● Room of sadness ● - 1115519756

1：rurikan：2005/05/08(日) 11:35:56: 　手　　

暗闇の中で　ぼくは　ひざをだきしめ　まっている

…なに　を？

このさむさから　すくいだしてくれる　あたたかな手を

.
2：rurikan：2005/05/08(日) 11:37:25: そう　ここはさむい
手足がふるえる　ほど　さむいんだ

じぶんの手で顔や足をさすって　あたためる

顔や足…？
はたして　ぼくに　顔や　手足　が　あるのだろうか？

だってぼくは　じぶんの　手　や　足　や　顔　を　みたことないのだもの

みたことがない？　ほんとうに？

.
3：rurikan：2005/05/08(日) 11:38:30: ずっとずっとまえ、…手を　みたことがあるよ
でもあれ　は　ぼくの手　じゃ　なかった

黒く　て　おおきな手　ぼくを　つかまえる　あくま　の　手

だから　ぼくは　いっしょうけんめい　にげたんだ

おおきくて黒い手　は　ぼくを　つかまえる

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4：rurikan：2005/05/08(日) 11:40:10: からみつく手　

手にはきゅうばんが　ついていて　どんなにあばれても　ふり　ほどけない

きゅうばん　が　つよく　すいつき　ひふ　が　ゆがむ

いたい　いたいよ　やめて　おねがい

たすけて　…おかあさん

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5：rurikan：2005/05/08(日) 11:41:44: ぼくは　しんだ　のかな

あのと　き　しんだのかな？

いま　は　いたくないよ
だってこちら側にいるのだもの

だれも　こちら側まで　おいかけて　こないもの
だれも　ぼく　を　いじめることは　できないのだもの

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6：rurikan：2005/05/08(日) 11:43:34: …でもね

ぼくは　まってるんだ
ぼくを　だきしめてくれる　あたたかな手を

どうし　て　あいして　くれなかった　の
どうして　だき　しめて　くれなかった　の

ぼく　が　いうこと　きか　なかったから？
ぼく　が　いけない　子　だったから？

.
7：rurikan：2005/05/08(日) 11:46:04: でも　ぼく　いうこときいた　でしょ？

いた　く　てもがまん　して　いうこときいたで　しょ？

がまん　して　がまん　して　がまん　して
とうとう　こちら側に　来る　しか　なかったの

ここは　さむいけど　ぼくをいじめる　ひと　は　いないから
さびしく　て　も　ここ　にいるよ

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10：rurikan：2005/10/11(火) 05:19:57: .
13：rurikan：2005/10/11(火) 05:22:49: 　暗闇の中

明け方に目が覚めた時、違う自分がいる

夢の世界から戻ってきたばかりの僕は瞳に涙をためている

もう少しで彼女を捕まえられたのに

僕の手の中からするりと闇の彼方に落ちてしまった

手のひらには彼女の温もりがまだ残っているのに

もうこの世界では逢えないんだ

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17：rurikan：2005/10/12(水) 04:23:27: 少し前から聞える声がある
僕は部屋の片隅でうずくまっていたからしばらくの間　気がつかなかった
ときどき耳元で聞える声

…おかあさん？

僕には分からない
だって　おかあさんの声　もう忘れてしまった

忘れて…　　

ううん　最初から僕は知らなかった

おかあさんは僕を呼んだりしない　
だから声も知らない

その声が　僕を呼んでいるような気がしたから　声のする方へ歩いてみた

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18：rurikan：2005/10/12(水) 04:24:16: 暗くて何も見えない
手探りでしばらく歩くと足になにか当たった

足元でうずくまる女の子が僕を見上げた
どこかで見たことがあるかもしれない

女の子の瞳から涙があふれて頬を伝う

なぜ泣いているの？　なぜここにいるの？

涙が光って暗闇に吸い込まれていく

女の子は手を差し出し　僕は　そっと抱きしめた

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21：rurikan：2005/10/12(水) 15:47:39: なんだかとてもいい匂いがして　懐かしい気がした
女の子の顔を近くで見つめながら　どこで逢ったのだろうかと考えていたら

あなたが私をここに連れて来たの

声が頭の中で響いた
瞬間　小さかった女の子が僕より大きく大人になった　

立ち尽くしている僕を見下ろしているその瞳の中に僕が映っていた

…ぼくが連れて来た…？

そう自分に問い掛けてみたとたん　

その人の身体がサラサラと砂のように崩れて　足元に広がる闇の中に落ちていった

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