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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part5

1名無しリゾナント:2014/07/26(土) 02:32:26
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第5弾です。

ここに作品を上げる →本スレに代理投稿可能な人が立候補する
って感じでお願いします。

(例)
① >>1-3に作品を投稿
② >>4で作者がアンカーで範囲を指定した上で代理投稿を依頼する
③ >>5で代理投稿可能な住人が名乗りを上げる
④ 本スレで代理投稿を行なう
その際本スレのレス番に対応したアンカーを付与しとくと後々便利かも
⑤ 無事終了したら>>6で完了通知
なお何らかの理由で代理投稿を中断せざるを得ない場合も出来るだけ報告 

ただ上記の手順は異なる作品の投稿ががっちあったり代理投稿可能な住人が同時に現れたりした頃に考えられたものなので③あたりは別に省略してもおk
なんなら⑤もw
本スレに対応した安価の付与も無くても支障はない
むずかしく考えずこっちに作品が上がっていたらコピペして本スレにうpうp

2名無しリゾナント:2014/07/26(土) 02:34:54
まさか、こんな日が来るとは。

鞘師里保は感動に打ち震えていた。
今日は願いつつも叶うことのなかった願いが、ついに叶った日。

「どうしたのりほりほ、箸止まってるよ?」
「え、は、はいっ!」

テーブルの向かいにいるのは、里保が尊敬するリゾナンターの偉大なるリーダー。
これまで、喫茶店が忙しかったり里保が学生生活で忙しかったりで機会がなかったのだが。
ついに、道重さゆみとの二人きりの食事にこぎつけることができたのだ。

能力を持つものとして、か弱き人々を守ること。
共鳴するものとして導かれた自分たちの、指名。
そしてさゆみがいなくなる将来への、不安。

色々と話したかったのだけれど、いざそのシチュエーションに立たされると言葉も出ない。
そもそも。さゆみはこんなに年の離れた自分と会話などして、果たして楽しいのだろうか。
自分のような口下手な人間が、さゆみと二人きりになっていいものか。
二人だけの食事会に相応しくない思考が頭をぐるぐると駆け廻っていた。

「さすが水軍流の剣士だけあって、自戒の念が強いのね。けど、そういう人間だからこそ、喰らい甲斐がある」

思わずさゆみのほうを見る里保。
いや、話したのはさゆみではない。
辺りを見回すが、声の主はどこにもいなかった。

「見回しても無駄よ。あたしはあなたの心の中にいるのだから」

頭の中に、邪な音色を帯びた声が響く。
里保は、ゆっくりと瞳を閉じた。下手に騒いでは、相手の思う壺。
さゆみの気分を害してしまうという、状況に相応しくない気遣いも含まれてはいたが。

3名無しリゾナント:2014/07/26(土) 02:35:25
「あなたの自分を律するあまりに、がっちがちに固められた心。心の扉というものは固く閉ざせば閉ざすほど、逆に隙間を作る。あたしはその隙間に忍び込んだってわけ」
「どういうつもり?」

相手の不躾な話の切り出しに、里保は心の会話で答える。
すると、

「あたしはダークネスの能力者、って言えばわかるでしょ。あなたを潰しに来たのよ」
「なるほど」
「そしてその目的は半分果たされた。あとはあなたの心を乱し、狂わせるだけ。簡単なお仕事でしょう?」

勝ち誇ったように、その女は言った。
どうやら相手は精神操作系の能力者のようだ。

「どうする? あなたの水の刀であたしを斬る? 無駄無駄、あたしがいるのはそこからずっと遠くの場所。あなたの刃は、あたしには絶対に届かないんだから」
「そうですか」

里保は簡素にそれだけ言うと。

「ぎゃっ!!」

さゆみと里保が座るテーブルの、さらに奥。
薄汚いワンピースを着た中年の女が、苦しみながら床に倒れた。
いったい、何が起こったのか。

「昔、とある憑依能力者に体を乗っ取られたんです。その時に私の友達が精神系の能力で助けてくれて。多少…いやすごく強引な方法でしたけど。その時のことを思い出して、意識を集中してあなたを追い出すイメージを思い描いたんです。まさか、こんなに近くにいるとは思いませんでしたけど」
「……」

女の返事はない。
すでに、意識が落ちてしまっているようだった。

4名無しリゾナント:2014/07/26(土) 02:36:15
「でも、慣れないことはするものじゃないですね…なんだか…すごく、ねむ…」


その後眠ってしまった里保は、さゆみによってお持ち帰りされた。

5名無しリゾナント:2014/07/26(土) 02:38:07
>>2-4
「その日に何が起こったか」おわり
■■さんの後にこれとか恥ずかしい……

6名無しリゾナント:2014/07/27(日) 21:52:34
負ける気しない?

★★★★★★

「亀井さんってあの亀井さんですか?写真では道重さんの横におられた?
 あ、ありえないですよ!仲間同士で戦うなんてあってはならないことです!!」

いや、それは違うと鞘師は反論しそうになり、その言葉を飲み込んだ
たった今、目の前にいる道重さゆみという頼れるリーダーが仲間と闘った告白したばかりではないか
自らの手で掛け替えのない仲間、それも親友を消してしまったという告白
信じたくないのが本音なのだが、覚悟の告白は真実だと受け止めざるをえない

「飯窪、残念やけどホントのことや。受け止めるんや」
「まあ、さゆみんや愛佳のように私は自分の眼で見てはいないけど、信じざるをえないかな」
光井の声は揺らぎなく、新垣の声も普段通りのトーン

「ちょっと!!どうしてお二人はそんなに冷静でいられるんですか!
 かつての仲間だっなんですよ!!なんでそんな簡単に、受け入れられるんですか?」
石田が感情をむき出しにしたので、佐藤はびくっと体を震わせて、あゆみん、と肩をつかんだ
「なんだよ、まあちゃん」
「・・・新垣さん、爪割れてる」

佐藤の指摘した通り爪にひびが入っている。応急処置のだろうか、奇妙な光沢の跡がある
あれは・・・瞬間接着剤であろうか?
「新垣さん、その爪って」
「あっちゃー、後輩達を不安にさせまいと前もって準備しておいたんだけどね〜」
気まずそうに笑う新垣
「新垣さん、あんな強う拳にぎりはったら爪くらい割れますよ」
「あっちゃー、手厳しいところみるね、佐藤は」
「はい!!」
「いや、褒めてないから」

7名無しリゾナント:2014/07/27(日) 21:53:08
ため息をついて、顔を上げた新垣の瞳はいつもより濁っているように見えた。
「そりゃあさ、私達だって、できることなら戦いたくない
 さゆみんだけじゃなく私にとっても仲間だし、それ以上に友達だからさ
だけど、ダークネスと一緒にいるっていうことは『敵』って認識しなくてはならない」
心の内を隠すこと諦めたようだ
「それに、もしあの亀井さんが本気だしはったら、誰も勝てへん
 ダークネスにとっては亀井さんの能力はほしくてたまらん類のもんやろうしな」

「・・・あの、すみません。
 亀井さんってあの写真だけみると、すっごく優しそうで、何ていうか全然強そうにみえないんですが」
工藤が空気を壊すことを覚悟し、しかし、問わずにはいられなかったのだろう、失礼を承知で尋ねた
「亀井さんってそんなに皆さんが臆病にならなければならないほど強いんですか?」

「ねえ、くどぅ」
先輩たちに問いかけたにも関わらず、問い返したのが鞘師だったので工藤は慌てて鞘師の方を向いた
「強さ、ってなんだと思う?パワー、破壊力、スピード、それとも能力?」
「・・・すべての総合ではないでしょうか?たとえばはるなんと鞘師さんなら鞘師さんが強い
 感覚共有じゃ鞘師さんの太刀をさばききれないし、ぜったいにはるなんじゃ鞘師さんに勝てない」

「それは違うで」
「え?」
「工藤、もし愛佳の能力が飯窪の『感覚共有』やとしても鞘師に勝てる、かもしれへん」
「そ、そりゃ光井さんなら勝てるかもしれ・・・ない・・・ですけど」
光井に咎められているわけでもないのだが、その言葉の強さに押され、工藤の声が小さくなる

「愛佳だったら、じゃなくて、戦い方さえわかっていれば、今の飯窪でもやすしには勝てるよ」
そう断言する人物がいた、新垣だ
「新垣さん、無理ですって、私じゃ、鞘師さんには」
「いいや、戦い方を選べば勝てる」
グラスの水面に波紋が生じた

8名無しリゾナント:2014/07/27(日) 21:54:13
「弱い能力なんてあらへん、能力の長所は短所にもなる、裏表の関係にすぎへん、逆もある
結局は使い手の腕次第っちゅうことや・・・しかし、亀井さんの能力は反則的や」
「うん、あの力は頼もしいようで、恐ろしい両刃の剣だからね」
通じ合っている二人の表情は暗い

「・・・絵里はさゆみと一緒だった
それは仲が良かったから。さゆみに欠けているものを絵里はたくさん持っていた」
ずっと黙っていた道重が息を整えて、仲間達に顔を向けた
真っ青な顔、血色の悪い唇、泣き腫れた瞼
「だ、大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫じゃないけど、みんなには伝えなくてはいけないの」
光井から道重渡されたカップを受け取りながら、仲間達と一人ずつ目を合わせていく

「さゆみはリゾナンターとして多くの戦い、いろんな力を見てきたの
 さゆみの治癒能力、れいなの共鳴増幅能力、りほりほの水限定念動力・・・頼りになる仲間たちの力
 詐術師の能力阻害、永遠殺しの時間停止、マルシェの原子構成・・・圧倒的なダークネス幹部の力
 負けることは死、それを意味する中でさゆみたちは成長できたの
 死なずに今、こうやっているのは奇跡かもしれない」
G、天使、A、R、鋼脚・・・幹部たちとの死闘を思い出し、光井も「ほんまやなあ」とつぶやく

「ダークネスに比べて一人ひとりの力は弱かった。だからこそ、さゆみ達は気持ちを一つにして戦うしかなかった
 それが共鳴、というダークネスも恐れる形で現れたのだと思うの
 ただ、愛ちゃんの光使い、れいなの共鳴増幅能力など強力な力があったのも事実
 ガキさんの精神操作や愛佳の未来予知ももちろん心強かった」
「褒められても何も出せやしないよ、さゆみん」

「小春の電撃もジュンジュンの獣化もリンリンの発火能力もあるからこそ、こうやって今、生きていられる
 もちろん、絵里のあの力も・・・絶対に負けない力」
「『絶対』??」
あえてその単語を使用したように感じられ、石田が反応する
「絶対、ってどういうことですか?」

9名無しリゾナント:2014/07/27(日) 21:54:48
「石田、私達の戦いで負けることは『死』を意味するってさっき説明したよね?
 ただ、少なくとも私達、リゾナンターは極力命を奪うことはしないことを掟とした
でもダークネスは違う。邪魔するものは徹底的に排除する」
「そ、それはわかっていますよ、新垣さん」
何を言いたいのか全く予想つかない石田達
「ダークネスの破壊行動を未然に防ぐ、それがリゾナンターの役目であり、何も起こさないことが『勝ち』や
ただダークネスの幹部にとっては戦闘員の命の一つや二つが失われることはなんともないやろ
でも何も「事件が起きない」こと、それから幹部が命を失うことは作戦失敗、起こってはならないことや
一方で愛佳たち、リゾナンターにとっての負けはダークネスの行動を守れなかったこと。そこに命の有無は問わへん」

「前から不思議に思ってたんだけど、ダークネスは私達の命を本気で取りに来ればそれで終わる
それなのに、それをしない。なんでだろうね?」
「・・・なんでっちゃろ?」
その問いは昔から幾度となく繰り返されたものだが、未だに明白な答えが出ていない
「それは私達にもわからないことだけど、時々感じることがある、寧ろ、あえてしていないんじゃないかって
 ただ、その理由を説明できる理由の一つはある。それに関係するのがカメの能力」

「亀井さんは『死なない』能力者、なんですか?」
佐藤の答えに道重は首を横にふった
「まあちゃん、死なない人間なんていないよ。怪我をすれば赤い血が流れるし、痛みだって感じる
 絵里はいたって普通だよ。普通に笑って、普通に悲しんで、普通に怒って、誰よりも楽しんだ
何よりも自然体、それが絵里だった。力も自然そのもの、言うなれば『風使い』」
「・・・風ですか。」
小田が先程の鞘師の太刀を払う場面を脳裏に呼び起こしながらつぶやく
「・・・風ならばあのように宙を飛ぶのもすべて説明がつきますね」

「亀井さんは特にカマイタチを好んで使っていた。戦闘スタイルは中軸で支援と攻撃を使い分けるバランスタイプ
 せやけど、それは愛ちゃんと田中さんがおったからや。二人がおらんときは最前線で戦っていた」

10名無しリゾナント:2014/07/27(日) 21:55:25
「風か・・・風ならはるの千里眼に何も映らなくても仕方がありませんね
 でも、そんなに風だけで戦えるんですか?だって風ですよ?」
「くどぅ、台風だって竜巻だってすべて風ですよ、自然の力は侮れません」
「飯窪わかってるねえ〜その通り。風を操る力はみんなが想像している以上に強力な力
 台風並みの突風もそよ風程度のやさしい風もすべてカメは意のままに起こすことができた
カメのカマイタチは見えない刃、と評していいものかもしれないね。あらゆるものを切り刻んだから
巨木だろうと拳銃の弾であろうと、なんでもね。攻守のバランスで言えば9人の中でも一二を争うかもしれない」
「亀井さんが風を操るときはそれこそ、舞い踊っているようでしたわ」
「舞姫、亀井絵里さん、ですか」

「・・・しかし、風だけならどうしてそこまで恐れる必要があるのでしょうか?
 ・・・数が少ない私達ならともかくとして、ダークネスが恐れた力とは何なのでしょうか?」
小田に近づく新垣
「・・・なんでしょうか?新垣さん」
「ん?いや〜可愛い顔してるなって。いやいや、ただそれだけだって、ちょっと生田、顔をしかめない」
「え〜だって〜新垣さんが〜」
肩をポンポンと叩き、振り向いた生田の目の前には眉間にしわを寄せた鈴木の顔
「・・・なに?」「今の生田の顔真似」

「鈴木!!漫才しとる場合やないで、ええか?話続けるで。
亀井さんの能力のもう一つ、それこそが問題なんや。能力名は『傷の共有』」
「「「「「「「傷の共有?」」」」」」」
「自分が受けたのと同じ傷を相手に作ることができる能力や。
それも一人だけにやない、亀井さんが望むだけの相手に傷をつくることができる」
「・・・相討ちに適した能力、ってことですか?」
「そういうことや」
戦いのプロとしての直感的に鞘師は危険な力と感じ、身震いした
「で、でも、誰とでも相討ちにできるってわけではないんですよね?」
「もちろん、石田の幻獣が石田が視える範囲しか動かせないように」
「!! ちょ、ちょっと待ってください!なんでそれを知ってるんですか!誰にも話したことないんですよ!」
新垣がため息をつき、頭を掻きながら石田を落ち着かせようとやさしく声をかける

11名無しリゾナント:2014/07/27(日) 21:56:50
「あのね、石田、それくらい、私達くらいならすぐに気づくからね。話、戻すよ
 傷の共有にも届く範囲、射程距離っていうのがある。それは半径数百メートル」
「それなら、たいしたことないじゃないですね」
「カメだけならね。そこに田中っちがいると、範囲は数百キロメートル」
「は??数百キロ?それって」
あまりにもかけ離れた範囲に驚き声をあげてしまう工藤
「いや、それでけで済まへん。共鳴にも相性っちゅうもんがある。
亀井さんと最も相性が良かったんは道重さんや。道重さんがおったら数千キロメートルになる・・・かもしれない」
あまりにも桁が違うスケールに言葉を失う8人、佐藤以外は言葉を失った

「え〜でもたなさたんもみにしげさんもまさ達といっしょだから、そんなに心配はいらないんじゃないですか?」
光井が佐藤に笑いかける
「そう、距離のことは今回はあまり気にすることはあらへん。
 しかし亀井さんは元からダークネスにおったわけやない、ことが問題。そうですね、新垣さん」
「うん、どういう経緯があったかわからないけど、今はカメはダークネス側にいる
 そして、ダークネスにとってカメは『駒』の一つに過ぎないかもしれない」
「つまり、幹部、ではない、一介の構成員に過ぎない立場ということですね
 ダークネスとしては傷の共有をためらう必要はないってことですね
 ・・・下手に亀井さんを攻撃したら、回避不能の死のカウンターが来る、かもしれない」
譜久村が珍しく鞘師よりも先に新垣達の伝えたいことの本意を読み取った

「ダークネスは何をしようとしているのでしょうか?」
「それはこれまでとおなじだよ。世界を変える、そのために必要なことは何でもする」
簡潔な答え、それが答えなのだろう
「・・・でも私達、リゾナンターは戦わなくてはいけないの」
「道重さん?」
「たとえ、エリが敵でも・・・仕方がないの。エリもさえみお姉ちゃんと闘ってくれたんだんだもん
 さゆみはダークネスに泣かされる人が一人でもいるなら、その人を救いたいの」
その瞳からは決意の二文字が読み取れた

12名無しリゾナント:2014/07/27(日) 21:58:31
「・・・新垣さん」
「うん、愛佳、私達の心配は杞憂だったようだね」
さゆみん、強くなったね。初めはあんなにキャーキャー言ってたのが嘘みたいだよ」
面と向かって褒められ慣れていないのだろう、道重は視線を外す
(立派なリーダーになったもんだねえ)
新垣はそう思いながら、9人の後輩達に檄を飛ばす

「いい?みんな!カメは非常に危険な能力を持っている
 安易な考えだけで突っ走ることはしばらく控えた方がいい
 無理はしないで、変な感覚を覚えたらすぐに仲間に連絡するんだよ」
「変な感覚??」

「そもそもカメが生きているっていうことは愛佳の予知夢だけじゃなく、さっきの風で私も確信した
 元リゾナンターとしての絆は完全に切れてはいないようだからね」
「それで道重さんが私たちの誰よりも先にフードが亀井さんと気づかれたんですね」
「そや、工藤。千里眼で視えるもの以上に視えるもんもあるんや、覚えとき!」
「はい!!先輩」

★★★★★★

「いや〜さゆみんも強くなったね。それにあの子達も強くなった。
実に頼もしい、仲間達を持ったね!!」
新垣は満足げに鼻歌混じりに歩いていたが、しばらくして光井が先を歩いている新垣に声をかけた
「あの、新垣さん?」
「ん?」
振り返る新垣に光井は尋ねるべきか逡巡していた疑問をぶつけた
「一つだけ伺ってもよろしいです?先程の小田ちゃんの顔を覗き込んだのって」
新垣は改めて辺りを伺い、誰もいないことを確認したうえで光井だけに聞こえるように小さな声で語りだす
「愛佳も気になったよね?小田ちゃんはダークネスにいたのになんでその情報を知らないのかな?って
 リゾナンターのために派遣されたスパイなのに、カメを知らないって矛盾しているじゃない」

13名無しリゾナント:2014/07/27(日) 21:59:50
「ええ、確かにそれはおかしなことやなあって思っとったんです。知らへんかっただけ、で済みそうにないですね
 ・・・探りを入れる必要があるかもしれませんね」
「愛佳がやるの?あの子直感優れていそうだから、相当注意しないと危ないと思うよ
 せめて私も動ければいいんだけど、別のことで手が離せないから、不安だね」
光井はニヤッと笑う
「大丈夫ですよ、すでに調査には入っとる方がおるんですわ」
「・・・ま、私がカメの存在に気づいたってことは、だね」
新垣も笑い返し、宙を見上げた
「そういうことです」

★★★★★★

「ありゃりゃ、ワタシ達の行動、筒抜けみたいダネ」
やや身長の高い女性が口をもごもご動かしながら、モニターを覗き込んだ
モニターには自国のGPS衛星をハッキングして映し出した映像が映り、そこには新垣、光井の姿
「新垣サン、こっち見てマスヨ」
パソコンを操作するもう一人のやや小柄の女性に向かって笑いかける。その表情は嬉しそうだ
「新垣さんならそれくらい気づく、当たり前、いや、バッチリです」
「ソウダネ」
ガコンと音がして、ごみ箱に何かが落ちた。熟れたフルーツの甘い香りが漂った

★★★★★★

「いや〜今日は疲れましたね〜まさか200人も構成員がいるなんて思わなかったですね」
自分の肩を回しながらややハスキーな声で茶髪の女性が隣の背中のギターケースを背負った女性に笑って見せた
「でも、たいしたことなかったじゃん。
ま、これであいつら、ドラッグを流したりできないだろうし、いい仕事といえるんじゃない?」
いつもなら自分の横にワンテンポ遅れて、さらに低い声で同意してくれる仲間がいるのだが、今日は返ってこなかった

14名無しリゾナント:2014/07/27(日) 22:00:24
その相方は少し遠くで立ち止まり、さらに後ろで立ち止まったままのリーダーの姿を眺めていた
「どうしたの?疲れた?」
「・・・違う」
二人はリーダーが宙を仰いだまま立ちどまっているようであった
「風が吹いた」
ぽつりとつぶやいた。そして駆け出した
「ちょっと!どこに行くんですか!!」
立ち止まらずに声だけが三人の元に届く
「ごめん、ちょっと行かなきゃいけないところできたと!!」

★★★★★★

大気の震えを感じたとき、彼女は荒野の真っただ中にいた
流れる雲、果てしなき地平線、時折ふく風が鳴らす音のみが全ての世界
己の存在を一から問うための旅の途中
答えなど見つかるかはわからない、しかし存在する意味が欲しかった
「・・・絵里」
彼女もまた宙を仰いだ
そして・・・音もなく消えた。彼女のいた痕跡を示す靴跡のみが残された

15名無しリゾナント:2014/07/27(日) 22:06:52
>>
『Vanish!Ⅲ 〜password is 0〜』(3)でした。
卒業までに書きたいのだが、遅筆が止まらないっw
連載止めないように頑張ります。
好きなキャラを好きなように、ではなく展開を中心に描くってやはり難しい
コメディ書きたいよ・・・でも我慢、我慢

16名無しリゾナント:2014/07/28(月) 00:09:49
初代行行ってきます!失敗したら許してね

17名無しリゾナント:2014/07/28(月) 00:26:38
行ってきましたー!緊張したw

18名無しリゾナント:2014/07/28(月) 23:15:42
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/838.htmlつづき投下いたします



ひしゃげた棚、飛び散ったガラスの破片、「なにか」に使われていた檻―――
この場所にはまるで生きた匂いがしない、と彼女は眉を顰めた。

ほんの数ヶ月前、此処にはいくつもの「生命」があった。
部屋の中心に「培養液」の入ったカプセルがあり、その中には実験体としてひとりの少女がいた。
それを眺めるように、檻の中には数人、孤児院などで「拾われ」、そして検体番号を振られた少女たちがいた。

此処では常に、生命は軽んじられ、人権など無視されていた。
いのちは平等などではなく、タイミングや境遇などで如何様にも変化する不安定なものだった。
非人道的と指差されるのは当たり前だ。
だが、再三言うが、いのちは平等ではない。

19名無しリゾナント:2014/07/28(月) 23:16:12
東京のど真ん中で通り魔殺人が起きれば日本は驚愕する。
アメリカのど真ん中でテロが起きれば世界は驚愕する。
だが、アフリカで飢餓が起きようとも、だれも驚愕しない。

そう。いのちは、不平等なんだ。
呪うのなら、運命を呪え。世界を呪え。期待するな。此処には、希望なんてないんだ。


そんなことを考えていると、じゃりっとなにかの破片を踏む音がした。
空気の色が変わる。
ああ、さすがだよ、と彼女は笑った。

「待ってたよ」

ゆっくりと顔を擡げる。
そこには、思った通りの人物がいた。

20名無しリゾナント:2014/07/28(月) 23:16:43
「返事は決まったのかな?シゲさん」

そう、シゲさんと呼ばれた彼女―――道重さゆみは前髪の奥に隠れた目を細めた。

彼女にはなぜか、シゲさんと呼ばれることが多い。その呼び名は、やっぱり嫌いだとさゆみは思う。
「シゲさんって言わないで下さい」と苦言を呈すと、氷の魔女は大袈裟に肩を竦めた。


「調子はどう?脚とか、治った?」

そう訊ねられ、さゆみは眉を顰めた。
以前もそうだったが、彼女はこちら側の情報に詳しすぎる。
黒衣を纏った氷の魔女と対峙しながら、ゆっくりとその距離を詰める。
あの日と同じように、闘う気はないと両手を挙げて丸腰であることをアピールした彼女は目を細めて笑った。

この人の言葉に、嘘はない。と直感する。
敵ではあるけれど、嘘をついてまで勝負を挑むようなタイプではない。
ダークネス側にも、いろんな人種がいることを改めて知る。
どんな卑劣な手段を使っても勝とうとする人もいれば、この人のように飄々と生きている人もいる。
前にこの人が言ったように、「集団」なのだけれどその中身は徹底した個人主義なのだと分かる。
それが少しだけ、羨ましくなったこともあるのは事実だ。

21名無しリゾナント:2014/07/28(月) 23:17:23
「3ヶ月前くらいにれいなと殺り合ったって聞いたけど。お腹に穴、開けられたって」

魔女に指さされ、さゆみは素直に右脇腹に手を翳した。
確かにあの日、あの血の気の多いヤンキーに風穴を開けられかけた。腸を抉り取られはしなかったものの、臓器はぐちゃぐちゃになった。
だが、さゆみはこうして、生きている。
その理由をホイホイ教えるほど、私は素直な人間じゃない。
沈黙がつづき、返答がないことに飽きたのか「まあ良いけどさ」と魔女は話を変えた。

「シゲさん、答えは決まったの?」

もういちど、最初の話に戻った。
4ヶ月ほど前、氷の魔女と此処で対峙した時、彼女はさゆみを勧誘した。

「ええ、もちろん」

ダークネスに入り、この能力を世界統一のために使わないかと。決心がついたらまた此処に来てと。
そしていま、さゆみが来たということは、その答えはおのずと、決まっているはずだ。

22名無しリゾナント:2014/07/28(月) 23:18:01
「断るに決まってます」

さゆみの凛とした言葉が、生の香りが失くなった監獄に響いた。
魔女は顔色ひとつ変えずにさゆみをじっと見つめる。
確信もあった。彼女ならこちらに来ると。だが今、その確信が揺らいだ。いや、むしろその確信こそが「確信」なのだ。
彼女は、こちらに来るという確信を揺るがし、最後までそこに残るだろうという確信―――

「私は、リゾナンターの一員です」
「あの泥船に、乗りつづけるってこと?」
「あなたから見ればその程度かもしれません。だけど、私にとってあの場所は……此処が、私の生きる場所なんです」

さゆみの目は恐れを知らぬ子どものように真っ直ぐに、氷の魔女を射抜いた。
あの日のように闇に迷い、それと手を取りかけた幼い少女はもういない。
此処にはただ、不器用ながらもなにかを決意し、がむしゃらに生きていくことを誓ったひとりの女性がいた。

「自分の意志で、さゆみは、私は、闘います。あなたたちと」
「その体でなにができる?脚も腹も完治してなくて、療養中って言われてんじゃん」

ああ、ホントになんでも知っている人だと口角を上げざるを得ない。
まさか情報が洩れているのか、内通者でもいるんじゃないかと疑ってしまうほどだが、所詮は杞憂で妄想だと肩を竦めた。
内通者がいるのなら、とっくに私は死んでいる。

23名無しリゾナント:2014/07/28(月) 23:18:35
「それでも私は、負けません」
「本気なの?シゲさん」
「本気ですよ、私は、いつでも」

その言葉に、氷の魔女はひとつ息を吐いた。
答えを知っていたような、それでもなお諦めきれないような、複雑な瞳の色を有していた。
その理由はさゆみには分からないし、分かりたくもないけれど。なんだかやっぱり、この人は変わっていると思った。
彼女は「勿体なさすぎるって…」と言葉を漏らしたあと、「ああ、そうそう」とすぐに言葉を紡ぐ。

「ついでに聞きたいんだけどさ」

直後、彼女はすっと右手を挙げた。
なにか来ると直感し、さゆみは慌てて構えた。
案の定、大気がゆっくりと動き出すのを感じる。彼女の右手の中に気が集まりだし、それが確かな形となって表象していく。
それは「あのとき」に見た「物体具象化能力」とは別物だ。これはただの、「氷塊能力」だ。

「キミらはなにを企んでんの?」

言葉の意図をはかりかね、さゆみはじりっと後退する。
なにがですか?と声に出して訊ねはしなかったものの、目がそれを訴えていたのか、彼女は口角を上げて応えた。
手の中に集まった氷塊は、いまにも走り出さんばかりに肥大化していた。

「こっちの“上”の連中がね、妙に気にしてたんだよ。そっちの解体があまりにも演出じみてるってさ」
「……なんのことですか?」
「用意された舞台みたいなもんじゃない?すべてを無に還すように見せて、実際は―――」

24名無しリゾナント:2014/07/28(月) 23:19:08
瞬間、だった。
バカン!となにかが派手な音を立てた。
魔女は虚を突かれたものの即座に振り返る。
そこには中空に派手に浮かぶマンホールの蓋と、それを握り締めて飛ぶ彼女の姿があった。

「いっけぇえええ!!」

彼女は体を大きく反らすと、まるで円盤投げのようにその蓋を勢い良く魔女へと投げつけた。
咄嗟に手中の氷塊を崩し、全面に広げる。氷の膜を張り、衝撃を受け止める。
マンホールの蓋が派手に氷に激突する。
氷にヒビが入り、ぴしぃっと音を立てる。

崩壊。
派手な音とともに、氷の壁が粉々に散る。
思わずミティは目を腕で覆い、破片から身を護る。
隙間から微かに、彼女が飛び込んでくるのが見えた。
まずいと思い、咄嗟に左手を繰り出すが間に合わない。
彼女の右拳が自らの左肩を抉った。重い、一発だった。思った以上の衝撃に奥歯を噛む。

「……ったいなぁ!」

ミティは強引に彼女の腕を掴み、ぐいっと捻った。
軽い彼女の体は簡単に中空で舞ったが、両脚を回転させて重心を動かし、そのまま魔女の両肩に乗っかった。

25名無しリゾナント:2014/07/28(月) 23:19:40
交差する手首をそのままに、強引に魔女の腕を持ち上げ、もぎ取ろうとする。
ごきんと肩の骨が鳴った時点で魔女は慌ててその手を離し、氷塊を放出した。
鼻先を掠められた彼女はぐるんと後方に回転し、さゆみの横に着地した。それはさながら、猫のようだった。

一瞬の判断は正解だった。
ぶらりと垂れ下がった肩は、骨が少し外れたらしい。脱臼状態だが、なんとか入れるしかない。
不意を突かれたとはいえ無様だなと魔女はその方向を睨み付けた。

「れいなへったくそー」
「はぁ?」
「なーにが、れなに考えがあるっちゃん!よ。左肩の骨外せただけで全然斃せてないじゃん」
「しょうがないやろ?マンホール結構重くて投げるの必死やったとよ?」
「じゃあ最初からふたりでいけば良かったじゃん。さゆみ超緊張したんですけど」
「さゆがそもそももう少し時間稼いでくれたら、れなやってあいつの顔面グーで殴れたとよ?」
「え、さゆみのせいですか?」
「そうよ」
「そうよってなんよ」

左肩の関節が外れた魔女は、目の前で繰り広げられる光景に目を細めて口角を上げた。
博多弁と山口弁が入り混じる言い合いは、まるで猫のじゃれ合いだ。ああ、やっぱりそういうことかと合点がいき、いまさら驚くことはない。
だからせめて、教えてほしい。教えてほしいんだよ、このお姉さんにさ。

26名無しリゾナント:2014/07/28(月) 23:20:29
「いつから演技してたんだよ、田中れいな」

声をかけられた彼女―――田中れいなは、口角泡を飛ばすことをやめ、魔女を睨み付けた。
その瞳は真っ直ぐで、だけど左の方が微かに濁っていて、彼女に抉り取られたのは事実のようだと理解する。
れいなはひとつ息を吐くと

「教えてやらん」

そう、応えた。

「さゆとれなの秘密やけん、あんたには教えてやらん」

ばっさりと斬り捨てるその言葉に、思わず喉を鳴らしてしまった。
ホント、何処までも面白い奴らだと、氷の魔女は心底、楽しんでいた。

うん、足掻く奴は、嫌いじゃないよ。

27名無しリゾナント:2014/07/28(月) 23:22:51
>>18-26 ひとまず以上

28名無しリゾナント:2014/07/29(火) 00:28:49
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/1044.html の続きです



夜が訪れる。
周囲が闇に満ちるこの時間、人々が住まう街は灯りを点すことで暗闇に抵抗する。だが、この場所はむしろそんな闇を受け入れてす
らいるかのように映る。
この世のありとあらゆる闇が集う地、すわわちダークネスの本拠地。
その地下深くに設けられているのが、彼女たちの会議の場。通称「蒼天の間」と呼ばれる場所であった。

円筒状の空間に、配された13の椅子。
会議に参加する組織の幹部たちは数人を除いて既に席に座っているものの。

「しっかしまあ何だ。うちの所帯も随分寂しくなったもんだな」

ライダースーツの金髪が、大げさにため息をつく。

「『守護者』と『詐術師』が死んでしまったわ。二人の粛清人もいない。今日の議題は差し詰め、組織の建て直しってとこかしら」

呼応するように、真向かいの迫力のある顔の女性が言った。
彼女の言うとおり、三人の幹部が殉職し、後の一人は再起不能。下部組織は右往左往の混乱中。まずは状況を収め組織の地盤固め
を行うことは急務だった。

「粛清人については後任が育つまで持ち回りでやるしかないっすね。ま、組織がガタついたって言っても痒い所に多少手が届きに
くくなるだけの話。そんなことより…あいつらを、何とかしないとな」
「リゾナンターのことね」
「ま、あたしは戦闘に関してはからっきしですから。お強い先輩たちに任せ…あたっ!?」
「ばーか、お前一応幹部だろ?」

隣でおどけるプリン色の頭を軽く小突くライダースーツ。
と同時に、先ほどから一言も喋らないある人物のほうへと視線をやる。

29名無しリゾナント:2014/07/29(火) 00:30:02
「なぁ。そろそろ気持ち、切り替えてくんねえかな?」
「…美貴のことは、ほっといて」

ようやく口を開いたゴシックロリータの女性。だがそれきり、瞳を閉じて外界から意識を遮断させてしまう。

その時だった。
部屋の扉が、ゆっくりと開く。
黒のローブを纏った妙齢の女性は、着席している四人の顔を見やりながら、中央の自分の席に深々と腰を落とした。

「…随分、静かやな」
「『詐術師』と『黒の粛清』がいませんからね」

皮肉ったような、迫力ある顔の女性 −「永遠殺し」−の言葉を聞き、深くため息をつく。
ただ、これも組織が前に進むための犠牲。割り切るしかない。組織のトップに立つものとして、それ以上振り返る事はしなかった。

「あいつらは?おらへんやん」
「…”任務”を終えて、とっくにこっちに来てるはずなんすけど―」

ライダースーツ −『鋼脚』− がそう言いかけた時。
爆発音。一瞬身構える幹部たちだが、すぐにその音の主は判明した。

「おーっす!!」
「ひっさしぶりやなぁ。アホの蟲使いぶっ殺したった時以来か」

爆発音は、現れた二人組の片方が扉を思い切り蹴飛ばして開けた音だった。
一人は、腹部を出したチューブトップにショートパンツ。明らかに近接戦が得意、といった格好。そしてもう一人は脇に布を合わせ
て止めるタイプの半袖のワンピース。どちらも布地は白を基調としていた。
ダークネスにおいて災厄の双子として恐れられた二人、「金鴉」と「煙鏡」が再び蒼天の間に足を踏み入れたのだ。

30名無しリゾナント:2014/07/29(火) 00:31:34
「反省した顔には、見えへんね」
「反省したっちゅうねん。反省しすぎて得体の知れない怒りが体中巡り巡ってるわ」

相変わらずの物言い。不遜な態度。
声をかけた「首領」をまるで恐れず、逆に挑発的な態度を取るのは「煙鏡」。
トレードマークだったお団子頭を解き、今は髪を軽く後ろで纏めている。

物珍しそうに、13の席を見回す二人の悪童。
今度はいつかのように二人で一つの席になることもない。と言うより空席が多すぎてどこに座ろうが、といった状態ではあるのだが。
「金鴉」が椅子が壊れるのではと思うくらいに勢いよく席に飛び付き、それを馬鹿にしたような目で見つつ「煙鏡」もまた自らの椅
子に深く体を沈めた。

「にしても、随分減ったなあ。亜弥ちゃんも梨華もおらへん」
「かおりんもいないじゃん。予知とかどうすんの?」
「ええやん。これからはうちらがダークネスの未来の導き手になるってな」
「…はしゃぐのもいいけど、そろそろ座りなさい。ここは遊び場じゃないのよ?」

「永遠殺し」が諌めるのも無視し、「おばちゃんうっせーよ」とか「あれ、お前誰やっけ。確かコバヤシ…」「てかまことが幹部?
冗談でしょ!」と好き放題。だがある事に気づき、ぴたりと動きが止まる。

「そういや、あいつがおらんやないか。うちらを呼びつけた、芋科学者が」
「カガクシャ先生は重役出勤ってか?うらやましいねえ」

毒づく二人の背後の扉が、ゆっくり開く。
いつものように一番遅れて件の科学者が登場、と思いきや。

31名無しリゾナント:2014/07/29(火) 00:33:30
「何なの、これ」

呆れた「永遠殺し」が一言。
何やら黒い布に包まれた大きな物体を持ち込んだ白衣の男たち。徐に椅子の一つに設置すると、勿体ぶった布切れを剥がし取った。
姿を現す、大きな液晶テレビ。

「おいおい、まさか…」
「その通りですよ、『鋼脚』さん」

頭に過ぎった想定を肯定する声。
テレビのモニターには、砂浜に置かれたサマーベッドに白衣のまま寝転ぶ女が一人。
日除けの為に挿されたパラソルと、テーブルの上のトロピカルドリンクが、嫌が応にも南国気分を醸しだしていた。

「おいこらお前!何してんねん!!」
「見ておわかりになりませんか?休暇ですよ」
「はぁ?うちら呼び出しといて暢気にバカンス、舐めたまねしてくれるわなあ!?」
「御不満があるのなら、そちらにいらっしゃる『首領』におっしゃってください」

テレビの画面に向かって噛み付く「煙鏡」。
休暇を楽しむ「叡智の集積」について問い質そうとするも、当の上司は優雅に寛ぐ白衣の女に腹を抱えて笑っていた。

「あんた…ほんまにそういう場所が似合わへんなあー」
「そうですか?白衣と砂浜という取り合わせは意外に悪くないと思いますが」
「まあええわ。ほな、早速会議のほう、はじめるで」

「首領」が、会議の開始を宣言する。

32名無しリゾナント:2014/07/29(火) 00:34:55
彼女たちが抱える今後の課題は。「永遠殺し」が、切り出した。

「Dr.マルシェが遂行した『プロジェクトЯ』は滞りなく終了しているわ。目論見どおり田中れいなを離脱させ、共鳴現象の再現
に関する大きな手がかりを手に入れた。そうよね?」
「ええ。田中れいなから奪取したモノのデータの解析ですが、それほど時間は取られないでしょう。田中れいなが抜けた代わりに、
こちらの貴重な実験体を取られてしまいましたが。まあよしとしましょうか」

貴重な実験体、というのはもちろんリゾナンターに加入した小田さくらのこと。
だが紺野の口ぶりからするに、それも想定内の出来事だったようだ。

「でもよ。それでよし、じゃ済まないんじゃねーの? 結局リゾナンターはれいなの穴を埋めきるだけの力を身につけちまったんだし」

「鋼脚」が冗談めいた口調でそう話す。
単なる冗談なのか、からかいなのか、非難めいたものなのか。薄笑いを浮かべた表情からは窺い知る事はできない。

「確かに完全に無視できるような存在じゃなくなったかもしれないっすね。例の組織に『蟲惑』さん再利用された一件も、完全にリゾ
ナンターに出し抜かれちゃいましたし」

『オガワ』が、へらへらしながらの追随。
もっともそれは、「永遠殺し」のひと睨みで意気消沈してしまう程度のものだったが。
そんな中、紺野は。

「そうですね。そこで私は。『金鴉』さん、『煙鏡』さんの両名をリゾナンターに差し向ける事を提案します」

俄かに場がざわつく。
共鳴の力を手に入れた今、組織にとってリゾナンターは粛清の対象でしかない。
となれば、本来であれば粛清人に任せるのが筋。ただ、今はその粛清人が空位であるからして、首領を除いた全員の幹部にその権利が
あるはずだった。が。

33名無しリゾナント:2014/07/29(火) 00:36:04
「さっすがこんこん!のんたちのこと、よくわかってるじゃん!!」
「錚々たる面々が持て余してたリゾナンターを、うちらが始末することで復帰早々の手土産にする。なかなかええシナリオやないか」

喜んでいるのは例の二人組だけ。
他の幹部たちは、それぞれが複雑な表情を見せる。唯一、「氷の魔女」だけは我関せずとばかりに手鼻をかんでいた。

「…どうでしょう?『首領』」
「ま、ええんやないの」

組織のトップの、嫌にあっさりした認可。
それに気を良くした「金鴉」「煙鏡」が忙しく席を立った。

「ちょっとあんたたち、まだ会議は終わってない―」
「だってのんたちの仕事はもう決まったんでしょ?」
「せやせや。リゾナンターを面白おかしく始末するええ方法、これから考えなあかんしな」

引き止める「永遠殺し」の言葉などまるで気にも留めず、足早に蒼天の間を去る二人。
普段から気苦労の多い副官は、ここぞとばかりに大きくため息をついた。

「はぁ…これだから私はあの二人の解放は反対だったのよ」
「ぼやきなさんな。幹部が一度に四人も欠ける異常事態。渋々ながらも満場一致の賛成だったじゃないですか、保田さん」
「くっ…」

「鋼脚」の言葉に言い返せず、苦虫を噛み潰したような顔をする「永遠殺し」。

「とは言え。さっそくうちの所属の人間が戯れに二人も殺されてる。あんまり悠長なことも言ってらんないよな、コンコン」
「そうですね」

燦々と降り注ぐ日の光をバックに、モニター越しの紺野は。
グラスを手に取りストローからゆっくりと色鮮やかな液体を吸う。
それから。

34名無しリゾナント:2014/07/29(火) 00:37:04
「のんちゃんとかーちゃん、いや。「金鴉」さんと「煙鏡」さんの扱いについては、私に任せてください。ただまあ、それよりも今は
リゾナンターです。エースを失っても尚立ち続ける若き能力者たちと、組織の異端児たちの対決。結果は見えていますが…きっと面白
いものが見れますよ」

と、そこで画面に黄色いノイズが広がってゆく。
紺野のいた砂浜の砂が、砂嵐でも起こったかのように風に巻き上げられたことによるものだった。
同時に、鋼鉄の風車が空をばさばさと切る音。黒いボディのヘリコプターが乱暴に着地しようとしていた。

「そろそろ時間のようです。まったく従業員にきちんとした休暇も与えないようでは、いつかブラック企業として訴えられますよ」
「…はは、考慮しとくわ」
「それでは、失礼」

「首領」の曖昧な返事を聞いた紺野が立ち上がり、ヘリに向けて歩き始めたところで映像が途切れる。
画面は暗転したのち、永遠に沈黙した。

「どいつもこいつも…勝手なものね」

後輩たちの理不尽な立ち振る舞いに、思わず「永遠殺し」が嘆息を漏らす。
その横ではま、それもええやろと言わんばかりの「首領」の顔があった。

「じゃあ、美貴も行くから」
「あんたまで…『ダークネス』もすっかり統制の取れない集団になったわね」
「て言うか悪の組織に統制なんて必要ですかね」

捨て台詞のような言葉を口にしながら、「蒼天の間」から立ち去る「氷の魔女」。
緩んでゆく冷気を肌で感じつつも、先輩は眉を顰める。

35名無しリゾナント:2014/07/29(火) 00:38:05
「あの子があんなふうになってしまったのもきっと、『赤の粛清』のせいよね」
「でしょうねえ。松浦のヤツが死んでからずっとあの調子ですから。かと言って『i914』に復讐を仕掛けるわけでもなく。正直あいつ
の考えてることはあたしにもわかりません」
「へえ!情報畑の吉澤さんにもわからないんですか!!」
「うっせえよ」

最後の「オガワ」の言葉が気に障ったのか、再びプリン頭を小突く「鋼脚」。

「ところで組織再統制っちゅうか。新しい粛清人の件なんやけど。この調子じゃよっすぃー、あんたんとこに仕事が集中するで?」
「確かにね。個人主義の塊みたいな連中じゃ、あんたんとこにしわ寄せが行くのは間違いないわ」
「ちょっと早い気はするんですけど。『ジャッジメント』に任せようかと」

組織を束ねる二人の顔色が変わる。
なるほど、紺野が嬉々として報告の役目を自分に任せるわけだ。
「鋼脚」は改めて可愛くない後輩の悪趣味に苦笑した。

36名無しリゾナント:2014/07/29(火) 00:41:05
>>28-35
『リゾナンター爻(シャオ)』 更新終了
new WINDさんの更新の後という間の悪さに乾杯w

37名無しリゾナント:2014/08/04(月) 23:50:20
>>28-35 の続きです



「だからさぁ、昨日の試合がチョー面白かったんだって。坂本選手がめっちゃカッコよくて」

べちっ。

「…て言うかタケってニワカだよね。イケメン選手のことしか話さないし」

べちっ。べちっ。

「うほっ!うほうほうほうほっほ!!」

べちっ。べちっ。べちっ。

「出た!かななんのゴリラのまね!じゃあめいも物まねやる!!」

べちっ。
べちっ。べちっ。

重たい緩慢な音が、部屋にこだまする。
音の主は、部屋の隅で座り込んでいる人物であることは間違いない。
その状況を、部屋を共にしている少女たちはまるでなかったもののように扱った。
いや、そうすることしかできなかったと言ったほうが正しいか。

艶やかだった髪は乱れ張りを失い、かつて怜悧な輝きを保っていた瞳は目の前の壁を見ているようでまったく見ていなかった。
なのに、手先だけは緩やかに一つの動作を続けている。

拾い掴んで、投げる。また拾い、掴んで投げる。
その度に投げられた「それ」は含んだ油で壁を汚してゆく。
彼女が投げているのは、唐揚げだった。

38名無しリゾナント:2014/08/04(月) 23:50:54
皿に盛られた唐揚げを、ひたすら壁に投げつける。
そんなことを、ずっと繰り返していた。
彼女の後輩たちは。無視しているのではない。そのあまりの不気味さ、不可解さに目を逸らしているだけなのだ。
証拠に、交わされる会話もどこか上の空のように部屋に響きわたる。

虚ろな少女 ― 和田彩花 ― を筆頭とする能力者集団「スマイレージ」。
彼女たちは警察の対能力者部署に所属しつつ、共同生活を送っていた。拠点に関しては、

「ただいまー、ってあやちょまた唐揚げで遊んでるの?食べ物は粗末にしちゃだめでしょ」

部屋に入るなり躊躇無く彩花に話しかけた福田花音。彼女が都度”見つけて”くれるので不自由は無かった。

「ふ、福田さん」
「なに?まだあんたたち『あれ』に慣れてないの?」
「慣れるって言ったって、ねえ」

互いに顔を見合わせ、困惑した表情を浮かべる四人の少女たち。
日がな唐揚げを壁にぶつける行為に耽っている光景に慣れろというのもまた、無理な話だ。

「メンバーの半分がさ、ぶっ殺されたんだよ。こんな風になってもしょうがないんじゃない?」

まるで他人事のように、花音は彩花のほうを見る。
相変わらずべちゃべちゃと唐揚げを壁に向けて投げているその姿は、狂気を通り越して哀れですらあった。

39名無しリゾナント:2014/08/04(月) 23:52:49
スマイレージのオリジナルメンバーだった小川紗季は、止むことのない爆発によってその体を塵に変えられた。
同じく、前田憂佳は高出力の爆撃で心臓をくり抜かれた。もちろん、その頃彩花自身も全身に酷い火傷を負い意識を失ってはいたが。
二人の最期を知った途端、彼女の心は限界を迎えてしまう。

もちろん彼女たちと幼い頃から共に過ごしてきた花音もショックがないわけではない。
ただ、心のどこかでこんな日が来るかもしれないことを予想していたのかもしれない。そう言った意味では、花音は割り切っていた。

彩花は。花音とは違った。

右も左もわからぬ能力者の卵の集団において、彩花に光を見出した憂佳。
彼女と同じように、彩花もまた憂佳に希望の光を見ていたのだ。
彩花が親友として大事にしていた少女が永遠に喪われると、依存はさらに強まった。
それが、いきなり。何の前触れもなく、奪い去られてしまう。
足場を見失い、そして自分自身をも見失ってしまうのに時間はかからなかった。

「あー、一人が大丈夫な性格でよかったぁ、よかったぁ、よかったぁ」

彩花は壊れた機械のように、何度も同じ台詞を繰り返す。
手を差し伸べたいのに。
二人の仲間を見殺しにし、その上で最後の一人が底なしの闇に落ちてゆくのを皮肉に笑むことしかできない。それが何故なのか、花音
は知っていた。

この子を助ける事ができる人間は、もういない。

かつて彩花に光をもたらした少女は、先の戦いにおいて命を散らしてしまった。
つまり、闇に沈み天に掲げた手を引き揚げることのできる人間はいなくなってしまった。もちろん、自分にだってそんなことはできない。

40名無しリゾナント:2014/08/04(月) 23:54:09
だから、諦めるしかない。しょうがないねと強がって見せるのが精一杯。

「で、これから和田さんのことはどうすんですか」
「ん?タケ、知りたい?」
「え、ま、まあ」

面倒くさい女だ、と思いつつも話を振られた短髪の健康優良児 ― 竹内朱莉 ― はそれを口にはしない。

「腕のいい精神潜行者(サイコ・ダイバー)に頼んでるんだよね。ま、ちょっと、って言うかかなり値は張るみたいだけど」
「いくらくらいなんですか、それ」

眉を下げつつ恐る恐る訊ねる少女 ― 中西香菜 ― の前で、花音が何本かの指を立ててみせる。うわ、ほんまですかそれ。細目を
見開いて驚く香菜を見て、おかめが般若になった、と毒舌を吐く勝田里奈。

もちろんのことだが。
腕のいいサイコダイバーに依頼したなんて嘘だ。いや、正確に言えば既に頼んでいたのだ。それも、一人二人などという生易しい数で
はなく。
だが、自称「腕のいい」能力者たちは彩花の内面を覗き込むとすぐに顔を青ざめさせた。それでも一応中を見たのだから、と図々しく
報酬を要求した輩は花音の隷属の洗礼を浴び、今頃どこで何をしているのかもわからない。

それではなぜ、花音は後輩たちに気休めに過ぎない嘘をつくのか。
花音は、答えを自分の中に思い描くことはしない。思い描いたが最後、それが描いただけのものに終わりそうな気がしたからだ。

41名無しリゾナント:2014/08/04(月) 23:54:51
「あのぉ、福田さん」
「どうしたの、めい」

一言目から既に言いにくいけどやっぱ言っちゃおうかな、そんな空気を出していた。
だが、田村芽実は眉毛を斜め45度にしてはっきり口にする。

「新垣さんに、頼むわけにはいかないんですか?」
「…無理」

間髪入れずの即答だった。
彩花はスマイレージにとってなくてはならない存在。それは十分承知している。
けれど、それだけはありえない。
目の前で花音のプライドをずたずたにした、あの高橋愛の盟友に救いを求めることなど。

「新垣なんかより、腕のいいサイコダイバーは腐るほどいるんだから。あんたたちは安心して吉報待ってなよ」

花音は、自らそんなことを口にしながらも、知っていた。
相手の精神下に潜行し、最小限のリスクで相手を救うことの出来る能力者など、そうはいないことを。そして。
新垣里沙が、その数少ない能力者の一人であるということも。

それでも。
花音は一度決めたことを曲げるつもりなど、毛頭無かった。

42名無しリゾナント:2014/08/04(月) 23:55:26
>>37-41
『リゾナンター爻(シャオ)』 更新終了

43名無しリゾナント:2014/08/05(火) 22:11:15
何者かに追われ、襲われる一人の女。

「私は死ぬのか…?嫌だ…こんな惨めな死に様は。憎い…あいつらのせいで…!お前らのせいで…!」

そこに、どこからともなく声が響いてきた。

“憎め、憎め。憎しみこそ力だ。憎しみこそ闇だ”

ハッ!?

夢だった。
だが、直近の過去を象徴するような夢だった。

起き上がった女は、パソコンに向かう。
すると、珍しく組織からの通信が1件入っていた。

過去類を見ない失敗を犯し、それと共に以前の私腹を肥やす為の不正も明るみになり、女は粛清された。
息のかかった部下達も、多くは放逐された。
だが、それらを掻い潜った僅かな部下達の手で女は再生された。

しかし、組織に戻れる訳もなく、表立った動きも取れず、潜伏生活が続いていた。
そんな所に届いた、1件の通信。

『R 上がる模様』

そうか、ついにアイツもか…。
自分を手に掛けた“R”も、結局は人間らしい道へ戻るのか。

女は自身のした事を棚に上げ、人間という存在への一方的な恨みを募らせていた。
すると、何者かの人間に対する憎しみの声が呼応するように感じた。

「なんて激しい憎しみだ…。この憎しみが念力波となり、過去を呼び覚まし夢を見させていたのか…」

この聞こえてくる憎しみを、女は利用してやろうと思い付いた。

44名無しリゾナント:2014/08/05(火) 22:14:09
「香音ちゃんどうしたの?なんか嬉しそう」
「えっ!?べべべべ別にそんな事ないよ!?」
「え〜なんかますます怪しいですね〜」

香音はそうは言うものの、表情や仕草からも何か喜ばしい事があったのは明白だった。
そして、紙袋を大事そうに持ちながら店を出ていった。

カウンターを見やる聖と亜佑実。それに対し、微笑みながら頷くさゆみ。
2人は香音に気付かれないように、後をつけていった。

着いたのは、ターミナル駅の改札。
香音は、誰かが来るのを待っているようだった。

「誰が来るのかな…?」
「やっぱり…彼氏?」
「キャー!そんなそんな!」

2人で興奮しあっていた、その時。

「…何してんの?」

香音に気付かれてしまった2人。

「あっ…こ、これからどこ行こうかな〜って…」
「そ、そうです!そうなんです!」
「ふ〜ん。…つけてきたよね?」
「…うん、ゴメン」
「ゴメンなさい」
「ま、いいや。別に隠すほどのことじゃなかったし。あ、来た!」

45名無しリゾナント:2014/08/05(火) 22:15:45
香音が手を振る方を見ると、香音に似た雰囲気の小学生くらいの女の子が手を振って近付いてきた。

「お姉ちゃ〜ん!」
「え?お姉ちゃん?て事は、妹?」
「そうだよ」
「お姉ちゃん、この人たちは?」
「あっ、紹介するね、私の大事な友達。聖ちゃんと亜佑実ちゃん」

お互い挨拶を交わし、近くのファミレスに入店した一同。

「じゃ〜ん!」
「わぁ〜!クマちゃん!」

大事そうに持っていた紙袋から香音が取り出したのは、テディベアだった。
妹は、香音の持つちゃーちゃんとお揃いのテディベアを持っていたそうだが、最近した引っ越しのゴタゴタの中でなくしてしまっていたという。

「わたしは大丈夫だよ。くますけは立派な大きな熊さんになって山に帰っていったんだ」
「え〜、何それすごい大人〜!」
「可愛い〜!」
「じゃあこの子を私だと思って、大事にしてね」
「じゃあ名前は“くまのん”だね!」
「アハハw くまモンみたいw」

その後、あとは姉妹水入らずでと、聖と亜佑実は香音たちと別れた。

46名無しリゾナント:2014/08/05(火) 22:18:17
その頃。

「ここか…」

女は、ある山中の洞窟の前に立っていた。
その奥から、強い恨みの念を感じとっていた。


その後。
街に熊の化け物が出現し、人々を襲いだした。

リゾナンター達も現場に駆け付け応戦するが、熊の圧倒的なパワーに押され、劣勢になりながらもなんとか撃退した。

リゾナントに戻り、さゆみによる傷の手当てを受ける一同。
その中で、今回の熊の化け物が、今まで現れたようなふざけた怪人とは一線を画していることを感じ取っていた。
それに関して、さゆみが口を開いた。

「これは結構大きな話題になったから覚えてる人もいるかもしれないけど、みんながここに来る前ね、大きな熊が次々に人を襲って騒ぎになったんだよ。山狩りで退治されたはずだけど…」
「ということは、その時に死んでるんですよね?」
「でも、人間への恨みや憎しみは残った」
「それを、ダークネスが利用して実体化したんですね」「だけど、熊だって好きで人間を襲った訳じゃあないですよね」
「開発が進んで、山が枯れ、餌を求めて人里に出てくるようになって」
「それを追い回され、次第に凶暴になっていったんですね」
「人間を憎みたくもなりますよね…」
「でも、その憎しみを利用するなんて許せない!」

47名無しリゾナント:2014/08/05(火) 22:21:12
一同は三手に別れ、見回りに出掛けた。

一方、香音の妹は香音の家で留守番をしていたが、お菓子を買おうとコンビニに行こうとしていた。


「あ、ここ私ん家近く」

聖と亜佑実と共に見回りしていた香音が呟いた。

「…!!」

それと同時に、胸騒ぎを感じた。
駆け出す香音。

「どうしたんですか鈴木さん!?」
「香音ちゃん!?」

追いかける2人。
駆け付けた先で香音が見たものは。

「お姉ちゃん!!」

熊の化け物に捕まった、妹の姿。
そこに覆面で正体を隠した女も現れた。

「動くな!動くとこの娘は…。手も足も出せまい。恨み重なるお前ら。少しの間楽しませてもらおう」

そう言って、姿を消した。
残されたくまのんのぬいぐるみを持って、香音は妹の救出を誓う。

48名無しリゾナント:2014/08/05(火) 22:26:51
>>43-47
「NO ESCAPE」(前編)
妹さんの名前をどうしようか考えましたが結局出さないことに
だけどそれって難しいですね


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