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図工

1名無しさん:2006/02/22(水) 22:19:52
本当は愛理ちゃんと子供を作りたいけど
それはまだ早過ぎるので小説を作ってみます。

3名無しさん:2006/02/22(水) 22:21:25
目が覚めるともう朝の8時だった。
まだ少し眠かったけれど起きなければならない。
僕は布団を3つ折りにして押入れに押し込んだ。
これでもう戻る場所は無い。
二度寝の誘惑に勝つにはこれくらいの事は
しないといけないのだ。

顔を洗って歯を磨く。寝癖が少し立っていたけど
これくらいなら問題はないだろう。
パジャマからジャージに着替えた。
これで準備完了だ。
パソコンの電源を入れる。パソコンが小さな唸り声をあげた。
この音を聞くとようやく僕の新しい
1日が始まるような気がする。

4名無しさん:2006/02/22(水) 22:22:03

さて今日はどれを読もう。
まだ読んでいない沢山の作品が僕を待っている。
そうだ。『香港』の奴のでも読むか。
あいつのは寝ぼけていても問題なく読めるからな。
朝は軽いのを読んで、昼からは重いのを読む。
これは高校の頃からの僕のパターンだ。

「おーい武人!早く開けてくれんと困るっちゃ!」
れいなの声だ。うっかりしていた。
鍵を開けなくちゃいけなかったんだ。
僕は慌てて玄関のドアを開けた。
れいなはぶすっと顔をいつもよりブサイクにして
腕を組んで仁王立ちしていた。

5名無しさん:2006/02/22(水) 22:22:53
「おはよ」
「おはよじゃないけん。まーたれいなを困らせて喜んでたっしょ?」
れいなは朝からテンションが高い。うっとおしい。
昔は大人しくて良い子だったのに。
でも嘆いても仕方ない。時間は僕を大人にして
れいなを小うるさい不良少女にしたのだ。
「まあ入れよ。いつも通り散らかってるけど」
と僕が言おうとする前にれいなは猫のように僕の脇をすり抜け
靴を脱ぎ捨てて部屋の中に入り込んでいた。
「やれやれ」
僕は小さな溜息をついた。

れいなは僕のいとこで今年高校2年生の女の子だ。
お世辞にもかわいいとは言えない顔だし、
言葉使いは悪いし性格も良いとは言えない。
髪は限りなく金色に近い茶色に脱色していて
どこからどう見ても頭が良さそうには見えない。
なんとかブレザーの制服のおかげで恰好はついているが
本当なら箸にも棒にもかからない存在だ。

6名無しさん:2006/02/22(水) 22:23:40
れいながこうして僕の家に朝から来るようになったのは
確かもう1ヶ月も前になる。
その日のれいなはこの世の終わりみたいに暗くて
僕はてっきり具合でも悪いのかと思っていた。
れいなを部屋に入れてどうしたんだ?と聞いた。
するとれいなは突然僕に机を叩きながら
戦争におけるゲリラ戦術の有効性を説いた。

「つまりれいなは他の兵隊から離れて身を隠し
敵襲に備えなきゃいけなくなったっちゃ」
僕は味方の兵隊も連れてきてくれたら良かったのに。
出来れば鈴木亜美っぽいかわいい子を。
とれいなに言ったがれいなは僕の進言を
何度も机を叩きながら却下した。
「武人はわかっとらん。戦時中は味方も信用ならんもんばい」
「えっと。つまり友達とケンカでもして
学校に行きにくくなったのか?」
れいなは黙って下を向いた。わかりやすい奴だ。

7名無しさん:2006/02/22(水) 22:24:12
その日は昼過ぎまでぎゃーぎゃー騒ぎながら
携帯ゲームをして帰っていった。
やれやれ台風みたいな奴だ。と思ったら
次の日も、その次の日も来た。
そして今日で1ヶ月ほどになる訳だ。

もちろん学校に行ってない訳だから問題だ。
僕は何度も人生の先輩としてれいなに説教した。
だが毎日仕事もしないでネットの2次創作小説を
読んでいる僕の言葉には何の説得力も無かった。
いずれバレるだろうと思っていたが
学校には病気になって入院している。
と言ってあるらしく未だにバレていない。

「はい。朝御飯」
僕はれいなの差し出したサンドウィッチを黙って受け取った。

8名無しさん:2006/02/24(金) 03:48:22
数ヶ月前まで僕は仕事をしていた。
その会社はとても不思議な会社で
仕事をしなくてもお金をくれる会社だった。
最初は楽でいいな。と思っていたけど
座って鳴らない電話を見ているだけというのは退屈で
僕の百年足らずの人生を浪費しているだけだった。
使い古された雑巾なんてもんじゃない。
雑巾だって役には立っているのだ。
今になって振り返ると落石注意の標識のようだった。

仕事を辞めて僕はパソコンを買った。
以前から昔の思い出を小説にして書いていたのだけど
これを機に本格的に小説家になろうと思ったのだ。

9名無しさん:2006/02/24(金) 03:49:10
調べてみるとネットの世界では素人が自作の小説を持ち寄って
あれこれ議論しているサイトがいくつもあった。
その小説は評価に値しない物がほとんどだったけど
中には面白いもの、斬新なものがあって
この連中となら新しい時代の新しい小説を
生み出せるのではないかと思ったのだ。

それからは毎日、起きてから寝るまで
素人のネット小説を貪り読んだ。
幸いな事にあのつまらない仕事のおかげで貯金はある。
僕はもう小説を書く以外の仕事はしたくなかった。
これ以上人生の浪費はしたくなかった。

10名無しさん:2006/02/24(金) 03:49:45
「武人、もう昼っちゃ」
れいなが僕の肩を叩く。不意を突かれた僕の身体がビクンと反応する。
れいなが後ろに立っているのに気付かないくらい
完全に読書に没頭してしまっていた。
振り返って見るとれいなは手を差し出していた。
僕はそばに置いてある財布から千円札を2枚取り出すと
れいなに手渡した。
「カルビ弁当以外な。なんでいつもアレなんだよ」
「わかってる。でもカルビがれいなを呼んでるっちゃ」
れいなは嬉々としながら部屋を出て行った。

11名無しさん:2006/02/24(金) 03:50:22
部屋を見渡す。おんぼろ崩れ荘。
僕がこのアパートにつけた名前だ。
その名の通り恐ろしく古い建物で、部屋だってすごく狭い。
働いている時は起きて寝るだけの住処だった。
なのに今はほとんど外出しないで24時間居る。
住めば都とでも言うのだろうか。

部屋の片隅にはれいなが持ってきた少女漫画が
山と積まれていた。
中には図書館で借りたらしい小説があった。
太宰治の『人間失格』だった。
なんとなく僕は本を裏返してまたパソコンに向かった。

12名無しさん:2006/02/26(日) 01:07:29
れいなが買ってきたハンバーグ弁当を
ゆっくりと味わいながら食べた。
新製品だったがなかなか美味しかった。

れいなは僕が半分食べたくらいの時点で食べ終わり
歯も磨かないでそのまま横になってお昼寝し始めた。
猫みたいな奴だ。牛になっても知らないぞ。

まあれいななんか僕には関係ない。
食べ終わると僕はパソコンに向かった。

13名無しさん:2006/02/26(日) 01:08:42
気作品『テクノな娘』が更新されていた。
面白かった。悔しいほどに。
僕はこれほどの作品を書ける力量がある人が
どうして金にならないネット小説なんかを
書いているのだろうと不思議だった。
この作者がプロになりたいのかどうかを知らないけれど
思わずこの作者に自分の不遇を重ね合わせた。

もう何年前になるのか忘れてしまったけど
僕は何度か出版社に作品を持ち込んだ。
結果は散々だった。
編集者と少し有名な作家が僕を罵るのだ。
「君い。主人公が鏡助に滴。ってどこのエロゲーだね」
「永井君。君はもしかして引きこもり?セリフがなってないよ」
「タイトルは青月?馬鹿だね。月は青くないよ」
「気のせいか村上春樹っぽいね。まあ誉め言葉じゃないけどね」

僕は泣きながらその出版社をあとにした。

14名無しさん:2006/02/26(日) 01:09:59
その時、僕は悟った。
業界人にはわからない新しい作品を生み出したのだと。
なかなか作品を評価されなかった太宰治のように。
人はわからない物は否定する生物だ。
どうやら僕は生まれるのが早過ぎたのだ。

そこで思いついたのがネットの世界だった。
ネットなら世界中の人の目に触れる可能性がある。
きっと僕の才能を理解し共感出来る人間が
居るはずだと思ったのだ。

15名無しさん:2006/02/26(日) 01:11:17
だが急に知らない人間が書いた小説を
いきなり知らない人間に読んで貰うのは難しい。
仮に読んでくれてもネットの世界は悪意が渦巻いている。
その才能を妬んで正統な評価をしない人間も居るだろう。
だから僕はネット小説の感想を書く事にしたのだ。
僕がネット小説を正しく評価していけば
他の人間もそれに倣って僕の作品を正統に評価するだろう。
遠回りかも知れないがやるしかない。

朝から読んだ作品の中からいくつか抜粋してみた。
誉められる物は少なかったが僕は日が暮れるまで
感想を書き綴って自分の感想サイトにうpした。

16名無しさん:2006/02/26(日) 22:29:34
『青月』は僕の自伝的作品だ。
社会人になった時に僕は自分が雑巾のようだと感じた。
朝起きて会社に向かい、非生産的な仕事をこなす。
席に座り鳴らない電話をぼんやりと待つだけだった。
定時になれば電車に揺られて家に帰り
コンビニ弁当を食べて布団にくるまって眠るのだ。

毎日が退屈で憂鬱で、未来なんてこれっぽちも見えなかった。
それで僕は退屈しのぎと一攫千金を夢見て
小説を書き始めたのだ。

17名無しさん:2006/02/26(日) 22:30:12
しかしそんな面白くもなんともない人生を
小説にして果たして面白いのか?
僕は多分面白くないと思った。
そこで高校の頃の同級生の女の子を絡める事にした。

名前は紺野さん。
おとなしくて御飯を食べるのが遅くかった。
でも勉強は出来て運動も出来る不思議な子だった。
さすがに本名はまずいので小説では『碧』としたけど
僕は紺野さんが好きだった。
だから小説にその思いを込めてみたのだ。

18名無しさん:2006/02/26(日) 22:30:57
紺野さんと同じクラスになったのは
高校2年の頃だった。
その頃の僕は友達が全く居なかった。
大空翼君のように運動が出来たら
ボールを友達にしても良かったのだが
あいにく僕は運動はからっきしだった。
だから消去法的に本が僕の友達だった。

僕は毎日のように誰も居ない
がらんとした図書館で暇を潰していた。
僕は時の流れがゆったりしているような
その図書館が好きだった。

19名無しさん:2006/02/26(日) 22:31:26
ところがある日の事だった。

その日は朝から雨だったので図書館には
いつもより多くの生徒が来ていた。
なかなか本に集中出来なくてイライラした。
全員死ねばいいのにと思った。

どんなブサイクがさわいでいるのか気になったので
顔をあげると同じクラスの小川さんだった。
驚くほどブサイクだった。そしてもっと驚いた。
なんと紺野さんが図書館に来ていたのだ。

20名無しさん:2006/02/26(日) 22:31:52
紺野さんは小川さんが騒いでいるのを
やんわり注意しながら図書館の本をゆっくりと眺めていた。
紺野さんは見るからに育ちが良さそうな女の子で
深窓の令嬢のような上品さが滲み出ていた。

僕は慌てて席を立った。
本棚の影からこっそり紺野さんを見てみた。
紺野さんの大きな目が本を追って動くのが
たまらなく愛らしかった。
僕はずっと紺野さんとはお近づきになりたかった。
そのチャンスが今、巡って来たのだ。


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