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霧が晴れた時―BAD KIDS―

1理科。:2002/08/19(月) 17:16
管理人さんのお言葉に甘えて
銀板から越してきますた。
よろしくお願いします。

173番外編:2002/10/11(金) 05:03
たかがプレゼント。
されどプレゼント。

(よし!…今だ!)

「コレ…ちょっと早いけど!誕生日おめでとう!」

「え…」

乾いた風が吹いていた。
汗が一瞬にしてひいていくのが分かるほど…。
受けとってくれるのか…。
それとも…

心臓が痛い―。

ああ…。何て長い間なんだ…。
あたしは静かに瞳を開け、目の前にいる
梨華ちゃんの顔を見る。

「…梨華…。」

174番外編:2002/10/11(金) 05:04
梨華ちゃんは…泣いていた。
少し大きめなコートの袖口から見える華奢な
彼女の手は、流れ落ちる涙を拾い上げるように
それを拭っていた。
あたしは困った。
いったいどうしたらいいのか?
何だか罪悪感?みたいな…なんつーのか…。
んっと…。
意味もなくあたしはその場でオロオロしていた。
ふと視線をトイレに向けたら、顔を真っ赤にしたおじさんが
切なさそうに駆け込んで行って。
なぜか心の中で応援してたんだ。
あぁ。あたしもそんな時あるよ…って。
んなこたぁ、どーでもいいんだよ!

「…とみ、ちゃん…」

「え?」

「…とみ、ちゃん…私…嬉し…い。で、も…」

「で、でも…?」

175番外編:2002/10/11(金) 05:04
でも―。
その先は分かってた。
梨華が思って今から口から出そうとしてる言葉。

『高いから―。』

「…こんな、高い…の、貰え」

ほらね。

「いいの!あたしが好きでプレゼントした事だから。
 高いとか…そんなんじゃなくて…。えっと。だから…
 素直に受け取ってください…。」

梨華はそれでも申し訳なさそうな顔をしていたよ。
でも、あたしの顔をチラっと見ると…

「…ありがとぉ。」

176番外編:2002/10/11(金) 05:05
泣き顔から笑顔へ。
ぱぁっと眩しいくらいの、それは凄くキレイで美しかった。
可愛いとか…そんな次元じゃなくって。
本当にキレイだと思った。
梨華はあたしから、ゆっくりとそれを受け取った。
渡すとき、あたしの手と梨華の手が軽く触れたんだ。
何度も手を繋いで。
何度も触れ合った手。
何でもない、日常茶飯事的な些細な事に…
何故かドキっとした。
全身に緊張感が走った。
キューってこの大きい体がスピードをあげて
縮まって行くような…
そんな気がしたんだ。

「…開けていい?」

「…うん。」

近くにあるベンチへと移動し、
梨華はおもむろに袋から箱を取り出し
椅子の上に置いた。
コトリと小さな乾いた音が、あたしの耳に飛び込んでくる。

177番外編:2002/10/11(金) 05:05
「…うわぁ。」

彼女の少し潤んだ瞳が輝く。
あたしは照れた。
背中がムズ痒かったけど、微塵もそれを表さないよう、
必死で我慢した。

「…キレイだねー...。…付けて、いい、かな?」

「どうぞ。」

真っ直ぐに梨華の目を見れないよ…。
どうしてあたしはこんな時でもトイレを見てるんだろう。
あ。
さっきのおじさん。
すげー幸せそうな顔で出てきた。

「…ひとみちゃん?」

「どした?」

「…っと。あのね…?これ…ひとみちゃんが付けてくれないかな。」

「…しょうがないな。貸してみ。」

178番外編:2002/10/11(金) 05:06
何がしょうがないだ。
本当は嬉しいくせに。
ああ、そうさ。
ホントはここで『まかせな!』ってさ。
カッケーとこ、見せてやりたいよ?

「ごめんね。」

「いや。」

大人になりたかった。
カッケーく決めたかった。
心とは裏腹に。
勝手に言葉が出てくるんだ。
汗で手が滑る。
梨華にバレるかも。
あたしが緊張してるって。
うまくハマんないぞ?
落ちつけ…
うん。
落ちつけば…きっと…大丈、夫…っと。

179番外編:2002/10/11(金) 05:08
「はい。」

「…へへ。似合うかな?」

「うん…。似合う。」

あたしはベンチから腰を上げ、
『よいしょ!』って背伸びする。
…まともに今、梨華の顔なんか見れないよ。

(…え?)

「梨華!…どう」

「こっち向かないで。…そのままで聞いて―。」

「…わかった。」

あたしは大きく万歳。
そしてあたしの腰の周りには愛する梨華の手が
回されていた。

180番外編:2002/10/11(金) 05:09
「…ありがとう。一生…大事にするね。」

「マジで?」

「うん。もし…ひとみちゃんとケンカしちゃっても。
 私がお嫁さんにいっても。おばあちゃんになっても。」

「…そんなに大事にしてくれんの?」

「するよ。…だって。」

「だって…?」

ギュっと力が入った。

「…初めて。好きな人から貰った…プレゼントだもん。
 大事にするに決まってるもん。」

「……」

…意識が。
遠のいていくのがわかった…。

――――――――――――

181番外編:2002/10/11(金) 05:10
「…初めて。好きな人から貰った…プレゼントだもん。
 大事にするに決まってるもん。」

「え―――――――!わ、私、そ、そんな事言ってない!」

「言ったよ!言ったとも!めっちゃロマンティック風にさ。
 目なんかキラキラさせちゃってさ!
 ひとみちゃん…私、ひとみちゃんのコト、だぁ〜い好きってね♪」

「いいいいいい言ってないもん!…最初の方は、その…言ったけど。」

「ほらね♪もぉ〜素直じゃないんだから。梨華は。」

「!…もぉいい!ひとみちゃん知らない!」

梨華の耳や顔は真っ赤っか。
猿のケツみたい。
あっはっはぁ〜♪
なんて思ってたら、梨華はあたしに背を向け
薄い布団を頭から被る。

182番外編:2002/10/11(金) 05:10
「ちょ…!梨華」

「知らない、知らない!!」

「ごめん!ちょっと悪フザケしすぎた!」

「…………」

フーっと一息ついてみた。
あたしは静かに布団の脇をまさぐり
進入する事に成功。
頑なに梨華は動こうともしない。
…いつもこうだ。

「梨華。…ごめん。ちょっとフザけすぎた。」

あたしは優しく彼女を包み込む。
…やっと梨華はあたしの方に顔を向けてくれた。

183番外編:2002/10/11(金) 05:11
「…恥かしかったんだから。」

「ごめん。だって梨華、からか―

フワリと
静かに。
梨華があたしに口付けた。
危なくあたしは梨華の唇を噛んでしまいそうになった。
だっていきなりキスされたんだもの。
それにあたし喋ってたし。

布団の中でのキスは―
何だか照れくさかった。
何度か交わしたことはあったけど…
これほどまでに胸漕がれるようなキスは感じたコトがなかった。

「…ズルいよ。梨華…いきなりなんて。」

「…じゃあ、ひとみちゃんからして。」

「…うん。」

スーっと瞳を閉じる。
あたしはゆっくりと愛する人にキスした。

      
        ――――EMD――――

184理科。:2002/10/11(金) 05:12
番外編完結です。
お粗末さまでした。

185名無しナース:2002/10/12(土) 01:46
う〜ん甘くて最高でした!!
ありがとうございました。
次回作も楽しみにしています。

186名無しナース:2002/10/12(土) 23:11
サイコ〜〜〜ですた。
続き!続き!と、言いたい……。

187名無しナース:2002/10/12(土) 23:19
面白くって、感動して、甘くって良かったです。
次回作あるのだったら、楽しみにしています。

188名無しベーグル。:2002/10/14(月) 15:31
お疲れ様でした。
また時間が出来て、書ける時が出来たら書いて下さいね。
ずっと、ずっと待ってます。。。

189ごまべーぐる:2002/10/15(火) 00:11
完結おめでとうございます。
お疲れさまです!
いしよしが心を通わせることができて、ヨカター

また理科。さんのステキなお話に会えるのを楽しみにしています。
名無しベーグル。さんと同じく、待ちます。

190じじ:2002/10/17(木) 09:04
完結おめでとう。
理科。たんの小説ヲタの私としては、完結するたびに
少し寂しさも感じますが(w
また理科。たんの小説に出会えることを楽しみにしています。
ヲレもずーっと待ってるからね。
お疲れ様でした。

191ひとみんこ:2002/10/17(木) 18:36
ご馳走様でした、南無阿弥陀仏、合掌! でございました。

改めて最初から読み通してきました、只々感謝です。

我望新作です。


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