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物語スレッド

1言理の妖精語りて曰く、:2006/07/13(木) 00:22:13
物語のためのスレッドです。

・このスレッドでは断片的な情報ではなく、ある程度まとまった「物語」を扱います。
・小説風、戦記風、脚本風など形式は問いません。
・何日かかってもかまいませんが、とりあえず「完結させる」ことを目指してください。
・自分が主な書き手となるつもりか、複数人のリレー形式か、メール欄にでも明記しておくと親切です。
・名前欄か一行目に物語のタイトルや話数を入れておくと、後でまとめやすいです。

2東亜年代記:2006/07/16(日) 16:28:48
形式:リレー
一、
本大陸の東、海を隔てた先にある東亜大陸。
東海岸地方との交易が開始され、その更に東には凪の大海が広がり、グレートウォールが聳えている。
高麗体系を信仰し、【眷属】や紀元神群などの信仰が大陸西端に広まり始めた頃。
大陸は六つの大国と十一の小国がひしめきあう群雄割拠の時代。戦乱が相次ぎ、幾つもの国家が興亡を繰り返していた。
完全な封建制で成り立つ無数の国家、大陸統一の為に争い合う武将達。
舞台の幕開けは大陸西側、小国でありながら沿岸部に位置するという点を生かし真っ先に本大陸との接触を図った国、【陽下】。
城主菱妓篤盛の一人娘、菱妓宵がヘリステラと出会う以前の物語。
―――そして、ヘリステラが海を渡り東亜大陸に辿り付き、
宵が生まれて十七年が経ったのと同時に、この物語は幕を開けた。

3パンゲオンの腹(1):2006/07/16(日) 19:49:50

最初に無がありました。
「無」が「ある」という表現に引っかかりを感じる細かい人がいるかもしれないので、
「最初は無でした」と言った方がよいかもしれません。
ところで「無」をあちらの言語で言うと「パンゲオン」ですが、
この言葉には「世界の元となった巨大な獣」という意味もあります。
つまり、最初の一文は「最初はパンゲオンでした」と言い換えることができるのです。
というわけで、この超多頭獣パンゲオンが世界の始まりでした。

4パンゲオンの腹(2):2006/07/16(日) 19:51:43

パンゲオンは私達からすれば「世界」そのものですが、
パンゲオン自身にとっては他に沢山いる獣の内の一匹でしかありませんでした。
そこにはパンゲオンより大きく恐ろしい怪獣もいましたし、
パンゲオンがいつも餌としている小動物もいました。
また、頭が良くて道具を使って言葉を話す「神様」たちも同じ風にパンゲオンの隣で暮らしていました。

5東亜年代記(2):2006/07/16(日) 20:01:49
ヘリステラは大陸の何処を探してもいなかった妹を見つける為、
ついに東亜大陸にまでその足を伸ばした。
危険な紛争地帯、未開の蛮族が蠢く僻地とは知りつつも、彼女の義務感は
己が危険も省みる事を許さなかった。
しかし商人の知人に頼み自らも商人として入港したヘリステラを待ち受けていたのは、
隣国である【緒波】の国の侵攻の知らせであった。
貿易での権益を独占する【陽下】は今や全勢力に睨まれていたのである。

6パンゲオンの腹(3):2006/07/16(日) 21:20:37
あるときアルセスという神様が、何かの拍子でパンゲオンに槍をぶちこみました。
パンゲオンの巨大な身体はあっという間に砕け散り、
無数にあった首はばらばらに切り離されてしまいました。
パンゲオンの肉片はそこらじゅうに飛び散った後、固まって大地となりました。
パンゲオンの首もまたその上に降り注ぎ、すぐに大地を駆け回り始めました。
大地を蠢く首の一本一本は、やがてそれぞれが一種類ずつの生き物となりました。
このときに放たれた槍は大地に突き刺さり、空高く聳える巨大な柱となっていました。
こうして私たちの世界が生まれました。

7パンゲオンの腹(4):2006/07/17(月) 01:13:22

それからしばらくの間、世界はどんどん成長していきました。
生き物は増えました。
パンゲオンに撃ち込まれた槍は生き物たちにも多大な影響を与え、
そのイメージは生命の根源的な概念として彼らの本能に刻み込まれました。
またアルセスと同じ神様の一人でインテリジェント・デザイン説が大嫌いな
ラヴァエヤナという神様が世界の動物達に進化論を吹き込んでしまったので、
生態系の多様化はますます顕著になりました。
これを見た神々はたいそう面白がり、
自分たちのいた場所を捨ててパンゲオンの世界に移り住みました。
神様は神様だったので、他の生き物を支配したいと考えました。

8パンゲオンの腹(5):2006/07/17(月) 03:19:22

ところがパンゲオン世界の生き物たちの中からも、
並々ならぬ能力を会得して神を名乗る者が現れました。
「南東からの脅威の眷属」だの「納豆を統べる神」だの「炎熱の精霊王」だのといった輩です。
アルセスたちパンゲオン以前の神様はかなり調子づいていたので、
ついこの間生まれたばかりの連中が神を自称して偉ぶっているのが面白くありません。
アルセスやその仲間の神様は自らを紀神と名乗り、
にわかに現れた自称「神」連中を異神と呼んで区別するようになりました。
紀元神群は異神群に服従を強いたので、両者は激しく争うようになりました。

9パンゲオンの腹(6):2006/07/17(月) 12:00:11

さすが年季が入っているだけあって、紀元神群は強力でした。
ちょっと他の生き物より力があるからといって散々に威張り散らしていた異神たちは、
ろくな抵抗も出来ずあっという間に懲らしめられしまいました。
納豆の神様は早々と紀元神群の軍門に下り、
精霊たちも自分たちの住処に隠れてひっそり暮らすようになりました。
ところがそれでも、一部の異神群は粘り強く紀元神群に抵抗し続けました。
中でも紀元神群を苦しめたのは、普段は地下で穏やかに暮らしている
「隠されたはじまり以前の一族」でした。

10パンゲオンの腹(7):2006/07/17(月) 14:59:31

「隠されたはじまり以前の一族」の一人一人の力は紀神に遠く及びませんでしたが、
彼らの優れた社会水準と結束力は容易には打ち破れないものでした。
彼らは紀元神群の度重なる攻撃をことごとく退けました。
業を煮やした紀元神群は、遂に切り札を持ち出しました。
紀元神群の中でいちばん力持ちなセラティスという女の子に、
紀元神群の有する中で最高の威力を持つ【ゲルシェネスナ】という槍を投げさせたのです。
セラティスに【ゲルシェネスナ】を撃ち込まれ、
「隠されたはじまり以前の一族」の暮らしていた地底都市は一瞬で消滅しました。
こうして「隠されたはじまり以前の一族」は滅びました。

11パンゲオンの腹(8):2006/07/17(月) 18:58:58

「隠されたはじまり以前の一族」を滅ぼしたことで、
紀元神群は世界の支配者としての一応の地位を築き上げるに至りました。
ところが彼らもいい加減なもので、
世界の支配者になったら何をしてやろうということは全然考えていませんでした。
別に家来や貢物が欲しかったわけでもなし、
世界の行く末にも興味があるわけでもなかったので、
結局紀神たちは放任という形でしか世界に関わろうとしませんでした。
紀神たちは特に世界に害をなすでも益をもたらすでもなく、
のんべんだらりとそのままの暮らし続けました。

12パンゲオンの腹(9):2006/07/17(月) 23:20:26

そんなとき、何者かが【人類】という魔法を唱えました。
【人類】とはその名の通り、【人類】を生み出す魔法です。
そういうわけで、唐突にわれわれ人類が誕生しました。
人類はあっという間に数を増やして世界中に広がりました。
やがて彼らは村を作り、さらに集まって街を作り、遂には国が出来上がりました。
最近なんか元気な連中がいるなーと思いながらぼんやり眺めていた神々でしたが、
この頃になってようやく事態が普通でないことに気がつきました。
とはいえ、いくら数が多くても所詮は人間。
神々を脅かすほどの存在であるとはとても思えません
うまく手玉に取れば楽をしてタダ飯にありつけるぞ、
神々の認識はその程度のものでした。

13メクセトさん:2006/07/17(月) 23:22:50
【今日のメクセトさん.5】
宿敵、【黒の女王】の軍勢を打ち倒し、彼女を俘虜の身にしたメクセト。
彼女の絶世の美貌をその目に出来ると、大喜びで宮廷の王の間に引き出した彼だったが、彼女は既に老いていた。

メクセト「……婆ぁ、じゃのう」
大臣「……(あんた、一国の当主に開口一番何て事を言うんだよ!)」
メクセト「まったく、久々にその美貌を拝めると思ったのに興ざめじゃ。よい、もう飽きた、さっさと処刑せよ」

衛兵達にひらひらと手を振って、彼女を退場させようとするメクセト。
しかし、さすがに堪りかねたのか、大臣がいつになく声を張り上げて、それを静止する。

大臣「陛下!」
メクセト「なんじゃ、大臣、無口なお主がいつになく五月蝿いのぅ」
大臣「……(言わないだけだで、あんたに言いたいことは山ほどあるんだよ)。なりません、陛下。彼女に対しては諸侯はもちろんのこと、部下達からも除名嘆願書が出されております。これを無下にしては陛下の御威光に関わりますし、後々の厄介ごとに繋がりかねません(ただでさえ、あんた他人から嫌われているんだから、さらに嫌われるような真似は勘弁してくれ)」
メクセト「退屈しなくて良いではないか。まぁ、良い、余は寛大じゃ。それではこうしよう。大臣、彼女には子供が4人いたな?」
大臣「……(また馬鹿な事を考え付いたな、こいつ)。はぁ、報告には四人の息子がいるとあります」
メクセト「黒の女王、喜べ、命は助けてやる。代わりに、お主の息子のうち3人の命はもらう。どの息子の命を救うか選ぶが良い」
大臣「……(この馬鹿、全然条件として簡単じゃねぇよ)」

その時、無言で俯いていた黒の女王は突然顔を上げ、そして凛々しい顔で言った。

黒の女王「貴方には失望しました、王よ。私が自分の子供や民の命を投げ出してまで、自らの保身を図ると思いましたか?。だとしたら見当違いも甚だしい!。さっさと殺しなさい!。そして己の狭量さを世に示すが良い!」
大臣「……(なんて立派なお方だ。これこそ一国の主のあるべき姿だ)」

黒の女王の言葉に感動する大臣と、ふぅむと考え込むメクセト。
黒の女王の言葉は、さしものメクセトの心すら突き動かしたかに見えた……

メクセト「黒の女王、お主の言葉に余はいたく感動した。先ほどの話は撤回しよう」
大臣「……(こりゃ意外だ、そのぐらいは分かるぐらいの頭と心はあったか)」
メクセト「ただし、お主の息子の命は一人だけ貰う。どの息子が良いか選ぶが良い」
大臣「……(って、全然わかってねぇ!)」

しかし、メクセトの言葉に、ふんと鼻を鳴らして女王は嗤った。

黒の女王「断ります。民の命を守るが王、そして子の命を身を挺して守るが親というもの。人数の問題ではありません」

その時、宮廷に衛兵が一人入ってきて大臣に何かを耳打ちした。

大臣「陛下、手違いがございまして、報告に間違いがあったようです。黒の女王の子供達についてなのですが……息子達ではなく、娘達だったようです」

顔色を変えるメクセトと、顔色を青くする黒の女王。
慌てて黒の女王は叫ぶ。

黒の女王「王よ、後生ですから……」
メクセト「それで、その娘達というのは美人なのか?」
大臣「はぁ……いずれも黒の女王の若い時分に瓜二つの美貌の持ち主だとか……」
メクセト「よし、大臣、急ぎ余の後宮に部屋を四つ用意せよ!、大至急だ!」
大臣「……(やっぱりね)。かしこまりました陛下」
黒の女王「王よ後生です。せめて彼女達には速やかなる死を!」

王座より嬉々として立ち上がるメクセトと、隠れて溜息を吐く大臣。
「あぁ、それと」と思い出したように立ち止まって口を開くメクセト。

メクセト「あぁ、それと、そこの五月蝿い婆ぁは余が戻る前に縊り殺しておけ」
大臣「陛下!、なりません!!。部下達からも除名嘆願書が……」
メクセト「大臣、余は王なるぞ。王たるもの尊敬だけでなく時には怨嗟も受け止めるもの。それが出来なくして何が王か!?」
大臣「……(合ってるんだか、間違えているんだか)」

考え込む大臣を従え、メクセトは王の間より退場していった。
取り残された黒の女王は、今はいないメクセトの背中に叫び続ける。

黒の女王「陛下!、御慈悲を、どうか娘達には御慈悲を!」

【黒の女王】がその後、どのような末路を辿ったかについては歴史の語るところではない。

大臣「ところで、陛下。先ほど、久々に……、と申しましたが黒の女王とは御面識がおありでしたか?」
メクセト「ふん、余が筆を下ろしてもらった女こそ、彼女だったのよ。昔は眩い程の美人であったが、時の流れとは、げに恐ろしいものよのぅ」
大臣「……(ちょっと待て!、それあんたが幾つの時の話だよ!)」

14パンゲオンの腹(10):2006/07/18(火) 01:07:59

そうこうしている内に、人間の建国したジャッフハリムという国から
レストロオセという女王が現れました。
レストロオセは奸智に長けた女王で、
人間を脅しつけて甘い汁を吸ってやろうと近づいてきた精霊を逆に手玉に取り、
次々と自分の使役下に置いてしまいました。
レストロオセはさらに策を重ね、異神群を焚きつけて再び紀元神群と争わせました。
紀神たちはこれを何とか退けましたが、今までにない大きな損害を蒙りました。
皆殺しのデーデェイアや不死身のキュトスは、この戦いで死んでしまいました。
恋仲だったキュトスが死んでしまったことで、槍神アルセスは大いに悲しみました。

15パンゲオンの腹(11):2006/07/18(火) 07:45:16

異神との争いが終わる頃にはレストロオセはとうに死んでいましたが、
疲弊した紀元神群はなんとか自分たちの力を取り戻さなくてなはりませんでした。
紀神きっての知恵者であるアルセスは、ここでひとつの提案を挙げました。
彼はレストロオセの一件で人間の恐ろしさを目の当たりにしていましたが、
逆にその力を利用してやろうと考えたのです。
紀神たちは、人間の中で力の強い者、意志の強靭な者、頭の良い者、偉業を成し遂げた者に
【紀】の力を与えることによって自分たちの仲間に迎えることにしました。
6つの男根と28の睾丸、496の女陰と8128の子宮を持つ有翼の大蛸デーデェイアなどは、
このとき紀元神群の一員として紀人に昇じたうちの一柱です。

16パンゲオンの腹(12):2006/07/19(水) 01:08:40

それからまた数百年の後、人間の世界で新たな動きが生まれました。
遊牧民から出た覇王ハルバンデフが人間の国家を次々と征服し、
かつてない巨大な帝国を築いていったのです。
とはいえ、所詮は人間の世界の話。
自分たちには関係のないことだと、紀神たちは例によって傍観を決め込みました。
その予想通り、帝王ハルバンデフが死ぬと彼の国家はすぐに分裂しました。
ハルバンデフの偉業も、結局は一代限りのものだったのです。
しかし問題はその後でした。
ハルバンデフを生き返らせようと古代の魔術に訴えた狂える残党が、
よりによってパンゲオン世界の外への穴を開けるという大失敗をしでかしたのです。

17パンゲオンの腹(13):2006/07/19(水) 04:08:28

世界はパンゲオンの外の世界と繋がりました。
開けられた穴からは、紀神たちがかつて暮らしていた世界、
つまりパンゲオン以前の世界からの生き物が次々と流入しました。
人間たちにとってそれは見たことも聞いたこともない世界の生き物だったので、
いつしかそれは【地獄】と呼ばれるようになりました。
この出来事が、人の世にいう「第一次地獄解放事件」です。
事態がここに至って、紀元神群もようやく慌てはじめました。
パンゲオン世界にいるからこそ彼らは神でいられますが、
パンゲオン以前の世界では数いる生き物の一種でしかないのです。
パンゲオン以前の世界からの侵略者は、紀元神群にとっても紛れもない脅威でした。

18パンゲオンの腹(14):2006/07/19(水) 15:41:28

一刻も早く、外の世界との間に開いた扉を閉じなくてはなりません。
とはいえ、それが一筋縄ではいかないのは紀神たちも承知でした。
「納豆の神様」やら何やらの有象無象を相手にしていたときとはわけが違います。
今回の相手は、紀神たちにとっても互角の相手なのです。
しかしのんべんだらりとした生活を長いこと続けたせいで、
紀元神群はすっかり平和ボケしていました。
命に関わる危険な戦いを怖がって、誰もが尻込みをしたのです。
しかも頼みの綱である最強の紀神セラティスは、
このとき運悪く友達の家に遊びに行ってて留守でした。
紀元神群、はじまって以来のピンチなのでした。

19パンゲオンの腹(15):2006/07/19(水) 17:58:52

そんなとき、ある人間の魂が【地獄】に殴り込みをかけました。
それは生前、ハルバンデフの好敵手として人々から尊敬された英雄カーズガンでした。
死してなおハルバンデフとの決着を願う彼は、単身【地獄】に趣いたのです。
自分たちの身を危険に晒すことを嫌った紀元神群は、こぞってカーズガンを応援しました。
今や【地獄】の王に収まったハルバンデフを退治して、地獄の扉を閉めてしまうよう頼んだのです。
紀元神群はカーズガンに【紀】の力を与えて紀人とし、
魔王ハルバンデフを打ち倒すに足る様々な策を施しました。
紀人となったカーズガンは正面を切って地獄の難敵を屠り進み、
紀元神群は後方を支援する形でその後に続きました。

20パンゲオンの腹(16):2006/07/19(水) 19:34:34

やがてカーズガンは地獄の底に辿り着きました。
当然そこには魔王ハルバンデフが待ち構えていたのですが、
それよりも彼の隣にいる人物を目にして紀神らは驚きました。
ハルバンデフを意のままに操ることで影から地獄を治めていたのは、
なんとジャッフハリムの暴紀レストロオセだったのです。
カーズガンの後ろに続いていた神々は大いに混乱しました。
レストロオセが生きていた時代からは、もう既に千年が経とうとしているのです。
考える間も与えられぬまま、カーズガンとハルバンデフの決戦が始まりました。

21パンゲオンの腹(17):2006/07/19(水) 19:40:06

生前は一度としてハルバンデフに勝利することなかったカーズガンですが、
今や神となった彼の力はかつての比ではありません。
とはいえ、地獄の瘴気を受けて魔王となったハルバンデフも負けてはいませんでした。
さらに背後から念を送るレストロオセの妖しい術によって
ハルバンデフの膂力は恐ろしいほどに高まっています。
この術の正体をいち早く見抜いたのは、智の紀神ラヴァエヤナでした。
彼女は争いに不慣れなので直接地獄に降りてはいませんでしたが、
シャルマキヒュ神の千里眼を通じて地獄を覗き見ていたのです。
神々の図書館を預かるラヴァエヤナの記憶によれば、
レストロオセの操る術は「隠されたはじまり以前の一族」の技術に違いありませんでした。

22パンゲオンの腹(18):2006/07/19(水) 19:50:57

ラヴァエヤナはカーズガンを通じてレストロオセを問い詰めました。
レストロオセは今さら気付いたのかと言わんばかりに、あっさりと真相を白状しはじめました。
いえ、その態度はむしろ、物語のクライマックスで悪の黒幕が聞いてもいないのに
事件の真相をべらべらと語り出すときのそれそのものでした。
曰く、天地開闢以前からパンゲオンの腹の中にいた彼女らの祖先は、
やがて「隠されたはじまり以前の一族」と呼ばれる文化的社会を築き上げた。
しかしそれを紀元神群が不条理な理由で滅ぼした。
一人生き残ったレストロオセは一族の英知を結集し、
【人類】を唱えて紀元神群に対抗しうる唯一の種を作り出した。
そして彼女自身も人間としてジャッフハリムに生まれ変わり、王妃として紀元神群に打撃を与えた。
その後彼女は自力で紀元槍に触れて紀人となり、
紀元神群に更なる辱めを与えるために人の世を陰から操ってきたのだと。

23パンゲオンの腹(19):2006/07/19(水) 19:53:31

大威張りで哄笑しながら散々にネタバレしまくると、
レストロオセはとっとと秘密の脱出ルートからトンズラこいてしまいました。
残されたのはカーズガンとハルバンデフのみです。
その後も両者の激しい戦いが続きましたが、
レストロオセの援助を欠いたハルバンデフの力はカーズガンに一歩劣りました。
長い死闘の末、ついにハルバンデフは討たれました。
君主を失った地獄は勢いを失い、
カーズガンはすぐさまパンゲオン世界との間に通じた扉を封印しました。
こうして、第一次地獄解放事件はようやく収束を迎えました。
ひとまずめでたしめでたしでした。

24パンゲオンの腹(20):2006/07/19(水) 20:00:27

でも、よく考えるとあまりめでたくもありませんでした。
黒幕のレストロオセはまんまと逃げおおせてしまったわけですから、
いつまた同じような事態が起こるか分かりません。
紀元神群は例によって大慌てになりました。
そんなとき、友達のきゅーちゃんちからセラティスが帰ってきました。
この忙しいときに何をしていたのかと、皆はセラティスをなじりました。
こっちは死ぬとこだったんだぞ、
そもそもお前が連中にゲルシェネスナなんかぶち込むからこんなことに、
お前もうおやつ抜き、
隠し持ってる恥ずかしいポエム印刷して世界中にバラ撒くぞ、
そんな風に矢継ぎ早に責められてしまったので、
普段は無表情系不思議少女で通っている戦闘美少女セラティスも遂には泣き出してしまいました。
セラティスが拗ねて隠れてしまったので、
紀元神群は再びレストロオセに対抗する手段を失ってしまいました。

25パンゲオンの腹(21):2006/07/19(水) 20:04:27

セラティスの協力が得られないとなると、紀元神群は八方塞がりです。
正面切ってレストロオセと戦って負けるとは思いませんが、
また同じようなことがあれば大きな痛手を負うことは必至でした。
それになにより痛いのは嫌です。
紀神たちは少し迷って、すぐに撤退を決めました。
自分たちがパンゲオン世界から隠れてしまえば、
レストロオセといえども流石に追ってはこれないでしょう。
どうせパンゲオン世界に大した執着はないのです。
そうと決まればさっさと引越しというわけで、
数千年の間パンゲオン世界に君臨していた紀元神群は遂に身を引きました。


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