!!」
 きっと、梨華は勝つに違いない。
 ひとみの情報収集能力を考えれば、とっくの昔にあゆみとその祖父の賭けの事は耳に入っ
ているだろう。そんな状況で負ける程、梨華は弱くない。
 あゆみが一番恐怖を抱いているのは、祖父に対してだ。
 あの祖父の事だ。もしも梨華が勝っても、何かでっち上げをして無理矢理雅恵の勝利と
してしまうかも知れない。いや、その可能性の方が高い。
「…いくら一番可愛がられている孫だと言っても…所詮わたくしも、お祖父様にとっては
駒の一つでしかなかったってワケなのね…!!」
 あゆみは、色が変わる程唇を噛み締めた。

 あゆみが結婚から逃れる為には、梨華が試合中に雅恵を殺す必要がある。

 雅恵がリング上で殺されれば、間違いなく梨華の勝ちとなる。祖父がいくら手を尽くし
ても、死んだファイターに勝利の栄冠は渡されないのだから。
「…他人の死を望むなんて…初めてだわ…っ!!」
 あゆみは、そこまで追い詰められている自分に嫌悪感を覚えた。
「・・・・・・でも、大谷雅恵って…。」
 あゆみは、頭のどこかでひっかかる感覚を覚えた。
 しかし、それが何かは…正確には思い出せなかった。

68初恋:2003/07/24(木) 09:35

****************************************

 まだ、雅恵が十にも満たない子供だった頃。
 両親が交通事故で死に、親戚の旅館に預けられていた頃。
「…あなた、お暇?」
 声をかけて来た少女がいた。
 とても可愛い顔をしていて、見ただけで高価だとわかる服を来た少女だった。
「・・・・・・。」
 裏方の仕事もさせられていた雅恵は、理不尽にしかられて叩かれた後で、泣いている真っ
最中だった。それでも『そんな事にはかまわない』と言わんばかりに、その少女
は笑顔で話しかけて来たのだ。
「ねえ、お暇?」
「・・・・・・は、はい。一応…あと、一時間くらいは…。」
「そう。」
少女はにこっと弾けるように笑って、雅恵に右手を差し出した。
「わたくし、暇なの。一時間でも良いから、遊んでくださる?」
 その唐突さに、雅恵は知らず知らずの内にこくこくと頷いていた。少女は満足げに頷い
て、雅恵の手を握って言った。

「わたくしは、柴田あゆみ。あなたは?」
「あ・・・・・・ま、まさえ。大谷雅恵。」

「まさえ…雅恵、ね。でもあなた、男の子みたい。」

69初恋:2003/07/24(木) 09:36
 雅恵はちょっと赤い顔をした。仕事の邪魔だからと、髪の毛はいつもベリーショートに
しているのだ。顔立ちも、美少女よりは美少年に近い。
「マサオって呼ぶ事にするわ。」
「・・・・・・は、はい…。」
「そして、あなたには特別に、わたくしの事を『あゆ』って呼ばせてあげる。」
「え…?」
 少女は、輝くような笑顔で言った。
「だってあなた、素敵なんだもの。光栄に思いなさいね。この呼び方は、あなた以外には
わたくしのお父様しか呼んだ事がないのだから。」
 それから一週間、雅恵は休憩時間になるとあゆみと遊んだ。
 振り回される事の方が多かった…と言うより、ほとんど振り回されてばかりだったが…
それでも雅恵には、何年ぶりかに幸せを感じられる一週間だった。

70初恋:2003/07/24(木) 09:36

****************************************

 雅恵は、目を覚ます。
「・・・・・・夢、か…。」
 起き上がり、目元や頬が涙で濡れている事に気付いた。
 涙を拭って、周囲を見渡す。柴田老に与えられたトレーニングルームだ。…いつの間に
か、疲れて眠ってしまっていたらしい。
 あゆみが旅館から自宅へ帰った後、雅恵には地獄が待っていた。
 あゆみの両親から、『あゆみがお世話になりました』と金が渡されたのだが、雅恵はそ
れを断ったのだ。それが、旅館側にバレた。
 『頂けるお金を断るなんて!!』と、旅館にいた全員から折檻を受けた。
 そして雅恵は、あゆみが旅館から帰って行った翌日…全身ボロボロで、家出をした。
 そこまで思い出して、雅恵は頭を横に振る。
「忘れるって、決めたんだ…。もう、思い出さない。」
 呪文のように呟いて、そっと目を開ける。
「・・・・・・きっと、『あゆ』は…私の死を望んでるんだろうな…。」
 雅恵が死ねば、どんなインチキもできないし物言いもつけられない。
 あゆみが結婚を回避するには、それしか道がないのだ。
「・・・・・・!!」
 雅恵は、胸を押さえた。
 痛い。熱い。そして…切ない。

71初恋:2003/07/24(木) 09:36
「…馬鹿だよなぁ。『あゆ』にとっては、よくいる遊び相手の一人ってだけなのに…。」
 雅恵は、ガンッと拳で自分の頭を叩く。
「・・・・・・相手は、世界屈指のお嬢様なのに…。」
もう一発、叩く。

「…好きになるなんて…忘れられないなんて…!…馬鹿だよなぁ、私…。」

 あゆみに振り回された一週間。最高に幸せだった一週間。
「…『あゆ』に振り回されて、殺されるのなら・・・・・・良いかも知れない。」
 雅恵は、微笑みながらそう言った。
 どうせもう自分には、無くすモノなど何もない。
「・・・・・・最後に、もう一度…『マサオ』って呼んでほしいけどね。」
 それが贅沢なのは、百も承知だ。
 もう二度と、言葉を交わす事さえできないだろう。

72クロイツ:2003/07/24(木) 09:37


 今回、梨華ちゃんとひーちゃんはお休みです。柴マサオンリー(笑)
 柴マサ好きさん、たくさんいらっしゃってくれたみたいでうれしいれす♪
 
>名無し(0´〜`0)様
 今回、柴マサオンリーですよ〜♪
 ありがとうございまっす!!ひーちゃん…可愛がってくださいませ(笑)
 ありがとうございます!!がんばります!!

>チップ様
 おお!いらっさいましたねっ!!ありがとうです♪
 ののたん、痛くし過ぎてごめんなさいなのれす…(汗)
 ありがとうございます!!がんばります!!

>フェンリル様
 あいぼん再登場の予定、一応ありますので♪
 >何だか今回はCP総受難ですなぁ。
 本当に…。なんかいしよしが一番平凡に見えるくらいれす…(大汗)
 ありがとうございます!がんばります!!

>オガマー様
 おおう!!いらっさいませ!!
 マサオ片思い、来てます。大変よく来ています。
 さーて、この先どうするんですかねぇ(←オイ)
 がんばります!どうぞよろしくです!!

73名無し(0´〜`0):2003/07/24(木) 14:05
。・゜・(ノД`)・゜・。 
こんな展開とは…。泣かせますなぁ

74オガマー:2003/07/25(金) 05:28
まさおぉおおおおおおおおおおおおおお。・゚・(ノД`)・゚・。
あゆみちゃん気付いて思い出して逃げてぇええ(ぇ

75希望への道:2003/07/28(月) 15:44

 試合前日…梨華は、柴田家を訪れた。本邸ではない、柴田あゆみ専用の別邸だ。
「…ひーちゃん。ごめん。ひーちゃんはここで待ってて。」
「え!?」
 ひとみは、その大きな目を見開く。
「なんで…!?」
「・・・・・・。」
 梨華はちょっと黙ってから、口を開く。
「…あゆみお嬢様の精神面を考えると…今日はわたしひとりで会った方が良いんだ。」
「嫌だ!!そんなの!!…あたしと梨華ちゃんは、二人で一人じゃん!!」
「そうなんだけど…。」
 今、ひとみをあゆみと会わせるのは得策ではない。
 それを、どう説明しようかと梨華が思案していると…ノックが聞こえた。
「…失礼いたします。あゆみ様のお支度ができましたので。」
「あ、はい。」
「あたしも行く!絶対行くからね!!」
「・・・・・・ひーちゃん…。」
「あの人と二人っきりになんて…絶対させないよ!!」
困り果てる梨華の顔を見て、メイドはにこやかに言った。

「…ひとみ様、私のお相手をして頂けませんか?」

「「え?」」
 メイドはにこやかに続ける。

76希望への道:2003/07/28(月) 15:45
「実は私…人形のお洋服を作るのが趣味ですの。それで、ずっとひとみ様のお洋服を作っ
てみたいと思っておりまして…。」
「洋服!?」
ひとみの目が輝くが、すぐにふるふると頭を振る。
「そ、そんなんじゃ誤魔化されないよ!あたしは!」
「まあ、誤魔化すだなんて!…私、デザインさえ決まれば、一着一時間程で仕上げられる
んですよ?もしもお相手してくださったら、今日のお帰りの時にはお渡しできますのに。」
「うううう…。」
「どんなお洋服でも、作れますよ?ゴシック・ロリータから水着まで。」
「あううう…。」
 とうとう、ひとみはここで待っている事を了承した。
 梨華は、メイドに頭を下げてから…あゆみのもとへ向かった。

77希望への道:2003/07/28(月) 15:45

****************************************

 「珍しいわね。あなたの方から来てくれるなんて…。」
あゆみは優雅に微笑んで見せたが、憔悴は隠しようがなかった。
「…柴田家から連絡が来てね。『あゆみお嬢様が、ご飯を食べない』って。」
「・・・・・・。」
あゆみは、きゅっとスカートをつかんだ。
「きょ、今日は…あなたのパートナーは一緒じゃないの?」
「下の応接室で、メイドさんに遊んでもらってる。人形の洋服を作るのが趣味だとかで…
作ってもらってる。」
「ああ…あの子ね。」
あゆみは、どこか安堵したような笑みを浮かべた。
 梨華は、表情には出さないが…驚いていた。
 前に会ってからまだ一週間も経っていないのに、見てわかる程に痩せている。それに、
化粧で誤魔化してはいるが、肌も荒れているし顔色も悪い。
 そして、何日眠っていないのだろう。コンシーラーでも隠しきれない程に濃く浮き出た
くま。
「…そんなに、怖いの?」
「・・・・・・何の、話?」
「決まってるでしょ。賭けの事。」
あゆみは、梨華に背中を向けた。
「・・・・・・誰にモノを言っているの?わたくしを誰だと思っていて?」
「…わたしが知ってる『柴田あゆみ』は、そんなに強くないよ。」
「っ!?」

78希望への道:2003/07/28(月) 15:46
 梨華はゆっくりと、かみ締めるように言う。

「…今だけは、自分に『弱音を吐く事』を許したら?わたしが、聞いてあげるから。」

「・・・・・・!!!」
 あゆみはがばっと梨華の方を振り返った。
 そして、抱き付く。
(ひーちゃん置いて来て、本当に良かった。)
 ここにいたら今頃、半狂乱だろう。それを思い浮かべて苦笑する。
「…怖いわよ!嫌よ、結婚なんて!!好きでもない男と…お祖父様の都合で結婚させられ
るなんて!!!」
「・・・・・・。」
「だけど…だけどそれ以上にわたくしは…一人の人間の死を望んでいる自分が一番恐ろし
いの!!自分がそんな人間だったなんて…吐き気がするの!!!」
「…死?」
「・・・・・・大谷雅恵、よ…!!」
「ああ、そうか。」
梨華はようやく理解した。大谷雅恵を試合中に殺せば、梨華の勝利に文句はつかなくなる。
「…ああ、梨華ちゃん!梨華ちゃん!!」
「・・・・・・。」
「お願い、わたくしを連れて逃げて!!」
 梨華は、目を伏せた。
「そうすればわたくしは、解放されるわ…!!ねえ、お願い!一緒に逃げて!!」

79希望への道:2003/07/28(月) 15:46
「悪いけど…それはできないよ。」
「なんで!?」
「・・・・・・もしも一緒に逃げても…わたしは、あゆみお嬢様を見られない。」
「!!」
 あゆみの目に、涙が溜まる。
「…わたしの心には、ひーちゃんしかいないから。利害関係無しに行動できる相手は、わ
たしにはひーちゃんだけだから。」
「…ひどい…!!」
 梨華は、ぎゅっとあゆみを抱き寄せた。
「ごめん。だけど、その代わり絶対に勝って見せる。」
「・・・・・・。」
「大谷雅恵を殺さずに、だけど文句がつけられないくらいに叩きのめして見せるから。」
あゆみは、梨華にぎゅっとしがみつく。
「だから、今夜は安心して眠って。」
 あゆみはしばらく梨華を離そうとせず…梨華も、あゆみの気が済むまでそうしていた。

80希望への道:2003/07/28(月) 15:46

****************************************

 大きな包みを抱えて、ひとみは梨華から顔を背けていた。
「ひーちゃん、ずいぶんたくさん作ってもらったんだね。」
「・・・・・・。」
 ひとみのサイズと例のメイドの家にある人形のサイズが同じだった為、気に入った服を
全て譲ってもらえたのだ。
 ひとみは、葛藤していた。
 服が増えたのは嬉しい。そしてそれを梨華にも言って、一緒に喜んでもらいたい。
 しかし、ひとみの五感センサーが、梨華があゆみを抱きしめた跡を検出した。
 それは、許しがたい。
「ねえ、ひーちゃんってば。」
「・・・・・・。」
「無視しないでよー。寂しいよ。」
「・・・・・・あゆみお嬢様と話したら?」
口をついて出たのは、そんな憎まれ口。ひとみは自己嫌悪に陥る。
「あゆみお嬢様よりも、ひーちゃんと話したいな。」
「・・・・・・梨華ちゃんの馬鹿。」
 梨華は、くすっと笑ってひとみを両手で包み込む。
「帰ったら、ファッションショーだね。」
「・・・・・・見せてあげない。梨華ちゃんになんか。」
「見たいな。かわいいひーちゃんが、いっぱい見たい。」
「…ッ!!」
ひとみの顔が、カッと赤くなる。
「あー、明日も良いお天気みたいだね。」
 ひとみの顔と同じくらい赤い空を見上げて、梨華は笑った。
 決戦は、明日。

81クロイツ:2003/07/28(月) 15:47


 次回、とうとう梨華ちゃんVSマサオ君の戦いが!!
 なっちぃぃぃぃぃ〜…(号泣)

>名無し(0´〜`0)様
 すみません、暗くて…(大汗)でも今回は、比較的明るくなったかと思われます。
 VSマサオのテーマは『悲しい恋』なんで…泣いて頂けて嬉しいです(笑)
 がんばります!どうぞよろしく!!

>オガマー様
 柴ちゃん、一緒に逃げ出そうと持ちかける相手を間違えるの巻(爆笑)
 次回、マサオ君が来ます。かっこよく華麗に来てくれる・・・・・・はず(笑)
 がんばりますので、どうぞよろしく!!!

82名無し(0´〜`0):2003/07/29(火) 02:54
ひーちゃんかわいい!!まじでほしい!!(w
次回マサオがどういう行動に出るのか?
あ〜すごいドキドキする〜
更新たのしみにまっています。がんがってください!!

83フェンリル:2003/07/29(火) 11:18
次回は対決ですか・・・
柴ちゃんには是非マサオの事を思い出してほしい。
そして駆け落ちw(爆
すいませんw次回たのしみですね。

84オガマー:2003/07/29(火) 20:13
ひーちゃんかあいいなぁ、ひーちゃん(w
マーくんがんがれ!。・゚・(ノД`)・゚・。
おまいの男気しかと見届けてやる(;´Д`)ハァハァ (w

85匿名匿名希望:2003/08/02(土) 17:03
更新お疲れ様です。
私もひーちゃん欲しい!!!!!!!
  ↑
PC前で机をドシドシと叩く私(w
(人には見せれない姿)
次はついに対決ですか・・・。
はぅ・・・

86VS大谷雅恵:2003/08/04(月) 10:55

 ひとみは、不安気な表情で梨華を見る。
「…梨華ちゃん、どうするつもりなの?」
 梨華は確かに言っていた。『ハッピーエンドで終わらせて見せる』と。
 しかし、状況は最悪だ。ひとみの頭の中に、最新データが転送されて来る。今日の審判
は全員、柴田老の息のかかった人物だ。
「勝ち目、ないよ。それこそ…。」
 大谷雅恵を、殺さない限り。
 ひとみは言葉を切った。冗談でも、口にしたくなかった。

 大谷雅恵の為ではない。梨華の為に。

 人一人殺すと言うのは、大変な事だ。一生その相手を引きずって生きて行かなければい
けない。
(…まあ、最悪の場合は殺さなきゃいけなくなるだろうけど。)
 梨華はしゃあしゃあと心の中で呟く。。
 彼女にとっては、他人の死などどうでも良い。ひとみさえ無事で幸せなら、それで良い
のだ。しかし、それと同時にわかっている。ひとみは、簡単に人を殺す自分には嫌悪感を
抱くであろう。
 それだけは、なんとしてでも避けたい。
 梨華はふわりと、ひとみに微笑んで見せた。
「…大丈夫。大丈夫だよ、ひーちゃん。」
「梨華ちゃん…。どうするつもり?」
「もちろん!勝つよ。」
「どうやって?…KOでも場外10カウントでも…柴田老が覆しちゃうよ?」
 梨華は笑った。
「ひーちゃん、大会規定第二十八条って知ってる?」
 ひとみは、目を見開いた。

87VS大谷雅恵:2003/08/04(月) 10:55

****************************************

 『試合、開始です!』
実況の声と、歓声が入り混じる。
 梨華は、一応は構えの姿勢を取っている雅恵に苦笑を見せた。
「…やる気ないね、あんた。」
「・・・・・・。」
 雅恵は黙る。図星なのだ。
 雅恵の目には、闘志が見えなかった。ついでにやる気も消えうせている。
「九歳の時からファイターしてるけど、ここまでやる気のない対戦相手は初めてだよ。」
「…貴様に、何がわかるっ!!」
 彼女とて、ファイター。素質があったとしても、たった一握りの者しかなれないファイ
ターなのだ。この状況は、本来ならば屈辱以外の何物でもない。
 しかし、彼女にはファイターとしてのプライドよりも大切なモノがあるのだ。
「・・・・・・貴様に、何が…ッ!!」
 雅恵の両腕が、素早く動く。速さと重さのバランスが、芸術的によく取れたパンチだ。
「へぇ、さすがは柴田老に見込まれただけの事はあるね。」
 そう言いながらも、軽やかに全てを避ける梨華。
 それができるのも、やはり雅恵に迷いがあるからだろう。
「…惜しいな。一回、本気で戦ってみたくもあるんだけど。」
 梨華はぽつりと呟くと、一瞬にしてその姿を消した。
「!?」
 雅恵が驚くと同時に、梨華は雅恵の背後にあらわれた。
「な…っ!!」
 気配を感じて慌てて振り向くが、遅い。
 梨華のパンチが、雅恵の脇腹に当たった。
『出たー!!石川梨華の「瞬間移動」!!その移動スピードが速すぎて、誰にも見えない
事から名付けられたこの「瞬間移動」!!今日も鮮やかに決めました!!』

88VS大谷雅恵:2003/08/04(月) 10:55
「…一つだけ聞く。」
「ぐはっ…!!げほっ!!」
まだ声を発する事ができない雅恵に、梨華は言った。
「わたしに勝つ気は、本当にないんだね?」
 とても場違いな、アニメ声。明るくて可愛い印象が強い。
 雅恵は、ふと思った。
 もしかして『氷の薔薇』の本性は、普通の少女なのかも知れない。
「・・・・・・っ!!」
 こくりと、雅恵が頷くのを確認すると…梨華はにっこりと笑って見せた。
「あなたが負けられる方法は、二つある。一つは、わたしに殺される事。」
 雅恵は目を閉じた。

「そしてもう一つは…ここから逃げ出す事。」

「!!!」
 雅恵の目が、見開かれた。
「…大会規定、第二十六条…!!!」
「そう。『自ら逃げ出したファイターは、それがどのような状況であれ、問答無用で負け
となる』ってヤツ。」
 梨華は、苦笑を見せた。
「殺されるのも、逃げ出すのも…ファイターにとっては『恥』となる。だからもう、あん
たは二度とこのリングに立てなくなる。スポンサーももうつかないだろうしね。」
「・・・・・・。」
「あゆみお嬢様と、ファイターとしての名誉…大谷雅恵。あんたなら、どっちを取る?」
 雅恵は、不敵に微笑んで見せた。

89VS大谷雅恵:2003/08/04(月) 10:56

****************************************

 VIP室のソファーに、もたれかかるようにして座るあゆみ。
「…あゆみ、大丈夫?」
「・・・・・・お母様こそ。こんな所にいらして、大丈夫なの?」
 典型的な、お嬢様育ちの母。血を見ただけで気絶してしまうような母に、あゆみは言う。
「…あゆみ、私はあなたの母親ですもの。」
「・・・・・・。」
 あゆみは、反論したかった。
 いつもいつも、仕事だパーティーだと言って自分を一人きりにしていたくせに。
 いつもいつも、自分に寂しい思いをさせて来たくせに。
 しかし、反論するだけの体力もない。怖くて、リングを見る事もできない。
「…あなたがお金を出しているファイターは、あの子なの?」
「・・・・・・そうよ。あの、黒ずくめの方。」
「…美しい子ね。姿形もそうだけど、動きも戦い方も。」
「あら。お母様にわかるの?戦いの事なんて。」
母はふふ、と笑った。
「みくびらないで。これでも昔は、ストリート・ファイトの大ファンだったのよ?」
「・・・・・・お母様が…!?」
 衝撃だった。どうやっても、この母親とストリート・ファイトは結びつかない。
「…私もね、スポンサーをしていたのよ。」
「・・・・・・っ!?なんですって…!?」
「あなたも知っているでしょう?伝説のファイター…『燃える獅子』。」
 知ってるも何も、ストリート・ファイト好きの中で知らない者はいないだろう。
 十六歳でデビューして、二十八歳の若さで引退するまで、一度たりとも負けなかった男
だ。『氷の薔薇』こと石川梨華に、勝るとも劣らない素質の持ち主。

90VS大谷雅恵:2003/08/04(月) 10:56
「…ああ、あの子を見ていると…昔の彼を思い出すわ。」
「・・・・・・い、今は…何をしているの!?『燃える獅子』は…!!!」
 母親は、くっくっく、と笑った。

「…会社員として、苦労してるわ。それから、父親としても苦戦してるみたい。」

「こ、子供がいるの!?」
「そう。娘が一人。」
「…そ、その娘は!?ファイターにはならないの!?」
「母親の血を、強く受け継いだみたいね。ファイター向きじゃないわ。…それに、『燃え
る獅子』が嫌がったのよ。『娘は戦いの世界に置きたくない』って。」
 母親はくっくっく、と笑い続ける。
「…お母様、なんで笑っているのよ。」
「いいえ、いいえ。何でもないわ。」
 母親が目元の涙を拭うと、ノックがした。
「失礼いたします。」
「…あら。なあに?」
「柴田あゆみ様に、こちらをお届けしろ、と…。」
「わたくし?」
 渡されたのは、一枚の封筒。差出人の名前は、なかった。
「・・・・・・?」
「爆発物反応も危険物反応も、ありませんでした。」
「そう…。」
 不審に思いながらも、封を開ける。
「・・・・・・写真…?」
 あゆみは、中に入っていた一枚の写真をしげしげと見つめる。
 幼い頃の、自分。それからもう一人、少年が写っていた。
「…あら!懐かしいわね。」
「お母様?」
「これ、あゆみがまだ七歳だった時よ。…そう、柴田家皆で行った温泉旅行の時の!」

91VS大谷雅恵:2003/08/04(月) 10:56
「温泉旅行…?」
「そうそう。覚えてない?それであなた、この坊やみたいな女の子と仲良くなって…」
 あゆみは、息を飲んだ。
『お前に、引き合わせたい人間がいるんじゃ。』
『はじめまして、大谷雅恵です。』
『わたくしは、柴田あゆみ。あなたは?』
『あ・・・・・・ま、まさえ。大谷雅恵。』
 まるで、みつからなかったパズルのピースがぴったりとはまったかのように。
『まさえ…雅恵、ね。でもあなた、男の子みたい。マサオって呼ぶ事にするわ。』
『・・・・・・は、はい…。』
『そして、あなたには特別に、わたくしの事を『あゆ』って呼ばせてあげる。』
『え…?』
『だってあなた、素敵なんだもの。光栄に思いなさいね。この呼び方は、あなた以外には
わたくしのお父様しか呼んだ事がないのだから。』
 まるで、昔大好きだった絵本を探し当てた時のように。
 あゆみの頭の中で、様々な記憶が再生し始める。


「…マサオ!!!」


 あゆみは、立ち上がって叫んだ。

92クロイツ:2003/08/04(月) 10:57


 柴ちゃん、ようやく思い出しましたねぇ♪
 さーて、マサオ君はどうするんでしょうか。どうしようか、マサオ君?(←オイ)

>名無し(0´〜`0)様
 ほしいですか、ひーちゃん(笑)できるだけ『可愛くなるように』と気をつけて書いて
いるので、そう言って頂けると本当に嬉しいです♪
 ありがとうございます!!がんばります!!

>フェンリル様
 次回も対決、続きます。さて、マサオ君がどう出るのか。それは作者にもまだわかりま
せん(←オイ)本当に予測のつかないキャラになってくれちゃって…。
 がんばります!!どうぞよろしくです!!

>オガマー様
 おおう!ひーちゃん人気ですねぇ(笑)
 柴ちゃんはようやく思い出してくれました(笑)長かったなぁ…。
 がんばります!どうぞよろしくです!!

>匿名匿名希望様
 ありがとうございます!!
 ひーちゃん大人気っ!!よかったー。ひーちゃん可愛くするの大変なんですよ(大汗)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

93クロイツ:2003/08/04(月) 11:00
間違えた…(泣)
>>88でマサオ君が「…大会規定、第二十六条…!!!」とか言ってますが、性格には『第二十八条』でした(汗)
ごめんなさいー!!

94名無しアゴン:2003/08/04(月) 16:58

ひーちゃん、ヤフオクに出てませんか?

希望落札価格で落としますので、出品してくらはい。

95オガマー:2003/08/04(月) 17:38
まさお!おまいの男気・・て

 ぇ ? (www

96抱き続けて来た気持ち:2003/08/07(木) 09:47

 「断る。」
雅恵はきっぱりと言い放った。
「・・・・・・。」
 梨華は、無表情のまま雅恵を見つめた。
「私は逃げない。逃げたりしない。」
「…それがどう言う意味だか、わかってる?」
 つまり、『殺してくれ』と言っているも同然なのだ。
「もちろん。」
雅恵は自信満々に、笑みさえ浮かべて言い放った。
「逃げたりなんか、するもんか。」
「…あゆみお嬢様は、あんたが逃げるのを望んでるよ?」
「それだったら、なおさら逃げたりなんかできないね。」
 雅恵の微笑みは、無垢で純真。…まるで子供のようだった。
「なんで?」

「彼女の心に残れるから。」

「・・・・・・。」
「彼女の心に、とどめておいてもらえるのなら…私は良いんだ。」
梨華は、すっと自分の左胸を押さえる。
「・・・・・・わかるよ。その気持ち…すごく、わかる。」
 そしてふとリングの外に視線を投げる。
「わたしにも、いるから。そう言う子が。…他の誰に忘れ去られても…あの子の心にさえ
残っていられれば…それで満足。」
 試合中の梨華と目が合うなど、ほとんどないひとみは…目を丸くしていた。
「そうだね。あんたがわたしで、あゆみお嬢様があの子なら…わたしも同じ事をする。」

97抱き続けて来た気持ち:2003/08/07(木) 09:48
「…あんたにも、大切な人がいるんだね。」
「うん。…いる。」
雅恵は、静かに笑った。
「…さあ、わかったなら…試合続行だよ。」
「・・・・・・。」
 梨華の目から、優しい光が消えた。
「…悪いけど、あんたには逃げてもらうよ。」
「どうして?」
「・・・・・・わたしの大切な子も、あんたの死を望んでないから。」
 気持ちはわかる。共感もできる。自分に近いものも感じる。
 しかし、梨華にとってはそんなモノ、必要なかった。
「・・・・・・必要なのは、あの子だけ。」
「…っははは…。厄介だな。…私もあんたの気持ち、わかっちゃった。」
 雅恵の自嘲気味な笑い声が響く。
「…私があんたで、あんたの大切な子が『あゆ』だったら…私だって同じ事する。」
「奇遇だね。」
「本当に。」
 二人は、リングの上でにらみ合った。

98抱き続けて来た気持ち:2003/08/07(木) 09:48

****************************************

 リングの外で、ひとみは手を祈る形に組んでいた。
「うう…あゆみお嬢様、思い出してくれたかなぁ…。大谷雅恵の事…。」
 あゆみに写真を送ったのは、ひとみであった。
 ひとみは、大谷雅恵に死んで欲しくはなかった。…と言うよりも、梨華に殺しをしてほ
しくないのだ。
(…梨華ちゃんに、そんな重いモノは背負って欲しくないから…。」
 ぎゅっと、組み合わせた手に力を込める。
 ちらりとVIP室に視線を投げる。…試合開始直後から、相変わらずあゆみの姿は見え
ない。死角に入ってしまっているのだ。
「・・・・・・ったくぅ、意気地無し!」
 そう言い放って、視線をリングに戻す。
 リングの上では、激しい戦いが展開されていた。

「…やっぱ、逃げないんだね。大谷雅恵…。」

 やはり、どれだけ色んな事情があったとしても…彼女はファイターなのだろう。
 梨華だって雅恵と同じ立場に置かれたら、同じように戦って死ぬ道を選ぶかも知れない。
 そこまで考えて、ひとみはふるふると頭を振る。
「・・・・・・違う!梨華ちゃんだったらきっと、あたしと一緒に逃げてくれるもん!!」
 梨華が死ぬなど、想像もしたくなかった。
 自分が『一緒に逃げて』と頼めば、梨華は名誉もプライドも捨てて自分と逃げてくれる
だろうと、信じたかった。
 ひとみは、キッとVIP室を見上げる。
「意気地無しッ!!」
 もう一度、小さくつぶやいた…その時。
 ひとみのセンサーが、あゆみの姿をとらえた。

99抱き続けて来た気持ち:2003/08/07(木) 09:49

****************************************

 息が切れる。全力疾走なんて、初めてする。
 しかし、心臓がドキドキしてるのはそのせいだけじゃない。涙が出るのもそのせいだけ
じゃない。
「・・・・・・マサオ!!!」
 忘れていた。ずっと、忘れていた。
 大好きな人がいた事を。幼いながらも、精一杯愛した人がいた事を。
「し、柴田様!?何を…!?」
驚いた顔の警備員に、あゆみは厳しい口調で言い放つ。
「お退きなさい!!これは命令です!!」
 柴田老の一番可愛がっている孫娘。柴田老亡き後、ストリート・ファイトの実権を握る
のは彼女だとも言われている。
 小娘とは言え、そんなあゆみに逆らえる者はいなかった。
 動くことができない警備員達の間を抜けて、あゆみは走る。
 そして…扉を抜けた。
「・・・・・・マサオ!!!」
 リングの上で繰り広げられる、悲惨なまでの殴り合い。
 いつもはVIP室から見下ろす事しかしていない、その激しい光景。
 試合に集中している梨華と雅恵には、あゆみの声は届いていない。
 あゆみの顔が、真っ青に染まる。
(…何これ…!!)
 身体が震える。歯の根が合わなくなる。
(・・・・・・何、これは…!?こんなの…わたくしの知っているストリート・ファイト
じゃない…!!)
 あゆみのいつも見ていたストリート・ファイトは、鳥肌が立つ程に美しいものだった。
 しかし、今目の前で繰り広げられているモノの…なんとおぞましい事か。
 拳が、身体に当たる音。それと同時に上がる、苦悶の声。撒き散らされる血の、鮮やか
な赤さ。
(…知らない…!!こんな…こんなモノは…知らない…!!!)

100抱き続けて来た気持ち:2003/08/07(木) 09:49
 あゆみの横に、ひとみが飛んで来た。
「…なーにしてんのさ。お嬢様。」
「・・・・・・っ!!」
 その真っ青な顔を見て、ひとみは苦笑する。
「ビビッた?戦いっぷりに。」
「・・・・・・あなたッ!!よく…平気な顔してられるわねっ!!」
「もう慣れたよ。そりゃー最初の頃は耐えられなくて、よく目ぇつぶっちゃったりしてた
けどさ。」
 ひとみはリングを見つめたまま、言った。
「…VIP室からじゃ、こんなにハッキリ見えないだろうからね。」
「・・・・・・知らなかった…!!こんなに…戦ってる人と言うのは、こんなにも恐ろし
いなんて…!!」
 へたりこみそうになるのを、必死で抑えるあゆみ。
「…で?お嬢様。何しに来たの?こんな所まで。」
「!!」
 あゆみは思い出す。
 そうだ、伝えなくてはいけない。

「・・・・・・マサオぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 出せる限りの声、込められるだけの思い、すべてを乗せて彼女を呼ぶ。
 雅恵が振り返る。驚いた顔で。
 それがなんだか、あゆみはすごくうれしかった。
(…わたくしは、『忘れてた』んじゃないわ。)
 あゆみは、右手を差し出した。
(…忘れなければ、心が壊れてしまいそうだったのよ。)
 今、鮮明に思い出す。抱いていた恋心、誰よりも愛しいと思う気持ち。

101抱き続けて来た気持ち:2003/08/07(木) 09:49

****************************************

 自分の目が、耳が、信じられない。
「…呼んでるよ、あんたを。」
 梨華に言われても、首を横に振る。
「・・・・・・嘘だ。『あゆ』が…私を覚えてるはずがない…!!」
「奇跡でも、起こったんじゃない?」
「・・・・・・こんな最高な奇跡、起こすわけないじゃないか。信じる者しか救わないよ
うな、ケチな神様が…!!」
 梨華は、あゆみの隣にいるひとみと目が合い、ふっと微笑む。
「…神様じゃないよ。奇跡を起こしてくれるのは、いつだって『一番大切な人』だよ。」
「・・・・・・。」
 それでも信じられない雅恵に、あゆみは叫んだ。

「…マサオ、お願い!!わたくしと一緒に…生きて!!」

「!!」
「…ほら。呼んでるよ?柴田あゆみと一緒だったら、ここから逃げ出すなんて容易な事。」
警備員も、あゆみに手を出せるわけがないのだ。ほぼノーチェックで逃げ出せる。
「・・・・・・決断すれば?わたしの経験上…奇跡って、そうそう何回も起こってくれる
モンじゃないし。」
「…ッ!!!」
 雅恵は、走り出した。
 リングの外に向かって。
『…おぉぉぉっと!!大谷雅恵!!!逃げ出したぁぁぁぁぁぁぁ!?』
 実況と同時に、激しい怒号が響き渡る。
 数十センチしか離れていない相手の声も聞き取れないような中で、雅恵はあゆみの手を
取った。
 その時、聞こえたような気がした。
「お久しぶりね。元気にしていた?」
 雅恵はぎゅっと、あゆみの手を握り締めた。

102クロイツ:2003/08/07(木) 09:50


 VS大谷雅恵、一応次回で終結です!!
 …次回更新、ちょっと間が開くかもしれませんが…見捨てないでやってくださいませ…(大汗)

>名無しアゴン様
 ヤフオクに出てても、やめた方がよろしいかと…(大汗)
 落札した直後、怒り狂った石川梨華が来るかも知れませんので…(笑)
 いやぁ、ひーちゃん大人気っ!なんかうれしいなぁ〜♪
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>オガマー様
 一応かっこよくなりましたが…いかがでしたでしょうか、男気(笑)
 やっぱり大谷さんは、こーでないとぉ!!(爆笑)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!

103名無しアゴン:2003/08/07(木) 17:25

ひーちゃん、梨華ちゃん好みのピンクの服、着てます。
そして耳にはピンクの・・・・・、それってピッタリしたいク・・・・・?

ひーちゃん、欲しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!

104オガマー:2003/08/07(木) 19:03
(;´Д`)ハァハァ
ありえねぇ〜
なんで手繋いだぐらいでこんなに萌えるんだぁ〜(ww

105フェンリル:2003/08/08(金) 11:45
おお、柴ちゃん!!忘れてなかったんですね。
忘れなくてはいけない理由・・・気になりますね。
次回は必見ですな。マターリとお待ちしてますよ。

106これから:2003/08/15(金) 16:42

 「ひーちゃん。準備できた?」
梨華が声をかけると、ひとみはうーん、と唸って見せる。
「ちょっと待ってー!…うーん、どうしよう…。」
「何をそんなに迷ってるの?」
ひょい、とひとみの手元を覗き込むと、先日柴田家のメイドにもらった服が数枚並んでい
た。
「…どれをごっちんにあげようか…悩んでるんだよ。」
難しい顔をしているひとみに、梨華はぷっと吹き出した。
「ひーちゃんってば、昨日から悩みっぱなしじゃない。」
「だってさぁ…やっぱ、これもこれもあたしが着たいし…でも、ごっちんの喜ぶ顔も見た
いし…。」
 梨華は、ひとみの背中を優しくなでた。
「そうだよね。ごっちんは、ひーちゃんにとっては唯一の『仲間』だもんね。」
「…でも、唯一の『パートナー』は、梨華ちゃんだよっ!!」
「ありがと、ひーちゃん。」
 梨華は微笑んだまま、すっと一着の服に指を滑らせる。
「これなんか、良いんじゃない?ごっちんのイメージにぴったりだし、ひーちゃんのイメー
ジににはちょっと合わないし。」
「そっかなぁ?」
「そうだよ。」
梨華は、もう一着の服を指差す。
「ひーちゃんは、こう言う感じの服の方が似合うから。」
「・・・・・・そう?」
 ひとみは頬をちょっとだけ赤くして、梨華が最初に指差した方の服をバッグにしまい込
んだ。
「…あ、ちょっと遅くなっちゃった!!急ごう、梨華ちゃん!!」
「そうね。ちょっと急いで行こう。市井さんは、時間に厳しいからね。」
 二人は顔を見合わせ、くすっと笑ってから…ちょっとだけ早足で歩き出した。

107これから:2003/08/15(金) 16:43

****************************************

 何の変哲もない、民家。強いて違和感を挙げるのであれば、この家には『表札』と言う
ものが存在しないと言う所だろうか。
「…まったく、オマエらは本当に時間にルーズなんだから。」
白衣を身にまとった、まるで少年のような印象を受ける女性。
 彼女の名は、『市井紗耶香』と言う。
「市井さんが厳し過ぎるんですよ。…大体、遅れたって言ってもたった二分じゃないです
か。」
 梨華が言うと、紗耶華は白い手袋をはめた手でビシっと指差して来る。
「二分、じゃない。二分十五秒、だ。」
「・・・・・・はい、すみません。」
 降参、と言わんばかりに両手を挙げる梨華。
「…変わらないですね、本当に。」
「あたりまえだ。そう簡単に変わってたまるか。」
 梨華は、ちょっと笑いながら視線を移す。
「…でね、これ、ごっちんにあげる。」
「えぇー!!?本当に!?わーい!!んあ、ありがと!ヨッスィー!!」
 手のひらサイズの天使が二人、きゃっきゃと戯れている。
 まるで、絵を眺めているかのような光景。
「…『Y−0412:HITOMI』は、元気そうだな。」
 ひとみの正式名称を呼ばれ、梨華は少しだけ不快な感情を表情に出す。それを見て、紗
耶香は面白そうに笑った。
「なんだ、オマエ。まだ、アイツの正式名称を嫌ってるのか?」

108これから:2003/08/15(金) 16:43
「・・・・・・いつまでたっても、好きになれませんよ。」
 それはまるで、ひとみの『意思』を無視するようで。ひとみの『心』を無視するようで。
 梨華はその響きが、大嫌いだった。
「はははっ。…だけど、私も今ならその気持ちがわかるかも知れない。」
「…『ごっちん』のおかげで?」
「ああ、そうだ。」
 紗耶香は、目を細める。
 視線の先にいるのは、ひとみと同型のロボット。
 正式名称は『G−0923:MAKI』。
 紗耶香は目を閉じて、その柔らかい光を隠してから梨華に向き直った。

「・・・・・・ところでオマエ、スポンサー変わったんだって?」

「…さすがは市井さん。情報が早い。」
「まぁ、こんな商売してるとね。」
 紗耶香は煙草を取り出し、火をつける。
「…柴田家のお嬢様に、ナイトができたとも聞いた。」
「そうなんですよ。運命の王子様が、ね。」
「王子様?女だって聞いたぞ?」
「女だけど、王子なんですよ。…あの人とはもう一回…今度は無条件で戦ってみたいな。」
「その感覚、私にはわからないよ。」
 ふぅっと煙を、天井に向かって吹く。煙草の煙が嫌いな『ごっちん』の為についた癖だと、
梨華は知っている。

109これから:2003/08/15(金) 16:43
「…で、新しいスポンサーはどんなヤツだ?」
「市井さん、もう情報仕入れてるんでしょ?」
「まあ、な。…だけど、私が聞きたいのは経歴や名前じゃない。」
 ニヤニヤしている紗耶華に向かって、梨華は吐き捨てるように言い放った。

「…嫌なヤツですよ。すっごく。」

「へぇ〜。オマエが他人をそこまで言うとは珍しい。『ひーちゃん』以外に興味ないんじゃ
なかったのか?」
「・・・・・・。」
無言になった梨華にもう一回笑い声をぶつけてから、紗耶香は立ち上がった。
「さてと。…おーい、二人とも!メンテナンス始めるぞー。研究室に来い。」
「「はーい!!」」
 天使二人の声ではっと我に返り、梨華は顔を上げる。
 そんな梨華に、ひとみはにっこりと笑って見せた。
「それじゃ、梨華ちゃん!!行って来ます!!」
「・・・・・・あ、う、うん。行ってらっしゃい。」
 なんとか平常心を取り戻し、笑顔を浮かべて見せる。
 ちらりと紗耶香を見れば…ニヤニヤと笑っていた。
「…『すべてお見通し』って顔して…イヤなヤツ。」
 閉じた扉に向かって、梨華は言い放つ。
 市井紗耶香は、優秀な技術者だ。天才と言っても過言ではない。
 そして、世界で唯一、ひとみのメンテナンスをする事ができる人間でもある。
 梨華はソファにふんぞり返り、苛立たしげに足を組み替えた。
 どいつもこいつも気に入らない。

110これから:2003/08/15(金) 16:43

****************************************

 梨華は苛立ちながら、思い返してみた。
 闘技場から逃げ出した、あゆみと雅恵と…その翌日に会った時の事を。
「マサオは、わたくしの父が経営を任されている、警備会社に就職する事になったの。」
 あゆみは幸せそうに、雅恵の手を握っていた。
「警備会社?」
「そう。わたくしの専属のボディーガードになるのよ。」
そう言った後、あゆみは表情を曇らせた。
「…柴田家系列だけど、わたくしの父の管轄だから…祖父の手は回らないはず。だけど…。」
「だけど…?」
ひとみの問いに、あゆみは悲しげな顔を見せた。
「わたくしはもう、ストリート・ファイトから手を引かなくてはならないわ。」
「えぇっ!?」
 ひとみは驚いたが、梨華は落ち着いていた。ある程度は予想できていたのだ。
「…ストリート・ファイトは、完全に祖父の管轄だもの…。いつまでもかかわっていたら、
また今回みたいな事があるかも知れない…。」
あゆみがすっと寄りかかると、雅恵はそれが当たり前のようにあゆみを支えた。
「…もう、あんなのは嫌。マサオと引き離されるのも絶対嫌。…だから、手を引かざるを
得ないの…。」
真っ青になったひとみの顔を見て、あゆみは慌てたように言った。
「でもね、あなた達は何も心配する事はないのよ?後任のスポンサーは、わたくしがちゃ
んと責任もって付けるから。」
 ひとみが、安堵のため息を吐く。

111これから:2003/08/15(金) 16:44
「丁度良い人がいるの。わたくしの親戚で、ストリート・ファイトの大ファンの子が。」
 あゆみが手招きすると、その少女はおずおずと部屋に入って来た。
 そして、優雅に一礼すると笑顔を浮かべて言った。

「はじめまして。松浦亜弥と申します。」

 頭を上げると、梨華に向かってニヤリと不敵に微笑んだ。
(…コイツっ!?)
 思わず片足を一歩引き、戦闘態勢に入る。しかし亜弥は余裕綽綽でにっこりと微笑む。
「うれしいですわ、あの『氷の薔薇』のスポンサーになれるなんて!!」
「・・・・・・っ!!」
「以後、よろしくお願い致しますわねっ!ひとみ様に梨華様!」
「こちらこそよろしくー♪」
 能天気にそう返すひとみ。しかし梨華は、ごくりと唾を飲み込んだ。
(・・・・・・こいつ!!)
 梨華の本能が告げる。
 こいつの狙いは、自分ではない。
 ひとみだ。

112これから:2003/08/15(金) 16:44

****************************************

 「…ゃん?…梨華ちゃんってば!」
はっと、我に返る。
「・・・・・・ひー…ちゃん…?」
「もう、何ぼーっとしてんの?メンテナンス終わったよ?」
「あ・・・・・・あ、そ、そうなんだ…。」
 ふと時計を見ると、きっかり一時間が経っていた。
「梨華ちゃん?どうかしたの?」
心配そうなひとみに、梨華は笑顔を見せる。そして、ひとみの影から『ごっちん』もひょ
こっと顔を出した。
「んあ、梨華ちゃん元気ないねぇ。」
「ごっちん…そんな事ないよ。」
「んあ〜、ごとーにはわかるよ。」
『ごっちん』は真剣な顔で、梨華に言った。
「無理は、駄目だよー!身体に悪いんだから!」
 背後で、紗耶香がぷっと吹き出している。
「ええっ!?梨華ちゃん…無理してんの!?」
「ううん、そんな事ないよ、ひーちゃん。」
「でも…。」
 梨華はそっとひとみを引き寄せ、囁くように言った。

「心配なら…ひーちゃん。ずっとわたしの側にいて。」

ひとみの顔が赤くなる。梨華がこんな事を言うのは珍しいのだ。
「り、梨華ちゃん…。」

113これから:2003/08/15(金) 16:45
「側にいてくれるだけで…わたしは、いくらでも強くなれるから。」
 『ごっちん』が、紗耶香の背中を押しながら部屋を出て行った。
 二人きりの室内で、梨華は…小さな天使に抱きつくようにして目を閉じていた。
「…離れて行かないでね、ひーちゃん。」
「もちろんだよ、梨華ちゃん!!」
「ずっと…側にいてね。」
「うん!!…絶対、側にいる。」
 ひとみは、戸惑いながらも梨華に引っ付いた。
 こんな梨華は、初めてだった。

114クロイツ:2003/08/15(金) 16:45


 VS大谷雅恵終了〜!そして、VS(?)松浦亜弥スタート!!
 あややは、長くなる予感です(笑)
 前回更新から時間があいちゃってごめんなさい(汗)

>名無しアゴン様
 ぴったクリの衣装で、天使の羽ついたミニチュアひーちゃん…可愛いかも…(笑)
 >ひーちゃん、欲しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
 松浦さんもひーちゃん狙いみたいです(笑)倍率高いなぁ、ひーちゃん(爆笑)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>オガマー様
 萌えて下さいましたかっ!!よかったぁ〜♪
 今回マー君、一言もしゃべってません(大汗)ですが、再登場の予定ありです!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!

>フェンリル様
 柴ちゃん、覚えてました(笑)そしてこれからは、王子と仲良く暮らすみたいです。
 柴マサは再登場の予定がございますっ!!
 がんばりますので、そうぞよろしくです!!

115オガマー:2003/08/15(金) 17:07
大丈夫大丈夫〜
一言もしゃべってなくても充分萌えたぁ(爆ww
いいなぁ〜。最高だなぁ〜。この二人(w

いちーちゃんのタバコ・・愛ですねぇ(w
ぁゃゃの登場に波瀾のヨカム。
楽しみ楽しみ〜♪(爆

116チップ:2003/08/15(金) 17:37
おぉ〜次はあややですかぁ。
マーくんに柴ちゃんよかったね、嬉しいよぅ。オイラも萌えたYO!
続きも楽しみにしてまーす。

117名無し(0´〜`0):2003/08/15(金) 17:50
ごちーんキタ━━━━ヽ('∀`)ノ━━━━!!!!
柴っちゃん幸せになれそうですな。
あやや登場に今後ますます期待!!
がんばってくださーい

118いつもと違う、いつもの事:2003/08/25(月) 21:32

 いつも通りの闘技場。いつも通りのリング。
「・・・・・・。」
「梨華ちゃん、何か…機嫌悪くない?」
ひとみに言われ、梨華ははっとして笑顔を浮かべて見せる。
「そんな事ないよ、ひーちゃん。わたしはいつも通り。」
「嘘だ。」
きっぱりと言い切るひとみに、梨華の笑顔は困ったように歪む。
「嘘じゃないよ。本当に…」
「嘘だ。あたしにはわかるよ。…梨華ちゃん、ここんトコずっと変だよ!」
更に否定しようとした梨華だったが、ひとみの表情を見てやめた。
 ひとみはとても、悲しそうな顔をしてくれた。
「…梨華ちゃん、どうしたんだよ!?なんで何も言ってくんないんだよ!」
 梨華は、答える事ができない。
 しかし、ひとみがあまりにも真剣なので…はぐらかす事もできない。
「・・・・・・悩みとか…辛い事があるなら言ってよ!!そうじゃなかったらあたし…!!」
 何の為のパートナーなのか。

『さて!!今週もやって参りました、ストリート・ファイト!!今日のファイター達は、
一体どんな華麗なファイトを見せてくれるのでしょうか!!』

 ひとみの心の底から搾り出すような叫びは、今宵のストリート・ファイトの開催を告げ
る声によってかき消された。
 まるで、リングには入れないひとみを追い出すかのように。
「・・・・・・今夜も、始まるね。」
梨華のその呟きに、ひとみは顔を背けて答えなかった。
 無性に悔しくて、無性に腹が立って、泣きそうだ。
 大きな瞳に溜まった涙を隠す為、ひとみはリングに向かう梨華の背中を見られなかった。

119いつもと違う、いつもの事:2003/08/25(月) 21:32

****************************************

 VIP席。
「先週まではココには、あゆみお姉様が座ってらしたんですのよねっ♪」
 リングを見下ろせる一番高価な席に座った松浦亜弥は、満足そうに微笑んだ。
「…ああ、この席があたくしのモノになるなんて!!」
扇をバッと開き、にっこにっこと満面の笑みを浮かべる。
「・・・・・・そして、あの『氷の薔薇』が手に入るなんて!!!」
 亜弥は、甲高い笑い声を上げた。
 狂気を含んだその笑い声。しかしその部屋に待機している者は、誰一人として動じてい
ない。慣れた様子で亜弥を見つめている。
 笑い声を止め、目を細めてリングに視線を送る。
「・・・・・・いいえ、いいえ。あたくしの狙いは、『氷の薔薇』そのものではございま
せんのよ。」
 開いた扇で、口元を隠す。
「あたくしが欲しいのは、『氷の薔薇』に注がれる『水』。命の源。」
 亜弥の視線が動いた。
 その視線に捕捉されたのは、純白の天使。

「…ああ、やはり美しいわ!ひとみ様!!!」

 そう叫んだ直後、待機していた黒服の内の一人が動いた。
「…亜弥様。」
 その黒服は、よく見れば女性だった。
 男物のスーツに身を包んでいても、その女性らしく均衡の取れた身体つきは隠せていな
い。
 彼女の名は、藤本美貴と言う。

120いつもと違う、いつもの事:2003/08/25(月) 21:33
「あら、みきたん。何かしら?」
「・・・・・・恐れながら、一つだけ…申し上げたい事がございます。」
「何言ってるんですの?あなたとあたくしは幼馴染。幼い頃から一緒に育った、姉妹のよ
うなものですわ。そんなに他人行儀になる事はありません。」
「…しかし、現在の私は亜弥様のボディーガードに過ぎませんので。」
「もう、みきたんは本当におカタいんだから。…それで、何ですの?言いたい事とは。」
 美貴は、覚悟を決めたように口を開く。

「…もう、『彼女』にこだわるのはおやめください!!」

 亜弥の手と表情が、ピタリと止まった。
「・・・・・・『彼女』と、『Y−0412:HITOMI』は…違います。もう、全く
の別人と言っても過言ではないのです…。」
「・・・・・・。」
「もう、おやめください。私が言いたいのは、それだけです…。」
 亜弥は、手元にあったグラスを美貴に投げつけた。
「お黙り!!」
 グラスは、美貴の胸に当たって割れた。ジュースと飾りのフルーツ、そしてガラスの破
片が美貴の顔にふりかかる。
「…お前に何がわかると言うの!!お前ごときに!!!」
「亜弥様…。」
 破片で傷付いた頬から、鮮血が滲む。
 亜弥は美貴に背を向けた。
「・・・・・・それを、片付けなさい。」
 そう言うと同時に、美貴は羽交い絞めにされて部屋から出された。美貴は無抵抗だった。
それが亜弥の苛立ちを募らせる。
 亜弥は舌打ちをし、どっかりとソファーに身体を沈める。
 そして、もう一度『Y−0412:HITOMI』に視線を向けた。
「…ああ、愛しい愛しいひとみ様…。亜弥は、あなただけを…ずっと、あなただけを…!!」
 祈るようなその言葉の直後、また狂ったような笑い声を上げる。
 しかし、その目尻には涙が光っていた。

121いつもと違う、いつもの事:2003/08/25(月) 21:33

****************************************

 寒気を感じた。
 視線が注がれているような気がする。それも、今まで感じた事のない『狂気』を含んだ
視線が。
 しかしひとみは、そんなモノにかまっている暇はなかった。
「…どうしちゃったんだよ、梨華ちゃん…!!!」
 ひとみは泣きそうになりながら、リングの上を見守っていた。
 今回の対戦相手は、見るからに強そうな男。巨大な肉体と鍛え上げた筋肉を持った、坊
主頭の青年。
 ひとみは、目を瞑りたくなった。こんなのは久しぶりだ。
 しかし、梨華が負けているワケではない。むしろ、勝っている。
『…ここ二回程、不戦勝だった「氷の薔薇」!!よっぽど欲求不満なのでしょうか!!メッ
タ打ちだぁぁぁぁぁぁぁ!!!相手に反撃の隙も与えず、しかし決定打にならない程度に
殴る、蹴る、打つ!!!…どうですか?解説の見解としては?』
『いたぶっていますね、相手を。そしてそれを喜んでいるようだ。…ある意味、一番正し
いストリート・ファイトの姿を見せてくれているのかも知れません。』
 解説の言う通りらしい。スピーカーからは、さっきから狂喜乱舞した観客の歓声があが
りっぱなしだ。
「・・・・・・違う!!」
 ひとみは唇を噛む。
「違う…ッ!!!」
 そのひとみの叫びは、誰にも届く事なく歓声にかき消された。
 そう、一番届けたい梨華にさえ。

122クロイツ:2003/08/25(月) 21:33

 …更新ペース遅すぎてごめんなさい…(大汗)
 梨華ちゃんがどんどん追い込まれて行く様が、書いててすごく痛い…(泣)

>オガマー様
 萌えてくださいましたか♪よかった〜!!
 マサオ控えめ過ぎて、まったくもう…。
 >いちーちゃんのタバコ・・愛ですねぇ(w
 そうなんです、愛なんですー!!しかしごっちんは『タバコをやめなきゃ駄目!』とも
言ってるようですが(笑)
 あやや登場、みきたん登場、そして梨華ちゃん暴走(爆笑)
 ありがとうございます!がんばります!!

>チップ様
 わーい!!萌えて下さいましたかー!!よかった♪
 あややです。VSあやや、開始です(笑)
 ありがとうございます!がんばります!!

>名無し(0´〜`0)様
 ごっちんはこれから、要所要所でぽつぽつ出して行く予定です♪
 柴ちゃんには幸せになってもらうのれす(笑)これから先、柴ちゃんとマサオ君も出演
予定ありますので、どうぞお楽しみに♪
 ありがとうございます!がんばります!!

123フェンリル:2003/08/26(火) 10:59
大柴円満解決よかったw
でもいしよしの方は雲行きがあやしくなってきましたねぇ。
こんなに切れてる石川さん久々に見た。最初のイメージよりすごいかも。
早く続きが見たいですね。
マターリ待ってますので。付いて行きますよどこまでもw
(何気にプレッシャーw)

124痛む心:2003/09/01(月) 23:26

 吉澤ひとみは、学校中の憧れの的だった。
「…カッコ良くて、優しくて…そしてとても繊細で。」
 亜弥は、優しい…しかしどこか狂気を感じる笑顔を浮かべて呟いた。
「あたくし、いつも思っておりましたの。『ああ、吉澤先輩を独り占めできたら…どんな
に幸せかしら』って。」
 目の前に置いてあった写真立てを手に取り、そっと頬擦りする。
 そこに写っているのは、一人の少女。名門私立女子校の制服を着た、美しい少女。
 その少女は、『Y−0412:HITOMI』に瓜二つだった。
「…だけど、あなたはとうとうあたくしのモノにはなってくださらなかった…。あたくし
を受け入れる事なく、天に召されてしまわれた…。」
 亜弥の目から、一筋の涙が零れ落ちる。
 その涙は頬を伝い…写真立てのガラスに落ち、『吉澤ひとみ』に注がれる。
「そうですわよね。吉澤先輩は、あまりにも完璧過ぎましたわ。誰よりもお美しく聡明で、
何よりも気高く上品でしたもの。神様が早く手元に置かれたくなるのもわかりますわ。
 ・・・・・・だけど。」
 写真立てを元の場所に戻し、もう一つの写真立てを手に取る。
 そこに写っているのは、紛れもない『Y−0412:HITOMI』の姿。
「見つけましたわ!とうとう、見つけ出しましたのよ!!吉澤先輩の化身を!!」
 うっとりと写真を見つめ、亜弥はほぅ、とため息を吐く。
「…『噂』は聞いておりましたのよ…。だけど、吉澤家のガードは思ったよりも硬くて…
手間取ってしまいましたの。ですけど…とうとうッ!!」
 亜弥の狂ったような高笑いが、部屋中に響いた。
「今度こそ!!今度こそ手に入れてみせる!!愛しい愛しいあの方を!!!」
 亜弥の目は、決して笑ってなどいなかった。

125痛む心:2003/09/01(月) 23:27

****************************************

 くすんくすんと泣き続けるひとみを前に、梨華は激しい後悔に襲われていた。
(…馬鹿だ、わたし。)
 リングに上がって、思わず我を忘れた。相手をいたぶりたいと言う残酷な気持ちが、抑
えられなくなってしまったのだ。
 ひとみの泣き声が、梨華の胸に突き刺さる。
「…ひーちゃん…。」
 恐る恐る声をかけてみる。すると、ひとみの身体がびくっと震えた。
「・・・・・・知らない…。」
 ひとみはしゃくりあげながら、くるりと梨華に背を向けて叫ぶ。
「あたし、知らない!あんな梨華ちゃん、あたしは知らない!!!」
 悲痛な叫び声に、梨華の胸はえぐられる。
 ひとみに向かって手を伸ばしかけたが…ひとみに触れられず、すぐに引っ込めた。
(馬鹿だ…わたしは…。)
 もう一度そう思って、俯く。
 ひとみを悲しませたくなど、なかった。
 ただ、松浦亜弥の狂気が…梨華を狂わせた。
「・・・・・・ごめん、ひーちゃん…。」
 梨華の声も震える。
 それを聞いて、ひとみははっと梨華を振り返る。
「ごめん、ごめんね…。ひーちゃんを悲しませたかったワケじゃない…。わたしは…!!」
 梨華は額に手を当て、静かに涙をこぼしていた。
「り、梨華ちゃん!」
 ひとみは慌てて、梨華に近付いた。

126痛む心:2003/09/01(月) 23:27
「…ひーちゃん…!!ひーちゃん、ごめん…ひーちゃん!!」
「・・・・・・どうしたんだよぉ、梨華ちゃん…。」
 梨華は、まるで祈るように必死な視線をひとみに向ける。
「…もうしない。もう、絶対にしないから…!!あんな、ひーちゃんを悲しませるような
事はもう二度としないから…ッ!!」
 ぼろぼろこぼれる涙を拭おうともせず。歪む表情を隠そうともせず。
 ただただ真っ青な顔と必死な表情をひとみに向けて…梨華は言った。

「・・・・・・わたしを嫌いにならないで…!!!」

 その言葉を聞いた瞬間、ひとみの涙が止まった。
「ひーちゃんに…ひーちゃんに嫌われたらわたし…!!もう、生きて行く意味がなくなっ
ちゃう…!!!」
「梨華ちゃん…。」
 ひとみはそっと、なみだでぐしゃぐしゃになった梨華の頬に口付ける。
「ひーちゃん…?」
「・・・・・・。」
 ひとみは、拗ねたような表情で梨華に言う。
「…本当だね?もう、しないね?あんな…いたぶる、みたいな事。」
「しない。絶対に…!!」
 それを聞いて、ちゅっと梨華の額にキス。
「…梨華ちゃん、何か抱えてるモノがあるでしょ?」
「・・・・・・。」
「答えて、梨華ちゃん。」
 強い口調で言われたその言葉に、梨華は身体をぴくりと震わせる。
 怯えが混じった感情の中で、梨華はようやくぽつりと呟いた。
「・・・・・・新しい、スポンサーの事で…。」

127痛む心:2003/09/01(月) 23:28
「え?松浦さんがどうかしたの?」
「・・・・・・何か、嫌な感じがして…。」
「嫌な感じ?…梨華ちゃん、何かされたの?」
「ううん、そうじゃなくて…。」
 梨華はまた泣き出しそうになりながら、ようやく言葉を紡ぎ出す。
「・・・・・・ひーちゃんが…取られそうで…ッ!!」
「え?…ま、松浦さんに?」
 梨華は震えながら、こくりと頷く。
 そんな梨華を見て…ひとみは優しく笑った。
「…大丈夫だよ、梨華ちゃん。」
「・・・・・・え?」

「あたしはどこにも行かないから。あたしの居場所は…ここだけだから。」

 ひとみは、梨華の胸に飛び込んだ。
「・・・・・・ひーちゃん…!!!」
 梨華は、壊れないように気をつけて…だけどぎゅっと強くひとみを抱きしめる。
「もう、溜め込んだりしないでね。…梨華ちゃんが一人で苦しんでるなんて、絶対嫌だか
ら。」
「・・・・・・だけど、こんな…カッコ悪い所を見せたら嫌われちゃうと思って…。」
 ひとみはくすっと笑って見せる。
「あたしが梨華ちゃんに惚れたのは、『カッコイイから』だけじゃないんだよ?」
「・・・・・・。」
「大好きだよ、梨華ちゃん。…なんでも分け合いたい。どんな事でも分け合って生きて行
きたい。…だから、あたしに隠し事はしないで…。」
「ひーちゃん!!」
 ひとみは、梨華の胸に頬擦りをした。
 梨華が自分の為に泣いてくれているのが、すごく心地よかった。

128痛む心:2003/09/01(月) 23:28

****************************************

 美貴は、何かに耐えるかのようにぎゅっと瞳を閉じた。
「…藤本!何ボサッとしてるんだ!!手伝え!!」
「・・・・・・あ、は、はい!!」
 弾かれたように返事をし、身体を動かす。
 しかし、気はとことん進まない。
「…特殊鳥篭、捕獲用プログラム、ネット…。」
 一つ一つを確認しながらも、ため息が漏れる。
(・・・・・・間違っている…!!こんなの絶対、違う!!)
 そう思いながら作業を続ける美貴の顔色は、真っ青だった。
「…どうした?藤本。顔色が悪いぞ?」
「え?…は、はい…。ちょっと…貧血っぽくて…。」
「そうか。そう言えばお前、女だったな。あまりに強いから忘れてたが。」
 美貴の祖父だと言っても無理はないような年齢の男性が、美貴の頭を軽く叩く。
「女ってのは大変らしいな。ウチの孫娘も言っていた。」
「・・・・・・は、はぁ。」
「もう帰って良いぞ。…後は俺達だけでなんとかなる。身体は大事にしておけ。」
 どうやらこの男は、何かを勘違いしているらしい。
 しかし、美貴にはありがたい申し出だった。
「・・・・・・はい。ありがとうございます。それじゃ…帰らせて頂きます。」
「おう。無理すんなよ。」
 頭を下げて、ゆっくり歩きながら部屋を出る。
 足音が男に聞こえないくらいの距離まで歩いた所で…美貴は、極力足音を抑えながら駆
け出した。
(知らせなきゃ…!!石川梨華と『Y−0412:HITOMI』に…!!!)
 美貴は監視カメラを避けながら、松浦家の邸から飛び出した。

129クロイツ:2003/09/01(月) 23:28


 あやや、何するつもりなんだあやや!!
 …泣いてるひーちゃんと泣いてる梨華ちゃん、どっちの方が受けが良いのか…(笑)
 私は『泣いてるひーちゃん(身長30cm)』のが萌え〜なのですが(爆笑)
 更新ペース乱れててごめんなさいっ!!
 次回、ひーちゃん大ピンチですッ!!

>フェンリル様
 いしよし、一応仲直りです♪
 >こんなに切れてる石川さん久々に見た。最初のイメージよりすごいかも。
 ひーちゃん泣いてますしねぇ(笑)でも、反省したみたいですよ〜。
 私もここまで切れるとは思わなかった…(爆笑)
 がんばります!!付いて来て下さいますかっ!!うれすぃ〜!!
 よろしくお願い致します☆

130匿名匿名希望:2003/09/02(火) 11:33
私も思わず『ひーちゃん激萌!!』
ってことでいつもROMってましたがついついカキコ。
何か切ないですね・・・。
動く人達に翻弄されるひーちゃんと梨華ちゃん、目が離せません。

更新お疲れ様でした。
次回の更新も楽しみに待っています。

131フェンリル:2003/09/02(火) 13:40
『ひーちゃん』の過去が徐々に明らかに。
女の勘なのか、愛する一心の第6感なのか・・・
いずれにしても次回楽しみ。
そういえば石川さんの過去も未だ語られてないですね。
なぜファイトすることになったのか。
生い立ちは・・・その辺もいつか語られるんでしょうか?
次回も楽しみに待ってますよ。更新乙でした。

132名無し(0´〜`0):2003/09/05(金) 17:57
はじめまして。実はクロイツさんの隠れファンです。
すごく面白いです。なんか・・・「ありがとう」って感じです。
クロイツさん本当にありがとうです。マジ天才す。しかしあやや怖いっすね
ビックリしました。これからもがんばってくださいね。
楽しみに待ってます。更新おつかれでした。

133忍び寄る足音:2003/09/07(日) 20:04

 寝てる最中と言うのは、無防備なものである。
 それ故、危険な世界に生きているファイター達が一番警戒しているのが『寝ている間』。
「…つまり、常に警戒体勢にあるファイターだが…一番危険なのは寝起きって事だ。」
「リングの上にいる時よりも?」
「当たり前だろう。リングに上がったら、敵は一人だ。だが…寝起きに襲って来る敵は一
人だけとは限らない。」
 元ファイターの男は、ちらりと視線をアパートの窓に移した。
「・・・・・・だから、この時間が一番好都合なのさ。」
 窓からは、光が漏れている。
 楽しげな会話も、漏れ聞こえて来る。人が動いている気配もする。
 現在、午後六時半。データによると、ターゲットは必ずこの時間に食事をとるそうだ。
「食事中ってのは、意外と油断してるモンなんだ。」
「…そうなんですか…。」
 部下の男を見て、元ファイターの男はため息をついた。
「…まったく。藤本の具合さえ良ければ、お前みたいなペーペーは連れて来ないんだがな。」
「す、すみません…。」
「良いか、もう一度言うぞ?」
 部下に、厳しい視線で言う。
「…ターゲットは、天使型ロボット『Y−0412:HITOMI』。そいつ以外は何も
取らなくて良い。…それからいくら腕に自信があっても、石川梨華と戦おうなんて思うな。」
「はい。…でも、たかが十代後半の女の子でしょう?そんなに警戒しなくても…」
「馬鹿野郎!!」
 控えめな声で、部下を叱り付ける。
「…石川梨華を…『氷の薔薇』を舐めるな。あいつだったらお前一人くらい、簡単に殺せ
るんだぞ?」

134忍び寄る足音:2003/09/07(日) 20:04
「・・・・・・そう、なんですか?」
「ああ。」
 男は窓に映るシルエットを見ながら、脂汗を浮かべた。
「…あの目は、人を殺した事のある人間の目だ。…それも、数え切れないくらいの、な。」
「・・・・・・。」
 部下が沈黙したのを見て、男はしばらく目を瞑り…そして、かっと開いた。

「行くぞ。」

 足音を殺し、階段を上がる。
 身を低くし、気配を殺し…扉の前で立ち止まる。
『梨華ちゃーん!お味噌汁、もう一杯いる?』
 その明るい声が、彼の孫娘の声と重なる。
 これから彼がしようとしているのは…『Y−0412:HITOMI』を不幸にする事
だろう。
(…ごめんな。)
 しかし、彼にも生活がある。
 部下に目配せし・・・・・・彼は、アパートに踏み込んだ。

135忍び寄る足音:2003/09/07(日) 20:05

****************************************

 梨華は、手に持ったカップの中身をじっと見つめ続けた。
 純白のカップの中の、漆黒の液体。…そして、そこに映る自分の顔。
「やっぱオマエ、飲まないのね。」
 紗耶香はニヤニヤと、そんな梨華を見て言う。
「・・・・・・いや、飲みます。」
 梨華は表情を変えず、漆黒の液体を口に含んだ。
 ブラックなので苦いが、柔らかくて暖かい味。
「おおっ!の、飲んだよコイツ!初めてじゃないか?ウチで出されたモノを口にするの。」
「…だって、ごっちんに悪いし。」
 紗耶香は驚きの表情を作る。
「…よくわかったな。ごとーが淹れたって。」
 そう。普段なら、こう言う飲み物は紗耶香が淹れる。
 『G−0923:MAKI』…真希は、何故か淹れたがらないからだ。
「…なんとなく。色が、いつもより濃かったから。ごっちんが淹れてくれたんなら、飲ま
なきゃ失礼だし。」
「・・・・・・私にゃ失礼じゃないってか。まぁ、良いけど。」
 紗耶香は足を組みなおし、まじめな顔で梨華を見た。
「…それより、もうそろそろ説明してくれても良いんじゃないか?」
「・・・・・・。」
 言葉を探しているような梨華に、ふぅとため息を漏らし…紗耶香は、梨華の隣で居心地
悪そうにしている人物を見た。
「…てゆーか、お姉さんは何者よ?」
「あ…わ、私は…藤本美貴って言います。」
 緊張気味な美貴に、紗耶香は言った。
「いや、そんな緊張してくれなくても良いよ。…コイツ状況理解してないみたいだし…悪
いけどあんたが説明してくんない?」
「あ、はい…。」
 美貴は、ぎゅっとこぶしを握ってから話し出した。

136忍び寄る足音:2003/09/07(日) 20:05
「…私は、石川さんの新しいスポンサーの松浦亜弥様の下で働いていた…護衛です。」
「…それで、黒服なんだね。」
「はい。…亜弥様が石川さんのスポンサーになったのは、目的があったんです。」
 美貴は、何かを決意したような表情になる。紗耶香は無言で先を促した。

「亜弥様の目的は、『Y−0412:HITOMI』を…完全に手に入れる事。」

 梨華の表情が、冷える。
「…計画としては…食事中を狙って襲撃。石川さんを取り押さえ、その間に『Y−041
2:HITOMI』に捕獲用プログラムを流し、特殊な鳥篭の中に監禁。」
 梨華の組み合わされた手が、白くなった。
「その状態で亜弥様の下に運び…今までの記憶・記録等を強制削除し、『吉澤ひとみ』の
人格プログラムを流し込む。」
「ちょっと待て。」
 紗耶香は、美貴を手で制した。
「できるワケないだろう、そんな事。『Y−0412:HITOMI』の構造は、そこら
の科学者がいじくってなんとかなるよーな、単純なモンじゃないんだぞ?」
「ええ。私もそう思って、何度も危険性を訴え続けたのですが…亜弥様に無視されてしまっ
て…。」
 紗耶香はため息と共に、ソファに身体を沈めた。
「やれやれ…お嬢様って人種は、そーゆー所があるから厄介なんだよなぁ。何でも自分の
都合の良いように動くって、勘違いしてるんだ。」
「・・・・・・だけど…。」
 梨華が、感情を押し殺したような声音で言う。
「計画は、失敗した。」

137忍び寄る足音:2003/09/07(日) 20:05
 梨華は、目の前の机の上に視線を移した。

 そこには、可愛らしい刺繍が施されたティッシュボックスの上でくーくーと眠るひとみ
の姿。

 それを見た梨華の目が、優しくなる。
「あなたが踏み込まれる直前に、計画をわたし達に教えて…逃げる手伝いをしてくれたか
ら。」
 美貴は、踏み込まれる五分前に梨華のアパートに到着した。
 そして手早く二人に事情を説明し、ギリギリまで逃げた事がバレないように工作をし…
踏み込まれる二分前には、待たせておいたタクシーに乗せていたのだ。
 紗耶香はぽりぽりと頭をかく。
「…私の情報では、藤本美貴って言えば…松浦亜弥の腹心の部下のはずなんだけど。」
「私は…!!」
 美貴は、膝の上で拳を握り締める。
「…私は、亜弥様に早く目を覚まして欲しいんです!!」
「目を…覚ます?」
「…亜弥様の愛した『吉澤ひとみ』は、もうこの世にいないんです!!…例え同じ顔、同
じ声…同じ姿をした者があらわれても…それはもう、『吉澤ひとみ』ではないんです!!」
 ギリ、と、美貴の奥歯が鳴る。
「・・・・・・これ以上、私は…亜弥様に傷付いてほしくない…!!!」
 そんな美貴を見て、梨華は言った。
「・・・・・・『吉澤ひとみ』って、何?」
「亜弥様の通っている学校の、先輩でした。吉澤グループの会長の最愛の娘で…三年前に
病気でお亡くなりになりました。外見は、そちらの『Y−0412:HITOMI』と瓜
二つで…変な、噂が立っています。」
「噂?」
「ええ。…なんでも、『吉澤グループの会長は、禁忌を犯して最愛の娘を生き返らせた』
と…。」

138忍び寄る足音:2003/09/07(日) 20:06
 紗耶香は、梨華から目を逸らした。
 その仕種で、梨華は紗耶香が全てを知っていると確信する。
「…市井さん?」
「・・・・・・。」
 紗耶香はため息を吐いて、観念したように言った。
「・・・・・・その噂、事実だよ。」
「え!?」
「私が、吉澤グループ会長に手を貸した。『禁忌を犯した』のは私だ。」
「・・・・・・まさか!!!」
 梨華が震える。美貴の唇から、赤みが消える。

「・・・・・・吉澤ひとみを、生き返らせた。『Y−0412:HITOMI』として。」

 ティッシュボックスの上で、ひとみが寝返りを打った。
 幸せそうなその寝顔は…まさに、『天使』そのものだった。

139クロイツ:2003/09/07(日) 20:06


 さーて、急展開〜。無事でよかったね、ひーちゃん♪
 次回、ひーちゃんの過去があきらかにっ!!
 そして萌え勝負、ひーちゃんの勝利です(笑)!!

>匿名匿名希望様
 おおう!こんにちはっ!!
 激萌えですか〜♪よかったぁ〜♪そして今回も、ひーちゃんは『萌え』を狙っておりま
す(爆笑)
 >何か切ないですね・・・。
 わーい!!切なさを狙っておりますので、よかったー!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>フェンリル様
 次回、ひーちゃんの過去があきらかになります♪
 >そういえば石川さんの過去も未だ語られてないですね。
 うーむ。そう言えばそうですね。…ちょこちょこ微妙には出て来てるんですが、決定的
なのはないですね(笑)
 しかし、石川さんの過去は激しく暗くなりそうな予感…(汗)と、とりあえずはひーちゃ
んです(笑)!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>名無し(0´〜`0)様
 はじめまして〜♪ありがとうございます!!
 いや〜ん!そんなに言って頂けると、嬉しくて嬉しくて…本気で小躍りしやいますYO!!
いや、小躍りどころじゃなく狂喜乱舞、ですか(笑)
 …怖いあややって、なんでこんなに書きやすいんでしょうか(爆笑)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!!

140匿名匿名希望:2003/09/07(日) 21:58
狙いは適格ですね(w
やはり 萌 でございます。
ひーちゃんのとりこです(w
ひーちゃんの過去、楽しみでもあり、ちょっと恐くもありですな。
でもとても楽しみに待っています♪
更新お疲れ様でした。

141フェンリル:2003/09/08(月) 17:46
尽くすミキティいいw。こういうキャラ設定余り見たことないので
新鮮ですね。(なんか他作のミキティからっとしたキャラ立ちが多くてw)
いよいよ過去が明らかになるんですね。どんな黒い過去なのか・・・
ん?ということはいしよしの出会いも語られるんですね。
うーん楽しみだw。次回待ち遠しいです

142名無し(0´〜`0):2003/09/09(火) 18:05
すげーすげーっス!マジクロイツさんカッケーす!面白い!
怖いあやや・・・個人的に嫌いじゃない。りかちゃんからひーちゃん
盗ってほしくないけどあややにもがんばってほしい自分がいます。
そして踊っちゃってください。次も楽しみにしてます。
更新お疲れ様でした。

143token:2003/09/09(火) 21:19
更新お疲れ様です。
少し前に、匿名匿名希望様のHPからのLinkで来てたんですけど、ロムってました。
でも、今日『愛人。』を読んで、ガマンできなくなり、カキコします。
いいです、このお話。ちっちゃなひーちゃんと強い梨華ちゃん。この組み合わせでも
立派ないしよしです。萌え〜です。しかもそれぞれに大きな謎を抱えていそうですし、
先の展開が楽しみです。ホント、クロイツ様すげ〜です。

144本庄:2003/09/10(水) 15:28
こちらでははじめましてっす♪
なんとなくレスすんの控えてたんですがティッシュボックスで
眠るひーちゃんにヤラレたのとあちらでこの作品のネタが出てたんで
ついついレスさせてもらっちゃいますた。

つーかもう!!ティッシュボックスっすよ!??
ひーちゃんかわいすぎっす!!
こちらの方もがんがって下さいね。めっちゃ応援してるです。

では再びROM専に戻りやす・・・ドロン。

145過去と現在:2003/09/21(日) 11:07

 吉澤ひとみは、吉澤グループ会長の一人娘としてこの世に生を受けた。
「頭脳明晰、スポーツ万能、容姿端麗、おまけに性格も良い…まさに『完璧』だったらし
い。」
 紗耶香は、タバコに火をつける。
 胸いっぱいに煙を吸い込み、天井に向かって…まるでため息でも吐くかのように吐き出
した。
「…愛情たっぷりに育てられて、学校に行けば『女子校の王子様』だったそうだ。」
「…絵に描いたような、幸せな人だったみたいですね。」
美貴もうつむき加減で口を挟む。
「私も一度、吉澤ひとみさんと言葉を交わした事があります。…物腰が柔らかで、私のよ
うな使用人にもお優しくて…。」
「すごく純粋で、繊細でもあったみたいだな。…『Y−0412:HITOMI』を作る
前に見せられた、資料用映像で見た時…そんな印象を受けた。」
 梨華はふと、ひとみの寝顔を見る。
 むにゃむにゃと何か言っている。どんな夢を見ているのか…どちらにしろ、良い夢に違
いないだろう。
「・・・・・・吉澤ひとみは、ある日学校で身体の痛みを訴えた。」
「身体の痛み?」
「そう。身体のふしぶしに。」
紗耶香の表情が暗くなる。

146過去と現在:2003/09/21(日) 11:07
「…すぐさま病院に運ばれたんだが…運ばれた先が悪かった。」
「悪かった…って…?」
「・・・・・・救急車に乗せたのが、吉澤家の人間だったなら…あんな病院になんか運ば
せなかったんだろうがな。」
 紗耶香は、タバコを灰皿に押し付ける。
「…運ばれた先の病院で吉澤ひとみを診たのは、吉澤家に恨みのある医者だった。」
 梨華の表情が険しくなる。
「前、吉澤家のお抱えの医師をしていたんだが…勤務態度が悪いと言う事で解雇され、そ
の病院に勤めていたらしい。…完璧な逆恨みなんだがな。」
 美貴も顔を伏せた。
「…その医者は、吉澤ひとみを診察した。そして、あえて本当の病名を伏せて『風邪』と
言い渡した。」
「本当は、何だったんですか…?」

「白血病だ。」

部屋が静まり返り、ひとみの規則正しい寝息だけが響く。
「…確かに、症状は似てるんだ。白血病の前兆は、微熱が続いて身体のふしぶしに痛みを
感じて…風邪が治らなくなったような感じだから。」

147過去と現在:2003/09/21(日) 11:08
「・・・・・・それで…?」
「…吉澤ひとみは、良い子過ぎたんだ。」
 紗耶香はタバコの箱を持ったまま、ぽつりとつぶやく。
「人を疑うって事を知らなかった。…そして、両親に心配をかけたくないと思った。」
「・・・・・・って事は…!!」
「そう。病院に言った事を両親に言わなかった。そして『風邪』だと思い込んでしまった。」
 美貴がぐっと拳を握る。
「そして…ひとみの様子が、風邪にしてはおかしいと両親が気付いた時には…もう、手遅
れだったんだ。」
 ころり、とひとみが寝返りを打つ。
「・・・・・・手の施し様もなく、吉澤ひとみは死んだ。」

148過去と現在:2003/09/21(日) 11:08

****************************************

 ひとみが目を覚ましてしまったので、話はそこで打ち切りになった。
「二人ともアパートには帰れないんでしょ?それにそっちのお姉さんも、お家には帰れな
いみたいだし。」
真希の申し出を、三人はありがたく受ける事にした。
「…なあ、石川。」
 紗耶香に呼び止められて、梨華は振り返る。
「ストリート・ファイト…今週はどうすんだ?」
「・・・・・・出られないでしょう。スポンサーがこうなっちゃってるんですから。」
「いや、そりゃそーなんだが…。」
 紗耶香は言いにくそうに、ちょっと悩んでから言った。
「実は…とある情報を掴んでるんだが。」
「え?」
 ひとみが真希と一緒にはしゃぎながら部屋を出て行ったのを確認し、耳元で囁くように
言う。

「・・・・・・次のお前の対戦相手が、吉澤ひとみの『身体』を保管しているらしい。」

「なっ!?」
「…『Y−0412:HITOMI』見ればわかると思うが…吉澤ひとみは、美しい少女
だったからな。」

149過去と現在:2003/09/21(日) 11:08
「だけど…!!!」
「情報では、霊柩車に乗せる前に…遺体をすり替えたらしい。葬儀会社を買収して。…こ
れは、かなり確かな情報だ。」
 梨華は驚きを隠せない。
「保存状態もかなり良いらしい。・・・・・・石川。」
 紗耶香は真剣な顔で言った。
「私なら、吉澤ひとみを生き返らせられる。」
「は!?」
「身体がしっかりと保存されているのなら、それが可能なんだ。…私は、できる事なら生
き返らせてやりたいと思っている。」
「・・・・・・。」
「…まあ、どうするか心を決めたら言ってくれ。こればっかりは、私の一存じゃ決められ
ないからな。」
 そう言って、紗耶香は部屋を出て行った。
 あとに残された梨華は…ただただ呆然と立ち尽くす事しかできなかった。

150クロイツ:2003/09/21(日) 11:09


 長らくお待たせしちゃって、申し訳ございません(大汗)
 しかも少量で、本当にごめんなさい(号泣)
 さーて、急展開っ(笑)

>匿名匿名希望様
 狙った以上の反応がいただけて…うれしい限りです(笑)
 しかしひーちゃん、前回も今回もほぼ一言もしゃべってないんですが(笑)
 …すごいなひーちゃん。すごい存在感だ。
 ありがとうございます!!がんばります!!!

>フェンリル様
 そうですね…なんかあんまり見た事ない設定ですね。
 ひーちゃんの過去…ああ、こんなんなってしまいました(泣)
 グダグダにならないよう、頑張ります(笑)
 >ん?ということはいしよしの出会いも語られるんですね。
 いや、ひーちゃん起きちゃったんで話打ち切られちゃって…語られてません(大汗)
 ごごごごめんなさいっ!!まぁ、すぐに出てくると思うので…。
 頑張りますので、どうぞよろしくです!!

>名無し(0´〜`0)様
 ありがとうございます!そう言って頂けると本当にうれしいです!!踊ります(爆笑)
 怖いあやや、書きやすいんですよねぇ…(笑)
 私が書くと、あややはいつも極端なキャラになってしまう…(爆笑)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>token様
 おおう!!こんにちは!!ありがとうです♪
 『愛人。』とは、雰囲気をガラリと変えたんで(特にキャラを)…そう言って頂けると嬉しいです!!
 ちっちゃなひーちゃんの過去、暗くし過ぎてどうしようって感じなんですが(大汗)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>本庄様
 おおう!!こんにちはっ!!
 ティッシュボックスで眠るひーちゃん、なんだか好評みたいでよかった〜(笑)
 ついでに、『愛人。』でネタ出してよかったぁ〜(爆笑)
 やっぱり、身長30cmのリカちゃんサイズならば一度はやらねば!!と思いまして。
 >では再びROM専に戻りやす・・・ドロン。
 また感想頂けると嬉しいれす♪がんばりますので、どうぞよろしくです!!

151クロイツ:2003/09/21(日) 11:12
あー!!>>148のごっちんの台詞、最後の部分が抜けてしまった(大汗)
正確には、

「二人ともアパートには帰れないんでしょ?それにそっちのお姉さんも、お家には帰れな
いみたいだし。うちに泊まって行ってよ♪」

です(大汗)ワケわかんなくなっちゃってるぅ〜(泣)
ごめんなさいっ!!

152フェンリル:2003/09/21(日) 18:48
更新お疲れ様です
中々お忙しいようで・・いいのか悪いのか分かりませんがw
まったり待ってますよ
それにしても根の深い因縁があるんですねぇ
『死体』をすり替えだなんて・・・相手も訳ありなのでしょうね
次回楽しみにしてます。

153フェンリル:2003/09/21(日) 18:48
更新お疲れ様です
中々お忙しいようで・・いいのか悪いのか分かりませんがw
まったり待ってますよ
それにしても根の深い因縁があるんですねぇ
『死体』をすり替えだなんて・・・相手も訳ありなのでしょうね
次回楽しみにしてます。

154フェンリル:2003/09/21(日) 18:48
↑ごめんなさい2重カキコになってしまいました・・・

155タロイモ:2003/09/23(火) 02:52
こちらでは‘はじめまして‘となります。
梨華ちゃんとひーちゃんの関係も斬新ですごくツボにはまってます。
ひーちゃんかごっちん一家に一人(一台?)ほしいですね。
暴走あややとミキティの今後も気になります。
大変お忙しいようで、お疲れ様です。
次回もマターリ待ってます。くれぐれもお体お大事に!

156名無し(0´〜`0):2003/09/23(火) 11:58
はうあっ!こんなカッケー展開にっ!!さすがっす・・・
オイラはもう敬意を表します。しかしなにやらシリアスになってきましたね。
そしてひーちゃん。なんていい奴だ。なんか忙しいみたいですね。
がんばってくださいね。更新お疲れさまでした。

157望み:2003/09/26(金) 19:36

 「申し訳ございません!!!」
 土下座する男達に、亜弥はちらりと冷ややかな視線を向ける。
 手に持っていたグラスを、音を立てずに机に置くと…ぽつりと言った。
「…所で、みきたんは何でいないのかしら?」
「はっ!!…き、気分が悪いとかで不参加でした。」
 亜弥の眉が、ぴくりと跳ね上がる。
「と言う事は、部屋に帰ったと言う事ですの?」
「はっ!そのはずですが…。」
 亜弥は突然、グラスを壁に投げつけた。
 真っ白な壁に、液体が飛び散る。男たちはビクッと固まった。

「みきたんは、部屋になんかいなくってよ。」

「なっ!?」
男たちは顔を見合わせた。
「そ、そんな筈は…!!」
「ええ、貧血気味だったので帰らせましたが…そんな、どこかに行くような素振りは全然…!!」
「現実に、いなくなってますのよ。」
 亜弥は、机を叩いた。
「…あなたまで、裏切ると言うの!?みきたん…!!!あなたまで、あたくしから遠ざかっ
て行こうとすると言うの…ッ!!?」
 まるで壊れかけた歯車が軋み合う音のような歯軋りが、部屋の中に響いた。

158望み:2003/09/26(金) 19:37

****************************************

 客間に入り、二人きりになると…梨華は床に置いてあったダンベルを持ち上げた。
「え?梨華ちゃん、なんで?」
「なんで…って…。」
「だって、こうなっちゃったらもう試合、出ないでしょ?」
「・・・・・・。」
ひとみの言葉に、梨華は黙る。
「・・・・・・梨華ちゃん…?」
 不思議そうに顔を覗き込んで来るひとみに、梨華は笑顔を作って見せた。
「…ねえ、ひーちゃん。」
「ん?」
「もしも、だよ?もしも…」
梨華は言葉を止めた。ここから先を口にするのは、怖過ぎる。
「・・・・・・なんでも、ない。」
「梨華ちゃん?どうしたの?…なんか、変だよ?」
ひとみの心配そうな様子に、梨華は『なんでもない』と笑って見せた。
「…ねえ、ひーちゃん。」
「何?」
「・・・・・・前に、話したよね。わたしの両親の事。」
「・・・・・・。」
ひとみは黙った。
「…お父さんはわからない。お母さんは…身体を売る仕事をしてたって。」
「・・・・・・うん。で、でも…!!そんなの、全然…!!」
「…お母さんは、わたしを愛してくれなかった。」

159望み:2003/09/26(金) 19:37
「だ、だけど!!」
「最後は、お母さんに毒を飲まされた。…わたしが邪魔だったから。」
ひとみは黙って俯いてしまった。
 梨華は窓の外を見つめる。
「・・・・・・誰にも、愛されたいなんて望まなかった。無理だってわかってたから。
 でもね。・・・・・・でも、ね?」
 梨華の声は、まるで迷子になってしまった子供のように、心細く歪んで聞こえた。
 だからひとみは、はっと顔を上げて…梨華の顔を見た。
 しかし、目の前にいる梨華は無表情だった。

「…ひーちゃんは、わたしを愛してくれてる?」

「もちろんだよ!!ちゃんと…ううん、しっかり愛してる!!」
ひとみは梨華の胸に飛び込んだ。
「・・・・・・ありがとう、ひーちゃん。」
 梨華は、思った。
 これだけの愛情を注がれたのは、生まれて初めてだったから。
 だから…ひとみに裏切られても恨んだりしない、と。

160望み:2003/09/26(金) 19:37

****************************************

 深夜、梨華が熟睡してるのを見て…眠れずにいたひとみはそっとベッドを抜け出した。
 そして、するりと廊下に出る。
「…あれ?ごっちん?」
「んあ、ヨッスィー♪」
 窓辺に腰掛ける真希に、近寄った。
「何してるの?」
「星が綺麗だったから。…ごとー、星って大好きなんだ。」
「そっか…。」
ひとみも真希の隣に腰掛け、空を見上げる。
「・・・・・・梨華ちゃんは、夜とか夜の空とかを嫌がるんだよ。」
「んあ?そうなの?」
「うん。」
 昔、言っていた。
 『一番星が出ると、お母さんがお客さんを連れて来たから』と。
「だから、夜寝るのも早いんだよ。」
「へぇ〜。…いちーちゃんは、朝を嫌ってるな。なかなかお布団から出てこなくて。」
 二人で同時にくすくす笑い、それから黙って二人で空を見上げる。
 どのくらい、そうしていただろうか。
「…ねえ、ヨッスィー。」
「ん?何?ごっちん。」

「…人間になりたいって思った事、ない?」

質問の意味がわからず、ひとみは真希の顔を見る。しかし真希は空を見上げたままだ。
「…人間、に…?」
「うん。もしもなれるとしたら。」

161望み:2003/09/26(金) 19:37
「それは、サイズ的にって事?」
「それでも良いけど、完璧な『人間』にでも良いな。」
「・・・・・・そりゃ、あるよ。」
ひとみは、膝を胸に引き寄せて小さくなる。
「…梨華ちゃんが、ヘコんでる時とかさ。抱きしめて慰めたいのに…このサイズじゃ無理
だし。」
「んあ、そうだねぇ。」
「梨華ちゃんは強い。…だけど、それは肉体的なモノでしょ?」
「うん。」
「精神的にはね、ちょっと…弱い所があるんだよ。」
ひとみはぎゅっと拳を握った。
「支えになりたい。梨華ちゃんを支えたい。…だけど、あたしはこんなに小さくて、こん
なに弱い。…だから、梨華ちゃんはあたしに頼りきれないんだ。」
「そうかなぁ。」
「そうだよ。…梨華ちゃんはあたしを包み込んでくれる。だけどあたし、それじゃやっぱ
り…ちょっと歯がゆい感じの時があるんだ。」
ひとみは、挑みかかるように夜の空を見上げた。

「・・・・・・梨華ちゃんを、包み込んであげたい。
 その為に、せめて人間サイズになりたいって…何度思ったかわからない。」

真希は返事をしなかった。
そのまま二人は、言葉を交わさずに…空を見つめ続けた。
 二人は、気付いてなかった。
 部屋の扉に背中を預けながら…梨華がその会話を聞いていた事など。

162クロイツ:2003/09/26(金) 19:38


 更新ペース落ちまくりでごめんです!!!
 ああ…来週から授業が始まってしまう…(泣)
 バイバイ夏休み…(号泣)

>フェンリル様
 ありがとうございます!!
 今回は梨華ちゃんの過去がちょびっとだけ出てますねぇ。
 ああ、どんどん暗くなって行く…(汗)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>タロイモ様
 おおおおおう!!こちらも読んで下さってるんですかっ!!
 ありがとうです!感謝感激!!
 いやー、書けば書く程暗くなって行くこのお話(大汗)
 向こうとはもー、本当に違ってて…。
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>名無し(0´〜`0) 様
 いやいや、そんなっ!!私なんぞ全然たいした事なくってんもぅ!!
 いやー、どんどん暗くなって行っちゃって…(汗)
 ありがとうございます。そう言って頂けると本当にうれしいです!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

163名無し(0´〜`0):2003/09/28(日) 15:45
ひーちゃんが!!!
いったいどうなるのか、続きが楽しみで楽しみでなりません。
がんばってください!!

164token:2003/09/29(月) 20:51
更新お疲れさまです。
障害が多い程萌える、それもいしよし!頑張れ梨華ちゃん!

夏休み、ああ遠い昔に聞いたような気がする単語です。
私らは11月は学祭で講義なんかやってる暇はなかったですYO。(w

次回をまったりとお待ちしてます。頑張って下さい。

165名無しいしよしみそっかす:2003/10/02(木) 19:52
どうも、お初でございます。
クロイツ様は「ケーキ屋さん」から拝読させていただきました。
ハッキリ言って私ってとても気が短いので、長編などはよっぽどでないと・・・
なのですが。終始テンション高くドキドキしながら読ませていただいた事鮮烈
でした。
物語を産み出す才には敬服いたします。
 今回もまたしかり。丁度「打ち出の小槌」があったらなあ・・・
などと、切に思っておりました(笑)
更新お待ちしています。

166欲しいもの:2003/10/04(土) 16:26

 試合当日。
「石川梨華さーん!スタンバイ、お願いします!」
「…はい。」
スタッフに呼ばれ、梨華は待機室の椅子から立ち上がった。
「・・・・・・。」
ふと振り返って、待機室を見回す。
 見慣れた場所。いつもと同じ。
 だけど。
「…こんなに、広かったっけ。」
ぽつりと呟いてからため息をついた。
『いってらっしゃい、梨華ちゃん!ちゃーんと見てるからね!!』
いつもそう言って送り出してくれる天使がいない。
 …ただ、それだけ。
「・・・・・・。」
 だけど、それが一番大きな心の空洞。
 梨華の頭の中で、紗耶香の言葉がよみがえる。

『・・・・・・次のお前の対戦相手が、吉澤ひとみの『身体』を保管しているらしい。』

 吉澤ひとみの、身体。
 梨華にとってはどうでも良い事だった。
 人間の身体だろうが機械の身体だろうが…本当にどうでも良い。

167欲しいもの:2003/10/04(土) 16:26
 だけど。
 先日の夜に盗み聞いた、ひとみの言葉がよみがえる。

『・・・・・・梨華ちゃんを、包み込んであげたい。
 その為に、せめて人間サイズになりたいって…何度思ったかわからない。』

「…ひーちゃん!!」
 胸の奥が熱くなった。
 今のままで十分だ。十分、包み込んでもらっている。
 自分は、そんなものは必要としていない。ただ、ひとみが側にいてくれれば…それで十
分なのだ。
 だけど、ひとみは人間の身体を望んでいる。
「・・・・・・。」
 梨華の顔から、表情が消えた。
 同時に、目が絶対零度の暗さを映す。
「・・・・・・。」
 梨華は、待機室から出た。

168欲しいもの:2003/10/04(土) 16:27

****************************************

 その頃、ひとみは。
「…なんで連れてってくんないんだよ!梨華ちゃんはっ!!」
「んあ、当然でしょ。だってヨッスィー、狙われてるし。」
「そーだそーだ。そんな状況でお前をストリート・ファイトに連れて行く程、石川の愛は
浅くないんだぞー。」
ひとみはちょっと赤くなりながらも、ぶーっと膨れる。
「…んあ〜。ヨッスィー、むくれてないで一緒におやつ食べよう?」
「・・・・・・いらない。ねえ、市井さん!!映像も見れないの!?」
「…一応見れるけど。」
紗耶香は、ひとみに渋い顔を見せた。
「…あんまり見ない方が、良いと思うぞ?」
「えー?なんで?」
「いや、だって…なぁ?」
「んあ、そーでしょ。見ない方が良いよ。目的もちょっとアレだし、対戦相手もナニだし。」
「…対戦相手も、あれ?」
クエスチョンマークを飛ばすひとみに、真希は驚きの表情になる。
「・・・・・・まさかヨッスィー、知らないの!?」
「おいコラ、後藤!」

169欲しいもの:2003/10/04(土) 16:27
「い、いちーちゃんも…!?確信犯!!?」
紗耶香はあわてて、真希の口を塞いだ。しかし、時既に遅し。
「・・・・・・どう言う、事…?」
ひとみは、大きな目に不安の色を湛えて紗耶香を見る。
「・・・・・・いや、その…なんでもないって。」
「ここまで来て、その誤魔化しは通用しないよ…。」
「そ、そりゃそーだよなぁ…。」
 真希は紗耶香の手から逃れた。
「ぷはっ!…説明してない方がおかしいよ!!なんで!?どうして梨華ちゃんもいちーちゃ
んも、一番の当事者に説明してないの!!?」
「当事者…?」
「だから、後藤…!!」
 紗耶香は苛立たしげに頭をかいてから、タバコを一本取り出して火をつけた。
 何回か吸い込んで、吐いてを繰り返してから…紗耶香は言った。
「…石川が、オマエを連れて行かなかったのは…お前が狙われてるからだけじゃないんだ
よ。」

170欲しいもの:2003/10/04(土) 16:27
 真希が満足したようにこくこくと頷く。
 紗耶香は、ばつが悪そうに煙を天井へと吐き出した。

「…今回だけは、戦ってる姿を…オマエに見られたくないからだ。」

「・・・・・・え?」
ひとみの訝しげな顔に、紗耶香は言った。
「…聞きたいか?今日、石川が戦う理由を。」
「…うん。」
「…後悔するぞ。『聞かなきゃ良かった』ってな。…それでも聞くか?」
「・・・・・・うん。」
力強く頷いたひとみに、紗耶香は口を開いた。

171欲しいもの:2003/10/04(土) 16:28

****************************************

 梨華は苦戦していた。
 しかし、負けているのではない。むしろ、余裕で勝てそうだ。
 難航しているのは、『取り引き』。
「・・・・・・吉澤ひとみの身体を、渡しなさい。」
「…嫌だ。あれは俺のコレクションの中で、一番気に入ってる身体だからな。」
「お金は払う。」
「どんな大金積まれたって、渡せねぇな。」
 梨華の瞳が、更に冷たくなる。
「・・・・・・殺されたいの?」
「ああ。殺せ!!あれを持って行かれるくらいだったら、殺された方がマシだね!!」
「そう。」
 そう言うと同時に、梨華は男の胸の上に片足を乗せた。

「それならば、殺す。」

その目は、どこまでも冷たくて…どこまでも無感情で。
「…ひぃぃぃぃ…!!!」
男は思わず、悲鳴を上げた。

172欲しいもの:2003/10/04(土) 16:28
「…最後に、もう一度だけ聞いてあげる。」
その声は、この世の何よりも冷たくて。
だけど、まるで女神の声のごとく優しく響いて。

「…吉澤ひとみの身体を、渡しなさい。」

…抗い難い、魅力があった。
「わ、わかった!!渡す!!渡すから!!」
「・・・・・・。」
梨華は足をどけた。それと同時に男は力を失い、リングに全体重を預ける。
 それを『降参』と取った審判が、カウントを取りはじめた。
 程なくして試合終了の鐘が鳴り響き…梨華は男に背を向ける。
「…待て、石川梨華。」
「・・・・・・。」
「…俺は、約束は守る。『吉澤ひとみ』はお前に渡そう。…だけど、タダでとは言ってねぇ。」
「・・・・・・そう、だったね。」
 男はニヤリと、下品な微笑を浮かべた。

173欲しいもの:2003/10/04(土) 16:28
「いくら欲しいの?」
「金じゃねぇよ。」
「それじゃ、何?」

「お前の、身体だ。」

梨華の眉が、ぴくりと動く。
「…わたしの身体?それは死体?」
「いや、そうじゃねぇ。…お前は動いてる方がキレイだからな。」
「・・・・・・。」
梨華は全てを悟った。
「一晩で良いぜ。」
「・・・・・・。」
 ぐっと、拳を握り締める。
 きっとひとみは『やめろ』と言うだろう。
 そんな事をして手に入れても、喜んだりなんかしないだろう。
 梨華は、意を決したように言い放った。
「わかった。・・・・・・今夜、行くから。」
 ひとみの身体など、梨華は必要ないと思う。
 肉体的な抱擁など必要ない程に、ひとみは梨華を精神的に包んでくれている。
 だけど。
 何か一つでも。
「・・・・・・ひーちゃんに、返してあげたいから。」
 大口を開けて笑う男を見ながら、梨華は呟いた。

174欲しいもの:2003/10/04(土) 16:29
 その直後。

「…あらあら。駄目ですわよ。」

「「!?」」
まず、梨華が。ワンテンポ遅れて男が、そちらを振り向いた。
そこにいたのは、松浦亜弥。
「…あ…んた…!!」
「まったく。『氷の薔薇』ともあろうお方が、自分の身体を安売りとは。信じられません
わね。」
「・・・・・・関係ないでしょ。」
「関係、おおありですわ。」
亜弥が、ぱちんと指を鳴らす。すると亜弥の背後にいた黒服の男たちが、一斉に動き出す。
「!?」
黒服達は、男には目もくれずに梨華を取り押さえた。
「ちょ…!?」
「石川様には、あたくしの邸に来て頂きます。」
「な…!?」
亜弥は扇で口元を隠し、まるで蛇のような目つきで男を見る。
「…邪魔なさると言うのなら…排除致しますわよ?」
「・・・・・・ひぃっ!!」
 男は、逃げた。

175欲しいもの:2003/10/04(土) 16:30
 取り押さえられた梨華は、舌打ちして亜弥をにらみ付ける。
「…まぁ。そんな目で見られるなんて、心外ですわ。せっかく助けて差し上げたのに。」
「助けてくれなんて、一言も言ってない!!」
 亜弥はころころと笑って、扇を閉じた。
 そしてその扇で、梨華の顎に触れる。
「おとなしくなさい。…あなたには、あたくしの家に来て頂くの。」
「誰が行くか…ッ!!」
「いいえ、拒否などできないわ。…もしも拒否などしたら…」
亜弥は、意味ありげに視線を横に流す。

「あなたのお母様がどうなるか。」

「!!」
梨華は、唇を噛む。
 梨華達の他には誰もいなくなったリングに、亜弥の高笑いが響き渡った。

176クロイツ:2003/10/04(土) 16:31


 大変な事になって参りました。
 ひーちゃんは無事だけど梨華ちゃんピンチ!!書いてるクロイツもびっくりだ!!(←オイ)
 いやぁ、なんかもう・・・・・・更新遅くて本当に申し訳ない…(大汗)

>名無し(0´〜`0)様
 うーむ、今回は梨華ちゃんがピンチ!!
 いやぁ、そう言って頂けると、本当に本当に嬉しいです!!ありがとうございます!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>token様
 ありがとうございます!!
 障害ってゆーか、なんだか運命の歯車が狂ってる感じもする今日このごろ…(笑)
 >私らは11月は学祭で講義なんかやってる暇はなかったですYO。(w
 ウチも大学祭11月ですYO!!
 だけど私は参加する気もナッシング!!きっと大学祭期間中は家で寝てます。
 なのでばっちし授業しちゃってるんですYO。
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>名無しいしよしみそっかす様
 はじめまして!!
 け、ケーキ屋さんから!!ありがとうございます〜!!
 いえいえ、そんな大した者じゃないですよ、私は(大汗)
 だけど、嬉しいです。超嬉し過ぎです。そんな風に言って頂けるなんて…!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

177名無し(0´〜`0):2003/10/04(土) 20:12
_| ̄|○
一難去ってまた一難…。
。・゚・(ノД`)・゚・。
続きが楽しみだー

178タロイモ:2003/10/08(水) 02:29
おおー新展開ですね。ここで梨華ちゃんのお母さんが出てくるとは…。
それにしても松浦さんは悪い感じがでてますね。はまり過ぎです。
ミキティがいなくなって制御ができないんでしょうか?
今後のあややの動向に注目しております!

179狂い:2003/10/14(火) 14:31

 『ちょっと用事がある』と言って出かけていた美貴が、帰って来た。
 見知らぬ男を連れて。
「…オイ、藤本。誰だよコイツは。」
「・・・・・・石川さんの、今日の対戦相手です…。」
「…って事は、リングに行ってたの!?」
驚きの顔を見せる真希に、自嘲気味に微笑んで見せてから呟く。
「…亜弥様と話をしようと思って行ったのですが…。」
「お前、死ぬつもりか!?今松浦に顔見せたりしたら…!!」
「もともと、私の一生は亜弥様にお捧げしたものですから。
 ・・・・・・だけど、死ぬわけには行かなくなって、戻って来ました。」
「・・・・・・それが、この男ってワケか?」
「はい。」
 紗耶香は男に向き直り、言った。
「…今日の石川の対戦相手って事は、『吉澤ひとみ』の身体を保管してるヤツだな。」
「・・・・・・まぁな。」
「…この男と交渉してる最中に、石川さんは亜弥様に連れ去られました。」
「「「なっ!?」」」
 ひとみの顔から一気に血の気が引き、ガタガタと震えだした。
「り、梨華ちゃん…。」
「ヨッスィー、しっかりして。」

180狂い:2003/10/14(火) 14:31
「・・・・・・それでお前は、どんな取り引きをしようとしたんだ?」
「お、俺は悪くねぇ!!」
 男の顔も、ひとみに負けず劣らず青かった。
「…あ、あいつが…『氷の薔薇』が取り引きしたいって言い出したんだ!!俺はそれに乗っ
ただけだ!!」
「落ち着けよ。まだ誰もオマエを責めたりしてないだろ。」
 しかし紗耶香の目には、確実に怒りの色が浮かんでいた。
 それは、誰に向けられた怒りなのか。
「…で?吉澤ひとみの身体を渡す代償に…オマエは何を要求した?」
「・・・・・・。」
 口ごもる男の代わりに、美貴が言った。

「・・・・・・石川さんの、身体です。」

「!!!」
「よ、ヨッスィー!!」
「あいつもそれで良いっつったんだ!!俺だけが悪いワケじゃ…!!」
「黙ってろ!!」
 一喝した後、紗耶香はため息を吐く。
「・・・・・・馬鹿か、あいつは…!!!」

181狂い:2003/10/14(火) 14:32

****************************************

 松浦邸に着くなり、梨華は応接室へと連れて行かれた。
「・・・・・・何のつもりよ?」
「何言ってらっしゃるの?お客様を応接室にお連れするのは、至極当然の事ではなくて?」
「わたしがいつ『客』に…!!」
「なったじゃありませんの。現にあなたは、今あたくしの邸にいるわ。」
ばらり、と優雅に扇を開く亜弥。
「…さ、お座りになって。あたくしとお話しましょう。」
「あんたと話す事なんか、何ひとつ…!!」

「あなたのお母様、北海道の病院にいらっしゃるのね。」

 梨華は言葉につまり、黙った。
「お身体を壊されてるのではなく、心が病んでしまっているそうじゃない。
 原因は、旦那様のひどい仕打ちだとか。…あなたのお家も大変だったんですのねぇ。」
「・・・・・・っ!!!」
 梨華の目が見開いた。
 それを見て、亜弥は楽しそうに笑う。

182狂い:2003/10/14(火) 14:32
「ふふふ、驚いた?そうですわよね。本来ならばこの情報、どんな手を使っても手に入れ
られるはずないですものね?
 だけどね、石川様。世の中『口の軽い人種』と言うのは、たぁっくさんいらっしゃるん
ですのよ?」
「…買収したの?あの病院の人間を…!!」
「人聞きの悪い事を。…ただちょっと、お気持ち程度に差し上げただけですわ。」
 亜弥はひとしきり笑った後、どっかりと腰掛けたソファの上で足を組み替えた。
「それじゃ、本題に入りましょうか。」
「…話す事なんか、何もない!!」
「あら、良いのかしら?知りたくないの?」
 立ったままの梨華を、ちらりと見上げる。

「吉澤ひとみ先輩の事を。」

「・・・・・・!!」
「吉澤先輩はね、それはそれは素晴らしい方でしたわ!!
 勉強もスポーツも、全国トップレベルにできましたし…容姿もとてもお美しくて、老若
男女問わず、どんな方にもお優しくて!!
 憧れてる人はたくさんおりましたのよ?無論、あたくしも例外ではなかったのですけど。」

183狂い:2003/10/14(火) 14:32
「・・・・・・わたしには、関係ないわ。」
「あら?どうして?」
 梨華は亜弥をにらみ付ける。
 どうしてだろう。相手は自分よりも年下なのに。相手は座っていて、自分は立っている
のに。相手は箸より重いものを持った事もないような軟弱なお嬢様で、自分は鍛え上げら
れた男よりも遥かに強いストリート・ファイターなのに。
 自分の方が圧倒的に、弱い存在のように思えて仕方がない。
「…わたしが興味があるのは、『ひーちゃん』だもの。
 『吉澤ひとみ』がどんな人間であろうと、わたしには関係ないわ。」
 亜弥はコロコロと笑った。
「おかしな事をおっしゃる方ね。…その『ひーちゃん』を、『吉澤ひとみ』として生き返
らせようとしているのに。」
「!!?」
「…だから、あたくしをあまりナメない方が良いわ。
 わかっているのよ。あなたがあの男から、『吉澤ひとみ』の身体を取り返そうとしてい
る事なんて。」
 狩られる獲物の気分とは、今の梨華のような気分なのだろうか。
 梨華は激しく不愉快だった。

184狂い:2003/10/14(火) 14:33
「…あんた、何がしたいのよ!?」
 声が震えた。足元がふらつきそうになる。
 こんなの、久しぶりだ。
「決まっているでしょう?あたくし、あなたを気に入ったの。」
 亜弥はすくっと立ち上がって、優雅な足取りで梨華に近づく。
「吉澤先輩も美しかったけど、あなたも十分美しい。
 …あたくし、美しいモノが大好きですの。」
「・・・・・・だからッ!?」
「ふふふ…わかっているのに、わからにフリをなさるのね。可愛らしく、そして憎たらし
い事。」
 狂気の微笑みが、梨華の全身に鳥肌を立てる。

「…すべてを手に入れるのよ、あたくしは。その資格が、あたくしにはあるの。」

 逃げなくてはいけない。
 わかっているのに、梨華の足は動かなかった。

185クロイツ:2003/10/14(火) 14:33


 うーむ。梨華ちゃんピンチ…。
 キレてるあややは、なんでこんなに書きやすいのでしょうか…(笑)

>名無し(0´〜`0)様
 本当に、一難去ってまた一難って感じですよねぇ…。
 今回もまた一難やって来てますし…うーむ。書いてて楽しい…(笑)
 ありがとうございます!!がんばります!!

>タロイモ様
 >それにしても松浦さんは悪い感じがでてますね。はまり過ぎです。
 本当に、なんでこんな良い味出るんでしょうか(笑)
 悪役にするとどこまででも突っ走ってくれる子ですよ、まったく。…ありがたい(笑)
 >今後のあややの動向に注目しております!
 見守っててやってくださいませ!!んでもってミキティも(笑)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

186名無し(0´〜`0):2003/10/15(水) 02:40
毎度ながら悪者な松浦さん(w
彼女にも救いがありますように…

187名無し(0´〜`0):2003/10/15(水) 02:41
毎度ながら悪者な松浦さん(w
彼女にも救いがありますように…

188186:2003/10/15(水) 02:41
すいません、二重申し訳…

189名無し(0´〜`0):2003/10/15(水) 17:35
悪アヤε=ε=ε=ε=ヾ( ゚д゚)人( ゚д゚)ノ゙ キター
続きが気になって気になって仕方ありません。
今一番楽しみにしています。
災難続きだけど・・・。

190名無しのいしよし:2003/10/16(木) 12:21
私も今こちらが一番の楽しみです〜
梨華ちゃんのひとみちゃんを想う感じがハマリです。
氷の薔薇の唯一無二の人って所とかも。

191本庄:2003/10/18(土) 14:20
また来ちゃいました♪

てかあやや怖いよあやや…。
なんかケーキ屋さんの時より凄みがあるような…。

梨華ちゃんピーンチっすね!
ファイトよ!ここの梨華ちゃんに敗北という文字は似合わないわ!

続き楽しみにしてるです。

192:2003/10/21(火) 15:12

 ここは、都内某所。人目から逃れるようにひっそりと建っているマンションの一室。
「…死体愛好家の好みそうな場所だな。」
 紗耶香は、『吉澤ひとみ』の身体を保存している男の方を見て言った。
 オートロックを抜けて、部屋の中に入る。
 男のコレクションを前にした真希は、目をぱちくりさせた。
「こ…これ、本当に全部死体なの!?」
 狭い部屋に、所狭しと並んだガラスケース。
 その中には人間の身体とどろっとした液体が満たされている。どろっとした液体は、防
腐剤と特製の保存液を混ぜたものらしい。
 男はそれを『水槽』と呼んでいた。
 その『水槽』の中にある人間の身体は、死体とは思えないものばかりだった。
「…眠ってるみたい。みんな…。」
 心細そうな真希の声を聞きながら、紗耶香はひとつの水槽の前で立ち止まる。
 三歳くらいの女の子の身体だ。
「この子、五年前に行方不明になった子だな。」
「・・・・・・。」
男は気まずそうに、紗耶香から目を逸らす。
「犯人は、お前だったのか?」
「いや…俺じゃない。」

193:2003/10/21(火) 15:12
 紗耶香は片方の眉を吊り上げた。
「じゃあ、何故この子がここにいるんだよ?」
「・・・・・・買ったんだよ。犯人から。」
 生まれつき、少し心臓の弱い子だったらしい。
 誘拐された時のショックで発作を起こし、そのまま死んでしまったそうだ。
 犯人は処分に困り、男に売ったらしい。
「・・・・・・。」
 紗耶香は何も言わずに舌打ちをし、新しい煙草に火を点けた。
「…で?『吉澤ひとみ』はどこなんだ?」
「・・・・・・こっちだ。」
 美貴に縛り上げられた段階で、諦めたらしい。意外と素直に案内をする。
 真希は、さっきから一言も喋らないでいるひとみをちらりと見た。
「…ヨッスィー、こっちだって。」
「う、うん…。」
 最後尾でじっとしていたひとみの手を引いき、合流させる。

194:2003/10/21(火) 15:13
「…ねえ、ごっちん。」
「ん?」

「・・・・・・わからなくなっちゃったよ。人間になりたいのか、なりたくないのか。」

 真希は、つないだ手をぎゅっと握り締める。
「…まだ、その答えを出すには早過ぎるよ。」
「…うん。」
「まずは、『身体』に会って・・・・・・過去とお話してみなきゃ。」
「・・・・・・うん。」
 ひとみはキッと顔を上げた。

195:2003/10/21(火) 15:13

****************************************

 暴れないように身体を縄でぐるぐるに巻かれた梨華は、巨大な液晶画面の前に座らされ
ていた。
「…わたしに、何を見せたいって言うの?」
 すると亜弥は、扇を開いて口元を隠す。
「ふふふ。実はね、あたくしの直属の戦闘員達の、実践訓練なんですけれど…とっても面
白〜いモノが見れそうですのよっ!」
「・・・・・・興味ないんだけど。」
「あらあら。」
 亜弥の目が、笑う。
「…その内、そんな事言ってられなくなりましてよ。」
「・・・・・・?」
「ああ、時間ですわ。…スイッチ、入れてくださいませ。」
 かしこまりました、と言う声と共に、画面に数人の人影が映りだした。
「・・・・・・!!!」
 画面が鮮明になって行くにつれ、梨華の顔色がなくなって行く。

196:2003/10/21(火) 15:14
「ふふふ。ね?面白そうでしょう?
 市井紗耶香博士に、我が家のボディーガードの藤本美貴。それから『G−0923:M
AKI』に…」
 一回区切ってから、ゆっくりと吐き出すように喋る。

「『Y−0412:HITOMI』…ね?面白そうでしょう?」
「ひーちゃん!!」

 泣き出しそうな悲鳴を上げた後、梨華は亜弥をにらみ付ける。
「…ひーちゃんをどうするつもり!?」
「まあまあ、『氷の薔薇』ともあろうお方がみっともない。」
 言葉とは裏腹に、亜弥の口調はまるでそれを待っていたようだ。
「ご安心なさいませ。あたくしが命じたのは『裏切り者・藤本美貴の処分』だけですわ。」
コロコロと笑うその目元は、まったく笑っていなかった。
「…まあ、『そこで他の誰が死んでも、事故として処理するから安心しろ』と、手に者に
は伝えてありますけれど。」

197:2003/10/21(火) 15:14
「!!」
 それは、『他の者も全員始末しろ』と言う意味と同じである。

「…貴様ァァァァァァァァァ!!!!」

 梨華が吼える。
 身体を縄でぐるぐるに縛られ、手はもちろん足にも手錠をかけてあるにも関わらず、亜
弥のボディーガード達は銃を構えた。それ程の殺気だったのだ。
 しかし殺気を向けられた当の亜弥は、何事もなかったかのように笑い声を上げる。
「当たり前でしょう!『Y−0412:HITOMI』など、この世に存在しててはいけ
ませんのよ!!
 その存在は、吉澤先輩の美しき過去を汚すのみ!」
 動けない自分の身体を呪いながら、梨華は亜弥に憎悪の念を向ける。
 常人ならばそれだけで呪い殺されそうなその念。しかし亜弥はそれをものともせずに笑
い飛ばした。
「吉澤先輩は…あたくしの初恋は、美しくなくてはいけませんわ!!
 ですから、『Y−0412:HITOMI』など滅ぶべきですのよ!!
 そんな汚れ切った存在をこの世に残しておける程、あたくしの心は広くないの!!」

198:2003/10/21(火) 15:14
 まるで、歌うように。
「吉澤先輩は、若くして亡くなったからこそ完璧なのですわ!美しいのですわ!!
 だから、絶対に許しません事よ!!」
「勝手な事を言うな!!!」
「あら。あなたがそれをおっしゃるの?」
 亜弥は、慈愛溢れる聖母のように。
 そして、残酷極まりない抜き身の刃のように。

「『Y−0412:HITOMI』の意思も聞かずに、勝手に身体を取り返そうとしたあ
なたが?」

 言葉を、梨華の心に深く突き刺した。

199:2003/10/21(火) 15:15

****************************************

 ひとみは、『吉澤ひとみ』の前に立った。
「・・・・・・これが…あたしの身体・・・・・・?」
 ひとみに、過去の記憶はない。
 紗耶香と真希から詳しい話は聞いたが、まるでそれは物語のようで。
 現実味のない、御伽噺のように聞こえた。
「そうです。…なんて、保存状態が良いんでしょう…。」
 美貴は驚愕のため息を吐いた。
 過去、何回か『吉澤ひとみ』とは言葉を交わした。
 美貴とひとみは同い年だったので、同い年の女の子がボディーガードをしていると言う
のが珍しかったのだろう。
 亜弥の部活が終わるのを待っている間に、よく話しかけられたのだ。
 それを何度、亜弥に羨ましがられたか。
「…そんなに良いのか?」
「はい…。全く変わっていません。『水槽』越しではハッキリとはいえないんですが…吉
澤様の肌の感じまで、まったく変わっていないように見えます…。」
「そっか。それならすぐに手術できるな。」
 紗耶香は男に向き直った。

200:2003/10/21(火) 15:15
「…ってなワケで、貰って行くぞ。」
「・・・・・・かまわねぇよ。」
「なんだ?嫌に素直じゃないか。」
 もう少しゴネるかと思ってた、と言うと、男は目線を逸らしながら言った。
「・・・・・・石川梨華に免じて、な。」
 どうやらこの男、梨華がさらわれた事に少し責任を感じているらしい。
 紗耶香はふっと笑った。
「そっか。・・・・・・でも、あきらめろ。」
「は?」
「石川は、コイツしか眼中にないからな。」
 ひとみを親指で指すと、男は顔を真っ赤に染める。
「ば、馬鹿野郎!!そう言う意味じゃねぇよ!!!俺は…」
「しっ!!静かに!!」
 美貴が叫んだ瞬間、男は気づいた。紗耶香も気付いたらしい。
「・・・・・・まずいな。」
「んあ?い、いちーちゃん?どうしたの?」
 不安気な真希に、紗耶香は言う。

「この部屋、囲まれた。」

 真希の顔が凍りつく。
「な…っ!!なんで!?誰に!?」

201:2003/10/21(火) 15:16
「この感じ・・・・・・松浦家の手の者達です。」
 美貴はそう言ってから、自嘲気味に微笑んだ。
「・・・・・・裏切り者への制裁でしょう。」
「…噂どおり、キッツいんだな。松浦家ってのは。」
 紗耶香は手早く端末を操作し、『水槽』を台座から外した。
「逃げんぞ。」
「・・・・・・。」
「オイ、藤本。何ボーッとしてんだよ。お前、頭の方持て。」
「へ!?」
 驚く美貴に、紗耶香は言う。
「何、意外そうな顔してんだよ。当たり前だろ?私一人でこんな重いモン持てるワケねー
だろ。あ、オマエ。そこの男。胴の部分抱えろ。バランス悪いからな。
 それからオマエ、こんなヤバいコレクションしてるくらいなんだから、秘密の抜け穴く
らい作ってあるんだろ?案内しろ。」
「…わ、わかった。」
 男に指示してから、美貴に向き直る。

202:2003/10/21(火) 15:16
「・・・・・・あのな。オマエが私のどんな噂聞いてんだか知らないが。」
「・・・・・・。」

「少なくとも私は、一晩自分の家に泊めたヤツを見殺しにできる程、神経太くないんだ。」

 ひとみの手を引いた真希に、にっこりと笑いかけられて。
「…ありがとう…ございます…!!!」
 そう言って、美貴は目を潤ませた。

203クロイツ:2003/10/21(火) 15:16


 うーむ。いちーちゃんの男前っぷり炸裂!!
 そして、あややは悪人っぷり炸裂(笑)

>>186名無し(0´〜`0)様
 松浦さん、悪くし過ぎたと反省しております(笑)
 救い…色々と考えておりますので…。
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!
 P.S.お気になさらないでくださいませ♪

>>189名無し(0´〜`0)様
 あやや…本当に、今回更に悪〜くなっておりまする…。
 >今一番楽しみにしています。
 あ、あああああ、あああ、ありがとうございます!!
 う、嬉し過ぎて鼻血噴きそうですッ!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>名無しのいしよし様
 >私も今こちらが一番の楽しみです〜
 ほ、本当ですか!?ぎゃー!!!う、嬉し過ぎるぅぅぅ〜(感涙)
 ありがとうございます!!頑張りますッ!!!

>本庄様
 おおう!こんにちは♪
 >なんかケーキ屋さんの時より凄みがあるような…。
 そうですねぇ…あっちで下地作っちゃったんでパワーアップしまくりとゆーか…(笑)
 悪いあややは書いてて楽しいです(笑)
 さーて梨華ちゃん。どうやって危機から脱するのかっ!!
 がんばります!どうぞよろしくです!!

204名無し(0´〜`0):2003/10/21(火) 21:45
ホントにホントーに
あややを救ってくださいね。

205タロイモ:2003/10/24(金) 19:55
いちーちゃん!よっ男前!
それよりみんな無事に逃げ出せるのか心配です。
梨華ちゃんをいじるあやや…もう最高です。
次回も楽しみにしております。

206名無し(0´〜`0):2003/10/30(木) 17:31
いちいちゃん男前すぎ!!かっこいい!!
ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
続きがはやく読みたいよ〜
ですが、じっくり待ちます。がんばってください

207脱出:2003/11/03(月) 20:29

 美貴を先頭にして脱出を図った面々は、外に出るなり黒服の男達に囲まれた。
「藤本美貴!亜弥様の信頼を裏切った罪は重いぞ!!」
 そう言われて眉を寄せる美貴の前に、真希が躍り出た。
「食らえー!!」
「な!?」
 真希の腕の一部が開き、そこから超小型の銃が出て来た。
 ぱらららら、と言う軽い音と共に銃口から飛び出したのは…睡眠薬を塗った針。
「うわ!」
「うおぉっ!?」
 針に刺された黒服の男たちが、ばたばたと倒れて行く。
「んあ、さすがに利くね〜。いちーちゃんの特別調合の睡眠薬は〜♪」
「ははは。最低でもあと十時間は起きられないはずだぞ。」
 場に似合わない明るい声。
 それを聞いてはっと我に返ったひとみは、自分も戦闘モードに移行する。
 しかし。
「…待て!お前は戦うな!!」
 紗耶香に言われ、ひとみはあわてて安全装置を元に戻した。
「な、なんで!?」
「・・・・・・お前の身体に仕込んであるのは、後藤の武器とは違うんだよ!!後藤のは
護身用だけど、お前のは…殺人用なんだ!!」

208脱出:2003/11/03(月) 20:29
「え・・・・・・!?」
 少なからず、ひとみはショックを受けた。
 梨華からは、『真希と同じ護身用』と言う説明を受けていたから。
「…それだけ石川は、お前の事を心配してたんだよ…。
 だけど私は・・・・・・こんな事くらいでお前に殺しなんてしてもらいたくない。」
 何があっても、ひとみだけでも生き残れるように。
 そう言う注文を受けて、武器を作り直したのだ。
「・・・・・・詳しい話は、後だ。」
 ジリジリと寄って来る、黒服の男達の輪。
 それを意識して、紗耶香は舌打ちをした。
「…クソッ!!慎重に行動してんじゃねぇよッ!!」
「んあ、これじゃー隙を突く事もできないねぇ。」
「あの、私が囮になって…」
「「却下。」」
 真希と紗耶香に同時に却下され、美貴はすごすごと引き下がる。
「・・・・・・さーて。そろそろ時間だな。」
 紗耶香は不適に笑って、時計を見た。

209脱出:2003/11/03(月) 20:29

****************************************

 歯軋りの音が、豪華な室内に響く。
「ふふふ…悔しい?石川様。」
 狂った歌声のようなその声音に、梨華の神経は刺激される。
「そうですわよね。悔しくてたまらないでしょう!!愛しの『Y−0412:HITOM
I』がピンチにさらされているのに…あなたはモニターで見てる事しかできないんですも
のね!!」
 歯軋りが、亜弥の笑い声にかき消された。
 もしも梨華を縛っている縄が、ワイヤーを仕込んである特別製でなければ。
 もしも手足の自由を奪っている手錠が、超強力磁石でくっつけられている物でなければ。
(・・・・・・引き千切れたら、こんな女殺してひーちゃんを助けに行けるのに!!!)
 その眼力だけで、猛獣でも飼いならせそうな迫力を発している梨華。
 しかし亜弥は毛の先程も怯えていない。
「…でも、つまらないわ。あたくしはもっと、劇的なシーンが見たいのに。」
 亜弥は可愛らしく膨れてから、すぐに何かを思い出したようににぱっと笑う。

「そうだわ!ねえ、誰かあの者達に伝えてちょうだい。
 何人死んでも構わないから、一斉に飛び掛れ、って!!」

「!!?」
「そうでもしないと、つまらなくってしょうがないわ。」
梨華の腕が動くが、特別製のロープがそれを阻む。

210脱出:2003/11/03(月) 20:30
「…貴様…!!!」
「その台詞も聞き飽きましたわね。…『Y−0412:HITOMI』が死ねば、もっと
違った台詞が聞けるかしら。」
 ぱちん、と扇を閉じる。
「それは楽しみだわ。…さあ、誰か命じて。」
「・・・・・・待て!!!」
 梨華は、手錠を掛けられた足に力を入れる。
 超強力磁石で止められた手錠は、梨華の左右の手足をぴったりとくっつけている。
「…ッああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 掛け声と共に…その足が、肩幅くらいまで開いた。手も離れる。
「・・・・・・。」
 さすがに亜弥からも笑顔が消える。
「…まぁ。なんて根性。」
「・・・・・・ッ!!!」
 亜弥の周りにいた黒服の男たちが、身構えた。
 梨華は、ものすごい形相で亜弥をにらみ付ける。
「…ひーちゃんに、何かあってみなさい…ッ!!!」
「・・・・・・何かあったら、どうするつもりですの?」

「あんたら全員、皆殺しにしてやる…!!!!」

 ぞわっ。
 多分、生まれて初めてであろう。
 亜弥の背筋に、冷たいモノが走った。
 言い終わってしばらくすると、梨華はどさっと床に倒れる。
「・・・・・・。」
 その目を見て、亜弥はまた背筋が寒くなる。
 それは、本気の目だった。

211脱出:2003/11/03(月) 20:30

****************************************

 紗耶香が時計を見た直後、遠くの方から音が聞こえて来た。
「…これは、車…?」
 美貴のつぶやきに、紗耶香はウィンクを返す。
「そのとーり!…こんな事もあろうかと、援軍を呼んでおいた。」
 驚きを隠せずに、ひとみは音のする方向を見た。
 車が見えた。中型のバンだ。
 続いてナンバープレートを読み取る。
「・・・・・・い、市井さん!!あれって…!!」
 紗耶香はニヤニヤと笑って見せた。

「そう。柴田あゆみの所有してる車だ。」

「んあ♪それならこの人たち、手ぇ出せないね♪」
「え?」
不思議そうなひとみに、美貴が答える。
「…松浦家は、柴田家と親戚関係にあるんですよ。」
「…あ、そっか…。主人の親戚には、手ぇ出せないんだね…。」
 納得するひとみの前に、車が止まった。
 ばしっと助手席の扉が開いて、姿をあらわしたのは。

「いよぉ!!久しぶりやな!!」
「・・・・・・お、お団子頭ぁ!!!?」

 加護亜依だった。

212クロイツ:2003/11/03(月) 20:30


 更新〜。ちょっぴり懐かしい方が出て来ましたね♪
 ごっちんといちーちゃんのコンビ、書いててスゲェ楽しいです(笑)

>>204名無し(0´〜`0)様
 はい。きっと救われるはずです。
 ラストの構想は出来上がってるのですが…うふふ(笑)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>タロイモ様
 今回もいちーちゃん、やってくれてます!!根回し上手です(笑)
 なんかごっとん・いちーちゃんコンビが出ると、場面が明るくなりますね(爆笑)
 つーかひーちゃん、食われてる感が…(大汗)
 ありがとうございます!!がんばります!!

>>206名無し(0´〜`0)様
 今回のいちーちゃんはいかがでしょうか〜?
 そっちかって言うとごっちんの方が活躍してる感じですが(笑)
 ありがとうございます!!がんばります!!

213名無し(0´〜`0):2003/11/06(木) 19:23
あいぼん登場!楽しみになってまいりました
いちいちゃんもいいけど、ごっちんかっこいい!!

214名無し(0´〜`0):2003/11/06(木) 19:23
あいぼん登場!楽しみになってまいりました
いちいちゃんもいいけど、ごっちんかっこいい!!

215名無し(0´〜`0):2003/11/06(木) 19:24
ふかわ…_| ̄|○
スミマセン

216選択肢:2003/11/11(火) 14:41

 扉が、乱暴に開かれる。
「…誰!?」
 そんな風に開けられた事のない扉に、亜弥は驚きと不快が入り混じった表情を見せた。
 それと同時に、黒服の男達の間にも緊張が走る。
 そして更に、そこにいた人物を見つけて…狼狽の空気が漂う。
「お久しぶりね。梨華ちゃん。」
 床の上に転がった梨華に向かって、その人物は柔らかな笑顔を見せた。
 しかしそれも一瞬の事。
「…わたくしが間違っていたわ。」
 亜弥に向かい、彼女は言う。
「あなただったら、梨華ちゃんを任せられると思ったのに。」
「・・・・・・何の、用ですの!?」
「決まってるでしょう?」
 満面の笑顔を浮かべて、しかし揺るぎなく厳しい目で。

「梨華ちゃんを、帰してもらいに来ましたの。」

 背後に金髪の少女を従わせた柴田あゆみは、亜弥に言った。

217選択肢:2003/11/11(火) 14:41

****************************************

 憔悴した梨華を雅恵が抱えるようにして柴田家別邸に運び込んだのは、あゆみが亜弥の
家に乗り込んでから三十分後だった。
「…ごめんなさい。」
 あゆみは、ひとみに向かって頭を下げた。
「・・・・・・え?」
「わたくしの、人選ミスでこんな事になってしまって…。何とお詫びしたら良いかわかり
ませんわ。」
「あゆみお嬢様…。」
 客用のベッドに梨華を寝かせた雅恵は、そのままあゆみの背後にぴったりつく。
 そしてがっくりと肩を落としているあゆみの背に、そっと手を添える。
「…でも、助けてくれたよね。」
「え?」
「ありがとう。助けに来てくれなかったら、あたし達どうなってたかわからないから。」
「・・・・・・ひとみさん…。」
 ひとみはにこっと笑い、ぺこっと頭を下げる。
 そうしてから羽を動かし、梨華のもとへと飛んでいった。
「・・・・・・梨華ちゃん。」
 意識のない梨華を、覗き込む。
 布団から少し出ている手首には、手錠の跡が残っていた。

218選択肢:2003/11/11(火) 14:42
「・・・・・・。」
 痛い。
 胸が掴まれたような気分だ。
(リングの中で受けた傷よりも、数倍軽いのに。)
 ただの、跡。
 一晩経てばもう自然に消えているであろう、ただの跡。
 しかし、それがひとみにはすごく痛く感じた。
「・・・・・・。」
 少しでも和らぐように、と。
 ひとみはその跡に、ちゅっとキスをする。
 前に言っていたから。
『ひーちゃんにキスしてもらうと、痛みが消えるから。』
 すごく嬉しかった。それからは毎日のように、ほっぺやおでこにキスをしている。
 少しでも、梨華の心の傷が癒えるように、と。願いを込めて。
「梨華ちゃん…。」
 泣き出しそうな声でひとみが呼ぶと、梨華のまぶたが動いた。

219選択肢:2003/11/11(火) 14:42

****************************************

 「・・・・・・まぁ、これからどうするかってのが一番の問題だな。」
新しいタバコに火を点けて、紗耶香は言う。
「もー、いちーちゃん吸い過ぎだよ。」
「カテぇ事言うなって。・・・・・・実際、吸わなきゃやってらんないんだからさ。」
 しかしこの場にいる喫煙者は紗耶香だけだ。
 誰にも同意してもらえず(しかも雅恵には『あゆみ様の方に煙が来ない様、気をつけて
くださいね』などと言われた)、紗耶香は軽く舌打ちをする。
「…で?石川。」
「・・・・・・はい。」
目を覚ましたばかりの梨華に、紗耶香は言った。
「オマエ、本当にどーしたいのよ?」
 ひとみは、ちらりと梨華を盗み見る。
 その視線を感じ、梨華は苦笑した。

「…わたしは、変わりません。ひーちゃんを人間の身体に戻したい。」

「梨華ちゃん!?」
 ひとみは羽をはばたかせ、梨華の顔の前に飛び出す。
「あたしは…あたしはこのままで良いんだよ!?」

220選択肢:2003/11/11(火) 14:42
「・・・・・・でも…。」
「梨華ちゃんの傍にいられれば、あたしは本当にそれで良い!!」
「・・・・・・ひーちゃん…。」
 梨華は微笑んで、目を閉じる。
 ひとみは梨華の胸に飛び込んだ。
「・・・・・・わたしも、ひーちゃんに傍にいてほしい。」
「だったら、人間の身体なんて…!!」
「だけどね。」
 ひとみの言葉を遮って、梨華は言った。
「ひーちゃんに人間になって欲しい。」
「・・・・・・!!!」
「あまりにも不当に奪われた残りの人生を、生きて欲しい。」
「〜〜〜〜〜〜!!!」
 目から大粒の涙を流し始めたひとみを、梨華はやさしく抱きしめた。
「…しかし、石川。」
「はい?」
紗耶香は言いにくそうに、頭をかく。
「…最初に説明したよな?」
「・・・・・・はい。」
「何を…?」
 あゆみに問われ、紗耶香は口を開く。

「・・・・・・人間に戻ったら…ロボットだった時の記憶は、全部忘れる。」

『!!!!!?』
梨華と紗耶香以外の全員の間に、驚愕が走った。

221選択肢:2003/11/11(火) 14:43
「な、何や、それ…!!?」
 今までずっと黙っていた亜依が、立ち上がって叫ぶ。
「なんでやねん!!なんでそんな…!!!」
「仕方ないんだ…。」
 亜依の肩に、真希が座った。
「・・・・・・やっぱり、ね。」
「な…っ!?」
驚く亜依に、真希は言う。
「んあ。ごとーね、うっすらわかってた。」
「・・・・・・。」
「だって、脳に直結してない『魂の記憶』だもん。
 魂が元の身体に戻って、脳が働き出したら…忘れちゃう。」
 機械の身体を見て、手を握ったり開いたりしながら。
 真希は言った。
「・・・・・・ヨッスィーだって、なんとなくわかるでしょ?」
 ひとみは衝撃のあまり、言葉が発せなくなっていた。
「・・・・・・今すぐ、決めなくても良い。」
「・・・・・・。」
「よーく、話し合っとけ。」
 それを合図に、全員が席を立つ。
 紗耶香を先頭に、一人ずつ部屋を出て行った。
 一番最後になった美貴は、梨華にぽつりと言った。
「・・・・・・私ごときが、口を挟める問題じゃありませんが…。」
「え?」
「ひとみ様のお気持ちを、大切になさってくださいね。」
 二人きりになった部屋に、沈黙が落ちた。

222クロイツ:2003/11/11(火) 14:43


 うーむ。だんだん最終回に近づきつつあります。
 てゆーか最終回の構想、完璧に練りあがりました。
 …ちょっと寂しい感じ…。
 そして本日、歌舞伎見に行って来ます!!!

>名無し(0´〜`0)様
 お気になさらないでくださいませ☆
 つーかあいぼん、せっかく出て来たのに活躍場面あんまりかけなくてごめんなさい(大汗)
 ごっちんかっこいいですか♪よかった〜♪
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

223チップ:2003/11/11(火) 16:21
帰ってキタ━━━(゚∀゚ )━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━━━!!!!

最終回が近いのですか、ワクワクな反面私も寂しいです。
ひーちゃん人間になって欲しいけど、それも寂しいような(爆
最後まで頑張ってください、楽しみにしてます☆カブキイテラシャーイ( ^▽^)シ

224フェンリル:2003/11/11(火) 21:59
更新お疲れ様です。
ずっとROMっていましたがややレスが落ち着いたようなので書き込みをw

いよいよ最終回が近づいて来たんですね。寂しい気もしますが・・
それにしてもいいペースで更新されてますね。
私は仕事のせいもあってROMるのが精一杯ですが応援してますので。
次回楽しみにしてますね。

P.S 歌舞伎見物ですか・・中々渋い趣味ですねw

225『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:14

 嘘じゃない。この気持ちだけは、本物。
「…はぁ、はぁ、はぁ…。」
 美貴は乱れた息を整える為、足を止めて壁に手をついた。
「・・・・・・はぁ。」
 鍛え上げられた身体は、すぐに普段のコンディションを取り戻す。
 背筋を伸ばす。…だけど、どうしても丸まってしまう背中。
 それはきっと、怖いから。
「亜弥様…。」
 もう、十何年も昔に心に決めた決意が心を埋め尽くす。
『みきたん、はい!これ、あげる!!だから、げんきだして!!』
 両親を亡くした美貴に、涙にゆがんだ笑顔で一輪の花を差し出した幼い少女。
 一生、護ると決めた。その為だけに強くなった。
「・・・・・・。」
 ぐっと拳を握る。
(…覚悟は、決めた。)
 あの二人を見て、決めたのだ。
「…誓ったはず。あたしは一生、亜弥様を護ると。」
 『護る』と言う言葉の意味を理解し切れてなかった。
 だけど、今は・・・・・・。
 美貴は、インターホンを押した。
 そして叫ぶ。

「藤本美貴です。…亜弥様の下に、戻って参りました。」

 『松浦』と書いてある表札を見上げ、美貴は微笑む。
 ここが墓場になってもかまわない、と。

226『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:15

****************************************

 「よくもまぁ、顔を見せられたものですわね。」
 亜弥の顔は、冷たく笑っていた。
「あたくしを、裏切ったくせに。」
「・・・・・・反論の余地もございません。」
 拘束具は一切つけられていない。
 その代わり、無数の銃口が頭部に突きつけられている。
「それで?何故戻って来ようなんて思ったのかしら?」
「それはもちろん。」
 迷いを捨てた者の持つ、まっすぐで穏やかで真剣な瞳に射られて。
 亜弥は身体が動かなくなりそうになった。
「・・・・・・もちろん?」

「あなたに、会う為に。」

「!!」
 ぱしん、と軽い音が響いた。
 亜弥の平手が美貴の頬を引っ叩いたのだ。
「…この後に及んで、戯言を…!!」
「戯言ではありません。…真実、そう思ったから戻って来たのです。」
「黙りなさい!!」
 亜弥の表情に焦りが混ざる度、美貴の笑顔の穏やかさが増す。
「・・・・・・本当です。」
「っ!!」
「本当にただ、会いたかっただけなんです。…あなたに。」
「!!!」
 二度目の平手打ちで、美貴は唇の端を切った。

227『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:15
 たらりと赤い血が、流れ落ちる。
「…嘘よ!!裏切ったくせに!!あたくしを置いて逃げたくせに!!」
「申し訳ございませんでした。」
 九十度に頭を下げ、美貴は言う。
「…言い訳は、いたしません。ただただ、申し訳なく思っております。」
「・・・・・・ッ!!あなたは、どこまであたくしを馬鹿にするの!!?」
「しておりません。」
「してるわ!!あのまま柴田家の敷地にいれば安全だったのに!!わざわざ戻って来るな
んて…馬鹿にしている証拠ですわ!!あたくしがあなたを殺せないと、高をくくっている
のでしょう!!?」
「いいえ。」
 美貴は顔を上げ、穏やかだが決意を込めた厳しい視線で言う。
「あなたは、私を殺すでしょう。」
「・・・・・・!!?」
「あやたん。」
「!!!!」
 美貴の突然の呼びかけに、亜弥はふらりとよろけた。
「・・・・・・。」
 無数の銃口を無視するように、美貴は数歩前に出る。
 そして、強く亜弥を抱きしめた。

228『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:15
「ちょ…!?何を!!?」
 亜弥を抱きしめていれば、ボディーガードの連中も発砲できないとか…そんな事は、美
貴は一切頭になかった。
 ただただ、抱きしめたかったのだ。
「あやたん…。」
「・・・・・・ッ!!!」

「…あやたんにだったら、殺されても良い。」

「…やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 サイレンのようにけたたましい叫び声を上げ、亜弥は意識を失った。
「・・・・・・愛してるんだよ。あやたんを…。」
 ぐったりとした身体を抱き上げて、ボディーガード達に言った。
「…亜弥様の部屋に運びます。」
 その口調が、その姿が、あまりにも気高く美しかったから。
 ボディーガード達は、誰も動けなくなった。

229『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:16

****************************************

 亜弥は、髪を撫でられる感触で目を覚ました。
「・・・・・・。」
 覚えのある感触。
 こんな事を許したのは、世界でただ一人。
 実の母親にすら、髪を触る事など許さなかった。
「・・・・・・みきたん…!!!」
 現実に戻らされた。苦笑している美貴の顔が見える。
「…ごめんね、あやたん。」
「・・・・・・。」
「あたしね、間違ってたんだ。ずっとずっと…ずぅぅぅぅっと。」
 亜弥の髪を一房持ち上げ、それに優しく口付ける。
「何、を・・・・・・?」
「あたしは、あやたんを護りたかった。」
 その一本一本までをも愛しむように。
 美貴はさらりと純白のシーツに、髪を落とす。
「だけど、とある人達に出会ってわかった。…あたし、間違えてたんだよ。」
「わけ…わからないッ!!」
 涙が溢れる。
 憎くて憎くて仕方ない相手。裏切られた事が許せなくて。
 次に会ったら絶対に、この手で殺してやると心に誓った相手。
 その相手が愛しくて、目の前にいるのが嬉しくて。
 それで、涙が止まらない。

230『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:16
「あやたん…。」
 自分が抱いている気持ちが、どんなものなのかわからない。
 いや、身体が拒否している。
 もしもわかってしまったら。
 …きっと自分は、もう手放せないだろうから。
「・・・・・・あたくしは、執着なんてしたくない。」
「え…?」
「何にも、寄りかかりたくない。一人で立つの。
 自分以外のモノは、『利用』するだけ。『頼る』なんて絶対にしたくない!!」
「…あやたん…。」
 これ以上側にいたら、危険だ。
 身体の隅から隅まで、拒絶している。

「・・・・・・出て行きなさい。二度とあたくしの前に、姿を見せないで…!!!!!」

 それが、一番良い方法。
 危機回避の本能。
 美貴が側にいたら、絶対に自分は駄目になる。
 自分は、自分が一番嫌いな人種の人間になってしまう。
『…あなたしかいないの!!お願い、捨てないで!!!』
 そう、大嫌いなあの女のように。

231『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:17

****************************************

 亜弥の精神状態が異常なのは、見るだけでわかった。
 だから距離を置いた方が良いと、美貴は判断したのだ。
「…また、来れば良い。何度でも話に通えば良い。」
 美貴はそう呟いて、松浦家の敷地から出ようとした。
 この門から敷地内に入った時は、死ぬ覚悟だった。
 だけど、生きて出ようとしている。
「・・・・・・変なの。」
 もしかしたら、『生きる』と言うのはそう言う事なのかも知れないな。
 美貴がそう考えた、その直後。

「…火事だ─────────────────────────────!!!!!!」

 そんな叫び声を聞いた。
「!!?」
 信じられない思いで振り返って、松浦邸を見上げる。
 窓の内側が、真っ赤に染まっていた。しかもあれは、亜弥の寝室のある階だ。
「・・・・・・!!!!」
 美貴は、自分の過ちに気付いた。
 何と言われても、亜弥の側を離れるべきではなかったのだ。
「…あやたん!!!!」
 邸の中に駆け戻ろうとして、腕をつかまれた。
「なっ!?」
「待て、藤本!!」
 美貴を止めたのは、元ファイターの男。
 以前、美貴の上司だった男だ。

232『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:17
「なんで止めるんですか!?行かせてください!!あやたんが!!」
「・・・・・・駄目だ!!もう、終わりなんだよ…松浦家は。」
「な…!?」

「火を放ったのは、亜弥様自身だ。」

「・・・・・・!!!!」
「だから、待て!!」
 渾身の力を込めて、男は美貴の腕をつかむ。
「…もう、駄目なんだよ!!」
「何が駄目なんですか!!?」
「…亜弥様は・・・・・・もう、回復の見込みがない!!知っているだろう!!亜弥様は
あきらかに異常になられてしまったんだ!!」
 美貴は、男の腕を振り切った。
「お、おい!!」
「異常か正常かなんて、関係ない!!」
 美貴は、泣きたいけど泣けない…そんな顔で男をにらみつけていた。

「…ただ、あたしは・・・・・・あやたんの笑顔が、もう一回見たいだけなんだ…!!」

 一輪の花を差し出してくれた少女。
 その子を『護る』と誓った。
 …きっとそれが、美貴の一番正しい答え。
「…もう、間違えないよ。あたし…。」
 美貴は、燃え盛る炎の中へと駆けて行った。

233『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:18

****************************************

 「…Piacer d'amor piu che un di sol non dura;…」
 炎が巻き起こす轟音の中、亜弥は消え入りそうな声で歌っていた。
 教えてくれたのは、母だった。
 しかし、直接歌って聞かせてくれたのではない。
 いつもいつも、愛人のもとへ通う父の背中を見ながら、ぽつりぽつりと歌っていたのを
聞いていた。
「…martir d'amor tutta la vita dura.…」
 その歌声が、寂しそうで悲しそうで。
 亜弥は、そんな母親が大嫌いだったのだ。
「Tutto scordai per lei,per Silvia infida;…」
 息が苦しい。熱い。
 だけど、それすらも心地よく思える。
 これで自由になれるのだと思うと、自然と笑みが浮かんで来る。
「ella or mi scorda e ad altro amor s'affida.…」
 泣きたいのは、何故だろう。
 何も思い残す事はないはずだ。

234『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:18
 計画はすべて失敗した。
 柴田家に邪魔されたのは癪に障るが、しかしそれも良かったと思える。

 それに、最後に美貴に会えた。

「…Piacer d'amor…」
 死の直前くらい、素直になろう。
「piu che un di sol non dura;…」
 大好きだった。不器用な程、真摯に自分と向き合ってくれる彼女が。
「…martir d'amor tutta la vita…」
 愛しかった。彼女の全てが。
「…dura.…」

「あやたん!!!」

 歌声と、重なった。
 幻聴かと思った。
 炎の向こう側から、見えた人影。
「・・・・・・馬鹿ね。」
 どうして涙が溢れるのだろうか?

235『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:18

****************************************

 亜弥を抱き起こし、美貴は叫ぶ。
「何でこんな馬鹿な事を!!」
「・・・・・・。」
「ほら、立って!!逃げるよ!!」
「・・・・・・。」
 亜弥は、美貴に薄く笑って見せた。
「…なんで、来たの…?」
「来ないワケないでしょ!!?」
 美貴の怒った顔。
 くすぐったくて、笑いがこみ上げて来る。
「・・・・・・あたくしの事なら、放っておいて。」
 疲れたように、ため息をつきながら。
「…あたくしは、もう良いの。もう・・・・・・全てを終わらせたいから。」
 ぱしん。
 右頬に、軽い衝撃。
「・・・・・・?」
 一瞬、何が起こったのかわからずに…亜弥がきょとんとすると。

「勝手な事言うな!!!!」

 ぼろぼろに涙を流した美貴が、叫んだ。
「ここまで好き勝手しといて、逃げるつもり!?そんなの絶対許されないんだからね!!」
「・・・・・・。」

236『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:19
「…あやたんには、まだ仕事が残ってる。」
「・・・・・・え…?」
 美貴は、亜弥を背負って立ち上がる。
「ちょ、ちょっと・・・・・・!?」
「…謝らなきゃいけないんだよ。みんなに。」
「・・・・・・。」
 美貴の背中のぬくもりを感じて…唐突に亜弥は思った。
「…あたくし・・・・・・まだ、死んじゃいけないのね…?」
「あたりまえだ!!」
 炎を避けて、美貴は進む。
「…おろして、みきたん。」
「なっ!?まだ死にたいとか…」

「自分で、歩けるから。」

 美貴は亜弥の目を見た。
 そしてにこっと笑って見せる。
「「・・・・・・おかえり。」」
 どちらからともなく、二人は手を重ね合った。

237クロイツ:2003/11/19(水) 01:19


 あやみきオンリーです。
 …なんだか長くなりましたね、今回(大汗)
 ちなみにあややが今回歌ってるのは『Piacer d'amor(愛の歓びは)』と言う題名のイタリア歌曲です。
 クロイツの母が、『あんたが今までで歌った曲の中で、一番好き』と言う曲です。
 歌詞対比は以下の通り。

Piacer d'amor piu che un di sol non dura;
愛の喜びは一日しか続かないのに
martir d'amor tutta la vita dura.
愛の苦しみは一生涯続く。
Tutto scordai per lei,per Silvia infida;
私はあの不実なシルヴィアのために全てを忘れたのに
ella or mi scorda e ad altro amor s'affida.
彼女は今私を忘れ、ほかの愛に身を委ねている。

 フラれ男の歌ですね。続きもありますので、興味のございます方はどうぞCD等でお聞きくださいませ。
 良い曲ですよ〜♪

>チップ様
 急展開ですみません(大汗)
 >ひーちゃん人間になって欲しいけど、それも寂しいような(爆
 そのあたりは多分、次回で決定するかと…。
 ありがとうございます!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!!

>フェンリル様
 おお!お久しぶりです!!
 ありがとうございます♪良いペース、ですかね(大汗)もっときちんと更新したいくらいで…(大汗)
 歌舞伎、楽しかったですYO♪
 お仕事がんばってくださいませ!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

238チップ:2003/11/21(金) 22:49
読みながら何度も「あやたん!!」と叫んでしまいました(爆
やっぱり笑顔が1番ですよね(何
ひーちゃん次回決定ですか、楽しみです。

239名無し(0´〜`0):2003/11/23(日) 14:59
。・゚・(ノД`)・゚・。
あやみきサイコーーーーーーーーー!!
間に合ってよかったよ

240名無し(0´〜`0):2003/12/11(木) 22:05
作者さんが心配…

241選択:2003/12/12(金) 14:15

 長い沈黙の後、ひとみが口を開いた。
 ぽつりぽつり、まるでかみ締めるように。
「…初めて会ったのは、市井さんの研究室だったよね。」
「うん。」
 梨華の声の響きは、穏やかで優しい。
「…第一印象は、最悪だったよ。」
「だろうね。」
「梨華ちゃん、いきなり『こんなちっちゃいのにわたしのパートナーが務まるはずない』
とか言うしさ。」
 くす、と梨華の笑い声が聞こえた。
「そうだったね。…だってあの頃はわからなかったんだもん。人の能力なんて、外見だけ
じゃ図れないなんて事。」
「でもさぁ、ちょっとはわかっても良かったんじゃない?」
 羽をくるりと動かして、ひとみは梨華の顔の前で止まる。
「自分だって、そんな華奢な身体で『ストリート・ファイト最強』とか言われてるんだか
らさ。」
「…もしかしたらあの当時のわたし、コンプレックス強かったのかな?」
「そうかもよ。意外と。」
 目を合わせて、くすくす笑い合う。

242選択:2003/12/12(金) 14:16
 そうしている内に、ひとみの顔が『泣き笑い』になる。
「・・・・・・あれから、思い出たくさん作ったよね。」
「…うん。」
「・・・・・・。」
 大きな瞳から、ぼろぼろと大粒の涙がこぼれ始めた。
「…嫌だよ。」
「…ひーちゃん。」
「それが全部消えちゃうなんて、絶対嫌だ。」
 目には涙。それから、絶望の光。
「ねえ、駄目なの!?このままずっと、一緒にいちゃ駄目!?」
「・・・・・・。」
「梨華ちゃんは、良いんだ!!あたしが忘れちゃっても…この思い出が全部消えちゃって、
あたしが梨華ちゃんじゃない人と人生歩き始めても、それで良いんだ!!」
「ひーちゃん。」
 そっと頬に、梨華の指が触れる。
 ひとみはびくっと身体を強張らせた。
「…ねえ、ひーちゃん。」
「・・・・・・?」
「…わたしはひーちゃんを、愛してる。」
「・・・・・・!!!」
 顔に、身体中の熱がのぼった気がした。

243選択:2003/12/12(金) 14:16
「きっと、もう現れない。もう二度と、ひーちゃんを想うのと同じ位愛情を抱ける相手な
んて現れない。…断言するよ。ひーちゃんこそ、わたしがこの人生の中で唯一愛せる存在。」
「それなら…!!」
「だけどね。」
 梨華の笑顔は、透明に見えた。
「…だからこそ、わたしとの思い出を全部忘れちゃっても…それでも、人間に戻って欲し
い。幸せなお嬢様に、戻って欲しい。」
「なんでだよ!!」
「・・・・・・。」
 梨華は、ひとみを胸に抱きしめた。
「…わたしは、ひーちゃんと一緒にいる事が一番の幸せだけど、ひーちゃんは違う。」
「・・・・・・っ!!」
「それが、わかるから。…このまま一緒にいたら、わたしもひーちゃんも苦しくなっちゃ
う。」
「…なんでだよ!!梨華ちゃん、何勝手に決めてんだよ!!!あたしだって、梨華ちゃん
と一緒にいるのが一番…!!!」

244選択:2003/12/12(金) 14:16
「・・・・・・ねえ、お願い。わたしの我侭、聞いて?」
「っ!!!」

「人間に戻って、幸せになって。
 それがわたしの、人生最大の我侭だから。」

 ひとみは、意識が急速に遠のくのを感じた。
 今更のように、外から何かの信号が送られて来たのを感じ取る。
 梨華の手元を見ると…小さなリモコン。
「…強制…終了…!?」
「・・・・・・。」
「ひ…卑怯…だよ、梨華ちゃ…っ!!」
「・・・・・・。」
「あたしは…あた…し…」
 カクン、とひとみの身体から力が抜けた。
「・・・・・・。」
 ぽつり、ぽつりと…ひとみの服が濡れる。
「・・・・・・。」
 声も出さずに、梨華はしばらく泣き続けた。

245選択:2003/12/12(金) 14:17

****************************************

 「ただいま帰りました。」
 美貴の声に、その場にいた全員が顔を上げた。
「オイお前!!また勝手に出て行って…!!!?」
 紗耶香は文句を言いかけたが、美貴の隣にいる人物を見て絶句した。
「…松浦亜弥!?」
 亜依が全員をかばうように前に出る。
「藤本さん!!どう言うつもりやねん!!」
 美貴は亜弥を気遣うように見るが、亜弥はそんな美貴を制して一歩前に出る。
 そして…

 ぺこりと、頭を下げた。

「「「「「!?」」」」」
 その場にいた全員が、目を疑う。
「お騒がせして、本当に申し訳ありませんでした。」
「…あ、亜弥ちゃんが…謝ってる…!!」
 親戚として付き合いの長いあゆみでさえも、驚きの声を漏らす。

246選択:2003/12/12(金) 14:17
「…精神的に追い詰められ過ぎていて、周囲が見えなくなっていたとは言え…許されない
事をしました。本当にごめんなさい。」
「…謝る相手が、ちゃうやろ。」
「いえ、皆様にも謝らなくてはなりませんわ。」
 そんな亜弥の背中を見ながら、美貴は喜びをかみしめていた。
(…あたしの大好きな、あやたんだ…!!)
「あー!!わかった!わかったよ!!」
 紗耶香は大きな溜息を吐いてから言った。
「…ったく、藤本。そんな嬉しそうにニヤニヤしてんじゃねぇっての。私ん所に来てから、
切羽詰ったよーな顔しか見せなかったクセに…。」
「あはっ!良かったじゃん、藤本さんが元気になって。いちーちゃん心配してたもんね〜♪」
「うるさいぞ後藤!!…それよりも。」

247選択:2003/12/12(金) 14:18
 紗耶香は奥の部屋に続く扉をちらりと見た。
「…お前が本当に謝らなきゃいけない相手は今、取り込み中だぞ。」
「待たせて頂きますわ。」
 固い決意を宿した瞳で亜弥が言うと、あゆみも溜息を吐く。
「…それじゃ、待ってる間にお風呂にでも入ってらして。なんだか二人とも焦げ臭いわ。」
 その言葉で、雅恵が動き出す。
「…焦げ臭いって。自分ら、どっから来たん?」
 亜弥と美貴は顔を見合わせてから、声を揃えて言った。

「「火の海?」」

「・・・・・・なんでやねん。」
 うんざりした亜依の声が、和らいだ空気に溶けた。

248選択:2003/12/12(金) 14:18

****************************************

 静かに泣き続ける梨華の背中を、紗耶香がぽんっと叩いた。
「・・・・・・使ったのか。そのリモコン。」
 梨華はこくりと頷く。
「…って事は、ソイツは人間に戻るのを拒否したって事だよな?」
 次は、ちょっと間を置いてから…こくり。
 紗耶香は、バリバリと頭をかく。
「・・・・・・っあ〜〜〜〜〜〜!!!」
 そしてタバコに火をつけると…一口吸って、すぐに灰皿に押し付けた。

「…お前、本当にソレで良いのか!?」

 梨華は涙が際限なく流れ続ける頬を、意識のないひとみの身体にくっつけた。
「…良いんです。」
「・・・・・・だけど!!」
「幸せ、でした。出会ってから今日まで。…こんな幸せ、一生縁がないと思ってた。」
「それなら何故、自分でその幸せ壊そうとしてんだよ!!」

249選択:2003/12/12(金) 14:18
 紗耶香の目には、どうしようもない悲しみが浮かんでいた。
「このままずっと一緒にいる事だって可能なのに、なんで自らそれを…!!!」
「・・・・・・駄目なんです。」
 梨華は、かすかに笑う。
「…このまま一緒にいたら、わたしはひーちゃんから片時も離れられなくなってしまうか
ら。このままじゃひーちゃんは、わたしの幸せの犠牲になっちゃうから。」
「・・・・・・。」
 紗耶香は、そっと目を閉じて…ドアへと向かう。
「・・・・・・手術は、明日の夕方から始める。」
 それだけ言い残して、部屋を去って行った。
 梨華は一晩、そのまま泣き続けた。

250クロイツ:2003/12/12(金) 14:19


 …長らく更新しなくてごめんなさい(汗)ちょっと体調崩してまして…。
 ストレス性胃炎なんですけどね。…まだ治ってないんですが(大汗)
 本当にごめんなさいね〜(泣)…てゆーか放置し過ぎで、もう読んで下さる方がいなく
なっちゃってたらどうしよう…(号泣)


>チップ様
 あやたん、火の海の中で我に返るの巻でした(笑)
 >やっぱり笑顔が1番ですよね(何
 本当に。笑顔が一番です。
 …とか言いながら今回みんな泣きっぱなしな感じですが(汗)
 ありがとうございます!!がんばります!!

>>239名無し(0´〜`0)様
 あやみき、書いてて楽しかったです。
 長さ的にも、短編書いてるような気分で書けました♪
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>>240名無し(0´〜`0)様
 ありがとうございますぅ〜(泣)そしてごめんなさい(大汗)
 ちょっと良くなって来てるんで、ちょっとずつ更新始めようと思います。
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

251オレンヂ:2003/12/12(金) 17:50
更新お疲れ様です。
はじめてレスさせていただきます。
クロイツさんの作品が大好きでもずっと読ませてもらってます。
涙が出てきてこのあとどうなっていくんだろって思ってドキドキ…
気長に待ってますので、まずは体を大切にしてください。

252240:2003/12/12(金) 21:28
体調の悪い時は無理しないで下さいね。
それが胃痛の原因になりそう…
いつまでも待ちますので、ゆっくりマターリ。。。

253フェンリル:2003/12/12(金) 21:58
こまめにチェックしててよかったw。
約1ヶ月ぶりの更新お疲れ様です。
体調未だ戻ってないんですね・・・心配です。
くれぐれも無理をなさいませんように。
私もストレスで胃潰瘍寸前までなった事があるので辛さは良く分かります。

>>放置し過ぎで、もう読んで下さる方がいなく
なっちゃってたらどうしよう…(号泣)

大丈夫ですよwまたーりと待っていますので先ずは療養を。では

254匿名匿名希望:2003/12/13(土) 00:17
更新お疲れ様です。
無理せずにゆっくりと身体直して下さいね。
私も皆様と同じようにマターリと待っています。

255名無し(0´〜`0):2003/12/17(水) 19:56
読んでますよーーーーーーーー!!
楽しみに待っていました!!
きっちり療養してがんばってください!!

256絶望:2003/12/17(水) 21:10

 手術室の前に、一組の夫婦がいた。
 彼らは紗耶香に向かって頭を下げる。
「私達の娘を、よろしくお願いします。」
 夫が言った。妻の方は、泣いてしまっていて…言葉を発せない状態である。
「…そんなに期待しない方が良いぞ。」
 紗耶香は冷たく言い放つ。
 見るからに高級だとわかるスーツを身に着け、意識しなくても銘柄を言い当てられる香
水の香りがするこの夫婦。そう言う人種が、紗耶香は昔から嫌いだった。
「成功するとは限らないからな。」
「もう、いちーちゃん!!…ごめんなさい、いちーちゃ…先生は誰に対しても無愛想で…。」
 フォローに回る真希に、夫はやわらかく微笑んで見せる。
「いいえ、私達なら大丈夫です。」
「でも…」
「先生にそう言って頂いた方が…私達としても気が楽ですから。」
「?」
 不安そうな表情の真希に、夫は言う。
「…昨夜、ご連絡を頂いた時・・・・・・正直、あなた達は私達を騙すつもりなのだと思っ
ていました。」

257絶望:2003/12/17(水) 21:11
「賢明な判断だ。頭から信用する方が間違ってる。」
 夫は、紗耶香に向けて温和な笑顔を見せた。
 その笑顔が、手術室のベッドの上で眠っている少女の微笑と重なる。
「…だけど、私達はここに来ました。」
「・・・・・・。」
「それが、どんな意味か…わかりますか?先生。」
「・・・・・・サッパリわからないな。」
 夫は妻の肩を抱いた。

「騙されても、夢でも良いんです。
 娘が生き返ると言う話に、乗らないわけには行かないんですよ。私達は。」

 妻がこくこくと何度も頷くのを見て。
 紗耶香も真希も、ひとみが生前どれだけ愛されていたのかを知った。
「・・・・・・。」
「…いちーちゃん…。」
 不安気な真希の髪に、そっと触れて。
「…終了予定時刻は、明日の朝だ。」
「はい。ここで、二人で待たせて頂きます。」
 紗耶香はその言葉を聞いてから、何も言わずに手術室へと入って行った。

258絶望:2003/12/17(水) 21:12
(…石川の馬鹿が…!!!)
 人間に戻ったひとみが、梨華を思い出す確率は…限りなくゼロに近い。
 しかもあんなに愛情豊かな夫婦のもとに戻るのなら、絶対に思い出す事はないだろう。
『ひーちゃんに、幸せになって欲しいから。』
 梨華の望みは叶えられるだろう。
 しかし、梨華の幸せは?
 ひとみの望みは?
「・・・・・・チッ!!」
 手術室の扉が閉まり、ベッドの上に横になった『Y−0412:HITOMI』と吉澤
ひとみの身体を見る。
「…ごめんな。」
 その呟きは、誰に向かって発せられたものなのか。
 それは、紗耶香自身にもわからなかった。

259絶望:2003/12/17(水) 21:12

****************************************

 ばし、っと平手打ちが飛んだ。
「…バ…ッカじゃありませんの!?あなた!!!」
 梨華は、叩かれた勢いに任せて顔ごと右下を向いていた。左頬が赤い。しかしその表情
は、見事なまでに感情がなかった。
 叩いた方の亜弥の方が、よっぽど痛そうな顔をしていた。
「あ、あやたん!駄目だよ、謝るつもりでここに来たんでしょ!?」
「それとこれとは別問題ですわ!!」
 亜弥は涙の浮かんだ目で、梨華をにらみ付ける。
「独りよがりも良い所ですわよ!!何が『ひーちゃんの幸せの為』ですの!!?『吉澤ひ
とみ』に戻って、彼女が幸せになれると…誰が決めたんですの!!?」
「・・・・・・。」
「彼女は、あなたと一緒に歩く人生を望んでいたのでしょう!!?それを…!!」
「・・・・・・全て、あなたの言う通りだよ。」
 梨華は痛いくらいの無表情のまま、唇だけを動かすようにして喋った。
「…そうだね。ひーちゃんはわたしといたいって言ってくれてた。」
「それなら何故!?」
「・・・・・・限界だった。わたしが。」
「!!?」
 わけがわからない、と言う感情をむき出す亜弥。

260絶望:2003/12/17(水) 21:13
 梨華はそんな亜弥の目を、見つめ返した。
「・・・・・・!!」
 亜弥は一歩退き、無意識の内に美貴の腕をぎゅっとつかむ。美貴も美貴で、亜弥を支え
ながらも…自分が倒れないように精一杯になった。
 梨華の目は、まるで奥の見えない空洞のように真っ暗だった。
「…もう、耐えられなかった。」
「な…にに、ですの…!!?」

「ひーちゃんへの、愛情に。」

 今まで黙って見つめていたあゆみが、目を逸らした。
「…すごく、すごくすごくすごく…すっごく好きで。大好きで、大事で…愛してて。」
「・・・・・・。」
「もう…耐えられなかった。自分がどんどんひーちゃんを…際限なくひーちゃんを愛して
行く事に。」
 梨華は、亜弥に喋っているのではない。いや、誰に向かって話しているのでもなかった。
そしてそれは、この場にいる全員にわかっていた。
「…わたし、駄目だから。わたしと愛情って言うのは…駄目になる、運命だから。」
 あゆみは雅恵の手を握った。雅恵はいたわるように、その手を優しく握り返す。
 知っていると言う重圧。それがこんなに痛いとは、あゆみは今まで知らなかった。

261絶望:2003/12/17(水) 21:13
「・・・・・・。」
 亜弥は、唇をぎゅっとかみ締めて…一歩前に出た。
 そしてもう一発、梨華の頬を引っぱたく。
「あ、あやたん!!」
「…教えて差し上げるわ。どうしてあたくしが、あなたのお母様の事を知っていたのか。」
「・・・・・・。」
 今はそれすらもどうでも良い。そんな顔をした梨華に、亜弥は言う。

「あたくしの母も、あなたのお母様と同じ病院に入院しているのよ。」

『!!?』
 衝撃が走った。梨華の顔にも、誰の顔にも例外なく。
「奇遇な事に、病室までお隣なのよ。…知らないでしょう?あなた、一度もお見舞いに行っ
てないみたいですし。」
「・・・・・・。」
「そして、あたくしもあなたと同じ。母に殺されそうになった事があるわ。」
「・・・・・・!!!?」
 亜弥は、強い光の点った目で梨華を突き刺す。
「あたくしの場合は、心中するつもりだったらしいけど。…あたくしが抵抗した事で、母
は精神を壊したわ。『お前まで私を捨てるのか』って、母が最後に言った言葉。あたくし
はきっと、死ぬまで忘れないでしょうね。」

262絶望:2003/12/17(水) 21:14
 梨華の目が、亜弥に問いかける。
 何故、そんな事を自分に話すのか、と。
 亜弥は笑った。
「…わかったから、ですわ。」
「・・・・・・?」
「あたくしとあなたは似ている。そして、あたくしは知ったから。」
「・・・・・・何を…?」
 亜弥は胸を張る。


「報われる愛も、あるって事を。」


 梨華の真っ暗な目から、涙が落ち始めた。
 それを見て、今までずっと黙って下を向いていた亜依が顔を上げる。

263絶望:2003/12/17(水) 21:14
「…なあ、『氷の薔薇』…いや、石川サン。」
「・・・・・・?」
「なんで、もっとひとみサンを信じられんかったん?」
「信じ…られない…?」
「そーや。」
 亜依は言った。
「…ウチが見た所、ひとみサンだってアンタを…アンタがひとみサンを愛してるのと同じ
くらい愛してたで。」
「!!?」
 亜依は、痛みを思い出すような表情で遠くを見た。
「…なんで、もっと必死になってあがかんかったんや。」
「・・・・・・。」
「必死になって、あがけば…なんとかなったのかも知れんのに。」
「・・・・・・。」


「相手は…めっちゃ側にいたのに。なんで、後悔しか残さん結末に自ら進もうとすんねん?」


 梨華の目に、鈍い光が差した。
 今度はすっと、雅恵が一歩前に出る。

264絶望:2003/12/17(水) 21:15
「石川。」
「・・・・・・。」
「私が言えるのは、ただ一つ。」
 背中に、体温を感じた。
 それは自分のものではなく、愛しい者の体温。
 出会うまで知らなかった。


「自分の愛情の価値は、愛する人が決めてくれる。」


 がく、と、梨華が床に膝をついた。
 戦いの中で、どんな苦境でも乗り越えた梨華が。
 松浦邸で手足の自由を奪われながらも、絶対に屈する事のなかった梨華が。
「・・・・・・。」

265絶望:2003/12/17(水) 21:15
 あゆみは、目を伏せた。
 見られなかった。
 あゆみだけではない。その場にいた全員が、目を伏せていた。
 これは、ある意味『自分の姿』なのだ。
『あたしはただ、梨華ちゃんを愛しちゃってるだけなんだから!!』
 無邪気にそう言っていた、小さな天使に救われなかったら。自分がこうなっていたのだ。
 梨華は膝をついたまま、呆然とする。
 涙は出なかった。
 ぽっかりと心にあいた穴は、二度と埋められる事はないだろう。
 埋めてくれる相手は、もういない。
 朝になるまで、誰も何も言えなかった。

266クロイツ:2003/12/17(水) 21:16


 次回、最終回です!!
 いやー。我ながら珍しく暗いなぁ…(大汗)
 そして体調の事ですが、皆様ご心配かけちゃってすみません(汗)しかしありがたいで
す(感涙)
 まだあんまり良くなってないんですが、ちょっとずつ回復してますのでっ!!

>オレンヂ様
 はじめまして!!ありがとうございます〜!!
 そんな風に言って頂けると、本当に嬉しくてたまらないです〜!!感激です〜!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>240様
 ありがとうございます!!
 はい、無理はしないように致します♪
 いやぁ、しかし更新できないのって辛いですね(泣)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>フェンリル様
 ありがとうございます!!
 長らくお待たせしちゃってすみません(汗)しかし待ってて下さって嬉しいです!!
 お医者さんによると、胃のそこらじゅうに潰瘍ができては治りできては治りした跡があ
るそーで(大汗)うーむ。
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>匿名匿名希望様
 ありがとうございますー!!
 無理はしないように致しますね(汗)できるだけ気楽に考えなくては。
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>名無し(0´〜`0)様
 ありがとうございますぅぅぅぅぅ!!!
 マジれすか!!?感謝感激ですー(感涙)!!!
 はいっ!!気楽にがんばります!!どうぞよろしくです!!

267管理人:2003/12/17(水) 21:38
どもども、管理人です(照
お体を崩されてるそうで心配しています。
私も、ひーちゃん欲しい人の一人ですが(w
あまり無理されないように、がんばってください。
いつもありがとうございますm(_ _)m
よかったら、メールくださーい(0^〜^0)

268タロイモ:2003/12/18(木) 00:11
次回で最後ですか、ちょっと寂しくなりますね。
最後はひーちゃんと梨華ちゃんには幸せになってほしいです。
体調を崩されたということで、とても心配しております。
一日も早い回復を願っております。
がんばってください!

269名無し(0´〜`0):2003/12/18(木) 11:36
もう次で最終回なんですね。
あややを救ってくれたクロイツさんなので
ひーちゃんと梨華ちゃんも幸せにしてくれると信じて…
次回更新を楽しみに(終わっちゃうのは寂しいけど)しています。

270I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:31

 「ん…。」
 吉澤ひとみが眩しそうに目を開くと、そこにはたくさんの顔があった。
「…ひとみ…!!」
「ひとみ…っ!!」
 お父さん、お母さん。
 そう言おうと口を開いたが、声が出ない。
「・・・・・・?」
「…まだ、喋れないはずだ。起きているのは意識だけだからな。それから、まだあんまり
目を開けない方が良いぞ。光に慣れてないだろうから、視力が急激に落ちる可能性がある。」
 知らない顔の、真っ白な白衣を着た女が言う。
 冷たい口調。雰囲気も冷たく感じる。…こう言う人、ちょっと苦手かも。そんな事を思っ
ていると、その冷たそうな女は言った。
「いきなり言われても驚くだけだろうが、一応言っておく。お前は丸三年間眠り続けてた
んだ。」
「・・・・・・!?」
 吉澤ひとみの驚愕の表情を無視して、女は続ける。
「…眠っている間に、お前の身体の病気は全て治した。リハビリをしっかりすれば、お前
はもう完全に健康体に戻れる。」
「・・・・・・ぁ…。」
 げほげほ、と咳き込み、眩しいのをこらえて目を開いた吉澤ひとみは、女の顔を見た。
 なんとか声が出そうだ。

271I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:31
「・・・・・・あ…たし、ほんと…に、寝て…たの?」
 ガラガラの声で言うと、女はこくりと頷く。両親の顔を見て見れば、二人とも涙いっぱ
いの目でこくりと頷いて見せた。
「…今から車で、お前を吉澤邸に運び込む。まだしばらく寝てて良いぞ。頭ハッキリして
ないだろ。」
「・・・・・・はい。」
 両親が車の手配をする為にあわただしく部屋から出て行くと、吉澤ひとみは女に聞いて
みた。
「…あの。」
「なんだよ。」
 この女は、何故こんなに苛立っているんだろう?
 そんな事を考えつつ、続ける。
「…寝てたって事は、夢…見てたって可能性もあります…よね?」
「・・・・・・ああ、あるな。それがどうした?」
 吉澤ひとみは、笑った。
「なんだか、良く覚えてないんだけど…夢を見た気が…するから…。」
「・・・・・・夢、か。」
 閉じた瞳から、涙が溢れた。
「…あれ?何で涙が出るんだろ?」
「・・・・・・いきなり目ぇ開いたからな。疲れたんだろ。視神経が。」
 もっともらしい理由を言い、女は吉澤ひとみに背を向けた。

272I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:31
「…そっか。それでか。」
「・・・・・・。」
「…覚えてないんだけど…。」
「・・・・・・何だ?」

「すっごく・・・・・・幸せな夢を見た気がします。」

 女の肩が、ぴくりと震えた。
「なんで…かな?胸の奥がじんわり熱い感じ。…涙、止まらない…。」
「・・・・・・。」
「なんで覚えて…ないのに、幸せだったってわかるんだろ…。」
「決まってるだろ。」
 女は、声を震わせないようにする事に必死だった。
「魂が覚えてるんだよ。その『夢』を。」
 冷たい声。しかも、非現実的な言葉。
 だけど、吉澤ひとみは…涙を流しながら微笑んだ。

273I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:32

****************************************

 それから、二年後。
 大きなホールに、正装した紳士・淑女が溢れかえる。
 立食形式のパーティーだ。テーブルの上には、最高のシェフが最高の素材を使って作っ
た料理が無数に並んでいる。
『それでは皆様、グラスをお持ち下さい。』
 司会者の声で、全員がグラスを手に取った。そして全員の視線が、一人の少女に注がれ
る。
『吉澤ひとみお嬢様の、二十歳のお誕生日を祝して…乾杯!!』
 光の加減でキラキラと色を変える、可愛らしいブルーのドレスを身にまとった吉澤ひと
みは、その真っ白な頬を恥ずかしそうにピンクに染めた。
 乾杯、と人々の声が重なる。
『お嬢様から皆様に一言、お願い致します。』
「…はい。」
 壇上に上がり、緊張と喜びで胸を弾ませながら…吉澤ひとみは喋りだす。
『皆様、本日はあたしの為にわざわざ来て下さって…本当にありがとうございます。』
 タキシードにスーツ、色取り取りのドレスの軍団。
 軽く数百人はいるであろう客達。彼らは全員、一人残らず『エリート』と呼ばれる人間
たちである。例外がいるとすれば、彼らのSPくらいだろうか。
『まだまだ幼く、未熟ではありますが…あたしももう、二十歳です。』
 スピーチの内容は、かなり前にできあがっていた。頭の中に叩き込まれている。

274I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:32
 客に、視線を投げる。一通り見回して…はっと気付く。
 吉澤ひとみは、自分の中に違和感を感じた。

 どうして自分は、『誰かを探している』のだろう?

 誰を探しているのかもわからない。探すような相手はいないのだ。
 友達は全員招待してあるが、居場所は全て把握している。
 気のせいだ、と自分に言い聞かせて、吉澤ひとみは続けた。
『未熟ながらも、今日を迎えるまでには色々な事がありました。…三年間眠り続けたり。』
 会場から、どっと笑いの声があがる。
 このお嬢様が、二年前まで三年間眠り続けていたのは周知の事実。『眠り姫』などと言
うあだ名までついている程なのだ。
 冗談を交えつつ、感謝の言葉を述べて…吉澤ひとみは拍手の中で壇上から降りた。
 そこに。
「お誕生日、おめでとうございます!吉澤先輩!!」
 聞き覚えのある声に、くるりと振り向く。
「・・・・・・松浦さん!!?」
 吉澤ひとみは、満面の笑顔で花束を差し出す後輩に驚きを隠せない。
「来てくれたんだ!!」
「ええ、もちろん!!このあたくしが、来ないはずないじゃありませんの。」
「ふふふ、ありがとう。」
 花束を受け取る。

275I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:32
「今日は、あたくしの従姉妹も一緒に来ましたのよ?」
「え?松浦さんの…従姉妹?」
「ええ。…あゆみちゃん。」
 呼ばれて、一歩前に出てきた少女も花束を抱えていた。
「はじめまして、吉澤ひとみさん。柴田あゆみです。」
「…ああ!あの柴田家の!!そうだ、松浦さんの従姉妹さんだったんですよね!!」
 右手を差し出して、輝くような笑顔で言った。
「あたし、今年の二月にあった柴田さんのお誕生日パーティーには行かせて頂いてたんで
すよ。でも直接お話するチャンスがなくて…ですから、はじめまして、ですね!!」
 その言葉に、亜弥とあゆみの胸に悲しさがこみ上げた。
 しかし、それを表に出す程馬鹿ではない。
「…そう、ですわね。どうぞよろしくお願い致しますわ。」
「ええ、こちらこそ!」
 すっと、亜弥とあゆみの背後に二人の人影があらわれた。
「…マサオ?」
「みきたん?」
 亜弥とあゆみがそれぞれのボディーガード名前を呼ぶと、緊張した声が返って来た。

276I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:33
「…不審者が発見されました。数人は拘束しましたが、仲間がまだあと一人いるそうです。」
「…えぇ!?」
 あゆみが不安気な声を漏らした、その時。
「死ね、吉澤ひとみィィィィィィィィィィ!!!!!」

 ズガァァァァァァァァァァァン

『!!!?』
 銃声が響き、その場にいた全員が凍りついた。
 天井に向けて撃たれた銃弾は、シャンデリアに直撃。欠片がパラパラとふり注ぐ。
 銃を持った、ボーイの姿をした男は…今度は吉澤ひとみに向けて銃を突き出したのだ。
 雅恵と美貴は、自分の主人を抱きかかえて床に転がる。
「な…っ!!ちょ、ちょっとみきたん!!吉澤先輩が…!!!」
 抗議の声を上げた亜弥に、美貴は言う。
「大丈夫。…『彼女』がいる。」
「!!」
 亜弥の視界に、真っ黒のスーツを着た少女が飛び込んで来た。
「・・・・・・!!」
 彼女はためらいもせず、ボーイ姿の男の手首を掴みあげる。
「ぅあッ!!」
 男はたまらずうめき声を上げ、銃を落とした。彼女は床に落ちた銃を蹴って、雅恵へと
渡す。
 流れるような動きで、足を払って男を床に転がした。そこで吉澤家のボディーガード達
や警備員が到着し、男は連行されて行く。
「・・・・・・。」
 あっと言う間の出来事。まるで、映画を見ているような気分だ。自分の命が狙われた事
に対する恐怖など、生まれる前に終わってしまった。

277I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:33
 呆然とする吉澤ひとみに、彼女は言った。
「…お怪我はありませんね。」
「・・・・・・は、はい。」
「それは良かった。」
 可愛い顔。自分よりも背が低く華奢な少女。
 今目の前で起きた事が、ますます信じられなくなった。
「…ありがとうございます…。」
「いいえ、無事で良かった。」
 それだけ言い残すと、彼女はぺこりと頭を下げて…すぐにすっと姿を消した。
「ああ、吉澤先輩!本当にご無事で良かった…!!」
「ま、松浦さん…ええ、無事だけど…。」
 心臓が早鐘のようにドキドキと言っている。
 息苦しい。
 目が回る。
「…い、今の…あの方は…!?」
 亜弥は言った。
「柴田家のボディーガードの内の一人ですわ。すごく腕が立つんですの。」
「・・・・・・そ、そう…。」
 どうしてだろう。
 あの可愛い顔。華奢な身体。…独特の声。
 胸が熱い。痛い。苦しい。
「…あゆみさんの…専属なの?」
「いいえ、違います。言い方が悪かったですわね。」
「え?」

278I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:34
「彼女は、フリーのボディーガードですのよ。現在は柴田家に雇われてますけど。」
「…フリー…?」
 どうしちゃったんだろう。
 知らなければいけない事がある。
 いや、新たに知るのではない。そんな気がする。

「ご存知ありません?『石川梨華』って言うフリーのボディーガード。」

 どくん。
 身体の中で、何かが弾けた。
 光の洪水が、身体の中に流れ込んで来た。

279I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:34

****************************************

 会場を出で、走り出す。
「…はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・・・はぁっ!!!」
 しばらく走った所で、壁に手をついて息を整えた。
 そんなに長く走ったわけではない。そんなに速く走ったわけでもない。
 それなのに、息が乱れる。…心拍数のせいだ。
「・・・・・・はぁっ!!」
 梨華は、ぎゅっと目を閉じた。
 あの後、ストリート・ファイトを無敗のまま引退した。
 『ひーちゃん』がいなければ、続ける意味なんてなかったから。
 そして今度はフリーのボディーガードとなった。…戦い以外では、食べて行けないから。
「・・・・・・ひーちゃん…。」
 来るんじゃなかった。
 今、梨華は激しく後悔していた。
「・・・・・・ひーちゃん…!」
 幸せそうだった。笑っていた。…元気そうだった。
「・・・・・・ひーちゃん…!!」
 梨華が、望んだ通りの姿だった。絵に描いたように幸せなお嬢様。
「…ひーちゃん…ひーちゃん!ひーちゃん!!ひーちゃん!!!」
 まるで、傷や痛みをそのまま吐き出すような叫び。
 胸が痛い。張り裂けるように痛い。

280I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:34
 梨華は自分のてのひらを見つめた。
 何度も何度も血を浴びて、何度も何度も誰かを痛めつけた手。
 吉澤ひとみの手を思い出す。
 真っ白で、冷たさも熱さも知らない綺麗な手。
「・・・・・・。」
 梨華は壁を殴りつけた。
 もう、届かない。
 あんなに側にいたのに。ずっと一緒にいたのに。
 自分でその幸せを手放した。
「…良かったんだよ。ひーちゃんは幸せになった。これからもずっと幸せに生きて行く。
…良かったんだ、それで。」
 だから、もうあきらめなくてはいけない。そのつもりで、今日ここに来たのだ。
 一目見たら、あきらめる。そう決めたのだ。
 顔を見せる気なんてなかった。会話を交わす気も。…あんな事さえなければ。
「・・・・・・ッ!!」
 壁をもう一度だけ殴って、梨華は顔を上げた。
「・・・・・・さよなら。『ひーちゃん』。」
 小さく呟いた、その直後。


「…梨華ちゃん!!!」


 涙が混じったような声が、響き渡る。

281I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:35
「・・・・・・。」
 幻聴だと思った。
 だって、そんなはずないのだ。
 彼女が梨華の名前を、そんな風に呼ぶなど。
「待って、梨華ちゃん!!」
 今度こそ、梨華は振り返った。
 幻聴でも良い。幻影でも良い。
 逢いたい。

「・・・・・・!!」

 気がついたら、梨華は抱きしめられていた。
「梨華ちゃん!!梨華ちゃん!!!」
「・・・・・・なん…で…!?」
 ひとみは、力いっぱい梨華の身体を抱きしめた。
「…梨華ちゃん!!」
「…嘘でしょ?幻覚でしょ…?」
 ひとみは梨華を離し、梨華の手を取った。そして自分の頬にくっつける。
「…思い出したんだ。梨華ちゃんの事。…あたしの愛する人の事。」
「・・・・・・。」
「ひどいよ、梨華ちゃん!!なんで無理矢理手術受けさせたりしたのさ!!」
「・・・・・・。」
 涙でぼろぼろの瞳で、ひとみは梨華を見る。
「…あたし、幸せだよ。両親の元で、元気に暮らせてる。」
「・・・・・・。」
「だけどね、不幸でもある。…一番愛してる人が、側にいてくれないから。」
「・・・・・・。」

282I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:35
「梨華ちゃん…!!!」
 ひとみは、もう一度梨華をぎゅっと抱きしめる。

「やっと…抱きしめられた…!!!」

「え…?」
「…ずっとずっと、望んでたんだ。梨華ちゃんを抱きしめたいって。ずっと…。」
「・・・・・・。」
「いっつも無理ばっかして、ギリギリまで自分を追い込んでる梨華ちゃんを。
 本当はそんなに強くないクセに、強がってる梨華ちゃんを。
 ・・・・・・抱きしめたかった。ずっと、ずっと。」
 梨華の目から、涙が溢れた。
「…なんで、抱き返してくれないの?」
「・・・・・・抱き返したいけど…。」
「けど?」
「消えて、なくなりそうで。」
 ぷっと吹き出して、ひとみは言った。
「…大丈夫。そんなに簡単に消えてあげないから。」
「・・・・・・。」
 梨華がそっと抱き返すと、ひとみはもっと強く抱きしめ返した。
「ほらね?消えないでしょ?」
「・・・・・・っ!!」
 梨華は、想いを吐き出すように口を開いた。


「…ひーちゃん!!」


 どちらからともなく、唇が重なる。
 もう、言葉なんていらなかった。
 その存在を確かめ合えるだけで、気持ちは十分伝え合えた。

283I LOVE YOU:2003/12/23(火) 22:36

****************************************

 伝説が、ある。
 裏の世界で、今一番人気のある『娯楽』…ストリート・ファイトと、この国の上流階級
の女性たちとの間で語り告げられる、伝説。
 互いに手を取り合い、最強を保持し続けたファイターとその相棒の伝説。
 真実の愛を見つけた、恋人同士の伝説。
「梨華ちゃん。」
「ひーちゃん。」
 彼女達を語る際に、必ず前置きされる言葉。
 二人の間で、一番重要で大切な言葉。
 『I LOVE YOU』
                                   〜END〜

284クロイツ:2003/12/23(火) 22:36


 …はいっ!!最終回でございます!!!
 いかがでしたでしょうか〜?なんか書き上げた感想としては・・・・・・

『未熟者でごめんなさい』

 ですかね(大汗)
 あああ〜!!書ききれない所とか反省点がいっぱいありまくりでんもぅ(泣)
 しかし、『I LOVE YOU』はこれで終わりです。
 読んで下さった皆様方、本ッッッ当にありがとうございました!!


>管理人様
 ご心配、ありがとうございますぅぅ〜!!!
 なんとか回復はして来ております!!早く完治したいです…(泣)
 >いつもありがとうございますm(_ _)m
 いえいえいえ、こちらこそいつもありがとうございますですよ!!
 また今度、新たに連載させて頂きたいと思っておりますので、その時はどうぞよろしくです(笑)
 本当に、ありがとうございました!!

>タロイモ様
 いかがでしたか〜?最終回〜…。
 私もちょっと寂しさを感じています。あと、物足りなさも(泣)
 ああ、自分の力量不足が悲しい…(号泣)
 体調、なんとか回復して来ております!!ご心配ありがとうございます!!
 今まで読んで下さって、本当にありがとうございました!!

>名無し(0´〜`0)様
 最終回、いかがだったでしょうか〜?
 満足して頂けたら幸いなんですが、私自身ちょっと反省の残る所がありまして…(大汗)
 でもでも、楽しんでいただけたら本当にうれしいです!!
 今まで本当にありがとうございました!!

285タロイモ:2003/12/24(水) 00:14
うぅぅ〜最高でした。泣けますねー(号泣)
梨華ちゃんとひーちゃんが幸せになってよかったです。
クロイツ様も順調に回復されているようでホッとしてます。
次回作と「愛人」も期待してます!

286フェンリル:2003/12/25(木) 19:06
更新&完結お疲れ様でした。
最悪な体調の中の更新でご苦労が偲ばれます。
一時期に比べれば快方に向かっている印象を受けますが
直りかけが肝心なのでくれぐれもご自愛を。
他の方同様次回作&『愛人』楽しみに待っていますね。

287チップ:2003/12/27(土) 23:07
もぉぉ〜大好きですこのお話、お疲れ様でした。
石川さんよかったね・゜・(ノД`)・゜・感動したっちゃ・゜・(ノД`)・゜・
個人的に松浦さんが救われたのもすごく嬉しかったです(w
気が早いですけど、お正月ゆっくり休んでお身体大事にしてくださいませ。
次回作、愛人、私も楽しみに待ってます。頑張ってください。

288本庄:2004/01/22(木) 13:07
遅ればせながら脱稿お疲れ様です。
梨華ちゃんとひーちゃんの愛の深さに感動いたしました・・・。
みんな幸せそうでよかったです・・・・゜・(ノД`)・゜・
愛人のほうもがんがってくださいね。


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