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I LOVE YOU

1クロイツ:2003/06/22(日) 23:26
はじめまして!!クロイツと申します!!
いしよし小説を、書かせて頂きたいと思います!!
未熟ですが、がんばりますので…どうぞよろしくお願いしますッ!!

170欲しいもの:2003/10/04(土) 16:27
 真希が満足したようにこくこくと頷く。
 紗耶香は、ばつが悪そうに煙を天井へと吐き出した。

「…今回だけは、戦ってる姿を…オマエに見られたくないからだ。」

「・・・・・・え?」
ひとみの訝しげな顔に、紗耶香は言った。
「…聞きたいか?今日、石川が戦う理由を。」
「…うん。」
「…後悔するぞ。『聞かなきゃ良かった』ってな。…それでも聞くか?」
「・・・・・・うん。」
力強く頷いたひとみに、紗耶香は口を開いた。

171欲しいもの:2003/10/04(土) 16:28

****************************************

 梨華は苦戦していた。
 しかし、負けているのではない。むしろ、余裕で勝てそうだ。
 難航しているのは、『取り引き』。
「・・・・・・吉澤ひとみの身体を、渡しなさい。」
「…嫌だ。あれは俺のコレクションの中で、一番気に入ってる身体だからな。」
「お金は払う。」
「どんな大金積まれたって、渡せねぇな。」
 梨華の瞳が、更に冷たくなる。
「・・・・・・殺されたいの?」
「ああ。殺せ!!あれを持って行かれるくらいだったら、殺された方がマシだね!!」
「そう。」
 そう言うと同時に、梨華は男の胸の上に片足を乗せた。

「それならば、殺す。」

その目は、どこまでも冷たくて…どこまでも無感情で。
「…ひぃぃぃぃ…!!!」
男は思わず、悲鳴を上げた。

172欲しいもの:2003/10/04(土) 16:28
「…最後に、もう一度だけ聞いてあげる。」
その声は、この世の何よりも冷たくて。
だけど、まるで女神の声のごとく優しく響いて。

「…吉澤ひとみの身体を、渡しなさい。」

…抗い難い、魅力があった。
「わ、わかった!!渡す!!渡すから!!」
「・・・・・・。」
梨華は足をどけた。それと同時に男は力を失い、リングに全体重を預ける。
 それを『降参』と取った審判が、カウントを取りはじめた。
 程なくして試合終了の鐘が鳴り響き…梨華は男に背を向ける。
「…待て、石川梨華。」
「・・・・・・。」
「…俺は、約束は守る。『吉澤ひとみ』はお前に渡そう。…だけど、タダでとは言ってねぇ。」
「・・・・・・そう、だったね。」
 男はニヤリと、下品な微笑を浮かべた。

173欲しいもの:2003/10/04(土) 16:28
「いくら欲しいの?」
「金じゃねぇよ。」
「それじゃ、何?」

「お前の、身体だ。」

梨華の眉が、ぴくりと動く。
「…わたしの身体?それは死体?」
「いや、そうじゃねぇ。…お前は動いてる方がキレイだからな。」
「・・・・・・。」
梨華は全てを悟った。
「一晩で良いぜ。」
「・・・・・・。」
 ぐっと、拳を握り締める。
 きっとひとみは『やめろ』と言うだろう。
 そんな事をして手に入れても、喜んだりなんかしないだろう。
 梨華は、意を決したように言い放った。
「わかった。・・・・・・今夜、行くから。」
 ひとみの身体など、梨華は必要ないと思う。
 肉体的な抱擁など必要ない程に、ひとみは梨華を精神的に包んでくれている。
 だけど。
 何か一つでも。
「・・・・・・ひーちゃんに、返してあげたいから。」
 大口を開けて笑う男を見ながら、梨華は呟いた。

174欲しいもの:2003/10/04(土) 16:29
 その直後。

「…あらあら。駄目ですわよ。」

「「!?」」
まず、梨華が。ワンテンポ遅れて男が、そちらを振り向いた。
そこにいたのは、松浦亜弥。
「…あ…んた…!!」
「まったく。『氷の薔薇』ともあろうお方が、自分の身体を安売りとは。信じられません
わね。」
「・・・・・・関係ないでしょ。」
「関係、おおありですわ。」
亜弥が、ぱちんと指を鳴らす。すると亜弥の背後にいた黒服の男たちが、一斉に動き出す。
「!?」
黒服達は、男には目もくれずに梨華を取り押さえた。
「ちょ…!?」
「石川様には、あたくしの邸に来て頂きます。」
「な…!?」
亜弥は扇で口元を隠し、まるで蛇のような目つきで男を見る。
「…邪魔なさると言うのなら…排除致しますわよ?」
「・・・・・・ひぃっ!!」
 男は、逃げた。

175欲しいもの:2003/10/04(土) 16:30
 取り押さえられた梨華は、舌打ちして亜弥をにらみ付ける。
「…まぁ。そんな目で見られるなんて、心外ですわ。せっかく助けて差し上げたのに。」
「助けてくれなんて、一言も言ってない!!」
 亜弥はころころと笑って、扇を閉じた。
 そしてその扇で、梨華の顎に触れる。
「おとなしくなさい。…あなたには、あたくしの家に来て頂くの。」
「誰が行くか…ッ!!」
「いいえ、拒否などできないわ。…もしも拒否などしたら…」
亜弥は、意味ありげに視線を横に流す。

「あなたのお母様がどうなるか。」

「!!」
梨華は、唇を噛む。
 梨華達の他には誰もいなくなったリングに、亜弥の高笑いが響き渡った。

176クロイツ:2003/10/04(土) 16:31


 大変な事になって参りました。
 ひーちゃんは無事だけど梨華ちゃんピンチ!!書いてるクロイツもびっくりだ!!(←オイ)
 いやぁ、なんかもう・・・・・・更新遅くて本当に申し訳ない…(大汗)

>名無し(0´〜`0)様
 うーむ、今回は梨華ちゃんがピンチ!!
 いやぁ、そう言って頂けると、本当に本当に嬉しいです!!ありがとうございます!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>token様
 ありがとうございます!!
 障害ってゆーか、なんだか運命の歯車が狂ってる感じもする今日このごろ…(笑)
 >私らは11月は学祭で講義なんかやってる暇はなかったですYO。(w
 ウチも大学祭11月ですYO!!
 だけど私は参加する気もナッシング!!きっと大学祭期間中は家で寝てます。
 なのでばっちし授業しちゃってるんですYO。
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>名無しいしよしみそっかす様
 はじめまして!!
 け、ケーキ屋さんから!!ありがとうございます〜!!
 いえいえ、そんな大した者じゃないですよ、私は(大汗)
 だけど、嬉しいです。超嬉し過ぎです。そんな風に言って頂けるなんて…!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

177名無し(0´〜`0):2003/10/04(土) 20:12
_| ̄|○
一難去ってまた一難…。
。・゚・(ノД`)・゚・。
続きが楽しみだー

178タロイモ:2003/10/08(水) 02:29
おおー新展開ですね。ここで梨華ちゃんのお母さんが出てくるとは…。
それにしても松浦さんは悪い感じがでてますね。はまり過ぎです。
ミキティがいなくなって制御ができないんでしょうか?
今後のあややの動向に注目しております!

179狂い:2003/10/14(火) 14:31

 『ちょっと用事がある』と言って出かけていた美貴が、帰って来た。
 見知らぬ男を連れて。
「…オイ、藤本。誰だよコイツは。」
「・・・・・・石川さんの、今日の対戦相手です…。」
「…って事は、リングに行ってたの!?」
驚きの顔を見せる真希に、自嘲気味に微笑んで見せてから呟く。
「…亜弥様と話をしようと思って行ったのですが…。」
「お前、死ぬつもりか!?今松浦に顔見せたりしたら…!!」
「もともと、私の一生は亜弥様にお捧げしたものですから。
 ・・・・・・だけど、死ぬわけには行かなくなって、戻って来ました。」
「・・・・・・それが、この男ってワケか?」
「はい。」
 紗耶香は男に向き直り、言った。
「…今日の石川の対戦相手って事は、『吉澤ひとみ』の身体を保管してるヤツだな。」
「・・・・・・まぁな。」
「…この男と交渉してる最中に、石川さんは亜弥様に連れ去られました。」
「「「なっ!?」」」
 ひとみの顔から一気に血の気が引き、ガタガタと震えだした。
「り、梨華ちゃん…。」
「ヨッスィー、しっかりして。」

180狂い:2003/10/14(火) 14:31
「・・・・・・それでお前は、どんな取り引きをしようとしたんだ?」
「お、俺は悪くねぇ!!」
 男の顔も、ひとみに負けず劣らず青かった。
「…あ、あいつが…『氷の薔薇』が取り引きしたいって言い出したんだ!!俺はそれに乗っ
ただけだ!!」
「落ち着けよ。まだ誰もオマエを責めたりしてないだろ。」
 しかし紗耶香の目には、確実に怒りの色が浮かんでいた。
 それは、誰に向けられた怒りなのか。
「…で?吉澤ひとみの身体を渡す代償に…オマエは何を要求した?」
「・・・・・・。」
 口ごもる男の代わりに、美貴が言った。

「・・・・・・石川さんの、身体です。」

「!!!」
「よ、ヨッスィー!!」
「あいつもそれで良いっつったんだ!!俺だけが悪いワケじゃ…!!」
「黙ってろ!!」
 一喝した後、紗耶香はため息を吐く。
「・・・・・・馬鹿か、あいつは…!!!」

181狂い:2003/10/14(火) 14:32

****************************************

 松浦邸に着くなり、梨華は応接室へと連れて行かれた。
「・・・・・・何のつもりよ?」
「何言ってらっしゃるの?お客様を応接室にお連れするのは、至極当然の事ではなくて?」
「わたしがいつ『客』に…!!」
「なったじゃありませんの。現にあなたは、今あたくしの邸にいるわ。」
ばらり、と優雅に扇を開く亜弥。
「…さ、お座りになって。あたくしとお話しましょう。」
「あんたと話す事なんか、何ひとつ…!!」

「あなたのお母様、北海道の病院にいらっしゃるのね。」

 梨華は言葉につまり、黙った。
「お身体を壊されてるのではなく、心が病んでしまっているそうじゃない。
 原因は、旦那様のひどい仕打ちだとか。…あなたのお家も大変だったんですのねぇ。」
「・・・・・・っ!!!」
 梨華の目が見開いた。
 それを見て、亜弥は楽しそうに笑う。

182狂い:2003/10/14(火) 14:32
「ふふふ、驚いた?そうですわよね。本来ならばこの情報、どんな手を使っても手に入れ
られるはずないですものね?
 だけどね、石川様。世の中『口の軽い人種』と言うのは、たぁっくさんいらっしゃるん
ですのよ?」
「…買収したの?あの病院の人間を…!!」
「人聞きの悪い事を。…ただちょっと、お気持ち程度に差し上げただけですわ。」
 亜弥はひとしきり笑った後、どっかりと腰掛けたソファの上で足を組み替えた。
「それじゃ、本題に入りましょうか。」
「…話す事なんか、何もない!!」
「あら、良いのかしら?知りたくないの?」
 立ったままの梨華を、ちらりと見上げる。

「吉澤ひとみ先輩の事を。」

「・・・・・・!!」
「吉澤先輩はね、それはそれは素晴らしい方でしたわ!!
 勉強もスポーツも、全国トップレベルにできましたし…容姿もとてもお美しくて、老若
男女問わず、どんな方にもお優しくて!!
 憧れてる人はたくさんおりましたのよ?無論、あたくしも例外ではなかったのですけど。」

183狂い:2003/10/14(火) 14:32
「・・・・・・わたしには、関係ないわ。」
「あら?どうして?」
 梨華は亜弥をにらみ付ける。
 どうしてだろう。相手は自分よりも年下なのに。相手は座っていて、自分は立っている
のに。相手は箸より重いものを持った事もないような軟弱なお嬢様で、自分は鍛え上げら
れた男よりも遥かに強いストリート・ファイターなのに。
 自分の方が圧倒的に、弱い存在のように思えて仕方がない。
「…わたしが興味があるのは、『ひーちゃん』だもの。
 『吉澤ひとみ』がどんな人間であろうと、わたしには関係ないわ。」
 亜弥はコロコロと笑った。
「おかしな事をおっしゃる方ね。…その『ひーちゃん』を、『吉澤ひとみ』として生き返
らせようとしているのに。」
「!!?」
「…だから、あたくしをあまりナメない方が良いわ。
 わかっているのよ。あなたがあの男から、『吉澤ひとみ』の身体を取り返そうとしてい
る事なんて。」
 狩られる獲物の気分とは、今の梨華のような気分なのだろうか。
 梨華は激しく不愉快だった。

184狂い:2003/10/14(火) 14:33
「…あんた、何がしたいのよ!?」
 声が震えた。足元がふらつきそうになる。
 こんなの、久しぶりだ。
「決まっているでしょう?あたくし、あなたを気に入ったの。」
 亜弥はすくっと立ち上がって、優雅な足取りで梨華に近づく。
「吉澤先輩も美しかったけど、あなたも十分美しい。
 …あたくし、美しいモノが大好きですの。」
「・・・・・・だからッ!?」
「ふふふ…わかっているのに、わからにフリをなさるのね。可愛らしく、そして憎たらし
い事。」
 狂気の微笑みが、梨華の全身に鳥肌を立てる。

「…すべてを手に入れるのよ、あたくしは。その資格が、あたくしにはあるの。」

 逃げなくてはいけない。
 わかっているのに、梨華の足は動かなかった。

185クロイツ:2003/10/14(火) 14:33


 うーむ。梨華ちゃんピンチ…。
 キレてるあややは、なんでこんなに書きやすいのでしょうか…(笑)

>名無し(0´〜`0)様
 本当に、一難去ってまた一難って感じですよねぇ…。
 今回もまた一難やって来てますし…うーむ。書いてて楽しい…(笑)
 ありがとうございます!!がんばります!!

>タロイモ様
 >それにしても松浦さんは悪い感じがでてますね。はまり過ぎです。
 本当に、なんでこんな良い味出るんでしょうか(笑)
 悪役にするとどこまででも突っ走ってくれる子ですよ、まったく。…ありがたい(笑)
 >今後のあややの動向に注目しております!
 見守っててやってくださいませ!!んでもってミキティも(笑)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

186名無し(0´〜`0):2003/10/15(水) 02:40
毎度ながら悪者な松浦さん(w
彼女にも救いがありますように…

187名無し(0´〜`0):2003/10/15(水) 02:41
毎度ながら悪者な松浦さん(w
彼女にも救いがありますように…

188186:2003/10/15(水) 02:41
すいません、二重申し訳…

189名無し(0´〜`0):2003/10/15(水) 17:35
悪アヤε=ε=ε=ε=ヾ( ゚д゚)人( ゚д゚)ノ゙ キター
続きが気になって気になって仕方ありません。
今一番楽しみにしています。
災難続きだけど・・・。

190名無しのいしよし:2003/10/16(木) 12:21
私も今こちらが一番の楽しみです〜
梨華ちゃんのひとみちゃんを想う感じがハマリです。
氷の薔薇の唯一無二の人って所とかも。

191本庄:2003/10/18(土) 14:20
また来ちゃいました♪

てかあやや怖いよあやや…。
なんかケーキ屋さんの時より凄みがあるような…。

梨華ちゃんピーンチっすね!
ファイトよ!ここの梨華ちゃんに敗北という文字は似合わないわ!

続き楽しみにしてるです。

192:2003/10/21(火) 15:12

 ここは、都内某所。人目から逃れるようにひっそりと建っているマンションの一室。
「…死体愛好家の好みそうな場所だな。」
 紗耶香は、『吉澤ひとみ』の身体を保存している男の方を見て言った。
 オートロックを抜けて、部屋の中に入る。
 男のコレクションを前にした真希は、目をぱちくりさせた。
「こ…これ、本当に全部死体なの!?」
 狭い部屋に、所狭しと並んだガラスケース。
 その中には人間の身体とどろっとした液体が満たされている。どろっとした液体は、防
腐剤と特製の保存液を混ぜたものらしい。
 男はそれを『水槽』と呼んでいた。
 その『水槽』の中にある人間の身体は、死体とは思えないものばかりだった。
「…眠ってるみたい。みんな…。」
 心細そうな真希の声を聞きながら、紗耶香はひとつの水槽の前で立ち止まる。
 三歳くらいの女の子の身体だ。
「この子、五年前に行方不明になった子だな。」
「・・・・・・。」
男は気まずそうに、紗耶香から目を逸らす。
「犯人は、お前だったのか?」
「いや…俺じゃない。」

193:2003/10/21(火) 15:12
 紗耶香は片方の眉を吊り上げた。
「じゃあ、何故この子がここにいるんだよ?」
「・・・・・・買ったんだよ。犯人から。」
 生まれつき、少し心臓の弱い子だったらしい。
 誘拐された時のショックで発作を起こし、そのまま死んでしまったそうだ。
 犯人は処分に困り、男に売ったらしい。
「・・・・・・。」
 紗耶香は何も言わずに舌打ちをし、新しい煙草に火を点けた。
「…で?『吉澤ひとみ』はどこなんだ?」
「・・・・・・こっちだ。」
 美貴に縛り上げられた段階で、諦めたらしい。意外と素直に案内をする。
 真希は、さっきから一言も喋らないでいるひとみをちらりと見た。
「…ヨッスィー、こっちだって。」
「う、うん…。」
 最後尾でじっとしていたひとみの手を引いき、合流させる。

194:2003/10/21(火) 15:13
「…ねえ、ごっちん。」
「ん?」

「・・・・・・わからなくなっちゃったよ。人間になりたいのか、なりたくないのか。」

 真希は、つないだ手をぎゅっと握り締める。
「…まだ、その答えを出すには早過ぎるよ。」
「…うん。」
「まずは、『身体』に会って・・・・・・過去とお話してみなきゃ。」
「・・・・・・うん。」
 ひとみはキッと顔を上げた。

195:2003/10/21(火) 15:13

****************************************

 暴れないように身体を縄でぐるぐるに巻かれた梨華は、巨大な液晶画面の前に座らされ
ていた。
「…わたしに、何を見せたいって言うの?」
 すると亜弥は、扇を開いて口元を隠す。
「ふふふ。実はね、あたくしの直属の戦闘員達の、実践訓練なんですけれど…とっても面
白〜いモノが見れそうですのよっ!」
「・・・・・・興味ないんだけど。」
「あらあら。」
 亜弥の目が、笑う。
「…その内、そんな事言ってられなくなりましてよ。」
「・・・・・・?」
「ああ、時間ですわ。…スイッチ、入れてくださいませ。」
 かしこまりました、と言う声と共に、画面に数人の人影が映りだした。
「・・・・・・!!!」
 画面が鮮明になって行くにつれ、梨華の顔色がなくなって行く。

196:2003/10/21(火) 15:14
「ふふふ。ね?面白そうでしょう?
 市井紗耶香博士に、我が家のボディーガードの藤本美貴。それから『G−0923:M
AKI』に…」
 一回区切ってから、ゆっくりと吐き出すように喋る。

「『Y−0412:HITOMI』…ね?面白そうでしょう?」
「ひーちゃん!!」

 泣き出しそうな悲鳴を上げた後、梨華は亜弥をにらみ付ける。
「…ひーちゃんをどうするつもり!?」
「まあまあ、『氷の薔薇』ともあろうお方がみっともない。」
 言葉とは裏腹に、亜弥の口調はまるでそれを待っていたようだ。
「ご安心なさいませ。あたくしが命じたのは『裏切り者・藤本美貴の処分』だけですわ。」
コロコロと笑うその目元は、まったく笑っていなかった。
「…まあ、『そこで他の誰が死んでも、事故として処理するから安心しろ』と、手に者に
は伝えてありますけれど。」

197:2003/10/21(火) 15:14
「!!」
 それは、『他の者も全員始末しろ』と言う意味と同じである。

「…貴様ァァァァァァァァァ!!!!」

 梨華が吼える。
 身体を縄でぐるぐるに縛られ、手はもちろん足にも手錠をかけてあるにも関わらず、亜
弥のボディーガード達は銃を構えた。それ程の殺気だったのだ。
 しかし殺気を向けられた当の亜弥は、何事もなかったかのように笑い声を上げる。
「当たり前でしょう!『Y−0412:HITOMI』など、この世に存在しててはいけ
ませんのよ!!
 その存在は、吉澤先輩の美しき過去を汚すのみ!」
 動けない自分の身体を呪いながら、梨華は亜弥に憎悪の念を向ける。
 常人ならばそれだけで呪い殺されそうなその念。しかし亜弥はそれをものともせずに笑
い飛ばした。
「吉澤先輩は…あたくしの初恋は、美しくなくてはいけませんわ!!
 ですから、『Y−0412:HITOMI』など滅ぶべきですのよ!!
 そんな汚れ切った存在をこの世に残しておける程、あたくしの心は広くないの!!」

198:2003/10/21(火) 15:14
 まるで、歌うように。
「吉澤先輩は、若くして亡くなったからこそ完璧なのですわ!美しいのですわ!!
 だから、絶対に許しません事よ!!」
「勝手な事を言うな!!!」
「あら。あなたがそれをおっしゃるの?」
 亜弥は、慈愛溢れる聖母のように。
 そして、残酷極まりない抜き身の刃のように。

「『Y−0412:HITOMI』の意思も聞かずに、勝手に身体を取り返そうとしたあ
なたが?」

 言葉を、梨華の心に深く突き刺した。

199:2003/10/21(火) 15:15

****************************************

 ひとみは、『吉澤ひとみ』の前に立った。
「・・・・・・これが…あたしの身体・・・・・・?」
 ひとみに、過去の記憶はない。
 紗耶香と真希から詳しい話は聞いたが、まるでそれは物語のようで。
 現実味のない、御伽噺のように聞こえた。
「そうです。…なんて、保存状態が良いんでしょう…。」
 美貴は驚愕のため息を吐いた。
 過去、何回か『吉澤ひとみ』とは言葉を交わした。
 美貴とひとみは同い年だったので、同い年の女の子がボディーガードをしていると言う
のが珍しかったのだろう。
 亜弥の部活が終わるのを待っている間に、よく話しかけられたのだ。
 それを何度、亜弥に羨ましがられたか。
「…そんなに良いのか?」
「はい…。全く変わっていません。『水槽』越しではハッキリとはいえないんですが…吉
澤様の肌の感じまで、まったく変わっていないように見えます…。」
「そっか。それならすぐに手術できるな。」
 紗耶香は男に向き直った。

200:2003/10/21(火) 15:15
「…ってなワケで、貰って行くぞ。」
「・・・・・・かまわねぇよ。」
「なんだ?嫌に素直じゃないか。」
 もう少しゴネるかと思ってた、と言うと、男は目線を逸らしながら言った。
「・・・・・・石川梨華に免じて、な。」
 どうやらこの男、梨華がさらわれた事に少し責任を感じているらしい。
 紗耶香はふっと笑った。
「そっか。・・・・・・でも、あきらめろ。」
「は?」
「石川は、コイツしか眼中にないからな。」
 ひとみを親指で指すと、男は顔を真っ赤に染める。
「ば、馬鹿野郎!!そう言う意味じゃねぇよ!!!俺は…」
「しっ!!静かに!!」
 美貴が叫んだ瞬間、男は気づいた。紗耶香も気付いたらしい。
「・・・・・・まずいな。」
「んあ?い、いちーちゃん?どうしたの?」
 不安気な真希に、紗耶香は言う。

「この部屋、囲まれた。」

 真希の顔が凍りつく。
「な…っ!!なんで!?誰に!?」

201:2003/10/21(火) 15:16
「この感じ・・・・・・松浦家の手の者達です。」
 美貴はそう言ってから、自嘲気味に微笑んだ。
「・・・・・・裏切り者への制裁でしょう。」
「…噂どおり、キッツいんだな。松浦家ってのは。」
 紗耶香は手早く端末を操作し、『水槽』を台座から外した。
「逃げんぞ。」
「・・・・・・。」
「オイ、藤本。何ボーッとしてんだよ。お前、頭の方持て。」
「へ!?」
 驚く美貴に、紗耶香は言う。
「何、意外そうな顔してんだよ。当たり前だろ?私一人でこんな重いモン持てるワケねー
だろ。あ、オマエ。そこの男。胴の部分抱えろ。バランス悪いからな。
 それからオマエ、こんなヤバいコレクションしてるくらいなんだから、秘密の抜け穴く
らい作ってあるんだろ?案内しろ。」
「…わ、わかった。」
 男に指示してから、美貴に向き直る。

202:2003/10/21(火) 15:16
「・・・・・・あのな。オマエが私のどんな噂聞いてんだか知らないが。」
「・・・・・・。」

「少なくとも私は、一晩自分の家に泊めたヤツを見殺しにできる程、神経太くないんだ。」

 ひとみの手を引いた真希に、にっこりと笑いかけられて。
「…ありがとう…ございます…!!!」
 そう言って、美貴は目を潤ませた。

203クロイツ:2003/10/21(火) 15:16


 うーむ。いちーちゃんの男前っぷり炸裂!!
 そして、あややは悪人っぷり炸裂(笑)

>>186名無し(0´〜`0)様
 松浦さん、悪くし過ぎたと反省しております(笑)
 救い…色々と考えておりますので…。
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!
 P.S.お気になさらないでくださいませ♪

>>189名無し(0´〜`0)様
 あやや…本当に、今回更に悪〜くなっておりまする…。
 >今一番楽しみにしています。
 あ、あああああ、あああ、ありがとうございます!!
 う、嬉し過ぎて鼻血噴きそうですッ!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>名無しのいしよし様
 >私も今こちらが一番の楽しみです〜
 ほ、本当ですか!?ぎゃー!!!う、嬉し過ぎるぅぅぅ〜(感涙)
 ありがとうございます!!頑張りますッ!!!

>本庄様
 おおう!こんにちは♪
 >なんかケーキ屋さんの時より凄みがあるような…。
 そうですねぇ…あっちで下地作っちゃったんでパワーアップしまくりとゆーか…(笑)
 悪いあややは書いてて楽しいです(笑)
 さーて梨華ちゃん。どうやって危機から脱するのかっ!!
 がんばります!どうぞよろしくです!!

204名無し(0´〜`0):2003/10/21(火) 21:45
ホントにホントーに
あややを救ってくださいね。

205タロイモ:2003/10/24(金) 19:55
いちーちゃん!よっ男前!
それよりみんな無事に逃げ出せるのか心配です。
梨華ちゃんをいじるあやや…もう最高です。
次回も楽しみにしております。

206名無し(0´〜`0):2003/10/30(木) 17:31
いちいちゃん男前すぎ!!かっこいい!!
ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
続きがはやく読みたいよ〜
ですが、じっくり待ちます。がんばってください

207脱出:2003/11/03(月) 20:29

 美貴を先頭にして脱出を図った面々は、外に出るなり黒服の男達に囲まれた。
「藤本美貴!亜弥様の信頼を裏切った罪は重いぞ!!」
 そう言われて眉を寄せる美貴の前に、真希が躍り出た。
「食らえー!!」
「な!?」
 真希の腕の一部が開き、そこから超小型の銃が出て来た。
 ぱらららら、と言う軽い音と共に銃口から飛び出したのは…睡眠薬を塗った針。
「うわ!」
「うおぉっ!?」
 針に刺された黒服の男たちが、ばたばたと倒れて行く。
「んあ、さすがに利くね〜。いちーちゃんの特別調合の睡眠薬は〜♪」
「ははは。最低でもあと十時間は起きられないはずだぞ。」
 場に似合わない明るい声。
 それを聞いてはっと我に返ったひとみは、自分も戦闘モードに移行する。
 しかし。
「…待て!お前は戦うな!!」
 紗耶香に言われ、ひとみはあわてて安全装置を元に戻した。
「な、なんで!?」
「・・・・・・お前の身体に仕込んであるのは、後藤の武器とは違うんだよ!!後藤のは
護身用だけど、お前のは…殺人用なんだ!!」

208脱出:2003/11/03(月) 20:29
「え・・・・・・!?」
 少なからず、ひとみはショックを受けた。
 梨華からは、『真希と同じ護身用』と言う説明を受けていたから。
「…それだけ石川は、お前の事を心配してたんだよ…。
 だけど私は・・・・・・こんな事くらいでお前に殺しなんてしてもらいたくない。」
 何があっても、ひとみだけでも生き残れるように。
 そう言う注文を受けて、武器を作り直したのだ。
「・・・・・・詳しい話は、後だ。」
 ジリジリと寄って来る、黒服の男達の輪。
 それを意識して、紗耶香は舌打ちをした。
「…クソッ!!慎重に行動してんじゃねぇよッ!!」
「んあ、これじゃー隙を突く事もできないねぇ。」
「あの、私が囮になって…」
「「却下。」」
 真希と紗耶香に同時に却下され、美貴はすごすごと引き下がる。
「・・・・・・さーて。そろそろ時間だな。」
 紗耶香は不適に笑って、時計を見た。

209脱出:2003/11/03(月) 20:29

****************************************

 歯軋りの音が、豪華な室内に響く。
「ふふふ…悔しい?石川様。」
 狂った歌声のようなその声音に、梨華の神経は刺激される。
「そうですわよね。悔しくてたまらないでしょう!!愛しの『Y−0412:HITOM
I』がピンチにさらされているのに…あなたはモニターで見てる事しかできないんですも
のね!!」
 歯軋りが、亜弥の笑い声にかき消された。
 もしも梨華を縛っている縄が、ワイヤーを仕込んである特別製でなければ。
 もしも手足の自由を奪っている手錠が、超強力磁石でくっつけられている物でなければ。
(・・・・・・引き千切れたら、こんな女殺してひーちゃんを助けに行けるのに!!!)
 その眼力だけで、猛獣でも飼いならせそうな迫力を発している梨華。
 しかし亜弥は毛の先程も怯えていない。
「…でも、つまらないわ。あたくしはもっと、劇的なシーンが見たいのに。」
 亜弥は可愛らしく膨れてから、すぐに何かを思い出したようににぱっと笑う。

「そうだわ!ねえ、誰かあの者達に伝えてちょうだい。
 何人死んでも構わないから、一斉に飛び掛れ、って!!」

「!!?」
「そうでもしないと、つまらなくってしょうがないわ。」
梨華の腕が動くが、特別製のロープがそれを阻む。

210脱出:2003/11/03(月) 20:30
「…貴様…!!!」
「その台詞も聞き飽きましたわね。…『Y−0412:HITOMI』が死ねば、もっと
違った台詞が聞けるかしら。」
 ぱちん、と扇を閉じる。
「それは楽しみだわ。…さあ、誰か命じて。」
「・・・・・・待て!!!」
 梨華は、手錠を掛けられた足に力を入れる。
 超強力磁石で止められた手錠は、梨華の左右の手足をぴったりとくっつけている。
「…ッああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 掛け声と共に…その足が、肩幅くらいまで開いた。手も離れる。
「・・・・・・。」
 さすがに亜弥からも笑顔が消える。
「…まぁ。なんて根性。」
「・・・・・・ッ!!!」
 亜弥の周りにいた黒服の男たちが、身構えた。
 梨華は、ものすごい形相で亜弥をにらみ付ける。
「…ひーちゃんに、何かあってみなさい…ッ!!!」
「・・・・・・何かあったら、どうするつもりですの?」

「あんたら全員、皆殺しにしてやる…!!!!」

 ぞわっ。
 多分、生まれて初めてであろう。
 亜弥の背筋に、冷たいモノが走った。
 言い終わってしばらくすると、梨華はどさっと床に倒れる。
「・・・・・・。」
 その目を見て、亜弥はまた背筋が寒くなる。
 それは、本気の目だった。

211脱出:2003/11/03(月) 20:30

****************************************

 紗耶香が時計を見た直後、遠くの方から音が聞こえて来た。
「…これは、車…?」
 美貴のつぶやきに、紗耶香はウィンクを返す。
「そのとーり!…こんな事もあろうかと、援軍を呼んでおいた。」
 驚きを隠せずに、ひとみは音のする方向を見た。
 車が見えた。中型のバンだ。
 続いてナンバープレートを読み取る。
「・・・・・・い、市井さん!!あれって…!!」
 紗耶香はニヤニヤと笑って見せた。

「そう。柴田あゆみの所有してる車だ。」

「んあ♪それならこの人たち、手ぇ出せないね♪」
「え?」
不思議そうなひとみに、美貴が答える。
「…松浦家は、柴田家と親戚関係にあるんですよ。」
「…あ、そっか…。主人の親戚には、手ぇ出せないんだね…。」
 納得するひとみの前に、車が止まった。
 ばしっと助手席の扉が開いて、姿をあらわしたのは。

「いよぉ!!久しぶりやな!!」
「・・・・・・お、お団子頭ぁ!!!?」

 加護亜依だった。

212クロイツ:2003/11/03(月) 20:30


 更新〜。ちょっぴり懐かしい方が出て来ましたね♪
 ごっちんといちーちゃんのコンビ、書いててスゲェ楽しいです(笑)

>>204名無し(0´〜`0)様
 はい。きっと救われるはずです。
 ラストの構想は出来上がってるのですが…うふふ(笑)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>タロイモ様
 今回もいちーちゃん、やってくれてます!!根回し上手です(笑)
 なんかごっとん・いちーちゃんコンビが出ると、場面が明るくなりますね(爆笑)
 つーかひーちゃん、食われてる感が…(大汗)
 ありがとうございます!!がんばります!!

>>206名無し(0´〜`0)様
 今回のいちーちゃんはいかがでしょうか〜?
 そっちかって言うとごっちんの方が活躍してる感じですが(笑)
 ありがとうございます!!がんばります!!

213名無し(0´〜`0):2003/11/06(木) 19:23
あいぼん登場!楽しみになってまいりました
いちいちゃんもいいけど、ごっちんかっこいい!!

214名無し(0´〜`0):2003/11/06(木) 19:23
あいぼん登場!楽しみになってまいりました
いちいちゃんもいいけど、ごっちんかっこいい!!

215名無し(0´〜`0):2003/11/06(木) 19:24
ふかわ…_| ̄|○
スミマセン

216選択肢:2003/11/11(火) 14:41

 扉が、乱暴に開かれる。
「…誰!?」
 そんな風に開けられた事のない扉に、亜弥は驚きと不快が入り混じった表情を見せた。
 それと同時に、黒服の男達の間にも緊張が走る。
 そして更に、そこにいた人物を見つけて…狼狽の空気が漂う。
「お久しぶりね。梨華ちゃん。」
 床の上に転がった梨華に向かって、その人物は柔らかな笑顔を見せた。
 しかしそれも一瞬の事。
「…わたくしが間違っていたわ。」
 亜弥に向かい、彼女は言う。
「あなただったら、梨華ちゃんを任せられると思ったのに。」
「・・・・・・何の、用ですの!?」
「決まってるでしょう?」
 満面の笑顔を浮かべて、しかし揺るぎなく厳しい目で。

「梨華ちゃんを、帰してもらいに来ましたの。」

 背後に金髪の少女を従わせた柴田あゆみは、亜弥に言った。

217選択肢:2003/11/11(火) 14:41

****************************************

 憔悴した梨華を雅恵が抱えるようにして柴田家別邸に運び込んだのは、あゆみが亜弥の
家に乗り込んでから三十分後だった。
「…ごめんなさい。」
 あゆみは、ひとみに向かって頭を下げた。
「・・・・・・え?」
「わたくしの、人選ミスでこんな事になってしまって…。何とお詫びしたら良いかわかり
ませんわ。」
「あゆみお嬢様…。」
 客用のベッドに梨華を寝かせた雅恵は、そのままあゆみの背後にぴったりつく。
 そしてがっくりと肩を落としているあゆみの背に、そっと手を添える。
「…でも、助けてくれたよね。」
「え?」
「ありがとう。助けに来てくれなかったら、あたし達どうなってたかわからないから。」
「・・・・・・ひとみさん…。」
 ひとみはにこっと笑い、ぺこっと頭を下げる。
 そうしてから羽を動かし、梨華のもとへと飛んでいった。
「・・・・・・梨華ちゃん。」
 意識のない梨華を、覗き込む。
 布団から少し出ている手首には、手錠の跡が残っていた。

218選択肢:2003/11/11(火) 14:42
「・・・・・・。」
 痛い。
 胸が掴まれたような気分だ。
(リングの中で受けた傷よりも、数倍軽いのに。)
 ただの、跡。
 一晩経てばもう自然に消えているであろう、ただの跡。
 しかし、それがひとみにはすごく痛く感じた。
「・・・・・・。」
 少しでも和らぐように、と。
 ひとみはその跡に、ちゅっとキスをする。
 前に言っていたから。
『ひーちゃんにキスしてもらうと、痛みが消えるから。』
 すごく嬉しかった。それからは毎日のように、ほっぺやおでこにキスをしている。
 少しでも、梨華の心の傷が癒えるように、と。願いを込めて。
「梨華ちゃん…。」
 泣き出しそうな声でひとみが呼ぶと、梨華のまぶたが動いた。

219選択肢:2003/11/11(火) 14:42

****************************************

 「・・・・・・まぁ、これからどうするかってのが一番の問題だな。」
新しいタバコに火を点けて、紗耶香は言う。
「もー、いちーちゃん吸い過ぎだよ。」
「カテぇ事言うなって。・・・・・・実際、吸わなきゃやってらんないんだからさ。」
 しかしこの場にいる喫煙者は紗耶香だけだ。
 誰にも同意してもらえず(しかも雅恵には『あゆみ様の方に煙が来ない様、気をつけて
くださいね』などと言われた)、紗耶香は軽く舌打ちをする。
「…で?石川。」
「・・・・・・はい。」
目を覚ましたばかりの梨華に、紗耶香は言った。
「オマエ、本当にどーしたいのよ?」
 ひとみは、ちらりと梨華を盗み見る。
 その視線を感じ、梨華は苦笑した。

「…わたしは、変わりません。ひーちゃんを人間の身体に戻したい。」

「梨華ちゃん!?」
 ひとみは羽をはばたかせ、梨華の顔の前に飛び出す。
「あたしは…あたしはこのままで良いんだよ!?」

220選択肢:2003/11/11(火) 14:42
「・・・・・・でも…。」
「梨華ちゃんの傍にいられれば、あたしは本当にそれで良い!!」
「・・・・・・ひーちゃん…。」
 梨華は微笑んで、目を閉じる。
 ひとみは梨華の胸に飛び込んだ。
「・・・・・・わたしも、ひーちゃんに傍にいてほしい。」
「だったら、人間の身体なんて…!!」
「だけどね。」
 ひとみの言葉を遮って、梨華は言った。
「ひーちゃんに人間になって欲しい。」
「・・・・・・!!!」
「あまりにも不当に奪われた残りの人生を、生きて欲しい。」
「〜〜〜〜〜〜!!!」
 目から大粒の涙を流し始めたひとみを、梨華はやさしく抱きしめた。
「…しかし、石川。」
「はい?」
紗耶香は言いにくそうに、頭をかく。
「…最初に説明したよな?」
「・・・・・・はい。」
「何を…?」
 あゆみに問われ、紗耶香は口を開く。

「・・・・・・人間に戻ったら…ロボットだった時の記憶は、全部忘れる。」

『!!!!!?』
梨華と紗耶香以外の全員の間に、驚愕が走った。

221選択肢:2003/11/11(火) 14:43
「な、何や、それ…!!?」
 今までずっと黙っていた亜依が、立ち上がって叫ぶ。
「なんでやねん!!なんでそんな…!!!」
「仕方ないんだ…。」
 亜依の肩に、真希が座った。
「・・・・・・やっぱり、ね。」
「な…っ!?」
驚く亜依に、真希は言う。
「んあ。ごとーね、うっすらわかってた。」
「・・・・・・。」
「だって、脳に直結してない『魂の記憶』だもん。
 魂が元の身体に戻って、脳が働き出したら…忘れちゃう。」
 機械の身体を見て、手を握ったり開いたりしながら。
 真希は言った。
「・・・・・・ヨッスィーだって、なんとなくわかるでしょ?」
 ひとみは衝撃のあまり、言葉が発せなくなっていた。
「・・・・・・今すぐ、決めなくても良い。」
「・・・・・・。」
「よーく、話し合っとけ。」
 それを合図に、全員が席を立つ。
 紗耶香を先頭に、一人ずつ部屋を出て行った。
 一番最後になった美貴は、梨華にぽつりと言った。
「・・・・・・私ごときが、口を挟める問題じゃありませんが…。」
「え?」
「ひとみ様のお気持ちを、大切になさってくださいね。」
 二人きりになった部屋に、沈黙が落ちた。

222クロイツ:2003/11/11(火) 14:43


 うーむ。だんだん最終回に近づきつつあります。
 てゆーか最終回の構想、完璧に練りあがりました。
 …ちょっと寂しい感じ…。
 そして本日、歌舞伎見に行って来ます!!!

>名無し(0´〜`0)様
 お気になさらないでくださいませ☆
 つーかあいぼん、せっかく出て来たのに活躍場面あんまりかけなくてごめんなさい(大汗)
 ごっちんかっこいいですか♪よかった〜♪
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

223チップ:2003/11/11(火) 16:21
帰ってキタ━━━(゚∀゚ )━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━━━!!!!

最終回が近いのですか、ワクワクな反面私も寂しいです。
ひーちゃん人間になって欲しいけど、それも寂しいような(爆
最後まで頑張ってください、楽しみにしてます☆カブキイテラシャーイ( ^▽^)シ

224フェンリル:2003/11/11(火) 21:59
更新お疲れ様です。
ずっとROMっていましたがややレスが落ち着いたようなので書き込みをw

いよいよ最終回が近づいて来たんですね。寂しい気もしますが・・
それにしてもいいペースで更新されてますね。
私は仕事のせいもあってROMるのが精一杯ですが応援してますので。
次回楽しみにしてますね。

P.S 歌舞伎見物ですか・・中々渋い趣味ですねw

225『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:14

 嘘じゃない。この気持ちだけは、本物。
「…はぁ、はぁ、はぁ…。」
 美貴は乱れた息を整える為、足を止めて壁に手をついた。
「・・・・・・はぁ。」
 鍛え上げられた身体は、すぐに普段のコンディションを取り戻す。
 背筋を伸ばす。…だけど、どうしても丸まってしまう背中。
 それはきっと、怖いから。
「亜弥様…。」
 もう、十何年も昔に心に決めた決意が心を埋め尽くす。
『みきたん、はい!これ、あげる!!だから、げんきだして!!』
 両親を亡くした美貴に、涙にゆがんだ笑顔で一輪の花を差し出した幼い少女。
 一生、護ると決めた。その為だけに強くなった。
「・・・・・・。」
 ぐっと拳を握る。
(…覚悟は、決めた。)
 あの二人を見て、決めたのだ。
「…誓ったはず。あたしは一生、亜弥様を護ると。」
 『護る』と言う言葉の意味を理解し切れてなかった。
 だけど、今は・・・・・・。
 美貴は、インターホンを押した。
 そして叫ぶ。

「藤本美貴です。…亜弥様の下に、戻って参りました。」

 『松浦』と書いてある表札を見上げ、美貴は微笑む。
 ここが墓場になってもかまわない、と。

226『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:15

****************************************

 「よくもまぁ、顔を見せられたものですわね。」
 亜弥の顔は、冷たく笑っていた。
「あたくしを、裏切ったくせに。」
「・・・・・・反論の余地もございません。」
 拘束具は一切つけられていない。
 その代わり、無数の銃口が頭部に突きつけられている。
「それで?何故戻って来ようなんて思ったのかしら?」
「それはもちろん。」
 迷いを捨てた者の持つ、まっすぐで穏やかで真剣な瞳に射られて。
 亜弥は身体が動かなくなりそうになった。
「・・・・・・もちろん?」

「あなたに、会う為に。」

「!!」
 ぱしん、と軽い音が響いた。
 亜弥の平手が美貴の頬を引っ叩いたのだ。
「…この後に及んで、戯言を…!!」
「戯言ではありません。…真実、そう思ったから戻って来たのです。」
「黙りなさい!!」
 亜弥の表情に焦りが混ざる度、美貴の笑顔の穏やかさが増す。
「・・・・・・本当です。」
「っ!!」
「本当にただ、会いたかっただけなんです。…あなたに。」
「!!!」
 二度目の平手打ちで、美貴は唇の端を切った。

227『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:15
 たらりと赤い血が、流れ落ちる。
「…嘘よ!!裏切ったくせに!!あたくしを置いて逃げたくせに!!」
「申し訳ございませんでした。」
 九十度に頭を下げ、美貴は言う。
「…言い訳は、いたしません。ただただ、申し訳なく思っております。」
「・・・・・・ッ!!あなたは、どこまであたくしを馬鹿にするの!!?」
「しておりません。」
「してるわ!!あのまま柴田家の敷地にいれば安全だったのに!!わざわざ戻って来るな
んて…馬鹿にしている証拠ですわ!!あたくしがあなたを殺せないと、高をくくっている
のでしょう!!?」
「いいえ。」
 美貴は顔を上げ、穏やかだが決意を込めた厳しい視線で言う。
「あなたは、私を殺すでしょう。」
「・・・・・・!!?」
「あやたん。」
「!!!!」
 美貴の突然の呼びかけに、亜弥はふらりとよろけた。
「・・・・・・。」
 無数の銃口を無視するように、美貴は数歩前に出る。
 そして、強く亜弥を抱きしめた。

228『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:15
「ちょ…!?何を!!?」
 亜弥を抱きしめていれば、ボディーガードの連中も発砲できないとか…そんな事は、美
貴は一切頭になかった。
 ただただ、抱きしめたかったのだ。
「あやたん…。」
「・・・・・・ッ!!!」

「…あやたんにだったら、殺されても良い。」

「…やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 サイレンのようにけたたましい叫び声を上げ、亜弥は意識を失った。
「・・・・・・愛してるんだよ。あやたんを…。」
 ぐったりとした身体を抱き上げて、ボディーガード達に言った。
「…亜弥様の部屋に運びます。」
 その口調が、その姿が、あまりにも気高く美しかったから。
 ボディーガード達は、誰も動けなくなった。

229『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:16

****************************************

 亜弥は、髪を撫でられる感触で目を覚ました。
「・・・・・・。」
 覚えのある感触。
 こんな事を許したのは、世界でただ一人。
 実の母親にすら、髪を触る事など許さなかった。
「・・・・・・みきたん…!!!」
 現実に戻らされた。苦笑している美貴の顔が見える。
「…ごめんね、あやたん。」
「・・・・・・。」
「あたしね、間違ってたんだ。ずっとずっと…ずぅぅぅぅっと。」
 亜弥の髪を一房持ち上げ、それに優しく口付ける。
「何、を・・・・・・?」
「あたしは、あやたんを護りたかった。」
 その一本一本までをも愛しむように。
 美貴はさらりと純白のシーツに、髪を落とす。
「だけど、とある人達に出会ってわかった。…あたし、間違えてたんだよ。」
「わけ…わからないッ!!」
 涙が溢れる。
 憎くて憎くて仕方ない相手。裏切られた事が許せなくて。
 次に会ったら絶対に、この手で殺してやると心に誓った相手。
 その相手が愛しくて、目の前にいるのが嬉しくて。
 それで、涙が止まらない。

230『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:16
「あやたん…。」
 自分が抱いている気持ちが、どんなものなのかわからない。
 いや、身体が拒否している。
 もしもわかってしまったら。
 …きっと自分は、もう手放せないだろうから。
「・・・・・・あたくしは、執着なんてしたくない。」
「え…?」
「何にも、寄りかかりたくない。一人で立つの。
 自分以外のモノは、『利用』するだけ。『頼る』なんて絶対にしたくない!!」
「…あやたん…。」
 これ以上側にいたら、危険だ。
 身体の隅から隅まで、拒絶している。

「・・・・・・出て行きなさい。二度とあたくしの前に、姿を見せないで…!!!!!」

 それが、一番良い方法。
 危機回避の本能。
 美貴が側にいたら、絶対に自分は駄目になる。
 自分は、自分が一番嫌いな人種の人間になってしまう。
『…あなたしかいないの!!お願い、捨てないで!!!』
 そう、大嫌いなあの女のように。

231『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:17

****************************************

 亜弥の精神状態が異常なのは、見るだけでわかった。
 だから距離を置いた方が良いと、美貴は判断したのだ。
「…また、来れば良い。何度でも話に通えば良い。」
 美貴はそう呟いて、松浦家の敷地から出ようとした。
 この門から敷地内に入った時は、死ぬ覚悟だった。
 だけど、生きて出ようとしている。
「・・・・・・変なの。」
 もしかしたら、『生きる』と言うのはそう言う事なのかも知れないな。
 美貴がそう考えた、その直後。

「…火事だ─────────────────────────────!!!!!!」

 そんな叫び声を聞いた。
「!!?」
 信じられない思いで振り返って、松浦邸を見上げる。
 窓の内側が、真っ赤に染まっていた。しかもあれは、亜弥の寝室のある階だ。
「・・・・・・!!!!」
 美貴は、自分の過ちに気付いた。
 何と言われても、亜弥の側を離れるべきではなかったのだ。
「…あやたん!!!!」
 邸の中に駆け戻ろうとして、腕をつかまれた。
「なっ!?」
「待て、藤本!!」
 美貴を止めたのは、元ファイターの男。
 以前、美貴の上司だった男だ。

232『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:17
「なんで止めるんですか!?行かせてください!!あやたんが!!」
「・・・・・・駄目だ!!もう、終わりなんだよ…松浦家は。」
「な…!?」

「火を放ったのは、亜弥様自身だ。」

「・・・・・・!!!!」
「だから、待て!!」
 渾身の力を込めて、男は美貴の腕をつかむ。
「…もう、駄目なんだよ!!」
「何が駄目なんですか!!?」
「…亜弥様は・・・・・・もう、回復の見込みがない!!知っているだろう!!亜弥様は
あきらかに異常になられてしまったんだ!!」
 美貴は、男の腕を振り切った。
「お、おい!!」
「異常か正常かなんて、関係ない!!」
 美貴は、泣きたいけど泣けない…そんな顔で男をにらみつけていた。

「…ただ、あたしは・・・・・・あやたんの笑顔が、もう一回見たいだけなんだ…!!」

 一輪の花を差し出してくれた少女。
 その子を『護る』と誓った。
 …きっとそれが、美貴の一番正しい答え。
「…もう、間違えないよ。あたし…。」
 美貴は、燃え盛る炎の中へと駆けて行った。

233『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:18

****************************************

 「…Piacer d'amor piu che un di sol non dura;…」
 炎が巻き起こす轟音の中、亜弥は消え入りそうな声で歌っていた。
 教えてくれたのは、母だった。
 しかし、直接歌って聞かせてくれたのではない。
 いつもいつも、愛人のもとへ通う父の背中を見ながら、ぽつりぽつりと歌っていたのを
聞いていた。
「…martir d'amor tutta la vita dura.…」
 その歌声が、寂しそうで悲しそうで。
 亜弥は、そんな母親が大嫌いだったのだ。
「Tutto scordai per lei,per Silvia infida;…」
 息が苦しい。熱い。
 だけど、それすらも心地よく思える。
 これで自由になれるのだと思うと、自然と笑みが浮かんで来る。
「ella or mi scorda e ad altro amor s'affida.…」
 泣きたいのは、何故だろう。
 何も思い残す事はないはずだ。

234『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:18
 計画はすべて失敗した。
 柴田家に邪魔されたのは癪に障るが、しかしそれも良かったと思える。

 それに、最後に美貴に会えた。

「…Piacer d'amor…」
 死の直前くらい、素直になろう。
「piu che un di sol non dura;…」
 大好きだった。不器用な程、真摯に自分と向き合ってくれる彼女が。
「…martir d'amor tutta la vita…」
 愛しかった。彼女の全てが。
「…dura.…」

「あやたん!!!」

 歌声と、重なった。
 幻聴かと思った。
 炎の向こう側から、見えた人影。
「・・・・・・馬鹿ね。」
 どうして涙が溢れるのだろうか?

235『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:18

****************************************

 亜弥を抱き起こし、美貴は叫ぶ。
「何でこんな馬鹿な事を!!」
「・・・・・・。」
「ほら、立って!!逃げるよ!!」
「・・・・・・。」
 亜弥は、美貴に薄く笑って見せた。
「…なんで、来たの…?」
「来ないワケないでしょ!!?」
 美貴の怒った顔。
 くすぐったくて、笑いがこみ上げて来る。
「・・・・・・あたくしの事なら、放っておいて。」
 疲れたように、ため息をつきながら。
「…あたくしは、もう良いの。もう・・・・・・全てを終わらせたいから。」
 ぱしん。
 右頬に、軽い衝撃。
「・・・・・・?」
 一瞬、何が起こったのかわからずに…亜弥がきょとんとすると。

「勝手な事言うな!!!!」

 ぼろぼろに涙を流した美貴が、叫んだ。
「ここまで好き勝手しといて、逃げるつもり!?そんなの絶対許されないんだからね!!」
「・・・・・・。」

236『護る』と言う事:2003/11/19(水) 01:19
「…あやたんには、まだ仕事が残ってる。」
「・・・・・・え…?」
 美貴は、亜弥を背負って立ち上がる。
「ちょ、ちょっと・・・・・・!?」
「…謝らなきゃいけないんだよ。みんなに。」
「・・・・・・。」
 美貴の背中のぬくもりを感じて…唐突に亜弥は思った。
「…あたくし・・・・・・まだ、死んじゃいけないのね…?」
「あたりまえだ!!」
 炎を避けて、美貴は進む。
「…おろして、みきたん。」
「なっ!?まだ死にたいとか…」

「自分で、歩けるから。」

 美貴は亜弥の目を見た。
 そしてにこっと笑って見せる。
「「・・・・・・おかえり。」」
 どちらからともなく、二人は手を重ね合った。

237クロイツ:2003/11/19(水) 01:19


 あやみきオンリーです。
 …なんだか長くなりましたね、今回(大汗)
 ちなみにあややが今回歌ってるのは『Piacer d'amor(愛の歓びは)』と言う題名のイタリア歌曲です。
 クロイツの母が、『あんたが今までで歌った曲の中で、一番好き』と言う曲です。
 歌詞対比は以下の通り。

Piacer d'amor piu che un di sol non dura;
愛の喜びは一日しか続かないのに
martir d'amor tutta la vita dura.
愛の苦しみは一生涯続く。
Tutto scordai per lei,per Silvia infida;
私はあの不実なシルヴィアのために全てを忘れたのに
ella or mi scorda e ad altro amor s'affida.
彼女は今私を忘れ、ほかの愛に身を委ねている。

 フラれ男の歌ですね。続きもありますので、興味のございます方はどうぞCD等でお聞きくださいませ。
 良い曲ですよ〜♪

>チップ様
 急展開ですみません(大汗)
 >ひーちゃん人間になって欲しいけど、それも寂しいような(爆
 そのあたりは多分、次回で決定するかと…。
 ありがとうございます!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!!

>フェンリル様
 おお!お久しぶりです!!
 ありがとうございます♪良いペース、ですかね(大汗)もっときちんと更新したいくらいで…(大汗)
 歌舞伎、楽しかったですYO♪
 お仕事がんばってくださいませ!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

238チップ:2003/11/21(金) 22:49
読みながら何度も「あやたん!!」と叫んでしまいました(爆
やっぱり笑顔が1番ですよね(何
ひーちゃん次回決定ですか、楽しみです。

239名無し(0´〜`0):2003/11/23(日) 14:59
。・゚・(ノД`)・゚・。
あやみきサイコーーーーーーーーー!!
間に合ってよかったよ

240名無し(0´〜`0):2003/12/11(木) 22:05
作者さんが心配…

241選択:2003/12/12(金) 14:15

 長い沈黙の後、ひとみが口を開いた。
 ぽつりぽつり、まるでかみ締めるように。
「…初めて会ったのは、市井さんの研究室だったよね。」
「うん。」
 梨華の声の響きは、穏やかで優しい。
「…第一印象は、最悪だったよ。」
「だろうね。」
「梨華ちゃん、いきなり『こんなちっちゃいのにわたしのパートナーが務まるはずない』
とか言うしさ。」
 くす、と梨華の笑い声が聞こえた。
「そうだったね。…だってあの頃はわからなかったんだもん。人の能力なんて、外見だけ
じゃ図れないなんて事。」
「でもさぁ、ちょっとはわかっても良かったんじゃない?」
 羽をくるりと動かして、ひとみは梨華の顔の前で止まる。
「自分だって、そんな華奢な身体で『ストリート・ファイト最強』とか言われてるんだか
らさ。」
「…もしかしたらあの当時のわたし、コンプレックス強かったのかな?」
「そうかもよ。意外と。」
 目を合わせて、くすくす笑い合う。

242選択:2003/12/12(金) 14:16
 そうしている内に、ひとみの顔が『泣き笑い』になる。
「・・・・・・あれから、思い出たくさん作ったよね。」
「…うん。」
「・・・・・・。」
 大きな瞳から、ぼろぼろと大粒の涙がこぼれ始めた。
「…嫌だよ。」
「…ひーちゃん。」
「それが全部消えちゃうなんて、絶対嫌だ。」
 目には涙。それから、絶望の光。
「ねえ、駄目なの!?このままずっと、一緒にいちゃ駄目!?」
「・・・・・・。」
「梨華ちゃんは、良いんだ!!あたしが忘れちゃっても…この思い出が全部消えちゃって、
あたしが梨華ちゃんじゃない人と人生歩き始めても、それで良いんだ!!」
「ひーちゃん。」
 そっと頬に、梨華の指が触れる。
 ひとみはびくっと身体を強張らせた。
「…ねえ、ひーちゃん。」
「・・・・・・?」
「…わたしはひーちゃんを、愛してる。」
「・・・・・・!!!」
 顔に、身体中の熱がのぼった気がした。

243選択:2003/12/12(金) 14:16
「きっと、もう現れない。もう二度と、ひーちゃんを想うのと同じ位愛情を抱ける相手な
んて現れない。…断言するよ。ひーちゃんこそ、わたしがこの人生の中で唯一愛せる存在。」
「それなら…!!」
「だけどね。」
 梨華の笑顔は、透明に見えた。
「…だからこそ、わたしとの思い出を全部忘れちゃっても…それでも、人間に戻って欲し
い。幸せなお嬢様に、戻って欲しい。」
「なんでだよ!!」
「・・・・・・。」
 梨華は、ひとみを胸に抱きしめた。
「…わたしは、ひーちゃんと一緒にいる事が一番の幸せだけど、ひーちゃんは違う。」
「・・・・・・っ!!」
「それが、わかるから。…このまま一緒にいたら、わたしもひーちゃんも苦しくなっちゃ
う。」
「…なんでだよ!!梨華ちゃん、何勝手に決めてんだよ!!!あたしだって、梨華ちゃん
と一緒にいるのが一番…!!!」

244選択:2003/12/12(金) 14:16
「・・・・・・ねえ、お願い。わたしの我侭、聞いて?」
「っ!!!」

「人間に戻って、幸せになって。
 それがわたしの、人生最大の我侭だから。」

 ひとみは、意識が急速に遠のくのを感じた。
 今更のように、外から何かの信号が送られて来たのを感じ取る。
 梨華の手元を見ると…小さなリモコン。
「…強制…終了…!?」
「・・・・・・。」
「ひ…卑怯…だよ、梨華ちゃ…っ!!」
「・・・・・・。」
「あたしは…あた…し…」
 カクン、とひとみの身体から力が抜けた。
「・・・・・・。」
 ぽつり、ぽつりと…ひとみの服が濡れる。
「・・・・・・。」
 声も出さずに、梨華はしばらく泣き続けた。

245選択:2003/12/12(金) 14:17

****************************************

 「ただいま帰りました。」
 美貴の声に、その場にいた全員が顔を上げた。
「オイお前!!また勝手に出て行って…!!!?」
 紗耶香は文句を言いかけたが、美貴の隣にいる人物を見て絶句した。
「…松浦亜弥!?」
 亜依が全員をかばうように前に出る。
「藤本さん!!どう言うつもりやねん!!」
 美貴は亜弥を気遣うように見るが、亜弥はそんな美貴を制して一歩前に出る。
 そして…

 ぺこりと、頭を下げた。

「「「「「!?」」」」」
 その場にいた全員が、目を疑う。
「お騒がせして、本当に申し訳ありませんでした。」
「…あ、亜弥ちゃんが…謝ってる…!!」
 親戚として付き合いの長いあゆみでさえも、驚きの声を漏らす。

246選択:2003/12/12(金) 14:17
「…精神的に追い詰められ過ぎていて、周囲が見えなくなっていたとは言え…許されない
事をしました。本当にごめんなさい。」
「…謝る相手が、ちゃうやろ。」
「いえ、皆様にも謝らなくてはなりませんわ。」
 そんな亜弥の背中を見ながら、美貴は喜びをかみしめていた。
(…あたしの大好きな、あやたんだ…!!)
「あー!!わかった!わかったよ!!」
 紗耶香は大きな溜息を吐いてから言った。
「…ったく、藤本。そんな嬉しそうにニヤニヤしてんじゃねぇっての。私ん所に来てから、
切羽詰ったよーな顔しか見せなかったクセに…。」
「あはっ!良かったじゃん、藤本さんが元気になって。いちーちゃん心配してたもんね〜♪」
「うるさいぞ後藤!!…それよりも。」

247選択:2003/12/12(金) 14:18
 紗耶香は奥の部屋に続く扉をちらりと見た。
「…お前が本当に謝らなきゃいけない相手は今、取り込み中だぞ。」
「待たせて頂きますわ。」
 固い決意を宿した瞳で亜弥が言うと、あゆみも溜息を吐く。
「…それじゃ、待ってる間にお風呂にでも入ってらして。なんだか二人とも焦げ臭いわ。」
 その言葉で、雅恵が動き出す。
「…焦げ臭いって。自分ら、どっから来たん?」
 亜弥と美貴は顔を見合わせてから、声を揃えて言った。

「「火の海?」」

「・・・・・・なんでやねん。」
 うんざりした亜依の声が、和らいだ空気に溶けた。

248選択:2003/12/12(金) 14:18

****************************************

 静かに泣き続ける梨華の背中を、紗耶香がぽんっと叩いた。
「・・・・・・使ったのか。そのリモコン。」
 梨華はこくりと頷く。
「…って事は、ソイツは人間に戻るのを拒否したって事だよな?」
 次は、ちょっと間を置いてから…こくり。
 紗耶香は、バリバリと頭をかく。
「・・・・・・っあ〜〜〜〜〜〜!!!」
 そしてタバコに火をつけると…一口吸って、すぐに灰皿に押し付けた。

「…お前、本当にソレで良いのか!?」

 梨華は涙が際限なく流れ続ける頬を、意識のないひとみの身体にくっつけた。
「…良いんです。」
「・・・・・・だけど!!」
「幸せ、でした。出会ってから今日まで。…こんな幸せ、一生縁がないと思ってた。」
「それなら何故、自分でその幸せ壊そうとしてんだよ!!」

249選択:2003/12/12(金) 14:18
 紗耶香の目には、どうしようもない悲しみが浮かんでいた。
「このままずっと一緒にいる事だって可能なのに、なんで自らそれを…!!!」
「・・・・・・駄目なんです。」
 梨華は、かすかに笑う。
「…このまま一緒にいたら、わたしはひーちゃんから片時も離れられなくなってしまうか
ら。このままじゃひーちゃんは、わたしの幸せの犠牲になっちゃうから。」
「・・・・・・。」
 紗耶香は、そっと目を閉じて…ドアへと向かう。
「・・・・・・手術は、明日の夕方から始める。」
 それだけ言い残して、部屋を去って行った。
 梨華は一晩、そのまま泣き続けた。

250クロイツ:2003/12/12(金) 14:19


 …長らく更新しなくてごめんなさい(汗)ちょっと体調崩してまして…。
 ストレス性胃炎なんですけどね。…まだ治ってないんですが(大汗)
 本当にごめんなさいね〜(泣)…てゆーか放置し過ぎで、もう読んで下さる方がいなく
なっちゃってたらどうしよう…(号泣)


>チップ様
 あやたん、火の海の中で我に返るの巻でした(笑)
 >やっぱり笑顔が1番ですよね(何
 本当に。笑顔が一番です。
 …とか言いながら今回みんな泣きっぱなしな感じですが(汗)
 ありがとうございます!!がんばります!!

>>239名無し(0´〜`0)様
 あやみき、書いてて楽しかったです。
 長さ的にも、短編書いてるような気分で書けました♪
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>>240名無し(0´〜`0)様
 ありがとうございますぅ〜(泣)そしてごめんなさい(大汗)
 ちょっと良くなって来てるんで、ちょっとずつ更新始めようと思います。
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

251オレンヂ:2003/12/12(金) 17:50
更新お疲れ様です。
はじめてレスさせていただきます。
クロイツさんの作品が大好きでもずっと読ませてもらってます。
涙が出てきてこのあとどうなっていくんだろって思ってドキドキ…
気長に待ってますので、まずは体を大切にしてください。

252240:2003/12/12(金) 21:28
体調の悪い時は無理しないで下さいね。
それが胃痛の原因になりそう…
いつまでも待ちますので、ゆっくりマターリ。。。

253フェンリル:2003/12/12(金) 21:58
こまめにチェックしててよかったw。
約1ヶ月ぶりの更新お疲れ様です。
体調未だ戻ってないんですね・・・心配です。
くれぐれも無理をなさいませんように。
私もストレスで胃潰瘍寸前までなった事があるので辛さは良く分かります。

>>放置し過ぎで、もう読んで下さる方がいなく
なっちゃってたらどうしよう…(号泣)

大丈夫ですよwまたーりと待っていますので先ずは療養を。では

254匿名匿名希望:2003/12/13(土) 00:17
更新お疲れ様です。
無理せずにゆっくりと身体直して下さいね。
私も皆様と同じようにマターリと待っています。

255名無し(0´〜`0):2003/12/17(水) 19:56
読んでますよーーーーーーーー!!
楽しみに待っていました!!
きっちり療養してがんばってください!!

256絶望:2003/12/17(水) 21:10

 手術室の前に、一組の夫婦がいた。
 彼らは紗耶香に向かって頭を下げる。
「私達の娘を、よろしくお願いします。」
 夫が言った。妻の方は、泣いてしまっていて…言葉を発せない状態である。
「…そんなに期待しない方が良いぞ。」
 紗耶香は冷たく言い放つ。
 見るからに高級だとわかるスーツを身に着け、意識しなくても銘柄を言い当てられる香
水の香りがするこの夫婦。そう言う人種が、紗耶香は昔から嫌いだった。
「成功するとは限らないからな。」
「もう、いちーちゃん!!…ごめんなさい、いちーちゃ…先生は誰に対しても無愛想で…。」
 フォローに回る真希に、夫はやわらかく微笑んで見せる。
「いいえ、私達なら大丈夫です。」
「でも…」
「先生にそう言って頂いた方が…私達としても気が楽ですから。」
「?」
 不安そうな表情の真希に、夫は言う。
「…昨夜、ご連絡を頂いた時・・・・・・正直、あなた達は私達を騙すつもりなのだと思っ
ていました。」

257絶望:2003/12/17(水) 21:11
「賢明な判断だ。頭から信用する方が間違ってる。」
 夫は、紗耶香に向けて温和な笑顔を見せた。
 その笑顔が、手術室のベッドの上で眠っている少女の微笑と重なる。
「…だけど、私達はここに来ました。」
「・・・・・・。」
「それが、どんな意味か…わかりますか?先生。」
「・・・・・・サッパリわからないな。」
 夫は妻の肩を抱いた。

「騙されても、夢でも良いんです。
 娘が生き返ると言う話に、乗らないわけには行かないんですよ。私達は。」

 妻がこくこくと何度も頷くのを見て。
 紗耶香も真希も、ひとみが生前どれだけ愛されていたのかを知った。
「・・・・・・。」
「…いちーちゃん…。」
 不安気な真希の髪に、そっと触れて。
「…終了予定時刻は、明日の朝だ。」
「はい。ここで、二人で待たせて頂きます。」
 紗耶香はその言葉を聞いてから、何も言わずに手術室へと入って行った。

258絶望:2003/12/17(水) 21:12
(…石川の馬鹿が…!!!)
 人間に戻ったひとみが、梨華を思い出す確率は…限りなくゼロに近い。
 しかもあんなに愛情豊かな夫婦のもとに戻るのなら、絶対に思い出す事はないだろう。
『ひーちゃんに、幸せになって欲しいから。』
 梨華の望みは叶えられるだろう。
 しかし、梨華の幸せは?
 ひとみの望みは?
「・・・・・・チッ!!」
 手術室の扉が閉まり、ベッドの上に横になった『Y−0412:HITOMI』と吉澤
ひとみの身体を見る。
「…ごめんな。」
 その呟きは、誰に向かって発せられたものなのか。
 それは、紗耶香自身にもわからなかった。

259絶望:2003/12/17(水) 21:12

****************************************

 ばし、っと平手打ちが飛んだ。
「…バ…ッカじゃありませんの!?あなた!!!」
 梨華は、叩かれた勢いに任せて顔ごと右下を向いていた。左頬が赤い。しかしその表情
は、見事なまでに感情がなかった。
 叩いた方の亜弥の方が、よっぽど痛そうな顔をしていた。
「あ、あやたん!駄目だよ、謝るつもりでここに来たんでしょ!?」
「それとこれとは別問題ですわ!!」
 亜弥は涙の浮かんだ目で、梨華をにらみ付ける。
「独りよがりも良い所ですわよ!!何が『ひーちゃんの幸せの為』ですの!!?『吉澤ひ
とみ』に戻って、彼女が幸せになれると…誰が決めたんですの!!?」
「・・・・・・。」
「彼女は、あなたと一緒に歩く人生を望んでいたのでしょう!!?それを…!!」
「・・・・・・全て、あなたの言う通りだよ。」
 梨華は痛いくらいの無表情のまま、唇だけを動かすようにして喋った。
「…そうだね。ひーちゃんはわたしといたいって言ってくれてた。」
「それなら何故!?」
「・・・・・・限界だった。わたしが。」
「!!?」
 わけがわからない、と言う感情をむき出す亜弥。

260絶望:2003/12/17(水) 21:13
 梨華はそんな亜弥の目を、見つめ返した。
「・・・・・・!!」
 亜弥は一歩退き、無意識の内に美貴の腕をぎゅっとつかむ。美貴も美貴で、亜弥を支え
ながらも…自分が倒れないように精一杯になった。
 梨華の目は、まるで奥の見えない空洞のように真っ暗だった。
「…もう、耐えられなかった。」
「な…にに、ですの…!!?」

「ひーちゃんへの、愛情に。」

 今まで黙って見つめていたあゆみが、目を逸らした。
「…すごく、すごくすごくすごく…すっごく好きで。大好きで、大事で…愛してて。」
「・・・・・・。」
「もう…耐えられなかった。自分がどんどんひーちゃんを…際限なくひーちゃんを愛して
行く事に。」
 梨華は、亜弥に喋っているのではない。いや、誰に向かって話しているのでもなかった。
そしてそれは、この場にいる全員にわかっていた。
「…わたし、駄目だから。わたしと愛情って言うのは…駄目になる、運命だから。」
 あゆみは雅恵の手を握った。雅恵はいたわるように、その手を優しく握り返す。
 知っていると言う重圧。それがこんなに痛いとは、あゆみは今まで知らなかった。

261絶望:2003/12/17(水) 21:13
「・・・・・・。」
 亜弥は、唇をぎゅっとかみ締めて…一歩前に出た。
 そしてもう一発、梨華の頬を引っぱたく。
「あ、あやたん!!」
「…教えて差し上げるわ。どうしてあたくしが、あなたのお母様の事を知っていたのか。」
「・・・・・・。」
 今はそれすらもどうでも良い。そんな顔をした梨華に、亜弥は言う。

「あたくしの母も、あなたのお母様と同じ病院に入院しているのよ。」

『!!?』
 衝撃が走った。梨華の顔にも、誰の顔にも例外なく。
「奇遇な事に、病室までお隣なのよ。…知らないでしょう?あなた、一度もお見舞いに行っ
てないみたいですし。」
「・・・・・・。」
「そして、あたくしもあなたと同じ。母に殺されそうになった事があるわ。」
「・・・・・・!!!?」
 亜弥は、強い光の点った目で梨華を突き刺す。
「あたくしの場合は、心中するつもりだったらしいけど。…あたくしが抵抗した事で、母
は精神を壊したわ。『お前まで私を捨てるのか』って、母が最後に言った言葉。あたくし
はきっと、死ぬまで忘れないでしょうね。」

262絶望:2003/12/17(水) 21:14
 梨華の目が、亜弥に問いかける。
 何故、そんな事を自分に話すのか、と。
 亜弥は笑った。
「…わかったから、ですわ。」
「・・・・・・?」
「あたくしとあなたは似ている。そして、あたくしは知ったから。」
「・・・・・・何を…?」
 亜弥は胸を張る。


「報われる愛も、あるって事を。」


 梨華の真っ暗な目から、涙が落ち始めた。
 それを見て、今までずっと黙って下を向いていた亜依が顔を上げる。

263絶望:2003/12/17(水) 21:14
「…なあ、『氷の薔薇』…いや、石川サン。」
「・・・・・・?」
「なんで、もっとひとみサンを信じられんかったん?」
「信じ…られない…?」
「そーや。」
 亜依は言った。
「…ウチが見た所、ひとみサンだってアンタを…アンタがひとみサンを愛してるのと同じ
くらい愛してたで。」
「!!?」
 亜依は、痛みを思い出すような表情で遠くを見た。
「…なんで、もっと必死になってあがかんかったんや。」
「・・・・・・。」
「必死になって、あがけば…なんとかなったのかも知れんのに。」
「・・・・・・。」


「相手は…めっちゃ側にいたのに。なんで、後悔しか残さん結末に自ら進もうとすんねん?」


 梨華の目に、鈍い光が差した。
 今度はすっと、雅恵が一歩前に出る。

264絶望:2003/12/17(水) 21:15
「石川。」
「・・・・・・。」
「私が言えるのは、ただ一つ。」
 背中に、体温を感じた。
 それは自分のものではなく、愛しい者の体温。
 出会うまで知らなかった。


「自分の愛情の価値は、愛する人が決めてくれる。」


 がく、と、梨華が床に膝をついた。
 戦いの中で、どんな苦境でも乗り越えた梨華が。
 松浦邸で手足の自由を奪われながらも、絶対に屈する事のなかった梨華が。
「・・・・・・。」

265絶望:2003/12/17(水) 21:15
 あゆみは、目を伏せた。
 見られなかった。
 あゆみだけではない。その場にいた全員が、目を伏せていた。
 これは、ある意味『自分の姿』なのだ。
『あたしはただ、梨華ちゃんを愛しちゃってるだけなんだから!!』
 無邪気にそう言っていた、小さな天使に救われなかったら。自分がこうなっていたのだ。
 梨華は膝をついたまま、呆然とする。
 涙は出なかった。
 ぽっかりと心にあいた穴は、二度と埋められる事はないだろう。
 埋めてくれる相手は、もういない。
 朝になるまで、誰も何も言えなかった。

266クロイツ:2003/12/17(水) 21:16


 次回、最終回です!!
 いやー。我ながら珍しく暗いなぁ…(大汗)
 そして体調の事ですが、皆様ご心配かけちゃってすみません(汗)しかしありがたいで
す(感涙)
 まだあんまり良くなってないんですが、ちょっとずつ回復してますのでっ!!

>オレンヂ様
 はじめまして!!ありがとうございます〜!!
 そんな風に言って頂けると、本当に嬉しくてたまらないです〜!!感激です〜!!
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>240様
 ありがとうございます!!
 はい、無理はしないように致します♪
 いやぁ、しかし更新できないのって辛いですね(泣)
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>フェンリル様
 ありがとうございます!!
 長らくお待たせしちゃってすみません(汗)しかし待ってて下さって嬉しいです!!
 お医者さんによると、胃のそこらじゅうに潰瘍ができては治りできては治りした跡があ
るそーで(大汗)うーむ。
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>匿名匿名希望様
 ありがとうございますー!!
 無理はしないように致しますね(汗)できるだけ気楽に考えなくては。
 がんばりますので、どうぞよろしくです!!

>名無し(0´〜`0)様
 ありがとうございますぅぅぅぅぅ!!!
 マジれすか!!?感謝感激ですー(感涙)!!!
 はいっ!!気楽にがんばります!!どうぞよろしくです!!

267管理人:2003/12/17(水) 21:38
どもども、管理人です(照
お体を崩されてるそうで心配しています。
私も、ひーちゃん欲しい人の一人ですが(w
あまり無理されないように、がんばってください。
いつもありがとうございますm(_ _)m
よかったら、メールくださーい(0^〜^0)

268タロイモ:2003/12/18(木) 00:11
次回で最後ですか、ちょっと寂しくなりますね。
最後はひーちゃんと梨華ちゃんには幸せになってほしいです。
体調を崩されたということで、とても心配しております。
一日も早い回復を願っております。
がんばってください!

269名無し(0´〜`0):2003/12/18(木) 11:36
もう次で最終回なんですね。
あややを救ってくれたクロイツさんなので
ひーちゃんと梨華ちゃんも幸せにしてくれると信じて…
次回更新を楽しみに(終わっちゃうのは寂しいけど)しています。


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