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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part5

1名無しリゾナント:2014/07/26(土) 02:32:26
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第5弾です。

ここに作品を上げる →本スレに代理投稿可能な人が立候補する
って感じでお願いします。

(例)
① >>1-3に作品を投稿
② >>4で作者がアンカーで範囲を指定した上で代理投稿を依頼する
③ >>5で代理投稿可能な住人が名乗りを上げる
④ 本スレで代理投稿を行なう
その際本スレのレス番に対応したアンカーを付与しとくと後々便利かも
⑤ 無事終了したら>>6で完了通知
なお何らかの理由で代理投稿を中断せざるを得ない場合も出来るだけ報告 

ただ上記の手順は異なる作品の投稿ががっちあったり代理投稿可能な住人が同時に現れたりした頃に考えられたものなので③あたりは別に省略してもおk
なんなら⑤もw
本スレに対応した安価の付与も無くても支障はない
むずかしく考えずこっちに作品が上がっていたらコピペして本スレにうpうp

647名無しリゾナント:2015/02/17(火) 20:54:04
そんな血腥い惨劇を黙ってみていた、もう一人の巻き毛の少女が。
呆れ口調を交えて、語りかける。

「何や、のんが『リヒトラウム』のパレード見たい言うから、マルシェの研究室から盗んできたのに」
「これのどこがパレードなんだよ、きもいって」

言いながら、恐怖で固まっていた鼠女の首根っこを掴み、近くの柱に激突させる。
ごしゃあっ、という音と共に流れ出る、粘りのある赤い水。錆びた鉄の臭いが、辺りに立ち籠めた。彼
らは、彼女らは、組織の狂科学者が作り出した哀れな失敗作だった。

「のんはさ。純粋に夢の国を楽しみたかったのに。やっぱ中身は乙女だし」
「おええっ、そんな血まみれなツラして何が乙女や」
「は? あいぼんに言われたくねーし」
「ははっ、うちこそ真の乙女やで? 寝る前のリップクリームは欠かせへんし」
「バージニアスリムの間違いだろ」

些細なことから、しばし睨み合う二人。いつものことではあるが。
冷静になり引くのは、いつも巻き毛のほうだ。

「まあええ。自分、かなり苛立ってんなあ」
「”うちらの”敷地で余計なことしてる連中がいるみたいだけど」

ポニーテールの苛立ちの原因は、そこだった。
この夢と光の世界に、リゾナンターを招き入れて殲滅する。
その計画は順調のはずだった。

648名無しリゾナント:2015/02/17(火) 20:55:02
「鋼脚」から掠め取った精神操作能力を優樹に使い、あたかも偶然このテーマパークに招待されるよう
な形を作った。
リゾナンターのアドバイザー的存在の光井愛佳に、「9人の後輩たちが血まみれで横たわる」未来を見
たかのように錯覚させた。
愛佳からそのことを聞いた道重さゆみは、一目散にリヒトラウムを目指すだろう。
あとは元々の目的が眠っているこの地で、さゆみを亡き者にするだけ。ところが。

自分たちの計画に、水を差す能力者たちが現れた。
福田花音が率いる「スマイレージ」のことだ。もちろん。
彼女、「金鴉」にとっては取るに足りない存在だが、目に入れば煩わしい。

「ええやん。そいつらもついでに”うちらの宴”に招待したろ」

不敵な笑み。
ハプニングさえも、自らの計画に取り入れる。
それくらい、あいつにできて、うちに出来へんわけないわ。
誰に言うとでもなく、もう一人の少女、「煙鏡」がひとりごちる。

「リヒトラウムの管理人はどうするよ」
「こぶ平のやつには言うたんやけどな。まあええ。遅かれ早かれ、あっちから連絡が行くやろ」
「ふーん。ま、いいや」
「珍しいな。のんもそいつと戦いたい、とか言わへんなんて」
「ツクリモノとか、興味ないし」
「…せやな」

肩を竦め、広間の窓際に立つ「煙鏡」。
眼下には、夢と希望で溢れる、楽園がどこまでも広がっている。

649名無しリゾナント:2015/02/17(火) 20:57:29
「のんも見てみ。このおもちゃみたいな楽しいテーマパークの地下に、悪魔みたいな『ブツ』が隠され
てるなんて、あそこにいる誰も知らんのやで?」
「でもさ、それさえ手に入ったら。あいぼんとのんは」
「ああ。大逆転や」

偉そうにしている、弱い奴。
そいつを排除しただけなのに。彼女たちに組織の長が与えた懲罰はあまりにも不当。
そうとしか思えなかった。

そして「首領」に幽閉されてからずっと。
そのことだけを考えていた。隔離された、狂気の世界。
昏い思いは年月とともに凝縮され、一つの形になる。

復讐。

ずっとこの時を、待っていた。
偉そうな「首領」も。すかしている「叡智の集積」も。
自分たちを虐げていた連中は、痕跡さえ残さずに消してやる。

「ざまあ見晒せ。うちらが反省なんか、するわけないやろ」

懐から取り出したトランシーバは、敷地内の放送設備をジャックし、敷地全体に「声」を届ける役目を
果たす。
もうすぐ、楽園は地獄と化す。その瞬間を決めるのは。
自分だけだ。

あーあー。テス、テス。
ただいま、マイクの、テスト中…

650名無しリゾナント:2015/02/17(火) 20:58:06
>>645-649
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

651名無しリゾナント:2015/02/18(水) 21:23:27
>>645-649 の続きです



「Dr.マルシェ!こちらにおられたのですか!!」

息を切らし、黒服のサングラスといういかにもな格好の男が建物に入る。
ここは、ダークネスの本拠地に設置された、食堂。
非合法な組織にしては意外とまともな作り、一見どこかの大学の学食と見紛うばかりだ。
そこで紺野は、少し遅めの朝食を取っていたのだった。

「騒がしいですね。何か御用ですか、諜報部の方…ああ、すみません。マッシュポテトは大盛りでお願
いします」

自らの食事タイムの邪魔をされたせいか少々不機嫌になった紺野ではあるが、すぐに食堂の中年女性に
追加注文をする。テーブルには、少しずつ食べたトースト、目玉焼き、スクランブルエッグ。

「探しましたよ!てっきり研究室にいるものとばかり…」
「日夜部屋に篭り、わずかばかりの栄養ゼリーと煮詰まったコーヒーで腹を満たす。そんな典型的な研
究者像にでも惑わされましたか」

言いながら、小さく切り分けたスクランブルエッグを口にする。
このペースだと、食事を終えるのは随分先になるのは必至の遅さだ。

652名無しリゾナント:2015/02/18(水) 21:24:55
「手短にお願いします。食事の時間は、なるべくゆっくりしたい」
「ええ。実は、消息不明になっていた『金鴉』様と『煙鏡』様の居場所が掴めました」

様、とつけてはいるが。
明らかにその名を口にする時に苦い表情をする、諜報部員。それもそのはず。彼女たちの所在を把握す
るまでに、何人もの同僚が戯れに命を奪われているのだから。
しかし紺野は。

「おそらくですが。『夢と光の国』では?」
「え」
「ある程度の予測は立てていましたが。しかし実際にそうなってみると、案外感慨深いものですね」

あまりにはっきりと言い当てるものだから、諜報部の男はしばらく二の句が継げない。
いや、確かにおっしゃるとおりなんですが、などと口淀む男に対し、紺野は。

「あそこには、管理人がいたはずです。オーナーの堀内さんが例の『先生』のとこの組織と契約して派
遣されている」
「はい。確か組織の7番手の実力者が配されていたはずですが…」
「やはり。密約が交わされていたようですね」

施設の守護者とも言うべき人間がいるにも関わらず、例の二人はあっさりと敷地内に入っている。いつ
ぞやの「先生がらみの仕事」というのも、どうやら単純なブラフでもなかったらしい。紺野は「煙鏡」
の抜け目の無さに、苦笑を漏らす。

653名無しリゾナント:2015/02/18(水) 21:25:56
「…『鋼脚』さんには報告は」
「ええ。ただ、例の二人の件はDr.マルシェに任せているとのことで」
「なるほど」

すっかり冷めてしまったトーストを一口だけ齧り、考え込む。
とは言え、既に答えは出ているのだが。

「いかがいたしましょうか」
「そうですね…好きにやらせたらいいんじゃないですか?」
「は?」
「『金鴉』さんと『煙鏡』さんが目をつけたのは、きっと何か理由があるのでしょう。面白い。徹底的
に暴いてもらおうじゃないですか」

男は恐れおののいた。
もちろん、滅茶苦茶なことをやらかすであろう例の悪童どももそうだが。
この目の前の女も、まともではない。破滅が目の前にあるというのに、喜んですらいる。

「しかしそれでは…」
「あなたたちに、何ができるって言うんです?」

俄かに生まれた反駁の心、それも紺野の一言で消えてしまう。
この前の「詐術師」の内乱以降、ダークネスの本拠地は厳戒態勢を取り続けていた。そんな状況下にお
いて身内であるはずの、しかも目的すら読めない二人に対して人員を寄越すのは現実的ではない。

紺野は、暗に自分達でリヒトラウムに行ったらどうです、と問うているのだ。
もちろん、物言わぬ躯となって帰ってくることを前提にして。

654名無しリゾナント:2015/02/18(水) 21:26:19
「わ、わかりました。引き続き、監視体制を」
「それが賢明でしょう。何か興味深い動きがあれば、またご報告下さい」

紺野は話は終わりました、とばかりに食事を続ける。
苦虫を噛み潰したような顔をしながら引き下がろうとする男、しかしそれは背後からの衝撃に遮られた。

「いたっ、な、なんだよ!」
「すまん、緊急事態なんだ!!」

別の黒服が、同じように慌てて食堂に入ってきたものだから、男と衝突してしまったのだ。
訝る先客を押しのけ、男が紺野の前に出た。

「まったく。落ち着いて食事もできませんね」
「Dr.マルシェ!大変です!!天使の、天使の檻の上空に…」
「ほう?」

紺野の表情が、変わる。
それは、想定の外にあるものを目にした時のような顔。
ただし。世の大半の人間が想定外の事態に驚き、顔を青ざめさせるのに対し。
笑っていた。まるで、新しい玩具を得た子供のように。

655名無しリゾナント:2015/02/18(水) 21:26:50
>>651-654
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

656名無しリゾナント:2015/02/19(木) 22:07:35
■ ベインズワークショップ -少女たち- ■

http://www.youtube.com/watch?v=GZKwPcZoX1o

…………で続くクーデターの続報です
本日行われた定例会見にて、国連軍は、
天候不順を理由に空爆の延期を発表、また来月の…
…事実上の撤退であるとし、激しく非難するとともに…
…度重なる作戦失敗をうけ…

また、このニュースか…
なんか、やなことおもいだしちゃうね…
うん…
きっと、あの子たちは、いまでも組織にいるんでしょうね…
うん…
きっと、私たちを憎んでいるんでしょうね…
うん…きっと…きっとそうだよ…

かつて「あの海上」で激突した。
まだ、あどけなさの残る、少女たち。

力づくで、蹴散らした。

あの子たちを助けたかった。
助けたかった。

657名無しリゾナント:2015/02/19(木) 22:08:33
組織に囚われた、かわいそうな子供たち。
そう思った。
もう大丈夫、一緒に帰りましょう。
でも駄目だった。
間違いだった。
もう、遅かった。

658名無しリゾナント:2015/02/19(木) 22:09:32
その戦場に不釣り合いな、派手なファッション。
その幼さに不釣り合いな、派手なメイク。

強制でも、命令でもない。
あの子たちは、自らの意志で、私たちに。

説得している時間は無かった。
選択しなければならなかった。
だから、あの子たちは捨てた。
その目的のために…

立ちはだかるあの子たちを…あの子たちを…

あの子たちは言った。
私たちはエリートだと。
いずれ、組織の上に立つ存在だと。

すべて私たちが支配する。

血と災厄。
絶望と焦土。

そのすべてを私たちが支配する。

すべての戦争を私たちが始める。
すべての戦争を私たちが終わらせる。

私たちは『ベインズ』…

【破滅の工房(ベインズワークショップ;banes workshop)】と…

659名無しリゾナント:2015/02/19(木) 22:10:36

■ ベインズワークショップ -少女達- ■

でした。


(あとがきスレ用)
以前「なぜベリーズが出ていないのか?」というご質問を受けたことがあります。
その際は確か「作品には出てこないが動いてはいる」というようなあいまいなことしかお答えできなかったように思います

とっさのご質問だったため即答できませんでした
あのあとすぐ今解答できる情報の範囲内で拙作を書いたのですが
今度は社会情勢というか彼女たちが主に活動している場所が
娯楽小説の舞台にするにはあまりそぐわなくなってしまっているようです
今後予定通り進めるか変更するか
いずれにせよもうしばらく寝かせるしかないかもしれません

660名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:25:47
>>651-654 の続きです



ダークネスの外部施設に、「天使の檻」と呼ばれる場所がある。
飾り気のない、白く四角い建造物。だが、その内部はいくつもの厳重なセキュリティ、ミサイル砲を打ち込
んだとしてもビクともしないような隔離壁。
その最深部に、「天使」は隔離されていた。

「檻」の、はるか上空。
人の目では決して確認することのできない物体が、浮遊している。

「ここが機体をあちらさんに感知されない限界ってやつっすかねー」

ステルスバリアが張り巡らされた、飛空船のデッキスペース。
肉感的な、目鼻立ちのはっきりとした女性が下を覗き込み、言う。

「うん。ここから『転送』で直接人員を檻の敷地内に移動させるみたいだよ」

答えるのは、小柄な女性。

「こっからだと距離にして数キロメートルはありますよね」
「だねえ。でも作戦指令書にはそう書いてるから何とかなるんじゃない?」
「そんなもんすかね」
「大丈夫大丈夫」

言いながら、小さな女性がにかっと笑う。
げっ歯類のような大きな前歯が、唇から顔を覗かせた。

661名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:27:16
「それにしても、変な形っすね。この飛行機」
「何でも、コストダウンやら何やらで、元々の大きさの半分くらいにしたらしいよ」
「マジっすか? それでも機能とか半端なくない? この何だっけ、エリ、エリなんとか号」
「『エリックフクサキ号』ね。元は違う名前だったみたいだけど」

そんな中、デッキの扉が開かれる。
現れたのは、水色のドレスを着た、童顔の女。

「のっち、ここにいたんだ。それにきっかも」
「真野ちゃん」
「もう、『サトリ』って呼んでって言ってるのに! それより、本部長がみんなを集めて作戦の最終確認す
るって」
「おっ、あいあいさー」
「本部長、ねえ。対能力者部隊『エッグ』の結成以来かね、会うのは」

実際、彼女たちが本部長と呼ばれる人間と相対したことは数える程度しかない。
それはここにはいない「スマイレージ」のメンバーもまた然り。何せ、外部から彼女たちが警察組織に持ち
込まれると同時にプロジェクトリーダーとして就任。経歴は一切謎の人物、だが手腕だけは確かと専らの評
判だった。

船内に戻り作戦会議室と呼ばれる一室に入る三人。
そこに座したる、錚々たるメンバーたち。「エッグ」の精鋭と呼ばれる能力者揃いだ。

「あれ、のっち、あの子たちって」
「『セルシウス』に『スコアズビー』。改めて見ると、さすがにね」

662名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:28:40
会議室の後方、まるでこの場にいる「エッグ」たちを値踏みするかのように、五人組と七人組の集団が立っ
ていた。
彼女たちの存在は「エッグ」筆頭を務める能登有沙やミス破天荒としてその奇行ぶりが知られる吉川友、新
宿のシンデレラこと真野恵里菜が知らないはずもなく。
ついこの前まで、彼女たちは敵対関係にあったと言っても過言ではなかった。

ダークネス自慢の秘蔵っ子ったちとして。
いや、それ以前に「エッグ」のプロトタイプ的存在として。
この二つのグループの名前は彼女たちの頭に刻み込まれていた。
まだ未熟なはずのリゾナンターたちに倒されたダークネスの尖兵が今目の前にいるグループと同一であるこ
とを知ったのは、しばらくしてからのことではあるが。

一方、テーブルの端のほうで行儀よく座っている五人の少女たち。
赤と黒のツートンカラーで統一された衣装。緊張しているのか、幾分幼さを残した顔が強張っている。
見たこともない顔ぶれに、思わず。

「…誰?あの子たち」
「さあ。あの人がどっかからスカウトしてきた子たちでしょ」

友の問いに、面白くなさそうに席の最奥を指す。

「おうお前ら、久しぶりやな」

そんな二人に、指した人物から声がかかる。
特徴的な、少し掠れた声。
金髪と色つきのサングラス、そしてやや扱けた頬。白のタキシードという格好も相まってまるでどこかのホ
ストクラブの経営者にしか見えない。秘書のような出で立ちの二人の女性を従え、悠然と椅子に背をもたせ
掛けたこの男は。

663名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:30:02
警視庁対能力者新規特殊部隊「エッグ」本部長。
それがこの男。つんくを自称する男の、本来の肩書きであった。

「御無沙汰してます。悪趣味なファッションセンスはお変わりないようで」

席に座った恵里菜がそんな皮肉を込めるのも、致し方ない。
対能力者部隊立ち上げとともに、能力者の卵のスカウト活動と称してあちらこちらをふらふらと。怪しげな
「商品」を売り歩き、どこの馬の骨とも知れない連中に肩入れしている。エッグによる彼の評判は一言で言
えば、最悪だった。

しかしながら。彼が部署のトップとして上層部から重用されていることは明らかだった。
だから、ここにいる。

「さて。全員揃ったことやし、作戦の最終確認…言うても何も難しいことはあらへん。『転送』で天使の檻
の敷地に突っ込む。ただそれだけの楽な仕事や」

最終確認、と言うにはあまりに大雑把な説明。
本人の胡散臭さも相まって、場は何とも言えない空気に包まれる。

銀翼の天使こと安倍なつみ。
双璧を成していた「黒翼の悪魔」の不在によって、判明している限りではダークネスの最大戦力と目されて
いる能力者。
それをこちらの手駒にするという大胆な目的の割に、実に単純。単純すぎる。
当然のことながら、不満の声が上がる。

664名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:31:33
「潜入後のことはさておき。まずこのような高度から地上に『転送』すること自体、本当に可能かどうか」

普段はあまり口を開くことのない、クールな表情の女性。
暗殺者然としたいでたちの北原沙弥香が疑問を呈すのも当然の話。ダークネスが所有し運用する「ゲート」
でもない限り、物体の長距離転送は不可能と言ってもいい。

「そう言えば、つんくさんがこの前やった『お遊び』ではリゾナンカーなる乗り物を使用して母艦から遠距
離の移動を可能にしたんですよね。今回も、それを使うつもりですか?」
「リゾナンカーなら、前使った時に壊れてもうたわ」
「じゃあ、どうやって」

つんくの曖昧な回答に苛立つ恵里菜。
それに構わず、部屋の外に向かって呼びかけた。

「金子、入っておいで」

ドアが開かれ、一人の幸の薄そうな少女が姿を現す。
彼女の名は金子りえ。「転送」の能力を保有する能力者だった。

「ちょ、マジっすか! りっちゃんの能力じゃうちら空中に放り出されてペッチャンコっすよ?いくらきっ
かがワガママボディだからって、無理無理!!」

大げさな身振り手振りでそんなことを言う友。
彼女はりえのことを知っていた。その知識からすれば、とても長距離転送を実現させるような能力は有して
いない。

「それができるんやなぁ。この薬さえあればな」

そんなことを言いつつ、つんくが胸ポケットから小さな白い錠剤を取り出す。
一見ラムネ粒にしか見えないような、何の変哲も無い薬にしか見えないが。

665名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:33:02
「安心してください。この錠剤の効果は本人への投与も含めて実証済みです」
「最新の実験では、ドラム缶100個を10キロメートル先の場所に転送することに成功してますからね」

つんくの脇を固める二人の女性の、もっともらしい説明。
だが、その説明を聞いて最も安心しているのは、能力者であるりえ自身だった。

これが成功すれば私は…

りえは、エッグの中でも研修中を理由に前線に立たせてもらえない存在だった。
転送能力には、特筆すべき精度も威力もない。同期の仲間たちが適材適所の場所へ旅立つのとは裏腹に、り
えだけがいつ終わるとも知れない訓練をやらされていた。

そんな彼女にも、一筋の光が射す。
それがこの、安倍なつみの解放作戦だった。
幸運なことに、作戦に必要不可欠な「転送」の役目を任された。つんくの投与した薬剤による能力の飛躍的
向上のおかげではあるが、ともかく。

「天使の檻」の何重にも施されたセキュリティ網をすり抜けて能力者たちを転送することができれば、必然
的にりえの評価は上がる。つまり、かつて彼女を追い抜いていった人間を見返すことが出来る。
彼女が緊張し、気合が入るのも当然のことだった。

「じゃあ、早速『転送』はじめるで。みんな、準備は出来てるか…せや、いくら金子の転送能力が優れてる
言うても、ばらけた状態やとしんどいからな。隣にある小部屋に移動頼むわ」

その場に居た全員に場所の移動を促しつつ。
つんくもまた、小部屋に移動すべく席を立つ。
するとやはり不安が先立ったのか、りえがつんくに駆け寄った。

666名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:33:40
「あの、つんくさん」
「何や。何も心配することあらへん。早よ、この薬飲みや」

りえの手のひらに、そっと錠剤を置くつんく。
りえはその丸く小さな薬をしばし見つめ、それから意を決して口にした。

「ちなみにこの薬、いつもより少し強力なもんにしてるから。揺り戻しはきっついで?」
「は、はい!大丈夫です!!」

背を向け、後ろ手に手を振るつんくを見ながら。
りえは、自分がつんくのことをひどく誤解していたことを恥じた。

能力者の卵の、見境ないスカウト。
そして、怪しい商品の売り込み。
金に執着心の強い、強欲で心無い人物だとばかり思っていたが。

つんくさん、見ててください。私、やります!!

薬が徐々に自らの肉体に浸透してゆく感覚。
りえはただひたすら、能力を発動させる瞬間を待っていた。

667名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:34:56
………

「全員、小部屋の入室、完了しました」
「おう、石井に前田、ご苦労やったな。お前らも部屋に入り」
「はい。失礼します」

恭しくつんくに一礼し、部屋の中に入ってゆく二人の秘書。
つんくは、先ほどまで自分達のいた会議室のほうへと視線を向ける。
そこでは、りえがつんくのゴーサインを待っているはずだ。

頼んだで、金子。

「天使の檻」からの距離に加え、上空数千メートルという高度。
これら全てを飛び越え、『転送』を成功させるにはりえの能力が必要不可欠だった。そして、りえに与えた
薬は彼女自身との相性が抜群によかった。あの錠剤によって能力を最大限に使役できるようになった彼女な
らば、必ずや成功させてくれるだろう。

最新の実験では、ドラム缶100個を10キロメートル先の場所に転送することに成功してます。か。
秘書の石井が言った言葉をつんくは思い返す。嘘も方便とは、このことだと。
実験如きで、「彼女」を消耗させてはいけない。実際はドラム缶は実験場の敷地から少し離れた場所に転が
っていた。薬の効能がわかれば、それでよかったのだ。なぜなら本番では、普段与えている薬の数千倍の効
果が出るものを服用してもらうのだから。

あの薬のおかげで、生涯最高のパフォーマンスを見せてくれるやろ。
文字通り。命が、燃え尽きるまでな。

668名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:35:37
艦内放送に直結したピンマイクに向け、つんくは言う。

「今から全員部屋に入る。したら、『転送』の開始や。頼むで」

つんくの前で開かれた扉。
彼が部屋の中に入ると、ゆっくりと扉が閉められた。
ぱたん、と音を立て、沈黙する部屋の扉。

数秒後。どこからともなく。
人の声とは思えないような、阿鼻叫喚が聞こえてくる。
喉を極限まで絞り上げ、それでも飽き足らず喉に向け爪を立て、掻き毟り、抉る。
そんな行為の果てに生み出されたような、絶叫だった。
めらめらと激しく燃え盛る炎のように響き渡ったそれは、やがてすぐに小さくなり消えてゆく。
そして。何の音も聞こえなくなった。

669名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:41:51
>>660-668
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

研修生大喜利とか知ってる人いるのかとか思いつつそれでもネタにしてしまう…
一応貼っておきますw
http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1377912821/

670名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:50:29
「潜入後のことはさておき。まずこのような高度から地上に『転送』すること自体、本当に可能かどうか」

普段はあまり口を開くことのない、クールな表情の女性。
暗殺者然としたいでたちの北原沙弥香が疑問を呈すのも当然の話。ダークネスが所有し運用する「ゲート」
でもない限り、物体の長距離転送は不可能と言ってもいい。

「そう言えば、つんくさんがこの前やった『お遊び』ではリゾナンカーなる乗り物を使用して母艦から遠距
離の移動を可能にしたんですよね。今回も、それを使うつもりですか?」
「リゾナンカーなら、前使うた時に壊れてもうたわ」
「じゃあ、どうやって」

つんくの曖昧な回答に苛立つ恵里菜。
それに構わず、部屋の外に向かって呼びかけた。

「金子、入っておいで」

ドアが開かれ、一人の幸の薄そうな少女が姿を現す。
彼女の名は金子りえ。「転送」の能力を保有する能力者だった。

「ちょ、マジっすか! りっちゃんの能力じゃうちら空中に放り出されてペッチャンコっすよ?いくらきっ
かがワガママボディだからって、無理無理!!」

大げさな身振り手振りでそんなことを言う友。
彼女はりえのことを知っていた。その知識からすれば、とても長距離転送を実現させるような能力は有して
いない。

「それができるんやなぁ。この薬さえあればな」

そんなことを言いつつ、つんくが胸ポケットから小さな白い錠剤を取り出す。
一見ラムネ粒に酷似した、何の変哲も無い薬にしか見えないが。

671名無しリゾナント:2015/02/20(金) 01:57:39
>>670
投稿ミスです
申し訳ない

672名無しリゾナント:2015/02/22(日) 04:01:06
書き込めなくなったので代理をお願いいたします。
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/1150.html#id_2d146de9 の続きです。

673名無しリゾナント:2015/02/22(日) 04:02:23

宮本、佳林さん

「私達には石田さんの力が必要なんです。お願いします! 私達の仲間になって下さい!」

思いっ切り頭を下げる、宮本さん

お願いされても困るよ……
それに

「ウチを仲間にして、どうするの?」

頭を上げる宮本さん
すごい真剣な顔してる

「私達はまだ、小さな集団です。強い能力者集団を相手にしたら簡単に負けちゃうくらい……だから、どこにも負けない強さ欲しいんです!」
「でも、ウチじゃなくたって……」

宮本さんが近づいて、両手でウチの手を掴んだ

「石田さんは強いですよ。私を助けてくれた時、ちゃんと見てたんですから!」
「でも……」
「お願いします!」

必要って言ってくれて嬉しいよ
嬉しいんだけど……
ウチはやっぱり

「……リゾナントが良い」

674名無しリゾナント:2015/02/22(日) 04:03:22

だって

楽しくて
優しくて
暖かくて

大好きな人が居る

「あの場所が、ウチの帰る場所だから」

宮本さんの顔が、険しくなった

「で、でも! 意地を張っても、あの人達の所へは戻れないんですよ!?」

『この店にあんたは要らない』

さっきの道重さんの言葉が、心に刺さる

「そうかも、しれないけど……だけどウチは、あの場所が良い! リゾナントがウチの場所なんだもん! 嫌われたって何されたって、ウチはリゾナントが良いの!」
「石田さん……」

ウチの手を離した宮本さん
そのまま俯いた

わかって、くれたのかな

「仕方ない……〝あの人〟に頼んで強引にでも……」
「亜佑美ちゃんは渡さないよ」

675名無しリゾナント:2015/02/22(日) 04:06:16
>>673-674
まだ続きます。
よろしければ、代理をお願いいたします。

チャットで話題に出た石田さんが登場していますが、非常に難しいです。

676名無しリゾナント:2015/02/22(日) 11:00:52
代理いってきます

677名無しリゾナント:2015/02/22(日) 11:04:42
いってきました

678名無しリゾナント:2015/02/22(日) 11:56:20
>>660-668 の続きです



あーっ、あかりちゃん。
どさくさにまぎれてみずきのむねさわったー、へんたーい。
ちがっ!ただあかりはみずきちゃんの穴をふさごうとおもって…
うそつきー。
だから!うそじゃないって!!
わかった。じゃあ、みずきのおねがい、ひとつだけ聞いて。
い、いいよ?
これからさき。どんなことがあっても、みずきのこと。まもってね。
まもるって?
あんぱんまんのね、しょくぱんまんがどきんちゃんをまもるみたいに。
あー。なるほどねー。いいよ。
ほんとに? そーいうの、やすうけあい、っていうんだよ?
そんなんじゃないから。あかり、みずきちゃんのこと、ぜったいにまもるから。
ぜったいだよ? やくそくだよ?

679名無しリゾナント:2015/02/22(日) 11:56:54


あれから、どれほどの時間が経ったのか。
わからない。殴られ、蹴られ、打ちのめされ。
それでも、朱莉は両足を踏ん張り、立っていた。

「もういいよ!朱莉ちゃん、こんなの間違ってる!!」

聖が、朱莉に向かって必死に呼びかけるが。
朱莉は倒れなかった。

だって、約束だから。

花音が何をしたいのかはわからない。
けれど、彼女は朱莉に「これに耐えたら撤収する」と言った。
だから、耐える。聖を、守るために。

意識は、遥か遠くへ。
それでも。倒れるわけにはいかない。
約束、守らなきゃ。

現実は、残酷だった。
群集の暴力にひたすら耐え続けていた朱莉だったが。
ついに、力尽きる。前のめりに、崩れるように。

「あかりちゃん!!!!」

聖の悲痛な叫びが、木霊する。
一方、花音はというと。

680名無しリゾナント:2015/02/22(日) 11:58:51
「これに耐えたら撤収する」なんて、真っ赤な嘘。
むしろ約束をしたとすら思っていない。
何故なら、最初からこうする予定だったのだから。

聖と付き合いの長い朱莉を、敢えて聖にぶつける。
単純思考の朱莉のことだ。戦いを望まない聖の言う事をまともに受け、のこのこと二人仲良く
こちらに来るはず。読みは、的中した。

まずは、精神的に甚振り、極上の苦しみを与えてやる。
それがこのリンチショーだった。その上で、悲しみに心を引き裂かれた聖に向かってこう言っ
てやるのだ。約束は約束だから、しょうがない、と。

怒ればいい。憎めばいい。
そんなものは。そんなちっぽけな感情は。

自分達が味わった地獄からすれば、何の価値もない。

何故同じ能力者であるはずなのに、自分たちだけがあんな目に遭わなければならないのか。
闇の組織によって生み出され、実験の名を借りた拷問を繰り返し受け。警察組織に売り渡され
た後も、過酷な訓練を施される。

何人もの仲間が、命を失った。
逆に言えば、自分たちはいくつもの困難を乗り越えてきたエリートのはず。
なのに何故。

リゾナンター、という少し特殊なだけの連中に遅れを取らなければならないのだ。
おかしい。間違っている。
間違いは、正さなければならない。
絶対に、許さない。

681名無しリゾナント:2015/02/22(日) 12:00:04
「どうして…どうしてこんなことを!あかりちゃんは、福田さんの仲間のはずなのに!!」

温室育ちの子はいい。
容易く「仲間」などという戯言を口にすることができる。
けれどあたしたちは…違う。仲間。信頼。友達。そんなものはとっくの昔に過去に捨ててきた。
スマイレージの結束は、ひたすら前を向いて進んできた、それだけの証。

そう。ただひたすら。周りの誰を見ることもなく。
誰を。誰も?
そうだ。
わかってた。

誰も、あたしのことなんか、見てやしない。

「こんなこと…? あれれ、フクちゃんさあ。もしかしてこれで終わりだとか思ってない?」
「それは」
「どうしてあたしがこんなことをしてるのか。どうせそれを聞きにきたんでしょ? 温室育ち
のぬるーいぬるま湯に漬かってきただけのことはあるね」

大勢の人間に押さえつけられたままの聖。
花音はすぐ側まで近づき、腰を低くして聖のことを見る。

「何人があの子たちに倒されて、何人があの子たちを倒すかは知らない。けど、どっちみちあ
んたのこと、助けにくるでしょ?」
「……」
「前に、言ったよね。その気になれば、何千、何万の人間を好きに動かせるって。そのことを、
身を持って教えてあげる」

682名無しリゾナント:2015/02/22(日) 12:01:00
この人は。
最初からそうするつもりだったんだ。
全ては、自分の屈辱を晴らすため。自分の力を、誇示するため。
聖は、花音のことを音が出る勢いで睨みつけた。

「そんなことのために…朱莉ちゃんまで…」
「ああ、タケはおまけ。辛いものを見せられた時ほど、悲鳴は大きくなるでしょ?」

悲痛。怒り。苦しみ。
複雑な感情の入り混じった聖の顔。これが見たかった。
さあ後は、のこのこと集まってきたリゾナンターたちを、リヒトラウムじゅうの客という客に襲
い掛からせるだけ。
スマイレージは。あたしは、こんなやつらの噛ませ犬なんかじゃない。

完璧な、非の打ち所のない勝利。
花音の目的は、果たされる。

「…違い、ますよね」
「は?」

それなのに。

「福田さんの、本当の目的は…そんなことじゃ、ないですよね?」

どうしてだろう。
何かが、心の中の何かが、満たされない気がするのは。

683名無しリゾナント:2015/02/22(日) 12:02:07
「譜久村さんっ!!!!」

誰かの大声で、ふと我に帰る。大通りの向こう側に、人影が見えた。
1、2、3…7人。差し向けた後輩たちがほとんど人員を減らしていないことに大きくため息を
つく花音。
それでも、すぐに気を取り直す。

駆け寄ってきたリゾナンターたちがこれ以上近づけないように、肉のバリケードが形成される。
聖への救いの手は、操られた群集たちによって阻まれてしまった。

「どうもお久しぶり。博多弁が下品な人とガリガリの黒い人は、あやちょの一件以来だからそ
うでもないかな」
「お前!また懲りずに!!」

花音の顔を見るや否や、スイッチが入ってしまう衣梨奈。
猪のように群集に突っ込むも、すぐにはじき出されてしまった。

「どう?この前みたいに能力相殺で、あたしの『隷属革命』を無効化してみる? さてこの人
数、どれくらい時間がかかるでしょう?」

うふふ、と笑いつつ次から次へと操られた人間を呼び寄せる。
若いカップル、老夫婦、家族連れ。子供の姿すらあった。

「くそ!まーちゃん、こいつら全員どっか転送しちゃえよ!!」
「うーんわかんないけどやってみる!」
「ちょっと!こんな大人数転送なんかできるわけないでしょ!!」

遥の無茶振りに、考えなしに実行しようとする優樹。慌てて亜佑美が制止に入るのも無理はない。
優樹の転送能力が特殊だとは言え、物質転送時にエネルギーを使うことには変わりないのだから。
これだけの人数はさすがに、と視線を群集に向ける亜佑美。
花音の下僕たちは、すでに百人前後に膨れ上がっていた。

684名無しリゾナント:2015/02/22(日) 12:03:03
「どうしてこんなことを…和田さんはこのことを知ってるんですか!?」
「あやちょは関係ないから。これはあたしと…あんたたちの問題」

言いながら、彩花の名前を出した春菜に挑発的な視線を送る花音。
聖は。そこに著しく違和感を覚えた。いや、違和感はそれよりもさらに前に。

聖の能力は、接触感応を基礎とした「能力複写」。
対象物の残留思念を読み取り、自らの力とする。その原理が故に、はっきりとはしていないもの
の、相手の何かが伝わることは珍しいことではない。それを言葉にするのは難しい。けれども。

この人の目的は、本当はもっと別のところにあるのではないか。

それが故の、先ほどの問いかけ。
もちろん聖は相手に精神に働きかける能力者ではないので、その問いによって花音の心がどう動
いたかはわからない。
それでも、一瞬だけ。あの一瞬だけは、花音がひどく苛立っているように思えた。

「そうったい!」
「どうしたんですか生田さん!?」
「香音ちゃんなら…香音ちゃんの『物質透過』なら何とかならんかいな」

衣梨奈の突然の思いつき。
確かに、香音ならば群集を通り抜けて聖を助け出すのは可能なようにも思えた。
しかし、香音は首をゆっくり横に振る。

685名無しリゾナント:2015/02/22(日) 12:04:10
「ダメだよ…一人二人ならともかく、あれだけの厚さの、不均質な『壁』は通り抜けられない」

その程度のことはすでに、想定済み。
自らは大して戦闘力を持たないという花音が、自らの身を危うくするような状況をそうたやすく
作るわけがなかった。

「さて、そろそろフィナーレね。後ろ、見てみな?」

全員が、恐る恐る背後を振り返る。
そこには、信じられない光景が広がっていた。

いくつもの、唸り声が聞こえる。
目の光を失った、大勢の人間が立っていた。
前面と、後方。完全に、挟み撃ちにされてしまっている。

「どうする? 強行突破でもしてみる? もしかしたら、フクちゃんを助けられるかもよ。でも
それまでに、何人の罪のない人間が傷つくのかなあ。せっかく夢の国に遊びに来たのに、取り返
しのつかない大怪我なんてしたら、かわいそう」

全員が、一斉に花音のほうに視線を向ける。
それを見て花音は、嗜虐の炎を燃え上がらせる。

どうせ「正義の味方」を気取ってるあんたたちにはそんなこと、できるわけない。
悔しい? むかつく? 心底軽蔑する? 勝手に思ってろ。もっと。そう、もっと。

その視線を、あたしに向け続けろ。

最上級の喜びに身を浸す花音。
しかし。その耳に、微かな音が聞こえる。
雑音。それは花音の頭上にある、鉄製のポールに据え付けられた施設内放送用のスピーカーから
聞こえていた。
音は徐々に澄んでゆき、それとともに声が聞こえる。

686名無しリゾナント:2015/02/22(日) 12:05:16
「あー、あー。本日は、晴天なり。本日は、晴天なり。ただ今、マイクのテスト中」

甲高い、少女の声。
不意に流される施設内放送に、リゾナンターたちは互いに困惑し顔を見合わせる。
その困惑は、花音も例外ではない。

「…本日は、夢と光の国、リヒトラウムにお越しいただき、まことにありがとうごじゃいます」
「ねーちょっと、のんにもしゃべらせてよ!!」
「これから皆様が向かう場所は、夢と光からは程遠い…」
「いいじゃんあいぼん、ちょっとトランシーバ貸して!おう、お前ら、ぶっ殺す!!!!!!!」
「ちょ、やめーや!これからがええとこなんやから!!」

傍にいるらしきもう一人の少女のやり取り。
収拾がつかない状況に、思わず香音が。

「なにこれ。これもあんたの、お仲間の仕業?」
「し、知らないわよ!!」

想定外の、第三者。
一見子供の悪戯のようにも思えるが。
本能が警告を鳴らしている。これは、とてもではないがそんな微笑ましいものではない。
自分の計画が、無粋な輩に邪魔されようとしている。

「おう、そこのアホみたいなツラしたシンデレラ。12時にはだいぶ早いけど、もう魔法の時間は
…終いや」
「なっ!?」
「こっからは…うちらの時間や」

地を突くような、激しい衝撃。
次の瞬間、この地を包み込む夢は、終わりを告げた。

687名無しリゾナント:2015/02/22(日) 12:06:34
空が、真紅に染まったのではないかと錯覚するほどの。
渦巻き、天を貫くような高さの火柱が上がる。一か所でない。いくつも、いくつも。
リヒトラウムは、無数の炎に包まれた。

「これは…」
「あらかじめ、施設の各所に仕掛けさせてもらったわ。いかに東京ドームがいくつも入るようなだ
だっ広い施設と言えども、小一時間でまっ黒焦げにできるようなごっつい奴や」

少女が、笑いを噛み殺したような声でそう嘯く。
その黒さ。厭らしさ。先ほどまでこの場を覆っていた空気とは、比較にならない。

「はぁ!?いきなり出てきて、何なんだよ!!!!」

不条理な状況に、ついに花音の感情が爆発した。

「誰だか知らないけど!あたしの!あたしの楽しみを邪魔するな!!あたしの行く手を、遮るな
!!!!!」

ついさっきまで、自分は玉座に座っていた。
場を、リゾナンターたちを支配していたはずなのに。
それを、唐突に否定される。そんな馬鹿げたことがあってたまるものか。
花音は自らの正当性を決して揺るがせない。
でも、彼女は知らなかった。

688名無しリゾナント:2015/02/22(日) 12:07:13
「…黙れや、三下」

子供のような声のはずなのに。
目に見えないそれは、音もなく花音の心に忍び寄り、巻き付き、そして締め上げる。
何かをされたわけでもないのに、じわりと冷や汗がにじみ出た。
そして知る。自分は既に、ガラスの靴を奪われていたことに。

「もうお前の出番なんか、ないねや。これからうちらがやること、隅っこでシンデレラごっこしな
がら見とき。ダークネスの幹部としての、うちら流のおもてなしをな」

ダークネス。
夢と光に溢れた楽園には似つかわしくない言葉。
それでも、楽園を闇が呑み込みつつあるのは、紛れもない現実だった。

689名無しリゾナント:2015/02/22(日) 12:08:18
>>678-688
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

690名無しリゾナント:2015/02/26(木) 21:28:46
■ アフタースクールレクチャーアバウト -リゾネイターX   - ■

伝えきれるだろうか?
その言葉で。

伝えきれるだろうか?
その眼で見ずして。

伝えきれるだろうか?
その剣交えずして。

伝えきれないかもしれない。
伝えきれないかもしれない。
だが、それでも、伝えておかねばならない。
彼の者たちの、その力。

その、【能力】を。

691名無しリゾナント:2015/02/26(木) 21:29:23
■ アフタースクールレクチャーアバウト -リゾネイターX   - ■
でした。

692名無しリゾナント:2015/02/26(木) 21:31:25
■ アバウトイシカワリカ -   X石川梨華- ■

「うっぷ…むぐっ…おえっ…おえぇぇっ…」
「高橋!またなのアンタ!」
「ハァハァ…だっ…だいじょう…ぶです…」
「ケケケなんら?こいつ。」
「【読心術】やろ?戦場の殺意濃すぎて酔ってるんやて、なっさけな。」
「そこのふたり!ちょっとだまって!…ったく!いいわ!この作戦中【読心術】はセーブしておきなさい。」
「えっでも…」
「1班は作戦通り、2班の前衛はアタシが出ます。高橋と新垣はアタシの後ろにつきなさい!」

――――――――

「【念動力】…ですか?」

何重もの隔壁に守られた、秘密の地下施設。
そこに集うは、新垣里沙、そして8人の新しきリゾネイター。
学校終わり、放課後、喫茶リゾナントを愛佳たちお姉さんチームに任せ、
折を見てはこうした時間が設けられていた。

「そう、【念動力】、それも、とてつもなく強力な、ね」

【念動力(サイコキネシス;psycho kinesis)】

「効果範囲は、最大で、およそ十数メートル。
パワーは…そうね、自動車ぐらいなら軽く持ち上げちゃって、
潰したり、ねじ切ったり、もー、けちょんけちょんよ。
当然、人間なんかひとたまりもないのよ。」

破壊と防御。
強大な、見えない、巨大な力。

693名無しリゾナント:2015/02/26(木) 21:32:45
それが石川梨華の【能力】。

――――――――

閃光。

衝撃波。
無数のボールベアリング。

轟音。
そして爆炎。

恐怖、硬直、混乱。

なにもわからない。
身体が、動かない。

何も見えない。
ただ、網膜に写るだけ。

一瞬で呑み込まれる。
黒煙に、あの人の背中が…

ただ、写るだけ。
その腕に輝くエンブレム『有棘鉄球に鎖』、ただ、それだけが。

停止。

無数の、ボールベアリング。

694名無しリゾナント:2015/02/26(木) 21:33:45
炎と煙、その中に。
中空に浮かぶ、小さな鉄球群。
ゆっくりと蠢き、そして、バラバラと落ちていく。

「高橋!新垣!被害報告っ!」

何も聞こえない。
ただ、鼓膜を揺らすだけ。

「新垣!…新垣!…マメ!」
「……はっ!ハイッ!」
「被害報告!」
「あっ…ありません…被害ありませんっ!」
「なら後方警戒っ!」
「ハイっ!」

――――――――
「いやもー、強いなんてもんじゃないのよ!そりゃーもーなのよ。」

人差し指を立て、額にしわを寄せる

「でも、もともとの強さ以上に厄介なのが、
いまのあたしたちにとって、石川さんは、
あまりに『相性』が悪い、ってことよ。」

「『相性』が悪い?」

「ほーなのよ、今のあたしたちには…」


あたしたちには、愛ちゃんが、いない

695名無しリゾナント:2015/02/26(木) 21:34:44
――――――――

破壊、破壊、破壊。
その発射音の軽さからは想像もできぬ破壊力。
タイルが割れ、モルタルが飛び、コンクリートが削り取られる。
次々と頭上を脅かす、無数の風切音。

「石川さん…血が!」
「大したことはないわ。さっき『ちょっと広げすぎた』だけ。」
「『広げ?』…」
「無駄口叩いてんじゃないわよ。
新垣、さっき重機(関銃)の位置は『見た』わね。
ならあなたの【能力】で、あれ黙らせなさい。
あの火力はちょっと煩いわ…
『出来る』わね?」
「はっハイッ!」
「重機が沈黙したら残りはアタシが潰します。
高橋は新垣を守りつつ援護。
いい?じゃあ新垣!やんなさい!」

――――――――

「『石川梨華の【念動力】には、濃度のようなものがある…』そう感じたのよ。」
「濃度…ですか?」
「そう…濃くて強い所と、薄くて弱い…ううん、隙間のように何もない所。
その事実に気づいたからこそ、あの時、愛ちゃんたちは…」

696名無しリゾナント:2015/02/26(木) 21:35:30
――――――――

「がはっ!高橋っ…あんた…」
「あのときのあーしは何も気づかなかった。
でも、今ならガキさんの言ったことがわかる…はっきりと…」
「まさか…あのときに…」
「…あの作戦から帰還した後…ガキさんが言ってたんです。
「『石川さんの【念動力】には濃い所と薄い所が…『隙間がある』と…」
「そう…気づいて…いたのね…」
「石川さん、あーし達は先へ進みます…ガキさんは…返してもらう!」

――――――――

「【瞬間移動】と【読心術】、この二つの能力を一人で持つ愛ちゃんだからこそ、
石川さんを倒すことができた。
でも、田中っちのついた愛ちゃんでも、
石川さんに肉薄するほどのチャンスは一度しか作れなかった。」

697名無しリゾナント:2015/02/26(木) 21:36:22
沈黙、その場を重い空気が支配する。

「見えない力…巨大な、見えない力…」
鞘師がつぶやく。
ウチなら、どうする?ウチなら、何ができる?

「…さって、ここからが本題。
もし、みーんなだけで、石川さんと遭遇することがあったら、どう戦うか…」

それが現実…

「まず、最初にやるべきこと…」

冷徹なる、その事実。

「『逃げ』なさい。全力で。」

そう

逃げなさい!

698名無しリゾナント:2015/02/26(木) 21:38:24
>>690
■ アフタースクールレクチャーアバウト -リゾネイターX   - ■
でした。

>>692-697
■ アバウトイシカワリカ -   X石川梨華- ■
でした。

699698:2015/02/26(木) 22:07:58
羽賀さんの新作が上がっている様子なので
そちらの方が再投稿するまで待機します

700名無しリゾナント:2015/02/27(金) 18:46:23
「能力の原理ですか…」

カーメイ氏はそういって、
左手を顎に当て右手で肘を抱えるいつものポーズをとる。

伝統的な和室。
まだ肌寒い季節ながら戸は開け放たれ、
庭に面した縁側から淡い光と冷たい空気が流れ込んでいる。

「もともと超能力なんて、
原理をすっとばして機能のみを発揮するからこそ超能力なんで、
方向を狂わせるったら、もうそれでいい気もするんだけどね。」

客人は若い男性だ。
20代前半、典型的なリクルートスーツ。
これと言って特徴のない、やや細めの、どこにでもいる営業マン、
そんな風貌である。

「ただどうもそう言う事が気になって気になってたまらない、
ってのが、あの婆さんなわけでさ」

初老の紳士であるカーメイ氏に対して、少々不遜な、砕けた口調。
正座が苦手なのか、胡坐をかき、座布団を抱え肘当て代わりにしている。

「12期についての研究というのは意外なほどにあまり進んでないのが現状です。
その中でも特に野中美希という女性に関しては、まだまだ謎が多い。」

「ふーん…」

701名無しリゾナント:2015/02/27(金) 18:47:00
「研究当初においては空気調律とも言われていましたが…
例の大戦の際の記録が出たことによって、この説はすでに否定されています。
一方、重力操作説、精神干渉説…どれも憶測の域を出ません…
結論から言えば、わからない、そうお答えするしかない。」

「だよねー。俺もそういったんだけどね。
あの婆さんは、納得しねーだろーなー…。
ま、いいや、この件はなんとかごまかしちゃおう。
どうせもう半分ボケてんだからあの婆さん。
適当に別のおもちゃ与えとけばおとなしくなるって。さて!」

若者がおもむろに立ちあがる。
「じゃ俺そろそろいくわ。わざわざ時間取ってもらって悪かったね。」

702名無しリゾナント:2015/02/27(金) 18:50:38
>>700-701以上保全作

703名無しリゾナント:2015/03/01(日) 06:03:22
■ サイコサイコ -石田亜佑美X石川梨華- ■

「あらあら、薄情なお友達たちねぇ。
いいの?アンタ一人におっかぶせて、みーんな尻尾巻いて逃げちゃったけど?」

「いいんです!」

走り去る軽を振り返りもせず見送る。

「これが!ウチらの!作戦です!」

ドヤ顔。
仁王立ち。

石田の自信は揺るがない。

「ふーん。」

ボンテージ。
体のラインがきわどいほどに強調された、艶やかな黒のエナメル。

石川梨華

その強敵に、石田亜佑美が一人、対峙する。

「さぁ!石川さん…かかって来い!」

――――

その凶事は、突然、幕を開けた。

704名無しリゾナント:2015/03/01(日) 06:05:20
「はやく!はやく!はやく!」
「か、鍵!鍵!鍵!」
「ヒャー!」
「押すなって!押すなよ!まーちゃん!」

軽乗用車。
すし詰めの少女たちを乗せ、裏のガレージから飛び出す。

「ヒヒヒヒ!ヒャー!」
「お願いっ!まーちゃん!前見て!前!」
「ってゆうか、まさきちゃん運転できるんだね!」
「ハルだって!いちおう訓練受けてるっすけどね!」
「そこ張り合ってる場合?」

運転するは佐藤優樹。
助手席に鈴木、後部座席に工藤、石田、鞘師。
そして中央の隙間に折り畳まれるように、飯窪。

「うわぁ!来たぁ!」
「は…跳ね…てる…あんなのありなの?」
「追い付かれる!」
「まーちゃん!もっと速く!」

右に左に振り回される車内、その混乱の中、鞘師は石田の腕をつかむ。

「…あゆみちゃん…見た?」
「はい!見ました!鞘師さん!」
「どう?」
「はい!あのあと、『おっしゃってた通り』です!」
「…『やれる?』」
「もちろん!」

705名無しリゾナント:2015/03/01(日) 06:05:50
「よし…香音ちゃん!ナビで…」
「ん、もう出してる。」
「鞘師さん!この場所どうですか?」
「…堤防?…うん、いける…じゃあ、一番近い『トラック』は…ここか、まずこの道をまっすぐ行って…」

――――

「まったく…マメもさゆも留守だなんて…間が悪かったわ…」

ボンテージ。

「まさか『高橋だった』なんてさ…
我慢できなくなっちゃって、そのまま来ちゃったのよね。」

体のラインがきわどいほどに強調された、艶やかな黒のエナメル。

「まあいいわ…アンタでいい…マメにも聞くけど、今はアンタでいい…」

脱色で傷んだ髪をかき上げる。


「ねぇ?アンタ…『高橋』…どこ?」

706名無しリゾナント:2015/03/01(日) 06:06:20
■ サイコサイコ -石田亜佑美X石川梨華- ■
でした。

707名無しリゾナント:2015/03/02(月) 18:40:52
■ トランケイト -中澤裕子- ■

「石川が…?わかりました。
その情報は、あなたの所で留めておきなさい…ええ、ご苦労様」

中澤裕子は頭を抱えた。

「きっついわ…」

情報漏洩には十二分に配慮していた。
石川が知る余地は無かった、はずだ。

「どこや、どっから漏れた…」

  なに?また石川が暴走してるの?
  ああ、たのむわ、ちょっと行って捕まえてきてくれへん?

圭ちゃんがおったら、こないなん、なんでもないことやったのに、な…

かつての右腕は、もういない。
だがそれも、己の招いたことだ。

最悪の結末を回避する。
そのために必要なことは、すべてせねばならない。
その過程で起こるイレギュラーに、かまけている余裕はない。

708名無しリゾナント:2015/03/02(月) 18:41:37
犠牲は、やむをえない。

そうや、ウチはもう賽を投げてしもうた。
いまさら日和るわけにはいかん。

ならば、どっちや?
どっちを、とる?

決断は、すぐに下された。

709名無しリゾナント:2015/03/02(月) 18:42:53
■ トランケイト -中澤裕子- ■
でした。

710名無しリゾナント:2015/03/04(水) 17:56:44
■ スキュラ -石川梨華- ■

「【IB】の可能性ですか!?」

「ほーよ、石田から愛ちゃんの話を聞いたとき、
なんとなくそうじゃないかって思ってたのよ。
吉澤さんがそうなら、もしかして石川さんも、
そうだったんじゃないかって…」

【IB】、すなわち…

石田の目に映るもの。
今、目の前に居る、その凶事。

石川梨華

その女の、その周囲。

おぞましく、美しく。
うぞめき、のたうち。
うねり、反り返る。

『触手』

その不気味に脈打つ表皮は…背骨と胸骨…『あばら』を連想させる。
人の胴回りほどもある、触手の群れ。
醜怪な、異形の怪物。

それが、石川梨華の、真の、【能力】。

すなわち、

711名無しリゾナント:2015/03/04(水) 17:57:41
【幻想の獣(イリュージョナリービースト;illusionary beast)】!

712名無しリゾナント:2015/03/04(水) 17:58:32
■ スキュラ -石川梨華- ■
でした。

713名無しリゾナント:2015/03/04(水) 18:03:47
■ スキュラ -石川梨華- ■
ですが

一部訂正
>その不気味に脈打つ表皮は…背骨と胸骨…『あばら』を連想させる。

その不気味に脈打つ表皮は…背骨と肋骨…『胸郭』を連想させる。
にします

714名無しリゾナント:2015/03/04(水) 18:08:22
■ ライオンスタチユ -石田亜佑美X石川梨華- ■

「なるほど、それでアンタなの。」

大気が渦巻き、常人には見えざる、雄々しき獅子が、『現象化』する。

「アンタの【能力】も【獣】ってわけね。」

『リオン!アタックモード!』

主の号令に、咆哮で応える。

『GO!』

迎撃の触手をかわし、駆け抜ける。
その中心部、石川梨華めがけ、突進する。

だが

「でも、無駄。」

からみつく。
触手が獅子を捕える。
獅子が、触手を噛み千切る。
だが、その間に、さらなる触手が、胴に、脚に、
次々と絡みつき、締め上げる。
めきめきと音を立て、
獅子の身体がねじれ、潰れ、引き伸ばされる。

715名無しリゾナント:2015/03/04(水) 18:11:20
「…『カムバック!リオン!』」

寸前、獅子は、かき消すように、
空中に四散し、消滅した。

「あーあー、あっけなかったわね?
それにしてもアンタ、なんでさっきから、
わざわざ大声あげて【獣】に命令してるの?
考えただけで動かせるものだと思ってたけど、違うのね。」

「…ウチからしたら、コマンドも出さずに、自由に動かせるほうが、
よっぽど、おかしいんですけど。」

「はぁ…まあ、いいわ…
まだやる?またすぐ『出せる』んでしょ?」

「…」

「え?うそでしょ?私なんか子供の頃でも4〜5回はいけたわよ?」

「出来ないとか、言ってないし。
ウチだって、すぐ出せます…何回かは。」

「何回か?ずいぶんとまあ未熟な事。」

「…出せるけど!出さないんですよ!」

「まあ、なんでもいいわ…で?どうするの?
…まだやるの?それとも、おとなしく降参する?
降参するなら、許してあげてもいいわよ?
そうね…両手両足を、引きちぎる程度で。」

716名無しリゾナント:2015/03/04(水) 18:11:50
「…やってみればいいじゃないですか…どんとこい!このやろ!」

「へえ、まだやるの…じゃあ最後まで…」

ずるり、ずるり、と触手が立ち上がる。
そして、ゆっくりと凝縮する。
力を、ためる。
その瞬間を、待つ…殺戮の瞬間を…

「…やりましょう。」

触手が、殺到する。
殺到する、石田へと、殺到する。

『カムオン!バルク!バルク!アーマードモード!GO!』

「え?なに?」

獅子ではない。
凝縮する大気の中心。
再び『現象化』したそれは…

717名無しリゾナント:2015/03/04(水) 18:12:22
巨人

…巨大な板金鎧。

だが、触手は怯まない。
襲い掛かる。
幾重にも触手が、絡みつく。

「まあ!アンタそんなことできるの?」

見えざる巨人、その腹部、
中空の、その鎧の中、
石田亜佑美が、そこに、居た。

718名無しリゾナント:2015/03/04(水) 18:13:01
■ ライオンスタチユ -石田亜佑美X石川梨華- ■
でした。

719名無しリゾナント:2015/03/05(木) 12:49:12
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/1150.html#id_354290d0 の続きです。

720名無しリゾナント:2015/03/05(木) 12:50:21

声がした方へ振り返る

「譜久村さん!」

そこには息を切らした譜久村さんが居た

「道重さん達の様子から、もしかしたら能力者にって思ったけど……まさか、佳林だったなんて」

え?

「聖、ちゃん……」

ウソ
譜久村さんと宮本さん、知り合い?

「私達の邪魔をしないでください」
「佳林達の事情は聖にはわからない。けど、亜佑美ちゃんの心を傷付けて引き込もうとするのは許さないから」

一触即発
睨み合う譜久村さんと宮本さん

だけど
どうして2人共が辛そうな顔してるの?

「聖ちゃんには分かりっこないですよ、佳林達の気持ちは」
「……佳林は、今の仲間と居れて良かったって思う?」
「え?」
「聖は思ってるよ。どんな辛い事があっても、仲間と一緒なら乗り越えられるって信じてる」

721名無しリゾナント:2015/03/05(木) 12:51:11

ハッとした表情になった宮本さん
目線が一度ウチに向く
しばらくして、再び譜久村さんに戻った

「大切なんですね、今の場所が」
「……ごめん」

〝ごめん〟?
それって、どういう事ですか?

「……わかりました」

溜息をつく宮本さん

「さよなら……」

宮本さんは振り返って歩き始めた

行っちゃう!?
このままじゃダメだ!

「あの!」

宮本さんは振り返ってはくれなかったけど、立ち止まってはくれた

「えっと……」
「あぁ……店に居た人達なら大丈夫ですよ。もう元に戻ってる頃ですから」

道重さん達の事?
そっちも気になったけど

722名無しリゾナント:2015/03/05(木) 12:52:01

「そうじゃなくて」
「……なんですか?」
「あなた達の仲間になれなくても、能力者同士みんなで助け合う事は出来ると思う! だから、また会えないかな?」

宮本さんが振り返る

「優しいんですね。でも、助け合いは無理ですよ」
「どうして!?」
「私達は、皆さんと一緒には居られない」

ねえ
どうしてそんなに辛そうな顔してるの?
助けて欲しいんじゃないの?

そもそも

「あなた達は一体何者なの?」
「こうなった以上、詳しくは言えません。ただ今は〝J〟とだけ伝えておきます」

そう言って振り返り、宮本さんは去って行った
その背中は、とても淋しそうに見えた

「あの、譜久村さん」

訊かなきゃ
宮本さんとの事

「宮本さんと知り合いみたいでしたけど、どういう関係なんですか?」

723名無しリゾナント:2015/03/05(木) 12:52:54

目が合った譜久村さんは、気まずそうに逸らした

「……ごめん。言えない」
「え、どうしてですか!?」

私を引き込もうとしたのは宮本さん
その為に道重さん達をおかしくしたのも、きっと宮本さんのはず

その宮本さんと知り合いかどうかが言えないって
どうして?

「私はリゾナントを追い出されたんですよ!? それなのに
「今は駄目なの! 聖のワガママだって、勝手な事を言ってるってわかってるけど……いつか言う。だから、待ってて欲しい」

真っ直ぐ私を見る譜久村さん

その瞳から、後ろめたさは感じない
今の言葉が嘘だって思えない

だけど、 簡単に納得なんてできない

ウチはどうしたらいいの?

この瞳、信じていいの?

724名無しリゾナント:2015/03/05(木) 13:02:53
>>720-723
全然生誕祝っていない内容ですが、ひとまずここまでです。
1年以上前の生誕作ですみません。

>>113の書き込みは私です。

>>133
ブラウザはプリインストールのSafariです。

>>137
リゾネイターシリーズの後に投稿する勇気がなく、タイミング待ちでした。

よろしければ、代理をお願いいたします。

725名無しリゾナント:2015/03/05(木) 18:41:39
>>724
行ってきました

726名無しリゾナント:2015/03/06(金) 01:40:47
■ ティンカンドラム -石田亜佑美X石川梨華- ■

「別の【獣】を出してきたときは、ちょっとびっくりしちゃったけども…」

鎧が、軋む。

「結局、それも見かけ倒し…」

見えざる巨人の、見えざる鎧が、聞こえぬ音を立てて軋み、歪み、悲鳴を上げる。
成長している。進化している。
新垣の知る頃とは、比較にならぬ、その破壊力。

もはや、これまでか。

『カムバック!バルク!』

鎧がひしゃげるのと、号令が発せられるのとがほぼ同時。

【空間跳躍】

その身を上空に転じた石田を、見えざる触手が追う。

【跳躍】

捕えられぬ。
触手は石田を捕えられぬ。
次々と【跳躍】し触手を翻弄していく。

再び【跳躍】
距離を取り、石川と対峙する。

727名無しリゾナント:2015/03/06(金) 01:41:22
「おどろいた、今度は【テレポート】?まるで高橋もどきじゃん。」
「まだ、高橋さんには及びません。【読心術】も、ウチには無い、でも」

ざんと一歩前へ。

「ウチにはあなたの【獣】が見える。あなたのきもちわるい触手、一本一本はっきりと!」
「ハァ?いま、なんつったぁ?」
「ウチにはあなたの攻撃は通用しない。そういったんですよ!」
「アタシの…【獣】が、なんつったぁ?」

先端部ですら人の脚ほどの巨大な触手が群れをなして石田に襲い掛かる。
その尋常ならざる圧力を、軽やかにいなし、かわし、翻弄していく。

「無駄です、石川さん。私はまだ『もどき』かもしれない。
でも、あなたに対してならウチは高橋さんと一緒、あなたはウチらには勝てません。」

「へぇ?凄い自信だこと。」
うごめく触手その中央、石川が静かにこちらを睨む。

「そのわりにはアナタ、さっきから逃げ回ってばかりじゃなくて?」

「…」

「それってさぁ、直接アタシに触れる距離に【テレポート】してこれないってことじゃないの?」

「…」

「アタシの【獣】が見えるならわかるもんねぇ…、
アタシの周囲には、誰かが入れる隙間なんかないことが、ねぇ?
この子たちに守られている限り、アンタにはアタシを倒すだけの攻撃手段が、ないんじゃないのぉ?」

728名無しリゾナント:2015/03/06(金) 01:42:13
沈黙が指摘の正しさを裏付ける。
かつて、高橋は田中の【共鳴増幅】により、研ぎ澄まされた【読心術】で、
見えない【念動力】の動きを読み切り、【瞬間移動】によって、石川の周囲に一瞬生まれた隙間を捉え、これを打倒した。
だが、今の石川に、その隙はない。
石川の周囲には、もはや他者が存在できるスペースが、無い。
巨大な触手の群れ、その根元、石川は、その中心にいた。

「だったらさぁ、これって我慢比べってことよねぇ?
アタシって、これでも結構執念深いの。
どうぞ、いつまででも、逃げ回ったらいいんじゃない?
アタシは、いつまででも、追いかけ続けるだけだからさ、ねぇ?」

『結構』執念深い?いやいや、見たまんま執念深そうだっちゃ…
でも、そんなの何にも怖いことないね!

「逃げ回る?とんでもない、そんなお手間は取らせません、石川さん。」

腰に手を当て、仁王立ち。

「攻撃手段なら!あります!」

「へぇあるんだ?だったらさぁ、さっさと、みせてもらおうかなぁ!」

再び、おぞましい圧力がうねり、石田に向かって殺到した。

729名無しリゾナント:2015/03/06(金) 01:42:51
■ ティンカンドラム -石田亜佑美X石川梨華- ■
でした。

730名無しリゾナント:2015/03/07(土) 00:57:27
□ ノーアイヴィー -石田亜佑美X石川梨華- □

【IB】、すなわち・・・

石田の目に映るもの。
今、目の前に居る、その凶事。

石川梨華

その女の、その胸囲。

おぞましく、美しく。
うぞめき、のたうち。
うねり、反り返る。

『乳房』

カントリー娘。で育ち、ROMANSで磨かれ、美勇伝で開花した。
それが、石川梨華の、真の、【能力】。

すなわち、

731名無しリゾナント:2015/03/07(土) 00:58:07
【幻想の乳(イリュージョナリーバスト;illusionary bust)】!

732名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:00:11
ぶつかり合う、乳と乳。
しかし圧倒的な質量差からか、石田の見えざる乳は空中に四散し、消滅した。

「あーあー、あっけなかったわね? 
ヘソは出てるのに乳はへこんでるって、どうなの?」

「…ウチからしたらそれだけの巨乳を操るほうが、よっぽど、おかしいんですけど」

「はぁ…まあ、いいわ…まだやる?もっと大きく『出せる』んでしょ?」

「…」

「え?うそでしょ?私なんかあんたくらいの年にはもうC〜Dはあったわよ?」

「出来ないとか、言ってないし。
ウチだって、杜の都の巨峰とか、正宗公が生んだスイカップとか、言われたことはあります。何回かは」

「今時そんな見え透いた嘘、たぐっちでもつかないわよ? 
…で?どうするの? …まだやるの?降参するなら、許してあげるわよ? 
そうね…『愛すクリームとmy プリン』のジャケ写の、恥ずかしいバニー服を着る程度で」

「やれるもんならやってみろ、こんちくしょう!!」

石田が吠える。
すると、地平線の彼方から駆けて来る、一匹の獅子。
その逞しい牙に咥えられた、パック状の物体は…

733名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:01:25
(ナレーション)あなた、最近乳揺らしてますか?

出生率の低下… 少子化問題… 無い袖も無い乳も触れない…

今、日本の女性が危ない…

しかし、そんな洗濯板な女性に救世主が!!

それが今回ご紹介する豆乳飲料、その名も…


「巨乳王」!!!!


日本に残された最後の秘湯と名高いあの「凡奇湯」の源泉で育てた黒大豆のみで作られた豆乳、そのイ
ソフラボン含有率は何と2981(フクパイ)ミリグラム!!

ここで実際にお使いいただいたお客様の声をお聞き下さい。

734名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:03:02
「いやー、最初は半信半疑だったんだけどね。飲んだ翌日からもー、バストがきつくてきつくて、バイ
ンバイン。最近は舞台でも巨乳の役ばっかなのよぉ。ありがたいねー。いくt…じゃなかった、後輩の
Ⅰ田にも勧めて、効果も出てるみたい」(神奈川県:眉毛ビームさん26歳)

「れいな通販の事は大体知っとうけん。こんなんインチキやろ、って。やけん、これもただの豆乳っち
ゃろって飲んでみたら、もうまりんの目つきが昨日と違いよる。これでライブでもお乳ぷるんぷるん揺
らせるっちゃんね。あ、おかまりにはあげんとよ?」(福岡県:ボーボーたい!さん25歳)

735名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:04:50
ともかく、その「巨乳王」を荒獅子から受け取ると、一気に飲み干す。これで石田の乏しい胸も…

「って、ぜんぜん大きくなってないじゃん」

「こ、効果には個人差があるんだから!!」

そう。こういうものは、毎日飲むことではじめて効果が出るのだ。
ローマの道も一歩から、万里は一日にしてならず、しゅごキャラエッグのアミュレットハートはぺったんこ。

しかし石田の攻撃はここで終わりではない。
突然、石田の幻想の乳が天を衝くほど上向き、そしてグランドキャニオンのような峡谷を作る。そこには、
鉄巨人の限界まで寄せて上げる努力と技術が。

「なによ!そんな見せ掛けの技には騙されないんだから!!」

あまりにもお粗末な仕掛けに啖呵を切った石川。
たがその次の瞬間、石川はとんでもないものを目にすることとなる。

「な…なんですってえ!?」

ふわふわと、石田の目の前に降り立った、中空の藁人形。
無数の管が、石田の乳に陰影をつけ、膨らんでいるように手を加える。フォトショップもびっくりの画像
加工に、石川も空いた口が塞がらない。

「どやっ!これがウチの…『Dシステム』だ!!」

736名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:05:29
【IB】たちの活躍によって、貧しい石田の乳は、あたかもグラビアアイドルのそれであるかのように偽装される。

すなわち、

(石田の乳を)D(カップに偽装する)システム

現代科学の粋を集めた技術が今、石川に襲い掛かろうとしていた。

737名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:07:28
      WORNING


この物語のキャラクター設定は、■シリーズにおけるオリジナルの設定とは著しく
異なっております。
作品のイメージは一端捨てて、新たな気持ちでお楽しみ下さい。

738名無しリゾナント:2015/03/07(土) 01:09:33
>>730-737
□ ノーアイヴィー -石田亜佑美X石川梨華- □  でした
…苦情は受け付けます

739名無しリゾナント:2015/03/07(土) 10:02:28
■ ストロウドオル -石田亜佑美X石川梨華- ■

『カムオン!スカークロウ!』

石田の眼前、空気が渦巻く。
ゆっくりと立ち上がる、物言わぬ、大きな案山子。
無数のストローの束が、そのまま人の形を成したかのような、異形。

「へぇ?そのぐにゃぐにゃしたのが『攻撃手段』?
触手には触手ってことかしら?でも全然甘いんじゃない?」

石川梨華は、真っ赤なマニキュアの光る、
その長い指をくるくると回し、石田の案山子を値踏みする。

「その藁人形の手と足、それと、頭も伸びるのかしら?
全部合わせても、たった5本だけじゃない?
それっぽっちで『攻撃』?それ以前の問題よね?
それっぽっちで、どうやって防ぐのかしら?アタシの【獣】をサ!」

石川の正面、触手の群れが立ち上がる。
巨圧がうねり、うち二本の触手が石田めがけて振り下ろされる。

『スカークロウ!アタックモード!』

主の号令に案山子は応える。
その両の腕を、ゆっくりと、上げる。

束ねたストローを、ざっくりと輪切りにしたような断面。
それが案山子の手のひらなのか?
襲いくる触手に、その指なき手のひらを向ける。

740名無しリゾナント:2015/03/07(土) 10:03:22
遅い。

とても間に合わない。

とても、防ぎきれない。


ずぼり。


その時、その断面に、指が、生えた。

指?ちがう。
黒光りする金属質な筒を、深い飴色の、木製品を連想する質感が包む。

これは、銃だ。

片手に5丁、合計10丁の、フリントロック。
かつて大西洋で暴れまわった、海賊たちが手にしていたかのような、単発銃。

『エイミーング!』

銃口が、バラリと向きを変える。
迫りくるその触手、左右からの一本一本へと。

『ファイヤ!』

轟音

741名無しリゾナント:2015/03/07(土) 10:03:59
触手が爆ぜる。
先端が千切れ飛び、一回転して、虚空に消える。
迫りくる脅威は、一瞬で消滅した。

『リロード!』

藁の断面から次々と抜け落ちる単発銃。
地面に跳ね、同じく虚空へと消えていく。

そして、新たな銃が断面に生え変わる。

スカークロウ、姿なき案山子の暗殺者、無言の、銃撃手。

742名無しリゾナント:2015/03/07(土) 10:05:07
■ ストロウドオル -石田亜佑美X石川梨華- ■
でした。

743名無しリゾナント:2015/03/07(土) 23:48:29
「だいじょーぶ? 朱音が〝なおして〟あげるー!」

「いたいのいたいのとんでけー!」

「ほら、もういたくないでしょ? おにごっこのつづきしよ!」

──

「なんで? なんで朱音とあそんでくれないの?」

「こっせつってなに? けがは朱音が〝なおした〟でしょ?」

「おれてるのにあそんだからわるくなった?」

「いたくなかったんでしょ? なおったんでしょ?」

「こわいってなによ!」

「朱音は〝なおして〟あげたのに!」

「ひどい!」

「もうあそんであげない!」

──

「朱音が力を使っても、みんなの傷は消せない」

「朱音は、なんで生まれたんだろう──」


なんという保全作だ

744名無しリゾナント:2015/03/08(日) 16:51:13
■ ヘッジホッグ -石田亜佑美X石川梨華- ■

「おどろいた。銃が撃てる【獣】?
アナタすごいの持ってるのねえ。」

石川梨華が芝居がかった態度で大げさに驚いて見せる。

「でも、いまのは、たった2本。
アナタのその豆鉄砲みたいなのは?ああ10丁だけだったわね。
10丁あって、こっちの2本に精一杯って感じじゃない?
じゃあ次、こっちも10本に増やしちゃおうかしら…」

石川の周囲にうねる触手。
立ち上がり、反り返り、その先端を奔らせるべく、力をためる。

『スカークロウ!フォワード!』
案山子は石田を背に、迫る触手を阻まんと一歩前へ。

「さぁ!おてなみぃ!はいけええええええん!」

殺到。

10の触手がうなりをあげ、石田と案山子に殺到する。

完全不利な状況。
だが、ドヤ顔は、崩れない。

『スカークロウ!フルバースト!』

号令に案山子が応える。
無言の了解を、その身に示す。

745名無しリゾナント:2015/03/08(日) 16:51:51
それは正に、針鼠のごとく、
全身から、無数に生え連なる―――

―――フリントロック、フリントロック、フリントロック!

火力を、数で、補う。

『エイミーング!ファイヤ!』

大轟音

10の触手の、その先端が。
爆ぜ、爆ぜ、爆ぜ、四散する、霧散する。
飛び散り、舞い散り、消滅する。

『リロード!』

無数の銃が滝のごとく抜け落ち、瞬時に新たな銃へと生え変わる。

『エイミーング!』

針鼠の、その針が。
無数の、銃口が。
先端を失った、その触手の根元、石川梨華へと。

『ファイヤ!』

746名無しリゾナント:2015/03/08(日) 16:53:10
■ ヘッジホッグ -石田亜佑美X石川梨華- ■
でした。


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