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小説を書くのれすっ。
1
:
リースィー
:2002/12/15(日) 13:40
初めてで初めましてな小説書きです。
ではひとつ。↓
「Confession」
「あ、夕陽」
思わず呟く。梨華ちゃんも気付いたみたいで同じように夕陽を見て呟いた。
「そういえば昨日は雨だったもんね。なんか久しぶりみたいな気分」
「うん」
梨華ちゃんの言葉に頷きながら足を止める。
仕事の帰り道。今日は梨華ちゃん家に泊まる日。早めに仕事が終わったからって事で、
いつも降りる駅のひとつ前で降りて道を散策したり雑貨屋に入ったり・・・
とにかく遊んだ後、今は夕食の材料を買ってようやく家に帰ろうとしてるところ。
梨華ちゃん家に行くときは必ず通るこの道。少し高い位置にあるからか、
町を見下ろす形で遠くまで景色が見える。もう何回通ったのかも分からない道だけど、
いつもは夜だったり朝早くだったりでこの時間に通る事ってそうはない。
私の目に映るすべてにやわらかい色が続いている。
「・・・初めてかなぁ。梨華ちゃんと夕陽見るの」
「え?もう、ひとみちゃん何言ってるの?初めてじゃないよ」
ほら、と梨華ちゃんが人差し指をピンッと上に伸ばして「思い出して」という
ジェスチャーをする。今更だけどやっぱり梨華ちゃんらしい「不自然さ」があるというか・・・。
「一緒に見たじゃない。ほら・・・あの・・・」
「?」
ピンッと張っていた指が少しずつ力を無くしてく。その代わりにブンブンと前後に振り始めて。
「思い出して」という割には自分が思い出してないように見えるけど・・・。
「だから〜・・・ほら・・・」
「ん?何?」
「ほら、あの・・・」
まだ指を振ってる。気のせいか顔が赤く見える。
「あの日よ、あの日」
「・・・何の日?」
私は全然分からない。それに気付いたのか梨華ちゃんは溜息をつきながら
指を下ろした。
「あのね、前・・・」
耳に手と口を寄せて、小声でボソッと言葉を投げかけられる。
「・・・あ」
思い出す。それと同時に声が出た。
「分かったでしょ?」
「・・・うん」
少し熱く感じる頬に手を当てて頷いた。
68
:
リースィー
:2003/05/10(土) 11:31
「・・・梨華ちゃん」
指で頬を撫でて、梨華ちゃんがこっちを向いた瞬間にタイミング良く唇を重ねた。
「っ・・・ひとみちゃん?」
梨華ちゃんの驚いた顔がすぐ側にある。その目に映ってる私はきっと、笑ってる。いつもみたいに意地悪いカンジで。
そのまま腕の中に引き込んで、開いた足の間に梨華ちゃんを座らせる。握っていたカップは自然に手から離れていった。
「こうやって食べよう」
また箸を持って大根を一口くらいに切り崩す。そのうちのちっちゃいのを取って梨華ちゃんの口に入れてあげた。
頭を横に倒して前にある梨華ちゃんの表情を覗き込む。
「あふいよ・・・
ちょっと苦笑いしてる。それを見て私は少しだけホッとした。
69
:
リースィー
:2003/05/10(土) 11:36
「ねぇ、梨華ちゃん」
少し落ち着いたところで、ゆっくりと話し始める。
「寒かったら、いつでもうちの中に入ってきてよ」
「・・・・・」
静かな梨華ちゃんをきつくないように抱きしめる。
「・・・ここは、いつでも温かいよ」
「・・・うん」
回していた腕に梨華ちゃんの手が乗せられる。その手に指を絡ませて、ゆっくり向き合う。
「温かい夢も、見れる?」
「・・・もう見てんじゃん」
少し笑って髪を撫で、またキスをする。それから頬擦りして耳元に辿り着いた。
この温かさを、この優しさを。
ずっとずっと思い出に刻み付けていきたい。
梨華ちゃんと一緒に。
70
:
リースィー
:2003/05/10(土) 11:41
毛布に包まって窓の外を眺める。梨華ちゃんは寝息を立てながら私にもたれていた。ちゃんとしっかり顔にマスクをして。
・・・冬はずっとこの寝顔なんだよなぁ。そう思うと少し残念な気もするけど、この顔を見ることができるからまた一緒にいれるようになったんだって、反対に嬉しい気持ちにもなった。
起こさないように少しだけマスクをずらす。口までは下げられないから鼻の頭までにして指で力なく触れた。
ずっとずっと、こんな風に梨華ちゃんの顔を見ていたい。笑った顔も泣いた顔も、今私の指が触れてくすぐったそうにしてる顔も。これからも、見ていきたい。
だから・・・。
この先もずっと、二人で過ごしていこう。
終。
71
:
リースィー
:2003/05/10(土) 11:48
吉澤さん視点、終わりです。
タイトルは「Feacross」の中の「この先の季節も」というお話です。
いや〜、最初は「この二人の“姉妹”って設定の話ってなかなか無いなぁ」と思い、
「何なら思い切って書いてみよう」という簡単な成り行きで書いてしまったわけですが・・・。
この二人のこのシリーズ、自分で書いといてなんですが、大好きなんです(笑)
皆様に受け入れてもらえる内容になっているかどうか心配なんですが、その“大好き”加減を皆様にお教えしたくてですね、今回は載せてみようと思ったのです。
ほかにも石吉以外にたくさんのシリーズがあるんですよ。だけどHPを持ってないもので・・・(泣)
では。
72
:
ぶらぅ
:2003/05/10(土) 17:01
初めてレスします。
リースィーさんの作品好きです(w
んでもって、某HPにカキコしてませんでした?w
多分推しCP一緒かと…(w
その作品もどこかでお待ちしています。そして石吉も!
頑張ってください。
73
:
名無し( `.∀´)
:2003/05/11(日) 01:13
更新お疲れ様です!新作、嬉しいですぅ・・
あっ。レスありがとうございます。勝手に感想
書いちゃってるのに・・でも、本当に好きなん
です〜。作者様の作品。一冊の本にしてほしい
くらいです。ではでは、ゆ〜っくり待ってます。
74
:
リースィー
:2003/05/17(土) 09:25
ぶらぅさんっ!?もしかして・・・。
と思ったらやっぱりー!!
はい、そうです。私ですっ。うあ〜、なんかすっごい嬉しいです。
まさか私の小説を読んで下さってたなんて・・・。
ありがとうございます。これからも頑張りますので見守っていてください。
名無し( `.∀´)さん。
いつもありがとうございます。相変わらず更新は遅いのですが・・・。
でも本当に読んでくれるだけでも嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。
ではひとつ。
75
:
リースィー
:2003/05/17(土) 09:28
ソファに座って窓の外を眺めてた。
だーれもいない部屋で、なーんも聞こえない部屋で、外では通り雨の音が響いてるけど、私の中には入っていかないから聞こえない。
どこかに出掛けてしまおうかと思った私の気持ちは、すぐ消えるくせに大きな敗北感をつれてきた雨に押し潰されてしまった。
「・・・・・」
テーブルの上に置いたままの携帯の、何とも言えない冷えた顔。
まるで今の私を表してるみたいで。
「・・・寂しい、よぉ・・・」
また誰にも聞こえないんだろう、か細い声で私は鳴いていた。
そうして過ぎていくんだと思った静かな午後。
76
:
リースィー
:2003/05/17(土) 09:32
「梨華ちゃん」
「・・・・・」
ドアの向こうには、ひとみちゃんがいた。
「・・・え?あ、何で?」
確かに流れてるのが分かった雫をほっぺたから取り去りつつも、私はまだ驚いた顔でドアの部を握り締めて、ひとみちゃんの顔を見上げてた。
「何でここにいるの?」
気が付けばありきたりな、お客に失礼な質問。だけどひとみちゃんは応えてくれた。
「ん?何だろーなあ・・・」
傷ついたお姫様を助けにきたって感じ?
「・・・ばか」
プッと笑ってそう言った数秒後。
「・・・ばか・・・」
私の声は掠れて、取り去った雫がまた溢れ出していた。
77
:
リースィー
:2003/05/17(土) 09:38
こんなずるい言い方して、私の奥深くに入り込んで。
・・・だけどホントは私の方が、
ずーっとずーっと、ずるくて。
「・・・矢口さんから話聞いたんだ」
ドアを閉めて個室状態になった玄関で、いつもみたいに少し小さい笑みでひとみちゃんは言う。
「最近一緒に話しててもそうだとは思ってた。けど・・・うん・・・」
“別れちゃった”なんて、知らなかったからさ。
「気が付いたらここに来てて、梨華ちゃんを元気にしてあげなきゃって思った」
「・・・うん」
少し湿っぽく感じるひとみちゃんの服の裾を握ってみる。それはヒンヤリしていたけど、さっきまで感じていた冷たさよりはずっと温かい。
温かいから・・・余計に泣きたくなる。
78
:
リースィー
:2003/05/17(土) 09:42
「梨華ちゃん」
「・・・う、ん・・・」
涙で声が詰まっちゃって。そんな私の手の甲を、私よりも大きい手が包んでる。
「もう泣かないで?せっかく助けに来たのにさ」
「・・・・・」
「うちに頼ってよ」
肩から頭の後ろを撫でられて、いつのまにかうつむいていた顔は少し上を向く。
「・・・ありがと」
でもその眩しさに耐えられなくて、私は崩れるようにひとみちゃんに飛び込んだ。
別に私たちは最初からズレてたわけじゃない。
最初の一歩が、とかでもない。
・・・今の私は何をそんなに痛い程、
ひとみちゃんの優しさに打ち震えているんだろう。
79
:
リースィー
:2003/05/17(土) 09:49
ベランダにイスを二つ置いて、ようやく陽射しの飛び始めた空を眺める。隣にいるひとみちゃんは、
「あちっ」
なんて言いながら、私が差し出した紅茶を飲んでる。
何でも良いよ。二人で“だべる”のっ。
結局何を喋って良いのか分からずに、私はずっと紅茶の水面を見てる。ベランダに落ちてる水たまりにも似て、引き込まれそうに沈黙を呼び寄せてる。
「何か久しぶりに梨華ちゃんがネガティブなとこ見た」
「・・・そう?」
私の反応にひとみちゃんは「うん、そういうところ」。
「何かねぇ、今日みたいなオフの日にはぜーったい外に出ないで、部屋にこもって“何で?”ってずっと落ち込んでるイメージ」
「・・・そんなに落ち込んでないよ」
半分当たってるけど。
80
:
リースィー
:2003/05/17(土) 09:54
ひとみちゃんはいつもみたいに「エヘヘ」って笑った後、「でも」と付け加えた。
「でもね・・・そんな梨華ちゃんが残っててくれてて良かったかも」
「・・・何でよ」
紅茶を一口飲んだついでに口を尖らせて聞いてみる。
「うん。・・・何か、うちの役目がなくなっちゃうのかなぁって。だって、ネガティブモードの梨華ちゃんを立ち直らせてたのって、うちだよ?」
「・・・まぁ、確かに」
「うちはさー・・・」
ずーっと、梨華ちゃんを待ってたんだよ。
応援するつもりでさ、「影でも良いや、支えてあげよう」って。
「・・・うん。ホントは気付いてたつもり」
だから私はずるい。
ひとみちゃんの気持ちも知ってた。私がこんなになっちゃった事に直接関係は無いけど。
だから逆に、ひとみちゃんと一緒にいる時間が長いだけ、辛かった。
81
:
リースィー
:2003/05/17(土) 09:57
「・・・うちもそんな事ぐらい知ってたよ」
ぬるくなった紅茶をぐいっといっき飲みしてひとみちゃんは応えた。そして一枚上の上着を脱いで私の肩にかけてくれた。そのあまりの温かさにどれだけ今の私が冷えていたのか知らされた気がした。
「知ってたけど、それでも一緒にいたかった」
ゆっくりと優しく肩を撫でる手に引き寄せられて。
また飛び込んだひとみちゃんの腕の中は、雨の匂いと紅茶の香りがした。
そしてそこに降りそそがれる、温かい光。
ひとみちゃんの服を通り抜けられない、光。
82
:
リースィー
:2003/05/17(土) 10:06
たったそれだけだけど、
今のそれだけでも唯一の意味を知るには充分だった。
・・・応えとして口に出すにはまだ柔らかすぎるけど。
「自転車で来たの?」
外に出ようよってひとみちゃんに誘われて道に出たら、そこには荷台付きの自転車が。ひとみちゃんは私の反応を見て笑いながら「だってさぁ」と応える。
「うちの家のところは雨降ってなかったし、一番乗りで梨華ちゃんとこに着きたかったから」
それよりほら、と後ろの荷台をポンポンと叩く手。
「出発しますよぉ〜」
「はいはい」
少し笑いながらも、ペダルに足を乗せて準備万端のひとみちゃんの腰に腕を回して横乗りした。
走り出した自転車。バランスを保って器用に運転してるひとみちゃんの肩を風が滑って私の髪を揺らしてる。
83
:
リースィー
:2003/05/17(土) 10:11
「ねぇ、どこに行くの?」
「んー、そうだねぇ」
スピードをそのままに考え込むような声。その間に自転車は土手に出た。
「あ、そうだ」
「ん?」
「虹」
「虹?」
私の声に「そう」と嬉しそうな声。思わず空を見上げると・・・。
「・・・おーっ」
そこにはくっきりとした虹がかかっていた。
「このまんま突っ走ってあっちまで行こうよ」
「お、良いねぇ」
「よっし、スピード上げるぞーっ」
宣言通りひとみちゃんは早こぎを始めた。急に強くなった風を心地よく感じながら流れていく景色を眺める。
遠くまで続いてる道をまたぐようにかかる虹。決して届く距離じゃないって事ぐらい、私もひとみちゃんも分かり切ってる。
84
:
リースィー
:2003/05/17(土) 10:13
・・・でも行きたい。
今は何もかもほったらかして、
ひとみちゃんと二人で。
「梨華ちゃん、好きだよ」
自転車のチェーンの音と同じくらいの声でひとみちゃんが言った。
何の疑いも無い、素直な声。
「・・・うん。私も好き」
背中にくっついてた顔を肩の方に寄せて、私も小さく呟くように言った。
すぐに分かったひとみちゃんの鼓動。
85
:
リースィー
:2003/05/17(土) 10:16
消えちゃう前に行こう。
・・・分かってる。でもすぐ着くよ。
水たまりが自転車のタイヤで小さく水しぶきを上げる。
でもそれにかまわずスピードは増して、涼しい風は通り過ぎる。
ひとみちゃんの匂いを感じる。
・・・もう、大丈夫。
目の前には、さっきよりも大きく大きく映る虹があった。
終。
86
:
リースィー
:2003/05/17(土) 10:26
今回は終了です。
えー、前に書いた「“よわひ”な吉澤さん」に続き、「“ひさネガ”(久しぶりにネガティブ)な石川さん」を書いてみました。
タイトルは「bicycle drive」です。直訳すれば「自転車でれっつごー(違」
一応ここは「石吉だらけ」にしようかと思ったのですが、やっぱり他のcpも書いてみたいので、(あ、“ネッツ”は別で)
次はそうしてみようかな、と思います。
(紺高あたりですとかね・・・)←好きなんですよぉ〜。
でも、石吉ベースで頑張るので「石吉じゃ無いじゃ〜ん」とけなされても良いので書かせてください(切実)
では。
87
:
リースィー
:2003/05/17(土) 14:18
え〜・・・同じ日なんですけど。
なんかあと一作書けそうなので書けるだけ書いておこうと思います。
で、やっぱり紺高を書きたいと思います。
88
:
リースィー
:2003/05/17(土) 14:20
また設定書き忘れた・・・。
えっと、去年の冬あたりです。
89
:
リースィー
:2003/05/17(土) 14:26
今日は寒いなぁ・・・。そう思って歩いてたら、空から白い雪が。
「・・・あー・・・」
一人。
そこで立ち止まって、しばらく空を見つめていた。
「お帰り〜。遅かったね」
玄関のドアを開けた瞬間、私の耳に心地良い声が響いた。年中変わらずにずっとほんわかしてる笑顔。彼女の笑顔が見たくて、最近はずっと「彼女より遅く帰ろう」ってわざと遠回りしたりしてる。
「うん。ちょっと雪が見たかったから」
「雪?・・・あ、ホントだ。肩白くなってる」
私の肩に彼女の手が伸びる。それにはらわれる、私の連れてきた雪。
「・・・・・」
それを無言で見つめる、私。
・・・去年の今頃の事が、不意に私の中によみがえった。
90
:
リースィー
:2003/05/17(土) 14:34
その日もこんな風に雪が降っていた。けど一人で道を歩いてたわけじゃなくて、その日はあさ美ちゃんも隣で歩いてた。
「雪、だいぶ降ってきたねー・・・」
私は空を見つめながら歩いて。あさ美ちゃんは「危ないよ」って言いながら私の手を握ってポケットに入れてくれてた。
「東京も雪って降るんだね。あんま見ないからちょっと意外だな」
「うん・・・私もそう思う」
夕方だったからもう空も暗くて。そこから白い雪が降ってくるから余計に目立って見えた。
「でもあさ美ちゃんのとこってずっと雪降ってるんだよねぇ。たっくさん」
「うん。でも、朝起きた時とかに見るとね、良い気分になるかな」
「・・・そっか」
そう応えるだけで、ポケットの中のあさ美ちゃんの手を握る。
・・・小さい頃から一緒にいたわけじゃないから、その分だけあさ美ちゃんが一人だけで感じてきた瞬間の一つ一つがうらやましい。・・・というより、私もあさ美ちゃんと一緒にその瞬間を感じていたかった。
そんな気持ちが常に自分を付きまとうようになったのは、つい最近のことじゃない。
91
:
リースィー
:2003/05/17(土) 14:40
「っあ〜・・・寒かったね」
家の前まで来て、私は自分から手を離してポケットから脱出した。
「風がちょっと強かったね。・・・あ」
急にあさ美ちゃんが声を上げた。何だろうと思いつつ体を向けると、あさ美ちゃんの手が私に伸びた。
その次すぐに鳴った“パサリ”っていう音。
「あ・・・」
あさ美ちゃんは、私の肩の雪をはらってくれていた。
「これでよし。雪って知らない間にくっ付いてくからね」
「・・・・・」
「・・・愛ちゃん?」
「・・・・・」
何か分かんないけど、体が固まってしまった。
体の中を何かが駆け抜けていくような、そんな感じにもなった。
「ねえ、愛ちゃんてば・・・」
あさ美ちゃんの手がもう一度私の方に伸びる。
「・・・・・」
その瞬間。
私の口は言った。
「あさ美ちゃん、結婚してっ」
92
:
リースィー
:2003/05/17(土) 14:48
「え・・・ええっ!?」
目の前で驚いた顔を見せるあさ美ちゃん。彼女が伸ばした手は私の両手に包まれていた。
「どっなっ・・・どう、したの、愛ちゃん。びっくりしたあ・・・」
ものすごくキョロキョロしてるあさ美ちゃん。その視線は外に向かってた。
とりあえず中に入ろう、って言われて、あさ美ちゃんに引っ張られて家の中に入れてもらった。上着を脱いでハンガーにかけて、リビングのテーブルで面と向かって座る。その間あさ美ちゃんはずっと顔をそらせて、片手で頬をパチパチ叩いてた。
「あの、愛ちゃん・・・?」
「ん?」
まだ“びっくり”を引きずってるのかなあって思いつつあさ美ちゃんの呼びかけに応えてみる。
「あの、さっきのさ・・・」
「うん」
「その・・・冗談、とか、じゃないよね」
上目遣いで私の事見てる。
「何でそんな大事な事。冗談でも言わんよ〜」
少し力んで言ってみたら、自分でも分かるほどに訛りが。
「私、あさ美ちゃんが好きだよ?」
「え・・・あ、うん・・・」
私が言った言葉に、あさ美ちゃんはいちいち顔を赤くさせて。何か、「まいったなぁ」とも聞こえた。
93
:
リースィー
:2003/05/17(土) 14:55
「・・・あの、さ、愛ちゃん」
「何?」
「その・・・さっきの愛ちゃんの言葉、ね?あれって、ホントにそのまんまで受け取っちゃって良いの?」
「うん。そのまんまの気持ちだよ?」
何かもう、モジモジしてるあさ美ちゃんがもどかしい。そう思ったらテーブルにあったあさ美ちゃんの手を握っていた。
「愛ちゃん・・・」
少しだけビクッとしたあさ美ちゃんの肩。
「あの・・・女の子同士だよ?私達」
「関係ないよ。そんな事」
言われると思った事。・・・私は手に力を込めた。
「だってね・・・」
好きになったもんは、しょーがないでしょ。
94
:
リースィー
:2003/05/17(土) 15:01
「・・・・・」
口がポカンとして。あさ美ちゃんは黙ったまま私を見つめて。
・・・だけど、その次は。
「・・・愛ちゃんっ」
「?」
“ぽふっ”って、何かが私を包み込んだ。・・・でも、見なくても分かる。
「・・・ぅお〜・・・」
いきなり来たもんだから、思わず変な声を上げてしまった。座ってたバランスもちょっと崩れて、今は飛んできたあさ美ちゃんを支えるためにだるまさんみたいにユラユラしてる。
「・・・・・」
だけど、予想以上の出来事に私の頭の中はすっごいフワフワして。心もフワフワして。
「もー・・・私も愛ちゃん好き」
「あははっ・・・私もあさ美ちゃん好きだよ〜」
それからちょっとの間、私達はユラユラしたまんまくっついてた。
95
:
リースィー
:2003/05/17(土) 15:09
ホットティーを飲みながら、ソファであさ美ちゃんにもたれる。あさ美ちゃんは私の買ってきたお菓子を食べてた。
「そうだねぇ。・・・ホントにあの時はびっくりしたな〜」
お菓子を食べる合間にあさ美ちゃんが呟く。私もホットティーを飲む合間に「そう?」って返してみた。
「愛ちゃん、いきなり言うんだもん。びっくりしない方がおかしいって」
「あー・・・でもねぇ、今も一緒にいられるんだから良いじゃない」
ちょっと笑って応えて、自分の薬指を明かりにかざしてみた。
・・・そこには、ちょこっとだけ光った指輪が。
「“結婚“したんだからさあ」
そのおかげかそうではないのか。
私達はこれからも一緒に仕事をすることが許されて。・・・まあこの指輪は家の中でしかはめられないけど。だけど一緒にいられるだけで嬉しい、というか。
とにかく、今の私は幸せで。
「・・・ね」
「ん?」
あさ美ちゃんがこっちを向く。お菓子は食べてない。
だから普通に私があさ美ちゃんの唇をもらった。
「っ!?・・・もう〜っ。愛ちゃんなんでいつもそんな風にするの〜っ!」
「あははは・・・」
“もうっ”ってあさ美ちゃんの手が私のほっぺたを軽くつねる。それは左手で、薬指にはちゃあんと私のあげた指輪が光ってた。
96
:
リースィー
:2003/05/17(土) 15:16
「ね、明日までに雪積もるかな」
「ん〜、どうだろ。どうして?」
「朝になったらね、一緒にカーテン開けて外の白い景色見て“うぉ〜っ”って言いたい」
「な〜んか、愛ちゃんらしいなあ・・・」
「一緒に見ようよ」
「朝の景色?・・・うん」
あさ美ちゃんは笑って応えた。
「じゃあ、今日は一緒に寝ようね」
「うん」
私も、笑って応えた。
お互いに左手を握り合って。
終。
97
:
リースィー
:2003/05/17(土) 15:22
あ〜・・・書き終えた〜・・・。
とりあえず急いでますので、タイトルとちょこちょこ。
タイトルはですね。一応これも「同棲シリーズ」として、「HB of DB」というお話の中の「ハジマリハユキノヒ」というものです。
「結婚」した二人の話ですね。これからメンバーもちょくちょく出てきます。(これからの話では、という意味で)
これを読んで「紺高はこんなん違う〜〜!!」と思った方。スイマセン。でも私にとってはこんな感じなんです。
では。
98
:
ぶらぅ
:2003/05/17(土) 20:16
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
某所で言っていた作品ですね?(w
自分は好きなので楽しみです。
もちろん石吉も好きなんでそちらも楽しみにしてます^^
結婚ラブラブ(・∀・)イイ!!っすね〜♪
ネガ石川もいいですよね〜、結構好きだったり…(w
それでは次回もマータリ待ってます♪
99
:
リースィー
:2003/05/22(木) 13:30
ぶらぅさん、ありがとうございます。
というわけで、今回は石吉の姉妹モノの続きを書きたいと思います。
100
:
リースィー
:2003/05/22(木) 13:34
久し振りの晴れ間。大きく開けた窓からはまだ雨の匂いが入り込んでくるけど、風は少し冷たくて心地良かった。
「・・・・・」
ずーっと空を眺めてみる。
そういえばここでまだ絵を描いてないな。
ここに来る前、私は絵の学校に通っていた。
小さい頃から絵を描くのが好きで、絵を描く手法も一通りは学んでた。
・・・学校自体はあまり好きじゃなかったけど、あの頃の私は絵を描くことしか知らなかったから。
101
:
リースィー
:2003/05/22(木) 13:40
この前の誕生日の時、ひとみちゃんが私のために買ってきてくれた画材セット。それは物置の横に置かれたまま開かれるのを待っていた。“描きたいときじゃないと描けない”っていうことをひとみちゃんも知っててくれてるみたいだけど、昨日か一昨日くらいに“そろそろ開けたら?”って苦笑いされた。
そうだね。・・・そろそろこの場所での“思い出”も作んないと。
窓の外には空しか見えない。・・・まぁ景色は後回しですぐ住める所を探してたわけだから仕方ないんだけど。・・・でもせめて川とかはあってほしかったなあ。
空と、後ちょっとした景色と・・・うん。これでいこう。大体二、三時間くらいかな。その頃にはひとみちゃんも帰ってくるだろう。
・・・そういえば。
ひとみちゃんと出逢ったのも絵を描いてる時だったっけ。
102
:
リースィー
:2003/05/22(木) 13:46
私は雨女なのだろうか。とにかく私の周りには雨が降りすぎてる。
その日もやっぱり雨は降っていた。私はとりあえず公園の遊具の中に隠れて画材が濡れないように守っていた。
大変だなぁ・・・。学校が終わったばかりだし、どうやって帰ろうか・・・。
「・・・?」
その時、ふと目に映った花。
草と草の間に立っている不釣合いな程綺麗な花が雨の雫にぶつかりながらも揺れていた。
それがあまりにも珍しく見えて、余計綺麗に見えて。
「・・・描かなきゃ」
そう思って口にしたら、手はもうスケッチブックとペンを持っていた。
雨はすぐ止むのだろうか。雲が切れて、雨音が少し弱くなったような気がして。雨が降っている間にどうにか描いておきたい。
どういう風に色付けしようか。普通に色をつけても面白くないかもしれない。綺麗に色をつけてあげたいけど・・・。
「綺麗な花だね。やっぱりそれ描いてたんだ」
103
:
リースィー
:2003/05/22(木) 13:53
「・・・!?」
その声と言葉にピタッと手が止まった。
後ろから聞こえた低くもなく高くもない声。それがすぐに女の人のものだと分かった。けど。
「・・・・・」
なぜこんな時にこんな場所で他の人の声が聞こえてきたのだろう。
私は振り返らずにはいられなかった。
「綺麗だよね。あっちに一輪だけある花」
「・・・・・」
私の目に映る彼女は私より背が高くて髪が肩くらい。そしてジーンズにシャツというラフな格好で。
ちょっと見たら、男の子に間違えてしまいそうな女の人だった。
「・・・・・」
「ごめん、邪魔だった?」
「あ、いいえ・・・」
ようやく我に返ってスケッチブックの方を向く。雨はまだ降っているけど、太陽の光が雲とこの公園の景色を脅かし始めていた。
「描いてて良いよ。雨もうすぐ止んじゃうから」
そう言われなくても手はまた動いていた。彼女もきっと雨宿りするためにここへ来たのだろう。ここに来る人もたまにいるし。
・・・でも、それにしても。
彼女の声は、なんて心地良いんだろう。
雨に似合う声、というか。とりあえず私にとっては心地良く感じる少し低い声。それはもしかしたら私自身の声が高いから、そういう声が逆に新鮮に感じるのかな。
104
:
リースィー
:2003/05/22(木) 14:00
「あの・・・」
「ん?何?」
「・・・すいませんけど、隣で喋っててくれませんか?」
「・・・へ?」
私の言葉にもちろん彼女は驚いた。
だって、おかしいと思う。普通は静かにしてなきゃとか、静かじゃないと集中できないって思うのに。私だってそういうほうが描ける筈なのに。
その時の私は、彼女の声をもっと聞きたいと思っていた。
「良いの?“話しちゃだめ”の間違いじゃなくて?」
「はい、あの・・・隣で話しててください」
「・・・うん。分かった」
彼女の返事に安心して、また手は動いた。
「雨降ってんのに大変だね。絵を描く道具って結構重いでしょ」
「はい、まあ・・・」
「ってか、雨降ってなくても大変だよね。・・・どっか学校行ってるの?うちの近くで見ないけど」
「絵の学校にちょっと・・・ここまで来てるんです」
「へぇ〜、じゃあ家遠いんだ」
そっかそっかって独りでに頷く彼女。今のこれだけの会話のうちに手はものすごく動いて、スケッチブックの中に取り込まれた花はもう完成に近づいていた。
105
:
リースィー
:2003/05/22(木) 14:06
初対面、なのに。自分的にものすごく人見知りのはずなのに。
私は酷く落ち着いて、今までにないほど調子良く絵が・・・。
「・・・描けた」
「お?早いね〜」
どれどれ、と彼女がスケッチブックを覗く。スケッチをしただけのものはあまり人には見せないんだけど、今回は今の状態で人に見せても良かった。
「すっげ〜。やっぱ絵心のある人ってすごいね」
「そんな・・・別にそんなことないですよ」
「いや、すごいすごい。だって描き始めてそんなに経ってないでしょ?」
「え・・・?」
彼女の言葉に思わず時計を見る。
まだ十分経ったくらいだった。
「いや〜、画家さんはすごいね」
「・・・・・」
彼女はいつから私のそばにいたのだろう。
雨が降り始めたのは一時間くらい前だった。そして強くなり始めたのはそれから十分くらい。そのときに雨宿りして・・・。
花を見つけたのは、それからちょっと経ってから。
「・・・・・」
時計から彼女に視線を戻す。
彼女の服はどう見ても濡れているようには見えなかった。
106
:
リースィー
:2003/05/22(木) 14:13
「あ、もう雨止んでるよ」
「え・・・?」
彼女の声に合わせて今度は外を見ると、そこはもう光に溢れていた。雨も水たまりや外の遊具などに張り付いている雫に変わっていた。
「そろそろ行かなきゃ。今からその・・・絵の学校?」
「あ・・・もう終わりました。これから帰るところです」
「そっか。うちは今からバイトなんだよねぇ。もう遅刻は決定だけど」
よいしょって言って彼女が立ち上がる。
「じゃあうちはもう行くから」
「・・・あ、はい」
スケッチブックを閉じて自分も帰る準備をする。
何故かこの時の私も・・・絵を描いているとき以上に焦っていた。
彼女が行ってしまう。そう思った時すごく・・・怖い気がした。そんな気がしたら。
「あの・・・っ!」
雨宿りしていた場所からもう外に出ていた彼女を呼び止めていた。・・・彼女はバイトだって言ってたのに。
「ん・・・?」
でも、私の声に彼女はゆっくり振り向いてくれた。
107
:
リースィー
:2003/05/22(木) 14:19
「あの・・・ありがとうございました」
「え〜?うち何もしてないよ」
「いえ、私のわがままに付き合ってくれて・・・」
「わがままって・・・いーよいーよ。うちもヒマだったからさ」
「でも、何かお礼したいんです。・・・はじめて私が描いた絵のこと褒めてくれたから」
「へ・・・?」
「・・・・・」
また彼女は変な声をあげた。
私は、誰にもちゃんとした感想を言ってもらったことがなかった。学校の先生にだって“もう少しがんばれ”とか、“それで良いのか”なんてことしか言われなくて。
・・・私はどんなにがんばっても報われないと思っていたから。誰にも“良い”なんて言われたことなかったから。
「・・・・・」
彼女は少し上向き加減の視線で頬を軽く掻いているみたいだった。・・・やっぱりこういうことぐらいでお礼をしたいだなんてお節介なんだろうか。
でも少しして・・・やっぱり彼女は彼女らしく応えてくれた。
「じゃあ、名前教えてよ」
108
:
リースィー
:2003/05/22(木) 14:26
「・・・できちゃった」
思ったよりも早く仕上がってしまった。まあ描くものもそんなになかったし、軽めに描いたと言えばそれまでだけど。
久し振りに描いたにしては、上出来じゃないかな。
青い空に、白い雲に、ちょっとした建物。そして・・・。
「ん〜、どれどれ?」
「っ!?」
一瞬、体が浮いた気がした。
急に後ろから聞こえた声に反応して振り向くと、そこにはひとみちゃんが。
「なっ・・・どうしたのひとみちゃん、こんな早く帰って・・・」
「え〜?早くないよ。いつもの時間のはずだけどなぁ」
時計を見たら・・・ひとみちゃんの言う通りだった。
それだけ集中してたってことだろうか。
とりあえずは遅くなった“ただいま”と“おかえり”をしてもう一度二人で絵を見ることにした。
「やっと描いたんだね〜。うちの買ってきたやつで?」
「うん。色とか筆もたくさんあって使いやすかったよ」
「ほっほ〜。でもやっぱ梨華ちゃんは絵がうまいね」
「・・・そう言ってくれるのもひとみちゃんだけだね」
そう。あの頃と何も変わってない。
私にとって心地良い声で、私にとって嬉しい言葉をかけてくれるひとみちゃん。
・・・一緒になれて良かったって、すっごい思う瞬間。
109
:
リースィー
:2003/05/22(木) 14:34
「日の当たらないところに飾んなくちゃね」
「うん。そうだね」
「やっぱり梨華ちゃんの描く花は綺麗だなぁ。うちが買ってきた花じゃないみたい」
「あはは。すっごい力入れて描いたからかも」
そう応えてひとみちゃんの方を向いてた顔を絵に戻す。
キャンバスの中には、青い空と白い雲。そしてちょっとした建物と・・・。
窓に置かれた小さい花瓶に挿してあるピンク色の綺麗な花があった。
「うちの名前は吉澤ひとみ。君は?」
「石川梨華。・・・梨に中華の“華”で梨華です」
「へぇ〜、梨華ちゃんか」
綺麗な名前だね。うちはこっちの“華”の方が綺麗だなって思っちゃった。
「え・・・?」
今思えばあの時かもしれない。
初めて絵のこと以外に心を向けたのは。
初めて“人を好きになった”と確信したのは。
終。
110
:
リースィー
:2003/05/22(木) 14:38
終了で〜す。
何か自分的に久し振りの石吉という感じがするのは気のせいでしょうか?
えっと、タイトルです。
これも「Feacross」の中の「絵の中には」というお話です。
「二人の出会い」が話の筋でしょうかね。
あ〜、石川さんが外に出ない・・・。どんどん主婦になっていく・・・。
いいのかな、これで(笑)
では。
111
:
名無し( `.∀´)
:2003/05/24(土) 01:27
更新お疲れ様です☆作者様の小説、もちろん全て上手だなあ・・
と思うのですが、中でも 「石吉・書きます」って予告される
と、自然にワクワクしてきます♪読み終えてまたまた次を
期待しちゃってます。ではでは・・ゆくっり待ってますね!
112
:
名無し( `.∀´)
:2003/05/31(土) 21:09
いいと思います。次作期待
113
:
リースィー
:2003/06/05(木) 13:16
名無し( `.∀´) さん、ありがとうございます。
え〜、今回も石吉です。
では早速。
114
:
リースィー
:2003/06/05(木) 13:24
「?・・・何でそんな事聞くの?」
カップを置いて目の前にいるひとみちゃんの方を見る。私の顔は驚いた顔。ひとみちゃんの顔は・・・。すっごい沈んでる。
ひとみちゃんがついさっき私に言った事。
うちの事、ホントに好き?
「だって、さぁ・・・。最近矢口さんと仲良いし、楽屋でもあんまり話してないし。携帯の着メロもメロンの歌でしょ?」
「着メロは・・・まぁ、ねぇ・・・」
そういえばさっき、携帯が鳴ってたなぁ・・・。
「ぜーんぜん、うちと合ってない」
「でもそれだけでそんな風に思うなんて・・・」
顔をひとみちゃんに向けた途端、私の口は止まってしまった。
目を向けたそこに、今にも泣きそうな瞳が。唇は少し震えていた。
「・・・はぁ〜・・・」
ひとみちゃんがため息をついたのを見て私もつられて小さく。
「だからぁ・・・聞きたくなったんだよぉ・・・」
語尾を変な伸ばし方して。でもツッコめない程に顔が泣きそうになってて。
「・・・もう」
目の前でモジモジしてる指を見つめる。
頭の片隅で、ずーっと前の事を思い出してた。
115
:
リースィー
:2003/06/05(木) 13:30
「最近、ひとみちゃんとごっちんが仲良くて・・・」
柴ちゃん家。柴ちゃんは「ああ、またか」みたいに私の前にお茶を置いてくれた。私は私でテーブルの模様だけを目に入れて。
「ひとみちゃん・・・本当に私の事好きなのかなぁ・・・」
「ま〜たネガティブモード入ってるね〜」
「・・・笑わないでよっ」
真ん前にいる柴ちゃんを睨む。でも柴ちゃんは笑うばかり。
「でも、思い過ごしじゃないかなぁ。梨華ちゃんって大体そうでしょう?」
「・・・だけどぉ・・・」
「何か心配?」
「・・・うん」
柴ちゃんは大谷さんとずっと仲良し。実際そういう仲だからだと思うけど・・・でも・・・。
「ケンカ?たくさんするよ、私も。シットもするねぇ」
「じゃあ、何で落ち込まないの?」
「・・・ん〜」
少し考えるみたいにして柴ちゃんが応える。
「何だろうね・・・そう!ケンカとか、もしかしたらって思った時に必ずする事があるからそれで試すの」
116
:
リースィー
:2003/06/05(木) 13:36
「・・・試す?」
私がそう言ったら、柴ちゃんは「フフン」って笑って手を伸ばした。その先は、私の手。
「こうやってね、手を握るの」
「え?・・・何で?」
思わず口にしたら「そう、それ」。そう言われていきなり顔に指を差された。
「もし好きな人じゃなかったらさ、友達とかでも。いきなり手を握られたら“何で?”って聞いたりして、顔に出したりするでしょ」
でも好きな人同士だったらね、絶対言わないの。
「・・・まさか」
「これが本当に丸分かりなんだから」
手を離して柴ちゃんはお茶を飲んだ。
「一緒に帰ったりした時に試してみてよ。いきなりこう・・・“ガッ”ってさ」
「そんなつかみ方したら聞いてきちゃうよ」
「まぁまぁ。とりあえず試してみて」
そう言われてひとみちゃんと一緒に帰った翌日。
ゆっくり手を握ったら・・・。
ひとみちゃんは少しずつ握り返してくれた。
そして・・・。
本当に、うまくいってしまった。
117
:
リースィー
:2003/06/05(木) 13:40
「・・・手、握ろ?ひとみちゃん」
「?」
まだほっぺたが濡れてるひとみちゃんに声をかけた。
そっと指を包み込むように、ひとみちゃんの手を握りしめる。
表情を見る。変わってない。・・・ちょっと驚いてるけど。
「私はねぇ・・・」
「・・・・・」
手を握るだけでもドキドキする。それもひとみちゃんとだけ。
それってどういう意味か、分かる?
「・・・・・」
ひとみちゃんは「うん」っと頷いて私を見つめてた。
・・・そりゃあ、私だってひとみちゃんと一日中ゴロゴロする生活を送りたい。
何もしないで、ひとみちゃんだけ見ていたい。
でも・・・。
そういう事だけしてたらだめな所にいるじゃない。
118
:
リースィー
:2003/06/05(木) 13:47
「他の人ともお仕事しなくちゃいけないから、色んな人と話もしなくちゃいけないでしょ?」
「・・・うん」
空いてる方の手でほっぺたの涙を拭く。
・・・泣いてるひとみちゃんも良いなぁ、なんて、ちょっと脱線。
「ひとみちゃん」
「・・・うん」
不安になったらね?・・・手を握って。何も言わずに。
そしたら私も、何も言わずに握り返すから。
「・・・何で?」
「それが“好きだよ”っていう証拠だから」
握っていた手もほっぺたに持っていく。そのまま顔ごと寄せて。
・・・久し振りに唇が重なって。少しひんやりしてるから気持ち良い。
ひとみちゃんが背中に腕を回してく。心の内が少し涼しい。
ずっと前のひとみちゃんが私だったら、同じ気持ちになったかな?
「落ち着いた?」
「・・・ん」
頬ずりしてひとみちゃんが応えた。イスがソファみたいにくっついて、気が付いたら体もぴったりとくっついてた。
「梨華ちゃん」
「何?」
「もっと」
「・・・うん」
目を閉じてひとみちゃんを感じる。ひとみちゃんも「いつもの」ひとみちゃんに戻ったみたい。
119
:
リースィー
:2003/06/05(木) 13:49
ベッドで体を横にしたら、ひとみちゃんが右手を握ってくれた。
そこから感じる、ひとみちゃんの声。
“・・・私も”
心の中で呟く。
次に目を覚ましても、ひとみちゃんと私の手はつながっていた。
終。
120
:
リースィー
:2003/06/05(木) 13:53
終了です。
え〜、今回載せた物はだいぶ前に書いたものなので少々文章が・・・。
とりあえずタイトルは「Gimme your handshake」です。
直訳すると「手を握ろう」。そのまんまです。
これを書いた後、テレビなどで二人が手を握るのをちょっとでも見かける度に「おっ!」と思うようになってしまいました・・・(自分でまいた種)。
では。
121
:
YUNA
:2003/06/08(日) 14:05
更新おつかれさまです♪
ちょっとだけ出て来た柴雅に、おぉ!?なんて思いながら読んでおりました。
最近、柴吉にかなりハマっております...(何っ
でも、いしよしには叶いませんよぉ〜!?
うちも新しいののせないと...
お互い、頑張りましょうねぇ〜♪♪♪
122
:
リースィー
:2003/06/15(日) 09:30
YUNAさん、ありがとうございます。
私も柴雅が好きなもので・・・(で、私的には柴石が好きなのです。でもやっぱり石吉にはかないませんね)。
はい、一緒に頑張りましょう!
今回は少々時間が無いので顔を出すだけですが、石吉と共にもう一作紺高を載せようかな、と。(好きなんです。この方々も・・・)
では。
123
:
名無し( `.∀´)
:2003/06/17(火) 03:04
作者さんの書く紺高を、密かに楽しみにしています。
124
:
リースィー
:2003/06/26(木) 13:13
久しぶりにやってきました。
名無し( `.∀´) さんありがとうございます。
では、紺高のシリーズを一つ。
125
:
リースィー
:2003/06/26(木) 13:22
“もう、よっすぃーったら”って、石川さんのものすごく甘い声が聞こえた。その後すぐ“良いじゃん、ただくすぐっただけだよぉ〜”って吉澤さんの声。
「あいつらまたやってるよ・・・」
隣にいた保田さんが頭を抱えてため息をついた。気が付いたら“こら〜っ!”って飯田さんが二人のところにチョップをお見舞いしに向かってた。
「な〜んか、すごいね。みんなの前でああだよ」
まこっちゃんなんかはもう慣れたみたいで、その様子を見て笑ってる。ののちゃんとあいぼんはいつもみたいに二人のマネして矢口さんにツッコまれて。
「ま〜た、何か、にぎやかだなあ・・・」
私も私でいつも通り独り言を呟いてた。・・・でも一つ違うのは、いつもなら私の独り言さえも拾って聞いてくれてるはずのあさ美ちゃんがいない事。
・・・風邪で寝込んじゃってるから。
126
:
リースィー
:2003/06/26(木) 13:31
「大丈夫だよぉ・・・寝てれば治るから・・・」
目がものすごく潤んでて、でも心配させたくないのかずっと笑って。
「大丈夫じゃないよぉ・・・。私も休むよぉ」
「だめだってば。愛ちゃんまで休んじゃったらみんなにバレちゃう・・・」
何がバレるのか分かんないけど、とにかく仕事に行くようにって言い続けるから結局は、あさ美ちゃんを置いて仕事に行くことになった。
「あさ美ちゃん、大丈夫かなあ。珍しいよね〜、あさ美ちゃんが風邪引くって」
まこっちゃんが急に言う。それがまた私を落ち込ませたけどその次は違った。
「・・・お見舞いに行ってみようかなぁ」
「っ!?」
ぶっ!!
「?・・・もお、高橋、何ジュース吹き出してんの〜っ」
「っうお〜っ、すいません・・・」
知らんうちに紙パック力入れてもた・・・。おまけに安倍さんに拭いてもらっちゃったし。
「どうしたの愛ちゃん、急に」
「ん〜ん、何でも無いよ」
あはは、って自分でも分かる不自然な笑い声。
あー、そっか。あさ美ちゃんの言ってた事って、そういう事か・・・。
「ちょっと手、洗ってくる」
安倍さんに拭いてもらったのは良いけど手がベトベトして。私は不自然な笑みを引きずったままトイレに向かった。
127
:
リースィー
:2003/06/26(木) 13:41
「・・・あー、いかんよ。誰も二人で暮らしてるの知らんし・・・」
トイレに誰もいないのを確認して独り言モードに入る。
・・・そりゃあな〜。未だにあさ美ちゃんと一緒に住んでるっつったらみんな疑うか。家に電話は無いし、電話っつったら携帯しか無いしなあ。それだったら一緒に住んでるなんて思わないよなあ。
「・・・水流しっぱなしだよ?」
でもお見舞いに来られて一緒に住んでるって分かっただけでそう思われるかなあ。
「おーい、愛ちゃん」
あ、でもあさ美ちゃんまだ左手に・・・。
「愛ちゃん!!」
「っうおー!!」
急に降った声。と思って横を向いたらそこに里沙ちゃんが。
「な、何で里沙ちゃんここにいるの!」
後ずさりして手を乾かすところにぶつかりながら里沙ちゃんを凝視する。けど里沙ちゃんはまたきょとんとしておまけに首を傾げて。
「何でって、愛ちゃん何度呼んでも一人でブツブツ何か喋って、全然返事してくんないんだもん。私さっきからここにいるのに」
「っあー・・・ごめん」
とりあえずは落ち着いて謝る。
「愛ちゃん、何か今日は変だね。すっごい独り言早かったよ」
「いやあ、ちょっとね・・・」
手を乾かしながら笑って応える。里沙ちゃんも手を洗いながら“ふ〜ん”って。
128
:
リースィー
:2003/06/26(木) 13:48
「あ、そうだ。愛ちゃん、今日どうする?まこっちゃんと話してたんだけど、あさ美ちゃんのお見舞い行く?」
「え・・・?」
まこっちゃんに続いて里沙ちゃんまで・・・?うあ〜、また手に力が入る・・・。
「あー、んー、でも、ねー・・・。ほら、風邪移っちゃうかもしれないし。あんまりお見舞いに行かないほうが良いんじゃないかなあ」
「え〜?・・・まこっちゃんも同じ事言ってたけど・・・。あ、でもお菓子とかだけでも持ってけたら良いんじゃない?」
「あ〜・・・」
どうしよう・・・。これじゃあ・・・。
「あ、新垣〜、小川が探してたよ。早く行ってあげたら?」
その時、私の後ろで声が。振り返ったら。
「ほらほら。早く行ってあげて」
石川さんが、里沙ちゃんをトイレから追い出すように肩を押していく。里沙ちゃんは“あ、はい・・・”ってとりあえずは外に出て行った。
・・・何だろ。急に救われた気分になった。
「あ、あの〜、石川さん・・・」
「ん?」
何も無かったように石川さんは鏡に向かって何かし始めた。
「吉澤さんと一緒じゃなかったんですか?」
「ん〜、まぁね」
でも“何かあるな”って思ったら助けなきゃ先輩じゃないでしょ?
「あ・・・」
石川さんがこっちを向いた。その顔は笑ってて。
129
:
リースィー
:2003/06/26(木) 13:54
「まあ、何かあったわけじゃなかったし。心配することも無かったけどね」
「ああ・・・はい」
楽屋に戻る廊下を石川さんと二人で歩くことになった。・・・けど、未だにちょっと緊張して。
「あ、そうだ。高橋」
「?・・・何ですか?」
「小川と新垣には“お見舞いは止めといたほうが良いよ”って言ってあるからね」
「・・・あ、はい・・・」
「だから、思う存分紺野のお世話してよ」
「はい・・・」
・・・ん?
「っえっ!?あ、あ、の・・・っ」
手がバタバタとして“違うんです違うんです”ってやったけど・・・もう遅かった。
「はいはい。分かったから」
ポンポンと肩を叩かれて私の手は止められてしまった。
「高橋と紺野の仲もよーく分かってるからさ、私は」
「え・・・な、何で分かっちゃったんですか?」
「ん〜・・・何でって言われてもなあ・・・」
楽屋のドアノブに手をかけて石川さんが言う。
「フンイキかな。分かっちゃうの」
「・・・・・」
先輩は怖い・・・そう思った。
130
:
リースィー
:2003/06/26(木) 14:02
「ただいまっ。あさ美ちゃん、大丈夫!?」
家のドアを開けてすぐ閉める。リビングの電気をつけて、あさ美ちゃんのベッドに向かったら。
「愛ちゃ〜ん・・・こっちー・・・」
「え?」
“寝室”として一応仕切られてる布の向こう。つまり私のベッドがあるところからあさ美ちゃんの声が。
「・・・あさ美ちゃん?」
布をよけて隣を見ると、私のベッドにあさ美ちゃんが寝てた。
「どしたの?朝はこっちで寝てたのに」
「うん・・・ごめんね。ちょっと寂しくなっちゃって・・・。こっちで寝たら寂しくないかなって思って」
ホントはすぐ起きようと思ったんだけど、って体を起こそうとしてる。
「わ〜っ、ちょっと待って。手伝うから」
慌てて手を貸してあげる。あさ美ちゃんは笑って“ありがと”って言った。
「熱はまだある?大丈夫?」
「うん。朝よりはフラフラしてないよ」
とは言うけど、触れてる肌は少し熱く感じる。
ご飯は少しだけ食べたって言うから、家に帰る前に買ったお菓子を二人で食べることにした。それはもちろん、最近あさ美ちゃんがハマってるイモのお菓子。
「ごめんね?何かすっごい心配させちゃって」
「何言ってるの一緒に住んでるんだから」
一口食べて応える。そしたら急にあさ美ちゃんが笑った。
131
:
リースィー
:2003/06/26(木) 14:10
「ん?どしたの急に」
「うん・・・何かね、ホントに“夫婦”みたいだなって思って」
“はい”ってあさ美ちゃんの手のイモが私の口の方に。私も“あ”って普通に食べる。
「でも思うんだよね。どっちがどっちなのかなって」
「え?どっちって?」
指がまだ口の方にあったから捕まえて、イモの傍にくっ付いてる粉みたいなものを掬い取った。
「・・・“夫婦“でしょ?だから・・・うん」
俯くあさ美ちゃん。・・・いつも思うけど、こういう話をする時のあさ美ちゃんって顔が赤くなったり、私的に見てすっごい“可愛いなあ”って。
そう思ったら口が言った。
「じゃあ・・・私が“結婚して”って言ったから、あさ美ちゃんがお嫁さん」
手にはイモを持って、あさ美ちゃんが私にしてくれた事と同じ事して。
「へ・・・?私が?」
「うん。あさ美ちゃんがお嫁さんっ」
笑って応えて、あさ美ちゃんの髪を撫でて。そして思いっきり腕を回して抱きしめる。今日のあさ美ちゃんの肌はちょっと熱く感じたけど、“やっぱりあさ美ちゃんだ”って思えた。
「・・・やっぱり、あさ美ちゃんも一緒に仕事に行ってなきゃ私も寂しい」
「うん・・・」
そのままベッドで横になってゴロゴロする。風邪引いちゃってるから今日はあさ美ちゃんにキスできないけど、その分ぎゅ〜って抱きしめて暖めた。
132
:
リースィー
:2003/06/26(木) 14:25
翌日。あさ美ちゃんと私は二人で仕事場に行った。朝になって熱も下がったし、病み上がりではあるんだけど。・・・やっぱ寂しいから。
「熱、大丈夫だった?」
「紺野、あんまり無理しないようにね」
飯田さんとかまこっちゃんとか、みんながあさ美ちゃんのとこに集まる。私は邪魔にならないように近くで座っていた。
あさ美ちゃん、元気になったのは良いけど・・・こういう時ってあんまり近づけないんだよねぇ・・・。
「おっはよ〜っ」
「?・・・あ、おはようございます」
私の隣にあったもう一つのイスに石川さんが腰掛けた。・・・今日は石川さん、一人なのかな。
「大変だね〜、好きな人に近づけないって」
「はあ・・・まあ、そんなに落ち込まないですけど」
「私は落ち込んじゃうよ〜。特にすれ違ったりするだけで一回も話をしない時とかさ」
「そうですか〜。大変なんですね、石川さんは」
「ちょっと〜、“石川さんは”って何よ〜っ」
指で頬をプッと押される。石川さんの顔もちょっと膨れてた。
「はあ〜・・・。昔は“よっすぃーと一緒の家に住む”とか言ってたのになぁ・・・」
「っ・・・ええっ?」
さっきの膨れた顔と違ってため息をつく石川さんの言葉に思わず反応してしまった。
「どうしたの?」
「い、いいえ、何でも無いです・・・」
そう応えて、側にあったミネラルウォーターを飲んでごまかす。それにタイミングを合わせたかのようにののちゃんが“何の話してんの〜”とこっちに突っ込んできた。ののちゃんの来た方向に顔を向けると、丁度一人になったあさ美ちゃんが。
「あ、ほら、高橋。紺野の所に行っておいでよ。早くしないとまた誰かに取られるよ〜?」
私だけに聞こえる声で言う石川さん。・・・言われなくてもそうしますよぉ・・・。
133
:
リースィー
:2003/06/26(木) 14:31
「あ、愛ちゃん」
やっと来たって顔であさ美ちゃんが私を見た。私は笑ってあさ美ちゃんの側に。
「みんなすごかったね〜。ゾロゾロして」
「うん。・・・あ、そういえば」
「?」
突然の話の切り替え。そしてあさ美ちゃんはコソコソ話をする時の声で私に聞いてきた。
「石川さん、愛ちゃんと私の事知ってるみたいなんだけど、何で?」
「・・・・・」
不覚。としか言いようが無い。
「愛ちゃん・・・もしかしてみんなに言っちゃったの?」
「・・・ううん」
そこで、あさ美ちゃんに昨日の事を教えてあげる。
・・・もちろん、あさ美ちゃんは目を丸くした。
「大変だよぉ・・・ラジオの時どうしよ・・・」
「あさ美ちゃん、多分いっぱいいっぱいになっちゃうよ。・・・先輩はなーんでも知ってるから」
私達の事、フンイキで分かっちゃうんだから。
「・・・あ〜・・・大変だあ・・・」
あさ美ちゃんは自分のほっぺたを両手ではさんでムンクみたいな事をした。
教訓。
・・・先輩はやっぱり怖いっ。
終。
134
:
リースィー
:2003/06/26(木) 14:36
終了でございます。
タイトルは「HB of DB」の中の「カゼガハコブカゼ」というお話です。シリーズの中ではこの前乗せた物の続きで、二弾目ですね。
(読みにくかったらごめんなさい)
風邪ネタ・・・。なんか好きなんですよねぇ。介抱してるところとか、書くの好きなんですよ。
(今回はあんまりないですけど・・・)
今度は・・・そうだなあ、ちょっと大人向けでも。(あ、話の内容がって事で・・・)
では。
135
:
名無し(0´〜`0)
:2003/06/28(土) 01:24
毎回作者様の作品楽しみに読んでいます。
大人向け(?)ですか〜
すっごく楽しみです。
136
:
リースィー
:2003/07/06(日) 09:17
名無し(0´〜`0) さん、ありがとうございます。
というわけで、今回は石吉を。
137
:
リースィー
:2003/07/06(日) 09:23
シャワーの水が大丈夫なら、裸のままシーツに包まっていれば梅雨の日でも大丈夫なんだなと思った。
まだ続くダラダラとした雨。夜になるとそれは少しだけ強さを増して。
「・・・帰れなくなっちゃった」
シーツを体にまとって横になる梨華ちゃんは窓の外を眺めながら小さく呟いた。でも私は動じない。ただ“そうだね”って返す。
梨華ちゃんの話はずっと聞いていたいけど、今は髪を撫でるのに夢中だったから。
「明日は学校でしょう?ひとみちゃん、眠らないで良いの?」
「うん。・・・梨華ちゃんも起きてるから」
「私の事は良いよ、気にしなくても。ひとみちゃんは先に眠って」
梨華ちゃんは私の手を止めてこっちに目を向けた。
・・・学校。好き、だけど今は別だ。
梨華ちゃんだって、遅くから仕事だとしても私より忙しいし。そんな梨華ちゃんがこんな風に一緒にいてくれて・・・私より、梨華ちゃんの方が眠いはずなのに。
138
:
リースィー
:2003/07/06(日) 09:31
「嫌だよ。・・・梨華ちゃんが先に眠ってほしい」
「?」
顔だけで驚いてるのが分かる。私は梨華ちゃんを抱き寄せてもう一度言った。
「梨華ちゃんの方が疲れてるのにさ、私だけ眠ってても嬉しくない」
「・・・・・」
口元に梨華ちゃんの額があったからそのまま口付ける。それから鼻筋を通って軽く唇に触れた。
梨華ちゃんは言葉無く私を見つめて。
「ひとみちゃん・・・」
ただ、私の名前を呟いて。
・・・もう、そんな一言一言とか一つ一つの表情が私をこんな風にさせてる事も知らないで。
梨華ちゃんを疲れさせてるのが自分なんだって、自覚していた事も忘れさせられてしまう。
「・・・ごめんね」
「何で謝んのさ」
頬に手を当てて応える。・・・何だろう。梨華ちゃんの頬が冷たい。
「・・・謝んないで」
私がこうしたいからこうしてる。私が梨華ちゃんを見ていたいから。自分で無理して起きてるんだから。それを“自分のせいで”なんて思ってほしくない。
・・・そんな事、もうとっくに卒業したと思ってたのに。
こんな感情、必要無いよ梨華ちゃんには。・・・私だけがこんな風に心配していたいんだ。
だから・・・。
「・・・私ん中で眠って。何も考えないで」
「・・・・・」
何も言わずに梨華ちゃんは私を見てた。ただ、私の背中に腕を回して。
139
:
リースィー
:2003/07/06(日) 09:35
「・・・ね、ひとみちゃん」
「ん?」
少し間を置いて梨華ちゃんが小さく声を上げた。それに合わせて私も小さい声で“何?”って応える。
「あのね?・・・実を言うと、やっぱり眠いの」
「うん」
「・・・だけどね」
「・・・・・」
「・・・私も、ひとみちゃんが疲れてるの見るの辛いんだよ?」
嬉しいよ。・・・ひとみちゃんの気持ちは嬉しい。
だけど私だって。
「・・・お姉ちゃんだもん」
その言葉が聞こえてすぐ溢れた一粒の雫。
少し遠くなった、雨の音。
140
:
リースィー
:2003/07/06(日) 09:43
昔はよく“空気みたいな存在で”って表現してたよね。“お互いが気にならなくて”って。
でもそれだと気にしてないことにはならないよ。空気は目に見えてないようでずっと見えてるから。ずっと包んでるから。
・・・ね、空気は疲れないのに、私達は何やってんだろう。
いつからこんな風になっちゃったんだろう。
「・・・ね、梨華ちゃん」
「・・・・・」
「・・・なんて、眠ってたら聞こえるわけないか」
ちょっと泣いてそのまま梨華ちゃんは眠ってしまった。何か喋ってたけど結局は泣き疲れてしまったような感じで。
「何かね・・・今頃になってムカついてる。・・・梨華ちゃんと正反対の自分に」
もし似た者同士ならどんな事考えてるのかすぐ分かるのに。私からしてみればごっちんで、梨華ちゃんからしたら・・・柴ちゃんかな。
・・・なのに、私は梨華ちゃんを好きになったんだ。正反対の梨華ちゃんを。
苦しいよ。好きだから苦しい。・・・分からないことだらけだから。
だから、今日みたいな事になる。
「梨華ちゃん・・・」
梨華ちゃんは私をうまく導いてくれるのに、私はどうして良いのか分からなくて何もしてあげられない。
「・・・梨華ちゃん」
「・・・・・」
目を閉じたまま動かない梨華ちゃんの頬にもう一度触れる。私が腕の中で温めてたからか少し熱を帯びて。
薄く開いた唇から吐息を感じて。
141
:
リースィー
:2003/07/06(日) 09:46
お願い。
眠るときの強がりはもうやめて。
疲れたまま眠らせたくないから。
泣いたまま眠らせたくないから。
・・・梨華ちゃんが弱くなっちゃいそうな時は。
素直に、私の中で目を閉じて。
梨華ちゃんにとって空気のような存在の私は、
こういう事でしか元気にしてあげられないから。
142
:
リースィー
:2003/07/06(日) 09:50
“もう十八歳なんだから”って誰かに言われた記憶がある。でも梨華ちゃんも同い年だけど、ほんと大人なんだよなあ。・・・不思議だよ。三ヶ月しか離れてないのに。
「・・・・・」
ずっと静かな部屋の中。まだ薄暗いけど梨華ちゃんの顔が安らかなのが見えた。
指ですっと頬を撫でる。すぐに返ってくるくすぐったそうな顔。
・・・もう、梨華ちゃんに迷惑をかけられない。
ちゃんと守ってあげないと。
ちゃんと・・・。
「・・・ん」
身をよじってる梨華ちゃんがこっちに向けた背中に軽く唇を寄せる。
・・・微かな香りを吸い込んで、そうして私も目を閉じた。
雨のおかげで心地良い梨華ちゃんの肌を感じながら。
終。
143
:
リースィー
:2003/07/06(日) 09:54
終了です。
え〜、タイトルは「私の中で目を閉じて」です。どこかで出てきましたね(笑)。
今回のものは七月に入ってから完成したものです。多分できたてホヤホヤかと。
ちょ〜っと大人になったかな、というところですかね。
吉澤さんはいろんなピンチから救ってくれそうなイメージがあります。私としては。
では。
144
:
名無し(0´〜`0)
:2003/07/07(月) 02:27
更新お疲れ様ですぅ。 石吉・はイイですね〜。
作者様の書かれる文章はとても綺麗で、情景が目に浮かぶようです。
よっすぃが甘えん坊な感じをうける時もあるんですけど、やっぱり
梨華ちゃんをつつんでくれるのは、よっすぃですよね・・?!
又、次回楽しみに待ってます♪
145
:
リースィー
:2003/07/24(木) 13:14
名無し(0´〜`0)さん、ありがとうございます。
かなり遅れたしまいましたが、ここで一つ石吉を。
今回はちょっと(?)暗め痛めです。
146
:
リースィー
:2003/07/24(木) 13:20
中澤さんは難しい顔をしている。でも別に機嫌が悪いところは見えなくて、ただちょっとだけ指をトントンとテーブルに打ち付けてる。
・・・そういう風な態度を取らせるような事をしたのは、目の前で縮こまってしまった私。いや、「した」と言うより、「言った」の方が良いのかもしれない。
「・・・なぁ、石川?」
「はい」
それから少しして中澤さんが私を呼んだ。でも指は未だにテーブルを打ちつけてる。
「あんた何歳やったっけ」
「・・・十八ですけど」
「まあ、三十の私からしてみたらね?悩みは分かるのよ、悩みは。そういう事もたまに聞いたりするし」
「・・・はい」
「けども、話し合いとかなら別にええけど、それはそんなに悩む事ちゃうと思うけどなあ。むしろ嬉しがった方が普通やと思うねん」
「・・・・・」
言葉無く俯く。それを見て中澤さんはため息をついた。
「・・・ま、石川にしたら重いんよねえ。吉澤との仲は」
147
:
リースィー
:2003/07/24(木) 13:27
携帯の電源が入ってたら最低でも二十件以上はメールか電話がくる。
携帯の電源を切ってたら家に不機嫌な電話がくる。
そしてその不機嫌は時々、
ちゃんとした形となって私の中を「駆け巡って」いく。
「独占欲が強すぎるって?・・・それは誰のせいなんでしょう」
「・・・・・」
トクンッと心臓が大きく音を立てる。ひとみちゃんの力無い指が私の頬を撫でる。その指は少しずつ下に下りて私の唇へと落ちる。
・・・私の手は、その指の動きを止められない。私の手は、前で身動きが取れずにいた。
「だめじゃん。中澤さん巻き込んじゃ」
「・・・巻き込んでなんか・・・」
「巻き込んでるよ」
有無を言わせないひとみちゃんの言葉。・・・それを聞く度に私はまた無口になる。
部屋の中、光の無い空間の中でひとみちゃんの瞳だけが異様に鋭く線が走ったような視線で私を捕まえて。
・・・それに捕まると、それだけで私は気が遠くなりそうになる。
「っん・・・」
口許に指が留まったまま、ひとみちゃんが私の呼吸を唇で止める。
心拍数が、私の中の限界に達する。
148
:
リースィー
:2003/07/24(木) 13:32
何も悪くないって思う私は
何か悪いコトしたかもって思う私にいつも負ける。
そして罰を受けた後は
罰した人が悪いんだってひとみちゃんを嫌う。
・・・いつからこんな悪循環にはまってしまったんだろう、私は。
息は荒くてもひとみちゃんは手を止めてくれない。ひとみちゃんを見たいのに私の視界を黒い布が覆って、ちゃんとひとみちゃんを見せてくれない。
「何っで・・・こんな・・・」
「ん?・・・梨華ちゃん、まだそんな事聞くの?」
これは“お仕置き”だよ?
「っやっ・・・あ・・・」
意味無く体はヒクついて。意味無く喉から声が出る。
「何で嫌がってるのにこんなんなっちゃってんの?」
「っ・・・」
「ホントはこういう事も楽しんでんでしょ?」
「んっ・・・ち、がっ・・・」
どこに逃げれば良いのか分からない。
どこに行くのか・・・分からない。
・・・誰か、助けて。
149
:
リースィー
:2003/07/24(木) 13:40
・・・ふと。
私は病気なのかもしれない、と思う。
認めたくないはずなのにそれに触れればまた拒めない。
“依存”に似た病気。
うつろな目は天井しか見つけられない。自分には体の重みしか感じられない。手足は痺れて感覚が無い。
「梨華ちゃん、大丈夫・・・?」
耳にひとみちゃんの声が届いた。嫌に良く響いて、頭の中がぐわんぐわんしてる。
ひとみちゃんの手は私の手首から額へと移る。汗で濡れた前髪を整えてくれてるらしかった。
「おフロに入るのは明日だね」
少し寒く感じた体に毛布が掛けられて、一緒に中に入ったひとみちゃんが腕を伸ばして私を優しく抱きしめる。
「・・・どうして」
掠れた声が小さく響くけど、私と同じように疲れてるひとみちゃんには聞こえはしない。
「・・・どうして?」
ずるすぎる。
私をこんな風にしといて、その後はすぐに私をなだめる。
それに私がちょっとでも揺らいじゃうコトを分かっているのか。
そういうコトを無意識にしてしまう程ホントはひとみちゃんが優しいのか。
とにかく・・・ひとみちゃんはずるい。
・・・だけど。
「・・・・・」
私は面と向かってそう訴えられない。
150
:
リースィー
:2003/07/24(木) 13:44
いつ分かるの?
いつこの状況が変わるの?
いつ私は・・・。
柴ちゃんは難しい顔をしている。でも別に機嫌が悪いところは見えなくて、ただちょっとだけ指をトントンとテーブルに打ちつけてる。
・・・そういう風な態度を取らせるような事をしたのは、目の前で少しだけ縮こまってしまった私。いや、「した」と言うより、「言った」の方が良いのかもしれない。
「・・・ねぇ、梨華ちゃん?」
・・・悪循環は、ずっと続く。
終。
151
:
リースィー
:2003/07/24(木) 13:48
終了、でっす。
タイトルは「Evil Ring」です。「Evil」には「悪い、良くない」という意味が・・・あったはずです(笑)。
んぁ〜、暗いですね、痛めですね。今までそんな事無かったのに・・・。
とか言いつつ、こういう話も他にあったりするんですが・・・。
では。
152
:
名無し(0´〜`0)
:2003/08/03(日) 09:55
「Evil」なんて読むんだろう?
作者さんの話わたし好きです!!
毎回楽しみにしているんですが、なかなか書き込めなかったんですが…。
次回作も、楽しみにしています。
153
:
リースィー
:2003/08/08(金) 16:03
名無し(0´〜`0)さん、ありがとうございます。
「Evil」は「エビル」と、そのまま呼みますよ。
今回はちょっと紺高を。
時期が少し前で、「ハロニュー」の頃の話です。
154
:
リースィー
:2003/08/08(金) 16:10
あ〜・・・。
また今日も愛ちゃんはあの人と一緒。
同じ仕事って言うか、同じコーナーを持ってるわけだし、愛ちゃんも“大丈夫だよ”って言ってるし。端で見させてもらったりもしてる分、ホントは心配なんてしちゃいけないんだろうけど。
「・・・あんなに石川さんとこにくっつかなくてもなあ〜・・・」
最近の愛ちゃんは着ぐるみばっかりで、もう一人仕事が一緒の中澤さんをくすぐってるみたい。
・・・でも、ホントにくすぐられてるのって、実は。
「くそ〜っ、何でラブリーはそんなに可愛いのっ」
「んあ〜、やめて下さいよ〜・・・っ」
石川さんが愛ちゃんのほっぺたをぐりぐりしてる。愛ちゃんは一生懸命逃げてるんだけど“ちょっと待ちぃや〜”って中澤さんにまで迫られて。
・・・でもさ。
何で愛ちゃん、嬉しそうに笑ってんの?
155
:
リースィー
:2003/08/08(金) 16:14
「・・・あ!あさ美ちゃーんっ!!」
「?」
ハッとして我に返ったら、着ぐるみの頭を持ったまんま猛ダッシュで走ってくる愛ちゃんの姿が。
「っおー、やっと振り切ったあ・・・」
ものすごい大きなため息をついて着ぐるみの頭を側に置き、その横にあったペットボトルの水に手を伸ばしてる。
「もーっ、あさ美ちゃん見てたんなら助けてよ〜」
「あははは、ごめんごめん。見てて面白かったから助けるの忘れちゃってた」
「酷いな〜」
ものすごく訛った声。それを聞いて私はまた笑ってる。
・・・内心、そんなに穏やかじゃないのに。
156
:
リースィー
:2003/08/08(金) 16:18
助け“られ”なかったのには、ホントは別に理由がある。
もし私が今の状態で愛ちゃんのところに向かっていたら。
私はきっと、からかってくる二人をものすごい勢いで突き飛ばしている。
“ふざけるな”と、私らしくないだろう声で叫びながら。
「じゃあ、着替えてくるね」
「?あ、うん・・・」
突然声を掛けてきた愛ちゃんに思わず詰まりながら応えてしまう。愛ちゃんも一瞬“どうしたんだろう”って思ったみたいだけど、“すぐ来るから一緒に帰ろ”と言い残して足早にスタジオを出て行った。
「・・・・・」
ただの、仕事でしょう?
「・・・分かってるのになあ・・・」
だけど私の口からは、小さい小さい本音が出てきてしまった。
・・・毎日こんな風にため息ついてる自分が、嫌でたまらない。
157
:
リースィー
:2003/08/08(金) 16:25
家に帰って早々。
「あさ美ちゃん、どうかした?」
「え・・・?」
バッグを置きつつ振り向くと、一応の仕切り用のカーテンの裾から顔を出す愛ちゃんを見つけた。
「収録のときから思っとったけど、あさ美ちゃんずっとため息ついてたでしょう?バスん中でも」
「あ〜・・・」
私はあんまり顔に出ない人だと思ってたんだけど、一緒に暮らしてる分愛ちゃんには分かっちゃうのかなあ・・・。
「大丈夫。ちょっと疲れたな〜って思っただけ」
でも、いつもこう返してる。そしたら愛ちゃんも“あ〜、そっか”っって・・・。
「ホントに大丈夫?最近ずっと“疲れてる”って言ってるよ」
定番では、返ってこなかった。
「そういえば今日、飯田さんにも言われてたよね。おフロ入ったらすぐ寝たほうが良いよ」
「・・・あ、うん」
とりあえず応える。そして、愛ちゃんが“どうしたの?”って切り出してこなくて良かったって、変な安心感みたいなものを感じた。
・・・だって、言えるわけないじゃないですか。
“愛ちゃんを独り占めしたいって、ものすごい欲求がたまってるんです”なんて。
158
:
リースィー
:2003/08/08(金) 16:35
結局、いつもより二時間も早く就寝することになった。
私一人が“疲れてる”わけなんだから私一人が床に就けば良いのに、何故か愛ちゃんまで同じ時間に眠ろうとし始めてる。それも、“今日もそっちで寝かせて”と私の毛布に潜り込んで。
私のベッドは二人入ると少しのスペースしかなくて、落ちないようにって自然とお互いに腕を回し合ってぎゅっと固まる姿勢になってしまう。愛ちゃんは“それが良い”って言うけど、私は逆に落ち着けない。
・・・心臓が痛いほど早く動いてる感じがして、ものすっごい目の前で目を閉じて普通に寝てるだけの愛ちゃんを意識してしまって。
ああ・・・。きっと今日も眠れそうにない。
「・・・・・」
暗い、んだけど、それでも分かる愛ちゃんの寝顔。薄く開いた唇から呼吸の音がして、ぴったりと閉じてる瞼の先の長い睫毛がぴくって動いて、揺れてる。
・・・人はさ、そう簡単にいつでもどこでも眠れるもんじゃないんだって。
だけどこの人にしてみればそれは多分“ウソ”の方に入る。
いつだろうがどこだろうが、彼女は眠れる。
なのに・・・私は。
159
:
リースィー
:2003/08/08(金) 16:40
「何で愛ちゃんだけ寝ちゃうかなあ・・・」
声には出さずに唇だけでそう言ってみる。もちろん愛ちゃんには伝わらないし、起きるなんてこともない。
「・・・こんなに近くで見てるのに」
その視線すら感じてないんだと思う程に気持ち良さそうに眠って。
うん・・・だから、気付かない。私がずっと起きていてしばらく寝顔を見てることも。そのせいで寝不足で、おまけに今日みたいな気分になったりしても、ものすっごい力でその気分を押し殺して・・・それで笑わなくちゃいけなくってって色んなことを重ねたものが“疲れ”になってることも。
「・・・愛ちゃん・・・」
全然、ぜーんぜん、気付かない。
・・・好きすぎて。
すっごい好きすぎて、私がすごい嫉妬深くなってることも。
「愛ちゃん・・・」
「・・・あさ美ちゃん?」
160
:
リースィー
:2003/08/08(金) 16:45
「っ!?」
不意に変わった空気の流れ。それは私の名前を呼んだ人の声の仕業だった。
思わず息を呑む。
愛ちゃんの目が・・・開いてしまった。
「どうしたの、ずっと起きてた?」
「あ・・・ううん、違うけど・・・」
眠そうなけだるい声に返すには全然似合わない私の声。
気付かないと思ってたのに。ずっと眠ってるんだと思ってたのに。
「愛ちゃんこそ、どうしたの・・・?」
どうして目を開いたの?
「んー、何かねえ・・・」
あさ美ちゃんが、私を呼んだっぽかったから。
「で、起きたらあさ美ちゃんも起きてて・・・」
「・・・・・」
何も言えない私の頬に愛ちゃんの手が触れる。それは自然で、しきりに私の頬を撫でていた。
・・・何だろう?愛ちゃんの触れてるところが、変だ。濡れてるみたいで・・・。
「そしたら・・・あさ見ちゃん泣いてんだもん」
「・・・・・」
私って・・・ホントは分かりやすい性格なのかな。
161
:
リースィー
:2003/08/08(金) 16:51
「ごめん」
「・・・え?」
「ごめんって・・・何か知んないけどあさ美ちゃん見てたら言いたくなった」
すっごいニブいから。・・・あさ美ちゃんが何で泣いてんのか分かんないけど。
・・・でも。
「今はぎゅ〜ってしたりとかしなきゃいけないかなって思ってる」
「・・・・・」
こういう時、何て言えば良いんだろう。
“大丈夫”ってまた言う?それとも“ごめん”って私も言う?
・・・違う。どれも違う。
今の私は・・・。
「・・・愛ちゃん、キスして」
気が付いたら、そう伝えてた。
「・・・それだけで良いの?」
「・・・・・」
言葉なく小さく頷いて唇を噛み締める。・・・それ以上何か言ったら、今の“私”が全部溢れそうで怖かった。
162
:
リースィー
:2003/08/08(金) 16:59
よしよしってするみたいに頭の後ろに回された手。愛ちゃんの唇がまず頬に振って、それから滑るように私の唇と重なった。
最初は何度か軽く触れ合って、唇が緩んだら今度は少しずつ深くなっていく。
“何日振りだろう?”って頭の片隅でこの今の感触を味わう前の最後の日を思い出してみた。・・・でもすぐには思い出せない。二、三日前?一週間くらい前?・・・もう忘れてる。忘れたくないのに。
「・・・あさ美ちゃんだけだよ」
離れた唇の合間に愛ちゃんは言った。
「あさ美ちゃんとだけ、ずっとこうしてたい」
だから、何か不安だったら言って?すっごい怒っても泣いても良いから。
私、あさ美ちゃんが言うこと、全部受け止めるから。
「・・・うん」
声はまだ掠れてたけど、もう涙は出てない。
私の、今言いたいこと・・・。
「愛ちゃん・・・」
「ん?」
「私、ね・・・」
もっとぎゅってしてほしい。もっと私だけ見てほしい。
毎日こうやってキスしたい。毎日一緒に眠りたい。
ずっと・・・。
「・・・愛ちゃんに、側にいてほしいの」
・・・束縛だよ、きっと。
私、愛ちゃんを束縛したいんだよ。
だから石川さんと楽しそうにしてるのを見るのが嫌だった。
だけどそういうことを愛ちゃんに言うことなんてできなかった。
・・・そうしちゃいけないって思ってたから。
163
:
リースィー
:2003/08/08(金) 17:05
「・・・・・」
“全て”を聞いた後、愛ちゃんは変わらずに私の髪を撫で続けていた。私は全てを話して、胸の内が少しだけぽっかりしたような気持ちでいた。すっきり、というよりはまだどこかに不安が残って。
「・・・嫌いになった?」
恐る恐る聞いてみる。・・・したら。
「えっ?」
っていう返事と共に手が止まった。
「何で嫌いになるの。・・・今ね、すっごいジーンとしてたんだよ」
「え・・・?」
今度は私が驚く番だった。
「私、あさ美ちゃんにこんなに想われてたんだなあって、すっごい嬉しいんだよ、今」
だってね、私からあさ美ちゃんに“結婚して”って言ったでしょ?あさ美ちゃんもその時嬉しそうだったけど、最近元気なかったから“嫌だったのかな、やっぱり”って思ってて。
「だけど、うん・・・。今、すっごい嬉しい」
私、あさ美ちゃんになら束縛されても良いよ。
「・・・・・」
不安が消えていく。愛ちゃんがまた私を包み込む。
触れ撫でる手。そしてまた重なる唇。・・・もう、どこにでも触れてほしい。
やっぱり私は、眠ることなんてできない。
164
:
リースィー
:2003/08/08(金) 17:06
「愛ちゃん・・・」
名前を呼んでいたいから。
肌に触れてる感触を眠りに奪われたくないから。
「・・・あさ美ちゃんっ」
・・・声を、聞いていたいから。
165
:
リースィー
:2003/08/08(金) 17:12
翌日。の楽屋。
「おーまーいーらーはーっ。全くもーっ!」
飯田さんが石川さんと吉澤さんのところにロケットみたく飛んでいった。遅刻ということはともかく、“二人で仲良く”ってことにものすごくご立腹らしい。
私と愛ちゃんはというと・・・とりあえずは集合時間には間に合ったんだけど、もう誰から見ても分かるとおり睡眠不足。
「あ〜、眠いね〜」
「そうだね〜・・・」
って、二人でずっと言い合ってた。
「何?二人で欠伸なんかして。お泊まりだったのかい?」
そこに安倍さんがやってきた。携帯を手にしてるってことは、後藤さんとメールですか。
「はあ、お泊まりですかね〜」
すかさず、というタイミングで愛ちゃんが応える。
「そんなんなるまで夜更かしして何してたの?」
「えっとですね〜・・・」
今度は私が応える。
ちらっと愛ちゃんの方を見たら“言って良いよ”って合図が。
「昨日はずっと・・・」
二人で“イチャイチャ”してたんです。
166
:
リースィー
:2003/08/08(金) 17:19
「え・・・」
安倍さんの詰まった声。・・・そして一瞬の静けさの後。
「え----------------------っ!!!!!!!!!!?」
「っあ〜・・・」
「お〜っ・・・」
楽屋内に突然響いた私達以外のみんなの大声に耳をふさぐ。そしてまた楽屋は静かになって、視線がみ〜んなこっちに向いた。
話しこんでた保田さんや矢口さんも、説教してた飯田さんも、それを受けようとしてた石川さん・・・の隣にいる吉澤さんも、まこっちゃんとか里沙ちゃん達も、みんなみんな。
・・・作戦は大成功だったらしい。
「おーい、何大きな声で・・・うわっ」
隣の楽屋にいた中澤さんがドアを開けた。そこで私達はタイミング良く“眠気覚まししてきます”と外に飛び出した。
「なっ・・・どうしたん矢口。何があったん?」
廊下に出た私の耳に届いた中澤さんの声。それから聞こえた“裕ちゃん、あいつらね・・・”っていう矢口さんの小さい声。
167
:
リースィー
:2003/08/08(金) 17:22
「うん。予想通りの反応」
「だね」
愛ちゃんの言葉に私は笑って応えた。
“秘密にするより、言っちゃった方がラクじゃない?”
昨日の私達の結論。そうしたら少しは回りも考えてくれるだろうって。
「これからもずっと一緒だよ」
「うん」
この先どう転ぶか分からないけど。
前みたいに“不安定”な時よりは断然、マシだ。
愛ちゃんと手を握る。
その手同士に、見えない糸が結ばれた気がした。
終。
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