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【 シエル 】

1rurikan:2005/05/16(月) 18:57:05




少年は空を見ていた。



自分と同じ名前の空を見ていた。



窓の外は麦畑が地平線まで続き、雲雀がさえずり木々が風に揺れ
子供達の歌声が微かに聞こえていた。


風が少年の髪をなびかせ頬を撫でた。


小鳥が一羽、
窓辺に止まり、囀りながら辺りを見まわし少年の肩に飛び移った。


さわさわとなびいている髪をしばらく啄ばんでいたが
車のドアを乱暴に閉める音に驚き飛び去ってしまった。

その間、少年の表情に変化はなく外に目を向けたままだ。


.

2rurikan:2005/05/16(月) 18:57:55




突然、扉が乱暴に開けられ一人の男が入ってきた。


髭面の大男で酒臭い息を吐きながら少年に近づくと
襟首を掴んで無理やり椅子から立たせ、いきなり平手で頬を打った。

床に叩きつけられた少年の唇が切れ血がにじんだ。


男は少年を軽々と肩に担ぎ上げ隣にある寝室に入り扉を閉めた。
しばらくして かすかに少年の悲鳴が聞こえた。


.

3rurikan:2005/05/16(月) 19:04:31




3日前、
結婚式以来15年近く会っていない叔父が亡くなったと知らせを受け
俺は急ぎの仕事だけをとりあえず終わらせ
急いでフランス南部の片田舎まで足を運んだ。


変わり者と言われていた叔父は親戚との付き合いを一切せず
田舎に引きこもり絵を描いて過ごしていた。
絵の才能はあったようで年に何度か個展を開いて名前も知られた存在だった。



俺が忙しいなか駆けつけたのは、叔父に子供が一人いたからだ。

3歳位のとき、写真が送られてきたことがあった。
両親に抱かれたその子供は、
母親にうりふたつのかわいい子供で幸せそうに笑っていた。

.

4rurikan:2005/05/16(月) 19:05:29


その子供も現在は15歳になっているはずだ。

どういう事情があったのか定かではないが 
ずいぶん前から母親の行方がわからず
以前、母方の親戚が一度は引き取ろうとしたらしいのだが諦めたようだった。

父方の兄弟は、俺の両親も含め亡くなっていたので
回りまわって俺のところへ連絡が来たのだった。

俺は未婚で仕事も忙しい。
世話をしてやれる人もいないので引き取れるはずもないのだが
やはり放っておく訳にもいかなかった。

と、いうのも
その子供が食事はおろか、誰とも話すことすらなく
部屋から出てこないと聞いたからだ。

いったい何があったのか…俺は胸さわぎがしていた。


.


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