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霧が晴れた時―BAD KIDS―
172
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:02
「梨華。」
「ぅわ!ひ、ひとみちゃん!ビックリしたぁ…。
もー大丈夫なんだね!ね!じゃあ、行こっか。」
ぱぁっと梨華が笑顔に変わる瞬間、あたしは胸が
握りつぶされるかと思ったよ。
「…あのさぁ、ちょっといい?」
「え?うん。どしたの?」
…ヤベぇ…。
緊張してきた。
汗ばむ掌。
タラタラと落ちてくる汗。
あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。
173
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:03
たかがプレゼント。
されどプレゼント。
(よし!…今だ!)
「コレ…ちょっと早いけど!誕生日おめでとう!」
「え…」
乾いた風が吹いていた。
汗が一瞬にしてひいていくのが分かるほど…。
受けとってくれるのか…。
それとも…
心臓が痛い―。
ああ…。何て長い間なんだ…。
あたしは静かに瞳を開け、目の前にいる
梨華ちゃんの顔を見る。
「…梨華…。」
174
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:04
梨華ちゃんは…泣いていた。
少し大きめなコートの袖口から見える華奢な
彼女の手は、流れ落ちる涙を拾い上げるように
それを拭っていた。
あたしは困った。
いったいどうしたらいいのか?
何だか罪悪感?みたいな…なんつーのか…。
んっと…。
意味もなくあたしはその場でオロオロしていた。
ふと視線をトイレに向けたら、顔を真っ赤にしたおじさんが
切なさそうに駆け込んで行って。
なぜか心の中で応援してたんだ。
あぁ。あたしもそんな時あるよ…って。
んなこたぁ、どーでもいいんだよ!
「…とみ、ちゃん…」
「え?」
「…とみ、ちゃん…私…嬉し…い。で、も…」
「で、でも…?」
175
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:04
でも―。
その先は分かってた。
梨華が思って今から口から出そうとしてる言葉。
『高いから―。』
「…こんな、高い…の、貰え」
ほらね。
「いいの!あたしが好きでプレゼントした事だから。
高いとか…そんなんじゃなくて…。えっと。だから…
素直に受け取ってください…。」
梨華はそれでも申し訳なさそうな顔をしていたよ。
でも、あたしの顔をチラっと見ると…
「…ありがとぉ。」
176
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:05
泣き顔から笑顔へ。
ぱぁっと眩しいくらいの、それは凄くキレイで美しかった。
可愛いとか…そんな次元じゃなくって。
本当にキレイだと思った。
梨華はあたしから、ゆっくりとそれを受け取った。
渡すとき、あたしの手と梨華の手が軽く触れたんだ。
何度も手を繋いで。
何度も触れ合った手。
何でもない、日常茶飯事的な些細な事に…
何故かドキっとした。
全身に緊張感が走った。
キューってこの大きい体がスピードをあげて
縮まって行くような…
そんな気がしたんだ。
「…開けていい?」
「…うん。」
近くにあるベンチへと移動し、
梨華はおもむろに袋から箱を取り出し
椅子の上に置いた。
コトリと小さな乾いた音が、あたしの耳に飛び込んでくる。
177
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:05
「…うわぁ。」
彼女の少し潤んだ瞳が輝く。
あたしは照れた。
背中がムズ痒かったけど、微塵もそれを表さないよう、
必死で我慢した。
「…キレイだねー...。…付けて、いい、かな?」
「どうぞ。」
真っ直ぐに梨華の目を見れないよ…。
どうしてあたしはこんな時でもトイレを見てるんだろう。
あ。
さっきのおじさん。
すげー幸せそうな顔で出てきた。
「…ひとみちゃん?」
「どした?」
「…っと。あのね…?これ…ひとみちゃんが付けてくれないかな。」
「…しょうがないな。貸してみ。」
178
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:06
何がしょうがないだ。
本当は嬉しいくせに。
ああ、そうさ。
ホントはここで『まかせな!』ってさ。
カッケーとこ、見せてやりたいよ?
「ごめんね。」
「いや。」
大人になりたかった。
カッケーく決めたかった。
心とは裏腹に。
勝手に言葉が出てくるんだ。
汗で手が滑る。
梨華にバレるかも。
あたしが緊張してるって。
うまくハマんないぞ?
落ちつけ…
うん。
落ちつけば…きっと…大丈、夫…っと。
179
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:08
「はい。」
「…へへ。似合うかな?」
「うん…。似合う。」
あたしはベンチから腰を上げ、
『よいしょ!』って背伸びする。
…まともに今、梨華の顔なんか見れないよ。
(…え?)
「梨華!…どう」
「こっち向かないで。…そのままで聞いて―。」
「…わかった。」
あたしは大きく万歳。
そしてあたしの腰の周りには愛する梨華の手が
回されていた。
180
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:09
「…ありがとう。一生…大事にするね。」
「マジで?」
「うん。もし…ひとみちゃんとケンカしちゃっても。
私がお嫁さんにいっても。おばあちゃんになっても。」
「…そんなに大事にしてくれんの?」
「するよ。…だって。」
「だって…?」
ギュっと力が入った。
「…初めて。好きな人から貰った…プレゼントだもん。
大事にするに決まってるもん。」
「……」
…意識が。
遠のいていくのがわかった…。
――――――――――――
181
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:10
「…初めて。好きな人から貰った…プレゼントだもん。
大事にするに決まってるもん。」
「え―――――――!わ、私、そ、そんな事言ってない!」
「言ったよ!言ったとも!めっちゃロマンティック風にさ。
目なんかキラキラさせちゃってさ!
ひとみちゃん…私、ひとみちゃんのコト、だぁ〜い好きってね♪」
「いいいいいい言ってないもん!…最初の方は、その…言ったけど。」
「ほらね♪もぉ〜素直じゃないんだから。梨華は。」
「!…もぉいい!ひとみちゃん知らない!」
梨華の耳や顔は真っ赤っか。
猿のケツみたい。
あっはっはぁ〜♪
なんて思ってたら、梨華はあたしに背を向け
薄い布団を頭から被る。
182
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:10
「ちょ…!梨華」
「知らない、知らない!!」
「ごめん!ちょっと悪フザケしすぎた!」
「…………」
フーっと一息ついてみた。
あたしは静かに布団の脇をまさぐり
進入する事に成功。
頑なに梨華は動こうともしない。
…いつもこうだ。
「梨華。…ごめん。ちょっとフザけすぎた。」
あたしは優しく彼女を包み込む。
…やっと梨華はあたしの方に顔を向けてくれた。
183
:
番外編
:2002/10/11(金) 05:11
「…恥かしかったんだから。」
「ごめん。だって梨華、からか―
フワリと
静かに。
梨華があたしに口付けた。
危なくあたしは梨華の唇を噛んでしまいそうになった。
だっていきなりキスされたんだもの。
それにあたし喋ってたし。
布団の中でのキスは―
何だか照れくさかった。
何度か交わしたことはあったけど…
これほどまでに胸漕がれるようなキスは感じたコトがなかった。
「…ズルいよ。梨華…いきなりなんて。」
「…じゃあ、ひとみちゃんからして。」
「…うん。」
スーっと瞳を閉じる。
あたしはゆっくりと愛する人にキスした。
――――EMD――――
184
:
理科。
:2002/10/11(金) 05:12
番外編完結です。
お粗末さまでした。
185
:
名無しナース
:2002/10/12(土) 01:46
う〜ん甘くて最高でした!!
ありがとうございました。
次回作も楽しみにしています。
186
:
名無しナース
:2002/10/12(土) 23:11
サイコ〜〜〜ですた。
続き!続き!と、言いたい……。
187
:
名無しナース
:2002/10/12(土) 23:19
面白くって、感動して、甘くって良かったです。
次回作あるのだったら、楽しみにしています。
188
:
名無しベーグル。
:2002/10/14(月) 15:31
お疲れ様でした。
また時間が出来て、書ける時が出来たら書いて下さいね。
ずっと、ずっと待ってます。。。
189
:
ごまべーぐる
:2002/10/15(火) 00:11
完結おめでとうございます。
お疲れさまです!
いしよしが心を通わせることができて、ヨカター
また理科。さんのステキなお話に会えるのを楽しみにしています。
名無しベーグル。さんと同じく、待ちます。
190
:
じじ
:2002/10/17(木) 09:04
完結おめでとう。
理科。たんの小説ヲタの私としては、完結するたびに
少し寂しさも感じますが(w
また理科。たんの小説に出会えることを楽しみにしています。
ヲレもずーっと待ってるからね。
お疲れ様でした。
191
:
ひとみんこ
:2002/10/17(木) 18:36
ご馳走様でした、南無阿弥陀仏、合掌! でございました。
改めて最初から読み通してきました、只々感謝です。
我望新作です。
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