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禁書SS自作スレ
1 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/29(日) 15:55:35 [ AXNyotIc ]
まだSS数が少なすぎて、語り合うことすらできないってんなら―――

―――まずはその幻想をぶち殺す!



というわけで、少しでも禁書SSが増えるようにこんなスレを立ててみる。

2 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/29(日) 17:21:25 [ osKCKpGM ]
神裂ねーちんが身体はってとうまにお礼なら可能か。
しかしマジメキャラだしなー。マジメだからこそ可能かも知れんが

3 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/29(日) 23:01:03 [ 7061jDiE ]
>>2
それは俺が考えてるネタの根本に迫る問題なのじゃよー。
性欲処理云々でエロネタ。
しかも神裂さんちょっと潜在的なS(責めるタイプ)の人になってるwww




まあ、肝心の濡れ場を書いていないわけですが。

4 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/30(月) 01:02:45 [ CDr2eleQ ]
SSというよりガイドラインだが、某無謀編のパロディで「ピアノを轢くビリビリ」とか考えたことがある。

5 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/30(月) 12:10:09 [ k7jNWLkk ]
オルソラの協会で毎日の自慰の詳細を告解。
なし崩し的にセクール

風斬とオルソラのダボォーパイズリも考えたが、この二人に接点を作れねえ。

6 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/30(月) 15:50:17 [ CDr2eleQ ]
つか、おまいらエロしかないんですかw

7 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/30(月) 16:04:42 [ RCkKgsHM ]
Missingと禁書を嘘予告風にクロスしたものを書いてみて欲しい。

8 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/30(月) 23:12:41 [ oExD7g1U ]
「ビリビリ+アンリミテッド・ブレード・ワークス」で、
「鉄製の剣を無数投影」→「レールガンで撃ちっぱなし」→
「後に残るのは敵の残骸とレールガンの残滓だけ…………」
とかいう、
「無限の星屑(Unlimited stardust works)」
とか考えてた俺テラキモスwww

9 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/30(月) 23:53:16 [ t6KhRN9. ]
警報音がなりひびく。
次々と閉められていく隔壁。

その学園都市の協力研究機関には、シスターズのひとりがいた。
「これ以上は一人だって死んでやることはできない」
その思いをむねに、ミサカ=シスターズはこの研究所からの脱出を試みる。

敵対組織の襲撃により研究所内を徘徊する異形のモンスター。

行く手をはばむ、数々の仕掛け。

様々な謎。そして陰謀。

それらすべてを乗り越えた先にあるものは・・・。


『とあるミサカのレディオノイズ――――第一回――――』
いま、ミサカの覚悟がためされる

10 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/30(月) 23:58:27 [ 0yY.aI0M ]
バイオハザードみたいな感じか。
メタルギアソリッド風味の奴や。
サイレントヒル風味の奴も希望。

11 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 00:10:56 [ kLPE8o1Y ]
> メタルギアソリッド風味の奴や。

こうですかわかりません><

     _____
   /  /   /|
    | ̄ ̄ ̄ ̄| .|
    |愛媛ミサカ |/
    ̄ ̄ ̄ ̄

12 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 00:18:29 [ 7HYVAfBI ]
ちょwwwおまwwwww

13 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 00:22:05 [ yOCEZEGQ ]
大分前に本スレに投下した嘘予告を、加筆修正して転載しとく。

 * * *

<とある魔術の禁書目録・最終巻嘘予告>

――ついに記憶喪失がバレた上条。

「う、ウソだよね、とうま?」
 すがるように上条を見つめるインデックス。
 しかし上条は残酷な真実を告げるとともに、その白い少女を突き放す。

「……ごめん。俺は、お前を助けた『上条当麻』じゃないんだ」

 インデックスという名の少女は、目を見開いて『上条当麻』を見た。
 その時の彼女の目を彼は忘れないだろう。
 裏切られたような、深い悲しみに彩られたその瞳を。


――上条勢力に敵対する学園都市。

「『幻想殺し』は虚数学区の自我の生成という役目を果たしている。
アレは既に行程の短縮に不要。むしろ、障害となりうるだろうな」
 アレイスターは目の前の魔術師に普段と同じ口調でそう言った。
 つまり『上条当麻』は邪魔である、と。
 それはいずれ障害となるだろう上条を消すと言っているのと同義。
 ただ事実のみを述べた男を睨み、魔術師――土御門元春は歯噛みした。


――真実は次々と明かされていく。

「なんでそんな事黙ってたのよ……
知らずに接してた私が馬鹿みたいじゃない!」
 ぱあん、と平手打ちの音が通りに響く。
 御坂美琴は少年に『能力』を使うことはあれど、手を上げたことは一度も無かった。
 その事実が、彼女の怒りの度合いを表している。

 バチ、と美琴から青白い火花が放出される。
 徐々にその勢いは苛烈なものとなり、絶え間なく鳴り続ける放電の音は数多の鳥が鳴いているかのよう。
 美琴はゆっくりと右手を前に突き出し、拳を握り――

「……レベル5、『超電磁砲』御坂美琴。――私は、今からアンタを倒すわ」

 ゆっくりと拳を開き、手のひらを少年へと向けた。

14 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 00:22:58 [ yOCEZEGQ ]

――襲い来る知人たち。

「あの子を悲しませる存在は僕の敵だ。
良かったね、上条当麻。遂に君は、僕の明確な『敵』になった」
振るわれる炎剣。それを咄嗟に『幻想殺し』で防ぐ。しかし、

「君の戦術は知っている。『幻想殺し』さえ防げれば、後は殺すのも簡単だということもね――!」

『幻想殺し』を、ステイルは素手で掴み取る。
幻想でもなんでもない生身の素手。しかし、幻想でない故に『幻想殺し』を無効化できる唯一の手段。
ステイルの表情が愉悦に歪み、『上条当麻』は恐怖と驚愕で声も出せない。

そして、『幻想殺し』を掴んでいるのとは逆の手に、もう一本の炎剣が生み出される――!


一人一人の問題が複雑に絡まりあい、一つの物語と化す。
その物語は、どんな形で収束するのだろうか。


「それでも、とうまはとうまだよ……私がだいすきな、とうまなんだもん……!」


――次巻、禁書目録シリーズ最終巻。堂々の完結!
エロじゃなくてごめんな('A`)

15 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 03:41:32 [ 6YCkyy.Y ]
>>14
思いっきり蹴飛ばせばよくね?

16 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 13:14:25 [ ovBlaHys ]
シャナと禁書のを希望。

17 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 16:17:59 [ 0fHBCG.Q ]
>>16
大半のキャラが幻想殺しであぼーんされちまいそうだがだがよろしいのか?

18 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 16:37:25 [ Fgy2LAnE ]
じゃあ、9Sと禁書の嘘予告で良いよ。

19 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 17:19:39 [ 1gEIh2Ro ]
皆川亮二作品とのウソ予告とか。

たまたま旅行でとある山村を訪れた当麻たち。
その村ではここしばらく深刻な猿害に悩まされているという。

そんな話を聞くでもなしに聞いていたその矢先に突如出現する猿の群れ。
「な……なによあれ!猿が梨を収穫してるわよ?!」

そして登場する猿の長。
「……ねー、とうまとうま。日本の猿ってあんなに大きいの?」
「いや……あれは……サル……かぁ……?なあ美琴、お前はどう思うよ」
「……私に振らないでよ……何なのよアレ?」

人知を超えた恐怖に戦慄するとーまたち!幻想殺しvs完全武装の勝負やいかに?!

20 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 21:44:27 [ nJ7z5VVE ]
というか、やっぱSSはクロスが主流なのか

21 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 21:52:06 [ HZGh1NJo ]
>>20
いや、そんなことはないよ。
>>9もクロスとは考えなくてしたものだしね。
日のあたらないキャラを活躍させたりとか、
自分が好きな作品同士の共闘がみたいとかで、
前者だと外伝とか再構成になったり、後者だとクロスになったり。
まあ、いろいろ。

22 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 23:25:58 [ irKBKaYA ]
じゃあスプリガンと禁書の嘘予告で良いよ。

23 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 23:33:07 [ D9FNX/eE ]
>>18
それは、ある狂人の残したモノに、ある狂人が興味を示した時より始まった―――。

「ふむ。峰島勇次郎の遺産―――。
 手順が大幅に削減できる可能性がある」

打ち消せぬ現実―――。
幻想を殺す少年を、冷たく美しい目で見据えながら、少女は言う。

「なッ―――!?」
「科学で説明できぬ物を幻想というのなら、これは間違いなく現実だぞ」

科学と科学が交差し―――。
最強と最凶がぶつかり合う。

「少しは楽しませろよ。見逃す気はないぜ」
「面白ェ。愉快に素敵にブチ殺してやンよ!」






コレ以上はむりだ。スマン。

24 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 23:36:24 [ OWkG3KV. ]
嘘予告スレになってるw

25 名前:■■■■ 投稿日:2006/01/31(火) 23:47:39 [ irKBKaYA ]
>>23
勇次郎とアレイスターって心の友だよな。

26 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:12:00 [ s7lKm4x6 ]
>>24
SS書くのは時間もかかるし、大変だからね
嘘予告書くうちに短編書こうってひともあらわれるだろうから
いいんじゃね

27 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:31:29 [ s7lKm4x6 ]
>>11
                      //!
       i:::::::::::::::::      ,,-''"゙゙゙゙゙"'' / l
         !:::::::::::::    ,,,r'.. r''""ゞ、  ヾ  こちらスフィンクス
       |:::::::::,,-''''"" ';:::ミ ;;;,,  〉   .:ミ  ターゲットを確認した
          i::::;:'      .::ミ:::..      .::ミ
        レ':.    , '""''-,,_  てlフ=====i~i=ニニ0
        ミ:::   ミ      )ニー'"tュi三三iミ'"ゞ二≡≡ニニ二二()
       ミ:::    ''""ヽi i i j'_ノノーi・ ̄二,ミ  ミ──’
       ミ::   、    "'''"ミ ̄ヽ └─''"""'''''"
      彡:.    ヽ:.    '"⌒ヽ::::ヽ \"'-,; . : ."''-,,_
       ヘ:::..   ノ::..     .:::t-、_::ヽ  \:."'-,, . : . :"''-
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28 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:33:08 [ hq8GX1gg ]
学園都市のビル群に、一人の男が降り立った―――。

「上条、当麻だな?」
「はい?いや、そうだけど、アンタは?」
「あぁ、いや、その、俺は―――、お前にとっての『線路の影をなぞる者』、かな」
「……?、一体何を―――ッ!?」

不死の者さえ殺す右腕、その危うさを見逃さぬ、真っ赤な真っ赤な怪物が、葡萄酒呷りにやって来る

「何だよ!?何なんだって一体!まさか天然の能力者かよ!?」
「『能力』?違うな……『努力』、だ」

神をも殺す少年と、神に愛された男。
その最悪の衝突を、窓無き塔の住人は、如何な謀りで運ぶのか―――


ハイハイ無理無理。

29 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:39:30 [ ElrBAPck ]
>>26
自分のサイトにあげてある奴の丸転載でよければ落とすけどどうか。

30 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:39:55 [ P5.TKkZY ]
それ、何処の作品?
もちっと嘘予告風で。

31 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:43:22 [ P5.TKkZY ]
>>29
良いんじゃないか。

32 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:51:09 [ ElrBAPck ]
 自分の右手を見る。
見慣れた手である。日焼け具合や血管の位置も覚えて――覚えきっていると言っていい。
 さらに付け加えるならば、特になんの変哲もない手でもある。少なくとも外見上では。
「……うーむ」
 そんな自分の利き腕を見下ろして、彼――上条当麻は教壇の上に立って白墨を持たされたまま、
とりあえず呻くように独りごちた。
そこは自分が通う高校の、自分が通う教室である。普段は何かとやかましいが、授業中ともなれば
静まり返っている。当然といえば当然だが。
 そんな静寂の中で、自分の一挙手一挙動に同級生全員の注目が集まっているのをなんとなく
自覚しつつも当麻はあえてぶつぶつと言い続ける。
「幻想ならなんでも殺せる、というのは便利かもしれん。しかしアレだな、数学の二次関数とか
称するともっぱらのうわさに聞く、奇っ怪で極めて近く限りなく遠い異次元のものではないかと
想像される理解不能で正体不明の怪奇そのものな得体の知れない未知の言語を解く上では何の役にも
立たねえというのでは困るぞ俺の右腕。これは幻想じゃないっつーのか?
どう見たってこんなわけのわからんモノは幻想だろうが二次関数」
 黒板に記された数式からは極力目を逸らしながら――その黒板の目前に立っているのだからどう
あがいたところで逸らしようがないのだが――、ぶつぶつと続ける。
「……上条ちゃーん?」
「そういやアレだよな。幻想ならなんでも殺せるのにRPGとかアクションゲーで行き詰った時役に立ったりは
しなかったよな。超魔界村を一周でクリアできたりすればすげー便利なのに。あれはゲームだから幻想じゃないって
ことか?意外とうるさいな、マイ右腕。別にゲームでも幻想は幻想なんだから殺してくれたってよかろーに」
 結局視線を逸らすのは諦めて思い切って体を90度回転させ、腕を組んで心持ち斜めにポージングしながら、
顎を引いて遠くを見るように顔を上げた状態で独り言を続ける。
「……上条ちゃん、なにを遠い目で堂々と窓の外を見ながらぶつぶつと回想モードに入ってるんですかー?」
 教師が咎めるように手を振りかざし、微妙に上を向いている当麻の視界に入ろうと飛び跳ねているのが気配で知れた。
 だがそれもやはりあえて無視しつつ、
「まあそもそも幻想なら殺せるってのがどうにも曖昧だしなー。もうちょっとこう具体的なのが欲しかったな、うん。
どんなゲームでもあっという間にクリアできる!スパロボのF完をNTなしでクリアできる右腕!とかだったらすっげー自慢できたんじゃねえのか?」
 しれっとした顔を取り繕いつつもドラマだがゲームだが漫画だったかで見たようなポーズと表情を、頭をフル回転させて懸命に思い出し、
それを模倣しながらずらずらと喋り続ける。
 確か記憶にある「ロンリー・ダンディズムなポーズ」というのはこういう感じだったように記憶している。
「上条ちゃん、遠くを見つめながら何もかもを投げ捨てた漢の目をしてないで早く黒板に答えを書いてくださーい」
(つーか漫画に頼るロンリー・ダイナミズムってのもなんかアレだよな)
 何か――よくわからない何かを促してくる教師の声は意識の外へ放り出す当麻の脳裏に、思わずそんなことがふと浮かぶ。
 だがこの際、そんなことは重要ではない。今重要なのはとにかくこの場の停滞を極力自然な形でもって偽装し、
さらにその上でそれとなくフェードアウトしていくための方法を考えること――ようするに、ごまかしてずらかることだ。
 それ以外のことはまったく度外視すべきことだろう。多分。
「上条ちゃんってば。すっとぼけても先生は許してあげませんよ?あれは絶対に居眠りしかかってたときの顔ですよねー?」
(考えろ、考えるんだ上条当麻。オマエは仮にも学園最強のレベル5を拳ひとつで殴り倒し、世界で20人も
いないとかいう聖人に向かって素手で突撃する分の悪い賭けは嫌いじゃない的などうしようもなく救い難いアホだろうが――ッ!)
「上条ちゃーん……」
 思考は様々な意味で混迷を深めつつあるような気がしたが、やはりそれも心の奥底に押し込めてとにかく必死に考える。
といって、もはや何をどう考える必要があって今これほど必死になって考えているのかもわからなくなってきたが。
「くそッ……マジでヤバいな、これは。この上条さんをもってしてもここまでスーパーピンチに追い込まれるとは……
今の世の中荒れ放題ってのは本当かもしれん……!」
 びっしりと冷や汗をかきながらも戦慄し呻く――ただ、何に戦慄しているのかはすでに自分でもわからなかった。

33 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:51:46 [ ElrBAPck ]
 と、そこに、
「カミやん、そろそろ小萌センセ泣くで」
 同級生が合いの手――だかなんだか――を打ってきた。
 それを合図に、当麻の中で曇り澱んでいた何かが一気に吹き飛ぶ。
「ちっ。この上条さんが編み出した究極の解答テクニックも意外と役に立たんもんだな」
 何もかもを忘れ去り――意識的に――舌打ちなどしながらこれ幸いと振り返る。
必死に考えてはいたがもはや何をどうして必死に考えていたのかもわからなくなっていた当麻にとってその声は神の救い手とも言えた。
 振り返ったその先にいたのは彼の担任の教師、月詠小萌である。
「……………………」
 彼女は目を閉じ、微妙にこめかみのあたり――当麻の目線より断然低い位置にあるそこをひくひくとひきつらせている。近くに寄らずともはっきりと見えるほどに。
 それを見て、ふとあることを思い出す。忘れていたがとても重要だったことを。
「あ、そうか。俺ごまかそうとしてたんだった……オイオイ、それじゃここで振り返っちゃダメじゃん。何言うんだこの青髪ピアス!」
 そんなことをとりあえず口にしながら、ゆっくりと目線を担任のほうへともどす。
彼女はゆっくりと、一字一句を噛み締めるように――というよりは噛み締めさせるように、地の底から這い上がってくるような声で口を開いた。
「……で、上条ちゃん。さっきから何をぶつぶつと独り言をまくしたてていたのですか?」
 それが意味することはひとつしかない――たとえ黒板に書かれて解答せよと指名された問題はまったく解けなかった上にそれをごまかす方法も
発見できなかったとしても、この仕草の意味するところだけは悲しいほどにあっさりと理解できた。
その悲しさは適当に押し込めて、なるたけ真顔を装って答える。
「いや、現実逃避」
「それのどこが解答のテクニックなんですか!そんなふざけた答えが帰ってくるあたり、本当に今の世の中荒れ放題ですね上条ちゃん!
ボヤボヤしてると後ろからバッサリですよ?!先生の手で!」
 腕を振り上げて、顔を真っ赤にしながら彼の担任の怒りが炸裂する――やはりどうしようもなく子供のような仕草だったが。
それはおくびにも出さず、
「いやだなぁ、ちょっとしたジョークですよ先生。そう怒らなくても……ていうか、教え子を脅迫しないて下さいよ」
 なんとかごまかそうとなるたけフランクな口調でアハハと笑い後頭部をかきながら、
爽やかに語りかける。その笑い声はどこか乾いていることが自分でもはっきりと分かってしまったが。
 だがそんな当麻の複雑に緊迫した心境など露知らぬようで、担任教師の返答は実に短く、端的だった。

34 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:52:42 [ ElrBAPck ]
授業後、鼓膜が愉快に素敵に爆砕されるのではないかとすら思えるほどの勢いで雷を落とされ、
すっかり消耗しきった状態で教室に戻ってきた当麻を迎えたのは見慣れた友人の淡白な言葉だった。
「あれは。怒られると思う」
「……いや分かってる。分かってるから追い討ちはカンベンしてくれ姫神」
「結局。ウケ狙いのギャグだったの?」
 ぼそぼそと小声で、しかし発音ははっきりと語りかけてくる同級生に、うめくように答える当麻。
 いつもは巫女装束だが、今は制服を着ている――そのせいで微妙な違和感がないでもなかったが。
「いや、あれはウケ狙いでやるにはこっぱずかしすぎるだろ。ギャグだったらもうちょっとマシなのを考えるぞ」
 ともあれその少女――姫神秋沙は相変わらず表情の起伏に乏しい顔で、
「たぶん。意図して狙ってもあそこまで混乱するのは難しいと思う。
みんな笑いをこらえるのに必死になってたから」
「……お前もか?」
「もちろん。今時ギャグでもあんなに錯乱する人間を見るのは難しいと思う」
 きっぱりと即答してくる。
「錯乱とまで言いますか?!」
 やはり淡々とした表情で告げる姫神にとりあえず大声をあげ、
「あれは。まさに錯乱っていうんだと思う。正気を逸したい放題になってたというか」
 そんな彼女の冷たい追い討ちにますますやさぐれた気分に陥りつつ、呻く。
「……ううう……今日はなんて日だ……天気が良くていい気分になったもんで
思わずおいでおいでする死神さんの手をとって向こう側へ行こうとしていただけなのに、
神は何故こんな仕打ちを……ちくしょー、不幸だー」
 ぐったりと机に突っ伏してうめく。
「……それは。世間一般の言葉で表現するなら居眠りって言うんだと思う。要するに君が悪い」
「ほっとけ」
 机に突っ伏したままで答える。結局は彼女のほうがまったく正論であることは地の果てまでも
否定したところで否定しきれるものではなさそうだったが。
「くそう……」
 適当に呻き声を上げつつも、まあこのまま放置されてもしょうがないかなと半分投げやりな気分で考えていると、ふと姫神が微妙に声の調子を
変えて――少し柔らかくして――背中をぽんぽんと軽く叩いて来た。
「まあ。そんな間の悪いこともあるんじゃないかな……」
「……おう」
 力なくもなんとか答え、体を起こす。
「ほら。次の授業が始まるよ。今度は起きていればいい」
「この陽気じゃそれもなかなかキツそうだけどな」
「そんなこと言わないで。そこで寝たらまた笑われるよ?」
「分かってるっての」
「なら、いい。今度は頑張ってほしい。個人的にも君の情けない姿はあまり見たくないから」
 居眠りしていたら怒られたという、単に自業自得なだけのマネをしておいて女の子に慰めてもらうというのはかなり情けないかもしれない。
(今度はパンツのゴムをしめ直して本気でかからんと…!)
そんなことを考えながら、ガラガラと扉が開く音と共に当麻はとにもかくにも背筋を正して黒板へと向き直った。

35 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:53:18 [ ElrBAPck ]
投下完了。
明らかにかまちーの文体じゃないのはカンベンしてくれな。

36 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:56:36 [ P5.TKkZY ]
姫神が普通に喋ってルー!?

37 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 00:57:27 [ HnmUQLPA ]
>>30
つまり、>>29に嘘予告風に自分のサイトにあげてある奴を
どのような内容なのか教えてほしいとな?

38 名前:37 投稿日:2006/02/01(水) 00:58:43 [ HnmUQLPA ]
リロードし忘れ・・・orz

39 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 01:00:45 [ P5.TKkZY ]
いや、>>28の禁書じゃない方の作品を、嘘予告風に禁書と混ぜながら。
語ってくれないかと言う台詞なんだよ。

40 名前:37 投稿日:2006/02/01(水) 01:06:49 [ HnmUQLPA ]
>>39
勘違いスマソ

41 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 01:08:35 [ P5.TKkZY ]
いや、こちらこそアンカー付けずに書きこんじゃってスマン。

42 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 03:24:06 [ tAeEXl4Y ]
 始まりは、上条刀夜にかかって来た一本の電話だった。

「はい、上条ですが…… おお君か、随分久しぶりだねぇ。いやニュースでもやってた通り、実家が
連続殺人犯に爆破されたせいでアパート暮らしなんだよ。いや、別に家族は別の場所にいたから巻き
込まれはしなかったんだが、うん、そのせいでお守りも全滅してしまってね。せっかく君がどう並べ
たらいいのか相談に乗ってくれたって言うのに悪いね。いや、そういってもらえると……」

 そのまましばらく続いた会話は、この言葉で締めくくられる。

「当麻に会いに行く? わかった、何とか学園都市に入れるように交渉しよう。
 いや、お礼なんていいよ。あいつも君に会えるなら喜ぶだろうし」

 そうして、刀夜は手続きを取る。
 過去迫害を受けていた当麻に、唯一手を差し伸べてくれた幼馴染のために。

 だがそれが、上条当麻の新たなる不幸の始まりだとは気付いていなかった。





 そして、学園都市に『魔女』が訪れる……




 嘘予告:『とある魔術のMissing』

 刀夜の台詞のみでスマソorz

43 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 04:28:22 [ .CUNZ4pU ]
>>42
おお、前にいっていたやつですね

44 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 14:38:20 [ iI8t44SI ]
ヘルシングと禁書の嘘予告希望。

45 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 16:32:10 [ P.rPJgUE ]
ブギーポップと禁書はどうだろうか?
統和機構とアレイスターならどっかつながっててもおかしくないし。

46 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 16:49:55 [ STz5KkVI ]
>>45
アレイスターが誰かの下で働くって結構シュールな光景。

47 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 20:41:46 [ hq8GX1gg ]
9sとのクロスは書きやすそうだなー。
海星に追っかけられてる途中で逃げ込む→バレてジャッジメント出動→カミやん首突っ込む
みたいな。

48 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 21:01:46 [ P.rPJgUE ]
アレイスターは部下というよりは協力する立場だろう。
長生きしてるから代替わりする前のアクシズと繋がっててもおかしくない?

しかし、統和機構からすれば、学園都市は人為的にMPLSを作ってるわけだよな。

49 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 21:09:43 [ hq8GX1gg ]
MPLSっつーか能力者&合成人間の製造技術で相互提携?

50 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 21:31:11 [ P.rPJgUE ]
ビリビリと一方通行と打ち止めの小咄くらいならできそうだが。

黒子の見舞いへ行った帰り、じゃれあってる一方&打ち止めを発見するビリビリ。

でもビリビリのリアクションが思い浮かばないんだよね。

51 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 22:11:08 [ cNrBCUOA ]
>>44
とりあえず同じイギリスに有る、ネセサリウスの皆さんは登場できるな。

52 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/01(水) 23:24:13 [ R3igG9oU ]
進化しすぎた人間を抹殺するのが使命の統和機構からしたら学園都市はかなり危険な存在だな

53 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/02(木) 01:44:25 [ ig5tlAus ]
空の境界と禁書の嘘予告を…………駄目?

54 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/02(木) 06:14:05 [ YecYa/M6 ]
学園都市、
広大な敷地面積を持つ隔離された箱庭…、
実に住民のほとんどがなんらかの『異能』を持つ
この場所でも例外なく時間は進む。
春4月、別れと出会い。
世間がそんなムードもおかまいなしに
上条当麻は不幸に出会っていた。
校庭に生えている1本の木、ふと目に付いたのはぶら下がる人。
声をかけたらいけない、また巻き込まれる、
そんなことを考えながらも声をかけてしまう。
「あのぉ、大丈夫ですか…?」

春、出会いの季節
学園都市に飛ばされた人生に絶望した教師と
右手に不幸を持つ生徒上条当麻。

二人の出会いがとある事件の始まりだった?!
             ガッコ
嘘予告:『とある学園の絶望先生』

むりむりwww

55 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/02(木) 14:53:23 [ hY9019Ik ]
>>53
駄目な理由は無いだろう。

56 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/02(木) 19:30:50 [ AYFfY6RU ]
>>53
反対する理由はない。やりたまえ。


……でも、よく型月系でも一番組み合わせ難いトコロ選んだなw

57 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/02(木) 19:40:36 [ YKkOYMLI ]
>>53は誰かに書いてくれないかなってお願いしてるんじゃね?

58 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/02(木) 20:52:35 [ w1776C8E ]
そういえばラ板の学校スレに禁書がらみのSS結構あったよね。

59 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/02(木) 22:24:51 [ KDof25xc ]
>>56
そんなに難しいことではないかもしれない。
凶れでお馴染みの薄幸少女がいるから、フラグゲッター上条の力でどうにかなる。

60 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/02(木) 22:55:58 [ KDof25xc ]
いまさらだが>>28よ。
葡萄酒こと『線路の影をなぞる者』は不死の酒を飲んでないから爺さんになってる筈だ。
そのクロスには無理がある。

61 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/02(木) 23:33:03 [ 7HEqyJa6 ]
>>59
マンション戦とかも禁書とピッタリ感があるよな。
炎の魔術師同士の戦いとか。

62 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/03(金) 00:53:05 [ iuSnh4FM ]
>>59
腕とか足とかをいろいろと曲げられたりする当麻。
しかし、脅威の主人公補正で撃破。
盲腸炎はカエル医師に治してもらいましたとさ。

63 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/03(金) 01:14:26 [ iuSnh4FM ]
ならばスタンダートに月姫と禁書で良いんじゃね?

64 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/03(金) 02:41:40 [ qQ3wYF/s ]
>>63
そのクロスだと、某さっちんとのフラグが立ちかねん。
>>42
あと、Missingとのクロスだが、全く合わなそうなのに合いそうなのが……
どっちだ?

65 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/03(金) 08:30:30 [ 7JV.9pb2 ]
ああ、あの不幸にも吸血鬼になっちまった奴か。

66 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/03(金) 08:58:40 [ uEjAGBNQ ]
他作キャラにフラグ立てるようなはしたない上条など存在していようはずもない。

67 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/03(金) 17:00:32 [ mQ41gjOw ]
デビルメイクライと禁書の嘘予告希望。

68 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/03(金) 21:42:08 [ 7YdSzvCo ]
>>66
だが。作品の壁を打ち破ってこそフラグの英霊―――――――!

■■っとなってやった。だが私は反省しない

69 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/03(金) 23:03:28 [ bedPudVs ]
ネウロと禁書の嘘予告風味を一丁。

70 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/03(金) 23:04:04 [ PNYEtqvw ]
どこかでもあったが、レンタルマギカとのクロス嘘予告が読みたい。

71 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/04(土) 02:49:13 [ /n/16k6M ]
禁書とMissingに更に型月のクロスを考えたが、どう考えても途中で打ち切りになった。
なにしろ、『物語』に出てくる魔術師たちはそろいもそろって封印指定クラスだし…

72 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/04(土) 04:30:21 [ evRA9Fz. ]
禁書はアウレオルスや神裂ねーちんぐらいだろうけど。
Missingの魔術師は揃いも揃って封印指定クラスだな。

73 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/04(土) 12:00:34 [ oK2zYZ4s ]
どいつもこいつも凶悪

74 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/04(土) 17:02:45 [ LQvOOoko ]
しにがみのバラッドと禁書の嘘予告一丁。

75 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/05(日) 00:30:43 [ moRb7N/A ]
――村には夜、悪魔が現れる。
 その風聞をどこで聞いたのか。
 近隣の村ぐらいしか名も知らぬような小さな山村に客人が訪れた。

「イギリス清教の専門は『魔女狩り』の筈ですが……」
 何故私が? という疑問を飲み込んで、彼女――神裂火織は村に足を踏み入れる。

 それが、終わらぬ夜の始まりだった。

 * * *

 シャドウと言う名の獣と対峙する神裂。
 鋼糸による斬撃はことごとくが不発に終わり、残された攻撃手段は七天七刀による『唯閃』のみ。
 しかし、ふと湧く疑問。

 この長刀から放たれる『唯閃』は、果たしてこの獣に効くのだろうか――?

「――その刀(エモノ)じゃソイツは殺せねぇよ。お嬢さん」

 疑問に答えるようにして聞こえた声。
 それと重なるように、獣の咆哮にも似た銃声が夜の闇に響き渡った。


 * * *

客人は二人。
”必然悪の教会”の魔術師、神裂火織。
便利屋<Devil May Cry>のダンテ。

聖人と悪魔の息子が、今ここに出会う。


もうだめ、ムリぽ……

76 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/05(日) 01:12:36 [ ZksOxOhk ]
おお、至福じゃ。
バージル兄ィと神裂さんも見たかったが。

77 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/05(日) 01:42:55 [ ZksOxOhk ]
フルメタルパニックと禁書の嘘予告をお願いします。

78 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/05(日) 13:45:42 [ 9K9yJ/Hc ]
      r;ァ'N;:::::::::::::,ィ/      >::::::::::ヽ
.      〃  ヽル1'´        ∠:::::::::::::::::i
       i′  ___, - ,. = -一   ̄l:::::::::::::::l
.      ! , -==、´r'          l::::::/,ニ.ヽ
      l        _,, -‐''二ゝ  l::::l f゙ヽ |、 ここは理想郷や夜華じゃねえんだ
        レー-- 、ヽヾニ-ァ,ニ;=、_   !:::l ) } ト
       ヾ¨'7"ry、`   ー゙='ニ,,,`    }::ヽ(ノ  クレクレせずに、自分で書けよ
:ーゝヽ、     !´ " ̄ 'l,;;;;,,,.、       ,i:::::::ミ
::::::::::::::::ヽ.-‐ ト、 r'_{   __)`ニゝ、  ,,iリ::::::::ミ
::::::::::::::::::::Vi/l:::V'´;ッ`ニ´ー-ッ-,、:::::`"::::::::::::::;゙ ,  な!
:::::::::::::::::::::::::N. ゙、::::ヾ,.`二ニ´∠,,.i::::::::::::::::::::///
:::::::::::::::::::::::::::::l ヽ;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ /
::::::::::::::::::::::::::::::! :|.\;::::::::::::::::::::::::::::::/ /

79 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/05(日) 14:48:25 [ wiDRv6XE ]
>>76
DMCは1しかやったことないからバージルのキャラが分からない、ぜ。
>>75は気まぐれで書いた一品だし……スマンね。

>>78
書き手に対するお題、だと思えばいいだろ?
いずれ俺みたいに思いつきで書いてくれる人が出てくるだろうし。

80 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/06(月) 11:13:30 [ nWKBsB3s ]
バージル=ネロアンジェロ

81 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/06(月) 16:09:39 [ nnesDV.s ]
DMC3をやってみると。
DMC1のネロ・アンジェロの事が良く分かる。

82 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/06(月) 20:14:40 [ XGvytvvs ]
>>80
そ う だ っ た の か !

でも、書けない事に変わりはない。
ネロ・アンジェロ状態しか知らないからな。

83 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/07(火) 00:29:06 [ lX3RCjR2 ]
フレキシブルなのが禁書の良い所だ。
魔術や超能力が出てこなくても。何とかなるっぽいってのが。

84 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/13(月) 11:07:25 [ zKMtdJk6 ]
>>74
こんなんできました。


学び舎の街に住む「無能」の少年。
魂を舞い送る「しにがみ」の少女。
当たり前のような偶然として、奇蹟のような必然として、
彼らは、出会った。


「あなた、なに?」
「……上条さんの周囲の不条理は、ふわふわ浮いてるコスプレ小学生に存在意義を問われるまでになっ
たということですか」
んなもんこっちが聞きたいわー、と記憶喪失な上条当麻は相変わらずのいやな予感を覚えながら思った。


「やっぱりおかしいんだよモモ。天上のどのデータベースにも、あいつの死期は登録されてない。
 つまり、死神側から見て、あいつは『死ぬ可能性がない人間』ってことになってる」
「幻想殺しっていうんだって。死神局の測定機器も、あの人にとってはレンズの欠けた望遠鏡とおんな
 じ。 ……でも、そんなもんじゃない? 誰だって、自分が死ぬ予定なんて知らないのが普通だし、
 だからこそ、生きてゆけるっていうのもあると思う」
「そっか、な」      ・・
「そうだよ。――それじゃ、本業の方、そろそろ始めよっか。ダニエル」


時を同じくして学園都市で相次ぐ不自然な突然死。
死体に一切の外傷はなく、中には道を歩いている時に死亡した者もいた。
捜査を行ったアンチスキルの一人がつぶやいた。
まるで死神に命を刈り取られたようだ、と。


「お前……! なにやってんだよ!」
「見てわからない? タマシイを送っているのよ」


触れれば消える儚い少女を追って、上条は雪降る夜の街を走る。
振り下ろされる大鎌を止めるために、ではなく、
大鎌を振り下ろす手を、止めるために。


「――生意気言ってんじゃねえぞ、マセガキ」

「お前、泣いてるじゃねえか」

「今まで一度でも、失わせたくない命に出会わなかったのか? これまで一人でも、お前を失いたくな
 い奴に出会わなかったのか!?」

「なら叫べよ! 失いたくないと! そして誓え! 失わせはしないと!
 お仕着せな運命なんて、その赫い靴で蹴り飛ばしてやれ!」
 ・・                          マボロシ
「それがお前の抱えてる絶望だっていうんなら、そんなふざけた幻想は俺の右手でぶち殺してやる!!」


そして、それは舞うように。
雪のヒトヒラ。心のヒトカケ。
ヒカリが殺され、
ひかりが産まれた。


とある魔術の禁書目録withしにがみのバラッド。

上条当麻、小学五年生にフラグを立てる編。

85 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/13(月) 15:53:36 [ EcRyQQ1Y ]
おお、素晴らしい。
どうもありがとうなんだね。

86 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/13(月) 23:22:57 [ 2KPTiOew ]
当麻をTSして他作品とクロス・・・・
すみません妄想しただけです

87 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/13(月) 23:33:29 [ YQb34heM ]
ここで守護月天と禁書。
当麻パパが中国からお土産として送ってくる事にしたりして。

88 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/14(火) 00:21:15 [ 8.V6T7kM ]
支天輪に右手で触れて破壊されます。
そして中に居たシャオや星神がみんな出てきてしまうだろう。

89 名前:寸劇目録・バレンタインデー編 投稿日:2006/02/14(火) 00:42:25 [ 7XUWNN12 ]
1.「まず最初に、その甘い幻想をぶち殺す」

インデックス「ばれんたいん、って。もしかして、聖バレンチヌスの祝日のこと?」
上条「日本だと女が好きな男にチョコを送る、って習慣があるんだぞ」
インデックス「なんで?」
上条「製菓会社の陰謀だろ?」


2.「インデックスの場合」

インデックス「(目をキラキラさせて)チョコ? もしかしてくれるの?」

上条(感謝の気持ちでも義理でもいいから俺に送ろうと思わないのでせう?)


3.「御坂美琴の場合」

美琴「ほら、これでも食べてなさい」
(と、100円チョコを手渡す)

上条「お情けで配る義理チョコの定番、って感じだな」


4.「神裂火織の場合」

神裂「上条当麻。その、この程度では恩を返すことにもならないと思いますが……」
(おずおずと高級メーカーのチョコを取り出して)

上条「いや、逆にそこまでされると受け取りにくいというかなんというか」

90 名前:寸劇目録・バレンタインデー編2 投稿日:2006/02/14(火) 00:43:58 [ 7XUWNN12 ]

2,5.「インデックスの場合・裏側」

――上条の帰宅前。

インデックス「とうまにあげるチョコ、まちがって食べちゃったかも――!」


3,5.「御坂美琴の場合・裏側」

美琴「ああー、なんで私ってこうなんだろ……?」
(手作りの本命チョコを胸に抱いて落ち込む)


4,5.「神裂火織の場合・裏側」

上条「……」
神裂「て、店員に勧められるままに購入したのですが……」

(両者、ハート型にLOVEの文字入りチョコを目にして気まずい雰囲気)




番外.「■■■■の場合」

■■「話しかけても気付いてさえもらえないのだけど。おかしい。ナニかの作為を感じる」

91 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/14(火) 01:15:55 [ 77piBE7o ]
邪神(アウターゴッズ)の陰謀が・・・

92 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/14(火) 16:56:47 [ 2clPyoTE ]
ここで禁書目録と世界観が似ていて。
繋げても違和感が無い作品を上げてみよう。

93 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/14(火) 21:44:02 [ Kok2T3Mg ]
>>92
同じ電撃作品になるけど学校へ行こうがいいね
隔離された能力者とか、その能力者まわりは禁書とあまり違和感がない

護くんに〜もありかな

94 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/14(火) 22:54:02 [ kRT7XwTs ]
世界観合うかわからんが学園都市の技術なら最終兵器彼女を作れるかもしれん。

95 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/14(火) 23:44:26 [ qpp9hMeA ]
発達した科学技術があるから、9Sとかの現代SF系は可能そうだな。

96 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/15(水) 00:37:43 [ mdL8c1BE ]
>>92
現代物なら割と何でも可能じゃないか。

97 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/15(水) 00:59:53 [ dtpkojyc ]
RODとのクロスとかどうだ。
必要悪の教会vs大英図書館。
10万3千冊の「魔道書」を持つインデックスなんて、大英図書館の格好の獲物じゃないか。
ただ個人的には読子がルーンのカードを大量にばら撒いて巨大イノケンティウス発動、
なんて共闘が見たいんだけどなー、と某所で見たネタを拝借してみるw

98 名前:とある魔術のMissing 投稿日:2006/02/15(水) 03:05:31 [ .IzbVlNs ]
↑とまあ、以前嘘予告を書いたんだが、設定していくうちに世界観はともかく
キャラクターとしては相性がいいように思えてきたんだよ。
 ほら、当麻と近藤なんて意外と気が合いそうだし。

99 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/15(水) 10:52:49 [ NhjNHY5. ]
割といい方向で書いてくれる事を希望。

100 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/16(木) 19:38:22 [ zSMBAfkA ]
本スレの>>38-39の嘘予告が普通に面白かった。
けど何故か皆スルー

……■■かっ!
■■■■が関わってるからスルーしているのかっ!!

101 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/16(木) 23:22:05 [ H4Sygj4E ]
多分、気のせいで済ましてるんだろうね。
ここで、レジンキャストミルクと禁書は相性が良いと思う。

102 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/17(金) 10:58:46 [ vJNUkD1s ]
どっちもフラグ立ちまくってるからな。
ミルクの方は死亡の方だけど。

103 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/17(金) 11:47:32 [ JCKTF3i6 ]
死亡フラグ抜きでも容赦なく殺す。
それが祐たんクォリティー

104 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/18(土) 14:32:50 [ RJ5/HBpo ]
禁書はクロス展開しなくてもネタは多いな
当麻の過去とか、インデックスの過去とか、美琴のレベル5認定のときの話とか
まあ、かまちーに期待したほうがいいが
そこまで書いてくれるか不明なのがな

105 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/18(土) 21:30:04 [ Xue4wMoo ]
四巻あたりで話だけ出たねーちんVS獣王の話とか読んでみたいな。

106 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/19(日) 00:19:54 [ VuQ7B.Lo ]
俺は神裂ねーちん対兵器の話が気になる。
フルメタのベヘモスみたいな敵だったんだろうか。

107 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/19(日) 01:07:18 [ 0wlQwEHw ]
いやきっと巨神兵みたいなのだよ。

108 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/19(日) 16:31:16 [ /IlgeBtQ ]
>>106
ねーちんはラムダ・ドライバの斥力を突破できるだろうか。

109 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/19(日) 22:46:41 [ 5U6plTkw ]
突破は出来んかもしれんが発動前に切り捨てることなら出来ると思う。

110 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/20(月) 08:18:46 [ SvYYfeiw ]
神姉さんがタイマンで勝てない奴が、禁書世界には十人ぐらい居るんだよな。
きっとイギリスが誇る最強の吸血鬼もその中に居る。

111 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/21(火) 17:24:53 [ cOmHwejA ]
日本からやってきた単身赴任の通りすがりのサラリーマンも入るだろうか。入りそうだな。

112 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/22(水) 00:48:47 [ enQb4xuA ]
最終目標は仙人になるための人とかもか。

113 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/22(水) 14:13:26 [ wmLO.tfk ]
>>111-112
なにその皆川亮二作品。

114 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/22(水) 15:46:03 [ LVAsMswo ]
片目が見えないけど、乗り物の腕は神業な人もか。

115 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/22(水) 16:03:14 [ G.J5mkS. ]
あれ、片目見えないってのが今だに信じられないのは俺だけかな……

116 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/23(木) 00:42:38 [ 2dyZi/2I ]
片目が見えないで、あんな運転が出来るのは百舌鳥さんだけです。
朧対ねーちんは興味があるな。

117 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/23(木) 22:44:15 [ ssdoXXeo ]
ボーの分身は幻想殺しで消えるんだろうか?

118 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/24(金) 02:48:42 [ BA59DoL. ]
ありゃ異能でもなんでもない
超スピードによる残像

119 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/24(金) 13:43:02 [ 6NIWp1C6 ]
>ボー
初登場時は絶対ただのザコだと思ってた

120 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/25(土) 00:38:59 [ QkB.Jbxg ]
あそこまでカッコイイやつになるとは正直思ってなかった>ボー

121 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/25(土) 01:07:29 [ 9.atckdA ]
俺は神裂vs忍術を少々のサラリーマンが興味ある。
あの夫婦は、上条夫妻と知り合いって妄想すると面白。

122 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/25(土) 21:26:43 [ 2rQRwI4Q ]
なんかの事件に巻き込まれたときに、
上条夫妻があのバカみたいな幸運で忍術を少々な人たちと知り合うんだな?

水の心(?)を習得する上条さんマジヤバス。
油断しない一方さん相手でも勝てそうだwww

123 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/26(日) 14:29:43 [ uYEdmSFI ]
ガイシュツだと思うが、優のフラグ能力は当麻のそれを上回ると思う俺。
どうでもいいが、染井芳野>>>その他なヤツは結構いそうだ

124 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/26(日) 20:45:38 [ 68R.X.dw ]
つまり染井芳野でヌイた事のある俺は正常ということだな

しかしシスターズがネック>フラグ能力
事件の度に誰かしらとフラグ立てたりポイントゲットしたりはしてるけどな

125 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/26(日) 23:41:12 [ Pr1ApPic ]
染井芳野って、墓荒らしやってるあの女の子だよな。
学園都市に潜入しても可笑しくは無いな。

126 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/27(月) 10:39:39 [ TVC5.nzA ]
お嬢様学校だしな

127 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/27(月) 15:58:13 [ yrYc1xT6 ]
学園都市のツリーダイアグラムは、あの人類絶滅を企てたプログラムを起動できるのだろうか。
あのプログラムの名前って、何だったけ?
ヤーマだったような気がするが。

128 名前:■■■■ 投稿日:2006/02/28(火) 13:44:20 [ SLi6IsFI ]
>>127
始めヤマって読んで「富士山がどうしたって?」と思った俺。

129 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/01(水) 00:17:13 [ gdLKpCH6 ]
>>127
あれはヤバイだろ、対上条さん用最終兵器だ。
水圧レーザーはマジ反則。

130 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/01(水) 00:44:19 [ FCpwGuqg ]
優と上条のコンビか。

神裂ネーチンが戦って、勝てなかった獣王ってジャンの事か

131 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/01(水) 23:57:46 [ hnzBwv2. ]
獣王にも勝ってるはずだぞ。神裂火織に一対一で勝てるものは世界に十人ほどしかいない、それは対人間のみならず対獣王だったりしても同じとか4巻であったと思うが。

132 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/02(木) 16:46:01 [ KpUrqQ0. ]
獣王の正体がただのライオンだったらorz

133 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/02(木) 23:54:14 [ jZKszg9w ]
多分物凄い大きさのライオンだったんだよ。

134 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/03(金) 12:02:06 [ yVwJeVzg ]
そこで褐色皇帝の出番でsくぁwせdrftgyヒヒヒlp

135 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/08(水) 23:01:07 [ LWLbJhtE ]
あげ。職人降臨を期待。

136 名前:----魔術師、アウレオルス=イザード。 投稿日:2006/03/11(土) 01:15:25 [ XvHvkuDs ]
世情とは隔離され、“異端”を生み出し続ける学園。
「―――――なんでオレがこんなトコに・・・。」
「仕方ないじゃないよ、式。橙子さんの頼みなんだから。」
学園都市を訪れた、
静謐なる死の魔眼を持つ少女と少年。

「・・・ん。これで虚数学区に関する情報は全部か、土御門?感謝するよ。」
「良いってことよ。他ならぬ橙子姉ちんの頼みだからにゃー。」
暗躍する、faller825“背中刺す刃”とred456“奇跡を護る者”。

「・・・こいつ、死の線が見えないっ・・・!?」
「コンビニで買ってきた雑誌が帰り道にゴミ捨て場に放置してあったのを目撃して
欝になっていた上条さんはなんかいきなり電波ゼリフを吐く皮ジャン着物女に
出会いました、・・・・・・不幸だ・・・。」
交錯する、“幻想殺し”と“直死の魔眼”。

「神裂火織。聖人たるお前の力、私が貰い受ける。『 』には程遠いが、仕方あるまい」
「私を聖人と知ってなお襲うとは・・・何者ですか、あなたはっ!」
「―――――魔術師、荒耶宗蓮。」
女教皇と、結界の魔術師。

「へぇ・・・レールガンって言うんだ・・・。すごいね、ソレ。」
「え、そ、そんなことないです!あの、えっと・・・ごにょ・・・。」
“探す者”としての力に長けた少年と、災害級の“超電磁砲”少女。

やがて、物語の歯車はかみ合い、運命は加速する。

「ふぅん・・・キミが噂の“禁書目録”だね。ボクに力を貸しておくれ。
あの憎き“痛んだ赤色”を殺すために。」
「コーネリウス=アルバ・・・アグリッパの末裔・・・。」
齢50歳を超える青年魔術師と、10万3000冊の魔道書を抱えた少女。

「彼女に手を出させるわけにはいかない・・・。しかし、ボクのイノケンティウス
では稀代の魔術師コーネリウス=アルバには敵わない・・・。だから、キミたちの
力を借りたい。上条当麻、両儀式。」
魔術師、ステイル=マグヌス。

すべてが交錯して動き出す時、あの■■にスルー以外の伝説がーーーっ!?

ディープブラッドに引き寄せられて現れた、『ある生き物』。
「我が名はネロ。朽ちず蠢く吸血種の中にあって、混沌と称され恐れられるもの・・・。」
「うふふ・・・かなりピンチ。でもメインキャラで出られるからいいの・・・。」

あ、作品違ったんでやっぱナシで。

「・・・・・・・・(涙」

「ククク・・・式・・・お前はオレのものだ・・・。」
両儀式を追って現れた、「捕食者」の根源を持つ者。
「うぎゃあっ!ぐぼげぇぇぇぇぇぇっ!!」
「はーはっはっはっ!!悪役顔キャラならもう十分オレ様だけで役は足りてんだよ
足りてんデースヨー?根源がどうしたってぇー?お前の根源が「捕食者」だってぇんならオレ様は

―――――「一方通行」ってぇところかな?ぎゃはははははっ!!!」

・・・・・リオの出番はここまでです。

とある境界の直死の魔眼(1)
電撃講談社より近日販売ーーーーー!!

・・・ごめんなさい、妄想が暴走しました。
・・・っていうか、書いてる途中で思ったが、月姫だと■■最強説が急ふじょ(ry

137 名前:----魔術師、アウレオルス=イザード。 投稿日:2006/03/11(土) 01:21:14 [ XvHvkuDs ]
ちなみに橙子氏の魔法名はマンション戦での
「数え切れない奇跡の上に積み重なったこの日常を護りたいから」的なセリフから。
もっと格好良いのあったらそれで。

・・・そんなわけで「からきょう」のキャラ(つってもトウコとアラヤとアルバくらいしかおらんが)
の魔法名を考えてみよう!・・・・すいません、調子に乗りました。

138 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/11(土) 01:57:16 [ 5MLqIvX. ]
ステイルとアルバは遭遇戦だとステイル不利だけど。
ルーンの配置をすませてあるならステイル有利だといってみる。
まあ、それはともかく、ありがとう。

139 名前:----魔術師、アウレオルス=イザード。 投稿日:2006/03/11(土) 02:15:10 [ XvHvkuDs ]
でも、ステイルより遥かに強い神裂ですらロンドンで10指。
で、コーネリウスは『一応』、世界最高レベルの魔術師(トウコやアラヤ)と
肩を並べてるわけだから、ステイルとはレベルが違うかなー・・・と思ってこうしてみた。
一応有名魔術師の血統らしいし。
・・・はっ、でもそれだと2巻でステイルは同じく有名魔術師の血統のアウレオルスと
タメ張ってるようなもんだったからそこまで差は開かないか・・・・。
すげぇな身長2m14歳。まるで針井堀田亜君のような天才ぶりだ。(彼は13だった気がしたが)

140 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/11(土) 02:48:30 [ IYk6AAr. ]
……ラテン語で「赤」はレッドではなくイグニスだと無粋な突っ込みをいれるオレ。

141 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/11(土) 02:49:42 [ IYk6AAr. ]
……間違えた、イグニスは火、赤はルブルムだった。

142 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/11(土) 04:41:53 [ H0RQiu.w ]
荒耶は上条の右手を研究する方が良いと思う。
あいつの右手は「」に繋がってないかなと思うんだよ。

143 名前:----魔術師、アウレオルス=イザード。 投稿日:2006/03/11(土) 16:59:52 [ XvHvkuDs ]
ここに魔法名を今までずっと英語だと思っていた馬鹿がいましたごめんなさいすいません。

・・・そっか、当麻の右手があったか・・・。それだとつまり、どんな異能も
「 」に戻してるってことだろうか?というくらいしか思いつかない馬鹿なオレ。

144 名前:----魔術師、アウレオルス=イザード。 投稿日:2006/03/11(土) 18:46:00 [ XvHvkuDs ]
あの予告の空想が一部具現化したので投下してみる。


「仕方ないよ、式。橙子さんの頼みなんだから。」
伽藍、という下駄の音とともに、少女、両儀式は気だるげな顔で辺りを見回した。
大型二車線の道路、某大手チェーンのコンビニ、行き交う人々・・・・極普通の町並みがそこにある。
しかし、よく見れば微かな違和感に気づく。
カラカラと回る風力発電のプロペラ、行き交う人々の平均年齢の低さ、自販機にならぶ劇薬(いちごおでん)。
『学園都市』。
厚い塀で仕切られたその中で、超能力者を『科学的に』生み出し続ける異端の都古もとい都。
なんでこんなところに・・・口に出た思いを瞳にのせ、隣の青年を睨む。
「それはコクトーだけだろ。オレは別に橙子の弟子でも社員でもないんだし。」
残暑の中、漆黒の衣服をまとった青年、黒桐幹也は、害意を全く感じさせない顔で苦笑した。
「はは、まあそうなんだけどね。じゃあ、式は帰る?」
「っ、・・・・キタナイぞ・・・。」
恨めしそうな顔で、式は幹也を睨んだ。
こんな得体の知れない町に恋人を放り込んで平然としていられるほど、式の幹也への想いは小さくない。
それをわかっていて、それでも橙子の頼みを断らなかった幹也。
「コクトーはいつもそうだ。ヒキョーだ。腹黒だ。犯罪だ。」
ぶつぶつと不平を漏らす式をはいはいとあしらいながら、幹也は数日前に橙子と交わした会話を思い出していた。


彼が彼女の工房について早々、橙子は言った。
「DEAD OR ALIVE。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
ぽかんとする幹也を前に、彼女は焦らすように煙草を口に含み、ふっと息を吐く。
「何、よくある手口だよ。最初に意味深な言葉を吐くことで相手の興味を引き立て、続く本題を聞かせようとする・・・
どうだい、続きが気になるだろう?」
「(そういうのはバラしたら色々と効果が半減する気がするんですが・・・)・・・ええ、まあ・・・。」
あいまいな答えに少し不満そうな顔をしながらも、橙子は煙草を置き、口を開いた。
「さて、黒桐君。今日は給料日だね。」
「そうですね。」
「昨日私はそのための金も含めて我が家には40万あると言ったね。」
「言いましたね。」
「そして昨日、君が帰った後少しふらついていたら、たまたま、かなり年代物の
魔道具“アンティーク”を見つけたんだ。」
「そうなんですか。」
「歴史的にもそれなりに貴重な物だったから、早く買わないと誰かに買われてしまうかもしれない。
そこで私はその魔道具“アンティーク”をレジに持っていった。すると店主はこう言った。
「40万円になります。」」
「・・・・・・・・・(黙」
「そしてここに成功報酬数百万、しかも依頼遂行中は食費と寝所すべて向こう持ちという極めて怪しげな依頼がある。」
「・・・・・・・・・(呆」
「黒桐君。事務所の未来は君の双肩にかかっている。」
「・・・・・・・・・(疲」
依頼を受ける以外に道は無かった。
これ以上思い出すのも嫌なので、後は要点をつまんで思い出すことにする。
依頼内容は、学園都市のLV5の調査。
彼ら7名の能力、戦闘力をできる限り調べてくること。
「私もついて行ってやりたいのだがね、あそこに魔術師が入るのは、よほどの特例でもないと許されない。
世界のバランスが崩壊する危険を孕んでいるからな。たとえ私のような隠居魔術師でもね。そういう訳で私は別の仕事を
受けるから、こちらは君に任せた。ああ、君の彼女は連れて行って大丈夫だ。直死の魔眼“アレ”はぎりぎり、魔術の範疇ではないから。」

145 名前:----魔術師、アウレオルス=イザード。 投稿日:2006/03/11(土) 18:46:38 [ XvHvkuDs ]
(続き)
そして、依頼主のコネにより「研究所所員」という形で正面ゲートを突破して、今に至る。
回想を終了し、横でまだ続いている式の言葉を聞き流しつつ、これからどうしようか・・・と考えていた幹也は、
前を走ってきた少女にぶつかった。
「おっと。」
ぶつかってよろめきながらも、自分よりも大きくよろめいた少女の方を支える。
「あ・・・、すいません。」
体勢を立て直した少女は、軽く頭を下げた。
ああ、いえ、と答えた幹也は、ふと少女の着ている制服に気づいた。
プリッツスカートに半そでのブラウスと袖なしセーター。
調査対象であるLV5を2人も抱える超名門女子校・常盤台中学の制服だった。
何とか情報を引き出せないかと思い、とりあえず話しかけてみた。
「どうしたの?そんなに急いで。」
「え?えっと・・・。」
少女は答えに詰まったように黙り込んだ。
不思議そうに少女の顔を見た幹也は、その時気づいた。

少女が『LV5を2人も抱える学校の生徒』なんてものじゃなく、正真正銘の『LV5』だったということに。

「えっと・・・その、ちょっとアクセサリーを集めに。」
少女、御坂美琴は、愛想笑いとともに答えた。



そこは、科学が生んだバベルの塔。
入り口も出口もなく、ただ、1人の『人間』が永遠に住まい続ける、墓標のような遠坂じゃなかった塔。
そこに住まう『人間』は、決して破れない硬質のビーカーの中に、逆さで佇み続ける。
男のように女のように、大人のように子どものように、聖人のように囚人のように。
『人間』アレイスター=クロウリーは、ビーカーの前に立つ人間に向かって笑った。
「私の命通りに動いてくれたか、土御門。」
対するアロハシャツの青年、土御門元春は、無感情な顔でうなずいた。
「お前の言った通り、教会の中のタカ派を動かして蒼崎橙子にLV5の能力の調査を依頼させた。お前の想定通り、
両儀式と他1名が研究所所員を装い侵入してきた。」
正面ゲートで撮られた、黒髪の少女と青年の写真を見せる。
アレイスターは、満足そうな笑みを浮かべた。
両者口を開かず、場に沈黙が訪れる。
「・・・アレイスター、お前は何を考えている?」
沈黙を破ったのは土御門だった。
「“幻想殺し”に“吸血殺し”、お次は“直死の魔眼”か。おまけにこちらの能力者の情報を
与えるような真似をして・・・いつからお前は敵に塩を送るような人間になった?」
アレイスターは、変わらずビーカーに浮いて笑みを浮かべていた。
その笑みが、より深まる。
「『手順』のためならば、私は敵に塩も送る。どの道塩は、単なる材料の1つに過ぎない。賢者の石ならばいざ知らず、
塩があるからと言って、錬金術師が真理に至れるわけではない。塩や硫黄や水銀、それ単体に意味は無い。正しい知識があってこそ、
それらは初めて意味を為す。所詮は、そういうことだ。『手順』を省略できるのならば、
塩などいくら撒いたところで痛くはない。」
「・・・・・・・・。」
黙る土御門を前にアレイスターは詠うように、
「空想は具現化する。幻想は殺される。全ての死を視る少女は果たして、幻想殺しに何を視るのだろうか、ね。」
(続くらしい)


・・・書いてみたが、人のキャラを動かすのは難しいな・・・。
アレイスターの資料が2巻しかない(1、2、3、5、8巻しか持ってない。)んで苦労した。
しかもその苦労が報われていないのは文章を読めば明らか。
パロディってのは難しいな

146 名前:メルブラ戦闘前会話風に1ネタ 投稿日:2006/03/11(土) 19:37:32 [ r.zubUBE ]
「ドーモ始めまして。あなたが上条当麻さんですね?」
「(うわ、なんですかこの割烹着に頭巾というあからさまに怪しげな人は!?
 なんだか新たな不幸の予感がビシビシするんですけど!?)」
「細かい説明は面倒なんで用件だけ言いますね。ぶっちゃけ私に改造されてみませんか?」
「勝手に話進めた上にナニ怖い事言ってんだテメェは!?」
「『たった一つの命を棄てて!
  生まれ変わった無敵の体!
  幻想殺しが叩いて砕く!!
  当麻がヤらねば誰がヤるーっ!!!』
 というわけで対秋葉様用最終兵器、通称改造当麻計画、はっしーん!!」
「ってオイこっちの話聞けよといいますか何かアイツ空飛んでませんか!?!
 ふ、不幸だぁ〜〜〜!!!」



 当然、戦闘の勝敗によってルート分岐。

 勝利:志貴との共闘
 敗北:シエル共々洗脳

147 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/12(日) 00:22:09 [ /h8n/2Vw ]
>>136
嘘予告ネタはもっと短い方が俺的に好感触なんだが。読みやすいし。
あと魔法名だけど、空の境界にないものを無理やり捏造するよりも、
禁書キャラたちが所属する魔術体系特有のもの、というコトにした方が良くないか?
オリ設定を好まない奴もいるし…………俺とか。

批判的な意見ばかりですまない。だが、悪くない文章だとは思う。
これからもガンガッテくれ。

148 名前:----魔術師、アウレオルス=イザード。 投稿日:2006/03/12(日) 00:32:37 [ n.LClZMs ]
>>147
感想ありがとう。とても参考になったし、正直、自分の趣味のお仕着せになって
煙たがれないだろうかと心配していたからストレートにうれしい。
そうか・・・オリ設定が苦手な奴もいるか。
了解。
正直橙子の魔法名は自分でもセンス0だと思ってたし、うん、その設定でいきます。
応援感謝w

149 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/12(日) 01:43:38 [ /h8n/2Vw ]

「えー、なにやら背後からアブない気配というか殺気のようなモノを感じるのですが気のせいでせう?」

 学園都市の裏路地。
 ”運悪く”こんな時間まで不良に追い掛け回され、ようやく撒いたと思った矢先のコト。
 上条当麻はピンチの予感に身を強張らせていた。

「あー、これがあれですか。通り魔ってやつですか。しかしこういうのって普通は女を狙うヤツが多いんじゃないんですかー!?」

 きゃー、と女々しい悲鳴を上げて上条は走り出す。

 バタバタと音を立てて駆ける上条。
 スタスタと着いて来る通り魔(?)。

「――――、やばッ!」

 そして”運悪く”、上条は袋小路へと足を踏み入れてしまった。
 逃げ場はない。入り口に戻ろうとしても、もう手遅れだ。
 振り向けば袋小路の入り口に、通り魔(?)らしい男が立っている。

「よう、そんなに慌ててどうしたんだ?」

 男は心底不思議そうにそう言って、不気味に口を歪めてシニカルに笑った。
 その笑みを見て、自分が追い詰められたコトを上条は自覚する。

「どこの誰か知らねえけど、まあ”運が悪かった”と思って諦めてくれや」

 袋小路の入り口にいるのは異様な外見の小柄な男。
 色の抜け落ちた髪。顔全体を覆う禍々しい刺青。極め付けに、耳のピアス穴には携帯ストラップがぶら下がっている。
 何かを勘違いしているような、非常に現実味のない刺青の男。
 その男を現実と結び付けているのは、現実味があり過ぎるほどにあると言える程、鈍い光沢を放つナイフだった。


「そんじゃぁいっちょ……殺して解して並べて揃えて晒すとしますか」


とある魔術の禁書目録×戯言シリーズ(零崎シリーズ)

なんとなく書きたかったから書いた。次は何にしようか迷っている。

150 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/12(日) 04:16:06 [ vYb3G1rA ]
オリ設定やクロスオーバーは冒頭で宣言してくれてるとありがたいな
読者選ぶし、特に該当作品読んでるのが前提のクロスオーバー

151 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/12(日) 12:20:38 [ /h8n/2Vw ]
>>150
賛成。クロスの場合は、名前欄か目欄に書き込むのもいいな。

152 名前:とある空の直死の魔眼 投稿日:2006/03/13(月) 17:09:45 [ 8qsU7G12 ]
「ふう・・・。」
軽くため息をついて辺りを見回しながら、式は琥珀じゃなくて小道を歩いていた。
あれから。
ぶつかった少女が調査対象の1人であることに気づいた式たちは、とりあえず彼女と
なんとか話を続けようとした。

「へえ、アクセサリー集めか。僕たちもちょうど探してたところなんだ。良かったら案内してくれない?」
「えっ?えっと、は、はい・・・。」
一瞬渋った少女の様子を幹也が見落とす訳も無い。
まだ何やら悩んでいる少女をわき目に、式に耳打ちしてくる。
「式。この子、なんか裏があるみたいだ。僕がついて行って聞き出してみるから、君は先に
滞在先の方へ行っててくれない?」
大切な話をするならば3人よりも2人きりの方が断然良い。
黒ずくめだがそれでも「まあ、あんなのもありか」ですませられ、かつ優しげな風貌でおまけに
“探す者”としての才能もある幹也と、皮ジャンに着物という奇天烈スタイルで周囲の目を引きまくり、
美人ゆえに遠い世界の人に見え、能力が破壊専門の“直死の魔眼”という両儀式。
どちらが最適かは言うまでもなかった。

「じゃあ、案内してくれるかな。」
「あ、はい。・・・あっちの人は一緒に来ないんですか?」
「ああ、僕たち今日ここに来たばかりでね。下宿の方にも早く顔を出さなきゃいけないんだ。
でも明日から仕事だし、今日中に見つけたいなー・・・と思ってたから、役割分担さ。」
よくもまあ口からそうぺらぺらべらべらと嘘が出てくるなと呆れながら、式は歩いていく2人を見送った。

一応見た目は普通の少女に見えたので幹也が1人になるのを許したが、それでもあまり良い気分はしない。
幹也が調べた資料によると、彼女たちは超能力を使うために、投薬や処置によって
脳の回路を拡張しているらしい。
偶々前を歩いてきた少年に目をやる。
極々普通の高校生だった。
自分たちと何も変わらない。
それでも、『違うのだ』。
自分たちとは、決定的に。
と、ふと式は違和感を覚えた。
式の持つ“直死の魔眼”は、物の壊れやすい部分・・・「死の線」を視て、捕らえる魔眼だ。
最初の頃は能力を制御できず、見るもの全てに死の線を視てしまっていたが、今では落ち着き、
自分の意思でスイッチのオンオフができるようになった。
だが、あまり対象を凝視し過ぎると、少しとはいえ視えてしまうのだ。
それが。
『この少年には、それがない』。
いや、よく見れば、うっすらと線が浮かび上がってきた。
だが、どうしても。
少年の右手だけは、決して線が浮かび上がらない。
「・・・死の線が・・・見えないっ・・・!?」
ぎょっとして、思わず式はつぶやいていた。
それに気づき、怪訝そうな顔で少年は式を見る。
そして、式の奇怪な格好を見て、うんざりとした顔をした。
「コンビニで買ってきた雑誌が帰り道にゴミ捨て場に放置してあったのを目撃して
欝になっていた上条さんはなんかいきなり電波ゼリフを吐く皮ジャン着物女に
出会いました。・・・・・・不幸だ・・・。」



153 名前:とある空の直死の魔眼 投稿日:2006/03/13(月) 17:10:38 [ 8qsU7G12 ]

幹也と美琴は、2人並んで道を歩いていた。
美琴は一応の自己紹介を終えた後、時折来る幹也の質問(学校は楽しい?とか、そんな
当たり障りのない話題)に愛想笑いを浮かべつつ、自分の知る
適当な秋葉ではなくアクセサリー店へ向かって歩いていく。
外面(そとづら)では笑顔を浮かべているが、その心は穏やかではない。
(ったくもー!よりにもよってこんな時にー!早く行かないと・・・!!)
数週間前に起きた、『残骸“レムナント”』事件は後輩の白井黒子が巻き込まれたものの、
なんとか防ぐことができた。
だが、第2の『残骸“レムナント”』が発見されたことを知り、慌てて現場へ向かっていたところで、
この青年とぶつかってしまった。
事は一刻を争う。遊んでいられる時間は無い。
「あの、すいません。あたし、」
「君、何を隠してるの?」
用事があって・・・と続けようとしたことろで唐突にかぶせられた声。
絶妙なタイミングで、美琴の言い訳を封じた。
しかし、その彼の顔に、計算高さは感じられない。
疑うような不信の視線でも、刑事や探偵のように鋭い眼光でもなく、優しく、空っぽの容器のように、
ただ相手が真実“お茶”を話して“注いで”くれるのを待つ、黒く澄んだ瞳。
「ごめん。君が本当にアクセサリー集めをしてるように、僕は思えない。話して、くれないかな?
出会ってすぐの相手に何言ってんだって自分でも思うけどさ、君の・・・その、なんだか無理やり
苦しいのを我慢しているような顔を見てたら、放っておけなくてね。」
困ったように青年は苦笑した。
何故だか美琴は、その青年にデジャブのような胸の高鳴りを感じた。
心臓から出た血が、一瞬で耳たぶまで行ったかのような、熱を帯びる感覚。
それを一瞬で振り払い、頭の中で首を振る。
(駄目駄目。一般人を『あんな世界』に巻き込めるわけない!)
「御坂さん?」
はっと我に返り、美琴は幹也の方へ顔を向ける。
「なんでもないんです。」と言葉を紡ごうとする。
ただの青年が、自分たちのような『怪物』の世界へ足を踏み出さないために。
彼の平穏を、踏みにじらないために。
『あの世界』は、興味本位や安い同情で入って行って良い世界ではない。
「なんでも――――」
『どかねえよ。』
そこで、
唐突に、
美琴は、デジャブの正体に気づいた。

かつて誰にも聞こえないように『たすけて』とつぶやいた少女を助けた少年。
自身の正義を押し付けるような真似もせず、正面から少女に向かっていき、少女を信頼して、
まっすぐに向かってきた少年。
青年と少年は、同じだった。
美琴と別れたフリをしてあとをつけるでもなく、青年は正面から美琴に向かった。
良かったら、君の悩みを教えてくれないか、と。
それは、あの少年の在り方と同じだった。
この青年ならばきっと、自分の告白を受けても、何の迷いもせずに一歩を踏み出してくれる。
受ける印象が全く違う2人の間に、美琴は同一のものを感じ取った。
「っ、―――――ないんです。」
それでも、美琴は言葉を続けた。
この青年ならばきっと、自分の告白を受けても、何の迷いもせずに一歩を踏み出して『しまう』。
もう、来て欲しくなかった。
少年よりも優しく、少年よりも儚そうな、この青年には。
いや、本当はあの少年やあの後輩にも、来て欲しくはない。
嬉しいけれど、来て欲しくはない。
傲慢だ。
自分1人では解決できないくせに、それでも誰かの助けを拒む。
だから、妥協した。
嫌だったけど妥協した。
あの少年とあの後輩は。
けれど、コレくらいの『ワガママ』は許させて欲しい。
『アイツ』に似ているこの青年の日常を守るくらいのワガママは。
「そう・・・。」
青年は、美琴の考えが全てわかっているかのように悲しく笑い、しかしなおもしつこく
たずねるようなことはしなかった。
「・・・ああ、そう言えば用事があったんだ。ごめん、折角案内してもらってたのになんだけど、
僕、すぐ行かないと。」
まるでアクセサリー探しが美琴の悩みを聞くための口実であったかのように(事実そうなのだろう)、
幹也はそう言って、ポンと美琴の肩に手を置いた。
そしてくるりと、歩いてきた方向へ振り返る。
と、思い出したように振り返り、もう一度謝った。
「ごめんね。」
役に立てなくて。
「・・・いえ・・・。」
美琴の言葉に苦笑すると、幹也は帰り道を歩き去って行った。
「・・・・・・。」
その姿をしばらく見つめていた美琴だったが、やがて意を決したように顔を引き締めると、
幹也に背を向け、走り出した。
『自分の世界』へ。

154 名前:とある空の直死の魔眼 投稿日:2006/03/13(月) 17:11:30 [ 8qsU7G12 ]

「・・・・・・・・さ、て。」
美琴が走り出したことを確認した幹也は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
ごそっ、とポケットからなにやら黒い長方形の物体を取り出す。
トランシーバーほどのサイズで、中央には円形のモニターがつき、小さな光点が1つ点滅している。

それは先ほど幹也が美琴の肩に手を置いた際につけた、発信機の位置を示していた。

「・・・・・・・。」
幹也はそれを黙って見つめる。
確かに美琴の思ったとおり、幹也はあの少年のように積極的に誰かを助けようとする人間で、
あの少年よりも優しく、あの少年よりも儚げな印象を受ける人間だ。
それは正しい。
だが、彼女は気づいていなかった。
幹也はあの少年よりも年上だった。
大人に近かった。
上条は正面から行って跳ね返されても、それでも正面から信頼して突き進む人間だった。
だが、幹也は跳ね返されれば、手段を変えて、少し汚い手段でも、次善を取る。
己のエゴのためではなく、あの少女のために。
それは裏切りであり自己の価値観の押し付けである。
だが。
「『それが何だって言うんだ。』」
今は行動を別にしている、両儀式を、想う。
半分とはいえ、一度は自分が壊した少女。
カラっぽになって、ボロボロになって、心を磨り減らした少女。
たとえどんな理由があろうとも、あんなことを繰り返して良いわけがない。
ただ、少女が学園最強のLV5であることくらいしか、彼女のことは知らない。
もしかしたら笑ってしまうくらい大したことの無い理由で、尾行してきたことを笑われるかもしれない。
あるいは、本当に重要なことだったとしても、幹也にできるようなことは何も無く、
ただの足手まといになるかもしれない。
それでも。
たとえそれでも、1%でも「少女が幹也の身を案じて誤魔化した」なんて可能性が残っている限り、
幹也は止まらない、止まれない。
ここで、「そんなわけないか」と言い訳をして逃げたなら、自分はこれから両儀式に、一体どうやって
向き合えというか。
否。
「式に顔向けできない」とか、そんなのも言い訳だ。
自分が助けたいと想うから、助ける。
結局は、それだけの話。
たとえ少女が幹也の助けを望んでいなくとも。

幹也は少女を助けたかった。

そして、彼は点滅する光点を追って、歩き出す。
奇しくもその姿は、『レディオノイズ』計画を知った当麻が美琴を探し始めた時の背中に似ていた。

・・・自分で言うのもアレだが、話が変な方に転がってきたな・・・
あ、ちなみに>>144からの続きね。

155 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/13(月) 23:40:51 [ TeRTlM52 ]
ツッコミを入れさせてもらうと、電波を目視するスキルまで持ってるビリビリに発信機は通用しないんじゃないか。

156 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/14(火) 19:20:20 [ oOCeON7w ]
>>155
あれって常時発動なのか?いつも電波とか見えてるとしたら
すっげぇ世界が不気味だと思うんだが・・・。
3巻や5巻をチラっと見たが、意識的にするものか常時発動かは
書いてなかったように思ったが・・・。
ま、もし常時発動なんだったら、それに合わせて理解の話を
修正するんで、見つけた人レスよろ。

157 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/14(火) 20:50:39 [ oOCeON7w ]
ミス
理解→次回

158 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/15(水) 14:49:43 [ EyGCXQ.6 ]
白黒は常時自分の座標を認識してるから
レベル5かつ一流の電撃使いのビリビリが自分の周囲の電気系の
ことを把握していないとは思えない。
目で見えなくても磁場がおかしければわかりそうだ

159 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/26(日) 20:19:04 [ CoV/fWRk ]
禁書「ねぇねぇとうま。VIPって何?」
当麻「(ビクッ)は、はははっ、何を言ってるんだ? VIPってのは偉い人の事に決まってるだろ(ドキドキ)」
禁書「でも、とうまのこの『ぱそこん』って奴についてるテレビにVIPって書かれてるよ?」
当麻「(ギクッ!!)あ、ああ、え〜と、ほら、あれだ!!このパソコンってのは調べものをするものだって教えただろ? もしお前の上司のお偉いさんが来た時に失礼にならないようにマナーを調べてたんだよ!!」
禁書「へ〜、勉強熱心なんだね。とうま、偉い偉い」
当麻「お、おう!! もっと誉めろ!! は、はははは!!!」




当麻「ふぅ、危うくバレる所だったぜ

【ロリ】空から女の子が降ってきた【シスター?】part80



160 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/26(日) 20:35:20 [ 38O1tGqo ]
>>159
残念だけど当麻は1刊の最後に記憶喪失になってる。

のでこうスレを立てるはず。
【ロリ】女の子が噛み付いてくるんですが【シスター?】part81

161 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/26(日) 20:47:24 [ sz1ZT7ZM ]
>>160
しまった、そうだったな・・・ってスレが進んでる!!ww

まあ本スレに出てきた話題に絡めて適当に書いたSSだからな

162 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/26(日) 23:33:04 [ iXEizNak ]
カナミンのウソ予告って勝手にこっちに張ったらまずいよな?
元ネタが混沌としててヤバイんだがww

163 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/27(月) 00:55:00 [ L6.plNLw ]
とうまって羽根をくらう前から記憶喪失だったっけ?

164 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/27(月) 01:21:31 [ 3DqN.kyQ ]
>>162
俺はいいんじゃないか?と思うんだが。まあネタ予告用の新スレ立ててもいいし

>>163
羽くらった衝撃で記憶喪失になったんだよ

165 名前:■■■■ 投稿日:2006/03/31(金) 22:30:11 [ lsei/AqI ]
Arcadiaで書かれている禁書SSを挙げてみる。


「とある不幸の――」
ttp://mai-net.ath.cx/bbs/ss_t_bbs/tree.php?all=4327&bbs=etc

「とある超能力の一方通行」
ttp://mai-net.ath.cx/bbs/ss_t_bbs/tree.php?all=2747&bbs=etc
















































「とある少女の幻想殺し」(TS注意)
ttp://mai-net.ath.cx/bbs/ss_t_bbs/tree.php?all=4508&bbs=etc

166 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/08(土) 17:46:19 [ FXK1zkRk ]
カナミン以外の嘘予告もここに貼って良いんじゃね
というか是非お願いします

167 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/11(火) 00:55:47 [ BrEmgdZo ]
九巻を読んで思いついたネタを投下してもいいでしょうか。
十巻の嘘予告ならぬ嘘展開予想ネタですが。

168 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/11(火) 08:37:20 [ P1ivpK/2 ]
ネタはいつでも大歓迎の方向で

169 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/11(火) 09:35:32 [ BrEmgdZo ]
では。

※注1 このSSには九巻のネタバレが含まれます。ネタバレを望まない方は目を閉じ息を止めて一気にスクロールしてください。
※注2 このSSは十巻の展開予想SSです。あくまで自分がこうなるだろう、あるいはこうなって欲しいと思う幻想です。万が一実際の十巻とネタがかぶってしまったとしても、当方は一切責任を負いません。
※注3 いきなり終章です。
※注4 私は吹寄制理さんが大好きです。



















終章 それぞれの幸い Yellow_Yellow_Happy

 そして、吹寄制理は目を覚ます。
 長い時間眠っていたせいで開きにくい目蓋をこじ開けると、最初に見えたのは真白い天井だった。寝ている間に着替えさせられたらしい病人着の肌触りと鼻につく薬品の匂いが、ここが病院であると告げる。
(そうか……あたしは日射病で倒れて……)
 少しずつ記憶が甦ってくる。
 中学生同士の玉入れの中に上条当麻を見つけ、注意しようと声をかけた途端、いきなり倒れてしまったんだった。
 不覚、という思いよりも先に、上条が最後に見せた辛そうな顔が思い出される。
 吹寄が倒れたのは自分のせいだとでもいうように、抱えきれないほどの後悔と情けなさに彩られた苦い表情を思い出す。
 彼はまだ、あんな表情をしているのだろうか。
(…………、)
 緩い体に力を入れる。どれだけの時間寝ていたのかはわからないが、まさか大覇星祭が終わっているということはあるまい。
 自分が台無しにしてしまった分を埋め合わせるだけの時間は、残っているだろうか。
 ベッドに肘をつき、上体を起こす。消耗しきった体はまだまだ睡眠を欲していたが、俯くクラスメイトの姿を思い浮かべ、吹寄はそれこそ全身の力を振り絞ってベッドの上に起き上がった。
 胸までかかっていた薄い毛布を跳ね除け、縦に九十度向きを変えた視界の中に、

 上条当麻がいた。

170 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/11(火) 09:36:35 [ BrEmgdZo ]
「…………貴様……!」
 ツンツンした黒髪のクラスメイトを視認した瞬間、吹寄がしたことは枕を持ち上げることだった。
 濡れた下着を見られても、着替え中に乱入されてもいつも通りだった顔が一気に紅潮する。こちらの意識がない内に寝所に忍び込まれ、もしかしたら寝顔を見られたかもしれないということが不自然なくらい吹寄を動揺させた。まずこの枕で叩き起こしてその後包帯の上からゲンコツを突き刺してやろうと決意して大きく右手を振りかぶり、
「………………………………………………………………、」
 やめた。
 吹寄は枕を毛布越しにふとももの上に乗せる。
 別に、怒りと羞恥心が無くなったわけではない。むしろ爆発寸前で強引に押さえつけてしまったため、行き場を失った感情が胸の辺りで燻ぶっていて気持ち悪いくらいだ。
 ただ、
 よく見れば、上条は傷だらけだった。
 額といわず腕といわず脚といわずどこもかしこも包帯まみれで、いくら大覇星祭でもここまでひどい怪我をするはずがないだろうってくらいにボロボロだった。
 さらによく見れば、上条は眠っていた。
 病室の床に座り込み、吹寄のいるベッドの正面の壁に背中を預けるようにして。
 完全に脱力した四肢からは、体力のかけらも残っていないことがうかがい知れる。呼吸に合わせた緩やかな肩の動きがなければ、死体と思い違えていたかもしれない。
 そして、もっとよく見れば。
 こんなにボロボロなのに、
 こんなに疲れきっているのに、
 上条当麻は、笑っていた。
 まるでこれまで背負ってきた苦悩の全てが消え去ったような、この上なく安らかな眠りだった。
「…………えっと」
 吹寄制理は考える。
 上条当麻は何のためにこの病室に来たのだろう。
 傷だらけで、恐らく這うようにしてたどり着いたこの病室で、上条は何を見たのだろう。
 何を見たから――上条はこんなにも幸せそうに眠れたのだろう。
「…………、」
 吹寄は自分の体を観察する。
 気分はかなりよくなっている。熱っぽい感じもしないし、喉が渇いて堪らないということもない。
 全快とは言い難いが、あと一日くらいゆっくり休めば、残りの日程に参加できるようになるかもしれない。
 だから、さっきまでの彼女の眠りは比較的穏やかなものであったはずで。
「…………、」
 吹寄は想像する。
 もし彼女が倒れたのが日射病なんかではなく、何か異常な原因があったとしたら、あんな顔で叫びを上げたこのクラスメイトは、なんとなく、多少の無理をしてでもその原因をどうにかしようとするのではないだろうか。
 そして体中に傷を負って、原因を排除できた後、誰より安静が必要なはずのこのクラスメイトは、自分がやったことが本当に上手くいったのかどうかを確かめようとするのではないだろうか。
 痛みを堪えてドアを開き、ベッドの上で小さな寝息を立てている少女を見つけたのなら、このクラスメイトはきっと微笑むのではないだろうか。
 後は、そのまま崩れ落ちるように。
 やり遂げたというように。
 こんな風に眠るのではないだろうか。

171 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/11(火) 09:37:19 [ BrEmgdZo ]
「…………馬鹿馬鹿しい」
 吹寄制理は自分の想像をその一言で片付けた。
 そう、そんな馬鹿馬鹿しいことあるわけないのだ。いつもいい加減でやる気の感じられないこの少年に、そんな漫画の主人公みたいな真似ができるとは思えない。またどこかで女性絡みのトラブルに巻き込まれて、命からがらここに逃げ込んだとかいうのが関の山だろう。
 ――だけど。
 上条当麻は、笑っていた。
 それだけは疑いようの無い、吹寄の目にはっきりと映っている事実だ。たとえ真実がどうであれ、事実は今ここにある。
 泣き出しそうな悲しみに打ちひしがれ、忘れたいほどの情けなさに俯き、叫んだクラスメイトが、この病室に来たことで笑えるようになったというのなら、それは悪くない。
 まったく悪くない。
(……あー、なるほど)
 吹寄は理解する。 
 話に聞いていただけで、どんなものなのか見当もついていなかったけれど。
 よりにもよって、自分が実感するなんて思ってもみなかったけれど。

「これがカミジョー属性ってやつなわけね。まったく、悪くないにもほどがあるわよ」

 誰に対して怒っているのか、それとも本当は怒ってなんかいないのか判断のつかない独り言をつぶやいて。吹寄は毛布をかぶり直してもう一度眠ることにした。
 次に目を覚ました時、まだ上条当麻が同じ場所で寝ているようなら、今度こそ枕をぶつけてやろうと心に決めて。
 眠りに落ちる寸前に、吹寄制理は確信した。
 明日はきっと、誰にとっても幸せな日になると。

172 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/12(水) 00:44:51 [ B55ugHjQ ]
制理かわいいよ制理。地の文が原作らしくて良い感じ。
しかし一番最初に浮かんだ感想が「ポケビかよっ!」だった俺に幻想殺し。

173 名前:169 投稿日:2006/04/12(水) 22:26:59 [ 8pJkVxBA ]
>>172
今でもわかる人はいるんだなぁ(しみじみ)。
いや英字の副題つけようとしたら真っ先に思い浮かんだのがこれだったので。幻想殺しどころかむしろありがとう。
また何か思いついたら投下したいと思います。

174 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/12(水) 23:15:54 [ C0bzfGNM ]
>>172-173
ウリナリ!を毎週見ていたからわかるぜ!

175 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/14(金) 01:49:55 [ Nf98NW0. ]
上条の奴、上条の奴、上条の奴、とうとう俺の制理たんを……っ!!
しかし可愛いので禿げ上がるほどGJ

176 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/14(金) 23:02:43 [ qhSLOu4U ]
>>173
よし、次はミーシャ再登場時の場面をサブタイ”Red_Angel”で頼m

    _, ,_  パーン
 ( ・д・)<はいはい幻想幻想
  ⊂彡☆))Д´) >>176

177 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/15(土) 00:43:43 [ jHuFDFR2 ]
>>176
いや、幻想と斬って捨てるにはまだ早い!
まだ早いんだよっ!(´;ω;`)

178 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/18(火) 21:32:04 [ nejaX.HI ]
本スレでも上がってたから張ってみる。

「Fate/とある二人の正義の味方」
http://mai-net.ath.cx/bbs/ss_t_bbs/tree.php?all=2298&bbs=type-moon

179 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/18(火) 23:53:31 [ AXrfzBp. ]
>>178のやつは、どう考えても何かを勘違いしたのが書いてるよな。
上条=正義の味方ってwwwという感じ。ネタとしか思えない。
なんだかなー、というのが感想でした、まる。

正直なところ、生き方が正義の味方に近いのは上条よりも、ねーちんの方だと思うんだけどな。

180 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/19(水) 00:26:37 [ zN81H2Oo ]
同意。
上条は『偽善使い』です。つまりこいつ一巻見てねぇな。

181 名前:169 投稿日:2006/04/19(水) 01:37:39 [ v30zkIcQ ]
とりあえずリクエストに応えてみようと努力した次第でありますが、なんか変なのができてしまいました。
と言う訳で、突っ込みの用意をしてお読みください。
( )で囲ってある部分は禁書名物理不尽ルビだと思ってもらえるとありがたいです。



 第一章 翼なき者たち Red_Angel

 一端覧祭。
 それは全学合同大規模体育祭「大覇星祭」と並び称される、学園都市のもう一つの目玉イベントである。
「一端(花)」、つまり隅っこに咲く一輪の花までご覧あれという意味で名づけられたこのお祭りは、ようするに大覇星祭と同じく全学合同で行う文化祭だ。学区ごとに四〜五校を会場として選出し、そこに各学校の代表がそれぞれ出し物を持ち寄って発表する。巷に溢れたSFXとは比較にならない正真正銘のSience‘non’Fictionを駆使した演劇や映像作品の完成度は、名前だけの名作映画など軽く凌駕する。
 大覇星祭ではどうしても体育会系(スポーツエリート)校に水を開けられてしまう文系の学校では、最初からこちらに比重を置いて準備している場合もあるのだ。
 しかし、会場が限定されている以上一校ごとに振り分けられるスペースと時間はあまり大きいとは言えず、加えて代表選出制であるため、展示、劇や演奏の発表、模擬店などで参加する者以外は大抵ヒマになる。そういった生徒は、のんびり祭りを見て回ったり、大覇星祭で疲れた体を労わるのが常だ。
 規模こそ大きいものの学校ごと、学生ごとの負担は少なく、それでいてしっかり楽しめるというのだから申し分ない。他の学校との交流にもなるし、財布と相談にはなるが、開催中の三日間、学業を忘れて遊び倒すことができる。
 外来の客も受け入れてはいるが、一端覧祭はあくまで学生たちが楽しむためのイベントなのだ。
「……………………そんな謳い文句を信じていた頃が私にもありました」
 学園都市の高校生上条当麻は、両手一杯に木材を抱えたままぐったりとつぶやいた。
 時刻は午後四時。一日の授業が終わって家路につく生徒の波に真っ向から立ち向かうように、上条はふらふらと自分の高校を目指す。
 形も大きさも様々な木材を一まとめにして持つのにはかなりの集中力と体力が要る。そのどちらも尽きかけていた上条だったが、ふとこぼれた声には先行する人間を振り返らせるだけの大きさがあったらしい。両手でペンキ缶をいくつか吊り下げたその人物はため息混じりに、
「上条。――そんっなに一端覧祭の準備のために汗水流して働くのが不満?」
 吹寄制理。
 背中まで届く長い黒髪、制服の上からでもわかる出るとこ出ているスタイル。美人といって差し支えないルックスの持ち主だが、心底不機嫌そうな表情がまるごと全て台無しにしていた。彼女は制服の上から薄手のパーカーを羽織っており、その背中と左腕には一月前に見たものと三文字だけ異なる言葉がプリントされている。
 一端覧祭運営委員。
 上条はよたよたと歩きながら、
「不満っていうんじゃなくてさー。ただあれだけ大覇星祭(おおあばれ)した後なんだからもう少しくらいインターバルがあってもよかったんじゃないかと上条さんは思うわけですよ」
「何を今さら。毎年大覇星祭の後には一端覧祭と決まっているでしょう。貴様は小学校の頃から学園都市にいるんだからもう慣れっこなんじゃないの?」
 う、と上条は言葉に詰まった。
 諸事情あって、上条は記憶喪失なのである。人生の大半をこの街で過ごした生え抜きの学園都市っ子でありながら、イベント事などの思い出はさっぱりない。
 上条はなんとかそれを悟られないようにしようと、
「それでもなー、なんか今年は特別ハードだったような気がする。そういや吹寄は中学からだっけ?」
「まあね。でもどうでもいいでしょそんなの。皆待ってるんだからとっとと帰るわよ」
「…………、」
 吹寄は上条に目もくれずすたすたと歩いていく。
 これで結構馴染んできたと思えるのが吹寄制理のすごい所である。

182 名前:169 投稿日:2006/04/19(水) 01:39:33 [ v30zkIcQ ]
 以前なら問答無用で「どうでもいい」と言われていただろうが、最近はその前に一応「まあね」が付くようになった。だからどうしたと言われればそれまでだが、たとえ小さくてもこの一歩は偉大な一歩であると上条は信じたい。
 上条は吹寄の数歩後ろをえっちらおっちら歩きながら、
「それにしても、まさかウチの高校が会場に選ばれるなんてなー」
「大覇星祭で暴れすぎたもの。注目も浴びるわ」
「吹寄もまた運営委員に立候補するし」
「日射病で倒れたりで、ちょっと不完全燃焼気味だったから」
「小萌先生がステージのトリを引き当てたりしたしな」
「頑張らないとね」
「ところでどうして俺が材料の買出しに名指しでつき合わされたのでせう?」
「男子でジャンケンしたところでどうせ負けるのは貴様でしょう。省ける手間は省かないと」
「…………、」
 この一歩はどこへ続く一歩なんだろうとか思いつつ、上条は木材の束を抱えなおした。ささくれだった部分が腕の肌に当たって地味に痛い。衣替えまだかなーあれそういや冬服ってどこにあるんだろう? と考えていると正面から誰かが歩いてくるのが目に入った。
 上条たちよりいくらか年下に見える外国人の少女だった。
 インデックスと同い年くらいだろうか? 体格(スタイル)もどっこいどっこいに思える。しかし、どこかの女子高のものらしき制服に身を包んだ少女の髪はゆるくウエーブのかかった金髪だった。大きな水色の瞳は上条たちを見ることなく彼らの後方――つまり前方に向けられている。彼女も買出しの帰りなのか、両手で大きな手提げ袋を持っていた。持ち手の紐や袋の布の伸び具合からすれば、中身はかなり重いものらしい。行き先が真逆でなければ――そしてこの荷物がなければ、手伝ってあげようかと思うくらいに。
「……上条」
 と、吹寄は唐突に、
「貴様、道を歩いている時でさえ新たな攻略(ルート)の捜索に忙しいようね」
「え、えー! 振り返りもせず何を言い出すんですか吹寄サン! ただ俺はちょっとあの子の持ってる荷物が重そうだなーと思っただけで!」
「それよ! そんな浮ついた考えを脊髄反射で実行に移すものだから『親切からフラグが始まる男』と呼ばれるのよ貴様は! そーかそんなに荷物を増やしたいんだったらこのペンキ缶も持ってなさいそらそらそら!」
「うお! 角材の先端に絶妙なバランスで缶がのっかっている……! ってこのままじゃ俺は一歩も動けないのですが!?」
 知るか馬鹿! と何故か一層不機嫌さを増した吹寄は、それでもちゃんとペンキ缶を回収してくれた。うう、と涙ぐみながら崩れかけた木材の束を抱えなおしたときには、ちょうど例の金髪少女とすれ違うところだった。あれほど無駄に騒いでいた上条たちに目もくれず、少女は黙々と歩きさってゆき、
 ポトリ、と手提げ袋から何かを落としていった。
「「………………、」」
 運命ってなんだろうと思いつつ、横で『これがカミジョー属性の底力ってわけね』などと半眼でつぶやいている吹寄に脅えつつ、しかし落し物に気づかずに行ってしまいそうな少女を放っておくこともできずに『親切からフラグが始まる男』上条当麻は遠ざかりかけた背中に声をかけた。
「あのー、何か落としましたけどー?」
 金髪少女はぴた、とビデオの停止ボタンを押したみたいに立ち止まった。
 上条は落し物を拾ってあげようとして――両手とも塞がっていることを思い出し、それでもとりあえず何を落としたのかくらい確かめようと視線を下げ、

 どう見ても「バールのようなもの」です。本当にありがとうございました。

 上条は一瞬硬直した。
 いやいや一端覧祭の準備中なんだから釘抜き(バール)なんて珍しくもなんともないですよ? トンカチノコギリヌカにクギ。最終日のステージで演劇をすることになっている上条のクラスでは、大道具係の生徒が毎日遅くまでトントンカンカンと音を鳴らしている。それにしても脳から送られてくるこの危険信号はなんなのだろう。七月以前の失われた記憶ではなく、ここ二ヶ月間の記憶が警鐘を鳴らしていた。
 見覚えがあるのだ。このバールに。
 芋の蔓を引くように、次々と映像が浮かんでくる。
 ちぐはぐになった世界。
 降り注ぐ星々。
 巨大な、余りにも巨大な翼を広げた『とある存在』――
 上条は顔を上げ、振り向いた金髪少女の顔を見て呟いた。
「……ミーシャ?」
 直後、上条の足元に連続して五寸釘が打ち込まれた。

183 名前:169 投稿日:2006/04/19(水) 01:41:54 [ v30zkIcQ ]
「うおおおおお!?」
 いきなりのことに腕の中の木材を下ろすこともできず、上条は恐怖のコサックダンスを踊る。死に物狂いで釘が飛んでくる方を見やると、袋を地面に落としストッパーの外された全自動デザートイーグル型釘打ち機「ハスタラ・ビスタ」を構えた金髪少女がいた。ガガガガガガとけたたましい音を立てて乱射される釘は、命中すれば確実に上条の足をアスファルトに縫い止めるだろう。
「ちょ、今、今つま先かすった! そして吹寄はどうしてそんな冷たい目で俺を見る!? 助けて運営委員サマ!」
「女性絡みで、貴様が正しかったことが一度でもあった?」
 きびしー! と絶叫しつつ、上条は踊り続ける。赤い靴を履かされたカーレンの気分だった。
 やがて弾槽――そう呼んで差し支えあるまい――が空になったのか、金髪少女は釘打ち機を下ろした。地獄の針山もかくやという有様になった歩道で、少女が呟く。

「問一。何故私を男性の名前で呼ぶのか。容姿体型が理由であるのならすぐさま神の御許に送るが」

 その言葉の意味を理解するために、上条は思考をフル回転させる。
 思い出すのは板ガムをもむもむ噛んでいた姿。下着みたいな服を着て、羽織ったマントの中には幽霊退治用とかいう怪しげな拷問器具で一杯だった。目の前の少女に、イメージの中で前髪を下ろさせ赤いフードをかぶせてみて、上条はこの少女が「御使堕し(エンゼルフォール)」の騒動の時に出会ったロシア人シスターであることを確信した。
 ――いや、正確にはこの少女の『外見』を持つ者に出会っていたことを思い出した。
「あーそっかそっか。ミーシャってのは『中身』の方の名前だっけ。じゃあお前は………………あれ?」
「解答一。サーシャ=クロイツェフ。……なるほど。ブラザー土御門から聞いた話を統合してみるに、貴方が上条当麻か」
 うなずく。それで金髪少女――サーシャはようやく怒りを収めてくれたようだった。上条はそろりそろりと釘の刺さっていない地面を探して体勢を立て直す。
 改めて見ると、サーシャは夏休みの海で見たミーシャ=クロイツェフとほとんど同じ容姿をしていた。地球に住む全ての人間の『外見』と『中身』をランダムに入れ替える大魔術「御使堕し」の影響を受けていたのだから当然といえば当然だ。違うのは前髪で目が隠れていないことと、服装くらいか。髪型はまだ気分の問題で済むかもしれないが、
「ん? でも確かサーシャ=クロイツェフってのはロシア成教のシスターだって聞いたような。なんで学園都市の学校の制服着てんの?」
「問二。ロシア人が日本の学校で勉強してはいけないのか?」
 は? と上条が返答に詰まると、
「追加説明一。ロシア国籍を持つ者が日本の学校に入学してはいけないという法律は露日どちらにも存在しない。私がロシア成教のシスターであることについても同様。貴方の発言は勉学の自由と信教の自由を侵害するものと受け取って構わないか?」
「え!? そんな深い意味で言ったつもりはなかったんだけど! ただ魔術(そっち)側の知り合いを見かけた時には毎回毎回ろくでもない事件が起こってるもんだから、そんな中サーシャがごくごく平和的に一端覧祭の準備をしていたことが不思議に思えたんだって!」
「私見一。おそらく貴方の期待には沿えることだろう」
 てことはやっぱりなんか起きてるんですねー! と上条は大空に向けて叫んだ。腕の中の木材と地面の釘がなければこの場でのた打ち回っていたかもしれない。

184 名前:169 投稿日:2006/04/19(水) 01:44:11 [ v30zkIcQ ]
 とその時、これまで傍観していた吹寄が会話に参加してきた。
「よく分からないけど、とりあえず上条の知り合いってことなのね?」
「うー……そうとも言えるようなそうとも言えないような……」
「どうなの?」
 訂正。吹寄が尋問を開始した。
 しかし、なんとも答えにくい質問である。
 上条が知っているのはサーシャの『外見』だけであって『中身』とは初対面だ。しかしこうして会話していると、まるっきり「ミーシャ=クロイツェフ」と変わらないような気がしてくる。おそらく「ミーシャ」の方が「サーシャ」を真似ていたのだろうが……。
 サーシャは困っている上条に近づき、小声で、
「(問三。この状況はあれか。痴話喧嘩なのか?)」
「(ぶほっ!? い、いきなり何を言い出しますかサーシャさん!)」
「(私見二。あの少女は恋人に自分の知らない女性の知り合いがいたことに憤慨しているようにしか見えない)」
「(いや吹寄はいつもあんな感じだから。あと一応年上相手に『少女』とか言うのやめような。んでもって吹寄は魔術とか一切関係ない人間なんでそこんとこ特にヨロシク!)」
「(解答二。……了承した)」
 サーシャは上条から離れ、吹寄の方に向き直った。なんとなく只者でないことを雰囲気で察したのだろう。吹寄の表情が若干真剣なものになる。
「宣言一。貴方の質問にお答えしよう」
 サーシャはよく通る声で言う。彼女の背中を見ながら、上条はサーシャがどんな風に説明するのか少し不安になってきた。なにせサーシャの方は上条との面識はまったくないのだ。なんだか土御門から話を聞いてるみたいなことを言ってたけどどうなんだろう?
 そして金髪シスターは吹寄の目を見て、

「解答三。彼とは夏の海でゴムをもらった関係だ」

 刹那、場の空気が音を立ててひび割れた。
 サーシャは自分の発言の問題に気づかずきょとんとしているし、吹寄はなんだか顔を真っ赤にしてプルプル震えているし、ついでに二人とも後ろでそれはゴムじゃなくてガムだからー! と叫んでいる上条の声は聞いていない。
「こ、の、」
 吹寄は血管が浮き出るほど強く右拳を固めて、
「人類の恥めーーーっ!!」
 木材の束を貫き、怒れる少女の拳が哀れな少年のどてっぱらに突き刺さった。

185 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/19(水) 02:41:40 [ 2hsF5Q/Y ]
上条が大城全部長に見える。

186 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/19(水) 11:47:15 [ DpLMcUG6 ]
>きびしー! と絶叫しつつ、上条は踊り続ける
 おそらく原因はここだろうw

187 名前:176 投稿日:2006/04/19(水) 21:54:31 [ 2rWGGIa. ]
>>181-184
おおう、まさか本当に来るとは思ってなかった。ナイス!
サーシャは実は天然だったのか……ワロタよ。
そしてあんたは本当に吹寄制理さんが大好きなのだな。

>>185
>全自動デザートイーグル型釘打ち機「ハスタラ・ビスタ」
これなんかIAIで開発してそうだしなw

188 名前:169 投稿日:2006/04/19(水) 23:36:28 [ v30zkIcQ ]
>>185 >>186
言われてみれば自分でもそう思う……でも大城全部長も大好きなので問題なし。
そういや概念空間って幻想殺しで壊せるんだろうか。

>>187
思い付きを順番に文章にしていったらこうなりました。
ちなみに一番最初に浮かんだのはサーシャのラストの台詞だったり。
なんというか、部長とか委員長とか、そういう属性に弱い169です。
あれ、だから大城全部長もお気に入りなのか?

この続き書こうかなぁ……。一応もう少しだけ設定が出来てるのだけれど。
ただこれだとサーシャが出てきた意味がなくなるし……もうちょい煮詰めてみようと思う。

189 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/20(木) 00:16:14 [ hxLN19Nw ]
169氏超GJ! もう俺の中で貴方はトリップつけても良いぐらいの評価を得ています!

190 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/20(木) 23:23:33 [ X2DjgG6E ]
この流れで行くと"Pink_Princess"は小萌センセーか?

191 名前:169 投稿日:2006/04/21(金) 00:27:45 [ fFDJMBYY ]
>>189
光栄の極みです。多謝。

>>190
Pink_Princess……なぜだ、思い出せない……。確かに小萌先生が似合いそうなタイトルだけど。
それより強敵なのはGreen_Man。めちゃくちゃ当てはまるのが一人いるけど再登場が全く想像できん。

>>179 >>180
ここで逆転の発想。
当麻が「正義の味方」を名乗るとしたら、それはどんなシチュエーションか。
というよりなんか思いついちまったので勢い任せでマーブルファンタズムスタート。
“”で囲ってある部分には全部強調点が付いていると思ってください。



 上条当麻が立っていた。

 許容量を超過した痛みが神経を焼く。
 確実に左肩は外れているし、額も割れている。足首の裂傷はあと数歩も歩けば腱がちぎれてしまいそうだ。あちこちの打ち身、擦り傷は数えるのも馬鹿らしい。
 何故立ち上がることが出来たのか、上条は自分で自分を不思議に思う。
 それでも吹けば倒れる状態には違いない。白銀の甲冑はがらんどうのはずの兜の隙間から確かな嘲りの視線を飛ばす。
『……、は。一度起き上がった所で二度倒されるは必定。無闇に無駄を重ねることを無意味と呼ぶ。神浄討魔。その右手でせめて潔く己の「生」という幻想を殺すがいい』
 上条はギチギチとぎこちなく眼球を動かす。
 満身創痍の上条だが、右の掌だけは無傷だった。
 あらゆる「異能」を跳ね除け、あまねく「超常」を打ち砕く力――幻想殺し(イマジンブレイカー)。
 しかし、それはあくまで右手一本を守るだけのものだ。どれだけ強く願ったとしても、どれだけ高くかざしたとしても、“絶対にその手で掴めるものしか殺せない”。
(ああ……そうか)
 それとよく似たものを、上条は知っていた。

『自分の手の届くもの全部を守ろうとすると……結局理想から遠ざかっていく、らしい』

 とぼけた男の言葉を思い出す。
 今この瞬間、違う場所で黄金の甲冑と戦っている魔術師の顔を思い起こす。
 あの男は自分が諦めた時にも、諦めなかった時にも悲劇が待ち受けていると知っていた。それでもなお戦い続ける彼を支えるものがなんであるのか上条にはわからない。
 絶望を見据え、拒絶を覚悟し、破滅を背負ってなお走り続けられる理由なんて想像もつかない。
 だけど、それでも。
 その手で掴めるものしか守れないと諦観するでなく、
 その手で掴めるものだけは守れると妥協するでなく、
 腕を伸ばし、いつでも、どこまででも届かせようとするその生き様は。
 正直に思う。
 格好いいと。
(そうだ……)
 男の子なら誰でも一度は憧れただろう。
 漫画やテレビの中で活躍する無敵の戦士たち。どんな困難もどんな危険も物ともせずに罪無き人々のために戦う栄光の勇者。
 やがて作り物(フィクション)だと気づき、離れていってしまうのだろうけど、その一秒前まで少年たちは確かにヒーローを信じていたのだ。
 あのプラスチックの鎧と剣で着ぐるみの大怪獣と台本通りの死闘を演じる役者(ゆうしゃ)たちの姿に、最も純粋で最も根源的な憧れを抱いていたのだ。
(そうだ……!)
 上条当麻は記憶喪失だ。それゆえ子供の頃テレビのヒーローにどんな感情を持っていたのかなんて想像することしかできない。
 だけど、だけども。
 思慮が浅く、堪え性もなく、手前勝手で聞こえのいい偽善を並べることしかできなかった自分が、

 主人公(ヒーロー)になろうとしたことは、本当に一度もなかったのか?

192 名前:169 投稿日:2006/04/21(金) 00:29:15 [ fFDJMBYY ]
 脳が忘れていても心が覚えている。
 肉に残っていなくても魂に刻まれている。
 何のために、誰のためにかはもうわからないけれど。
 他の何者でもなく他の何物でもなく、世界にただ一人のこの上条当麻が主人公になると決めた瞬間が絶対にあった!
(そうだ、そうだ、そうだ!)
 何故立ち上がることが出来たのか、上条は自分で自分を不思議に思う。
 何が立ち上がる意思をくれたのか、上条はもうわかっていた。
 テレビのヒーローが、そしてあの魔術師が掲げていた二文字。
 あの時は呆れた言葉の意味が、今ならわかる。
 ■■とは『■しい■を行うこと』ではなく、
『胸に譲れぬ■を抱いて、■しくなっていくこと』だと。
 先がなくても、手前勝手でも、
 自分の奥底にあるただ一つの理由を裏切らないことだと。
「……はっ」
 上条はもはや恐れない。血塗れの顔を上げ白銀の甲冑を睨みつける。
「何が神浄討魔だ。俺はそんなもんじゃねぇ……その程度のもんじゃねぇ……っ!」
 甲冑はその言葉を最後の虚勢と受け取ったのだろう。余裕の態度を崩さず言い返してくる。
『ならば、なんだというのだ?』
「俺はな……」
 答えるための言葉は一つだ。
 きっとあの魔術師ならこう答える。迷うことなくこう名乗るだろう。
「俺は……」
 ならば、せめてこの時くらいは幼い頃に心を戻し、
 忘れていた夢を語るのも悪くない。
「俺は……!」
 絶望も拒絶も破滅も越えて、なお残る幻想(ゆめ)があるのなら。
 それはきっとこの右手でも殺せない、大切な真実(ユメ)だと思うから。


「「俺は、正義の味方だ!!」」


 儚きモノは人の夢。
 届かぬモノは遠き幻。
 ありてなきような二つのモノが、されど交わる所に産まれる力は――――無限(夢幻)。

「――Unlimited――」
 偽者にして本物、優しき幻想を護る者。

「――まずはてめぇの――」
 最弱にして最強、悲しき幻想を壊す者。

 決して交わるはずのなかった二つの糸が重なった時、

「――Blade Works!!」
「――ふざけた幻想をぶち殺す!!」

 物語は、始まる。




えーこの展開だと士郎パートも必須だと思われるのですが、ここまでやっといてあれだけども実はこの作者Fate未プレイなので無理でした。
作中の状況とここまでの展開についてはつっこんじゃヤです。つか勢いだけで一日で書いたからめちゃくちゃだぁ。
正直書いてて楽しかったのだけども、無理があると言われていた理由もわかった気がする。
勝手に設定と文をお借りしてしまった「Fate/とある二人の正義の味方」の作者様には深くお詫びを申し上げます。

193 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/21(金) 00:41:34 [ zIFxbpEE ]
しかし、>>178のSSはいつの間にか削除されいたのであった、まる。

>>191-192
GJですよー。これからもよろしくお願いしますm(_ _)m

194 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/22(土) 00:24:48 [ tlZ4YdQY ]
ところで白銀の甲冑ってだれだ?

195 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/22(土) 13:23:08 [ QNCRTiXE ]


無章 壮絶なるドミノ倒し Preview_Edition.


学園都市を焦点として発動した、謎の大魔術『異世召喚<ランダムエントリ>』。その効果は―――

「その雑菌塗れの汚れた手を離し何処ぞへ消え去るがいい名も無き村人D」
「……………………………………………………………………………………、はい?」

―――異世界からの『召喚』。

「―――強者―――」
「何を言っても無駄ですか。どうします?」
「少なくとも、あっちは殺る気満々みたいだけどね」

誰が、何時、何処で、何故、どうやって発動させた術式なのかも不明。

「いいかミリア、俺達がこの街でまずやるべきことは何だ?」
「観光地めぐりだね!」
「……、もしかしてとは思うけど。とうまの知り合い?」

魔術に巻き込まれる者、それを利用する者、はたまた何も考えていない者、彼らは交差する。

「一応忠告しておくぞアレイスター。異世界の人間を利用するなど考えないことだ」
「ふむ。まあそれが普通だが、私は普通とは大きくかけ離れているのでね」
(―――前から疑問だったけど、『何に』利用する気なのかしら)

様々な者の思惑や信念を乗せて、魔術は加速していく―――――ッ!!

「断言していい。私は、アンタが気に入らない」
「『気に入らない』か、ふん。だからどうした」
「まったくお姉さまに同意します、とミサカは宣告します」

徐々に明かされる、魔術の真相と黒幕。事態は収束していく。

「――――逃げたいと思っているのかい?」
「随分と笑える人格してンなァ。何から逃げるってンだ?」

学園都市史上、最も騒がしい一ヶ月。

「えっと、嫌かもしれないけど―――――君の血を吸わせてくれないかな?」
「……無理。自殺の手助けは。できないから」

学園都市史上、最悪と言える一ヶ月。

「私はただのしがない一般人だ。だからこそやれることがある」
「奇遇ですな。私も普通のサラリーマンだが、それを誇りに思っている」

科学と魔術が交差する時、上条当麻の物語は始まる―――!

「―――まずは、その幻想をぶち殺す!!」


魔術の中心、針山さん  【ジャンル≪超クロスオーバー≫ 】
          Coming Soon!!



「お前は、俺と“対等”になる資格がある。もっと強くなるがいい―――神浄討魔」
「……、不幸だ。最近の俺はこんなんばっかですかちくしょーっ!」

196 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/22(土) 22:37:03 [ p2QbH7xk ]
アイザックとミリア・狐さん・フォルテッシモは分かったけど後はさっぱりわからん。

197 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/22(土) 22:52:38 [ 93a3pr5c ]
天目一個さんは分かった。

198 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/22(土) 23:33:15 [ dbSJGwlI ]
姫神秋沙が転校してきてから数日、自分から馴染もうとしない姫神が気にかかる当麻が話しかけようとした矢先に「不幸にも」青髪ピアスに吹き飛ばされて姫神を押し倒してしまう
その弾みで右手が服の上から姫神のケルト十字架に触れてしまい(含む胸)、幻想殺しが発動、「動く教会」を殺してしまう
すわ吸血殺し発動か、と思われたが、何故か発動しない
どうやら当麻の右手が触れている状態では吸血殺しは発動しないようだ(ここまで胸を掴んだまま動かない二人)

インデックスが換えの「動く教会」を手配するまで、当麻は姫神から離れるわけにはいかなくなった
さぁ二人の運命やいかに!!?

と言う話を思いついたんだけれど、どうすべきか

199 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/23(日) 03:00:05 [ DvCABq8E ]
>>198
うpうp

200 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/23(日) 03:29:20 [ 3ALhYEIE ]
>>195
はっはっは、狐面の男ぐらいしか分からないぜ。

201 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/23(日) 08:47:09 [ 9TWtTxC6 ]
>>198
貴方の所業は姫神教徒の間での聖典として永く語り継がれるでしょう。
さぁ、うp!

202 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/23(日) 08:57:24 [ ljQ4yoIY ]
>>195
姫神と喋ってるのはダブルブリッドに出てきた吸血鬼(名前忘れた)か?

>>198
ここにそんな宣言した以上投下するしかあるまいて。

203 名前:195 投稿日:2006/04/23(日) 10:11:44 [ iEWw4zZo ]
答え合わせ。上から、

乱崎凶華(狂乱家族日記)
天目一個(灼眼のシャナ)
アイザック&ミリア(バッカーノ!)
西東天(ヒトクイマジカル)
逆貫絵馬(結界師のフーガ)
レリック(ヴぁんぷ!)
針山慎吉(世界の中心、針山さん)
リィ舞阪(ブギーポップ)

成田系が三つも入ってるのは仕様です。

204 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/23(日) 15:12:24 [ 9TWtTxC6 ]
>>203
良いんです、成田は一方通行=女教の最大教主ですから。

205 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/23(日) 16:33:55 [ o84vTcHE ]
死ねない!まだ、死ねない!あの人に思いを伝えてもいないのに!

少女はあがく。だが修道服を着た死神は無慈悲に刃を向ける。

「弓塚さん。あなたの悪夢、ここで終わらせてあげます」

いやだいやだ死にたくない逃げなきゃでもどこに逃げても追ってくる

少女の心が絶望に染まりかけたそのとき・・・

「なっ、なにやってんだ!あんた!」

これは不幸な少年と幸薄い少女が足掻いた記録である



          とある不幸な吸血少女




「あじー、何ですかこの暑さは」
もう秋だというのにアスファルトの照り返しがきつい。
「上条ちゃん・・・やる気出さないとバイト代出しませんよー」
うぐっと当麻は唸る。
そう、今はバイト中なのだ。子萌先生のお手伝いとして三咲町に来ている。
インデックスは土御門に任せているでそれなりに安心できるが。
(土御門のやつ大丈夫かなー)
当麻は自分がここにくることになった経緯を思い出す。

「とーま、とーま。おなか減ったかも!」
「今食ったばっかじゃねーかお前!」
当麻の目の前の机にはインデックスが気づき上げた屍の山が(空の皿)つくられている。
それを作った張本人は
「えー、こんなのおやつと同じだよ。早く晩御飯の材料買って帰るべきかも」
「お前修道女だろ!食欲は7つの大罪じゃなかったのかよ!」
「私はいまだ未熟なのでちょっとくらい問題ないかも」
「いや、ちょっとって・・・」
「はやく!はやく!だったら【歩く教会】を元に戻してみてよ!」
「あのーいんでっくすさん?」
「晩・御・飯!晩・御・飯」

回想終了
(あー、なんていうか不幸だー)
せっかく大覇星祭の振り替え休日だってのに別の町でバイトなんて。
でも仕方ないと思う。インデックスを泣かせたくはないし自分ががんばればみな笑顔でいられるのだから。
(でも帰ったらインデックスの食費を請求されてバイト代が全部飛ぶとか・・・うわ!すごくありそうだぞその展開!)
そんな感じでうだうだ考えてると
「上条ちゃん、着きましたよー」
と、子萌先生が呼びかけてきた。
やや高台に位置するでっかい屋敷に。
はー、かねもちだなー。っと当麻が考えていると
「いいですか?上条ちゃん。これから学園都市のスポンサーの一つの遠野の御当主に挨拶をしにいくわけですが
いつもみたいなノリでいちゃダメですよ?機嫌を損ねたら上条ちゃんのバイト代も出なくなったいますからねー」
「ういーす」
まあ、自分は荷物持ちみたいなものなので問題ないだろうと当麻は軽く考えていると
「おまたせいたしました」
メイドがやってきていた

206 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/23(日) 16:36:15 [ o84vTcHE ]
「では、こちらの部屋でお待ちください」
そう言いメイドさんは部屋を出て行った。
「うわーメイドですよ子萌先生」
メイドなら舞夏で見慣れているがあっちは学生、いわばメイドの卵であり本物ではない。
「上条ちゃん、先生がさっき言ったこと覚えてますかー?」
子萌先生がじと目で上条をにらんでいると
「失礼します」
また、さっきのメイド?が入ってきた。
「お茶が入ったのでどうぞ」
「え、ああ。ありがとうございます」
上条がお茶を受け取るが何か違和感があった。
「・・・どうかしましたか?」
メイドさんが上条に話しかけてきた。無意識のうちに凝視していたみたいだ。そこで違和感の正体に気づく。
「あのー、もしかしてさっきの人とは別の人ですか?」
へ?っとメイドさんは何度か瞬きをしたあと、笑顔で
「ああ、翡翠ちゃんと間違えちゃったんですねー。翡翠ちゃんは私の双子の妹です。私は琥珀と申します」
なるほど・・・どうりでそっくりな筈だ。っと考えていると
「上条ちゃん?」
ちょっぴり切れ気味の子萌先生が目が笑っていない笑顔で話しかけてきて
「まったく上条ちゃんは先生の話をき「すみません!琥珀さん!トイレはどこですか!」

207 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/23(日) 16:37:15 [ o84vTcHE ]
..ここまで書いたが遠野家のトイレってどこにあったっけ?

208 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/23(日) 16:39:11 [ R0Hn6iEo ]
知らん。
あと子萌先生ってだr(ry

209 名前:198 投稿日:2006/04/23(日) 16:54:27 [ jjeTj67I ]
では書いてみることにします
まともにSS書くの初めてだから時間かかると思うけど

210 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/23(日) 17:00:55 [ o84vTcHE ]
やっべ、まちがえてたww叱られてくるw

211 名前:203 投稿日:2006/04/23(日) 22:51:18 [ iEWw4zZo ]
>>209
期待してまっさ。

序章投下しようかなーとか思ったけど凶華様の認知度が低そうだからやめた。

212 名前:169 投稿日:2006/04/28(金) 17:08:32 [ /xcA9ob. ]
大学のパソコンからこっそりと……

実はRed_Angelの続きが少し出来たので投下しようと思ったのですが、オリキャラって出していいんでしょうか?

213 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/28(金) 23:33:04 [ Epi6lzaU ]
俺は一向に構わんッ!

214 名前:169 投稿日:2006/04/29(土) 00:17:24 [ pveFAiMo ]
それでは。
でも今回はまだオリキャラ出てきません。次の次くらいになる予定です。
ああっ、細い杖で叩かないで……

 夕焼けが学園都市(まち)を染めるころ、上条は家路に着いていた。
 あの後、ボロボロにされながらも吹寄の誤解を解いた上条は(間違いの意味を知ったサーシャによる八つ当たり追撃はあったものの)、もう一度木材を買いに行かされた(粉砕した当人にそれを命令されるのは理不尽だと思ったが)。
 余計に余計な手間を重ねて木材を大道具係の生徒に届け終わり、その後も下校時刻になるまで作業をしていたのだ。
 大道具係他何名かの生徒は残業組としてまだ作業を続けるらしい。その中にやけにやる気に満ちた青髪ピアスを見つけて上条はかなり驚いたのだが、
『なあカミやん。僕は気づいてしまったんや。看護婦さん婦警さん女教師さん、職業萌えは数あれど、いまだかつて大工さん萌えを唱えた男はおらへんかったということに。でも想像してみぃ? 夢のマイホームを建てるために清らかな汗を流して働く女の子を。ノコギリの刃で切ってもうた指を「失敗しちゃった……」とかいいながら涙目でくわえる美少女の姿を! どうやカミやん、これを聞いてもまだ居残りせんと帰るなんて言えますか!?』
 上条は無言で彼の背後を指差した。そこには運動系クラブから寄りぬかれた筋骨隆々の大道具係たちがポージングつきで青髪ピアスを待っていた。
 あれからどうなったのか、上条は想像さえしていない。とにかく一端覧祭の準備は滞りなく進んでいると言える。
 もし上条にとって問題があるとすれば、それは、
「問一。貴方の居住地はこの近くなのか?」
 校門を出たところからずっとついてきているこのロシア人シスターだろう。
 いや、正確にはホームセンターで木材を買い直している時からサーシャは上条の後ろを歩いていた。教室までついてこられたりしたら吹寄なり青髪ピアスなりに何を言われるかわかったものではなかったので、校外で待っていてもらったのだが。
 上条は少し歩幅を緩めて、
「そうだけど。何、疲れた?」
「解答一。問題ない。この区画の建物がそれほど立派でないのが気になっただけ」
「……放っといてください」
 もともと上条の高校は「極めて特徴のない一般的な学校」である。最近はその域を脱しつつあるようだが、それですぐ学生寮が豪華になるわけはない。
 女の子を連れて家に向かうというと普通ならばドキドキイベントの一つも起こりかねない状況だが、上条の生まれ持った不幸はそんな甘い希望など前提から粉々にしてしまっている。
 狭い裏路地に差し掛かったところで、上条は聞いてみた。
「あー、ところでサーシャ」
 無表情ではないが今一つ感情の読み取りにくい顔に薄い疑問の色が浮かんだのを確認して、
「そろそろ教えてくれねーか? 今学園都市で何が起きてんだよ」
「私見一。その質問はこれで七回目だと思われるのだが」
「いーから教えろ」
「解答二。その質問に今答えることはできない」
 サーシャは先の六回と同じく、淡々とそう言った。
 ホームセンターでも道端でも校門前でも上条は同じ質問をしたが、帰ってくるのも同じ返答ばかり。正直上条としては、事情のわからないままサーシャを“彼女”と引き合わせるのは気が進まないのだが、
(でも土御門の紹介ってことだし……………………………………よし、あてにならない)
 上条の隣人、土御門元春は魔術サイド、科学サイドの両方に精通した多角スパイという超絶隣人である。
 サーシャが言うには、彼女を学園都市に招き入れ、制服身分証明その他の世話をしたのは彼であるらしい。

215 名前:169 投稿日:2006/04/29(土) 00:18:37 [ pveFAiMo ]
 今回の事件とやらが「魔術」サイドの問題であるなら、仲介役として土御門の名前が挙がるのもわからないでもない。しかし上条が「あてにならない」と考えてのは彼の人格を鑑みてのことである。
 土御門は目的のためなら手段を選ばない。“たとえどれだけ自分を傷つけても”最良の結果が得られる道を選択する。
 そして、その手段には種々様々な“嘘”も含まれる。基本的にいいやつなのだが、うかつに現状だけで判断するとどんなどんでん返しが待っているかわからない。それが土御門元春という男だ。
 今日、上条が買い出しに出るまでは衣装係としてテキパキ働いていたはずの土御門だが、サーシャと会って戻ってきた時にはすでに早退していた。サーシャに適当な情報を与えた罰として(ついでにストレス解消として)二、三発殴ってやろうと思っていたのだが。しかし逆に言えばこれは、土御門がこの件に関わっていることの証明でもある。
(とりあえず、何が出てきても驚かない覚悟は必要だな。ま、神裂に学生服着せて突撃とかさせなかっただけマシだろ)
 とても十八とは思えないウエスタンルックサムライガールを思い出し、上条はこっそりため息をついた。
 そうこうしている間に、上条の住む学生寮が見えてきた。 直方形のコンクリート建築。こう言ってはあれだが、確かに立派そうには見えない。
「私見二。取り越し苦労であればそれに越したことはない」
 不意にサーシャが口を開いた。上条は思わず振り返る。
 重そうな手提げ袋を揺らしながら、サーシャは続ける。
「補足説明一。ロシア成教がイギリス清教に禁書目録の閲覧を要請したのは、今私が知っている未来予想が杞憂であることを証明したいがため。最も、要請が通った時点ですでに異常事態であるとも言える」
 上条は告げられた言葉を吟味する。
 そう、サーシャが上条についてきた理由は禁書目録――あの十万三千冊の魔道書の知識を得るためだ。
 力ずくで奪いに来たのならば、上条は例え相手が年下の女の子であろうとも本気で殴って追い返すだろうが、今回はそうはいかない。サーシャの所属するローマ成教は、正当な手続きをもってイギリス清教から許可を得たらしいからだ。
 どんな皮肉だ、と上条は思う。常に世界中の魔術師から注目されている“彼女”の周りで魔術的事件が起こったなら、それだけで幾多の魔術結社が動き出す切欠に成り得る。しかしイギリス清教からの正式な任務を全うできなければ、“彼女”は学園都市にいられなくなるのだ。
 きっと“彼女”は泣くだろう。その事実は有り難く、その結果はあってはならない。
 となると、あとは上条が死ぬ気で頑張るしかないのだが……
 ちら、と見たサーシャの手提げ袋。やたら重そうな中身の全てが大工道具に見せかけた拷問器具だというのだから(まあ青髪ピアスは喜ぶかもしれない。くわえた指についた血はサーシャのものではなかろうが)、これほどの装備が必要と予想される事態がもし「取り越し苦労」でなかった場合どんなことになるのか。
(つーかあれですよ。もしかしてサーシャが派遣されてきたのって、この時期なら大工道具持って街を歩いてても不自然じゃないからとかそんな理由なんでは。それよりもこのまま“あいつ”と会わせたらめでたく紅白シスター対決ということになるのか。いやサーシャは今学生服だし決して断じてかろうじてまたあの衣装に着替えて欲しいなんてそんなふしだらかつ不健全な考えは浮かんでおりませんうわなんかど壺にはまってきた気がする!?)
「問二。貴方はさっきから何を興奮しているのか?」
「ぐはっ!? すみませんすみませんこの通りですからあの赤い靴コサックダンスだけは勘弁してください!」
 いきなり平謝りしだした上条に面食らったのか、サーシャは大きな目をさらに見開き、
「……私見三。この街にはおかしなしゃべり方をする人間が多いという事前情報は正しかったようだ」
「…………てめぇにだけは言われたくないと上条さんは締めくくります」
 感心しているのか呆れているのかわからないサーシャの台詞を、上条はぐったりと受け流した。取り立てて特徴も何もない玄関を抜けて建物の中に入る。
 しかし、エレベーターに向かおうとしたその時、
「私見四。確かにこの問題は靴にまつわるものではある」
「…………は?」
 さりげなく付け加えられたその言葉こそ、どういう意味を含んだものだったのか上条にはさっぱりわからなかった。

 ついでに。建物の影から清掃ロボットに腰掛けたメイド服少女がじっと見つめていたことも上条にはずっぱりわからなかった。少女の右手には通話モードの携帯電話。

216 名前:169 投稿日:2006/04/29(土) 00:20:32 [ pveFAiMo ]
 開錠。開扉。開口。閉口。
 淀みなくプロセスが進んだ結果、上条は銀髪シスターに脳天をかじられた。
「うおおおおおっ!? イ、インデックス。何故お前サマはドア開けたところで待ち構え学校から帰宅した家人さんにお帰りのカミツキ攻撃を仕掛けますか!? 犬歯、犬歯がつむじにピンポイントで刺さるっ……!」
「まいかから電話があったんだよとうまがまた女の子連れ込んだって今夜はお楽しみかちびっこ二人相手なんてかみじょうとうまもやるなって言われたんだよもうとうまのばかばかとうまばかばかとうまばかとうま!」
「ばかが多いだろ絶対! それに一応言っとくけど今回はお前の客だから!」
「リセットして私見一。『今回は』という発言から察するに、そのくらいの罰は受けておいたほうがいいかと」
「事態をややこしくするようなこと言いながら一歩後ずさるなサーシャ。ほれインデックスもいい加減降りろ。このままだと話もできないし」
 上条の上半身にしがみつき断続的に噛み付いていた少女は、その言葉でしぶしぶと床に降りた。
 サーシャとほぼ同じ背丈の小柄な体を白地に金糸で彩った修道服で包んだ銀色の髪の少女。
 彼女こそが、一度見たものは決して忘れない完全記憶能力を持ち、その小さな頭に十万三千冊もの魔道書を丸暗記しているある意味核爆弾などよりよっぽどぶっそうな存在――名をインデックスという。
 もろもろの事情あって絶賛居候中の彼女はたいそうご立腹らしい。
 インデックスは触れるだけで火花が飛びそうなほどのイライラを隠しもせずに、サーシャと上条を見比べて、
「とうま。私のお客さんってどういうこと?」
「あー、それも説明するけど。とにかく上がらねえか? 玄関で立ち話もなんだろ」
 うう、と不満そうな顔をしながらも、インデックスは部屋の中へと駆けて行った。冷蔵庫を開ける音が聞こえたから、一応おもてなしをするつもりなのかもしれない。
 上条は背後のサーシャに向き直り、
「えーと、とにかく上がってくれ。狭いところだけど。あ、靴はそこで脱いでくれよ?」
「解答一。了解した。自分の身は自分で守ることにする」
 こいつら俺のことをどんな目で見てやがる、と上条は思ったが、怖い答えが返ってきそうだったので口には出さなかった。
 案内がいるほど広い部屋でもないため、特に何も言わずリビングに向かう。床にはいろいろなもの(主にインデックスが読んだまま放置している漫画や雑誌)が散らかっていたが、お客様は気にした風もない。邪魔な場所にある何冊かを適当に片付けて、二人は部屋の真ん中に置かれた背の低いガラステーブルの前に座った。
 そこへインデックスがお盆に麦茶の入ったグラスを三つ乗せてやってきた。科学音痴のインデックスはいまだに電子レンジは使えないが、冷蔵庫はただの「中が冷たい箱」だと割り切れば怖くないらしい。グラスをテーブルの上に並べると彼女も座った。紅白シスターが向かい合い、彼女らの間に上条がいるという構図である。
 まだ痛む頭をさすりながら、上条は麦茶を一口飲んで喉を潤した。
「えーと、インデックス。この人はロシア成教のシスターのサーシャ=クロイツェフ。お前に聞きたいことがあってはるばる来たらしい」
 続いて反対側を向き、
「んでサーシャ。こいつがお探しの禁書目録――インデックスだ。ちゃんと会わせたんだから、いい加減何が起きてるのか教えてくれよ?」
 制服シスターは答えず、じっと銀髪シスターを見ている。対する側も上条の説明ではまだ納得がいかなかったらしく呪いのこもった視線で睨み返していた。

217 名前:169 投稿日:2006/04/29(土) 00:24:39 [ pveFAiMo ]
 インデックスが鼻で笑った声を出す。
「ふん。ロシア成教の人間が何の用? 言っておくけど他宗派の人間に魔道書の知識を与えることは禁じられてるんだから」
「解答二。まさしく私は禁書目録の知識を求めてここにやって来た。そしてそのための許可もイギリス清教から取り付けている」
 え? とインデックスが目を丸くした。しかし困惑した顔を向けられても上条にはどうすることもできない。サーシャがそうだと言い張っていただけで、具体的にどんな「許可」とやらをもらってきたのかは知らされてなかったからだ。
 サーシャはごそごそと床に置いた手提げ袋を探り、何か小さな物を取り出してテーブルの上に置いた。
「証明。イギリス清教最高主教(アークビショップ)ローラ=スチュアートよりお預かりしたものだ」
 それは上条もそろそろ見慣れてきたもの――十字架だった。
 一口に十字架と言っても宗派ごと、用途ごとに様々な種類が存在するらしい。科学寄りの上条には全く見分けがつかないのだが、しかしサーシャの取り出したそれにはなんとなく見覚えがある気がした。
 そう。「法の書」をめぐる事件の時、一人の修道女の命をつないだ十字架に似ている気がしたのだ。
「これ……!」
 インデックスはテーブルの上の十字架をパッと手に取った。色々な角度からためつすがめつし、その度に顔色を変えてゆく。
 最後には真剣で敬虔なシスターの表情になっていた。
「純銀製の十字(クロス)。血で刻まれたレッドライン。聖ジョージ大聖堂つきの工房による一点もの。……間違いない、最高主教権限の委譲に用いられる勅命十字(クロスオブオーダー)だよ」
 そんななんとか鑑定団みたいな解説をされても上条には何がなんだかさっぱりなのだが、ようは日本人に対する黄門様の印籠のようなものだろうか。インデックスの驚き様からすれば、どうやら尋常でないくらい強い権限を持つものらしい。
 掴みあげた時とは対照的に恭しく十字架をテーブルの上に戻すと、インデックスは居住まいを正した。
「他宗派にこれを持たせるなんて、よほどの緊急事態なんだね。――うん、わかった。サーシャっていったね。何でも聞いてみるといいかも。ただし」
「保証一。貴方から譲り受けた知識は永久に私の内にのみ留めておくことを約束する。それがイギリス清教から出された条件であるので」
 サーシャもまたスカートの裾をなおし、どこで習ったのかきれいな正座をした。狭苦しいリビングを緊張感が満たし、上条は数秒で息苦しさを覚えた。
 ロシア成教のシスターはまっすぐにイギリス清教のシスターを見つめて、
 言った。

「要求一。『零時迷子(ヌーンインデペンデンス)』について、貴方の知る限りの知識の提供を願う」



今回はここまで。
後二回くらいでRed_Angelを終わらせて第二章に入りたい所です。

218 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/29(土) 01:01:38 [ 4HV2C3SM ]
……これは、クロスになるのかな?
だとしたら面白そうだが、単に名前の案が浮かばずに使っただけと予想してみたがどうか。

クロスになるんだったら事前に報告をよろしく

219 名前:169 投稿日:2006/04/29(土) 01:42:11 [ pveFAiMo ]
>>218
クロスではなし。イメージに合う名前がなんかないかなと思ってたらこれに至ったので。
ぶっちゃけあの紅世の秘宝とは全く違う代物です。
次回丸々使って説明する予定ですが、オリ設定なので「あほか」「やめれ」などと思ったのなら容赦なくどうぞ。

220 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/29(土) 02:02:27 [ qAFkLCio ]
白赤シスターごたいめーん
いい、凄くいい、サーシャがかわいいなーっと

てか舞夏さんや、お前もスパイの心得でもあるのかいな

追記: サーシャもまたスカートの裾をなおし>裾が鋸に見えた俺は病んでる、間違いなく

追記の追記: 一箇所ロシアがローマになってました
続き期待してますよー

221 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/29(土) 03:25:44 [ kqiUO/yw ]
超絶隣人……ベラボーmゲフンゲフン

222 名前:198 投稿日:2006/04/29(土) 11:19:45 [ qAFkLCio ]
どーも
198で書いた部分が出来上がったので投下してみたいと思います
文章書くって難しいね…

223 名前:198 投稿日:2006/04/29(土) 11:21:41 [ qAFkLCio ]
上条当麻が姫神秋沙について知っていることと言うのは、そんなに多くはない。
「三沢塾」陥落戦の時にステイルから聞いた過去。
その身に宿した『吸血殺し』(ディープブラッド)と言う異能。
色々な因縁が絡んだ結果、今はその異能を封じていると言う事。
能力を封じたので元居た学校にいられなくなり、小萌先生の家に居候している現状。
で、何の因果か今現在は上条当麻のクラスメイトになっていると言う事実。


九月四日。
姫神秋沙衝撃の転校劇から三日たちました、と、上条当麻は心の中でナレーションを付けてみた。
思ったより面白くなかったのでちょっとへこむ。
その姫神であるが、あの時乱入してきた銀髪シスターにその場の流れを持っていかれた所為か、未だにクラスに馴染めてないように当麻の目には映った。
今日までの学校生活の中で、当麻の見ている限りでは姫神から他のクラスメイトに話しかけたことなどはまず無く、クラスメイトに話しかけられても一言二言言葉を交わすのみでとても良好な関係を結べているとは思えない。
当麻が姫神のことを気に掛けているのには理由がある。
始業式のあった九月一日。
とある事情により途中で抜け出した上条当麻の知らないところで、学級委員の青髪ピアスが言い放った一言。
『どっかで見たことあるなー思たら、夏休みにカミやんと仲良う話しとった巫女さんやん』
この一言により、クラス内では「転校生の面倒は上条に任せる」と言う空気になったのだった。
次の日登校した時に、前の席の女子にその事を聞かされた当麻は、
『何でそうなる!やはり女の子は女の子同士で仲良くなるのが理想だと思うのですが!』
と、異議を申し立てたが、クラス全員に即時棄却された。どこから持ってきたのか「代弁者」と書かれた鉢巻を巻いた土御門には、
『偶には立てたフラグを最後まで面倒見ても罰は当たらないと思うにゃー』
とまで言われるし。このアジテーターめ。
とかく、そういう流れになってしまったのであれば嫌だ、とか断る、とは言わないのが上条当麻という男である。
幸いにして今日は土曜日、先程本日最後の授業が終わったばかりだ。あらかじめ居候には昼食用の弁当は置いてきてあるし、今日はクラスの何人かに声を掛けて姫神と一緒に遊ぶと言うのも悪くないだろうなー、などと考えながら姫神方へ行こうと自分の席を立った途端。
「カーミやーん、お昼ですよご飯ですよお米の時間ですよー!」
いつもの妙なハイテンション状態の青髪ピアスに背中を強く叩かれた。思わぬ一撃にバランスを崩し、一歩踏み込んだその先で。
「あっ」
ふにゅ。
まだ自分の席に居たクラスメイトの女子と接触事故を起こしてしまい。
「わわっ、悪い!」
更にそこから離れようと後ろの方へと一歩下がるつもりだったが。
ガツッ!
「なぁっ!?」
未だ足元にあった自分の椅子に足を取られてしまった。このままだと背中から転んでしまうので、何とか受身を取ろうと体を捻った目前に。
「……あ」
いつの間にか近くに来ていた姫神秋沙の姿がそこにあった。

224 名前:198 投稿日:2006/04/29(土) 11:22:29 [ qAFkLCio ]
姫神秋沙が上条当麻について知っている事と言うのは、それほど多くはない。
三沢塾から外に出た時に偶然出会ったのがそもそもの始まりだった。
あの時、確かに「死んだ」自分を助けた彼の異能『幻想殺し』(イマジンブレイカー)。
本来無関係の自分の為にあの錬金術師へと立ち向かうほどのお人よし。
困っている女性を放っておけない女たらし……は、違うか。
そして今は姫神秋沙のクラスメイト。


転校初日。
あの風斬氷華が絡んでいたと思われる騒動で、彼はまた他人の為にその身を砕いていた。
思い返すまでもなく、彼が一生懸命な時と言うのは大抵女性が絡んでいたように思える。
例えば、あのゴーグルを着けていた少女。
あの直後にまた入院した彼を見舞いに言った際、同棲している銀髪のシスターがぶつぶつと文句を言っていたのを覚えている。
例えば、その銀髪のシスター。
ついこの間に夜の街で彼の姿を見た時、必死の形相で駆け抜けて言った彼に声を掛ける事は出来なかった。
一昨日にその事を問いかけたが、彼女がどうの、と言うだけで詳しい話は聞かせてはもらえなかった。
そして、風斬氷華の件。
こうして彼の行動を見ていると、自分を助けた事に深い意味などは無くそのことに拘っている自分と言うのは一体どれだけ自意識過剰なのか、と思ってしまいそうになる。
まぁでも今日は幸いにして土曜日、先程最後の授業が終わったばかりだ。小萌は今日は職員の会合とやらで帰りは遅い。
同居人のいる彼をそれほど長くは付き合わせることは出来ないだろうが、じっくりと話をするには良い機会だ――。
そう思って彼の席の方へと歩み寄るが、その行く先がなにやら騒がしい。見れば学級委員だと言う(とてもそうは見えないが)青髪ピアスの少年が騒いで。
その騒ぎによって上条当麻が、などとぼんやりとその動きを見ていたら。
「……あ」
巻き込まれました。油断大敵。

225 名前:198 投稿日:2006/04/29(土) 11:22:59 [ qAFkLCio ]
ドスン!
バランスを崩し転倒した当麻だが、不思議と体に痛みは走らない。
ともかくこんな事になった原因の青髪ピアスに文句をつけようと、両手で体を起こそうとした途端。。
むにゅう。
右手がすばらしい感触を伝えてきました。
ぎぎぎ、と油の切れたカラクリ人形のように右手の先に視線を向けると。
そこには人の体があり。
視線を上の方へと動かせば。
そこには姫神秋沙の顔があって。
もう一度視線を右手の先へと戻すと。
何と言うか、端から見たら性犯罪者のような行為をしている自分の右手がそこにはあった。
このままだとまずい、と反射的に右手を退かそうと力を入れる。
と、今度は人の肌とは思えない固い感触を伝えてきた。
(なんだ、この……)
そう考えて、思い出す。
彼女の過去、能力、現状。そして――。
「しまっ……」
しかし、遅かった。
先刻感じていた柔らかさとはまた違った、柔らかなものが霧散するような感じが右の掌に感じられる。
脳裏にいつか聞いたインデックスの言葉が蘇える。
『とうま、とうま。あいさのケルト十字には触れちゃダメなんだよ?あれは「歩く教会」から最低限の結界を保つ部分だけを抽出した十字架なんだから……』
(やっちまったー!このままじゃ姫神の『吸血殺し』が発動しちまう!)
やらかしてしまった己の失態を思い焦る。姫神がこの能力の発動を好ましく思っていないことを知っているだけに、余計に。
だが。
「……。おかしい」
ポツリと、姫神が呟く。
「……?何がだ」
「君の右手が私の十字架に触れたという事は。私の能力を封じていたものが無くなったと言う事。なのに。私の能力(ちから)が発動している感じが全くしないのはおかしい」
確かに姫神の『吸血殺し』を封じていた十字架は異能によって創られた物。それに『幻想殺し』が触れた以上、効力が消えてしまうのが当然だ。
と、そこまで考えて、当麻はある可能性に気付く。
「俺の右手が触れているから?」
その言葉に小さく頷く姫神。
「多分。君の右手は触れた異能を打ち消すから。君が触れ続けている限り。私の能力は発動しないのかも」
仮説ではあるが説得力はある。とりあえずこのままでいれば姫神の能力は発動しない。そう、このままで……?
「上条当麻ー!貴様教室でそのような破廉恥な行為に出るとは良い度胸をしている!」
「ちくしょー、またか、またなのか!これがカミジョー属性ってヤツなのかよ!」
「姫神さん嫌がってないし。これってやっぱり……ううん、結論を出すのは早いわ」
「かかか、カミやん、そろそろその手をどかさへんと血ぃ見るかもしれへんで……?ていうか羨ましすぎるんじゃー!」
「しまったー!今の状態忘れてたー!」
思わず絶叫。
じりじりと包囲の輪を狭めてくるクラスメイト(男子)。授業が終わったばかりなので大半の生徒が残っていたことも、当麻にとってマイナスに働いている。
とりあえずこのままの体勢ではまずい。胸に置きっぱなしだった右手で姫神の左手を掴み、自らも立ち上がりながら彼女の体を引き起こす。
そしてそのままクラスメイトの包囲を突破しようと試みるが、多勢に無勢。
結果は言うまでもあるまい。


だが、それでも右手を離しませんでした。

226 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/29(土) 11:23:42 [ 6q7jaaLw ]
サーシャかわいいよサーシャ。

そしてGJ

227 名前:198 投稿日:2006/04/29(土) 11:23:58 [ qAFkLCio ]
今回はここまで
一応続けるつもりです
ではノシ

228 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/29(土) 11:41:23 [ YsCHllc6 ]
手を繋ぐ、という状況からICOが思い浮かんだ。


……それだけですが何か?

229 名前:■■■■ 投稿日:2006/04/29(土) 15:18:24 [ yKWxAZYc ]
最近にぎやかでイイヨイイヨー。
両方とも再現度が高いので安心して読める。続きが楽しみだ。

>>169
禁書名物理不尽ルビが実にそれっぽくて良。
そして青髪ピアスに笑った。いやノコギリってそれ切るっつーか落ちるって、指w 合掌。

>>198
わーい、姫神が普通にヒロインしてるー。6巻で「……小萌のバカ」と言う台詞をみてから
俺はこの展開を待っていたのだ!
是非インデックスや御琴との遭遇した場面を書いて欲しい。上条さんの不幸っぷりなら
こういう時に限って知り合いとかち合いまくるに決まっておる!

230 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/01(月) 02:39:16 [ LSVSAhDc ]
wikiのネメクジで何か一つ書けそうだ。

231 名前:sage 投稿日:2006/05/01(月) 18:52:01 [ NlNtnWVg ]
>>169>>198もいいですよー
続き、期待しとります

>>230
どんな話が書けるというのだw

232 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/01(月) 21:06:54 [ TlPxvmxc ]
良し、ゴルゴ13と禁書のクロスを書くぜ!

良し、かなり無理だ!

233 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/01(月) 21:44:45 [ WVETwTxo ]
よし、WORKING!!と禁書のクロスを書くぜ!
よし、言ってみただけだ!!

……しかし、予想以上に面白そうだ。
ネタが分かる人間がかなり少ないだろうけど。

234 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/01(月) 23:33:57 [ OUWiTems ]
>>233
webコミのなら知ってるが。

235 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/01(月) 23:53:11 [ ck/eozNE ]
>>233
犬組猫組両方わかるよ
さぁ書いてみようよ

236 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/02(火) 00:02:21 [ wY2ogW5M ]
>>233
不幸にも殺人チョコを食べてしまい、聖バレンチヌスに遭遇する当麻とかかw
そして、その体験の素晴らしさをインデックスに熱弁されてキレたり?

237 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/02(火) 00:38:27 [ h.pLz8z2 ]
案外にも反響があったようなのでマジで妄想してみるぜ
ちなみに、Webと雑誌掲載の方では登場人物とか違うわけだが。

……どっちの設定にしようか?

238 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/02(火) 15:51:07 [ NM2WaoaM ]
俺は雑誌掲載を先に知ったクチだからそっちの方が妄想しやすい。

・小萌先生を若干の逡巡の末「アリだな」と思う小鳥遊
・何かにつけて伊波さんに殴られる上条
・八千代を見て自分と同じ魔術師かと疑うねーちん
 「実家が刃物店なので」「そんな理由で!?」
・存在感のなさでタメはる音尾店長と姫神

あとぽぷらとインデックスは時々ちょっと似てると思う。ボケ具合とか。

239 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/02(火) 15:58:21 [ wM0dFm06 ]
ヤングガンガンのアレか。
すもももとも考えて見たい。

240 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/02(火) 20:59:30 [ c9fngdHI ]
>>238
空気さんはオーナーじゃなかった?つーか、空気の人、音尾さんっていうんだっけ?w

241 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/02(火) 22:00:13 [ MJz.jJTQ ]
>>239
普通人に見える当麻に親近感を得る所を創造した。

242 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/03(水) 03:36:43 [ TfyeIcKM ]
>>239 >>241
当麻「斗亜流魔術乃禁書目録流……奥義! 幻想殺し!」
 (右パンチ一発でくるくる吹っ飛ぶ敵)
犬塚「ああああああんた強いじゃないですかー!!」

243 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/03(水) 09:30:15 [ VkUYIX5M ]
当麻って何気に強いんだよなぁ。

244 名前:169 投稿日:2006/05/04(木) 20:44:02 [ R2pbAdTA ]
ヤングガンガンではWORKING!!と黒神しか読んでません。169です。
構成を変更したので、今回で第一章 翼なき者たち Red_Angel はおしまい。
それでは画面の前で「それはねーだろ」とつっこむ準備をしてからご覧ください。
どーか誤字がありませんよーに。

245 名前:169 投稿日:2006/05/04(木) 20:45:57 [ R2pbAdTA ]
「要求一。『零時迷子(ヌーンインデペンデンス)』について、貴方の知る限りの知識の提供を願う」
「…………?」
 インデックスは思い切りいぶかしそうな顔をした。驚いているというより、戸惑っているようだ。
 上条にはそのヌーンなんとかというものがどういったものなのか見当もつかない。魔術の名前なのか、霊装の類なのか、はたまた術者の二つ名なのか。しかし、いずれにしてもイギリス清教の最高権限を他宗派の一修道女に預けるだけの影響力を持っていることだけは間違いないと思う。
(くそったれめ……!)
 冗談ではない。
 もうすぐ一端覧祭が始まるのだ。吹寄制理も、青髪ピアスも、姫神秋沙も、他校の生徒たちだって皆一生懸命に準備をしている。大覇星祭の時のような一大事にしてたまるものか。
 ガラステーブルの下で、上条は固く右拳を握った。
 立ちはだかる幻想(かべ)がどれだけ分厚かろうとも、必ずこの手で殺すという意思を込めて。
 固く、強く。
 少しして、インデックスは自信なさげにサーシャに問いかけた。視線を天井に向け、記憶と一々照らし合わせるようにしながら、

「『零時迷子』。――あんなしょーもないもののためにイギリス清教とロシア成教が動いてるっていうの?」

 ずっさーー、と上条は室内でヘッドスライディングした。ベッドの上で丸くなっていた三毛猫が跳ね上がったが気にしない。飛び起き振り向き問い詰める。
「しょーもな……!? おいこらインデックス、なにか勘違いしてんじゃねぇのかさもなくば覚え違いとか! いきなりしょーもないとか言われたらつい今さっきの俺の決意はどーなるんだよ!?」
 話をぶち切られた上のあんまりと言えばあんまりな言い草に、インデックスはちょっとほっぺたをふくらませて、
「そんなこと私に言われても。実際『零時迷子』ってものすごくしょーもない現象なんだもん」
「説明を! 説明をしてくれいつものよーに! さもなくば上条さんは手当たり次第に幻想を殺して回ってしまいますよ!?」
「問一。取り越し苦労ならそれに越したことはないと言っておいたはずだが?」
「そーだけども、そーだけどもこのやり切れない思いはどこに向かえば……!」
 上条は床をどかどかと叩いて悔しさを表現する。その姿に紅白シスターは何かしら意見の一致を得たのか、無言でうなづき合った。
 インデックスはとあるちびっこ教師の真似をして人差し指をくるくると回す。
「どこから話せばいいかな……。うん、とうまもあのお話は知ってるよね? ものすごく有名な魔術的矛盾を抱えた童話だけど」
「ん……? 童話?」
 どうにか座りなおした上条は聞き返す。
 インデックスは夢見る少女のように胸元で手を組んで、
「シンデレラ。零時の鐘が鳴っても硝子(ガラス)の靴が消えなかった矛盾を説明してくれるのが、『零時迷子』なんだよ。もともとこれが名前の由来とも言われているしね」
 挙げられたのは、日本人なら百人中百人がおおまかなあらすじくらいなら知っているだろうおとぎ話の題名だった。上条は記憶喪失ではあるが一般常識などの「知識」は生き残っているため、シンデレラがどういう話かは知っている。
 なるほど、サーシャの言っていた「靴にまつわる問題」というのもうなづけた。
「ってちょっと待て。まさかウォルト=ディズニーやグリム兄弟が実は魔術師で、そいつらが作った魔術だとか言わないよな?」
「…………とうま。いくらなんでもそれはないかも」
「補足説明一。そもそもグリム童話の『灰かぶり姫』に硝子の靴は出てこない。かぼちゃの馬車と共にシャルル=ペローの『サンドリヨン』が初出。それにもともと民間伝承(フォークロア)を編集したものなので、類似した話は中国にだってある」
 そう言われても伊能忠敬は稀代の魔術師でしたとか言われたこともあることだし、と上条はぶつぶつと反論したが、聞き入れてはもらえなかった。

246 名前:169 投稿日:2006/05/04(木) 20:46:43 [ R2pbAdTA ]
 インデックスはまた人差し指をくるくると回し、
「それじゃあシンデレラのお話に沿って説明するね。継母や義理の姉たちに虐げられていた美しい娘。灰の山の中で眠らされていたことから『灰かぶり(シンデレラ)』と呼ばれていた彼女は、お城で開かれる舞踏会に行きたかったけれど、継母たちに行かせてもらえなかった。そこで通りすがりの魔術師が術をかけてあげたわけだね。ではかみじょうちゃん。その術がどんなものだったか言ってみて?」
 すっかりあの先生の気分らしい。背丈も説明好きなのもそっくりなものだから、上条はまるで教室で授業を受けているような気分になった。
 問い自体は「知識」の範疇だし、最近ちょっと聞かされたこともあったので簡単に答えられる。
「ねずみを馬に、かぼちゃを馬車に、みすぼらしい服をドレスに……であってるよな」
「標準的なシンデレラのお話では、そうだね。まあ実際には、それらの周りを魔力物質で覆って造形するなり、見るものに幻を見せる術式をかけるなりしたんだろうけど」
「……そういう言い方をされると身も蓋もないんだが」
 黄金練成(アルス・マグナ)やら御使堕し(エンゼルフォール)なんていうトンチンカンな魔術にばかり関わってきた上条にとっては、その程度の魔術はまだ“常識的”と言えるものだ。驚けない裏話ほどつまらないものはない。
 しかしインデックスは、む、と眉間にしわを寄せ、
「何言ってるの。本当に身も蓋もなくなるのはここからだよ」
「え?」
「それらの魔術には同じ制限があったよね。深夜零時の鐘が鳴り終わると解けてしまうって」
 右手の指を二本立て、
「ある時刻になると解ける魔術の仕組みは大別して二つ。その時間になれば発動する打消しの術式をあらかじめ織り込んでおくことと、注ぎ込む魔力の量を調節して効果の切れる時間を設定しておくこと。シンデレラにかけられた魔術は後者だったんだろうね。そうでないと『零時迷子』は起こらないから」
 上条は聞かされた台詞を頭の中で理解できるよう翻訳してみる。
 一つ目の方法は、目覚まし時計みたいなものだろうか。あらかじめ設定しておいた時間になればアラームが鳴る→効果が消えるということだ。
 なら二つ目の方法は、砂時計に例えればいいだろう。中に入れる砂の量を量ることで、流れきるまでの時間を決めている。
 と、ここで上条はインデックスの説明に妙な点があったことに気づいた。
「…………“起こる”? 『零時迷子』ってのは魔術じゃないのか?」
「うん。あくまで偶然発生する現象なんだよ。とても珍しいことではあるから、魔術世界の都市伝説みたいなものだと思ってくれていいかも」
 変な例えだけど、とインデックスは自分で笑った。
「それで話を戻すとね。シンデレラは零時の鐘が鳴るなか、大慌てで舞踏会の会場を出た。だけど階段の途中で硝子の靴の片方が脱げてしまったわけだね。拾う時間もなく、立ち去った後に、その靴は王子様に拾われた」
 ここでインデックスは自分のグラスを掴み取り、ゴクゴクと中の麦茶を飲み始めた。
 しゃべりすぎて喉が渇いたのかなと思っていると、彼女はほとんど空になったグラスを上条に見せ、
「これがその時の硝子の靴の状態だと思って。注がれていた魔力が尽きかけていて、放っておけばそのまま消えるはずだった」
 しかし、そうはならなかった。この後王子は拾った硝子の靴を手がかりにシンデレラを探し出す。最低でもその瞬間まで魔術は続いたのだ。このことは誰もが知っていて、そして誰もが一度は疑問に思うことである。
 子供なら―また子供に質問されて困り果てた大人なら―愛の奇蹟とかなんとかにしてしまうんだろうが、
「だけどね」
 魔術師ならば違う答えを出せるらしい。
 インデックスは左手でもう一つ(上条の)グラスを持ち上げ、
「こういうことが起こったんだよ」

 もう一つのグラスが傾けられ、
 空っぽだったグラス(まじゅつ)に、少しだけ麦茶(まりょく)が注がれる。

247 名前:169 投稿日:2006/05/04(木) 20:47:28 [ R2pbAdTA ]
「あ……」
 ここまでくればもう上条にもわかった。
 インデックスは両手のグラスを肩ぐらいまで持ち上げて、
「硝子の靴を拾った王子様の生命力を自動で魔力に変換、吸収して、変化の魔術は消滅を免れたと言われてるんだよ。この瞬間、術式の所有権は通りすがりの魔術師から王子様に移った。魔術師にしてみれば、『あれ? 私の魔術はどこにいったの?』って感じだったろうね」
 零時に産まれた魔術の迷い子。
 それゆえに、この現象につけられた名は、
「『零時迷子』、か。……そりゃ確かに身も蓋もない話だな。結局シンデレラを探し出すための魔術を王子自身が使ってたことになっちまうわけだ」
「そ。こんな感じで、消滅するはずだった魔術が人から人へ移りわたっていくことを『零時迷子』って呼ぶんだね。何が原因で起きるのかははっきりわかってないんだけど、魔術世界では余り重要視されてない。構成が雑で、極めて弱い魔術でしか起きないし、それに魔術師同士なら全く問題にならないもん」
 上条は肩の力を抜いた。
 記憶喪失の身では想像することしかできないが、きっと自分も絵本か何かで読んだときに浮かべたであろう疑問をあっさりと晴らされてしまった。
 特にこれといった達成感もなく、むしろ読み終わっていない小説の先のページをうっかり見てしまった時のような虚脱感がある。
 まあ歴史の真実なんて大体そんなものだろう。歴史学者や文学者がこんな気持ちになる職業なら、絶対にそれらには就くまいと思い、
「………………………………………………………………………………ちょっと、待て」
 閃き。
 上条はガラステーブルの上に身を乗り出し、
「それ、やっぱり危険じゃないか? 魔術師なら害にならなくても、俺らみたいな超能力者には。体の中の『回路』が違うから、超能力者が魔術使うと肉体が破壊されちまうんだろ?」
 例えるなら、直流(でんち)で動く機械に交流(コンセント)をつないだ時のように。
 水道管に砂を流した時のように。
 規格の合わない体に無理やり魔力を流したために、内側から壊れてゆく人たちを、上条は何度も見たことがある。
 魔術の所有権が移るということは、移された側の人間が、次にその魔術を使うということだ。魔術社会では取るにたりない都市伝説(ゴシップ)でも、ここは科学万歳の学園都市。靴を拾っただけで死にかけるような事態なんて特別警戒宣言(コードレッド)ものである。
 しかしインデックスはあっけらかんと、
「心配ないよ。『零時迷子』の宿主は生命力をほんの少し吸い取られるだけ。体内に魔力の流れをつくるわけじゃないから、超能力者が宿主になったとしても、ちょっと体が重くなるくらいじゃないかな」
 それにね、といつの間にか二つとも空になったグラスをテーブルに戻し、
「『零時迷子』って長続きしないの。人から人へ移る条件は元の魔術によるけど、いずれにしろ移動の度に伝言ゲームみたいに効果が歪んでいってしまう。儀式もなしに効果だけが残っていくなんてとんでもなく不安定だからね。そのまま自然消滅しちゃうんだ」
 ほんと、なんでこんなしょーもないもののために、とインデックスは説明を打ち切った。
 上条は、うーん、とうなる。
 聞けば聞くほど、思い浮かぶ感想は彼女と同じだった。
 つまるところ『零時迷子』とはひどく弱くなった魔術が偶然持続してしまうというだけの現象で、しかも超能力者にも害がないと保証されてしまったら緊張感を保つ方が難しい。
 なぜこんなものに、という疑問を持つと、自然と目は制服シスターに移った。
 背筋をピンと伸ばして座るサーシャ=クロイツェフは四つの瞳に注視されても動じることなく、それどころかこんなことを言った。
「問二。貴方の持つ知識がそれで全てなら、次の質問に移っても構わないか?」
 へ? と上条とインデックスの声が重なる。
「え、あ、うん。そりゃあ構わないよ。勅命十字(クロスオブオーダー)もあることだし、答えられることなら」
 なんとなくさっきので終わりな気がしていたのだろう。銀髪シスターの返事は若干しどろもどろだった。
 サーシャは間を置く意味でか初めてグラスを手に取り、唇を濡らす程度に傾けた。
 そして言う。

「問三。『零時迷子』の伝達内容に、危険性の高い効果を意図的に付け加えることは可能か?」

248 名前:169 投稿日:2006/05/04(木) 20:48:06 [ R2pbAdTA ]
 ピタ、と。
 インデックスの表情が凍った。
 それは上条の見る限りでは、戸惑っているのでも呆れているのでもなく、真剣に思考している時の彼女の反応だった。
 言葉でなくともオーラが語る。
 これはもはや「しょーもない」などと言える状態ではなくなったと。
 たっぷり三十秒をかけて、インデックスは答えをまとめた。
「結論だけ言うなら、可、だね」
 十万三千冊もの魔道書を抱える少女の本当の役割。
 それは、魔道書の記述を吟味し、照らし合わせ、あらゆる魔術的事象への対抗力となること。
「『零時迷子』の宿主になったことは、魔術師なら絶対に知覚できる。その間に明確な変更のイメージを持つことができれば、ある程度なら効果を変更できると思う。儀式抜きのイメージのみってことは、逆に言えば儀式なしのイメージだけでどうとでもできるってことだから」
「感想一。……やはりか」
 サーシャは神妙にうなづいた。
 置いてけぼりなのは上条だ。シスターたちは何か危機感を共有しているようだが、どれだけ魔術と係わり合いを持っていても結局は素人である少年が横で聞いているだけで理解しきれるほど容易い話ではなさそうだ。
 だから二人に尋ねるしかない。飛びかかりたくなるほどの焦燥を必死に押さえて、
「どういうことなんだ? 今の話は一体何がどうやばいんだよ!」
「……シンデレラの話に戻るけど」
 インデックスが顔を上げる。
「王子様は拾った硝子の靴を手がかりに、国中シンデレラを探して回ったよね。でもここで、この童話のもう一つの矛盾が浮かび上がってくる」
 すなわち、

「どうして硝子の靴はシンデレラにしか履けなかったのか」

 上条は押し黙る。
 それは足りない頭を必死に回して理解しようとしているからで、それがわかるからインデックスも語るのを止めない。
「魔力物質でコーティングしていたのだとしても、幻を見せていたのだとしても、中身はちょっとボロッちいただの靴だよ。足のサイズが同じ人なんていくらでもいるし、たとえオーダーメイドでも他人が全く履けないなんてことはない」
「それは……最初に魔術師がそういう効果をつけてたからじゃないか? それが残ってて」
「“なんで”? もともと零時になれば解ける予定の魔術に、所有者限定を付与するなんて無意味だよ。硝子の靴が“消えなかったのは”あくまで偶然。とうま、考えてみて? 『シンデレラにしか履けない硝子の靴』を最も必要としたのは誰か」
 言われた通りに上条は考える。
 そして、考えるまでもなく、その答えはすでに自分で言っていたことに気づいた。
「まさか……王子か?」
 うなづきこそが答え。
「硝子の靴に所有者限定をかけたのは、王子様の『これはシンデレラの履いていた靴!』という強いイメージだよ。王子様が靴を拾った瞬間、『古い靴を硝子の靴に変える』魔術は、『古い靴を“シンデレラにしか履けない”硝子の靴に変える』魔術になったの。これはあくまで偶然の出来事だけど、術構成の脳内展開に長けた魔術師なら簡単にやってのけるだろうね。それこそ――『履いた者の足を噛み千切る靴に変える』魔術にだってできる」
「…………、」
 黄金練成(アルス・マグナ)、という魔術がある。
 完成すれば森羅万象を意のままにできるというとんでもない魔術だが、問題は詠唱呪文が長すぎることにあった。四百年かけても唱えきれるかわからない長大な呪文に、様々な魔術師が様々な手段で挑み、敗れていったという。
 その手段の一つに、親から子へ、師から弟子へ呪文の詠唱を引き継がせるというものがあった。一生かかってもできないのなら、他人の二生三生もかければいいと。
 しかしこれも失敗する。引き渡していくごとに呪文の意味が歪んでいき、最後には全く別物になってしまったからだ。
 ――だけど。
 もしもその別物に変わってしまった魔術が、それでも何かしらの効果を発揮したら?
 もしもその効果が、とても危険なものだったとしたら?
 そして、もしも、
 危険なまま、引き継がれていってしまったら?

249 名前:169 投稿日:2006/05/04(木) 20:48:38 [ R2pbAdTA ]
「でも、これでもまだ足りない」
 え? と上条は聞き返す。
 インデックスは――自身全く期待していないような顔で――続けた。
「『零時迷子』に危険な内容を織り交ぜて放すっていうのは、確かにどんな疫病よりも厄介ではある。だけど、どんなに恐ろしい効果でも移らないことには意味を成さないよ。伝達条件を満たさないと」
「伝達、条件? それって重要なのか?」
「うん。『硝子の靴』のケースでは、条件は“手で触れること”だったと言われてる。だからシンデレラよりも前に履こうとした人たちには移らなかったって。それにいくら効果を改変したところで、もともと不安定な現象であることには違いないから、やっぱり移り渡っていくごとに崩壊していくことになるはず。誰にでも宿ることができて、構成も崩れない『零時迷子』なんてあるわけが」
「――通告一。それが見つかったからこそ、その危険性を検証してもらうために私が派遣されてきた」
 サーシャの平静な声が、最初の前提にして最後の希望を打ち砕いた。
 インデックスはもはや腹をくくったのか、
「やっぱり……勅命十字が出てくるわけだよ。どこで?」
「解答三。それはすでにそちらの彼に話している」
 と、サーシャは上条に顔を向けた。
 上条は一瞬で理解する。自分が何度も何度も彼女に尋ねた問いかけの解答が、これだ。
 右手で顔を覆い、うめく。
「学園都市(ここ)でか」
 何故とは言わない。うなずいたサーシャが口を開きかけていたからだ。
 制服シスターは淡々と言葉を重ねていく。
「説明一。事の発端は一週間ほど前、学園都市に潜伏させていたロシア成教の諜報員が、偶然『零時迷子』らしき魔術が自分に移ってきたことを認知した。その後伝達条件が満たされてしまったらしく現在の所在は不明。しかし体に残留した術式から分析を試みた結果、その時点での効果と伝達条件は予想がついている」
 待つと、サーシャは一呼吸置いてから、

「説明二。効果は『自分の靴に対する所有者限定の付与』。伝達条件は『童話・シンデレラの内容を知る者との接触』であると見られている」

「――――はあっ!?」
 上条は思わず大声を上げていた。
 シスターたちが驚きの視線を向けてくるが、気にもならない。
 だって、いくらなんでも、
「それはつまり、シンデレラの話を知っているだけで、そのけったいな魔術にかかってしまうってことなのか?」
 そんな馬鹿な話があるか。
 シンデレラは今日日、日本人なら百人中百人がおおまかなあらすじくらいなら知っているだろうおとぎ話だ。世界規模で見ても知らない者の方が珍しいかもしれない。逃れられる者などいはしない。
 インデックスは考え込むような仕草をして、
「おそらく伝達条件に効果に合わせたイメージを含ませることで、移動ごとの歪みを予防しているんだね。制限でありながら、その実全く制限されない反則論法(アウトロー)。長期間継続させることを狙ってやってるとしか思えない。でももしそうなら、それは『零時迷子』じゃなく、誰かが作ったまるっきり別の魔術だよ」
 サーシャは答える。
「解答四。調査段階では『灰姫症候(シンデレラシンドローム)』と呼ばれていた」
(…………?)
 上条はふと違和感を感じた。
『灰姫症候』という名前にではなく、それを口にした時のサーシャの様子に。
 しかし尋ねられる雰囲気ではなかったため、代わりに別のことを聞く。
「えっと、まとめるとこういうことか。今学園都市のどこかに『灰姫症候』って魔術が存在していて、そいつは誰彼かまわずどんどん移っていってしまうもので、魔術師ならその効果を危険なものに変えることができる、と」
 その媒介となるのは、子供から大人まで誰もが知っている童話だ。
 誰もが愛しているおとぎ話が、それゆえに誰にでも牙をむく呪いを運ばされているという現実。
 どこのどなたがどんな目的で作った魔術かは知らないが、到底許せるはずはなかった。

250 名前:169 投稿日:2006/05/04(木) 20:49:43 [ R2pbAdTA ]
「……そういや、結局犯人とかはわかってないのか?」
「解答五。今のところ容疑者らしき人物は見つかっていない。しかし解析班が言うには、現在『灰姫症候』は試験期間中なのではないかと」
 無言でいると、サーシャはもう一度唇を濡らし、
「補足説明二。外部との出入りが制限されていて、魔術への抵抗力も乏しいこの街なら、崩壊せず移動が続けられるかどうかの試験がしやすいと。そしてもしそうであるなら、術者は何らかの方法で『灰姫症候』をトレース、観察しているはず。だから何か致命的な異変が起きるか、術者が試験を終え回収しだす前に『灰姫症候』を確保したい。そうすれば逆探知ができる」
「へ? んなことできるの?」
 上条が驚くと、サーシャはどこか自慢げに胸をそらし、
「解答六。そのために私が選ばれた。ロシア成教『殲滅白書(Annihilatus)』は『あらざるもの』の探知破壊(サーチ&デストロイ)を専門とする。加えて禁書目録の知識も借りることができるのなら、十分可能だ」
 餅は餅屋というやつか、と上条は納得した。それならば自分は役に立てないだろうということも。
 上条当麻の右手に宿る力、幻想殺し(イマジンブレイカー)は、触れるだけであらゆる異能の力を打ち消してしまう。
 その効果は絶大で、セーブが出来ない。だから破壊でなく捕獲が目的ならば、むしろ上条は近寄らないほうがいい。
 それは、ちょっと情けなかった。
 インデックスはそんな上条の思いに気づいた様子もなく、空になったグラスを弄びながら、
「犯人も目的もわからないっていうのが一番怖いね。なのに現実に『灰姫症候』はある。今の所は無害な効果だけど、だからって放っておくと――素人のイメージでも場合によっては変化する可能性があるからね――事態は悪化しかしない。先行き不透明な楽観ほどみっともないものはないもん。いつどこでどんな風に爆発するかわからない爆弾を放置しておいちゃいけないよ」
 上条とサーシャは同時にうなづきあった。
 これは何かが起きてから対処するための戦いではない。何も起こさないための戦いだ。
 役立たずが確定している上条だが、それでも何かできることはあるだろう。
 使いっぱしりでもなんでもいい。とにかくこの事件は絶対に起きる前に解決させなければならない。
 あ、ところで、とインデックスはグラスを戻し、
「ねえサーシャ。できれば私のことはインデックスって呼んで欲しいかも。しばらく一緒にいることになると思うし……ね?」
 微笑んで、言った。
 サーシャは虚をつかれたように目を丸くする。
 しかしそれ以上に上条も驚いていた。
 上条の知る限りでも、インデックスの学園都市(このまち)での知り合いはそう多くない。また、その中でも彼女をインデックスと呼ぶものはさらに少ない。
 禁書目録としてのインデックスを知らない者にとっては、その名前は趣味の悪いあだ名にしか聞こえないからだろう。かといって他に名前があるわけでもないから、皆、「○○シスター」などと勝手に呼ぶ。
 だから敵対していない(ここ特に重要)魔術サイドの人間、それも年齢の近い少女と知り合えたことは、インデックスにとってとても気安いことなのかもしれない。
 なんとなく浮かんだのは、彼の名前を何度も何度も呼んでくる彼女のイメージ。暗い夜道と、夏の日と、あと洗面器。
 記憶にない幻想(シーン)だったけれど、その中の彼女は呼びかけ、呼びかけられることを喜んでいた。
 だから、いいんじゃないかな、と上条は思う。きっといいことなんじゃないかな、と。
 やがてサーシャは――もしかしたら照れているのかもしれない――曖昧な表情で、
「……了解。インデックス、貴女の協力に感謝します」
 小さく、髪が軽く揺れるくらいのおじぎをした。


 さて。ここで一つ明らかにしておかなければならないことがある。
 これは上条当麻自身あんまり関係ないことだと思い、黙っていたことなのだが、後々そうも言っていられなくなったことだ。
 大した用件ではない。むしろ子供じみた、だけどちょっぴり運命的な。
 つまり一体何が言いたいのかというと――

 一端覧祭で上条のクラスが行う劇の演目が、まさしく「シンデレラ」だったのである。

251 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/05(金) 14:09:50 [ I5WyoT62 ]
ツンデレラだとぉ!?!

252 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/05(金) 14:35:53 [ 2..qQO/E ]
>>251
やはりそう見えたよな!? よかった、俺だけじゃなかったんだ……

WORKING!!とのクロスはもう少し待ってね。早ければ連休中に投下できると思うから

253 名前:233 投稿日:2006/05/06(土) 16:46:37 [ F/JExoec ]
WORKINGとのクロス書くと言った者です。

率直に言います。スマンみんな、挫折した。
実を言うといろいろ考えてたんだが、設定の矛盾とか見つけちゃうともうやる気削がれちゃうのね。
それとWORKING!!のあのノリを文で表現しようとするとあまりにも無理すぎてSAN値も削がれちゃうのね。
そもそもシーンメイカーの俺が長文書くというのが無理な話だったわけさ。
見苦しい言い訳だらけでごめんね(・ω・`)

途中までだけど書いたものを投下しとくよ。続きが書きたければ誰か書いてくださいお願いします

254 名前:233 投稿日:2006/05/06(土) 16:47:14 [ F/JExoec ]
序章 アルバイト The_WORKING!!

 アルバイト始めました。
 泡まみれのスポンジで武装した典型的な皿洗いスタイルの上条当麻は、ぼんやりとそんなフレーズを思い浮かべた。せっせと食器の油汚れを拭き取る上条の周りでは、忙しなく他の従業員(スタッフ)が動き回っている。
 場所は某ファミレス。八月最後の日、魔術師との戦闘に巻き込まれて多大な被害を被ったあの店舗である。
 本来なら顔を出すのもおこがましいような場所で、なぜ上条がアルバイトなんぞをしているのか。
 その理由は単純明快。器物破損の罪により損害賠償を請求されてしまったからである。
 当然ながらただの高校生の上条に支払い能力などあるはずもなく、金がないなら体で払え方式で絶賛ただ働き中というわけなのだ。
 ちなみにその請求額、二十万とんで三千円という大打撃。上条さんちの家計簿も真っ赤もとい真っ青である。
 店の一部を大破させた関係者でありながら、知らぬ存ぜぬで通せるほど世の中甘くはない。
 先日、上条は不幸にもファミレスの店長と遭遇し、捕縛・連行・尋問の三連コンボに身元特定という裏技(ウルテク)を喰らって戦闘不能に陥った挙句、ただ働きの契約をさせられて現在に至るというのが事の経緯である。
 ふと上条の脳裏に、ムキムキ店長とにこにこウェイトレスさんその他殺気立った従業員に小一時間問い詰められた苦い記憶が蘇った。
「…………うだー」
 あふれる涙をさめざめと流しながら上条が皿を洗っていると、件のにこにこウエイトレスさんが近づいてきた。
「上条くん。店長からの伝言で、後で話があるそうですよ」
 そんな用件を伝えるだけで何度も転びそうになっているあたり、ドジっ娘巨乳ウエイトレスの名は伊達ではない。
 よたよたと頼りない歩みでにこにこウエイトレスさんがフロアに戻っていくのを見送り、上条は溜め息を吐いた。
 店長からの呼び出し。
 付け加えるなら、職業選択を間違えたとしか思えないほどマッチョムキムキな店長の呼び出しである。何を言われるのかと考えると、これ以上憂鬱なことはない。

「上条君。君には他のところで働いてもらいます」
「……はい?」
 にこにこウエイトレスさんばりに笑顔なムキムキ店長は、開口一番上条に向けてそう告げた。
「ちょっと知り合いの店の方が人手不足らしくてね、明日からこの地図の場所で働いてくれるかな?」
 そういうとどこからともなく一枚の紙片を取り出すムキムキ店長。
 上条が紙片を覗き見ると、そこには丁寧な筆跡で地図が描かれていた。手書きの地図には目的地らしき場所に印が書かれており、色の違うペンで店名が記されている。
「えっと……」
「お願いできるよね?」
 上条の目を至近距離で覗き込みながら、有無を言わせぬ迫力で言う店長。
 それは言外に命令というか強迫してますよねー! と上条は泣き叫びたくなった。というか、もう涙腺が緩み始めている。
「そうか、ありがとう上条君! いや、先輩の頼みだから断り辛くてね。バイトを一人寄越してくれと言われた時はどうしようかと思ってたんだよ」
 返事も聞かずに一人納得して、上条の肩をバンバン叩きながらHAHAHAと米笑するムキムキ店長。
 先輩ってだれですか、という疑問を口にすることも出来ないまま、上条はドナドナされていく子牛の気分で帰路へとつかされたのであった。

打ち切りです(・ω・`)

255 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/07(日) 00:06:25 [ URYngSPs ]
やるじゃない。
単発でも良いからこんな嘘予告はもっとお願いしたいね。

256 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/07(日) 06:50:05 [ QpNoonlk ]
二十万とんで三千円と言う額に何故か見覚えがあったのでぐぐってみたら噴いたw

257 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/11(木) 22:52:12 [ 1mnN7tdc ]
なんとなく思いついた小ネタでも

学園都市のある街角にて。
「あ、カミやん」
「?!……し、失礼ですがどちら様でせう?」
「(あ!まず)え、えーと……下宿先の同僚が持ってる写真に写ってる人だぁ…なんて」
「何ですと?ち、ちなみにその同僚さんはどこのどちら様でしょう?」
「男ですよ、その同僚……なんでいきなり地面に突っ伏すん!?」
「上条さんはそっち方面に耐性は在りません!……ところで何故にいきなり関西弁?しかもエセ」
「あー…っとぉ、その同僚の口調が伝染ったみたいや……ですね」
「ひょっとして、君の下宿先ってパン屋さんか?」
「あ、そうです。何で判ったんですか、って何ですかその形相!」
「そーかそーか、あの野郎ですかそんな紛らわしい真似してるのは。今度会うときはテメェの命日と思えよ?」
「ごめんなさい!謝るから命だけは助けてぇな、カミやん!」
「?何故にあなたが謝りますか」
「あーいやー、あっもうこんな時間だぁ。じゃあ私はこれでっ!」
「……なんだったんだ、あの娘」

そんな七月二十六日。



青髪ピアス=誘波説の電波を形にしてみました
電波故取り止めの無いものですけど

258 名前:198 投稿日:2006/05/13(土) 21:24:11 [ iaiSmrVg ]
十分後。
「まぁ、今日のところはこれ位にしといたるわカミやん」
「ここまでやっといて、まず第一声がそれか!?」
もみくちゃにされた挙句、その顔に『私は性犯罪者です』と落書きされた上条は青髪ピアスに食って掛かった。
「ハッ、何を言うとるねんカミやん。マジックで書いたっても良かったんやで?」
ちなみに何で書いたかというと、
「だからってわざわざ筆と墨汁で書くんじゃねぇ!お前はあれか、書道の時間に何かに目覚めた中学生かー!」
しかもやけに達筆だ。
「どの口でほざくかなぁカミやん!そんなにされて、まだ見せ付けてる時点でカミやんは何されても文句は言えん筈やんか!」
その上条の右手は、今でも姫神の左手をしっかりと握っていた。
余談ではあるが、上条が押さえつけられて落書きされている最中、姫神に離れるように促すクラスメイトはいなかった。後日、クラスメイト(女子)は語る。
「あの時の姫神さん、どこか嬉しそうだったし。そんな事言える雰囲気じゃなかったの」
閑話休題。
青髪ピアスに痛いところを突かれて、上条は言葉を詰まらせた。
事情が事情だけに軽々しく説明する訳にも行かないし、よしんば説明できた所で、クラスメイトがそれを信じるかどうかはまた別の問題だ。
何も言えずに唸っている上条を見て、青髪ピアスは上条の肩に腕を回して耳元でささやく。
(まぁ今の状況でカミやんが右手を離さん理由は何となく判るけど。あれやろ、姫神さんの能力に関係しとるんとちゃうのん?)
そう言われ、はっとした表情で青髪ピアスの顔を見返す。
上条当麻は学園都市内では何の能力もない無能力者(レベル0)として認識されているが、それでも月詠小萌や御坂美琴のように、その特性を知っている人間は少数ながら居る。
青髪ピアスもその中の一人だ。
(状況から察するに、感情の昂ぶりによって誘発するようなイヤボーンタイプやね?)
正解は能力を封じていたものを壊してしまったから、です。とは言えない。
(あー、まぁそんな感じだ)
(ならしゃーないなぁ)
そう言って青髪ピアスは上条から腕を離し、
「よーし、じゃあ後は若い二人に任せよかー?」
「待てやテメェ!今までの流れから言って『ここは協力するで』とか言い出す場面じゃないのかよ!」
「寝言は寝て言うべきやね、カミやん。そんなアツアツっぷりを見せ付けられて絡めるほどボクは人間できてへんわ!」
言いながら青髪ピアスはくるくる回って上条の間合いから離脱し、
「ほらほら皆ー、馬に蹴られる前に退散するでー?」
そのまま教室から出て行ってしまった。その言葉に従ってと言う事ではないだろうが、他のクラスメイトたちも次々に教室から出て行ってしまい、
「…………」
「…………」
後には上条と姫神、二人だけが残されてしまっていた。二人は顔を見合わせて、
「えーと……、どうする?」
「とりあえず。その顔を洗った方が良いと思うけど」

259 名前:198 投稿日:2006/05/13(土) 21:24:43 [ iaiSmrVg ]
上条の顔に書かれた落書きを消す為に、二人は食堂の手洗い場までやってきた。
校舎の中にはまだ他の生徒が残っていて、それらとすれ違うたびに上条は仮面の、もとい落書きの下の涙をぬぐった。
左手一本で難儀をしたが、それでも墨を洗い落とし、備え付けのタオルで顔を拭こうとした所、
「君。こっち向いて」
姫神に声を掛けられた。その声に従い姫神の方へ顔を向け、
「何だ姫、ぶっ」
「動かないで。拭いてあげるから」
姫神はどこから出したのか、フェイスタオルで上条の顔に付いている水滴を拭き取った。
(何なんですかこのシチュエーションは!?)
年頃の女の子に顔を拭いて貰うと言う、これまたクラスの男子が見たら嫉妬の炎が再燃しそうな状況の中で、上条はこの現状に軽いパニックを起こしていた。
「はい。綺麗になった」
「あ、ああ。ありがとな、姫神」
上条の顔を拭き終わった姫神は、右手だけでフェイスタオルを折り畳みそれをスカートのポケットへと仕舞う。それを見て、
「……姫神さん、ひょっとしてそのタオルはそこから出したのでせう?」
「そうだけど」
(えーとつまりあそこに仕舞っていたモノで俺の顔を拭いた訳であの匂いはつまりいや深く考えるな上条当麻!)
一瞬脳裏をよぎった不埒な幻想を殺し、
「と、ところで姫神。これからインデックスの所へ行って、その十字架の事をどうするか相談しようと思うんだけど」
と、これからどうするかを説明する。と言うより、それしか選択肢は無い。
「それは良いけど」
上条の意見を聞いて、姫神は一度頷いたあと。
「君は。お腹は空かない?」
姫神の問いに、
「あー、そうだなー。家に帰ってから食べようにもこのままじゃ用意できないし、どこかで食べてから行くか」
元よりそのつもりだった事ではある。二人きりで、と言うのは想定外のことだったが。
「ただ、どこで食べるかだよなー」
と言って、上条は周りを見回す。この食堂は土日は開いてないので、ここでは食事は取れない。
「別に。どこでも。ファミレスとか。ファーストフードとか」
「そっか、じゃあとりあえず学校から出るか」

260 名前:198 投稿日:2006/05/13(土) 21:25:42 [ iaiSmrVg ]
お久です
二週間でここまでしか・・
次の場面で他のキャラと絡む予定です
では ノシ

261 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/13(土) 23:19:04 [ 7amqx9eQ ]
>>198
GJ、十巻で姫■萌えに覚醒したハートにキュンキュン来た

262 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/14(日) 19:48:22 [ tVSI5CB. ]
本スレより
855 :イラストに騙された名無しさん :2006/05/14(日) 18:29:03 ID:+2Q40HGE
>>825
授業中の御坂美琴は、ふと魔が差してノートに書き込んだ。

上条美琴

(って、なにやってんのよ私ってば!!)
慌てて消しゴムでズシャーッと消し潰す。頬が熱い。
(あー、もう。最っ低・・・)
自分の行動に赤面する彼女は、気づいていなかった。自分の後ろの席で、白井黒子が
血の涙を流していることに。

「ぬぐぉぉぉおぉおお!! あの腐れ類人猿がぁぁぁぁぁ!!」
「・・・って、なんでアンタがここにいんのよ!?」



こういう小ネタもいいもんだ

263 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/17(水) 17:59:22 [ k/ISs7so ]
>>260
右手ふさがってるのに食事……「あ〜ん」か、「あ〜ん」イベントが来るのか!?

264 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/18(木) 05:58:17 [ yIenJwrA ]

 ◆───────────────────────────────◆
 ◆とある魔術の禁書目録11                   ◆    
 ◆【著/謙池和馬 イラスト/仄村キヨタカ 定価:599円】              ◆
 ◆───────────────────────────────◆
最終局面に達した科学サイドと魔術サイドの戦い。
その中当麻は両サイドのあいだで葛藤する。科学につくか?魔術につくか?
彼の迷いもむなしく事態はついにレールガンと10万3千冊の正面対決までに向かうが・・・
そのとき現れた巨大宇宙船、彼らは吸血鬼の宇宙人であった
ここぞとばかりに当麻は停戦調停を行うべく奔走する。
出された停戦の条件は宇宙船を落とすこと。
外部からの破壊は不可能、ならば内部からと当麻は姫神を送り込むことを決断する。
科学と魔術が手を組むとき新たなる物語が生まれる。

265 名前:198 投稿日:2006/05/18(木) 21:53:08 [ M.xoH8uI ]
通学路から一本外れた路地。
とある空きテナントの前で、上条当麻は項垂れていた。
「う、うだー」
その空きテナントにはシャッターが下りており、『短い間でしたがご愛顧ありがとうございました』と言う張り紙が張られていた。
「要するに。当てが外れた。と」
そんな上条の隣で、姫神は言わずもがなの意見を述べる。二人とも未だに『お手て繋いで』状態だ。
はっきり言って、端から見ればカップルである。
「……右手使わなくても食べられる食事法なんて、手掴みしか思いつかねーから、ここに来たのに」
「知っても仕方のないことだけど。ここは何のお店だったの?」
「パン屋」
端的に返ってきた答えに、姫神は眉根を寄せる。と同時に、一つ納得もした。
上条当麻にとって今の状況と言うのは、別に気取ったりしなければならない状態と言う訳ではないようだ。
そこまで考えて、知らず浮かれていた自分に気付く。
「?どうした姫神。急に頭を振ったりなんかして」
「なんでもない」
少し自重しよう。今のこの状態は緊急措置。彼はなんとも思ってない。
「ところで。当てが外れた所で。次の候補とかは決まっているの?」
「あー、いや、これといって」
まいったなぁ、とばかりに頭を掻く上条。
「なら。あそこのファミレスで良いのでは?」
と言って姫神は、右手の角にある看板を指差す。その看板自体はそんなに珍しいものではない。学園都市内だけでも複数の店舗を出している良くあるファミレスの看板だ。
「どう?」
首を傾げて、問う。その問に上条は、
「……なぜか、あそこには行ってはいけないという警告文が脳内に流れてるんだけど」
と、訳のわからない事を言い出す。
「?もしかして。問題を起こした事があって。入りづらいとか」
「いや、それはうちの近所のファミレスだし」
否定しないのか。
「しかも俺が起こした問題じゃないし……」
聞かれもしてない事まで答えている。
「なら。何も問題はないのでは?」
その姫神の言葉を否定する材料は、上条にはない。
「うーん、まぁ探すのも面倒だし、そこでいいか?」
「私は。別に」
これで目的地は決まった。

ちなみに看板には『右折5km』とある。
上条はまだ気付いていない。

266 名前:198 投稿日:2006/05/18(木) 21:53:56 [ M.xoH8uI ]
「初志貫徹って大事だよな」
「大袈裟だね。君」
夏は過ぎたと言っても、まだ9月も始まったばかり。昼下がりの日差しは、やはり鋭い。
途中でへこたれそうになりながらも(上条が、であるが)、二人は目的のファミレスに辿り着いた。
外から見た限りでは、結構混んでいるように見受けられる。
「こりゃ、待つかもな」
「大丈夫かも。ほら。誰も待ってない」
と言って姫神が指差したのは、レジ前にある待合スペース。確かに誰もいない。これなら待つことになっても然程時間は掛かるまい。
「いらっしゃいませー。二名様で御座いますかー?」
入ってきた学生カップルに笑顔で応対するウェイトレス。この程度で目くじらを立てていては客商売は成り立たない。
「こちらへどうぞー」
二人が案内されたのは、窓際の四人がけのテーブルだった。
普通に向かい合って座ろうとした上条の右手を、姫神は引いた。
「君。この手をテーブルの上に出して座るの?」
言われて、その映像を思い浮かべる。

――向かい合って座る二人。テーブルの上に出された二人の手は、固く結ばれている。

頭を振って、その映像を散らす。
「分かった。隣り合って座ろう」
それはそれで意味深な映像なのだが。
まぁ背に腹は代えられないだろう。


「ご注文はお決まりですか?」
先程のウェイトレスが注文を取りにきた。一瞬顔が引きつったように見えたのは、多分気のせいだ。
「BLTサンドとコーヒー。あとウィンナー盛り合わせ」
「ゴーヤとエスカルゴの地獄ラザニア。あと。ドリンクバー」
姫神の頼んだ注文に既視感を覚える。
まぁ気のせいだろう。
何せ、上条当麻は記憶喪失なのだから。


ウェイトレスが下がった後、すく、と姫神が立ち上がった。
「?どした、姫神」
「ドリンクバー。取りに行かないと」
言われて、上条は、
「あぁそうか、って」
立ち上がりかけて、難色を示す。この混雑した店内を二人揃って歩くのは、どこか気恥ずかしいものがある。
「大丈夫。堂々としてれば誰も気にもとめない」
言外に、さぁ早く早くと急かす姫神。こう言われれば、上条としても従わざるを得ない。ここでごねたら、まるで。
(まるで俺だけが意識してるみたいだしな)
「分かったよ。それだったら俺もドリンクバーにしておけば良かったな」
「どのみち。コーヒーのおかわりはセルフサービス」
「……それもそうだ」
二人して席を立ち、ドリンクバーへ。
そこで。
「お?」
「あらあらあら」
「あーっ!」
「?」
どこかで見た顔二つと遭遇した。

267 名前:198 投稿日:2006/05/18(木) 21:56:13 [ M.xoH8uI ]
ども、198です
とりあえず周一ペースで顔を出したいなー、と思ってます

長くなりそうな感じがしてきたので次までに通しのタイトルを考えておきますね



なんか姫神ばっか書いてるなぁ自分

268 名前:198 投稿日:2006/05/18(木) 21:59:13 [ M.xoH8uI ]
周一じゃねーよ
週一だよorz
愚か者め

269 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/18(木) 23:18:15 [ nZUWRalw ]
グッジョブグッジョブ!

そして修羅場か、修羅場なんだなっ!

270 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/19(金) 13:18:22 [ Sl/x6P0I ]
修羅場ってください。

271 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/19(金) 15:03:21 [ .tc.GFXI ]
ビリビリか!? ビリビリなのかッ!?

272 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/19(金) 19:27:55 [ Pz.6FqKg ]
とりあえずこれでも見て落ち着くんだ、みんな

つ茶褐色に変色した鋸
つ柄の一部以外がどす黒く染まった包丁

273 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/19(金) 21:30:47 [ 9EKJDT.A ]
>>272
回答一。それは私の鋸だ。直ちに返却を要請する。

274 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/20(土) 03:34:14 [ FFG8txUI ]
手を繋がなくても背中とか肩とか頭とか胸とかでいいような

275 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/20(土) 21:04:49 [ fmuKCYB2 ]
エッチなのはいけないと思いますっ

276 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/20(土) 22:41:32 [ h9gLFMGg ]
突如、学園都市は“闇”に覆われた。
作り出された巨大な密室。
囁かれる「非公式肉体変化」の超能力者。
更にその中で発生した密室殺人事件。


そこに、一人の魔術師が降り立つ。


「犯人は、詐欺師(トリックスター)だ」
宣告。
そして魔術師は犯人を嘲笑うようにトリックを解き明かす。
一方土御門と共に巨大密室の調査を進めていた上条は―――。
空腹でぐったりしながら魔力元をサーチしていたインデックスは―――。


招かれざるモノ“C”と魔術師の物語が幕を開ける。
『トリックスターズC』開幕!



すまん妄想だ許してくれ。

277 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/21(日) 22:46:35 [ S08xxJMY ]
◆───────────────────────────────◆
 ◆とある魔術の禁書目録11                   ◆    
 ◆【著/謙池和馬 イラスト/仄村キヨタカ 定価:599円】              ◆
 ◆───────────────────────────────◆


せまる文化祭。だが上条のクラスではいまだに出し物が決まらない!
演劇か喫茶か…議論は平行線をたどっていった。
そんな中立ち上がる土御門元春。
「サバイバルゲームで決着をつけるにゃー。」

演劇軍と喫茶店軍。両者が争う先には何があるというのか…
そして孤軍奮闘の水着相撲軍青髪ピアスの運命やいかに!
戦場に木霊する少年少女たちの叫び…
そして新たなるフラグが…

銃と銃が交差するとき物語は始まる…

278 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/21(日) 23:02:14 [ KcPkZAck ]
>>277
それなんてスクラン

279 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/22(月) 00:53:45 [ kDp/dTes ]
>>277
女装のオッサンは誰がやるんだよw

280 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/22(月) 01:39:53 [ 3EuPxZJE ]
>>279
刀夜でしょ

281 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/22(月) 05:32:29 [ yi7IdkVs ]
皆よく考えるんだ!
いつもスーツ、女性に仕えている(?)、飛び道具(?)が扱える……

 闇咲がいるじゃないか……!!

282 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/24(水) 12:26:09 [ /yzVfyZA ]
ステイルと対峙するレベル5の発火能力者
超電磁砲に襲い掛かる「雷帝」と呼ばれる魔術師
「聖人」神裂火織と激突する「魔人」
という電波を受信した。

283 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/24(水) 17:29:59 [ g1n0MfIw ]
何だったけそれ?
ゲットバッカーだったか?

284 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/24(水) 18:24:27 [ /yzVfyZA ]
すまん、ゲットバッカー?とかいうの知らないんだが、雷帝なんて呼ばれるキャラいるの?w
雷が関係する単語で適当に見繕ってきただけなんだが…

285 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/24(水) 19:59:28 [ SKlS9SNg ]
 とある日。
 上条当麻は不思議な幼女が誘拐されるのを発見してしまう。
 幼女の顔はどこかで見たことのあるようなないような顔で、そして聞き覚えのあるようなないような口調だった。

「――みっミサカはミサカは誰か助けてー!!と叫んでみたり!! ゆーうーかーいーさーれーるー!!とじたばた暴れては疲れてぐったりしてみたり……」

 そんな姿を見て上条が黙っていられる訳はなく――。


 同時刻、病院から抜け出した一方通行は自分の殺し損ねた少女と再会していた。
 少女が呟いた言葉は怨嗟の声でも恨み言でもなかった。

「――ミサカ20001号、打ち止めが、誘拐されましたとミサカは告げます」

 今、最弱と最強の運命が交差する。
 たった一人の幼女を巡り、学園都市は混乱の渦に巻き込まれた――。



 とある幼女の打ち止め



 という妄想

286 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/24(水) 22:53:45 [ tk.rHz8k ]
>>283
>>284
週間少年マガジンでやってる長寿連載『奪還屋ゲットバッカーズ』だな。
主人公の一人が雷使い。ボケ担当、飯や電気で傷が癒えるので一発逆転や立直りからの再戦が多い。
「雷帝」はそいつの昔のあだ名で、副人格。めちゃ強いっつーか強すぎてドラえもんな感じ。

…九巻くらいまでが一番面白かったなぁ。まだ集めてるが、今、三十五巻。

287 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/25(木) 01:10:37 [ XVN76txU ]
>>286だけだとアレなんで。ゲットバッカーズからこんな妄想。

当麻、禁書を救うと同時に死亡。
ステイル「君が死んだらあの子も生きていけない…そんな事も分からない程馬鹿だとは思わなかったよ。
     …君が死んだら意味がないだろうが!起きろ馬鹿者!!」
土御門「何でだよ、カミやん…。俺は、本当にカミやんの為にこの命を使おうと思ってたんだぜ?」
青ピ「…あるよ。一つだけ、カミやん救ったれる方法が―――」

美味しいとこを持っていく青ピ、初めて能力が出るが命と引き換えに使いフェードアウト。
主人公がステイルになってるが気にしない。

288 名前:198 投稿日:2006/05/25(木) 23:12:14 [ NOLNtxDU ]
どーも、198です
続きを投下させていただきます
あ、通しの題名がつきました

「彼女にとってはすぺしゃるな週末」(副題:彼にしてみれば割と良くある日常?)

では、投下します

289 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/05/25(木) 23:13:16 [ NOLNtxDU ]
この邂逅より時を遡ること少し。
「で、黒子。アンタいつまでついて来る訳?」
「それは愚問ですわお姉様。お姉さまの行く先こそがわたくしの目的地ですわ」
御坂美琴と白井黒子は常盤台中学の下校ルートからは幾らか外れたところにあるファミレスの中で、噛みあっている様で実は噛みあってない会話をしていた。
「全く。風紀委員の仕事とかは無いの?」
「ええ。先日のテロ事件で働きを評価していただきまして、今日は完全完璧のフリーですの」
対面に向かい合って座った二人は、互いに注文した食事を順調に減らしている。
ちなみに美琴はミルク風味ミートソーススパゲッティーにオニオンサラダ、白井は茸ソースのハンバーグとパンのセット、飲み物は美琴はホットミルクティーで白井は黒烏龍茶と言ったメニューであった。
「あー、こないだの?」
「はいですわ。ですから、今日は前々から計画していた『お姉様密着大作戦』を実行しようと思いましたの」
「何なのよ、その聞くだけで気分が萎えそうになる作戦は。で?」
げんなり、と言った感じで美琴がフォークを振りながら先を促す。
「最近のお姉様の行動はどこかおかしいと思いますの。門限ギリギリまで出歩く回数も以前に増して増えたような気も致しますし、こうやって寮や食堂以外でお食事をとろうとする事も多くなったような気がするんですの」
ぴたり、と一瞬美琴の動きが止まる。しかし何事も無かったように再び動き出し、
「ふーん、そうだったかしら」
と、白井の顔を一瞥する。
「それで?私の行動が変だからどうしようっての?」
「そんなことは聞くまでも無い事ですわ、お姉様」
美琴の視線を真正面に受け止めて、白井は宣誓する様に右手を胸に当てて謳い上げる。
「お姉様についた悪い虫を排除するに決まっているじゃありませんか」
ずべしゃあ、と言う効果音がつきそうな程の大きな動きで美琴はずっこけた。
「まぁまぁまぁお姉様ったら、そんなわかり易いリアクションをなさっては一目瞭然ですわよ」
「な、な、な、なんて事を言うのよアンタはーっ!?」
がばっと起き上がりながら、美琴は叫ぶ。
どうでもいい事だが、ここが公の場という事を忘れてはいないだろうか?
「どこをどうやったらそんなトンデモな話になるのよ!て言うか大体悪い虫ってのは何!?」
「それは勿論、あの殿方の事ですわ。夏休みの終わりの日に寮の前でなさっていたやり取り、忘れたとは言わせませんわよ?」
「あ、アイツは全然、そんなんじゃないわよっ!何言ってるのよ?」
「そんな!?わたくしの推理が間違ってるとでも?」
「間違いも間違い、大外れよ!!」
怒りの所為か、顔を紅潮させて美琴は吼えた。
……隣の席のカップルが刺激しないように席を立っていく。
「……でしたら、何故このような所でお食事をなされるのですの?」
至極当然と言える疑問を、白井は投げかけた。
「……今日はそういう気分だったのよ」
そう言って、温くなったホットミルクティーを一気に呷る。
「まぁ、そうだったのですの。わたくしはてっきりお姉様が、このファミレスはあの殿方と会ったことがある場所でここでなら偶然会えるかもいえ例え会えなくてもそんな想い出に浸りながら優雅に食事をしたい、と思っておられるのかと思いましたわ……って大丈夫ですの!?お姉様!」
白井は突然咽た(奇跡的に口の中のものをぶちまけると言う醜態は晒さずに済んだ)美琴の背中を擦ろうとして、テーブルを回り込もうとする。
そんな白井の動きを片手で制し、
「えほっ……大丈夫よ。ったく、いきなり変なこと言わないでよね」
と言いながら、カップを片手に席を立つ。
「あら、おかわりですの?でしたらご一緒いたしますわ」
と言って、白井も自分のコップを空にして席を立つ。
「別に一緒に来なくてもいいわよ」
「そうは参りませんわ。お姉様ある所わたくしありですもの」
はいはい、と空いてる片手をひらひらとさせてドリンクバーへと向かう。
そこに待ち受けるモノを知らずに。

290 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/05/25(木) 23:13:46 [ NOLNtxDU ]
で、現在に戻る。
口火を切ったのは上条だった。
「御坂と白井じゃねーか。こんな所でも会うなんて奇遇だな」
その言葉に、白井が反応する。
「まぁまぁまぁなんという事でしょう!噂をすれば影が射す、と言うのはあながち間違った言葉でもございませんのね?」
これに美琴が過剰に反論する。
「な、何言ってんのよ黒子!誰が誰の噂をしてたって言うの?」
「あら、そう言えば噂をしていたのはわたくし一人だけでしたかしら?」
えへ、黒子失敗☆、などと頭をコツンと叩きながらウインクする白井。
そして、そんな流れについて行けないのが若干一名。
「………………。誰?」
ぽつり、と呟かれた姫神の問いに上条が答える。
「あぁ、姫神は会った事無いよな。えーと……」
一瞬の逡巡後、続ける。
「常盤台のレベル5ビリビリ中学生とそのルームメイトの風紀委員だ」
「ちょっと!何なのよその説明の仕方は!」
美琴の抗議もどこ吹く風。
「常盤台のお嬢様でもファミレスなんかに来るんだなぁ。もっと良いもの食えるんじゃないのか?」
「それは勿論そうですわ。グレードで言えば、こちらの料理など足元にも及ばないクラスだと個人的には思いますわ。まあ、これはこれで良いものだとは思いますけれど」
「って黒子も普通に流すんじゃないっ!……それで、そちらの方はどこのどちら様?」
一頻り激昂して深呼吸一つ。とりあえずの平静を取り戻して、今度は美琴が問う。言葉尻に微妙な殺気が滲み出ていたりするが。
「姫神秋沙。クラスメイトだよ」
この上条の言葉に、
「へぇ……、クラスメイト、ねぇ……」
なぜか押し殺すような声で唸る美琴と、どことなく楽しそうな顔になる白井。
二人の視線の先には、しっかりと繋がれた上条の右手と姫神の左手がある。
「ははぁ、クラスメイトさんですの。でも、ただのクラスメイトだ、とは仰いませんわよねぇ?」
ぷぷぷ、と笑いそうな仕草で口元を押さえながら白井が言ってくる。それを聞いて、更に美琴からの視線が強まる。
「……えーと」
(何、何なの、何なんですかこのプレッシャーは!?何かマズい事を言いましたかー!?)
強いて言えば、その鈍感なところが拙かったかと思われます。
美琴からの理不尽なプレッシャー(上条主観)を受けて硬直する上条。
と、姫神がその上条より一歩前に出る。
「始めまして。私。姫神秋沙」
ぺこり、と一礼。
「それで。あなたたちの名前も教えてもらえると。ありがたいのだけれど」
姫神の問い掛けに、美琴達も素直に応じる。
「御坂美琴です。こちらこそ始めまして」
「白井黒子と申しますわ」
二人からの答えに、こくり、と首を縦に振り、
「御坂さんと。白井さんは。上条君と私の関係が気になるみたいだけど。私たちは。本当に」
ここで一拍止まり、続ける。
「ただの。クラスメイトだから」
「あらあら、でもただのクラスメイトにしては随分と親密になさっておられるみたいですけれど?」
白井からの揶揄交じりの指摘に対しても、
「この手は。そういうのとは違うから」
「どう違うって言うのよ」
どこか不機嫌そうに、美琴が反駁する。
「これは。こうして貰わないと私が困るから。上条君に協力して貰っているだけ」
「「…………、ハイ?」」
姫神の答えに、意味が判らない、と言う風に声を上げる二人。しかし、姫神はそんな二人を気にも留めずに、いまだ固まってる上条に声を掛ける。
「君。そろそろ席に戻らないと。ウェイトレスさんが困ってる」
そう言って指を差した先には、確かに注文の品を手に空席の前でオロオロしているウェイトレスの姿がある。
「ん、そ、そうだな。じゃあな御坂、白井」
上条が二人へ声を掛けている間に、姫神は手際よく自分のイチゴサイダーを注いでいる。
そして、そのまま自分たちの席へと戻っていった。
後に残されたのは。
「……お姉様、わたくしたち体良くあしらわられたのでしょうか……?お姉様?」
「ふ、ふふ、また私はこんな扱いな訳……?」
ご愁傷様です。

291 名前:198 投稿日:2006/05/25(木) 23:15:03 [ NOLNtxDU ]
今回は以上です
第一ラウンドは姫神の判定勝ちですた
次回はまだファミレスの中の筈です

ではまた会う日までー

292 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/26(金) 23:27:44 [ o/s/qlsg ]
GJ!!美琴イイヨイイヨー

293 名前:169 投稿日:2006/05/27(土) 01:05:28 [ XqXA4R0E ]
GoodJob!
美琴もいいが「えへ☆」と笑う黒子にノックアウトです。

RedAngelが壮絶に詰まってしまったので、気分転換に変なのを書いてみました。
お口に合えば幸いです。

294 名前:ひとかたさんとあそぼう。〜バッティングセンター編〜 投稿日:2006/05/27(土) 01:06:36 [ XqXA4R0E ]
ショートショート

ひとかたさんとあそぼう。〜バッティングセンター編〜


 学園都市。
 それは東京西部を切り開いた広大な土地に数多くの学校や研究所を詰め込んだ、近未来型一大教育機関だ。
 住人の大半が学生であるため、その街づくりも従来とは大きく異なったものになっている。それゆえ街にある大きな建物は、大抵以下の四つのうちのどれかにあてはめることができた。
 一つは学校。一つは研究機関。一つは学生寮。
 そして最後の一つは、娯楽施設である。


「ンで、何だって俺ァこンなトコまで来ちまったンだァ?」
 学園都市最強の超能力者(レベル5)一方通行(アクセラレータ)は、目の前の建物が掲げている看板を見上げて、自分が何かとんでもない間違いを犯してしまったような気分になった。
 派手に電飾が施されたその看板には、デフォルメの利いた文字でこう書いてある。
『バッティングセンター』
 と、横から重い頭をさらに重くしてくれるやかましいようでどこか平淡な声が聞こえてきた。
「いいじゃんよーとミサカはミサカは口をとがらせてみたり。思い込んだら試練の道をってな気分で日頃の運動不足を解消してみるのも休日の正しい過ごし方なんじゃないかなってミサカはミサカは寝起きのアナタをここまで引っ張ってきた理由を暴露してみる」
 黄色いTシャツとミニスカート、背中には小さなリュックサックを背負った見た目十歳くらいの少女――打ち止め(ラストオーダー)は、何がそんなに楽しいのかニコニコ顔で彼の腕を掴みバッティングセンターの中へ引きずり込もうとしている。しかし「引っ張られる」という向き(ベクトル)を適当に拡散させている一方通行はビクともしない。
 白い少年はしばらくそのまま空を見上げたりしていたが、
「寝起きっつってももう昼だしなァ。かと言って昼飯にするには微妙に早ェし…………ま、暇潰しにはなるか」
 やがて(見かけの上では)渋々と、ガラス貼りの自動ドアをくぐっていった。


「見て見てバットもいろいろあるよってミサカはミサカははしゃいでみたり。ジュニア用子供向けサイズのはどれかなってミサカはミサカは探してるんだけど何なのその目は?」
「黙れクソガキそれから答えろ。オマエその格好はなンだ?」
 トイレに行ってくる、と言って姿を消した打ち止めは、戻ってきた時にはなぜか服装が変わっていた。だが着替えてきたことが問題なのではない。問題なのは彼女が今着ている服のほうだ。
 打ち止めはその服を見せつけるかのように両腕を広げ、
「これ? これはヨミカワがくれた服で、運動する時には着なさいって言われたから持ってきたんだけどってミサカはミサカはある一言を期待しながら説明してみる」
 その期待に満ちた表情から、彼女が何と言ってもらいたがっているのかは簡単に知れたが、それを素直に言ってやる一方通行ではない。というか、それ以前の問題だった。
 打ち止めが着ているのは、一昔前の体操服だった。
 真白い半袖の上着と、濃紺の履物が絶妙なコントラストを形成している。
 ……ズバリ言ってしまおう。
 それはブルマだった。
 誰が何と言おうとも、それはブルマだったのだ。
 もちろん上着の裾はブルマの中に入れられている。いや、何がもちろんなのかは不明だが。
(ヨミカワのヤツ、ゼッテェおもしろ半分で渡しやがったな……)
 彼らの世話係である女性がじゃんじゃん言いながら大笑いしているのが目に浮かんだ。
 そうしている間にも打ち止めはわざとらしく準備運動をしたりして、どうやらアピールをしているつもりらしいのだが、しかしそろそろ他の客の視線が厳しい。殺意のこもった視線を向けられるのには慣れていても、こんな理由で注視された経験などなく、どうにも居心地が悪かった。
 一方通行は一番手近にあったバットを手に取り、
「ホレ。準備運動はそンくらいでイイだろォが。とっとと始めンぞ」
「…………………………………………………………………………ってミサカはミサカは無言でプーたれてみたり」
「無言じゃねェし。イイから行くぞ」
「実はアナタの分も用意してるって言ったらどうする? ってミサカはミサカは聞いてみるけど」
「いるかァーーーーッ!!」

295 名前:ひとかたさんとあそぼう。〜バッティングセンター編〜 投稿日:2006/05/27(土) 01:08:53 [ XqXA4R0E ]
 流石は学園都市と言うべきか、ピッチングマシン一つをとっても外部の製品とはレベルが違っていた。
 球種球速の変更はもちろん、スイングフォームの審査、苦手コースへの狙い撃ちなどもお手元の端末で操作できる。しかし、ディスプレイ上の球種一覧に、「燃える魔球」と本気で表示されているピッチングマシンなど世界中探してもこの街にしかないだろう。
 一方通行は地面に描かれたバッターボックスに入った。とりあえず球種はストレート、球速は120キロに設定してある。なんだかんだいってもしっかりやる気になっているのだから不思議なものだ。
 遠く前方の壁に開いた穴、その脇に埋め込まれているランプが点灯した。もうすぐ球が飛んでくるという合図だ。
(つってもまァ、飛ンでくる“球”を打ち返すなンて慣れたもンだしなァ)
 対戦車用ライフルの“弾”をピッチャー返ししたこともある彼である。
 次の瞬間、白球が射出された。
 軽ゥく流すつもりでやるかァ、と一方通行はバットを振り抜き、

 ――バスッ

 白球は一方通行の背後、壁に備えつけられた衝撃吸収マットにぶつかり、地面に落ちていった。
 空振りである。
「……………………、」
 バッティングスペースの隅で(本当は一人ずつしか中に入ってはいけないのだが)ブルマ幼女がニヤニヤしているのが気配で知れた。
 気を取り直して第二球。シュッ。ブンッ。バスッ。また空振り。
 第三球。ようやくバットに当たった。
「うォっ!?」
 しかしどういうわけか、ボールは前ではなく横に弾かれてしまう。完全にファールだ。それどころか両手で握っていたはずのバットまで取り落としてしまう。
「ンンン……?」
 隅っこでは打ち止めがニヤニヤを通り越して爆笑している。もしやと思い、一方通行はディスプレイの「一時停止」ボタンを押してブルマ幼女に詰め寄った。
「オイ、クソガキ」
「ぷ、ぷくくくくくく、な、なぁに? ってミサカはミサカは笑いの衝動に耐えながら聞き返してみる」
「オマエ、俺がバット振る瞬間だけ代理演算切ってンだろ」
「えーそんなことないよってミサカはミサカは正直に答えるんだけど全く信じてないっぽいね」
 たりめェだ、と口ほどに目で物語る最強の人。
 打ち止めは動じた風もなくケラケラと笑ってから、
「でもでも、本当にミサカは何もしてないってミサカはミサカは保証する。たぶん動いているもの(ボール)の向き(ベクトル)を障害物(バット)越しに操作するのって、今のアナタには難しいんじゃないかなってミサカはミサカは予想してみたり。ていうか武器を持ったら弱くなるなんてまるでどこかの忍者みたいだねってミサカはミサカは懐かしのネタを使ってみる」
「ぼったくり商店に売り飛ばすぞ。――ン? ちょっと待て。なら最初の二球空振ったのはなンでだ?」
「単にアナタが下手なだけ、ってミサカはミサカは容赦なく真理を突く」
「……………………コラ」
 声に怒気が混じるが、しかしブルマはここぞとばかりに、
「当たらないことにはチカラの使いようもないのに、この有様じゃ宝の持ち腐れだねってミサカはミサカはじわじわといじめてみる」
「クソガキ、」
「アナタの身体能力で120キロのボールを真芯で捉えられる確率をミサカたちのネットワークでちょこっと計算してみたんだけど聞きたい? ってミサカはミサカはさらに崖っぷちまで追い詰めてみたり」
「イイ加減に……、」
「そうそう。さっきの豪快な空振り映像、ハイビジョン永久保存版でミサカたちのネットワークに無差別流出しておいたからってミサカはミサカは学園都市最強の超能力者に完全勝利間近」
「…………………………………………くゥっ!」
 思わず語尾に「♪」をつけたくなるほど上機嫌の打ち止めと、泣きが入る寸前の一方通行。
 この構図が端的に両者の力関係を表していた。
 白く、白く、白い超能力者はしばらく行き場のない怒りに震えていたが、
「………………要はこの後挽回すりゃァいいだけの話だろ。面白ェじゃねェか。愉快に素敵にビビらせてやるよちっくしょォっ!!」
 ヤケクソ気味に――というかもはや完璧にヤケクソで言い放ち、ブンブンとバットを振り回しながらバッターボックスに戻っていった。
 負けるわけにはいかない。……なんというか、もうここらへんで終わりにしておかないと本当に後がない。
 かくして、一方通行(がくえんとしさいきょう)とピッチングマシン(ただのきかい)の仁義なき決闘が始まった。

296 名前:ひとかたさんとあそぼう。〜バッティングセンター編〜 投稿日:2006/05/27(土) 01:09:46 [ XqXA4R0E ]
 そして一時間後。
 結果は九十球中(1ゲーム三十球を三回)ホームラン0、ヒット5、ファール26、空振り59の惨敗だった。
 ちなみに打ち止めは小学生向けのモードで、三塁打級の当りをポカスカ打っていた。なんでもアメリカにいる妹達(シスターズ)から本場メジャーリーガーのフォームデータを送ってもらったらしい。
 それを横目に、翌日酷い筋肉痛に襲われるとも知らず、ひたすら意地になって一方通行は空振りを続けていたという。


 ちなみに、それからしばらくの間。
 一方通行に勝ちたければバッティングセンターで勝負を挑め、という根も葉もない噂が学園都市中を騒がせていたとかなんとか。


                                  おわり

297 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/27(土) 17:07:33 [ MSauu9Z. ]
ひとかたさん萌え

298 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/27(土) 19:59:08 [ j/tkd.O2 ]
ひとかたカワイイヨひとかた

299 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/27(土) 20:01:34 [ s7iZWH8Q ]
ひとかたかわいいよひとかた

演算なかったら単なる運動不足だもんなw

300 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/27(土) 20:02:35 [ WbJQeZjU ]
 怒り狂ったひとかたさんがバットを能力を駆使して投げ飛ばし、それがトーマにぶち当たるところが見えるよ

 なにはともあれひとかたさん萌え

301 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/27(土) 20:25:56 [ 9RZKWmZE ]
やっぱり一方さんよりも打ち止めの方が優位に立ってるのか。
それにしても、通行止めのコンビはいいな。最高だw

302 名前:ここだけ学園都市のスレ とリンクby>>92 投稿日:2006/05/30(火) 01:34:05 [ uz8h2czM ]
ドンドンドンドンドン!

私はPCの前で固まっていた。
ありえない、こんなのありえない、あるはずがない。
この学園の掲示板に侵入し、覗くだけでなく一瞬で居場所まで割り出すなど。
「う、嘘でしょ・・・そんなこと出来るのって超電磁砲ぐらいじゃ・・・!?」
私は所詮瞬間移動のLV3だ。もしも外にいるのがあの最強の能力者と同格だとすれば・・・自分の命はない。

ド ン ド ン ド ン ド ン ド ン ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「・・・ぅあ・・・」
震える手でそこにあるシャーペンを手に取り、いつでも跳ばせるように準備して、掲示板で助けを―――
「ああ、それは困る参る困る。そのシャーペンは却下です」
言葉と共に赤い光が走った。PCはドアは吹き飛び、窓ガラスは割れ、私も椅子から転げ落ちる。
「ああ、威力が強すぎたぞ。参った困った参った。けどいらないことしなければ私もこんな手は使いませんでした」
現れたのは三人組。明かりが消された為、姿は確認できない。

――――けど

「おお、これはこれは・・・レディでしたか。しまった失敗しまった。計画では男だけ狙うつもりだったのに。・・・仕方ない」

――――なんとなく。自分はココで死ぬのではないだろうかと思ってしまった。
「それではリトルレディ。さよなら、さよなら、さよなら」
先頭の男の指先が赤く光り、その光りが私を貫い・・・
「・・・な分けないんだよ!!」

轟!!

と、男に炎一線・・・いや、違う。それは線ではない。その炎は・・・
「おい、ステイル!何で一発でキメねぇ!?」
「君が叫んだ所為で攻撃がばれたんだろうがこの素人!!」
現れたのは神父の格好をした大男と・・・なんと、ちまたで有名な無能力者だった。

「ち、思ったより動きが速かったようですね。誤算、誤算、大誤算ですよ」
「ふざけんなよテメェ・・・土御門をどこにやった!?」
「おや?そんなの、掲示板を見て分からないのですか?全く、痴呆、阿呆、ド阿呆ですね」
「・・・っ!っこの、ふざけんな!!」
襲い掛かる人型の炎と無能力者。あの距離ならば男達に逃げ場は無い・・・!
「おっと、次の書き込みがありました。それではさよなら、さよなら、ごきげんよう♪」
「・・・な・・・!?」
正に拳が触れる直前、男達はその場から姿を消した。

303 名前:ここだけ学園都市のスレ とリンクby>>92 投稿日:2006/05/30(火) 01:34:35 [ uz8h2czM ]
「・・・ステイル。これは・・・どういうことだ?」
「つまり君が邪魔しなければとっくに決着は付いていたということだ」
「な、仕方が無いだろうが!!あんな場面で―――」

男二人は言い争っている。私は今の状況が把握しきれずに頭の中がパンクしていた。
「あ、悪い。大丈夫だったか?」
「・・・・え、あ、は、はい!」
「そっか。悪かったな、もっと早くに駆けつけられたら・・・」
「おい、小僧。速く行くぞ」
無能力者に神父がいらだたしげに声をかける。
「おい、ちょっと待てよ!女の子が怪我してるって言うのに・・・」
「だったらここにいろ、この素人!奴等は次の獲物に向かっていったのだぞ!?
 僕達が行かないと第2第3の犠牲者が出るだろうが!そんな事も分からないのか貴様は!!」
無能力者はぐっと黙り込む。
「あの、その・・・も、もうすぐ風紀委員達も来ると思うので私に構わず行ってください」
無能力の少年は一瞬驚き、何か言おうとしてそのまま言葉をかみ殺した。
ふっと私の手が怪我しているのを見て、ハンカチを取り出し、
「・・・ごめんな。すぐにあいつ等とっちめてくる。約束だ」
―――私の、血だらけの手をそっと拭ってくれた。

「・・・行くぞ、小僧」
「分かってる。・・・あいつらの幻想・・・何が何でもぶっ殺す!!」
言うと二人は駆け足で飛び出していった。私はそのまま・・・PCにかじりついた。

304 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/30(火) 02:05:20 [ 9n2ZKQ7Y ]
あれ?男なの?女なの?どっち!?

305 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/30(火) 02:07:57 [ cgNHbM0o ]
現実=女
PC内=男口調
のキャラと見た!!

ちなみにさ、ここだけ学園都市のスレは公共の場だよな?
なら 俺 も S S 参 加 OK ! ?
今のスレの展開は非常に創作意欲を掻き立ててやまないのだが!!
OK?OK?だよな?

306 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/30(火) 02:16:28 [ phYgs.kA ]
止めるものは誰もいまい。スレの展開に影響するかどうかはわからんがw

307 名前:■■■■ 投稿日:2006/05/30(火) 20:28:38 [ 2updk7Ho ]
「何も聞かないのかにゃー?」

 携帯の電源を切った時、目の前の友人が聞いた。
 傷の手当てをしながらこちらを窺うのを見ていると、なんだか聞いたはいけないような気分にふっとなる。
 毒されていたとはいえ、自分はまだまだあのレベルに到達していないらしい。

「聞かれなくないんだろ?」
「まっそうだけどにゃー」

 けらけら笑いながら立ち上がる。
 ふらつく足のまま、扉に手をかけるその背中に、思わず思っていた言葉を吐き出す。

「だけどな」
「ん?」
「俺は――俺達は、少なくともクラスメイトが助けてと叫べば、相手がなんであろうと、誰であろうと助けるぞ?」

 一瞬、そいつは驚いたように目を見開く。
 ああ、気恥ずかしい。いつもならこんなこと絶対に口にだしてやらないのに。
 照れ隠しにおもわず俺が笑うと、にやりと笑い返された。
 そして、扉を開くと、背を向けたまま手を振る。

「考えとくぜい」

 ばたんという音と共に消えた相手に俺は苦笑して呟く。




「そういうときはありがとうだろうが」

308 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/03(土) 09:31:31 [ 9LxqkS0w ]
一方さんのクローンの鈴科百合子タンがオリジナルの一方さんを超える為に当麻にケンカを売るという幻想を見出しました。

 とある日、上条当麻が目にしたのは、どこかで見たことある制服を着た学園都市最強のレベル5――一方通行だった。
 白い髪にぎらつく赤い瞳、そしてミニスカート(!?)を翻し、叫ぶ言葉は予想だにししないもので……。

 それより少し前、入院中の打ち止めはシスターズの副産物である一方通行のクローンの存在を知る。
 最高の失敗作と呼ばれる囚われの筈のクローン。
 しかし、なぜか救出に出たシスターズ達を打ち倒し、クローンはオリジナルを超える為に学園都市に解き放たれた――。
                       ..
 名無しだったクローンに名前が与えられた瞬間、彼女にフラグが……!

とある名無しの複製品


「お前を倒せば俺はオリジナルを超えられるンだよォ!」

309 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/03(土) 16:07:44 [ sfVme3CY ]
すぺしゃるな週末の続きマダー?

310 名前:198 投稿日:2006/06/03(土) 21:18:11 [ 94DLk6/s ]
ども、今週も来る事ができました
まるで>>309に誘い出されたようなタイミングですなw
では投下します

311 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/06/03(土) 21:19:29 [ 94DLk6/s ]
「しっかし驚いたなぁ。こんな所で御坂たちに会うとは思わなかった」
左手で持ったフォークに刺したウィンナーを齧りながら、上条は先程の事を思い出していた。
右手は相変わらず姫神の左手と繋がっている。
テーブルの下での事なので、端から見ても不自然ではあるまい。
四人掛けの席で並んで座っている事を除けば、の話だが。
「分かっていたつもりだったけど」
こちらはラザニアを、なぜか割り箸で口に運びながら姫神が言う。
「君には。女の子の知り合いが多いね」
「……それは誤解ってモノですよ、姫神サン?上条さんは超硬派ゆえに女性の知り合いなんて数えるほどですって」
「君の自己分析には。時に。怒りを覚えそうになるね……」
ポツリと零れた言葉に、
「?何か言ったか?」
「別に。何も」
さらりと追及をかわしてから、姫神は先程から気に掛かっていた事を尋ねて見る。
「ところで。先刻からちらちらとラザニアを見てるようだけど。ひょっとして。食べてみたいとか?」
「ん、そういう訳じゃないけど。なんか妙に引っかかるんだよな、それ」
フォークでラザニアの皿を指し、上条が返答する。
「まぁ、ラザニアは嫌いじゃないけどな」
「……ふぅん。そう」
そう言って姫神は適度に分けたラザニアを箸で掬い、
「はい」
上条の口元へとそれを運んだ。
たっぷり十秒近く口元まで運ばれてきたそれを凝視した後、
「うわあ!?」
思わず仰け反る。
「な、な、何をなさりますか姫神さん!?」
「気になるのなら。食べてみるのが得策かと」
上条の問いに、至極当然、と言った風に答える。
「いや、だけどこれって……」
目前のラザニア、と言うよりそれを乗せている箸から眼を放さずに困惑した声を上げる上条。
(姫神はさっきまでこの箸で食事をしていた訳で、それに乗っかっている物を食べると言う事は必然的に箸ごと口に含むと言う事で、それってつまりは)
人それを『間接キス』と言う。
「えーと、気にならんのか?」
上条の質問に、
「?」
何が、とでも言いたげに姫神は小さく首を傾げる。
わかっているのか、いないのか。
(これってどうすればいいんですか!?教えて神様ティーチミー!!)


美琴達が自分達の席に戻ると、都合良く周りの席が空いていた。
おかげで、労せずに上条たちのテーブルの様子を伺う事が出来るようになっていた。
「何で四人掛けの席で並んで座ってんのよ……」
美琴が搾り出すように呻く。
「しかも見た感じ、まだ手を繋いでいる様にも伺えますわ」
心底面白そうに白井が続ける。
白井としては、上条と姫神が親密な関係でいてくれた方が有難い。
(お姉様につく虫としては危険度最大級のあの殿方がここで脱落してくれるのなら、これほど有難い事はありませんわ)
内心でクックとほくそえむ白井。
横目で美琴の様子を伺えば、かなりピリピリとしている。
これはチャンス、とばかりに白井は更に煽る様な発言をしてみる事にした。
「いえ、もしかしたら今は手を繋いでないのかもしれませんわね」
この言が聞こえたか、美琴が白井の方へと視線を向ける。
「端から見たらあの方の右手はテーブルの下に隠れて見えませんもの。それをいい事に、きっと隣の方の腰の辺りに手を回して後ろから撫で回したり、指を差し込んだり、はたまた前の方からいやんこれ以上は私の口からは言えませんわー」
いや言ってる。かなりぎりぎりな発言です。

312 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/06/03(土) 21:20:10 [ 94DLk6/s ]
白井のこの発言に美琴はカッと目を見開き、再度上条たちの席へと視線をやる。
その視線の先では。
「あらあらまぁまぁ何と言う事でしょう。全く妬けてしまいますわ」
姫神が上条に対して、いわゆる『あーん』の体勢に入っていた。
「ねぇそうは思いません……」
『か、お姉様』と言いかけて、白井はそのまま固まった。
何故なら。己の視線の先には。
「黒子。アンタはここで荷物を見てなさい」
周りの空気を比喩ではなしにびりびりと震わせて立ち上がる超電磁砲の姿が――。


バシン、とテーブルを叩かれて、二人の間に広がっていた謎の桃色時空は瞬く間に霧散した。
助かった、とばかりに上条はテーブルを叩いた人物へと視線を向けると、そこにいたのは。
「おぅおぅニイチャンよぉ。随分と見せ付けてくれるじゃねぇかよ」
いわゆる不良と呼ばれるであろう格好をなさった方々でした。見たところ十人近くはいそうな雰囲気である。
「……えーと」
さて、どうリアクションしたものか、と固まる上条へ、
「知り合い?」
と問いかける姫神。
「んな訳あるか。こんなI,Q80野郎に知り合いはいませんのことよ?」
思わずポロリと零れた上条の言葉に、
「ンだとコラァ!!」
お約束の反応を見せる不良の方々。
しまったー、と心の中で叫ぶ上条だが、その上条の顔を見て不良の中の幾人かが、
「て言うか、テメェの顔どこかで見た事があるような……」
「あっ、こいつ夏休み前に!」
上条の予想とは少し違う反応を見せる。
「あぁーっ、あの時の野郎か、コイツ!」
「ちょうど良いや、あの時の借りもまとめて返してやる」
何やらやる気満々と言った感じでじわりと包囲を狭める、その人垣の後ろから。
「アンタら、邪魔」
と言う声が聞こえたと思った次の瞬間。
バチン、と言う音と共に青白い光が視界を焼いた。
思わず目を閉じ、再び開くと今まで視界の何割かを塞いでいた人垣は既に瓦解しており。
その代わりに、パチパチと火花を散らしながら昏く笑う美琴の姿がそこにあった。
「ふっふっふ……、この間のシスターといい、どうしてアンタは私の目前でそうやって見せ付けてくれるのかしら……?」
「あのー、美琴サン?」
上条が、何故か片言風味で美琴に声を掛ける。
状況だけ見れば助けてもらったような感じだが、まるであの最強に立ち向かう彼女を止めたときのような雰囲気に、思わず呑まれる。
そんな緊迫した空気が流れる中で、空気の読めない人種がここに数名。
「このガキャああ!」
「こいつも仲間か!」
他にもまだいたのか、仲間と思しき学生が数人よって来る。
「うっとおしい!」
美琴が、それらを追い払う様に電撃の槍を放つ。
本来なら止めるなり加勢するなりしたい所だが、と上条は姫神を見て一考し。
「すまないがこの場は任せた、美琴!」
結論を出した。
姫神の体を椅子から押し出して、そのまま手を引いて走り出す。
「ちょっとアンタ、逃げる気!?」
美琴の非難するような声に、
「すまん、今日はちょいと状況が悪いんだ!」
叫び返し、そのまま店を飛び出る。


その光景を見ていた白井が、一言ポツリと洩らす。
「……食い逃げ、ですわね」

313 名前:198 投稿日:2006/06/03(土) 21:23:27 [ 94DLk6/s ]
はい、と言うわけで第二ラウンド開始前に乱入されてしまい、ノーコンテストとなりました
本当はもう少し美琴と秋沙を絡ませたかったのですが
何でかとあるAAが脳裏をよぎってしまい…w

ではまたーノシ

314 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/03(土) 21:29:53 [ Oc0emkCI ]
GJ!ブラボー!アンビリーバボー!(意味分からん

続きをwktkして待ってますYO

315 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/04(日) 01:21:38 [ I2O4hyWc ]
>>314に同じくブラボー!
続編待ってます!

316 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/04(日) 02:16:29 [ pT6Plp/I ]
夏休みの時はまだ食ってなかったから良いような物を。

317 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/04(日) 21:34:39 [ 93B/B8.w ]
あれって、食ってなかったか?
記憶違いか?

318 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/04(日) 21:57:30 [ dq02g0Eg ]
一巻のファミレスでは食ってないよ

319 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/04(日) 22:10:17 [ bpnbScOI ]
五巻のファミレスの時も食ってなかったはず。

320 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/04(日) 22:42:00 [ bpnbScOI ]
ってか五巻のファミレスの時は、店からお金貰っても良かったような。
米国だったらまず間違いなく訴訟されると思う。
まあ、闇咲が店の中滅茶苦茶にしてくれたおかげで無理なんだけどな。

321 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/06(火) 22:52:01 [ a8iHOIac ]
ここで唐突に上条当麻さんには魂の慟哭(たまソフト、ロストチャイルド)が似合うといってみたりしちゃったりするのですよ

322 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/07(水) 19:27:36 [ HNHGjnDk ]
いや…魂響(あかべぇそふと2、魂響)も捨てがたいぞ。あのフレーズはかなり当麻さんだw
それはおいといて。
やっぱ、未だ見ぬ5人のレベル5が物語にどう絡んでくるのかが気になる。
妄想を掻き立てられるぜ…

323 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/07(水) 23:36:42 [ u0wfR0b6 ]
多分ひとりかふたりは最後まで登場しないと思う>レベル5
そこまで強力な能力自体、いくつも思いつかないしね。

もしかしたらオリジナル能力スレのやつと被ってたりとか……しないよな、うん。

324 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/08(木) 21:49:51 [ M4uVexMA ]
元々ある能力の超強力版か他に類を見ないタイプのどちらかだろうな。
ムーブポイントはもう一人使い手いるらしいがそいつはレベル5じゃないんだろうか。

325 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/09(金) 00:25:08 [ 7CC3jlqo ]
レベル5の引き篭もりとか。
窓に鉄格子が付いた病院に押し込められた奴とか。
そんなの出てこないかな。

326 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/06/10(土) 23:27:09 [ H0qQ.pW. ]
姫神の手を引いて、学園都市の町並みを駆け抜ける。
後ろを振り向き、追っ手が無い事を確認してから、上条は走る速度を緩めた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
「…………っ。良かったの?あれで」
大きく息を荒げている上条へ、呼吸を整えてから姫神は問いかけた。
「はぁっ……、まぁ今回は、緊急避難という事で、あの場は、御坂に任せるしかなかったと言うか」
「私が言いたいのは」
切れ切れに答える上条の言葉を遮り、
「あの子を。あの場所に残してきて平気なのか。と言う事なのだけれども」
この姫神の言葉に、
「あぁ?そりゃあ、やり過ぎないかどうか心配だけど、白井もいたし大丈夫だろ」
と返す。この言葉に、姫神は少なからずショックを受けた。
「……君は。あの子の事を信用してるんだね」
「信用、っつーかなぁ」
あれより強い奴なんざ、あの最強くらいしか思いつかないしなー、と心の中で続けてから、
「それよりも」
かくっ、と頭を垂れてから弱々しく呟く。
「本当に食い逃げしてしまった事が、上条さん的にはショック大です」
「まったくですの」
上条の呟きに答える声が、前方から聞こえた。
驚いて頭を上げる。
「風紀委員のわたくしとしましては、見逃しては沽券に関わりますの」
いつの間に回りこんだのか、両手を組んで仁王立ちをしている白井黒子の姿がそこにあった。
「びっくり。いつの間に」
平坦な声で驚く姫神に、上条が彼女の能力について説明を加える。
「白井の能力は瞬間移動だからな、先回りされても別に驚きはしないけど」
ふーっ、と大きく息をついて左手一本で肩を竦める。
「食い逃げの現行犯じゃあ、捕まっても文句は言えないよなぁ」
自嘲気味にそう一人ごちた。
そんな上条の台詞を聞き、白井は薄く笑みを零す。
「ふふっ、冗談ですわ。先日ご協力戴いたお礼もまだで御座いましたし、御代の方は立て替えましたですの」
「それは、えーと、この場合はありがとうで良いのかな?」
「礼には及びませんの。こちらとしましても、お姉様を焚き付け過ぎたかしら、と言う自責の念が。いえ、今のは聞かなかったことにして下さいまし」
「いや、まぁ良く分からんけど」
上条はズボンのポケットから財布を出しながら、
「そう言えば御坂は?置いてきたのか?」
「いえ、止める間も無くお店を飛び出してしまいましたの。恐らくは貴方を追いかけているのだと思いますわ」
二千円札を受け取り、白井は上条の疑問にそう答えた。
「こちらからも質問させてもらってもよろしいですの?」
「ん?いいけど」
上条の承諾を受けて、では、と前置きをしてから白井は、
「先程の件で少々おかしいと思いましたの」
先刻の光景から、ずっと引っかかっていた事を上条に聞いてみた。
「普段の貴方でしたらあのような事件が起こった際に、後を誰かに頼むと言う選択はしないと思うのですの」
白井の脳裏に、数日前の上条の姿が思い浮かぶ。そして、先程の逃げ出した上条。どうにも譜に落ちない。
「それで、ふと思ったんですの。貴方の右手はわたくしやお姉様の能力を打ち消してしまう能力を持っていますわね」
そんな能力はデータベースででも見た覚えはございませんが、と続けてから咳払いを一つ。
「そう致しましたら、あの場面で事件に介入するよりもその右手を離さない事の方が重要で。それはつまり、その右手で封じなければならない能力をそちらの方がお持ちである。そんな仮説が思い浮かびあがりましたの」
言って白井は、姫神の姿を指差した。
「無論、風紀委員の要注意人物リストの中に姫神秋沙と言う名前が無い事は存じてますの。ですが、どうにも気に掛かりますの。その方を放置しておくと何か良からぬ事が起こりそうな、そんな気がするのですわ」
そこで一旦言葉を切り、指を下ろす。
「考えすぎだろ、それは」
言葉が切れたところで、上条が口を開く。
「ええ、自分でもそう思いますの。ですから、確認の為にこうして飛んできましたのですわ」
上条の言葉に肯きながらも、なお、白井は言葉を重ねた。
「先日のテロ騒動の事もありますし、何か事件の種になりそうな事はなるべく把握しておきたいのですの。さ、そちらの方がどのような能力を持っておられるのか、教えて頂けないですの?」

327 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/06/10(土) 23:27:48 [ H0qQ.pW. ]
白井の要請に、上条は暫し考え込む。
白井の懸念はある意味、正鵠を射ている。姫神の能力は、放って置けば先日のシェリーが引き起こした騒動よりも大きな騒ぎを起こす可能性を秘めている事に違いは無いからだ。
かと言って、正直に話したところで白井がその話を信じるとは到底思えない。何しろ吸血鬼を殺す能力だ。普通なら鼻で笑われる事、請け合いである。
そう上条が考え込んでいる内に、またも姫神が上条より一足前に出た。
「私の能力が知りたいと言うのなら。教えてあげる」
その言葉に、上条は驚いた。
「姫神!?」
「良いから。君は黙ってて」
右手で上条を制し、続ける。


「私の能力は。常に効果を発揮するタイプに分類されると思う」
「常時発動型という訳ですのね」
白井が相槌に、姫神はコクリと肯く。そして静かに瞳を閉じて、続く言葉を紡ぎだす。
「その効果は。誰かを死なせる事で終了する。これは。覆せない結果として現れる」
その姫神の言葉に、白井は驚き、上条は天を仰ぐ。
かつて、姫神は上条にこう言った。
『誰かを殺すぐらいなら。私は自分を殺してみせると決めたから』
それほどまでに己の能力を忌避している姫神に自分の能力について説明させるなんて、自分は何をやっているのか。
「そ、れは、完全にランダムに周りの人を殺すのですの?」
想像以上の能力に、白井の声が掠れる。この問いには、姫神は首を横に振る。
「それは無い。誰かを死なせるというのは。この能力の帰着点に過ぎない」
姫神の言い回しに、白井の首が傾く。分かりづらいんだろうな、と上条は思った。
「この能力によって死ぬ相手は。特定の誰かであって。その辺りにいる通りすがりの人物ではないという事」
「つまり、無差別な殺害は引き起こさない、でも特定条件に当て嵌まる誰かを殺す、そういう能力だ、と?」
今度の白井の言には、首を縦に振った。
白井は悩む。
思ったよりも酷い能力ではないか。しかし、そんな物騒な能力などは聞いた事も無い。
しかし一方では得心も行く。
これなら確かに、おいそれと右手を離す訳には行かないだろう。
それにしても、この女性をどう扱えば良いのだろう。
「今までは、どう過ごしていたのですの?」
「この能力は。ある条件で使用不可能にする事ができる」
「と言うか、使えない様にしていたんだ。それを俺が壊しちまったんだよ」
白井の疑問に、姫神と上条の二人が併せて答える。
「では、再度、使用不可能にする事は可能なんですのね?」
「ああ。ウチに行けば心当たりがあるからな」
正確には『居るから』、である。
「でしたら最初からそうして下さいな」
言外に『はた迷惑な』と言いたげな白井に、上条は言葉を返す。
「あのな、右手が使えないんだ。外食くらいはさせてくれよ」
「……ごめんなさい」
そんな二人の姿を見て、白井は知らず全身に入れていた力を抜く。
「まぁそう言う事でしたら、わたくしの出る幕ではないみたいですわね」
「なんか、すまないな。気を使ってくれたみたいなのに」
「宜しいですのよ。わたくしも先日の件で気が昂っていたのでしょう」
お互いに気を遣いあう。
「では、どうぞお気をつけてお帰り下さいな」
「あぁ、御坂によろしく言っておいてくれ」
じゃあな、と言って上条は姫神と共に歩き出した。
その後姿を見送りながら、白井は一人呟く。
「あの殿方の周りには、一筋縄ではいかない方が集まるのですのね……」
姫神秋沙の能力が本当であるのは間違いないのだろう。でなければ上条当麻があそこまで尽力する理由が、白井には思いつかない。

328 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/06/10(土) 23:28:19 [ H0qQ.pW. ]
「黒子ー」
そう考えている白井の背中に、敬愛して止まない美琴の声が掛けられた。
「あらお姉様」
振り返る白井に、美琴は質問する。
「アンタもアイツを探してたの?」
「ええ、立て替えました料金を取立てる為に」
「で、会えたの?」
「はいですの。きっちり受け取りましたわ」
そう言って、釣りを返していない事を思い出す。まぁいいか、と考える白井へ美琴は更に質問した。
「で、アイツはどこ行ったのよ?」
上条の事しか気にしていない美琴を見て、白井はちょっとした悪戯を思いついた。
「あのお二方でしたら、あの殿方の家に行くと言ってましたわ」
「な!?」
白井の予想外の告白に固まる美琴。
「あの女性の力が出なくなるような行為をするみたいですの。意味深な物言いですわねー」
「な、な、な、何をする気なのよアイツはー!!」

ぶるっ。
「?どうかした?」
「いや、なんか急に悪寒が……」

329 名前:198 投稿日:2006/06/10(土) 23:30:26 [ H0qQ.pW. ]
ども、198です
エキストララウンド、姫神vs黒子をお送りしました
色々行ってますが深く考えずにスルーしていただけると有難いです

次回はやっとこ帰宅の予定です
ではーノシ

330 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/11(日) 00:33:15 [ 1IGwKDFA ]
>>329
お疲れGJその他色々賛辞の言葉!
楽しみに待ってます。

331 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/11(日) 20:48:15 [ sOBuWZUI ]
>>198
最早私的に神認定。バンザーイ三唱しつつ神風アタックかましたいくらい愛してます。

私も禁書ss書いちゃいるんですがねぇ……時間がなくて書く暇がない。最後にupしたのは二月、いい加減にヤバイな。

332 名前:<幻想殺し> 投稿日:<幻想殺し> [ rvUJFm8Y ]
<幻想殺し>

333 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/13(火) 02:13:17 [ N3VhlRjM ]
サーシャのSSの続きをひたすらに待ち続けてるんだが……もう描かないのかな……

334 名前:169 投稿日:2006/06/15(木) 10:46:31 [ XSguzNNk ]
>>333
きっと、そう言ってくれる誰かがいるから――
169は、まだ立ち上がることができた。

なんて、言い訳にもなりませんが、とにかくようやっと更新です。
この一月、レポート書いたり理想を抱いて溺死したり病院行ったり星のしずくを集めたり他のスレにネタ投下したり普通にスランプだったり……まあ色々やってたのです。
「ひとかたさんとあそぼう」なんてCTスキャンの順番待ちしながら書きました。どんな楽屋ネタだ。
ゆっくりでも書き重ねていくつもりですので、どうか気を長くしてお待ちください。
それから、申し訳ないのですが前回投下分の最後を訂正させて頂きます。

旧 一端覧祭で上条のクラスが行う劇の演目が、まさしく「シンデレラ」だったのである。
           ↓
訂 一端覧祭で上条の学校が行う劇の演目が、まさしく「シンデレラ」だったのである。

335 名前:169 投稿日:2006/06/15(木) 10:47:33 [ XSguzNNk ]
第二章 備える者たち  Happy_Happy_Greeting

 土御門舞夏の朝は早い。
 主人より遅く起きるメイドなど論外だからだ。今日も“義兄のベッド”で目を覚ました舞夏は、家政学校で躾けられた習慣通りに身支度を開始する。
 寝起きの顔に冷水を浴びせてハリを戻し、歯をみがく。鏡の前で表情作りの練習をするのも忘れない。シンプルなように見えて踏むべき手順の多いモノトーンの制服を数分かけて身につけ、最後に短い黒髪の上にヘッドドレスをちょこんと乗せればどこに出しても恥ずかしくないメイドさんの出来上がり。
「……でも兄貴いないしなー。見てくれる人がいないと張り合いがないー」
 舞夏は愚痴るようにつぶやいて、仕方なしに一人分の朝食の支度を始めた。
 この部屋――“男子寮”の一室――の本来の住人、土御門元春は昨日から帰ってきていない。義兄(あにき)がふらりといなくなるのはよくあることなので心配はしていないが、とまれその間、主不在の部屋を管理するのは義妹(まいか)の役目になる。
 まあ、昨日に限って言えば、この部屋に泊まったことには別の理由もあったのだけど。
(静かなもんだったなー。電気が消えるまではぎゃあぎゃあかしましかったけどー)
 寝不足のため何度もあくびをかみ殺しながらも、料理する手つきに狂いはない。考え事をする余裕さえある。
 フライパンに卵を落としながら考えるのは、隣の部屋のこと。
 昨日舞夏が目撃した金髪の少女は、結局上条当麻の部屋から出てこなかった。ここで夜遅くまで見張っていたのだから間違いない。
 ということは、昨晩はうら若い三人の男女が一つ屋根の下で過ごしたことになるわけで。
 ならば普通に考えて――――――――――まあそういう状況を期待してしまったことに罪はなかろう。
 しかし、録音の用意までして待ち受けていたにも関わらず、“そういったこと”はどうやら何もなかったようなのである。
(……連れ込んでおいてそれかー。まったく、おかけでこっちはすっかり寝不足だというのにー)
 気を抜いている間に目玉焼きの底が少し焦げた。
 遠目に見ただけだが、あの金髪少女はかなりの美人と思えた。先住居候の銀髪シスターも、性格と食欲と行動論理を抜きにすれば美少女と評しても支障はない。そんな二人の女の子と同室で眠って「何もなし」というのは、男性としてどうなのかと思う。
「むむむ。もしかして上条当麻って“あっち側”の人間なのかなー。源蔵さんに報告すべきかー」
 目玉焼きを盛り付けながら、まんざら冗談でもなくそんなことをつぶやく。ちなみに源蔵さんとは常盤台中学学生寮の料理長で、舞夏とは顔なじみだ。
 いただきます、と言おうとしたときに、ふと卓上のデジタル時計が目に留まった。義兄の趣味か黒い亀の形をしたその時計は、時刻の他に日付も表示していた。
「おー」
 今さら実感する。
 一端覧祭まで、あと一週間だった。

336 名前:169 投稿日:2006/06/15(木) 10:48:42 [ XSguzNNk ]
 古人曰く――祭りとはその準備段階こそが最も楽しい時間であると。
 いやいやそんなはずはない本番が一番楽しいだろ、でも騒がしさなら確かに負けてねーな、というのが最近の上条当麻の考えだった。
 今日も耳を澄ませばいろんな音が聞こえてくる。
 あちらからは釘を打つ音と失敗の悲鳴が。「痛ってー指打ったー!」
 こちらからは木を組む音と失敗の悲鳴が。「てめーそっち押さえてろって言っただろーがー!」
 そちらからは道を歩く音と失敗の悲鳴が。「誰よこんなとこに立て看置いたのー!」
「…………ドジっ子多すぎ」
 しかし待て。これにはやんごとなき事情があったりするのだ。
 上条の通うこの高校は、もともと会場指定校ではなかった。当初この区域の会場校だった学校に耐震強度偽装問題が発覚し、理事会から急遽代行を命じられたのである。
 あの『学舎の園』も招待校に含まれるこの区域(『学舎の園』自体は一般公開されないのが基本なので会場校にはならない)の代表という大役を代役しなければならなくなったというのは、全校生徒、並びに教員一同にとってまさしく寝耳に水の衝撃だった。
 不安もあったが、ここでいい所を周囲に示せれば第七学区での、いや学園都市全体での地位向上も夢ではない。例えるなら明日のスターを決めるオーディションに飛び入り参加が決まったようなものだ。お祭り気質の強いこの学校のテンションはうなぎ登りに上がっていった。
 ――だがしかし。これまで招待参加でのん気にやってきた学校に会場校としてのノウハウがあるわけもなく、あちらこちらそちらで不具合が生じてしまっているのが現状だった。
 係分けすらままならず、大半の生徒が「雑用係」という適当な役目を与えられ、昨日買出しに行かされたかと思えば今日はこうして看板のペンキ塗りをしていたりする。しかも一人で。
 ろくにスケジュール表も作らず、目に留まったことを上から順にやっている感があるため、放課後の校内はひたすら空回り気味だった。
 上条はペタペタペターッと刷毛(はけ)を滑らせてゆく。中庭の壁に大きな木の板を立てかけて、気分だけは画家を気取り。その足元には昨日吹寄と買いに行ったペンキの缶がいくつも転がっていた。
 教室内では出来ない作業をするために、中庭にはいくつかのグループがやってきていて、上条もそのうちの一人だった――まさしく。
 孤独に刷毛を振るいながら、ため息がもれる。
「はあ……こんなことなら演劇班に入ればよかったかなー」
 今の学校内で、唯一まともに役割分担がなされているグループ――それが演劇班だ。役者だけでなく音響、照明なども含まれる(大小道具は演劇以外にも入用なので例外)。
 自分が何やってるのかわからないほどあちこち走らされるよりは、理路整然とした活動ができる方が身が入るってものだろう。
 と、その時。

「ふむふむ。それなら都合がいいのですよ」

 不意に上がった声に振り返ると、そこにはビッ、とチョップみたいな挨拶をしているクラスメイトの図書委員(女子)がいた。
「やっほー。調子はどう? かみやんくん」
 左右の横髪だけが長く伸びた外跳ね気味のショートボブ。実用と言うよりはアクセサリーみたいな小さな眼鏡を鼻の頭に乗っけていて、ずり落ちやしないかと気になって仕方がない。右手はビラビラと綿毛みたいにテープ付箋が貼られた紙束を持っていた。
 言祝栞(ことほぎ しおり)。
 通り名はアウトドア系文学少女。また、現在“とある事情”でクラス内どころが高校内での最高権力を手にしている人物でもある。
 上条はペンキを塗る作業を止め、刷毛を持った手で同じようにチョップを返し、
「まあまあだな。しかし、言祝“監督”じきじきの視察とは緊張するな。ま、見ての通りのものでしかないぞ」
 反対の手で期待の新鋭上条画伯渾身の作品を指し示す。
 言祝はその木の板をちらと見て一言。
「絵心ないね」
「………………そう言うアンタは容赦がないな」
「あはは。気にした? ごめんごめん冗談だって。でもま、そのくらいでなきゃあの演劇班(れんちゅう)の監督なんて務まらないけどねー」
 演出の巧みさ、指導の正確さ、ついでに人使いの荒さにも定評のある我らが言祝監督はけらけらと上機嫌に笑った。

337 名前:169 投稿日:2006/06/15(木) 10:49:13 [ XSguzNNk ]
 彼女が演劇監督に指名されたとき、誰もが「やっぱり……」と思ったほどなのだからただ者ではない。なにせその平坦な胸に朱色で三重丸を描き、白羽の矢を受けるというか射られる前に食らいつこうとしていたくらいなのだ。
 元より言祝は校内でも有名な「図書委員」だった。彼女が当番の日に図書室に行くと、例外なく「オススメ」をされる。しかもその強烈さときたら受けた者が口を揃えて「あれはもはや『布教』だ」と証言するほどである。図書委員の権限を傘に着た趣味の押しつけ行為――と思いきや、実はちゃんと人を見て薦める本を選んでいるので、こっそり好評であったりもするのだが。
 上条はパレット代わりに使っていたダンボールの切れ端に刷毛を置き、
「そういや、都合がいいとか言ってたけど。またどっか人手の足りない所でもできたのか?」
 雑用係が東奔西走する理由の大半はそれだ。例えば砂場に穴が見つかったとして、それを埋めるために他から砂を集めるのだが、そのせいで今度は別の場所に穴ができる。その繰り返しだった。吹寄などの実行委員も頑張ってはいるようだが、砂場がまっ平らにならされるにはまだ大分かかりそうである。
 しかし、言祝の反応は単なる人手不足にしてはちょっと深刻そうだった。
「……実はねー。演劇班から抜けるって人が何人かいて、このままだと練習も立ち行かなくなりそうなのですよ。それで、雑用係から移ってくれる人いないかなーってうろついてたら、ちょうどかみやんくんがぼやいてたから」
 ね? と言祝は両手の平を合わせて「お願い」のポーズをとった。
 つまりは演劇班への勧誘だ。それも監督が自ら足を運んでの。
 うーむ、と上条は考え込む。
 今から仕事を覚えるのは大変そうだが、あれやこれやと要領悪く使われるよりはマシかもしれない。中庭で代わりを探していたのなら、おそらく力仕事の類だろう。何よりこの学校の一番の見せ所である演劇「シンデレラ」が立ち行かなくなりそうだというのなら、断るわけにはいかない。
 結局、お人よしな上条当麻は引き受けることに決めた。
「オッケー。で、どこに入ればいいんだ? つか、この時期に抜けるなんて迷惑な話だよな」
 言祝は困ったように頬をかき、
「部活の出し物との掛け持ちがやっぱりしんどいってことで……もともと無理言って来てもらってたから、責めるわけにもいかないのですよ」
 一端覧祭で出し物をするのは学校別でだけではない。吹奏楽部や美術部などの文型クラブにも発表のために相応のスペースと時間が与えられる。大抵は各学校の同じクラブとの合同という形になるが。例外的に、今年は文芸部と陸上部と弓道部が協同で企画をするらしい。
 みんなそれぞれ頑張ってるんだなー、と帰宅部所属の上条はしみじみ思った。
 言祝は一歩近づいてきて、
「というわけで。はいこれ」
 手に持っていた紙束を差し出してきた。
 コピー用紙をホチキスで留めた冊子で、表紙には「シンデレラ 役者用台本」と印字(プリント)されている。
 上条は目を丸くする。じわじわと嫌な予感を背筋に覚えながら、
「へ? いや、これ言祝のじゃねーの? つか裏方なら役者用の台本じゃ駄目だろ」
 すると言祝は、ありゃりゃ、とでも言うように表情を変えて、
「裏方なんて一言も言ってないんだけど」
「役者だとも一言も聞いとらんかったわ!」
「だって言ったら断られたと思うし」
「は!?」
「演劇部から来てくれてた役者さん達が、他校との合同公演に専念したいって言うからさ。だったらついでに前々から考えてたスペシャルキャストを採用してみようかと思い立った次第であります」
「てことはたまたま俺がぼやいてたからってのは嘘か!? 始めから騙してでも役者にするつもりでここに来たんだな!? てか演劇部の連中が抜けたのってこの腹黒文学少女(アーティスト)の野望に邪魔だったからじゃねーだろうなぁ!?」
 身を震わせてわめく上条を眺めて、言祝は小首をかしげた。
「はて。なにが不満なのやら。かみやんくんには最高の役を用意しているのですよ?」
 えー、と上条は全く信用していない。それに、この監督の下ではたとえ王子様役であったとしても惹かれはしないだろう。
 言祝は受け取ってもらえなかった台本をペラペラと開き、
「ほらこれ」
 と、ある文字を指差し示した。
 ――それは確かに最高の役。
 知らない者などいない伝説的キャラクター。
 文句なしの、主役(プリマ)だった。

 『シンデレラ』

338 名前:169 投稿日:2006/06/15(木) 10:49:53 [ XSguzNNk ]
 たぶん、世界が十秒は止まったと思う。
「っっっっっっっっっっっっっっけんなぁ!? こんっなヤな汗かいたのは夏の海以来だ! ツンツンブラックヘアーでXY染色体持ち(じゅんせいだんし)のシンデレラ姫がどこの世界にいるっつーんだ!?」
「二次創作の世界ならいるんじゃないかなぁ」
「どこだよ!? 違う! そこ重要違う! 俺が言いたいのは、なんだって俺がシンデレラをやらなくちゃなんねーのかってことだ!!」
「あ、せーちゃんは王子様役だから」
 吹寄制理→吹寄「制」理→「せい」→「せーちゃん」 (※注 ここ試験に出ます)
「吹寄も巻き込んだのかよ! ならあいつにシンデレラやってもらえばいいじゃん! 少なくとも俺よかは似合うって! 全国の玉の輿(シンデレラドリーム)を夢見る少女たちのためにどうかー!」
「うーん。でもさ、タキシードも似合うと思わない? あとレイピアとか」
「……………………………………い、いかん。ここで納得したら負ける、負けるというのに……!」
 はっきり言って、タキシードを着てどっちが様になっているかと問うならば、答えは自明だ。女性に対して失礼だとは思うが、似合うのだから仕方ない。
 しゃがみこんでしまった上条の肩に手を置き、言祝栞監督はまるで(もなにも)最後通牒のように優しく、
 告げた。

「――ガンバレッ! お姫様(プリンセス)!」
「イ…………イヤダァァァァァァッ!!」

 上条当麻は一方通行(アクセラレータ)や追跡封じ(ルートディスターブ)と戦った時にも決して上げなかった――本心からの悲鳴を上げた。
 無理だ。いくら神様の奇蹟さえ打ち消せる幻想殺し(イマジンブレイカー)でも、他人の頭の中にある空想(わるのり)だけは殺せない。
 何を以てここまでこだわっているのかは不明だが、言祝は完璧に上条シンデレラを舞台に立たせることに決めているようだ。そしてぶっちゃけた話、今の言祝に逆らえる人物などこの学校にいない。権力以前に論破することが不可能なのだ。一度こうと決めた芸術家の意思は鉄より硬く星より重い。
 なら諦めるのか。諦めて、豪奢なドレスを着て余所の学校からも大勢の観客が集まる舞台でシンデレラ姫の役をやるのか。
(……………………………………………………うわぁ)
 想像力なんて嫌いだ。一瞬でも思い浮かべてしまったことを吐くほど後悔する。ビジュアルだけでも十分死ねるが、その後の未来予想はまさに世界の終わり(カタストロフ)。校内では後ろ指を指され、校外ではまだ乙女の心を残していそうな超電磁砲(レールガン)とか空間移動(テレポート)とかに絵にもできないような目に合わされる……
 駄目だ。三日ももたない。
(だったらどうする、だったらどうする上条当麻! 逃げるのは駄目だ、この場でなんとかしないと勝手に話を進められてやがては学校全体が敵になる。くそっ、文学少女のこだわりがこれほどまでに強敵だったとは! あえて言おう! 不幸だー!)
 のたうつ上条を一言で表現するのなら、「崖っぷち」以外にありえない。後は堕ちるのを待つばかり、と言祝は余裕の表情だ。この状況をひっくり返すのは、もはや上条一人の力では不可能だった。
 誰か、誰か救いの神はいらっしゃらないのかー! とよりにもよって右手を伸ばした上条だが、

 珍しいことに今回ばかりは、幸運の天使が舞い降りたようだった。

339 名前:169 投稿日:2006/06/15(木) 10:50:44 [ XSguzNNk ]
 カツン、という足音。
 首を上げて見ると、校庭に通じる道から誰かが中庭に入ってきたらしい。目を凝らせば、どうやら余所の学校の女生徒らしかった。
 小さくレースが入った白いブラウスに、真っ赤なスカーフが映えている。膝丈のスカートも同じ赤だった。両手で持っている手提げ鞄はあまり可愛げのないデザインだから、学校指定のものかもしれない。
(…………………………え?)
 上条の頭が疑問符で埋め尽くされる。
 別に、他校の生徒が校内にいることが不思議だったのではない。会場の下見目的で訪れている学生を何度か見かけたこともある。だから“彼女”も、“上条を確認して近づいてくる彼女も最初はそうだと思っていたのだけど”――――!

「……問一。トーマ、地面に這いつくばっているのは修行か何かか?」

 断じて違う、と答える声も出ない。
 ゆるく波打つ金髪(ブロンド)。ヘアピンで上げられた前髪の下から白いおでこが覗いている。ここまで近づいてようやく気づいたが、手提げの中身はやはり大工道具。
 その名もサーシャ・クロイツェフ。
 上条さん家の赤シスター。
 上条は精神的なダメージから起き上がることのできないまま、
「あのー、サーシャ? なぜにウチの学校へいらっしゃるので? 確か家でインデックスと『灰姫症候(シンデレラシンドローム)』探しの計画を立てていたはずでは?」
「回答一。そのインデックスから言伝を承ってきた。――今日の夕飯はオムライスがいいと」
 それだけかーい! と叫ぶ勢いで立ち上がる。
 と、そして気づいた。ある場所からある場所へ、ものすごい視線が送られていることに。
 送信元、受信元共に上条ではない。しかしその二点を結ぶ線上に彼は立っていたのだ。熱量を伴っている気さえする視線を背筋に浴びながら、ゆっくりゆっくりとジャングルで猛獣に遭遇したときのように慎重に体をずらしていく。
 そして、遮る物はなくなった。
「……………………………………、」
 言祝栞からサーシャ・クロイツェフへ。
 注がれる視線は熱く、それでいて静かで、ありえないほど運命的だった。
 やがて震える唇がやっとの思いで言葉を紡ぐ。
「……………………採用」
「……問二。何のことだかさっぱり不明なのだが」
 困ったように首をひねるサーシャに、しかし上条は返す言葉もなく、果たしてこれは本当に幸運だったのだろうかと真剣に悩み始めていた。

340 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/15(木) 18:45:28 [ QGE9dlJU ]
>>334
待ってましたーー!!!!

GJ!!お疲れ様です!!

341 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/15(木) 19:25:54 [ SJD0l/2E ]
なんかもうこれが11巻でいいんじゃね?って思うくらいの面白さ&再現率の高さだなあ。
言祝さんオリキャラなのに全然違和感無いわ。
>>169氏は最後まで考えているのだろうか。途中ちょっと端折ってもいいから是非
ラストシーンまで読んでみたい。
あとせーちゃんの王子様姿を想像して負けました。星のしずく集めてるのも含めて
169氏とはソウルメイトになれる気がするぜ。ノナ好きならパーフェクトだ。

342 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/15(木) 19:38:42 [ R2OrUgSs ]
もうGJとしか言い様がないな。

343 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/15(木) 19:43:57 [ jXS9pGEs ]
っつかかまちー本人じゃねぇのかもう面白いにも程があるんだよテメェ!
GJ!

344 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/15(木) 23:00:18 [ kWVATeX2 ]
あんま文章力ないけど俺もお気に入りキャラのを書いてみた。

『ガゴンッ』
学園都市の男子寮で深夜にも関わらず大きな音が鳴り響く。

「うおっなんの音だこりゃ、土御門あたりが暴れてんのか?」
せっかく熟睡していた無能力者、上条当麻は騒音で不幸にも目覚めさせられた。
超能力者を育成しているここ学園都市ではこのようなことは珍しくもない、だがあまりにも近くから音がしたので上条は起きてみることにした。
学生寮であるこのアパートの一室は上条当麻が借りているのだが、とある事情により彼は部屋にあるベッドで睡眠をとっていない。
よってバスルームで眠っていた上条は、ひとまず現状把握のためバスルームからでてみることにした。
目をこすったりあくびしたりと、まだ半分寝ていた上条であったが玄関の光景をみて強制的に目覚められた。

玄関のそこにあるはずのドアがなぎ倒され、部屋側に倒れこんでいた。

345 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/15(木) 23:56:12 [ K2l7VDVo ]
「なっ、なんだこりゃ!なにか分からないけど不幸なのは確かだー」
上条はわりと近所迷惑並みの音量で叫んだ。
ドアは見事に歪んで再利用不可そうであり、犯人らしき人も見あたらなかった。
(新品近かったのになんで壊されてんだよ!チクショウっていうか誰ですか犯人は!)
と上条は考えてみることにしたが
(インデックス狙いの魔術師か?もしくはステイルがインデックスを連れ去りに?それともビリビリが…)
あまりにも思い当たる人が多すぎたので一瞬でやめた。
(…ん?)
玄関の外で人影らしきものが動いた。
ってきり既に逃げたものかと思っていた上条は
「なんのつもりだ!てめえ!」
と叫びながら人影へと踏み出す。

(…は?)
そこにはまるで予想もしていない人物がいた。
(なんでここにいるんだ?)
夏休みに学園都市外で海水旅行へ行ったときに出会い、殺されかけたこともある

346 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/15(木) 23:58:17 [ NKmFeU.. ]
夏休みに学園都市外で海水旅行へ行ったときに出会い、殺されかけたこともある
ー連続殺人犯、火野神作がたっていた。

上条はあまりの唐突な再開に思考がとまりかけていた。
「…。」
「こんばんは。」
火野神作は軽くおじぎしながら礼儀ただしく挨拶をしてきた。
「…。」
「こんばんは。」
「…ってなに普通に挨拶してるんだテメェ!」
どうやら相手からなにかしてくる気配はなさそうだが、あくまで殺人犯である。
上条は相手への緊張を解かないながらも思考をめぐらせる。
(なんで学園都市内に当然としているんだ?というかこんな礼儀正しい奴じゃなかっただろ!…まさかまたあのバカ親父が占いグッズで魔法完成させたのかー!)
夏休みの旅行時と同じことになってるのかもしれない、と気づいた上条はひとまず『外見』と『中身』が一致してるか確かめることにした。
「こんな真夜中にドアをぶっ放してまで、会いに来てくれた馬鹿はどちら様でせうか?」
外見火野神作は、少し驚いたのか軽く目を見開き
「火野神作です。」
と『外見』と一致した名前を告げた。

######
軽く推敲しても馬鹿みたいにながくなっちまう、書くとなると難しいものですね。

347 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/16(金) 00:27:13 [ 0x7yVw.c ]
って火野かよ!?

348 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/16(金) 00:50:51 [ qfcMmrII ]
※2巻本編の別視点の捏造です。また、多分に妄想が含まれているので苦手な方はスルーしてください。










 ――わらっていた。
 溢れる感情とともに涙を流す聖女(ヒロイン)を、私はただ見ていることだけしかできなかった。


 三年間。私は地下に潜り知識を蓄えた。
 あの子を救う術を探し、あの子を救うことだけを目標とし、あの子のことだけを想い続けた。
 その結果として、世界最大宗教であるローマ正教を敵に回したが、それさえもあの子を救うという目的のためなら些細な事であった。
 探求すること。
 私は、錬金術師としてのその使命を全うし、ひとつの解を手に入れた。
 魔術師としての到達点のひとつである『大いなる秘法(アルス=マグナ)』さえも踏み台にして、その解に導くための手順を整えた。
 全ては順調で、万事問題なく事を進めていた。
 吸血殺しを手に入れ、王者の術(アルス=マグナ)を完成させ、あとは人外のモノを捕らえるのみという段階になり、それは起こった。
 それは、この三年間に経験したことの中では取るに足らないような瑣末な出来事であったはずだった。
 あの子が自ら私のもとに出向き、結果として僥倖と呼ぶべき事態のはずだった。

 ――そして、あのこはわらっている。

 私は、その笑顔をしっている。
 あれは過去、私に向けられていたもの。
 そう、しっている。かつてのあの子はいつもその笑顔を浮かべていた。清純にして純粋な、子供のような笑顔。
 それは、”ただひとり”の主人公(パートナー)に向けられるもの。


 ――わらっている。
 今代の主人公(パートナー)にわらいかける聖女(ヒロイン)を、私はただ見ていることだけしかできない。

349 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/16(金) 02:33:21 [ 82YQAE52 ]
貼り忘れてたー。
あと1レス分くらいで終わります痛くてすみません。


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「はぁっ!?」
予想外の答えに驚く上条。
(…もしかして変身能力者のドッキリとかじゃないよな。ってなんかぶつぶつ言い出してるー!)
火野は『エンゼルさま、エンゼルさま』と呟きながら手に持ったメモ帳にペンで字を綴っていく。
そして書き終えると
「エンゼルさまがお前の名前知りたい。教えて。」
「はぁっ?」
(なんだ?、何が目的なんだ。ひとまず適当に時間稼いで隙を見てアンチスキルにでも連絡を…)
上条がそんなことを考えていると、トテトテと足音。
「んー、とうま深夜にうるさいかも。誰かいるの?」
(ーーインデックスさん!?)
「とうまっていうんだって、エンゼルさま。」
「インデックスひとまず寝といて!」
小声でぶつぶつ言う火野と大声で叫ぶ上条。
「とうま、エンゼルさまはお前と話したがってる。エンゼルさま恥ずかしがり屋、でも仲良くして。」
(なんだこのシチュエーション!下の名前をこれほど呼ばれたくない人はいませんね!)
「エンゼルさま…」
呟きとともにビクッと火野の体が電撃を浴びたように震え
「あの…、初めまして。私エンゼルっていうものです。あの、その…」
顔を赤らめ上条の顔を伺いながら
「とっ、とうまさんにですね。あの会いに来たのです。」
瞳を潤ませ眉を不安そうな表情で火野は話はじめ
「お話でも少ししたくてですね。あの、その、すっ、すみません。迷惑でしたよね。ごめんなさい!」勢いよく頭をふり体を180度近く曲げて謝る火野。
「その、でも、どうしても会いたくて会いたくて。自分かってなのは分かります。でも少し時間をくれませんか?」
顔をあげずに火野は泣きそうになりながらもそう告げた。

350 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/16(金) 04:35:30 [ 3f8sND.w ]
なにこの萌えキャラ

351 名前:169 投稿日:2006/06/16(金) 09:48:51 [ f06S/nfo ]
たくさんの感想ありがとうございます。GJの響きだけで強くなれる気がしたよって気分。

>>341
松田さんが好きです。でもナコちゃんの方がもっと好きです。てかキスシーンのイベント絵入れろー!
もちろんノナも好きですが、どちらかというと○○パ○さん(ネタバレ防止)の方が。

言祝栞は、役回りとキャラクターはあっさり決めることができたのですが、禁書キャラの列に並ぶために必要不可欠な「口調」が決まらず苦労しました。
結局とあるゲームからビジュアルごと落とし込むことに。まんまだとアレなのでミニ眼鏡をつけました。

ラストは一応考えてます。今後変わる可能性もありますが、そこまで辿りつけるよう頑張りたいと思います。
というか、先にラストを考えてしまったせいで自分の中で満足しちゃった、というのが長く空いた最大の理由でして……精進が足りん!


そして頑張れエンゼルさま。

352 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/16(金) 15:17:53 [ rgykDCno ]
「……なんかお前の顔見るたびに厄介事に巻き込まれてる気がするんだけどそいつは上条さんの気のせいだったりするんでしょうかねステイル君」
「心外だね。君が勝手に首を突っ込んでくるだけだろう。で、今回のあらましだが」
「やっぱりかよ! やっぱりなのかよ!」
「シェリー=クロムウェルが“とある魔導書”の原典を手に入れてね。その解読のためにあの子をロンドンに連れて行くことになった」
「……はい?」
「で、道中の便利な盾として君を貸すと学園都市が申し出てくれてね。そういうわけだから三十分以内に荷造りをしてくれ」
「俺は盾かよ! てか初の海外旅行が魔術がらみですかー!」



「えーと、俺にはただの汚い紙切れにしか見えないんだけど、それってそんなにすげーもんなのか?」
「あんまり直視しない方がいいわよ。万が一汚染されたら廃人になるから」
「ひゃっほうそいつを先に言えちくしょう!」
「召喚の基本陣をヘブライ語とエノク語の二重結界で括ってる。術式の内容は錬金の悪魔ザガンの召喚みたいだけど……これって、まさか」
「そうよ、禁書目録。これは『赤の書』の一ページ」
「レッドブック? 絶滅危惧種のデータリストか?」
「……とうまは知らないかもしれないけど、赤の書っていうのは伝説の魔導書なんだよ」
「ああ、前の『法の書』とかみたいなもんか。でも一ページってのはしょぼくないか?」
「ううん。本物の『赤の書』なら一ページでも『ソロモンの小さな鍵』が紙屑になるほどの価値があるんだよ。『赤の書』は写本が存在しない、実在さえ疑われていたものなんだから」
「まあ、そうよね。信じるのが馬鹿らしいわ。悪魔ベルゼブブが人間を堕落させるために自ら執筆した魔導書なんて、ね」



「……誰だ、てめェ」
「素晴らしい。クシエルの霧の中で意識を保つとは。君はこの手の魔術に耐性があるようだな。私は才能のある若者が好きでね。赤の書とその少女を置いて立ち去れば、君には手出しをしなくてすむんだが、どうかな?」
「ふざけんな!」
「そうか。残念だ。それでは君を打倒して、頂くとしよう」



「つまり、俺にもあっちに行ってこいってことか」
「ふむ。アレに幻想殺しが潰されるのは少々困るからな。せいぜい守ってやるといい」
「……あの魔術師が誰なのか知ってるのか、アレイスター」
「ああ。――私の息子だ」



「私のエセルドレーダは足止めもできないほど無能ではないよ。悪魔ベルゼブブは既に召喚されている。ここに、私の中に」
「……それで、何をするつもりなんだ?」
「無粋なことを訊く。知識の収集こそが目的であって、それで何をするかなんて二の次さ。切手のコレクターがコレクションで手紙を出すかい?」
「……そうか。そんなことのために、人体実験を繰り返してたってのか。それなら俺は、テメェのそのふざけた幻想を――ぶち殺す!」






とある魔術の禁書目録×ハルマゲドンバスターズ
シェリールート、近日公開ごめん嘘
てゆうか禁書の読者にハルマゲ読者っていないよねきっと……

353 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/16(金) 18:17:15 [ eGh2HHfg ]
一瞬デモンベインかと思った。

354 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/17(土) 07:53:46 [ xutDS4EQ ]
>>353
一巻目だけ読んだ。
後は積んでるなあ。
シャイニングウィザードは未読だが何か。

つまり、書け、と言うか書いてと言うか書いて(何)

355 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/18(日) 00:03:03 [ bwElEWtE ]
>>354
352へのレスだと信じて返信
実際あれはコバルト行ってからつまらなくなった
そして書きたい気もするんだけど確実に気力が持たない(´・ω・`)
世界観的にはかなりぴったりだと思うんだけどなぁ……

356 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/18(日) 20:43:40 [ 5dT/b1MI ]
そろそろ、まとめにサイトを作ってくれない?
まとめてみたい・・・。

357 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/18(日) 20:49:38 [ kmeFAr6Q ]
>>355
http://www12.atwiki.jp/index-index/pages/284.html
WikiへGo。

358 名前:357 投稿日:2006/06/18(日) 20:50:16 [ kmeFAr6Q ]
訂正
>>355>>356

359 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/19(月) 00:35:56 [ /.vAerS. ]
異種作品対決スレより
セイバーVSステイルを妄想

「貴様も魔術師か。見たところ、サーヴァントを連れていないようだが?」
「ああそうだ。あいにくと僕は一人でね」
「私はこの先に用がある。素直に通して欲しいのだが?」
「悪いが、彼女を傷つけるというのなら、この先に行かせるわけにはいかない」
「ならば、サーヴァントである私とたった一人で戦う気か。
それがどれだけ愚かな行為か理解しているか?」
「馬鹿にされようが愚かと嘲られようが、ここは通さない。
たとえ何があろうと、彼女を守り続けると己に誓ったのだから」
「そうか…、ならば仕方が無い。力尽くで通させてもらう」
「   F o r t i s 9 3 1
『我が名が最強である理由をここに証明する』。
昔の英雄である君は知らないと思うが、現代の魔術師同士が名乗り合う、殺し名のようなものだ 」
「ならば私も答えよう。
我が名はセイバー。聖杯戦争に召喚されし英霊。
行くぞ!ハァァァァッ!!」
「来い!灰は灰に、塵は塵に、吸血殺しの紅十字!!」
「ルーン魔術の二刀流か。面白い!だが、その程度の技量では私を止める事は出来んぞ!」
「 M T W O T F F T O   I I G O I I O F
 世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ
   I  I  B  O  L     A I I A O E
 それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり
   I   I   M   H     A  I  I  B  O  D
 それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり」
「魔術詠唱!?」
「I I N F I I M S
 その名は炎、その役は剣」
「詠唱の暇など与えん!」
「I C R
 顕現せよ」
「これで終わりだ。喰らえぇぇぇっ!!」
「 M  M  B  G  P     イノケンテイウス
 我が身を喰らいて力と為せ―――『魔女狩りの王』!!」
「くっ、距離を取らねば!」
「紹介が遅れたね。炎の巨神『魔女狩りの王』だ」
「貴様が使うのはルーン魔術だったな。ルーンを消せば…」
「・・・
 6万枚。魔女狩りの王に使ったカードの枚数だ。
君はアーサー王だろう。この辺一帯に撒いたカードを一瞬で消す方法は持ってないんじゃないか?」
「何!?…ならば術者を倒すまで!」
「できるかな?
こちらには魔女狩りの王がいることを忘れないで欲しいな!!」
爆炎と共に、最強を目指す者の戦争が始まる。


ステイルはイノケンティウス使えば、サーヴァントと互角に戦えると思うんだ(´・ω・`)

360 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/19(月) 01:18:19 [ RGO9qQq2 ]
対魔力Aのセイバーと戦わせちゃいかんと思う。
せめて、土御門と組ませて神代の魔術師キャス子にしておくんなさい。

361 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/19(月) 02:31:03 [ /.vAerS. ]
それでも、それでもステイルなら!
イノケンティウスの攻撃力はルーンの数次第では、Aにだって届くと思いたいんだ……
シコシコと戦う前に大量のカードを張ったステイルにも出番を……!

例えエクスカリバーで殆どのカードを蹴散らされて負けるとしても、
そして、カミやんにおいしいところ持っていかれて誤解が解けてフラグが立つような展開だとしても!

私は14歳炎髪灼眼180cmのロリコン神父を応援しています。

362 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/19(月) 03:26:18 [ C4bQs/Fw ]
せめて、何かのサーヴァントと組んでないとステイルが勝つのは無理臭いと思う。
お勧めはバーサーカーかキャスター。

363 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/19(月) 07:51:46 [ 5TVXM/9U ]
>>359-362
おまえらのせいだ!おまえらのせいで俺は…
上条→セイバー
美琴→アーチャー
土御門→キャスター
打ち止め→バーサーカー
ミサカ、天井→ライダー
ステイル→元ランサー
アレイスター→ランサー、ギルちゃん
という幻想がっ!あぁ!考えちゃだめだ!考えたら月型がっ月型の窓がぁぁぁぁ!(フェードアウト)

364 名前:169 投稿日:2006/06/19(月) 09:38:55 [ fRQv702E ]
更新です。
調子のいい時に書き溜めておかないと、またいつ詰まるかわからないので必死です。大筋が決まっているからこそできる芸当ですが。
なんかサーシャのキャラクターがかなり変わってきましたが、駄目なようでしたらそう言ってください。半分オリキャラみたいなもんなんで加減がわからないんです(涙)。
あ、突っ込まれる前に自分で白状します。最近ジョジョ読みました。

365 名前:169 投稿日:2006/06/19(月) 09:40:07 [ fRQv702E ]
 みんなに紹介するから、と言って歩き出した言祝の後ろを、上条とサーシャは頭が回ってない状態のままついていく。軽く校内を案内するつもりもあるようで、言祝は何かある毎に立ち止まってサーシャに話しかけていた。その間、他校の制服を着た金髪美少女であるサーシャは少々どころかかなり目立ったが、横に上条がいるとわかると一転、「まあ上条だしな」という空気ができ追求されることはなかった。同学年だけでなく上級生まで同じ反応を示したのは、きっと年代の壁を越えて一致団結していることの証しだろう。幸か不幸か教師の誰かと鉢合わせすることもなく、三人は無事にある教室の前にたどり着いた。
「――って、一年七組(おれたち)の教室じゃねーか」
「そ。やっぱり持つべきものは身近な友達よねー。みんな快く承知してくれたのですよ」
「……、」
 つまり被害は身内に限定されていたということか。安心すべきなのかどうなのか、上条は判断に迷う。
「でもさー言祝。今さらだけど、本気でサーシャにシンデレラやらせるつもりなのか? ウチの生徒でもない人間が主役を張るのはまずいと思うんだけど」
「何とでもなるって」
「どこから来るんだその自信! いくら監督でも出来ることと出来ないことがあるでしょーが! そしてサーシャ! お前がなんにも言わないから勝手にどんどこ話が進んでんだぞ!? いいのかそんな流されるままの人生で!」
 上条は一歩下がった場所でぼーっとしている赤シスターを怒鳴りつけた。
 手提げをぶらぶらさせていたサーシャはほんの少し考えるそぶりを見せ、
「確認一。私はトーマたちの演劇に役者として勧誘されていると判断してよいか」
「そうだけども、それは中庭にいるときに言っておくべきだった台詞だぞ」
 なら、とサーシャは言祝の方を向いて、
「私見一。興味はある。私にできることであるなら参加してみたい」
「な――」
「そーこなくちゃ! 簡単ではないかもしれないけど、あなたなら大丈夫! 私に任せてくれれば一週間で素敵なお姫様にしてあげるわ!」
 何故、という言葉は興奮した言祝の叫びにかき消されてしまったのだけど――
(『灰姫症候(シンデレラシンドローム)』のことはどーなるんだ?)
 上条は思う。
『灰姫症候』
 人から人へさまよう魔術、『零時迷子(ヌーンインデペンデンス)』を元に組み立てられたらしい新種の術式。
 本来なら数回の移動でイメージが保てなくなり崩壊するはずの『零時迷子』を、誰もが知っている“とある物語”を媒介にすることで半永続化させたものらしい。
 誰が、何の目的で作った魔術かはわからない。しかし問題なのは、それが今も学園都市の誰かの中に存在するということだ。
 しかも魔術師の手に渡ってしまえば、容易に伝染病のような効果に変更して再放流することができるという。
 そのような事態を未然に防ぐために、そして原因を究明するためにロシア成教とイギリス清教の両方から勅命を受けてやってきたのが彼女、サーシャ=クロイツェフである…………はずなのだが。
(これじゃあ、本当にただの学生活動じゃねーか)
 だんだん不安になってくる苦労人上条である。
 それに気づいたのか、赤シスターは熱く語り続ける言祝から離れ、背伸びをして上条の耳元に口を寄せた。
「(説明一。問題はない。これは全て『灰姫症候』捜索のために必要なこと)」
「(はい? そう言われましても無学な上条さんにはアナタが学校生活をエンジョイしようとしているとしか見えないのですが)」
「(補足一。演目が『シンデレラ』だから。演劇を通して『灰姫症候』を誘い出せる可能性がある)」
「(……どゆこと?)」
 いつまでも背伸びをさせておくのは申し訳ないので中腰になる。
「(補足二。『灰姫症候』は“童話『シンデレラ』に関する知識”をイメージの基盤に置くことで、素人の中でも構成が崩れないようにしたもの。ならば“『シンデレラ』という物語のイメージを操れれば、『灰姫症候』に干渉することができるのではないか”というのがインデックスのアイデア。問題はその手段だったのだが……演劇というのは存外に最適だったかもしれない。トーマに会いに来て幸運だった)」
「(うわー生まれて初めてかもしれないそんなこと言われたの。でもさ、それだと劇を見に来た人にしか効果なくないか? 捜索範囲は学園都市全域なんだろ?)」
「(解答一。元より『灰姫症候』の捜索メンバーは私だけではない。ブラザー土御門もそうであるし、他にも数名が何らかの手段で学園都市に入っているはず。私の役割はインデックスと共に捜索することであるから、彼女の知識から導き出された計画を実行することに問題はないと思うのだが)」
 上条は身を起こし腕を組む。
 言っていることはわかる。わかるんだけど…………

366 名前:169 投稿日:2006/06/19(月) 09:40:40 [ fRQv702E ]
「おーいー? そろそろ入るよー?」
 ドアの取っ手に手をかけた言祝が、首だけひねって呼んでくる。サーシャは上条より先に歩き出した。
「解答二。了解した」
「おもしろいしゃべりかただねーサーシャちゃん。かみやんくんと何ひそひそ話してたの?」
「解答三。大したことではない。今日の夕食の献立について」
「なんか深く考えるすごい意味になりそうな……そう言えば『トーマ』なんて下の名前で呼んでるくらいだもんねぇ?」
「私見二。友人がそう呼んでいるのでそれに倣っているだけなのだが」
「ほほう。三角関係というわけなのですね」
 微妙な塩梅(あんばい)でかみ合っていない会話を続ける天然赤シスターとお気楽腹黒監督に置いてきぼりにされそうな上条だったが、
 そんなことはどうでもいいくらい、気になっていることが一つあった。
(…………自分で気づいてんのかね。さっきの説明、妙に押しが強かったぞ)
 上条は小さく“笑う”。
 詰まる所、シンデレラ劇が『灰姫症候』の捜索に好都合だったとしても、実際に参加してまでどうこうするほどのものでもないはずだ。練習という手間暇、共演者という重荷、そんなものをわざわざ抱え込むメリットなんてない。
 ないはずだ――魔術師には。
 上条は思う。
 拷問道具標準装備で、表情が読みづらい彼女だけど、好きなものややりたいことだってきっとあるのだろう。
 比較的年齢の近い集団に飛び込んだことがきっかけで、そういった欲求が顔をだしたとしても不思議はない。
 しかもそれがシンデレラをやってみたいってことだなんて――なんとも可愛らしいわがままじゃないか。
(ま、ちょっとは仕事の選り好みしたって罰は当たんねぇだろ。不都合が出るなら、その分は土御門にでも回しゃいい。一端覧祭は学生が楽しむためのイベントですってな。せっかく制服を着てるんだから、サーシャも楽しめばいいんだ)
 うんうん、とまるで父親か教師みたいに妙に嬉しい気持ちで微笑する上条当麻。
 ――――――――――――――――――――――――その微笑が凍りつくまで0,5秒。

「「………………………………………………………………(怒)」」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
 言祝が開けたドアの向こう。スタンド使いも真っ青な闘気を無差別に撒き散らしている吹寄制理(おうじさま)と姫神秋沙(まほうつかい)がいらっしゃいました。


                    ◇   ◇

367 名前:169 投稿日:2006/06/19(月) 09:41:33 [ fRQv702E ]
 さて、三分後。
 問答無用、とばかりに上条当麻は教室の中央に正座させられていた。その周りを五人の人間が囲んでいる。完全包囲というやつだった。
 上条はおそるおそる口を開く。
「…………あの。客観的に常識的に考えてワタクシめも被害者の一人であるというのにこの扱いはなんなのでせう?」
「黙りなさい上条当麻。全ての責任が貴様にあることは明らかよだからそのまま日が暮れるまで反省していること」
 一人目。吹寄制理が恐ろしく冷たく言い切った。教卓に立ち、まるで裁判官のように上条を見下ろしている。開廷直後に下された実刑判決に「被告人」上条は猛反発した。
「だって! 演劇の役者が足りなくなったのもそれで吹寄たちが強引に引っ張りこまれたのも俺のせいじゃねーでしょ!? こうなったら腹をくくってみんなでオスカー目指そうぜ!」
「とても良い言葉なのだけど。君は大きな勘違いをしている」
 上条から見て左、のんびりした声に少量の怒気を含ませているのは二人目、姫神秋沙だった。座っている机と椅子を横向きにして上条に向けている。どうやら彼女の役割は「判事」らしい。
「どゆこった? 姫神」
「私達は。演劇をすることに不満があるわけではない。というか。むしろそれ自体は望むところ」
 大覇星祭の時の負傷から完全回復したばかりの黒髪の巫女さんは、かねてからの憧れであった「魔法使い」にたとえ劇の役だとしてもなれることを喜んでいるようだった。
 教卓の吹寄はちょっぴり口を尖らせて、
「……私はそうでもないんだけど。栞がどうしてもって言うから仕方なく」
「そやねー。吹寄さんは優しいお人やもんねー。でもボク思うんやけど、やっぱ吹寄やったら王子様より継母の方が性格的にぐばっ!?」
 姫神の隣にいる三人目が超高速で投擲されたチョークを眉間に喰らい悲鳴を上げる。「判事側の証人」青髪ピアスは奈良の大仏みたいになったおでこをさすった。
「被告人」は何がなんだかさっぱりだ。
「あのさー。本気でわかんないんだけど、結局お前らは何で怒ってるわけ?」
「んーとやねー。手っ取り早く言うと」
 青髪ピアスが手を挙げ、吹寄と姫神もそれに続き、三人で同じ一点を指差す。
 異口同音に告げる言葉は、

「「「その子誰(やねん)ってこと」」」

 彼らの示した先、上条から見て右方にいるのは、
「………………、」
 何故自分が注目されているのか全くわかってない様子の「弁護士」サーシャ・クロイツェフだった。
 その隣には「弁護士側の証人」言祝栞がニマニマしながら座っている。
 あー、と上条は右手で顔を覆い、
「えーとこの人はですね、俺の知り合いの子で、たまたまウチの学校に見学に来てたところを言祝がスカウトしちまって」
「知り合いと認めたね。そうなるまでにどのような経緯があったのやら。裁判長。被告に無期懲役を求刑します」
「といいますかカミやん。ボクのいないところでロリ金髪しかも工具常備の大工さん属性持ち美少女とお知り合いになってるってどういうこと!? 裁判長! 無期懲役なんて甘っちょろいこと言っとらんとここは古式ゆかしい断頭台(ギロチン)の復活を提案いたします!!」
「妥当なところね。大道具とかけあってみましょう」
「なんだそのスピード裁判!? 判事と裁判長がグルって最悪じゃねーか! こんな司法取引も探偵パートもない裁判なんて認められません! せめて弁護側にも発言させてくださいな!」

368 名前:169 投稿日:2006/06/19(月) 09:42:13 [ fRQv702E ]
 最初は無視していたが、あまりに「被告人」がわめき続けたため、「裁判長」はいかにも渋々といった様子で、
「しょうがないわね。……サーシャ=クロイツェフさん、といったかしら。昨日も会った気がするんだけど」
「解答一。私も貴女のことは記憶している。それと、私のことはサーシャでいい」
「……どうも」
 サーシャのしゃべり方に慣れないのか――あるいは性格にか――、吹寄はわずかに怯んでいた。が、すぐに真剣な顔に戻り、
「それで、肝心なことを聞くけど。――――本当に上条当麻に何もされてない?」
「おい吹寄!? それ全然関係ないだろってごっ!?」
 裁判長の許可なく発言するなと言わんばかりの超速チョークが上条に炸裂し、沈黙させた。
 サーシャはその様子をぼんやりと見ていたが、やがて何事もなかったかのように、
「解答二。協力は色々してもらっている。危険なことは今のところない」
「裁判長。この二人は今夜一緒に夕食を食べるそうでーす」
「言祝てめどばっ!?」
 復活直後に再び撃沈。
「カーミやーん……」「上条君……」「上条……」
 法廷(きょうしつ)の空気が一層凶悪なものに変わる。それはもうDIOの館くらいに。
 青髪ピアスは殺意に満ちた目でにらんでくるし、姫神はなんだか嫉妬めいた瞳を向けてくるし、吹寄はそのどちらとも言えないような視線を突き刺してくる。
(うう。どうにもこうにもならん……不幸だー)
 味方であったはずの「弁護士側の証人」にも裏切られ、もはや救いなしいっそこのまま楽にしてー! と叫びかけた上条当麻だったが、それを静かな声が制した。
「――提案一。この状況が私の存在によるものならば、私は演劇活動への参加表明を取り消す」
「…………え?」
 突如立ち上がった「弁護士」の発言が。
 呆気に取られた声を出したのは吹寄制理。しかし他の人間も彼女と全く同じ心境だった。
 もちろん上条も。
「サーシャ……?」
「ちょ、ちょっと待ちなさいサーシャさ――サーシャ。あなたはそこの横暴監督とセクハラ少年に無理やり連れてこられたんじゃないの?」
 せーちゃんひどーい、と口を突き出した言祝を、サーシャはちらりと見て、
「解答三。誘われたのは確か。しかし、私は自分の意思で参加を決めた。興味があったから。けれども、それが学友同士で仲違いする原因になるのなら、退くべきなのは私であると思う」
「…………う……」
 吹寄が、なんとも苦い物を飲み込んだような顔になる。
 それはそうだ。年下の女の子にリアルで「私のために争わないで」と言われてしまったのだから。
 しかも、
「………………………………………………………………、」
 口では止めると言っているサーシャの顔は、「本当はとってもとってもやりたいんです」と無言で訴えていた。そしてそれを、迷惑をかけて申し訳ないという思いで押し潰しているのまで見て取れる。
 恐らく、いや確実に彼女は気づいていないだろう。自分がそんな表情をしていることを。貼り付けたような無表情を保てていると思ってるに違いない。
 そして吹寄裁判長は、そんな一少女の不器用な願いを無下にできるほど非人情派ではなかった。

369 名前:169 投稿日:2006/06/19(月) 09:43:50 [ fRQv702E ]
「あの……サーシャ? なんと言うかこれは、上条の日頃の行いのせいであって、決してあなたが悪いわけじゃないのよ?」
 そうだそうだと相槌を打つ検事側。特に青髪ピアスは今にも奇声を上げてサーシャに抱きつきかねない勢いである。彼女の属性に不器用属性が加わった結果らしい。
「――だけど」
 吹寄は顔を曇らせ、
「実際問題、サーシャを演劇班に迎え入れるのは難しいと思う。いくら監督のお墨付きっていっても、この学校のメインイベントの主役に他校の生徒をいきなり抜擢したら絶対に内外から反感を買うわ」
 それでも冷静に物事を捉えてしまう辺り、彼女は良くも悪くも優秀な運営委員だった。
 本当はこんなこと言いたくないのだろうが、役割を持つ者の責任として、吹寄は現実を突きつける。
「しかもあなたの着てる制服(それ)、近所の中学校のじゃない。ということはまだ十三か四、でしょ? 年齢(とし)も足りてないんじゃ、転入生ってゴリ押しすることもできない」
「――――だったら、新入生ならどう?」
 ス、っと。
 その声は豆腐に包丁を差し込むように全員の耳に入った。
 視線が集まる。
 声の主――「弁護士側の証人」は自信たっぷりに腕を組み足を絡め、
「この高校に進学を希望している生徒から一人、特別ゲストとして舞台に上がってもらうことにしました。選ばれた子はとても可愛らしい外国人の女の子でした。その子がシンデレラの役をやりたいと言うので、優しい先輩達は快く譲ってあげることにしました……とこういう筋書きよ。これならサーシャちゃんが堂々と主役やれる上に、ウチの高校の宣伝とイメージアップにもなる。一石二鳥なのですよ」
 ニカッ、と笑った。
 上条達は、戸惑うような感心するような、不思議な気持ちでその笑みを見た。
 言葉も出ない。
 まるで運命が配役(キャスト)を決めているかのように、不利な点さえも利用してステージを完成させていくその知略。
 妥協なく、恐怖なく、目的達成のためにあらゆる手段を尽くすその度胸。
 これが“監督”。
 言祝栞。
「……でも。校外への言い訳はそれでいいとして。校内への対応はどうするの? 一年の独断で。そんなことしたら色々面倒なことになりそうだけど」
 いち早く脳に血が流れ出したらしい姫神が尋ねた。
 しかし言祝は困った様子も見せず、
「そっちのが簡単よ。というかもう終わってるし」
「終わってる。とは?」
「教室(ここ)に来る前に、私と、サーシャちゃんと、かみやんくんとで校内をあちこち練り歩いといたの。みんなならこの意味、わかるよね?」
 吹寄と姫神と青髪ピアスが、あっ……となる。
 そうだ。たとえどれだけ不可解なことが校内で起こったとしても、
 それが可愛い女の子に関することで、
 その隣に、とある少年がいたというのなら、

「「「何があったとしても上条(上条君)(カミやん)のせいにできる…………!!」」」

 がばっと復活。
「待ったらんかーい!! いくらなんでもそりゃねーだろ!? とどのつまり俺を生贄に捧げてサーシャシンデレラを召喚するぜってことじゃねーか! こんな扱い俺の親父が知ったら今度こそ天使が降臨しちゃいますよ!? つーかてめーら三人さっきから息が揃いすぎなんだよ! トリオか、トリオなのか!?」
「流石ね栞。そんな巧妙な作戦思いつきもしなかったわ」
「にはは。このくらいお茶の子さいさいなのですよ」
「いやーでもやっぱりボクらの言祝監督やね」
「今年の名誉監督賞は。あなたのものに決まり」
「聞いてない! 聞いてらっしゃらない!! チョークすら飛んでこない!! これがスルーか、レールガンノミコト様の祟りなのか!? サーシャ弁護士! もうあなただけが頼り……って何を両手で胸を抱いてうっとりしてますかアナタ! そんなにシンデレラやりたかったんかい! そしてそのまま言祝達の輪の中へ行っちゃうの!? 待って、その『素敵な先輩後輩の図』に俺も混ぜてーーっ!!」


 結局、上条の意見は何一つ通ることのないままその日の打ち合わせは終わり、
 言祝栞から吹寄制理経由で運営委員に配役変更の旨が伝えられることになった。

「シンデレラ役 サーシャ=クロイツェフ(特別出演)」

 提出された文書の最上段にはそんな文章が書かれていた。

370 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/19(月) 09:58:54 [ ZkYhsphQ ]
GJ!
これがカミやん属性か! そして、チームワーク良すぎだ君達!

371 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/19(月) 10:47:27 [ pV.ViTH2 ]
GJ!

372 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/19(月) 11:53:19 [ M/0jhuYY ]
GJ!
サーシャと姫神に激しく萌えた今日この頃。

373 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/19(月) 22:41:32 [ IOQokEVA ]
G(・∀・)J!!

サーシャが可愛くてしかたありません。

374 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/20(火) 20:38:45 [ zoSrB79c ]
GJ!
クラスメイトの使い方上手いなぁw

375 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/22(木) 18:14:28 [ EfaWbYuI ]
皆さんいいもの書いていらっしゃる。

暇なときにちょっとした妄想系を作ってみたので試しに一丁。

人に見せて無いからわからんけどつまんないと思う・・・





異世界からの招待状 A_Gate_of_the_Strange_World



九月某日、学園都市。

平凡な高校生、上条当麻は夕日でオレンジ色に染まった街の大通りをトボトボと歩いていた。

「・・・・・・・・・、うだー」

上条は疲れきったような溜め息混じりの声を発した。

大覇星祭+αで疲れが溜まっていたためだ。

おまけに今は夕方とはいえ、まだまだ残暑でとにかく暑い。

そんな二段攻撃をくらって普通に居られるほど、上条はタフではない。

(・・・・・・・・・)

ぼーっとした上条は今晩の夕食のメニューについて考えた。

しかし、頭がうまく回らないのですぐには出てこない。


「あ、おーいアンター!」

何か、聞き慣れた少女の呼び声が聞こえたような気がしたが、上条は無視した。

「おーい、アンターってそこのアンタよアンタ!」

「・・・・・・・・・そういや、冷蔵庫の中身まだあったかな〜」

上条は未だに自分が呼ばれていることに気づかない。

「スーパーでも寄ってくか。」

「アンタって言ってんだろコラァ無視すんなァァァあああ!!」

突如、上条の背中に衝撃が走った。

「ごぉぁ――――――――――――ッ!?」

一瞬の出来事の間に上条が理解できた事柄は三つ。


1、背中に跳び膝蹴りをいれられたこと。

2、さっきまで少女に呼ばれていたのは自分だったこと。

3、今日、近所のスーパーは休業日。


そのまま2mくらい飛ばされ、片膝をついて着地した。

「ぐほっ・・・・・・・・・、て、めぇ。なにしやがる!」

肺の空気をすべて吐き出された上条は呼吸を整え、背中をおさえながら、勢いよく振り向いた。

そこに立っていた少女は御坂美琴。

常盤台中学のエース超能力者(レベル5)で別名『超電磁砲(レールガン)』

彼女ははいかにも怒ってますという顔で、

「まったくアンタは毎度毎度私を無視して!アンタの耳は私の音声波長だけ拒絶してんの!?」

バチン、と彼女の前髪から青白い火花が散った。

彼女は怒ると火花を散らして、雷レベルの電撃を飛ばしてくることがある。

上条はギョッとして言い訳を考えた。

「ま、待て、御坂。上条さんはてっきりまったく別の人がまったく別の人を呼んでいるのかと思いま

してですね――――――――――――!?」

上条はとっさに身構えて、飛んでくるであろう電撃(ビリビリ)に対処しようとする。

彼の右手の能力、幻想殺し(イマジンブレイカー)は超能力などの『異能な力』なら、たとえ神様の

奇跡(システム)さえ打ち消せるのだが、今日の彼は疲れていて、命がけの追いかけっこをするだけ

の体力がなかったので、なるべく平和的に解決したかった。

だが万が一、美琴が怒りを静めず雷に匹敵するビリビリを放ってきたらまずいので、右手を突き出し

たのだ。

しかし、いつまで経ってもビリビリがこない。

上条の和平交渉は承諾されたのか、よく見れば美琴の怒りの表情が多少、消えていた。

「はぁ・・・・・・、まったくアンタは。そんなに私に怒ってほしくなかったら連続無視はしないこ

とね。」

言葉からも怒りが消えてホッとした上条は立ち上がってから、

「す、すまん・・・。ところで、何かようか?跳び膝蹴りくらわせるほど重要な話か?」

「えっ?・・・べ、別にそんな重要な話ってわけじゃないんだけど・・・・・・・・・、無視された

のが気に食わなかった、っていうか・・・・・・・・・」

「???まぁ、いいけど」

美琴の声が最後の方が小さくなっていたが、大して気にしなかった。

そのまま上条は歩き出し、美琴もそれに合わせるように上条の隣まで小走りし、並んで歩いた。

美琴とは帰路が一緒なので違和感は覚えなかったが、上条は青春している高校生なので多少緊張した。

二人は少し世間話をしていたが、前方の右脇道から見知った顔の人が二人出てきたので会話を止めた。

376 名前:375 投稿日:2006/06/22(木) 18:17:04 [ EfaWbYuI ]
続きを載せれたら次回。

中途半端でスミマセン・・・(-_-;)

377 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/22(木) 22:36:05 [ LbRFbCiY ]
次があるなら改行はほどほどにしてくれると読み易い

378 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/22(木) 23:00:17 [ kdi090/A ]
G。

ああ、残り半分は次次第ということで一つ。
それと異世界ってことはクロスオーバー?

379 名前:375 投稿日:2006/06/23(金) 01:37:29 [ 104RLQf. ]
>>377
アドバイスありがとうございます。
やはり人に見てもらわなければ分からないことはあるもんですね。
改行訂正完了しました。

>>378
クロスオーバーは関係ありませんね。
禁書からあまり離れないです。

それでは2回目投下

380 名前:375 投稿日:2006/06/23(金) 01:40:23 [ 104RLQf. ]
脇道から出てきたのは白い修道服の少女と金髪にサングラス、アロハシャツ、ハーフパンツといった
格好の少年だった。
インデックスと土御門元春。
インデックスは上条の住んでいる学生寮に居候しているシスターで、土御門元春は同じ学生寮の隣人
でクラスメートだ。
二人ともイギリス清教『必要悪の教会(ネセサリウス)』のメンバーである。
インデックスは脳内に10万3000冊の魔道書を持つ完全記憶能力者。
土御門は魔術師(陰陽師らしい)と同時に無能力者(レベル0)の肉体再生(オートリバース)を持
った能力者で、多角スパイだ。
なぜ二人が一緒に歩いているのかは上条には理解できた。
上条は昨日(金曜日)、身長一三五cmの見た目一二歳の担任女教師、月詠小萌に明日補習を受けに
来るように言われた。
そのとき、学生寮の隣人でクラスメートである土御門にインデックスの世話を頼んだのだ。
一緒に街を歩いているのは、世間知らずのインデックスに街案内をしているのかもしれない。
上条がそんなことを思っていると、ふとインデックスが上条の方を向いた。
インデックスは上条の存在に気づき、指を指してなにか言った。
指の示す方へ土御門も向くと、表情を明るくして手を振りながら走ってきた。
「うにゃー、カミやーん!小萌先生の地獄の補習はもう終わったのかにゃー?」
「遅いよとうまー!もう腹ペコで倒れるかと思ったんだよ―――――――――――」
ふと、インデックスの言葉が途切れた。
視線は上条の隣の美琴に向けられているようだった。
「短髪?とうま、とうま。なんで短髪が隣にいるの?」
その言葉に、土御門も美琴に気づいた。
「――――――――――――!この前カミやんにタックルした・・・・・・・・・ははぁ、カミやん。
さては、ご一緒にラブラブ帰宅中かにゃー?また新しいフラグが立ったぜい、ってかそんなんで俺の
事とやかく言えるのかにゃー?」
ドツボを突かれまくった上条は『うっ』とたじろいだ。
宣言を撤回させるべく、反撃に移る。
「だっ・・・・・・・・・ち、ちげーよ!コイツとはたまたま会って単に帰路が一緒だったから一緒
にいるわけで、やましいことは何一つ存在しねーってかお前は毎日毎日匿ってんだろそっちの方がよ
っっっぽどやましいわ!」
「ま、毎日ってなんだ毎日って!土御門さんはそんなに暇じゃないことくらいカミやんだって知って
るだろうにゃー!大体、カミやんだって居候がいるだろ!毎晩毎晩ギャーギャー喚いているのはいや
でも耳に入ってくるぜい!」
やましいってことは否定しないのか!とギャーギャー喚く上条は、隣にいる美琴にタスケテクダサイ、
と視線を送ろうと思い、美琴を横目で見た。
美琴は俯いて、口の中でなにかぶつぶつ言っているようだった。
よくよく見れば顔を真っ赤にしているのが分かるのだが、横目で見た上条はそこまで分からない。
と、土御門の隣(土御門を挟んだ反対側)からとてつもない『気』が出た。
上条はそーっとそちらを覗いた。

381 名前:375 投稿日:2006/06/23(金) 01:46:17 [ 104RLQf. ]
そこには、目をギラリと光らせたインデックスがいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、ぁー」
インデックスの出す『気』と彼女の表情を見て、上条の両手から嫌な汗が噴き出した。
彼女はゆっくりと口を開き、
「・・・・・・・・・ほう。とうまは短髪と仲が良いばかりか友達の線を越えてるんだね」
開いた口から覗いていた犬歯がキラリと光る。
出撃準備完了ですか!?と上条はインデックスの『気』が何なのかを察知し、必死に弁解しようと
する。
「だから違うってインデックスサン土御門の言うことは気にするな私上条当麻はそんな素敵フラグ
を立てた覚えは無いし御坂とも数回ちょっとした事件があっただけでってなに言ってんだ俺はーっ
てちょっと待ってーインデックス今のは冗談です冗談真に受けてグワッと口を開いて飛び掛ってこ
ないでくだざびぎゃぁぁぁアアああああああ!!!!!!」
猛獣少女インデックスの襲われ頭を噛まれた上条はビクンビクン跳ねた。
土御門はうぁっちゃー、という感じで額に手をやり、美琴は未だに赤くなって俯いている。
ちなみに上条は、自分を中心に視線が集中していることに気付く事が出来なかった。

上条とインデックスは一通り暴れまわった後、周囲の視線に気付き、この場から離れようと慌てて
走った。
土御門も後に続くが、美琴は俯いていて気がつかなかったのか、『え?あ、ちょっ・・・待ちなさ
いよー!』と叫びながら土御門の後に続く感じになる。
あの場から少し離れた別の大通りまで辿り着いた上条は、ひとまずインデックスの怒りを静め、土
御門の誤解を説いてから、皆並んで歩いた。
正確には、右からインデックス、上条、土御門、美琴の順だ。
「それで、短髪はなんでとうまと一緒に帰っているの?」
最初に話題を切り出してきたのはインデックス。
さっきの疑いはもう晴れたようだった。
質問に対し、短髪・・・御坂美琴は自分が聞かれると思っていなかったのか、『へっ?』という顔
をしてから少し慌てたように、
「べっ、別にどうだっていいでしょう!・・・・・・今日はたまたま会っただけっていうか・・・
・・・・・・」
「『今日は』?・・・・・・・・・ふうん、そうなんだ。ねぇ、とうま?」
美琴とインデックスの距離は二人分離れていて、最後の方の美琴の声は上条でも聞き取り難かった
くらいだが、インデックスは一言漏らさず聞いていた。

382 名前:375 投稿日:2006/06/23(金) 01:51:04 [ 104RLQf. ]
とりあえずここまでです。
意見やら感想やらあったらビシビシ駄目だししてください。

ネタ考察に2時間かかるってんなら――――――――――――

―――――――――――まずはその幻想をぶち殺す!

383 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/23(金) 02:11:56 [ cdfk0PIE ]
気にしなくても巧くまとまってると思う。
バンバ

384 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/24(土) 18:43:44 [ YLzGC22U ]
乙。致命的な文法間違いとか、明らかに改悪されてるキャラとかいないし、大丈夫だと思う。

…敢えて言うなら、プロットっぽい、かな?状況説明されてるだけ感があるっていうか。過去形が多いからかも。
でも、慣れれば消えるもののような気がする。まあ、書ける時点で俺より遥かに上w

385 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/25(日) 02:36:49 [ biq1yg8U ]
軽め


クロスWORKING!!

386 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/25(日) 02:37:39 [ biq1yg8U ]
「・・・・・・・は?」
 ふと気が付いた時、上条当麻は真っ白な空間の中にいた。
 白い地平がどこまでも続き、地平線の果てからはやはり真っ白な壁が空まで繋がって世界を覆っている。
 それ以外には建物はおろか人っ子一人居らず、自分だけがただ立ち尽くしていた。
 彼は、唐突に寂しさでも感じたのか、ひとりごちる。

「あー。夢か、夢だな、夢ですよねこんなもん。
 こんなまっさらな夢見るなんて上条さんてば日常に疲れちゃってるのでせう?
 今日もインデックスには噛まれたしビリビリには追われるし
 最近学校でも土御門や青髪ピアスが馬鹿やると何故か俺が吹寄に怒られるし。
 あーもー最近言わなかったけど折角広いし言いますよ?不幸だー!」

「うん、君がそんなだからここに来てもらったんだよ。上条君」


その声は唐突に。誰も居ない空間から、誰も居なかった筈の空間から聞こえてきた。
(・・・・・ッ!!現実逃避してる場合じゃねぇ、これは魔術か何かか!?)
慌てて声の主の方に振り向くと

「上条君、イエーイ☆
 あれ、上条君どうして脱力するように四つん這いなのかね?
 バレンチヌスさびしいよ」

「・・・いやね、いい加減悟ってきてまた何か巻き込まれたかとカミジョウ−シリアススタイルに移行したら
 いきなりイエーイ☆とか軽く来られて上条さんはお疲れなんです!
 ていうかバレンチヌスってなんだその名前!?お前はお菓子会社のマスコットかっつーの!」


激しく突っ込んだは良いが詳しく聞いてみると本当にバレンタインの元になった名前の人らしかった。



「つーとアレか?神裂みたいに聖人って奴なのか?
 おいおい俺はそんな凄い奴のしかも恋愛で有名な奴に何かした覚えはないですよ?」

「バレンチヌス忠告しに来たんだよ。上条君はなんでも色んな女の子に手を出しては
 放置してるので来る次の2月14日に刺されたりしまs」
「うおい!ちょっと待て!俺は色んな女の子に手を出したりしてません!!
 立つのは駄フラグばっかですと上条さんは切に訴えますよ!?」

「そんな風だから刺されるんだけど。とにかく、それだとあんまりなので
 バレンチヌスどうすればいいか考えました。刺されなくても済む方法」

そこで、バレンチヌスは一拍止め・・・

「上条君、全員まとめてヤッチャイナー」


・・・その一言で世界が漂白された。
正確に言えば元々真っ白だったので上条当麻から一切の色が失われた。

387 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/25(日) 02:38:24 [ biq1yg8U ]
「上条君はちょっとかなりやり過ぎてるからそれくらいやらないと。
 大丈夫、皆も君もお互い好意的に思ってるから。偽りの愛にはならないよ」

バレンチヌスの話は続いていたがそれは当麻の頭には届かなかった。

「・・・ふふふ、これは夢ですよやっぱりだってバレンタインの偉い人がハーレムルート行けとか行ってるし
 よーし上条さん夕日の向こうまで走っちゃうぞー。夕日とかないけど!」

「だからもう全員まとめてラブ&ピース・・・ってあれ、上条くーん?」


だが上条当麻の走りは止まらない。

「夢だこれは夢なんだよチクショウ、ほら何かちょっと走っただけで地平線まで来れたし!
ていうか地平線までこれるとか夢だよこれ絶対。 そーれピリオドの向こう

パギン

「へ?」

地平線を越えようとした瞬間、世界が爆ぜた。








「ごぼらごぶげべばぶ!」

目が醒めた時、そこは何時の間にか部屋で最も見慣れてしまったユニットバスの中だった。
バレンチヌスなんて居ないし何もかも真っ白でもない。精々湯船の中くらいである。

「はー、やっぱ夢じゃんかよ全く・・・。
 ・・・で、何かねこの白いのは。妙に甘いにおいがするけど・・・ホワイトチョコか?」

とりあえずそう推測し、そして傍らに居た居候と隣人の妹−何故かどちらも水着着用−を睨み付けた。



「と、とうまとうま。違うんだよ別にとうまを溺れさせようとしたとかじゃなくて
 まいかが疲れには牛乳風呂がいいーって言ったからどうせなら美味しい方が
 いいと思ってチョコレートでとうまを労わろうとしたんだよ!」
「ちなみに水着なのは、サービスの一環で一緒に入るー
 あ、兄貴は今日帰らないらしいからちょっとくらい煩くしてもへいきー」

「・・・ああ、そうですか。食べ物を粗末にしてはいけませんとか
 なんで二人とも顔がべったべたになってるかとか
 そこに落ちてる異様にぺらくなった上条さんのサイフは何なのかとか
 色々注意したいことはあるがその前に!」

一度、思い切り空気を取り込んで

「人が寝てるとこに何なみなみ注ぎ込んでんだ!お前等はァ!!」





・・・そんなこんなで、初秋の夜は更けていったのだった。 終

388 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/25(日) 22:44:28 [ QblsRav. ]
そろそろすぺしゃるな週末が来るとみた。

389 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/25(日) 23:12:49 [ DJGfN4w6 ]
>>387
乙、GJ!はっちゃけたバレンチヌスに噴いたwww

390 名前:375 投稿日:2006/06/26(月) 20:28:07 [ gSF6ZQpA ]
>>386
乙です。
全然うちよりレベルが上です。
それこそ、レベル0の不良とレベル5の一方通行みたく^^;

それでは、メモしてたやつをコピって続きを投下します。

391 名前:375 投稿日:2006/06/26(月) 20:28:39 [ gSF6ZQpA ]
インデックスは上条の方にグルンと向くと、聖母のような笑みを『つくった』。
その笑みの奥にあるものを上条は読み取ると、また変な誤解を生まないために肯定する。
「そ、その通りだ。たまたま会って一緒に帰っていただけでいつもってわけじゃねぇよ?」
「私はいつもとは聞いて無いんだけど?」
笑みの奥に隠されたものが具現化する。
それは肌で感じるほどの、さっき見せていた『気』だ。
上条はますます焦る。
と、そこで土御門が話に割り込んでくる。
「いやいや、カミやんならわかんねぇぜい。最近は駄フラグばっかじゃ無いみたいだし、土御門さ
んの前で大胆にタックルされた後恋人ごっこしてたし」
ぶばっ!と上条と美琴は同時に吹き出した。
土御門は夏休みのことを言っていたのだが、あの後彼がついてきた気配はなかった。
インデックスが放つ『気』が飛躍的に大きくなるのを感じて上条の焦りがピークに達する。
「うばぁ!て、テメェ!何で知って――――――――――――」
「何でって、カミやん。追跡は俺の専門分野ですよ?カミやんに見つかんないようにするのはわけ
もないってわけですたい」
「――――――――――――ッ!!」
土御門は多角スパイ。
あらゆる情報を入手するためには相手に気付かれずに追跡できなければ意味が無い。
上条は知らないが以前、神裂火織の間近に居ても気付かれなかったことがあるくらいだ。
「つけられてたー!ってか何でつけてんだー!理由を四十文字以内で答えよ!」
「何となく」
四文字!?と上条は立ち止まり、叫びながら本気で頭を抱える。
もともとこれは美琴から仕掛けてきて、より多くの人に見てもらうようにするためにとのことだっ
たのだが、知人に見られたとなるとものすごく恥ずかしい。
それも、情報を扱うスペシャリストの土御門ならなおさらだ。
彼は信頼できる人なら平気で秘密をばらす人間(だと思う)なので、すぐに広まりそうだ。
「ふ・・・不幸だ・・・・・・・・・」
ゴーンという効果音が似合うくらい落ち込んだ上条はお決まりとなった台詞を言う。
そしてこれから襲い掛かってくるであろう、超激怒状態猛獣少女インデックスに無意味なお願いを
申し出る。
「ま、待ってくれインデックス。さっき噛まれて注目されたばかりだしこれ以上は精神的にも肉体
的にも耐えられません。もう許してクダサイお願いします」
返事はない。
この空白を利用して上条は、思考回路を起動させる。
(ああ、終わったな俺・・・・・・・・・これから俺はインデックスに馬乗りされて心行くまで噛
み付かれ周囲から変なレッテル貼られて土御門には美琴のことバラされクラスのみんなからは『中
学生に手を出したすごい人』と呼ばれ新たな不幸人生がスタートですよ・・・・・・・・・ってあ
れ?)
そんな愉快な未来(オチ)を考えていた上条は、インデックスがいつまで経っても襲い掛かってこ
ないことに気付く。
不審に思い、インデックスのいる方を向いてみると、彼女は正面を向いている。
上条は彼女の向いている方へ視線を移す。

392 名前:375 投稿日:2006/06/26(月) 20:30:14 [ gSF6ZQpA ]
そこには、身長2mで肩まである赤髪に煙草を吸っている神父が歩いていた。
ステイル=マグヌス
インデックスや土御門たちと同じくイギリス清教『必要悪の教会』のメンバーでルーンのカードで
炎を操る魔術師。
上条といくつかの戦場をともにしてきたが、どうも彼とは息が合わない。
なぜ彼が学園都市にいるかわからなかったが、休暇でもとってインデックスに会いにきたのだろう、
と上条は適当に考える。
そんな上条たちに気付いたのか、『ん?』という感じでステイルはこちらを向いた。

瞬間、上条たちとステイルの間の空間に白い亀裂が走った。
ちょうどそこには人はいない。

「は?」
上条は思わず声を上げる。
そして、周りを見回す。
インデックスたちもその亀裂見て呆然としている。
その他の道を行き交う人々も足を止め、その亀裂に注目している。
ステイルもキョトンとした表情でその亀裂を見ているようだ。
つまり、この現象は上条だけでなく、すべての人に見えている。
さらに、白い亀裂は徐々に押し広げらたた。
亀裂が白いのではなく、その向こうに見えているものが白いからそう見えているようだ。
数秒の沈黙の後、唐突に上条の脳裏を2つの単語が過ぎる。
魔術・超能力
空間に亀裂を作る魔術も超能力も見たことが無いが、存在しないとは限らない。
超能力の中には『空間移動(テレポート)』などがあるが、それとはまた異なるもののように見る。
「――――――――――――!!」
上条は白い亀裂に向かって走り、右手の拳を握る。
それが、どんなものかは知らない。
魔術か超能力かも、分からない。
だが、白い亀裂は上条の前に出現している。
ということは、この亀裂は上条たちを狙っている可能性が高い。
その亀裂との距離はおよそ7m前後。
その距離を一気に縮め、握った右拳を振るう。
「おおおああああああああああああ!!!」
ズン、という突き刺すような音が骨を通して響く。
上条の右手はあらゆる『異能な力』を打ち消すことができる。
それは魔術か超能力かも分からない、白い亀裂であっても例外ではない。

はずだった。

上条の右手の渾身の一撃を受けたはずの亀裂は、そのまま上条の右手を白い空間に通す。
「なっ・・・・・・・・・!?」
そんな、と上条は心の中で呟く。

393 名前:375 投稿日:2006/06/26(月) 20:32:14 [ gSF6ZQpA ]
たしかに彼の右手は白い亀裂の中心部に当たったはずだ。
幻想殺し(イマジンブレイカー)に消せない『異能な力』はない。
例えそれが魔術でも超能力であっても、だ。
なのになぜ、目の前のこれは打ち消せないのか。
とにかくこの亀裂から脱しようと、必死に引き抜こうとするが、抜けない。
「カミやん!」
呆然とする人々の中から一番早く状況を理解できたのは土御門だ。
彼は7mという距離を一瞬で縮める。
「あ、アンタ!」
土御門に続くように、美琴も駆け出す。
「・・・・・・・・・チィッ!」
ステイルも向こう側の異変に気付き、ルーンのカードを取り出す。
「―――――――――とうま!!」
最後にインデックスが駆け出す。
「くっ、そぉぉぉおおおおおおおおお!!!」
上条は力いっぱい引き抜こうとする。
だが、どう足掻いても抜けない。
と、不意に白い亀裂の中の右手が何かに触れた。
瞬間、亀裂から無数の白い『帯』が出てきた。
「「「「「!?」」」」」
無数の白い『帯』は上条たちに触れると、まるで強力な接着剤を付けたようにピタリとくっつき、
一気に亀裂へと引きずり込む。
1秒と経たずに、上条たちは亀裂の中へと消え、その亀裂も消える。
周囲の人々はその光景に驚いていたが、暫くすると何事もなかったかのようにそれぞれ歩き出す。
その中に一人、立ち止まっていた人影があった。
その人影はニヤリ、と笑うと次の瞬間には虚空へと消えていった。

394 名前:375 投稿日:2006/06/26(月) 20:36:52 [ gSF6ZQpA ]
以上です。

幻想殺しに殺せない幻想登場!
原作でも出てきたら面白そう。

395 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/06/26(月) 22:10:03 [ Cmnjhu42 ]
炎天下の中を歩き続ける事に嫌気が差したか、上条はあまり使わない自律バスを使うことにした。使わない理由は、主に乗車料金にある。
幸い、今いる地点から上条の寮の近くまで行く路線が通っていたので選ぶ事の出来た選択肢である。
バス停で待つこと暫し。
「暑そうだね。汗。拭く?」
待つ間も照りつける太陽に刺激を受けたか、額から吹き出る汗を拭う上条に向けて、スカートのポケットに手を入れながら姫神が尋ねてきた。先程のタオルを取り出そうと言うのだろうか。
意識しなくとも、上条の鼻腔の奥にタオルに染み付いていた姫神の体臭と思しき香りが蘇ってくる。
「い、いやいや。それには及びませんですって」
首と左手をもげそうな位の勢いで横に振り、遠慮を態度で示す。
「……そう」
少々、いや、かなり残念そうに、姫神はポケットに入れた右手を引き抜いた。
そんな寸劇をしている間に、一台の自律バスが近づいてきた。前面から窺える電光板の路線番号から見て、目当てのバスに間違いない。
上条はバス停に付いているボタンを押した。暫らくして、自律バスが音も無上条たちの目の前で停車する。
静かに開いたドアから、まず上条が先に乗り込み、姫神の乗車をエスコートする。
二人が乗り込んでから数秒後、他に乗り降りする者がいないと判断したバスが、再び走り始めた。
車内を見回すと、先客が少なからず存在しており、空席も疎らにしかなかった。その中でちょうど二人がけの座席が開いているのを発見し、二人はそこに腰掛けた。
その席はバスの左側にあったので、まず上条が窓際に座り、次いで姫神が通路側に腰掛ける。
(考えてみると、なんか気を休めて腰を下ろすのは久しぶりのような気がするなー)
ふと、上条の頭にそんな考えが浮かんできた。
思い返してみれば、学校を出てからはずっと歩き通しで、ファミレスに着いた後は、腰を下ろしたものの座っているより立っていた時間の方が長かったような気もする。何より姫神の思いがけない行動にドキリとさせられた事もあり――――。
そんな取り止めも無い事を考えている内に、上条の思考領域を睡魔と言う名の敵が幅を利かせ始めてきた。
(妙に疲れたよなー……)
疲労と言う要因もあり、上条は抗うことなくその敵に屈伏した。

左手を握る上条の力が微妙に増したのを感じて、姫神は上条の方へと顔を向けた。
「どうかした……」
の、と最後まで口には出せなかった。
姫神の視界に入った上条の姿は、左肘を窓枠に置いて頬杖を付き両目を閉じている、端的に言うと寝てます、と言う言葉を体現していた。
座席に着いてからもののニ三分でこうも容易く眠りに付いてしまった事に、姫神は呆れると共に、胸の中に何か暖かいものが満ちてくるのを感じた。
強いて名前を付けるのなら、その感情は幸福感と言うものだろうか。
眠りに落ちてしまったのなら、普通は四肢からは力が抜けていくものだ。
しかし上条はそうはならず、逆に放すまいと言わんばかりに力を込めてきた。
少なくとも、姫神秋沙にはそう感じられた。
無論それは自分に都合よく解釈を重ねている、と言う考えも浮かんできている。
しかし姫神はその考えを黙殺し、己の頭を上条の右肩に預ける。
(今だけ。今だけでも。この幸福感に浸らせて欲しい)
そしてそのままゆっくりと瞳を閉じた。

396 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/06/26(月) 22:10:36 [ Cmnjhu42 ]
行間


バスと言う乗り物は様々な人が利用する。
例えば、放課後寄り道をした帰りに家まで歩くのが面倒になってバスを利用とする高校生だっているだろう。
今乗ってきた彼女も、そんな一人だ。
バスに乗り込み車内を見回す。どこかに空いている席は無いものか。
そうやって視線をさ迷わせている内に、思いがけない光景を目撃してしまった。
クラスメイトが二人、仲睦ましげに寄り添い合って眠っているではないか。
男子の方は、クラスどころか校内、もしかしたら学区内でだってそれなりに名が知られている生徒だ。最も、その名前の売れ方はあまり好意的な物では無いけれど。
女子の方は、詳しくは知らないけれど先日転校して来た生徒で、転校して来る前からこの男子生徒と知り合っていたらしい。その容姿は、正直自分よりも綺麗だと思う。
つい数時間前に教室で行ったやり取りが思い出される。
(あれからずっと二人でいたのかな)
それは勿論そうだろう。
その間、二人でなにをしていたんだろう?
そう考えた瞬間、彼女の胸に小さな痛みが走った。それは棘が刺さったような鋭い痛み。
今までそんな事を考えた事もなかった。
だけど、どうやら自分はこの光景を見て嫉妬を覚える程度には、この男子生徒に惹かれていたみたいである。
この男子生徒がどのような人間であるかはこの5ヶ月足らずの間で把握していたつもりでいたのだが。
(これがカミジョー属性っての?あの学級委員の言い草もバカに出来ないわねー)
頭の中に蒼色の頭をした男子生徒他がの賜っていたフレーズが過ぎる。
とりあえず、今の自分に出来る事は。
(この画を記録してみんなに知らせる事かしら?)
そう思考する彼女の右手にはカメラ機能付きの携帯が握り締められていた。


「……ん?」
閉じられていた上条の瞼がゆっくりと開いていく。
「あー、やべ、寝ちまってたか」
そう一人ごち、身動ぎ一つ入れようとしたところでその違和感に気付いた。
「ん、なん、だ……」
右半身が妙に重いので視線をそちらに向けると、そこにあったのは。
「んぅ…………」
右腕を抱え込むように抱きこんで眠る姫神の姿だった。
ご丁寧にも、肘の辺りに深く考えたら拙くなりそうな感触のするものが押し当てられている。
(って何なんですかこの素晴らし、いや、とんでもねー体勢はーっ!?)
叫びを飲み込んだ自分を褒めてやりたい、と半ば現実逃避を行いながら周囲を見回し、気付く。
「あ、っちゃぁ……」
窓の外には、乗ったものと同じ型の自律バスがずらりと並んでいた。
どうやら、終点のバスターミナルまで乗り過ごしてしまったようである。
「ふ、不幸だ……」
どの口でそれをぬかすのか。

397 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/06/26(月) 22:11:09 [ Cmnjhu42 ]
「だー……、やぁ、っとここまで帰ってこれた事に上条さんは感動すら覚えてしまいます」
「つくづく。大袈裟だね。君は」
あの後。
眠っている姫神を起こし、折り返しのバスを利用して寮近くのバス停まで辿り着いた時には、既に日は沈み切っていた。
「予定よりも遅くなっちまったなぁ。インデックスの奴、空腹で暴れてなきゃ良いけど」
「その危惧は。世間一般とは掛け離れている様な気がするのだけれども」
日中よりも心持ち距離を狭めた立ち位置で、上条の言葉に突っ込みを入れる。
「……最近、凶暴性が増したんだ」
誰の所為?とは思っても、それは口には出さなかった。それが優しさと言うものだろう。
そんな事を話しながら、二人はエレベーターに乗って7階へ。
「ところで」
エレベーターが動き出してから、何となしに姫神が口を開いた。
「私の事。どう説明するつもり?」
「どう、ってなぁ。そのまま説明するしかないだろ」
それがどうかしたのか、と言わんばかりの口調で上条が答える。
「そう。ならいいけど」
姫神の意図が判らず、首を捻る。
そうしている間に、エレベーターは上条の部屋がある7階へと到着した。
がたつきながらドアが開く。すると、目前に見覚えのある物体と顔が現れた。
「よーっす、上条当麻ー。お、それといつかの巫女さんかー」
上条のクラスメイトにして隣人である土御門元春の義妹の土御門舞夏と、その足代わりに使われる清掃ロボットだ。
「ふんふん。やっぱり上条当麻は上条当麻だなー」
二人の、特にしっかりと繋がれている手をまじまじと見てから、舞夏はそう感想を述べた。
ちなみにエレベーターのドアは彼女の操るモップで閉じるに閉じれなくなっている。
「どういう意味だよ」
「言葉通りだなー。ところで兄貴を見なかったかー?」
上条の問い掛けをさらりと流して、逆に質問をしてきた。
「土御門か?いや、知らないけど」
言われて上条は、土御門が放課後の騒動に参加していなかった事に気付く。今日は最後まで授業を受けていた筈なのだが。
「そういや、いつの間にかいなくなってたな。何か用事か?」
「別にたいした用事でもないんだなー。いつも通り泊まりに来ただけなんだなー。ただ、今日泊まりに来ることは兄貴は知っていた筈なのにいないからおかしいと思っただけなんだー」
舞夏の返答に、上条は首を傾げる。
あの土御門が舞夏の宿泊を事前に知っていていなくなると言う事は、もしかして……。
「また厄介事か?」
「何か心当たりでもあるのかー?」
ポロリと出た上条の言葉に舞夏が食いつく。
「あ、いや、なんでもないんだ」
「そうかー」
と言って、舞夏はドアの前からロボットを動かした。
「邪魔して悪かったなー。……ところで上条当麻ー」
脇を通り過ぎていく二人の背中に舞夏が質問を投げかける。
「今夜は三人でするのかー?」
「何の話だっ!!」

398 名前:198 投稿日:2006/06/26(月) 22:18:58 [ Cmnjhu42 ]
お久しぶりの198です
誰も待ってないとは思いますが彼女(中略)週末の続きを投下しました
次来る時はvs(?)禁書になる筈です

>169氏
相変わらず上手いですなー
思わず嫉妬してしまいそうだw
サーシャ可愛いよサーシャ

>375氏
どうなるんですかねーこの後
続きが気になる所ではあります

>>386-387
バレンチヌス様なにやってんすかー!
相変わらず無責任な言動をなさる方だwww


ちなみに行間のクラスメイトさんは白カチュっ娘をイメージしてます
はよ名前でないかなー

今回はこれにて
ではー

399 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/27(火) 00:11:03 [ GjhEAFDc ]
GJ。
クラスメイトは吹寄さんかな?と思ったら柏木(ryでしたか。
続き期待してますんでー。

400 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/27(火) 00:36:05 [ W2.hdFgM ]
>>394=375
その手のオリジナル要素は。出来るだけ出さない方がいい。荒れるから。
あと。消せない理由はちゃんとしておいてね。

>>395=198
いつも。ありがとう。

401 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/27(火) 23:25:47 [ FzBVjxzs ]
逆に言えば理由がそれらしければok。
「あらゆる異能を無効化」っていう原作設定を覆えす事態になると納得できない人が続出するから気を付けろ。

402 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/28(水) 01:23:46 [ eDhnJ5W6 ]
>>401
同意。
アレは結界で、中に本体がある…とかな。あんまり原作から離れない方がいい。

403 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/28(水) 02:39:05 [ gbrtSBdo ]
作中でも色々出てたな。
一巻のイノケンティウスや竜王の殺息を無効化しきれなかったり。
二巻でアウレオルスの結界が無効化出来なかったりと。

404 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/28(水) 10:22:24 [ sYt1QKRA ]
まぁ考察もされて、納得できるかは別としてその理由も一応の結論付けてるので
そういう内容を書くならその辺も一通り見ておくとクオリティ上がるかもね

405 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/28(水) 22:59:20 [ a3zrOV/w ]
かつん、と男の後ろから音が響いた。
男はありていに言えば、スパイ。医療の情報を盗みだし、金に変える稼業を営んでいた。
この学園都市に入ったのもビジネスのひとつ。世界最高峰と呼ばれる医療技術を盗み出すためだ。
男には疑問があった。
学園都市で開発された医療機器、薬剤、そして技術はすべて余すことなく『外』へと送り出されている。
しかし、その全てを駆使しても救えない患者がいるのも確かだ。
それではなぜ――なぜこの病院に入った者は、余すことなく助かっているのか?
男は考える。もしも学園都市が医療技術を隠していたら、と。
ならば救える人間を見殺しにしたのは、この学園都市なのではないか?
安い正義感だと思う。動機も金だ。だが、これで救われる人間は必ず、そう、必ずいる。
男は割りきりながらカルテとおぼしき書類に手をかけ―――背中に浴びせられた音に振り返る。
「うん?久しぶりだねスパイってのはさ?」
そこにいたのは、いかにも冴えなさそうなカエル面の医者だった。
懐に手を伸ばし、銃の感触を確かめる。幸い相手は一人だ脅して気絶させるだけで―――

406 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/28(水) 22:59:55 [ a3zrOV/w ]
「でもね?残念だけど患者のカルテは他の人に見せられないんだよ?」
両手が、落ちた。
肩から先の感覚が全く無いことに恐怖した男は、尻餅をつく。
「うん?不思議かな?ちょっと神経をいじらせてもらっただけだから安心していいよ?」
なんとか体を起こそうとする。足を動かそうとして、再度の恐怖を感じた。
四肢に力が入らないのだ。いや、体全てが麻痺したかのように動かない。
「あまり知られていないんだけどね?僕だって学園都市の住人だよ?開発を受けたことがあるんだよ?」
かつ、かつと無機質に無慈悲に響く足音。
「僕の力は『冥土返し(ヘヴンキャンセラー)』。生命活動を自由自在に操るレベル5」
かつん。動かない男を見下ろし、カエルの医者は最後にこう言った。
「安心していいよ?僕は医者だ。傷付けたり、ましてや殺すなんて真似はしないよ?」
ただ―――
「少しだけ記憶は失ってもらうけどね?」
そう言うと同時、男の意識は途絶えた―――

407 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/28(水) 23:01:24 [ mZgvQnlQ ]
本スレ341に幻想を触発されて衝動的に書いた。後悔はしていない。

408 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/29(木) 04:41:42 [ OVy0eQS. ]
GJ!
うは、何? このカッコイイ、インスマイス面。

409 名前:375 投稿日:2006/06/30(金) 12:49:09 [ fb/mepmQ ]
>>406
GJ乙!
冥土返し超能力説ですか、学園都市で一方通行の次に強いんじゃないですか!?
カエル医者にこんな顔があったとは・・・

昼休みを利用して投下します

410 名前:375 投稿日:2006/06/30(金) 12:53:01 [ fb/mepmQ ]

竜王の結界 Imazine_Breaker

(う・・・・・・)
上条は気がついた。
瞼を通して白い光が入ってくる。
上条はさっき、夕日でオレンジ色に染まる街中を歩いていたので、すぐにここはあの大通りではな
いことに気付く。
ここは、どこだろう・・・・・・?と上条は考える。
白い亀裂に腕を挟まれ、手のひらをなにかが触れた。
その瞬間、亀裂から無数の白い『帯』が出てきて引きずり込まれた。
引きずり込まれて、それからは・・・・・・
上条は薄らと瞼を開ける。
視界に広がったのは、

どこまでも白い空間。

部屋の中のような感覚はしない。
暑くも寒くもない。
空気に何か異臭が混じっているわけでもない。
物の輪郭も何もない。
ただ重力と床の感覚だけがある、白く、白く、白い空間。
上条はうつ伏せのまま、両手を目の前に持ってくる。
(・・・・・・両腕は、ある)
続いて、上条は上体を起こして下半身を見る。
(両足・・・・・・五体満足か)
体のどこにも異常が無いことを確認し、辺りを見回す。
誰もいない。
インデックスも土御門も美琴もステイルも周りにいた人々も。
「なんだ?・・・・・・ここ」
上条は不審に思い、声を上げる。

411 名前:375 投稿日:2006/06/30(金) 12:57:29 [ fb/mepmQ ]

『気付いたかね?』

その声に反応するように、誰かの声が響く。
頭の中に直接響くような声だ。
「――――――――――――ッ!?誰だ!」
改めて辺りを見まわしてみるが、やはり誰もいない。
『探しても無駄だ。私は今此処には居ない』
「・・・・・・、何なんだお前!さっきの亀裂もお前の仕業か!」
『そうだな、君の読みは合っている』
「なにが目的だ?インデックスたちはどうした!あいつらも亀裂に入ったはずだ!」
『ああ、彼女らは別の空間に居る。心配しなくてもあと15分程で会えるだろう。幻想殺しの少年
よ』
「!?なんでこれを知って・・・・・・」
『それのことは君が生まれたときから知っている』
上条はその言葉に驚愕する。
上条の両親でも知らなかった、右手の正体。
それを、声の主はは生まれたときから知っていると言った。
ということは、声の主は生まれたときの上条と会っていて、しかも何らかの方法で右手に宿る力を
知っていた。
学園都市の精密機械でも見抜けなかった、幻想殺し(イマジンブレイカー)を。
「・・・・・・お前、どうやってこれを――――――――――――」
『気付いているとは思うが、私は魔術師だ。此処まで言ったらわかるかな?』
上条は思考を巡らせる。
この声の主は魔術師で、赤ん坊の頃の上条に会っていた。
何らかの意図があって、魔術をかけようとしたら上条の右手がその魔術を打ち消したのかもしれな
い。
と、そこまで考えて上条は思い出す。
上条の右手、幻想殺しはいかなる『異能な力』をも打ち消せる。
この魔術師が出した白い亀裂も魔術によるものなら、それも打ち消せないとおかしい。

412 名前:375 投稿日:2006/06/30(金) 13:02:27 [ fb/mepmQ ]
「ま、てよ。じゃあ何であの亀裂は消せなかった?お前、生まれたばかりの俺に魔術をかけよう
として、この右手の能力を知ったんだろ?じゃあなんで・・・・・・?」
『私は魔術をかけようとしたのではなく、かけたのだ』
と、ここで魔術師は一度句切り、

『その右手の能力、幻想殺しは私が宿した魔術だ』

なっ・・・・・・!?と上条は信じられないような顔をする。
『と言っても、魔道書に載っている魔術ではない。完全に私のオリジナルだ』
「な、そんな・・・・・・、証拠はあるのか!?」
その言葉に、魔術師はふっ、と微笑して、
『やはり禁書目録が傍についていても魔術に関しては疎いようだな。ま、説明するのは嫌いではな
いが』
と、魔術師は一拍置いて、
『幻想殺し・・・・・・私がつけた魔術名は「竜王の結界(ドラゴンリフレクター)」だが。その
名の通り聖ジョージの竜の結界部分を抽出し、極限まで凝縮させて君に宿した。竜王の結界は幻想
殺しの効果と同じ、物理的攻撃以外の全ての力を無効化にする。その分、特殊な術式を使わなくて
はならなかったがな。そのときの印をも抽入したのだ。聞いているかね?書いた文字に術者の魔力
が微量だが付加されることは』
「・・・・・・、土御門が言ってたな。確か、魔力を持たないインデックスあたりは問題ないって」
『その通りだ。それで、君の中には私の魔力が流れているわけだが、その魔力で私の魔力を使う魔
術は打ち消せなくしたのだ』
「待てよ。さっきから君の中君の中って、幻想殺しの話をしてるんだろ?何で俺の中って表現して
んだ?」
『ふむ。理解できないか』
「・・・・・・?」

『君の右手ではなく、全身に「竜王の結界」をかけたのだ』

次々と驚愕の事実を述べられた上条は、頭が話についていけなくなる。

413 名前:375 投稿日:2006/06/30(金) 13:05:26 [ fb/mepmQ ]
以上です。

幻想殺し魔術疑惑。
話纏まってますかね?

414 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/30(金) 13:14:48 [ ZfzaIPsw ]
原作しだいではトンデモになる可能性があるな
でもこの後の展開しだいではGJ

415 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/30(金) 16:14:42 [ mT8Bpf5g ]
あーそう来るのか。
なわけでJ。

416 名前:■■■■ 投稿日:2006/06/30(金) 22:10:15 [ U0Ggpnew ]
でもさー、完全オリジナルでもその基礎になる魔術理論やらから考え出したわけじゃないだろ?
結界部分のみを抽出したとはいえ、それは聖ジョージの聖域の術式の一部が流用されてるわけだし。
それなら一巻の『首輪』モードな禁書が読み取れたはずだ。
そうでなくとも、魔術的知識が豊富でしかも応用までできる禁書なら分かるはず。

魔女狩りの王もステイルオリジナルだったけど、理論は既存のものだったから禁書に解呪された。
今回のそれも同じ事が言えるのではないだろうか?

と、思った事をつらつらと書き綴ったわけですが……
どうみても批判的です。本当に(ry
まあ、スルーして続き書いてください。過疎ってますし。

417 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/01(土) 18:03:29 [ OMflVvUs ]
>>416
禁書の脳内に無い魔術理論っつったら、法の書の中身くらいだもんな。

まあ、気にしなきゃ気にならんべ。魔術師が大物キャラになることを願いつつGJと言わせていただく。

418 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/02(日) 00:15:16 [ jo1uidYQ ]
法の書の中が幻想殺し!てなわけないか

419 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/02(日) 00:24:17 [ QEy8wMbM ]
>>418
俺はリアルにそう思ってるんだが。つーか当麻がそういう力を欲したんじゃないか?

…スレ違いか。叱られる前にやめとく。

420 名前:375 投稿日:2006/07/02(日) 02:51:31 [ 6QtLELv2 ]
眠い・・・

>>418
ふふふ、お楽しみに・・・

眠いけど打つ!
頭の回転が鈍っていないことを願いつつ投下!

421 名前:375 投稿日:2006/07/02(日) 02:52:28 [ 6QtLELv2 ]
「じゃ・・・・・・なんで俺の右手だけ『異能な力』を打ち消せるんだ?全身にかけたんなら右手
以外の場所も打ち消せなきゃおかしいだろ。今まで右手以外の場所を打ち消せた試しが無いし」
『右手以外の場所に予め封印術式をかけておいたのだ。右手を残しておいたのは能力と君自身の成
長を促すためだ。全身にかけたら能力は成長せんし、かけなくても君自身が成長しない。だから効
率よく成長させるために右手にしたのだ。もっとも、今の君は成長が不安定だが』
ここまできて、上条は三沢塾での一件を思い出した。
腕を切り落とされたときに出てきた、竜の頭。
あれは、この魔術師がかけた封印のたかが外れて、能力が具象化したものだろう。
アウレオルス=イザードの疑念が生み出したにしては正確すぎると思ったが、やはりあれは上条に
宿っている幻想殺しの本体なのだ。
「・・・・・・、それで、お前はこの場所に俺だけを呼び出しておいてどうするつもりだ?」
最初に思っていた疑問がここでやっとだせた。
今まで驚愕と思考で出せなかったのだ。
『特別なことをしようって訳ではない。君に説明しておきたかったのだ。その右手のことを・・・
・・・っと、もうそろそろか。それでは、これで失礼させてもらうぞ。無事、あの世界から出られ
ることを祈ろう。幻想殺しの少年よ』
「えっ?な、待てよ!」
と、魔術師が会話を終えた途端、上条の意識が無くなった。


上条が意識を取り戻したとき、瞼から入ってきたのはあの白い空間の光ではなく、少しベージュが
かった太陽光に似た光だ。
(・・・・・・)
上条の顔に風が当たる。
あの魔術師は、インデックスたちのいるところに送ってくれたのか。
ここがさっきまでいた白い空間でないことはわかる。
ザラザラした地面、少し暑いくらいの気温、優しくなでる風、そして。
上条は背中に重圧があることに気付く。
人肌ほどの暖かい感覚が伝わってくるところから、誰かが倒れているようだ。
上条はそっと目を開ける。

鼻先約1cmの距離にインデックスの頬がある。

422 名前:375 投稿日:2006/07/02(日) 02:53:46 [ 6QtLELv2 ]

(・・・・・・んなっ!?)
反射的に距離を取ろうとするが、背中の重圧で身動きが取れない。
辛うじて動く首を回して背中で倒れる人を見る。
倒れていたのは土御門元春。
彼はまだ意識が回復していないみたいだ。
(や、やべーよこの状態でインデックスor俺が少しでも前に進めば・・・・・・嬉しいけどマズイ
!ってマズイのになに鼓動高まってんだ俺ーっ!?その後に考えるだけでもおぞましい地獄絵図が
待っているのに!?は、早くこの状況を打破せねば!ってかあの魔術師どんなとこに俺を配置して
んだー!!)
上条は前に進まないように横移動で土御門の下から這い出ようとする。
だが、ちょうどいいところに乗っているのか、どうしても動けない。
いっそのこと土御門を跳ね飛ばして起き上がろう、と上条は地面に手をつき、両手に力を込めると
ばねのように上体を起こし、土御門を吹っ飛ばす。
これで拘束から逃れて、インデックスとも距離が取れて一石二鳥!と心の中で歓喜する。

直後、インデックスの顔が起き上がった。

「ん・・・・・・とうま?」
そのまま彼女は上体も起こす。
そのルート上に、上条の顔があることも知らず。
凍り付いた上条の唇がぴとっ、とインデックスの頬に当たる。
その瞬間、インデックスの動きが止まる。
唇が頬に当たるという未知の感覚に頭がついていってないのだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、」
たっぷり十数秒凍り付いた上条は顔を真っ赤にして、素早くインデックスの頬から唇を離す。
インデックスは俯いて全身をプルプルと震わせている。
よく見れば、耳まで真っ赤にして口の中でブツブツと、何かを言っているようだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あのー、インデックスサン――――――――――――」
上条が話しかけた瞬間、インデックスは物凄い速度で上条の腹目掛けて蹴りを入れる。
「ベガァッ!?」
あまりの速度に上条は何も反応出来ず、無防備な鳩尾に一撃をくらった。

423 名前:375 投稿日:2006/07/02(日) 02:54:52 [ 6QtLELv2 ]
上条は仰向けに倒れ、痛みにのた打ち回る前にインデックスが上条の鳩尾にもう一撃、ボディプレ
スを入れる。
以前、海の家で入れられた一撃(インデックスは青髪ピアスの体だったのだが)より威力が高い。
「――――――――――――ッ!?」
上条は声にならない叫びを発し、体が硬直した。
それを待ってましたとばかりに、インデックスは上条の上に馬乗りになり、そのまま頭頂部にかぶ
りつく。
「うおぁ痛たたたたたたたたたったたたうぎゃ――――――――――――ッ!?」
上条は続けざまの攻撃に鳩尾と頭頂部に激痛を覚えながら、頭に噛み付くモンスターを必死に振り
払おうとする。
だがそれくらいで放してくれる程、今のインデックスは甘くない。
この状況をどうにか打破するべく、上条は弁解しようとする。
「痛ぇーッ!ってちょっと待ってクーダサイインデーックスサーンうぎゃーッ!?さ、さっきのは
事故です事故お前が急に頭上げるからって痛い!ま、ちょっ・・・痛いハゲるこれマジハゲる!だ
から許して下されマジでっ!」
痛みに打ちひしがれ、のた打ち回りながらも上条は必死に弁解する。
上条目線ではインデックスの顔は見えないが、彼女は茹で上がったように真っ赤になっている。
「とうまのばかばかばかばか!い、いいいいいいきなりき、キキキキキスなんて!」
彼女は聞いていないようだ。
「だから事故だって噛みながら喋るな痛い!マジでもう勘弁して下さいお願いしま痛い!」
上条は語尾に痛いがくる程限界に近くなる。
そんな上条の様子を見て、インデックスはようやく口を離し、上条の上から退く。
顔はまだ赤くなっている。
上条はやっと上体を起こすと、頭と腹を押さえながら力の無い声で、
「うぅ・・・・・・、ったくよ。ここまでやるか普通?腹に蹴りとかボディプレスとかプロレ
ス技は洒落になんねぇからもうやんな――――――――――――」
そこで、上条は周囲の視線に気付いた。
周りを見渡すと、いつの間に目を覚ましたのかステイルやら土御門やら美琴がそれぞれの表情をし
ながら上条を見ている。
ステイルは上体を起こした状態でこめかみの辺りをヒクヒクさせ、土御門は胡坐をかいて右手を顎
に当ててニヤニヤ笑い、美琴はうつ伏せで顔を上げた状態で頬を引き攣らせバッチンバッチン青白
い火花を散らせていた。
その異様なまでの光景に上条は頭をポリポリと掻き、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・、とんずらバイビー!」
ビッと敬礼して逃げる準備をしながら叫んだ瞬間、炎と雷の両方がほぼ同時に襲いかかってきた。

424 名前:375 投稿日:2006/07/02(日) 02:58:14 [ 6QtLELv2 ]
コピって投下で時間短縮。

シリアス場面続きだったのでコメディ部分も入れてみました。
そ、れでは・・・おやすみなさ・・・

バタリ、と。
375はあまりの睡魔に倒れた。

425 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/02(日) 19:51:21 [ B6hjHe6c ]
投下乙。
とりあえず続き待ってます。

426 名前:<幻想殺し> 投稿日:<幻想殺し> [ rvUJFm8Y ]
<幻想殺し>

427 名前:<幻想殺し> 投稿日:<幻想殺し> [ rvUJFm8Y ]
<幻想殺し>

428 名前:375 投稿日:2006/07/06(木) 11:47:03 [ .LCZy0LM ]
>>410
×竜王の結界 Imazine_Breaker
○竜王の結界 Imagine_Brealer

痛恨のミス・・・orz

管理人さん乙です。

429 名前:375 投稿日:2006/07/06(木) 12:35:04 [ .LCZy0LM ]
>>428
×Brealer
○Breaker

ぁぅぁ

430 名前:375 投稿日:2006/07/06(木) 20:55:38 [ .LCZy0LM ]
暫く命懸けの追いかけっこをした上条は皆の怒りを静めてから状況について話し始めた。
上条のいた、白い空間での出来事。
あの亀裂や帯は魔術であったこと。
魔術師と名乗った声は上条たちに、この世界で何かをさせようとしたということ。
上条の右手、幻想殺し(イマジンブレイカー)はその魔術師によって付加させられた魔術であるこ
となど、会話の内容で覚えている範囲は全て話した。
魔術関連のことを知らない美琴は顔を顰め、頭に『?』を浮かべている。
魔術専門のインデックス、ステイル、土御門は上条の話を注意深く聞き、話が終わるとそれぞれ俯
いて考え事を始めたようだ。
上条も、あの魔術師との会話を思い出す。

『その右手の能力、幻想殺しは私が宿した魔術だ。と言っても、魔道書に載っている魔術ではない。
完全に私のオリジナルだ』
『幻想殺し・・・・・・私がつけた魔術名は「竜王の結界(ドラゴンリフレクター)」だが。その
名の通り聖ジョージの竜の結界部分を抽出し、極限まで凝縮させて君に宿した。竜王の結界は幻想
殺しの効果と同じ、物理的攻撃以外の全ての力を無効化にする。その分、特殊な術式を使わなくて
はならなかったがな。そのときの印をも抽入したのだ。聞いているかね?書いた文字に術者の魔力
が微量だが付加されることは』
『その通りだ。それで、君の中には私の魔力が流れているわけだが、その魔力で私の魔力を使う魔
術は打ち消せなくしたのだ』
『君の右手ではなく、全身に「竜王の結界」をかけたのだ』
『右手以外の場所に予め封印術式をかけておいたのだ。右手を残しておいたのは能力と君自身の成
長を促すためだ。全身にかけたら能力は成長せんし、かけなくても君自身が成長しない。だから効
率よく成長させるために右手にしたのだ。もっとも、今の君は成長が不安定だが』

上条は自分の右手を見る。
そこに宿っている、幻想殺し。
正確には、上条の全身に宿っている結界。
それは、魔術だった。
あまり、信じたくはない話。

431 名前:375 投稿日:2006/07/06(木) 20:56:12 [ .LCZy0LM ]
今まで自分が思い続けてきた幻想殺しの像が、壊れる瞬間。
上条当麻は記憶喪失だ。
記憶を失う前の上条が幻想殺しのことをどう思っていたのかは、知らない。
だが上条は直感で、記憶を失う前の上条もこのような事実を突きつけられたら、今まで築いていた
幻想殺しの像を壊されざるを得ないだろうと思った。
これが魔術だなんて、誰が予想していただろうか。
インデックスも、魔術だとは思っていなかったのだ。
10万3000冊の中にも載っていない、オリジナルの魔術。
それが『異能な力』ならば、神様の奇跡でさえ打ち消す魔術。
それは右手ではなく、上条の全身に秘められていた。
今思えば、あの魔術師に聞きたいことはまだまだあった。
何故、自分の魔術を打ち消せなくさせたのか。
何故、上条と上条に宿る能力を成長させようとしているのか。
何故、今になって幻想殺しの正体を話したのか。
そしてなにより。

何故、上条当麻に幻想殺しを宿したのか。

「――――――――――――とうま?」
ずいっ、とインデックスが超至近距離で顔を覗き込んできた。
「うわぁっ!?」
突然視界に入ってきた少女に驚き、上条は体を仰け反らせる。
「真剣に考え中失礼しましたなんだけど。とうまにも話に参加してもらいたくて」
「つーかカミやんの問題だから話に参加してくれないと始まんないんだぜい」
土御門は手招きしながら言う。
上条は外心やや迷惑、内心ややドキドキという感じで、インデックスを睨みながら、
「・・・・・・、わかった。で、話はどこまで進んでんだ?」
「君は他人に説明させるのが好きだね」
と、ステイルは呆れたようにふぅー、と煙草の煙を吐きながら言った。
「今は君の右手の能力について色々意見交換ってとこさ。ま、その魔術師の話を聞いた君が話に参
加した方が手っ取り早いからね」

432 名前:375 投稿日:2006/07/06(木) 20:56:47 [ .LCZy0LM ]
「あくまで問題解決が優先なのな」
ステイルの言葉に不満を持ちながら、上条は話を聞く体勢に入る。
「で、とうまの右手が魔術だって話からだけど。私の記憶の中に竜王の結界を抽出する魔術なんて
なかった。魔術的痕跡も全く無かったし、成功例も聞いたことが無いってところから、魔術の線は
薄いって考えていたけど・・・・・・術式の痕跡はその力が打ち消しているのかも。一般に公開さ
れない魔術も数多く存在するのだけれど、そういう場合は魔道書に残すものだから」
「一回限りの『実験』にカミやんを選んだか。まだまだ解読されていない魔道書も数多くあるから
にゃー。そこんとこは本人に聞かないとわかんないぜい」
「でも竜王の結界を御する魔術となると・・・・・・並大抵の術式じゃ無理だね」
「・・・・・・、竜王の結界ってやつはそんなにすごいのか?」
「すごいも何も、魔術に応用すること自体が無理って考えられてたものなんだよ。あらゆる抽出術
式を打ち消してきたから」
「そもそも世界間の移動魔術自体、人智を超えてるからにゃー。一体何者なんだ、その魔術師」
「そうだね。空間移動系の魔術ならまだしも、世界の移動となると・・・・・・、応用するのも無
理かも」
「しかし何故、上条当麻に竜王の結界を宿したのか。その気になれば、他の人にも宿せただろうに。
超能力って線はないのかい?」
「その線は薄いかも。この前ひょうかが言っていたけど、とうまの右手は超能力じゃないって」
「カミやんは唯一、竜王の結界を宿せる器だったとか」
「器って・・・・・・、俺はそんな大層な人なのか?体力は中の上程度、頭脳は最悪って感じだけ
ど」
「器ってのは頭が良いとか、運動ができるとかが関係あるとは限らないんだぜい。要は適性、相性
が良いか悪いかの問題ってことですたい」
「うーん、よくわかんねぇな」
うーん、と4人は思考を内側に向ける。
ふと、上条は周りを見回してみた。
この世界に入ってからいろいろあったので、じっくり眺める暇が無かったのだ。
辺りに広がっていたのは、一面の砂地。
地平線もはっきりと見え、何もない。
まるで、砂漠のど真ん中にいる気分だ。
空は青く澄んでいて、所々に白い雲が見える。

433 名前:375 投稿日:2006/07/06(木) 20:58:14 [ .LCZy0LM ]
話が難しい・・・
幻想殺しに関する情報も少ない・・・

434 名前:169 投稿日:2006/07/06(木) 23:32:34 [ ubA5z07. ]
 サーシャ=クロイツェフは現在、上条当麻の部屋に居候している。
 ――断っておくが、上条が強要したわけでも色っぽい事情があるわけでもない。
 正式な滞在場所が決まるまでの間、サーシャは土御門元春の部屋に間借りする予定だったらしい(土御門本人は仕事で一時ロンドンに)。しかし昨晩は、何故かその部屋を土御門の義妹の舞夏が占領してしまったため、他に行く場所もなかった彼女は仕方なく上条の部屋に泊まることになったのだ。
「それならいっそのこと、任務が終わるまでここにいれば?」とインデックスが言い出した時は、初め上条は冗談だと思った。インデックス一人でも手を焼いているというのに、そこに似たようなのがもう一人加わってしまえば、財政的にも社会的にも上条さん家は崩壊する。
 しかし、これまた何故かサーシャがその話に乗ってきた。「連絡の手間が省ける」「拠点は集中させておくべき」「意外に食事が美味しかった」などというのがその理由。最終的には紅白シスターによるステレオ説得が実行され(隣室の舞夏が聞いた「ぎゃあぎゃあかしましかった」とはこのあたり)、「二宗派から与えられた作戦資金から食費くらいは出す」とまで言われてついに上条も折れたという話。
 上条としては、隣の部屋が空くまで、という条件をつけたつもりなのだが、サーシャが彼の部屋にいる限り舞夏が監視を止めることはないため、実は無意味だったりする。知る由もないことではあるけれど、こんなところでも上条当麻は不幸だった。


 さて。
 色々あって、帰り道。夕陽暮れなずむ学園都市を、上条とサーシャは並んで歩いている。
 校門で分かれた吹寄達には「送り狼」がどうとか散々に言われたが、帰る学生寮(おうち)が一緒なのだから仕方ない。もっともそのことをクラスメイトに話せるわけもなく、単に同じ方向だから送っていくだけだと言い訳しておいた。
 サーシャは歩きながら、言祝からもらった自分用の台本を熱心に読んでいた。転ばないのが不思議なくらいの集中っぷりである。なんだかもう、目的と手段が美しいまでに入れ替わってしまってると思うのは上条だけだろうか? 左手に台本を持ち、右手でめくっている彼女は、当然あの手提げ袋は持っていない。
 帆布を張り合わせたような丈夫な手提げ袋は、今は上条が持たされていた。中身の拷問道具は、釘一本に至るまで何らかの魔術的加工が施された霊装であるらしく、右手で持つことは出来ない。利き腕でない方の腕でこれだけの重量を持ち上げるのは大変だった。
「……はぁ」
 しかし、そんな荷物よりも何よりも、今は上条自身の気分の方が重かった。
 思わず漏れたため息に、サーシャが台本から顔を上げて覗き込んでくるが、空笑いを返すことしかできない。
 理由は一つ。そしてその理由に向かって歩いているということでもう一つ。
「……はぁ」
 やがて、学生寮(おうち)が見えてきた。


 夕食後。
「うん。いいんじゃないかな。闇雲に探し回るよりずっと効果的だと思う」
 上条シェフ渾身の一品、ふわふわ卵のオムライスを真っ先に食べ終えたインデックスは、一通りの話を聞いてそう言った。
 一端覧祭の出し物で上条の学校が「シンデレラ」をやること。
 その役者に唐突に上条達二人が抜擢されてしまったこと。
 そして、劇の舞台を利用して「灰姫症候(シンデレラシンドローム)」の捕獲を狙っていること。
 二人の話を聞いた上でのインデックスの反応は、なんというか、あまりにいつも通りだった。
「……どしたのとうま? 私の顔になんかついてる?」
「え? あー、とりあえず口のまわりのケチャップは拭いときなさい」
 “だからこそ”、上条は不安になる。

435 名前:169 投稿日:2006/07/06(木) 23:33:05 [ ubA5z07. ]
 大覇星祭では「刺殺杭剣(スタブソード)」だの「使徒十字(クローツェディピエトロ)」だののせいであんまりかまってやれず、彼女を長いこと一人ぼっちにしてしまった。三毛猫だけを抱いて寂しそうにしていたのですよー、と後になって小萌先生に聞かされたりもした。
 だから今度の一端覧祭では、その埋め合わせにはならないかもしれないけれど、できる限りインデックスと一緒にいようと思っていた――のだが、その矢先にこれだ。
 出演者という立場になってしまった以上、祭りを見て回れる時間はかなり削られてしまうだろう。
 しかも――しかもだ。上条だけではない。新しい同居人、新しい友達になったばかりの赤い少女もインデックスを置き去りにしてしまう。
 一つ屋根の下で感じる疎外感というのはどれほどのものだろう。
 ティッシュを三枚も使って口を拭っている様子は、普段と変わらないように見える。“そのように装っているだけなのではないか”というのは上条には判断できない。
 こういう時、上条は月詠小萌という教師をすごいと思う。あの人は生徒の気持ちを敏感に察し、妥協ではなく打開のための策を探し出せる人間だ。人生経験未だ浅い一少年である上条当麻には、遠く及ばない領域である。
 インデックスは使い終わったティッシュをくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に放り込み、
「ふう。それじゃサーシャ。具体的な方法を考えよっか。演劇を見る人が持つ『シンデレラ姫』のイメージを、どれだけ舞台上の『サーシャ=クロイツェフ』に近づけさせるかがポイントだね。まあこれはいい演技をすればいいってことだけど、細かな身振り手振りに魔術的意味を含ませることで若干ながら効果を上げることができる。こういうのは天草式が向いていると思うんだけど……」
 食後の一杯(麦茶)を飲んでいたサーシャは平たい声で、
「私見一。インデックスの知識があっても、一朝一夕に学べるものではないだろう。ロシア式で代用するしかないかと」
「そだね。かと言ってサーシャの霊装を舞台に持ち込むのは難しそうだから――――――だからとうま。そんなにじろじろ見られてると気になって仕方がないかも。今度はマヨネーズでも付いてるっていうの?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……」
 上条は逃げるように目をそらした。自分でもわざとらしかったと思うが、まさか面と向かって「お前、無理してないか?」と尋ねられるわけもない。どうにかごまかすことはできないものかと思考を巡らせるのだが、
 しかし。
「……………………………………、」
 こんな時ばかり察しのいい白シスターは、ふっと半目になった。ちなみにこの時点で赤シスターは食後の一杯を再開している。我関せずといった様子だ。
 インデックスは上条の袖を掴み、
「とうま、とうま」
「な、何でしょう?」
「もしかしてとうま、私が一人だけ仲間外れになるからって拗ねるとか思ってた?」
 ドキ、と上条の心臓が凍る。
「い、いや、全然そんなことないぞ?」
 とっさに浮かべた素敵スマイルは、しかし少女の表情を一層険しくし、
「もしかしてとうま、私が一人だけ仲間外れになるからって拗ねるとか思ってた?」
「だから、」
「もしかしてとうま、私が一人だけ仲間外れになるからって拗ねるとか思ってた?」
「あの、」
「もしかしてとうま、私が一人だけ仲間外れになるからって拗ねるとか思ってた?」
「えっと、」
「もしかしてとうま、私が一人だけ仲間外れになるからって拗ねるとか思ってた?」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ハイ」
 折れた。

436 名前:169 投稿日:2006/07/06(木) 23:34:32 [ ubA5z07. ]
 インデックスは呆れたようにため息をついて、
「とうま。私はそんなに大人気なくないかも。『いちはならんさいー』っていうのが聖誕祭(クリスマス)や復活祭(イースター)みたいに大切なお祭りなら、準備も本番もとても大事で大変なんだってわかるし、そのために当麻が努力するって言うのなら私が怒る理由なんてどこにもないんだよ? サーシャも一緒にっていうのは確かに羨ましいし、寂しいとも思うけど、それ以上に頑張って欲しいって思うもん。……第一、これは『灰姫症候』を捕まえるための作戦でもあるんだから、むしろ当麻はそういう意識も持ってなきゃだめなんだよ」
 シスターのように、シスターらしく、シスターとしてお説教を始めた。
 その顔はどこまでも真剣で、強がりでも投げやりでもなく、本当に本心なのだということが伝わってくる。
 上条は自分の浅はかさに身が縮こまる思いだった。
(う、うう。あのインデックスが、あの暴食シスターがいつの間にかこんなにも立派な考え方をするようになっていたなんて。上条さんは、上条さんは……! ――よし。なら、インデックスのためにもサーシャのためにも、俺は、「シンデレラ」を成功させることに心血を注ぎまくる所存であります!)
 延々と叱られながら、上条当麻は決意を新たにする。どの道『灰姫症候』がらみでは役立たずなのだ。ならばここで全力を使わずにいてどうする。
 おっしゃー、と拳を握り締めた腕を、横から引っ張る手があった。
 首をひねって見ると、サーシャが上条の服の袖を指先でつまんでいた。その仕草に彼は何となく夏の『ミーシャ』を重ねてしまったのだが、頭を振ってそのイメージを払い、
「どうかしたのか? あ、オムライスのおかわりならないぞ」
「…………私見二。それは非常に残念ではあるけれど」
 と言いながらどこか釈然としていないような顔で、サーシャは新聞の折込みチラシのような紙を差し出してきた。一見何の変哲もない紙だが、どっこいここは学園都市。チラシやトイレットペーパー、ティッシュペーパーなどに使われている紙は全て廃材利用の再生紙で、しかも土に埋めておくとインクごと自然分解するというエコロジカルな代物だ。
 が、ここで問題なのはどんな紙かではなく何が書かれているかだ。上条は受け取ったチラシを顔の前に広げてみる。派手な色使いに、隅に押された運営委員の承認印。どうやら一端覧祭関連の宣伝チラシらしい。
「なになに……第七学区三番臨時会場、ってウチの学校だよな。えっと? 『のど自慢大会出場者募集の――』」
「む、とうま。人がお説教してるっていうのに何サーシャとおしゃべりなんかして――――ってうわああああああ!?」
 上条の手元を覗き込んだインデックスがいきなり悲鳴を上げた。
 上条は思わずのけぞったのだが、
「ダ、ダメそれ見ちゃダメなんだよ見るな見ないでとうまのばかぁッ!?」
「うおっ!? な、何だかよくわからないけど落ち着けインデックス!?」
 やや錯乱しながらも、インデックスはのしかかるようにしてチラシを奪い取ろうとしてくる。上条は本能的に腕を伸ばし、シスターの魔の手からチラシを守った。
 しかし、なおも白い少女の勢いは止まらない。
「とうま、とうま! もしそのチラシを私に渡さなかったらゼウスからトラウィスカルパンテクウトリまで古今東西あらゆる神様が貴方に天罰を下すかもー!!」
「えー! 何その大盤振る舞い(オールスター)! 十字教(おめーら)って一神教(ソロシンガー)じゃなかったの!? つ、つか何でのど自慢大会にそんなに過剰反応示してんだよ! まさか参加するわけでもあるめーしー!!」
 上条としては、その場しのぎの、大した考えもなしに放った言葉だったのだが、

 ピタ、と。

 押し倒すような格好になってもまだ暴れていたインデックスが唐突に動きを止めた。
「…………、」
 今にも泣き出しそうな顔になっているインデックスに、上条は嫌な予感を覚えつつ、
「あのー…………………………まさかマジで?」
「う――」
 白シスターは息を吸い、
「ううううううううううううううううううううううううううう!!」
 最後の方はほぼ絶叫。

437 名前:169 投稿日:2006/07/06(木) 23:37:17 [ ubA5z07. ]
 インデックスは矛先を真横にいる赤シスターに変更し、
「ひどいよサーシャ! とうまには絶対内緒だって言ったのにどうして教えちゃうのー!」
 対し、サーシャはわりかし平然と、
「解答一。今日トーマの学校に行って分かったのだが、『イチハナランサイ』当日のトーマのスケジュールは主に女性関係で大変なことになってしまう可能性が非常に高い。出演する側になったこともあるし、予定はなるべく早めに決めておいた方がいいのではないかと」
「……うう。いきなりステージに上がってとうまをびっくりさせようと思ってたのに…………でも反論できないかも」
「いやそこは反論してくれ頼むから」
 うめいて、しかし自分でも否定しきれないと思ってしまう辺り本当に駄目そうだった。
 上条は押し倒されるというか押し潰されるというかな体勢からどうにかこうにか身を起こす。同じように改めて座りなおした紅白シスターを見やって、
「えーと……つまり何か? お前は本気でのど自慢大会に出るつもりなのか?」
「うん」
 秘密にしておきたかったことがバレたせいか若干悔しそうに、しかし躊躇うことなくインデックスはうなずき、
「順番に歌を歌って、一番上手だった人が一等賞なんだよね? 私、そういうのはちょっと自信あるかも」
 胸に手を当て、得意げに微笑んだ。
 実際、彼女の声はとても澄んでいて、よく通る。「強制詠唱(スペルインターセプト)」や「魔滅の声(シェオールフィア)」などはその声あっての技だ。普段は大声を上げて噛み付いているか、「お腹へった」と言っているだけなので、分かりにくいのだが。言われてみれば、確かに彼女ならいい線いけるかもしれない――――“出場できたなら”。
 上条は申し訳なさそうにチラシの「募集要項」の部分を指で示し、
「……あのなインデックス。残念だけど、もう募集締め切りは過ぎてるんだ。これ、一週間前のチラシなんだよ。えいくそ、もうちょっとちゃんと部屋を片付けてりゃよかったな。当日、一般客からの飛び込み参加枠もあるにはあるけど、こっちは理事会が発行した入場券代わりのIDカードが絶対」
「うん。知ってるよ」
「必要で……は?」
 上条さんの目がテン。
「そのチラシがあった場所も書いてあった内容も最初から“覚えてたし”。私に限ってそんな初歩的なミスを犯すことはありえないよ」
 一度見たもの、聞いたものは決して忘れない完全記憶能力を持つシスターはスラスラと言ってのけた。彼女の記憶力は今さら疑うべくもない。
「??? ならどうやって出るつもりなんだよ」
「『もうしこみ』とか『あいでぃー』とかは、全部こもえがなんとかしてくれるんだって。相談してみたら『先生にお任せなのですよー』って言ってた」
「……………………なるほど」
 不思議と納得できてしまうのが不思議でないのが不思議な上条だった。
(けど――結局またあの先生に頼ることになっちまったな)
 上条は腕を組み、苦笑する。
 まあ今回はインデックスから言い出したことらしいし、結果はどうなるにせよ、それで彼女が寂しい思いをしなくてすむようになるのなら――――
 って、あれ?
 何かが引っかかった。

438 名前:169 投稿日:2006/07/06(木) 23:37:59 [ ubA5z07. ]
「インデックス」
 上条は尋ねる。
「もしかだけど。――――俺らが劇に出るって言っても文句言わなかったのは、もう自分で別のに出ることが決まってたからか?」
「………………………………………………えへ♪」
「可愛く笑ったところで誤魔化せると思うなよお祭り娘! サーシャも巻き込んでアイドルっぽいポーズを決めても駄目! ええい、ちょっとは大人になったのかと感動して損した、のっけから俺たちより一端覧祭を楽しむつもりだったんじゃねーか!!」
 うがー! と上条は怒りとやるせなさとほんのちょっとの安心をこめて叫ぶ。しかしインデックスは乾いた笑顔を貼り付けてぎこちなく視線をそらすのみ。
「あ、あはは。と、という訳なのでサーシャ。お互い頑張ろうね? サーシャのシンデレラ姫、とっても似合うと思うから」
「返答一。ありがとうインデックス。私見だが、貴女の歌も素敵なものになると思う」
 少女達は和やかに(片方は引きつっているが)激励し合っている。
 なんというか、すでに事態は「とある少女の学園ドラマ 〜文化祭編〜」に一直線って感じだ。
 うわーこんなんでいいのかー、と上条は唸ってみるのだが、
(――どうにも危機感が湧いてこないんだよなぁ。『今のところは無害』って辺りが特に。一応これって、イギリス清教の一番お偉いさんが出張ってくるような事件なんだよな……?)
 それにしては、仕掛ける側の所業も教会側の対応もいい加減な気がする。あるいはそれは「科学側」の人間の上条当麻だから感じる感想で、「魔術側」から見れば十分非常事態体勢と呼べるものなのかもしれない。
(まあ、サーシャの話だと他にも『灰姫症候』を捕らえに学園都市に入っている連中がいるらしいし……そっちに任せてもいいのかな?)
 赤と白の少女達が、存分にお祭りを楽しめるようになるのなら、それでもいいかもしれない、と上条は思った。

439 名前:169 投稿日:2006/07/06(木) 23:39:14 [ ubA5z07. ]
 行間 一

 夜が動く。
 月と星と電灯の明かりだけが世界を支配できる時間。「真夜中」という決して壊すことのできない概念が、今かすかに揺らいだ。
 学園都市をぐるりと囲む外壁、その内の三箇所でほぼ時を同じくして。
 一つは滑る様に。
 一つは弾く様に。
 一つは潜む様に。
 三者三様の方法で“侵入”を果たした者達は、三人ともが同じ場所を目指して進みだす。
 ゆっくりと、各々の技で身を隠しながら、しかし確実に。“まるで同じ目的を持っているかのように”。
 そう、もはやどうでもいいことではあるのだが、

 彼らは、決して互いに面識を持たない者達だった。
 彼らは、決して同じ組織に属していない者達だった。
 彼らは、決して協力関係にない者達だった。

 ――そして、真実どうでもいいことであるし、語っても意味のないことでもあるのだが、


 彼らは、決してイギリス清教からもロシア成教からも命を受けてはいない者達だった。

440 名前:169 投稿日:2006/07/06(木) 23:42:22 [ ubA5z07. ]
いぇい。 ミニプラ・ダイボウケンに夢中になっている間にえらくにぎやかになってますね。
うっかり八号機と九号機を買いそびれた169です。また何週間か間が空いてしまいました。
そろそろ構成が乱れてきて化けの皮が剥がれてきた感じがしますが、もうしばらくお付き合いを。
一応これで第二章は終わりです。

なんだかwikiに登録していただいたようで、嬉しいやら申し訳ないやら。
……読み返してるとものすごく書き直したくなります。orzというやつです。
せめてこれから先はと、いつも思っているのですが。


>>198
こちらは最初からジェラシー全開ですぜ。 姫神かわいいったら。
てなわけで、対抗心の導くがままにタイトルなんか決めてみました。

「とある魔術の禁書目録 Missing Page 『とある天使の灰姫遊戯(シンデレラストーリー)』」

何のひねりもない上に無駄に長いです。
応援してますので、頑張っていきましょう。

>>375
パーティーが豪華でいいですね。 何気に接点ゼロなステイルと美琴がどう絡むのか気になります。
この二人の合体技で「燃えろ灼熱!」「轟け雷光!」というのを幻想しましたが、よく考えたら両方左担当なんで無理ですな(わかる人だけわかってください)。
でもひとかたさんと建宮さんを連れてくれば黄金の(いい加減にしなさい)。

>>407
カエル医者カッコいい!(大喜び)
存在感のあるオッサンキャラって大好き。


そろそろテスト期間に入るのでまたしばらく……………………あれ? なんかかえって執筆ペース上がる気が(待てや)。
連レス失礼しました。

441 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/07(金) 14:40:55 [ eEC3gnO2 ]
そういえば結局当麻は劇で何の役になったんだろう

442 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/07(金) 22:11:10 [ FSCCkc86 ]
馬じゃないか?(カボチャ馬車の)

443 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/07(金) 22:15:34 [ HSPtzYzQ ]
兵士・・・とかかな・・・。
穴場で木とか(背景

444 名前:375 投稿日:2006/07/08(土) 13:06:30 [ OAsn0Yr. ]
客人A?
時計?
不幸関係の役をやっているような気が・・・

>>440
流れで言うとあまり絡みませんね。
一方さんと建宮さんを出させるのもいいですね。
ちょっとしたネタが浮かびました。

445 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/08(土) 13:09:31 [ P7Mvo8Cs ]
Wikiまとめがごそっと更新されてる件について

自分の書いた駄文と>>169氏や>>375氏との落差にほんのり死にたくなる。

446 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/08(土) 18:00:46 [ NHGTSSH2 ]
>>445
その気持ちわかるわぁ
しかし更新した人乙です
まとめ読みできるのはありがたいですな、実際

447 名前:絶賛断筆中 投稿日:2006/07/09(日) 16:29:20 [ 4/j3bBu2 ]
ifという言葉がある。
(もし、もしも、あの時『別の可能性』が採られていたなら、あんな犠牲は出なかった)
そんな夢想。
過去。もはや過ぎたことを悔やみ続ける魔術師は、やがて“それ”を手にした。
(一方通行が負けなどしなければ、私は絶対の力の行く先を見られていたのに!)
そんな妄想。
かつて求めた未だ見ぬ世界へ至るため、研究者は、かつて“それ”を手にした。

『平行再現(アナザーズコール)』。
分岐から在りえたものを現実化する、『純金練成』の応用魔術。「あるはずだった」世界を確かめようと。
『残骸(レムナント)』。
天気を予言すらする演算能力を持つ科学技術の結晶、その残骸。「あるはずだった」現在を確かめようと。

その二つの交差が生み出したのは、かつて潰えたはずの、在りえなかった悪夢。
絶対能力(レベル6)、『極限移行(ホームストレート)』。
向き(ベクトル)を生み出し、消し去り、操作する『最強』の能力。
それは、魔術によって、棄てられた事象の彼方より、来る。

「―――――あァ?何だッてンだこりゃ。俺ァ何でこンな所にいンだァ?」

魔術が科学を呼び出すとき、物語は始まる――――!




更新してたら触発されたので嘘予告投下。続きは絶賛断筆中。
やっぱ読んでると書きたくなりますねー。諸氏と比べると凹むが。
Wikiまとめ、引用文にすると自動で折り返してくれないんで、読みにくいかと思って直書きにしてみました。
俺のディスプレイが小っさいだけというのは禁句です。
でもこれやると中途半端なところで改行したりするのが難しいところ。

448 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/09(日) 18:03:24 [ OwAoQ6ts ]
俺も自分のあまりの文才のなさに、書いてる途中で凹むorz
他にもオリ設定はよほど煮詰めたものでないと批判されるし、
どっかが少しでも矛盾してたりするとキツく指摘される。

だからオリ混じり系は書こうにも書けない俺は気がテラヨワス(´・ω・`)
WORKINGクロスはファミレスが北海道にあるのに気づいて諦めたんだよね。

449 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/09(日) 18:11:29 [ vdzsIMp6 ]
学園都市は北海道にあったんだよ!

450 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/09(日) 19:44:56 [ 6bINjTVg ]
学園都市は俺たちの心の中に……とミサカは言ってみる
ということで、場所とかの設定はフレキシブルに変更してもいいんじゃない?

外出許可もらって、北海道まで当麻に会いに来る美琴を幻視
「な、なによっ。別にアンタなんかに会いに来たんじゃないんだからね!
こっちにきたのは母親の大学があるからよ!」

どう見てもツンデレです。本当に(ry
そっちもいいなぁと思った俺は、どうみても頭が沸いてます
(母親の大学が本文中には無いです)

451 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/09(日) 20:58:27 [ 6bINjTVg ]
>>450ですが
 ×母親の大学が本文中には無いです
ではなく
 ○美琴の母親の大学は勝手に決めてみました
です。失礼しました

452 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/09(日) 21:20:51 [ FztMpino ]
wikiと過去ログ見たら終わらせたと思ってたのに、投稿し忘れてたのに気付いた。
おちがどんなのかもう思い出せない…。

オリもクロスも真面目な話にすると、作るの難しいな!

453 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/10(月) 09:47:30 [ 6o7mLxm. ]
169マジ乙、まるで本編を読んでるのかと錯覚するほどにGJだった。

とりあえずテスト期間中はテストに集中して頑張って下さい。

454 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/11(火) 10:03:27 [ iDPWPNok ]
169氏、198氏、375氏と安定した供給が得られるようになったっぽいね、このスレも

455 名前:375 投稿日:2006/07/11(火) 15:28:24 [ bIFNTpYc ]
がああああ
今更だけど書き直したいorz

というかシリアス場面ばっか書いてるのうちだけだ・・・
これからのネタも戦闘場面ばっかだし・・・

456 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/11(火) 19:16:13 [ X4jTSVpU ]
まぁ、頑張って書いてください。
期待してます。

457 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/11(火) 21:00:50 [ 30HxI6R. ]
シリアスは敷居が高くて敬遠しがちってだけだから気にせずがんば

458 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/12(水) 00:27:52 [ X0ImrZfQ ]
シリアスが少ないのは本編だけでは足りない萌え分を補完してるだけだから
別にシリアスをやってはいけないというわけではないだろう

459 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/18(火) 23:03:20 [ A4/zNSes ]
いかん、Red Angelとすぺしゃるな週末分が不足してきた。

460 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/19(水) 19:11:13 [ lYuHXKoA ]
作者さんを急かしちゃ良くない。
気が向いた時に投下してもらえればいいだろう。

461 名前:375 投稿日:2006/07/20(木) 20:13:22 [ 4s1b1IVc ]
上条たちの円から一歩離れた所に、話に参加できなくてむくれているのか、むすー、としている御
坂美琴がいるだけだ。
と、彼女は急に表情を変えた。
何か、信じられないものを見ているような顔だ。
上条は美琴が向けている視線の先を追ってみた。

そこには、上条たちを飲み込んだあの白い亀裂があった。

「・・・・・・ッ!?」
上条の全身から嫌な汗が出る。
「ん?どうした、カミやん」
土御門はそんな上条の様子に気付いたのか、真剣な表情になる。
インデックスとステイルも顔を上げ、亀裂に注目する。
「・・・・・・!上条当麻、離れろ!」
「うぉぁあああ!?」
ステイルは言葉と同時に、上条を蹴飛ばした。
2mほど地面を転がる上条を無視し、ステイルは素早くルーンのカードを辺りにばら撒く。
亀裂はどんどん押し広げられる。
すると、亀裂の隙間から人影が見えた。
大体腹の辺りだろう、白いスーツが見えている。
上条は身構える。
と、上条の隣に土御門と御坂美琴が駆け寄ってきた。
「もしかすると、あいつが俺達をここに連れ込んだ奴なのかもにゃー」
「マジュツとかなんとかわけわかんないけど、アレが出てきたって事は開戦ってことよね」
美琴はそこのところは理解しているらしく、バチンバチン、と火花を散らしている。
上条は一瞬、体を震わせた。
別に、その魔術師のことが怖いのではない。
幻想殺しでも打ち消せない魔術が怖いのではない。
ただ、人智を超えた魔術を使うというので、人ではないような気がしたのだ。
ビキビキ、と音が鳴り、亀裂が大きく口を開ける。
ここに、謎の魔術師との戦いの火蓋が切って落とされた。

462 名前:375 投稿日:2006/07/20(木) 20:19:24 [ 4s1b1IVc ]

第一回戦 Aureolus_Izard

白い亀裂の中にいる魔術師の顔が現れた。

オールバックの緑色の髪。
それは紛れも無く、アウレオルス=イザードだった。

「!?」
上条は驚愕した。
アウレオルス=イザード。
以前、三沢塾での一件で一度、拳を交えた錬金術師。
彼が上条たちをこの世界に引きずり込んだ張本人だというのか。
彼の修得した黄金錬成(アルス=マグナ)という魔術を使えば不可能なことは無いだろう。
だが彼はあの一件で記憶を失い、整形もしたというので、まともな状態でないはずだ。
上条が思考を内側に向けていると、アウレオルスは亀裂からゆっくりと出てきた。
「・・・・・・、久しいな。禁書目録(インデックス)、ステイル。君達もここにいるのか」
彼が最初に目を向けたのは身構えているインデックスとステイルだった。
どうも彼の言動は、上条たちをこの世界に連れ込んだのは自分ではないように聞こえる。
暫くすると、アウレオルスは辺りを見回し、
「存外、辺鄙な場所だ。こんなところで戦れというのか」
と、急に上条の方にグルン、と向いた。
上条はびくっ、と震え、
「な、お前――――――――――――」
「なんでここにいる、か。私にも良く分からんが、どうやら君達と戦わねばならぬようなのだ」
アウレオルスは上条の心を先読みしたように、上条の疑問に答えた。
すると、アウレオルスはゆっくりと屈んだ。
そして地面に手を付く。
そのとき、土御門はハッ、として、
「危ない!カミや――――――――――――」

彼の声と共にバキン、という音がなり、上条の足元から縦横20cmほどの岩石製の四角柱が物凄
い勢いで伸びてきた。

463 名前:375 投稿日:2006/07/20(木) 20:23:18 [ 4s1b1IVc ]

土御門の言葉に一瞬気を逸らした上条は反応が遅れ、無防備な胸板に柱が直撃する。
「ぐが・・・・・・ぁ・・・・・・っ!?」
肺の中の空気が強制的に吐き出され、その場に崩れ落ちる。
近くにいた土御門と美琴が慌てて倒れた上条に駆け寄ってきた。
「アンタ!」
「くそっ。これが、奴がもともと持っていた魔術だ」
土御門は地面から伸びた、長さ2mほどの岩石の柱をゴン、と殴ってから言った。
と、いつの間にかステイルが炎剣片手に上条の隣に立っていた。
「以前言ったと思うが、奴の分野は錬金術だ。黄金錬成(アルス=マグナ)は三沢塾に侵入してか
ら完成させた錬金術の最頂点だが、その1ランク下の錬金術――――――『物質錬成(コスモ=マ
グナ)』を奴が使っているということは、奴の技能は『三沢塾』の一件以前のものとなる。物質錬
成は掌で触れたものの形を分子レベルで組み替える術式だ」
「つまり、今ここにいるアウレオルスは学園都市にくる以前のアウレオルスってことだ。カミやん
の言ってた魔術師が何か、操作系の魔術を使ったのかもしれない」
上条はゆっくりと立ち上がり、恐る恐るといった感じで右手で岩石の柱に触れる。
バキッ、という音がなり、2mもあった岩石の柱がボロボロと崩れた。
アウレオルスの使う錬金術に、右手は通用する。
ということは、彼は上条たちを連れ込んだ魔術師は彼ではないことになる。
もっとも、その魔術師の話が本当だったらの話だが。
上条は改めてアウレオルスの方を見る。
彼の後ろにあった、白い亀裂はもう消えていた。
彼自身はそのままの姿勢で上条に視線を向けている。
その瞳はあらゆる感情の色が失われたものだった。
まるで、誰かに操られているような。
上条は背筋に悪寒を感じた。
ほとんど操り人形のようなアウレオルスに対して、ではない。
過去を操り、人間を操り、幻想殺しをも操る力を持った、正体不明の魔術師に対してだ。
悪寒は恐怖と憤怒からくるものだった。
「・・・・・・、上等だ。これがテメェのやり方なら。人を操って、世界を操って、皆まで巻き込
んで。そこまでして俺の成長を楽しむ為だけってんなら――――――――――――」

464 名前:375 投稿日:2006/07/20(木) 20:26:56 [ 4s1b1IVc ]
上条は覚悟と共に告げる。
ここにはいない、謎の魔術師に向かって。
その魔術師に幻想殺しが通じなくても、関係ない。
その魔術師が人智を超えた魔術を使っていても、関係ない。
上条はただ、守りたい者を守る為だけに、守るべき世界を守る為だけに、拳を握る。
その者を傷付けるような奴は、その世界を壊すような奴は、誰であろうと拳を振るう。
たとえその拳が通じなくても、決して諦めない。
そうやって、今まで過ごしてきた。
そうやって、今まで守ってきた。
だから上条は自信を持って告げる。

「――――――――――――そんな幻想は欠片も残さず全て喰らい尽くす!!」

言葉と共に、上条は駆け出す。
アウレオルスとの距離は10m前後。
大体6、7歩で射程圏に入る。
アウレオルスの方からバキン、という音が聞こえる。
上条は咄嗟に身構えたが、さっきのような岩石の柱は伸びてこない。
代わりに、アウレオルスの足元からよくゲームなどで目にする約1mの剣が2本、伸びてきた。
上条の足元からは何も出てこないことを確認してから再び、上条は駆け出す。
距離はおよそ、7m前後。
アウレオルスは伸びてきた剣を2本とも両手で掴むと、そのうち1本を上条に向かって投げつけた。
と同時に、バキン、と音が響くと剣がいきなり加速した。
上条は走るのを止めず、握っていた右拳を振り上げ、顔に向かってくる剣を叩き落すように振り下
ろす。
バキン、という音が鳴り、飛んできた剣は弾け飛ぶように粉砕した。
あと、5m前後。
アウレオルスは表情を変えず、無言のまま片手を上条に翳す。
するとバキン、と音が鳴り、彼の掌から静電気のようなものが散った。
だが、何も変化が無い。
上条は不審に思っていると、
ゴッ、という音と同時に彼の背後から石塊をぶつけられたような衝撃が来た。

465 名前:375 投稿日:2006/07/20(木) 20:30:14 [ 4s1b1IVc ]
「・・・・・・っ!!」
上条は一瞬何が起こったか理解出来なかった。
前に走っていたのでダメージは軽減されていたが、今の衝撃でバランスが崩れる。
すぐに右手で何かの圧力を受けている背中を触ろうとする。
すると、バシュッ、という空気の抜けたような音が鳴り、背中を押す圧力が無くなった。
おそらく空気を圧縮したものでも撃ったのだろう。
それを確認すると、上条はつんのめりそうになった状態から一歩踏み出し、バランスを取り戻す。
あと、2m前後。
アウレオルスは相変わらず無表情のまま剣の切っ先を上条に向け、一突。
だが上条は体を捻り、これをかわそうとする。
直後。
バキン、と音が鳴り、突き出した剣の切っ先がぐにゃりと曲がり、上条の右脇腹に突き刺さった。
上条の体内で肉が切り裂かれる音が響く。
「・・・ぎ・・・・・・がぁあああああああ!!」
傷口から伝わる灼熱の痛みに上条は歯を食いしばる。
上条は体を捻ったとはいえ、加速状態にあったので突き刺さった剣はそのまま上条の右脇腹を一閃
した。
生暖かい液体が流れ出るのを感じながらも、上条は右拳を剣に向かって横薙ぎに振るう。
先のように剣は触れた瞬間に粉砕する。
切っ先についていた上条の血液はそのまま残り、バタバタと地面に流れ落ちる。
アウレオルスとの距離は、およそ1m。
射程圏に入った上条は横薙ぎに振るった拳をそのまま後ろで構え、アウレオルスに放つ。
「おおおおおおおおおおおおおおお!!」
ゴギン、と見事にアウレオルスの右頬に拳がめり込んだ。

瞬間。
バギン、と音が響き、アウレオルスの体が蒸発するように消えてなくなった。

「は・・・・・・?」
思わず、疑問の声が漏れる。
「な、にが・・・・・・っつ」
上条は脇腹を押さえる。

466 名前:375 投稿日:2006/07/20(木) 20:31:08 [ 4s1b1IVc ]
手からはべったりとした感覚が伝わってくる。
思っていたより深く切られたようで、出血量も多い。
きっと無理に体を動かしていたので溢れ出てきたのだろう。
しかし、今考えるべきはそこではない。
何故、アウレオルスは殴った瞬間、消えてしまったのか。
痛みと出血で朦朧とする思考を必死に動かす。
(何で・・・・・・、消えた?土御門は魔術的な何かをやったって言ってたけど、俺の右手(イマ
ジンブレイカー)はあの魔術師には通用しないって言ってた。なのに何で?意図的に消したのか?)
上条は後ろで待機しているであろうインデックスたちの方へ振り向こうとする。
魔術に疎い上条は目前の問題をうまくまとめられない。
プロの魔術師であるインデックスや土御門やステイルなら予測をいくつも立てることができるだろ
う。
しかし、途中で上条は気付いた。
さっき上条が無策に駆け出し、アウレオルスの攻撃を何発か受けたとき、何故誰も警告の一言も
かけなかったのか。
少なくともインデックスは何か声をかけてたと思う。
だけど今は、過ぎた事より目の前で起こった問題を解決するのが先だ、と結論付け、

だが、そこには後ろを向いて地面にへたり込んでいる御坂美琴以外、誰もいなかった。

「ぁ・・・・・・、え・・・・・・?」
上条の思考回路は一瞬真っ白になった。
現状がまったく理解できない。
とりあえず上条は、唯一そこにいる美琴のもとへ、ふらつく足を動かし向かう。
「お、おい、御坂。みんなは・・・・・・どうした?」
上条の声に美琴はビクッと震え、思い出したように上条の方に振り向き、
「あ・・・・・・、アンタ、いたの?」
美琴は怯えるような、びくびくした目で上条を見る。
「何が・・・・・・あったんだ?何でお前だけ・・・・・・」
「わ、分からないの。アンタが叫んで飛び出していった時に、急に後ろから・・・・・・変な音が
聞こえてきて。振り向いてみたら、みんな・・・・・・いなくて」

467 名前:375 投稿日:2006/07/20(木) 20:31:57 [ 4s1b1IVc ]
以上です。
鼻炎が・・・orz

468 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/21(金) 00:23:27 [ zUL7yzFo ]

しかし錬金繋がりかww

469 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/21(金) 00:33:32 [ VtCA.5f. ]
>>375
>バキッ、という音がなり、2mもあった岩石の柱がボロボロと崩れた。
この部分のことで、柱が完全に魔術の産物であったなら幻想殺しで殺せたのだろうけど、
あくまで再構築された物質だから、幻想殺しでは殺せないと思う。
未だに議論され続けていることだけれど、
異能の制御下にあるものなら幻想殺しで殺せるが、異能の制御下から離れたものは殺せないという説がある。
(例としては、一方さんの石つぶて攻撃など。)
この場合の柱は再構築する魔術で作り変えられた結果の産物なので、異能の制御下から離れたものとなる。
だから、幻想殺しでは殺せないと思った。
自分は上の説を支持している人間なので、どうしても違和感があり言いたくなった。それだけです。

スレ違いスマソ。議論スレでも見てきますね

470 名前:375 投稿日:2006/07/21(金) 13:55:39 [ jj7DJlBU ]
>>469
私の設定では魔術で物体の形を無理矢理維持している、みたいな感じなので幻想殺しで消させました。
あくまで私の脳内妄想なのであまりツッコまない方向でお願いします^^;

風邪ひいたっぽい・・・( ´ρ`)

471 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/26(水) 01:59:13 [ xFPrB/x2 ]
とある休みの過ごし方  Oh_Happy_Day



 何も無い。やることが無い。やりたいことが無い。やるべきことが無い。
魔術師と言う名のテロリストは出ていないし、血を吐く思いをして宿題はやり遂げたし、
大覇星祭の手伝いはまだ少しだけ先だし、ものすごく困っている知り合いも無い。

 今日は休日。暦の上でも、事実の上でも、休みの日だった。

(さて。何をしようか。ここんとこ気の休まる事が無かったし、一日昼寝としゃれ込もうか……)
 何がしゃれ込む、なのかは分からないままに、上条は痛む背中をさすりながら体を起こす。
もう一月以上はここで寝ているとはいえ、やはりバスタブで寝るのは痛い。しいた布団越しにも
強化アクリルのかなり硬い感触が伝わってくる。かと言ってインデックスと添い寝と言うわけにも行かないから、
文句を言うつもりも無いが。
(あー、マットレスでも買いたいな)
 暇が出来ると、手に入らないほど欲しくなるものだ。マットレスの値段は良く知らないが、
安い買い物ではないだろう。溜息と共に諦めて、立ち上がる。朝食を用意して、インデックスを起こすために。
 ワンルームの部屋に出ると、小さくインデックスの寝息が聞こえる。直接姿を見ればドッキドキものだが、寝息だけな


なんともほほえましい。思わず笑みがこぼれたところで、ふと自分の寝覚めがとてもいい事に気づいた。
(ちょうどレム催眠の時に目が覚めたか。こりゃあ、今日はいい日になるかもな?)
 人生で今まで何度そう思ったか、なんてことは、記憶喪失の上条には知る由も無い。無いが、
とにかくそんな予感がした。
 さて、朝食を用意してインデックスを起こす、と先ほど言ったが、正確に言うと
「朝食を用意するとインデックスが起きてくる」となる。上条は炊飯器にまだ米が三合ほどあることを確認して、
味噌汁の用意をし始めた。並行して昨日の残り物である肉じゃがを電子レンジで暖める。……残り物と言っても
朝食べるためにわざわざ残したものだ。朝一の調理は面倒くさいからなのだが、今のテンションなら後一品くらい
難なく作れる。昨日の晩のインデックスの恨めしそうな顔を思い出して、しかし平和だなあ、と一人微笑む。
(あと一品か。そもそも材料あったっけ?)
 冷蔵庫の中身を見ると、きゅうり二本に長ネギ二分の一本、ジャガイモが三つにレタスが一玉。にんじん二本に
豚ばら肉が三切れほど。今使えそうなものはこんなところか。味噌汁の具はジャガイモとネギに決定。
(ふふふ……これだけあればあと後三日は戦える!)
 自軍の物資供給状況は実際にはそこまで楽観できるものではないが、この時の上条は気が大きくなっていた。

472 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/26(水) 01:59:48 [ xFPrB/x2 ]
ちょうどいいや、とつぶやき、きゅうりを一本取り出す。適当に切って軽く塩もみすれば、立派に一品だ。
楽だし、何よりインデックスはこういうのに箸が伸びない。きゅうり自体は生でバリバリいくから、問題ないはずだ。
今日こそはきっちり食ってもらおうと心に決める。ついでに箸の扱いも教えてやるべきだろう。
 などと考えつつ用意をしていると、後ろでインデックスの起きる気配がした。
「んー。とうまー。おはよ」
 いつもはもうちょっと寝起きがいいように思ったが、今日はまだ眠気が抜けないようだ。
(俺の眠気が移ったかな)
 こんな発想も、機嫌のいいときならではだった。電子レンジからもれる肉じゃがの匂いに反応して起きたに違いない
後ろの少女に、そのまま話しかける。振り返ると寝ぼけたままいつもの修道服に着替えるシーンを目撃して、
インデックスは上条の頭をおかずに朝ごはんを食べる事になる。
「おはよう。今日はやたら眠そうだな?」
 ごそごそと衣擦れの音が聞こえる中、まだ覚醒しきっていない声で返事が来る。
「んー。ねむい」
「夜更かしでもしたか?」
 衣擦れの音が止んだ。
「してないー」
 こりゃほんとに眠気が移ったかと思いつつ、二人分の朝食をガラステーブルに運ぶ。
「あふ。ごめんね、手伝わなくて」
「いいって。さ、いただきます」
「いただきます」
 二人して手を合わせて、いつもの朝食が始まる。シスターなのに、食前のお祈りとかしなくていいのか、
と前に訊いた事があるが、郷に入りては郷に従うものなんだよ、といい加減に返されてしまった。
「あ、一晩置いた肉じゃがってなかなかいい感じだね」
 ジャガイモ一つ丸々口に放りこんで、あもあも言わせながらインデックス。
「だろ。お前を説得した甲斐があったな」
「ところで、どうしてきゅうりの塩もみがあるの?」
「お前に食わせるためだ」
「……とうま。前に言ったよね?きゅうりはナマをマヨネーズでイクのがいいんだよ」
「好き嫌い言わずに食べなさい」
「うー!大体この、形と、硬さと、大きさがっ!」
 箸をグーで握っているインデックスには、横から見て台形になるように切ったきゅうりに刺しにくい。
それもそのはずで、上条は一番刺しにくい大きさに切ったつもりだった。大成功だ。次は煮豆を買ってこようと思う。
「これは私に対する挑戦なのかな?かな?」
「それ別のキャラだから。……そろそろ箸の使い方一つも覚えてみたらどうだ?完全記憶能力とか使って」
 対するインデックスは小さな胸をそらせて、
「ふーんだ!わかってないなあとうまは。箸の使い方を習得するのに記憶は関係ないんだよ?」
 まったくだ、と実体験として記憶喪失後もすんなり箸を使っている上条は気持ちだけうなずいておく。

473 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/26(水) 02:01:28 [ xFPrB/x2 ]
眠いから今回はここまで。っていうかやばいよやばいよリアルが。
こんな事してる場合じゃないのよ。

474 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/26(水) 23:34:19 [ uXtqiZsg ]
少々、質問ですが

自分もSSはあるのですが
いかんせん『Fate』のパロっていうか、色々パクって書いてるんですけど
仮に投稿したとしても叩かれませんかね?
以前、別の掲示板でものすごい叩かれまして。

475 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/27(木) 00:11:57 [ .izRa5Tk ]
「〜のパロディ」と最初に書けば大丈夫だろう。ただ、パロディと言えないくらいパクリ元と同じなら叩かれる
おまいさんの作品を見た事がないのでわからんが、叩かれた原因はそれじゃないか?
パロディというのは「もしかしてこれってあれのパロディかな?」と薄ぼんやり匂わせるぐらいじゃないと駄目だな



以上一読み手の意見でしたノシ

476 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/27(木) 13:13:55 [ bdK7jVnU ]
俺はパロディは許容できる範囲内だから大丈夫。
だけどFateは一人称で書かれてるから、ちゃんと禁書風に三人称にしてくれるとうれしい。
あと、名前とかを挿げ替えただけ、っていうのはダメ。要点はこのぐらい。

477 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/27(木) 13:31:26 [ /GMAP9YE ]
自分の妄想を爆発させただけのSS。
長編になる予定・・・but執筆速度は富樫以下かも。
あと鬱がちょっと多いと思いますがご了承くだされば幸いです。


プロローグ
かつてあれほど人々を苦しめたカラカラの夏空は去り、今では心地よい秋風の吹く背の低い空に変わっていた。夕焼けに染まる川に子ども達の声が響く河川敷。そのもう一段高いところ、真っ黒なコンクリートが敷き詰められた道をいかにも学校帰りですという感じの少年二人が歩いていた。
「しっかしなぁ・・・」
と声を出したのは金髪にブカブカのカッターシャツ。さらに遠くから見てもはっきりその人と認識できるようなサングラスを装着した少年だった。名を土御門元春。表の名はただの学園都市の一学生だが、裏の顔は学園都市とイギリス清教を結ぶマルチスパイ。
「言うな、土御門。分かりきってたことだろ」
半ば泣きそうな声で言葉を返すのは短い黒髪をツンツンに逆立てた少年。名を上条当麻。彼には表も裏もない。ただの一介の学園都市の学生だ。ただ、二つ。その右手にあまりにも異能である超能力を備えていることと、数ヶ月前から記憶喪失であることを除けば。
「いや、だけどにゃ〜・・・その点数はないだろ?」
土御門の手に握られているのは『学園都市統一能力判定模試結果』と書かれた薄い紙。その紙面上、上条当麻という名前の左下にある、本来ならば成績レーダーグラフというものは何らかの伸びを示すものだが上条のは全く伸びがない。
知識面でわずかに棒となっている以外、全く波は穏やかであった。
「やかましいいぃぃ!!上条さんは今年の夏休みはドタバタしてたしし、学校が始まってからだって、大覇星祭の時だって病院で寝ていたんですよ〜。点数は取れなくて当たり前なのだ!!」
「にゃはは。負け惜しみはいかんよ、負け惜しみは。俺だって大覇星祭の時は入院してたし、その後も色々ドタバタしたからな。条件は一緒のはずですたい。」
「うぐぐ・・・お?」
餌に飢えた獣のように歯を鳴らしていた上条は土御門のポケットがブルブルと震えているのを見た。そんな上条の越えに土御門もその振動に気がついたのかポケットからド派手に装飾された携帯を取り出した。ピカピカと緑色の光が主人に早く出ろ、とでも言いたそうに着いたり消えたりしていた。
「公衆電話から・・・・か。珍しいな」
不審がりながらも電話に出る土御門。スパイである彼にとって電話と言うものは非常に大切なものである。普通ならば見知らぬ番号なら出ないのが妥当だが彼はどこと通じているかすら分からないのだ。
「(いったい誰と話をしてんだか・・・)」
道を歩きながら久しぶりにみた土御門の横顔を眺めていた上条は唐突な土御門の大声に思わず肩をすくめた。

478 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/27(木) 13:32:00 [ /GMAP9YE ]
「なんだと!?」
それは半ば怒気混じりの問いかけ。誰に電話をしているのは知らないが相手は何か土御門が怒るようなことでもいったのだろうか?
「どうしてだ!!ローマ正教は今、人員不足で動けないんじゃなかったのか!?」
「っ・・・!?」
その言葉を聞いた時背筋が凍るような錯覚を上条は覚えた。ローマ正教。今まで何度も戦ってきた敵。グレゴリオ聖歌隊、アニャーゼ部隊、オリアナ=トムソンにリドヴィア=ロレンツェッティ。それら全てを上條達の活躍によって失っているローマ正教。あまり大々的に動けないとも言われていたあのローマ正教がいったい何をしたというのか。
「おい、土御門、その電話の相手って・・・・」
言い終わるよりも早く、土御門は周りに人がいないかを確認し、それを確認すると、手馴れた手つきで通話モードをハンズフリーに変更し。途端、携帯の受話部分から聞きなれた若い声が響いてくる。
「というわけで、僕は今・・・・」
「ステイル!!」
聞こえてきた声はイギリス清教、必要悪の教会(ネセサリウス)の魔術師ステイル=マグヌスの物だ。さきほどの上条の声が携帯に入ったのだろうか、一瞬向こうの電話の主は沈黙を続けると
「なんだ、上条当麻もそこにいるのか。ならば話は早い。いいかい、結論から言うよ・・・」
「あぁ〜、待て、ステイル。電波が悪い。後で掛けなおすから今は電話切っていいか?」
言われて土御門の携帯の電波バーを見る。そこには何故か土御門の話とは裏腹に元気に三本のアンテナが並んで立っていた。首をかしげる上条に土御門が視線で合図する。「少し黙ってろ」と。
「あ・・・あぁ、問題はないよ。ただ、事は急を要する連絡は早めに頼むよ。」
「わーってるよ。振り払ったらちゃんと掛けなおす。」
「振り払う?・・・君は・・・」
ステイルの言葉を待たずに通話を切る土御門。やはり、上条にはその土御門の意図が分からない。振り払う?何を。
大事な話を何で後回しにする?
「土御門、何でステイルの電話を・・・・いっつ」
言葉の途中で無理矢理歩かされる上条当麻。何が何か分からないまま土御門に文句を言おうとしたその時、逆に土御門が上条の耳元で囁いた。
「尾けられてる。二人、いや三人か。恐らく透明になるような魔術か、気配を消してるんだろうが素人だ。魔力の臭いがが鼻につく」
「は?尾けられてるって誰にだよ?ローマ正教か?」
土御門は少し上条から口を離して、
「さぁ〜にゃ。俺には全く分からないぜよ。」
と笑顔になって大きな声でそう言った。
「そうだ、カミやん。ゲーセンでも行こうぜ。やりたいゲームがあるんだぜよ」
そう言い、足早に去っていく背中を上条は困惑した表情で追いかけた。

何がどうなっているかは分からない。何故、自分たちが魔術師に尾行されているのかさえ。それにステイルの電話、ローマ正教。様々に絡み合う事象がなお上条の心を圧迫した。
だが、彼は知らない。これが学園都市を悲劇に落す始まりの晩鐘だたっということを。

                                      プロローグ 完

479 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/27(木) 13:52:21 [ /GMAP9YE ]
文才なくてゴメン・・・・

言い訳っぽくなるけど、三人称ってあんまり書いたことなくて・・・OTZ

480 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/27(木) 14:50:22 [ /GMAP9YE ]

「んで・・・何でお前がいるんだ、ステイル」
追尾していた魔術師三人をわざと入り組んだ道を通って攪乱した土御門と上条はとりあえず土御門の提案で上条の家に行くこととなった。当初、上条は魔術関連ならインデックスが危ないと反対したのだが、土御門は
「今回はインデックスが必要なんだ。」
そう言っただけで結局それ以上重要なことは何も話さず、そうこうしている内に我が家へと帰還した上条だったのだが、どうも部屋が焦げ臭い。というより、なんか部屋から煙が出ている。んで、慌てて飛び込んでみたらそこには何故か
「ふぁー、ほふぁへりとうま(あー、おかえりとうま)、ほひくほひひひよ(お肉おいしいよ)」
口いっぱいに焼肉を含んだインデックスとひたすら目の前の女の子の為に肉を焼く魔術師の姿があった。何で、ステイルを勝手に部屋にあげて、勝手に肉食ってんだ、とも突っ込もうとしたがインデックスがあまりにも幸せそうなのでやめた。というよりも、肉を買うのならもちっと高いのを買ってくれ。肉がおいてある袋には『スーパー玉○、100g××円のお買い得商品』と大々的な広告が張り付いていた。
「遅かったな上条当麻。・・・お、土御門も一緒か。」
「にゃはは。なんだかお楽しみのところ悪いけど、こちらとしては電話の手間が省けて嬉しいねぇ」
にゃははは、と笑いながら肉を焼くステイルとひたすらに肉を食い続けるインデックスの間に鎮座する。仕方ないので上条も余っている席に腰を落ち着けた。安物の肉のやける微妙な臭いが鼻に入っては抜けていく。
「で、話ってなんだよステイル。ローマ正教が関係あんのか?」
その言葉にピクっと体を震わし、上条の方を見つめるインデックス。彼女はしばらくそのまま上条を見つめていたが、
次にはその視線はステイルに向いていた。その視線を受けてステイルは肉を焼いている火を止めると、小さく息を吐いて言葉を発した。
「さっきは話の途中で切られたから最初から説明するけど、一度しか言わないし、質問も受け付けない。真実をありのままに受け取ってくれ」
真実をありのままに受け取れ、その不吉な言葉に上条の喉が音を立てる。
「結論から言うと、学園都市と教会の戦争になる・・・と言えば分かりやすいかな」
「なっ!?」
思わず立ち上がり、座ったまま立ち上がった上条に対して目で威圧する。だが、引き下がってはおけない。
「どういうことだよ、ソレ」
言葉に覇気がない・・・と自分で分かる。それほどステイルの言葉は重みがあった。信じているわけではない。ただ、本物の魔術師に言われる言葉にはたとえ嘘であったとしても本当と思わせるような魔力がある。彼らは言葉を魔術として紡ぐからだ。言葉に対してステイルはもう一度、今度は深いため息のような息を吐くと、

「いいか、よく聞け、上条当麻。さっき君はローマ正教と何か関係があるのかと聞いたな。今回のこの事件、ローマ正教だけじゃない。ロシア・イギリス・ローマ・ギリシア・アンティオキア・アレクサンドリア・・・全ての教会が一冊の魔導書を、この学園都市にあると言われている魔導書を狙っている。土御門が驚いたのはローマ正教が動いたっていう事実にだけだ。君だって聞いたことぐらいはあるはずだ。悪魔の書

―ネクロノミコン

の名前ぐらいはね。」

481 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/27(木) 14:51:20 [ /GMAP9YE ]
「有り得ないよ!!」
今度立ち上がったのはインデックスだった。
その眼は驚きというよりも怒り。まるで親の仇でも見たかのようにステイルを睨みつけている。
「有り得ない。あの魔導書は伝説だよ。わたしの10万3000冊の中にもネクロノミコンだけは存在しない。あれはあってはならない書。伝説の中だけで伝えられてきた架空の魔導書でしょ?有り得ないよ!!」
言葉を聞いて眉をひそめたステイルは感情を押し殺したような声で続けた。
「僕も聞いたときは信じられなかった。しかし、あの悪魔の書が実在すると分かった以上、各教会が狙わないはずはない。間違いなく、学園都市にネクロノミコンを狙った魔術師たちが潜伏しているはずだ。」
「ちょ、ちょっと待てよ。学園都市には簡単に踏み込めないってお前、前言ったよな。」
「意味が違う。入り込むことはたやすい。ただ、学園都市と正式な取り決めがない教会が侵入した場合、他の教会も同様に侵入し内部で戦いが起こるだろう。」
言われて上条の頭の中に最悪の情景が巡っていく。
「まさか・・・いや、嘘だ。ありえねぇよ。何なんだよ魔導書一冊の為に戦争を起こすってのかよ!?」
「嘘じゃないぜぃ、カミやん。実際に俺達は尾行された。もう数百人単位の魔術師が入り込んでいると見て間違いない。今はまだ消光状態なんだろうが・・・いつ戦闘が起こるか分からないぜい。分かるだろ?それほどヤバイんだよ、ネクロノミコンって魔導書は。」
4人の間に長い沈黙が走る。上条の頭の中で様々な幻想が思い浮かんでいく。
ネクロノミコン。戦争。魔術師。たった一冊の魔導書。危機にさらされる200万以上の命。
「何なんだよネクロノミコンって・・・・何が書いてあんだよ」
ひねり出すような上条にインデックスは平静を装って答えてくれた。
「私もよく知らないけど、ネクロノミコンには『この世の終わりと始まりを繋げる魔術』が書かれてると言われてるの。この意味はよく分かってないけど・・・・伝説ではこの書はギリシアのミケーネ文明を滅ぼしたとも言われているし、ジャンヌ=ダルクが農民の身分でオルレアンを解放し、シャルル7世を励まして百年戦争に勝利したのもこの魔導書のお陰だといわれているの。だけど、そういうのはは全て伝説。結局、誰も分からないの。ただ伝説だけが一人歩きして魔導書になった。だから、言ってしまえばネクロノミコンは、本当は魔導書なんかじゃないかもしれない。けど、これだけは事実。ネクロノミコンは歴史を変えるような力を持ってる。歴史を変える悪魔の書。だから、誰にも渡しちゃいけない。世界が終わってしまう可能性があるの」
歴史を変える。世界が終わる。あまりにもスケールが大きすぎて想像出来ないし、したくもない。たった一冊の魔導書にそんな力があるなんて信じられない。
「今更信じられないってのはナシだぜ、カミやん。俺達は『使徒十字』を知ってるだろ?アレだって十分信じられないものだが効果は絶対だ。まぁ、発動されなかったから実感は湧かないだろうけどにゃ」
「っ・・・・」
何がなんだか分からなかった。否、分かっているのに分かろうとしない。夢だったらいいのにという甘い幻想。
「方法は・・・ないのか?」
だからこそ聞いた。世界を敵に回してでもこの戦争を回避できる方法があるのなら、これを自分の悪夢ですませることができたなら。結局、他人の幸せは守れた事になるのだから。

482 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/27(木) 14:51:53 [ /GMAP9YE ]
「正気かい?僕は今回ばかりは君の手に負えないから学園都市を出ろ、と言いに来たんだけどね。戦争は魔術師の仕事だ。」
「ふざけんな!ここまで知らされて逃げることなんてできるかよ!!」
胸の中が燃えている。ここまで知って逃げることなんてできるはずがない。拳を握る。
「俺が止めてやる。戦争なんてくだらない真似はさせない。たとえ、ステイル。お前が戦争に参加して学園都市をめちゃくちゃにするってんなら、今、ここで止めてやる。お前だってイギリス清教の魔術師だろ」
右手を座っているステイルに突き出す。それを
「ふぅ」
と間抜けなほど軽い溜息で返された。


「やめておくよ。ソレに僕はもうイギリス清教の魔術師じゃない。」


あまりにも明るい口調に上条は拍子抜けし
「なんだ・・・イギリス清教じゃない・・・って、えぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!?」
上条だけじゃなく土御門やインデックスまで声を上げていた。ほんと、どうなってんだろいったい・・・。

483 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/27(木) 16:11:06 [ CZy/VHwY ]
>>375
先が読めないZe!GJ。

>>477
うぅーむ……作中で、しかも一巻で死霊術書は言及されていたような…。
ともあれ、新しい書き手さんが増えるのは大歓迎。がんばれ。

484 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/27(木) 18:04:51 [ /GMAP9YE ]
>>483
マジですか・・・しくった・・・。
すいません。

485 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/27(木) 23:42:29 [ bdK7jVnU ]
>>484
そう気を落とすな。
言及されてたといっても、写本やら偽物が多くて詳細不明、というぐらいしかされてない。
その程度なら多少オリ要素を含んでも書けるレベルじゃないか?
まあ、書き続けるかは書き手さん方の自由なので、どうするかは自分で考えてみればいいと思うよ。

あ、それと。できればsageた方がいいかもしれんね。

486 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/28(金) 00:59:11 [ v/SLqvuI ]
GJ!
ただかなり規模のでかい話だと風呂敷畳めるか心配になってくるね。

487 名前:169 投稿日:2006/07/30(日) 00:47:24 [ PXFgC9x6 ]
>>484
GJ! ステイルがいい味出してますな。
ちょっとしくったと思った部分は、練り直してみれば返っていい感じになるもんです。私のも多分にそういうのありますし。
続きをお待ちしております。

>>474
191で商業作品どころか人様のSSをパクるという暴挙をかました私としては、レッツゴーとしか。
テスト前だっつーのにホロウやってたので、個人的には期待大です。

>>473
平和だ……GJ。
ぶっちゃけこういうのが書きたいし読みたいです。


さてリアルでテスト期間終わり間近、月が変わればバイト三昧という切羽詰まった状況。
安らぎ求めてやってくれば、知らぬ間にたくさん投下されてて嬉しい+自分も何かしたい。
しかし「灰姫遊戯」の三章はまだ落とせる状態でなし。
と言う訳で、インデックスに歌わせようと作りはしたけども結局没にした、まじぽかOP「しちゃいましょう」の替え歌でも。
わからない方はスルーで。わかる方はどうかいじめないでください。テンション狂ってます。わはー。


しちゃいましょう heaven

なりゆき なんかじゃ誤魔化せません フラグ
お説教しちゃいましょう 大盛りのゴハンノアト
りもこん すいっちとかややこしいです アイシーカクメイ
チャレンジです 爆発です うー♪

ミレドミ ファシドレー♪
毎日がきっと日曜日

ままま まきもきムクムク ぷるるんカンショク ラベラベほわほわ
擬音はある意味 恋の呪文
ぱぱぱ ぱぱるんムネムネ うっとりユッサリ ペタペタのきのき
極楽的な私で GO

488 名前:妄想最終回 投稿日:2006/07/30(日) 14:11:10 [ EhAN2SJI ]
2 
―僕はもうイギリス清教の魔術師じゃない
その言葉に驚いたのは上条当麻だけではなかった。土御門にインデックス、共にステイルと同じイギリス清教のはずの二人でさえ驚きを隠せずに口をポカンと開いていた。
「イギリス清教の魔術師じゃない・・・・って、どういうことだよ?」
聞かれたステイルは胸元のポケットからタバコを一本取り出し、ライターも使わずに火をつけると口元に小さな笑みを浮かべてこう続けた。
「なに、簡単な話だよ。イギリス清教にいたんじゃ、僕の目的が達成できないからね。僕には学園都市をどうしても戦場にできないわけがある。分かるかい?学園都市が戦場になってしまえば、間違いなく彼女に危害が及ぶんだよ」
そこまで言われて上条は理解した。コイツ・・・この元イギリス清教の神父は自身の目的の為に『必要悪の教会』に身をおいているにすぎない。そして、そのたった一つの目的はとある学園都市に住んでいる一人の少女を守ること。そして、その学園都市と繋がりのあるイギリス清教は彼にとってその目的を達成するのに都合のいい所であった。無論、そこにいたから少女とも出会えたというのが先に立つが・・・しかし、今回の『ネクロノミコン』事件は今までの事件とは大きく違う。今までは学園都市に協力的だったイギリス清教が、そのネクロノミコンを狙って魔術師を送り込んでいる。それも、イギリスだけじゃない。世界中の教会がこの街にあつまっている。仮に中で戦闘が起こったとすれば警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)も動くだろう。その時に、両勢力の抗争になれば恐らく終わりだ。不毛に続く争いは下手をすれば学園都市が崩壊しても終わることはないだろう。となれば、インデックスも大きな危険に晒されることになる。だから、目の前の神父はただ一人の少女を守るためにイギリス清教という強大な敵に戦いを挑む決意をしたのだろう。考えればゾッとする。はたして一体、何がコイツにこんな事をさせるのだろうか。
「じゃあ、味方ってことでいいんだな?」
握っていた拳を閉じる。胸に溜まっている熱いものは消えたわけではないが先ほどよりは幾分マシになったような気がした。
「とりあえずは、ね。僕たちの目的が一致している状態ならば不服だけど味方と思ってくれて構わないよ」
言葉に眉を潜めながらも上条は土御門の方へと視線を向けた。さきほどから何かを考えているのかずっと下を向いて黙っていたが、上条の視線に気がついて顔を上げた。
「どした、カミやん?」
「あ、いや。お前はどうするのかな・・・って。お前も一応イギリス清教だろ?それなら・・・・」
「あぁ〜、安心しろい。俺もみすみす学園都市を戦場にする気はない。だって、仕事がなくなっちゃうしにゃー」
笑顔で答える土御門。確かに彼の立場上、スパイとして動いている彼の立場としては両者の争いは避けたい所だろう。
「とりあえず俺はアレイスターに接触して、手は出すなって旨を伝えてくる。ステイル、お前は・・・・」
「僕はネクロノミコンの捜索を続ける。上条当麻」
名を呼ぶと同時、ステイルの顔が上条へと向けられる。
「なんだよ?」
「君も手伝え。なに、学校なんか数日休んでも問題ない。」
言われたなくてもそのつもりだったが・・・命令されるのがステイルだと腹が立つなどと思ったがチームの中が悪くなるのは良くないので壮絶に不本意だが素直に頷いた。

489 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/31(月) 01:09:31 [ mZljQKx6 ]
とある休みの過ごし方  Oh_Happy_Day

続き

「はいはい」
 適当に答えて、食事を再開する。インデックスがムッとしているが、敢えて無視した。
 ご飯、おかず、汁物、ご飯、おかず、汁物、ご飯、おかず、汁物。インデックスが来てからというもの、
上条は以前より食事のマナーがよくなったように思う。見られているから、と言うのもあるがそれ以上に
インデックスが反面教師になっているのだ。
 確かに、この少女は何でも美味そうに食う。ちょっと悪くなったものでも平気でいくんじゃないだろうか。
だが、いつまでたっても箸はグー持ちだし、おかずを全部食べてからご飯に手を出したり、刺し箸はもちろん迷い箸
なんかもなかなかなおらない。それを指摘すると「とうまもやってる」と言われるため、自然とマナーが身についた、
と言うわけだ。この年にして子供のしつけの難しさを知って、少々ブルーになったりもした。
「……ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした。俺は片付けるから、インデックス、箸の持ち方練習しとけよな」
 むー、と唸りながらも言われたとおりに練習を始めた。
 洗い物を適当に済ませ、インデックスの様子を見てみる。
「う、ぬ、ぬ、ぬ。無理だよこんなの。手がつっちゃうよ」
 予想どうりかなりダメな感じで、きゅうりに箸が触れてすらいない。
「やれやれ……箸ってのはな、こうもつんだよ」
 上条はインデックスの右手を取り、箸を持つ手つきにしてやる。インデックスがぴくんと震えたが、
特に気にしなかった。
「いいか?動かすのは片方だけだ……」
 二人羽織のような体勢で、インデックスの手を通して自分が箸を握るように、きゅうりを摘んでみる。
そのままインデックスの口の前に運ぶと、少しためらった後、それを食べた。
 正面から見れば顔が赤くなっていたのだが、上条には分からなかった。
 何かに耐え切れなくなったのか、少女は手を振り払ってやおら立ち上がると、
「と、とうま!今日はどこかにおでかけしようよ!」
 背を見せたまま言った。
「お出かけ?こんな早くから……って、うそ! まだ七時!?」
 普段より一時間以上早い。インデックスが眠そうだったのも道理か。
「時間なんてどうだっていいよ! さ、いこー! しゅっぱーつ!」
 やっぱり顔を見せずに、玄関に向かって歩いていった。
「なんなんだか……ま、散歩も悪くないかな」
 手早く着替えて財布を持って、上条も散歩に出る事にした。

「で、どこ行く?」
「どこ行く? じゃないだろ。行きたいところがあるんじゃないのか?」
 まだほんのり赤いインデックスの顔色には気づかずに、上条は呆れた声をだした。
「とうまはこの街の住人なんだから、とうまが決めてよ」
(ようやく来たな。こういう流れが……)
 上条当麻は記憶喪失である。知識はあっても、思い出が無い。学園都市の地理は、どうやら
思い出と強く結びついていたようで、大雑把に学区の境がどうなっているか、位の記憶しかなかった。
 記憶喪失を隠そうとしている上条にとっては、これは速やかに解決すべき問題だった。記憶喪失前に
「知っていたんじゃないか」と思うところはとりあえず地図を見て頭に叩き込んだのだった。まあ、
学園都市の携帯電話はGPSがついているので、知らなかったとしても誤魔化す事は出来るとは思うが。
「そうだな。河川敷にでも行ってみるか」
 学園都市にも川はあった。排水を浄化する技術や河川による侵食から、魚の養殖の研究まで手広く行っている
それなりに大きな川だ。インデックスは何の迷いも無くうん、と肯く。
「今日は一日、静かに、平和に、過ごしたいな……」
 その呟きが、それからの行動を左右する事になった。

490 名前:■■■■ 投稿日:2006/07/31(月) 01:10:21 [ mZljQKx6 ]
現実逃避の一環としてちょっと続きを書いてみました。
さよなら、さよなら、……さよなら。

491 名前:シスターズが鳴くころに 投稿日:2006/07/31(月) 21:40:18 [ tjW8b0bc ]
※ひぐらしのパロです。

「お前、俺に隠し事してるだろ!?」

怒気を含んだ上条の声に美琴の肩がブルッと震える。
路地裏で目撃した美琴と同じ少女が惨殺される光景。
忘れもしない。あの夜。この学園都市で起こっている事実を知った。

「な、なにもしてないわよ」

「いや、絶対にしてる。なぁ、御坂。俺はお前の友達だろ!?なんで話してくれないんだよ!!」

「・・・・そう。じゃあさ」

小さな呟きと共に美琴がうつむく。そして、次の瞬間。

「アンタは私に隠し事してないのかな?・・・かな?」

真っ黒な全てを見透かすような瞳で見つめられた。
ジットリと張り付いてくるように真っ黒に染まった眼球、背中から溢れるような殺気はいつもとは全く違う。

「ひっ」

思わず声が出た。
そんな上条の声に美琴は口元をニヤニヤと歪ませ近づいてくる。

「アンタ、私に隠し事してるよね?」

「ばっ、俺がお前のことなんて知るわけないだろ?」

「ふぅ〜ん。じゃぁ、私のベッドの下が荒らされていたのは何でかな?・・・かな?
 一昨日の夜は遅くまで何をしていたのかな・・・・?
 ぬいぐるみの中には何が入っていたのかな?・・・かなぁ?うふふふふ」

脳天から足元まで一気に悪寒が駆け抜けた。
知っている。美琴は全部知っている。上条がクローンを目撃したことも。
昨日、寮に行って計画の全容を知ったことも。

「メモには何が書いてあったの?
 うふふふ。知りたいなぁ・・・ねぇ、メモには何か書いてあった?」

「っ・・・」

息が止まるかと思った。
真実を言うべきか否か。頭の中で様々なことが巡るが上条の口は
結論を出す時間すら与えなかった。

「メ、メモなんて知らねぇよ。昨日はずっと家にいたよ・・・」

「・・・・ふぅ〜ん」

納得したのかいつもの美琴に戻る美琴。
ホッと上条が胸を撫で下ろしたその時。





「「「「「「「「嘘だッッッッッッッッ!!!!!!」」」」」」」」







大砲のような怒号があたりに鳴り響いた。

492 名前:シスターズが鳴くころに 投稿日:2006/07/31(月) 21:49:08 [ tjW8b0bc ]
気がつけば体が半歩動いていた。
美琴の怒号。まるで鬼のようなその目に威圧されたからだけではない。
あの時上条は思った。

「(殺される)」

と。
だから、反射的に体が動いた。

「う・・・嘘じゃねぇよ。」

「嘘よ。私、『昨日』の話なんてしてないんだけど?
 さっきのがどうして昨日の話って分かったのかな?・・・かな?」

「っ・・・・今のは・・・」

言葉が続かなかった。できれば、ここから逃げ出したかった。
今の美琴は美琴じゃない。そう思った。
美琴があの眼をして歩いてくる。その進軍を後ろ向きに進んで離していく。

「わ、悪かった御坂。聞いちゃいけないコトだってのは分かった。
 だから、いつもの御坂に戻ってくれ!!」

祈るように手を合わせ、懺悔するように眼を瞑った。
数秒間か数時間かずいぶんと長い間かもしれない時が経った後眼を開けた。
眼を瞑ってもあの御坂の眼が思い浮かぶ。

「え・・・・?」

目の前から御坂は消えていた。
許してもらったのか、それとも・・・・
上条当麻の思考は空へと消えていった。
街の中からはひぐらしの声が聞こえていた。


続きません。
お眼汚し&文才なし、すいません。
修行してきます。

493 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/01(火) 13:59:38 [ KCtpFNto ]
>「「「「「「「「嘘だッッッッッッッッ!!!!!!」」」」」」」」

((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル

494 名前:375 投稿日:2006/08/03(木) 14:38:29 [ FKsjMwoA ]
ネタが尽きそうだぜ・・・orz

>>471
上条さんにやっと幸運な日が訪れますか。
こちらもリアルがやばいです。

>>477
面白い話になりそうです。
私も結構間違っているので心配しなくても大丈夫ですよ。

>>483
先は読めませんでしたか。
良かったです(爆)

>>169
その替え歌をインデックスがノリノリで歌っている幻想を見てしまいました・・・
続き待ってます。

>>491
>「「「「「「「「嘘だッッッッッッッッ!!!!!!」」」」」」」」
のところをシスターズが言っているように思えました。

495 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/04(金) 22:12:50 [ M3YrjDhk ]
クトゥルフ神話と禁書目録。
SAN値の異常に高いインデックスが始めて役に立つぞ。

496 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/04(金) 23:05:18 [ IulJ2KMs ]
どっちにしろ解説役でしょうがね。
ヒロインはまた別の問題。

497 名前:169 投稿日:2006/08/05(土) 12:12:32 [ U81uG43k ]
第三章 演じる者たち Role_Praying_Game


 カチャ(何かの器を持ち上げる音)。
 クピ(何かの液体を飲み込む音)。
「…………問一。この飲み物は何か?」
「あ、それ? ロシアンティー。いやーロシア人って紅茶にジャムなんて入れるんだなー。これも故郷を遠く離れたサーシャがホームシックにならないようにという、上条さんの小さな心配りです」
「…………………………、」
 ガチャ(金属音。かなり硬質のものと思われる)。
「――はい? 待てサーシャ、なんでそんな怖い顔をして釘打ち機を取り出すの? 紅茶はお気に召しませんでしたか?」
「とうま、とうま。紅茶にジャムを入れたらロシアンティーっていうのは日本人がよくそう思い込んでいる間違いなんだよ。うん、正しいロシア様式の紅茶は、ジャムを舐めながら飲むの。というか、サーシャは子供扱いされたことに怒ってるんじゃないかな」
「冷静に説明してないでこのお嬢さんを止めるの手伝ってー!! 室内でそれは本気でヤメロ、ガラスの張替えとかどんだけすると思ってんだー!!」
 カチ(盗聴器のスイッチを切る音)。
「……楽しそうだなー」


 そんな生活も今日で四日目。なんだかんだで生活リズムも決まってきた頃合である。
 大体サーシャ、上条、インデックスの順に起床(女性陣の身支度が整うまで上条はユニットバスに監禁)。家主兼料理長の上条が三人分の朝食を作り、今朝の学園都市ニュースを見ながらリビングで食べる。
 その後、上条は再びキッチンに立ち、二人分の昼食を作り置いてから学校へ。
 インデックスとサーシャはそれぞれ歌と劇の練習をする。
 一応隠れ住んでいる身分の二人なのだが、日中は学生寮はも抜けのカラになるし、加えてサーシャがロシア式の『人払い』をこの部屋に施している(上条が在宅している間は無効になるが)。好きなだけ大声で練習できるというわけだ。
 あーでもないこーでもないと意見をぶつけ合っているうちに、気がついたらお昼時。作り置きのご飯をチンして食べたら、午後はおでかけだ。
 禁書目録から引き出した魔力探知術式をサーシャが使い、『灰姫症候(シンデレラシンドローム)』の捜索に繰り出す。
 一応の本命は舞台作戦だが、それだけで事件が解決するとは最初から思っていない。あちらこちらを歩き回り、誰かの体内にあるという前提で不自然な魔力の反応を探す。
 だが、学生寮が空っぽになるのと同様、昼間の街中にいる人間は極端に少なく、正直言って大した効果は上げられない。そのせいか最初は真面目な捜索だったのが、いつのまにかインデックスによる学園都市観光案内になっていた。
 もっとも、科学音痴のインデックスがこの街で案内できるところなどたかが知れている。この四日、無理に先輩を気取ろうとしてどれだけ愉快なことが起きたかは、まあ想像にお任せする。
 さらにしばらくして放課後の時間帯になると、シスター達は一旦別れ、インデックスは家に、サーシャは上条の学校へと向かう。
 夕飯のリクエストはこの時点で決まっている。
 自分で思っているよりも遥かに軽い足取りで、校門をくぐり、校庭を抜け、階段を登り、ドアを開き――
 今日も、彼女は童話の世界に飛び込んでいく。

                    ◇   ◇

498 名前:169 投稿日:2006/08/05(土) 12:13:17 [ U81uG43k ]

 ここで上条達、途中参加組の配役(キャスト)を紹介しておこう。
 シンデレラ――サーシャ・クロイツェフ。
 王子――吹寄制理。
 魔法使い――姫神秋沙。
 ねずみA兼馬車馬A――青髪ピアス。
 ねずみB兼馬車馬B――上条当麻。 
 なんというか、いっそのこと笑い飛ばしてください、って気分の上条だった。
 実のところ、世界の終わりにも等しいあの恐怖の配役から脱した時点で上条は安心しきっていた。ああもうこれで全部役は埋まったのだから、自分が押し付けられることはないのだと。
 甘かった。
 監督少女曰く、
『何言ってんの。サーシャちゃんに主演やってもらうには、かみやんくんを出汁(だし)にするしかないんだから。一緒に出てくんないと効果薄いじゃない』
『待て言祝。今、出汁っつったのか?』
『あと、実はまだ役は埋まってないの。つちみー(注・土御門元春のこと。空を飛んだりしないものを指す)に頼もうと思ってた役なんだけど、なんか公欠でいないし。ちょうどいいと言えばちょうどいいかな』
『……レールガンノミコト様。すみません俺が悪かったですからもう祟り(スルー)は勘弁してください』
 ――とまあこういったあらましである。
 何はともあれ、これでようやく全ての配役が整ったというわけだ。
 で、問題はここから。
 一端覧祭開始まで七日。本番までの日数を入れても九日しかない。
 上条達はこの短すぎる時間で、全くのド素人から舞台に上がれる役者にならなければならないのだった――


「――というわけやで、カミやん」
「……今さら言われるまでもなく、重々承知しておりますれば。しかし、」
 練習開始から三日目の放課後である。
 上条当麻は隣の青髪ピアスを見やり、次いで自分が置かれている状況を再確認して、
「それはそれとしても何故に我々がかような苦行を強いられているのか、切に切に問いかけたい」
 “身動き取れないまま”苦しげに言うと、青髪ピアスはさわやかに笑い、
「あっはっは。何を今さら。そんなの決まってるやんか。――ボクらの監督サマのお怒りを買ってしもうたからや」
「そっかー。あっはっは」
 一転、馬鹿みたいに空笑いする。
 現在、上条たちが何をやらされているのかというと、通称『鳴子大橋』、念動力(テレキネシス)系能力者の訓練メニューの一つである。
 まず正座をして、脇を締めて肘を直角に曲げた状態で文字通り両手の間に“橋を渡す”。等間隔に十個の小さな鈴が吊り下げられた木の棒を上に向けた両掌に乗せるのだ。この体勢で一時間、鈴を鳴らすことなく耐え抜けばクリアー。
 これだけ聞くとそれほど難しくもなさそうだが、これらの鈴は非常に小さな振動でも鳴り出すように作られている。よってこれを行う念動力者は自らの体を完全に固めるか、十個の鈴全てを固定するかしなければならない。そして実は、後者の方が難易度が高いのだ。
『同時に複数の対象に効果を及ぼす』というのは強度認定の重要な項目の一つだ。十個ともなればそれがどれだけ小さなものであっても強能力(レベル3)に相当する。何も派手な威力だけが能力の強さではない、ということだ。
 さて。
 言うまでもないが上条は念動力者ではないし、青髪ピアスもまたしかり。
 それがなぜ『鳴子大橋』なんぞをやらされているのかというと、何のことはない、ただの罰ゲームである。
「「あっはっはっはっはっはっはっはっは」」
 開始から四十五分。すでに腕の筋肉がかなり“キテ”いる二人は、目も虚ろに笑いあうしかなかった。
 そこへ、

〔「なんだ、まだまだ余裕があるみたいねー。三十分くらい追加しても平気かな?」!!!!〕

499 名前:169 投稿日:2006/08/05(土) 12:15:38 [ U81uG43k ]
「「………………!?」」
 ビシビシと。
 肌が震えるほどの大音声が叩きつけられた。
 千人が一斉にガラスを引っ掻いたような耳鳴りがする。
「っつ! こら言祝ぃ!」
 脳みそをたっぷりとシェイクされながらも、上条はその声の主に精一杯うらめしい目を向けた。
 時は放課後、所は中庭。
 途中参加組の強化練習のために、中庭は監督権限で貸切になっている。本来ここを使う予定だった係の生徒は迷惑しているかもしれないが、それを気にする(あるいはしてやれる)者は彼らの中にはいない。
 そしてその一角に、背もたれ無しの小さな折り畳み椅子に腰掛けて、悠々と足を組んでいる少女がいる。
 一番開けた場所を臨める位置に陣取っているのは、いつも上条たちを怒鳴りつけている吹寄制理――ではない。
 何のつもりか映画用のカチンコを指先でブラブラさせているのは、言祝栞監督その人だった。
 ただし、平静を装っておきながら身にまとうオーラは真っ黒だ。
 彼女は腰を捻って顔をこちらに向け、親しげに、ごくごく自然に友人に話しかけるように、

〔「なーにー? かみやんくーん」!!!!〕

 とんでもない音量(ボリューム)をぶつけてきた。
 う・お・お・お・お、と扇風機に間近であおられたかのように上条の顔面が震える。物理的振動をもたらすほどの『音』の直撃は、“耳を塞げない”現状ではなまじ殴られるよりダメージが大きい。
「――――ッ、こ、言祝様! ワタクシ上条当麻はこれまでの行いを深く反省し、二度とあのような真似をしないと誓います! ので! もうこのへんで勘弁してください!!」
「あー! ひどいでカミやん、ここまできて自分だけ媚売って助かろうなんて虫が良すぎ」
〔「二人とも。あと一時間追加」!!!!〕
 みぎゃー!!(×2)と重なり合った悲鳴すらも残響だけで打ち消される。
 どこの怪獣王だと言わんばかりの圧倒的な声量だが、実はこれは言祝の肉声ではない。その秘密は彼女の持つ能力(スキル)にあった。
 音声増幅(ハンディスピーカー)。
 唇から十五センチほど離れた空中にコーヒーコースター大の『気膜』を作り、そこを通り抜けた音声波長を極大化させる能力である。さらに増幅された音声に強力な指向性を働かせ、設定した方向以外には全く伝わらないようにもできる。
 つまりは「大声で内緒話ができる能力」であり、それ以上でも以下でもない。強度(レベル)認定でも弱能力(レベル1)止まり。言祝には悪いが、正直なところあまり価値の高い能力ではない。
 しかしまあ、監督という役職にこれほど似合う能力もそうはないのではなかろうか。ザ・拡声器いらず、あるいはミス・人間メガホン。
 と、そう思っていたのだが。
「……うわ、まだふらふらする……」
 ――マサカコンナツカイミチガアッタナンテ、と上条は言祝栞という能力者に対する評価を改める。鳴子を揺らさぬよう上条達の首から上だけに声を飛ばしている制御力の高さも含めて、拷問レベル5の称号を心の中で贈った。
 同じように頭をくらくらさせていた青髪ピアスがさめざめと、
「うう、カミやんが馬の着ぐるみを壊してしまったばっかりに、ボクまでとばっちりを……」
「待て。仮縫い途中の着ぐるみをかっぱらってきてペガサス流星拳ごっこを始めたのはお前だろうが」
「何を言いますか!? 『この俺に同じ技は二度通用しない!』と叫びながら回転しつつのバックドロップをしかけてきたんはそっちでしょ!?」
「その後『うろたえるな小僧ー!!』という台詞と共に五所蹂躙固めをかましてくれやがったのは罪にならないとでも!? あれが絶対とどめだったろうが! つか元ネタは統一」「お二人さーん」
 ビタ、と。
 小さな、本当に小さな一言が不毛な罵り合いを一瞬にして止めた。
 言祝栞はコンクリートで内臓が埋まったかのようにピクリともしない二人を見やって、薄く笑い、能力を通さない涼やかな声で、

500 名前:169 投稿日:2006/08/05(土) 12:16:25 [ U81uG43k ]
「それ以上喧嘩を続けるようなら――――倍なのですよ?」
「………………、あの。一体どのあたりが……?」
「いろいろと」
「「……………………、」」
 ガクリ、と彼らの首が落ちたのを確認して、言祝は満足げに体の向きを戻した。
 彼女のモットーは『努力には評価を。馬鹿には罰を』なのである。
 体育会系文学少女、恐るべし。
 馬鹿馬二人がうなだれていると、彼らのすぐ横で出番待ちをしていた姫神秋沙がぼそりと、
「でも。考えようによっては君達はマシな方かもしれない。特殊効果担当の念動力者達は。毎日最低十二時間の『コロンブスの卵』を義務づけられているらしいし」
 上条は、へー、と他人事のように返事をするしかなかった。
『コロンブスの卵』については好評発売中の第一巻を参照のこと。というか、我らが監督は本気のベクトルがとんでもない方向に向いてしまっている気がしてならない。
 こんなんで本番まで体もつかなー? と不安になった上条は、中庭の中央、即席の舞台となっている場所に目を向けた。
 そこには髪を軽く結い上げて、足運びの確認をしているお姫様(シスター)がいる。


〔「はい、じゃあさっきの所からもう一度。サーシャちゃんは入場の歩幅に注意してね」!!〕
 範囲を拡散、声量も多少抑え目に変更された音声増幅が飛ぶ。役者が頷いたのを確認して、言祝はカチンコを鳴らした。
 サーシャ=クロイツェフは指示された通りに歩いて、地面に引かれた線で区切られた舞台へ入場する。
 物語も中盤。シンデレラが舞踏会場へやってくる場面である。
 観客(かみじょう)達が見守る中、サーシャはぐるりと辺りを見回す仕草をして、

「――ああ、なんて素晴らしいパーティーなのでしょう。眩いばかりのシャンデリア、美しく着飾った貴婦人達……」

 灰かぶりの姫を演じ始めた。
 一歩、一目、その度に舞踏会の華やかさに感動し、心躍らせている少女。
 彼女は親切な魔法使いとネズミ達のおかげで、憧れのこの場所へやってくることが出来たのだ。
 終わりを知った夢だとしても、この夜のことはいつまでも記憶に残っているに違いない。
 まるで絵本に描かれたように美しい、この夜は。
 ――――というシーンなのだが。
 しかし、サーシャの演技には、素人である上条の目から見ても欠けている物があった。
 それを生粋の読書家にしてこだわりの人でもある監督が気づかないはずがない。開始から何分も立たない内に、言祝はもう一度カチンコを鳴らして演技を止めた。
 厳しくもなく優しくもない、淡々とした声色で、
「サーシャちゃん。どうにも役になりきれてないね」
 言われた少女は渋々とうなづいた。
 結局の所、問題はそこに尽きる。
 どれほど身振りを大げさにしても、声に感情を込めてみても、「シンデレラを演じようとしているサーシャ」にしか見えないのだ。
 根本的な部分で、サーシャは物語に取り残されている。
 言祝達には日本語での演技にまだ馴染んでいないせいだと言ってあるが、本当の理由を知る上条は本番までに直せるのかほとほと不安だ。何せやたら込み入っている上に、絶対に言祝達には打ち明けられない事情なのだから。
 昨日の晩、こっそりインデックスに聞いた話になるのだが、

501 名前:169 投稿日:2006/08/05(土) 12:17:07 [ U81uG43k ]
『ローマ成教が取り扱っている「幽霊(ゴースト)」っていうのは、誤解や誤認識の塊なの。“居るはずがない、だけど居る。” そういった認識(イメージ)が天使の力(テレズマ)を取り込んで形を成したモノなんだね。「我思う、故に彼あり」っていうのが基本構造。そしてこの「被観測」こそが幽霊の力の源。より多くの人間に「誤認」させることで、幽霊はどんどん強くなっていく。だから彼らは様々な手段で自分を認識させようとしてくるの。ラップ音やポルターガイストなんかが分かりやすいかな』
『はあ。んなもんどうやって退治するんだよ』
『んー、手順は人それぞれだけど、求める所は一つ。“幽霊自身に「自分は居ない」と「誤認」させること”』
『というと?』
『「我思う、故に彼あり」で成り立つ幽霊は、相手の認識を通して初めて自分のことを認識するの。他者に依存した存在証明だね。だから相手に認めてもらえなくなれば、それは幽霊にとって自己の消失に他ならない。“居るはずなのに、なぜか居ない”という誤認を与えられた幽霊は、そのまま自己消滅しちゃうの』
『……………………、てことは何か? みんなで知らんぷり決め込むのか?』
『弱いものならそれだけで消えるよ。だからこそ幽霊による被害は大っぴらにならないわけだし。でもそれは、伝承とかになっちゃって何百人何千人に知られている幽霊には通用しない。ジャック・オー・ランタンとかナハトコボルトとか、幽霊の形態にある程度のパターンがあるのはそういう理由。その場限りの誤解じゃなく、もっと深い知識(おもいこみ)から形作られているものはとても強くなるの。ロシアで共産政権時代に迷信が禁じられたのは、当時強大になりすぎていた幽霊の力を弱めるためという意図もあるんだよ』
『うわー明日使えない世界史豆知識をありがとう。で結局どうすんだ』
『まず意思を強く持つこと。幽霊が誘う「誤認」に引きずり込まれないようにね。サーシャのしゃべり方、イギリス清教では行動宣言(コマンドワード)って呼んでるんだけど、あれは口頭で自分の意思や目的を再確認することで「知覚」と「自覚」を強めるためのものなの』
『(――――いや、不思議口調(あんなもん)にもっともらしい名前と理由が付いていることに一番驚いた)』
『で、次は関係性の形成。どうにかして幽霊と一対一の観測・被観測関係を成り立たせる。ここが各ゴーストバスターの腕の見せ所だね。これが上手く出来たら後は「こいつはもう居ない」と確信できるまでボコボコにするの。誤解(イメージ)は確信(イメージ)によってのみ打ち消される。当然の理屈だよ』
『結局最後は力技なのか!? つーか俺はサーシャの演技が伸び悩んでいる理由を相談したはずだったということを今思い出した! この長話に何の意味があるの!?』
『そういう仕事柄の理由で、ロシア成教のゴーストバスターは御伽噺(ファンタジー)の類に無意識の抵抗があるんだよ。引き込まれてはいけないと心のどこかで肩肘張ってるから、ぎこちなくなるんだと思う』
『……む。そう言われると、そうなのか』
『サーシャ本人は好きみたいなんだけどね。仕事の部分がどうしても出ちゃうみたい。――ちなみに。同じ理由で、サーシャは誤解とかされるのすっごく嫌うから。ただでさえとうまは余計な一言が多いんだから注意して欲しいかも』
『……すでに一度釘打ち機で射殺されそうになりました』

502 名前:169 投稿日:2006/08/05(土) 12:18:56 [ U81uG43k ]
 あちゃー、というインデックスの表情を忘れる暇もなく、今朝もまたしでかしてしまったわけだけども。
 身に染み付いた職業意識というのは、そう簡単に修正できるものではないだろう。
 まして、残り七日では。
「だからね、感情表現は顔よりも動作でやるの。腕の上げ下げだけでもずいぶん変わるんだから」
 熱心に言祝が演技指導をしている。受ける側の少女も真剣に習おうとはしているようだが、今一つ成果が見られない。
 個人授業の形になったため、手の空いた吹寄が上条達の方に歩いてきた。彼女は持っていた台本を細く丸めて自分の肩を叩きながら、
「頑張るわね、サーシャ。外国育ちであれだけ日本語が上手いってだけでもすごいのに」
 上条は吹寄が素直に人を褒めたことに驚いたが、とりあえず思い浮かんだことを口にする。
「いや、俺の知り合いには結構多いぞ。日本語の達者な外国人」
 すると横の姫神が聞き逃せない程度の声で、
「その中に。女性は何人?」
「へ? えーと、」
 思わず指折り数えようとした所で、罠だと気付く。
 指を曲げる動きで『鳴子大橋』が揺れだした。
「うわっ!? まず!」
 反射的に姫神を睨むが、彼女は片手で余るほどに指が折り曲げられた上条の手元を凝視していて視線が合わない。気付けば吹寄まで似たような目で同じ場所を見ていた。
 だー俺なんか悪いことしましたかー? と言っている間にも橋の揺れは大きくなり、このままでは確実にリンリンリンと鳴り出すぜーと直後に襲い来るであろうオシオキ音波攻撃に覚悟を決めたその時、
「あ、もうこんな時間か。みんなー、移動するよー」
 言祝が突然練習の中断を宣言した。
 直後、猛烈な脱力により上条と青髪ピアスの『大橋』は崩れ落ちたが特に責められることはなかった。馬鹿馬一号こと青髪ピアスは『惜しい! あと五秒あれば!』とか嘆いていたが華麗に無視。そして、馬鹿馬二号こと上条当麻は長時間の正座によりピクピクと痙攣している両足をどうにかなだめながら、
「こ、言祝。移動ってどこに何しに行くんだ?」
 ん? と見返してきた監督少女は、にこりと告げた。
「被服室に衣装合わせ。かみやんくんたちは、もう終わっちゃってるみたいだけどね」
 微妙に深読みできる台詞だった気もするが、身の安全のため気付かない振りをする上条だった。

503 名前:169 投稿日:2006/08/05(土) 12:19:55 [ U81uG43k ]
読みにくいのはご勘弁。設定厨の戯言と読み流すのが賢いです。矛盾とか発見されたらいくらでもどうぞ。
一月ぶりの投下。ようやくミニプラ・アルティメットダイボウケンが出来上がり、サイレンビルダーの発売を心待ちにしている169です。
そして祭囃しは既に予約済みの169でもあります。デイブレイクは悩み中。

今月中にもう一回投下……できたらいいなぁ。

504 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/05(土) 14:16:49 [ Fq7VS0O. ]
幽霊の説明が禁書っぽい、というかもしかしてロシア成教のゴーストバスターは皆あんな口調なのか。

あと細かいとこだが>>501の最初がローマ成教になってる。

505 名前:169 投稿日:2006/08/05(土) 16:58:10 [ U81uG43k ]
>>504
またかぁぁぁぁぁっ!!
恥ずかしすぎる……一度ならず二度までも。そんなにローマが好きなのか俺よ。
ご指摘ありがとうございます。

あと502の三行目、「残り七日」ではなく「残り六日」が正しいことに今気付く。
情けなすぎ……

506 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/05(土) 21:40:06 [ chf5hHxU ]
GJだぜ…変な口調に魔術的意味をつけたり
つちみーの注釈とかには笑わされた。
誤字があるからと言って気にしてはいけない。SSまとめWikiで修正効くし。

507 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/05(土) 21:57:31 [ s0TMUrys ]
>>169
つちみーの注釈ってあれか、元ネタはモトラドですか? キノの旅の。
しかしいつもGJです。
俺たちには思いつかないような魔術設定にはいつも驚かされます。

俺も近い内に新作を投下したいなあ……嘘予告専門だけど。

508 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/07(月) 17:15:19 [ 3caaA68E ]
とある休みの過ごし方  Oh_Happy_Day
続き

寮を出て歩き出すと、声が聞こえてきた。

「いやーやっぱ休日の朝はアニメ鑑賞だよにゃー」
「全くその通りですな。この時期は何故かまだ夏休みアニメ特集の残滓が残ってたりしてビミョーに古い
アニメ映画とかやってるのが見逃せませんな」
「おう。『コラムジャンク』とか『ねじめの一筆』とか、久しぶりに見てもやっぱいいもんだぜい」
「おーっと渋い。ぼかあ『ちゅうに克己』の再放送とか好きなんやけど」
「ほほう。なかなかいい趣味ですな? 落ちぶれた貴族の娘ってのもエロネタ的にはオツですな」

 朝の七時過ぎから、一体何の話をしているのかも分からないディープな会話に上条は思考停止したい
衝動に駆られたが、何とか耐えて逃げ出した。
「どうしたのとうま。あの二人に声かけないの?」
「いいの! 今はあいつらに会いたくないの!」
 「平和」はまあ百歩譲るとして、あの二人に会って「静か」に過ごせるなどとは夢にも思わない。
ここは一刻も早く立ち去るべきだ。
 裏路地に入って隣の通りに抜ける。なんとなく振り返ってみるが、もう声も聞こえなかった。
「ふう……何とかやり過ごせたか。朝っぱらからあんな変態どもに付き合ってらんねーよな」
また歩き出す。今度こそ人っ子一人居なかった。
 早朝の学園都市は、まさにゴーストタウンといってよい。何せ住民のほとんどが学生であり、
上条自身も学生寮に住んでいる以上、通勤途中のサラリーマンなんてものにはまず出会わない。
加えて今日は休日だ。通勤も通学も、ほとんどの人間にとっては関係ない。
 この時間からやっているコンビニは一体どういう客層を見込んでいるのか摩訶不思議だが、
普段学校をサボっている奴や、早朝から漫画を立ち読みしたいという特殊な嗜好を持つ学生が
相手なのだろう。レジにはごっついヒゲ親父が突っ立っている。予想を裏切らない客も、一人。

 御坂美琴が週間少年漫画雑誌を手に、窓際で立ち読みの最中だった。

(ちょっとーーー! 何してるんですか美琴センセー!!!)
 心の声は決して外に漏らしてはならない。今日は静かに、平和に、過ごしたい。まだ十分も
経っていないのにこれでは、悲劇を通り越して喜劇だ。ここで見つかったら負けのような気がする。
「よりによってなんであいつがここに居るんだ?」
「早起きだね」
 俺たちもな、と呟いて、そろそろと後ずさりし始めた。まだ距離もあるし、第一相手は立ち読み中なんだから
普通に歩いて立ち去ればいいようなものだが、なんとなく御坂はこの距離でも気配を察知しそうな気がする。
 上条の慎重さの意味が分からないインデックスは、首をかしげながらも普通に歩いてついてきた。

509 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/07(月) 17:16:29 [ 3caaA68E ]
 ふ、と御坂の視線が上に向いて、
「もがっ!?」
 上条はインデックスを引っつかむと逃げ込む予定だった曲がり角に身を隠した。前からインデックスを
抱きしめるような格好で息を殺し、頭を後ろから押さえて自分に押し当て、しゃべれないようにする。
 一分ほど待ってようやく警戒を解くと、インデックスは顔を真っ赤にしてうつむいていた。
(うわ、ヤバ……ぶち切れないうちにフォローを入れねえと……)
「ごめんインデックス。息、苦しかったろ?」
 噛まれた。
 今度は自分の口に手を当てて悲鳴がもれないようにしつつ、泣きながら早朝の町並みを駆ける。
インデックスもそれほど怒っていなかったのか、たったの十分で開放してくれた。
「ほんとにごめん。今日はどうしてもあいつに見つかりたくなかったんだよ」
 そっぽを向いた少女は、耳まで赤くしながらもかすかにうなずいた。手を差し出してくる。
仲直りの合図と受け取った上条は、その手をとった。
「さ、それじゃあ行こうか。走ったからもう結構近くまで来たぞ」
「…………」
 無言のまま、手は離さないインデックスを連れて歩き出そうとすると、
「おはようございます、とミサカは若干緊張の面持ちで朝の挨拶をします」
 御坂妹が背後に立っていた。
 バッ!と音が立つほどの勢いで振り返ると、御坂妹は体を振るわせた。
「お邪魔でしたら私はこれで失礼します、とミサカは失意もあらわに肩を落として去っていきます」
「あ、あっー! 邪魔じゃない! 邪魔じゃないから!」
 子犬のようにしおれつつ去っていこうとする御坂妹を呼び止める。
「あの、ほら。今日は朝っぱらから変態に出くわしちまったから、警戒態勢だっただけで、決して
邪魔とかそんなんじゃないから!」
「そう、ですか?とミサカは恐る恐る確認してみます」
 相変わらず変わった口調だが、とにかく誤解は解けたらしい。パッと見では分からないくらいに薄く微笑んでいる。
「うん、そうそう。ところで、こんなところで何してるんだ?お前、えー……10032号、かな?
病院で治療してるんじゃなかったっけ?」
 今度こそ御坂妹は微笑んで、
「はい。私は10032号です、とミサカは喜色満面に答えます。想定よりも非常に早く培養器から出られるまでに回復し、
今は早朝の少しの間だけ、ゆっくりと歩いて運動する事を許されています、とミサカは解説します」
「そっか。それは良かった。俺たちも今散歩の途中だ」
「……でしたら、ご一緒してかまいませんか?とミサカは許可を求めます」
「おう、いいよ」
 ぴくり、と。純白の修道女が震える。
「とーうーまー。短髪や土御門とかがダメでクールビューティーならいいの!?」
「うおお!? なに言い出すんですかインデックスさん。そんなん当たり前だろうが!あいつらと御坂妹を
一緒にしたら可哀想だろ!」
 ううう、と唸るインデックスを適当にあしらって、上条は河川敷へと歩き出した。

510 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/07(月) 17:22:01 [ 3caaA68E ]
あいここまで。どうしようかな。この際だから一通さんも出してしまおうか……

511 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/07(月) 20:48:31 [ 78/ZDoSM ]
そして最終的には全員集合の方向で

512 名前:上条当麻の憂鬱〜御坂妹ルート〜 投稿日:2006/08/08(火) 23:22:51 [ wIflezHA ]
受験生。故に執筆は1週間に1回。
文才なくてすまないが、見てくれるとうれしい・・・かも。

秋。運動会を終えた学生たちを待ち構えるのは勿論『文化祭』の三文字である。学園都市の文化祭は大覇星と同じ様に盛大である。各学校が学校全体で一つの出し物及び研究を行う、学校全体で一つといっても学園都市には相当数の学校がある。無論、それらの学校の出し物が一日で全て終わるはずもないので、文化祭には期間として3日間を設けている。屋台なども出店許可がおりているため生徒は自分の出し物の番以外はそれぞれで楽しむことができる。
「んで、カミやん。どうするよ?俺達の演劇って3日目だろ?何か見たいもんでもあんのかにゃ?」
群集と喧騒の中を抜けていく3人の軍団の中で一番右を歩く金髪の少年が真中を歩く黒髪ツンツン少年に尋ねた。
「い〜や、ねぇな」
黒髪の少年、名を上条当麻は文化祭の一日目のパンフレットを見ながら気だるそうに呟く。
「ボクも、午前中はないわ〜。午後の常盤台中学の演劇ってのは見てみたいけどなー」
笑顔で言うのは長身青髪ピアスの少年。少年と表記すべきではないのかもしれないが二人の少年とツルんでいるのだから少年と表現せざるを得ないだろう。
「お?やっぱり。常盤台の演劇は毎回出来がいいからにゃー」
「ちっち。甘いで、つちみー。劇の内容なんてどうでもいいんや。可憐な乙女達が同姓で繰り広げる至高の宝塚。劇中できっとアレなんだから、校内はきっとマ○み○(自主規制)状態になっているに違いない!!」
「はいはい。間違ってもスールの誓いとかはないからな。それに常盤台なら俺ゃ、パス。」
青髪ピアスの言葉に不機嫌そうに答えた上条の言葉に金髪少年もとい土御門元春と青髪ピアスから冷たい視線が突き刺さる。
「なんでやねん、カミやん!!去年は一緒に常盤台の演劇見て興奮してたやないか!!」
「そうだぜよ。やっぱ、ツンデレはいいなぁ。とか呟いてたのを忘れたのかにゃー!!」
「あー・・・・・忘れた」

513 名前:上条当麻の憂鬱〜御坂妹ルート〜 投稿日:2006/08/08(火) 23:23:39 [ wIflezHA ]
「「うぉい!!」」
絶妙な突っ込みはおいておいて、上条がさきほど述べた言葉は真実である。上条は3ヶ月前ぐらいから記憶喪失である。
原因は不明。その症状は学園都市の名医『冥土返し』さえ克服できないほど深刻なものだ。だから、上条には去年の文化祭がどういうものであったのかはもちろん、この二人が本当に友達であるかどうかすらも分からないのだ。
「あ、もしかしてあの娘かにゃ?ほら、あの。7月31日にカミやんの胸に飛び込んできた・・・・」
「御坂美琴か!!」
「何でお前が知ってんだよ!!」
本気で恐ろしくなって上条は大声で尋ねた。コイツなら本当に学園都市の全女子生徒を知っていたとしてもおかしくはないが・・・
「ふふふ。カミやん、ボクを誰やと思ってる?熟女からロリに幼女・・・様々な女性の原典を内包する王。それがボクやで?そんじょそこらの女の子ならいさ知らず。常盤台中学のレベル5の名前ぐらいは基本中の基本やろ。うむ。アレだ。数学で言う所の対数関数のグラフを書けって感じの問題だな」
例えが難しいし、何よりも何なんだそのどっかの金ピカみたいな肩書きは。
「あー、御坂は関係ねぇよ。多分な・・・つーか、行きたいなら二人で行ってくりゃいいだろ」
「・・・・・」
上条は正論を言ったまでだが土御門がニヤニヤと口元に笑みを浮かべて上条を見つめていた。
「な、なんだよ?」
「いやー、カミやんにも可愛いところがあるにゃー、と思ってな」
「は?」
眉を潜めて土御門へと振り返る上条。その表情をさらに土御門はニヤニヤとさらに深い笑みを作って。
「よせよせ。カミやん。言いたいことは分かる。俺達二人は邪魔なんだろ?」
再び、は?という表情をしている上条を尻目に土御門は青髪ピアスの耳元で何かを囁くと、青髪ピアスは目線で後ろを見、そして口元にニヤリという笑みを浮かべると早足に上条と距離を放した。
「ちょ、何なんだよお前等・・・・・」
と、駆け出そうとした上条は突然何か背後から達人のオーラのようななにやら分かりにくいオーラを感じ取った。だが、上条は知っている。このピリピリと触れるもの全てをビリビリさせるようなオーラの正体を。上条は理解した。なぜあの二人が逃げるようにして立ち去ったのかを
「あのー・・・御坂さん?あなたはそこで何をしていらっしゃるのですか?」
後ろを振り向かないで尋ねる。返事はない。
「っ。何か言えよ御坂・・・・いぃっ!?」
上条が振り向いた先。確かに御坂は存在した。あぁ、確かに存在した。

美琴そっくりの御坂妹がそこにボゥと立っていた。

514 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/09(水) 02:18:33 [ ATZcgcVs ]
>>512
続きが気になるwwww
GJ!!

515 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/09(水) 10:13:34 [ W5SvgPek ]
御坂妹エンドですな。
頑張ってください。

516 名前:愛のお弁当提供イベント 投稿日:2006/08/16(水) 22:50:19 [ 58emcRQ6 ]
「どないしたんカミやん、鞄なんか漁って」
午前の授業が終わった昼休み。青髪ピアスの少年は上条に話し掛けたが、上条は止まらない。今の時間にこの行動と云うことから、前の質問の答えを得た。
「もしかして……、弁当(午後のエネルギー源)忘れてきたん?」
その言葉を聞いて上条は停止した。何度か鞄を確認して、それでも信じられないと鞄を漁っていたことが無駄だと解ったから。
まぁ無いものは無いんだからしょうがない、と不幸(こんなこと)に慣れている上条は考える。弁当がないなら学食に行けばいいのだが、上条家の財政はとある出費により苦しい。上条の懐事情を知っている青髪ピアスは楽しそうに言う。
「はっはー!カミやん今日は昼抜きやね!いつも一番いいポジションにいる罰や!あぁパンが美味しいなぁ」
他人の不幸を笑うなとかどんな評価だとか代われるものならとか、言いたいことは飲み込む。そのかわり上条が発したのは、
「……。ひとつ、わけていただけますか?」
机の上に数個あるパンを乞う言葉だった。

517 名前:愛のお弁当提供イベント 投稿日:2006/08/16(水) 22:50:40 [ R8kRoZW2 ]
「どないしたんカミやん、鞄なんか漁って」
午前の授業が終わった昼休み。青髪ピアスの少年は上条に話し掛けたが、上条は止まらない。今の時間にこの行動と云うことから、前の質問の答えを得た。
「もしかして……、弁当(午後のエネルギー源)忘れてきたん?」
その言葉を聞いて上条は停止した。何度か鞄を確認して、それでも信じられないと鞄を漁っていたことが無駄だと解ったから。
まぁ無いものは無いんだからしょうがない、と不幸(こんなこと)に慣れている上条は考える。弁当がないなら学食に行けばいいのだが、上条家の財政はとある出費により苦しい。上条の懐事情を知っている青髪ピアスは楽しそうに言う。
「はっはー!カミやん今日は昼抜きやね!いつも一番いいポジションにいる罰や!あぁパンが美味しいなぁ」
他人の不幸を笑うなとかどんな評価だとか代われるものならとか、言いたいことは飲み込む。そのかわり上条が発したのは、
「……。ひとつ、わけていただけますか?」
机の上に数個あるパンを乞う言葉だった。

518 名前:愛のお弁当提供イベント 投稿日:2006/08/16(水) 22:53:49 [ X93WFuzU ]
「何を言っておりますのん、これは罰なんですよ?あっ、貼り紙も必要かもしれんね。きゅきゅーと」
理不尽なことを言いながら紙に書いたのは
“餌を与えると懐きます。危険ですので止めましょう”
(……。懐くって、動物かおれは。…、いやまだそれはいい。危険ってなんだ危険って!)
上条はふらりと立ち上がった。そして青髪ピアスに殴りかかる。

上条は自席に座っていた。時間は昼休みの半分を過ぎた頃。
青髪ピアスを伸したあと、上条は友人達に昼食を乞いにいった。しかし誰にもなにも貰えず、しかも理由が青髪ピアスと同じようなものだった。
(はぁ…、何してたんだよ一学期の俺ぇ)
大覇星祭の時と同じようなものだったと思うと涙が出そうになる。
空腹、加えて精神的ダメージに耐えるべく寝ようと突っ伏した時、声が掛けられた。
「あの……、上条くん大丈夫?目が、その……、死んでる」
上条は記憶を失っているため、クラスメイトなその少女の顔に見覚えはない。なので適当に大丈夫とだけ応えた。
何故かクラスメイトの視線を感じるが、今の上条には気にする余裕が無い。
目の前の少女が少し赤くなっているのを気にする余裕も無い。
「お昼ご飯食べてないから、だよね。じゃあ、その……。」

519 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/16(水) 23:01:18 [ vCBXBZuY ]
ひとつめを二度やってしまって申し訳ありません
それとこの続きは、お弁当の残りを貰うか、不幸にも貰えないか、どっちがいいでしょうか

520 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/16(水) 23:14:49 [ 4GQVALr6 ]
なんか当麻はいろんな人からもらえそうになった挙句昼休み終わりそうだw
ってことで不幸にも貰えないに一票

521 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/17(木) 18:44:17 [ rcEdY6ks ]
元ネタはエロパロ板のやつ?
とりあえず不幸にも貰えないルートで

522 名前:愛のお弁当提供イベント 投稿日:2006/08/17(木) 22:20:09 [ /mUWjstY ]
おそらく貰えないほうが期待されると勝手な判断
           「の、残り物でよかったら……」
瞬間、教室が沸いた。
「またか!またなのか!?」「おのれぇ上条属性!」「女生徒のお弁当だなんて、なんて羨ましい」「むしろ狙ってやってるやろ!そうとしか思えへん!」「そうやって同情心煽るなんて最低よ上条当麻!」
外野が何を言おうが上条は怯まない。今はこの空腹から逃れるのが最優先事項ですとばかりに少女に確認する。
「いいのか?これ貰っふごっ!?」
しかし最後まで言えずにはがいじめにされて口を塞がれる。
「いいわけありませんっ!たまにはこっちの気もわかってもらわへんと」
「ふごふぐふがふが!」
「何言ってるのか解りまへんなー。日頃の恨み晴らさでおくべきかてやつやね」日頃のっておれ何もしてねぇよ!と迫りつつある男子の輪の中心で無駄な抵抗を続ける。

523 名前:愛のお弁当提供イベント 投稿日:2006/08/17(木) 22:24:27 [ xNx4N9pM ]
昼休みが残り四半分になる時、まだ教室では死闘がくりひろがっていた。
しかし終わりは唐突に訪れる。教室の扉が開かれ、月読小萌が表れた。そして言う。
「上条ちゃん少し手伝ってくださいー」
「なんで俺!?」
「誰も面倒は嫌ですよね?誰かにきてほしい私としてはじゃんけんを提案するですよね。そしたら」
皆まで言わんでください悲しくなりますと上条はうなだれながら、お弁当提供を申し出た少女を見る。
そこでは他の女子に上条の危険性について説教されていた。
相変わらずの扱いに上条はうなだれているのに係わらず、小萌は無慈悲に告げる。
「さぁちゃきちゃき行くですよ」
「ええやん小萌先生と二人限りやでー」
「ならかわってくださいと切に願います」
やはり青髪ピアスはそれを無視し、小萌はもうあるきはじめていた。
空腹は更にひどくなっている。昼休みは終りそうで、つまり放課までなにも食えない。
「不 幸 だ ー !!」

524 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/19(土) 21:31:39 [ mamJipeU ]
・・・一番最後から2行目は、
放課後では?といってみる。

525 名前:■■■■ 投稿日:2006/08/20(日) 01:24:50 [ av/pqr1E ]
脱字ですすいません
ついでに大覇星祭後なのに女生徒に見覚えがないのは名前が思いつかなかったからです

526 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/04(月) 16:53:57 [ Lh.t3f2A ]
上条の従兄妹って当麻よりも年下ということだけで何歳か分からないから
もしかしたらまだ小学2〜3年生であるということもありえるのかな

527 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/04(月) 18:27:19 [ Bxvor.E6 ]
さて、
続きマダー?AA略

528 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/04(月) 20:45:02 [ 9Z7ASA9g ]
焦るな…俺達にできることは二つ。
「このスレの中心でGJと叫ぶ」
「ひたすらに神降臨を待つ」
これだけだ。

529 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/04(月) 21:37:51 [ HKVP/14s ]
自分で書くという選択肢は(ry

530 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/05(火) 10:49:21 [ yeLHDOOA ]
そんな事が出来ればとっくに投稿してる・・・(泣)

531 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/06(水) 00:00:09 [ 4jSdRADQ ]
…とあるビルの一室。二人の女性が向かい合っている。
二人とも動きを止めているものの、部屋中を走る無数の弾痕や断裂が、直前までの激しい闘争を物語っていた。
「腕を上げたね…シスター・アニェーゼ」
構えた二丁拳銃はそのままに、向かい合う一方――サングラスの女性が呟く。
「あの頃とは、違って…今は、戦う理由がありますんで」
対して、もう一方の赤毛の少女――アニェーゼ・サンクティスは、苦しそうに答えた。

ほぼ無傷に近い相手とは対照的に、彼女は満身創痍だった。
息は荒く、三つ編みはところどころほつれ、全身を裂傷と内出血痕が包んでいる。
ロータスワンド
『蓮の杖』に体を預けなければ立っていることすら出来ず、その杖も半ばから折れてしまっていた。

それでも。
それでも目だけは死んでいない。意志だけは折れていない。
まるで――どんな状況でも絶対に退かなかった、あの少年のように。

「…私の、部下達は、どうなっちまってんですかね」
「三分の一は捕まえたよ。だが…残りの捕縛は難航しそうだ。おまえが吐かなければ、ね」
  ・・・・・・・・                         ・・・・・・・・
「『私が吐かなければ』?何寝ぼけたこと言っちまってくれてんですかね、『私を壊さなければ』の間違いでしょうに」
「………」
言って、苦しげな、しかし凶暴な笑みを浮かべる。
「私は捕まっちまったりしません!三分の一もきっちり返してもらいます!!」
そう、高らかに宣言した。…自らに言い聞かせるように。
相手が怯んだ隙に、支えにしていた『蓮の杖』を振り上げ、地面に叩きつける。杖全体にひび割れが走った。
バランスを崩しそうになるが、なんとか堪える。

「………?」
サングラスの女は、それを訝しげに見ていた。
が、すぐに異変に気付く。ビルが震えていた。
(地震か?!…いや、これは……っ!!)

アニェーゼが渾身の力で『蓮の杖』を踏み砕き――
――同時に、ビルが崩れ落ちた。

532 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/06(水) 00:02:35 [ UcL7LaEk ]
「不幸だー…」
ホテルの一室で、上条当麻が呟く。
まあいつも通りといえばそれまでだが、今回は何があったかというと、財布を紛失してしまったのだった。
現金は数箇所に分けて保管していたため大事には至っていない。だがカードは停止させたし、無駄遣い不能。
おまけに連れの食費と友人達への土産代を考えれば、目当ての土産物屋以外へ下手に出歩くのは命取りになりかねなかった。

そんなわけで、彼はホテルから出られない。
せいぜい、向かいのビルから断続的に聞こえていた音(工事音だろうか?)をBGMに、
映らないテレビとの虚しい格闘を演じる程度しかすることがなかった。
そしてそれにも飽きたため、折角の海外旅行にも関わらず現在は昼間からベッドに潜り込んでいる。

…ちなみに、連れのシスターは一足先にふて寝の真っ最中。
怠惰は七つの大罪の一つじゃなかったか――上条はつかの間そんなことを考え、暴食がデフォルトの生活を思い出して溜息を吐いた。

――だが、しかし。向かいのビルでは、上条の普通で不幸な旅行を一発で吹っ飛ばす出来事が起きていたわけで。

ギゴゴゴゴゴ…
「…あ……?」

――上条がそれに巻き込まれるのも、それはそれである意味彼にとって不幸で普通なわけで。

不吉な音。窓から顔を出すと、向かいのビルが崩れていく様が鮮明に見て取れた。
そして、既に半ばまで崩れたビルの中に赤毛の少女が倒れているのも。
「くそ…っ!誰も気付いてねーのか!?」
目の前で崩れるビルに、しかし人々はちらりと目を向ける程度の反応しかしない。

――もし、上条が冷静だったなら。
何度もそれを経験した彼は、意識操作の魔術が掛けられている事くらい察したかもしれなかった。
が、今の彼にそんな余裕はない。
目の前で失われかけている命を救うため、上条当麻は走り出した――

533 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/06(水) 00:11:03 [ hKvMsgF2 ]
駄文でスマン。しかも続かない。職人さんが居ない間の場繋ぎってことで許してorz

アニェーゼ部隊はあの一件で処罰されるんかなーとか、そろそろ異能者以外で戦闘のエキスパートと戦わないかなーとか。
そんなこと考えてたら生まれた妄想。上条が逃亡中のアニェーゼ部隊を助ける展開。
敵キャラ考えられなくてヘルシングのハインケル(ぽいモノ)になった。重ねてごめんなさい…

534 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/08(金) 21:05:07 [ vZ9ucyOc ]
よ く や っ て く れ た !! G J ! !

禁書エナジーを吸収できたぜ

535 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/13(水) 03:56:34 [ bGNwAnr6 ]
アンデルセン神父が禁書世界に居たらどうなんだろ。

536 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/13(水) 14:57:33 [ roJt0N2A ]
それはつまり騎士団にアーカードがいると

537 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/13(水) 18:08:12 [ BmFnwzqA ]
吸血鬼はもれなく必殺されちゃう巫女が居るから
そこら辺の設定を上手く捏造しないとな。
距離がかなり離れてればある程度は耐えられるとかな。

538 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/13(水) 20:37:16 [ k2yj.v4c ]
単に十字架してるから平気で十分だと思うが

539 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/13(水) 23:30:26 [ bIgJeuDQ ]
一冊の魔道書を巡る学園都市と魔術勢力の戦争は続く。

――――対立と激闘
「ワリィが、今の俺は全開だ。気を抜くなよ、聖人(かんざき)!」
「くだらない理想は身体と一緒に焼き尽くしてやるよ」

――――裏切りと離別
「お姉さまッ・・・!」
「泣かないの、黒子。アンタが選んだ道でしょ」

――――策謀と陰謀
「助けてください、とミサカはわずかな希望にすがりついて懇願してみます」

「だから、俺はアイツが望むのなら神様だって殺してやる」

それは一人の少年の尊い決意。

―とある魔術の禁書目録 Final imagine― 2008年12月10日発売
禁書シリーズ感動の最終回。
たった一人の少女を守るため、たった一人で少年は命を掛ける。
”命を掛ける理由がある〟

540 名前:169 投稿日:2006/09/15(金) 00:31:17 [ /P89MBRU ]
 この学校には校舎が二棟ある。
 通常授業に使われる一般教室が含まれているのが新校舎。
 理科室や図書室、さらに能力試験室などの特別教室があるのが旧校舎だ。当然被服室があるのはこちらである。
 というわけで、上条達六人はぞろぞろと連れ立って旧校舎に入っていく。
 被服室までは最短距離なら百メートルもないのだが、たったそれだけの道のりでも彼らは人目を集めに集めた。
 さもあらん、いまや校内一有名なチームなのだから。……有名にもいろいろな意味はあるが。
「なんつーか……突き刺さるような視線を感じる」
 上条は居心地悪そうに肩を震わせた。
 突然主役の座を奪い取る形になった臨時役者達、また、それを強引に決定した監督に対して風当たりが強くなったということは今の所ない。むしろ他校の生徒(ですら本当はないのだが)であるサーシャも含めて好意的に受け入れているように思える。言祝のイメージ戦略は功を奏しているようだ。
 ならば当然そのあおりを受けている者がいるわけで。いや、初めからそれも計算に入っていた場合はどう言うのか知らないが。
「(ヒソヒソ)旗男め……校内(みうち)だけでは飽き足らず、他校(よそ)の生徒にまで手を出すとは……」
「(ヒソヒソ)しかもパツキン(死語)の美少女中学生だぞ? ありえねえ」
「(ヒソヒソ)旗男め」
「(ヒソヒソ)さらに我が校自慢の美女達をも独り占めときた。何食って育てばあんな人間になるんだ!?」
「(ヒソヒソ)親の教育の賜物という噂もあるぞ」
「(ヒソヒソ)旗男め」
「(ヒソヒソ)でもさ、見ろよ。あの女の子達の幸せそうな表情を……。俺達ってさ、もしかしたらすごく野暮なことしてるのかもしれないぜ?」
「(ヒソヒソ)目を覚ませ! あれは精神疾患(カミやんびょう)による症状の一種だ。治し方は俺達だけが知ってるんだ。彼女達のためにも、お前はお前を信じろ!」
「(ヒソヒソ)旗男め」
 柱の影やら階段の踊り場やらで、このようなやり取りが延々と繰り返されている。
 ちなみにここまでぜーんぶ丸聞こえである。
 吹寄や姫神などは、割と平然としているのだが、全校生徒の負の感情を一身に受けている上条はそうはいかない。五十メートル位で耐え切れなくなり、耳を塞いで『あーあーきーこーえーなーいー』とかやり始めた。
 言祝はそれを横目に見て、
「楽しそうだね」
「いい加減にしとかんとぶっ飛ばすぞ諸悪の根源! 上条さんの明るい学園生活を返せ!」
 聞き入れてくれる彼女ではないと知りつつ、それでも上条は叫ばずにはいられなかった。
 言祝はやはり平然とした様子で、
「悪いことばかりでもないと思うのですよ。なんと言っても、これだけの美人さん達を堂々と連れ歩けるわけだし?」
 己の平坦な胸に手を当て、もう片方の手でざっと周囲のメンバーを示した。
 黒髪和風の姫神秋沙。
 金髪洋風のサーシャ=クロイツェフ。
 委員長型の吹寄制理。
 そして快活文系の言祝栞。
 容姿は各人言うまでもなく、属性区別(ヴァリエーション)も豊富。確かに「悪くはない」と思えるだけの面子であることは理解できる。理解はできるが、しかし上条としては、
「……別にいつも顔合わせてるしなぁ。ていうか、まさにそれが目の敵にされる最大の原因なんだが。メリットとデメリットはきっちり分けてもらわないと困るのですよ」
 即座にチーム内外を問わず怒り狂った人々から暴行を加えられる上条当麻。打たれ蹴られ踏まれ剥がされ流され吊るされ曝される。
 そんな平和な光景の影で、チーム内外を問わずアウトオブ眼中な両耳にピアスをつけた青い髪の少年がいじけていたが、まあそれはそれということで。

541 名前:169 投稿日:2006/09/15(金) 00:32:48 [ /P89MBRU ]
 普通に歩けば二分の道のりを、その十倍かかってようやく被服室に辿り着く。
 この余分な時間さえも自分のせいにされ、肉体的にも精神的にも大きくダメージを受けた上条は、すでに呼吸するだけの肉隗と化していた。今ではサーシャに襟首を捕まれてずるずると引きずられている。
 言祝を先頭に被服室に入ると、ミシン前に座って作業をしていた彼らより年上らしい女生徒が振り向いた。
「あら……いらっしゃい……。衣装合わせに……来たのね……?」
「はい。お疲れ様です芦田先輩。それと馬の着ぐるみが二つとも壊れてしまったので、大至急修繕をお願いします」
 目元口元を見るからに、とっても疲れているらしい女子の先輩に、監督少女は毒入りジュースを勧めるような笑顔で言った。
「………………………………………………は」
 芦田と呼ばれた女生徒は、垂れ下がった前髪の奥から悪魔でも呪い殺せそうなまなざしを言祝に向けた後、何もかもを諦めたように頷いた。あまりに力の抜けきった頷きだったため、単に気絶したようにも見える。
 言祝以外の演劇メンバーは、それで全てを理解した。
 ああ、これが初めてじゃないんだ。
 そんな場の空気を一切読まず、言祝はうきうきと部屋の奥にある複数のマネキンに近づいていく。
 一番右側のマネキンには、王子用と思われる衣装が着せられていた。四角い布を幾重にも重ねて、ふくらんだ上半身はまるで鎧のように見える。おそらく吹寄の女性的な体型を隠すためのデザインなのだろう。
 他にも、いくつもの趣向を凝らした華麗な衣装が並べられていたのだが……やはり最も目を引くのは、真ん中あたりに飾られていたシンデレラ用のドレス。
 ライトブルーを基調とした、どちらかと言えば質素なデザインだ。しかし決して手を抜いているわけではなく、裾に至るまで完成された美しさがあった。いかにも舞台映えしそうな、センスの良さが伺える。
「………………でも、なんで二着あんの?」
 全身の痛みを我慢して立ち上がった上条は、素朴な疑問を口にした。
 デザインは同じだがサイズの違うドレスが二着、並べて飾られている。小さい方はたぶんサーシャに合わせて仕立て直している途中なのだろう、縫い合わせが終わっていない部分があった。
 そして大きい方はと言うと――――本当に大きい。まずマネキンの背が日本の女子高校生の平均身長を軽く上回っているように見えるし、肩幅も非常に広い。まるで“男性用衣服”を着せるためのマネキンみたいだ。当然ドレスもそれ相応のサイズになっている。もしもサーシャが着たとしたら、足元で折り返した裾が胸まで届くかもしれない。
 言祝は、それ? と大きいドレスを指差し、
「かみやんくん用に作ってもらってたドレス」
「捨てろ! 即座に!」
 そこらの机から裁断バサミを掴み取り、自ら処分しようとした上条を、吹寄が拳の一撃で沈める。
「ふう。でもまあ、この馬鹿の言うことにも一理あるわね。栞、なんで使わなくなったはずの衣装がここにあるの?」
「んー、着付けの練習用、かな?」
 集まる視線に、言祝は正面を合わせて、
「魔女がシンデレラに魔法をかけるシーンって、演出の一番の見せ場じゃない。それで念動力(テレキネシス)でドレスを操って着せるっていう演出を思いついたんだけど、効果班の念動力者のレベルだと、難易度的にちょっと厳しい課題なのですよ。かと言って練習で使いすぎて本番用のドレスを傷めるのもやだし」
「なるほど。それで用済みになった同じデザインのドレスを引っ張り出してきたというわけやね」
 青髪ピアスが納得した。
 言祝は、ふ、と遠くを見るような目をして、

542 名前:169 投稿日:2006/09/15(金) 00:33:17 [ /P89MBRU ]
「もともとは失敗の可能性の方が高いプランだった……。シンデレラが突然ストリップショーに変わってしまいかねなかった。それならいっそのこと男の子がやった方がおもしろいかなーと思ってかみやんくんを指名したんだけど…………効果班に一週間ばかり地獄の特訓(しゅうちゅうれんしゅう)をしてもらったら、意外と何とかなりそうな感じになってきたりして。何よりサーシャちゃんという逸材を見つけてしまったものだから……」
 賭けてみたくなったのよ、と。難業に挑む偉大な挑戦者の顔つきで言った。
 要するにこっちのがおもしろそうだったから他人の迷惑なんて気にせずに食いついた、という意味であることは明白だったが。
 少なくとも、わけもわからず指名された挙句放り捨てられた上条と、ドレスの早急な仕立て直しをしなければならなくなった芦田先輩にとっては、非常に迷惑な話だった。
「……なんつーマイウェイ精神。流石の上条さんも言葉もな――――いやいやありましたはいはい質問! 失敗したらストリップってそんなの聞いてないですわどーゆーことですのと現役シンデレラ様が仰っておられます! なるべく早く答えないと(俺の)後頭部に押し付けられた釘打ち機(ハスタラ・ビスタ)が火を噴くゼ!」 
「正解はCMの後で♪」
 ザケンナー!! と地べたに押さえつけられながら絶叫する上条当麻。
 言祝監督はきゃらきゃらと笑いながら、不安と怒りが入り混じった目でにらんでくる主役(プリマ)に対し、
「だいじょぶだいじょぶ。ちゃーんと練習させるし、下には水着か何かを着てもらう予定だから」
「…………私見一。それでいいというものでは、ないのだが」
 ぶちぶちと呟きながら、とりあえずは上条を解放するサーシャ。上条はいやに涼しくなった後ろ頭をさすりながら立ち上がる。もーこれ以上痛くて疲れるイベントは勘弁ですーと思っていると、それまで黙っていた姫神がポツリと言った。
「ところで言祝さん。練習させるとは言うけれど。その大きなドレスをこの子に着せるの?」
「ううん。折角寸法のあった人間がいるんだから」
 続きを聞くことなく、上条は痛む体に鞭打って全力で逃走を開始した。


 御坂美琴は思う――これはあくまで出し物の現場の下見であって、他意はないのだと。
「あからさまにそわそわしながら言われても、信憑性ゼロですわよ」
 連れの後輩の声がした。しかし内容までは頭に入ってこない。何故ならば、それはもう真剣に下見を行っているからだ。
「十メートルごとに窓ガラスで髪型を確認している人の台詞ですの?」
 また聞こえた。が、やっぱり意味はわからない。こんなに真面目に見て回っているのだから当然だろう。
「………………………………………………………………あら。あんな所にあの殿方が」
 バチィ! と空気を叩くような音と共に雷撃の槍が飛んだ。
 白井黒子が指差した先にたまたまいた名も知らぬ男子高校生が、悲鳴を上げる間も無く真っ黒焦げになる。
 俄に騒がしくなる新校舎の廊下。はあ、と黒子は大げさにため息をついて、
「お姉様。出会い頭の照れ隠しに雷撃の槍を撃ち込むのは、いくらあの殿方相手でもはしたないですわよ?」
「な、なに言ってんのよ黒子!? わ、私はそんなアイツに会いに来たなんてそんなわけないんだからっ!?」
「はあ。相手のホームグラウンドでガチガチに緊張しているお姉様も新鮮でいいですけれど、そろそろちゃんと仕事をしないとおさぼりさんにされてしまいますわね」
「こら! 人の話はちゃんと聞きなさいよ!」
 スタスタと歩き始めてしまった黒子の後を、美琴は追いかけた。
 ここは普段、彼女達が通っている常盤台中学の校舎ではない。
 来る一端覧祭で、常盤台中学が模擬店を出す予定になっている会場校だ。
 御坂美琴と白井黒子は、その下準備として、現場の見回りに来ているのである。このような時期になったのは、会場校の急な変更に伴い、常盤台中学内で細々とした計画の練り直しをしていたからだ。
 ちなみに、人選は自主参加であったことを付け加えておく。

543 名前:169 投稿日:2006/09/15(金) 00:33:47 [ /P89MBRU ]
 女子中学生二人は、見渡す限り高校生ばかりの校舎を臆した風もなく歩いてゆく。
 普通中学生から見て、高校生というのは理由もなく怖かったり、あるいは偉そうに見えたりするものだが、ここはそんな常識の存在しない学園都市。学校の序列は年齢ではなく抱える能力者のレベルによって定まる。
 常盤台中学と言えば、お嬢様学校ばかりが集まった通称『学舎の園』の長であると同時に、学園都市『五本指』にも数えられる名門中の名門。良能力者(レベル3)の保有数でさえ十人に満たない学校に、わざわざ畏怖してやる必要はないということだ。
 ――もっとも、それは逆に相手側から畏怖されるという意味でもある。
 すれ違う年長の生徒達が、まず背格好を見て訝しがり、次いで何処の学校の制服かを思い出してそそくさと道を譲る。
 望んで、そして努力を重ねて得た立場とはいえ、真の意味でまだ子供である彼女達にとって、壁を作られるのが日常になってしまうのは自覚できないくらいの深さで心に影を落とす。一歩母校を出れば、そこは四方を囲まれた迷路も同然なのだ。
 そんな壁を打ち砕いて接してくれるのは、そう、確かにあの少年くらいのものだ。黒子は偽りない気持ちでそう思う。
 愛しのお姉様に関係することで容赦するつもりはないが、正直な所、白井黒子個人の感情はあの少年を決して嫌ってはいない。
 誰にでも、誰のためにでも本音で相対せる生き方。
 次元を超えて放たれた凶悪な攻撃にも、身一つ拳一つで飛び込んでいったあの背中を、彼女は今でも鮮明に覚えている――
「(――――って! わたくしが照れてどーするんですの!!)」
 黒子は不意に熱くなった顔を八つ当たり気味に振り回す。
 何やってんの? と美琴がこちらを覗き込もうとしたので、黒子は強引なのは承知で話題を振った。
「そ、そんなことよりお姉様。お姉様の目から見て、この学校は立地条件的にどうですの? 伝統ある常盤台中学が出店するに値しますですのこと?」
「より一層変な口調になってるわよ黒子。でも……うーん、交通の便は悪くないし、周囲の景観も特に問題ない。校舎の見た目が『普通』なのをマイナス評価にするのも失礼だし、あれよね、代役としてはまあまあってとこじゃないかしら」
 すらすらと意見を述べる美琴。テンパっているようでも見るべき所は見ていたらしい。
 黒子が「流石わたくしのお姉様ですわー!」と抱きつこうとしたが、美琴は全力でこれを阻止。しかし奇妙な興奮状態にある黒子はそこで止まるわけもなく、ドタバタとリアル女子中学生によるキャットファイトの様相を示しだした。集中する好奇だか恐怖だかの視線。
 こんな行いを日常的に繰り広げていることも壁を作られる要因の一つであるのだが、激闘中の二人に気付けと言うのは酷だろう。
 もみ合っているうちに美琴がマウントポジションを取る。
「ふっふっふ。さあ観念しなさい黒子。今日という今日はアンタに目上の人に対する礼儀って奴を物理的に叩き込んであげるわ」
「あらお姉様。テレポーター相手に密着体勢を取ることがどういう意味か、忘れていらっしゃるようで。あの御坂美琴が他校で公開ストリップだなんて、朝刊の一面を独占してしまいますわよ?」
「言ってなさい。その時は通学ラッシュの駅前にパンチパーマ風味のツインテールが吊るされるだけのことよ」
「まあ、そんな独創的な髪型は是非ともお姉様に実践していただきたいもので……あら?」
 廊下に押し倒されていた黒子が先に気付いた。
 彼女達が歩いていた方向から、微かな振動が伝わってくる。
 黒子の様子に気付いて、美琴も顔を上げた。その頃には振動は明らかな足音に変わり、不特定多数の人間が怒声を上げながら疾走しているのだと知れた。
 全く意味はわからなかったが。
 しばし――と言えるほどの間も無く、数メートル先の曲がり角の先にある渡り廊下から、騒動が現れた。
 先頭に立って走っていたのは、ついさっきまで思い浮かべていた少年だった。なにやら必死の形相で、運動会はもう終わったというのに全力疾走をしている。

 ただし上半身裸で。

544 名前:169 投稿日:2006/09/15(金) 00:34:11 [ /P89MBRU ]
「「………………………………………………………………………………………………………………………………」」
 思考と呼吸が止まっているのに時間だけは残酷に流れていく。たった二人の女の子のことなんて気にも留めずに、少年は彼女達のすぐ横を走り去っていった。
 美琴と黒子は互いに掛け合う言葉もない。
 続いて、少年を追うように三十人ばかりの高校生の集団が現れた。これまた揃って全力疾走、加えて少年とは別の意味で血走った目をしている。
 集団の中心にいる黒髪で小さな眼鏡をかけた少女が、何かの能力を使っているのか肉声にしては大きくよく響く声で周りの学生を扇動しているようだった。
〔「さあさあ走れ皆の者! 今こそ積年の恨みを果たす時! 諸悪の根源かみやんマスクをとっ捕まえて、その生皮剥いでしまうのですよー!」!!〕
「うおおおお! 旗男め、ようやく得た大儀名分(せいぎのちから)の名の下に塵と化せぇぇぇぇ!」
「お前を倒せば、姫神さんは僕のモノおおおっ!」
「俺は吹寄さまだぁぁぁーっ!」
「折角だから、俺はあの赤い中学生を選ぶぜ!」
「「「とにかく覚悟しろよ上条当麻ーーーーっ!!」」」
「や・か・ま・しぃぃぃぃっ!! 了承も取らずに勝手に人を諸悪の根源に仕立て上げてるんじゃねー! しかもかみやんマスクって、妙に語呂がいいのがまたムカつく! 思わず仮面なんかかぶってねーよとツッコむことさえ忘れてしまうほどにだ! ドちくしょう、こうなったら絶対に逃げのびてやるぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
 真っ先に逃走を選んでしまったのが運の尽き。
 監督少女は事前の情報操作によって盛り上がっていたアンチ旗男運動を巧みに誘導し、一瞬にしてこれほどの規模の捕獲部隊を結成してみせたのだ。
 怒声と悲鳴と爆発音を引き連れて、嵐のように去っていった謎の集団を成すすべなく見送った後、黒子はいまだ彼女に馬乗りになったままの美琴に向かって呟いた。
「……お姉様。わたくし、一つ前言を撤回いたしますわ」
「……えーと、一応聞くけど、何を?」
「この高校では、公開ストリップをやってもせいぜいスポーツ新聞の三面にちょこっと載るくらいのニュースにしかならないみたいですの」
「そうね。私もこの高校を『普通』と評価したことは取り消すわ。きっと『五本指』に入るわね――――変態の」
 お互いの体を離して、起き上がり、パタパタと服に着いた埃を払う。
 深い深呼吸を何度もして、気持ちを落ち着かせ、見つめ合い、頷きあった。
 それから。
 御坂美琴と白井黒子は、なおも勢力を増し続ける上条捕獲部隊に飛び入り参加した。

545 名前:169 投稿日:2006/09/15(金) 00:34:43 [ /P89MBRU ]
忘れられた頃にやってくる男、169です。八月中にもう一回更新とか戯言言っていたのが恥ずかしいですほんと。
相も変わらず内容の薄い話ですが、これで一応大体の伏線は張り終えました。次回からはシリアスも混じってくることでしょう。

>>531 >>539
私のよかよっぽどおもしろそうなので、かなり続きが読みたいです。2008年までなら待てるのでどうか一つ。

それにしても、やっぱり楽しい嘘予告。久しぶりに私もやってみようかしら。
灰姫遊戯の続きの長編プロットが二つほどあるので……駄目?

546 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/15(金) 02:16:08 [ l.hORsfU ]
>>169
嘘予告は楽しいってのは同意ー。一回投下して死にたくなったけど('A`)
なにはともあれGJッス。神業だ。

547 名前:375 投稿日:2006/09/15(金) 19:48:47 [ LfNITzrE ]
皆さん、お久しぶりです。
ネタがまったく思い浮かばず、四苦八苦しています。

>>169
白黒にツンデレ要素あったんですか!
ってなわけでGJです。

なのに息抜きネタは思い浮かぶとは・・・・・・
小ネタの需要があれば投下したいしたいと思います。

548 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/16(土) 01:34:06 [ 8AimCpAM ]
需要あると思いますよ・・。

549 名前:375 投稿日:2006/09/16(土) 12:57:54 [ MNpgiwiM ]

大富豪大貧民 Strongest_and_More

それは、何気ない一言から始まった。
「なぁ、カミやんは日常的にぁ不幸だけど、勝負事になるとどうなるんやろ?」
それを聞いたクラスの方々はおのおの、
「そりゃ、不幸に決まってんじゃん。大覇星祭の競技中でも『不幸にも』ボコボコにされてたし」
「いや、旗男にそれは通用するのか?実際勝負事(おんなのこと)になると信じらんない力を発揮するし」
「女を賭ければ上条が有利か?」
「カミやん運がないから賭け事には弱いような気がするにゃー」
「もしもし?野郎ども、なに勝手に変な妄想膨らましてんのかな?」
「対戦する相手によっても、勝率は変動するかもしれないわね!」
――――――それから、そのネタはあっという間に学校中に広まる。
「おいおい上条の駄フラグ数知らないのか?絶対負けるって」
「しかし上条はあちこちで派手にやってるらしいぞ。女の事で」
「誰か対戦カード組めよ」
ざわざわひそひそ・・・・・・
「上条ちゃんと勝負事ですー?だったら無難なトランプゲームでもいいんじゃないですか?先生、昔から大富豪が強かったんですよー」
「そうですか、分かりました。これで5人、と」

「・・・・・・。私は。やっぱり影が薄い存在。うふふ。うふふふふふふ・・・・・・」

こうして、上条は望んでもいないのに大富豪をやることになった。

メンバー:
上条当麻
土御門元春
青髪ピアス
月詠小萌
インデックス
御坂美琴
御坂妹

ルール:
基本ルール、準基本ルール(11バック、都落ちなし)、派生系なし、4回勝負
ちなみにインデックスには説明済み。

優勝商品:
黒蜜堂特製ストロベリーショートケーキ(5個6980円のお得セット)

優勝して6980円(ここだけ強調)をゲットするのは誰なのか。
果たして上条は大貧民の罰ゲーム(上条限定)を逃れられるのか。
開戦の火蓋が切って落とされた――――――

550 名前:375 投稿日:2006/09/16(土) 12:59:17 [ MNpgiwiM ]
以上です。
誰が勝ち、誰が負けるのかは皆さんの想像に任せます。

551 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/17(日) 10:05:35 [ 1P6V9nyc ]
10000人もの協力者がいる御坂妹が優勝に一票。

552 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/18(月) 01:43:45 [ q2g4Ogfo ]
知られざる青ピの能力が発揮され優勝に一票

553 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/20(水) 08:03:51 [ BYIxEgBA ]
 知っているか?
 上条の不幸は3つに分けられる
 偶然起きた『不幸』
 不注意による『不幸』
 どう見ても羨ましい『不幸』
 この3つだ
 今回は―――

554 名前:375 投稿日:2006/09/20(水) 21:04:25 [ 5uc4L8Qo ]
こうして会場(上条宅)には参加者+司会(吹寄制理)+部外者多数が集結した。
「何でこんな事やんなきゃいけねえんだ……。ってかインデックスと御坂姉妹は関係ねーだろ!人員も四人で十分なのに」
頭を抱えながら上条は言う。
それを聞いた他の参加者と部外者は、
「ぐだぐだ言ってもどうなる訳じゃないんですよ上条ちゃん。先生も久しぶりに闘争心がわいてきましたー」
「カミやん、これは逃れられない運命(さだめ)なんですよ?正々堂々受けてたたなあかんで」
「カミやんからフラグを奪い取るチャンスですたい。テメェの幻想をぶち殺して差し上げるぜい!」
「兄貴ー、頑張れよー。6980円は私達のものだー」
「とうま、とうま。この場合私ととうまどっちが勝ってもケーキを貰えるんだよね?」
「べ、別に私は来たくて来た訳じゃないんだけど妹達(シスターズ)の一人が行くって聞いて何かあったらアレな訳だから(以下略)」
「面白そうなので参加してみました、とミサカは正直に理由を述べます」
「上条テメェ絶対常盤台中のその子らに手ぇ出すんじゃねえぞ!」
「シスター様にも近寄るんじゃねえぞ半邪神!」
「フラグゲッターは大貧民になって罰ゲームでも受けてりゃいいんだよ!」
「ルールはさっき言ったとおり。上条当麻だけ大貧民で終了した場合は特別罰ゲーム。言っておくけど、試合中に何か仕出かしたらどうなるか分かってるわよね上条当麻!」
「うるせえ!テメェら後でぶっ殺してやるから覚悟しとけ!!」
飛び交うブーイングの嵐に、上条は耐えられないといった感じで耳を塞いだ。
こいつらとは付き合いきれん、と彼は心の中で深い溜め息をつく。
そんな上条を無視して吹寄は53枚の山札をよくきり、それぞれに手札を配っていく。
一人大体7、8枚程の手札が揃った。

555 名前:375 投稿日:2006/09/20(水) 21:05:32 [ 5uc4L8Qo ]
時間の都合でここまでです。
いきなり投下してすみません・・・・・・

556 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/20(水) 23:28:59 [ MporxMnk ]
GJ!
いいかんじです!続き・・誰かやら無いかな・・・。

557 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/22(金) 01:18:56 [ 5VC0TtTU ]
「続きが読みたければ自分で作ればいいのよ」って、団長が言ってた。

558 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/22(金) 23:14:20 [ EskgchbE ]
平行世界から最悪の結末を迎え続けた上条やステイル等がやって来る嘘予告を書こうとした時分がありました。
しかし、書いてみるとこれどっかで見た事無いかって感じがぷんぷんして、俺死ね。

559 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/23(土) 22:13:26 [ YR1PDGeo ]
>>535-に刺激されてこんなん受信した。後半三人は気にしたら負けかもしれないw

リド姐「御然らばです諸君!オルソラが泣いている!
    どうしようもないあの淫売が!相も変わらず信仰心のない不良教徒が!」

エリス「バカ 泣くなっていってんじゃない
    ボロボロじゃん
    バカな子だなぁ

    ああ畜生 畜生め
    いい友人だな この子

    この子を守って死ぬんなら
    べつにいい」

シェリー「いってくる。
     約束したんだ。エリスと
     あいつらをやっちまおうって
     だから
     あいつらを
     やっつけちまいに征ってくる」

アレイスター「私の様な魔術師は
       魔術師でいることにいられなかった弱い魔術師は
       魔術師に倒されなければならないのだ!!」

インデックス「のろい!!
やはり魔術は魔術なんだよ
媒介の頑強さに目をつけたのはいいアイデアだけど
これじゃあ!! 不破の無敵術には程遠い
トイレはすませた? 神様にお祈りは? 部屋のスミでガタガタふるえて命ごいをする心の準備はOK?」

神裂「今時、神も信じていないのですか!?
   今だに王室至上主義なんか信じてるカビ臭ェ騎士団共がよォ!!」




土御門「諸君 私は義妹が好きだ(ry」
ステイル「アーーーアーーーー
     アローアロー聞こえるかいーーー
     学園のミナサマ コンニチワーッ アローッ(ry」
アウレオルス「私はアレイスターと同等の…
       否!それ以上の力を(ry」

560 名前:559 投稿日:2006/09/23(土) 22:50:55 [ xl7GTjQc ]
×オルソラ
○オリアナ

何かしょっちゅう間違う…orz

561 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/25(月) 00:22:12 [ cJPBp4Cs ]
ちょ、神裂さんと禁書が戦争狂になってる。

562 名前:375 投稿日:2006/09/25(月) 18:09:31 [ mRHxFp7U ]
(な・・・・・・、何じゃこりゃああああああ!?)
突如、上条の体が驚愕に凍る。
彼の手札は以下の通り。

スペード、ダイヤの3
ハートの8
スペードの11
クローバーの13
スペードの1
ダイヤの2
ジョーカー

(俺の人生史上最高の手札!い、いける。いけるぞぉおおおおおお!!)
結構紛らわしいよねコイツ。
「おっ、どしたん、カミやん?暗い笑み浮かべて。やっぱり『不幸にも』手札悪かったんかいな」
「こういう時はポーカーフェイスで行かなきゃいけないにゃー。これだから勝負時の不幸に慣れてない奴は」
「・・・・・・上条ちゃん、あまり落ち込んではダメなのですー。先生は最強カードが8だった時は平民に収まった事があったんですよ」
「とうま、とうま。私の手札はまあまあ強いから無問題だよ」
「・・・・・・(なんか、哀れよね)」
「お気を落とさずに、とミサカは一応励ましの言葉をかけます」

563 名前:375 投稿日:2006/09/25(月) 18:20:46 [ mRHxFp7U ]
「そんな事で同情を得ようなんて腹黒いわね上条当麻!」
「おっしゃあ!上条の優勝確率がほぼ零%に!」
「フラグゲッターの醜態を見られる確率がほぼ壱百%に!」
もう外野がナニを言おうと構わない。
それらの高い鼻を思う存分へし折ってやればいい。
上条ははスペードとダイヤの3をペアで出す。
「二枚出しだとぉ!?カミやんのクセに生意気な!」
「焦るとダメだぜい。カミやんの事だからこれが最初で最後だにゃー」
青髪ピアスが出さないのを見ると、土御門はにやけながらクローバーとダイヤの5を出す。
「先生はパスですねー。手札が少なくなると二枚出しも難しくなるのですー」
「うう・・・・・・、二枚はないかも」
「じゃあ私ね」
美琴は手札を吟味しながらスペードとハートの9を出した。
おそらくペアは複数持っているのだろう、と上条は適当な推測をする。
(しかしこっちにはジョーカーがあるからペアなんていくらでも作れるのだよ)
彼は心中で笑った。
「では私の番ですね、とミサカはカードを出します」
御坂妹は手札から二枚抜き出す。
どんなカードが来ても余裕綽々ですよ、と上条は手札でパタパタと仰ぎ、

彼女が出したのは2のペアだった。

564 名前:375 投稿日:2006/09/25(月) 18:25:01 [ mRHxFp7U ]
以上っす。
小ネタのはずがかなり長引いてますね。
どっちが主なのか分からん・・・・・・

>>559
数々の幻想が交差して・・・・・・ガボンッ!!(脳爆散

565 名前:とある休みの過ごし方 Oh_Happy_Day(4) 投稿日:2006/09/25(月) 22:07:33 [ VjpWoiq2 ]
天災は忘れた頃にやってくる……と言う事で何の意味も前フリも無く再開。


 いつのものだろうと、早朝の空気は凛として澄み切っているものだ、という期待を裏切らない気候だった。
夏休みが終わったばかりのまだまだ残暑厳しい季節だったが、川原沿いの三人を
照らす太陽も、肌寒さを感じるようなこの時間帯にあってはじんわりと温かい、やさしい光に思えた。
 上条は、インデックスと、途中でであった御坂妹と共に歩いていた。
「いい天気ですね、とミサカは空を見上げて感想を述べます」
「ああ。本当、気持ちのいい天気だよな。早起きは三文の得って奴かな」
「正しくは『早起きは三文の徳』ですよ、とミサカは訂正してみます」
「お、そうなのか? ……っつーか発音同じなのになんで分かるんだ?」
「それは企業秘密です、とミサカはミステリアスな少女を演出します」
「別に演じなくても……それに企業秘密でミステリアスって……」
「演出です、とミサカは強調します。ついでに、女心が分かっていませんよ、とたしなめてみます」
「今のは女心関係あったのか……分からん……」
「諦めたらそこで試合終了ですよ、とミサカは覚えたての台詞で激励します」
某有名漫画の台詞が、目の前の不思議っ娘(ミステリアスな少女です、とミサカはあくまで訂正します)
から出てくるとは思わなかった。
「お前も漫画とか読むのか?」
「お姉様が薦めてくれるものを、少し。なかなか面白いものですね、とミサカは素直な感想を述べます」
「そうか……アイツも結構マメだな。そういえばインデックスも漫画好きだったよな。なあインデッ」
 ックス、とは続けられなかった。どんよりと雷雲色のオーラをまとったインデックスが、
地獄の深淵のような、状況から考えると深すぎる闇をたたえた瞳を上条に向けている。
「あ、あれ……? インデックスさん? どうしたんでせう?」
「どうして……」
 声も心なしか低い。
「ど、う、し、て! 私がいるというのに二人っきりで朝も早よから楽しげに談笑しているのかな!」
「いやいやいや二人っきりじゃないし! 今話題ふったよ! お前ほら、漫画とかアニメとかよく見てるじゃねえか!
今一番はまってるのはあれだ、マジカル、」
「あーーー! あーーー!!」
 声をかき消さんとして両手を振り回す。
「なんだ!今度はどうした!?」
「どうしてそういうことをペラペラ言っちゃうのかな当麻は!」
「だからそういう流れだろ!」
「言われるのはやなの!」
「なんだよもう……分かったよ。じゃあ自分で言うならいいんだろ」
 上条はずい、とインデックスの背を押して御坂妹の前に出してやる。
「あ……」
「……、とミサカは黙して相手の目を見つめます」
 それ黙してないから、と心の中だけでつっ込んでおく。
「や……」
「……や?、とミサカは鸚鵡返しをします」
 インデックスは、蚊の鳴くような声でぼそぼそと呟いた。ほんのり赤くなったうなじを見つめて
上条がなんとなくどきどきしていると、
「……?すいません、聞こえませんでした。これでも聴力には自信が、」
「やっぱり恥ずかしいーーーー!!」
 一年の逃亡生活は伊達じゃない、と言わんばかりの逃げ足で駆けていく。

566 名前:とある休みの過ごし方 Oh_Happy_Day(5) 投稿日:2006/09/25(月) 22:08:31 [ VjpWoiq2 ]
「脱兎の勢い……と、ミサカは先ほどのあなたを見習ってことわざを使って表現してみます」
「余裕だな……ま、白くて小さいからな」
 俺もずいぶんな余裕だな、と上条は一人ごちた。

「ま、そう離れては無いだろ」
「追いかけなくていいんですか? とミサカは問います」
「大丈夫だって。第一、お前いま走ったりするのダメなんだろ? のんびり行こうぜ」
「……はい。と、ミサカは笑みで返します」
 しょうがねえな、という呟きは、すぐ傍で聞こえた。歩き始める。
「あいつの感覚ってのもよく分からんなあ……夕飯時はテレビにかじりついてるのに」
 どこまで行ったかな、という呟きが、一歩前から聞こえる。
「あいつはさ、割と律儀な方で、週刊誌とか立ち読みせずにきっちり買うんだよな。……俺の金だけど」
 みつからねえな、という呟きが、さっきよりも少しはなれたところから聞こえる。
「……すこし、歩調を緩めてくれますか、とミサカは提案します」
 振り向く顔は、三歩先にある。
「あっ! 悪い、ペース速すぎたな。大丈夫か?」
「はい、だいじょ……いえ、少し疲れました」
「そっか、ごめんな。ここらで少し休もうか?」
「いえ。彼女も探さなくてはならないし……そこで、とミサカは提案します」
 何を、と問う前に答えを示された。御坂妹が、ひじの少し上辺りをつかみ、腕全体に体を預けるようにして
密着したのである。
「はウッ!?」
「このまま、歩いてもいいですか? とミサカは許可を求めます」
 さっきよりもかなり近い位置から見つめられて、上条は混乱した。
(落ち着け俺! ときめくな俺! 相手は御坂美琴の妹だぞ! 中学生以下なんだぞ!)
(いや、でもこの胸は姉のものに僅差で勝利して……)
(相手は保育園に行ってる様な実年齢なんだぞ!)
(柔らかい、暖かい……)
(だからやばいって!)
「……だめ、ですか?」
「い……いや。行こうぜ」
 これが健全な男子高校生たる上条当麻の選択だった。

567 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/25(月) 22:10:13 [ VjpWoiq2 ]
久しぶりだけど。今回はここで打ち止め。

568 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/26(火) 00:17:32 [ .LwWGxFY ]
あのさ、前から思ってたんだけどさ


御坂妹ってクローンで14歳の身体まで強制的とはいえ引き上げられたんだよな?
だったら年下と見るよりも双子の妹みたいな扱いになるんじゃないですか?

569 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/26(火) 02:17:21 [ lh3UgFlI ]
>>568
それを踏まえてラストオーダー出したんじゃあないか?
かまちーは。

570 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/26(火) 02:17:59 [ lh3UgFlI ]
>>568
それを踏まえてラストオーダー出したんじゃあないか?
かまちーは。

571 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/26(火) 13:06:05 [ A2RpPbfQ ]
そうかそうか、ミサカに御坂は負けたのか……胸
こー何と言っていいものやらw

572 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/26(火) 14:55:54 [ mLfxYbVg ]
姉の威厳がガタ落ち

美琴「ちょっと、アンタ私より少し大きいんじゃない?」
御坂妹「知りません、とミサカは断定します」
上条「むう……、御坂妹の方が有利なような」
美琴「何ジロジロ見てんのよ!!」
上条「ギャース!」

バチコーン!

573 名前:375 投稿日:2006/09/27(水) 10:14:26 [ DqrIMPOY ]
上条の表情が凍る。
これから来るであろう展開が明確に思い浮かぶ。
案の定、捨て札を切った御坂妹は12で革命を起こしてきた。
「おおおおおお!強い、強いぞ!流石常盤台中学生!」
「我が救世主が降りてきたぜい!」
「あ、上条ちゃんの顔が真っ青なのです。もしかして手札強かったですかー?」
「とうま、とうま。こうなったらとうまが頼りだったんだよ?この役立たず」
「あ、危なかったわ・・・・・・。あそこでアレを出していたら」
「やっぱり罰ゲーム決定ね上条当麻!」
「旗男は勝負中も不幸が付き纏う」
「フラグゲッターの駄フラグが本領発揮」
いろいろと致命的な言葉が飛び交う中、上条は必死に状況整理に没頭する。
(焦るな、落ち着け、まだこっちにはジョーカーがある。スペード3は俺が最初に捨てた。つまりこの場合はジョーカーが最強カードであってまだ絶望的では・・・・・・)
ぶつぶつと、念仏を唱えるように自分を言い聞かせる上条だが、その間に御坂妹は3を出して切り、6であがった。
「ミサカが一番にあがったのでこの場合ミサカは大富豪ですね、と大威張りでガッツポーズを取ります」
無表情Vサインで皆の歓声を受ける御坂妹。
(ぐぅう・・・・・・。しかし、次は俺の番だ!いらないカードを今のうちに捨てておかねば)
上条はいろいろと考えながら最弱カードとなったダイヤの2を出す。
「やっぱカミやんが2持ってたんやな。っつーかやっと出せるわー」
言いながら、青髪ピアスは8を出す。

574 名前:375 投稿日:2006/09/27(水) 10:28:51 [ DqrIMPOY ]
「8切ってトリプル!」
捨て札を切った彼は妙に気合の入った声と共にクローバー、ダイヤ、ハートの1を出した。
「げっ、トリプル持ってたのかにゃー!流石にパスだぜい」
「パスですー。そういえば先生、一回も出していませんね・・・・・・」
「3枚あった!」
何がそんなに嬉しいのか、インデックスははしゃぎながらスペード、ダイヤ、ハートの13を出す。
「くっ・・・・・・、アンタやるわね」
ペアはあってもトリプルはないらしい美琴は、インデックスを睨み付けながらパス宣言をする。
「カミやんはあるわけないから切るでー」
おいい!と上条はヤケクソ気味に青髪ピアスの頭をどついた。
「痛っ!?なんやのカミやん、トリプル持ってるん?」
「いや、持ってないけど・・・・・・。そういう風に『コイツはこういう状況下では絶対にこうだろ』的な扱いはそろそろ止めて頂きたい!」
「現に持ってないんやろ?だったら変わらへんやん」
ツッコミと言い訳の応酬を繰り返す上条達だが、そこへ待ってましたと言わんばかりに吹寄制理が滑り出てきた。
「手を出したわね上条当麻。ここで罰ゲーム(トラップ)発動よ!」
「何それ!?いつから伏せてたのその罠(カード)、ってか野郎同士の日常的行動(どつきあい)も範囲に入るのかー!!」
叫ぶ上条などお構いなしに吹寄大佐の指令のもと、厳選された少数精鋭部隊が彼を締め上げる。
吹寄ルールで上条が試合中に何か仕出かしたら・・・・・・、と言っていたアレをやられるのだろう。
「ちょ、吹寄サン!一試合終わってからじゃないんですか!?」
「ごちゃごちゃとうるさいわね、罰だといっても絞首台行きとか電気椅子送りとか斬首(ギロチン)台とかじゃないから安心しなさい!」

575 名前:375 投稿日:2006/09/27(水) 10:32:26 [ DqrIMPOY ]
「いやそれのどこに安心する要素があるの!?しかも全部死刑レベルだし!」
「とにかく大人しく従いなさい上条当麻!」
いやぁあああぁあああぁ・・・・・・と、上条の最後の断末魔が学生寮に響く。
結果として、上条当麻は一回目は大貧民になった。

576 名前:375 投稿日:2006/09/27(水) 10:34:04 [ DqrIMPOY ]
以上でっす。
朝っぱらからの投下でした。
正直オチが微妙・・・・・・

577 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/27(水) 16:20:00 [ GZ13WvSg ]
>>576
GJ
なるほど、確かに持ち上げてから叩き落したほうがより不幸だ

578 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/27(水) 17:16:02 [ k9qOta2o ]
GJ。
カミやんの敗因は「知り合い(フラグ立て済みキャラ)のみ」だったことかな。

知らない子がいたら
「何故か」隣になり
「何故か」その子の札が弱く
「何故か」その子に有利な札ばかり出し
「奇跡的に」その子が大富豪になってカミやんにフラグを立てられるんじゃないか

579 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/29(金) 01:27:18 [ .rW4pgac ]
「とうま、とうまっ!ほらあれボートだよここにきたらやっぱり乗らなくちゃだよ!」
「はしゃぐのはわかるが少しは落ち着いてくださいって落ちる!引っ張ると落ちるからってふげばごがば」

やってきた異郷の地

「すまないとはこれっぽっちも思わないが忌々しくもまた君の協力が必要でね、上条当麻」
「あ〜、なんですかまた厄介事ですか相も変わらずそれいきますよー、3、2、1、不幸だーっ!」

水の都で叫ばれるお約束

「えへへ、ごめんなさいです。驚かせちゃいましたか?」
「ええそりゃあもう目の前でああ盛大にこけられたらまったくもって。というかそろそろワタクシの上にある荷物をどかしてもらってもいいでせうか?」

新しい出会い

そして

「貴女が、他ならぬ貴女が普通に暮らせるとまだ思っているのかい?ハッハッハ、笑止だ。何ともお笑い、冗談これに尽きる」

一人の少女に忍び寄る影

「―――私は只の機械で良い。只、神の御心のままに働く只の機械であれば良い―――そう、決めたのだ」

ある男の悲しい決意

「あなた達と出会えて、本当に楽しかったです。ありがとう、です」

少女の目から零れる雫

「本当はこんなことはやりたくないんだけど、これも任務でね。今回、僕は完全無欠に君の敵だ」

立ちはだかる魔術師

「ざっけんなよ!テメェ、それでいいのか!それが本当に望んだことなのか!テメェ自身が幸せになれないって思ってんなら、テメェの守りたいものを守れないって思ってんなら!
 その幻想をぶち殺す!」

少年の叫び

次巻 幻想殺しと幸せの女神 (Imagine breaker & (L)on(e)ly happy girl)

とある魔術の11巻嘘予告

580 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/29(金) 20:59:53 [ .rW4pgac ]
SS思いついたんだけど途中で投下した方が○?それとも書き終るまで投下しないほうが○?

581 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/29(金) 21:03:02 [ yy01bX0Y ]
本気でラストまで書ききる気なら今すぐGO!

582 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/29(金) 21:35:20 [ .rW4pgac ]
三十分程置いてレスあったらそれに従おうと思っていたが五分かからずレスがあるとは。
ではとりあえずほんの最初で書きあがってるところだけ。
内容は上条と一方さんの騒がしい一日。

583 名前:とある二人の一日 投稿日:2006/09/29(金) 21:36:08 [ .rW4pgac ]
第一章 Five&Zero
午後十時四十五分

そもさん
「なンで俺がこいつと一緒にいなきゃなンねーのかそこんとこわかンねーンだけどよォ」
「いやそれは俺も聞きたいっていうかこの状況はなんなんですかはいちょっと説明しなさいそこのちっこいムスメさん!」
と学園都市最強の超能力者と学園都市きっての旗男がわめく。
せっぱ
それに対するとある幼女のお答え。
「その後の二人がちょっとだけ仲良くなってみてほしいかなーと思ってたことを実行に移してみたんだけどとミサカはミサカはにっこり笑顔で説明してみる」
欠陥電気の少女曰く。
「一体どうなるかというのは私自身とても興味がありますとミサカは期待を込めてあなた方を見ます」
続けて白い修道服少女が言うには。
「あれ?とうまったらいつの間に男の人を命がけで救ったの?いっつも女の子ばっかりだから珍しいんだよ」
「いや、いやいやいやいやちょっと待ってくださいインデックスさん!?その激しく誤解を招きやすい発言はどうかとカミジョーさんはこれ以上変な誤解を招いてたまるかと必死の思いを込めながら告げますのことよ?」
ていうかそれ以上誤解を招くような発言しないできちんとお行儀良く静かにしていてください!と女性陣の針のような視線にさらされながら上条が叫ぶ。
「なンだなンだなンだァ、こいつ随分と愉快な口調で喋るじゃねェかってこのクソお子様さん!一杯面白かろうとテメェ様の言語能力取り上げなさって遊ばないでないんじゃねェとのたまい申し上げてんですよ!」
疾く口調を元にお戻しやがりなさってください!とおかしい口調のまま一方通行が叫ぶ。
響き渡る二つの珍口調。互いにそれを聞きながらも、二人は何故こんなことになったか、ほんの四十分程前を思い出していた―――

584 名前:とある二人の一日 投稿日:2006/09/29(金) 21:36:35 [ .rW4pgac ]
午前十時五分 上条宅
「とうまーとうまー私お腹減ったかも」
「朝御飯に三杯もおかわりしたのにもうお腹減ったと言いますかこの食欲シスター!あなたは『居候 三杯目には そっと出し』という至高の名言をご存じないのか!っていうかそろそろ上条さんちの台所事情が火の車であるということをわかって欲しい!」
月末となると変わらず繰り返されるお馴染みの会話である。さらにこの後、『食欲シスター』という音波兵器により凶暴化した空腹強襲エンゲル係数急上昇怪獣シスター・インデックスと最終食費防衛人型決戦兵器上条・当麻との壮絶な戦いが繰り広げられるのだが、今回は多少違ったようである。
ピンポーン
と、ちょうどインデックスが上条の頭に食らいつこうと身構えた直後に、インターフォンが鳴る。この機会を劣勢であった上条統合幕僚会議が逃すはずはなく、決戦兵器上条の一時撤退を満場一致で決定する。
「ほら、インデックスお客さんだお客さん。というわけで家主さんはちょっとその対応に出ますのことよ?」
食欲少女の凶暴化も一時沈静、だがその体内にまだ怒りが超新星爆発並みに溜め込められているのは一目瞭然であり、これから与えられる頭皮へのダメージを考えつつも一筋の希望にすがって上条はドアを開ける。そこにいたのは。
「こんにちは、とミサカは誠意を込めて挨拶します」
御坂妹であった。

585 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/29(金) 21:37:48 [ .rW4pgac ]
とりあえずここまで。続きが早く書けるよう尽力します

586 名前:■■■■ 投稿日:2006/09/30(土) 22:40:27 [ JddhYVuU ]
GJ!
いろんな小ネタが良かったぜ!

587 名前:531 投稿日:2006/10/08(日) 00:28:36 [ LjdjcRzg ]
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
息が苦しい。肺が傷ついているのか、呼吸の度に血を吐いてしまう。
「…シスター・ハインケル、は」
――死んだのだろうか。
そんな言葉が頭を過ぎったが、直ぐに否定する。
あの程度で彼女が死ぬはずがない。それは自分が一番よく分かっているつもりだ。
「逃、げな、い、と…っ」
立ち上がり、踏み出そうとする。が、右足と左手の感覚が無い。足が出せなかった。
更に倒壊時の爆音にやられたのか耳は遠く、額からの出血に染まった紅い視界はぼんやりとした世界しか示してくれない。

「少し、無茶、しちまい、ました、か…、ね」
         ・・・・・・・・・・・・・
今回、アニェーゼはわざと安全圏を作らなかった。
自分の周囲だけ崩れなくても結局崩壊するのだから意味は無いし、何より二丁の銃のみで数多の魔術師を屠ってきた相手に生半可な罠は通じない。
彼女の逃げ場を無くすには、これしかなかったのだ。

と。

がらり、と音がして。

アニェーゼの紅い視界に、黒い女性が現れた。
一見して重傷だと判る。多分、このままだと助からない。
(…それは、お互い様、ってやつですか)
傷だらけで、構えるのも辛そうで、手は震えていて。
それでも彼女はアニェーゼの頭を正確にポイントする。
「…ふ、ふふ。」
笑いが漏れた。
「あ、はは。ははははは…っ」
逆流した血で息が詰まる。たが、そんなことは大した問題ではない。
「あははははははははっ!」
「ふふ…ははは」
血まみれで笑うアニェーゼに、応えるかのように。
「あはははははっ!」
「ははははははっ!!」
哄笑。
「「あーっはっはっはっはっはっ!!!」」
何が可笑しいのかは分からない、そんな事はどうだっていい。
師弟関係にあった筈の二人は、涙で顔をぐしゃぐしゃにして、それでも笑う。悲しそうに。哀しそうに。

そして。

「くっ、ははは…。…さよなら、シスター・アニェーゼ。地獄で会おう」
「残り数十分の命、せいぜい大事に生きやがりなさい、シスター・ハインケル。」
――ドン、という音と、紅い視界の真っ白な背中。
それを最後に、アニェーゼ・サンクティスの意識は暗転した。

588 名前:531 投稿日:2006/10/08(日) 00:29:34 [ KMWYrnVk ]
続かないって言ったのに酒の勢いで書いてしまいましたorz
結局名前もハインケルに。流石に駄目だろと思ったら仰って下さい。書くか分からない続きで変わるかも。

ああ…浪人生活で何してるんだ俺w



ちなみにヘルシングな禁書だと
アニェーゼ「有象無象の区別なく 私のメイスは許しやしません」
上条「嫌だ!そんな頼みは聞けないね!!」
かなw

589 名前:169 投稿日:2006/10/08(日) 23:21:16 [ NbMZvO7w ]
                    ◇   ◇

「………………あ。」
 と思った時には、サーシャ=クロイツェフは一人だった。
 夕陽が差し込み、その色に染まった廊下。
 さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返った校舎の片隅に、彼女はポツンと立ち尽くしている。
 置いて行かれたのか、はぐれたのか、知らぬ間に自分で抜け出していたのか。何にしても、耳を澄ましても悲鳴や怒号が聞こえないくらいには騒ぎの中心から外れてしまったらしい。
 さてどうしたものか、とサーシャは右手側、窓のある方を向く。
 ガラス越しに見える校舎の位置関係、予測される地面からの高さなどから、今いる場所が旧校舎の二階であると見当をつける。劇の練習のために何度も訪れている内に、それくらいは簡単に出来るようになっていた。
「……独白一。複雑だ」
 小さく肩が落ちた。
 何をしているんだろう、という思いはある。
 彼女は重要な、それこそ十字教の三大宗派が動くような任務でこの街に来たはずだ。それなのに、いつの間にかやるべきことが成果の出せない演劇の練習をしたり半裸の男を大勢で追い掛け回したりすることにすり替わっているのは何故だろう。
 いいや。後者はともかく、前者には明白な理由があった。任務上必要なことだと彼女が判断したからだ。
 演劇『シンデレラ』という舞台を利用して、さまよう魔術『灰姫症候(シンデレラシンドローム)』の捕獲術式を組み上げる。
 いくつか用意していた術式は、インデックスの知識で大幅に強化することが出来た。あとは数百人規模の共通イメージがあれば、学園都市全域とは言わなくてもかなりの広範囲に探査・捕獲の魔術をかけられるはずだ。だから求めるイメージの純度を上げるための練習は大切なことで。だから努力を怠ってはいけないのであって。だから。だから。だから。
 ――――途中から言い訳の羅列になっていることには気付いている。
 この作戦も、術式の強化も、全てはサーシャが言祝の誘いを受けた所から始まっている。もしあの時演劇への参加を断っていたのなら、禁書目録の協力の下、また別の作戦を立てていただろう。
 そうできなかった理由なんて、ない。
 任務の成功だけを思うのなら、こんな手間ばかりがかさむ手段を選ぶ必要はなかった。インデックスに頼めば、もっと要領がよく成功率も高い作戦をいくらでも考え付いてくれただろう。
 なら、そうと分かっていて、それでもこの道を選んだのはどうしてだろうか。
 本当に、どうして。
 迷う心が身を動かし、答えを求めるように首(こうべ)をめぐらせる。
 わかりやすい答えなんて、当たり前だが見つからなかった。けれど、
「――――くっそー。どこに隠れたかみやんくん、って、あれ?」
 近くにあった非常階段を下って、彼女の悩みを作った張本人が現れた。

590 名前:169 投稿日:2006/10/08(日) 23:22:02 [ NbMZvO7w ]
 二人は被服室にまで戻ってきた。
「いやーまいったまいった。ちょっとくらい離れても音声増幅(ハンディスピーカー)で指示は飛ばせるからいいかなーとか油断してたら思いっきりはぐれちゃうし。肝心のかみやんくんも見失っちゃうしでもうどうしたもんだかって感じだったのですよ」
 一度購買まで降りて買ってきた缶入りのレモンティーをクピクピ飲みつつ、言祝が愚痴った。適当な椅子に向かい合って腰掛けながら、指揮官がこれでは残された者達は相当混乱しているだろうな、と職業的意識で考えてしまうサーシャである。同じくアップルティーの缶を口に運んで、
「問一。それではここで結果待ちを?」
「望み薄だとは思うけどね。かみやんくん、あれでこういうの結構慣れてるから」
 サーシャは、そう、とだけ答えた。正直、あまり興味はない。
(思考一。それよりも)
 静寂に包まれた教室で、劇に関して最大の権限を有する監督の少女と二人きり。机に伏していたはずの年長の女子は、戻ってきたときにはいなくなっていた。邪魔する者はいない。邪魔する物はない。
 この状況ならば。
 胸を締め付ける悩み。それを解決する最も簡単な――安易な――方法が使える。
 言葉一つで終わらせることが出来る。
 それは、もしかしたら逃避かもしれず、もしかしたら裏切りかもしれない、そんな言葉だったけれど。
 躊躇いは刹那。喉が震えて声を生む。
 しかしそれが外気に放たれるよりも早く、目の前の少女が口を開いた。
「かみやんくんの話をしよっか」
「…………は?」
 突然といえば突然の台詞に、サーシャの目が点になる。
 言祝は何故かそれを嬉しそうに見つめて、空になった缶を近くの机の上に置いた。
「さっきの騒ぎのことだけど。驚いた?」
「回答一。それは、まあ」
「うんうん。分かる分かる。でも誤解しないで欲しいんだけど、あの人達も本気でかみやんくんが嫌いってわけじゃないのですよ」
「………………、」
「あ、信じてない目だねそれは」
 仕方ないだろう、とサーシャは思う。誰だって、あの強烈に歪みまくった悪意の渦に巻き込まれれば、同じ感想を持つに違いない。
 視線で疑念を容赦なく伝えると、言祝は表情にわずかばかりの真面目な色を加えた。
「でも本当。変な言い方になるけど、皆、嫌いだから嫌ってるんじゃなくて、嫌うだけの価値があると思っているからそうしているの。これって、実はものすごいことなんだよ?」
 え? とサーシャは心の中で首を傾げる。
 彼女の言葉の何一つが理解できない。
 嫌うだけの価値とはどういうことか。そして、それが「すごいこと」だというのは。
 言祝は、まるでそれがこの世の常識であるかのように淡々と告げた。

「だって、あの人、無能力者(レベル0)でしょ?」

 サーシャは何も言い返せない。彼女の住む世界には決して存在しない判断基準であるがゆえに。
 しかし、言祝にとってはそれこそ日々の挨拶と同じくらい身に染み付いた考え方だ。
「同じ符丁(ランク)でも、つちみーとかみたいに一応何らかのチカラの発現が認められているわけじゃない。胃が膨れ上がるまでお薬を飲んで、神経が焼き切れるまで電流を流してもスプーン一本曲げられない正真正銘の無能力者。この街じゃあね、そんな人は嫌われるどころか見向きもされないの。専門教育の時間割り(カリキュラム)からは外され、奨学金は削り取られ、そのうち教室にいることすら耐えられなくなって裏通りの不良に落ちていく」
 一度言葉を区切り、
「もちろん全員が全員そうなるとは限らない。でも、私みたいなギリギリの弱能力者(レベル1)でも『まあそんなもんでしょ』って意識は確実にあるのよ。人とは違うチカラ、人とは違う世界。考え方の相違なんて人間の歴史そのものかもしれないけど、この街のこの格差ってのは馬鹿馬鹿しいくらい絶望的で間抜けなくらい一方的なの」
 決められた時間割りをこなせば、理論上は誰にでも芽生えるはずの超能力。
 誰にでも、ということは、そこに至れぬ者はもはや“誰でもない”ということに直結する。
 誰でもない誰か。
 生きていようがいまいが、世界に全く影響を及ぼさない“何か”。
 生きていようがいまいが。
 世界に全く関わることのない“何か”。
「――――でも」

591 名前:169 投稿日:2006/10/08(日) 23:23:15 [ NbMZvO7w ]
 でも。
 赤い少女は口の中でその二音を繰り返す。
 黒髪の少女は口元をわずかに弧にして、
「上条当麻という人は、そうはならなかった。それどころか、いつの間にか当たり前のように私達の輪の中にいた。当たり前のように、私達は彼という個性を認めていた。――当たり前のように、私達は友達になってた」
 絶望的で一方的な格差なんて、全て無視して。
 どうしようもないだなんて、そんな言い訳を誰も彼もから奪い取って。
 それはまさに、幻想の殺し手。
 サーシャは知っている。土御門元春から聞かされている。あの少年の右手には、まさしくそれを顕すチカラが備わっていると。
 だが、少年はそのチカラを使わずとも、無能力者の符丁(レッテル)という幻想を殺してみせた。
 あたかもその二つ名は、彼の持つ特異な右手ではなく、彼の生き方そのものに捧げられたのだとでも言うように。
 と、ここで言祝は肩の力を抜いて、
「まあ、大げさに言ってみたけどさ。要するに超能力とか全然関係なしでかみやんくんは人気者ってことなのですよ。なんだかんだで、皆、かみやんくんのことを認めてる。ちょっとくらいの喧嘩じゃ揺らぎもしないくらいに、ね」
 ただし、だーれも本人には教えてあげないんだけど、と言祝は悪戯っぽく付け加えた。
「…………、」
 サーシャ=クロイツェフは感嘆しながら聞き入っていた。手の中の缶のことも忘れて。
 これは、言ってしまえば共通の友達を話題にした世間話でしかなくて、なのに語られる言葉の一つ一つが、自分にとって必要なものであると思える。
 もう少し。
 もう少しがあれば、何かが変わる気がした。
 理由(わけ)もなく、理由も分からず、ただそれを待たなければならないとだけ直感した。
 それが正しいのか、そうでないのかすらも分からないままに。
 数呼吸分の空白。それだけを挟んで、言祝はまた話し始めた。ブラブラさせていた足を組みなおして、
「で、そんなかみやんくんなんだけど。なーんか夏休み明けてからちょっぴり雰囲気変わった気がするんだよね」
 サーシャは即座に食いついた。
「問二。変わったとは、一体どのように?」
「うーん……」
 言祝は虚空を睨んで考え始める。適当な言葉が見つからないのか、それとも単純に自分でも理解し切れていないのか。
 たっぷり三十秒。それだけ待って、ようやく出てきた台詞はこんなものだった。

「――――ちょっといいことあったんじゃないかな……って感じ」

 唇は続ける。
「かみやんくんがすごいっていうのは、今話した通り。それに本人は気付いてないんだけど――だからかな、一学期までのかみやんくんにはちょっと自信なさげな所があって。つちみーや青ピンくんとかと馬鹿やってる時は普通なんだけど、ふとしたはずみに無力感に苛まれているみたいな。ああやっぱり自分は無能力者なんだなって勝手に考えてそうな顔してる時があったのですよ」
「推測一。ではそれが」
「うん。新学期が始まってからはさっぱり。まあいきなり自信満々の天狗さんになっちゃったって訳じゃないけど。そこはかとなく漂ってた諦めムードはなくなってたかな」
「…………、」
 サーシャは考える。
 考えて、そして思い浮かんだのは一つだけ。
「問三。それで何故『いいことがあった』と推測したのか」
 返答は、すぐにはなかった。
 ただ言祝は、机に肘をつき掌に顎を乗せて、分からない? とでも聞き返すかのような視線を送ってきた。
 じっと。
「…………、」
 サーシャは考えた。
 とても真剣に考えた。
 考えて、考えて、考えて――――分かった。
 分からないということが分かった。
 分からないから……分かりたいのだと、分かった。
 目でそう伝えると、黒髪の少女はチェシャ猫みたいな笑顔を浮かべる。まるで誰かを褒めてあげたくてしょうがないみたいな、そんな表情。
 その誰かが誰なのか、サーシャには見当がつかなかったのだが。
 言祝栞はそんな幸福そうな笑顔のまま、
「たぶんね、たぶんだけど。かみやんくんは、何かが出来たんだと思う」
 それはもしかしたら、彼が望んだことではなかったのかもしれないけれど。
 それはもしかしたら、彼でなくてもよかったのかもしれないけれど。
「でも、それでも。どんなに悲しくても。敵うということは、叶うということだと。それが嬉しいことなんだと。気付くきっかけになったんじゃないかなって、私は勝手に想像してる。……本ばかり読んでるとね、どうしてもそんな風に思っちゃうんだ」
 言祝はすっと目を細めた。

592 名前:169 投稿日:2006/10/08(日) 23:23:44 [ NbMZvO7w ]
 きっと、手に入れた物自体は特別でも何でもないもの。
 しかしとある少年にとっては、歩いて月にたどり着くよりも困難であったこと。
 この街で、誰よりも低い位置にいると感じてしまう刹那。
 当たり前の世界が遠くに思える。それでもそこに立つために必要だったはずの何か。
 やり遂げたという、小さな誇り。
 彼女は、言祝栞は、サーシャの瞳を覗き込むように身をかがめて、
「あなたは、どう?」
「――――――――!」
 息を呑む。体が凍る。
 ただ心だけは、待ち望んでいたものが来たのだと理解していた。
「きっと、何かをやり遂げて、上条当麻という人は少しだけ変わった。てことは、何かを“やろうと思った”のは変わる『前』のその人だよね。その気持ちだけは絶対に最初から持ってたんだよ。上条当麻という人はそれを大事にした。だから、やり遂げた。サーシャちゃん。あなたはそんな人のことをどう思う? ううん、“そうしない人のことをどう思う”? 敵わないと思い込んで叶えられるはずのことから逃げ出す人を、本当はやりたいと思っているのにその気持ちを蔑ろにする人を、どう思う?」
 ぶつけられる言葉は、それだけならばただの問いかけにすぎない。
 しかし、まさに逃げ出そうとし、本心に気付かない振りをしていたある少女が受け取ったのなら、それは明らかな糾弾の攻撃だった。
 ――要求一。私を役者から外して欲しい。
 そう言おうとしていた少女にとっては、この上ない責めの言葉だった。
 けれども。
 だけれども。
 真剣で、優しいまなざしで待っている人の口から放たれたのなら。
 それは言祝ぎだった。
 風を震わせ心に届く、果てしなく温かな祝福(メッセージ)だった。
「……………………と、」
 問四、と言いかけた喉を押し止める。
 行動宣言(コマンドワード)。ロシア成教が構築した自らの意思を口頭の文句で強める自己暗示の話法。
 呼吸と同じくらいの感覚で使ってきたこの技術に、今は頼るべきではないと思った。
 結果、意思は弱くなってしまうのかもしれないけれど、
「私は、」
 これから強くなれるのなら、今だけは。

「私は、シンデレラをやりたい」

 問いかけからは逸脱した返答。
 しかし、言祝は嬉しそうに手を伸ばして、小さな赤い少女の頭を撫でた。
 出来のいい生徒を褒める教師のように。または、賢い妹を誇る姉のように。
 ようやく気付いたねと、言祝ぐように。
 優しい感触を額に感じながら、サーシャ(シンデレラ)は思う。
(やり遂げれば……強くなれる)
 そうして見せた人がいる。
 この時、サーシャ=クロイツェフは上条当麻という人と初めて話がしたいと思った。


 さて、その頃。
 どういう経緯があったものか、上条当麻は旧校舎の外壁、ちょうど被服室の窓の下辺りに張り付いていた。
 制服は微妙に焦げたり、裾に金属矢が刺さってたりしていたが、壁の表面が僅かに突き出ただけの危うい足場に冷や冷やしながらも彼は一通りの話を聞いてしまっていたのだ。
 とても貴重な話だった、と思う。
 記憶を失う前と、失った後の自分の違いに気付いている人がいたというのは恐ろしくもあったけれど、
 もしも言祝の言う通りであったのなら、自分は記憶は失くしてもその時得たものは失くしていなかったのだと、そう信じることが出来る。
 そして何より、
「まあ……あれだ」
 ここからどうやって降りようとか、そんな些細なことは横に置いといて。
「……今晩はロシア料理のフルコースにするかな」
 清々しくニヤニヤしながら(実際そんな顔なのだからそうとしか表現しようがない)、上条は夕飯のメニューを決定した。


 さてさて、その夜。
 激しく間違ったロシア料理の数々を得意気に並べるシェフに地元人の怒りが爆発し、話し合いの機会なんて吹き飛んでしまったのはもはや言うまでもない。

593 名前:169 投稿日:2006/10/08(日) 23:24:43 [ NbMZvO7w ]
 行間 二


 サーシャ=クロイツェフと言祝栞が被服室で話し合っていた頃。

「見失った」
「見失ったわね」
「見失ってもうたなー」
 姫神秋沙、吹寄制理、青髪ピアスの三人は新校舎一階の非常口で途方に暮れていた。
 陣頭指揮を執っていた監督がいつの間にかいなくなるという非常事態が発生したため、上条当麻捕獲部隊は混乱の極みに陥った。捕獲対象を本格的に見失ったこともあり、以上に膨れ上がったテンションが暴動に変わる前に吹寄が部隊の解散を決めたのだ。
 それから残ったこの三人でしばらく捜索は続けていたのだが(対象は上条、言祝、これまたいつの間にか消えていたサーシャの三名に増えていた)、何の成果も上がらないままにそろそろ下校時刻である。居残り上等ではあるものの、無駄に時間を費やしていいわけもない。
 吹寄は腰に手を当てて、
「とにかく、一度被服室に戻りましょうか。もしかしたら誰か帰ってるかもしれないし」
「そやねー。もう他に探す所もないしね」
 廊下にへたりこんでいた青髪ピアスが尻をはたきながら立ち上がる。
 姫神は、ふ、と何も考えていないようで何かを考えていそうな顔をして。
「まあ。いざとなれば。あのドレスを着れそうなのはもう一人いるし」
「それもそうね。じゃあ戻るとしましょうか、姫神さん、青髪」
「ちょ、ちょい待ち。ドレス云々は聞き返すのも怖いからあえてスルーするとしてもや。あたかもそれが苗字のように呼ぶんは止めてくれへん?」
 しかしロング黒髪ズは鮮やかにこれを無視。いじけオーラを増量する青い髪にピアスの少年。
 何気に疲れた様子で廊下を歩いていると、吹寄が不意に立ち止まった。
「……あら?」
「どうしたん?」
 青髪ピアスが尋ねる。
 見れば、吹寄は廊下の先をじっと見つめている。姫神は吹寄の視線を追ってみた。
 そこの廊下の突き当りにあるのは、昼休みなどに言祝が布教に励んでいる場所。
 図書室だ。
「――で。どうしたの吹寄さん。借りてた本の返却期限でも思い出した?」
「いえ、今借りてる『この通販で買ってはいけないを買ってはいけないを買ってはいけない』の返却期限は一端覧祭明けなんだけど……」
 吹寄制理は首をひねって、
「……こんな所に居る訳ないわよね。公欠でどこか行ってるはずだもの」

 一端覧祭まで、残り六日。

594 名前:169 投稿日:2006/10/08(日) 23:25:33 [ NbMZvO7w ]
嬉しいこと、悲しいこと、色々ありました。169です。
湿っぽく始めてみましたが、今回はこれまでにないほどシリアスな話なのでまあよろしいかと。では以下いつものノリで。

いやはや授業が始まったら筆が進む進む(マテヤ)。残り一章なのでこのまま突っ走りたいと思います。
文才の無さ、語彙の乏しさに悪戦苦闘する毎日ですが、楽しいのだから止められません。
ただし>>531さん。浪人中は流石に止めとくべきかと(一浪経験済み)。合間合間にルーズリーフにでも書き留めておいて、桜が咲いたら一気に投下するのが良いと思います。
ヘルシングは改変ネタぐらいしか知らないので、個人的にはものすごく楽しみなのですがっ。

さて、前回お話した嘘予告が一応出来上がったので投下してみようかと。
これが「嘘」予告のまま終わるかマジ予告になるかはぶっちゃけ気分次第です。
でもやるならやるで「灰姫」と整合性とらなきゃいけないし……悩める時間はそんなにないですな。
じゃ、二本続けてどうぞ。



とある魔術の禁書目録 Missing PageⅡ 『とある二人の電撃作戦(エレクトリックミッション)』

 知り合い以上友達未満。そんな微妙な間柄。
 インデックスと御坂美琴。
 ある日街中でバッタリと出会った二人は、たまたま入り込んだ路地裏で『とんでもないもの』を発見してしまう。
 話し合った末、インデックス達は上条当麻には内緒で“それ”の世話をすることにした。
 そこから始まる二人三脚、いや、一脚にすらなっていない悪戦苦闘の子育て(おままごと)。
 ――だが、そんな幸せな時間は長くは続かなかった。
 二人が見つけた『とんでもないもの』を狙って、学園都市の『外』から超電磁砲の最悪の天敵が帰還した……!

 迷子の仔犬(ストレイパピー)、避雷指針(ライトニングポース)、
 そして、禁書目録(インデックス)と超電磁砲(レールガン)。
 全ての出会いが交錯する時、新たな物語が始まる――!



とある魔術の禁書目録 Missing PageⅢ 『とある命の最終回答(ファイナルアンサー)』

人形使い(パペットマスター)。
才人工房(クローンドリー)。
ハル。

そして、『■■■■■■(タイムマシン)』。

科学と魔術が交錯し、一つの歪んだ願いを産む時、上条当麻の物語は唯一絶対の答えに向けて動き始める――!


――――あの笑顔(はな)の美しさを、
――――きっと、俺は忘れていなかったんだ。

595 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/09(月) 00:01:13 [ rHzUJWDc ]
169氏GJ!いやー、新刊出たしこっちも更新されてるしなんともハッピー。
でもまだ新刊を読んでないワナ。でも今日(昨日だねもう)は二度美味しい日でした

596 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/09(月) 00:16:36 [ 4UbUEM5o ]
>>169
GJ!続きキター。作品の禁書感が大好きですよ。
新刊を読んで禁書分を補給したら一体どうなるやらw

597 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/09(月) 01:45:03 [ EWAMswYI ]
くやしい……っ! でもGJしちゃう……っ!

後、光速でSSまとめを更新した人乙。

598 名前:375 投稿日:2006/10/09(月) 17:16:04 [ wNZl14wQ ]
169氏GJ乙です!シリアス話大好きです。
このまま突っ走ってください!

本編の書き上げ&設定に苦戦していますが、とりあえずほんの少しだけやります。
・・・・・・あれ?どこまで投稿しましたっけ?(爆)

599 名前:375 投稿日:2006/10/09(月) 17:17:07 [ wNZl14wQ ]
ぶるぶると、震えながら答える美琴に上条は少し考え、
「・・・・・・、そっか。まぁ、あいつらなら多分、大丈夫だ。・・・・・・闇雲に探しても、
あいつらは見つからないだろうし・・・・・・何より、あいつらは一人の方が強い」
自分でも驚くような、冷静な決断。
それは、仲間を信頼することができるからこそ下せたのだろう。
そして何より、この世界での支配者(マスター)は正体不明の魔術師だ。
ここでむやみに動くとますます奴の思う壺だろう。
当然、上条は消えたインデックスたちのことを全く心配していない訳ではない。
彼女らが同じような状況に置かれたときを想定しての行動。
上条が今出来ることは、彼女らの信頼を裏切らないようにすること。
震えが止まり呆然としている美琴を見て、
「とりあえず、――――――」
と上条は言いかけ、
ふらりと、上条の体がバランス感覚を失ったように傾く。
「ちょ、アンタ!?」
美琴は反射的に立ち上がり、上条の肩を掴んで支える。
「っつ・・・・・・、悪い、御坂。さっきので、ちょっとやられちまった」
「や、やられたって・・・・・・」
そこで美琴は、上条が右脇腹を抑えている手とYシャツが血で赤く染まっているのを見た。
さっきまで影に隠れるように見えなかったので、今までまったく気付かなかったのだ。
素人目で見てもかなりひどい状態だと分かるくらい出血していた。
しかし、そんな状況でも上条は笑っていた。
心配しなくてもいい、とでも言うように。
「・・・・・・、アンタ、何で笑っていられるのよ。ちょっと、横になりなさい」
「え?ちょ、御坂!?」
抵抗する上条をそのまま力ずくで仰向けに倒す。
「痛あがぁっ!!」
「ちょっと、おとなしくしないと失血死するわよ」
「いや、ちょ、何する気ですか!?」
上条が少し大人しくなったのをいいことに、美琴は傷口を押さえている上条の手を退かす。
うぐぉ!?と悶える彼を無視して美琴は傷を見る。

600 名前:375 投稿日:2006/10/09(月) 17:20:08 [ wNZl14wQ ]
皮膚と肉が横一線に切られ、溢れる血は止まる気配が無い。
思わず目を逸らしたくなる光景だが、美琴はその傷口に掌をゆっくりと当てた。
「あの・・・・・・、美琴センセー?一体何をしようとしているんでせう?」
「そういえば、アンタのその右手の能力ってここまで作用しないわよね?」
「聞けよ!見ての通り異能力で傷付けられたから作用しないと思うよ!」
「うっさい馬鹿!そんなに叫んでも大丈夫な状態なわけ!?アンタはどっかの少年マンガの主人公
か!!」
「・・・・・・、それで。何をしようとしてんだ?」
「何って、こうすんの」
以前も聞いたような美琴の言葉に大変嫌な予感がした上条。
「おい!てめ、まさか――――――」

案の定、傷口を押さえている美琴の掌からバチンと凶悪な音が聞こえてきた。

「――――――――――――――――――――――――ッげばぁがべ!!!???」
全身を駆け巡る激痛に叫ぶ上条。
「ちょっと、暴れないでよ!治療に専念できないじゃない!!」
最早聞いてません。
「・・・・・・」
それから暫くすると上条は死んだようにピクリとも動かなくなった。
「はぁ。気絶した・・・・・・、か。ま、動かない方が都合がいいけどね」
最後の言葉を聞き、上条の意識は急速に闇に落ちていった。

601 名前:375 投稿日:2006/10/09(月) 17:23:12 [ wNZl14wQ ]
以上です。ここでいいはず・・・・・・
また本編とは全く関係ないネタが思い浮かんでしまったorz

602 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/09(月) 22:02:43 [ u57GUCZg ]
>>588

ちょwそれ上条死ぬwww
アンデルセン神父とリドヴィアってヤバイくらい素敵な組み合わせだなぁと考えてしまった。

603 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/19(木) 06:24:43 [ T3Yg9lfY ]
PCの中を整理していたら懐かしいモン発見。折角だから投下。

604 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/19(木) 06:25:56 [ T3Yg9lfY ]

 眼前に右腕を突き出し、グッと拳を握りこむ。
 目の前には一人の男――否、少年。
 
「それが、異能の力(システム)だっていうのなら――」

 息を一つ深く吸い、吐き出す。

「――神さまだって、壊(ころ)してみせる」

 狙いは正確。その顔面を打ち抜く勢いで右拳を突き出す――!

 ――がちゃっ

「とうまとうまー……って、何してるの……?」
「なばっ……イ、インデックス!?」
                                          、 、 、 、 、 、
 後ろを振り向けばそこにいるのは純白のシスター。少年、上条当麻は鏡に向かって突き出していた拳を引き戻し、あわてて釈明を始める。

「いや、こ、コレは違うんだ一種の精神的安定法と言うかいわゆる心理学に基づいた一つのリラクゼーション方であって決して一人で漫画の真似事なんかをなんかをして喜んでいたわけではないんですよいやいや流石にこの歳になってそれはねーって」
「とうま、テンパリすぎて何言ってるか分かんない上に墓穴を掘っているんだよ」

 問答無用ですかそうですか。

「ううん、いいんだよとうま。構ってあげられなかったわたしが悪いんだよね。例えとうまが一人で鏡に向かって小説の主人公の名台詞をつかって遊んでいても、わたしはそんなとうまを受け入れてまた一つ大きくなって見せるから」
「頼むから人の話を聞いてください!」

 ぐぎゃあ! と吠える上条を無視し、インデックスは慈愛の笑みを浮かべて続ける。

「ほらほら、今度はわたしも一緒に遊んであげるから。とうまは何がしたいのかなー?」
「……う、うわーん!」

 子供をあやすようなシスターさんの眼差しに耐え切れず、上条は扉(じゆう)に向かってダッシュダッシュ。わりとマジ泣きだ。 

「と、とうま、どうしたんだよ!? とうま、とうまー!?」

                                                                            おわれ

605 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/19(木) 17:10:13 [ D0eZ.iHY ]
吹いたwww
あの長セリフはきちんと練習した成果だったんだな当麻さんwww

606 名前:603 投稿日:2006/10/20(金) 04:35:50 [ 3gdQONHo ]
>>605
笑ってくれて有難う。
やっぱりこういう馬鹿話はそう言ってもらえるのが一番嬉しいです。

さてさて、どうせだからPC内に眠りっぱなしの小ネタをもう一本投下しますかね。
「ネギま!」6巻のスクナ戦に当麻が居たらどうなったかなー、という妄想の元に書きなぐりました。

607 名前:603 投稿日:2006/10/20(金) 04:36:38 [ 3gdQONHo ]

「無駄だよ。例えどれ程君の右手が強力だろうと、触れさえしなければ何もないと同じだ。
 ――君は、何も出来ない」

 白髪の少年は言う。
 お前は無力だ。そんな大層な代物を持っていても何も出来ない。宝の持ち腐れにすぎない、と。

「せやで。やから――もう、諦め。元々アンタはこの一件とは関わりの無い人間やろ? 逃げ出しても、誰も笑ったりしぃひんよ」

 黒髪の呪術師は言う。
 自分の復讐は大義であり、正当なものだ。魔術師とは、世界から一掃されなければならないのだ。
 ――だから、諦めて目をつぶってしまえと。

 だが――

「…………な」
「え?」

 ――上条は、諦めない。

「ふざ……けんな」

 例えどれ程泥に塗れようと、地べたを這い蹲ろうとも。
 泥を啜り、地に指を突き立て、歯を食いしばって立ち上がる。

「ふざけんな。要はテメエの過去から逃げ出したいだけじゃねえか」
「……なんやって?」
「そうだろうが! テメエは過去を払拭して自分の恐怖から逃げ出したいだけなんだよ!」
「…………!」

 上条は、なおも吼える。

「たったそれだけの事にこれだけの人間を巻き込みやがったんだ! ふざけんじゃねえよ! 逃げ出したいなら一人で尻尾まくって頭を抱えてろ! 幸せに暮らしてる人間を巻き込むんじゃねえ!」
「――五月蝿い! 五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿いっ!! それでも、それでもウチは……ッ!」
「そうかよ……」

 一言の呟きを残し、上条は右手を握りしめた。 
 神秘に対する絶対の脅威、幻想を食い殺す幻想を。

「それが分かっていても、もう後戻りが出来ないって言うんなら――」

 上を見上げれば、そこに居るのは一匹の大鬼と一人の女。
 だが、上条には何故だか女が、暗闇で独り悪夢に怯える、ただの少女にしか見えなかった。

 言葉は、届く。ならば、何処に拳が届かないなどという理屈があるというのか。

「先ずは、そんな幻想からブチ殺す!」


 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は、今此処にその牙をむき出した。

608 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/20(金) 16:20:41 [ BVn2z.WE ]
カミやん≒アスナ
だから、どっちかが露払いの手伝いでどっちかがスクナ封印だろうな。
アスナとネギが完全にコンビ化してる以上、カミやんは龍宮隊長と一緒じゃないか?

あーでも、アスナのハリセンは処理限界早そうだし…カミやん×ネギという腐女子フラグが成立済みならばw

609 名前:603 投稿日:2006/10/20(金) 20:04:08 [ 560nMAY2 ]
>>608
あー、なるほど。それは考えなかった……。
単にあそこの決戦で当麻節を語らせてみたかっただけなので。
しかしその方向で書き直してみても面白そう。
指摘サンクスです。

610 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/20(金) 21:10:06 [ Yp8QLjL. ]
しかしあまりクロスオーバーは推奨できないぜい。ネタ程度ならいいけど。
あまり長くなるようならアルカディアあたりに投稿したほうがいいかも。

611 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/20(金) 21:34:49 [ I9bnTFoE ]
>>610
普通に一発ネタの方向だし、気にすることはないだろ。

というか、クロスオーバーにおいてカミやんの右手ほど扱いにくいものはないよな。
カミやんが登場する長編SSを書くのは、何も考えてないバカか構成がとても上手い職人の二種類だろうさ。

612 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/21(土) 00:15:06 [ UM9B4n2c ]
幻想殺しはフレキシブル過ぎるからなぁ…。
どうしてもクロス先の異世界で出すなら、俺の場合はクロス先の悪役が作ったその世界用の偽者とかコピーとかにするかな。
勿論そいつはオリジナルだと思ってて。で、最後の最後でちょっと本人が出てごまかせる程度に共演してもらう。

やるとしても、常人なら多分この辺が限界じゃないかと。

613 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/21(土) 01:43:01 [ J6.qvxMc ]
当麻を一切出さずに進めるのも一つの手だな。

614 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/21(土) 14:44:49 [ L44H.a.c ]
某所に投下してる身だが、一応幻想殺しを利用したネタを考えてはいる。
脳内でほぼ100%完成しているんだが、それを具現化できる文才が無いんだぜ。

615 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/21(土) 17:35:53 [ KtUqkNw6 ]
クロスやるなら学園都市に他作品のキャラを呼び込む方が良いと思った。
そんな俺もネタはあるが文才と度胸と根性と心の強さが足りません先生……。

616 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/21(土) 19:44:55 [ EDBnjrbc ]
クロスをやるならラ校スレ行った方が耐性持ち多くて良いんじゃないかと思うが
何気に禁書作品が多いから食傷気味かなと難しいライン

617 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/22(日) 10:45:34 [ TYTSHh1w ]
同意。結構な数がある。

618 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/22(日) 13:41:01 [ y6NNdd0o ]
>>616
確かに食傷気味なのは事実。不満も出たしな。
俺も上条特訓イベントみたいの考えたけどいまいち書きづらいし禁書多すぎって言われたしで書きかけを封印。

619 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/22(日) 14:18:20 [ axhgmaOg ]
なるほど。オーケー、一発ネタ程度ならありかなと思ったわけですが、今後は控えるようにします。
さてさて次は何を書くかね。けどその前に連載更新しろよ俺。

620 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/22(日) 17:39:36 [ LqclVz1g ]
>>613

むしろ逆転の発想で。
題名が禁書目録なのに、インデックスが登場しないぐらいの発想を。

621 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/22(日) 18:28:24 [ DB42itUk ]
>>620
それなんて原作?

622 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/22(日) 19:09:52 [ 7g27Jqtw ]
>>616

スマン。最近のあのスレの禁書クロスネタほとんど俺だ…
しばらく禁書使うのは自粛する…

623 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/23(月) 06:53:13 [ .hHP.tI6 ]
す、すまぬ……。其処への行き方を教えてたもれ……。
我輩2Chは初心者なのですよ。

というわけで宜しければ教えてください。

624 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/23(月) 09:02:32 [ F/3wlPig ]
名前欄にfusi(ry

ラ板を「学校」で検索してそれっぽいのを見ればおk

625 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/23(月) 09:04:01 [ vFNaykl. ]
ttp://www15.atwiki.jp/lightnovelcharacters/

>>623
>>616>>622で話題に挙げられているのはこのサイト

626 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/23(月) 11:05:54 [ eEO2yamY ]
>>634-625
サンクス! 元ネタ解らないのも大量にあったが中々楽しめました。

627 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/23(月) 20:18:26 [ nBm1pJhM ]
>>625
俺はこのスレで禁書に興味を持った口だな

628 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/28(土) 00:05:17 [ AUXdwkq6 ]
アルカディアがどこかわからない・・。
多すぎ・・・。
ライトノベルの学校だと、禁書がダントツ1位だって。
すごいのかな。

629 名前:■■■■ 投稿日:2006/10/28(土) 04:48:43 [ hIZXnp.o ]
Arcadiaでググルと頭に出るよ

630 名前:169 投稿日:2006/11/01(水) 15:00:17 [ N8FpkSVo ]
第四章 羽ばたく者たち Cinderella_March

 最近あてにならなくなったと噂の学園都市の天気予報。
 美人のお天気お姉さんが笑顔で伝える週間予報は、ビーズのアクセサリーみたいに「晴」のマークを並べていた。
 当たればいいな、と土御門舞夏は思う。
 その日、その時のために一生懸命に頑張ってきた人達のことを、彼女は知っていたから。
 ふと目に入った、盗聴受信機の隣に置かれている亀形卓上デジタル時計が、相も変わらずのん気に表示する日付は、
「あさってからかー」
 学園都市統括理事会主催、全学園都市所属校参加の長大規模文化祭、『一端覧祭(いちはならんさい)』。
 開催は明後日に迫っていた。


 生粋の学園都市っ子である(らしい)上条当麻には記憶喪失を抜きにしても実感の湧かない話なのだが、吹寄制理ら中途編入組が言う所によると、どう見ても普通平凡でしかないこの高校も少なからず学園都市所属校でしかありえない特徴を持っているらしい。
 一例を挙げるなら、今彼らがいるこの体育館もそうなのだとか。
 奥のステージや両サイドのバスケットゴールなどの設備はさして変わらないのだが、まず広さが違う。小規模な能力演習などを行う都合上、床は「外」の一般的な物と比べて1.5倍は広い。また建材も遥かに頑丈な物になっているのだが、これは学園都市内のほぼ全ての建築物がそうであるため割愛する。
 この広いスペースのおかげで大勢のお客さんに見てもらえる、とは吹寄と小学校からの付き合いだという言祝の弁だ。
 そう、舞台演劇「シンデレラ」は、この場所で行われる。
 とっぷりと日が暮れた放課後。上条達演劇班のメンバーは、本番同様の舞台を使った立ち稽古のために体育館に集合していた。
 演劇練習もそろそろ大詰め。各人最終調整の段階に入っている。
 居残り上等。今夜は寝かさないぜダーリン、な意気込みでやってきた上条当麻だった。
 のだが。
「………………つーか、おかしいだろ絶対! どうして俺が並べてんだ観客席用パイプ椅子を一人で倒置法!」
「ですー。上条ちゃーん、小萌先生もちゃんと手伝ってますよー?」
「ああすいません言い直します。――どうして俺が並べてんだ観客席用パイプ椅子を四捨五入して一人で倒置法!」
「上条ちゃーん! 小萌先生が四以下ってどういう意味ですかー!?」
 そんなこと言われてもナー、と上条はそっぽ向いて疲れた顔をする。彼が両手でパイプ椅子を四つ運んでいる間に、小萌先生は両手で一つをえっちらおっちらと抱えているのだ。当麻比二十五パーセントなら四捨五入されても仕方ないと思う。
 体育館の鍵を首から紐で下げているちびっ子教師、月詠小萌はプンプンという擬音が聞こえてきそうな怒り方をしていた。生徒だけで放課後に学校の施設を使うことはできないので、自ら引率を買って出てくれたのが小萌先生だ。感謝の意は尽きないが、それでもからかわれてしまうのがこの人の人徳(?)だった。
 ふと見回せば、あんまり先生いじめるなよー、と口パクしてくる言祝と目が合った。しばらく出番はないから会場整備の手伝いでもしろと俺の尻を蹴飛ばしてくれた人の言える台詞ですか、と上条も口パクで返す。
 現在体育館にいるのは言祝栞監督を筆頭に、補充メンバーの上条達五人、素人同然の彼らを厳しくも優しく指導してくれた演劇班の先輩達が二十人くらいと、ほっぺたをまん丸に膨らませている小萌先生だけだ。
「大体、おかしいと言うのなら今の上条ちゃんの格好以上におかしいものはこの世にありません! 何なんですかその乙女の夢殺し(ドリームブレイカー)!! 新技ですか? 新必殺技ですかー!?」
「うるせえ新技とか言うな! おかしいとか見苦しいとか見たら呪われそうとかそこらへん百も承知でやってんだからいっそ褒めてくださいな!!」
「上条ちゃんの“それ”が褒めるに値するなら今日の黒板消し当番の人は人間国宝ものですー! どこの誰ですかXY染色体持ち(じゅんせいだんし)に“ドレス着せようなんて言い出したのは”!!」
 遠くの方で黒髪ショートの監督少女がこっそり手を上げた(ちなみに黒板消し当番とは、小萌先生の授業の前と後に黒板を綺麗にしておく係のこと。全クラスに存在)。

631 名前:169 投稿日:2006/11/01(水) 15:00:58 [ N8FpkSVo ]
 しかし今さらそんなことを言われても本当に今さらである。上条は一割の勇気と九割の諦観で袖を通したシンデレラドレス(大)を見つめた。
 幾度も念動力による脱ぎ着せを行ったため、無理に引っ張られた布の合わせ目がほつれたりしている。特に悲惨なのが右の長手袋だ。何度着させようとしても必ず失敗してしまうので、自然と酷使させられたのだ(幻想殺し(イマジンブレイカー)のことは一応説明したが無視された)。
 椅子並べの作業には邪魔になるので長いスカートは捲り上げられ布の紐でまとめられている。下に履いているのは体操服の短パン。極めつけは頭にかぶった馬の着ぐるみの頭部(のみ)。
 まさしく生きた人外魔境。街に出るだけで警備員(アンチスキル)に射殺されても文句が言えない程の不条理の塊である。一人(四捨五入で)で働かなければならないのも当然だ。こんなもん誰も係わり合いになりたくない。乙女の夢殺しは上条が今まで経験した不幸の中でも十指に入ることだろう。
「でもまあ今回は俺だけの不幸じゃねえぞ。俺みたいな野郎に何度も何度もドレスを着付けなきゃならなかった演出効果の奴らも道連れさぁ! く、くく、くはははははははははははははははは!!」
「あああ。上条ちゃんがどんどん後ろ向きに壊れていっているのですよー」
 教育に携わる者としてどう対処すればいいのか、でもやっぱりこれ以上あれと関わるのは自分も嫌だ、などと小萌先生の心境は揺れ動く。誰かに助けを請おうにも、神すら見捨てた理不尽空間にあえて踏み込もうとする猛者はいない。
 ――いや、いた。
 体重の軽さを感じさせる足音を引き連れて、命知らずな天使様がやってくる。
「問一。手伝うか?」
 言わずと知れた我らが主役(プリマ)、サーシャ=クロイツェフのご登場である。
 ロシア人シスター改めロシア人女子中学生(偽)は、舞台上で着替えなければならない都合上、インナーとしてバレエの練習用のレオタードを身に着けていた(提供者は土御門舞夏。兄に贈られた物だが結局一度も使わなかったらしい)。本番ではこの上にみすぼらしいワンピースや例のドレスを着ることになっているのだが、今はぶかぶかのジャージを羽織っている。
 上条はサーシャよりもむしろ袖が余り気味なその上着の方を見て、
「手伝ってくれるのも嬉しいけど、そのジャージを返してくれた方が上条さん的感謝の念が五割増しですよ?」
「却下。これがないと体温を維持することが困難になる。それにもし返したらトーマは着替えてしまうのだろう? シオリから、ありがたいのでもう少しそのままにしておいてくれとも言われている」
「それ『在り』『難い』でイコール『珍しい』って意味ですから!」
「残念」
「誰が教えたー!!」
 思わず絶叫する乙女の夢殺し上条当麻。少年漫画に毒されつつある禁書目録に引き続き、このゴーストバスターも順調に世俗にまみれつつある。
 そこへ〔「サーシャちゃーん、そろそろスタンバイお願ーい」!〕という天の声。
「ん。――謝罪一。手伝うことは出来なくなった。申し訳ない」
「……いいけどね。何だろうあの監督から感じる地味な悪意は」
「私見一。毎度きちんとリアクションをしているトーマにも責任はあると思われる。正直シオリの思考は理解できなくもない。――ああ、そうだ」
 どした? と上条が顔を向けると、サーシャは表情変化の乏しい顔に僅かながらはにかみの色を見せて、
「着付けの練習を手伝ってくれたことを感謝する。あれほど嫌がっていたというのに。…………元々これを言おうと思って来たのだった。では」
 そのまま、奥のステージへと駆けて行った。
 上条はポカーンとその背中を見送る。
 同じような顔で横から見ていた小萌先生が一言。
「いい子ですねー」
 解釈はいろいろ出来るだろうが、上条も概ね同意見だった。
 たまたま盗み聞きしてしまった被服室での言祝との会話以降、サーシャの雰囲気は確実に良い方向に変わりつつある。
 さっきみたいな冗談を言うようになったし、今舞台に立っているのを見ても、かつてのようなぎこちなさは微塵も無い。
 そして極たまになのだが、行動宣言(コマンドワード)を使わずに話すことがある。
 インデックス曰く、「心に確固たるものを持ったゴーストバスターなら行動宣言は必要ない。ただ、そこまでに至れる者はとても少ない」とのこと。
 上条にはサーシャが何を思って言葉使いを変えたのかはわからない。けれど、もしも彼女がこの演劇を通して、彼女にとってプラスになる何かを得ることが出来たというのなら、それは結構、悪くなかったりするんじゃないかと、思ったり思わなかったりするワケでして。
 ………………………………………………………………………………………………………………………………あれ?

632 名前:169 投稿日:2006/11/01(水) 15:01:54 [ N8FpkSVo ]
(――何だろう、長年かけて積み上げられてきた不幸センサーが唐突にカタストロフ級のバッドエンドフラグを感知した気がする。この直感(センサー)正直あてにならないんだけど、でも今回は違うっぽい。何か、何かキーワードみたいなもんとニアミスしたんだ。思い出せ上条当麻、ここに至るまでの己の思考を……!)
 記憶のサルベージ。しくじれば死だ。
 適当にすっぱ抜いた単語を慎重に吟味していく。
 解釈。同意見。盗み聞き。ふいんき。冗談。微塵。行動宣言。インデックス。ゴーストバスター。至れる――
 待て。
 インデックス?
 その時、耳鳴りのように遠くから響いてくる音があった。

 ――――とーーーーおーーーーまーーーー………………

 ズバッ!! と上条は首の筋を痛めかねないくらいの勢いで体育館の壁に取り付けられた大きなアナログ時計を探す。
 黒い長針と短針が指し示す時刻は、知らぬ間に午後八時を回っていた。
 首筋を嫌な汗が伝う。
「まずい……っ! 買い置きの菓子類パン類魚肉ソーセージ類を持ってしても最終下校時刻から三時間が限度だったか! しかも今日に限っては緊急時の避難場所である小萌先生の家も留守! 飢えた野獣と化した銀髪シスターが襲撃に来ることは自明の理だ! ――警報ーッ! 警報ーッ! 総員、直ちに練習を中断して近くのコンビニで食い物を買占め「とーーーーーーおーーーーーーまーーーーーーッ!!!!」
 外へ通じる扉が弾けるように開いた直後、言祝監督の音声増幅(ハンディスピーカー)もびっくりの雄叫びを伴って、猛烈な勢力を持った空腹台風一号が上陸した。


 飛び込んできたインデックスが上条を見つけるまで一秒。並べられたパイプ椅子を蹴散らして最短距離で脳天に噛み付くまで十四秒。力一杯歯を突きたててから上条の着ている服(ドレス)に気付き悲鳴を上げて飛びずさるまで三分四十五秒。いち早く事態を把握したサーシャが「説明一。彼女は私の友人です」と周囲に話して回るのに二分。女子生徒達からお菓子をお裾分けしてもらいインデックスが人心地つくまで四分。
 都合十分ほども暴れまわった末に空腹台風はようやく沈静化したのだが、着ぐるみごしに気を失うほど強く噛み付かれた上に倒れたパイプ椅子の下敷きになっていた上条が救出されたのは、練習再開からさらに二十分も経ってからのことだった。
「……どうして。どうしてこの世界は俺にばかり無闇に厳しいんだ」
「とうま、とうま。見て見てこのアメ舐めてると色が変わるんだよ!」
「やかましいわこの暴食シスターッ! またしても一瞬で皆に受け入れられやがって。てゆうかこの学校の防犯システムはどうなってんだ」
 ブツブツ言いながらも律儀にインデックスが崩した椅子を直している上条当麻だった。
 ちなみに今の服装は学校指定体操服の上下である。シスター台風の被害に遭いぼろ切れと化したシンデレラドレス(大)は芦田先輩が持って帰った。もう使う予定のない衣装を機械的に修繕しようとしていた先輩の背中には、流石の不幸マスター上条当麻も掛ける言葉がなかった。
 演劇班のメンバーの間を一巡りして戻ってきたインデックスは、両手に溢れるほどのお菓子を貰ってきていた。彼女は上条を手伝うわけでもなく、そこらへんの椅子に腰掛けてお裾分けの品に舌鼓を打っている。棒付きのアメをしゃぶり終えると、インデックスはふと気付いたように、
「とうま、とうま。どうしてサーシャがとうまの『じゃーじ』を着てるの?」
「班内最高権力者によるささやかな嫌がらせだよ」
 上条はむき出しの二の腕をさすりながら答えた。体育館というのは木張りの床や広い空間などの要素が組み合わさって、凶悪に冷え込みやすい場所である。しかしだからこそレオタード一枚のサーシャに「ジャージ返して」と強く言うことも出来ないのだが。あんなドレスでも着てないよりはマシだったかもしれない。
 インデックスはポテトチップスの袋を力任せに破こうとしながら、
「権力者って、しおりのこと?」
「ん? 知ってるのか?」
「私は一度会った人の顔と名前は絶対に忘れないもん。この前の『うちあげー』で覚えて、さっきも挨拶しに行ったよ。なんか悔しがってたけど。『もうちょっと早く来てくれれば演目変更してでもスカウトしたのに!』って」
「……あーやっただろうなー言祝なら」
 困った具合に捻じ曲がった信頼がそう確信させる。
 気になるのは、言祝にとっての『もうちょっと』がどのくらいであったかだ。まさか昨日ということはあるまいが。

633 名前:169 投稿日:2006/11/01(水) 15:02:30 [ N8FpkSVo ]
「でも嫌がらせ……嫌がらせねー」
「何だよ。妙な所に突っかかるなインデックス」
「べっつにー。とうまは二十四時間全国どこでもとうまなんだなって思っただけ」
「は? 当たり前だろそんなこと」
 少しだけご機嫌ナナメになった白シスターの相手をしながら、上条は椅子並べを続ける。
 その内怒りも持続しなくなったのか、インデックスは時折ステージの方に目をやって、御伽の世界を舞うように演じる赤い少女を嬉しそうに眺めていた。


 時計の針が逆L字を示そうとした頃、言祝が班のメンバーを舞台前に集合させた。
 監督少女は掌で台本をパンッと叩き、
「はい、今日の練習はこれでお仕舞いです。皆さんご苦労さまでした。それで明日のプレ公演のことなんだけど」
「待ちなさい」
 当然のように告げられた台詞に対し、吹寄制理がすぐさま聞き返した。
「栞。プレ公演なんて今始めて聞いたんだけど。明日の予定は最後のリハーサルじゃなかったの?」
 その場の全員の意思(張本人である言祝と見学者扱いのインデックスは除く)を代弁する。
 そう問われるのは予想済みだったのだろう、むしろ得意げに監督少女は言い放った。
「うん。だからそれにウチの全校生徒と招待校の代表者さん達なんかを呼んでみようかっていう話。それだけ観客がいたならもう公演と題しても、いやいやちょっと謙遜してプレ公演でーみたいな」
「予想通りの返答をありがとう私達の監督サマ」
 吹寄はジト目で呆れたように息をついた。その後を継いで姫神秋沙が挙手をする。
「でも。どうして急にそんなことに?」
 これの答えも至極あっさりと。
「いや、急にってほどでもないんだけど。ほら、私達の公演って、最終日の一回だけじゃない。自分達の出し物なり係なりの都合で見に行けなくなるのが嫌だって要望が前々からあったのですよ。やっぱり身内の人達には出来るだけみてもらいたいし、それならいっそ別の日に一度やっちゃえばいいかなって」
「それが明日っていうのは十分急な話だぞ」
 上条はボソッとつっこんだ。
 言祝は、まあまあ、と手を振って、
「で、ここからが本題なんだけど。――皆がやりたくない、出来ないっていうのなら、私も無理にとは言わない。というか、言えない。不出来な舞台をお客さんに見せるわけにはいかないもの。だからよーく考えて、そして答えてね。プレ公演、やる?」
 スイッチが切り替わったかのような真面目な顔で言った。
 どよめきが生まれる。
 全員が真っ先に胸に抱いたのは、大なり小なりの不安だった。
 余りにも急な舞台。練習は十分積んだつもりでいる。が、今日は気付いていなくても明日なら気付ける問題点がまだあるのではないだろうか。
 挙げろというのなら不安要素はいくらでもあった。
 演技は完璧か。衣装は万全か。照明は完全か。演出は万端か。
 己が為せることよりも、為せないことの方を大きく感じてしまう。
 しかし、しかし彼らは解っているのだろうか。
 もしもここで怯えて引き下がってしまったら、本番当日にも同じことをしてしまうに違いないということに。
 だからこそ、言祝は今この時にこの問いかけをあいたのだということに。
 大丈夫、きっと上手くいく――そんな言葉では意味が無い。
 必要なのは、明日の安心ではなく今日の決心。
 それを叶えられる言葉は、

「――私は、やりたい」

 聞こえた。
 金色の髪と、水色の瞳の少女。
 やれる、でもなく、やるべき、でもなく、少女はやりたいと言った。
 その言葉にうなづき、続く者がいる。
 分厚い黒マントを制服の上に羽織った魔女。
「シンデレラが。舞踏会に行きたいと望むなら。それを叶えるのは私の役目」
 さらに、樹脂素材でできたレイピアを提げた王子は、
「だったら、最高のパーティーを用意するのが私の役目ね」
 そして、馬の着ぐるみ(頭部のみ)をかぶった二人組みが、
「エスコートは」
「僕らの仕事やね」
 カッコつけた斜めのポーズのまま他人には不可聴の怪音波を受けて吹き飛ぶ。
 俺は、私は、と次から次に手が上がり、やがて気合の歓声となった。
 夜中ですよー静かにしなさーい! と負けないくらい声を張り上げた小萌先生に皆で笑う。突然の盛り上がりように半ば呆然としていたインデックスも、こっそり近づいてきた言祝に何やら耳打ちされて顔をほころばせた。
 言祝栞は思う。やはりこのメンバーにして正解だったと。
 演技は完璧か。衣装は万全か。照明は完全か。演出は万端か。
 不安は尽きない。
 しかし。
 心意気なら、満タンだ。

634 名前:169 投稿日:2006/11/01(水) 15:03:59 [ N8FpkSVo ]
段々一ヶ月に一回更新できればいいやとか考え始めている自分が情けない。169です。
残り書くべきことは決まっているので、何とかすらすらと行きたいものです。
あと、前回予告した二つの話、基本的にやる方向で進めていくことにしました。
書ききれるかどうかは正直不安もありますが、耳の穴に小指を突っ込んだら爪の間に挟まっている耳垢分くらいは期待していてくださると幸いです。

追伸。十一巻でインデックスと上条のクラスメイトに面識が出来ていたことを知り、若干苦労した秋の日でした。

も一つ追伸。ageてしまってすみません。区切りが変なのは相変わらずの仕様です。

635 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/01(水) 17:12:53 [ ZwS9EXsE ]
サーシャが真のヒロインでFAじゃね。
インデックスって誰ー?

636 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/02(木) 14:17:57 [ 8G6IZJiY ]
GJ!
サーシャが段々成長していく様子が実に良いッ!

インデックス? 何ソレ? ■■ですか?

637 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/05(日) 21:15:39 [ lIVO151k ]
サーシャの残念で笑えました・・・。
GJです!

638 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/06(月) 02:40:09 [ LtHizHRw ]
GJすぎる。
もう、これが十二巻で良い様な気がしてきた。
オリキャラまるで違和感ないってすごいわ。

639 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/07(火) 22:50:44 [ NAn25mdk ]
>>638
12巻が学祭ものじゃ早すぎるww
25巻くらいにこの話だったら嬉しいかも。

640 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/08(水) 14:51:47 [ aHlMgG1k ]
>>639
 確かにそういわれるとそう思えるなぁ・・・
 それはともかく>>169さん、GJ!!

641 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/11(土) 16:04:09 [ agPVEV.M ]
ひとつ質問ですが、禁書の社会見学ネタSSを書く予定の方は見えますか?
プロット立ててる段階ですが、もしどなたかが考えてみえたら被るとまずいと思いましたので。

予定がつけば、2週くらいで出来上がりそうなのですが、書いてもよいでしょうか?

642 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/11(土) 19:28:15 [ SanSwrv6 ]
書いて、書いて!

643 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/12(日) 00:53:37 [ Vy7CGTlY ]
まあ、ネタが被っていたとしても同一の作品になるわけでもなし。
そこまで気にするほどのことでもないと思うんだぜい。

というわけでワッフルワッフル

644 名前:641 投稿日:2006/11/17(金) 14:32:07 [ TCA4IuCU ]
一週間たって覗いてみたらネタが受け入れてもらえた模様。
では、これから書いていきますね。
                 ―――あっと、でも、すでにここにいる先達のような
                    レベルのものは期待しないでぼちぼちとお待ちくださいな。


                    11ガツチュウニアプデキタライイナア

645 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/17(金) 16:24:30 [ IXiuHnPY ]
おお>>641よ、無事だったか!
ワクテカして待ってます

646 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/19(日) 22:46:32 [ ctCyqYzY ]
…過疎ってんな…。

647 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/21(火) 02:26:09 [ srKfWQ.I ]
電撃の別作品のクロスオーバーっぽくなる話とか、OKかね?
姫神×吸血鬼の話を構想中なんだが、まんま僕血っぽくなってしまう……

648 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/21(火) 10:40:00 [ AdSp3jyE ]
新作だろうが続編だろうが投稿作品はいつでも来やがれお待ちしてます

649 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/23(木) 13:40:49 [ sM4WeIZM ]
能力開発のために飲む薬にはちゃんと順番があってその通りに飲まないと
副作用(ホレ薬、透明化等)が起きるとかってありだろうか
薬の効果なら当麻も無効化できないだろうし…

650 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/23(木) 19:22:35 [ 5HlPwzOY ]
科学的作用で副作用発生なら無効化出来なそうだが
そういうもので惚れ薬や透明化ってのはありえない気がする
どちらかといえば天草式の魔術っぽい感じが

ていうか当麻じゃなく他のキャラにやったら?

651 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/24(金) 08:44:59 [ /1elm0Qs ]
惚れ薬っつーか媚薬(性的興奮誘発剤)なら科学サイドの範疇だが……

カミジョーさんをハツジョーさせてもなぁ……

652 名前:641 投稿日:2006/11/28(火) 13:34:47 [ SA/ExFuo ]
どうも、ごぶさたです。突然ですが、まずはお詫びを。
以前に書き込んでいた禁書の社会見学ネタSSですが、使っていたPCがクラッシュしてしまったために、間に合わせることができませんでした。
本当に申し訳ありません。
現在復旧しているところですが、データ、ネタが全て飛んだので予定は立てられない状況です。
代わりといっては何ですが、サブで使用していたノートにしまっていた別のSSを即効で書き上げてきましたので上げておきます。

なお、このSSには若干の百合が風味として噛ませてあります。
その手の描写が嫌いな方は、ご注意ください。
自分のネタを待っていた方がもしいれば、これがその期待に対して一部でもこたえていれば良いのですが…。
以上、長々と長文失礼しました。それではどうぞ↓

653 名前:641 投稿日:2006/11/28(火) 13:36:49 [ SA/ExFuo ]
とあるお嬢様寮の休日 その①

―――常盤台中学―――
『学園都市』の中にある“学舎の園”、そこにある五本の指に入る名門の女子学園であり、その入学条件の厳しさと世界有数のお嬢様学校でもあることから、学園都市にいる多くの人間からの注目を集めてもいる。
その常盤台中学に通う生徒たちが寝起きをしている女子寮では、生徒たちが思い思いの仕方で休日を過ごしていた。
その生徒の一人が今、裏庭に一人佇んでいる。
彼女の名は御坂美琴。学園都市の中でも七人しかおらず、常盤台中学でも二人しかいない超能力者の一人である。
その、学園都市にいる二三〇万人の中の第三位にして、大抵の障害ならば軽々と解決してしまう力を持った彼女は今、目の前の光景にただ呆然としているのだった。
「どうして…」
彼女には自信があった。
今回こそはきっとうまくいくはず、そう信じていたのだ。
美琴の手には小さな缶が握られている。今日この日のために特別に準備したものだ。
裏庭にたむろしている猫たちにご飯をあげるという日課を持つ彼女はしかし、その体から発せられる微弱な電波のせいで、いつもいつも一匹残らず猫に逃げられていた。
そんな現状に対処するために用意したこのネコ缶、一部の猫愛好家たちの間で、「もはやこれは猫の餌にあらず、ネコ様のご飯である。」とまで言わしめているものであった。
実際缶を開けた瞬間、普段から一流の食事を食べている美琴でさえ漂ってきたその香りに思わずくらっときたし、裏庭に面する窓から匂いを流してやると、のんびりと日向ぼっこをしていた猫たちが落ちつかなげに匂いの元に集まってきていたのだった。
『これだけ集まってきていれば、一匹くらいは残ってくれるでしょ。』
そう思い、期待を込めて裏庭に出た美琴はしかし、彼女が外に出た瞬間に四方へと散っていく猫の尻尾を目にしたのである。

「これでもだめなんて……」
寮の裏庭にてネコ缶を片手に佇む美琴。
しばらくして両肩を落とし、盛大にため息をつくと、持っていたネコ缶の中身を手近な地面の上に落ちていた皿の上に開けていく。
――ちなみに、お嬢様学校である常盤台中学では、寮の管理は徹底されているために、裏庭といえども皿が落ちているという事は本来ありえないのだが、彼女が行っている日課は割と寮の中では知られているために、あえてそのまま置きっぱなしになっているのである。
(もちろん、美琴自身は自分の行動が知られているとは思いもよらないのであるが。)

やがて美琴は缶の中身をすべて皿に移し終えると、しゃがんでいた体を軽く伸ばしながら、猫たちが逃げていったと思しき方向を眺めていた。
だが、自分がここにこうして立っている限り、たとえ猫たちが餌を食べたいと思っても帰ってくることはありえないと結論する。
もちろん、猫好きの美琴としてはおいしそうに餌を食べる猫を間近かで眺めながらその背を撫でてやりたい。
しかし、同じ猫好きであるがゆえに、おいしそうな餌を目の前に置きながら猫に食べさせない、という状況を続けたくもないのである。
最後に数秒、猫たちの多くが逃げていった方向を名残惜しげに見ていたが、空になったネコ缶を片手に寮の中に戻ろうときびすを返した。
そのとき、彼女の背後で小さな音がした。
――もしや猫たちの誰かが戻ってきてくれたのか?!――
期待に輝く彼女の目に飛び込んできたのは、

                    後輩の白井黒子であった。

654 名前:641 投稿日:2006/11/28(火) 13:38:05 [ SA/ExFuo ]
とあるお嬢様寮の休日 その②



「…えっと、その、お姉さまからそのような眩いばかりの笑顔を向けられるのは大変うれしいのですけれど…。
それほどまでに期待をさせて申し訳ありませんが、猫たちは戻ってきてはおりませんわよ…。」
心底申し訳なさそうな黒子の声に慌てて我に返った美琴は動揺を隠そうとしていたが、顔は真っ赤だし手に持ったネコ缶は落ちつかなげに動いているわで、まったく動揺を隠しきれていなかった。
もちろんそんな様子を見逃すはずもなく、黒子は追撃の手を緩めない。
「それにしてもお姉さまは相変わらず健気ですわね。毎回逃げられてしまうというのに猫たちと近づこうとされるなんて。
いいえ、たとえ何度振り払われたとしても何度でも手を差し出すのはむしろ猫たちへの献身的な愛と言っても過言ではありませんわね。」
「…っ、そ、そんなんじゃないわよ!」
慌てて否定するが、その顔は先ほどよりも赤くなっているために誤魔化すなど無理である。
「またまたぁ、そんなことはせめて手に持ったネコ缶を隠すなどしてからおっしゃってくださいましな。
餌を食べるのに夢中になった猫が缶の切り口で口を切らないように缶ごと出すのではなく、ちゃんと皿に出してやるという気配りまでされるお姉さまの猫への愛はちゃんとこの黒子には分かっておりますのよ?」
「ぁ……」
そこまで見抜かれていたと知り、もはや言葉も出ない美琴。
俯いたまま固まってしまった彼女を眺め、黒子は満足げなため息を吐く。
『ああ、何ていじらしいんでしょうお姉さま。このままのお姿も見ていたいですが、最近は何かとごたごたが続いてお姉さまエナジーが不足していましたから、ここで大量に補充させていただきますわ!』
さらなる反応を引き出すべく、次なるの言葉を述べていく。
「それにしても、ここまでしてくださるお姉さまに対して、少しは本能による行動を押さえようとはしないものなのでしょうかあの猫たちは?
ああもう、いっそのことこのわたくしをネコとして可愛がって下さいませんか?
愛しの猫たちに逃げられて傷心のお姉さまを心を込めてお慰めいたしますわよ?」
ビクッ、と思わず肩が震える美琴。
彼女の反応パターンを知り尽くしている黒子は、美琴から帰ってくるであろう言葉を予測し、さらに、それに続けるべき自分の言葉も用意していた。
「……」
だが、予想に反し、美琴からは何の反応もない。
「……? ……あの、お姉さま?」
訝しんだ黒子は声をかけながら近づいていく。
と、そのときである。
「そうね…。」
ゆらりとした動作で美琴が動く。
そんな彼女にどこか違和感を覚えた黒子が足を止めると、美琴はやけにゆっくりした足取りで近づいてくる。
「それも、いいかもしれないわね…。」
「え……?」
美琴の口から出た言葉に思わず思考を放棄してしまう黒子。
追いつめて反応を楽しむはずだった黒子のほうが逆に無防備な姿をさらけ出していた。
固まったままの黒子の前にまで来ると、おもむろにそのおとがいに手を当てながら美琴は言う。
「どうしたの? わたしを慰めてくれるんでしょう? そんな風にボーっとしてちゃだめじゃない…。」
クスクスと笑いながらその手に力を入れ、黒子の顔を上に向かせその目をじっと覗き込んだ。
「…っあ、あの、あの、お、お姉様!?」
もはや思考が現状に追いついていない黒子に対し、美琴はさらに追い込みをかける。
おもむろに顔をおろし、黒子との距離を近づけていく。
『お…お姉様が、お姉様が、……そんな、そんなっ!?』
徐々に近づいてくる美琴の潤んだ瞳。
そこに映り込む目を見開いたままの自分の顔が大きくなっていくにつれ、意識は空白に染められていく。
もはや互いの鼻は触れ合う寸前、互いの吐息が唇に当たるほどになるころには黒子の意識は真っ白になって――――――

もはや互いの鼻は触れ合う寸前、互いの吐息が唇に当たるほどになって――――――

655 名前:641 投稿日:2006/11/28(火) 13:38:54 [ SA/ExFuo ]
とあるお嬢様寮の休日 その③

「……っく。」

黒子との距離がほとんどゼロにまで近づいたいたままその視線で縫いとめていた美琴は小さく声を漏らす。
愁いを帯びて潤んだままだった瞳には喜色が浮かび、その体は徐々に震え始める。
「……っぷ。っは、あっははははは!」
やがて、我慢しきれなくなった美琴は声を大にして笑い出す。
「あはっっ、あっはっはははははははは、くふっっ、ぷっ、あはっ、あはははははははははははははっっ!」
裏庭に笑い声が響く。
体をくの字に曲げ、大きな声を上げて笑う美琴。
それほど可笑しかったのか、目尻に涙が浮かんでも、まだ笑い続けている。
「っく、はあっ、はっ、はあ……。」
ひとしきり笑い続けた美琴はようやく声を落ち着けると黒子に向き直ると、時折肩を震わせながらも話し出す。
「どうよ黒子!
いつもいつもあんたにはやられっ放しだったけど、あたしだってやろうと思えばこれくらいできるんだからね!
これに懲りたらこれからはあんな真似はやめるように、いいわね!」
常日頃いたずらを仕掛けてくる後輩に一本返したことに気をよくしているのか、その顔をやや上気させて話しつづける。
「しっかし、あんたの顔ったら、見ものだったわよ! っっぷふっ!」
先ほどの黒子の様子を思い浮かべているのか、満面の笑みを浮かべながら語り続ける美琴であったが、ふと黒子の様子に目を留める。

「……あーー……」

その黒子といえば、先ほど与えられたダメージから抜け出せずにいるのか、いまだに呆けたままである。
こちらからの声も聞こえていない様子であり、もしかすると先ほどの美琴の言葉も届いていないのかもしれない。

「おーい、黒子ー?」

目の前で手を振っても気が付かないようであり、どうしたものかとしばらく思案していたが、
「ま、いいでしょ。たまにはいい薬よね。」
と、早々に結論を出した美琴。
意気揚々と女子寮の中に入っていく。


美琴の姿が消えた後に残ったのは、苦手な磁気が消えて心置きなく「ネコ様のご飯」にありつく猫たちと、足元にじゃれ付かれながらもいまだに意識が戻ってこない黒子の姿があるのであった。

                      了

656 名前:641 投稿日:2006/11/28(火) 13:40:06 [ SA/ExFuo ]
とあるお嬢様寮の休日 おまけ

蛇足

黒子に対して一本返したことによって気をよくした美琴であったが、やがて意識が戻った黒子から怒涛の攻勢を受けるのはまた別の話である。

「っちょっ、あ、あんた、なにしてんのよ!あたしの話聞いてなかったわけ!?」
「何をおっしゃっているのですかお姉様!? さぁ! このわたくしがお姉様のお寂しい心を隅々までお慰めして差し上げますわ!」

こうして常盤台中学寮における御坂美琴の逸話はまたひとつ増えていくのであった。

今度こそ本当に 了

657 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/28(火) 19:39:14 [ XnrDl94A ]
GJ!
御坂が猫を可愛がるには全身ゴム服が必要だな。

658 名前:169 投稿日:2006/11/29(水) 22:09:43 [ 6P6mlNRM ]
                    ◇   ◇

 学園都市二大祭事の一つ、全学合同大規模文化祭、一端覧祭。
 開催をいよいよ明日に控え、学園都市の全学校は授業を取りやめにして準備を行っている。
 大覇星祭のように他校と点数を競いあうといったことはないが、店の売り上げや展示の客入りが多ければ多いほど今後のステイタスになる。そのため学生達の気合の入れようはすさまじかった。
 そんな祭の直前に特有の緊張感に包まれた、ここ第七学区のとある場所にこじんまりとした喫茶店がある。
 小喫茶「かるでら」。
 「開店」の札がやや見えにくい場所にあり、時には喫茶店だと気付かれずに通り過ぎられてしまうこともあるような地味な店だ。しかし格安で質の高いコーヒーや、名物のパイに惚れ込んで足繁く通っている客も少なからずいる。いわゆる隠れた名店という奴だった。
 ただし今日に限っては近所の学校が会場校に選ばれたらしく、その準備に追われているためか昼を過ぎても客足はほとんどない。今店内にいるのはマスターとバイトのウェイター(学生。一見爽やかな好青年だがこの時間にバイトなんかしているあたりある意味で将来有望)を除けば午前中からずっといる男性客が一人だけだった。
 窓際のテーブル席に陣取って、コーヒー一杯でねばり続けているその男は、一見したところでは学生にも教師にも見えない。この街でそれ以外の人種というと研究者くらいしかいないのだが、それこそ一番似合っていない。
 恐らく二十代中盤。学生ではありえない年齢だが、教師にしては纏う雰囲気が剣呑に過ぎる。服装はどこにでもあるような秋物のシャツとズボンだが、サイズがだぼだぼだ。またネックレスには小型携帯扇風機を四つもぶら下げている上に、髪はジェルか染料で固められて毬栗(いがぐり)みたいになっている。スニーカーの靴紐はなぜか1メートルほども垂らされており、廊下側にまで出てきていた。誤って踏んでも気付かれない長さだ、とマスターとウェイターは囁きあう。
 だが、“感心はその程度で終わってしまう”。
 この街で教師にも学生にも研究者にも見えない人物がいれば、それは立派な不審人物だ。極めつけに怪しげな長袋(槍でも入ってそうな長さだ)を携えているとなれば、善良な一般市民はすぐさま警備員(アンチスキル)に通報するべきだろう。
 しかし、マスターもウェイターも全くそんなつもりになれず、「まあそんな人もたまにはいるかな」ですませてしまう。怪しさを打ち消すほど存在感が薄い男だった。
 ――正確には意識して存在感を薄くしていたのだが。完全に消し去るのではなく、最低限度に知覚させることで、駅ですれ違う人の顔のような「その他大勢」に混じることで他者に記憶させないようにする技術。
 戦闘の中よりも社会の中で効果を発揮する技である。そして男はそれを呼吸のように自然に行っている。
 謎の、そしてその謎を感じさせない男はただソファに深く腰掛けて、パラパラと一端覧祭のパンフレットをめくっていた。
 彼が持つのは学園都市内の全会場校を網羅した完全版ではなく、第七学区に限定された縮小版である。
 それを気だるげな眼差しで眺めながら、男は誰かを、あるいは何かを待っているようだった。

 チリリリリーン……という涼やかな音が鳴った。

 音の出所は店の入り口にかけられた小さな鈴だ。こんな日に喫茶店を訪れる酔狂な客が他にもいたのか、と図らずとも店内の人間の感想が一致する。
 控えめにドアを開けて入ってきた客は、またも男性で、またも異様だった。
 身に着けているスーツは葬式帰りかと思えるほどの黒尽くめ。更に見上げるほどの巨躯であった。一人目の客も長身の部類に入るが、明らかにこの男の方が体格がいい。年齢はそういくつも違わないだろう。糸のように細められた目はどこを見ているのか定かではないが、かもし出す雰囲気は不思議と落ち着きを感じさせる。右手には大きめのボストンバッグを持っていた。

659 名前:169 投稿日:2006/11/29(水) 22:11:00 [ 6P6mlNRM ]
 早速暇を持て余していたウェイターが応対する。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「いえ、待ち合わせをしていまして」
 二人目の客はちらり、と窓際の男を見る。最も瞳が見えないほどに目を細めたままなので、あくまでそれらしい挙動をしたということだが。
 ウェイターは、おかしな話もあるものだ、と思いながら黒尽くめの男を席まで案内する。
 一人目の客はパンフレットを閉じ、テーブルを挟んで向かいに座る黒尽くめの男をしげしげと眺めた。
 ウェイターがカウンターに戻ったのを確認してから、長袋の男は口を開く。
 その口調は待ち合わせをしていた仲にしては、刺々しい。
「なあお兄ちゃん。俺の記憶が正しけりゃ、俺はお前さんの顔も見たことがないんだが」
「奇遇だな。私もだ」
 拍子抜けするくらい正直な答えだった。長袋の男の眉間に皺がよる。
「じゃあ何か。男相手のナンパか。そいつぁお断りなのよな」
「これまた奇遇だ。私もそのような趣味は持ち合わせていない」
「…………、ああ分かった。喧嘩売りに来たのかお前さん」
 長袋の男の目つきがさらに険しくなる。気の弱い者なら失禁しかねないほどの殺気が真正面に放たれる。
 しかし黒尽くめの男はわずかに怯みもせずに、細められた――長袋の男はここで初めて気付いたが、彼は目を細めているのではなく完全に閉じていた――目を向けて、
「その通りだ」
 と答えた。
「単刀直入に尋ねる。ここ数日、学園都市第七学区でこそこそとよからぬ動きをしているのは貴様だな?」
「………………………………、」
「何をたくらんでいるのか知らないが、不愉快だ。即刻消え失せてもらおうか」
 断言。ファーストコンタクトが最後通告とは理不尽にも程がある。が、黒尽くめの男の表情にはいささかの冗談も含まれていなかった。
「……、」
 長袋の男は沈黙し、観察し、熟考し、
「はぁ〜〜」
 嘆息した。
 この上なく気だるげに、長袋の男は言う。
「お兄ちゃん。俺だってまあ、あんまり褒められたことしてるわけじゃないって自覚くらいあるのよ。でもそれを他人にどうこう言われるのはまた別の問題な訳でな。第一、“こそこそ何かやってるのはお互い様だろうに”。折角これまで見逃して来てやったのを自分から喧嘩降りかけて無駄にするかね普通」
「――ほう」
 黒尽くめの男の手が横に置いたボストンバッグの口にかかる。ほぼ同時に長袋の口紐もほどかれていたが。
「警告だけで済ませてやってもいいと思っていたが……そういう訳にもいかなくなった」
「俺はそれでも構わんのだがね。でもお前さんが俺やこの街にいらん迷惑かけようって言うのなら、放ってはおけんなあ」
「は。よく言う。どちらのことだというのだそれは」
 そこで会話が途切れた。
 瞬間、戦場が発生する。
 戦闘を望む者が複数居れば、どこであろうとそこは戦場になるのだ――

「失礼します」

 と、動きだす直前に横からウェイターの声が割って入った。いつの間にかカウンターから戻ってきていたのだろう、地面と平行にした掌の上に色々な物が載せられたお盆がある。
「ご注文はお決まりでしょうか」
 爽やかな営業スマイルを向けられて、黒尽くめの男は一瞬反応に詰まる。
「あ、い、いえ。何かおすすめのようなものはありますか?」
 寿司屋じゃねぇんだから、と長袋の男が小声で言うのを閉じた目で牽制。ついでに一杯飲んだら表出てヤルぞこら、とも伝えておく。
 長袋の男は可笑しげに口元を吊り上げて笑った。了承の意味を込めて。
 ウェイターはそんなやり取りが行われているとは露知らず、変わらぬ営業スマイルで、
「そうですね。本日のおすすめはパンプキンパイとシナモンティーでしょうか。珍しい薔薇の形をした角砂糖もございます。さらには」
 お盆から水の入ったコップ、おしぼり、黒い石のナイフを順に手にとって、
「魔術師の方限定で、全身をバラバラにするサービスも行っております」
 直後。
 窓から注ぐ遠い星の光を集めて、物質分解の魔術が発動した。

660 名前:169 投稿日:2006/11/29(水) 22:11:56 [ 6P6mlNRM ]
 部品(パーツ)に分解され崩れ落ちるテーブルセット。
 それに巻き込まれる前にそれぞれ逆方向へ大きく飛びのいた二人の男は、床に着地するなり全く同時にこう叫んだ。
「「何者だ!」」
 瓦礫の向こう。
 爽やかウェイター――その皮を被っていた少年は石のナイフを手の中で幾度か回転させると、
「何者って、貴方達に言われる筋合いは無いとおもいますが。それにしてもおかしな話もあったものです。まさかこんな何の変哲もない店に魔術師が“三人”も集まるなんて」
 魔術師。
 その言葉に今さらながら男達の背筋が冷える。
 科学至上の学園都市の正逆に位置する世界の住人。それが魔術師だ。
 この少年“も”そうだというのか。
 だが、と長袋の男は恐怖と共に戦慄する。数時間同じ店の中に居たにも関わらず、互いの素性に自分だけが気付けなかった!
 この街にいてもおかしくない学生の身分を装っていたことを差し引いても、「魔」の気配を隠すことにかけては少年の方が上手であるようだった。
 また、ふと店の奥に目をやってみると、マスターが眠るようにカウンターに突っ伏している。さっきの魔術を目撃されることを恐れての少年の仕業だろうが、それすらも不可認の内にやってのけたとは、想像を絶する力量である。
 長袋の男は少年の『役割』を推察した。
「お前さん。暗殺者か」
「いえいえ。とっくに廃業して今はしがないスパイですよ。自分みたいな容姿の人間は、この街に入り込む分には重宝されましてね」
 ナイフの切っ先は右と左、二人の男の間を油断なく揺れ動く。
 すぐに追撃してこない所を見ると、先ほどの物質分解は連発が出来るタイプの魔術ではないらしい。あるいは制限のようなものがあるかだ。その隙に男達は己の獲物を準備する。
 長袋から引き出されるのは、波打つ刃を持った西洋風の長剣――フランベルジェ。
 ボストンバッグから取り出されるのは、小型の弓が機巧(からくり)で取り付けられた篭手。
 男達が装備を整えるのを、少年は黙して許した。余裕からかそれとも時間稼ぎのためか。
 どちらにせよ、武器を下ろさないということは、
「お前さんも混じりたいってことだな?」
「ええ。是非。……自分は静かに日々の暮らしを過ごしていきたいと思っているのに、何故かいつも邪魔が入るので少しムシャクシャしていたところです。それに貴方がたのような輩を見過ごしておくと、申し訳の立たない人が近所にいますしね」
 黒石のナイフが掲げられる。照準は少年の真正面。窓だ。
 長袋の男――もとい長剣の男は野蛮な笑みを見せて獲物を振り上げる。
「ははは。そういや俺の知り合いにもおるのよな。あんたらみたいなのを見かけたら後先考えずに殴りかかりそうなのが。祭りの前だ、余計な気苦労かけさせんよう骨を折っておくのも大人の責任かもしれんわな」
 黒尽くめの男――もとい篭手の男は静かに機巧を動かし弦を巻き上げる。
「奇遇が多いな。私の恩人もこの街にいる。もし彼が貴様らのことを知れば……いや、ここで終わらせれば済むことだ」
 そこで会話は終わった。
 刹那の後。
 閃光と白氷と烈風、三種の力で窓ごと喫茶店の壁が吹き飛ばされたのを合図に、戦場が始まった。















 さて。
 関係ない話はこのくらいにして、そろそろ本筋に戻るとしよう。

661 名前:169 投稿日:2006/11/29(水) 22:12:23 [ 6P6mlNRM ]
久方ぶりの投下がこんなんですが私は満足です。何故なら一章を書いている時点で絶対やろうと思っていたネタだから。そんな169。

今回ちょっと短めですが、今後は構成上小刻みに区切らないとべらぼうに長くなるシーンが続くので、こんな感じで行きたいと思います。
予想される最短投下は1レス分。うわぉ。

>>641
GJ! 何という破壊力!
受け属性の美琴が攻めに回った時、新感覚の花園物語が始まる――!?

662 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/29(水) 23:05:41 [ nXGBkJrA ]
>>658=>>169
GJ!

663 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/30(木) 10:19:47 [ gbc1hzug ]
>>641
>>169
GJ!美琴&美鈴を前にした黒子の心境だぜ。
本編では音沙汰無しの二人はもう気づいた瞬間ニヤリだ。良すぎる。

664 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/30(木) 17:18:37 [ TL0mPuho ]
>>641
GJ!
猫好きには辛いな猫に避けられるのは。
そのうち猫に避けられないようにするために制御能力を一段階アップさせたりしはじめるんじゃw
史上初のLv6誕生秘話「猫に避けられて」とかで語られるとかw

>>169
GJ!
思考がすれ違ってるよwww
てか義理堅いなぁ、本編でも再登場して欲しいところですネ。

665 名前:■■■■ 投稿日:2006/11/30(木) 17:21:32 [ XRIn.c.s ]
>>664
上条が触れてりゃ電磁気消せるんじゃ…?

666 名前:641 投稿日:2006/11/30(木) 17:37:10 [ 60RyGIHw ]
>>658=>169
GJ!!
相変わらずいいSSを出してくださいますなぁ。これからもこのスレが賑やかになるように自分も頑張って書いてこようと思います。

667 名前:662 投稿日:2006/11/30(木) 22:17:32 [ bZNOAkqg ]
>>641
申し訳ない、気づいてなかった。けどGJ!
彼女たちの日常が垣間見えた気がしたよ。

SS書ける方々が羨ましい。

668 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/01(金) 08:26:04 [ .gmJOM8k ]
>>658
GJ!! 続編、astkして待ってます

669 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/02(土) 20:18:58 [ pr6Eu0a2 ]
>>658GJ!
建宮の紹介がとてもうまかった!
扇風機とか!

670 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/05(火) 23:04:51 [ apcfXIis ]
アステカ魔術師だけ名前無いんだよな。オリ設定になるのか

671 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/06(水) 18:54:36 [ XiKb4wq6 ]
最近書き込みが少ないね。もっといろんな人が書き込んでくれないかなぁ…。

672 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/07(木) 02:57:15 [ vxvF7QFY ]
と、ちょっと長い次回予告風に駄作を失礼いたすぜよー!


 結標・淡希は自慢の後ろで二つに結った髪を揺らしつつテーブルの向かい側に座っている少女を見ていた。
 窓際の席、無邪気そうにテーブルの上に乗ったパフェを頬張る茶色いショートカットの少女。
 頭頂部から出ている一本の毛がなんとも愛らしく揺れている。
「これ美味しいね、淡希ってミサカはミサカはパフェの美味しさに感嘆を漏らしつつ言ってみる」
「……少し聞いて良いかしら?」
「ん?なに?とミサカはミサカは相も変わらずパフェを食べつつ聞き返してみたり」
「貴女、どこにそんなに入れてるの?」
 ふえ?と可愛らしく首を傾げる少女を余所に淡希は少女の横に並べてあるパフェの容器を指差す。
 その数四つ。
 正直この様な小さい少女が食べれる量ではない。
「それは乙女の秘密だったりする、ってミサカはミサカは大人の女を気取って見たりしてみたり」
「……」
 半目で少女を見やるが、少女は既に五つ目のパフェの攻略へと差しかかっていた。
 そして淡希は思う。
……本当にこんな子があの一方通行に勝つ為の切り札になるのかしら?
 打ち止めと資料には書かれていた少女の頬についていた生クリームを指で取りつつ、淡希は窓の外を見る。
 不幸だ、とか叫びつつ見覚えのあるような無いような妙なツンツン頭の少年が走っていった。
 再びテーブルの向かい側に目を向けて見れば打ち止めがコチラを向いてニヘラと笑顔を向けていた。
 こちらも僅かに笑みを浮かべ返しつつ、淡希は思う。
……平和ねぇ。
 正直なトコロ淡希はこの少女が対一方通行への切り札になると聞いて、復讐に利用してやろうと思っていたのだ。
 しかし、この少女の姿を見ていたら何故かその様な熱も下がってきてしまった。
 それは少女の人徳が為す事なのか、単に自分が飽きっぽいだけなのか。
 とりあえずは和みつつ少女の猛烈な食いっぷりを淡希は見ていた。
 窓の外では叫びと共に見覚えのある雷が先程の少年を追っていたが、淡希は気にしない。
 テーブルの近くを通った筋肉質な店長がその声達に嫌そうな顔をするが、なんにせよ、今日は妙に平和だった。


 【とある打ち止めと座標移動】 〜ほのぼの学園都市物語スパイスもあるよ〜

 番外【旗男を倒せ 〜我等BF(ブレイクフラグ)団!血に染まる学園都市〜】

 たまにはほのぼの学園都市物語も良いと思った。
 需要があれば書いてみたい。

673 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/07(木) 07:03:21 [ 4zx1Q2r6 ]
>>672
ワクテカしながら待ってます

674 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/07(木) 09:34:19 [ zBqaE1R6 ]
>>672
意外な組み合わせだw
こういう話は好きだな。

675 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/07(木) 10:39:03 [ avt4.NMk ]
>>672
結標が復活してチーム一方に参加。トリオを結成。

8巻を読んだ頃からずっとずっと信じている私がいます。

676 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/07(木) 12:27:58 [ jHQ6llX6 ]
>>672
「わっふるわっふる」って言ったら。続きが出てくる?

677 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/07(木) 19:04:50 [ kvySz5H6 ]
>>672
>676に便乗して
   _  ∩
  ( ゚∀゚)彡 わっふる!わっふる!
  (  ⊂彡
   |   |
   し ⌒J

678 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/07(木) 21:10:48 [ zgLoww0w ]
わっふるわっふる。

というわけでプロローグを投下。最初はちょっと暗めなので注意。
最初に言っておこう。諸君、私はヘタレ結標が好きだ。

679 名前:672 投稿日:2006/12/07(木) 21:15:39 [ zgLoww0w ]
 暗い部屋。
 さほど広くも無いとあるマンションの一室。
 その部屋は様々なゴミが散乱し、何週間も掃除をしていないのか異様な悪臭を放っていた。
 十人中十人が見たら、とてもこの部屋に年頃の少女が住んでいるとは思わないだろう。
 そして、部屋の主である結標・淡希はその部屋の隅で体育座りをして蹲っていた。
 赤い下着を着込んだ最低限の服装。少女の白い肌は闇夜の中に浮かんでいるようにも見える。
「――――」
 其の目には生気は無く、ただ其処にあるだけの人形の様にも見えた。
 元々後ろで二つに結っていた自慢の髪は解かれ、乾燥し、悲惨な姿となっていた。
 結標はゆっくりと顔を上げる。
 視線の先には時計があった。夜八時を示す時計だ。
「……もう、夜だったんだ……」
 呆然と、視線を動かす事も無く結標は事実を告げる。
 結標は遅い動きで身体を動かし立ち上がると部屋の隅に置いてある冷蔵庫へと向かう。
 冷蔵庫を開ければ中からの光が結標の身体を照らしだした。
 不衛生。
 今の結標の姿を見れば十人が十人とも同じくその言葉を返すだろう。
 今の結標は全てを失って絶望した人間。
 もしくは糸の切れた人形という表現がピッタリなのかもしれない。
 彼女は下着姿のまま冷蔵庫の中を漁る。
 そのまま適当な物を見繕って冷蔵庫の扉も閉めずに口へ運んだ。
 数分が経ち、全てを胃へ収めると同時に何やら肌寒い事に気づいた結標は
 そこで初めて冷蔵庫の扉が開いたままの事に気づく。
「あ……閉めなきゃ」
 虚ろな目で、しかし僅かな"目的"を得た結標は少しだけ滑らかな動作で冷蔵庫の扉を閉める。
 だがそれだけだ。
 彼女はそれだけでは満足出来ないのか何度か扉を開け閉めしていたが、直ぐに飽きた。
 今度こそ扉を閉めて、おぼつかない足取りでまた部屋の隅へと向かう。
 ついでに寒いので毛布を押し入れから引っ張りだし、その身に纏いつつまた隅に座った。
 静寂。
 僅かな音や声が締め切られた窓の外から聞こえてくるが、結標は全く動かない。
 そもそも動く気力が無いのだ。
 数週間前に起こった『樹形図の設計者』を巡る騒動。
 其の中で結標は大切なものを捨てた。失ったのではない、捨てたのだ。
 その結果、結標は心を砕かれ、生きる屍と化した。
 食料調達や生命活動に必要な"目的"さえあれば動くが、それ以外は全く動きもしない。
 それが今の結標の状態であった。
 最初の三日は定まらない意識のままに自宅へと帰った後、意味不明の言葉の羅列を吐き続けた。
 四日目にはある程度収まった興奮を引きつれて部屋の隅に陣取り、全てに呪詛を吐き、
 そのまま一週間が経つと結標は本当に生きる屍と化した。
「……何か」
 また発作が起き始めた。
「何か何か、何かやらないと」
 でも何を?と結標の内面からの問いかけが来る。
 あの事件で自分の心を砕いた白井黒子を殺す?
 恐らくあの超電磁砲が何も言いに来ないトコロを見ると生きているのだろう。
 どうやって助かったのは解らないが、取り合えず生きているのだろう。
 なんだか無性に嬉しかった。
 殺そうとした筈なのに嬉しかった。
 殺せるからという理由ではない。
 単純に生きていたから嬉しかったのだ。
 なんでだろうとも思う。
 だけど嬉しかったものは嬉しかったのだ、と意味不明な言葉の応酬が思考内を駆け巡る。
 発作。
 何か"目的"を探そうとして思考をデタラメに走らせてそのうち消え去る一種の妄想。
 最後には何をやりたかったのかも忘れて呆然とするだけの自慰行為だ。
 これを一週間続けた。
 一週間続けても何も思いつかなかった。何も考えられなかった。
……もう。
 人生においての最終手段をとろうかと考えた時、体育座りをしていた足の先に何かが当たる。
 結標は少しだけ顔を持ち上げ、足に当たったものを確かめようと身体を動かした。
「……ディスク?」
 それはプラスチックのケースに入ったデータディスクだった。
……こんなのを持ってったっけ?
 疑問を走らす結標だったが取り敢えずの目的を見つけて少しだけ瞳に生気が戻った。
 そして先程よりも比較的早い動きでディスクを掴み、立ち上がって部屋の隅にあるパソコンへと向かう。
 電源スイッチを押して立ち上げると席へと腰を下ろし、ディスクをセットしてフォルダの中身を開いた。
 中にはこういった文章が書かれていた。

680 名前:672 投稿日:2006/12/07(木) 21:16:48 [ zgLoww0w ]

『一方通行の現状に関する最新情報と追加任務について』

 ビクリと結標は肩を震わす。
 何故こんなものが此処にあるのか。
 というよりも何故、こんなものが今更出てくるのか。
 疑問はその後恐怖となり、己の記憶を引きだして結標の精神を削り始める。
「ひ、あッ」
 カチカチと歯の音を鳴らしつつ結標はマウスを持っていない手で己の肩を抱いた。
 此処には居ないとは知りつつもやはり、恐ろしい。
 結標にとっての一方通行とはそれほどまでの恐怖の具現なのだ。
 だが、結標はそれでも指を動かしてテキストデータを読み進める。
 何故だかは結標自身もわからない。
 ただ"目的"を達しなければならない、その様な強迫観念に動かされたのか目と指が動いた。
 そして、見た。
『現在の一方通行はその能力のほとんどを外部に任せており』
 その文章に結標は一週間と少し前に聞いた一方通行の言葉を思い出す。
 彼は確かに言っていた。己の演算能力は今ではほとんど失われていると。 
『その演算機能のほとんどは実験体達の上位体である少女によって統括されているようだ』
 資料に小さな少女の写真が出る。
 病院の一室。
「――――?」
 そこで楽しそうに笑う少女は結標が知る顔に似ていた。
 超電磁砲。そのクローンである妹達。しかし、どちらよりも幼い容姿。
 まさか、この様な繋がりがあるとは、これも神様の悪戯というヤツだろうか。
『この命令の優先度は最低で構わない。しかし、出来ればこの少女を保護し―――』
 どうやらこれは以前所属していた組織から貰い受けて見ずにいたものの様だ。
 そもそも、その時の結標はその様な追加命令など受ける気すらなかったのだろう。
 だが、結標は既に文章の映ったモニターなど見ていなかった。
 脳裏に浮かぶのはあの最強の能力者。
 その能力者を支える少女。
 勝てる。
 ギチリと何か嫌な音を立てて、頭の中で得体の知れない歯車が噛みあう。
 アレに勝てば己が優秀だと証明出来る。
 そうすれば誰かが必要としてくれる。
 そうすればきっと"目的"だって山ほど出来る。自分が自分で居られる。
「あは」
 "目的"を見つけた。
 とても難しいけれどそれに見合った報酬のある"目的"。
「あはははは、ハ、はははははっは―――ッ!」
 狂った様に笑う結標。
 其の目は歓喜に満ちていた。
 一方通行を倒せばきっと誰かがまた自分を必要としてくれる。
 "人を簡単に殺してしまえるような"自分でも必要としてくれる。
 壊れたままの心で結標は歓喜を叫んだ。
 一方通行や白井達が戻れ、と言った道をまた進もうとしていた。
 だが―――。
 直後、その結標の歓喜の咆哮に呼ばれた様に、近くに凄まじい光と共に轟音が鳴り響いた。
 落雷。
「ひぅっ!?」
 ビクリと椅子から落ちた結標は素早く毛布に潜りこんだ。
 一週間と少しの引き篭もり生活はすっかり結標をヘタレと化していた。
「……うぅ」
 前途多難だ、と結標は己の情けなさを嘆いたのであった。


 わっふると唱えたら続いたりするかもとミサカはミサカは無謀にも言ってみたりする。

681 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/07(木) 21:19:47 [ KF5r1Yws ]
まっするまっする

682 名前:675 投稿日:2006/12/07(木) 21:31:05 [ avt4.NMk ]
>>680超GJ!!

   _  ∩
  ( ゚∀゚)彡 わっふる!わっふる!
  (  ⊂彡 わっふる!わっふる!
   |   | わっふる!わっふる!
   し ⌒J

結標スキーの希望( ゚∀゚ )キタ━━━

683 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/07(木) 23:28:35 [ 5yyC15Q. ]
世界の中心でわっふる!わっふる!を叫ぶ

684 名前:169 投稿日:2006/12/07(木) 23:46:45 [ VDpsAWE2 ]
>>672
わっふるわっふるわっふるわっふるぅ!!
予告の地の分が「淡希」になっているのに愛を感じました。
文暦も買えて面白いSSも読めて、今日は本当にいい日だったー。

>>670
たぶんあともう一回くらいは出番あるので、お楽しみに。

685 名前:672 投稿日:2006/12/08(金) 01:20:05 [ rkNmi1sw ]
絵板にイメージを描きこんでいたら時間がっ!
というわけでなんだか日付が変わりましたので、失礼を……。

今回は遭遇編。フラグは立っていません。

686 名前:672 投稿日:2006/12/08(金) 01:24:49 [ rkNmi1sw ]
 朝。
 久しぶりに感じる朝という感覚は妙に清々しいものだった。
 結標・淡希は布団を片付けつつ窓の外を見て太陽の眩しさに思わず目を瞑る。
「いい天気」
 思わず笑みを浮かべてしまうほどの晴天。
 どうやら夜中から朝方まで雨だったようで窓から見える地面も濡れているが、逆にそれすらも心地良い。
 結標は青色のシンプルな寝間着に包まれた身体で伸びを一つ、青い空を見つめる。
 雲一つ無いとはこの事、と言える程何も無い青過ぎる空。
 正直この家の惨状と交換して欲しい程だった。
「………」
 伸びを終えて後ろを振り返る。
 其処に待っていたのは現実。時々、ゴミの山。
 結標の能力である【座標移動】で一箇所に纏めたのは良いが、ハッキリ言えば処分に困る。
 頭が痛くなったのか思わず結標は両手で頭を抱える。
 一時的とは言え廃人同然になった結標はとある問題を抱えていた。
 その問題とは―――能力の低下。
 能力者にとっては致命的な問題である。
 精神状態がまだ安定していないのか、と罅割れている心に気づかず結標は首を傾げる。
 精神に異常をきたしている者は総じて自覚症状が無いとは誰の言った言葉か。
 勿論、例に外れず自分は大丈夫だと罅割れた心を補強している結標も気づいては居なかった。
「大丈夫。大丈夫。私はやれる。私ならやれる……ッ!」
 精神を集中して目の前のゴミの山と向かい合う。
 即座に脳内で計算式を展開。
 どうすれば最短でこの山をゴミ捨て場まで持っていけるかを思案。
 結論が出るまで十秒。
……少しずつ捨てていった方がマシね……。
 ガックリと肩を落とし、うなだれる結標。
 能力低下は思考能力にまで影響をきたしているらしい。
 体力自体は、そこは特殊なエキスパートを育成していた霧ヶ丘女学院出身。
 現代のお嬢様は時として力強さも求められる為それなりに鍛えているのだ。
 ちなみに現在は高校は停学中である。
 それもこれもあの事件がキッカケだが、どうやら『仲間』達も同じような処分になっているようだ。
 無事を聞いた時は錯乱していて気にもしていなかったが、こうして冷静になると、少し気になった。
「……ん、と」
 ゴミを袋に詰め、持ち上げる。
 かなり重いが、そんなものには負けぬと肩に担ぐ。肩に何かが勢い良くめり込んだ。
「―――ッ!」
 思わず声にならない叫びを上げてしまう。
 何事か、と見てみればゴミ袋の中間地点、そこが妙に尖っていた。
 プラスチックのディスクケース。
 昨日見つけた一方通行とその最強を支える少女の資料が入ったものだ。
 結標はそれを見て目を鋭くする。
 一方通行、学園都市最強の能力者。
 それを倒すため、そして、"目的"を手に入れるため、結標は粉々に砕け散った心をかき集めたのだ。
 勝てる、と己に言い聞かせる。
 勝利のため、玄関から出て直ぐ近くにある階段を降りつつ結標は思考を走らせる。
 まずは少女の確保。
 然るべき処置の後に一方通行を倒す。
 完璧だ。
 色々段階を抜かしている辺りが更に完璧さを強調している。
 結標は己の作戦の完璧さを確認して満足げに頷きつつ、まだ寝ぼけているな、と階段を降り終える。
 ゴミ捨て場にゴミを分別して置き、今度は先程と逆に階段を登り始めた。
 その間も結標は思考を止めない。
……やはり演算能力を補っているって事はなんらかの能力?でも、一方通行が言っていた事が気になるわね。
『あのクローンどもの電波の届かないトコに――』
 クローンという言葉が気になる。そして電波という言葉も何か引っかかりを得た。
 恐らくそれは御坂美琴のクローンである妹達の事だろう。
 どういう経緯で一方通行があの妹達と結託したのかはわからないが、一方通行は自らの力は前の半分と言っていた。
 それでもなおあの威力。
 あの恐怖。
 思わず思い出して自分の身体を両腕で抱く。
 少しの間、震えが止まらなかった。
「く、ハッ、ぁ」
 息が苦しい。恐い、もう嫌だ。戦いたくない。逃げて。
 甘ったれるな、と思う。
 砕けた心の断片が恐怖を叫ぶ。
 しかし、結標はそれを無理矢理意思で叩き伏せる。まだ終わるわけにはいかない。
 終わるのは、一方通行を倒せずに"目的"を手に入れられなかった時だけだ。
 格好の良いような言い草だが、結局は自分のためか、と結標は思わず自嘲する。
 身体を抱いた腕を解き、階段の上を見据える。

687 名前:672 投稿日:2006/12/08(金) 01:25:38 [ rkNmi1sw ]

 次の瞬間。
 階段の上から男の子が落ちてきた。
「ひぁっ!?」
 思わず受け止めてしまうが、衝撃を殺し切れずに背中を階段の踊り場に設置された手すりにぶつける。
 痛みと共に訪れるのは謎の生暖かさ。
 視線を下に向けるとツンツンとした黒髪が見えた。
「………」
 結標の時が止まった。
 状況を整理しよう。視線を下に向けてまず見えるのは寝間着に包まれた己のそれなりに大きな胸の筈だ。
 しかし、今は寝間着と黒髪。
 状況検証完了。
 誰かが胸に埋まっているのだと結標は判断し、取り敢えずは、投げた。
「ホブァーッ!?」
 愉快な掛け声と共に踊り場の手すりに叩き付けられるツンツン頭。
 結標は立ち上がって、目を回しているツンツン頭を見やる。
 結標と同じぐらいの年代に見える少年は身体を上下反対にしつつ、唸っていた。
「うぅ……あだだだ」
 どうやら少年は一時的に気を失っていたようだ。都合が良い。
 ふと、結標の横を猫が通り過ぎて行く。
 階段を優雅に下っていく姿はどこぞの貴族の飼い猫を思わせるような猫だ。
「ハッ!?なんで俺はこんなトコロで気を失ってるのでせう!?」
 少年が起きたようだ。しかも微妙に記憶が飛んで居るらしい。
 少年は上下逆になっていた身体を器用に回転させて立ち上がると結標へと向き直り、
「あ、なぁ、アンタ!ちょっと悪いんだが、猫見なかったか!?」 
 いきなり問答無用で詰め寄ってきた。
「か、階段を降りて行ったわ」
「そうか、ありがとう!」
 面を喰っていた結標へお礼を言うなり少年は凄まじい速度で階段を降りていった。
 あれなら何時こけてもおかしくはない。
 先程はたまたま結標が居たからよかったものの、下手したら大惨事だ。
「今度会ったら注意をしないといけないわね」
 地味に世話好きの結標は階段を上り、玄関へ向かいつつ対一方通行用への作戦を思案し始めた。


 8巻の文章から、組織の仲間からも結構好かれていた様だったので、実は世話好きなのではないかと邪推。
>>684
 それがマイジャスティス!コッチに変更してごめんなさ【座標移動】

688 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/08(金) 01:44:53 [ rY1gQFow ]
>672氏
GJ、おおGJ。どこからそんな文才が湧いてくるのか俺には分からんね
さりげなく忘れ去られてる上条さんが(´・ω・`)カワイソス

689 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/08(金) 08:47:20 [ rlf0lpb. ]
!!
……試しに「わっふるわっふる」って言ってみたら。本当に続きが出てきた。びっくり。

>>672
……わっふるわっふる。

690 名前:672 投稿日:2006/12/08(金) 11:15:38 [ TtF2Hy2c ]
>>675
やあ心の友よ

>>688
実は上条は作中では気絶?した状態の結標にしか会ったことがない。
そんな設定だった筈。多分恐らくきっとの不確定形三乗!

691 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/08(金) 23:21:03 [ Z7hNpeD. ]
>>672
確かそれで間違いない。

そしてまだまだ読みたいのでわっふるわっふる

692 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/09(土) 13:23:15 [ eTCjBj.2 ]
こんなに淡希スキーがいたんだ。
ちょっと感動。

さあ、皆で
わっふる!わっふる!

693 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/09(土) 14:45:01 [ HLYEy1m6 ]
わっふる!わっふる!
>>672氏に期待age

694 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/09(土) 15:10:06 [ QmrbwJR. ]
 その日、白井黒子は愛するお姉様への誘いを無下に断られ、傷心のまま一人繁華街へとヤケ食いに
やって来ていた。ブティックなども並ぶ界隈は、特に洋菓子店が競い合っている事で学園の女子によ
く知られている。つまりは大いなる欲望の街、女の子のウエストに毅然と立ち向かう職人達の街とも
言える。
 そんな誘惑溢れまくりにしては小綺麗な街並みを、黒子は歩いていた。
 今日はどの店に入ってみようか――そもそも食べる気満々の黒子は、脂肪への恐怖を思考から追い
出し、何軒も並ぶ店を端から順に見ていく。最近のブームはシンプルなチョコレートケーキで、どの
店も聞いたことのないカカオの銘柄を強調していた。どこぞの遠い国で大切に有機栽培されジャパン
マネーで買い漁られたカカオも、辿り着く先は一女子中学生の腹の中、無常である。
 すると、カラン、とドアベルを軽やかに鳴らし、視線の先にある洋菓子店から大きさの違う2つの
影が現れた。
 片方は、まるでアルビノのような白い髪に白い肌の、線の細い少年。かなり疲れた表情をしている。
 もう片方は――――

 白井黒子の鼓動は、冗談抜きで0.5拍ほど飛んだ。

 似ている、などという一言で表すのではとても足りない。顔の輪郭こそ丸みを帯びて幼さを見せる
ものの、それ以外のパーツはまるで60%に縮小しただけのようだ。格好は当然常盤台の制服では無
いが、薄い緑のワンピースと小さいシューズは、彼女が幼少の頃はこんな感じでした、と言われれば
すぐさま納得して写真を奪って空間移動で逃げるくらいのクオリティである。
「あアもう知るかボケ! 俺は帰るかンな!」
「えへへ、おいしかったよ、とミサカはミサカは次も来れるようにニッコリ笑ってみる」
 白い少年は、……なんだかこちらもどこかで見た事があるような気もするが、少女を置いて足早に
去っていく。
 そして。ミサカ、そう、ミサカと名乗った少女は、その後ろ姿をどこか嬉しそうに見ていたかと思
うと、その後を追い掛け始めた。
「あの……!」
 思わず黒子は少女を呼び止める。少し距離があったものの、黒子の掠れた呼びかけは届いたようだ。
 少女が振り向いた。

 ――――ああ。
 今度は意識が2秒ほど飛んだ。

 何故かと訊くまでもない。可愛すぎる。どこが可愛いかと訊くまでもない。すべてが可愛すぎる。
 黒子のお姉様は、いつも自信に満ち溢れた学園のレベル5。粗雑だが、時折見せてくれるきめの細
かい優しさなどが、カット前のサファイヤのように荒々しくも美しい。
 しかし目の前の少女は、まるで無垢なダイヤモンドのようだ。透明で、混じりっけのない瞳の色。
「ミサカに何か用なのかな、とミサカはミサカは首を45度くらい曲げてみる」
 ミサカと名乗る少女は、首を30度くらい曲げて言った。その仕草一つで、黒子の頭の中ではスタ
ンディングオベーションが止まらなくなっていた。

 ……だが、ここで敢えて黒子は考える。この少女は一体何者なのか?

 有意な回答が一つ以上出るとは思えない。たったひとつの答えとは、つまり少女は御坂美琴の妹な
のではないか、という、ありきたりだが実に素晴らしいものであった。
「ええ、と……」 黒子は少女と視線の高さを合わせる。「お名前は?」
「ミサカの名前はミサカ20001号、ユニークネームは打ち止め(ラストオーダー)だよ、とミサ
カはミサカは見知らぬお姉さんに優しく教えてみる」
 にまんいち? らすとおーだー?
 耳に聞こえてきた音に既知の単語を当て嵌めてみようと試みるも無惨な失敗に終わり、黒子はにこ
にこと笑う少女ミサカから顔を逸らして次の質問を考える。そう、ここは一発勝負に出るべきだ。白
井黒子は立ち止まらないと決めたのだから……!
「あなたは……その、御坂美琴さんの、妹さん、なの?」
「うんそうだよ、とミサカはミサカは少し自慢げに胸を張ってみる」

 ガガッ、と音を立てて黒子の背後に雷が落ちた。
 黒子でも最大級に驚いた時は雷くらい落とせるのである。

695 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/09(土) 15:11:28 [ QmrbwJR. ]
「そ、そう……やはり」
 ここここれはいわゆるひとつの運命の出会いというものなのではああああぁぁァァ!
 黒子は歓喜に打ち震える。お姉様の妹は、それはもうお姉様の妹としてのレベルは5を超えている
と逝っても、もとい言っても過言ではない。独断でレベル6認定。そんな、あまりの可愛さに加え、
まるで無断でアルバムを見ているかのような背徳感もプラスされて、正直どうにかなっちゃいそうな
黒子である。ケーキ屋に入ってもいないのに涎が出てきてもおかしくない。ごくりと唾を飲みこむ。
「わ、私は白井黒子と言います。御坂お姉様の……ルームメイト、ですわ」
 おおー。とミサカ妹は素直に驚いて、
「いつもオリジナルがお世話になっちゃってます、とミサカはミサカは大人ぶってお礼を言ってみる」
 オリジ……?
 いや、そんな事はどうでもいい。
「と、ところで、妹さんはここで何をしていたのです?」
「テレビに出てたチョコケーキを食べにきたの、とミサカはミサカはおいしかったので店の前で宣伝
してみる」
 そのケーキが余程おいしかったのだろう、ミサカ妹は幸せそうに笑う。
 ちなみに黒子は、今すぐ空間移動で拉致ってしまうのを踏みとどまるので精一杯だ。むしろ拉致っ
てから話せ、そうだその方が効率的じゃないのかしら? という熱狂的右脳の申し出を、若干冷静な
左脳が必死に断っている最中である。
「そ、そう。ええと、それでは……あ、そうですわ」
 ぴこん、と黒子の頭上に音符が浮かぶ。
「私も、その、ケーキを食べに来たのですよ。だから、妹さんもどうですか?」

 将を射るには先ず馬を射よ。
 昔の人は良いこと言ったものだ。
 普段軽視しがちな国語もやはりやっておくべきなのだ、と黒子は黒子は現代の教育システムに感謝
してみた。

「そ、それはとっても魅力的なお話だなぁって、ミサカはミサカはケーキの味を思い出して動揺して
みる」
「でしょう?」
 にっこりと微笑む黒子は、ここまでのテンパった状況から徐々に脱しつつあった。
 それにしても、と思う。お姉様は、自分に妹が居る事など一言も話してくれなかった。なんとイジ
ワルなのか。でも多分あの人の事だから、妹を紹介するなどというシチュエーションが恥ずかしいに
決まっているのだ。だからお姉様は、黒子には教えた方がいいかしら、でも改めてそんなこと言うの
もな、ああンどうしましょう、なんて風に言い出せないのだ。
 うわーその状況もとんでもなくこっ恥ずかしいですわ、と脳内黒子は悶える。
「子供は素直に言うこと聞くもんだーって言うし、ミサカはミサカはやぶさかではないかも」
「ええ。いい子ですわね」
 思い切って頭を撫でてみる。首を窄めてくすぐったそうにするミサカ妹。あまりの可愛さに思わず
発動しそうになる空間移動。正直、今ならレベル5判定の能力を使うこともできそうな黒子である。
ええ、やれと言われれば学園都市の外まで跳んでみせましょう。
「じゃあ、さっそく――――」

「打ち止めではないですか、とミサカは咄嗟に呼び止めます」
 目の前に立った、その見知らぬ――いや、見知り過ぎている少女の登場に、黒子の鼓動は冗談抜き
で1拍飛んだ。

696 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/09(土) 15:12:44 [ QmrbwJR. ]
「お、お姉様!?」
 しかし、その御坂美琴……に似た誰かは僅かに目を大きくして、
「いえ、わたしはミサカではありますが、あなたのお姉様ではなくシスターズ14009号です、と
ミサカは誤解を解きつつ簡単な自己紹介を行います」
 しすたーず? いちまんよんせんきゅう?
 またしても出現した謎単語を強引にパージし、黒子は慌てて聞き返す。
「お、お姉様……では、ありませんの?」
「はい。わたしは御坂お姉様の妹です、とミサカは今あえてそういう説明をします」
「い、いもう、と……」
 収まっていた混乱が一気に加速し、黒子はごちゃごちゃになった頭を整理するように、ゲンコツで
叩く。なんだここは。アルカディアか桃源郷か、はたまた天国一丁目あたりまで来てしまったのか。
年齢も、性格も異なる2人のお姉様は降って沸いたかのように現れ、その視線は黒子に向いている。
ひょっとしたら『妄想具現』みたいな新能力じゃなかろうか。量子効果によるパーソナルリアリティ
こそが能力の基礎だと言うのなら、こんな有り得ない現実が有り得る事があるのかもしれない。
「あの」
「ひゃ、ひゃいっ?」
 思い切り裏返って答える黒子を、心配そうに新ミサカ妹は覗き込む。
「かなり汗をかいていますが大丈夫ですか、とミサカは少し心配します」
 しかも今度のお姉様はなんだかとても優しい。
 ……超能力万歳! もう頭の上に浮かんだ吹き出しの中で万歳三十唱くらいはしている黒子。生ま
れてこの方、ここまで学園都市に感謝した事は無かった。そしてこれからも無いであろう。まさに空
前絶後。今、黒子の人生はバラ色を通り越して七色くらいにはなっている。
「へ、平気、ですわ。ええ」
「失礼します、とミサカはハンカチを取り出します」
 ハンカチをポケットから出した新ミサカ妹は、黒子の額にそれを当てる。
「ひゃっ!?」
 びくりと振るえた黒子を、まじまじと覗き込む新ミサカ妹。真っ直ぐに投げ掛けられた瞳は、真剣
な色を湛えて黒子の顔を捉えて離さない。いつも自分を見て欲しいと訴え続けている黒子ではあった
が、いざそれが叶ってみると我慢できないほどに恥ずかしいのであった。
 ――ああもういつもワガママで御免なさい。これは夢か幻か、ともかくこのチャンスに穴が開くほ
ど見て欲しい。と言うかむしろ穴を開けて欲しい!? ……って何言ってるんですの!?
「なんだか、貴女はやはり顔が赤いようです、とミサカは熱を測ってみます」
 冷たい手のひらに黒子の前髪が掻き上げられ、お姉様の顔が迫ってくる。黒子が身を竦めて目を閉
じると、ピタリ、額と額がくっついた。

 ふわりと香る御坂臭に、黒子はふらりとよろける。
 お姉様の顔をした人物に、こうも丁寧な扱いを受け、しかもキスまであと数センチ。
 ちょっと動かせばちゅっと。
 ちゅっと。

「あ……う……」
「やっぱり変だよねぇ、とミサカはミサカは見上げてみる」
 隣で様子を窺っていた小ミサカ妹は、心配そうに眉を寄せる。
 しかし黒子は、その問い掛けに答える事はできなかった。
「お、おねぇ…………」
 ふにゃぁ、とケーキ屋の前に崩れ落ちたからである。
 ――白井黒子、衝撃の初体験であった。



 黒子が目を覚ますと、見慣れた天井が広がっていた。
 常盤台中学学生寮の一室。黒子とお姉様の部屋である。
「あ、起きたの?」
 ベッドの脇に立っていた影が、黒子を見下ろしている。
「……お姉様? あの、私……」
「え、えーっと……まったくアンタってやつは、その、道端で倒れてたって言うじゃないの」
 何故かしどろもどろになりながら、黒子のお姉様は変に呆れた風にそんな事を言う。
 ――――夢?
「あの、……お姉様の……妹って……」
 は? と美琴は肩を竦め、
「なに? しょーがないわね、もう。明日は風紀委員は休みなさいよね」
 黒子は、小さく溜息をついて、謎の苦笑を浮かべるお姉様を見上げる。
 無邪気でも親切でも無い、けれどそれはまさしく黒子のお姉様に違いない。ふてぶてしく、自信に
満ち溢れていて、しかし人のことをよく見て気にしてくれる、そんな、
「てかケーキ屋の前だったんだって? アンタひょっとして食べ過ぎでダウン?」

 黒子、渾身の空間移動は、布団ごと美琴の頭上に展開した。

697 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/09(土) 15:13:58 [ QmrbwJR. ]
やっつけで書いたらオチが酷い。ゴメンナサイ

ところで、したらばって書き込み制限どれくらいなんだろ……。

698 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/09(土) 15:44:33 [ HVfoHUKI ]
>>697
確かに白井が妹達や打ち止めを見つけたら確実に愉快暴走するだろうと思うなぁ。
>>684
あの三人が一同に会するとは……続きが凄まじく楽しみですなぁ。
あと、コメント感謝なのですよー。頑張りますっ。

それでは声援に感謝しつつ、続きを投下ー。

699 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/09(土) 15:46:11 [ HVfoHUKI ]
 ゴミを全て捨て終わり、戦争の跡地と化した部屋は妙に平然としていた。
「んー、スッキリしたわ」
 結標は肩に手を当てて首を何度か鳴らしたり、ついでに改めて伸びをして、腰を曲げたりしてみる。
 それと同時に気づいた事があった。
 脇腹。
 そこに接している寝間着の生地に少し変化がある。
 そこだけ、赤く変色しているのだ。
「………ッ」
 それを見た直後、結標の身体が嫌な汗を出しはじめた。
 急いで押入れに押し込んであった救急箱を取り出し、寝間着を捲り上げる。
 赤の色がこびり付いた白い自分の肌。
 どうやらほとんど固まっているようだが、あの事件で白井につけられた傷が開いたようだ。
 少し何も考えずに動きすぎたか、と結標は眉を顰めつつ救急箱を開けて治療を始める。
 傷が痛むのを我慢して傷に薬を塗りつけ、その上から包帯を巻きつけるだけの簡易作業。
 こんな状態ではあの最強の能力者に勝てる筈が無い、などという弱音は吐かない。
 万全を期すまで待てばいい、などという作戦をとることも無い。
 というよりもそもそも、結標は"それすら"も思いついてはいないのだ。
 重度とは言えないが、決して結標が心に負った傷は浅くは無い。
 あの事件を境に、色々な意味で結標は既に"壊れている"のだから。
 治療を終え、余った包帯を鋏で切り取って救急箱に収めて蓋を閉める。
「お気に入りだったんだけど……ねぇ」
 脇腹部分が生地の青色に反逆するように赤くなった寝間着を見て結標はため息をつく。
 クリーニングに出すわけにもいかないし、結標には残念ながら衣服についた血痕を落とすような技術は無い。
 何故かテーブルの上に置いてあった【爆熱殺菌掌】という商品名の上にむさ苦しい男性がプリントされた洗剤は、
 使うと落とせるとか落とせない以前に、生命の危険とかそういう方向でやばい気がする。
 というか、何故そんなものを買ってきたのか。
 思い返すが、見事なまでに記憶に無い。
 恐らくあの事件から数日も経っていない錯乱した精神状態の時に買って来たのだろう。
 明らかに混ぜるな危険の雰囲気を醸し出すサムズアップした筋肉質な男性の絵が目立つ洗剤を横目で見やり、
 一瞬見た後視線を逸らすと、服を手に入れるため結標は一枚扉を挟んだ隣の部屋へと向かった。
 扉を開ければ、そこはクローゼットだけが一つ隅に置いてある寂しい部屋。
 そこにも達磨の形をしたカキ氷機や他にも使用法不明の謎の商品が幾つか床に転がっていた。
 錯乱状態の自分は本当に何を考えていたのだろうと今更ながら自己嫌悪に陥る。
……大丈夫。私は大丈夫。
 罅割れた心に何とか言い聞かせて立ち直るまで数秒。
 すぐに気持ちを切り替えて、クローゼットの扉を開けた。

 即座に閉めた。

「……他の服、あったかしら?」
 今日は絶好の買い物日和だ。
 対一方通行用の作戦を考えるついでに服を調達するのも良いだろう。
 向きを変えて歩き出した結標の後ろには、どす黒い空気を放つクローゼットがただ静かに鎮座していた。

700 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/09(土) 15:47:57 [ HVfoHUKI ]
 結局他の服は見つからず、床に落ちていた学校で使う様な紺色のジャージを着る事となった。
 今日何度目の溜息かしら、とぼんやり考えつつ他に必要なものをチェックする。
 布団などは問題無し。寝間着とクローゼットの服は捨てるしかないだろう。
 と、冷蔵庫を覗いてみれば、丁度食料もほとんど切れて居る状態だった。
 恐らくは昨日食べたものでまともな食材は最後だったのだろう。
 なんともタイミングが良いものだ、と結標は偶然に感謝する。
「お腹もすいたし……っと?」
 自らの腹に手を当てたトコロで結標は気づく。
 そういえば最後にお風呂に入ったのは何時だろう、と。
 その日数を考えて戦慄しつつ恐る恐る自らの髪に触れる結標。
 触れた髪はとてつもなく乾燥しており、手入れも何もあったものではない。
 何かに例えるとするならば、それはミイラの様な状態だった。
 髪は女の命というが、結標もその例を漏れずそれなりに大切にしていたのだ。
 まずはお風呂か、と肩を落とし項垂れつつ風呂場へと向かう結標。
 最近項垂れる回数まで多くなっている様な気がする、と更に落ち込むような事を考えつつ足を動かす。
 ふと自分の脇や肩に巻かれた包帯を見やる。
 包帯は表面防水仕様なので問題無いとしても、まだ湯船に浸かるのは控えたほうが良いだろう。
 そんな事を思っている間に脱衣所に到着。
 すぐさまジャージと下着を脱いで風呂場へと足を運ぶ。
 そして、扉を開けて正面に設置してあるシャワーを手に取りお湯を出し始めた。
 温度を調整して、近場に置いてあったシャンプーを取り、頭を濡らしてからそれをつければ準備完了だ。
 瞬く間に頭の上半分が白い泡に包まれる。
 暫くの間。
 その間はずっと丁寧に、それでいて豪快に洗う音が風呂場に響き渡っていた。
 更に水の勢いを強くしたシャワーで勢い良く髪を洗い流す。
 その際に泡が目に入ったりして少々痛くなったが、それもご愛嬌というものだろう。
 余韻に浸りつつ、ついでとばかりに検討していた対一方通行用の作戦を改めて頭の中に走らせる。
……真っ向勝負では間違いなく一瞬でやられる。かと言って人質作戦も私のプライドに反するのよね。
 一番簡単なのは、恐らくだが一方通行を支える少女を人質に取る事だ。
 だが、それは僅かばかり、情け程度に残った結標のプライドが許さない。
 戦いの場にあるものは何でも利用するのが結標の基本的なスタイルだ。
 しかし、流石にこの様な少女を人質に取るまでは落ちぶれてはいないと結標は自負している。
……まあ、利用する事には変わらないんだけど……となると他に考え付く方法は……。
 少女を手なずけてコッチの味方にしてしまう。
……。
 少しでも良いかも、と思ってしまった雑念を振り払うようにガシガシと音を立てて頭を強く掻く。
 というか、場合によっては人質に取るよりもかなり情けない様な気もする。
「まぁ、取り敢えずは……買い物しながら考えるとしましょうか」
 軽い足取りで風呂場から出て、下着などを入れる棚の上に積んだバスタオルを一つ取り身体を拭い始める。
 ドライヤーを使って髪を乾かして櫛を入れて念入りに整え、お気に入りの後ろで二つに結う髪型に整える。
 よし、と最後に脱衣所に設置してある鏡で何度か左右を向いておかしいところは無いか確認。
 問題無し。
 下着を付けてジャージを着込み準備完了。
 ジャージの上着の方は前を開けておくのがポイントだ。
 中には白のインナーを着込んでいるので、動きやすさの面でも他人の目の面でも問題は無い。
 後は財布を持って買い物に行くだけだ。
 そういえば財布はどこにやっただろうか、と多少御機嫌になりつつ脱衣所を出て行く結標であった。

 ...To Be Continued


 今回はちょっとグダグダと準備編だったりしましたりっ!
 この部分はカットしようかと思ったのだけれども、やはりシャワーシーンは必須だと―――
 あ、ごめんなさい石は投げ【マタイの伝承式硬貨袋】

 さて、これから打ち止め達も動き出したりするわけですが……。
 どうするべきやら。

 ○三択――いくらでも選びなさい(正解は貴方の心に)
 答え①素敵で過激な結標・淡希は突如対一方通行用の作戦を思いつく。
 答え②白井・黒子も混じってハチャメチャになる。
 答え③いきなり一方通行と出会う。現実は非情である。

 結標ならロードローラーだ!が出来る……そう思っていた時期が私にもありました。
 それでは、長文失礼いたしたぜよっ!次回は更に長くなる予定ですが。

701 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/09(土) 17:51:35 [ /roUAt4s ]
GJ!
…3希望!!3希望!!

702 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/09(土) 18:48:16 [ HLYEy1m6 ]
GJ!
>>701
あれ?俺書き込みしたっけ?

703 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/09(土) 18:55:51 [ 7RHkv6SU ]
>>700
GJ!!!
3!3!スリィィィイー!!

704 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/09(土) 22:38:11 [ dYTmC/ps ]
>>700
GJ!!
せっかくなので答え②を推薦。

―――ところで>>672氏。某選択形式スレみたく先に五票入ったものに決定、か?

705 名前:672 投稿日:2006/12/09(土) 23:03:08 [ mFNdcsGI ]
>>704
五票と言わず一票でも新しい意見でも面白そうならかなり反映される予定ですよー。
まぁ、一応大まかな道筋はありますが。

>>701-703
皆、そんなに結標をワタワタさせたいんだなぁ。おまえら大好きだ。

706 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/10(日) 00:29:42 [ iDzgNPpI ]
>>672
うお、続きキター!
俺はどんなオチでもいいからどんどん読みたい。

707 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/10(日) 01:22:22 [ QpbaaQjg ]
>>672
GJ!続きはやいな。
③でFA。

>>694
GJ!10巻での御坂の危惧は正しかったわけだw
>黒子は黒子は
吹いたw

708 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/10(日) 13:19:23 [ zBB/hIGI ]
一方通行と遭遇
   ↓
一方は淡希を無視

709 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/10(日) 21:45:28 [ sDySZoag ]
勝手に>>42の続きを書いてみた

『とある魔術のMissing』

「しばらく旅をするぞ、小僧支度をせい。」
「はい?」
唐突な一言、少年は訝しげに相手の顔をうかがう。
向かいに座るのは小柄な少女。その相貌には左右非対称の奇妙に歪んだ笑みが浮かぶ。
内部の精神が染み出したようなその陰鬱で老獪な笑みは、幼さを残す容姿と相まって得体の知れぬ怪物のような印象を抱かせる。

「ええと、旅って…どこに?」
恐る恐る、少年は尋ね返す。
「学園都市だ。」
「学園都市?」
予想外という以前に、ひどく違和感があった。
学園都市、それは東京都の実に3分の一もの面積を占める、無数の教育・研究機関によって構成された最先端“科学”の梁山泊。
少年にしてみたら、目の前の少女にはもっとも不釣合いな場所に思われた。

「意外か?」
からかう様に少女は言う。
「以外というか…、あそこは科学の世界でしょう?」
「そうだ、あの街は“科学”の世界だ、我ら魔術の徒は足を踏み入れることは許されぬ。」
「?」
「魔術師が学園都市に入り込むと言うのは、オカルトが科学の領分を侵すということだ。それは今ある世界を崩すということだ。」
「つまり、魔術師は学園都市に入っちゃいけない、という決まりがあるんですか?」
「然り」
少年はオカルト世界には詳しくない、それでもオカルト世界にも表の世界と同様に人や物の繋がりがあることは漠然と理解できる。
恐らく、それらの間では学園都市への不干渉は暗黙の了解となっているのだろう。
そこまで考えて少年は気づく、魔術師は学園都市に干渉してはならない。言い返せば
「学園都市には、魔術師が狙う価値を持つ“何か”が在る。」
「惜しいな、」
ぽつりと
「科学と魔術の相互不干渉はその様な些細な理由ではない。もっと巨視的な、世界の枠組みを崩さぬためのものだ。」
だが、と
「あそこには、私が狙うモノがある。科学と魔術の均衡を崩し、数多の魔術師を敵に回すだけの価値の在るモノがな。」
そう言って少女は笑みを濃くする、目の前の少年から血の気が引くほどの笑みを。

710 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/10(日) 21:46:56 [ sDySZoag ]
『冬休みに入り次第、学園都市に向かう。長旅になるやもしれぬから相応の準備をしておけ。』
そう言い残して、少女は少年の家を後にした。
「まったく」
嬉しくない。冬休みに同級生の女子と二人で旅行、傍から見ればうれし恥かしのシチュエーションだがまるで心が躍らない。
当然だ、そばに居るだけで息が詰まるような化け物と、怪盗の真似事をせねばならないのだ。
(陛下だったら、必ず止めるだろうな)
いつもの様に冷淡な声で「関わるな」と告げる、そんなかつての友人・空目恭一の姿が脳裏に浮かんだ。
だが、少年はその忠告に従うことは出来ない。
友人たちを裏切り、あの忌まわしき魔術師の力を借りてしまった少年には、もはや少女に逆らうという選択肢は残されていない。
少年・近藤武巳は少女に―少女の外見をした魔術師・小崎摩津方の従者に過ぎないのだから。


所変わって、数日後の学園都市。
「十叶詠子かぁ」
相も変わらずずつんつん頭の上条当麻は、写真を片手に学園都市のゲートの出口に突っ立っていた。
昨晩の電話で、父・刀夜が突拍子もなく幼馴染を連れてくるとのたまいやがったため、くそ寒い中わざわざ出迎えに来ているのである。
ちなみにインデックスは姫神と遊びに行っている。本当は幼馴染の出迎えに自分もついて行くと言い張っていたのだが、なんとか言い包めて
遊びに行かせた。どうせ数日は学園都市観光をする予定らしいので顔合わせの機会は後日でいい。
(だいたい幼馴染つったって幼稚園のころの話だろうが、今さら会う必要があるんですかい。)
正直言って、当麻にとって冬休み早々のこの幼馴染イベントは憂鬱だった。
刀夜の話からすると、その幼馴染は学園都市に来る前の当麻(そのありえない不幸っぷりゆえにつらい幼少期をすごした)にとって数少ない
心許せる人だったらしい。ご近所さんだったその子は、よくよく上条家にやってきては幼い当麻の遊び相手になってくれた、と懐かしそうに
刀夜は語っていた。そして当麻が学園都市に送られた後も、上条家との交流は続いていたらしい。

当麻とて、その幼馴染を暖かく歓待したいと思う。しかし、怖いのだ
「記憶が無いしなぁ…」
当麻は怖かった、大事なはずの人を、自分を思ってくれる人を傷つけてしまうのが。
当麻は知らない、自分の過去を、幼馴染との思い出を。そのことが彼女を傷つけてしまうのがとてもとても怖かった。
インデックスを連れて来なかったのも同じ理由だ。記憶がないことを打ち明けるにしろ、或いは騙し通すにしろ、なんとか今日中に折り合いを
つけねばならない。最悪でも、幼馴染への不自然な態度からインデックスに記憶喪失がバレルのは避けたかった。大切だった人を傷つけ、さら
に大切なインデックスまで傷つける、そんな最悪中の最悪は避けたかった。


「当麻〜」
物思いに耽っていた当麻は、自分を呼ぶ声に顔を上げる。
ちょうど父・刀夜が一人の女の子を伴ってゲートから出てきた所だった。
「おう、こっちこっち!」
暗い考えは腹にしまい、当麻は元気よく手を振ってみせる。何はともあれ辛気臭い顔で出迎える分けには行かない。
やがて、そばにやってきた年上の少女に当麻はまずは、と挨拶
「ええと、お久しぶり。詠子さん。」
「昔みたいに読子ねーちゃんでいいよ。“幻想殺し”君。」
そう行って少女は微笑んだ。
どこまでも透き通った、本当に邪気の無い微笑みを

711 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/10(日) 21:52:31 [ sDySZoag ]
無断で>>42の続きを書いてみました。
当麻の“幻想殺し”って誰が名づけたのか?と考えるとやっぱ詠子先輩かなぁ、と。

712 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/10(日) 22:05:23 [ RUBmq/5g ]
>>711
おっしゃあ!!
二日連続一番乗りGJ!!


ぶっちゃけ詠子は当麻の事を幸せな〜君と呼ぶと思っていた脳内設定では
例えばこんな感じ
「君は幸せな歯車だよねぇ。
でもなんでそんなに大切な位置にいるのに君は自分の事を不幸だと思うのかなぁ?
君がいなければ物語の仕掛け時計は動き出さないのに
それはとってもとっても素晴らしい事なんだけどねぇ」
詠子風に書いてみた

713 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/10(日) 22:16:11 [ sDySZoag ]
>>712
感想サンクス
めっちゃいい台詞なんだけど、詠子が言うと何かありそうで嫌だw

714 名前:672 投稿日:2006/12/11(月) 01:45:25 [ h.YgEsPA ]
>>701-708
というわけで、選択肢を意識しつつ書いていたらこんなん出来ました。
……時間がなかったから文が乱雑だけど気にしたら負けよ!

というか上の序章だけで8005文字かぁ、って序章で使いすぎたー!?
では、続きを失礼致しますぜよ。

715 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/11(月) 01:48:38 [ h.YgEsPA ]
 事の始まりは少女の何気ない一言だった。
「ショッピングというものに行ってみたいってミサカはミサカは頼んでみたり」
「あァ?」
 茶色いショートカットの少女は病院のベットに掛かるテーブルの上に乗っていた。
 青色のワンピースに身を包み、頭頂部から出ている一本の毛が風も無いのに揺れている。
 其れに対して眉を顰めるのは少女の目の前でベットに横たわる白髪の少年だ。
 見ただけでは男か女か判別不可能の中性な顔立ちと体つき。
 学園都市内にその異名を轟かす白の最強能力者―――"一方通行"。
 その最強の能力者は現在、目の前の少女を見て面倒臭そうに首を傾げていた。
 少女は一方通行の次の言葉を待つかのように輝いた瞳で一方通行を見ている。
「……」
「お?お?もしかして好感触?ってミサカはミサカはかなーり期待してみる」
「寝ろ」
「いえーい!なんか久しぶりに聞いたよ、ってミサカはミサカは久しぶりに拳をつき上げてみたり!」
 打ち止めはヤケクソ気味に拳を天に向かって突き出すが、一方通行はそれを面倒臭そうに見ていた。
「そもそも、俺ァまだ動けるような状態じゃねェだろうがよォ」
 一方通行は八月三十一日にとある事件に巻き込まれ普通なら死んでもおかしく無いような傷を負っている。
 その事件とは、この目の前の少女―――"打ち止め"を中心に起こった事件だった。
 とある研究員が埋め込んだウィルスに侵されていた打ち止めを一方通行が自らの傷と引き換えに助けた。
 端的に言ってしまえば、そんなところだ。
 その間にも色々な話が詰め込まれているのだが、今は割愛するとしよう。
 しかし、そのウィルスを消す際に記憶も一緒に消去された筈の少女は事もあろうに自らその記憶を補完して
 こうして目の前でにこやかな笑顔を一方通行へと向けていた。
 その上、何故か事件の後も済し崩しに一緒にいる形となっていた。全く持って謎である。
「あ、その点については大丈夫、ってミサカはミサカは胸を張りつつ言ってみる」
「あン?」
 打ち止めはなにやらベッドから飛び降りると病室の隅へと向かう。
 其処には何時の間にやら黒い紙袋が置いてあった。
 怪しい。とにかく怪しい。
 レベルを強いて言うならば、開けるな危険のオーラを醸し出すほどの怪しさだ。
 というか、黒い紙袋なんてとてもじゃないが普通の生活では滅多に御目にはかからないだろう。
 そして、打ち止めはご機嫌に鼻歌を歌いつつ黒い紙袋の封を開け、中へと手を突っ込んだ。
 暫く中を探っていた打ち止めだったが、何か見つけた様に笑顔になり、腕を紙袋から引っこ抜く。
 その手にあるのはチョーカーの様な黒い帯の付いた小型の携帯音楽プレーヤーのようなものだった。
 じゃーん、と黒い帯の先に付いた小さい棒状の機械の様な物を揺らしつつ一方通行へと向き直る。
「何だァそりゃ」
「演算補助のための変換機ってミサカはミサカはもったいぶらずに答えて見る」
 加えて言うが一方通行は八月三十一日の事件で傷を負い、その最強の所以たる能力の大半を失っている。
 現在ではこの視線の先でほれほれ、と楽しそうに変換機と呼ばれた物体を揺らす少女と、
 その姉妹の様な存在である"妹達"によって演算能力の大半を補っている状態だったりする。
「よし」
「おぉ、アナタがそこまで良い笑顔を見せるなんて始めてかもってミサカはミサカは喜びを体で表現してみたり」
 一方通行は彼を知る者が見たならば、即座に裸足で逃げ出すようなとてつもなく良い笑顔で頷きを一つ。
「そこに直りやがれ、クソガキ」
「ひゃっほう、やっぱりこうなるのねー!ってミサカはミサカは現実から目を背けずに嘆いてみる」
 打ち止めは其の場でよよよ、と座りながら手で顔を隠して嘘泣きをし始めた。
 一方通行は気にせずに寝転がり、頭まで全身を布団で包んで寝る準備をし始める。
「あーッ!ってミサカはミサカは指差して驚いて見る!人が嘆いているのに放置して寝ようとするだなんて、
 それでも人なの!?ってミサカはミサカは抗議してみたり!というか、これはアナタのためでもあるんだよー!
 ってミサカはミサカは必死に叫んでみる!」
「あン?俺のためだァ?」
「そうそう、ってミサカはミサカは内心ホッとしつつ正座してみる」
 今まさに飛び掛らんとしていたのか、打ち止めはベッドに掛かるテーブルの上に乗っていた。
 そのまま打ち止めは正座しつつ目を閉じて腕を組み、尤もらしく何度か頷く。
「実はリハビリも兼ねてたりするのってミサカはミサカはあのカエル顔のお医者さんが言ってたって言ってみる」
 ほほゥ、と一方通行は改めて体を起こし、打ち止めを見やる。

716 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/11(月) 01:49:34 [ h.YgEsPA ]
「で、本音は?」
「暇だからどこかに連れてって、とミサカはミサカは正直に本音を――って、ふぎゅっ!?あ、やめてやめて。
 布団でくるむのは御勘弁をってミサカはミサカはなんだか前も言ったことあるような台詞を言ってみるー!」
 結局カエル顔の医者が回診に来るまでこの馬鹿騒ぎは続くのであった。

   ○
 
 そして現在。
「なんで、こうなりやがンだァ!いきなり蒸発するかァ、普通よォ!?」
 多くの人々が出歩く街の中心で、病院着から私服に着替えた最強の能力者は天に向かって叫ぶ。
 詰まるところ、連れ添いであるはずの打ち止めと完全無欠に離れ離れになっていたのだった。
 その叫びを聞いて一部過去に彼を襲撃して返り討ちになった不良達がすいませんでしたー!、等と
 叫んで逃げて行くが、一方通行はそれらは全く気にせずに周囲を見渡した。
 見渡す限りの人、人、人、馬、人。
 見事に人だらけである。正直気が滅入った。
 打ち止めの身長はそこらの小学生と変わらない。
 この人の多さでは埋もれてしまい、見つけるのはとてもでは無いが無謀というものだ。
 しかし、一方通行は、そんな事など知らないとばかりに足を動かし始める。
「あァ、なンでこンなトコで居なくなりやがンだァ……俺に恨みでもありやがンのかァッ!?」
 恨み言を吐きつつ、一方通行は身体の状態も気にせず突っ走りはじめた。
 速い。
 地面に敷き詰められたアスファルトを砕くとまではいかないが、相当強い踏み込みの音が周りに響く。
 その音に驚き、道を開ける人々。
 一方通行は打ち止めを探して周りを見渡しつつ、モーゼの十戒の様に割られた人の群れの中を走っていく。
 しかし、それでも人の流れというものは常に変化するものだ。
「きゃぁっ!?」
 突如響く悲鳴。
 走ってでもいたのか、開いた道のど真ん中に飛び出して一方通行にぶつかり、勢い良く尻餅をつく少女。
「あァ?悪りィな、ぶつかっちまったかァ?」
 一方通行はそれを見て、自らにかかる慣性を適当に反射分散させて急ブレーキをかけた。
 一応、一方通行も僅かばかりの礼儀作法というものは身に付けているのだ。
 それでも、打ち止めと出会ってから大分マシになったという程度だが。
「あたた……うぅ、あなた、あぶな――ひッ!?」
「あン?」
 少女は一方通行の姿を見るといきなり怯えた表情になり、固まってしまった。
 一方通行は訝しげな顔をして目の前の少女を見る。
 紺色の、前のチャックを開けたジャージを着込み、長髪を後ろで二つに結った髪型。
 その髪の下には今にも泣き出しそうな怯えた少女の顔。
 どこかで見た事があった、と一方通行は思う。しかも、極最近に。
「ひ、あ……」
 一方通行が首を捻りながら誰だったか、と考えている間、少女は起き上がろうともせずに固まっていた。
 どうやら腰が抜けているようだ。
 ちなみに一方通行には怖がられる心当たりはありすぎる程あったりするので相変わらず気にしてはいない。
 その間にも一方通行は思考を走らせ、記憶を掘り起こす。
 学園都市最高の頭脳を持つ一方通行の記憶力は伊達では無い。
 目の前の少女と一致する姿を検索する。
 そうして数秒後、該当したのは―――、
「あァ、そうだ。オマエはあれか。あン時の三下かァ?」
 ビクリ、と少女の肩が跳ね上がる。
 少女は咄嗟に立ち上がって逃げようとするが、一方通行はそれを許さない。
 逃げようとする少女の両肩を掴むと、少女が以前に見た事があるような邪悪な笑みを浮かべて言った。
「丁度良い。オマエ、確か"空間移動"出来たよなァ?ちょっとやって貰いてェ事があンだけどよォ」
 一方通行の目の前では、少女が寒さに震えるハムスターの様に涙目で凄い勢いを付けつつ頷いていた。

717 名前:672 投稿日:2006/12/11(月) 01:55:02 [ h.YgEsPA ]
嗚呼文字数 嗚呼文字数よ 嗚呼文字数 字足りず

……いや、前と後で無駄にレス、失礼します。石は投げないでー!
というわけで、文字数を気にしていたら、こんなくっつき方を……クッ!
限界書き込み文字数さえわかれば――!

というわけで、次回の結標さんはー?
 ①完璧お姉さま主義な白井黒子が突如打ち止めを確保してくれる。
 ②『仲間』が来て助けてくれる。
 ③一方通行に良い様に使われる。現実は非情である。

一方通行さんには頭が上がらないんじゃないかなぁ、と思って見る私でした。
それでは、また次回ー。

718 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/11(月) 02:03:38 [ QigaJ5PA ]
>>717
その選択肢の書き方は③を選べといっているようにしか見えない。
そもそも②の仲間に該当するキャラがいるのか?

ということで②を選ぶ。
猫を追いかけ続けてる人なら助けてフラグを立ててくれると思うんだ。

719 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/11(月) 02:18:49 [ oW6eZP1s ]
>>672
GJ!いやっほう、こんなに早く書いてくれるなんてグレイトだ。
一方通行と打ち止めのじゃれあい良いわー。

ま、無難に③かな?

720 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/11(月) 06:26:11 [ 2qaLiTYI ]
>>672
……え?ここまできたら③以外の選択肢はなさそうだけど。
てなわけでGJ。

721 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/11(月) 08:12:21 [ /nHv.rGM ]
>>672氏GJ

③で。このまま付き合わされる流れに……って。
もしかしてこれは、一方さんフラグでせうか?

722 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/11(月) 11:49:11 [ i1BnpnR. ]
>>672氏蝶GJ!!

どう考えても③です。本当に有難う御座いました。
そして結標はなし崩し的に一方さんの手下に・・・

723 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/11(月) 19:07:56 [ m8a5pPJ6 ]
これはもう結標と一方さんくっつけるしかない
でもって対抗意識燃やした一万人の応援団を持つ打ち止めによって邪魔されたりすると。

724 名前:672 投稿日:2006/12/13(水) 02:02:57 [ F8fhFFBo ]
前回から二日と六分。随分と時間が経ってしまいました。
途中、リドヴィアがあの獰猛な衝撃のショックで記憶を失い、記憶の欠片を見付けるため
学園都市へやってくるとかいう妄想に苛まれましたが、なんとか元気です。

それでは、今回も色々と未熟ですが、レッツ投下〜。

725 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/13(水) 02:11:42 [ F8fhFFBo ]
 突然だが、結標・淡希は"空間移動"の亜種である"座標移動"という珍しい能力の持ち主である。
 簡潔に言えば、手で触らずとも物体を座標Aから座標Bまで移動させる事が出来るという能力だ。
 しかし、結標の肩をガッシリと掴んでいる最強――"一方通行"の能力はその更に上を行っている。
 その能力とはあらゆる力の"ベクトル"の操作。
 ありとあらゆる攻撃を跳ね返し、己の力を倍加する能力はまさに最強の名に相応しいものだ。
 その最強は現在結標の肩をガッシリと掴んでいた。
 その表情はとても嬉しそうだ。
 まるで獲物に狙いを付けた肉食動物の様な獰猛な笑み。
……あ、死んだ。
 結標は知らず絵的に真っ白になった。
 金属を叩く音でも鳴らしたら良く響きそうな程の静寂が満ちる。
 周囲の雑踏などまるで気にしない。
 というか、まるでどこかのステージの様に結標と一方通行の居る場所は開けていた。
 なんだか他人が遠い。
 今居るのは狩人と獲物の二匹のみである。アデュオス、この世。こんにちはあの世。
 一方通行は魂の抜けている結標の肩から手を離しつつ、凶悪な笑みを引っ込めた。
 どうやらもう逃げる心配は無い、と思ったようだ。
 魂が抜けたままの結標は勿論、なんの反応も寄越さない。
「ンじゃ、いっちょ高く飛ばせ」
 いきなりの命令系。
 この少年、能力どころか性格まで理不尽のようだ。
 ハッ、と一方通行の声をきっかけに意識を三途の川付近に飛ばしていた現実へと戻ってくる結標。
 見上げてみれば、辺りをキョロキョロと見回している一方通行が目に入った。
 何か探し者だろうか、と結標は呆然とした頭で首を傾げるが、その様子に気づいた一方通行は、
「トロトロしてねェでさっさと飛ばせ」
「と、飛ばす?」
 イライラしたような視線を向けられて思わずたじろぐ。
 結標は状況を理解しようと脳が全力回転するがまだ結果を導き出すまでには至っていない。
 地響きがしたと思ったら誰かとぶつかり、注意の一つでもしてやろうかと思ったら、目の前には最強の能力者。
 これはなんの悪夢だろうと思う。
「だァーから、とっとと飛ばせつってンだろォが!」
「は、はひっ」
 声が思わず上擦る。
 しかし、結標は、そんな事すら気になら無い程混乱したまま能力を行使した。
 勿論そんな状況で使った能力が上手く行くはずもなく。
「……」
 一方通行がぽふ、と地面に着地した。
 総飛距離十センチ。結標・淡希、夢の新記録である。 
「あァ〜……」
 一方通行は呆れた様な顔で声を出した後、表情をすぐさまとてつもなく良い笑顔に切り替る。
 そして、結標を首だけ動かして見下ろし、
「よォし、いっぺン死んでみっかァ?」
「ごごごご、ごめんなさいぃー!」
 涙目のまま左右へと凄い勢いで顔を横に振る結標。
 それにしてもこの結標、ビクビクである。
「次はねェと思え?」
「うぅぅ……なんなのよぉ……」
 良い笑顔のまま肩を叩く一方通行。なにやら肩がビリビリと痺れる。
 顔を向けて見れば、なにやら一方通行の手から青白い火花が出ていた。
「生体電気って、やろうと思えば結構出力出るンだよなァ」
「つ、謹んで受けさせていただくであります、ハイ!」
 尻餅をついたまま思わず敬礼をしてしまう。
 かなり間抜けな格好の上に涙目と合わさって何やら一種の同情すら感じさせる光景だ。
 実際、周囲の人々の哀れみの視線が痛い。
「悪りィな。ちっとバカがどっかにいっちまったもンだからよォ」
「悪いと思うなら最初から―――」
「血行を良くしてやンのもオツだよなァ?」
「と、飛んでけーっ!」
 即座に計算式を組み上げて一方通行を空高くに"座標移動"させる。
 先ほどまで一方通行が立っていた位置の遥か上空で、彼は何かを探すように周囲を見渡している。
……そういえば、"バカ"って誰の事かしら……?
 目の前から一時的にとは言え、悪夢が消え去り少しはまともな思考になる。
 一方通行が探すような重要人物。
……まさか、あの資料に載っていた女の子?
 写真で見た一方通行を支える少女が脳裏に浮かぶ。
 成る程、必死になるわけだ。
 あの少女が居なくなればあの学園都市最強は最強ではいられないのだから。
 そう、仮初でも"目的"が無ければ生きていられない、今の結標の様に。
「……」
 少しだけ。ほんの少しだけ、何故だか結標は一方通行に親近感を覚えた。
……何を馬鹿な。一方通行は復讐すべき敵なのよ。敵。
 頭を振ってその考えを振り払う。
 罅割れた心を支えるために必死になって否定する。
 それを認めたらまた心が砕けてしまいそうだから。

726 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/13(水) 02:13:57 [ F8fhFFBo ]
「っと、いやがらねェ。あのクソガキ……どこに行きやがったンだァ?」
 唐突に軽い足音を立てて着地してくる一方通行。
 十何メートルは飛ばしたはずなのにほとんど音も無く着地してくるなんてやっぱり化物だ。
 一方通行はコチラへと向き直り、何故か少しだけ驚いた顔をする。
 何かおかしい事でもあっただろうか、と首を傾げるが該当件数は零だ。
 ふと、一方通行は表情を切り替える。
 予想もしない表情、僅かながらも自然な笑みを漏らすものへとだ。
「あァ?まだ居やがったのか、三下」
「は、え?」
 思わぬ一方通行の表情と言葉に呆然とする。
 それもそうだろう、先程まで一方通行は遥か上空だったのだ。
 そんな状態で人探しとなれば、下にいる雑魚の事など、彼が気にすることはまずないだろう。
 それでも結標は逃げずに残っていた。
 心配されたとでも、一方通行は思ったのだろうか。
 実際はそんな事考えてもおらず、ただ単に考え事に耽っていただけなのだが。
「まァ、取り敢えずはだ――」
 一方通行はそのまま愉快そうに背を向け、片手を上げた。
 そのまま一歩歩き出して、呆然とする結標へと声をかける。
「――"アリガトウ"ってなァ。手伝い、感謝するぜ、三下」
 思わぬ発言だった。
 絶対にお礼なんて言うはずが無いと思っていた人物からの不意打ち。
 しかし、結標は何故か少しだけ、ほんの少しだけその言葉に妙な安らぎを覚えた。
 今はまだその妙な安らぎこそが結標の求めるもの、必要とされたいという願いの延長だという事も
 わかってはいないのだが――確かに結標の心に一つの強い願望が生まれた。
 その少しの、ほんの少しの妙な安らぎを、もっと欲しいと思ってしまったのだ。
 だから、計算なんかよりも先に体が動いた。
「ちょ、ちょっと待って!」
「あン?」
 気づいた時には結標は何故か一方通行の腕を掴んでいた。
 キョトンとした顔で振り向く一方通行。
 弾き飛ばされないトコロを見ると、どうやらぞんざいに扱う気はないらしい。
「なんだァ、三下。もう用はねェぞ?」
「そ、そうじゃなくて……」
 思わず手を離して、もそもそと結標は口の中で呟く。
 一方通行は呼び止められた事に少しだけイライラしているようだったが、
 取り敢えずはその様子を訝しげに見るだけだ。
 結標は深呼吸を一つ。思い切り勢いをつけて一方通行を指差しながら告げる。
「わ、私も人探しを手伝うから、携帯番号教えなさい!」
「……はァッ?!」 
 間を置いて、考えを纏め、思わず間抜けな声を雑踏の中で上げる一方通行。

 もう結標にも何がなんだかわからなかった。

727 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/13(水) 02:14:53 [ F8fhFFBo ]
    ○


「あれ?ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
 青いワンピースを着込んだ幼い少女は、とある歩行者用道路の上で可愛らしく首を傾げた。
 薄い茶色というよりもオレンジ寄りのショートカットに頭頂部で揺れる髪の毛。
 ただいま現在進行形で自分で絶賛迷子中の"打ち止め"はうーん、と唸り始める。
「やっぱり離れ離れになってるんだなぁ、あっはっは、ってミサカはミサカは自暴自棄になってみる」
 腰に手を当て、豪快に笑う打ち止め。
 色々いっぱいいっぱいなのだ。
「はぁ……って、ミサカはミサカは一人寂しく溜息をついてみたり」
 しかし、その強がりもいつまでも続くわけでは無い。
 一頻り笑った後に来る虚無感。簡単に言えば虚しいだけだったりする。
「待てや、この馬鹿猫ぉおおおお!何時まで走らせる気だ、ぜぇぜぇ、おおおおおお!」
 何か暑苦しい叫び声が打ち止めの向いている方向。
 その右側に並ぶビルの間、恐らくは路地裏へと続く道から気合の声と共に凄まじい足音が聞こえてくる。
 そして飛び出してくる毛並みの良い猫とツンツン頭の少年。
 一瞬何事かと思ったが、ツンツン頭の少年の方には覚えがあった。
 打ち止めが直接会ったわけでは無い、しかし、確かに覚えがある顔だ。
 約一万人の同じ遺伝子を使って作られたクローン"妹達"。
 その一万人が己の能力を使い構成するミサカネットワークにより、打ち止めは少年を知っていた。
 上条・当麻。
 その右手に"最強"であろうと殴り倒すような力を秘めた"最弱"だ。
 つい数週間前に起こった事件でも"妹達"の一人、一〇〇三二号、御坂妹が世話になった少年だった。
「うぉおおおおおおおーッ!」
 太陽を背景に猫へと飛び掛る少年。
 そのまま見事に猫を抱きしめ、地面を二転、三転。停止する。
「……ミサカはミサカは思わぬデッドヒートに言葉を無くしてみる」
「あだだだ、つぅ、肘擦り剥いたぁ〜」
 むしろ其の程度で済んでいるのはおかしいと思うのだが。
 呆然としている打ち止めを余所に猫を抱きかかえて起き上がる少年。
 打ち止めはそれよりも先に動きを取り戻し、少年へと駆け寄った。
 そのまま笑顔で頭を撫でている少年へと声をかける。
「大丈夫?ってミサカはミサカは優しげに心配してみたり」
「ん?あぁ、大丈夫って、ミサカ?ミサカって……ってうぉい、御坂妹が小さくなってやがる!?」
「む、失礼な。これでも一応ミサカは立派なレディだよ?ってミサカはミサカは胸を張りつつ主張してみる」
 猫が暴れるが上条は全く動じない。
 というよりも目の前の小さくなった御坂妹こと打ち止めに視線が釘付けになっていた。
「ど、どういう事でせうか!?これは狸型ロボットの新兵器のせいでございますか!?そうなんですね!?」
「あのー、もしもーし、聞こえてるー?ってミサカはミサカはジト目で手を振ってみたり、聞いて無いですか、そうですか、
 ってミサカはミサカは疲れたように肩を落としてみる、よよよとミサカはミサカは嘘泣きもしてみたり」
 暫くの間、猫が暴れる音と、少年の叫び声、そして少女の落胆の声が響いていた。
 道を行く人々が変な視線を送ってくるが気にしもしないそんな二人と一匹の組み合わせであった。


 一方其の頃、かなり離れた場所で結標が一方通行に対してある種の爆弾発言を放っていたのを打ち止めは知らない。

728 名前:672 投稿日:2006/12/13(水) 02:20:23 [ F8fhFFBo ]
無駄に長くなったってミサカはミサカは言ってみたり。
というわけで、どれにも当てはまりませんでした、はい残念ー!
あ、ごめんなさいごめんなさい、磔はい【きりすと】

それでは、恒例化している、と言っても三回目ですが次回の結標さんはー?
 ①強くて格好良い一方通行さんはすぐさま打ち止めを見つける。
 ②妹達が来て助けてくれる。
 ③上条さんは相変わらず不幸に巻き込まれる。現実は非情である。

そろそろ飽きられているとは思うけど、失礼しましたー!
文字数が未だに把握出来ず、1800文字以下なら通るのだろうか……。
それでは、また次回ー。

729 名前:とある魔術のMissing 投稿日:2006/12/13(水) 03:01:58 [ sPMs0NSk ]
「それじゃあ父さんは帰るからな。」
日が傾き、空が赤く染まるなか、上条刀夜はゲート行きのバスへと乗り込んだ。
無邪気に笑いながら、去り行くバスに手を振っている詠子を、当麻はそれとなく観察する。
出迎えそうそう“幻想殺し”と呼んできた幼馴染。刀夜が特に反応を見せなかった事から察するに、
彼女は以前からそれなりにその言葉を使用しているようだ。もしかすると、当麻の右腕に宿るこの
力を幻想殺しと名付けたのは、彼女なのかもしれない。

だとすると、彼女はなぜこの右腕に気づいたのだ?
あらゆる異能の力を打ち砕く、しかし異能の力以外にはまるで無意味な幻想殺し。
日常生活に置いては何の意味もなさないこの力を認識するには、実際に異能の力をぶつけるしかない。
つまり、十叶詠子はなんらかの異能の力(“超能力”あるいは“魔術”)に関わりを持つの人物だ。

学園都市に来る以前の異能とのつながり、自己のルーツと深く関わる事柄に当麻は興味を覚える。
もちろん、直接本人に聞けば話は早くすむ。だが、それは自分の記憶喪失を打ち明けるということ。
上条当麻にはその決心が付かない。

そうこう悩んでいるうちに、刀夜の乗るバスは見えなくなり、詠子はクルリと当麻に向かい合う。
「刀夜さん、帰っちゃったねぇ。」
「そうだなぁ、これからどうする、もうホテルに戻るか?」
今日半日だけでもかなり歩き回っている、広大な学園都市で見るべきところはまだまだあるが、
数日は滞在するらしいので今日のところは宿で疲れをとるほうが良いだろう、と判断。
「そうだねぇ…でも、その前に当麻の部屋に行ってみたいかな。」
「いや、ちょっとまて!それは早い、そんな素敵イベントフラグ立てた覚えねーぞ!」
年上の美少女のちょっと意味深な一言に心拍数が跳ね上がる上条さん。というか本気でまずい、
このままだとインデックスとの同居がバレ、哀れ上条さんはロリコンの烙印を押されてしまう。
「ダメかな?」
「ダメです!」
可愛らしく小首を傾げる詠子、対する当麻は腕を交差させバッテンマーク。
「どうしても?」
「どうしても!男の子の部屋には色々あるのです」
「そうか、残念だなぁ」
さして残念そうでもなく呟く。

730 名前:とある魔術のMissing 投稿日:2006/12/13(水) 03:02:22 [ sPMs0NSk ]
そして、しばしの沈黙の後、ふふっ、と詠子は微笑む。
「当麻は幸せなんだねぇ」
「幸せ?俺が?」
唐突過ぎる台詞に困惑。

上条当麻は不幸である、「アイツといれば不幸はあっちに集まるから」とクラスメートに避雷針扱いされる
ほどに不幸である。記憶を失った夏休み以降だけでも、何度も何度も厄介ごとに巻き込まれ、その度に死に
かけて入院するほどに不幸である。
そんな自分が幸運であるなど、的外れもいいとこではないか。
「いやいや、上条さんはめっちゃ不幸ですよ。」
苦笑しながら反論する当麻、その頬へと詠子はそっと手を触れる
「当麻は幸せだよ。…神の加護(LUCK)が無くっても、十分に幸せだよ。」

頬に触れる手のひらにドギマギしていた当麻だが、その一言に表情を強張らせる。
「君は確かに不幸だけれど、神に見放された子だけれど、でも君は幸せなんだよ。」
まっすぐに当麻を見つめ、詠子はにっこりと微笑む。
「だって当麻は歯車だからね。」
「…歯車?」
「そう、歯車。人と人との間に挟まった歯車。人と人との運命を動かす大切な歯車。」
とてもやさしく、とてつもなくやさしく、少女は言葉を紡ぐ。
「当麻は歯車。歯車は常に動いて、擦れて、磨耗する。ただ只管に身も心も削り続ける、とてもつらい役割。」
でもね、と愛おしむように頬を撫でる
「歯車はね、とても大切な役割なんだよ。だって歯車が無くちゃ時計は動かないもの。身を削ってみんなを
つなぐ歯車があるから、物語の仕掛け時計は動くんだよ。それはとてもとても幸せな役目。」
愛し子を少女は少年を見つめる、一切の濁りの無い眼差しで
「君は運命をまわす歯車、人と人とをつなぐ者。たくさんの人に必要とされ、たくさんの人とつながり合い、
たくさんの人と物語を紡ぐ。当麻は不幸なんかじゃないよ、だってこんなにたくさんの人と結びついている
のだもの。」
「俺は…幸せ?」
「そう、その幸せは当麻自身が掴んだ物。当麻が紡ぐ物語がたくさんの物語と結びついて、もっと大きな物語
を創り上げてゆく。当麻はね、その右腕で“上条当麻は不幸である”という幻想を殺して見せたんだよ。」
がんばったんだね、と頬を撫でる。
その手があまりにも暖かくて、その言葉があまりにも優しくて、
上条当麻は静かに涙を流した。


上条当麻は俯いたまま静かに嗚咽を挙げている。故に十叶詠子の笑みに気づけなかった。
どこまでも純粋な、狂気のように純粋な、狂おしいまでに透き通った“魔女”の微笑みに。

731 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/13(水) 03:09:34 [ sPMs0NSk ]
続き書いてみました。>>712さんのアイディアをお借りしています。


>>728
本当にフラグ立ったよ!>座標移動
つうか可愛いですハイ、座標移動の脳内禁書ランキングがどんどん上がってくる。
あと③希望。

732 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/13(水) 10:50:49 [ Qum8Z4Mo ]
>>672
GJ。
ここは手堅く③希望。

>>729
甲田学人はまだ『断章のグリム』しか読んだことないけどGJ。

733 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/13(水) 17:02:11 [ eut4CxOY ]
33333333333333333333333333333333

734 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/13(水) 17:54:33 [ WUodiH5o ]
672氏ステキ!

けど③がもはや無関係www
選ぶけど

735 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/14(木) 01:07:53 [ a3CBrIJs ]
672氏の人気に嫉妬!!
そして選択はもはや恒例の③

736 名前:169 投稿日:2006/12/14(木) 09:21:37 [ 8PgEOspg ]
 という訳で。否も応も無く到来した一端覧祭イヴ。
 運営委員達の涙ぐましい努力によって完成した「準備作業人員振り分け表ver.最終決戦」に従い、学生達は八月三十一日と書いて「なつやすみのしゅくだい」と読んだあの日を思い起こさせる勢いで動き回っている。
 招待校の生徒達もそれぞれの出展物を持ち寄り、設営やら何やらを始めている。三角テントの屋台から教室内展示まで出し物は多種多様だ。グランドの真ん中にはとある大学の研究チームが製作した「全長五十メートルの人型ロボットの右掌」が天に向かって五指を広げている。全ての会場校にランダムに配られたパーツを合体させると一体の巨大ロボットが出来上がる、という振れ込みだが、「股間」や「左足首内バランサー」などを引き当ててしまった学校では展示するかどうかいまだに決めかねているらしい。
 さて、そんな祭り当日にも負けないほどの喧騒から取り残された唯一の場所、旧校舎一階の図書室に上条当麻はいた。
 見渡すがぎり本、ほん、HON。上から下まで固そうな革表紙で埋められた本棚の列に挟まれて、上条は生理的な恐怖を感じた。彼は自宅の本棚に漫画しか入れていない人間である。
 だがしかし、そんな上条の手には十数冊の本の題名(タイトル)が記されたメモ用紙が一枚。これら紙束のジャングルからご指名のモノを見つけ出すのが本日の彼の使命だった。
「…………鬱だ。やっぱインデックスに声かけるべきだったか」
 探し物、それも本の類であるならまさに彼女の出番だ。機動少女カナミン全話全台詞暗記なんて無駄なことに使っている完全記憶能力をちっとは有効活用しやがれと言いたい。
 しかし、上条さんちの白シスターことインデックスは現在、小萌先生に連れられて、のどじまん大会の会場を下見に行っている。何故この組み合わせなのかと言うと、ぶっちゃけ小萌先生の名前で申し込んでいるからだった。提出した申し込み用紙の隅には「共演者一名」とこっそり書き添えられているとか。
 ちなみに、インデックスが当たり前のように校内にいることについては、上条はもう気にしないことにしていた。今回に限っては安請け合いした手前もあり、小萌先生が一応の保護者という立場になってあれこれしているらしいが。
「かみやんくーん。進んでるー?」
 ふと聞こえてきた声に振り向くと、上条ともう一人をここに引っ張ってきた張本人、言祝栞が通りががったところだった。両手で古新聞の束を抱えているせいで、鼻の上の眼鏡がずれているのに直せていない。
「これからだこれから。……つーかさ、言祝。俺らってここでこんなことしてる暇あるっけ?」
「開場は他の所の準備が終わってからだし、着替えやお化粧も一時間もあれば十分だし。無理に舞台設営に付き合って怪我でもされたら、そっちのが迷惑なのですよ。どーせ他にやることないんだから、若干遅れ気味な図書委員会主催のフリマの準備を手伝ってくれてもいいでしょー?」
「フリーマーケットとは名ばかりの、利用頻度の低い余剰本の一斉処分だろうが。大体準備が滞ってたのって、お前が監督業にかまけてたからだって聞いたし。それになんだその古新聞。売るのか?」
「うん。一束百円で」
「……需要あるのか?」
「委員の先輩達によると、意外に。スクラップ用とかペットのトイレ用とかで。あと――千枚通しで突き刺しても悲鳴を上げないっていうのが裏の売り口上なんだって」
「準備だけだからな! 絶対売り子はやんねぇぞ!!」
 上条はかなり本気の悲鳴を挙げた。外部からは隔離され得体の知れない実験を日々繰り返している学園都市。ストレスのたまる奴だってそりゃあいるだろうが、千枚通しでストレス解消を図るような人間とスマイル0円したくない。
 言祝はなんでかくすくす笑いを洩らすと、古新聞の束を抱えなおしてこちらに背を向けた。
「それじゃ、しっかりねー。あそうだ。確かそこらへんにヌードフォトの図鑑があったと思うから、作業の妨げにならない程度なら読みふけってもいいよ?」
「やるかッ!」
「とにかく、主演女優も文句言わずに働いてるんだから、かみやんくんも馬車馬らしく働きなー」
 言うだけ言って去っていく監督少女。いったい何しに来たのさ。
 上条はその後しばらくメモ用紙とにらめっこしていたが、ふと言祝の最後の台詞が気になった。
「…………そういやあっちは進んでんのかな?」

737 名前:169 投稿日:2006/12/14(木) 09:22:13 [ 8PgEOspg ]


 言祝が近くにいないのを確認してから、本棚の間を抜け出す。
 適当に歩き回っていると、目当ての姿は案外簡単に見つかった。
 長机と椅子が複数並べられた閲覧ブースの近く。窓の下に備え付けられた背の低い本棚の並び。ウェーブがかった金髪と赤を基調とした他校の制服は見間違えようがない。
 サーシャ=クロイツェフはそこにいた。
 床にペタリと女の子座りして、何やら背表紙とにらめっこしている。
 じっと。
 じーっと。
 じーーーーーーーーーーーっっと。
 ……………………………………………………。
 作業は進んでないっぽい。
 あまりにもにらめっこが長いので、上条は不思議というか不安になってくる。
(日本語の題名が読めない――ってことはないよな。台本は読めてるし。てことは…………手に取ることも出来ないような本だとか?)
 そんなのあるだろうかと考えて、一秒でエロい方向に思考が飛んだことに罪はないと信じたい。ブンブン頭を振って考えを切り替えようとするが、言祝ならさっきのこともあるし反応(リアクション)見たさにそんな指示を出すこともあるかもなんて思ったり思わなかったり思ったり。
「――いやいやいや、何をためらうことがある。コーコーセーの余裕を見せろ上条当麻!」
 高らかに小声で宣言し、忍び足でサーシャに近づいてゆく。
 よっぽど目の前のものに心奪われているのか、彼女が気付く気配はない。
 残り三歩、二歩、一歩の所でストップ。金髪の頭越しに本棚を覗き込んだ。
 そこには。
「……!? ま、まさかこれは……!?」
 そう、それは日本が誇る名作童話。夏の読書感想文にもピッタリの、
「『桃太郎』じゃねーかっ! ってか今気付いたけどここって絵本・児童書のコーナー!?」
「はっ」
 反射的なツッコミを入れたせいでサーシャに気付かれた。ビクゥッ! と猫のように小さな背中が跳ねる。
 赤シスターは混乱した顔でこちらと本棚を交互に見比べると、
「――――――――!!」
「待て! どこからともなく釘打ち機(ハスタラ・ビスタ)を抜くな! 図書室(こんなところ)で乱射したら蔵書が全部肉抜き加工されちまいますぞ!? ほ、ほら! 入り口横の掲示板にも貼ってあるだろう図書室利用規則第一条『本は大事に扱いましょう』!!」
「第二条。『図書室の中ではお静かに』」
「口封じ!?」
 荒ぶるゴーストバスターの射線から必死に身をそらしつつ平謝りを重ねること約十分。
 諦めたのか疲れたのかはともかくとして、サーシャは何とか釘打ち機を下ろしてくれた。
 上条は長机の下から椅子を引き出し、すがるように座りながら、
「ハァ、ハァ、ハァ……。なあサーシャ。落ち着いた所で聞くけど、お前どうして絵本の本棚見て固まってたんだ?」
「……………………、」
 女の子座りから正座に移ったサーシャはそっぽ向いて答えてくれない。さて心なしか顔が紅潮しているように見えるのは怒りゆえか、それとも。
「……まあ言いたくないのなら、無理にとは」
 重い沈黙に耐え切れず、上条は逃げるようにそう言った。
 しかし沈黙に耐え切れなかったのは彼女も同じだったようで、かすれるほどの小声で、
「……自白、一」
「自白て」
「ならば解答一。………………その、……読んでも、いいのかと」
 は? と上条は予想外の答えにぽかんとする。絵本を読みたがるサーシャというのが全くイメージできていなかった。
 もしかして懐かしいお話でもあったのかしら、と考え直すと、
「んー、まあいいんじゃないか? 仕事に差し支えない程度なら」
「問一。本当に?」
「えーと、たぶん」
 その後、問十八まで繰り返し尋ねられたが、上条が十九回目の許可を出すと一転してサーシャの表情が輝きだした。
「宣言一。では遠慮なく」
 くるりと身を回すと、彼の見る前で本棚に“両手”を伸ばし、

 ごそっ、と。
 一段丸々抜き出した。

738 名前:169 投稿日:2006/12/14(木) 09:23:25 [ 8PgEOspg ]
「――――多っ!? サーシャお前そんな腕がプルプルするほど頑張らんでも! てゆーかまさかそれ全部読む気か!?」
 読欲少女と化したサーシャには上条の叫びは届かない。ロシア成教秘伝っぽい体さばきで絵本を床の上に縦に積むと、一番上にあった本を引っつかみ広げて読み始めた。ちなみにまた女の子座りになっている。
 何というか、集中力が尋常ではない。一ページ一ページを目に焼き付けるくらいに見つめ、しかし急ぐことなく、余韻を楽しむほどの時間をかけて読み進めていく。
 本職のシスターに対してこう言うのもおかしな話だが――神聖さを感じるほどだった。
 当然、上条はほったらかしである。
「うーむ……」
 居候の赤シスターの意外な一面を知り、感動だか動揺だかよく分からない気持ちでうなる上条。
 家の本棚を埋めている少年漫画にも、インデックスがしきりに勧める機動少女モノにも大した興味は示さなかったのだが。一体これらの絵本のどこが彼女の琴線に触れたのだろうか。
 とにもかくにも、上条がこれまで見てきた「サーシャ=クロイツェフ」という人物像からはかけ離れたことばかりで……………………いや、そうでもないか。
 思いつきはそのまま口をついて出る。
「サーシャ。お前、実は童話とか絵本とか大好きだろ」

 ………………………………………………………………………………………………………………ビキ。

 ロシア人シスターへの効果は抜群だ。おまけに追加症状で凍りついたように動かなくなる。
 そこへ追い討ち。
「考えてみれば当たり前だよな。喜び勇んでシンデレラの役を引き受けるような人間が、童話嫌いなわけがない。確かインデックスもそれっぽいこと言ってたし。『ロシア成教のゴーストバスターとしては一歩引かざるをえないけど、本人は好きそう』とか」
 プルプルと震える手が、ゆっくり床に置かれた鉄塊(くぎうちき)に伸びている。しかし、上条はもう脅えたりしない。
 なぜなら、たぶん、サーシャは、
「だから、最初に灰姫症候(シンデレラシンドローム)の話をした時に“怒って”たんだろ。大好きな童話の物語が悪用されて、危険な魔術の媒介にされていることが許せなくて」
「――――――――――――――――、」
 ピタ、と手が止まる。
 上条は思った。やっぱり、と。
 サーシャと初めて会った日。
 学園都市に潜む危険を語る彼女に感じた何とも言えない違和感。その正体。
 数日とはいえ共同生活をし、演劇という活動を通じてそれなりの関係を作ることが出来た今ならわかる。
 あの時、彼女は静かに怒っていたんだ。
 大好きな童話を利用し、汚して、災いの運び手に貶めたまだ見ぬ敵に対して。
『灰姫症候』と、そんな名で呼ぶことも苦しかったに違いない。
 上条にだって、そういうものはある。奪われたり傷つけられたりしたら、どうしようもないほど腹が立つであろうもの。
 例えば、土御門や青髪ピアスのような悪友。吹寄制理や姫神秋沙のようなクラスメイト。インデックスや御坂美琴のような友人。両親や、これまで知り合ってきた魔術サイドの面々も。
「思い出」のない上条当麻にとって、それらこそが自分を支えてくれる最も確かなものだから。
 きっとサーシャにとってのそういう存在が、絵本だったり童話だったりしたんだろう。
「もしかしたら、言祝にはわかってたのかもな。図書委員の勘で。だから初対面でスカウトとか無茶して――いやまあ無茶苦茶なのはいつものことか。とにかくサーシャが童話好きだって感じて、だからお前も引き受けようって思ったんだろ?」
「回答一。少しだけ、違う」
 サーシャは少し落ち着いた様子で、上条の想像を大筋で認める意味のことを言った。あくまで目を合わそうとはせずに続ける。
「補足一。私が演劇をやってみたいと思った最大の理由は、演目がシンデレラだったから」
「ん? 一番好きなお話だとか?」
「逆に問十九。シンデレラはハッピーエンドで終わる物語か?」
「えー……うん。そりゃあな」
「回答二。だから」
「は?」
 意味はわからなかったが、そう言ったサーシャは上機嫌で、あえて追求するほどのことでもないか、と上条は疑問を胸にしまった。
 再び楽しそうにページをめくり始めた少女を眺めながらボーっとする。窓から差し込む日の光があったかでああ今日はなんて平和なんだろう痛いのとか怖いのとか厄介なのとか痛いのとか面倒なのとかもないし――
 ゴス。
「なにサボってんの」
「……打撃は話しかけた後にすべきだと言い残して上条さんは落ちます」
 後頭部に何やらとっても硬くて重いものによる衝撃を受け、上条の意識は闇に沈んだ。最後にかすむ目に見えたのは、『極厚 ただそれだけのこと』という題名のハードカバー本を装備した無敵の図書委員の姿だった。

739 名前:169 投稿日:2006/12/14(木) 09:24:34 [ 8PgEOspg ]
 学園都市最強の超能力者(レベル5)を右腕一本で殴り倒した男に本一冊で地べたを舐めさせた暫定学園都市最強の少女は、児童書コーナーに打ち立てられた絵本の塔と、その横で脅えたように首をすくませている金髪少女を捉え、
「ふーん」
 反応が薄いのが逆に怖い。
 これまでの経験上(主に班の男子達が叱られているのを観察していた経験)、ここは素直に謝るしかないとサーシャは判断した。
「……謝罪一。申し訳ない。すぐに片付ける」
「よろしい。あ、でもその前に」
 立ち上がろうとしたサーシャを制し、言祝は絵本の塔からさっと赤い表紙のものを一冊抜き出した。手品師か、あるいはソムリエのような手業である。
 そしてその絵本を赤い少女の胸の辺りに差し出す。
「問二十。これは」
「栞さんオススメの一冊。流石にこれ全部読まれると時間なくなっちゃうからね。今はこれだけで勘弁してくれる?」
「あ……」
 笑みと共に差し出された絵本を、サーシャは見つめた。
「……ありがとう」
「いえいえ。これも図書委員としての勤めなのですよ」
 にこにこしっぱなしの言祝の手ごと、サーシャは絵本を受け取った。
 上条は後頭部をさすさすしながら起き上がると、
「何だろうなーこの扱いの差は。俺っていつの間にか『どれだけ強烈にツッコんでもノープロブレム』なキャラになってないか……?」
 ぶつくさ言いながら女の子達の手元を覗いてみる。
 言祝が選んだのは、大きな赤い枕を抱いて眠る小さな女の子の絵が表紙に書いてある本だった。
『ぬくぬく、ぐうぐう』という題名を頭の中で読んだ時、
 つぶやきを聞いた。


「――――見つけた」


 え? という声が喉から出るよりも早く、
 ダダダダダダッ!! という炸裂音を立てて連続発射された五寸釘が彼らに近い窓を数枚まとめて破壊した。
 釘の一本一本に仕込まれた術式の効果なのだろう、ガラス片は落下するまでの間に粉末状になるまで自動的に粉砕されていく。そのため破壊の範囲に反して生まれた騒音は静かなものだった。
「な――――!」
 硝砂の降る中、上条の悲鳴は声にならない。
 何者の仕業か――そんなのは決まっている。
 何故こんなことを――そんなのは本人に確かめるしかない。
 ようやくまともな思考が出来るようになった時には、すでに遅かった。
 枠だけになった窓から二人の少女が身を乗り出している。
 正確には、金髪の少女がぐったりした黒髪の少女を抱きかかえたまま外に飛び出そうとしている。
「――っ! 待て、サーシャ!」
 叫びより速く、伸ばした腕よりも疾く、金髪の少女は飛び降りてしまう。
 ここは一階。どれだけ運が悪くても足首を捻るくらいだろうが、しかし当然金髪の少女はそんな間抜けなことはせず、人一人抱えているとは思えないほどの速度で走り出す。
 一歩目からトップスピード。二人の背中は見る見る内に遠ざかっていく。
「やばいっ!」
 慌てて上条も窓枠に足をかけた。一息に飛び降り、後を追って駆け出す。
 耳の奥に響いている、あのつぶやき。
 見つけた、と。
 あれは間違いなくサーシャの声だ。
 ならば何を見つけたのかは考えるまでもない。
 絵物語を梯子にし、災いを振り撒く呪いの魔術、『灰姫症候』。
 サーシャ=クロイツェフの本来の任務は、それを見つけ出すことだったのだから。
 偶然言祝の指先と接触し、彼女の中に『灰姫症候』が宿っていることを感じ取ったのだろう。
 魔術師ならば絶対にわかる、と以前インデックスも言っていた。
 シンデレラの物語を知る者なら、誰が宿主になっていてもおかしくない、とも。
 だけど、
 なんで、
 なんで、今日、この時に……!?
「くっそったれぇ!!」
 中庭まで来たところで完全に見失ってしまう。
 サーシャと言祝が初めて出会った場所。一端覧祭当日には休憩所として開放される予定で、準備中の今はベンチが並べられているくらいで誰もいない。
 神様の奇蹟(システム)すら打ち消せる右手を持つ少年、上条当麻は、今という時ほど運命の神(カミサマ)をぶん殴りたくなったことはなかった。

740 名前:169 投稿日:2006/12/14(木) 09:25:31 [ 8PgEOspg ]
いい作家さんが増えてきたので、こちらも気合を入れて書かなければ、と思っている169です。
というか、このまま高速でスレが進んで次スレに移った場合、私は何と名乗ればいいのでしょーか。169のままではややこしいでしょうし。
今回から急展開。多分次回はけっこう早く投下できるかと。もう下書きは出来てますので。

>>672
GJ! そして一心不乱に③を選ぶ! まあ選ばなくても絶対そうなる気もしますがっ。
その執筆速度、少し分けてください(真剣)。

>>729
MISSINGはhpで連載していた漫画しか知らないので「何ぃぃぃぃっ!?」と思うことばかりですが、非常におもしろいです。グッジョーブ。
さて原作にも手を出すべきか……。

741 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/14(木) 19:14:38 [ RDlVFlHo ]
>>169
うおキタコレ。
GJ。

「……打撃は話しかけた後にすべきだと言い残して上条さんは落ちます」
は非常に藁他。

742 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/14(木) 20:04:40 [ AMxykZ26 ]
>>169
GJ。
公式の再登場を待たずして俺の中のサーシャ株急上昇。

最近祭りの如く神降臨してますな。

743 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/14(木) 22:46:41 [ 2QGr5sZM ]
私見一。
素晴らしい。>169氏に賞賛を贈りたい。仕事しろかまちー。

744 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/15(金) 00:04:03 [ wuwPtqSQ ]
>>169さん>>672さんGJ!


ところでここってクロスオーバーって受け入れられますかね?
少し書いてみたいんですが
でもクロス先が月姫なんで少し危険かなー、と
話としてはメルティブラッドのキャラとの戦闘重視なんですが・・・
皆さんの意見待ってまーす



あ、でも今の作家さんの流れを崩しちゃうかな・・・

745 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/15(金) 01:48:19 [ nGzPg2js ]
ふと選択肢スレが作りたくなってきた今日この頃。
結標の人が選択肢使ってるし、別にいんじゃないかなー、とか思ったりなんだったり。
まあ、結標の人のは選択肢であって選択肢で無いような選択肢なんだがw

>>744
クロスオーバーは明記してあればいい、ってことになってた気がする。

746 名前:672 投稿日:2006/12/15(金) 03:25:25 [ WtJw.cj. ]
>>740
うふふふ、睡眠時間を削ればなんとかなると思うよ?


激励感謝ー。
それでは、登場キャラが増えすぎてエライ事になってきた気がする今日この頃。
というわけで、またまた失礼いたしますー。

747 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/15(金) 03:25:48 [ WtJw.cj. ]
 学園都市のとある商店街。
 其処を疾風のように走り去る一つの人影があった。
「ああぁあああああ―――ッ!」
 馬鹿みたいな叫び声が商店街に響く。
 道を行く人々の幾人かが驚きの表情で人影を見るが、その時には既に遥か遠くに走りさった後だった。
 その人影の正体――結標・淡希は顔を真っ赤にして走っていた。
 結標は数十秒前までの出来事を思い起こす。

『あァ?なんで俺がオマエに携帯の番号なんか―――』
『良いから教えて!』
 あの爆弾宣言から暫く固まっていた両者だったが、先に沈黙を破ったのは一方通行の方であった。
 しかし、一方通行の発言はすぐさま結標の悲鳴にも似た叫びに掻き消される。
 結標は自分でも何を言っているのかわからなくなりつつも、必死に一方通行を睨みつける。
 顔を真っ赤に染めた涙目の表情で迫られ、流石の最強も怯んだのか渋々と言った感じでポケットに手を突っ込む。
 一方通行の取り出した携帯を見るなり、結標も慌ててジャージの上着ポケットから携帯を取りだす。
 そして、互いの登録情報を交換して即座に、
『そ、それじゃ、見つかったら連絡するわ!じゃあね!』 
『あ?って、速ェな、ォイ!?』
 そのまま背を向けて走り去っていってしまったというわけだ。
 そして、現在に至る。

 正直なトコロ、結標は混乱していた。
 一体自分は何を考えているのか、それすらもわからないのだ。
 いや、本当はわかっているのだろう。
 しかし、それを認めてしまっては、それをキッカケに己の心を"以前"の様に自分で壊しかねない。
 それとは別の理由もかなりの割合で混じっている気もするのだが、それには目を向けようともしない。
……これは敵の情報を知るため!知るためなのよ!
 そう自分に言い聞かせてなんとか心の均整を保つ結標。
 その間にも彼女の疾走は止まらない。
 ついには商店街を抜け、道路へと出た。
 目の前にはアスファルトで固められた道路とそれを渡るための横断歩道。見上げてみれば信号が設置してある。
 結標は信号を碌に見ずにそのまま横断歩道を渡りきる。
 途中、なにやら叫び声と共に車のクラクションが鳴り響く。どうやら赤信号だったらしい。
 渡った場所から少し走ると今度は緑が豊かな公園へと突入した。
 と、ふと其処で結標は足を止める。
 そして、ジャージの上着ポケットから携帯を取りだす。
 二つ折りになるタイプの携帯を開き、幾つか操作をして電話帳を開いた。
 緊張のためか顔が真っ赤になっているが、それは走ったせいだと自分を納得させた。
「えぇっと……一方通行の電話番号は……」
 確認、確認、と携帯を弄り回す結標。
 そういえば本名知らないわね、などと思いつつ見覚えの無い名前を探して行く。
 暫くの間、平日のためか誰も居ない公園に携帯のボタンを押す電子音が響いた。
 しかし、一方通行の本名と思わしきものは一向に見つかる気配が無い。
……?
 首を傾げる結標。
 もう一度見るが、やはり見慣れた感じのする名前しか並んでいない。
 例えば、一方通行とか。
「………」
 見間違えたのかと、目を擦ってもう一度画面を見直す。
 
『一方通行 プロフィール』

「って、そのまま!?」
 期待を大きく裏切る変化球に思わず叫びを上げる結標。
 まさか呼び名をそのまま自分の携帯に登録するなど夢にも思わないだろう。
 面倒臭がってこんな風にしたのだろうか、それとも名前すら忘れたか。
 後者はなさそうなので恐らくは前者だろう、と結標は結論を出すと携帯を閉じて上着へと仕舞った。
 深呼吸を一つ。
 酸素を取り入れ、冷静になるため、脳を正常化させた後、すぐさま全力回転させ始める。
 よし、と気合を入れるために声を上げる。
 まずは状況の整理。
 一つ、少女を探しだして、一方通行に連絡する。
 二つ、少女から一方通行の弱点を聞きだす。
 三つ、少女を一方通行へ引き渡し、褒めて貰う。
 実は未だに冷静ではない思考の結標であったが、全く気にする様子もなく顎に手を当てて考えるポーズをとる。
……問題はどうやってあの子を探すかよね。弱点を聞きだすとしたら一方通行より先に見つけなきゃいけないし。
 一方通行がアレだけの上空から探したのに見つからなかったのだ。
 恐らくは、かなり遠く。
 もしくは何かビルの影になる様な場所に居るかのどちらかだろう。 
 取り敢えずは、
「足を使うしかないわね」
 そう言って結標は早速一歩踏み出す。

748 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/15(金) 03:26:47 [ WtJw.cj. ]

 何か踏みつけた。

「ひゃぁっ!?」
「だーうー」
 何事か、と結標は妙な感触のした地面を見る。
 其処にはなにやら白い衣装に身を包んだ少女が倒れていた。
 なにやら力無く倒れる少女の身を包む衣装は良く見れば昔見た本に乗っていた修道女の服の様にも見える。
 その暫定修道女は情けない声を上げつつ、コチラを見やる。
「お〜な〜か〜す〜い〜た〜」
「……」
 捨てられた子猫のような目と言うのが、この場合の表現としては正しいだろう。
 実際、少女の脇の下辺りから子猫が出てきて『いきなりすまないね、お嬢さん』的な視線を送っている。
 この場合、飼い主と猫と見るべきだろうが、なんとなく結標には逆に見えた。
 猫が保護者で少女が子猫っぽいのだ。
「おなかすいたって言ってるんだよ?」
「えぇっと……」
 今度は体を引き摺るようにしてコチラへと方向転換する少女。
 猫の方はしっかり少女の背中の上に避難している。
「……」
 目の前の少女はなんなのだろうか、と結標は考える。
……シスター、かしら?神学系の学校はこの辺りには無かったと思うけど。
 それにしても妙な衣装だと思う。
 なにしろ妙に豪奢な布を強引に安全ピンで止めている様な状態なのだ。
 見た目としてはかなり豪華さと仕上げのバランスが悪い。
 なんらかの意味合いがあるのだろうか、と結標が少女を凝視していると少女は、
「あのー、もしもし、聞いてる?」
「あ、ごめんね。なにかしら?」
 ハッと思考の海に埋没していた結標は現実に戻ってくる。
 それと同時に困ったような笑みを浮かべて目の前の暫定修道女である少女の目を見た。
 綺麗な碧眼に腰まではありそうな銀髪。
 どこをどう見ても日本人ではなさそうであったが、どうやら日本語は通じるようだ。
「えっと、とうまが道端で困ってたおばあさんの猫を探して走り去っちゃったから、お昼ご飯がないの」
 とうま、というのはどこかで聞いた事があったが、取り敢えずは保護者の事だろう、と結標は納得する。
「大変ね。それで、私はどうすればいいのかしら?出来る限りの事なら手伝うわよ?」
 すっかり子どもの相手モードに入った結標は笑顔を浮かべつつ腰を落として少女の顔を見る。
 整った可愛らしい顔だ、と結標が評価を下していると少女はパッと顔を輝かせるように表情を変えた。
 要求の予想は大体ついていた。
 恐らくは、保護者である"とうま"という人物を一緒に探して欲しいとかそういうものだろう。
 見た目でしか判断出来ないが、この年頃の少女は強がりと同時に寂しがり、怖がりでもあるのだ。
……人探しなら、コチラの探し人も見つけられて一石二鳥というものだし。
 結標は頭の中で人探しの計算も整えつつ、少女の次の言葉を待つ。
 少女は流石に初対面の人になにかを要求するのは躊躇っているのか、モジモジとした後、
「ほ、ほんとう?」
「ええ、本当。お姉さんになんでも言ってみなさい?」
 やはり躊躇いがちに聞いてくるが、結標は至って笑顔で応える。
 こういう子の相手は怖がらせてはいけない。
 笑顔で、優しく語りかけて上げるのが重要なのだ。
「それじゃあ……」
 言葉を続ける少女。
 なんとなく力がさっきより失われているようにも見える。
 そして、飛来した少女の言葉は少々結標の予想とは違うものであった。
「なにか、食べ物を分けてほしいかも……げふ」
 その言葉を最後にまた倒れ伏す少女。
 暫しの間。
 それほど長く無い間の後結標は思わず頬を書きつつ困ったような表情で苦笑いを一つ。

 なんだか今日はまだまだ忙しくなりそうであった。

749 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/15(金) 03:28:25 [ WtJw.cj. ]

   ○


「つまりアナタはおばあさんにこの猫を届けるの?ってミサカはミサカは並んで歩きつつ聞いてみる」
「ミサカはミサカは、って重複してるよなぁ――まあ、そうだな。家までの地図も貰ってるし」
 打ち止めと上条・当麻はとある商店街の道路を並んで歩いていた。
 先程、上条が歩道で、ついに猫を捕獲した時に出会ったのだが、最初は随分と驚いた。
 なにしろ、知っている少女が頭二つ分ほど縮んだように見えたのだ。
 それはもう、新手のスタンド攻撃とかそういうものかー!などと意味不明な事を叫びそうになるほどだった。
 なんとか落ち着き、自己紹介を済ませ、逃げようとした猫を確保するのに数十分。
 随分と時間が経ってしまった。
 周りでは、昼時だからか、この都市の象徴は科学だというのに無駄に熱い売り文句を叫ぶが響いている。
『安いよ安いよ!今ならこのサーモンピンクの河豚から取り出した実験食材がたったの――』
 訂正しよう、やはり此処も例に漏れず科学万歳な場所のようだ。
 その事実に半場安心しつつ、上条当麻は隣に並ぶ少女を見やる。
 つい一ヶ月とちょっと前に知り合った少女達、御坂妹を含む約一万人の"妹達"。
 その"妹達"全員に会ったわけでは無いが、この目の前の少女はなんとなく"妹達"の中でも特殊な気がした。
 なんとなくあの"妹達"独特の雰囲気とは違い、妙に活発的な雰囲気が漂っているのだ。
 今も物珍しそうに辺りを見回しては、変な物に興味を惹かれているようだ。
「おぉ、あれなんて中々格好良いかも、ってミサカはミサカは埴輪を見つつ目を輝かせてみる!」
 本当に楽しそうだなぁ、と上条は笑顔で打ち止めの指さした方向を見る。
 其処には、山積みにされた、妙にリアルに人の顔を模した埴輪があった。
 正直、それが山積みになっている景色は不気味を通り越してある意味、荘厳だ。
「はは……」
 思わず笑顔が引きつる上条。
 やはりこの少女の感性は特殊で、少々斜め上に行っているようだ。
「おぉ、あれも珍しい!ってミサカはミサカは駆け寄って行ったりするー!」
 楽しそうに左右に展開する店の前に飾られた展示品などの前を行ったり来たりする打ち止め。
 どうやら出かけたりするのは稀らしい、と上条は微笑ましい光景を見つつ思う。
 猫が腕の中で欠伸をかく。
 どうやら追いかけている間に良きライバルとかそういうものと思われてしまったらしい、妙に友好的だ。
「まぁ、取り敢えずは……」
 今日は平和だなぁ、と何か記憶の隅で蠢く白い悪魔の存在を敢えて忘れつつ、上条は空を見上げる。
 取り敢えずは商店街の空はテントの様な物で隠されていて見えなかった。
 視線を戻せば、打ち止めがまだまだ元気そうに走り回っていた。
 そういえば、と上条は頭の隅に引っかかった事を言葉にする。
「そういやさ、お前、一体誰と此処まで来たんだ?」
「あ、そうそう。とミサカはミサカはアナタの下へ戻ってきつつ頭の中で情報を整理してみたり」
 独特な口調にもそろそろ慣れ始めた上条の腕の中で猫が鳴く。
 再び上条の横に並んだ打ち止めは自分が何故一人で居たか、何故相方が迷子になったか。
 その理由を、色々改変しつつ話始めるのであった。


   ○


「オイ、ちっと悪リィが」
「あ、え、は、はい………?」
 一方通行はいくら探しても見つからない現状に少しだけイラだっていた。
 これだけ探して見つからないという事は相当遠くに行っているか、影にいるかという事だ。
 それならば、しらみつぶしに探しても良いがそれでは買い物の時間が無くなってしまう。
 それだけは避けたかった。
 なにしろ、リハビリという名目で連れてこられたものの、未だに体は痛むし、動きずらい。
 一人、助っ人を得たものの、碌に打ち止めの姿格好も聞かずに飛び出してしまったため当てにならない。
 というわけで、最も簡単な方法―――人に尋ねるという手に出たわけだ。

750 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/15(金) 03:29:21 [ WtJw.cj. ]
 ちなみに声をかけた少女は背格好から見て、恐らくは高校生と見れる人物だった。
 茶色の混じった腰まである黒髪を、頭の横で一房だけゴムで縛り、ピョコンと飛び出させている。
 そして、顔にはフレームの細い知的そうに見える眼鏡。
 なぜか眼鏡は妙にずり落ちているように見えた。伊達だろうか。
「この辺で、こンな感じのガキ見なかったかァ?」
 そう言ってポケットからメモ帳を取り出して開き、少女へと突き出す。
 そのメモ帳には妙に上手い打ち止めの似顔絵が一枚書かれていた。
「えと……見て、ません。ゴメンナサイ……」
「そうか。邪魔ァしたな」
 オドオドとした少女に言うなり、早速再び歩き出そうとする一方通行。
 そんな一方通行へと慌てて少女は、
「あ、ちょ、ちょっと……待って、下さいっ!」
「あン?」
 少女の声に気づいて振り向く一方通行。
 振り向いた先では少女がもじもじと何か言おうしていた。
 どうやら、目の前の少女は人見知りをするタイプのようだ。
 というか、今日は妙にこういうシュチュエーションに出会う確率が高いような気がする。
 暫くすると、少女は意を決したように口を開いた。
「あの、インデッ――あ、白いシスターさんを見ませんでしたか……?私の、友達なんです……」
「しすたァ?」
 出てきた珍しい単語に首を傾げる一方通行。
 シスター。
 "妹達"の上位体である少女なら毎日のように朝から晩まで見ているが、白いのは見た事が無い。
「あ、えっと、修道女さん、の事です……」
「あァ?そっちかよ。なら見た覚えはねェなァ。悪リィけどよォ」
「そ、そうですか……」
 しょんぼりと言った感じで肩を落とす少女。
 頭の横に出た髪も少女の感情を表すようにヘニャリといった感じに萎れていた。
 手伝ってやるか?という考えが一瞬鎌首をもたげるが、一方通行も一応人探し中だ。
 目の前の少女には悪いが、手伝っている暇は無いのである。
「ンじゃ、俺ァ失礼するぜ」
「あ、ま、待って……ッ!」
「ごふゥッ!?」
 いきなり襟首を掴まれて首が締まった。
 いつもなら反射している所だが、演算補助装置の電源の都合上今はつけていないのだ。
 したがって、一方通行は生き物の作りとして正常に、息が詰まり、思い切り咳き込んだ。
 思わず蹲り、ぜぇはぁ、と呼吸を正すのに数秒。
 立ち直り次第、思い切り立ち上がり、少女へと再び向き直る。
「なァにしやがるンだ、コラァッ!」
「ひっ……ご、ごめんなさい、その……」
 思いきり怒鳴りつけるが、目の前の少女が泣きそうな顔でコチラを見ているのでそれ以上は言えない。
 一方通行にも良心というものはあるのだ。
 目の前の少女は先程と同じようにもじもじとしていた。
 このパターンにそろそろ飽き飽きしていた一方通行は腕を組み、爪先でリズムを取るように地面を叩き始める。
「言え」
「で、でも……」
「いいから言え」
「う、は、はい……」
 その顔は口は引きつった笑いを浮かべているが、目はイラつきを宿したものだった。
 一応、目の前の少女が言いやすいように笑顔で言うつもりだったのだが、失敗したようだ。
 少女は相変わらず泣きそうな、または小動物の様なとも例えられる表情で、一方通行を見た後。

「実は、私……」
 少女は決心したかのようにかなり大きい胸の前で両手の拳を握り締め、

「ま、迷子なんです……ッ!」
 一方通行の時が止まった。

「……あ、あの……?」
「……はァ」
 少女が困った様な表情で見てくるが、それに構わず溜息を一つつく一方通行。
 そのまま虚ろな目で空を見上げて一方通行は思う。
……なンでェまた、今日に限ってこんな面倒ごとだらけなンだァ……?
 その頃、眼鏡の少女は相変わらず一方通行を見てオロオロしていた。

751 名前:672 投稿日:2006/12/15(金) 03:32:54 [ WtJw.cj. ]
うわー、無駄に長く……後半に行くほどなんだか雑なのは仕様です。眠気です。
というわけで、キャラが異常に増量してきた今日この頃、どうなるやら。
ちなみに主役である結標と打ち止めが出会うのはもう少し先です。
……打ち止めがなんだか目だって無いのは……なんででしょう?

それでは、次回の打ち止めさんはー?
①腹ペコのインデックスさんはとうまを見つけてオレサマオマエマルカジリ。
②妹達が来て登場人数が更にエライ事になる。
③カオス。現実は非情である。

それでは、よくわからないまま、次回まで失礼を!

752 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/15(金) 08:44:40 [ s30jOwck ]
ほう、カオスですか。
それはもちろん人物多すぎて話がよくワカラナイ、なんて当たり障りのないオチではなく、もっと『とある(ry』の本質に迫るラブでコメな事態が目的なのですね。
 
 
それはともかく672氏GJ!

753 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/15(金) 10:03:38 [ SZ42IAwM ]
インテリジェンスソードと申したか

754 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/15(金) 15:05:32 [ OweBfcr6 ]
>>672
これはアレですか、同時進行で番外編『とある迷子の正体不明(カウンターストップ)』開始ですか。

そんなカオスな展開に期待しつつGJ。

755 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/15(金) 17:37:07 [ WKOCgBiM ]
G J

756 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/15(金) 18:25:48 [ WKOCgBiM ]
このカオスをいかに絡ませる事ができるかどうかだな
全力で W K T K

757 名前:744 投稿日:2006/12/15(金) 21:08:43 [ XUV/nb1o ]
>>672さん
相変わらずGJです!

>>745
では月姫とのクロスオーバー長編ってことで

では!吉と出るか凶と出るか!!SS投下します!!!

758 名前:月姫クロスオーバー『DEEP BLOOD』 投稿日:2006/12/15(金) 21:10:28 [ MqXlOsKA ]
Deep-Blood

プロローグ

「―――と言う訳で、こちらに逃げ込んだ魔術師の排除のために戦闘を行う許可が欲しいのだけれど」
ここは薄暗い部屋の中。窓もドアも階段もエレベーターも無い部屋
黒い髪を腰まで伸ばした少女が部屋の中央に設置された強化ガラスのビーカーに向かって話し掛けている。
彼女の名前は遠野秋葉、学園都市のスポンサーの一つ、遠野グループの現当主だ。
「それは構わぬ、こちらとしても対処に困っていた所だ」
返答をしたのは、ビーカーの中に満たされた液体に浮いている『人間』だ
それは男にも女にも子供にも大人にも聖人にも囚人にも見える、
学園都市理事長『人間』アレイスター・クロウリー
「こちらも動けるものは送りけるゆえ、活用するといひのよ」
それとは別に、不自然な話し方をしているのは、ビーカーに映し出された画面に映る少女
イギリス清教最大主教ローラ・スチュアート
画面が顔を中心に映しているせいでであまり見えないが、
体の2倍以上に伸ばした金髪を二つ折りにするという奇抜な格好をしている
「しかし遠野グループの現当主が直々に事後処理とはな」
「仕方ありません、元々あの事件が起こったのは私達の町です。
その町の当主が後始末をするのは当然です。」
「魔術の知識も無いのに無茶をするのは無謀なりけりよ」
秋葉は金髪の少女が映った画面を睨み付け、
「私の知り合いにも魔術師はいます!それに死にかけの魔術師ぐらいなら、私だけでも十分です!」
しかしローラは冷静に、
「それが無理と言うけりよ。今回の事件は『誰かが生み出した何か』が動いているやうなのよね。
他にわかりているのはタタリの能力を持ちていることぐらい、
つまり心に『不安』や『恐怖』を持つ人が多いほど敵が増えりたるのよ、場所が悪きてよ
かつどんな探索魔術さえすりぬけりたるゆえ、これ以上の情報はなきなりよ」

759 名前:月姫クロスオーバー『DEEP BLOOD』 投稿日:2006/12/15(金) 21:11:58 [ .lFnrZa. ]
「こちらも人工衛星による探索を行なってはいるが、中々足取りすら掴めない。
もう少し戦力を投入したいが、協定(きまり)がある以上大々的に動員するわけにもいかないからな。」
それにローラが答える、
「そのことなのだけれど、今回は十字教ではなきであり、流れの魔術師と似たようなもの。
ある程度は大丈夫なように計らいてよ。」
「ある程度、か。妹達(シスターズ)は集まりしだい投入するが、
他に動かせるのは風紀委員(ジャッジメント)ぐらいになるだろうな。
警備員(アンチスキル)は少し他の仕事があるのでな。」
「・・・それに関してはこちらの不備なので何も言えませんが、後でキツく言っておきますわ・・・。」
その声と共に秋葉の髪が風も無いのに揺れ、うっすらと赤みがかっていく
アレイスターはあまり気にせず、
「ならばついでに頼みたいのだが、潜入はもっと静かにやってくれと言っておいてほしい」
「え?」
秋葉は何のことかわからないようで、かなり赤くなっていた髪が元の黒髪に戻っている。
アレイスターはビーカーの表面に一つの画面を映し出す
そこには見慣れた少年が、ナイフ片手に自分で『殺した』壁から出てくるところだった
「―――兄さん、やっぱり来ましたか。あれほど言ったのに!」
秋葉は怒りのあまりに肩を震わせている
アレイスターはさらに他の画面を表示しつつ、
「他にも第七学区で剣を片手に3本ずつ持った『シスター』、
第二三学区の特殊合金の壁を素手で突き破った『金髪の外人』等がいるんだが何か知らないかね?」
「そのシスターとやらは、おおかた埋葬機関の代行者のやうね
魔術師の排除を目的に乗り込んだと言ふところね金髪の輩はわかりにけりよ」
「―――シスターも外人も心当たりがあります・・・。」
俯き、肩を震わせながら秋葉が呟く
「もう!勝手に動くと言うのなら全員叩き潰して差し上げます!」
秋葉の怒声が窓も何も無い部屋に響いた・・・


プロローグ 終

760 名前:744 投稿日:2006/12/15(金) 21:16:56 [ 5GmFd1DA ]
と、言うわけで投稿してみたわけですが
後半かなりグダグダ、携帯だから改行場所が難しい、伏線だらけ
というなにもかも中途半端な状態に
しかも戦闘重視と言っておきながら戦闘無し、文法おかしい、あー泣きたい
やっぱりまだ作家は無理かなぁと思う
住人の反応次第では打ち切り・・・かな?
ううう・・・、だれかパソコンと文才を・・・

761 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/15(金) 21:43:14 [ s30jOwck ]
 >744氏、投下ありがたう。期待してマス
 
 
 ……アイツ等まとめて出すより、シオンとタタリだけ持ってきた方が楽な気がs(ry

762 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/16(土) 02:25:06 [ RHh/arFo ]
なんというか、劇薬指定級のクロスですねw
ぶっちゃけ、学園都市には対吸血鬼決戦兵器とも言うべき姫神がいますからね〜
下手するとアルクですら危険な相手ですから。

台詞部分の最後に「〜〜。」は付きませんよ。お手元の小説なりをご確認を。

それから、ちょっと無茶が多くないですかね?
シエルは仮にも魔術サイドそれも教会の人間ですし、アレイスターになんの断りも無しに突撃というのは厳しいかと。
埋葬機関とはいえ、科学サイドの長になんの断りもなしって言うのは禁書的にどうでしょう?

後、アルクの事を知らないのもちょっと微妙かも。
日本に真祖が居るという情報をこの二人が(特にアレイスター)知らないというのは、違和感覚えますね。

話としては今後の推移、落ちが気になるので応援してますよ〜

763 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/16(土) 12:45:14 [ h9CUayAY ]
 確かに、>>762みたくツッコミ処は多い。
 この板に投下する都合、禁書世界の組織図に型月側を組み込む事になると思うが、その場合の予想される問題点をいくつか以下に挙げる。


(1) 「吸血鬼」の存在(二巻で公式には存在しないとして扱われていた。真祖・二十七祖に矛盾)

(2) (1)に伴う、埋葬機関の存在

(3) 聖堂教会と魔術協会、及び必要悪の教会との関係性(巨人の穴蔵やアオザキも絡む。シオンや先生・タタリを出すなら注意が必要)

(4) 直死の魔眼の原理解説と「自分だけの現実」との整合性及び幻想殺しとの相互作用


 他にもパワーバランスとか志貴の性格だとか上条さんがさわるとアルク(星の端末)とかシエル(蛇のせいで生き返った)とか志貴(秋葉との魂の共有で生きてる)とかどーなんのよとか色々ありますが。
 頑張ってくれ。無理そうならオレと一緒に窓から帰ろう

764 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/16(土) 15:05:44 [ wv6Rp9Y. ]
まあクロスを書く以上、完全な整合性はほぼ無理だし、
多少は設定に融通きかせてもいいと思う。

禁書世界では吸血鬼は存在しないとされているので、
吸血鬼関連は月姫に基準するくらいは許される、か?

アルクは受肉した星の端末だし、シエルは蛇で生き返った「結果」
なので幻想殺しで触れても別に大丈夫ような気もする。
アウレオスダミーも触れられたけど大丈夫だったし。
でも志貴はマズイかな。

765 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/16(土) 15:19:48 [ ns42/D5k ]
吸血鬼の存在より吸血殺しの方が問題

766 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/16(土) 15:28:22 [ .HSySm6s ]
禁書世界にも吸血鬼はいるでしょ……?
いなかったら、姫神の存在意義が皆無に……。

767 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/16(土) 15:58:02 [ wv6Rp9Y. ]
いるけど、いないとされている。
教会の騎士団すらその実在を信じていなかった。

要するに伝説級のレアな存在らしい。

>765
そのための歩く教会だぜ。

768 名前:744 投稿日:2006/12/16(土) 21:10:07 [ 0dLRp07E ]
皆さんこんな作品に素敵に無敵に真面目なコメントありがとうございます
シエルや吸血鬼の概念、吸血殺しに関してはある程度伏線ではあるのでどうにか・・・
この話はメルブラみたいなお祭り的な話なので、多少無理して詰め込んでいるのである程度はご容赦を
とか言いつつかなりの長編になりそうなので今年中に完結は無理ですね(泣)
今はつじつま合わせも含めて鋭意執筆中ですので、もう少しお待ちください


国語を一からやり直そうかな・・・

769 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/17(日) 12:41:40 [ kfuYNVh6 ]
>>744
それでも書こうとする勇気に敬意を表して。
がんばれ。

770 名前:672 投稿日:2006/12/17(日) 13:20:37 [ 4hO.SIUc ]
>>768
おー、中々のチャレンジャーぜよ!
型月作品は詰めて行くとかなりまだ不確定な部分が多いからなぁ。
他の世界観と混ぜると相互作用起こして崩れる危険なところがあるし。
とりあえず小説書くならば、ライトノベル作法研究所を見るのがいいかもしれんな。
まだ俺も読破してませんがね!

というわけで、遅れましたが続きを投下させていただきますー。

771 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/17(日) 13:22:09 [ 4hO.SIUc ]
 結標・淡希は白い修道女服を着た少女を連れてとある駅へと続く歩道を歩いていた。
「あわき?」
「そう、結標・淡希。標を結ぶ淡い希望ってね。私の能力もそんなものよ」
「良い名前だね。うん」
 白い修道女はその手にある携帯食であるクッキーを頬張り、もぐもぐと口を動かしつつ言葉を返す。
 朝ご飯代わりにとポケットに入れて持ってきたものだが、どうやらそれが幸いしたらしい。
 先程まで萎びた野菜ばりだった少女が此処までしっかりと復活するとは、やはり食は偉大だ。
「それで、貴女の名前は?」
「ん?」
 少女はクッキーを口の中で咀嚼しつつ、首を傾げる。何かを考えているようだ。
 結標よりも頭一つ分程小さい少女は首を傾げつつうーん、と唸り始める。
「どうかしたのかしら?」
「ううん。とうまがあんまり人に名前教えるなって言ってたんだけど……まぁ、いいよね」
 とうま、という人は余程心配性らしい。
 確かに学園都市内でも犯罪というものは起こるが、基本的に其れはすぐに鎮圧される。
 第一、能力者だらけのこの街で誘拐等行っても、その事件専用の"風紀委員"が出てくれば、
 能力次第ですぐに見つかってしまうのだ。
……まぁ、機密レベルとかそういう重要人物でも無い限りそれもないでしょう。
 目の前の少女が、それだけのリスクを払ってでも誘拐すべき人物には結標には見えなかった。
「ん、私の名前は、インデックスだよ。禁書目録の方がいいかな?」
「偽名?」
「……いきなりとうまと同じようなこと言うんだね……」
 ふむ、と結標は思考を走らせる。
 この白い修道女――インデックスが偽名を使っているのは恐らく格好から推測するに、宗教関係の事情なのだろう。
 どこかの国では、本当の名前は身内にしか教えないという決まり事もあったはずだ。
 別段、結標は他人が信じるものに対してとやかく言う趣味も無いので、そこまで考えて簡単に思考を手放した。
 と、思考の海から舞い戻った視線の先では、少女がガックリと肩を落としていた。
 まさか本名だったのだろうか、と結標は慌て、咄嗟に考えの方向を変える。
 そうだとしたら反射的にとは言え、かなり失礼な事を言ってしまったのかもしれない。
「え、えぇっと、ごめんね。ほら、あそこにファーストフード店があるわ。あそこで何か食べましょう?」
 子どもをあやす時は食べ物で誤魔化すに限る。
 結標は記憶の端から断片的な智識を引っ張ってきつつ、横断歩道を渡った先、道路の向かい側を指差した。
 瞬間。
 疾風と化した何かが真横を走りぬけて行った。
「は?」
 慌てて、隣を見るが誰もいない。
 そう、つい先程まで隣に立っていたはずのインデックスさえも。
 となると考え付く事は一つ、
「あわき、あわき、はやくー!」
「速っ!?」
 思わぬ俊敏過ぎる動きに驚きを隠せない結標。
 空間移動能力者も真っ青の移動速度だ。
 もしや肉体強化系能力者か何かなのだろうか、と思いつつ赤信号になりつつある横断歩道を急いで渡る。
 渡りきった先、ファーストフード店の前では白い修道女こと、インデックスが瞳を輝かせていた。
「うふふ、ようやくお昼ご飯にありつけるのかも……ジュル」
「インデックスちゃん、涎、涎」
 指摘されると慌てて修道服の袖で口元を拭うインデックス。
 一応、まだ恥じらいなどの感情は捨てていないらしい。
「それじゃ、入りましょうか」
「やったー!」
 元気に万歳するインデックス。
 余程嬉しいらしく、手の中に居た猫が落ちたというのに全く気にした様子が無い。
 猫の方は何やら悟りきったような視線でコチラを見ていた。中々に苦労人なのかもしれない。
 そして、結標は内心で、こんな可愛い子を放置していくだなんて何を考えているのだろうか、とか、
 会ったら絶対に説教してあげなければ、などとまだ見ぬ"とうま"という人物に対して義憤を燃やすのであった。

772 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/17(日) 13:24:05 [ 4hO.SIUc ]
 その様な事を考える結標のやや先を、スキップでもし始めそうな感じで店に入っていくインデックス。
 店内は外見に比べて案外広かった。
 まず最初に見えるのは入り口からカウンターへと伸びる通路とその左右に設置された十数個の長方形のテーブル。
 通路はいくつか途中で枝分かれして他のテーブルなどへ行くための道となっていた。
 道の端々には邪魔にならない程度に置かれた植木などの植物達。
 インデックスについて行く様にしてカウンターまで歩く、その奥では何人かのスタッフが忙しく走り回っていた。
 そのスタッフの一人、ショートカットの少女がこちらに気づき、走ってきた。
「お、おまたせしましたー!何にいたしますかっ!?」
 やってきた店員である少女は妙に高いテンションでインデックスと結標の前へと滑り込んでくる。
 此処の店員は中々に変わっているようだ。
「あわき、なに頼んでもいいの?」
「えぇ、良いわよ。好きなもの頼みなさいな」
 その店員を余所に聞いてくるインデックスに優しく答えを返すと結標もメニューを物色し始めた。
 メニューには典型的なファーストフード店の代名詞とも言えるパンとパンで肉を挟んだものがデカデカと載っている。
 その他にもドリンクやサラダ、シェイクなども載っていて結構種類豊富だ。
「それじゃー、これとこれとこれとこれと――」
「って、そんなに食べるの……?あー……それじゃ、私はこれとこれとこれで、と」
「えぇっと、これとこれとこれと……これですね。承りましたー。それでは、確認させていただきます――」
 店員はいくつかカウンターに設置されたレジを操作すると、復唱を開始する。
「あわき、ありがとね。私、あのままだったら多分行き倒れになってたかも」
「気にしないで良いわよ。その代わり、これ食べたら"とうま"を探す代わり、私の人探しも手伝ってもらうわよ?」
 一方通行には既に連絡を入れてあるし、人手も増えるし、と内心で呟く結標。
 彼の方もなんだか色々大変な事になっているとかなんとか言っていたが、結標はあまり覚えていなかった。
 手を目の前に持って来れば、携帯のボタンを押した指の震えはまだなくなってもいないし、顔もまだ少し熱い。
……き、緊張、緊張のせいよ……っ!
 思い返して思わずまた顔を赤く染める結標。
 インデックスがコチラを見て不思議そうに首を傾げるが、結標の暴走し始めた思考は中々止まらなかった。
……あぁ、もう、なんであんなに緊張するのよ!冷静になりなさい、私!
「あのー?よろしいでしょうかー?」
「え?あ、え、えぇ、お願い」
「かしこまりましたー。それでは、暫くお待ちくださーい!」
 店員の声にようやく現実へと戻ってくる結標が言葉を返すと、店員は走るようにして奥へと去って行った。
 途中なんだか叫び声と共に食器か何かが落ちた音がしたが、気のせいだろう。
「それじゃあ、先にインデックスちゃんは席でも――」
 さて、と前置きしてインデックスの方を向き、用件を伝えようとする結標。
 しかし、それを遮る声が横から来た。
「あれ?シスターちゃんじゃないですかー?」
 インデックスと二人して声のした方向に顔を向ける。
 其処には―――、
「小学生……?」
「い、いきなり失礼なーっ!?」
「小萌先生。初めて会うんだから。仕方ないと思う」
「ひ、姫神ちゃんまでーっ!?」
 見た目小学生が妙に似合う少女が何やら横に並んでいる巫女服の少女とコントをしていた。
 結標は姫神と呼ばれた巫女服の少女を見て眉を顰める。
……?どこかで見たような……。
「あ。良かった良かった。知り合いに会えた。あわき、紹介するね。こもえにあいさだよ」
 インデックスが二人へと駆け寄り紹介を始める。
 その紹介を聞いた結標は疑問が氷解するかのようにキョトンとした表情となり、
「あいさ?もしかして、貴女は"吸血殺し"の姫神・秋沙?」
 それを聞いた姫神も何かを思いだしたかのように掌を打ちつつ言葉を返す。
「そういう貴女は。"座標移動"の結標・淡希?」

773 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/17(日) 13:27:43 [ 4hO.SIUc ]
「あれ?」
「ふえ?二人とも知り合いなのですかー?」
 抗議を止めて向かい合う姫神と結標を交互に見る小萌。
「ん。小萌先生は昔私が居た学校。覚えてるよね」
「え、えぇ、勿論ですよー。霧ヶ丘女学院ですよね?」
 姫神は頷き。
「そこの先輩」
「あ、成る程ー」
 姫神の答えに納得したのか、小萌は結標へと向き直り、礼儀正しくお辞儀を一つ。
「はじめまして。私は姫神ちゃんの担任をしている小萌と申すものです」
「あ、はい。ご丁寧にどうも」
 思わずお辞儀を返してしまう結標だったが、そこで頭の中にとんでもない疑問が飛び込んできた。
「……先生!?」
 勢い良く顔を上げて小萌を凝視する結標。
 嘘だ。どう見ても小学生にしか見えない等と頭の中を理解不能なデータが駆け回った。
 そして、思いだすのは学園都市内で実しやかに噂される虚数学区の存在。
「あぁ、あの不老不死の完成体っていう……まさかこの目で本当に見れるだなんて……」
「ナチュラルに傷つく発言連発ですかーっ!?」
 劇画調になって驚く結標に向かって涙目で抗議を再開する小萌。
 それを見かねたのか姫神とインデックスは互いに視線を合わせ頷いた後、
「結標先輩。小萌先生を弄るのは其れくらいにした方がいい」
「ん、そうね……」
「こもえ、どうどう」
「姫神ちゃんまでですかー!?というか、私は馬じゃありませんー!」
 キーッと両手を振り上げる様はまさに子どもという言葉が相応しかった。先生なのに。
 それを見て楽しそうに表情を変えるインデックスと姫神。
 結標はそれを見ていて笑顔になりそうになり、ふと気づいた。
 私はこんな事をしていていいのか、"目的"を忘れるな、と罅割れた心が叫ぶのを。
「………」
「あ。あわき、あわき。来たみたいだよ?」
「ん?あら、本当ね」
 無邪気にインデックスがコチラに向けてカウンターの奥からやってくる店員を指差した。
 そのインデックスの笑顔を見てとある少女の言葉を思い出す。

『これから貴女を日常へ帰して差し上げますわ。どこかで誰かが思い、このわたくしが賛同した通りに』

 自分が傷つけた少女、戦いの勝敗はもはや決したというのに最後まで意志を崩さなかった強い少女を。
 そして、今もどこかで誰かのために走り回っているであろう少女の事を。
……あの子の思惑にはまっちゃったのかしら、私。
 自分が一度は殺そうとした少女――白井・黒子を思い出して結標は思わず苦笑した。
 罅割れた心が軋むが結標はこう思わずにはいられなかった。
……私は今あの子達のおかげで楽しい日常の中に居るのね。
 インデックスを見つつ結標は今此処には居ない人々を思い、今度こそ本当の笑みを浮かべた。

……ありがとう。

    ○

 風斬・氷華は現在進行形で迷子である。
 頭の横から一房だけ髪を縛ってピョコンとさせている髪型の風斬は目の前を行く白い少年を見ていた。
 見事なまでに白い頭髪と後ろからでは見えないが赤い瞳、そして少女なのか少年なのかわからない体格。
 首には黒いチョーカーのようなものを付け、そこからは音楽プレイヤーの様なものがぶら下がっている。
 そんな少年と風斬は路地裏を歩いていた。
 向こう側に光が見えるが中々に長い道のようだ。
 人気も見事なまでに無い。
「………」
 なんとなく怖くなって周りを見渡すが、やはり何も無い。
 なんだか来た道がなんとなく遠かった。
……ま、まさか……こんな路地裏に連れ込んで……。
 色々思考が暴走気味なのは、とある白い修道女から叩きこまれた"夢見がち"という名の本のせいか。
 もしもそういう事態になった場合は必ず正義のヒーローがやってくるのもだが、と風斬は思い、周りを見渡す。
 天井はプラスチックの屋根になっていた。
 何故路地裏にこんな屋根が、と思うが、取り敢えずは正義のヒーローならブチ破って来てくれる事だろう。
 そして勧善懲悪の下、一撃必殺の破壊光線で悪役を改心させてから高笑いして去っていくのだ。

774 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/17(日) 13:31:35 [ 4hO.SIUc ]
……どうしよう……会ってみたいけど、迷惑かな……。
 既に正義のヒーローという偶像が来る事が前提になっている辺り飛躍し過ぎているが、風斬は気にしない。
 そんなものが居たらまずあの不幸が口癖の少年の所に常時出現している気もするし。
 そして、きっとまたフラグを立てるのだろう。
…………。
 ふと、妄想の世界から帰ってきてみれば、いつの間にか足が止まっていた。
 前の方では白い少年が振り向いてコチラを訝しげな顔で見ている。
「オイ、オマエ。なァにやってやがンだ。とっとと行くぞ」
「あ、は、はい……」
 どうやら少年に特に悪意は無いらしい。
 ちょっと残念な気持ちと同時に、わざわざ待っていてくれた少年の優しさを感じて、
 なんとなく嬉しくなって笑顔になる風斬であった。

 ちなみに風斬は知らない。
 一方通行の頬に一筋の汗が流れていた事に。

「………」
 状況を整理しよう。
 少女が迷子と宣言した後、少女に向かって面倒臭そうに、
『付いて来たいならついて来い。オマエの知り合いもついでに探してやンよォ』
 と言ったところまではよかったのだ。
 問題はその後だ。
 打ち止めはどこに行ったのだろうか等と考えていたら、何時の間にか現在位置がわからなくなっていた。
 しかし、そんな事は最強の名にかけて言える筈もない。
 これが今の状態だった。
 どうしたものだろうか、と一方通行は思考を高速で走らせる。
 このままでは、打ち止めに何を言われるかわかったものではない。
『わー、やっぱりアナタはドジっ子なのかもってミサカはミサカは一方通行萌えーって言ってみたり』
 一瞬、簀巻キニシテヤル等と攻撃的な思考が流れるが取り敢えずはそれをスルー。
 続いて、打開策を思案し始める。
 演算補助装置の電源消費量や後ろの少女を考えなければ、結標に会った時の様に全力疾走でもして
 派手に動き回わる事も出来るのだが、電源はともかく少女を置いて行くのは何となくプライドが許さない。
 やっぱ歩くしかねェかァ、と結局原点に回帰した一方通行はまた前へと歩きだす。
 少し見てみれば、後ろからは親猫についてくる子猫のように少女が急いでついて来ていた。

 詰まるところ、少女と一方通行は二人して迷子になっていたのだった。

   ○

「あのなー、カミジョー、ってミサカはミサカは馴れ馴れしく言ってみたり」
「なんだー?」
「ミサカは実は空飛べるんよーって口調まで変えて衝撃の事実を喋ってみる」
「え?まじ?」
「嘘やー、ってミサカはミサカは可愛らしく小首を傾げてみる」
「あー、この辺だったよな、おばあさんの家」
「って、スルーかよ、ってミサカはミサカは地面に悲しみを書き綴ってみる。あ、ポエムっぽい」

 猫がにゃーと鳴いた。

775 名前:672 投稿日:2006/12/17(日) 13:39:52 [ 4hO.SIUc ]
長いよ!?
というわけで今回も駄文失礼いたしましたー。
今回は結標がちょっとだけお礼の言える子になったり編だったり。
……前置きが長いですがそこは愛嬌と言う事で ダメカナ?

今回の選択肢はお休みということで、答えは君の心の中に。
次回はちょっぴりバトルシーンが入ったりします。実は次回作への伏線。
だったら良いなぁ。

◇今回のNGしーん
「貴女は姫神・秋沙ね」
「そういう貴女は結標・淡希」

 〜中略〜

 ボギャァァァァァァ!
「こもえー!?」
「何をするだァー!許さん!」

なんか電波が通りました。それでは、また次回ー。

776 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/17(日) 13:46:21 [ dpxWGDQI ]
>>672
GJ!
あああ、ますますカオスだ。
結標がビリビリ並みのツンデレになってるな。
だが、そこが良い。

672の方向に祈祷しながら待ってますんで。
続きがんばってくださいなー。

777 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/17(日) 15:20:02 [ 5ncqfawM ]
>>775
GJ!
一方さん萌え〜
つうかみんな可愛いなぁ。

あとシスターズはともかく、ビリビリならイオンクラフトで本当に飛べる気がする。

778 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/17(日) 22:27:57 [ ad9veJM6 ]
>>777
無論飛んでる最中に放つ一撃の決めゼリフは
思いだけでも…力だけでも…とかだな?アステカとのコラボで金星は出ているか!?もありだよな
まぁ宇宙っぽいのはきにするな

779 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/17(日) 22:33:49 [ ndx6WudE ]
遅ればせながら>>775GJ!

風斬「私は人間を辞めるよ、インデックスーーー!!」
こうですか、わかりません><
つーか、風斬って何気にインデックスのこと「あなた」「あの子」としか呼んでないのな

780 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/17(日) 23:14:19 [ kfuYNVh6 ]
>>672
GJ!
素敵!

781 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/18(月) 03:04:41 [ 9gj4db7s ]
どうでもいいけど姓名の間に中黒入れてるのがなんか凄い気になる。なんでそこだけ川上風なんだ。

782 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/18(月) 04:05:46 [ j2231DSQ ]
>>779
そこが難しいところ。
名前を直に呼んでいないキャラって、実は結構居るからどう呼ばすかが問題になるときもあったり。
一方通行と打ち止めとか。
取り敢えず、それだと当麻かステイルがインデックスを助けるための犠牲となって風斬に背中を刺されるフラグに。

>>781
唐突な質問。それは拘りというやつなので。気にしたら負け。

というわけで、数々の声援感謝感激雨あられー。未熟ながら、次回も頑張りますっ。
結標はデレる時は相当デレると思うのだが、どうだろうか?

783 名前:375 投稿日:2006/12/18(月) 19:05:42 [ AA8zdknI ]
忘れ去られて三千(ry
いいのが出すぎて出る幕ありませんでした('A`)

>>672
   _  ∩
  ( ゚∀゚)彡 淡っ希!淡っ希!
     ⊂彡
キャラ多くても全く違和感なし!!

とりあえずまた小ネタモノが出来たのですが、需要はありますか?
大まかな紹介としては、美琴にフォークダンスを申し込まれた(やらされた)上条さん

784 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/18(月) 21:04:17 [ WblsnJLE ]
勿論、ここに需要がありますとも!

785 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/18(月) 21:05:11 [ zEAhdp2U ]
問題ない、存分にやりたまえ>小ネタ

786 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/18(月) 21:31:42 [ ezF9vWI6 ]
>小ネタ
 
当然。拒む理由など無し。
此処はssスレなれば。

787 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/18(月) 21:46:26 [ 2IxF7PIc ]
>>783
おお、11巻冒頭でちょろっとだけ出ていた話をここで再現するんですね?
期待してます。

788 名前:375 投稿日:2006/12/19(火) 23:29:14 [ fTP35n3k ]
>>784-787
賛成多数のようなので、執筆決定とします。

それでは最初の方だけできたので、早速投稿します。
駄文&短いので満足できるかどうか分かりませんが……

789 名前:375 投稿日:2006/12/19(火) 23:41:14 [ fTP35n3k ]

不幸の中の一つ An_Accident_from_DAIHASEISAI

 大覇星祭二日目。
 来場者が初日より飛躍的に増え、各競技はより一層ヒートアップしている中、上条当麻は一人、早くもクールダウンして
いた。
 いや、クールダウンというより目の前の現実にどう対処していいのか分からず、ただ呆然としているような感じだ。
 つまり彼は今不幸な目に遭っているという事である。
「……なんだ、この理不尽イベントのオンパレードは」
 所々に包帯を巻いた上条の傷だらけの体を横切るように生暖かい風が吹き抜ける。このような事は彼の人生上致し方ない
とはいえ、これはあまりに酷すぎる、と上条は思う。
 朝っぱらから本当についてなかった。
 昨日の使徒十字(クローチェディピエトロ)発動阻止戦での傷が完治していないというのに、小萌先生の着替えをうっか
り目撃して吹寄制理に『人間のクズめ!』とか言われながらデコに思いっ切り頭突きされるわ、その件に関してインデック
スに頭蓋骨を砕くほどの勢いで噛み付かれるわ、姫神秋沙にゴムボールのマシンガンをお見舞いされるわ、責任を取るため
に吹寄命令で大覇星祭の競技に参加させられる事になるわ、もう散々なのだ。
 しかもカエル顔の医者にまで『もう退院しても大丈夫だよ。“大覇星祭程度の運動くらいなら”可能だろうからね?』と
か笑いながら言われた。
 詰まるところ、現在上条当麻の味方でいる人間は〇人だった。
 それでもなお、めげずに這い上がってくるところが彼の特異体質(すごいところ)なのだが、今回ばかりは流石にめげそ
うである。
 それは何故かというと、
「何ぶつくさ言ってんのよ。そんなに私とやりたくない訳?」
 目の前で不機嫌そうに腕を組んで攻撃機能の付いてる城壁の如く立ち塞がっている少女―――御坂美琴が今度のお相手
(しゅうげきしゃ)だからだ。
 次の競技まで時間に少し余裕があり、競技場から自宅に帰還する途中で“不幸にも”彼女に捕まった上条は強制的に常盤
台中学まで連行され、“不幸にも”そこで開催される行事(イベント)に強制的に参加させられ、そして“不幸にも”最初
の相手が美琴なのである。

790 名前:375 投稿日:2006/12/19(火) 23:42:01 [ fTP35n3k ]
 いくら上条が『地獄のような不幸が続いても常にそれを乗り越えていく』特異体質を持っていても、これでは精神の方が
先に果ててしまうと思う。
 今の上条の心境を例えると、どこにいくつの地雷が埋まっているか分からない数十エーカーの草原の中心にいる一人の戦
士といったところか。それも手負いの。
 状況的にはこれほど最悪なシチュエーションはないだろう。ホオジロザメの泳ぐ海に放り出された方がまだマシかもしれ
ない。
 とにかく今はその草原から一刻も早く脱出するのが得策だ。
 言葉という草木の罠を掻き分けながら、戦士・上条当麻は慎重に歩を進めていく。
「いや、別に是が非でもやりたくない訳じゃありませんのことよ。ただ上条さんの事情も少しは考えて欲しいかなー、と思
っているのです」
「む、無理矢理連れて来たのは謝るわよ。でも相手がアンタしか見つかんなかったんだし、しょうがないじゃない」
 頬を少し赤く染めながらそっぽ向いた美琴に上条は余計うんざりとした顔になった。
 常盤台中学での次の競技はフォークダンスである。常盤台中学の理事長が『他校の男子生徒との交流を深める為に』とい
う名目で毎年行っているものらしい。箱入り娘防止策もここまで来るとただの親バカみたいに思えてくる。
 しかも彼女達のお相手は彼女達自身で決めて良い事になっており、上条以外にも彼女達に突然連れてこられ、どぎまぎし
ている者も少なくない。
 選択相手の年齢などに制限はないらしく、中学生や高校生は当たり前、大学生や浪人生、中には小学生も混じっていたり
した。選り取り見取りとはまさしくこの事を言うのだろう。
 ちなみに上条は何故、美琴が自分を選んだのかは言及するつもりはない。言及すれば確実に地雷を踏む事になるからだ。
いくら上条が不幸な人間だといっても、自ら墓穴を掘るような真似はしない。
「……ったく。共闘なんてありえねえ、赤白混合など論外だと思ってたけど、やっぱ例外ってのはつき物なのか。あー、ち
くしょう!朝からどたばただわ傷治らないまま競技に駆り出されるわおまけにお次は死亡率高いミッション・インポッシブ
ル!俺に安息の間も与えてくれないのか、神様ァ!!」
「???ナニ独りで叫んでんの?」
「……、不幸だー!!」
 さり気無くスルーという最大の地雷を踏んだが不発だったらしく、美琴は気にも留めなかった。
 そんなこんなで。上条当麻の最後の叫び声と同時、運命のフォークダンスが幕を開けた。

791 名前:375 投稿日:2006/12/19(火) 23:46:57 [ fTP35n3k ]
以上です。
いや〜ものすごく短いですね。
やる気無しオーラ出まくり文体も変わり過ぎ('A`)

次は一文節出来上がる毎に投稿したいです。

792 名前:672 投稿日:2006/12/19(火) 23:54:13 [ 0aNcKx4o ]
>>761
ぐっじょぶ!いいなぁ、皆賑やかで。
というか姫神のゴムボール連射に思わず和みましたぜぃ。
そして、
   _  ∩
  ( ゚∀゚)彡 淡っ希!淡っ希!
     ⊂彡


ところで、皆さんに質問が一つ。
上の【女性化男性化】スレッドで出ている上条さんドッペルゲンガーネタなのですが……。
これは投稿する場合どちらの方がよいでしょうか?
感じ的には現在書いているものの続編っぽくなりそうなのですが。

駄目だったら新作になるので、私は一向に構わん!

それでは、また長文失礼いたしましたー。

793 名前:672 投稿日:2006/12/19(火) 23:55:09 [ 0aNcKx4o ]
>>791でした…… ○| ̄|_

794 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/20(水) 00:02:35 [ qM25h5KY ]
嫌なら読まなきゃ良いんだから一切の問題が無い!
大丈夫、君の幻想は殺されない

795 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/20(水) 00:15:50 [ OGZdo6rU ]
こっちで良いと思うよ。

796 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/20(水) 22:03:35 [ NprdBzjk ]
TSスレも燃料少なくてね?
此方に掲載するのはいいけれど、向こうにも知らせてくれると嬉しいんだけどね?

797 名前:672 投稿日:2006/12/21(木) 03:28:43 [ FQ7NBm5U ]
>>796
了解した。その時が来たら報告しよう。

それでは、今回はちょっと短いけれど続きを投下ー。
バトルシーン有りと言いつつ今回は無し。ちょっとスランプかもしれませぬ。

798 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/21(木) 03:29:44 [ FQ7NBm5U ]
 もう昼だというのに、其の広場は暗闇に包まれていた。
 プラスチックの屋根に覆われた路地の中間地点にある広場。
 四方をビルに囲まれた其処の左右の端にはバスケットボールのゴールが設置されている。
 どうやらストリートバスケなどに使われているのか、幾つかのボールが転がっていた。
 その暗闇に包まれている場所には幾つかの人影があった。
 その人影の数は丁度十人分。
 そして、其の内の一人分を除き、他の人影には共通している事があった。
 その全てが地面に倒れ伏しているのだ。
「しっかし参ったぜよ」
 ただ一つ立つ人影は、男の声を放つ。
 ツンツンとした短い金髪にやや茶色いサングラスをかけた軽そうな大男。
 名を土御門・元春という高校生である。
 またの名を嘘つき村の住人。様々な場所で活躍している多角スパイである。
 土御門は、黒のTシャツと青色のジーンズで包んだ其の身を動かし周りを見渡す。
 周囲には黒いスーツを着込んだ九人の男達が倒れ伏していた。
 顔にはサングラスが付けられているが、その誰も彼もが印象に残らない。
 言ってしまえば、特徴の無い顔をしていた。
 土御門はその全員が意識を失っている事を確認してから、同時に男達が目的の品を持っていないか確認。
 持っていないのを確認すると同時に、土御門は立ち上がり、その表情を歪めた。
「……触ったら最後、殺すまで追跡する悪夢、か。本当にそんな霊装がこの都市に紛れ込んでいるとしたら――」
 最後まで言う前に唇を噛み締める土御門。
 その表情は彼の友人達が見たら驚く様な真剣なものだった。
 土御門は顎に手を当てて暫し黙考。
 結局、取り敢えずはこの男達をなんとかしなければ、という考えに至り、何か縛る物は無いかと周りを見渡し始める。
 と、同時に広場に響く水風船が弾ける様な音。
 土御門はその音に眉を訝しげに顰め、音のした方向へと振り向いた。
 そこには――、
「水……?」
 音のした方向、先程まで男達が倒れていた位置にはそれぞれ水溜りが出来ていた。
「なるほど……こいつ等は囮の使い魔というわけだにゃー」
 土御門は水溜りへと近づき、そこに残った人型に切り取られた紙を拾う。
 その紙の中央には、蛇がのた打ち回ったような記号の様なものが書いてあった。
「古典的な術式……しかもこれは、オレと同じタイプだぜい」
 魔術師――陰陽師である土御門は、其れを見て僅かにだが驚きの表情を漏らす。
 しかし、次の瞬間、その表情はすぐに引き締められた。
「全く……厄介事を持ち込んでくれるもんぜよ」
 血反吐を吐き捨てるが如く空を見上げる土御門。
 戦闘の邪魔だと道端に放ってあったオレンジ色の派手なジャケットを拾い、肩に担いだ。
 そこで気づいた事が一つ。
「……濡れてるにゃー」
 Tシャツがどんどん濡れたジャケットの影響を受けて侵食されていく。
 土御門はサングラスを持ち上げなおしてプラスチックの屋根に覆われた路地裏へと向かう。
「覚悟しておくぜよ、犯人。今日の土御門さんは一味違うぜい」
 なんだか黒い空気を発する男こと、土御門は更に暗い闇の中へと濡れたジャケットを持って去って行くのであった。

799 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/21(木) 03:31:40 [ FQ7NBm5U ]

   ○


『いただきます』
 席についた結標・淡希達はのんびりと昼食の挨拶をしていた。
 席は窓辺、ガラス張りの大きな窓が真横にあり、外の風景がすぐに見える場所である。
 これならば探し人が横切った場合などでもすぐさま対処出来るから、との結標の判断であった。
「そういえば、シスターちゃん、上条ちゃんはどうしたのですかー?」
「んー?」
 食事を開始してから数分。
 ハンバーガーを頬張りつつ、疑問の声を上げた小萌へと首ごと動かして視線を送るインデックス。
 インデックスの口がもごもごと蠢く。
 どうやら何かを伝えようとしているようだが、その口の中にある食べ物が邪魔をしているらしい。
「あ、喋るのはキチンと口の中のものを飲み込んでからですよー?」
 小萌はその様子に思わず苦笑。
 人差し指を立てて、無理矢理食べ物を飲み込もうとするインデックスを制止する。
 こうして見ると確かに先生っぽいわね、とそれを見て結標は感心していた。
 噂に聞く、熱血チビッコ教師。
 その肩書きは間違いではないようだ、と結標も口元にハンバーガーを運ぶ。
 その熱血教師の言葉に頷き、インデックスは食べ物をゆっくりと咀嚼し始めた。
 それから数十秒経ち、インデックスはようやく口に詰め込んだハンバーガーを飲み込む。
「ぷはっ」
 満足そうに息を吐くインデックス。
 その膝元ではスフィンクスと呼ばれていた猫がおこぼれに預かっていた。
「口。横についてる」
 テーブルに付属していたティッシュを使ってインデックスの口元を拭うのは姫神・秋沙。
 切り揃えた前髪に腰辺りまで伸びた黒髪とその身を包む巫女服が特徴の少女だ。
「んんぅ……ありがとう、あいさ」
「どういたしまして」
 僅かにだが微笑む姫神と、それに釣られて笑顔になるインデックス。
 和やかな雰囲気が流れる中、結標は柔らかい口調で小萌の提示した疑問を少々改竄して引っ張り出した。
「それで……なんであんなところに一人で倒れてたの?」
「それは話すも涙、聞くも涙な話になるんだけど……」
 よよよよ、と嘘泣きの芝居を前置きに事情を話し始めるインデックス。


 簡潔にインデックスの話を纏めるとこうだ。
 今朝方、久方ぶりに外に出る事が出来たので二人で散歩をしていたら、公園で困っているおばあさんを発見。
 事情を聞いて見ればおばあさんの飼い猫がどこかに行ってしまったのだという。
『それなら俺達に任せておけ』
 と、困るおばあさんを見て耐え切れなかったのか唐突に声を上げる"とうま"。
 そうして、おばあさんからその猫の特徴を聞き、捜索を開始した"とうま"とインデックス。
 捜索から約三十分。
 猫が行きそうな場所を片っ端から調べてようやくそれらしき猫を見つけたインデックス達。
 しかし、その猫はインデックス達を見つけると同時に逃げ出してしまった。
 思わず追いかけるが、スフィンクスを抱えた状態であるインデックスはそこまでスピードが出せない。
『くそっ!悪い、インデックス!お前は此処で待っててくれ!ぬおおおおおおおおーっ!』
 暑苦しい叫び声を上げて駆けていく"とうま"。
 インデックスはスフィンクスの身を案じて"とうま"を見送ったのだが―――、

800 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/21(木) 03:32:22 [ FQ7NBm5U ]
「待っているうちに御腹が空いて来て、倒れていたと」
 思わず楽しそうに苦笑する結標。 
「うぅ、笑い事じゃないかも。あわきが来なきゃ本当に行き倒れになってたかもしれないんだよ?」
「良かったね。結標先輩が良い人で」
「結標ちゃんみたいな良い子を持てるなんて……先生は貴女の先生が羨ましいですよー」
 感謝の視線を向けるインデックスと微笑む姫神と小萌。
 正直、素直な感謝の念を向けられると、自分が昔やっていた事を思い出して胸に幾つか矢が刺さる思いだった。
 そして、それと同時に結標は小さな違和感を感じた。
 違和感の元は先程のインデックスの話だ。
 猫とそれを追いかける少年。
 その様な構図に結標は会った事がある。
 しかも、今日の朝にだ。
 恐らくだが、インデックスの言っていた時刻的にも合致しているだろう。
「ねぇ、もしかして、その"とうま"って子。ツンツンの黒い短髪が特徴の?」
「ふえ?」
「結標先輩。あの人を知ってるの?」
「知ってる、というよりも今朝方それっぽい子に会ったんだけど……高校生くらいの男の子よね?」
「えぇ、そうです。私の自慢の教え子なのですよー」
 えっへんと胸を張る小萌。
 その顔は実に誇らしげだ。
 結標はその様子を見て、良い教師ね、と微笑みつつ頷きを一つ。
 その表情を真剣なものに変え、両肘をテーブルについてやや腰を落として顔の前で手を組み合わせる。
 特に意味はないけれど大事なのは雰囲気だ。
「今朝、ゴミ捨てに行った時のことなんだけど……」
 ふんふん、と勢い良く頷くインデックス。余程"とうま"という子が心配らしい。
 他の二人も結標の次の言葉を待つ。
 その空気が結標の何かを刺激したのか思わず、結標は悪戯心を動かしてしまった。
 そう、人が自分の中の悪魔に誘惑されて堕落していくように。
「……いきなり私の胸に飛び込んできたの」
 頬に手を当て、出来るだけ顔を赤らめ、恥ずかしそうに言う結標。

 時が、止まった。
 そのまま、誰も身動きが取れずにきっかり一分が経過。
 そして時は動き出す。

「ちょ、かかか、上条ちゃんがそんな破廉恥なー!?いやするかもしれませんけど!」
「うふふ。私達って。やっぱり救われない」
「とーうーまー……」
「え、えーっと……」
 慌てて手を振って自らの教え子の容疑を晴らそうとする小萌と虚ろな目で窓の外を見る姫神。
 インデックスに至ってはハンバーガーなどが置いてあったトレイを噛みはじめる始末だ。
「って、インデックスちゃん。それは噛んだらいけませんよー」
「あ、うん。ごめん、こもえ」
「いえいえ」
 小萌にツッコミをきっかけに冷静に戻る一同。
 そして、インデックスは呼吸を整えてテーブルを叩いて結標の方へと身を乗り出した。
 その表情は真剣そのものだ。
「で、どういう事なの、あわき!?」
「あ、いや、えっと……」
 ここまで派手にリアクションを取られるとは思っていなかった結標は正直な所どうしたら良いのかわからない状態だ。
 オロオロと視線を彷徨わせた後、小萌や姫神の方を見るが、二人もコチラを真剣な眼差しで見ている。
 ブルータス、お前もか。
「えと、あの、その……あー!窓の外に巨大怪獣がー!」
 もはや何がなんだかわからなくなった結標は思わずそんな事を口走って窓の外を指差す。
 そして、固まった。
「もう。結標ちゃん。そんな妙な事を言って会話を濁そうとしても駄目ですよ――って本当になんか出ましたー!?」
 結標の言葉を一応確認しようとして振り向き、叫び声を上げる小萌。
 それもそのはず。
 窓の外では水色の巨人が拳を振り上げていたのだから。
 間も無く、振り下ろされる拳。
 結標達のいる席へ向けて水色の巨人の拳がガラスの窓を打ち破り、無慈悲に突っ込んだ。

801 名前:672 投稿日:2006/12/21(木) 03:36:20 [ FQ7NBm5U ]
ちょっとだけ伏線編失礼いたしましたー。
と言っても今回の伏線編。ほとんどこれで終わりなのですが。
……まぁ、バトルはこれ限りになりそうな予感です。

それでは、短い上に今回はクオリティが低いですが、また次回ー!

802 名前:672 投稿日:2006/12/21(木) 12:03:50 [ xerbH0Lw ]
……うわぁ、改めて見てみると凄い乱文だぁ……。
やっぱり眠気を訴える頭で書くのはまずいですぜよ。
という事で一つお願いが……。

コイツを書き直してやりたいんですがッ、構いませんかねッ!?

JOJOネタの使いすぎは命に関わるぞ。
むむぅ何だか連投ばかりして申し訳ないです。

アナタに危険物を座標移動。株式会社結標がお送りしました。

803 名前:672 投稿日:2006/12/21(木) 12:05:43 [ 8dL0Nl8k ]
sage忘れました……本当に申し訳ないorz

804 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/21(木) 14:35:51 [ yfJFWYoU ]
貴方が望むなら望むままにやってかまいません。

805 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/21(木) 14:52:08 [ pgzEDbRg ]
>>672
別に書き直しってのもアリじゃない?プロじゃないんだし。
あなたの作品なのですから、好きに書けばよいと思います。失敗したと思うものを書き続けるのも苦痛かもですし・・・
それで内容がよくなるのなら、私たち読者だって嬉しい訳ですしね。

しかし、よく分からなくなってきたなぁ。
ラストは、カミやんと一方さんの愛と友情のツープラトンで締め?

806 名前:641 投稿日:2006/12/21(木) 17:43:59 [ T19MFOOI ]
おお、久々にここに来たらずいぶんと活気付いてますなぁ!!
皆さんこれからも頑張って書き込んでくださいませ。

というわけで自分もひとつ書き込ませていただきます。
以前に書こうかな、と言ってたネタを復活させようと思うのですが・・・。
とりあえずは序章のみにて失礼をば。ネタの新鮮さがまだあれば良いのですが・・・。
それではどうぞ。

807 名前:641 投稿日:2006/12/21(木) 17:44:34 [ T19MFOOI ]
とある授業の社会見学     序

学園都市。
東京西部を開発して作られた超能力開発機関。人口二三〇万人を数える一大マンモスタウンでありな
がら、住人の八割が学生である街。
そんな街の一角のありふれた学生寮の一室で、今晩の夕食の後片付けをしながらふと思い出した様
子で上条当麻は同居人であるシスターに声をかけた。
「っと、そうだ、インデックスー?」
「ん? なーに、とうま?」
返事をしてはいるが、視線はテレビの画面から一時も離さないというかほとんど上の空であるインデッ
クス。
ちなみに、彼女が現在夢中になっているのはテレビアニメ 「超起動少女カナミン - Ple Pure -」 と
いう番組で、夏休み中に再放送されていた第一作目の続編シリーズの三作目になるものである。ゴール
デンタイム時放送のアニメにしては一話毎の展開が速い上、物語も中盤に差し掛かり、結構目が離せ
なかったりするのである。
「今いいところなんだけど」
「ん、わりぃ」
返された言葉に若干含まれる不機嫌さに謝りながら、洗い物を済ませた手を拭いて用意したお茶を出
す。その手順に無駄は無く、急須から注がれる緑茶の色も申し分のないもの。
注いだ湯飲みをまずインデックスの前に置き、茶菓子となるあられを並べていく。さっそくあられに手を
出すインデックスを見ながら自分の湯飲みから一口すする。中々の出来と思うが、同居している女の子
がいるのに自分だけ家事のスキルが上がっていくのはいかがなものか、などという考えが浮かんだり
浮かばなかったり。
まあそんな考えは目の前の少女に知られると、いろいろ後が大変なのですぐさま心の引き出しに仕舞
い込むのだが。
「明日なんだけどさ、うちの学校が社会見学ってやつで帰りが少し遅くなるかもしんねぇからさ。一応用
意をしとくからあんまり遅くなるようだったら先に食べててくれるか?」
「? しゃかいけんがく? 何それ?」
当麻の言葉に反応を示しているが、放映時間も終盤に差し掛かっているために明らかにそちらの方に
気を取られている。
「ああ、うーんと、普段生活している世の中がどういう仕組みで成り立っているのかを見て学ぶもの、か?
まあ、そんなに遅くはならないと思うけど、現地集合・解散じゃなくて一度学校まで戻ってこないといけな
いから、その分余計に時間がかかるだろうしなぁ」
「ふーん、そうなんだ。――――――――ああっ!」
気の無い返事を送っていたところに番組が尺のラストにきて急展開を見せ、そのまま次回に繋げていっ
たので、当麻との話はほとんど丸投げのインデックス。話していた当麻の方も、何気に見ていた番組に
引き込まれかけていたようで、話半分の様子ではあったがそれ以上の説明をしなかった。

「さて、と」
しばらくしてお茶を飲み終えた当麻が湯飲みなどを片付け始め、先程のテレビの内容を頭の中に整理し
て仕舞い込んでいるインデックス、と何だかさっきも見た感じの室内となって夜は過ぎていった。

こうして、社会見学の前夜は過ぎていく―――





   ――――――





「ん? とうま! しゃかいけんがくって、まいかがいってたお祭りのひとつなんでしょ?!
だったらこないだの、だいはせいさいとかいちはならんさいとかの時みたいに、お店屋さんが並ぶんじゃ
ないの?!なんでわたしを置いてきぼりにするつもりなのかなとうまは!!」
「おぶあ!何いきなり襲い掛かってきてんだてめえは! あとなんだよお祭りのひとつって!
そんなしょっちゅう馬鹿騒ぎするような行事があってたまるか! 普通の授業に決まってんだろって言うか
とっとと離れやが・・・あだだだだだ!!」
アニメの内容を整理していたら当麻との会話の内容がようやく入力され、祭りでのけ者にされると感じた
食欲シスターの噛み付き攻撃にあう『不幸』な少年。

社会見学祭開始前夜が過ぎるていくのはまだ暫くかかりそうである―――。

808 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/21(木) 22:19:18 [ BRnXkDlM ]
>>806
GJです。
今後に期待してます。

809 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/21(木) 22:27:11 [ wZiucANg ]
機動?

810 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/22(金) 01:19:25 [ 5ymBG6uY ]
>>730
 結構今さらだが、感想を一つ。
 
 この流れで行くと、詠子『が』当麻にフラグを立てるという偉業を達成してしまう。
 青ピと遭遇した日には
 『掟破りのフラグ返しぃ!?』
 とか叫んだりして(笑)。

811 名前:672 投稿日:2006/12/24(日) 02:32:57 [ ZJ.FDAvg ]
>>806
GJッ!
いいなぁ、なんか和やかで。こんな平和な展開が大好きです。
今後の展開に期待してますよー。

>>804-805
回答感謝っ。
といっても、前回の投稿を丸々塗りつぶす様な感じになりそうです。
今後の展開としてアレでは路線からずれてしまうものがありまして……。
……後先考えないで書くのは危険だとミサカは遠くを見つつ思いました。

>>TSスレの皆
オラに力を分けてくれ!というわけで、このとある打ち止めと〜の続編っぽくなりそうです。
おーけーですかー?


それでは、前回の投稿を塗りつぶすための第一弾、どうぞー。

812 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/24(日) 02:36:06 [ ZJ.FDAvg ]
 音が空間に響いた。
 それは強い打撃音であり、打撃の主は一人の男だ。
 鋭い打撃を受けた黒い影は派手に吹き跳び、その背を壁へと叩きつけられて倒れ伏す。
 一方、打撃を放った男はとても戦闘後とは思えない飄々とした様子で周りを見渡した。
 薄暗い広場。
 正確には路地裏に位置する場所だが、そう表現しても構わないだろう。
 その広場には十人程の男達が倒れており、そのどれもが黒い全身タイツを身に纏っていた。
 怪しすぎる。
「気味の悪い連中だにゃー。オレにそっちの趣味はねーぜよ」
 ケラケラと軽い口調で笑う男に僅かに差し込んだ太陽の光が当たる。
 金色に染められた短髪に動きやすそうな黒いティーシャツと茶色のズボン。
 首から掛けられた安物っぽい金色の首飾りと青いサングラスが妙に男を不良っぽく見せていた。
 男は欠伸を一つ。
 妙に長い腕を使い、頭を二、三度掻いて、ここまでの経緯を思いだす。


 事の始まりは何時も通り、愛する妹の無事を確認と後をつけていたら、唐突に何者かの視線を複数感じた。
 勿論、プロのスパイである男はその視線にすぐに気づきつつも、すぐには迎撃せず、暫く泳がせてみる事にしたのだ。
 その方が相手の出方も伺いやすくと思い、妹の身辺警護を再開したのである。
 別に妹を愛でる時間を削るのが勿体無かったわけではない。
 昼になるまで、その身辺警護という名のストーカー行為は軍隊仕込みっぽい妹のストレートを土産に追い返されるまで
 続いたわけだが、その間もついてくる視線達は男に張り付いたまま。
 いい加減理由の一つでも聞いてやろうと気が立っていた男は、視線達を人気の無い場所まで誘導した。
 そして、人気の無い場所に来るなり現れた全身タイツの男達。
 気配をあまり感じさせなかったためプロだと思っていたが、あまりにも格好が馬鹿すぎる。
 流石に全身タイツはないだろう。
 その全身タイツ達は男を取り囲むなり無機質な声で一言、
「動くな」
 格好と合わない無機質な声に違和感を感じた男は取り敢えず一歩。
「止まれ」
 と言われたので、止まってその場で派手にダンスを踊り始めてみた。
「怪しい動きをするな」
 三段移行した末の曖昧な要求。
 それに対して取り敢えず思いつく限りの怪しい行動をしてみたら、いきなり黒タイツ達は襲いかかってきた。


 そして、結局、黒タイツ達を返り討ちにして現状に至るわけだ。
 男は周りを見渡し、取り敢えず襲撃の目的を聞こうと手近な黒タイツへと歩み寄っていく。
 そこでようやく気づいた。
 黒タイツの中身の体が無くなり、代わりとばかりに日常的に見る"とある液体"が其の場に広がっている事に。
「水?」
 首を傾げつつ、しゃがみ込む男。
 襲撃者達は黒タイツだけを残し、その身を透明な水へと変えていた。
 いや、変えていたというよりも、戻ったという表現の方がこの場合は正しいのだろうか。
「………」
 それを見た男の表情が一瞬険しくなる。
 "人間"が突然"水"になった。
 しかし、男はその考えを即座に否定する。
 これは逆だ。
 "人間"が"水"になったのではなく"水"が"人間"の形を模していたのだ。
「能力、魔術……これはどっちなのかにゃー?」
 ふと、男は黒タイツを中心に広がっている水溜りに浮く妙な物を発見した。
 その形は簡略されてはいるものの、頭部や四肢を申し訳程度に再現した物体。
 色折り紙で作られた薄っぺらい人形だ。
 折られた部分を辿って開いて行けば、内側にビッシリと書かれた古臭い漢字の数々。
 男には、この漢字の形、配置に見覚えがあった。
「式神操術の符……これは、陰陽師だにゃー?」
 陰陽師。
 それは、世界各地に隠れるようにして存在する数多の魔術系統の一つの形である。
 表では無いとされている、世界の法則を歪める裏技。
 その術を要する者達の総称を魔術師と呼ぶ。
 そして、今、目の前にある符を使った術は、男が以前まで使っていた魔術と近いものがあった。
 正確な系統こそ違うものの、似た様な水を利用した術式を得意としていた男は思わず笑みを漏らす。
「これは天才陰陽博士の土御門・元春さんへの挑戦状と見て良いのかにゃー?」
 今は既に魔術を使えない男――土御門はそれでも自信に満ちた獰猛な笑みを口元に浮かべる。
 しかし、その目は鋭く、此処には居ない敵を見据えていた。
 広場に静寂が満ちる。
 だが、その静寂は一分と続かなかった。

813 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/24(日) 02:39:39 [ ZJ.FDAvg ]
「この道は一体、なーンなーンでーすかー?」
「あ、あの、落ち着いて……きっと、もうすぐ出口、ですよ。……たぶん」
「気楽でいいよなァ、眼鏡はよォ」
「め、眼鏡……」
 唐突に広場の中央を横切る道、その片方から響いて来る中性的な声と女性の声。
 去るか、と考えるが四方は壁。
 声が響いてくる道と逆方向にも道があるが、行こうとしても距離が遠すぎる。
 恐らく、急いだとしても声の主達が土御門の姿を発見する方が先だろう。
 それは拙い。
 水溜りは何時の間に広がって消えているが、問題はそこら中に落ちた黒タイツだ。
 下手したら何らかの事件か、黒タイツをそこら中にばら撒く変態と見られて通報される恐れもある。
 多角的スパイの看板を背負った土御門にとって、極力目立つ行動は避けたい所なのだ。
 しかし、腕を組んで思案するものの、打開策は中々思いつかない。
……これでは、そうそう身を隠す場所なんてないにゃー――。
 どうしたものか、と首を捻る土御門。
 その際に、ふと、土御門の横に位置する壁と壁の間、其処に開いた隙間に目が行く。
 其処に挟まっている分厚い厚紙のような物が土御門の目を惹いた。
「これがあったか――ッ!」
 すぐさま厚紙を隙間から取り出し、本来あるべき姿へと組み立て始める。
 完成に数秒。
 声は段々と近づいてくる。恐らく接敵まで残り数十秒もないだろう。
 組み立ては完了。
 後はこの中に入るだけだ、と土御門は己の手腕に感動する。
「一世一代の勝負……漢、土御門・元春、往くぜい……!」
 接敵までもう数秒も無い。
 小声で叫ぶと同時、土御門はその物体の中へと飛び込んだ。
 

   ○


 暗い路地裏を風斬・氷華は白い少年と共に歩いていた。
「ったく、本当にいつまで続きやがンだァ?」
 路地裏に白い少年――一方通行のウンザリとした感じの声が響く。
「……で、でも……あ、何か出口のような感じが……」
 その隣に並んで歩く風斬は、一方通行の声に慌てて路地裏の終わりを指差す。
 彼は風斬に言われて目を凝らして先を見てみるが、眉を顰めただけだった。
「思いっきり中間地点って感じの広場じゃねェか」
「あ、あれ……?」
 それを聞いて同じように目を凝らす風斬。
 成る程、確かに先にあるのは広場であり、その先には今歩いている路地裏の入り口と同じ様なものがある。
 風斬はそれを見て項垂れ、
「あ、あう……ごめんなさい……」
「……敬語」
「え?」
 下げた頭をキョトンとした表情で上げる風斬。
 面倒臭そうにボリボリと頭を掻きつつ、風斬を横目で見やる一方通行。
「なンっか、さっきからムズ痒いと思ってたンだけどよォ。その敬語だ」
 一方通行は視線を前方へと戻し、
「最近使われてねェもンだから、逆に気持ち悪りィンだよ。だから、やめろや」
 横暴に聞こえる一言。
 しかし、それは遠慮無く接して欲しいという気持ちの表れとも取れる一言だ。
 それを聞いた風斬は一瞬驚きの表情を作った後、すぐさま思わず笑顔になってしまう。
 この目の前の少年は、素直では無いが根は優しいといったタイプの人間らしい、と風斬は一方通行を評価する。
 隣でニコニコと笑い続ける風斬に気づき、一方通行はウンザリした様子で、
「オマエよォ……マゾかなンかかァ?」
「?」
 突然放たれた言葉に首を傾げる風斬。
 どういう意味だったろうか、と言葉の意味を頭の中の三角柱を回転させて検索すること数秒。
 検索終了と同時に風斬の顔は真っ赤に染まった。
「ち、違……ッ!」
 すぐさま腕を振りつつ慌てて一方通行の放った言葉を否定する風斬。
 それを見て一方通行は少しだけ楽しそうに笑みを浮かべ、
「冗談だってーの。本気にすンな、馬鹿眼鏡」
「馬鹿じゃ、ないもん……」
 顔を真っ赤に染めて少しだけ俯きながら人差し指同士をくっつけていじける風斬。
 などといじけている間に広場に出てしまった。
 妙に整然とした暗い広場。
 申し訳程度に光が差し込んでいるが、それも通って来た通路と同程度の明度しかもたらしていない。
 路地裏だと言うのに妙に整備された広場は、スッキリとした雰囲気を見るものに与える。
 ただし、ただ一点を除いては、だが。

814 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2006/12/24(日) 02:44:18 [ ZJ.FDAvg ]
 風斬と一方通行は同時に固まった。
 とある一点に視線を釘付けにされる風斬と一方通行。
「何だろう……あれ」
 思わず風斬はその一点――広場の壁際で暴れるダンボールを指差した。
「俺に聞くンじゃねェよ」
 一方通行は呆れた表情でそれを見て、溜息を一つ。
 ダンボール自体は大きめだが、広場の端にあるせいかあまり目立たない。
 しかし、その暴れっぷりがその存在を異常にアピールしていた。
 一方通行は嫌そうな顔をしつつも、ダンボールへ向かって歩きだした。
 一瞬、どうしたのかと首を傾げるが、慌ててそれを追う風斬。
「ったくよォ……なンだァ今日は厄日かァ?」
「ど、どうするの……?」
 ダンボールの目の前へと到着する二人。
 風斬は謎の未確認ダンボールを見て、やや不安になったのか、一方通行の服の袖を掴んで引っ張る。
 途中、『ちいさすぎたぜよー!?』などとダンボールから聞こえたような気がしたが気にしない。
「あ、危ない……かもしれないよ……?」
 心配で思わず声をかけるが、一方通行はあァ?とコチラを向き、
「どーせ、捨て猫かなンかだろうよォ。捨てンなら、もうちっと人通りが多い所に捨てやがれってンだ、クソったれが」
 口調こそ荒いが、そこには猫に対する優しさの様なものが見え隠れしているようにも風斬には聞こえた。
 そのせいか、不安よりも、なんだか妙な気持ちが大きくなった風斬は嬉しそうな笑みを一方通行へ向かって浮かべる。
 その表情を見て、またウンザリした様な表情を作る一方通行。
 彼は暫くニコニコと笑う風斬と顔を見合わせていたが、暫くしてダンボールへと向き直り、
「……さってとォ」
「……本当に、猫……なのかな?」 
「―――」
 疑問の声を上げるが、返事は無い。
 しかし、構わず一方通行はしゃがみこんでダンボールの隙間へと手を入れる。
 だが―――、
「?」
 訝しげに表情を変える一方通行。
 それを見て風斬は首を傾げ、
「え、えっと……どうしたの……?」
「内側からガムテープでも張ってやがンのかァ?結構硬ェぞ、こりゃァ」
 それなら引っくり返せば早いだろうが、中に猫がいるのだとしたら無茶は出来まい。
 そう考えて風斬は更に一方通行の評価を更に上げる。
 後ろからの尊敬の眼差しを向けるが、一方通行は気にせず溜息を一つ。
「こンなトコで大事にとっといたバッテリーを消費なンてしたかねェンだけどなァ……仕方ねェか」
 そう言って、一方通行は首に付いたチョーカーからぶら下がっている黒い棒状のものを操作する。
 少しの間を置いて、彼は再びダンボールへと手をかけた。
 紙を破くような音と共に開かれるダンボールの扉。
 その中には――、
「にゃ、にゃー」
「……」
「……」
 なんだか猫なで声をこちらへ投げかけてくる金の短髪にサングラスをかけた大男が詰まっていた。
 風斬は暫く固まっていたが、一方通行の復帰は数秒早かったようだ。
 すぐさまダンボールを閉じる一方通行。
……え、えーっと……猫が男の人で猫で男で……。
「オス……ッ!?」
「ツッコミどころはそこかァ!?」
 唐突に妙なところに驚く風斬に対して思わずツッコミを入れる一方通行。
「だ、だって……猫が大きな男の人に……っ!」
「ありゃどう見ても不審人物だろうがァ!」
「不審人物とは酷いにゃー」
「黙ってろ」
「……」
 ダンボールの中から男が立ち上がるが、それを男の方を見もせずに一蹴する一方通行。
 男はいじけたのかダンボールの中にしゃがみ込んでのの字を書き始めた。
「あの……落ち込まないで、ください……あの人も悪気があって、言ってるわけじゃ……」
 あまりの落ち込み具合を気の毒に思い、風斬が俯く男に声をかけると、彼は僅かにコチラへと向き、
「……ツンデレかにゃー?」
「え?いや、あの……たぶん……?」
 と風斬は思わず放たれた言葉を肯定する。
 ツンデレ。
 意味合い的には、普段はそっけないが、いざという時は優しい人――だった筈だ。
……うん……たぶん、間違ってない、筈……。
 頭の中でもう一度確認して拳を握る風斬。
 その視線の先では男が頬に汗を流して口元を引きつらせていた。
「だァれが、ツンデレだァ……あァ?」
「ひぅっ!?」
 唐突に、後ろからどす黒い空気を感じる。
 これは駄目だ。振り向いたら駄目だ、と本能が警告するが、もう遅い。
 恐る恐る振り返る風斬。
 後ろには憤怒に満ちたオーラを放つ羅刹が笑いながら立って――、


  ○

815 名前:672 投稿日:2006/12/24(日) 02:52:58 [ ZJ.FDAvg ]
これこそが……寸止めの美学……ッ!
この後一方通行さんのおしおきターイムが入りますが、そこはご想像にお任せする。

というわけで、またまた題名にもなっている打ち止めさんが出て来ない話です。
……強いて言うなら遭遇編?
あと、次回なのですが、見た目は皆が知っている人のそっくりさんが出てきます、一応オリジナルキャラです。
進行上、一人は必要になるので……まぁ、解説担当なのですがね!

「ぬぅ!あれは……っ!」

それでは、今回こそ恒例の、次回の打ち止めさんはー?
①可愛い打ち止めは、白井に見つかり、血走った目の白井に追いかけられる。
②一方通行が来て保護してくれる。
③結標に拉致られる。現実は非情である。

スランプもなんとか抜けましたのでガンガン書きますよー。
それでは、不束ものですが……これからも宜しくお願いしますぜよーっ!
では、今回はこれで失礼を。

816 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/24(日) 04:07:26 [ UtSRIyrs ]
wikiの自作SSまとめページに
長編のまとめでも作ろうと思うんだが、まとめ希望とかある?
ttp://www12.atwiki.jp/index-index/pages/284.html

817 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/24(日) 06:06:06 [ xEUK.R2c ]
スネークを見習え土御門。
ダンボールの美学と言う物をなぁ。

818 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/24(日) 15:00:35 [ Vm0t6xj6 ]
空気を読まずに①を希望!
そして、スネークw

819 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/24(日) 15:51:46 [ rHlCiBnI ]
>>815
GJでーす。
そして③に見せかけた①を希望します。

820 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/25(月) 13:56:29 [ LXGIhvhM ]
やっぱ土御門は学園都市のスネークだったんだな

821 名前:806=641 投稿日:2006/12/25(月) 18:09:35 [ UUhfh1ys ]
>>815=>672氏GJ!!

以下私信
>809 (゜゜3) ?
      ̄
>806 (゜゜3) …
      ̄
    ( ゜д ゜)Σ あああぁぁっ!!

というわけで前回のNGワード  ×起動
                ○機動
でした。どうもすみません。うぅ…、文才で敵わないなら、せめて誤字脱字がないように、
と思っていたのに、流れの文でなく、ネタで誤字を出すとは恥ずかしいです。
これからはこんなことの無いようもっと気をつけます。
長文失礼しました。

822 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/25(月) 22:50:01 [ oTDisoTU ]
立った頃はここもエロパロも過疎だったのに最近は投下があって嬉しいかぎりだなw

823 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/28(木) 00:03:12 [ jg0f35pU ]
>>822からぴたりと止まったのは如何なる怪異か

824 名前:822 投稿日:2006/12/28(木) 13:10:51 [ r66ufL4. ]
orz

樹海|λ...

825 名前:641 投稿日:2006/12/28(木) 18:31:59 [ uB0ZgGGY ]
お久しぶりです。年内に何とかもう一話書くことができました。(といってもまだ序章なのですが…)

拙い文章ですが、皆さんの楽しみの一つになればと思います。
(何とか年内に本編に入りたいなぁ…)
それでは、どうぞ。

826 名前:641 投稿日:2006/12/28(木) 18:34:00 [ uB0ZgGGY ]
とある授業の社会見学     序―2  

上条当麻がインデックスに頭を丸齧りされているのと同じ頃、当麻の通っている学校の職員室で、担任である
小萌先生は机に向かって何やら作業をしているところであった。
パソコンの画面に学園都市の地図を読み出したり、プリンターで出力した資料にチェックを入れたり、さらに他
の資料をコピーしたり、それらを分厚いクリアファイルに閉じていったりと中々に忙しそうである。
さらに、小萌先生の身長は一三五センチ程なので、机からコピー機や資料の棚に移動する際にも、一手間余
計に掛かってしまう為、輪をかけて小萌先生の動きは慌しいものとなっている。
そんなふうに動きまわっていると、職員室の扉が開いて一人の教師が入ってきた。
「ありゃ、月詠センセ、まだ学校に残ってたの? 相変わらず仕事熱心じゃん」
入ってきたのは黄泉川愛穂という名の教師である。
ちなみに、彼女の担当教科は体育であるために年中のほとんどをジャージで過ごしている。ジャージを着てい
るのがもったいないくらい美人でスタイルの良い大人の女性なのだが、今日も今日とて、またジャージを着て、
長い黒髪を後ろで軽く縛ったラフな格好をしている。
「あ、はい。明日のための準備をですね、まだもう少ししておこうと思ってるのですよ」
「ふーん。…っと、センセ、プリントが一枚落ちてるじゃん」
軽い足取りでプリントを拾うと、小萌先生に手渡そうとする黄泉川。その際見えたプリントの内容に思わず疑問
が口をついて出る。
「んん? 社会見学祭に出展予定の全企業・グループ、研究機関の全リストと活動内容、及び、学園都市内外
両方の活動施設場所? センセ、こんなの一々全部調べてたら時間なんていくらあっても足りるわけ無いじゃん」
「そうは言ってもですね。うちのクラスの生徒さんはいろいろと手が掛かる子が多いのでこうやって調べておか
ないと心配なのですよ。それに、こうやって調べておけば何かあった時も行動が取りやすいと思うのですよ」
その答えに、
「そんなもんかねぇ…。センセのところの生徒さんたちはかえって何かあった時なんか、クラスがまとまって臨機
応変に対応できそうな感じがするじゃんよ。ウチのは普段の生活はそつなくこなせるけど突発的事態には向い
てない無難な優等生ばっかで、センセのとこみたいにはっちゃけてる奴はいないんじゃん」
などと気楽そうに返す黄泉川。
「なっ、う、うちのクラスの子たちだって、皆が皆そんなにはっちゃけてる子ばっかりじゃありませんよ!」
そんな黄泉川に対して迫力のない目で睨み付けながら小萌先生は反論しているが、対する黄泉川はあっけら
かんとしている。

827 名前:641 投稿日:2006/12/28(木) 18:34:26 [ uB0ZgGGY ]
「まあまあ、どの先生でも自分の預かってる生徒さんたちはかわいく見えるもんじゃん♪」
「なっ、何を言ってるんですか!」
顔を真っ赤にして叫ぶ小萌先生を楽しそうに見ていたが、ふと真面目な口調で呟く。
「まあ実際、こんなウチでも預かってる子どもらは可愛いわけで。だからこうやっていろいろと準備をしちゃうわ
けなんじゃん」
見れば、彼女はいつの間に出してきたのか大型のスポーツバッグを足元に置き、他にも色々と道具を手に取
りながら別の袋に詰めている。
「それは……」
「明日の社会見学祭は一応、企業側のデモンストレーションで学校側はそれを見学するだけ、イベントの裏側
には積極的には関わらないってことだけど、何があるか分かんない以上、ウチとしても出来るだけの準備をし
ておこうって思ったんじゃん」
気遣わしげな小萌先生の視線に気付くと、照れくさそうに笑う黄泉川。されど、その言葉、その瞳にふざけた色
は無い。

そう、明日は学園都市が年に数回外部に向けて公開する内の一日。
外部からの関心、興味も高いが、それは生徒の側も同じ事。
日頃から学園都市の中だけで生活している身としては、外部と接触、交流を図る数少ない機会なのである。
それを期待している生徒たちのためにも、明日は何にも邪魔されずに精一杯楽しんでもらいたい。
彼女が所属している警備員も、そのためにこそあるのだから。

「まぁ、何かあったときはセンセにはウチのクラスの連中も頼むことになるかも知れないから、今のうちにお願い
しておくじゃん」
「ほ、本当は何事もなければ一番なのですよ!」
「そりゃそうだ! こりゃセンセに一本取られたかな!」
心配する小萌先生を見て、不安を吹き飛ばそうとするかのように明るい声を出す。
わざわざ不安要素を前面に出す必要は無い。事が起こったら起こったとき。先のことが分からない以上、その
とき自分にできる事をやればいいのだと。
「それじゃウチはこれで失礼するじゃん。センセもあんまり遅くまで準備で残って、明日の朝寝坊しないように気
を付けなきゃだめじゃんよ」
「なっ、そ、そんなことはしませんよ!」
「あっはっは、それじゃーねーん」
足取りも軽く職員室から出て行く黄泉川。
「もう、まったく…」
それを見送った小萌先生も小さく息を吐くと残っている作業を片付けていく。彼女は彼女、自分は自分にできる
ことをするために…。

「でも、明日は本当に、生徒の皆さんが楽しめる一日になって欲しいのですよ…」

呟きながら見上げる小萌先生の視線の先には雲一つ無い星空。天頂にある月は何も語らず、ただ静かに光を
降り注いでいる。
社会見学祭開催前夜はこうして更けていくのであった……。

828 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/28(木) 19:41:10 [ H6vFCTio ]
>>826-827
嗚呼、教師たちの日常。
世の中の教師がみんなこんなだったらいいのに。

と思いつつGJ。

829 名前:375 投稿日:2006/12/30(土) 04:12:15 [ m3aJf0rc ]
誰も居ないみたいなので続き投下します。

>>641
社会見学ネタですか、そういえば土御門妹が言ってましたね。
そういうことでGJ。何か絡んできますかな。

830 名前:375 投稿日:2006/12/30(土) 04:12:44 [ m3aJf0rc ]
 憂鬱だ。
 残暑の厳しい陽光と温風に晒されながら、白井黒子は溜め息をついた。
 時は大覇星祭二日目。前提が体育の延長戦とはいえ、超能力者同士が戦うSFアクション的な行事である為か来場者数も
入院者数も犯罪者数も急増する時期である。それ故、警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)が忙しくなる時期で
もある。初日こそさほど大きな事件は無かったものの、二日目以降になると大胆な行動に出る者が多くなるので、今頃警備員
(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)はてんてこ舞いのはずだ。
 そんな戦乱真っ只中のこの時期に、白井は公園のベンチにいた。隣に同胞の初春飾利を連れて。
「白井さん、何独りで慨嘆してるんですか?車椅子取れてもまだ行動の自由を許されないことに、ですか?それとも愛しの御
坂嬢に会いに行けないことに、ですか?それとも―――」
「いい加減に黙りやがらないとワタクシの鉄矢があなたの喉にパイルパンクですわよコンチクショウ」
「なんですかー。いいじゃないですかー。まだ話し始めてから五分しか経ってないじゃないですかー。ですかですかーっ」
「……ついでに頭にも打っときます?」
「うひゃー、空間移動(テレポート)能力者は怖いですねー。……って、本当に鉄矢取り出してマジでヤル気ですかさいですか
本当にごめんなさいいいいいい!」
 脅しで出した金属矢に本気で狼狽える初春に白井は再度、溜め息をついた。
 傷が治ってきた白井は漸く車椅子から開放され、リハビリ兼気分転換で公園に来たのだが、途中でたまたま会った初春に
捕まったのだ。正直に仕事(くに)に帰(けえ)れ、と言ったが彼女は午前中は非番らしく、白井とも話がしたかったらしいので、
暇つぶしに聞いてやることにしたのだが……。
「―――そ、それでですね、白井さん。例のあのパフェ屋さんがまた新作を出したらしくて、食べに行ったらそれがもうものすご
く美味しくて美味しくて。しかも当日限りの限定品だったので得しちゃいましたよー。白井さんの分も買っておきたかったのです
けど私ので売り切れて―――」
 さっきからずっとこうである。どうも『会話』がしたいのではなく『土産話』をしたかっただけのようだ。白井としては風紀委員の
仕事に関する話とか、もっとマシな『会話』がしたかったのだが、目の前の少女はそんな話をしてくる気配は微塵も感じられな
い。しかも甘党の白井を差し置いて人気パフェ店の限定メニューの話をしている。
 憂鬱だ、と白井は再三溜め息をついた。
 周囲の喧騒が遠くのもののように聞こえる。

831 名前:375 投稿日:2006/12/30(土) 04:13:30 [ m3aJf0rc ]
「あっ、そうそう白井さん。もうそろそろ常盤台中学でフォークダンスが始まる時間ですね」
 と、急に初春が話を振ってきた。白井はうんざりしたような顔を向けて、
「……、それがどうかしたんですの?」
「あ、気付いてませんね」初春は意地悪そうに笑いながら、「それには御坂嬢も参加するらしいですよ。なんでも相手は自分自
身で選んでいいとか。御坂嬢は一体誰と一緒に舞踏するんでしょう?目当ての男性はもう見つけているんでしょうかねー?そ
のまま二人でいい感じになっちゃったり?」
 明らかに挑発しているような言い草。
 しかしこれは乗ったら負け、と感じた白井は冷静に、
「知りませんの、そんなこと。風紀委員に入っている以上、どうせ参加できませんし、お姉様が誰と踊っていようが、それはお
姉様がお決めになったお相手。そこに手出し口出しするほど、わたくしは幼稚じゃありませんの。まあ、あの殿方なら話は別
ですけど―――」
 言いかけて、白井黒子は気付いた。気付いてしまった。
 お姉様なら。御坂美琴なら、必ず選ぶだろう。借り物競争のときもそうだった。数ある第一種目に参加した高校生の中から
“彼だけ”を選んだ彼女なら、今回もきっと。
 あの殿方。あの殿方、あの殿方、あの殿方あの殿方あの殿方あの殿方あの殿方――――――
 白井の脳裏にとある少年の顔が浮かんだ瞬間、

 がたん!と勢い良くベンチから立ち上がった。

「!!し、白井さん!?」
 予想だにしなかった白井の行動に初春飾利はびくうっ!と喫驚した。辺りの人々からも視線が集まる。
 一方、白井は気にもせず、
「……うふ。うふふふふふふふふふ。若造が。調子に乗って。あンの若造がぁああああああああああああああああああ!!」
 大喝一声、彼女の姿が虚空へと消えた。周囲から驚きの声が上がる。
「えっ?ちょ、白井さんー!?もう能力使っていいんですかー!?ってか待ってくださいよー!!」
 初春の声も最早虚空へ響くだけ。おそらく白井は八十メートル先まで空間移動しているだろう。
「ああもう、面倒くさいんですからー!」
 しかたなく初春は白井が向かったと思われる方向―――常盤台中学へと向かって走り出した。

832 名前:375 投稿日:2006/12/30(土) 04:19:27 [ m3aJf0rc ]
以上でづ。
もう文体はこのままでいきます。
というか眠い

833 名前:169 投稿日:2006/12/30(土) 11:35:24 [ eUmMbdLI ]
 十三年前。
 ロシアの片田舎に暮らす彫金師の夫婦が、金の髪とサファイアの瞳を持った赤ん坊を授かった。
 その子に与えられた名は、サーシャ。
 少女は両親の愛情を一身に受け、何の問題も無くすくすくと成長していった。
 しいて問題だった点を挙げるならば、幼児用の娯楽が少なかったことだろうか。
 彼女の生まれた町では昔からロシア成教の影響力が強く、特に『幽霊(ゴースト)』の発生原因に成りうる童話や迷信の類は厳しく制限されていたのだ。
 人形などの玩具も、形状、モチーフ、魔術的符号の有無など幾重にも審査がなされた物しか持つことを許されず、夜眠る前にベッドの中で寝物語をすることすらままならない。
 この村の出身者であるサーシャの母は多少の残念さを感じながらも当然のことと受け止めていたが、しかし父は外から来た人だった。そして、幼い頃両親に絵本を読んでもらったことを覚えている人だった。
 ゆえに彼はこう思った。この子には、自分が読んで聞かせてやりたいと。
 それから父は他の町に行く都合が出来るたびに、本屋を巡って何冊もの絵本を買いつけた。
 ロシア語のものはシスター達に見つかりやすいと思ったので、知人のつても頼って出来るだけ外国の絵本を求めた。
 当然書かれている文字は全て外国語だ。仕事一筋で生きてきたせいで学のなかった父には、一冊を読むために三冊は辞書が必要だった。
 それでも、父は来る日も来る日も愛する娘に絵物語を語って聞かせた。
 初めは古くからの風習を破ることへの躊躇いや世間体から否定的だった母も、だんだんと夫の想いを理解し、家事の合間を縫っては丁寧なロシア語訳を作るようになる。
 毎夜両親が語ってくれる幻想世界に、幼いサーシャは夢中になった。

 それはまるで『絵に描いたような』、幸せな家族の肖像。

 四歳になる頃には、サーシャはすっかり夢見がちな女の子になってしまっていた。
 ガラスの靴を履き、ピーターパンに手を引かれ、天空の城にたどり着き、人魚やカボチャが祝う輪の中、王子様とダンスを踊る――
 一日の大半をそんな空想に費やすようになっていた。
 両親も変わらずに可愛い娘を愛していた。
 そして、サーシャの五歳の誕生日。
 両親が死んだ。
 サーシャが殺した。

                   ◇   ◇

 すれ違う人の体に触れぬよう、触れられぬよう、注意して走る。
 腕の中、気を失っている少女の顔は安らかに眠っているようにも見えた。
 しかし、サーシャは覚えている。ガラスを砕いた時と、当身を入れる寸前の二度、少女の表情が恐怖に歪んだのを。
「……お父さん(パーパ)みたいには、いかないね」
 感傷は一瞬。それ以上は、心が耐えられない。
 もう二度と、父が自分を寝付かせてくれることはないのだから。

834 名前:169 投稿日:2006/12/30(土) 11:36:04 [ eUmMbdLI ]
                   ◇   ◇

 誕生日プレゼントは新しい絵本だった。
 主人公が悪い竜や魔女を倒し、恋人と結ばれるというありがちなストーリーだったが、この絵本ではお姫様側が主人公で、助けられるのが王子様だった。
 イラストのお姫様がちょっぴり自分に似ている気がして、サーシャはその絵本をとても気に入った。
「めでたしめでたし」と父が言って、物語は終わったが、サーシャはまだまだ物足りない。母に読んでもらい、もう一度父に読んでもらい、二人で同時に読んでもらい――
 そして、お姫様が五回目の魔女退治に挑もうとしている時、
「あれ?」
 ページをめくってくれていた父の手が止まっていた。
「パーパ? どうしたの?」
 幼いサーシャは背後の父に振り向いた。
 その時、彼女は父が組んだ胡座の上に座っていた。父の大きな腕に抱かれていると、吹雪もおばけも怖くなかった。
 ――あかい、にじ?
 真っ赤な、気が遠くなるほど真っ赤な円弧が空中を横切っている。
 最初はワインの栓が開いたのかと思った。
 次は手品かと思った。
 ぐらっ、と父の体が傾いで、ようやく、

 おびただしい量の血液が、父の首から噴き出しているのだとわかった。

「ひっ」
 悲鳴は喉の奥で詰まり、外には出てこない。
 仰向けに倒れた父の膝から転がり落ちても、まともに息をすることもできなかった。
「……ひゃっ……はっ…………お、おくすりだっ。ほうたい、まかなきゃ! マーマ! マーマ!」
 流出した血液は致死量をとっくに超えていたのだが、五歳になったばかりの子供にそれを判断できようはずもない。
 膝小僧をすりむいた時や、はさみで手を切ってしまった時のように、母が薬を塗ってくれれば大丈夫。
 そう思った。
 けど。
 ――ドサッ。
 小麦粉の袋が床に落ちるような音。
 見ると、服の胸の部分を深紅に染めた母が倒れていた。
「……マーマ?」
 返事はない。
 ――もう。
「マーマ! マーマ! パーパ! パーパ!」
“それ”を理解できない幼子は、幾度も幾度も物言わぬ両親の肩を揺らす。
 怖い、とか、悲しい、とか、そんな単純な感情さえ湧いてこなかった。
 あまりに唐突で。
 意味が分からなくて。
 泣くことも出来ない。
 ねえ、どうしたの?
 なんで起きないの?
 疲れてるの?
 そっか。わたしが何回も絵本を読んでとせがんだから、二人とも疲れちゃったんだ。
 じゃあわたしも寝よう。
 明日になったら、きっと元気になってるよね。
 また絵本を読んでくれるよね。
 わたし、この絵本とっても気にいったよ。
 パーパ。マーマ。
 大好きだよ。
 そうして壊れかけた心を抱いて、眠りにつこうとしたサーシャは、
「………………え?」
 見た。
 部屋の中央。
 誰もいなかったはずの場所に、たたずむ人影。
 夜の闇より暗い黒衣。
 手には肉を切るのに使うくらいの大きな包丁。
 赤く塗られた刃。
 まるで絵本の中から抜け出したかのような、「悪い魔女」の姿を――

                   ◇   ◇

 走って、走って、走って、着いた。
 校内で唯一、邪魔が入らずに魔術が行える場所。
「――ふう」
 少しだけ肩の力が抜ける。
 何とか『灰姫症候(シンデレラシンドローム)』を逃がさずにここまで来れた。サーシャの魔術師としての感覚が、自分と言祝の間で交互に転移を続けている存在を感知している。
 後は予定通りに――――
「………………っ!」
 目の前に“何か”が立っている気がして、サーシャは首を跳ね上げた。
 しかし、確かに“何か”がいたはずのそこには、ただ氷のように冷たい風が流れているだけだった。

835 名前:169 投稿日:2006/12/30(土) 11:36:55 [ eUmMbdLI ]
                   ◇   ◇

『幽霊』は人間を殺さない。
 これは魔術世界では常識として知られている事柄だ。
 当然と言えば当然だろう。外からの認識によってのみ存在を維持できる『幽霊』が観測者を殺すということは、比喩でもなんでもなく身を削る行為だ。
 しかし、だからと言って彼らが無害な存在であるという訳では決してない。
 逆説的に、“彼らは自分を広めるためなら殺人以外はなんでもするのだ”。
 家具や建物の破壊、それらによる負傷者の発生はとても軽んじられるものではない。少し知恵をつけた『幽霊』ならば、あえて半死半生で見逃し、自分の恐ろしさを大勢の人々に伝えさせることもする。
 その中で、『幽霊』の目的に関係なく死者が出る事態になることも珍しくない。大体は、パニックという形で。
 ゆえにロシア成教『殲滅白書(Annihilatus)』は三大十字教宗派最強の誉れ高い物理威力を持って、日夜彼らと戦っているのだ。

 閑話休題。

 常識には必ず抜け穴があるものだ。
『「幽霊」は人間を殺さない』ということについても例外ではない。
 彼らによる能動的な殺人が行われるケースが、たった一つある。
 その『幽霊』が“成体”となっている場合だ。
 数百人規模で数百年単位、誤認が凝り固まって信仰にまで昇華された場合、『幽霊』は成体になると言われている。
 成体はそれ以上の成長を求めない。むしろ、現在の純度を維持するために自分を認識していない生命体を駆逐しようとする傾向があった。
 つまりはそれが、『幽霊』による能動的な殺人が行われるたった一つのケースなのである。
 条件上、都会部よりも外界から切り離された辺境地域で発生する可能性が高く、古い土着信仰にある土地神や守り神のいくつかはこの『成体幽霊』であると判明している。
 異邦人を遠ざけ、執拗な厳罰をもって古代より君臨してきた神様の有り難みのかけらもない正体だ。
 ただ、前述した通りこれには数百人規模の観測者と数百年単位の観測時間が必要になる。
“たった一人の五歳の少女によって”同じことが引き起こされたなんて、誰も信じられなかった。
 ゆえに、半ば冗談のような形で、少女にはある符丁が与えられることになる。
 空想の中から『幽霊』を超える災厄を招く者。
 最も愛する者を最も愛する物によって失わせた愚者。
『悪魔憑き』の二つ名を。

                   ◇   ◇

 言祝の体を固い足場にそっと寝かせる。
 左手は彼女の右手を握ったままだ。まだ放すわけにはいかない。
 片手で儀式の用意をするのは面倒だが、やれないことはないだろう。
 むしろ少しくらい時間をかけたほうが、気持ちを落ち着けるのに役立つ。
 しかし、人間、落ち着いてしまうと、余計なことにまで考えが及ぶようになってしまう。
 ――ああ。
 何をしているんだろう、私は。
 今日は皆で劇をする。
 たったそれだけでよかったはずなのに。

836 名前:169 投稿日:2006/12/30(土) 11:37:31 [ eUmMbdLI ]
                   ◇   ◇

 両親を失い、サーシャは天涯孤独の身の上になった。
 そんな彼女を引き取ったのは、彼女の村に駐在していたロシア成教の司祭アレクセイ=クロイツェフだった。
 サーシャ=クロイツェフ。
 それが彼女の名前になった。
 その後、当初は物盗りの犯行と思われていた両親の死が、教団の調査により実はサーシャの呼び出した『悪魔』の仕業だったとわかると、アレクセイは少女に一つの問いかけをする。
 ――ご両親の所に、行きたいかい?
 要は、これからも生きるか、ここで死ぬかを決めさせようとしたのだ。
 サーシャの親を殺した『悪魔』は、まだ彼女の中に眠っている。天賦の才によるものか、絵本に心身ともに密接して育ったことによるものか、サーシャの精神には完全な『悪魔』の設計図とでも呼ぶべきものが刻み込まれていると判明した。
 数百人数百年分の模範解答(ショートカット)だ。
 その設計図通りに天使の力(テレズマ)が組み合わさったとき、『悪魔』は現実に出現し、サーシャ以外の人間を手当たり次第に殺そうとする。
 単純な話、そんな物騒な“怪物”はすぐに殺してしまえという声がロシア成教の上の方で挙がったのだ。
 しかしそれに対して、『悪魔憑き』を貴重な能力と見て彼女を聖人に指定し、綿密に調査・研究すべきだという声もあった。
 両者の意見は永遠に平行線を辿るもの。よって、最終的な判断は『悪魔憑き』の現在の保護者である司祭アレクセイに委ねられることとなる。
 そして彼は、本人の意思をまず尊重しようとした。現在の彼女の周囲を取り巻く状況、彼女自身の危険性などをじっくりと長い時間をかけて説明した。
 心苦しくはあったが、両親の死の真実も、出来る限り分かりやすく説明した。
 だが――サーシャは、本当に、ただの五歳になったばかりの女の子だった。
 いきなりこの身に『悪魔』が宿っているなんて言われても、そいつが両親を殺したなんて聞かされても、そのせいで大人達が自分をどうこうしようなんて企んでると語られても、
 理解しきれるはずがなかった。
 でも。
 ――ご両親の所に、行きたいかい?
 死ぬ、ということが。
 カリンカの花の色に身を染めた両親に繋がることだというのなら。
 そんなのは御免だと思った。
 大好きな両親に会いたくなかったわけではない。
 だがその時のサーシャは、ただただ死ぬのが怖かった。


 少女の意思を聞き届けたアレクセイは、まず、サーシャにロシア成教内での仕事を与えることにした。
 第一の理由は、彼女の能力を調べたいと思っている連中に手出しさせないようにするため。
 例えどれだけの宗教的魔術的意味があろうとも、サーシャを功名心と知識欲に凝り固まった狂信者どもの慰みものにするつもりは、アレクセイにはさらさらなかった。先んじて責任のある役職につかせ、確かな成果を出すことが出来れば、連中も強引な真似はやりにくくなるはずだから。
 第二の理由は、サーシャの現在の状態を見るに見かねたため。
 最後にもらった絵本を抱きしめ、しかし決して開きはせずに、一日中部屋の隅でうずくまっている。誰かが言わなければ食事も摂らない。元々小柄だったのが一層やせ細ってゆく。
 無理もないことではあるが、一生そうして生きていくことも出来るはずがない。無理にでもなんでも体を動かすことが必要だった。 
 第三の理由は、『悪魔憑き』を押さえるため。
 今は姿を潜めていても、またいつどこでサーシャの『悪魔』が具現化するかはわからない。万が一の備えは絶対不可欠だった。
 シスターとしての修行は、この上ない精神修練になる。
 幸いというべきか、アレクセイの持つパイプですぐに回せる上、精神修練も出来る仕事が二つ見つかった。
 サーシャにはまた二つの道が与えられることになる。
 ゴーストバスターとなり様々な迷信や『幽霊』を打破し続けることで、『悪魔憑き』に呑み込まれない強さを求める道。
 彼ら用の武器・道具を作成する魔術技師(エンジニア)になり、「想像力」を「創造力」に転化することで『悪魔憑き』を弱めてゆく道。
 迷わず彼女が選んだのは前者だった。
 彫金師だった父の仕事によく似た魔術技師というものに心引かれはした。
 けれども。
 世界中にはいろんな迷信や童話があって、それらが『幽霊』として現実に出てきているのなら、一つくらいは“自分を救ってくれる物語”があるかもしれないと思ったから。

                   ◇   ◇

 寒い。
 震えるほど寒い。
 温もりを与えてくれるものなんて何一つない。はるかかなた、決して届かない所にしか。
 ここは幸福からの最遠点。
 そんな場所に自分は望んで来たのだと思うと、少し笑えた。

837 名前:169 投稿日:2006/12/30(土) 11:38:05 [ eUmMbdLI ]
                   ◇   ◇

 結論だけ先に言えば、そんなものありはしなかった。
 殲滅白書に入り、訓練を終え実戦に出るようになって三年。
 出逢った『幽霊』はひどいものばかりだった。
 子供をさらうピーターパン。
 呪いを唄う人魚姫。
 火を点けて回るマッチ売り。
 小人も妖精も、兎も狐も、ネズミも小鳥も、花も人も、あらゆる『幽霊』は他人を傷つけて自分を広めることしか考えていなかった。
 そんな「物語」に絶望して、否定して、破壊して――繰り返し。
 次は、次こそはと意気込んで出向いて、それでも得たものは落胆のみ。
 父に読んでもらった絵本の登場人物と戦うのは特に辛かった。でもそれ以上に、読み聞かせてもらっていた時には幸福な結末(ハッピーエンド)だったお話が無残な最低の結末(バッドエンド)に変わってしまっているのを見るのが苦しかった。
 どんなに頑張っても、待ち受けているのは最悪のエンディングで。
「めでたしめでたし」と、それだけが聞きたかったのに、出来なくて。
 だから。
 そう、だから。
 サーシャ=クロイツェフは、一度でいいから、誰かに「めでたしめでたし」を言ってもらいたかった。
 幸福な結末が、見たかった。

                   ◇   ◇

「――――けど」
 気付いてしまったんだ。
 目を背けていたことに。
「私だった」
 幸福な結末を壊していたのは。
 彼女さえいなければ、両親が死ぬことはなかった。
 彼女さえいなければ、義父が厄介者を抱え込むことはなかった。
 彼女さえいなければ、『悪魔憑き』が生まれることはなかった。
 彼女さえいなければ、何事もなく今日の演劇を行うことが出来た。
「悪い魔女」は私だった。
 被害妄想と。子供の僻みと。笑はば笑え。
 きっと何があっても、どんなに頑張っても、自分はこんな風にしか生きられないのだから。


 彼女は知らない。
 はるか彼方で息切らせ走っている者がいることを。
 そんなことはないなんて優しいだけの言葉じゃない、本当の幸福な結末をくれる人がいることを。
 しかし、彼はあまりに遠く。
 最後まで間に合う奇蹟は起きずに、儀式の準備は整った。

838 名前:169 投稿日:2006/12/30(土) 11:40:35 [ eUmMbdLI ]
すべすべした肌に浮かぶスジ目を、針でじわじわこじ開けていくことに快感を見出し始めた今日この頃。169です。ガンプラの話ですよ?
連ザⅡ+に激ハマリしてたせいでずいぶん遅れました。それでも何とか年内に投下できてよかった。
今回は禁書お約束、クライマックス直前のラスボス心情吐露の回。割と暗いので爽やかな年越しをしたい人は避けるのが無難かと(あとがきで言うなや)。
サーシャの過去話については、半分オリキャラみたいなもんなんで随分好き勝手やってしまった感があります。そういうのがお嫌いな方は、どうか華麗にスルーを。
今回わざと書かなかった部分もありますので、次回以降に期待してくれれば、とは思いますが。


>>672
GJアーンドツンデレヤッホイ!
選択は①で。
解説担当で真っ先に思い浮かんだのがテリーマンと雷電だった俺って一体。

>>641
いい先生です。GJ。
社会見学といえば昔うどん工場に行ったことがあるのですが。試食用のうどんを真っ先に完食して笑われた経験があります。

>>375
黒子登場。実はオルソラと吹寄に並ぶくらい好きです。GJ!


なんかwikiで『灰姫遊戯』のまとめなんて作ってもらえたようで。私の読みにくい文章をしっかり改行してくれていることに感謝感謝です。
ただ、四章の二回目は「さて。関係ない話はこのくらいにして、そろそろ本筋に戻るとしよう。」まで含まれます。アホみたいに行を開けてしまった私が悪いのですが、どなたか修正をお願いします。
いや、自分で編集作業をしだすと絶対全文書き直したくなるので。

839 名前:■■■■ 投稿日:2006/12/30(土) 23:23:10 [ Mjervhxk ]
>>169
『灰姫遊戯』の続編キター!
GJです。

840 名前:672 投稿日:2006/12/31(日) 00:26:45 [ DUGgrA96 ]
>>169
ディモールト!ディモールト良い!というわけで、GJで御座いまーすっ!
本当に禁書でありそうだから、>>169氏の文才には困る(副音声:素晴らしい)。

>>641
良い教師だな。少し愛でるぞ。――というわけで、GJなのですよー。
いや、こういう教師さん達が生徒のために、というシーンは大好きです。ありがとうー。

>>375
黒子は良い……。うちの黒子は現在進行形で壊れてるからなおさら……。
というわけで、GJですじゃー!パイルバンクで思わず瞳を輝かしてしまった私は一体。

ところで質問なのですが、wikiって勝手に書いてもいいものなのでしょうか!?
個人的に『実力もないのに載せるなチビガキ』って言われてる気がして書けない臆病者なのです。

最後に、ちとスランプ中で執筆が遅くなっていますが、一応チビチビ書いています。
もはや長くなりすぎてSSと呼べるものか謎になってきましたが。

取り合えず、返答を期待しつつ――、知っているのか、雷電!?

841 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/12/31(日) 18:11:07 [ e2Lh00P2 ]
玄関を開けると、予想に反して部屋の中は静かだった。
いい加減外も暗くなっているというのに電気も付けていないらしく、廊下から入り込む光の他に上条達の光源は無かった。
「もしかして。出掛けているとか?」
「それは無いな。ほら」
姫神の疑問を即座に否定して上条は足元を指差した。その示す先には、先々月からこの部屋に居つくようになったシスターさんの数少ない私物の一つである革靴がちょこんと鎮座していた。
「いくらなんでも裸足で出かけたりはしないだろ」
「なら。昼寝とか」
「……それならまだ可愛げがあるんだけど」
多分想像通りなんだろうなー、などと口の中で呟きつつ左手で玄関の電気のスイッチを探る。
パチン、とスイッチの乾いた音が響き、数瞬遅れて頭上に新たな光源が生まれる。
「ほれ姫神」
勝手知ったる己の家。乱暴に靴を脱いで玄関と部屋を繋ぐ短い廊下に上がり、上条は壁に立てかけてあった滅多に使われない来客用のスリッパを未だ靴を履いたままの姫神の前に揃えて置く。
「ありがとう」
一言礼を告げ、綺麗に靴を脱ぎ揃えてからスリッパへと履き替える。
もちろんこのやり取りの間も、繋がれていた二人の手が放れることは無かった。繋いだ手を支点にくるりくるりと回りながら行われた一連の動作は。
「……なんか、踊っているみたいかも」
と言う感想を、部屋から顔だけ出して玄関を窺っている少女に抱かせた。
「ただいまインデックス。遅くなって悪かった」
上条は、ここでようやく姿を見せた同居人に対して帰宅の挨拶をした。そして、
「ところで。なにをなさっておられるのでせう?」
視線を下へと向けて問いかける。
「……おかえりとうま。なにって、もちろん、おなかがすいてて力が出ないんだよ」
と、声を掛けた時と同じく床に寝そべったままの状態で答える禁書目録の少女。
どうやら空腹のあまりにダウンしている模様だ。その隣で、もう一人(?)の同居人である三毛猫が呆れたように小さくあくびをする。
「腹減った、って」
半ば予想していた事とは言え、あんまりと言えばあんまりな事態に上条も二の句が継げない。継げないが。
「朝に残していった弁当以外にも、ウチにはまだ食糧があった筈ですがっ。それは知ってるよな?」
確認しない訳にも行かないわけで。
「うん。お菓子があったから、それは食べたよ」
「カップ麺もあったろーに。つか、何故にそっちから手を付けない」
「インスタントヌードルはおいしくないんだよ」
「そういう言い方は正しい作り方をマスターしてからにしてくだいな!完全記憶能力とやらはどこ行った!?」
「だってだって!具の下にスープのパウダーが隠れてたり焼きそばなのにお湯でふやかしたり、って意味がわからないかも!」
「えぇい、屁理屈ばかりこねおってからに」
「って、それよりもとうま」
インデックスが突然トーンを落として先刻からあった疑問を口にした。
「どうしてあいさと一緒に帰ってきたの?」
「あー、それなんだけどなインデックス」
その質問は予め予想されていたものだったので、上条はありのままを彼女に告げる。

842 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/12/31(日) 18:11:56 [ e2Lh00P2 ]
「すまん。姫神の十字架を『殺し』ちまった」
「……何をしてるのかな、とうまは。触っちゃダメだって言っておいた筈なのに」
これだからとうまは、と言外に匂わせてインデックスは『ふぅやれやれ』と肩を竦める。……床に寝そべったままで。
「どうしてそんな事になっちゃったのかな?」
「あぁ、今日の昼に教室で姫神とぶつかってさ。その拍子でちょっと」
「そう。私の胸に触った拍子に。十字架にも触ってしまって」
上条の説明に姫神が言を繋ぐ。どちらも圧倒的に言葉が足りない。
次の瞬間。
室内の気温が下がった、と上条は錯覚した。
音も無くゆらぁり、と禁書目録の少女が立ち上がる。
「ひひ、姫神さん!?今の説明は言葉がかなり足りないんじゃないかと上条さんは思う訳なのですが!」
「でも。そのまま説明すると言ったのは君」
確かにそうですがー!と左手で頭を抱える上条へ、一歩、また一歩と執行人が歩み寄っていく。
「ふーん。そうなんだ。ひょうかの時も思ったけど、やっぱりとうまってそうなんだね」
「ちょっと待てインデックス!やっぱりそうってどう言うぎゃーっ!!」

「ん?」
廊下を掃除している(実際に掃除しているのはロボットだが)舞夏の耳に聞きなれた絶叫と怒号が入ってくる。発生源は毎度お馴染み義兄の隣室だ。いつもの事なのでそのまま流す事にした。



「話はよーくわかったんだよ」
上条の頭を思う存分齧ったあと、場所を玄関から部屋へ移して今度は詳しく経緯を聞いたインデックスの第一声はそれだった。三人は床のテーブルを囲んで座っており、そのテーブルの上では上条と姫神の手が相も変わらずしっかりと繋がっている。
「つまり今の今まで二人きりで遊んでたんだね」
その手をちょっと複雑な面持ちで見ながらインデックスはそう結論付けた。
「そっちかよ!いやちょっと待ってくださいインデックスさん立ち上がって歯をカチカチ鳴らすのはやめてー」
自分の左側から威嚇してくる白いシスターに向けて、上条は身を護る様に左手をかざす。
「それで。これからどうしたらいいのか聴きに来たんだけれど。どうかな」
そんな修羅場な空気はどこ吹く風、と言った感じで姫神がインデックスへ質問する。
「うーん、そうだね」
すとん、とその場に座りなおし、その小さな顎に右手の人差し指を当てて思案顔になるインデックス。
「正直な話、今すぐどうにかできる、て言う方法は無いかも。前にも言ったとおり、あいさのケルト十字は『歩く教会』から最低限の結界を保つ機能だけを抽出した特別な十字架だから。イギリスにならともかく、日本の教会に予備があるとは思えないんだよ。だから、もう一度同じ術式をその十字に施すか、イギリスから新しい十字を持って来させるか、位しか手は無いんじゃないかな」
少女の口から出てきた答に対し、上条はさらに質問を重ねる。
「それは最短でどの位かかる?」
「イギリスから持ってこさせるのなら二日三日はかかるかな。申請して即配給されるような品物じゃないし」
「なら、もう一度同じ結界を張ってもらうのは?」
「それも一概には答えは出せないよ。一番近いイギリス清教の教会にその儀式を執り行える術者がいれば、はっきり言って半日もあれば済んじゃうよ。でも、こんな極東の一教会にそんな術者が配備されるなんて酔狂な人事がなされる訳が無いから……」
「そんな不確かな手に頼るよりは持ってきてもらった方が早い……か?」
「だね」
と言って再びインデックスは立ち上がった。先ほどの続きか!?と上条はちょっと身構える。しかし、そんな上条には目を向けず、インデックスは姫神へと話しかける。その顔はどこか微妙に悲しそうだ。

843 名前:彼女にとってはすぺしゃるな週末 投稿日:2006/12/31(日) 18:13:01 [ e2Lh00P2 ]
「そう言う訳だから、あいさには悪いんだけど……」
そこまで聞いて、姫神も彼女が言わんとしている事を悟る。
「そうだね。いつまでもこうしている訳にもいかないし」
そう告げる姫神の顔も若干思い詰めた感じになっている。二人の表情の変化に、上条は戸惑う。
「うん。この学園都市に来た時だってずっとそういう状態だったんだし。二日三日くらいでやってくる。と言う事は無いかな」
インデックスと合わせていた視線を下へと向けて淡々と言葉を紡ぎながら、姫神はゆっくりと左手の力を緩めた。
「姫神!?」
突然の事に、上条は姫神の顔を覗きこむ。
「これ以上。上条君には迷惑を掛けられない」
「迷惑だ、何てこれっぽっちも思ってないぞ」
「とうまは迷惑に思わなくても、これからしばらくの間四六時中つきっきりだとあいさがかわいそうかも」
上条の即答に、インデックスが茶々を入れる。
「かわいそう、って言うのはどういう意味だ」
「言葉通りだよ。詳しく言っちゃうととうまが犯罪者になっちゃうから言わないけど」
「それこそどういう意味かっ!?」
ギャイギャイと言い争いを続ける二人へ、姫神が言葉を掛ける。
「君が迷惑に思っていなくても。私が迷惑をかけているのは事実だと思う。半日。たった半日だけだけど。一緒に行動しているだけで。君はいつも通りの行動が出来なかったのでは?」
例えば教室で。
例えば道中で。
例えばファミレスで。
そして、例えばこの部屋で。
「君の生活を阻害する気は無いから」
だからその手をはなして、と。
俯いたままでそう告げてくる姫神の頭を、上条は空いている左手で、
「てい」
スパーン、と。
軽くはたいた。
「……………………………………。痛い」
「あのなぁ姫神。こっちが迷惑じゃない、って言ってるんだ。そんなに思い詰める必要は無いんじゃないか?」
そもそも今回の件に対して、上条当麻には姫神秋沙に対して負い目を持っている。
教室で十字架を壊してしまった事や。
街中を散々引っ張り回してしまった事や。
白井への『吸血殺し』の説明を彼女にさせてしまった事や。
そして何より。
こうして『幻想殺し』を触れ続けさせている事で。
姫神に『吸血殺し』の存在を認識させ続けているのではないのだろうかと。
そう考えていたのだ。
「でも」
なおも言葉を連ねようとする姫神を、インデックスが制する
「言っても無駄かも、あいさ。こうなったらとうまは頑固だからね」
本当に困っちゃうよ、とインデックスが両肩を竦めて首を振る。
「じゃあ私は最寄のイギリス清教の教会に渡りをつけてみるからちょっとまってて欲しいんだよ」
と言って、そのまま部屋から出て行くべく歩き出した。
「あ、おいインデックス。俺たちも一緒に行った方が良いんじゃないのか」
その背中に上条が質問を投げかける。その問を聞いて振り返るインデックス。半眼で睨むような顔を向けてくるシスターに、上条は思わず一歩下がる。
「…………流石にずっと見ているのは我慢がならないかも」
「?」
よくわからない、と言った風に上条は首を傾げる。
「どういう意味なんだ?」
「君って。つくづく。…………私からは。説明できない」
姫神に水を向けても、はっきりと答えてはくれない。
未だにわかってない上条からむくれたままこちらを向いているインデックスへと視線を移し、
「……大変だね」
「うん、最近は特に大変かも」
そう答えた白い修道女に、巫女服の魔法使いは今までで一番の親近感を覚えた。

844 名前:198 投稿日:2006/12/31(日) 18:15:02 [ e2Lh00P2 ]
どーも、久方ぶりの198です
とりあえず生存報告代わりに彼女に〜の続きをば
待ってる方がいらっしゃれば幸いです

では、またの機会に

845 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/01(月) 03:29:25 [ xWKe9YXE ]
「何故なの?」

――ささやかな願いを裏切られた少女。

「おい待てちょい待て、八つ当たりですか?そういうことですか!?
 ちきしょう不幸だー!?」

――不幸を約束された、しかし彼女の憂いを晴らすことが出来る唯一の少年。

「……でも、ぎゅーっとしたかったんだもの」

――本当に、ささやかな願い。
――それを叶えるために、少年は。

「じゃぁ、こうすればいいんじゃないか?」

――旗を、高らかに立ててしまった。



唐突になんか浮かんだ。
「我は汝、汝は我。我は汝の心の海より出でし者なり……」
って感じで御座いました。
ヒロインは御坂。でも今はまだプロットでして、なんだか orz。
要望があるならば、「BMセレクト、俺好み!」な勢いで書き上げますが。
はて、どうしませう?

846 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/01(月) 06:17:35 [ NLa9dU8Q ]
ペルソナ?

847 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/01(月) 11:35:57 [ 8d5WJRiM ]
って、彼女にとってはすぺしゃるな週末、来てた――!!
何はともあれGJ!!

848 名前:641 投稿日:2007/01/01(月) 14:30:40 [ FuqNWSAo ]
帰省中だけど、覗いてみて正解だった。

>>841=198氏 彼女にとって〜 キターGJ!!

いやあ、いいですなぁ。(って、お前は人様の作品を読んでるならキリキリ書けよ…)
何はともあれ、今年も去年の後半戦のように賑わってほしいですね。
社会見学は中途半端な状況なので、もうしばらくお待ちを…。

849 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/01(月) 21:59:34 [ .JeCOv.c ]
>>845 ペルソナクロスは見たいな

850 名前:641 投稿日:2007/01/04(木) 16:10:01 [ u/SEVJRw ]
とある授業の社会見学    第一章  Time Schedule Part−A

 うららかな秋晴れ、見事なまでの快晴の空。
 少し前までの季節ならばしつこく残っていた朝方特有のむわっとした湿気も今ではすっかり影を潜め、あるの
はうって変わった爽やかな秋の空気である。
 その清廉な空気を深々と肺に吸い込み、新鮮な酸素を取り入れ、脳を活性化させていく上条当麻。
 ここ最近はめっきりと的中率を下げ、ほとんど『外』の天気予報並みの精度にまでなった学園都市内の天気
予報にしては珍しく見事な予報どおりの天気を見ながら、上条当麻は隣に向かって声をかけた。
「いい天気になったなぁ」
「ああいい天気になったんだもんだにゃー」
 上条の声に対して、隣を歩く人物から声が返ってきた。
 返ってきたはいいが、その声はなんとなく不機嫌そうである。
「おい、なんだよ土御門。何そんなに不機嫌なんだよ」
「ああ? なに不機嫌なんだと? カミやんてめぇそれはマジで言っているのかにゃー?」
 爽やかな朝の空気の中にあって、隣を歩く土御門元春――魔術も科学にも精通している多角経営スパイ――
の周囲だけ重苦しい雰囲気が流れている。
「カミやんには全然心当たりは無いとそういうわけなんですかにゃー?」
 にこやかに笑いながら問いかけてくる土御門。
 にこやかではあるのだが、引きつっている口の端と平坦な声が、けして機嫌が良いわけではない事を如実に
語っている。
「心当たりっつってもなぁ…。何かあったか?」
 問い返されて、首を傾けながら考える上条。
 しばらくそのまま考え込みながら歩いていたが、はたと思いつくと土御門に向かって言う。
「あー、もしかしてあれか? 舞夏と一緒にいられなかったからか?」
「当たり前だ!せっかく今回はオレが出張らなくてもいい様なイベントだってのに、何だっていきなりあいつと
離れ離れにならなきゃならんのだ!あとさりげに人の妹のことを呼び捨てにしてるんじゃねーぜよ! そっちの
方がマジでムカつくぜい!!」
 溺愛している義妹と別れて登校することになったことよりも、上条に義妹が呼び捨てにされたことを咎めた土
御門はさっきからのイライラをすべて乗せたかのような拳で襲い掛かる。
 慌ててそれを迎え撃つ上条は拳を必死で避けながら怒鳴る。
「うおぉっ! 何しやがる! てめえさっきは問題ないって言ってたじゃねぇか!」
「あの場はああ言うしかないだろうがよ! オレが本気で言ってたとでも思ってやがんのかカミやんは!」
 なおも勢いを増す攻撃を捌きながら、上条は先ほどあった光景を思い返していた。

851 名前:641 投稿日:2007/01/04(木) 16:12:58 [ u/SEVJRw ]

                   ◇                    ◇ 

 話は十数分前にさかのぼる。
 前日の夜に社会見学の事を聞かされ、なにやら自分は上条にのけ者にされ、一人寂しく家にいなければなら
ないと思い込んだインデックスは目覚めたときから機嫌が悪かった。
 上条が朝食を用意して声をかけてもろくに返事もせず ( ただし朝食自体はきっちりと完食したが ) 、留守番
するインデックスに向けて作りおきした昼食について伝えようとしても聞く耳を持たない態度であった。
 さすがに腹が立った上条がインデックスをほうって置いて出かけようとすると、今度は半泣きになってこっちを
見上げてくる始末。
 さすがにこのまま家に残しておくのは気が引けるが、さりとてどうしたものかとドアを開けたまま思案してふと
目をやると、隣室からも寮の住人が出てくるところだった。
 ドアを開けて出てきた土御門だが、すぐ隣に上条が立っていることに気が付くと体を強張らせたまま固まった。
「おいーっす。そっちも今から出かけんのか土御門?」
 掛けた声にびくりと震える級友の姿に疑問を感じた上条だったが、
「あ、おはようございますお兄ちゃん」
 と、立ちつくす土御門の横合いから姿を見せたメイド姿の女の子から挨拶を返されると今度は自分の方が固
まった。
「ま、舞夏?! いきなり隣の住人をお兄ちゃん呼ばわりするとはどういうことなのかにゃー?!」
 驚愕の表情で義妹を振り返り、慌てて問いただす土御門元春だが、
「えー? お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょー? 兄貴のほうこそ何を言ってるんだよ?」
 事も無げに返事をする土御門舞夏。
 軽く返った返事だが、『あ、兄貴…。カミやんはお兄ちゃんでオレは兄貴呼ばわりだと…?!』 という呟きが
聞こえてくることから、何かこだわりがある部分に尋常ならざるダメージを受けているようである。
 そんな義兄を無視して舞夏は上条にさらに話しかける。
「そんなところで何を突っ立ってるんだー? 早く出かけないと開始時間に間に合わなくなるぞー?」
 そんな問いかけにようやく硬直が解ける上条。軽く首筋をさすって緊張をほぐしながら返事をする。
「あー、何だ、土御門舞夏か。朝っぱらから突然寮の廊下にメイドさんが現れたからびっくりしただけ…」
 返事する言葉も半ば、今まで部屋の隅から上条を見ていたインデックスが、舞夏の名前を耳にした瞬間すさ
まじい速さで玄関から飛び出ると立ちつくしたままの上条を蹴倒して廊下に躍り出し、そのまま舞夏に向かって
詰め寄っていく。
「ねえねえ聞いてよ聞いてよまいか! 今日はまいかが前に言ってたお祭りの日なんでしょ?! それなのに
とうまったら私を置いてきぼりにして一人で出かけようとするんだよ!ひどいと思うでしょ!」
 突然現れたシスターにまくし立てられて最初は戸惑っていた様子の舞夏だが、さすがにそこは学校外での実
地訓練を許可されているエリートらしく即座に状況を判断、的確に答えていく。

852 名前:641 投稿日:2007/01/04(木) 16:13:41 [ u/SEVJRw ]
「あー、確かにそんな事を言ったような気もするけどあれだぞー、今日やる社会見学祭は多分想像している
ようなものとは違うんだぞー?」
「なっ、何が違うって言うのかなまいかは!」
 味方と信じていた人物からの思わぬ発言に混乱するインデックスに対してさらに言葉を続ける舞夏。
「この間やってた大覇星祭や一端覧祭は学生がメインで動くイベントだったけどなー。今日の社会見学祭は
企業とか研究機関がメインで動くからこないだみたいに食べ物の屋台がズラズラ並ぶほども出てこないはず
だぞー。」
「え……」
 その言葉に、数歩よろめいて後ろに下がると崩れ落ちるインデックス。
「そ、そんな…、もうあの焼きそばとかお好み焼きとかは食べられないの……?」
 うなだれたまま呟くインデックスを見て不審に思ったか、舞夏は声を掛けて尋ねる。
「どうしたー? 大丈夫かー?」
「うう…、いいんだよまいか。 今日はもう、わたしは家で一人で留守番してるよ……」
 力なく体を起こすとトボトボと自室まで帰ろうとするインデックス。
 その背中に向かって声が掛かる。
「んー、あれだなー、企業や研究機関の出展もなかなか面白いものがあるんだぞー。良かったら一緒に来る
か? 学校引率でないと入れないところもあるけどそれ以外のところもなかなか見所があるぞー」
 ピタリと止まる歩み。そのまま振り返ると顔を輝かせて尋ねる。
「いいの?」
 が、ふと気が付いていまだ寮の廊下にダウンしている上条の方を見て思案するが、
「あー、そっちと一緒に行こうとしても多分無理だぞー。今日はどこの学校に所属しているかのチェックが一番
厳しいからなー。向こうに行った先で離れ離れになると思うぞー」
 最後の言葉に決心がついたようである。
 舞夏の方に戻ってくるが、傍らに立つ人物にふと気が付く。
「あれ、あなたは…?」
 インデックスに尋ねられた瞬間、今まであらぬ方向を見る振りをしていた土御門元春は突然あたふたとした
感じで二人から離れていく。
「ほ、ほらカミやん、そんなとこでいつまでも寝てないでさっさと行こうぜい。舞夏はその銀髪シスターちゃんを
よろしく頼んだぜよ」
「おー、頼まれたー」
 歩く途中で廊下に伸びている上条を掴むとそのままそそくさとエレベーターに乗り込んで行ってしまう。

「い、いいのかな……」
「いいっていいって、それよりもまずはその服装から何とかしないと大変なのはこっちだからなー。うーん、いく
らなんでもシスターの格好のままはまずいしなー」
 しばらく思案していたようだが、妙案を思いついた様子で手を打つとインデックスを引っ張って先ほど出てきた
部屋の中に戻っていく。
「ちょ、ちょっと何をするのかなまいかは!」
「まあまあ、私に任せておけー? えーと、確かこのあたりに予備の衣装があったはず……」
 なにやらごそごそとやっているようだが、すでに学生寮から出かけている上条たちは二人が何をするつもりな
のかちっとも知る事は出来ないのだった。

853 名前:641 投稿日:2007/01/04(木) 16:14:15 [ u/SEVJRw ]

                   ◇                    ◇ 

 土御門から繰り出される拳に対処しながら学生寮での出来事を思い返していた上条だが、ふと思いついた疑
問を口にする。
「ってか、お前ってインデックスとは面識があるんじゃねぇのか?」
「いや、同じ『必要悪の教会(ネセサリウス)』に所属しているとはいえ今の俺の立場としては禁書と直接顔を合
わせるわけにはいかねーんだぜい。それに、忘れたのかカミやん。あれは一年毎に記憶を失っていたんだぜ?
仮に昔会ってたとしても、むこうが覚えてることは無いんだにゃー」
 事も無げに語る土御門。
 そんな土御門の言葉に思わず手が止まる上条。
 そこにすかさず土御門からの左フックがいい感じに決まる。
「がっ?! なにしやがんだてめえ!」
 何とか踏み止まりながら問いただす上条に対し、打ち据えた左拳をプラプラと振りながら土御門は軽い調子
で答える。
「まーあれだな? 過去はどうあれ禁書がいる現状を続けていくためにオレは不必要に接触しない方がいいっ
てだけの話だ。舞夏との事に関してもさっきの一発でチャラにするんだから一々引っ張るんじゃねいぜい、カミ
やん」
 重くなりそうな雰囲気に対して自分としてもいろいろと思うところはあるのだが、ここは友人の言葉に従って気
持ちを切り替える事にする。
「……まあ、お前がそう言うのなら」
「そうそう。カミやんは気楽にいろってこった。それに、あんまりこれ以上オレらがこうやってると、あすこにいる
お方がそろそろマジで切れそうなんだにゃー」
 そう言われ、ふと前方を見れば、集合地点である会場の入り口に不機嫌ここに極まりといった状態で吹寄制
理が腕を組んで仁王立ちしていた。
 というかマジでコワイ。
 何か彼女を怒らせるようなことをしたのかと身構える上条だが、心当たりがまるで無い。あえて言えばありそ
うな遅刻という線も時計を確認してみればまだ開始時間前である。
 やましい事が無ければ堂々と行けばいいのだが、いかんせん、普段の自分の行動を鑑みるに胸を張る事が
なかなか出来ない為、恐る恐る吹寄に近寄っていく。
「あの、吹寄さん、おはようございます」
 挨拶をされた吹寄だが、上条のほうをギロリと睨み付けると一喝した。
「遅い! こんな時間までいったいどこで寄り道してきたのよ上条当麻! 開始時間三○分前に会場入りしてい
ないなんて貴様はこの社会見学祭に真剣に取り組もうという気持ちが無いのしら? それならばその浮ついた
気持ちを今すぐ改めることね。そんな事では今日という日を無事に終えることなど出来ないわよ!」
「ええっ? 俺だけ? 叱られるのは俺だけなの?! 俺と一緒に来てた土御門なんかはどうなるの?!」
「何をたわけた事を言ってるのか知らないけど、私は運営側に連絡を入れないといけないからあんたはさっさ
と会場に入りなさい!」
 なにやら忙しそうにする吹寄は唖然とする上条に向かってまくし立てるとそのままどこかへと行ってしまった。

 ちなみに、上条と一緒に来ていた土御門は吹寄の注意が上条に向かっている間に彼女の死角を移動して既
に会場入りを果たしている。自身の持つ技術をろくでもない事に駆使している感じがするが、本人曰く『技術は
使ってこそ意味がある』 との事だそうな。
 閑話休題

854 名前:641 投稿日:2007/01/04(木) 16:14:44 [ u/SEVJRw ]

 ともかくとして、どうにか会場に入った上条は事前にクラスで打ち合わされていた集合ポイントに向けて歩いて
いく。会場に使われているのは大規模な実験にも使われるような広大なスペースをもつ建築物であるため、普
段ならば大きく感じられるのだろうが現在はここに集まっている参加者のためにやや狭く感じられるほどである。
「そろそろこの辺のはずなんだけどなぁ……」
 なおも現在進行形で集まってくる人の群れの中を移動し続ける上条の目が見知った人影を発見する。
 身長一三五センチの幼児体型である担任の小萌先生は普段の服装とは違い、大人びた感じのするスーツを
着用している。しているのだが、サイズが小さいために何だかアンバランスである。
(なんつーか、どっかの付属小学校の生徒か、七五三でおめかししたようにしか見えねえよなぁ……)
 ぼんやりとした頭で割と失礼なことを考えながらなおも歩いていくと、小萌先生が誰かと話しているようなのが
分かった。
(誰だろ?)
 話している相手はどうやら女性のようである。 女性の中では長身のようで、スラリとしている。
 だが、上条が目を引いたのはそこではない。
 長身の体を包む衣装はグレーのスーツ。堅苦しいイメージのあるそれを身に着けているというのにその女性
からは野暮ったいイメージは感じられない。むしろ活発に動く、やり手の秘書のような感じがする。
(どっかの企業代表の秘書さんか? でもそんな人がわざわざこんな場所にまで来るはずは無いだろうし、小萌
先生と話してる理由も分からねえし…)
 上条がそんなことを考えているうちに小萌先生とその女性の話しは終わったようで、小萌先生は別の場所に
向かって歩いていく。
 と、相手をしていた女性がこちらの方を振り向いた。

 その姿に、思わずどきりとする。

 おそらくは長いのであろう髪を後ろでアップに纏めていることや、パンツスタイルにスニーカーでいることから本
来は活動的だろうという先ほどの想像はおそらく合っているだろう。
 それ以上に受け取られるのは、その女性から出ている雰囲気のほうである。
 よくよく見れば、来ているスーツも何だか着慣れていないように見受けられるし、なんとなく着崩した感じという
か、堅苦しいスーツに包まれることによってただでさえ大きいであろう胸元がより強調されるようになってというか、
ぶっちゃけもう漂う雰囲気は大人の色香を纏ったエロス全開な感じであった。
 上条がボーっと見とれているとその女性は誰かに気がついたようで、こちらのほうに向かって歩き出してきた。
 いろいろな意味でよく目立つその女性の進路から身をそらした上条だが、何だか自分のほうに向かって歩い
てくる感じがする。
(え? 俺なの?)
 慌てて周りを見回すが、女性が近づいたと気付くと近くにいた人間は上条から距離をとるように離れていくこと
からやはり自分を目指して近づいてくるようである。
(マジで誰だ?)
 必死で脳内を検索するが、このような年上の女性に知り合いはいないはずだし、なんで?! と思っているうち
に女性が目の前に立ち止まった。
「えーと……」
 どう切り出せばいいか分からない上条がとまどっていると、女性が気さくな感じで語りかけてきた。
「相変わらずボーっとしているようじゃん、少年」
(誰なんですかいったい?!)
 社会見学祭開始前から上条当麻の周りはいろいろとややこしい事になっているようである。

855 名前:641 投稿日:2007/01/04(木) 16:20:55 [ u/SEVJRw ]
どうも、こんにちは。社会見学ネタ、できたところまでとりあえず投下します。
いろいろと実験的なことをやってみたつもり。でもあんま変わんないかもしれないです。

今回最後に出てきた女性については次で誰なのかが分かります。(というか、ほとんどの人にはバレてるでしょうけど)
今年最初の作品はこんな感じでした。

856 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/05(金) 02:04:04 [ t1xsXi9I ]
>>641
ほほぅ、この後のインデックスと舞夏の動向が気になるシーンの切り方……上手いなぁ。
ともあれ、GJ!続き期待してます!

857 名前:845 投稿日:2007/01/07(日) 02:31:04 [ c880EdUU ]
ごめんね、ペルソナとのクロスじゃないの、ごめんね。
ただ妄想が心の海から沸き上がってきたってだけなの。
ごめんね、ごめんね。

858 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/09(火) 14:02:51 [ 3hFUtV42 ]
  ―――生きてる人、いますか?

859 名前:672 投稿日:2007/01/10(水) 00:09:12 [ zwLYrtww ]
―――ここに、ここにいるよ――っ!

……お久しぶりです。
長らく投下出来ずに申し訳なく……ちなみにネタがわからぬのに乗るのは新手の羞恥プレイかと。

それでは今回も拙い文ですが、少しでも感情を動かしていただければ幸いです。

860 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2007/01/10(水) 00:12:46 [ zwLYrtww ]
<4> 〜力の行方〜


 暗い路地裏にある広場。
 白い、服装も髪もが白い学園都市最強の能力者――一方通行は広場の壁に沿う様にして駆けていた。
 その速度は今の彼にとって全力疾走と言えるものだ。
 しかし、その学園都市最強の能力者であるはずの彼の全力疾走についてくる者が居た。
 その人物とは、金色の短髪に薄い青のサングラスを掛けた大男だ。
 彼は口元に笑みを浮かべつつどこから取り出したのか赤いリボンを両手に掲げつつ叫ぶ。
「ツンデレにはツインテールと決まってるんだにゃぁーっ!」
「知るかァあああああああああああああ!?」
 とある幻想殺しの少年が聞いたらその場でずっこけそうな言葉を放ちながら、しかし男は足を止めない。
 否、むしろスピードが上がってるようにも見えた。
 一方通行はそれに対してどうしてこの様な事になったのかを思い返す。

 思えば、制裁を加えようと男の頭にそこそこ力を加えたチョップを一発振り下ろした所から始まったのだ。
 一方通行の攻撃。
 それは当たれば人を気絶させるほどの衝撃を持った一撃――のはずだったのだ。
 しかし、実際にはぽすっと可愛らしい音を立てて男の髪に僅かにめり込んだだけ。
 何事かと思えば一方通行の能力の要でもある演算補助装置の一部の機能が故障でもしたのか止まっているという事態。
 顔を青くする一方通行に対して男は立ち上がり、三日月のような笑みを見せ――。

 そして、現在に至る。
 詰まるところ、形勢逆転。一方通行の方がピンチに陥ったわけである。
「チィッ!」
 舌打ちするが、演算補助装置は相変わらず少ししか動かない。
 それでも身体機能を通常レベルまで持っていける程度まで動いているのは僥倖と言うべきか。
 だが、男から逃げきれる速度でも無いし、迎撃できるような力も今は無い。
 せいぜいが内部でどうにか足への負担を極力軽減するための反射をしたり出来る程度だ。
 どうにか男から逃げ切るための作戦を思案するが、広場の中心でオロオロとしている眼鏡を掛けた少女がいる限りは
 迂闊に此処を離れるわけにもいかない。
 一方通行が逃げ出した途端に今度は『眼鏡っ娘にはおさげだにゃーっ!』とか言って襲いかかりかねない。
 いや、この男ならするだろう、と後ろから迫り来る男の事を独断と偏見で判断しつつ一方通行は思う。
 何かキッカケが来るまで走りまわっているのも良いが、それでは演算補助装置の電源が持つかわからないし、
 何時、男がターゲットを一方通行から風斬に変更するのかわからない。
 これではイタチゴッコだ。
 ならば――、
「にゃっ!?」
 別に猫の鳴き声ではない。
 一方通行が一か八か迎撃しようとして振り向き、見事に体勢を崩した際に出した声だ。
……くァっ!ちくしょうがっ!反射の設定変更が間に合わなかっただァ!?
 それはつまり、演算補助装置の機能がかなり落ちていると同時に目の前の男との距離を詰めてしまうと――。
 男は空を舞っていた。
 まるでそれはコチラへとダイブしてくるような格好でまさに両手を開いて一方通行を抱き締めようとしているような。
 一方通行はそれを零コンマ何秒の世界で判断し、顔を引き攣らせて口を開いた。
「ぎゃァああああああああああああああああ!?」
 ドサリと乾いた音が路地裏に響いた。

   ○

「ん?」
 昼の日の光が窓から差し込み燦々と店内を照らしている中、少女が首を傾げる。
 その少女は髪を後ろで二つに分けて縛るという髪型をしており、上半身に白いティーシャツ、そしてその上から羽織った
 紺色のジャージの上着。下半身には羽織ったものと同じ色のジャージのズボンといった格好をしていた。
 その少女――座標移動の能力者こと結標・淡希は窓の外を見やりつつ再度首を傾げた。
「どうしたの、あわき?」
 結標を不思議そうな顔で見るのは白い修道服に身を包んだ銀髪碧眼の少女――インデックスだ。
 彼女の真横に座った結標はなんでもないわ、とインデックスに手を振るが、確かに何かが聞こえた。
 しかも、それは誰かが助けを呼ぶような声だった様な気がする。
「結標先輩。大丈夫?」
 うぅんと結標が手を組み唸っていると真横から声がした。
 インデックスの目の前に座る巫女服を纏った見本のような和風を体現した少女――姫神・秋沙がこちらを見ていたのだ。
 彼女はあまり表情は変えないものの中々人に気を使うタイプなのか何故かティッシュを差し出してきている。

861 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2007/01/10(水) 00:14:54 [ zwLYrtww ]
「……なんでティッシュ?」
「調子が悪いのかと」
 やっぱり何を考えているのか良くわからないタイプの子だ。
 ティッシュを受け取ってからお礼を言って、席に戻って正面を向くとニコニコとした笑顔のどう見ても小学生にしか見えない
 少女――一応、先生らしい月詠・小萌が視線を結標へと向けていた。
 その表情は凄まじく上機嫌な笑顔だ。
「えっと――小萌先生、でしたよね?」
「えぇ、そうですよー」
 ものっすごくご機嫌な声で返された。
 何か彼女の機嫌を良くなるような事をしただろうか?と思うが、恐らくは特にしていない筈だ。
 ならば、何故か――それは本人に聞くのが一番手っ取り早いだろう。
「何か良いことでもあったんですか?」
「えへへへー」
 小萌は笑うばかり。
 結標は、無邪気というかなんだかその辺りを通り越した小萌の笑みに思わず身を引いてしまう。
 それでも小萌は笑みを浮かべるのを止めない。
 なんだか段々追い込まれているような気分になってきた。
「あの、なにか私、悪い事でもしたでしょうか……?」
 なんとなく居心地が悪くなって縮こまりつつ聞いてみる。
 すると、小萌は相変わらずの笑顔で頬に片手を当てて、
「あ、いえー、特に結標ちゃんが悪い事をしたわけではないのですよー?ただ――嬉しくって」
「嬉しい?」
 予想外の発言に思わずキョトンとした表情になってしまう。
 何故という疑問よりも先に言葉の方が出てしまったが、特に問題はないだろう。
「えぇ、話に聞いてたよりもずっと良い子で良かったと思いまして」
「え?」
 心臓を鷲掴みにされたような感覚が結標を襲った。
 この目の前の女性は自分の事を知っているというのか。しかも昔の自分を。
 鷲掴みにされた様に縮んだ心臓が鼓動を早める。
 考えすぎだと、冷静な部分が叫ぶ。
 結標自身もそう思うが、走り出した勢いは止まらない。
 脳裏に走る一つの記憶。
 自分が■を■■■人間だという事はもう変えられない――。
……あ、あう、あああ……。
 思考が停滞する。
 頭に浮かぶのは血まみれで倒れる少女と、それを笑い嘲り蹴り飛ばす自分。
 違う違うと否定してもそれは既に起こった現実で、それは紛れもなく自分の正体。
「あわき?」
「!」
 インデックスの声に現実に引き戻された。
「大丈夫?汗びっしょりだよ?」
「だ、大丈夫よ……私、病み上がりなもんだから。本当、大丈夫よ」
 先程姫神に渡されたティッシュで顔全体を拭う。
 ティッシュはすぐさま濡れて使い物にならなくなってしまった。
 こんなに汗をかいていたのか、と結標は自分の体ながら感心してしまう。
「む。無理はいけないのですよー?」
 メッと指を突きつけてくる小萌を見る限りでは、自分の事をそこまで深くは知っていなさそうだ。
 自分の深読みのしすぎだろう、と今度こそ結論付けて心を落ち着ける。
 しかし、と結標は思う。
 自分は自らの犯した罪から逃れようとしていたのかと。
 あの白井・黒子は、そしてあの"残骸"を巡って起こった事件で仲間だった者達は今の結標を見てなんと言うだろうか。
 前者は喜んでくれるかもしれないが、後者はきっと自分を軽蔑するだろう。
「結標先輩。何か思うところがあるなら。言ったほうが良い」
「え?」
 考え込んでいると斜め隣から声が飛んできた。
 声の出所は姫神だ。
 相変わらず何を考えているかわからない表情ではあったが――その目はしっかりと結標を見ていた。
「いや、私は別に――」
「だめ」
 姫神は無表情のまま、
「きっと結標先輩の悩みは。たぶんだけど。溜め込んだままだといつか結標先輩を傷つける」
 結標は息を呑んだ。
 それと同時にその目を見て感じた。
 恐らくだが――姫神は結標と同じ様な境遇の人物だ、と。
 力を持つ余り、その力に恐怖する者。
 白井・黒子にアレだけ言われても変わらない自分の根本。
 結標は姫神の瞳から目を逸らし、しばし逡巡。
 少しの沈黙が場に落ちる。
 他の皆は結標の言葉を待つかの様に口を閉じていた。
「もしも」
 結標は皆の視線に応える様に口を開くが、そこで一旦区切り躊躇い区切る。
 そして、更に迷い、しかし暫くして再び口を開いた。
「もしも、私が人を簡単に殺せるような殺人鬼だったとしたら……どうする?」
 場の空気が一瞬固まる。
 それはそうだろう、もしもではない。
 結標・淡希は本当に思っただけで、簡単に人が殺せるのだから。
 そんな力を持っているのだから。

862 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2007/01/10(水) 00:16:05 [ zwLYrtww ]
 しかし、姫神は動じなかった。彼女は顔を横に振りつつ、
「どうもしない」
「どうもしない?」
 結標は僅かに眉を寄せる。
 姫神はそれを見ても別段気にすることはないという風に表情も変えずに結標を見る。
「結標先輩は人を傷つけたい――殺したいと思ってる?」
 その言葉に今度は結標が固まってしまった。
「そ、そんなわけないじゃ――」
「じゃあ。大丈夫」
 姫神は僅かに微笑むような表情になり、
「貴女は私と似てる。でも。一緒じゃない。貴女は優しい人」
 意外な言葉を放った。
 その言葉に結標は固まり、しかし、目を逸らし、
「……優しくないわよ。私は一度人を殺そうとしたわ……それなのに……」
 呟くようなボソボソとした声で言った。
 すると、姫神はまるで用意していたようにすぐさま疑問を口にする。
「でも。殺してはいない?」
 何を結果論を、と言おうとしたところで姫神に目を奪われた。
 強い瞳。
 そこには達観したような、しかし何か違う強さが感じられる意思の力を持った少女が居た。
「あ……」
 違った。
 この少女は結標と同じなんかではない。
 何かわからないが――彼女は自分よりもとんでもなく重いものを背負っていた。
 そして、同時に結標よりも遥か先を既に歩んでいる人間だという事も理解する。
 瞳に宿った意思がそれを結標に伝える。
「あわき、あいさ……?」
 インデックスが心配そうに結標と姫神を交互に見やると同時、姫神は笑みを浮かべて言った。
「だから。大丈夫。貴女は人を助けられる」
 それは、姫神にとってどれだけ重い言葉なのか。
 少なくとも姫神が偽善や気遣いで言っているわけではないのは確かだ。
 彼女の言葉には嘘が感じられない。
 結標はそんな姫神の言葉を受けて溜息を一つ。
「……ありがとう、姫神さん。だめね、私。年上なのに年下の子に助けられてばかりだわ」
 なんで自分はこんなにグダグダと何時までも迷っているのだろうと思う。
 同時に情けない、心まで腐っていたか、と自分自身を叱咤する。
「ん」
 しかし、姫神は和やかな笑みを浮かべて頷き、
「今度返してもらうから。平気」
「ええ、是非に」
 結標も眉は多少下がっているもののその頷きに笑みで応える。
 場に暖かい空気が戻り初めた。
「えーっと、もしかして先生の介入する余地なく解決しちゃいましたか?」
 頬を掻きつつ困ったような表情をする小萌と、状況が全く把握出来ていないインデックス。
 その二人を見て姫神と結標は顔を見合わせ、再びくすくすと笑みを漏らした。
 その時だ。
 
「御取り込み中のところ宜しいでしょうか?」

 静謐な、しかし礼儀正しい女性の声が聞こえた。
「「「ひゃあッ!?」」」
 唐突にすぐ近くから聞こえた声。
 その声の近さに驚いて結標達から絶叫が上がった。
 急いでそちらを見れば突然現れたかのに、女性に一人の女性が立っていた。
 唯一悲鳴を上げなかった姫神はその女性を見て首を傾げ、
「メイドさん?」
「メイドで御座います」
 姫神の疑問に会釈を返した女性はやはり姫神の言う通りメイド服をキッチリと着込んでいた。
 顔を上げたその女性を一言で表すならば美人という言葉が一番適切だろう。
 腰ほどまである黒の長髪を結ってポニーテールにした髪型にスラリとした長身。
 黒髪の下の鋭い目つきが凛々しく。
 女性の魅力を一段と引き出していた。
「かおり……?」
 その女性を見たインデックスが疑問の声を上げる。
 対して女性は無表情にしかし、確認するかのように皆を視界に納めて、
「再度確認しますが、よろしいですか?」
 小首を傾げた。

   ○

863 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2007/01/10(水) 00:18:31 [ zwLYrtww ]
「マフィンうまー、ってミサカはミサカはこのほどよい甘味に感嘆の声を漏らしてみる」
 薄い茶色の髪に頭頂部から一本だけピョコンと出た毛が特徴の幼い少女。
 彼女は青いワンピースを着込んだその胸に紙袋を抱えて、片手に食べかけのマフィンを持っている。
 その青いワンピースを着込んだ少女――打ち止めは隣を歩く少年と共にとある研究施設から出てくるところだった。
「まさか研究所の人だったなんてな……教員だと思ってたんだが」
「動物の病気を治すための薬を研究してるんだってね、ってミサカはミサカはアナタの持ったパンフレットを見つつ言ったり」
 研究所のパンフレットを開きながら打ち止めの隣を歩くのは、髪をツンツンと立てた少年――上条・当麻だ。
 彼の格好はティーシャツに青いズボンと言った動きやすそうな服装だ。
「それで猫好きか。しっかし、まさかそんなものまで貰えるとは、もしかして上条さん久々のラッキーですか?」
「それはないね、ってミサカはミサカは断言してみたり。むしろミサカの運の賜物?ってミサカはミサカは胸を張ってみる」
「くぅ……っ、あながちそうじゃないとも言えねー自分の運が呪わしい!」
「アナタは絶望的に運が悪いみたいだからねー、ってミサカはミサカは同情の目でアナタを見てみる」
 そんな目で見るなー!と叫ぶ上条を見つつ打ち止めはマフィンを一口。
「でも、運は悪い筈なのにアナタの周りに女の子が集まるのはなんでだろう、ってミサカはミサカはミサカ一○○三二号から愚痴られた事をそのまま伝えてみたり」
 うぅっ、と怯む上条。
 それを横目で見やりつつ、打ち止めは目を閉じてマフィンを回しつつ、
「そろそろ本命を決めないといつか背中からグッサリやられるかもしれないよー、ってミサカはミサカは忠告してみたり」
「へ?本命?」
「……」
……あー、これはホンモノかも、ってミサカはミサカはオリジナルやミサカ一○○三二号の先行きを心配してみる。
 彼の場合、少し無理してでも矯正しないとこのまま無尽蔵にフラグを立て続けそうな気もする。
 今度強めにアタックをかけてみる事を進めようと思うが、オリジナルとミサカ一○○三二号のどちらを応援するべきか。
 うぅむ、と考え込むがここは近い存在としてミサカ一○○三二号を応援――。
 いや、しかし、オリジナルの顔を立てるのもクローンとしての義理かもしれない。
……アチラを立てれば片方が立たずの状態かも、ってミサカはミサカは大人の事情に困ってみる、むむむ。
「どうした?」
「んー、ミサカはアナタの事が心配でたまらないかもしれない、ってミサカはミサカは少し真剣に考えてみたり」
 は?と首を傾げる上条には、やはり彼女達の好意に気づいている様子はない。
 どうしたものか、と思うがここは当人達に任せた方がいいだろう、と打ち止めは無責任に結論付けて頷く。
「って、何やってるの?ってミサカはミサカは何時の間にか後方にいるアナタに声をかけてみたり」
「ん?ああ、ちょっと危ねぇモンが落ちてたんで清掃ロボに乗せてたんだ」
「えー、ミサカも見たかったーってミサカはミサカは唇を尖らせてブーたれてみたり」
「やめとけやめとけ、割れた鏡なんて危ないモン見ても仕方ないだろ」
 ブーッと唇を尖らせる打ち止めを上条は無視。
 仕方が無いので、上条を半目で見つつマフィンを頬張る。
「でも、お前の保護者ってどんなヤツなんだ?確か白いんだっけか?」
「うん、メッチャクチャ白いからすぐわかると思う、ってミサカはミサカは自信ありげに言ってみたり」
「白髪なのか?」
「うん、ついでに今日は服も白いよってミサカはミサカは更にわかりやすく付け足してみたり」
「……確かにわかりやすそうだけど、一体どんなヤツだ」
 何を想像したのか嫌そうな表情になる上条。
 それを見て打ち止めはんーっ、とマフィンを甘噛みしつつどういう風に説明すべきか頭の中でまとめ上げる。
「んー、ぶっきらぼうだけど悪い人ではないよー、たぶん、ってミサカはミサカは目を逸らしつつ言ってみたり」
「って、目逸らすな!?上条さん、いきなり不安になったんですがーっ!?」
 敢えて名前は言わない。
 いきなり遭遇させて上条と一方通行を驚かしたいというのもあるが、正直上条に今逃げられるのも困るからだ。
 地味に腹黒い幼女の打ち止めであった。

864 名前:【とある打ち止めと座標移動】 投稿日:2007/01/10(水) 00:20:18 [ zwLYrtww ]
「おやや?ってミサカはミサカは首を傾げてみたり」
「ん、どうした?」
「メイドさんが歩いてるのを発見!ってミサカはミサカは初めて見る実物にはしゃいでみたり」
「別にこの街じゃ珍しくもないんだけどな――って舞夏じゃねーか」  
 舞夏っていうのか、と思いつつ打ち止めは視線の先をウロウロと歩いているメイドを見る。
 メイド服をキッチリと着込んだ見た目十三、四の少女だ。
 打ち止めが好奇心のままにジーッと凝視していると、彼女は気づいたのかコチラへと向かってくる。
「おーっす、上条当麻」
「いよっす」
「いよーっす、ってミサカはミサカは真似をしてみたり。というかアナタって本当に色んな人と知り合いなんだねってミサカはミサカは素直に感心してみる」
 舞夏は上条を見た後に打ち止めを見やり首を傾げる。
「んー?誰だ、このチビッ子はー?」
「ん、あぁ、チビ御坂こと……えーっと、そういえば、なんて名前なんだ」
「あ、ミサカの事は"打ち止め"って呼んで貰えればいいかも、ってミサカはミサカは自己紹介してみる」
 舞夏は其の名前を聞いてポンと手を打ち。
「おぉー、誰かに似てると思えば、結構前に会ったあの福引大作戦の人のチビッコ版かー。で、姉妹?」
「……なんだか妙な表現だけどそんな感じだ」
 ふむ、と舞夏は頷くと打ち止めへと向き直り、口元に笑みを浮かべつつ妙に間延びした口調で右手を差し出す。
「土御門舞夏だ。宜しくなー」
「宜しくねー、ってミサカはミサカは新たな知り合いの獲得に喜んでみたり」
 笑顔で舞夏の手を取る。
 その様子を見ていた上条だったが、何か気になったのか舞夏を見て、
「なんか違和感があると思ったら、お前が徒歩なんて珍しいな」
「あー、そうそう。私のロボットなんだけど知らないかー?」
 お前のじゃないだろう、と上条が言うが舞夏は特に気にするつもりもないらしい。
「それならさっきあっちに向かってったぞ。あと清掃ロボットにマーク描くのはやめとけ」
「わかりやすいからなー。とりあえず、ありがとなー」
 言うと同時に上条の指差した方向に歩きだす舞夏。
 最後に打ち止め達へとばいばい、と手を振って人ごみの中に消えていった。
「さて、行くか。っていっても、どこから探したもんだかなぁ」
 上条は頭を掻きながら舞夏の去った方向とは逆方向に向き直る。
 まぁ、と前置きして打ち止めは上条へと笑顔を向け、
「歩いていればそのうち見つかるかも、ってミサカはミサカは楽観的に期待してみる」
「お前の事なんだけどな」
 えへへー、と笑う打ち止めを見て上条は溜息をつきながらも再び歩きだした。


   ○


「おー、いたいた」
 上条達が居た地点から少し離れた場所。
 土御門・舞夏は上条達と別れた後、暫くしてようやく念願の戦友を見つけていた。
 清掃ロボットに駆け寄ると早速取りついて、わかりやすいようにと描いたマークを確認する。
 よしよし、と頷き清掃ロボットの頭頂部に手をひっかける。
 そのまま勢い良く身を持ち上げて座ろうとし、
「む?」
 ロボットの頭頂部に何か光を反射するものを発見した。
 それは白い枠の付いた物体を映し出すもの――鏡。
 しかし、その鏡は肝心のの鏡の部分が罅割れていて使いものにならないようだ。
 舞夏はそれを拾って眉を顰めつつ、
「ポイ捨てとはけしからんやつめー」
 数度、裏から叩く。
 その結果、破片が飛び散る危険性はないと判断し、おもむろに背負ったバックの中に放り込んだ。
 それから改めて清掃ロボットの上に座りなおすと、
「よし、れっつごー」
 彼女の掛け声に呼応するかの様に今まで止まっていたロボットが動き出す。
 向かう先は舞夏の兄――土御門・元春が住んでいる男子寮だ。
 今日はなにして遊ぶかー、と舞夏は色々な案を頭の中で浮かべつつ楽しそうに身を揺らすのであった。


   ○


「後藤……」
「あぁ、みなまで言うな井上……」
 高校の制服を着込んだ短髪の少年――後藤は去りいくチビッコメイドを見つつ言う。
「なんかバックが点滅してるけど、大丈夫だろうか」
 彼の言った通り、チビッコメイドの背負ったバックは赤くリズムを持って点滅していた。
「後藤よ、知らぬだろうがアレが最新のファッションなのだ」
「なに!?それは本当なのか井上?!」  
 最近学園都市に来たばかり、その上心根が純粋な後藤は瞳を輝かせつつ叫ぶ。
 それに対して長髪の制服を着込んだ少女――井上は清々しいほどの笑顔で後藤へと頷きこう断言した。
「嘘に決まってるだろう」


 後藤は灰になった。

865 名前:672 投稿日:2007/01/10(水) 00:23:11 [ zwLYrtww ]
以上。お目汚し失礼いたしました。

グダグダとしすぎていた分少しスピードを上げて行きますが、生暖かく見守っていただければ幸いです。
それでは、ここまで見ていただいた方に感謝の気持ちを捧げつつ。

それでは、また次回会う日まで。

866 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/10(水) 06:54:55 [ 44KJbKVM ]
舞夏のバッグが危ない!
てことで>>672様GJ。

867 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/10(水) 14:55:44 [ cIdVfhGU ]
>>866
舞夏のお尻(バック)かとオモタ
まぁともあれ672氏にGJを

868 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/10(水) 18:33:47 [ /6vQTwrI ]
それは、とある冬の寒い日の事だった。
上条 当麻は、その日偶然にも自分の下に舞込んだ幸運に涙していた。

「―上条君、上条君」
暖房によって心地よい暖かさを保たれている自分の教室の自分の机の上で
惰眠をむさぼっていた当麻の元にめったに話すことのないクラスメート
の神薙 真が寝ている当麻の肩をゆすっていた。
「―な、なんですかー上条さんは、値段も栄養価の低い上に量の少ない自作弁当
を食べてそれでもクークーなるお腹の音を聞かないために惰眠をむさぼっている
最中なんですよ」

「いや、この間俺がインフルエンザで倒れたときに俺の当番とか全部引き受けてくれたんだったって聞いたからさ。お礼を言いに来たんだけど」
神薙は、もうしわけなさそうに上条に言葉をかける。
「いいんですよ。・・・上条さんは生まれた時から不幸街道を大暴走しているんですから
それぐらいの不幸なんて今更どってこともなかったですよ」
当麻はそう言いながら頭の中でその日、神薙行うはずだった当番の内容を思い出していた。
「・・・でもさ、真冬の校舎裏で草むしりとか校長のペットの池の周りの掃除とか
辛くなかった・・・しかも一人でやったって」
「いいんですよ・・・風邪引いて倒れていた神薙君には罪はありません。・・・・
悪いのは当番なのにエスケープぶっこいた青髪ピアスと土御門の二人なんですから」

何を思い出したのか、当麻は机の横にだらっとたれていた右手の拳をぎゅっと握りだした。
「あいつらのせいで・・・あいつらのせいで」
そんな上条の迫力に押されて少し後ずさっていた神薙は
「本当にごめん」
神薙は、そんな当麻をみて本当に申し訳なさそうに謝る。
「ははは、本当に気にしなくていいですよ。上条さんにとってこのぐらいの不幸は日常茶飯事ですから」
「上条君、これそん時のお礼として受け取ってくれないかな」
神薙は、そういってズボンのポケットから一枚の封筒を取り出し当麻に手渡した?
「・・・ラブレター?」
「いや、そういうギャグはいらないから」
神薙は当麻のボケをさらっとスルーと封筒を開ける上条の表情に視線を注ぐ。
「・・・こ、これはー高級ステーキ料理店『火龍』のお食事券一人1万円分が・・・しかも4枚も」
目の前の取り出した神々しいまでに輝くお食事券を持ったまま当麻はただ固まることしかできなかった。

869 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/10(水) 18:35:24 [ /6vQTwrI ]
「ど、どうしたんですか?これ」
「いや、この前ネットポイントの有効期限が迫ってたときに余っていたポイントで買った。学園ネット抽選券
の3等の商品なんだよ」
「ああ、確か一等は最新型のパソコンが当たるとか言うあれか?」
「そう、でもそれが届いた次の日に風邪引いてさ・・・」
神薙は何かを思い出したのか・・・乾いた笑いをしながら上条に話す。
「ようやく治ったのはいいけど、まだしばらくの間そんなこってりとしたものは食えないだろうし。
それに、それ有効期限が今日までなんだ」
「え、」
上条は急いで券を見るとそこには確かに1月13日までという文字が刻まれていた。
「最初は、友達にでもやろうかと思ったんだけどあいつらにやると破産しそうなんでやめたんだ」
「破産?」
「その券、お1人様1万円って書いてあるだろう」
「あ、本当だ」
「一人一万円までしか無料にならないんだ」
上条はそれを見て険しい顔つきになる。
「神薙さん・・・それって、もしかしてー」
「・・・1万円過ぎたら残りは自分絵払えって事なんだ」
ガーンと何かで頭を殴られたような表情になる。
「しかもその店、確かにおいしいけど量があんまりないし・・・料理の平均が1品5000円以上なんだよ」
「ハハハハ・・・確かに食べ盛りの男子生徒には恐ろしい券ですな」
「だろ・・・」
その恐ろしさを悟った上条と神薙は乾いた笑いを浮かべていた。
「そういうわけで、一緒に連れて行く人間はくれぐれも慎重に選んでくれよ。俺は自分のやった券で
他人様が不幸になるのをみたくないから」

そういい終えると、神薙は鞄を持って教室を出て行った。

「ありがとう、神薙君。君のすてきなやさしさがこもったこの券は決して無駄にはしないよ」
ルンルンと笑みを浮かべながら帰りの支度を始めた上条は恐ろしい事に気づいた。
「ハ、う・・・うちには暴食暴飲魔人がいるのを忘れてた」
当麻は自分の頭の仲に突如現れたバクバクと信じられない量を平然と食べる白いシスターの姿を思い浮かべていた。
「・・・だめだ、インデックスと一緒に行ったら俺は間違いなく破産してしまう。どうすればどうすればいいんだー」

870 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/10(水) 18:40:55 [ /6vQTwrI ]
下手なSSですが、一応書いたので貼ってみました。
テーマは当麻が偶然もらったお食事券で誰を誘うかというのをテーマにしてみました。
ちなみに、インデックスは話の都合上最後のほうにちょこっとしか出てきません。
三人のうち二人はすでに決定しています。宣戦布告した娘と天然なシスター
あと、もう一人を誰にするかが決まり次第とっとと書きます。

871 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/10(水) 22:07:55 [ 44KJbKVM ]
>>870
…あと一人が気になる…。
乙です。

872 名前:672 投稿日:2007/01/11(木) 01:09:28 [ oJLlNANs ]
だれだ……だれなんだ一体……。(ザワザワ)
ともあれ、>>870氏ナイス、GJ!

ところで新刊はまだ読んでいないのですが、考察スレッドを見て思った事。
>風斬が〜
【ウチのSS】( ゚д゚)……あれ?

【ウチのSS】(゚д゚ )……。

【ウチのSS】(゚д゚)

873 名前:375 投稿日:2007/01/11(木) 01:19:02 [ 8Rie58Ts ]
>>870
修羅場突入に期待しつつ、GJ!
あと一人!あと一人!あt(ry

>>672
私のssもどうなってしまうのでしょう(;´_ゝ`)
しかしそちらのは面白いので気にしないで書いても大丈夫ですよ。

874 名前:169 投稿日:2007/01/11(木) 10:16:30 [ aKNOcD6U ]
>>872-873
それを言ったら私のSSなんかどーなるっつーんですかぁっ!?
いやいや取り乱している場合じゃない。大声出してすみません。しかしまあ、今非常に困っています(汗)。
こうなったら時間分枝が起きたことにでもして、開き直りますかねぇ……。
あと一年は大丈夫だと思ってたのに……のに……のに……

875 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/11(木) 16:57:00 [ bUMdXRpo ]
3人登場です。①生意気そうな娘が借金をカタにAV撮られちゃいま
す。指ホジ、強制フェラから本番1発目。次はオナニー強要、ハサ
ミで脅されバイブオナ。フェラで1人抜かされマッサージ器攻め、
本番。②いつも留守電にメッセージを残すストーカーが部屋に侵入
、パンティーをはさみで切られ超薄毛まんこがあらわに。ローター
攻めから強制フェラ、本番へ。③院長室でのフェラをばらすと脅さ
れ男の言うとおりに。指、バイブでおまんこいじられ本番。終了後
は体をピクンピクンさせてます。それほど激しい作品ではないです
がレイプ好きの方はどうぞ!
www.kaukoo.com

876 名前:169 投稿日:2007/01/11(木) 22:03:59 [ aKNOcD6U ]
>>870
GJしそびれてた! とってもカッコいい苗字のクラスメイトにGJ!
私もあと一人がすごく気になります。

877 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/12(金) 18:20:53 [ NK37opOk ]
「・・・ステーキ・・・高級和牛―」
夕暮れの道を力なく歩く当麻の表情は暗かった・・・これでもかってほどに暗かった。
「・・・俺だってたまには高い牛肉食べてみたいよ。-どこぞのファーストフードやファミレスで使っているような
肉じゃなくて口の中に入れたら溶けてしまうんじゃないかと思うようなお肉が食べてみたいお年頃なんですよ」
突然足を止めやや猫背になりつつあった背を元に戻すし当麻はいきなりー大声を上げて叫んでいた
「でも・・無理です。俺にはあの暴食暴飲魔人を抑える力なんて持っていないんですから」
当麻の頭の中では、ここ数ヶ月間のインデックスの大食い早食いシーンが駆け巡っていた。
「無理です・・・下手に美味いもん食わせたらさらに暴走するに決まってる」
当麻は、何か悟ったような顔になるとお食事券を鞄の中にしまい自分の部屋に帰るため再び歩きだした。
「あらあら、こんなところでいきなり叫びだす変な人がいると思ったら当麻さんじゃございませんか?」
「―え!なんでここにオルソラがいるの」
そこには、真っ黒な修道服に身を包んだ当麻の顔見知りのほのぼのシスターの姿があった。

「はい、お久しぶりです。当麻さん。じつはそこのスーパーで寮に住んでいる皆さんのお土産を購入してきたところなんですよ」
「って、そうじゃなくて!なんでオルソラが学園都市にいるの。イギリスにいるんじゃないの?」
「学園都市って、ファーストフードや飲食店は充実しているのにこったお土産は置いてないんですね?」
「まあ、滅多に客が来るわけじゃないからそういうもんはあんまり必要ないんだろう」
「で、なんで私が学園都市に来たかというとステイルさんの代理でここにお届け物をしにきたんですよ」
「はあ、って話が戻っているし。って、ちょっと待て?ステイルの代理ってあいつになにかあったの?」
「はあ、実は・・・」

878 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/12(金) 18:21:48 [ NK37opOk ]
(ここからしばらくの間は全てイギリス語です)
「アークビショップ!!」
ステイルは、顔を真っ赤にさせながら浴室に入ってきたことでバスタブに足を突っ込んで緩みきっていた
ローラの顔が驚きの表情で固まる。
「な、なに!ステイルまたこの私の姿を忘れられず再び浴室に突入してきたのですか・・・それとも・・」
ステイルは顔をヒクヒクとさえ強張った笑顔でローラの前に抱えていた小さな箱を突きつけた。
「あ、やっときたのね『超機動少女カナミンDVD−BOX』」
ローラはDVD-BOXをステイルの手から取ると嬉しそうにそれを眺めていた。
「-220ポンド・・・。220ポンドも取られたんですよ。そんなものに・・しかもあんな送り状に
超機動少女カナミンDVD−BOXとか直に書いてあって・・・」
ステイルは何かを思い出したのかプルプルと震えている。
「ほら、この間ステイルが私の日本語はおかしいとか言っていたから日本語の勉強しようと思って取り寄せたの」
「なんで、私のところに届けたんですか」
「えっと、アークビショップとあろうものが堂々とこんなもの頼んだらイメージに悪いでしょう」
「それに、ステイルのところに送れば確実に私の元に届くだろうし。それに・・・」
「それに?」
「なんか、おもしろい事が起こりそうな気がしたのよ」
ブチ・・・何かが切れた音が部屋に響いた。
「・・・あなたのせいで―あなたのせいで――あなたのせいで」
ステイルは炎の剣を抜くとローラのが足を入れていた浴槽に勢いよく突っ込んだ。
「あっつ!!」
炎剣を突き刺され急激に熱くなった風呂から飛びのくローラ
「あなたのせいで、私の近所のイメージがズタボロですよ。偶然私が留守の時に荷物を預かってくれた近所の
奥さんがその荷物が届いてから私のことを白い目で見るようになるし・・近所の人たちは私を見るたびに
ヒソヒソ話を始めるし・・」
「・・・ごめんね」
ブチ、再び何かが切れる音が浴室に響く。
「―全然反省してないようですね。――いいでしょう、それじゃあ今からたまりにたまったあなたの書類仕事
全て片付けてもらいましょうか・・・今日中に」
ドスの聞いた声と獲物を完璧に動けなくする獣の冷たい目でローラを睨むステイル。そんなステイルに恐怖したのか
後ずさりしながらローラは
「ステイル、もう就寝の時間ですし。それにこんな遅い時間に女性の部屋に殿方がいるのは・・・」
「はじらうように行っても駄目です。大丈夫ですよ・・ちゃんと女性のシスターにも協力を仰いでいますから
大丈夫ですよ」
「え、え、」
「さあ、たまりにたまった書類仕事全て片付けるまで寝かせませんからね。大丈夫ですよ私がちゃんと監視してあげますからつきっきりで」
「い、いやあー」
そういって、ステイルローラの服の後ろ襟を掴むと彼女を引きずって浴室から出て行った。

879 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/12(金) 18:59:56 [ NK37opOk ]
と、数日前にこのような出来事が繰り広げられたのだった。
(日本語に戻ります)
「はあ、実は私にもよくわからないのでございますよ」
「なんでも、ステイルさんはどうしても離れられない用ができたから代わりにって事で私がここに来ることになったのでございますよ」
「はあ、あいつも大変なんだな」
当麻が夕日を眺めながらステイルのことを思い出しながら寮の方へと向かって歩いていった。
「で、用事も済ませましたので当麻さんとインデクッスさんのところに挨拶しておこうと思い歩いていたのですが
私・・・道に迷ってしまいまして」
「なるほど」
「で、迷っていたときにふと、寮に住んでいる皆さんのことを思い出して近くにあったスーパーで皆さんへのお土産を購入して配送を頼み終えたところに暗い顔で歩いていくる当麻さんを発見したのでございますよ」
「なるほど」
そんな会話をしつつ歩いているうちに当麻とオルソラは当麻の住んでいる部屋の前までやってきた。

「ただいまー」
ドアを開け当麻は玄関に入り靴を脱いだ。
「おじゃましてもよろしいでございますか?」
「どうぞ」
というと滅多に使わないスリッパ立てからスリッパを取りオルソラの目の前に置いた。
そしていつものようにリビングのドアを開けると駆け寄ってくる白いシスターと飼い猫のフィンクス
を予想していたが・・・その気配がないことに気づく。
「あれ?インデクッス?フィンクス?」
当麻はインデックスとシスターの姿を探しキョロキョロと当たりを見回すが一人と一匹の姿がない。
「うん、なんだ?!これ」
テーブルに視線を向けるとそこには一枚の紙切れがあった。

『当麻へ、小萌に夕食を招待されたのでフィンクスと一緒に行ってきます。
ついでに泊まってきますので帰るのは明日になります』  インデックス&フィンクスより

紙切れを片手にプルプルと震える当麻、しかし彼はあることに気づく。
「あの野郎・・・また勝手なことを・・・いや待てよ」
床に投げていた鞄を急いで手元に寄せ中からあの封筒を取り出した。
「あらーインデックスさんはいないんでございますか?」
とたとたと音を立て歩いてくるオルソラの姿が目に入った当麻はあることを思いついた。
「なあ、オルソラ。今晩暇か?」
「はい、用事も終えましたし。帰るのは明日ですので」
オルソラは顎に指を当て考えたポーズをしながら答えた。
「じゃあ、今晩俺と付き合ってくれないか?」
当麻がその台詞を発した瞬間オルソラの時間が止まった。

880 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/12(金) 19:09:18 [ NK37opOk ]
とりあえず、一人目オルソラ=アクィナスを登場させました。

は彼女の会話のテンポはイマイチ掴みづらかったのですがなんとか形になったので
よかったと870はつぶやいてみたりします。
次は、いよいよ3人目を出すことに。この娘も出番少ないし会話や癖がイマイチよく
掴めてない娘なので苦戦すると思いますががんばります。

たぶん二人目のキャラが書くのは一番楽のような気がする。

>>871-873 >>876
ご感想ありがとうございます。

881 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/12(金) 20:29:07 [ BSsZjWsQ ]
>>880
GJです!文才があるっていいですね
でも一つだけ訂正で、『フィンクス』ではなく『スフィンクス』

ついでに13巻嘘展開


木原にボロボロにやられ、反射すら使えない程に傷ついた一方さん
そこへ向けられる無数の銃口
「『最凶』であるお前が他人を守れるわけねーだろバーカ」
「木・・原ァ・・・!」
「実験動物(モルモット)が気やすく俺の名前を呼ぶンじゃねーよ。
回復されてもやっかいだ、さっさと殺っちまえ」
「チ・・クショウ・・・」
そして―――、引き金が引かれた
ガギガガガギガガガガ
だが、一方通行には一撃も当たらなかった。
反射が使えるようになったわけではない、一方通行の目の前に現れた岩の壁に全て弾かれたのだ。
「ああ?誰だコイツを助けたバカは?」
「俺だよ。」
一方通行の後ろから現れたのは、眼帯をした高校生ぐらいの少年。
「テメェは・・・、石渡か?」
「覚えててくれたか。久しぶりだな一方通行(アクセラレータ)」
「石渡、テメェ実験動物の分際で俺に逆らおうってのか?」
「実験動物だからって暴れちゃいけない理由もないだろう?」
「置き去り(チャイルドエラー)だったお前を拾って育ててやったのも忘れたか」
「拾ったのも育てたのもお前じゃない。お前は俺の身体で実験しただけだ」
「そこに居るのはお前の片目を奪った奴だぞ?」
「確かに俺の右目はアクセラレータと戦って奪われた。だが戦わせたのはお前だ」
木原はため息をつき、
「まったく、次から次へと面倒事が起きやがる。相手すんのもイイ加減疲れた。
おい、こいつらの始末は任せた。俺は打ち止め(アレ)の様子を見てくる」
「待・・ちやがれ・・・」
「しつけェなあ、その身体のお前と石渡一人で何ができるってんだよ」
「うるせェ!テメェは俺一人でも殺してやンよォ!」
「熱くなるなアクセラレータ、味方は一人じゃないんだから」
「あンだと?」
その時には木原も気付いた、周りを取り囲むように人の群れが出来ている事に。
「これは・・・、全員『置き去り(チャイルドエラー)』か?」
「どォいう事だ?」
一方通行は周りを取り囲む人の大半に見覚えがあった。
(コイツ等は俺と戦った事がある奴らか!)
彼らは木原のいた研究所で実験として、アクセラレータと戦わされた人達だ。
だからこそ一方通行は戸惑う、一方通行と戦う度に彼らは震えていた。その彼らが何故自分を助けるのかと?
「私たちは確かにあなたが恐かった」
いきなり石渡の横に居た少女が話し掛けてきた。まるで一方通行の心を読んだように。
「私は読心能力だからね。でも無理矢理あなたと戦わされたこともある。あなたは手加減しなかったけど。
皆が恐れたわ、相手がどんなものでも容赦しないあなたに」
そして石渡が続ける
「だが、憧れもした。我らのような実験動物相手であろうと、
研究所相手であろうと関係無しに攻撃するおまえに。おまえならいつかこの状況をどうにかしてくれると」
「ケッ・・・、俺がそんなことをしてくれる善人だとでも思ってたか?」
「思ってなかったさ、あの時はな。だが今のお前は知らん。お前にも守るものができたんだろう?」
「・・・ッ!?」
「俺たちだって情報無しに行動はしないさ」
「情報があるからってヤツに勝てると思ってるのか?」
石渡は難しい顔をして、
「無理だな、俺じゃ勝てない。」
「やッぱり能力者(モルモット)じゃ研究者には勝てねェってか」
「ああ、だから学園都市最強(おまえ)に協力して欲しいんだよ。
最強の能力者でもなく最強の実験動物(モルモット)でもなく学園都市最強に」
「まさかテメェに教えられるとはなァ・・・」
「肩書きってのは自分じゃわからないさ。ま、回復までの時間稼ぎはする、木原は頼んだぞ、『学園都市最強(アクセラレータ)』!」

882 名前:672 投稿日:2007/01/12(金) 20:42:56 [ Ly.K9Vis ]
>>880
ローラとステイルの掛け合いがいいなぁ。
なにはともあれ、天然上条さんも良いしグッジョブ!

>>881
ぎゃああああああ、最大のトラウマになりそうな12巻の続きかぁー!
あ、まだ読んではいませんが。とにかくGJ!

>>874=375 >>874=169
同志よ!
サーシャの登場とか色々パプニング満載のようで……うふふ、どうしましょう。あらおかしい。
どうしよう、IFにするか、それともここは男坂を登り始めたばかりエンドか……。
上嬢さんモノも構想を練り直さないといけないし、ほんま禁書は地獄やで!

883 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/12(金) 22:00:33 [ sVyL7MAw ]
>>880
GJ!
ですが、ローラの話し方が普通すぎやしませんかね?
もっとこう、みょうちくりんな話し方の方が彼女らしい気がしました。
イギリス語なのでそうした可能性はあるのですが、12巻でローラ、ステイルの掛け合いを見ると素であの喋りっぽいですし。
では残りの二人の登場を期待です!

884 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/12(金) 22:36:18 [ TyrurVP. ]
>>877
GJです。
ちなみにローラの喋りは英国語を邦訳してもアレらしいですよ?

>>881
これはこれで熱い展開だ!
GJです。

885 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/12(金) 22:39:59 [ GChDUo3U ]
880です。 すいませんこのSS合計2時間50分で書いた上に出先で暇なときに
ちょこちょこと書いているのかなりアラがあります。

禁書のSS書くときに一番悩むのはキャラの口癖や会話のリズムなどがかなり
特殊なのの場合資料がないと書けないので・・・今回のローラとステイルのネタは
突発的に思いついたのであり資料もないのでイギリス語という荒業で書いたのですが
やっぱり無理が…。
>全部書き終えたら誤字と訂正と追加を加えたもののを書くのでそれまではあんまり攻めないで
ください。

886 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/12(金) 22:45:44 [ TyrurVP. ]
>>885
そうですか。
ではそのバージョンも期待してます。

887 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/15(月) 11:40:19 [ 09ViVuKY ]
このスレも過疎になりけるのことよ

888 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/15(月) 16:24:54 [ u5/2UGX2 ]
そもそも投下後以外は基本的に過疎ってる希ガス

889 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/15(月) 17:19:52 [ J2O81FKQ ]
12巻が、12巻が……色々出てなかったキャラが出てきちまったからなぁ。
そのせいで書けぬ人が多いんだろ。というわけで、なんかネタありませぬか?

今んところ、淡希編が素っ飛んで鏡の上嬢さん編に突入しそうな勢いですが。

890 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/15(月) 18:55:52 [ ltzzNqnY ]
現在執筆というかちょこちょこと書いています。
優遇されているのはたぶんオルソラです>もう上条さんこれでもかってほど
にいい目に・・・。(上条さん役変わってくださいといいたくなるぐらい)

 >ネタで
「やめてください!!おねえさまがミサカに勝てるはずないじゃないですかとミサカはミサカはおねえさまを見下します」
「ミサカはこれから、想い人の腕に身体を密着させてかわいく甘えて想い人とステキなデートというものを楽しみます」
美琴は、地面に這いつくばりながらも当麻にかけよっていくさまをただ呆然とながめることができなかった。
「なんで・・・なんでこんなことにんっちゃうのよ」
涙を浮かべながら自分の行動が犯した未来に絶望する美琴の前にそっと手を差し出す
少女がいた。
「大丈夫です、おねえーさま。おねえーさまにこの白井 黒子がいるじゃありませんか」
「さあ、あんなゴミ虫のことは忘れてこれから二人で素敵な夜を・・・」
ちょっといっちゃっている目で自分の欲望込みの慰めの言葉をかける黒子を
見つめる美琴は何かに気づいたのかふっと視線を下に向けるとよろよろと立ち上がる」
「・・・あんたのせいじゃないの」
小さい声でそして怒りが絶妙にブレンドされた声でつぶやく。
「あんたが、ことごとく私とあいつのフラグを邪魔したからこんなことになったんじゃない」
「・・・・お、おねえさま―――落ち着いてください!っていっいやレールガンを黒子に撃つつもりですか」
怒りに支配された目で黒子の顔面を確実に打ち貫くポジションをとる美琴
「・・・うぅっ・・・うわーん」
「い、いやあぁぁぁぁぁぁぁ------」
その日・・・学園都市の商店街が壊滅した。原因はとあるテレポートに能力者よる
精神的イヤガラセによって学園都市で7人しかいないレベル5能力者の一人。
『超電磁砲(レールガン)』の異名を持つ電撃使いが情緒不安定になり起こした
惨劇の結果である。

かけつけたジャッジメントとジャッジメントスキルは泣き崩れる電撃使いの少女と
何かに怯える少女を保護。幸いなことに怪我人はでなかった。
カエル顔の医者はうんざりとした表情でつぶやいた。
「・・・すまんが病院に来てくれないか。・・・いや君だってこの病院がなくなったら困るだろう」
「・・・くっ・・くっ・・・」
ベッドの上では一人の少女が眠りながら涙を流していた。
『・・・わたしだって・・デートがしたいのに・・・なんでなんで・・・』
身体がだるく動けない少女はただ悲しかった。
だが、彼女は気づく自分の頭の上をやさしく撫でてくれる手の感触に
そして・・・その手が自分の涙を拭ってくれたとき彼女は気づいた
目の前にいる人物に。
「まったく・・・なに悲しい顔してるんだよ。いつもサルみたいに騒ぐおまえは
何処に行ったんだよ」
「うるさい・・・私だってたまにはこんな顔するときがあるのよ」
そんな憎まれ口を叩きながら少女は目の前にいる少年の笑顔を愛しそうに
みつめた。

891 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/15(月) 19:03:15 [ ltzzNqnY ]
出番の少ないオリジナルの美琴さんのSSです。
もう一人ペアでわりを食らった白井黒子も登場しています。
30分でぶっつけ本番でやった割りによくまとまたっと思いたい・・・。
ちなみにしょっぱらのミサカ妹の台詞は某アニメの主人公の台詞をいじって。
(生まれは似たようなもんだし)

892 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/16(火) 15:52:54 [ 2QbgDTeE ]
>>870
続きが気になりますなぁ(´・ω・`)

しかし、シスターさんを肉料理屋に誘うのはどうなのさカミやんさん。
と思ったけど、あの人生ハムうまうま食べてたっけ・・・

893 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/18(木) 02:03:48 [ 9FJrJ2gg ]
>あの人生ハムうまうま食べてたっけ
 
「人生ハム」かとオモタ

894 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/18(木) 10:39:10 [ hH1xzB/E ]
つまりカニバリズムの形になるな

895 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/18(木) 10:42:58 [ 9EEJ6RSA ]
でも魔術サイドなら別にやっててもおかしくなさそうだけどな>カニバリ

896 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/19(金) 00:59:46 [ cAUlW9zg ]
まぁ、教会とかはしないだろうけど魔術結社とかは普通にやってそうだよなぁ……。

かゆ うま

897 名前:893 投稿日:2007/01/19(金) 11:24:34 [ mg7aS2v2 ]
「ジンセイハム」のつもりで書き込んだらいつの間にやら「ヒトナマハム」にされてる!?
小指詰めそうな番号踏んだせいか?!

898 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/19(金) 23:22:37 [ nNbMVulo ]
>>897
小指詰めそうな番号ってあんさん、流石やね。

ともあれ、>>870さんはGJ撫で撫でですよー?

899 名前:最終局面〜意外なキャラで攻めれば許されると思った〜 投稿日:2007/01/22(月) 23:48:06 [ 1eMHlw1w ]
 これは12巻を買っていない馬鹿が雑談スレ等で聞いた情報を元に勝手な想像の上で書いたモノです。
 馬鹿妄想モノですので、軽く流していただけると幸いです。

  ◇

「さて、トドメだ。面倒かけさせやがって。俺も暇じゃねーつーの」
 壁に叩きつけられた満身創痍の白い少年――一方通行の目の前には一人の男が立っていた。
 木原数多。
 アレイスター直属の部隊の上位戦士でもある彼は口の端を皮肉気に吊り上げながら言う。
「テメェみてぇな、モルモットに"誰かが守れる"わけなんて事が出来るわけがねぇだろうが。さっさと死にな」
 彼が片手を上げると同時に銃口を構える金属音が響く。
 一方通行。その能力故に学園都市最強と呼ばれた彼も果たして『研究者』に勝つ事は出来なかった。
 悔しい、と思った。
 初めての感情だ。
 故に、苦しい感情だ。
 しかし、一方通行にはもう何をすることも出来ない。
 なにしろ指一本動かすのも辛い状態なのだ。
 鍛えていないどころか一般人よりもひ弱な肉体に己の能力を利用したカウンターを喰らい続けた結果。
 下手すれば骨の何本かは木っ端微塵になっているかもしれない。
 木原が手を振り下ろす。
 その光景が何故か遅く見える。
 これが死の直前の世界と言うものか、と脳の何処かが麻痺したのか何故か冷静に感想を述べる。
 そして、数多の弾丸が撃ち出され、
「―――ッ!」
 しかしてその弾丸は一方通行に届く事は無かった。
 あまりに遅い弾丸の到着に違和感を感じ閉じた目を開けば其処には一人の男が立っていた。
 青い髪の大男。
 耳に付けたピアスが妙に印象的だった。
「ガキ?……能力者か?」
「いやいや、ボカァただの通りすがりの一般人――」
 青髪ピアスは両手を挙げて楽しそうな笑顔で顔を両手に振りつつ、最後に口元を吊り上げる。

 パンッ、と空気の弾ける音が響いた。

 同時に爆発に巻き込まれるようにして吹き飛ぶ。
 何事か、と木原が振り向いた時にはもう遅い。
 何十といた筈の部隊は全員が壁に叩きつけられるか吹き飛ばされていずこかへ消えていた。
 しかし、木原はあくまで冷静さを失わない。
 元々『能力者』との戦いとはそういうものだからだ。
「さすがやねぇ。部下さん達が全部吹き飛ばされたってーのにまったく冷静やなんて」
 木原は眼前の敵を睨む。
 だが、青髪ピアスはただ口元を吊り上げて楽しそうに笑うだけだ。
「……テメェ……なにもンだ」
 木原の僅かに怒気の篭った声が漏れる。
 それだけ空間の空気が凍りつくような感覚に襲われる。
「ボク?ボクはやなぁ」
 青髪ピアスはニヒルに笑うと同時にポケットから折りたたみ式のテンガロンハットを取り出し被る。
 そして、彼は指先でテンガロンハットの鍔を押し上げるとポーズを決め、
「夜明けの包容力に満ち溢れたぁ!かっこショタも可なナイスガイや――ッ!」
「「は?」」
 一方通行と木原の気持ちが始めて通い合った瞬間であった。
 すなわち『何言ってんだコノヤロウ』である。
 青髪ピアスは構えもしないし飄々と立っているだけ。
 まさに威風堂々とした佇まい。
 
 アホな空気の中、戦いが再開されようとしていた。

  ○

 舌から鎖を垂らし、先に十字架を付けた黄色い修道女――ヴェントは倒れる人々を見つつ、表情を歪めた。
 すなわち疑の表情にだ。
「へぇ、この街にも私の術式を跳ね返せるくらいの魔術師が潜りこんでたってワケね」
 口調は軽いがその言葉には聞くものを窒息させるかのような重みが乗っていた。
 しかし、倒れ伏す人々の道の先に立つ人影はピクリとも動かない。
「巫女……ね。この国で盛んなタイプの魔術系統だったわね。まぁ、知ったことじゃないけど」
 ヴェントの言う通り道の先に立つのは巫女服に身を包んだ一人の少女だった。
 日本人形の様に前髪を切り揃えられた長髪に整った和の方面の美人とも言える顔立ち。
「一応聞いておくわ。名前を言いなさい」
 ヴェントが問うと同時に巫女は手に持った自分の身長ほどもある棒をクルリと一回転させる。
「良い事を教えて上げる。この私に『否定形』はない。わかった?」
 笑顔で問う。
 すると少女は六角形に削られた棒を右手で持ちつつ広げ、構えた。

900 名前:最終局面〜意外なキャラで攻めれば許されると思った〜 投稿日:2007/01/22(月) 23:49:15 [ 1eMHlw1w ]
「姫神。秋沙」
「良い名前ね。それじゃあ、死になさい」
 宣告と共に認識出来ない死が姫神と名乗った少女へと向かう。
 しかし、その死は少女の眼前で棒が振るわれると同時に消し飛んだ。
 一瞬だけ、ほんの一瞬だけヴェントの目が見開かれる。
 魔術を使用する仕草さえ見せずに自分の術式を消し飛ばしたのだ。疑問も沸くというものだ。
「言ったわよね」
「ごめんなさい。もう一度」
 一歩前に出るその行為だけでヴェントは姫神の目の前まで肉薄していた。
 しかし、姫神の表情は変わらない。
「『否定形』は無いって言ってるでしょう?」
「そう。聞いて無かった」 
 ヴェントの不可視の一撃がまたもや魔術を振るう様子すら見せずに腕ごと弾き飛ばされた。
 衝撃で後ろへ弾き飛ばされるヴェント。
 しかし、彼女の表情は――、
 
 玩具を見つけた子どもの様に楽しそうな笑顔だった。

「チッ、まったく一晩でこの街を落とさなきゃいけないっていうのに――」
 彼女はジャラリと舌に付いた鎖を揺らすと――、
「おもしろすぎるもの、見つけちゃったわ」
 本当に楽しそうな顔で獲物を狙うかのように姫神を見る。
 しかし、姫神は棒をクルリクルリと回すだけ。
「そろそろ。始める?」
「えぇ、始めましょう」
 死の匂いが吹き荒れる。
 クルリクルリと回る棒とジャラリジャラリと揺れる鎖。

 果たして、勝負の火蓋は切って落とされた。

  ○

「これが、私の自慢の拳だぁあああああああああ!」
「ぬわがががががば、ばかなこの私があああああぁ、ぽぺっ」
「馬鹿な!猟犬の『オレンジ』様が?!」 
「この能力者――流石にレベル5は伊達じゃあない!」
「さぁ、喧嘩よ!喧嘩よ!派手に往くわよ、この馬鹿ども!」

「あのー、美琴さん。上条さんはまたトラブルに巻き込まれている様な気がしてならないのですが」

 少年の虚しい声が戦場に響いた。


/*-----------------------------------------------------------------------

これが世界の選択か……。いや、マジゴメン。

901 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/23(火) 17:53:46 [ ev4mgmXA ]
ラ・ヨダソウ・スティアーナふいたwww

902 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/23(火) 20:13:21 [ hgLkS8PU ]
GJ
一つ突っ込むなら、木原さんは銃でなく金槌でトドメさそうとしてたっす。
姫神はともかく青ピはなにかやってくれそうだよなあ。
真・最強説まででてるし。

903 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/24(水) 10:41:51 [ TegtOY.c ]
そーいや俺、十一巻発売時辺りに青ピ聖人説とか言ってみた事あったな…

「高速移動…イギリス聖教のコと同じ系統か。でもそんなものじゃ私の術式は――!?」
「甘い!甘いでオバハン!!黒蜜堂のプリンより甘いわー!
 ぶっちゃけあっさり風味の杏仁の方がボクは好きやねんけどな?!」
「うるさい!さっさと死になさい!!」
「チッチッチ、人の話はきちんと聞かなあかんで?言うとくわ。あんたの攻撃はボクには一切効かへん。」
「なめやがって…私に『否定形』はないわ。『神の右席』ヴェルトに盾突いたことを後悔させてあげる!」
「死亡フラグ全開の自己紹介ありがとう。
 ボクは密教僧の端くれ、誘波。所属は――『上条勢力』。」

904 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/24(水) 17:59:27 [ Y07MTq3c ]
青ピの勇姿にご期待ください!みたいな?
結構マジで期待してるけど。ギャグ要員で終ってもまあそれはそれで。

さて、報告が遅くなりましたがwikiのサイドメニューに自作SSまとめへのリンクを追加してみました。
「余計なお世話じゃボケ」って方は意見箱にでもこっそり書いといてください。外すんで。
ちなみにA−Zのリンク中にもそのままになってます。

905 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/24(水) 18:04:51 [ .hPy8fgY ]
『じゃあ、今晩俺と付き合ってくれないか?』
オルソラの頭の中で何度もこだまするこの台詞・・・いつものような天然な
独自の思考回路を持つ彼女もさすがにあわてたのか高速思考で考えた。
(たしか・・・今日はインデックスさんは帰ってこない言ってましたしということは・・
今夜は私と当麻さんの二っりきり)
「だ、だめです。当麻さん。私はこれでも神に使える身なんでございますよ」
「いいじゃないか、オルソラ。神に仕える身でもたまには羽を伸ばさないと」
顔を真っ赤にしながら、なんとか声を出すオルソラに上条は屈託のない笑顔をしながら話しかける。
「それとも、オルソラは俺にお礼をされるのは嫌なのか?」
「・・・えっえっと・・・」
少しシュンとした表情で話す上条当麻の姿を見た瞬間彼女の中にあるシスター
としてのなにかがボロボロと壊れ始めた。
(・・・今晩俺に付き合ってくれ・・・それって・・・)
オルソラは真っ赤になる顔を必死で隠そうと手を頬に当てて後ろを向いただが、人と
いうのはそういう行為をするときに限って余計なことばかり思い出してしまう。
(当麻さんって以外に筋肉質でございましたのよね・・それにあの手で抱きしめられた・・・)
(主よこのおろかな私をお許しください)
「・・・わかりました。わっ、わたくしこっ・・今晩当麻さんにお付き合いいたします・・・」
視線を下に向け女の子座りで両膝の上に握った拳にぎゅっと力をこめたオルソラは答えた。
「そっか、じゃあ今晩の晩飯は俺のおごりな!」
「ちょっと、遅くなるかもしれないけど。大丈夫ちゃんと帰りは俺がホテルまで送るからな?」
「じゃあ、ちょっと待ってな仕度するから」

906 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/24(水) 18:39:59 [ .hPy8fgY ]
学園都市内の登校路・・・
道の真ん中を歩くセーラー服に身を包んだ美しく長い黒髪を持つ美少女
が歩いている。セーラー服に包まれていても近頃の日本女性からほとんど
消え去った和の雰囲気を漂わす少女が夕暮れの町を歩く姿は一昔前の
日本の小説の挿絵を連想させるような光景だった・・・だが。
くー!
突如、その風景の中心に存在した少女は道の真ん中でお腹を鳴らした。
その音で、今までその場に包まれていた空気は一瞬で崩壊し少女は
鞄で顔を隠し近くにいた人たちの視線から恥ずかしそうに逃げていった。
近くのコンビニの方へ走っていく。
「ハアハアっ・・・ここまでくれば大丈夫・・・」
近くの角を曲がりそこにあったコンビニの中へ少女は駆け込んだ。
彼女の名前は 『姫神 秋沙』非常に希少な『吸血殺し(ディープブラッド)』
という能力を生まれつき持つ少女である。現在はその能力を封じ担任である
小萌先生の家に居候している。
「お腹すいたな」
彼女はいつもの無表情に近い顔に戻るとそうつぶやいた。
入ったコンビニの中では、グツグツと煮えるオデンの香り 蒸し器の中でアツアツに蒸された
肉まんをはじめとした食欲を誘うさまざまな香りがまるでオーケストラでも奏でるかのように
彼女の空腹感を増すために香りのハーモニーを奏でている。
その香りに耐えられなくなった彼女は、制服のポケットから財布を取り出し中をのぞいた。
だがそんな彼女を待っていたのは無常な現実だった。

907 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/01/24(水) 18:50:22 [ .hPy8fgY ]
>>870です。
えっと、三人目の女の子『姫神 秋沙』の登場です。(予想が当たった人はいるかな?)
最もキャラが掴みにくい娘出して大丈夫かな・・・書けるかなと不安になりましたが
なんとかがんばって書きます。

>>オルソラ
ちょっと、ばかり私の書いているオリジナル小説のキャラの一部を混ぜて動きやすくしました。
上条さんの発言や行動にドキドキしているときはこのモードで行こうかと思っていますので
原作とキャラが違うとか言わないでください。

>>上条さん
えっと、本人はただ食事をおごってオルソラをホテルまで送って帰って宿題するか
ゲームでもしよう感覚で現在動いています(笑い)。

908 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/24(水) 19:34:20 [ 1ae1CWZs ]
SSまとめ@Wikiに
灰姫演技と打ち止めと座標移動の最新話まで追加

ただ、「打ち止めと座標移動」の章区切りがどこだか判らなかったので
1000行を目安にして適当に分割しました。

909 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/24(水) 21:50:53 [ 4lrQBoaU ]
おお、お食事券の続編キター!
GJですよ。

910 名前::【とある打ち止めと座標移動】の672 投稿日:2007/01/24(水) 23:43:35 [ Ck8XTEyo ]
( ゚Д゚)……。

(゚Д゚)<姫神にスポットライトが!
というわけで、ぐっじょぶ!おでんの表現方法と姫神の財政に吹いてから泣いた。

そして、SSLinkへの追加の件については最大限の感謝を。
しかし、ここで一つ告白が有ります……【とある打ち止めと座標移動】は打ち切りとなりそうです。
強いて言うならば俺達の旅はまだ始まったばかりだED。
理由は12巻との整合性を取る事が不可能になった事と、一方通行が大覇星祭で出回っていたのを見逃した事。
IFの物語にすればなんとかなりそうですが……それでも無理が出てくるというものでして。
そして、なにより速さが足りない。
もとい、グダグダしすぎ、という事が一番の原因かもしれません。

ともあれ、そんなわけでリテイク版【とある打ち止めと座標移動】を書きたいと思っているのですが……。
最初から起こしなおす事になると思うので登場人物やストーリーの進み方が変わって全く別物になる可能性が有ります。
せっかく纏めてくださった>>870氏には、大変申し訳ありません。
リテイクし過ぎですね。うぅむ……なにはともあれ、長文失礼いたしました。

大変なご迷惑をおかけしたことに謝辞を捧げつつ……よろしければ、以後もこの馬鹿を宜しくお願いいたします。
それでは。

911 名前:908 投稿日:2007/01/25(木) 00:28:00 [ XfwNFBL6 ]
>>910
まとめ作業自体は1時間も使ってないので
気にしないでください。

まとめWIKIって改行コードを別途入力しなくても
自動的に改行してくれて楽々でしたから。

912 名前:とある魔術の禁書目録外伝〜僕たちの聖杯戦争〜 投稿日:2007/01/28(日) 10:22:33 [ Mp6gs.lI ]
注意書き

題名からも分かるようにこれは型月のFate/stay nightの設定をトレースしています。
そういうのに嫌悪感を催されるかた、またこういった作品を見るに絶えない方はズバッと飛ばして、
他の書き手さんの素晴らしい作品をご覧になってください。
また、この作品は文構成がかまちーでもキノコでもないっぽいです(どっちかといえばキノコより)。
その辺りをご理解のうえ、かつこのようなくだらない作品に目を通していただける優しさがあれば幸いです。

それでは次からスタートします。

913 名前:とある魔術の禁書目録外伝〜僕たちの聖杯戦争〜 投稿日:2007/01/28(日) 10:25:56 [ Mp6gs.lI ]
プロローグ
1-(1)

とある日曜日の朝。異変というほどの異変でもないが、自分の体に異変が起きたと感じたのは今朝眼が覚めてからのことだった。
「何だ、コレ?」
少年、日本人特有の黒髪をツンツンに逆立てているごく普通の高校生である上条当麻は自分の左手を見つめながらポツリと呟いた。
「刺青?」
上条の左手に見えるのは薄赤色の紋章のようなものだった。曲線が三本絡み合ったようにデザインされたソレはくっきりと一般人上条当麻の左手甲に刻まれていた。痛み、というものは感じないものの先ほど、朝目覚めた時からドッシリと重い、何か表現しがたいものを感じる。上条はこの奇怪な紋章から妙に嫌なものを感じたが、体の他の箇所には別段いつもと変わったところはなく、むしろいつもより快調である。
「・・・・・・」
上条はいつものように起き上がり、いつものように居間に向かう。それはいつもと変わらない朝の光景。何ら変わらないはずの変わりばえもしないくだらない毎日だった。だが、何かがいつもと違う。居間には腹を空かせてグゥグゥ言っている銀髪シスター少女インデックスはいるし、朝の日差しだっていつもどおりだ。だけど、そのただひとついつもと違う違和感だけが妙に上条当麻の気に掛かる。何となく窓から外を眺めてみるが、これもやはり異常はなし。頭の中に残る妙な違和感を残したまま、テーブルで項垂れるインデックスの為に五枚百五円の食パンを手にトースタへと向かう。二つの穴にそれぞれ食パンを一枚ずつ投入すると、上条はインデックスと向かい合うようにして席についた。
「とうまぁぁぁ、お腹減ったぁぁぁぁぁ」
顔を突っ伏したまま声を上げる食欲魔人に半ば呆れつつ、声を返す。
「開口一番ソレか。っつか、お前はもっと我慢ってもんを覚えるべきだ。うん。大人になったら困るぞ。うん。」
「我慢したもんっ!少なくとも十分以上は我慢したもん!!」
「アホかっ」
と、ここで吹き飛ぶ二枚の食パン。まるで図ったかのように上条とインデックスの皿にいい感じで焼けた食パンが滑り込んでくる。よく分からないが、昨日この部屋に届けられたソレはマイクロマニピュレーターとかいう超小型精密機械を内包した学園都市製の新モデルで、何やら熱源やら空気の歪みやらを感じて皿の位置を識別、その位置にめがけて寸分の違いもなく射出するとか言うとんでもなく高性能でとてつもなく無駄な家庭用品だった。どういうわけか、上条の部屋にはこういった新製品が増えている。いや、理由も何もない。高性能トースタやら全自動識別ドラム型洗濯機などの学園都市製マシーンの数々は全てイギリスの『必要悪の教会』から送られてくるものだ。しかも、宛先は『神裂火織』か『ステイル=マグヌス』である。何やら必要悪の教会のトップがこういったものをお近づきの印に大量に貰っているらしく、溜まっていらなくなった品々を神裂などの下の人間に回し、さらにそこでも溜まった製品が何故かこの家に運び込まれてくるのである。昨日などはステイルから意味不明な選挙の時に使うような巨大ダルマが送られてきてその処分に困ったものだ。全く、一連の事件でここの住所を教えたのは甚だ不幸だと上条当麻は切に理解した。
「む、このパンの焼き応えはピッタリかも!カリカリっとしてて、中はフワッとしてる!!」
言われて一口かじってみる。ふむ、なるほど確かに絶妙な感じに仕上がっている。これはこれで中々得をした商品なのかもしれない。無論、タダならの話だが。
「あ、そだ」
上条は思い出したように言葉を放つ。もちろん、その矛先は目の前の少女だ。上条は右手で持っているパンをひとまず皿に置き、左手をテーブルの下から出して真中辺りに伸ばしてインデックスの目に入るようにした。インデックスは気づいているのか、いないのか幸せそうに食パンをハムハムとかじっている。

914 名前:とある魔術の禁書目録外伝〜僕たちの聖杯戦争〜 投稿日:2007/01/28(日) 10:27:56 [ Mp6gs.lI ]
「今朝、これが急に現れたんだけどさ、お前何か分かるか?」
直球で尋ねる。もとより、他に聞き方はない。インデックスは気だるそうにパンから口を離し、モグモグしながら上条の左手の紋章をジーッと見つめると、少しウーと唸ってから突然
―― 有り得ないものを見たかのように驚きに目を見開いた。
それは驚愕と言うよりは困惑。インデックスは思わず手にあったパンを落とし、上条の左手を両手で掴んだ。上条に理由は分からないが、その口元が小さく震えている。と、訳の分からない上条はインデックス以上に混乱していた時
「令・・・呪・・・・?」
と唇同様に震える声でインデックスはそう小さく呟いた。
「は?れいじゅ?」
聞きなれない単語だった。もちろん、その単語の響きからは穏やかな風情など感じない。上条は先ほどのインデックスの剣幕に未だに心臓をバクバクさせながら怪訝な表情で目の前の少女の回答を待った。
「令呪。聖杯戦争におけるマスターの証であると共に、付き従えるサーヴァントに与える三回だけど絶対命令権」
「は?何、聖杯?マスター?サーヴァント?」
ますます訳の分からない上条をよそにインデックスは先ほどの興奮のままに独り言のように解説を続ける。
「聖杯戦争っていうのは、十年ほど前に日本のある都市で行われた聖杯を巡る七人の魔術師の争いのことだよ。七人の魔術師はそれぞれマスターとして七つのクラスに割り振られたサーヴァントを一体使役するの。そして、サーヴァント同士あるいはマスター同士で殺しあって最後の一組になった人が聖杯の恩恵を手に入れる。そういう争いなの」
全く訳が分からない。当然だ。上条には聖杯が何かも分からないし、魔術に関しては米粒ほどの知識しか持ち合わせていない。それなのにこんな突拍子もない話をされて理解できるはずがないのだ。そのようなことも分からないのかインデックスはさらに説明を続けている。

915 名前:とある魔術の禁書目録外伝〜僕たちの聖杯戦争〜 投稿日:2007/01/28(日) 10:29:34 [ Mp6gs.lI ]
「ちょっと待て、インデックス。さっぱり分からない」
そんな上条の制止を聞いてやっと上条の混乱の表情を理解したのか、インデックスは勢いよく話し続けていた口をポカンと開けて上条に目を向けると困ったように目を泳がせた。
「コレが何なのか知ってるのは分かったけど、そんなに一気に話されても分かんねぇよ。最初から、一般人が分かるように説明をお願いしますよいんでっくすさま」
それを聞いたインデックスはフゥと呆れたように溜息をつくと、さっきよりも落ち着いたいつもの口調で空いていた口を紡ぎ始めた。
「えぇっとね、まずは聖杯の説明からしたほうがいいのかな?」
コクリ、と頷く上条。
「とうまはメシアが磔にされて処刑されたのは知ってるよね?その時にメシアの血を受けたのが聖杯の始まりなの。その後聖杯は理想郷(アヴァロン)へ渡り、行方は不明になった。だから伝説のアーサー王とかがその在り処を掴もうとしていたんだね」
「? 結局その聖杯ってのはただの器なんだろ?だったら、なんでそんな殺し合いで奪い合う必要があんだよ?」
「分からない?聖杯はあのメシア、キリストの血を受けた杯なんだよ?何も魔術的な意味がないのはどう考えてもおかしいよ。だから、当然聖杯にも魔術用具、霊装としての能力がある。全ての欲望を汝のままにする、っていう最高にして至上の魔術霊装としての効果があるの。だから、聖杯戦争では血眼になって魔術師同士は殺しあうんだよ。魔術師だって結局は人間。欲望なんてない人間なんて存在しないもん。だから、聖杯戦争は起こる。けど・・・・」
「けど?」
決まりの悪い声を発したインデックスに対して訝しげな表情で上条は聞き返す。
「聖杯戦争は十年前の第五回を持って完全に終結したはずなの」
「は?」
「理由は分からないけど、恐らくその時の勝者がその街の聖杯を破壊したんだと、思う。だから、その街での聖杯戦争は起こるはずがない・・・・ないんだけど」
「ど?」
「聖杯っていうのは一つしか存在しないわけじゃないんだよ」
「はい?」

916 名前:とある魔術の禁書目録外伝〜僕たちの聖杯戦争〜 投稿日:2007/01/28(日) 10:30:19 [ Mp6gs.lI ]
それでは先ほどのインデックスの説明と矛盾する。さっきの説明の全てを当然理解したわけではないが、話からすれば聖杯とはキリストの処刑時の血を受けたものだ。ならば、それは一つにしてオリジナル。贋作などあってはならない至高の宝物のはずだ。それならば、その聖杯が破壊(なんとも罰当たりな話なようではあるが)されたのなら、その聖杯戦争とやらは二度と起こらないはずである。
「確かに本物の聖杯は一つだけだよ。でも、各地には聖杯の真似をした器が存在するの。例えば、スペインのカタルニア美術館にはそのレプリカがあるでしょ?だから、聖杯っていうのは一つとは限らないんだよ」
「偽者に欲望を叶える力なんて存在すんのか?それなら、その美術館は今頃、大晦日の神社並に参拝客で溢れてるだろ?」
「うん。もちろん、カタルニア美術館の聖杯には願望機としての力なんてないし、他のレプリカだって本物ほどの力はないよ。だけど、考えてみて。あの聖杯のレプリカだよ?たとえ、偽者にしたってキチンと交霊の手順と、キチンとして魔方陣さえ描けば人一人分ぐらいの願望機としてなら十二分に作動するよ。だから、別に他の聖杯があったって不思議じゃない。」
なんとなくは上条にも理解できた。だが、まだ自分の身に関して不可解な点はいくつも残っている。
「OK。聖杯についてはだいたい分かった。けど、なんでその聖杯戦争と俺の左手の・・・令呪だったっけか?が関係あるんだよ?」
「十年前の聖杯戦争で召喚された聖杯は割とちゃんとしたモノだったらしいんだけど、人一人しか願いを叶える力がなかった。ちなみに、その聖杯の降霊に関わったのは三人。三人にしてみれば当然、三人とも願いを叶えられると思っているわけだよね。そんな時に、一人しか受け付けませんとか言われたら争いが起きるのは当たり前でしょ?だから、二回目の時にはいくつかの制約を取り付けた。一つは聖杯を争って七人の魔術師が争うこと、そしてその魔術師、マスターの下に聖杯が呼び出した英雄の霊、つまり英霊をサーヴァントとして従えさせサーヴァント六体分の魔力と引き換えに聖杯を降霊させるような仕組みにしたの。そして、その聖杯戦争に参加の許可状みたいなものがとうまの左手にもある令呪なの。その刻印が刻まれて初めて魔術師は聖杯を争う七人の一人になって、サーヴァントとの契約権を行使・・・・・」
と、そこでインデックスの解説は打ち止めとなった。上条が大きくかぶりを振って「いやいやいやいやいやいやいや」と全力で何かを否定したからである。
「俺、魔術師じゃないし。だいたい、その話から考えるとそのシステムの聖杯戦争は十年前に終わってるんだろ?俺の手に令呪が現れるのはおかしいじゃねぇか」
上条の反論にインデックスはちょっと眉を顰めると、
「聖杯戦争は別に魔術師じゃなくても魔術の素養があればマスターになれる、よ。実際に十年前にはそんな人もいたらしいし」
「じゃぁ、何で十年前の聖杯戦争のシステムが俺の体に再現されてるんだよ?そうだ、ちょっと考えればおかしいぜ。その令呪だって聖杯だって魔術なんだろ?だったら、真っ先に俺の『幻想殺し』が発動するだろ。結界や体に及ぼす異能なんかには特に敏感に反応するはずだぜ?コレ」
上条は右手を顔の前に持っていく。数々の戦いで傷つき、千切れ、蘇った歴戦の友である。
「それは・・・・」
インデックスが口ごもった。上条に気圧されたのかは分からないが顔には困惑の表情を浮かべている。だが、何かを言いたいらしく口元ではモゴモゴと空気が動いていた。そして、上条は聞いた。とてつもなく意外な一言を。インデックスの口からひねり出された言葉。それは、
「分かんない」
であったのだ。詳しい解説を予想していた上条にとってこれは不意打ちのほかにない。一応、期待して待っていた回答がこれでは拍子抜けもいいところだ。
「なんだよ、ソレ。結局、分かんねぇのかよ」
少し力を込めた声を返す。別に怒っていたわけではなかったのだが、上条が怒っていると感じたのかインデックスはその言葉に対してキッと上条を見据ええると、大きく口を開いて怒気混じりに言葉を発し始めた。
「だから、私がとうまの左手に現れた令呪を見てびっくりしてたんだよ!だって、有り得ないもん!!終わった聖杯戦争が再会されて、しかも変な右手持ってるとうまに令呪が刻まれるなんて。どうかんがえても、有り得ないでしょ!!それなのに、どうしてとうまは私の丁寧な説明を・・・・・」
「わ、分かった。分かったから、その歯をむき出しにしてギリギリするのはやmrdきvjbvsjb;lさ」
その直後、部屋に声にならない悲鳴が響いたのは非日常な今日の朝において割かし日常的な生活の断片だった。

917 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/28(日) 12:10:25 [ rbO5k83I ]
この設定を思いついた>>912に最大級の敬意を。

918 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/28(日) 12:26:35 [ ILyLRWpM ]
面白そうだ。
でも鯖はどうするんだろ?
大差ないかも知れないが、個人的にはオリキャラ出されるよりは型月キャラ出して欲しいと思うわけだが

919 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/28(日) 13:57:36 [ A8WHn7b6 ]
おぉ。これは面白そうだ。
聖杯っていうのを簡単な説明で終わらせないで禁書っぽく説明させているのがなんとも。
ともあれ、GJ!
続きを期待しつつwktkしてるぜぃっ。

920 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/28(日) 17:59:36 [ iy9rNDio ]
あー>>912よ。

もっとやってください。
Fateと禁書のクロスは何遍も妄想してたんで、俺的に蝶サイコーっす。
そっか当麻マスターか。
鯖は何と相性いいかな……熱血系だからランサーとかか?
猛犬の兄貴でも薔薇の二槍流でも相性は良さそう。
英霊・神浄討魔だったら一応予想のナナメ上ではある。

921 名前:とある魔術の禁書目録外伝〜僕たちの聖杯戦争〜 投稿日:2007/01/28(日) 18:27:29 [ Mp6gs.lI ]
まさか、このような評価がいただけるとは光栄の極みです。
拙い文章で申し訳ありませんが、皆さんの期待に添えるような作品を書いていきたいです。
以下プロローグの続きです。

――――― プロローグ 2 ―――――

その頃、遠く離れたロンドンでは二つの同じ儀式が同時のタイミングで行われようとしていた。一箇所は『必要悪の教会』の儀式用に設計された巨大な礼拝堂。一箇所はランベス宮の最大主級(アークビショップ)の私室。広さ、規模は違えども両部屋を使用する二人の魔術師は共に真赤な魔方陣を描き、その中央に得体の知れない、強いて言えばアンティークにもならならないような骨董品を配置している。既に魔力は流し終わってあるのか、魔方陣はボウッと淡く光り、薄暗い部屋の中をほのかに照らしていた。礼拝堂で魔術を執行するのは赤い髪で長身の男だった。二メートルぐらいはあるだろうか、顔にはバーコードの刺青を入れ、指には十個の指輪。仮に彼が漆黒のローブを身に纏っていなければどうして彼が神父などと思うだろうか。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。」
虚空に語りかけるように瞳を閉じた神父は言う。頭がおかしくなるぐらいに記憶した文章をもう一度整理し、紡ぎだす。
「祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
声は誰もいない礼拝堂に静かに響いていた。
そして、もう一人別の場所で同じ呪文を紡ぐ魔術師がいる。鮮やかな金髪が腰の辺りで二重三重に折り返されている淡い橙のローブの女性である。色白でその壮麗な美はまさに流麗というにふさわしかった。彼女の口からも神父と同様に呪文が紡ぎだされていく。
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに伍度。ただ、満たされる刻を破却する」
神父の声と違って女性特有の甲高い声はただっ広い私室を反響して伝染していく。彼女もまた神父と同様に一人であった。
「告げる」
瞳を閉じ、体中を駆け巡る魔力の波長を感じながら頭の中で創造し、そしてソレらを幻想する。失敗は許されない。とある召喚の儀式。
「告げる、汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に。聖杯の寄る辺にしたがい、この意、この理に従うならば応えよ」
場所は違っても近しい、かつとても遠く遠く離れた魔力が絡み合う。やるべきことは共に同じ。だが、決して混ざりあうことない、英霊召喚の儀式。響く。染まる。大気が震え、ビリビリと風が揺れる。魔力が回路を駆け巡り、早く解放しろと悲鳴を上げる。意識を集中し、共に最後の一節に手を掛ける。
「「誓いを此処に」」
同時に召喚が行われているのは偶然か必然か、
「「我は常世総ての善と成る者」」
だが、今の二人はそれに気づこうはずがなく、
「「我は常世総ての悪を敷く者」」
ただひたすらに、己の魔力を練り上げる。
「「汝三大の言霊を纏う七天」」
ならば、そこに偶然と必然の境など不要ず。必要となるのは紡がれる幻想と創造される奇跡のみ。
「「抑止の輪より来たれ
―――天秤の守り手よ!!」」
瞬間、まるで台風のような突風がロンドンの街に襲来した。

922 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/29(月) 08:39:07 [ zWXRoBtk ]
詠唱に「シュバインオーグ」の名が出て来るのは遠坂の系譜だからだと思うのだが……
細かい所はさておき。食い合わせの悪い型月作品とどう組み合わせていくのか期待。



―――喜べ>>920。君の願いは、ようやく叶う。

923 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/29(月) 23:59:50 [ 351Dyc76 ]
こんなこと野暮なこと言いたくないんですけど最初は令呪じゃ無く聖痕では?
ああ、でもそれじゃ神裂のスティグマと被っちまいますか
まあ単純なクロスでは吸血鬼や魔術の原理に矛盾が出るんで刷り合わせを頑張ってください

924 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/30(火) 23:13:44 [ 5zZMOoiQ ]
っつーか、禁書ほど型月世界とクロスさせにくい作品はないんじゃないか?
多重能力、吸血鬼の存在、教会および埋葬機関について、etcetc
少し考えるだけで問題が山積み……摺り合わせようにも形自体が合わないみたいな

925 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/31(水) 00:35:37 [ 02rTWXPA ]
まあそもそもクロスものにカッチリ噛み合う整合性を求める方が間違いじゃないか?
かけはなれた設定部分はどちらかの作品に準拠する、くらいでも良いと思うよ。
それに舞台がFateなら、吸血鬼もデュアルスキルも埋葬機関も出てこないし。
 
世に存在するfate×武装錬金とかジョジョとかデモベとかH×Hとかに
比べればまだ全然つなげやすい方だと思う。

926 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/31(水) 06:47:22 [ 9l4cvBzw ]
設定をキッチリ決める必要は必ずしも無い

「面白ければそれが正義!!」

927 名前:とある魔術の禁書目録外伝〜僕たちの聖杯戦争〜 投稿日:2007/01/31(水) 13:05:09 [ Z8ZIX1O. ]
作者から

3日ぶりです・・・OTZ
黙っていましたが実は自分、受験生の為にあんまり急ピッチで書くことはできません。
週1か週2のペースで投下していきたいと思いますのでご理解のほどをよろしくお願いします。
以下、プロローグの3です。(つか、プロローグなげぇ・・・OTZ

―――― プロローグ 3 ――――
雨である。御坂美琴は雨が嫌いだった。感電とかそういった論理の話ではない。気分的に雨は嫌なのだ。理由はない。だから、朝から雨のこんな日曜日は特に大嫌いだった。こんな日は外に出るのも憚られる。傘を差すのも億劫だ。
「・・・・・」
携帯電話に目をやる。時刻は十時。開いてみれば待ち受けになっているとある高校生と御坂美琴のツーショット写真。九月末日に撮られたその写真を待ち受けにしてしまった理由は分からない。いや、正確には分かろうとしないのか。あの高校生の電話番号もメールアドレスも知っている。聞いた。というより、向こうから聞いてきて交換するしだいになった。だから、いつでも電話できる。携帯電話のシステムのペア登録だって彼と行っている。ボタン一つで電話は掛かる。ただ、それだけなのに名門中学のエース、御坂美琴はたったそれだけのことができないでいた。
「(っ・・・。どうして、こんな事一つできないのよ、私はッ!)」
そんな自分に自己嫌悪。どこまでも素直になれない自分。まったくもって腹立たしい。電話一つ掛けられないなんて、本当に自分で自分に電撃でもぶつけてみたい気分になる。電話を持つ手がワナワナと震えている。ボタンを押す。表示されるのは上条当麻と登録された電話番号。あとは電話の『掛ける』ボタンを押せば電話は掛かる。美琴は震える手のままで電話が描かれた掛けるボタンを押す。携帯電話を耳に持っていく。それだけの動作にひどく時間が掛かっているように感じた。再び、自己嫌悪。
トゥルルル、トゥルルル。無機質に鳴る呼び出し音。そして、呼び出し音が何回か鳴ったあと、ガチャ、という音と共に聞きなれた声が聞こえてきた。
「はいー、上条だけど?」
「っ!」
慌てて電話を切る。電話の向こうではツー、ツーという虚しい音だけが響ている。
「(ちょ、馬鹿。何で切っちゃうのよ私)」
再び美琴が上条の電話番号を表示させダイヤルボタンをプッシュしようとした時、ブルブルブルと美琴の携帯電話が震えだした。もちろん、表示されている名前は上条当麻の四文字。おそらく、突然切れた電話に不信でも覚えてリダイヤルしてきたのだろう。美琴は再び震える手でダイヤルボタンを押す。携帯電話を耳に持っていけば、当然ながら先ほどと同じ声が聞こえてきた。
「おーい、御坂?ど・・・」
ブツッという音。再び電話回線は遮断されたのである。もう、なんというか相手にしてみれば嫌がらせかギャグとしか受け取れないなんとも奇怪なお嬢様の行動であった。
結局、そんなことが四、五回ほど続いた後美琴は学校の用のノートを切らしている事に気がついて嫌々ながらも街に出た。適当に服を引っ張り出してパジャマから着替える。取り出したのは長袖の白いセーターに黒を基調としたミニスカートだった。セーターはともかくミニスカートは寒いかな、と考えつつも美琴はコンビニに行くだけだからと手早く着替え終わった。しかし、着替え終わってはみたものの、やはり今はもう冬。やはり生足の冷えというのは相当なものだった。
「確か・・・ここに」
美琴はセーターとスカートを取り出したのと同じ引き出しから何やらゴソゴソと漁っていた。違うものをポイポイと引き出しの外に投げていくのはお嬢様として、いや年頃の女の子としてどうかとは思うのだがそこは気にしたらダメということだろう。
「あった、あった♪」
笑顔で美琴が引き出しから取り出したのは黒いタイツのように長い靴下であった。美琴は取り出した確かに防寒効果はありそうな長い靴下を慣れた手つきで穿いていく。スラリと伸びた足が黒い生地で覆われ際立っている様子はかなり魅力的に感じるが、本人は気にせず、黒いニーソックスを穿き終えた。
そんな訳で着替えを終えた美琴は学生カバンの中から財布を取り出すと、小走りに部屋を出て約二百メートル先のコンビニへ急いだ。雨はわりと小降りになっていた。

928 名前:とある魔術の禁書目録外伝〜僕たちの聖杯戦争〜 投稿日:2007/01/31(水) 13:06:12 [ Z8ZIX1O. ]
一通り買い物を終えた美琴は店の外へ出た。雨はどうやら一時的に止んでいるらしく、道に溜まった水溜りに波は出来ていなかった。それはいい。ラッキー、と美琴は内心非常に喜んでいたから。だが、妙に変な気分がする。行く時には気がつかなかったが、あまりにもここが静かすぎるのだ。今日は日曜日である。しかも時間は正午のちょっと前だ。飲食店を探す学生などが一人ぐらいはいてもいいはずの通りは何故か今日は不気味なほどに無人だった。それでも、コンビニの中には人がいた。だから、無人というわけではないのだろう。
「・・・・・・」
自然と足が小走りになる。人間としての本能が今の状況を危険だと告げている。だからだろうか、脇道から突如として出現した突起物に気が付かなかったのは。
「っ!!」
気が付いた時にはもう遅かった。突起物の正体は薙刀のような槍のような武器の先端だった。その武器の所有者であろう人影は体を翻して美琴の背後へ回り込むと、両腕を掴んで背中へと回し例の得物を美琴の首へ近づけた。
「お前、誰だ?なんで、人払いの結界の中に入ってこれる?」
若い男の声だった。美琴は後ろを振り返ろうとしたが首を少しでも動かせば背後の男が持つ薙刀に触れてしまう。だから、美琴は振り向かずに言葉を発した。
「結界?何ソレ?だいたい、何?そんな物騒な武器振り回して。人を襲おうとか考えるんならさぁ、こんな白昼堂々と・・・・」
美琴の体から青白い電撃が放出される。御坂美琴は名門常盤台中学でただ二人、学園都市でも七人しかいないレベル5の一人である。その能力『超電磁砲(レールガン)』は最高速度が光速に達するほどの雷撃の槍である。無論、彼女の武器は雷撃の槍だけではない。落雷から微細な電磁波まで、電力が通っているものなら全て彼女の武器となる。そんなとんでも中学生が本気で能力を発動させている。空気中に放出された電気がバチバチと音を立てて怒り狂う。その矛先は当然背後の男だ。
「やってんじゃないわよ!!」
豪雷一閃。天空から落ちてきた一撃は無残にも男を直撃した。普通なら即死、または重傷である。戒めが解かれた美琴は怒りとそしてやりすぎたかも、と言いたげな表情で背後を見た。男の影は、ない。黒焦げになったとしても遺体は残るし、ましてあの雷撃から逃げられたとは思わない。そう、あの威力で思うほうが馬鹿げている。だからだ。だからこそ、レベル5御坂美琴は園光景が信じられなかった。結論から言えば男は生きていた。それも、無傷で。回避したのかは分からないが、それでも無傷というのはどう考えてもおかしい話だった。美琴の表情が焦りに曇っていく。だが、そんな美琴の焦りを他所に薙刀の男は、ハハハハと大きな笑い声を上げると、なるほどな、と勝手に一人で納得した。美琴が怪訝な表情をしていると、男は笑みを浮かべて美琴に応えた。今気づいたが目の前にいるのはやはり少年としか表現しようのない男である。しかも、カッコイイというよりは美しいと表現すべきの。そう、美少年という言葉が相応しい人物だった。だが、格好が奇天烈すぎる。体には青銅の鎧を身に纏い、頭にはサークレットのように頭を一周する輪を付けている。靴の代わりに履いている草履は今の季節としては有り得ないものだし、何より革の鎧に付けられたマントがいかにも奇天烈の象徴であった。
「いや、悪ィ。あんたも魔術師だったんだな。なるほど、それなら人払いの中に入ってこれるのは納得だよ。で、あんたは何のサーヴァントのマスターなわけ?見たところ、誰も連れていないようだけど」
「は?何?・・・えっと、とりあえず頭大丈夫?ていうか、何その格好。コスプレ?」
魔術師やらサーヴァントやらマスターやら訳の分からない言葉が並ぶ。美琴の訝しげな表情はまだ崩れない。

929 名前:とある魔術の禁書目録外伝〜僕たちの聖杯戦争〜 投稿日:2007/01/31(水) 13:09:48 [ Z8ZIX1O. ]
「なぁ、あんた。誰のマスターでもないってなら俺と契約してよ。マスターが死んじゃってさ、魔力の供給が断たれてんのよ。あと三時間ほどしたら消えちまうんだけど、どうかな?」
「聞いてねぇし。ていうか、契約?あんたどっかの業者の回し者?悪いけどセールスはお断り。」
訳の分からない表情で次の雷撃の槍の装填を始める。装填と言っても電気を練り上げるだけだが・・・・
「? 話が噛みあってねぇな・・・・じゃ、とりあえず一つ聞くけどあんたマスターじゃないの?」
「だから、何よソレ?」
それだけ聞くと男は安心したのかフゥと息を漏らし、笑みを浮かべたまま美琴の方へと向かって歩き始めた。もちろん、これに慌てたのは美琴である。怪しげな笑みを浮かべて向かってくる男に雷撃の槍を放つ。一発目。男は余裕の表情で音速を交わすと、再び美琴との距離を詰めた。二発目。今度は交わすまでもないと判断したのか、雷撃の槍が放たれても動こうとしなかった。ただ漫然とした足取りで確実に距離を詰めてくる。雷撃の槍が男に迫る。だが、男は気に留めない。雷撃の槍が男に当たる。
「あぁ、無駄なんだわ。『アテナの楯』って知ってるかな?まぁ、知らなくてもいいや。その楯がこの時代でいうアレだ。えーと、遠距離狙撃系の能力を全てシャットダウンしちまうのよ」
言うやいなや、美琴の放った雷撃の槍は男に直撃した瞬間に最初からなかったかのように掻き消えてしまった。
「っ!!何を訳の分からないことをッ!!」
再び掃射される雷撃の槍。今度は確実に男を仕留めようと全力で殺しにかかる。明確な殺意を込めた一撃。だが、それすらも・・・・
「無駄だって。俺を殺したいなら近接戦で来ないと。ていうかさ」
と、男が軽く口にした途端地面が弾け飛ぶ。次の瞬間、美琴は男に地面に押し倒されて両腕をつかまれていた。さきほどと違うのは美琴が仰向けである点。さっきと違って今度は男の顔が直視できる位置にある。男はやはり見れば見るほど美少年で、吸い込まれそうな真赤な瞳、あまりにも整いすぎた端正な顔立ち。そして、何よりも美しいと感じるオーラがその男の周りからは溢れていた。
神がこの男を創るべくして創ったとしか考えられない、それは完璧な『美』だった。だが、今の美琴にそんな事を考えている余裕はない。さっきの出来事を美琴は理解することもできなかった。
地面が弾け飛んだ瞬間、美琴は押し倒されていたのである。男との距離はすでに目と鼻。美琴は我に任せて雷撃の槍を放つも、やはりその攻撃は男をゆるがすこともしなかった。

930 名前:とある魔術の禁書目録外伝〜僕たちの聖杯戦争〜 投稿日:2007/01/31(水) 13:11:16 [ Z8ZIX1O. ]
「あんた契約、嫌なの?」
「も、もう分かったから!!契約でもなんでもするから早く放しなさいよ!馬鹿ッ!!」
焦りと恐怖に染められた声で美琴は言う。だが、男はソレを意に返さない様子で嬉しそうなこれまた極上の笑顔で受け取ると。
「そうかい。そいつはありがたい」
と一言言っただけで、

―― 美琴の唇に自分の唇を重ねた

舌と舌が絡み合い男の唾液が美琴の口に流れ込み、クチュクチュと卑猥な音を立てる。何かと何かが繋がる音がする。それでやっと自分の身に何が起きたのか気づいた美琴は目を見開いて、
思い切り上下の歯を振り下ろした
「dsfjしぇjsdbjvkljbklaufh」
声にならない悲鳴。その衝撃でわずかに怯んだ男は美琴の手を放し、自分の舌が繋がっているかを確認してから目の前で今にも泣きそうな顔をしながら咳き込んでいる少女に目をやった。
「いてぇじゃねぇか!馬鹿!近接戦は痛いんだよ!!」
そんな男の冗談めいた怒気に対して美琴は全身の電気はバチバチと暴走させたまま殺気を込めた目線で男を威圧する。
「うるさい、うるさい、うるさいっっ!!なんてことしてくれんのよ!あんたは!!契約とか言っといて、結局こういうのが目的なわけ!!??」
すごい剣幕で暴れまくる美琴と電撃。その二つを呆れながらに見ていた男は、
「・・・・・えーと、もしかして、初めて?」
「っ!!」
それが引き金だったのか、少女の怒りの雷撃が静まっていく。変わりに聞こえてきたのは美琴の泣き声であった。まぁ、初めてなら当然と言えば当然だが何も契約程度で泣く事はないだろう、と男は思っていたが美琴にしてみれば訳の分からないまま半ばレイプ気味にファーストキスを奪われたのである。泣きたくなるのは乙女として当然のことだ。いっこうに泣き止まない目の前の少女にさすがに男は慌てたのか、ソッと泣きじゃくる美琴の前に膝を折ると、優しさ溢れる口調でこう言った。

「初心だな、あんた。いいじゃねぇか、契約のキスぐらい」

その次の瞬間、男が五メートルぐらい吹っ飛ばされたのは言わずもがなの話である。
どうして彼女の周りにはこういう女心を知らない馬鹿が多いのかと思うと嫌になる。口の中にはまだ男の唾液が残っていた。
だが、美琴にはどうしようもない。ただ、起き上がりコッチに向かってくる馬鹿をどうやって殺そうかと今はひたすら悩むレベル5のお嬢様であった。
そして、彼女が契約したのが最強クラスのランサー、ペルセウスであることを知るのはしばらくしてからのことだった。


―――― プロローグ 完 ――――

つか、遊びすぎましたね。すいません。

931 名前:とある魔術の禁書目録外伝〜僕たちの聖杯戦争〜 投稿日:2007/01/31(水) 14:03:26 [ Z8ZIX1O. ]
>>928
修正。革の鎧→青銅の鎧

932 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/31(水) 20:28:21 [ U3BtqfnQ ]
皆、忘れてるかも知れんが、禁書と型月のクロスは
>>758=>>744
が一度やっているんだぞ?
だからどうだというわけではないんだが、>>912>>744は一緒の人?

933 名前:■■■■ 投稿日:2007/01/31(水) 21:13:55 [ ljKo7Wdc ]
>>932
単純に窓の向こうから来るのが増えたのでは?
 
 
>>912
成功した慎二とか連れてきて大丈夫かってもうマスター一人脱落してんのかまあ楽だわなというか俺の御坂に何をしやがりますか殺してもいいんだなテメェ―――!
 
 
……ごめん、取り乱した。続きも期待してます。
そうそう、>>932さんの指摘。同一人物なら一方に絞って書いた方が良いと思うヨ。

934 名前:744 投稿日:2007/01/31(水) 22:19:18 [ X6I.mGlQ ]
お久しぶりです皆様
DEEP BLOODは学業の合間を縫って鋭意執筆中です
なるべく矛盾を出さない設定を考えたり
書いている途中で話が飛んだりしているせいであまり話が進みませんが
諦めてはいません

>>912
GJです、私も負けないように頑張りたいと思います

>>932>>933
ID変わる前に言っておきますが、別人です
私には今ので手いっぱいなので他のは無理ですのでorz

935 名前:169 投稿日:2007/02/01(木) 10:15:22 [ fALIK4Ls ]
 上条当麻の右手には幻想殺し(イマジンブレイカー)なるチカラが宿っている。
 それが異能の力であるのなら、超能力でも魔術でも、神様の奇蹟(システム)すら問答無用で打ち消せる脅威の能力。
 しかし――胸中で毒つく。探し物には全く役に立たないチカラだ。
 上条は経験上、こういう場合には足を使うしかないと分かっていた。
 だが、間の悪いことに今は一端覧祭の最終準備の真っ最中。
「わぁっ! 化学部の特製染料缶がひっくり返った!」
「郷土研究会のオブジェも踏み抜かれてるわ!」
「あっちでは校長先生御用達の焼き鳥屋台が倒壊してるぞ!」
 廊下も校庭も、展示や出店に使うあれこれで溢れていて、うまく間を走り抜けようとしても腕がぶつかり足がぶつかり。その度に怒られ殴られ生傷まみれになりながらもしかし上条は止まらない。
 ひたすらに走る。
 走る。
 そうして走り続けて――いつの間にか中庭に戻ってきてしまっていた。気づかぬうちに校舎内は一周してしまったらしい。
 少女達を見つけられないまま。
「はぁ……はぁ……くそっ!」
 激しく動悸する胸を押さえる。
 落ち着け。冷静になれ。
 チリチリとうなじを焦がす原因不明の危機感を強引に飲み下す。
 だがほんのわずかに温度を下げた脳が弾き出してくれたのは、『そもそも彼女らがまだ学校内にいるとは限らない』という今さらの現実だった。
 思いついてしまったことを半ば後悔しながらも、上条は考える。
(小萌先生に頼んでセキュリティの記録を見せてもらえば……いやだめだ。今から先生を探して頼み込むのは時間がかかり過ぎるし、それで校内にいないってことだけわかってもあまり意味がない。第一ウチのセキュリティはインデックスにすらあしらわれるような代物だし――あ)
 ふっと。
 浮かんだ名前に閃きが走った。
 インデックス。
 サーシャと共に『灰姫症候(シンデレラシンドローム)』を捕まえる計画を立てていた彼女なら……?
 上条はばたばたと制服を探り、携帯電話を取り出した。あれだけ走り回ってよく落とさなかったと小さな幸運に泣きそうになる。
 ボタン一つで本体が開く。液晶に光が灯った。電話帳機能を呼び出して目的の番号を探す。
 五十音順の「あ」行――を素通り。
 次の「か」行をめくってめくって、ようやく見つけた。
 小萌先生。
 一端覧祭準備を円滑に行うために、吹寄が至急製作したクラスの連絡網の中に含まれていたのだ。しかし全員で携帯番号を教えあっている時に「あれー? 上条ちゃんは先生の番号知ってると思ったんですけどー。確か夏休みにかけてきたことありましたよねー?」「え?(何のことですか? とか言えねぇよなぁ)いやぁうっかり登録し忘れてて」「そうなんですかー。うっかりさんですねー。……あれ? そもそも上条ちゃんに教えた記憶がないような……」などという記憶喪失少年にとってはやばすぎる一幕もあったのだが。
 インデックスに直接電話しても、またつながらないに決まっている。だが今日に限っては、確実に電話に出てくれる人が彼女の傍にいた。
 ワンプッシュでコール。四回目でつながった。
『はいはーい。その番号は上条ちゃんですねー? 何かありましたかー?』
「小萌先生! すいませんけど緊急事態なんでインデックスに代わってください!」
『は、はいー?』
 切羽詰った大声が返ってくるとは思っていなかったのか、困惑気味な声が聞こえた。しかしそこは問題児ばかりを担当してきた歴戦の教師(つわもの)月詠小萌。状況は掴めずとも雰囲気を察してくれたらしく、すぐに聞きなれた白シスターの声が聞こえてきた。
『とうま? 私だけど。緊急事態って何? ……ま、まさかさっき見つけたお好み焼き屋さんが先行発売始めたとか!?』
「面倒だからツッコミなしで結論だけ言うぞ。『灰姫症候』が見つかった」

936 名前:169 投稿日:2007/02/01(木) 10:16:02 [ fALIK4Ls ]
『――――――――っ』
 電話越しに緊張感が共有されたのを感じる。
 一呼吸を挟んで、インデックスは真剣な声音で問いかけてきた。
『とうま。詳しく話して』
 上条はさっきまでに起こったことをかいつまんで説明した。
 インデックス達が教室を出た後、言祝栞に首根っこを掴まれて図書室に連れて行かれたこと。何故かそれにサーシャもついてきて、三人でフリマの仕度をしていたこと。言祝とサーシャの手が偶然重なった瞬間、『灰姫症候』の魔力を感知したらしいこと。最後に、どういうわけかサーシャが言祝を気絶させて、図書室の窓を破壊して飛び出していってしまったこと。
 口に出して話している間に、上条は自分で違和感のようなものを感じた。
 だがまずは状況説明が優先だ。一通り語り終えるのに二分程度かかった。
「……こっちから話せるのはこんくらいだ。インデックス、あいつらがどこに行ったかわかるか?」
 返答は少し遅れた。
『予想はつく、けど』
「本当か!? なら」
『でも、とうまはそれを聞いてどうしたいの?』
 え? と意気込みかけた体が押し留められる。
 携帯電話の向こうから聞こえてくる声は、どこか焦りを隠しながらもひどく平らだった。
“まるでそれが真実なんだと自分に言い聞かせているように”。
『サーシャに与えられた任務は「灰姫症候」の確保と、それを学園都市に放った魔術師の捕縛あるいは撃破だよ。そのためにあの子は私達の所に来たんだから。探索の魔術を使う時に傍にとうまがいたら、成功するものも成功しないでしょ? だからとうまを置いていったんじゃないかな。それなら追いかけて追いついても、サーシャには迷惑なだけだよ。それでも行くの?』
 しかし、言われてみれば彼女の言い分はもっともだった。
 幻想殺しは上条の意思に関係なく、触れた『異能の力』を消し飛ばしてしまう。『灰姫症候』の宿主、または魔術に使う道具や陣に小指がかすっただけでも台無しにしてしまいかねない。
 偶然訪れた二度とは無いチャンスを守り通すためにサーシャが飛び出していったのなら、上条が動くことは害にこそなれ利する所はない。
「――――――“いや”」
 だが、上条には別の確信があった。
「もしそうなら俺に一言『離れていてくれ』って言えばいいだけだろ。ステイルが姫神の治療をした時だってそうだったしな。事情は分かってるんだから、触るなって言われたら触らない。ついてくるなって言われたら素直に待ってる。第一、窓ぶち破って飛んで行くのはいくらなんでも不自然だろ」
『……うーん……でも』
「それにだ」
 遮って続ける。
 先ほど気づいた違和感の正体。
「……あの時、俺にはサーシャが“逃げ出した”ように見えたんだ。幻想殺しとか謎の魔術師からじゃない。サーシャにとってもっと恐ろしい何かから」
 それは想像に過ぎなかったが、きっと当っている。
 走る背中と、逃げる背中。
 それを見分けられるくらいには、うぬぼれかもしれないけど、彼女に近づけたと思っていたから。
 インデックスの沈黙は長かった。
 およそ一分。白いシスターが、最も認めたくなかった言葉を吐き出すために要した時間だ。
『とうま』
「おう」
『……サーシャを、止めてあげて。たぶん、すっごく馬鹿なことをやろうとしているはずだから』



ちょびっとだけ投下。12巻ショックから立ち直りきれてませんけども。169です。
気分転換に「ひとかたさんとあそぼう」を書いてたんですが、どうにも一方通行が丸い性格になってしまって気持ち悪いのでやめました。
今はこの話だけは書ききりたいと思っています。原作と食い違った展開になっても、気にしません。
ただ恐らく誰も期待して無いだろう予告編の方の話については、そんな歪んだ世界観で続けてもいいのだろうかと悩んでいる次第です。

>>912
素晴らしくGJ! だが御坂の初キスを奪ったことに関してだけは許せねえ!
それはともかくペルセウスって、型月世界的にはあれですよね、キビシス持ってた人。……うろ覚えですみません。

937 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/01(木) 15:55:49 [ scY2sI/Q ]
>>912
あの世界は世界観がウジャーとしすぎててー。ともあれ、GJっ。
今後の展開に期待期待。しかし、英霊のクセに近接戦が痛い、って……ヘタ(省略)

>>169=>>936
ぐっじょーぶっ。
12巻ショックで筆を止めてしまった私から見れば貴方が太陽に見えます。うわぁん。
ふぅむ、サーシャが何をしようとしているのか、今後の展開が気になりますなー。

938 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/02/02(金) 18:52:01 [ EZMlsjD6 ]
某マンションの一室のリビングにて
リビングのソファーに寝そべり、怪獣図鑑を眺めながら一人の少女がバタバタと足を
バタつかせて気持ちよさそうに歌を歌っていた。
『緑の大地と 果てしない青空 美坂の平和を 悪魔が狙う♪』
ブハ!
『苦しい時をのり越えて 険しい壁を飛び越えて〜♪』
反対側のソファーに座り缶コーヒー片手に雑誌を読んでいた少年の表情が歌が
進むにつれてひきつっていく。
『−すべてに挑むこの胸に 負けない勇気をくれないかー♪』
『TAKE A CHANCE 美坂のために突き進むーTAKE A DREAM 輝く瞳 信じてる♪』
「おい、ちょっと待て。なんだその歌は!」
「ミサカは、ミサカは気持ちよく歌っているのになんで邪魔をするのか聞いてみたりしたり」
足をばたつかせるのをやめ、アクセレーターの方を見ながらふてくされた顔を向け言い返した。
「いや、歌を歌うのは別にかまわないんだが・・・その某銀色巨人の主題歌を
いじったような変え歌はなんだ」
表情をヒクヒクとさせながらアクセレーターはつぶやいた。
「ミサカのミサカのピンチを助けてくれるカッコイイヒーローの歌アクセレーターパワード
のテーマ曲」
ラストオーダーは胸をはり誇らしげに宣言する。
「・・・やめろ、二度と歌うな」
「えーなんで!とミサカはミサカはあなたを問いただしてみたりする」
両腕を上下に動かしながら文句を言う。
「恥ずかしいからやめろ。つうかそんな歌街中で歌われたら俺は恥ずかしくて
街中歩けないだろうが」
「えっと・・・ミサカはミサカはちょっと戦略的撤退の準備をしたり」
「おい。何をした、何をしたんだおまえ」
額に怒りマークを浮かべながらラストオーダーを追い詰めるアクセレーター。
「・・・すでに歌詞を2番まで作り、ミサカネットワークに流してみちゃったりするのであると
ミサカはミサカは事後報告などをしてみたり・・・・」
プチ
「すぐに抹消しろ」
こわばった表情のアクセレーターがラストオーダーに詰寄ったしかし・・・
「もう無理!っとミサカはミサカは答えつつ速やかに撤退してみたりする」
「くそ、まてー」
勢いよくドアを開け、玄関から飛び出したラストオーダーをアクセレーターは
只見見つめることしかできなかった。

939 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/02/02(金) 18:56:23 [ EZMlsjD6 ]
リハビリがてらかいてみました。>ここ数週間忙しかったり気力なくしたり
少年陰陽師にはまったりして書いてなかったのですが個人的には
ちょっとおもしろいと思うものが書けました。

内容は、一応三人目の娘が出るためのちょっとした準備です。あるキャラ
の登場させるためにちょっとだけ

940 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/02(金) 19:06:49 [ meA6zN3o ]
GB!
しかし。強いてあげるなら一方さんの喋り方が少し普通過ぎるかな?

941 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/02(金) 19:08:02 [ meA6zN3o ]
GB=GJ
なんでこんなミスしたんだろう・・・

942 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/02(金) 20:58:53 [ Za/mu38I ]
一方さんは「ん」が「ン」になり、「ぁぃぅぇぉ」が「ァィゥェォ」になる。
あともうちょい乱暴な言葉遣いにしてくれれば完璧。

943 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 21:35:36 [ 2xr9dMXY ]
 「棒倒しにはアイツがでるのよね。」

学園都市に7人しかいない最強の能力者[超電磁砲]の御坂美琴は手に持ったプログラム表を見ながらつぶやいた。

学園都市に所属する学生すべてが参加する超ド級の体育祭イベント[大覇星祭]

7日間連続で行われ、学園都市の各学園をそれぞれの会場にさまざまな競技が行われる。

それだけ聞くと普通の体育祭のようだが、そこは学園都市、多種多様な超能力の使い手である学園都市の生徒が参加する体育祭なので、

競技に自分の超能力を使用してもよいのである。

一般的な[念動力]や[読心術]、[発火]に[肉体強化]などなど、それこそ超能力のオンパレードだ。

当然、その強力な能力のせいで毎年けが人は耐えないのだが、学園都市が外部の人間を中に入れる貴重なイベントでもあり、けが人も死人

にならない程度ならと黙認されている。

美琴の能力はレベル5[超電磁砲]

学園都市屈指の破壊力の持ち主だが彼女のように強力な能力の能力者は干渉値が「5」以上を出す能力は使用できないというルールがある



 そりゃそうだ、規格外の[幻想殺し]を持つあの少年なら遠慮なくぶっ放せるのだが、さすがに一般の生徒に[超電磁砲]クラスの能力は強

力すぎる。

「んっと、あいつの学校は一番手ね・・・・対戦相手はっと・・・」

プログラム表の棒倒しの欄には上条当麻の所属する学校の名前とスポーツ重視のエリート校の名前が書いてあった。

これは普通にやったら、大変そうねーと美琴は上条当麻のいるグラウンドに目を移し、ババッとプログラム表の出場学校のプロフィールを

穴が開くぐらいの勢いで見た。

プログラム表には彼の所属する学校は極めて一般的な個性の無い学校・・・のような事が書いてあるのだが。

もういちどグラウンドに目を移し美琴は

「はい?・・・」

と自分の目を疑った。

目を向けた先には



本物の猛者がいた。


◇◇◇

944 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 21:36:30 [ 2xr9dMXY ]
 その一団はやたらと威圧感を放っており、その周辺の空気だけ他の空間との温度差で蜃気楼でも起きそうなくらいプレッシャーを感じる



上条当麻を中心に全員が軍隊のようにピシ!!っと整列しており、体制は胸を張って休めの体制だった。

上条当麻はその一団の前をゆっくりと威圧的に歩いている、まるで軍隊の鬼教官のようだ。

棒倒しというか、これから戦争に行く精鋭部隊か戦国時代の武士の集団のように見える。

所々に立てられた棒倒しの棒が戦国武将ののぼりにしか見えない。

そのうえ、ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴという低い効果音が彼らの周りだけに鳴り響き、取材のTVカメラも怖くて近寄れない。

彼らの持つ超能力の余波がぶつかり合って生む音だが、

(・・・・・・・・)

あまりの迫力と威圧感に美琴は声も出せず

(あいつ、まさか本当に勝つつもりなの、こんなところで無駄にカリスマ性発揮してんじゃないわよー!!あんた私に勝って罰ゲームで何を

要求するつもりなのよー!?)

上条当麻の一団の士気が異様なのは彼らの担任の小萌先生のエピソードが伝わってるだけなのだが、美琴にはそんなことはわからなかった



 上条当麻に負けた場合の罰ゲームを想像し美琴が赤くなったり青くなったりしてるの美琴の前で開戦前のパフォーマンスが始まった。

ますます戦国武将っぽい。

◇◇◇

945 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 21:37:46 [ 2xr9dMXY ]

 対戦校のエリート校は完全にこちらを格下だと思ってるのがミエミエな

「胸を貸してやるからせいぜいがんばりな」

的な事を言っていた。


     が


 上条当麻率いる一団の面々は休めの体勢のまま、微動だにしない。

エリート校の代表選手がその不気味な迫力に押される様に自分の陣営に戻っていくと上条当麻は仲間達の前に立ち、その一団と向き合うよ
うに敵校に背を向けた。

その背中には「生きて帰れると思わないことだ」という言葉が何も喋ってないのに、耳に叩き込まれていく。

大きく息を吸い、大きく吐く。

とんでもない大音量で叫び始めた。

『あいつらは最もしてはならない事をした!!それは何だ!!青髪ピアス言ってみろ!!』

指名された青髪にピアスをつけた少年は大きく胸を反らし

『僕らの大切なモノを傷つけたことやー!!』

当麻に負けないほどの音量で叫び返す。

『ならばこの傷はどこに返せばいい!!、土御門!!言ってみろ!!』

金髪に青いサングラスをかけた少年は先ほどの少年と同じように

『当然、我らが敵だぜぃ、生きて帰さないぜぃ』

唖然とする美琴や他の観客と驚く対戦相手の一団

大音量なのはおそらく誰かの能力で空気のレンズのような物を作って本来の音量を増幅してるのだろう。

一団の士気は最高潮に達した。

◇◇◇

946 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 21:38:13 [ 2xr9dMXY ]
『野郎ども!俺達の特技はなんだっ!?』




         『『『『『殺せっ!!殺せっ!!殺せっ!!』』』』』



『この試合の目的はなんだっ!?』

         『『『『『殺せっ!!殺せっ!!殺せっ!!』』』』』


『俺達は学校を愛しているか!?
       小萌先生を愛しているかっ!?クソ野郎ども!!』

  


      『『『『『『『ガンホー!!ガンホー!!ガンホー!!』』』』』』』』

『よし!!いくぞ!!』



        『『『『『『『オオオオオオオオオオオオオ!!』』』』』』』』




 上条当麻とその一団のパフォーマンスが終わると試合開始の笛がピーーーっと甲高い音を上げ猛者達は戦場に解き放たれた。

◇◇◇

947 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 21:38:54 [ 2xr9dMXY ]
 棒倒しには2つの役割がある、それは能力の飛び交う大覇星祭の棒倒しでも変わらない。
 
すなわち

[相手の棒を倒す役]と[自軍の棒を守る役]

当麻の選んだのは前者、つまり[攻撃]だ。

前進あるのみ、試合開始の合図と共に敵陣目掛けて猛ダッシュを開始する。

彼の後に攻撃に参加する他の生徒が続く、どの生徒の目にも赤い紅蓮の炎が宿っていた。

「おおおおおおおおおおっ!!」

叫びながら全力で駆け抜ける。

実際には叫ぶと力が抜けるのだがそんなことは知ったことではない、気合が欲しいのだ。

たかが棒倒しでと思うかもしれないが

ここは超能力万歳な学園都市で

行われるのはその全学生が参加する大覇星祭である、火、水、土、風、雷、その他諸々何を飛ばすか分からない能力者同士が100人規模
で激突するのだからその意気は計り知れない。

キラキラキラ

敵の陣営から無数の閃光が瞬く

カメラのフラッシュのようにも見えるが、生憎と違う。

敵の能力者による遠距離攻撃だ。

火炎か爆発系の能力を使った爆圧、さらに弾丸上状加工するために圧力系の能力を使って透明な壁で覆っているはずだ。

外側の壁が太陽の光を屈折させる為キラキラと照り返して見えるのだ。

自分達の背後からも迎撃の為に遠距離攻撃が開始され当麻達を掠めて敵の攻撃と激突する。

暴風 砂煙 観客席からの歓声と悲鳴

ちらりと観客席に目を向けると、心配そうな顔をしている常盤台のレベル5が見えた気がしたが、舞い上がる砂煙に巻き込まれ目を閉じる



こりゃ余所見してるとあの世行きだな。とか思ってると

隣に青髪ピアスが並んでいた。

「さぁさぁ、カミやん、あのお高く止まった腐れエリートどもが放つ、あの二枚目オーラ、このお笑い担当の私めが見事木っ端微塵に打ち

砕いてあげましょう!!」

そんな台詞を大声で吐きながら、敵陣目掛けてバシュっと超高速で突っ込んだ。

「ふははははははははは!!やらせはせん!!やらせはせんぞ!!」

ダン!!バシュ!!ゴッ!!バシュー!!

文字通り目にも留まらない速さで敵陣をかき乱す青髪ピアス

「あれ?あいつ強いな?」

「にゃー、カミやん、大質量の念動力の槍とかを右手だけで軽く防いでる人間が言ってもアレだぜぃ」

「お前は何で俺の背後に隠れてるんだ・YO!!」

あくまでも背後をキープし金髪サングラスは

「にゃー、カミやんの背後が滅法安全だからだぜぃ、土御門さんの能力は[自動再生]
戦闘向きじゃないんだぜぃ、それに俺の魔法名は[背中を刺す刃]なんだぜぃ」

「ぐぁぁぁぁ!!は・な・れ・ろぉぉぉぉぉぉ!!絶対に背後取られちゃならんやつがここにいたぁぁ!!」

背後に隠れる土御門をがんばって振りほどこうとするが飛んでくる念動力の矢とか火の玉とかを防ぎながらなので一向に離れない。

「上条当麻!!貴様、真面目にやりなさい!!」

吹寄制理の怒号で2人はそそくさと戦場に舞い戻った。

◇◇◇

948 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 21:42:42 [ 2xr9dMXY ]

ご挨拶
|ー゚)はじめまして、いまさら大覇星祭のIF物をお届けします。
当麻君と美琴ちゃんを幸せにしてあげたいIF
禁書目録?出すと話しこんがらがるから出しません。
青髪ピアス?能力なんて適当です。

|彡サッ

し^−^)よろしく

949 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 21:43:55 [ 2xr9dMXY ]
◇◇◇

 「はっ!!」
あんまりといえばあんまりの試合内容に美琴は半ば意識を失っていた。

(なにあの頑丈さ・・・四方八方から飛んでくる攻撃を軽々と弾いてたわよ)

実際は結構キワどいタイミングなのだが、本人にしか分からないことだ。

(・・・ってアイツ、結局防ぎきれなくて集中放火喰らってたわね、200人ぐらいに)

怪我もしてたようだしー、と美琴はあらかじめ用意しておいた小さな救急箱を持ち上条当麻のいるテントに駆けていった。

 上条当麻のいるテントはさきほどの武勇伝を語る学生でいっぱいになっていて、しかも不幸なことに

保健委員が救急箱片手に怪我人に消毒やら包帯やらを処置していたが、人数が多すぎるので軽く30分以上はかかりそうだった。

「不幸だ・・・」

日差しが暑いのも、喉が渇いたのも、傷が痛いのも全部不幸のせいだ、とかいいつつテクテクとテントを出て木の陰に座り込み保健委員か

ら強奪してきた消毒液を手に取り・・・

「これかけると痛いんだよなきっと・・・・でもかけないと化膿するかもしれないし・・・でも痛いし」

とか迷って消毒液を縦にしたり横にしたりすること10分

不意に自分の視界が暗くなった。

木陰にいるのでもともと暗いのだが、とか思って顔を上げると目の前に御坂美琴がいた。

しかも結構な至近距離で。

鼻と鼻が擦れ合うぐらいの距離で目が合い、2人とも


「「うわ!びっくりした」」

完全にハモった。

◇◇◇

950 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/02(金) 21:49:06 [ Tk/lX.jQ ]
GJ!!なかなかにエキサイティングでした。
文句をつけるとしたら主語を入れた方がよいと感じた部分がありましたが、よくまとまってると思います。

頑張って美琴を幸せにしてください!

951 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/02(金) 21:55:59 [ e6EHHL46 ]
最近、GJな作品が多くてうれしいことです。
職人のみなさん頑張ってください!!

952 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 21:59:22 [ 2xr9dMXY ]
◇◇◇

 ピーーーーーーーーー

わぁぁぁわぁぁぁ

グラウンドでは棒倒しが絶賛進行中だ

時折閃光やら漫画みたいに吹っ飛んでいく生徒も見える

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「「・・・・・・・・・・」」

(誰か、誰かヘルプミー、この無言空間には上条さんは耐えれません)

沈黙に耐えかねて口を開こうとして

「「あのさ・・・」」

ハモった。

気まずい・・・なんというか気まずい、木陰で木にもたれ掛かり目の前にいる美琴になんとなく目を合わせずらくて

チラチラと見ては罰があるそうに目を反らして、口笛を吹く。

「ちょっとアンタ」

ビクゥゥ!!と音速で身を反らし美琴の視線から逃れようとする。

(ああ、まずい、これはまずいですよ、なんだか知らないけどきっとご機嫌斜めなんですよー)

「怪我してるでしょ、見せてみなさいよ。」

上目遣いで顔は真っ赤になりやはりチラチラと見ては目をそらしながら常盤台中学のレベル5[超電磁砲]はそんなことを言ってきた。

はい?っと3秒ほど上条当麻の思考は停止した。

「怪我を見せろ、とおっしゃいましたか?美琴さん」

無言で左手を出す美琴、ここに手を置けということなのだろう。

「えーと・・・新しい拷問?」

「なわけあるかぁぁぁ!!」と満身創痍の上条の右頬に捻りの利いた右が叩き込まれた。

◇◇◇

953 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/02(金) 22:05:26 [ dWPbXYOE ]
GJ、GJなんだよー。
土御門のらしい姿に思わず親指を立てたぜ!

954 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 22:28:05 [ 2xr9dMXY ]
◇◇◇

 トントントン

ピュピュ、ぴとぴと

「・・・・・っ」

「あ、ごめ、染みた?」

「い、いや、大丈夫・・・」

傍らに置かれた救急箱から脱脂綿と消毒液、ピンセットを取り出し、すりむいた腕の傷に優しくトントンと脱脂綿を当てていく。

(うはぁ、ドキドキ治療イベント発生中ですよ!!回避不可能!!)

「で、なんだってあんな無茶なことしてたわけ?」

「へ?無茶って何のこと?・・・っていってぇぇぇぇぇぇ!!」

脱脂綿をはさんだピンセットを持つ美琴の右手がブルブルと震えて当麻の傷口に押し付けられる。

「どこの世界に200人以上いる能力者の中に開始早々突っ込む馬鹿がいるのよ。」

プンプンと顔は不機嫌になりつつも、頬は赤く染めながら、目線はチラチラと傷と当麻の顔を行ったりきたりしながら美琴は当麻の右手に包

帯を巻いていく。

「はい、これで完了!」とかいいながらと包帯の端をチョチョイと折り込んでいく。

「その・・・ありがとな、美琴」

当麻が頬をぽりぽりと掻きながら礼を言うと

「ば、ばか、そ、そんなの、別に、お、お礼言われることでもない、わよ」

ズバァとかいう効果音が聞こえそうな程の速度で座ったまま180度方向を変える。

(き、器用な方向転換するな、座ったまま180度ターンしたよ、いま)

「じゃ、私は次の競技に出ないといけないから!!」

美琴は救急箱を両手で抱えて、ズダダダダダダダダっと走っていってしまった。

当麻は右手に巻かれた包帯を見て、一息ついてから自分の学校のメンバーがいるテントへ戻っていった。

「ふう、これ保健委員に返しとくか。」

ポリポリ

955 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 22:45:05 [ 2xr9dMXY ]
◇◇◇
「ああ、日差しが・・・クラっ・・・」

「ああ、日差し強いですよね、私は帽子かぶってるから平気ですけど。」

車椅子に座ったツインテールの少女が病弱なヒロインを演じ

車椅子を押す小柄で頭に大きな麦わら帽子・・というか花をかぶった少女がさらりと受け流す。

「入院中の私をわざわざ連れ出してどうなさるおつもりですの、初春飾利さん」

「いやぁ、この炎天下の中で白井さんだけがエアコン+ふかふかベッドのコンボなんていてもたっても居られなくなっちゃいまして、白井さんにもお仕事手伝ってもらいたくなっちゃいました、あはは」

「素敵すぎる友情をありがとう、傷が完治したら真っ先に衣服だけ空間移動して素っ裸なにして差し上げますから、心の底から楽しみにしていてくださいまし。」

白井黒子はぐったりとして答えたが、正直大覇星祭というイベントの中で自分だけ病室に・・・・なんてのも嫌だった。

というか病室は割と退屈だ、TVがあっても好きな番組ばかり流してるわけではない。

大半が寝る時間に当てられてしまう。

ぶっちゃけ退屈だったのだ、だからこの強引な誘いはうれしく思っていた。

でもそれを悟られるのは絶対に嫌なのだ。

「どうせお姉さま率いる常盤台中学の独走トップに決まってますが、入院中で不足しているお姉さまエナジーをここらで補給する必要ありですわね」

「御坂嬢ですかー、丁度そこに映ってますねー、ほら」

初春が指差したのはデパートの壁面に設置された大画面のエキシビジョンだ。

「これは生中継ですの?」

「カメラの動きが生っぽいですよね。」

画面には常盤台中学のレベル5 御坂美琴が映っていた。

◇◇◇

956 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 23:41:30 [ 2xr9dMXY ]
◇◇◇
 美坂美琴は走っていた、競技場ではなく学園都市の普通の町並みを

割りと全力で

いま居る場所は競技場ではないが美琴は現在競技中だ。

[四校合同借り物競争]

通りを挟んだ歩道には他校の学生もちらほらと見える。

この競技は第七、八、九区画を会場として行われる広範囲競技だが

いろいろと学園都市ならではの要素がある

まず[超能力]の使用

そして[借り物]

ルールこそ紙に書かれたものを借りてくるという単純なものだが

毎年、実行委員の趣味なのか借りてくるものが困難極まるのだ。

それゆえにかなりの高得点競技でもあるのだが

「この競技!!会場がひろすぎんのよ!!」

学園都市の一区画はかなりの広さを持つ

しかもそれが三区画使用という大盤振る舞いだ。

(こういう競技は[空間移動]の使える白井黒子や[肉体強化]の使える連中の本分でしょうに。)

彼女の能力である[超電磁砲]は冗談のような破壊力を持っているがこういう平和な競技には心底向いてない。

文句を言いながら辺りを見回して目標を探す。

目標発見デキズ

向かい側の歩道にいた女子学生が

一般客の赤髪の神父に頭を下げてる

赤髪の神父はウーンとうなると懐からタバコを1本だして女子学生に渡した。

(ってたばこかい!!)

おそらくそれが彼女の[借り物]なのだろう、学生にタバコを借りて来いなんて随分と無茶な借り物だ。

買うには身分証明が必要だし、借りるっていっても普通の人は学生にタバコなんて渡さないだろう。

しかしこのままではあの女子学生に1位を取られてしまう。

(どこ居るのよ!!アイツ!)

手の中の[借り物競争]の[借りてくる物が書いてある紙]を見ながら

「うん、この条件だとアイツしかいないわよね」

自分に言い聞かせる様に呟き、紙から目を離しキョロキョロしてると50m程先の人ごみの中に見覚えのある後姿を発見した美琴は

「目標発見!!」

速度を上げて目標(借り物:未承諾)との距離を詰めた。

◇◇◇

957 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/02(金) 23:42:28 [ 2xr9dMXY ]
◇◇◇

 大覇星祭中は学園都市は一般客にも解放される

普段は学生しか見当たらない街もこの期間だけはお祭り状態なので公園や商店街にはフランクフルトやイカ焼きの屋台が並んでいる。

「なんだか楽しそうーってミサカはミサカははしゃいでみたりする」

「おィ、あんまりウロチョロするんじゃねェよ、クソガキ」

白髪の少年の回りを10歳ぐらいの少女が駆け回ってる。

「ねぇねぇ、アレ食べたいなぁとかミサカはミサカはあなたのシャツを引っ張ってお菓子を要求したりする」

学園都市の一角にある公園のベンチに腰掛けて学園最強の能力者[一方通行]は空を見上げた。

「ウゼェ・・・てかおまえ金なら渡してあるだろゥがよ!!」

ビシっと自分のシャツを引っ張る少女−[打ち止め]に指を突きつける。

「ひとつのわたあめを二人で食べる・・・ミサカはミサカはこの前見た恋愛ドラマを思い出してアナタにそれを要求してみたりする」

グイグイ、グイグイ シャツを引っ張るのをやめないこの子供をどうしたものかと[一方通行]は再度、空を見上げた。

視線をわたあめの方に向けてめんどくさそうに立ち上がると足元で[打ち止め]が期待に満ちた眼差しを向けていた。

(いつからこんなに丸くなッちまたんだろうなァ)

「ベンチで待ッてろ」

「は〜〜〜い、ってミサカはミサカは元気よく答えてみる」

公園の中央の噴水の脇に据えつけられた木製のベンチに[打ち止め]はちょこんと座って[一方通行]の方見る。

それを確認してから5mほど先にあるわたあめの屋台に向かい

50m程先の人ごみに彼のよく知る黒いツンツン頭が見えた気がした。

「ねーねー、3段重ねがいいなとミサカはミサカは更に要求をしてみたりする」

「寝ろ!!」

「うわーい、なんか久しぶりに聞いた、それってミサカはミサカは思い出の世界に入ってみたり」

振り返って先ほどの人ごみを見ると・・・何も発見できなかった、普通の人ごみがあるだけで
彼の宿敵たる[幻想殺し]の少年の姿は見つからなかった。

「さっきから悲鳴みたいなのが聞こえるねとかミサカはミサカは報告してみたりする」
◇◇◇

958 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/02/03(土) 15:27:47 [ NyK5LzE. ]
自分一人だけ出社したくない上司に仕事も全部終わっているの呼び寄せられて
PCの前で無駄な時間を過ごすのもあれなので例のミサカの歌替え歌でも全部書いておきます。

1 銀河のスパーク    流星のスピード
  ミサカが愛した    無敵のヒーロー
  ミサカが闇に脅えてる ミサカが夢を失くしてる

  明日をつかむこの胸に  ほんとの勇気をくれないか

  ★TAKE A CHANCE  力のかぎり 生きること
   TAKE A DREAM  どんなときでも 忘れない

   アクセレーター アクセレーター
   アクセレーターパワード

2 緑の大地と        果てしない青空
  ミサカの平和を      悪魔が狙う
  苦しい時をのり越えて   険しい壁を飛び越えて
 
  すべてに挑むこの胸に  負けない情熱くれないか

  TAKE A CHANCE   ミサカのために突き進む
  TAKE A DREAM    輝く瞳 信じてる

  アクセレーター   アクセレーター
  アクセレーターパワード

三人目のキャラがこの曲を使ってもうひとつバージョン作りますので。
SSに関係します。
元ネタはこれです>>ttp://www.youtube.com/watch?v=3fPY1AwgLdQ&mode=related&search=

959 名前:お食事券と激突する女達 投稿日:2007/02/03(土) 15:41:15 [ NyK5LzE. ]
ギリギリまで 頑張って ギリギリまで 踏ん張って
ピンチの ピンチの ピンチの連続 そんな時
上条当麻がほしい!

自分のパワーを信じて 飛び込めば きっとつかめるさ 勇気の光

うぬぼれるなよ 邪悪な願い 最後の力が 枯れるまで
ここから 一歩も さがらない

ギリギリまで 頑張って ギリギリまで 踏ん張って
どうにも こうにも  どうにもならない そんな時
上条当麻が ほしい!


愛さえ知らずに 育ったモンスター 叫びはおまえの 涙なのか
力まかせの 邪悪な願い   大切なミサカを 守るため
ここから一歩も 通さない

ギリギリまで 頑張って ギリギリまで 踏ん張って
どうにも こうにも  どうにもならない そんな時
上条当麻が ほしい!

>ちなみに没案です、歌わせたら当人が思考停止しそうなので。
 歌っているところを上条さんに聞かせてあわてるシーンなんかを考えていたのですが。

960 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/03(土) 20:01:43 [ cRlEYVGg ]
◇◇◇

 大覇星祭の実行プログラムと付属の大会中の催し物会場が案内されている学園都市マップを見比べながら上条当麻はつぶやいた。

「通行止めの箇所が多いからさっさと移動しないといけないよな、次の競技場はあっちか」

自分の隣を歩いている金髪の少年に同意を求める

が金髪の少年は道なんてどうでもいいと言った感じで

「にゃー、カミやんは今日もフラグ立てまくりだにゃー、流石は[旗男]の異名を持つだけのことはあるぜぃ」

「なっ!失礼な!この上条当麻、神に誓ってもそのようなこと――――・・・・・」

金髪サングラスの少年は勢いを失われていく当麻の言葉を聞き、しきりにウンウンと頷いてる。

突然「棒倒しの後(ぼそ)」耳元で囁かれた。

―ビクゥ!!―と高速で土御門元春(つちみかどもとはる) の視線から目を逸らし上条当麻の心臓はバックンバックンだった。

(ちょ、こいつもしかして美琴と一緒に居たところ見てやがったのか)

いまや金色の悪魔と化したかつての親友は言葉巧みに上条当麻の精神に言葉のジャブを打ち込んでくる。

「消毒液でトントン♪」とピンセットと脱脂綿で傷を消毒ジェスチャーをする。

「カミやん病やね――僕らが小萌センセーの名誉を守る為に奮闘したあの戦いの後で、カミやんは女の子とラブラブですか」

左側に歩いてた青髪の少年が会話に参加する。

青髪の悪魔も現れたようだ。

(よりによって、一番ばれてはまずーいやつらにバレテマスよ・・・・)

2人の悪魔はは上条の両サイドに立ち、例の治療イベントの再現をやっていた、金髪が上条当麻役で青髪が御坂美琴役らしい

自分の行動や言動を他人に真似されるほど腹が立つことはない、ましてやそれが甘酸っぱい青春の1ページ的な事ならなおさらだ。

上条当麻は自分の右手を見て思う。

この右手[幻想殺し]は、異能の力ならたとえ神様の奇跡だって打ち消せる。

魔術であろうが超能力であろうが形の無い呪いのようなものであろうが例外は無い。



だから―――まずはそのふざけた[妄想]をぶち殺す!!



ガシガシと2人に殴りかかっていくと

「ちょっとカミやん、待つんだぜぃ――俺らは別にからかってるわけじゃないんだぜぃ」

「そうなんよ、親友として友人の恋愛成就を祈ってるベストフレンドなんよ、ボクらは」

「お・ま・え・ら・が言うなーーーーー!!」

右手を大きく振りかぶり、いち早く離脱しつつある土御門を無視し、青髪ピアスの少年目掛けて

必殺の[幻想殺し]を打ち込む―――はずだったが

突然、目の前の視界が高速でブレた。

――――否、持ってかれた。

横合いの歩道から全力で駆け抜けてきた美坂美琴に服の襟首をガシッ!!と掴まれ

「おっしゃーっ! つっかまえたわよ私の勝利条件!わははははー!!トップは渡さないわぁぁぁ!!」

「ちょ、待って・・・苦じィ!ひ、ひと言くらい説明とかあっても・・・・ッ!!首がっ! って美琴、息できないから放せってのぉぉ、いやぁぁぁぁああぁぁ、急旋回はさらに首がしまるぅぅっぅぅ」

キキィ!!とか効果音をさせながら角を曲がり音とあっという間に見えなくなった。

「噂をすればやね、カミやん幸せになるんやよ――南無」

「カミやーん、平穏に過ごすってのは、カミやんには一生無理そうだにゃー」

上条当麻と御坂美琴が消えた方向に2人の親友はそんなことを叫んでみた。

◇◇◇

961 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/03(土) 20:05:23 [ cRlEYVGg ]
◇◇◇

 ボロ雑巾のようになった上条当麻は美琴ととも競技場に入り、先を走っていた女子学生をあっさりと抜き去りゴールテープを切った。

先ほど上条が棒倒しを行ったようなグラウンドとは違い、アスファルトを敷いた陸上競技場に使う公式競技場だった。

客席もスタジアム状になっており、報道用のカメラや警備に当たる人数も多い。

運営委員の高校生がゴールテープを切った美琴に大き目のスポーツタオルを頭からかぶせた。

美琴から少し遅れて2着の女の子もゴールする。

他の選手は大分遅れているらしく全員到着するまでは競技トラック中の芝生で待機してくれと伝えられた。

(なんだ・・・この場違いオーラは・・・運営委員もやたらとテキパキしてオリンピックのトレーナーみたいだし)

運営委員の高校生の一人が上条をジロジロと見てきた。

テクテクと歩いてきて上条に小声で話しかけてきた。

「・・・・(上条当麻、貴様よっぽど女の子に縁があるようね!)」

「・・・・(はぅ、どっかで聞いた事のある声に上条さんは怯え隠せません、ガクブル)

運営委員の顔を見ると間違いなく吹寄制理だった、日差し避けに青いサンバイザーを付けて、上条のものと同じ体操服に短パン、その上に[大覇星祭実行委員]
と書かれたパーカーを羽織った吹寄制理は上条のセリフに、ピク!っと一瞬動きを止めたが仕事中だからと言って上条から離れていった。

背後で美琴が軽く不機嫌そうだったのだが上条にはまったく見えてない。

吹寄から開放された上条はここまで上条を連れてきた美琴の方に振り返って

「美琴。優しい優しい上条さんは見ての通り汗だく+ふくらはぎ辺りがパンパンになるまで走らされたわけですが、ルールには第三者の了承を得てつれてくるように、とあるようだが
目の錯覚ですか?」

「あーあー、錯覚錯覚、っつか事後承諾は駄目とは一言もかいてないじゃない。」

「だぅ・・・」

「疲れきった感じで座り込もうとしない。ったく、だらしないわね。」

美琴は自分の被っていたスポーツタオルを上条の頭に被せると

「ほら、じっとしてなさいよ、暴れない、じっとする!!」

わしゃわしゃわしゃー、と上条の顔や首筋の汗を乱暴に拭っていく。

上条も最初は、うわ、いきなりなにすんだ、みたいに手をばたつかせていたが、美琴の強引な力加減に負けて黙って身を任せることにした。

「はい、これでいいでしょ、汗もすっきり。」

そして手に持ったストローつきのスポーツドリンクに口をつけ、喉を鳴らして飲み始めた。

「じーーーーー」

「な、なにっ?あんまりジロジロ見ないでよ、この」

上条の視線は美琴の右手にあるドリンクに集中していた。

美琴はドリンクを手渡そうとして、一瞬止まり少し考えて吹寄に目配せをした、続いてドリンクのボトルを軽く左右に振る。

競技記録をクリップボードに書き込んでいた吹寄は美琴とドリンクを交互に見て、両手を使って×の字を表現した。

1人1本と規則で決まってるらしい。

962 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/03(土) 20:05:54 [ cRlEYVGg ]

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

美琴はしばらくそのまま固まっていたが数秒ほどすると上条の方に向き直り、

「はい、これでも飲んでなさいよ、喉渇いてるんでしょう!ほら!!」

「ちょ!!刺さる!!目に刺さる!!」

ぐいいいいいい!!っと上条の顔にドリンクのボトルを押し付けてきた、ストローの角度が丁度上条の目に刺さりそうになってるが彼女は見ていない。

顔を真っ赤にした美琴は上条から離れて表彰台に向かって歩いていった、個人競技では3位までは表彰してもらえるのだ。

その様子を見ていた吹寄がチッ!っと思いっきり軽蔑の意を込めた舌打ちを鳴らしたが、他の選手の世話もあるらしくその準備に向かっていった。

当然表彰されるのは美琴だけで、上条はこの競技の選手ではなく美琴に借りられた物としての扱いなので表彰なんてされるわけ無い。

美琴の競技が終了すれば用済みなので出口に向かうだけなのだが

ふと美琴の借り物がなんだったのか気になって近くに居た吹寄に聞いてみた。

「なぁー、アイツの借り物ってなんだったんだ?」

吹寄はムッとした表情で自分のパーカーのポケットを漁りくしゃくしゃになった紙切れを上条に渡して去っていった。

(なっ・・・・)

紙切れには[第一競技を行った高等学生]と書いてあった。

(お、俺以外にも条件一致するやつらなんて10万人以上いるんじゃ・・・なんで俺・・確かに美琴は棒倒しの後に手当てしてくれたから
棒倒しを見ていたってことなんだけど・・)

ズーンと今になって疲労が圧し掛かり上条当麻はトボトボっと美琴に渡されたスポーツタオルとドリンクを持ったまま競技場を後にした。

◇◇◇

963 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/03(土) 21:37:50 [ cRlEYVGg ]

ご挨拶2
このIF大覇星祭は前提として

・禁書目録は当麻にあっているが1巻の内容のラストで当麻が正直に言った為、『必要悪の協会』に戻っている。
・上条当麻はやはり記憶を失っている。
・白井黒子はやはり入院している
・当麻と美琴はやはり罰ゲームの約束をしている
・禁書目録がいないので当麻の自由時間が多い
・加えて禁書目録の食費は存在しない
・このSSのヒロインは美琴であるが上条当麻はやはり旗男である
・ここは外せない的な場面は原作の文章を引用している
・打ち止めと一方通行は大好きである
・実は白井黒子も大好きである。

以上

勢いが続くうちに書いてしまわねばならない・・・・特に10巻の初め部分!!
書きたい!!
あそこのシーンが書きたい!!

964 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/03(土) 22:27:01 [ fvFgnlAU ]
来たキタキタービリビリの正当派ラブコメ!!
これを待ってたのですよ
ニヤニヤが止まらないze!!
GJ!!期待しています

965 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/03(土) 22:56:15 [ cRlEYVGg ]
◇◇◇

 競技場から土御門と青髪ピアスと離れた場所は結構な距離があった。

なので上条はバスで移動することにした。

学園都市のバスのほとんどは無人の自立走行バスである。

上条がバス停の横に取り付けられた停車ボタンをポチっと押すと、エンジン音のしない電気主力のバスが滑るようにやってきた。

いくら学園都市で無人操縦の技術が進んでいるといっても自動車の無人操縦はもっとも難しく、

大覇星祭のような交通制限がかけられた期間しか運用できないみたいだが。

 上条は自動で開いたバスのドアをくぐり車内を見渡す、一般の車両は来場を禁止されてるので車内は結構混雑していた。

運転席には誰も居らず、ハンドルやアクセルなどのペダルがひとりでに動いている、なんとも不思議な光景だ。

 しばらく客席で外を眺めていると上条の座席のランプが点滅した、どうやら目的地に着いたらしい。

バスを降りてトコトコと歩いていると、街の雑音に混じってあちらこちらから競技の放送が聞こえてくる。

競技場のスピーカー、ビルや飛行船に設置された大画面モニターなどなど。

『えー先ほどの男子障害物走――』
『今後一時間に開催される競技と会場はご覧の――』
『四校合同の借り物競争でしたが期待通り―――』

「・・・(耳がおかしくなりそうだ)」

と呟いて、美琴からもらったスポーツドリンクをチューチューと飲みながら次の競技場に向かった。

なにせ一旦競技が始まると途中参加はできないのだ、遅刻なんてしようものならクラス全員から袋叩きにあってしまう。

急ごうと思い足を速めたが、

その足は不意に止まる。

見知った顔が見えたからだ。

赤い髪に耳のピアス、両手の指輪に、口にはタバコ、左目の下にバーコードの刺青の神父―――ステイル=マグヌス


イギリス清教の『必要悪の協会』に所属する、本物の魔術師

(ステイルだと・・・休暇か?でもあいつが科学サイドのイベントである大覇星祭に興味があるとは思えないんだけど)

とりあえず知り合いは知り合いだ、出会ったら挨拶ぐらいはしておかないと、と思い上条は近づいていく。

「―――だから・・・・そうだね。―――考えられる事だろう?」

「――なんだと――それは――か?」

(ん?誰かと話してる?)

金髪に青いサングラス、クラスメートであり隣人でありステイルと同じ『必要悪の協会』のメンバー、そして学園都市のスパイ

土御門元春、すこし前まで自分と一緒に歩いていた少年だ。

「ああ、そりゃ・・そうだ―――。確かに・・・・連中にとっては、今ほどの―――チャンス・・・他に無い」

上条は自分の背筋にゾクゾクという嫌な悪寒を感じた。

なんだか嫌な予感がする。

2人とも遠目には穏やかそうな顔で話している。

笑っているようにも見える、でも少しも楽しそうではない、何かが足りない笑み。

道行く人達が浮かべる笑みとは方向の違う笑み。

上条はそれを振り払うように、更に近づこうとしたところでステイル=マグヌスは静かに告げた。

「だから、潜り込んだ魔術師を僕達だけでなんとかしないといけない訳だ。」

いつの間にか上条当麻の平穏で楽しい世界は

殺意と欲望の交錯する戦場へと切り替わっていた。

◇◇◇

966 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/03(土) 22:57:02 [ cRlEYVGg ]

 どうしたものだろう

目の前にいる少女は完全に我を忘れているようだ。

あれを教えたのは失敗だったのか?

ビルの壁に設置された大画面を見ながら初春は嘆息した。

『四校合同の借り物競争ではやはりというか期待を裏切らないというか、常盤台中学の圧勝でした。
トップの選手は後半のものすごい追い上げで―――』

大画面のモニターにどこかの競技場が映る。

選手の顔はカメラに写され、名前も公表される、ちなみに全国放送だ。

これに映れば一躍有名人とか思いそうだが別にそんなことはない。

出場する選手は1万人を超え、競技自体もオリンピックのような競技ではないのだ、あくまでも運動会の延長、その場だけ盛り上がりその場が過ぎれば普通に戻るのが

正しいギャラリーのあり方だ。

でも目の前に少女にはそんな事は関係無いらしく。

『一位の御坂美琴選手はゴールしたあとも体勢を崩すことなく余力のある様子を見せてくれました。』

ガバァとスポーツ車椅子から身を乗り出し大画面モニターを見て

「お姉様、嗚呼お姉様、お姉様(五七五)!!やはり勝利こそお姉様に相応しい、その勇姿を生はおろか録画もしてない黒子を許してくださいまし。」

キラキラキラキラァっと白井の瞳が輝きまくり、スポーツ車椅子を押しながら初春飾利はやれやれっと肩をすくめた。

『一緒に走っていた協力者さんを労わる場面もあり、好印象でしたね。お嬢様の嗜みといったところでしょうか』

一緒に走って?労う?と白井の頭に?が飛び交う。

画面が切り替わり、映像が流れたおそらく録画だろう、ゴールしたあとの御坂美琴とその協力者が映っている。

ん?っと初春が車椅子の少女をみれば、病人であるはずのツインテールの少女は真っ黒で邪悪な炎のようなオーラをかもし出していた。

「ヒッ!!なんですか白井さん、そのドス黒いオーラは、なにをそんなに怒ってるんですか!!???」

「ムキィィィィィィィィ!!殺す!!生きて帰れると思うなですよ。メッタメッタノギッタンギッタンにしてやりますわ!!それにしてもお姉様まであんなに頬を染めたりして!!キィィィ悔しい!!」

「御坂嬢だって、女の子なんですからあんなの当たり前でしょう!?」

ナンダト!?と白井がものすごい形相で初春を見てきたので黙ってしまう。

(汗拭いてあげて、飲みかけのドリンクをあげたぐらいにしか見えない・・・あとでなんか真っ赤になってるのは間接キスのことを意識してるからなんだろうけど)

初春飾利はいまだにブツブツいってる白井黒子の乗るスポーツ車椅子を再び押し始めた。

◇◇◇

967 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/03(土) 22:58:30 [ cRlEYVGg ]

 総合借り人競争、この競技は大覇星祭の見ものになっている競技のひとつだ。

先ほど美琴が参加していた四学園合同の借り物競争をよりグレードアップした競技であり、その借り物の要求も先のソレを凌駕する。

各学園ごとに10名代表選手を選抜し、各学園の代表が一斉にスタートし第7、8、9学区の各所に設けられたチェックポイントを通過し順位を競う。

そんな競技だ。

「わたしこの競技はじめて。でもやってみる」

額に真っ白なハチマキを占めた黒髪の少女が独特のイントネーションで話しかけてくる。

「大丈夫だよ姫神、普通に人を探して一緒に競技してもらえばいいっていう一般入場客参加のほのぼの競技じゃんかー」

すると

「つまり。運に左右される。」

姫神秋沙―は自分の髪の毛をいじりながら言う。

『では総合借り人競争を始めますので選手の方は入場してください』

運営委員が拡声器を使用して呼びかけゲートには1万人程の学生が集まった。

中学生、高校生、男子に女子、オレンジに青、赤の体操服、ジャージ姿の学生も見られる。

上条の学校だけでも全校から10人でてるのだ、学園都市の全学園から10人づつでればこれぐらいにはなるだろう。

これだけ人数がいるとスタート直後の混雑が心配だが・・・と思って回りを観察していると

ツンツン

上条の肩を叩く感触がある。

叩かれた方に振り返ると・・・・誰も居ない

ツンツン・・・今度は逆方向だ

上条が全力でガバァっと叩かれた方に振り返ると・・・誰も居ない

ツンツンツンツン・・・・・またきた・・・今度こそ右だ

「見切った!!右・・・と見せかけて左・・・を囮にしてやっぱり右だ!!」

シュババババ

上条は左へ右へと首を振り、一層のスピードを乗せて振り向いた。


ズビシ!!

「ぎゃああああああ!めがぁぁ!!わたしのめがぁぁぁ!!ぁぁぁぁ」

姫神秋沙の水平チョキが上条の目に炸裂した。

「油断大敵。実はそんなに効いてないはず。」

「ヒメ・・・なにゆえこのようなことを?」

涙目になりながら上条は姫神秋沙に抗議した。

抗議された少女は、顎でクイっとある一角を示し

「あの子達。私が前に居た学校の子。」

紺色のジャージを来た少女が10人ほど見えた。

「あぁ?姫神が前にいたところって霧ヶ丘女学院(きりがおかじょがくいん) ?」

少女は頷き上条の目を覗き込んで

「そう。あそこの生徒はイレギュラーな能力を使う人間が多いから気をつけて。」

気をつけてと言われても、上条は無能力者[レベル0]、警戒したところでどうしようもできないのが現実なのだが。

上条にできることといえば、とにかくできるだけ簡単なカードが手に入りますようにと神様にお願いするしかなかった。

◇◇◇

968 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/03(土) 22:59:42 [ cRlEYVGg ]

 炎天下の第七学区で少女は呻く

「うかつ。これは想定外だった。」

「同じく、俺も想定外だった。」

おなじようにぐったりしつつ上条当麻も呻く

上条は少女に1枚の紙切れを突きつける。

「これはこれは。苦労しそうな条件。」

あくまでも淡々と喋る姫神秋沙

「あ゛〜なんだこの条件!!書いたやつでてこーい!!」

上条がヤケクソ気味に炎天下の太陽に向かって叫ぶ

「太陽の紫外線。発ガン性あり。」

いつの間にか建物の影に入り涼を取る黒髪少女が物騒なことをいう。

上条の持つ紙切れの真ん中には油性のマジックでかでかと

『ツインテールのお嬢様』

と書いてあった。まじで

「ツインテールって時点で学園都市の50%は対象外!しかもお嬢様って時点で来場客からの条件一致率大幅DOUN!!」

日陰で体力を回復していた姫神は自分の持っている紙切れを上条に再度突き出し。

その紙には

『妹』と書かれていた。

(うはぁ・・・・なんだこの悪意の感じられる偏りは)

「こまった。わたしは一人っ子」

本当に困ってるかどうかが伺えない表情で呟く

「まいった、これはどこ探せばいいのかわからん。」

疲れた感じで自販機にもたれ掛かり、うーんと唸る上条。

「でもこの競技は高得点。小萌を馬鹿にした連中に一泡吹かせないと・・・フフフフフフ」

びくぅ・・・

(いきなり怖い笑い方しないでホシイ、上条さんの心臓はデリケートなんです。)

とにかく探してみる!!っていいながら姫神秋沙は『妹』を借りる為、第七学区をタタタタタタと警戒に走っていった。

上条当麻はそのとき別の事を考えていた、この競技の前に2人の魔術師と話していたことだ。

・・・・・・・・・・・・そんなこと見過ごせるわけないよな!!

パシィ!!と両手を打って自分の顔にパシンと平手を打ち気合を充電した上条は

勢いよく走り出した。

正確には走り出そうとした。

◇◇◇

969 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/04(日) 05:08:47 [ MZZbBJXo ]

 上条当麻と姫神秋沙が参加する競技が始まる前の出来事―――

『いまの学園都市は一般来場客を招く為に警備が甘くしてるだろう?』

『その隙をついて敵の魔術師が侵入してるってわけだぜい』

『でも何の為にだ? 破壊工作でもしにきたのか!?』

『あわてるな上条当麻、相手の目的はそうじゃない、魔術サイドの人間が科学サイドの本拠地であるこの街で大暴れするのはあちらにとっても好ましいものではないだろう。』

『あん?どういう意味だ?』

『そっちは後で答えるとして、カミやん、まずは主題から話そう、敵の魔術師達が科学サイドの本拠地であるこの学園都市で何をしているか?だぜぃ』

『魔術師、達?ひとりじゃないのか?』

『そう、現在確認されてるだけでも2人、ローマ正教のリドヴィア=ロレンツェッティ 。
そして走いつが雇ったイギリス生まれの運び屋であるオリアナ=トムソン。両方女だ。
さらにその取引相手である人物が最低一人はいるはずなんだけど、これははっきりとしてないね』

『運び屋に取引、一体ここで何をやろうってんだ?』

『そのまんまさ、カミやん、ヤツらはこの街で、教会に伝わる霊装の受け渡しを行おうとしている訳ですたい』

『何でこんな場所で・・・・・。『外』でいくらでも渡せるだろうに?』

『そうだにゃー。だからこそ、って答えておこうか。学園都市の警備員や風紀委員は、オカルト側の魔術師を無闇に迎撃・捕縛してはならない。そして同時に、
オカルト側の十字軍や必要悪の教会も、無闇に科学側の学園都市へ踏み込んではならない。 ほら、どちらの勢力も手が出しにくいばしょなんだぜぃ、ここは』

『大覇星祭期間中でなければ、警備体制の関係で、リドヴィア達の行動もかなり制限されていただろうにね。 しかし今だけは、半端に警備を緩めなくてはならないから、
その機に乗じて大胆に動くこともえきるという話だよ』


『だったらそこに居るステイルみたいなに、こっそり必要悪の教会の味方をたくさん潜り込ませれて捕まえればいいんじゃねーの?』

『僕は[君の知り合いだから、個人的に遊びに来た]て名目で来てるんだ。君と面識のないほかの魔術師は呼べないね。[イギリス清教という団体として]やって
きたことになれば、それに乗じて今の事態を傍観している、それ以外の魔術組織も[では我々も]と要請してくる。彼らは学園都市に友好的なわけでは無い、本来
正反対の位置に属する街を守ろうなんて考えるものか』

『当然学園都市側はその要請を突っぱねてもいいけど、全部の組織を突っぱねてれば現在微妙なパワーバランスで成り立ってる科学と魔術の両陣営の全面戦争にまで発展
しかねないんだにゃー、ま、あちらを立てれば、こちらが立たずって状況に追い込まれてしまう訳ですよ。そんな感じでリドヴィアやオリアナ達の問題はデリケートなんだよ、カミやん。 
ただでさえ厄介な状況下で、さらに余計な連中を呼び込んだら学園都市は間違いなく混乱の渦にのまれちまう。そういった事態を抑える為に動けるのは[学園都市にやってきた知り合いの魔術師]だけ
と思わせておくんだよ。学園都市の人間と接点のある魔術師なんて、ほんの一握りだ。どおうしても少数精鋭の攻め方になっちまうのは仕方がないぜい』

『??? じゃあ神裂は来てるのか?あいつ確か聖人とかいうメチャメチャ強い人間なんだろ、人は多いほうがいいんじゃねーの?』

『神裂は使えない。今回は特にね。何しろ取引されてる霊装が霊装だ』

『あん?どういう事だよ』

『カミやん、その霊装の名前は[刺突杭剣](スタブソード)っていうらしいんだぜぃ。そういつの効果はな―――』




『―――あらゆる聖人を、一撃で即死させるモノらしいんだよ』



◇◇◇

970 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/04(日) 05:22:25 [ MZZbBJXo ]
大覇星祭IF作者コメント

( ゚Д゚)ポカーン

しまった・・・・つい勢いで姫神秋沙まで・・・・

が、がんがれ美琴!!普段どおり空回りだ!!

いくつか先の内容まで出来ていますがこのSSの目的は

・自分の理想というか脳内で都合よく処理された当麻×美琴と当麻×黒子と当麻×姫神とかとか
そういった類の物語を書くことによって本来ありえない物語を想像してニヤニヤするのが目的です。

・まともに進めるとえらい量になってしまうので適当に進みます。

・あ、男性キャラだと土御門と青髪ピアスは大好きです。

現時点で本来の時間帯の昼食まで達してないという事実が先が思いやられる&書きたいシーンがかなり先・・・・

ステイル?このSSの中では人知れずがんばってもらう役なんで出番は・・・・シラナイ

971 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/04(日) 08:29:39 [ bIxQWpWY ]
私は姫神が出ることにニヤニヤを隠せない!

972 名前:とあるやりすぎのヲークライ 投稿日:2007/02/04(日) 10:08:40 [ MZZbBJXo ]
◇◇◇

 姫神秋沙は困っていた。

彼女が持っている紙切れに書いてある指定条件を満たす相手が一向に見つからないからだ。

黒髪の少女はうだるような炎天下の空の下汗だくになりながら走り回っていた。

「正直これはツライ。範囲が広すぎる」

誰にはとはなしに呟きながら道行く人達を観察する。そしてはぁっと溜息をついた。

「見ただけで[妹]と判別できるなら苦労はしない。どうしたものか」

いっそのこと彼女の担任のちびっこを連れて行って強引に[妹]だと言い張ってやろうかと考えていたらドン!っと彼女の膝裏に衝撃が走った。

カックン

「う、うわ、わわわ」予想外の方向からの膝カックン攻撃を受けて体勢が崩れるが、両手をわたわたと振りながら体勢を立て直すしてから振り返り

膝かっくんの犯人を捜した。

背後には誰もいない。

「学園都市の七不思議。でもいまは怪談の季節ではない」

ツンツン

自分のふくらはぎの辺りを突っついてくる感触がある。

不審に思って視線をググっと下に下げると、茶色いさらさらヘアが見えた。

見た感じ10歳前後の女の子で手にはわたあめのの袋をもっていた。

少女に視線を合わせるために自分はしゃがみこむ体勢になり、目の前に来た少女を観察する。

「そんなに見つめちゃいやん、ミサカはミサカは照れながら朝見たドラマの真似をしてみる」

じーーーーーーーーーーーー、無言で少女の目を覗き込む

「あれ?反応がなかったりミサカはミサカはもっと暴れてみたり」

そういうとちびっこは姫神の背中やら頬やらを激しく突っつきだした。

「やめなさい。迷子なの?」

自分のほっぺたを激しくつっつく小さな指をガシっと捕まえて極力怖がらせないようにたずねてみた。

「えっと、あちこち走り回ってたら、あの人とはぐれてしまったんだけど、ミサカはミサカはあなたのぷにぷにのほっぺたをつっつくのをやめなかったり」

つんつん、ぷにぷに 捕まえた手とは逆の手を使って姫神のほっぺたをつっつく。

黒髪の少女はいまだにぷにぷにされる自分のほっぺたを無視し「名前は?。どこから来たの?」とさらに尋ねた。

「ミサカはミサカ20001号、個体ネームは[打ち止め]ていうかも、ミサカはミサカはあなたに自己紹介してみたりする」

にまん、いち?・・・・らすとおーだー?・・・珍しい名前?いやそもそも名前なのかもわからない。

とにかくわかるのは目の前の彼女が保護者とはぐれているという事実だけははっきりとしている。

「思考完了。さあいこうか?」

「あれ?ミサカはミサカはなんだかテキパキと小脇に抱えられていつもより視線が高くなったことに感動を覚えたりしてみる」

茶髪の少女[打ち止め]を自分の小脇に抱えると姫神秋沙は少女に告げた。

「私は姫神秋沙。いまからアナタは私の[妹]」

「[妹]?確かにミサカは[妹]だけどとミサカはミサカは新事実を告げてみたりする」

「そう。それは好都合」

視線を上に戻し、途中で分かれた少年の事を思い浮かべたが、どうせあの少年ならどうにかするんだろうとか思って数秒で頭を切り替えた。

脇に抱えられてはしゃいでいる少女を見て、まあ、これなら[妹]でも通るだろう。競技が終わったら一緒に探してあげるなり迷子センターに預けて放送でも流してもらえばいい。

一息ついた後に姫神秋沙は軽快に走り出した。

「わっわっ、これは新感覚なのかも、とミサカはミサカは新たな喜びを発見してみたり」

◇◇◇

973 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 10:26:08 [ MZZbBJXo ]
大覇星祭IF作者コメントその4

・ニヤニヤにお答えして姫神秋沙の出番を更に作ってみたり。
・SSのタイトルを「やりすぎのヲークライ」→「Festival of large star IF」に改変してみたり
・ニヤニヤが最高潮に達したので姫神秋沙のみならず唐突に[打ち止め]も参加させてみたり
・このあとに[一方通行]がどんな慌てふためきながら大覇星祭を練り歩き、やはり上条とはかすりもしなかったり
・デルタフォース−1の[妄想]を[幻想殺し]でぶちころ・・・すのはもうやったから
・ビリビリの正統派ラブコメはこのまま本来禁書目録などのキャラが登場すべき場所のスペースを活用し元々無いけど無理やりラブコメしてみたり
・本当は結標淡希と御坂妹を出したいけど大覇星祭中はなぁ―とか冷静に突っ込んでみたり
・書いていると[幻想殺し]の自動迎撃効果が非常に邪魔になってきたり

すいません↑は気にしないでください。

974 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 12:17:43 [ MZZbBJXo ]
◇◇◇

 「・・・・・・・・おーい、クソガキィー、3秒やるからいますぐ出てきやがれィ!!」
 
誰も座っていないベンチに向かって[一方通行]の声が響く

シーン

[打ち止め]にわたあめの入った袋を渡した後、[一方通行]はすこし離れた自販機まで缶コーヒーを買いに公園を離れたのだが戻ってきたら少女の姿は無く

呼びかけても返事は無かった。好奇心旺盛なあの[打ち止め]の事だ、活気溢れる学園都市の空気に当てられてフラフラっと探索に出たのだろう。

(俺は、ここで待ッてろって伝えたはずなンだがなァ)

[一方通行]の頭には悪い予感ばかり浮かび、チッと舌打ちして彼はその考えを止めようとしたが、無理だった。

楽観的に世界の性善説が信じられない。彼はその程度には悪意に触れすぎていた。

 自分が缶コーヒーを買ってきた自販機の方向を見る。自販機まで約50m―歩いて数分の出来事だ。

(ほんの数分でもこれかよ、あのガキには首輪でもつけてやる必要があるな)

今でこそ中止されているものの[打ち止め]も[一方通行]も莫大な利益を生む研究材料としての共通点がある。

あの[幻想殺し]の少年の乱入で研究機関も凍結され、彼らは解放されたはずだった。



全盛期のようにはいかないまでも、やはり彼は学園都市最強の能力を持つ7人の1人、超能力者(レベル5)[一方通行]であり。

同じように[打ち止め]も1万人近い超能力者(レベル5)[超電磁砲]御坂美琴のクローンである[妹達]が形成するミサカネットワークを統括する[最終信号]なのだ。

 いやそういった損得の計算など必要ないのだ。 「あの一方通行の顔見知り」であるというだけで、すでに何らかの攻撃対象にされていてもおかしくない。

彼はもう[学園都市最強]の名を失ったターゲットの一人なのだから。

 彼は自分を支える近代的なデザインの杖に力を入れなおし、缶コーヒーをぐびぐびと飲みながら、面倒くさそうに学園都市の町並みに消えていった。

(あのガキがいきそうな場所ォ・・・・・)

 彼は[打ち止め]が行きそうな場所の想像なんてつかないのだ。

 後ろを見ずに[一方通行]に投げ捨てられた空になった缶コーヒーの缶が公園に設置された白いくずかごの淵にあたり、アスファルトで舗装された公園の地面にあたり、甲高い音を立てた。

◇◇◇

975 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 12:18:23 [ MZZbBJXo ]
 からからからから

大覇星祭に賑わう学園都市の公園をスポーツ車椅子の軽やかな音が響く。学園都市の外の世界とは30年は技術の差があるという最先端技術によって作られた

新素材で作られたスポーツ車椅子は軽くて、丈夫でまたデザインも普通病院にあるような無骨なものではなく、障害者用のオリンピックで使われるような近代的な

デザインをしていた。

「ああ、もうすぐお姉様に会えるのですね、黒子は黒子はこの瞬間を待っておりましたぁぁぁぁ!!」

スポーツ車椅子に乗った学園都市屈指の名門常盤台中学の制服を着たツインテールの少女―白井黒子が屋台で賑わう大型の公園の真ん中で身悶えしながら瞳を輝かせる。

「白井さんは風紀委員のお仕事をしに行くんですけどね〜。まずは何をしてもらいましょうかね、大能力者(レベル4)を遊ばせておく余裕はうちの支部には無かったりするんですよね、残念ながら」

そんな白井の[お姉様に会いにいく]という至上目的をさらりと受け流す風紀委員の腕章をつけた初春をジトっと背中越しに睨みながら

(この怪我が無ければわたくしの[空間移動(テレポート) ]でひとっとびなのですがね)

静養して大分回復しているとはいっても白井の能力である[空間移動(テレポート)]は11次元応用分野を利用したレアで制御が難しい能力なのだ。

3次元の世界に存在する自分や対象物、目標物の3次元的な座標を11次元の座標へと置き換えるというワンクッションをおく必要があり、その計算式も複雑でデリケートなものになってしまうのだ。

そのため白井自身が想定してないような[痛み]や[驚き]によって集中を乱してしまうと発動に失敗したり本来の効果が発揮できなかったりするのである。

「さっ、この公園を横断して30分ほど歩けば現在開催中の競技場につけますよ。常盤台中学も次の競技の為に来ている筈ですよ、いまは総合借り人競争っていうのをやってますねぇ」


借り人・・・・?白井は聞きなれない競技に疑問を覚えつつも

「普通に借り物競争でいいじゃないありませんこと? 先程お姉様がやってらした競技のように」

「ああ、四校合同借り物競争ですか? あれは人間だけじゃなくて物を借りてくるってルールですから、物を借りてくるに当たればラッキーって競技らしいですね」

スポーツ車椅子をからから、と押しながら初春飾利は丁寧に説明してくれた。

借り人競争は先のそれを特化させた競技らしくなんでも借り[者]の指定が厳しいということだ。

「なんでも前年の競技では完走率30%とかいう過酷の極みだったって話です。運営委員の趣味で書かれてる条件は多種多様、あとこの競技にでる男性競技者と協力者の間で競技終了後によく恋が実るらしいですよ、ロマンチックですね」

 白井は興味なさそうに、へーへーへーと投げやりに相槌を打つ。

ガッ、へぶぅ――べちゃ

白井の背後で変な金属音と悲鳴のような音が聞こえた。

 そのままカラカラカラっと軽快な音をさせながら公園と外部をつなぐ階段に差し掛かり白井の乗る車椅子は動きを止めた。

その階段は約40段ぐらいのアスファルト製の階段で高さは5mほどあった。車椅子用のスロープは無く完全に歩行者用の階段のようだ。

 階段の先は普通の歩道になっており、往来を歩く人の姿も見受けられる。

視線を泳がせて見ると車椅子用に緩い傾斜になった出入り口が少し先にあったのだが

「初春さん・・・この階段を車椅子で下りるのはちょっとデンジャラスな気が致しますのですが・・・」

最後の[が]を強調して後ろの少女に話しかける。

返事が無い

 不審に思ってスポーツ車椅子の小さな背もたれ越しに背後を見ると白井のスポーツ車椅子からたっぷりと30mはなれたところで初春飾利が自分の鼻を押さえてなみだ目になっていた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?


たっぷりと30秒以上思考が停止し、いまだに歩く速度で進むスポーツ車椅子は誰が押しているんだろう?と考えた瞬間

 
 ガッ・・・そんな音と共に白井の視界は一面の青空になり途端に襲う浮遊感がどこか現実離れして感じられた。


◇◇◇

976 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 12:19:08 [ MZZbBJXo ]

 「―――さん!!、――な―――でしたー!!」


「って・・・・きゃああああああああああああああ!!」

上条当麻は公園の横に据えられた自販機の陰から出て、あついなぁ、とか思いながら一歩踏み出したところで

自分の上から聞こえてきた悲鳴に、なんだよ、っと視線を上げるとそこには

うだるような日差しを背に迫り来る人影、あと悲鳴。隣接する大型公園の高台の階段の上から落ちてくる近代的なデザインの車椅子、その後で息を切らせて駆けてきた頭に花のような麦藁帽子を被った少女。




「不幸だ・・・」



緊急事態のはずなのにどこか冷静に上条当麻は告げた。

主に自分に。

その次の瞬間、上条の体に衝撃が奔り。上条当麻の意識は沈黙した。


◇◇◇

977 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 14:09:46 [ MZZbBJXo ]
◇◇◇

ゆっくりと目を開けて辺りを見渡す。

目に映るのはありふれた学園都市の町並み

どこか近代的な趣のある風景は白井がよく知る風景でもあった。

 「白井さん、大丈夫ですか!?」

酷くあわてた様子でテテテテと後ろにある階段から初春が降りてきた。

 よくみると彼女の鼻は赤くなっており、着ている制服も少し汚れている。

トレードマークの麦藁帽子は健在だがその鍔の部分に少し折れが見えた。

「突然空き缶を踏んづけたみたいで、足捻って転んじゃいました」

あははは、バツが悪そうに頭を書きながら初春が言う。

すっかり混乱していた白井の頭脳は、衝撃の事件からたっぷり5分以上たって、事態を把握した。

(えーと、つまり・・・・)

?マークをいっぱい浮かべながら考え込む。記憶を探っているのだ。

(初春が落ちていた空き缶を踏んづけてバランスを崩し、すっころんだところでわたくしの車椅子を放してしまい、そのうえ丁度運が悪くて惰性で進んでしまいそこの階段の上から突っ込んでまっさかさまにここまで落ちたってことですの?)

「階段まで緩い傾斜になっていたみたいですね、白井さん、どこか痛い所はありますか?」

言われてみても特に痛いところは見当たらない。

(変ですわね・・・・あの高さから落ちて無傷なんて、いや無傷に越したことはないんですけど)

 とりあえず立ち上がろうとして白井は自分の居る場所の違和感に気づいた。

「ところで白井さん、早くどいてあげたほうがいいですよ、ほら、その下の人」

自分の体の下に視線を移すと彼女の下にはうーーんとか唸ってる例の殿方―上条当麻がそこにいた。

「ナッ!!?ちょっと放してくださいまし!!??」

「がっしりって感じですよね―」

道路に隣接する歩道に倒れた上条はあろうことか上から落ちてきた白井黒子の体をがっしりとホールドしていたのである。

これでは空間移動(テレポート) を使って脱出することも出来ない。上条当麻の右手はあらゆる異能を打ち消す[幻想殺し]なのだ、たとえ空間を飛び越える白井の能力も彼の右手

に触られていてはその効果は発揮できない。

「ちょ!!ビクともしませんわよ!!??むー」

上条の体の上で白井がもぞもぞとかぐいーとかいろいろと脱出を試みるが、自分の両手は白井と上条の体の間に挟まれていて十分な力を発揮できない。

腰に左手、後頭部に右手を回されており、傍目には往来の真ん中でいちゃついて勢いあまって倒れたカップルにしか見えない。

(ぐぁぁ、なんたる不覚、こんなところをお姉様に見られたら!?ガクブルですわ。)

落下した先に上条がいて結果的に白井はそのおかげで無傷で済んだといったところだろうが

「ドキドキのシュチュエーションですね、これがお嬢様の恋愛なんでしょうか・・・おもわずパシャリと」

白井黒子と上条当麻の顔の距離は実に約2cm弱しか開いてなかった。後頭部も抑えられてるので逃げれないのだ。

「飾利!?携帯電話のカメラで写真なんて撮ってないで、早く助けてくださいまし」

怒った感じでツインテールお嬢様が抗議すると、えー、もったいないとかいいながら初春は渋々といった感じで白井ではなく、倒れた上条の顔を覗き込んで・・・・数秒

そしておもむろに上条の鼻を右手でつまみ、その口を左手で塞いだ。

「エイっ!!ギュム!!」

満面の笑みを浮かべて酸素の供給を断った。

◇◇◇

978 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 15:49:09 [ MZZbBJXo ]
◇◇◇

 苦しい・・・・

誰か助けてくれ・・・・・

激しい痛みと酸素不足で頭がはっきりしない。

まるでコールタールの海でも泳いでるように体が重い。

「―――ましー、――!!」

「えー――、も――ですよ、――せっかく―――なんですから」

耳元で聞こえる声がどこか遠いやら近いやらはっきりしない。

その癖自分の鼻のあたりにやたらとくすぐったい感触があるのだ。


すると突然、息が出来なくなった

息を吸おうとしても一向に肺に酸素が供給されない。

なにかが押さえつけてるような感触を覚える。

このコールタールの海を掻き分けるように上条当麻の意識は水面にでた。

「ぶはぁぁぁぁ!!?」

「あ、実験成功しましたよ――さん」

上条は肺いっぱいに酸素を送り込み、おもいっきり吐いた。深呼吸だ。

そしてまぶしい日光に目を細めて目を開けると、上から覗き込んでくる中学生ぐらいの少女がいた。



・・・・・・・・・・・・・・


さらさらの長い茶髪、まだ幼そうな感じの残る目・・・・超見覚えある。

てか数日前にあったような少女だ。―白井黒子・・・常盤台中学の1年生、御坂美琴の後輩でルームメイト、大能力者(レベル4)の風紀委員で空間移動(テレポート) の使い手

「「・・・・・・・」」

上条は自分の体の様子を確かめるべく各部を軽く動かした。

まず足、腕・・・首・・・・そのたびに白井が「ヒッ!」とか「ちょ!!」とか抗議の声を上げる。

もう一度超至近距離の白井の目を見て上条は告げた。

「奇遇だな、白井、怪我はもういいのか?」

さらりと上条当麻は語化すことにした。

「殿方・・・遺言はそれでいいんですの?(ごごごごごごご)」

にこっ、と笑いながらツインテールのお嬢様はそんなことを告げた。

顔こそ極上の笑顔に[見える]が目が笑ってない、その視線に上条当麻はかつてないほど戦慄した。


(現状確認!?考えろMY脳!!現在位置、さっきまでいた公園沿いの歩道・・OK
自分の体の状況、軽く打撲してるもののさしたる怪我はなし、強いて言えば打ち身・・・OK
自身のおかれてる状況確認開始、上条当麻は公園沿いの歩道に仰向けで倒れており、その上には何故か白井が乗っかってる・・・O・・・NO!!
なにこの状況!?しかも左手とか白井の腰に回ってるし右手は白井の後頭部をガシっともってて・・・・ああ・・・えーと)

とか高速で思考して思考の迷路に迷い込んだ上条に白井が顔を赤くして目を逸らし

「と、とにかく、手を放してくださいますかしら、その人目もありますし」

言われた瞬間にババッと両手を離して白井の顔から少しでも遠くに逃げようと一生懸命顔を反らす。

 白井はパンパンと衣服についたほこりを手ではたいて上条の上からどいて歩道に座り込むと上条の方を向いて

「さきほどはどうもありがとうございました、おかげさまでご覧のように無傷で済みましたわ」

と丁寧にお礼を言ってきた。その仕草が普段の彼女の印象とかけ離れて見えて

「あ、あぁ、怪我が無くてよかったな、その、な、なんだ抱きしめたみたいな感じで受け止めてたみたいでその、ごめん」

バツが悪く、赤くなってドモってしまう。

上条も体操服についた埃をパンパンと払い、スクっと立ち上がり無言でまだ歩道に座り込んでいる白井黒子に左手を差し出した。

「立てるか?」

白井は何故か真っ赤になって下を向き、やはり無言で右手を上条の左手に重ねた。

「よっと、っうわ」

「わたたたたっ」

上条がグイっと力を入れて白井を立ち上がらせるが立ち上がった後に白井はバランスを崩して上条の方向に倒れこんできた。

(ちょ・・・なにこの桃色空間・・・回避不可能?)内心ドキドキしつつふらつく白井の肩を両手で支える。

 そんな様子を一部始終見ていた、初春飾利はグっと白井に向かってガッツポーズをして携帯電話のムービー機能を使ってその一部始終を撮っていた。


◇◇◇

979 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 15:49:33 [ MZZbBJXo ]

 競技トラックと競技場に設置された大画面のモニターを交互に見ながら御坂美琴は自分の学校の待機スペースから離れた場所で競技の中継に耳を傾けていた。

実況を聞く限り、どこの学園も借りるべき人が見つからずに割りと苦労しているようだ。 あわよくば彼の拾った紙に自分が該当するような条件が書いてあれば

 もしかして・・・という淡い期待もあったのだろう。 ちょっと不機嫌そうだ。

実際、彼女が該当するような条件があったにしてもそれを1万人以上の選手の中からあの少年に渡るという確立はほとんど奇跡に近いのだが。

 この競技場は先ほど美琴が参加していた競技場より一回り小さく観客席もすこし少ない。
 
が各学園から駆けつけている選手やその父兄、もしくは大覇星祭の取材を行うTV局のカメラマンなのでそれなりに賑わっていた。

美琴は自分の着ている陸上選手のようなユニホームのポケットからカエルのストラップがついた丸っこい携帯電話を取り出して、アドレス帳を開いて
ピコピコと操作した。

―上条当麻― 該当データ無し 

当然だ、彼の電話番号など美琴は聞いたことが無いのだ。登録されているはずがない。

 「よく考えたらあいつの電話番号知らないわね・・・・でもこっちから聞くのはなんか癪だわ」

素直になれないお嬢様が携帯電話をパタンと閉じると、競技場の一角の集団がモニターを指差して騒ぎ出す。

上条当麻の学校の集団だ。 やたらと大声で騒ぐ人間もおり、静かにブルブルする人間もおり賑やかなことこの上ない。

「旗男だ!!」『旗男め!』「フラグたてまくり」

「所詮は旗男か」「貴様!あれだけフラグ立てておいてまだ足りないというのか!!」

「うん、僕らの絶望やね、って3桁単位でフラグ立ててどう収集つけるつもりやねん!?」

「やっぱりカミやんはカミやんだぜぃ、新たなフラグ伝説はどこまで続くのかにゃぁ」

・・・・・・・・・・

どう贔屓目に聞いても好意的には聞こえない応援を聞きながら美琴は競技場に目を戻した。

観客のワーーーという声が一層強くなる。どうやら選手が帰ってきたようだ。

次の瞬間に彼女の目に入ってきたものは―――

 
所々に包帯を巻いたままで常盤台中学の制服を着たツインテールの自分の後輩と


それを抱えて走る――体操姿に短パンの高校生、上条当麻の姿だった。


「な、な、なぁ・・・・!!」


 美琴の顔からビキリ!という変な効果音がして、彼女は口をパクパクと声にならない叫びを叫んだ。

あまりの出来事に愕然とする美琴の目の前で、上条に抱えられたツインテールの後輩―白井黒子は上条当麻と共に白いゴールテープを切った。

 パニック状態に陥っている美琴の目には白いタキシードに身を包んだ上条とウェディングドレスを着た白井黒子が白い教会でゴールインしたように見えた。


それもお姫様だっこで。

◇◇◇

980 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 15:53:07 [ MZZbBJXo ]
大覇星祭IF 「やりすぎのヲークライ」改め「Festival of large star IF」の続きをお送りいたします。

一方通行のセリフを書くのが面倒で面倒でしかたありません!!

あとステイルと土御門の会話も・・・・

美琴ED狙いとかいいつつ、順調にフラグゲットする上条当麻の勇姿を見たいという方は

適当にニヤニヤしつつお待ちください。

981 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 18:12:17 [ MZZbBJXo ]

 階段から落っこちた学園都市の新素材で作られたスポーツ車椅子は結局使い物にならなかった。

40段の階段を落ちる際に何度かぶつけた傷はたいした問題ではなかった、上条と白井が激突した後、運悪く車道まで出てしまい、これまた運悪く走行してきた自律バス

によってかるーく再起不能にされてしまったのである。

それでも噂の新素材の強度はすさまじく、とバスに吹っ飛ばされたにも関わらず車輪のひとつがひしゃげ、背もたれ部分のカーボン素材がどこかへ

吹っ飛んだ、その程度の再起不能なのだが。 

「白井さん、これどうしましょう、やっぱり弁償なんですかねぇ・・・・!?」

「不慮の事故といえば不慮の事故ですけれど、報告はしておかないと後が怖そうですわね、わたくしもまだ歩き回れる
ほど回復してるわけではないのでそれがないと不便ですわ。」

 回収してきた車輪がひしゃげたスポーツ車椅子と上条に体を支えられている白井を交互に見ながら初春は困った顔でああでもない、こうでもないと

もはや車椅子として致命的な欠陥を持ってしまったソレを懸命に修理しようとわたわたしていた。

「ところで殿方さん、アナタ競技中じゃありませんこと?」 上条の顔を下から見上げ白井が質問してくる。

(あ・・・そうだった、まだ借り人競争の途中だったんだよ・・・)

「はぁ・・・これは無理そうですね、支部に連絡して代わりの車椅子を用意してもらいます」

その言葉にピク!?と白井が反応し

「それではお姉様の勇姿が生で見られませんわ、そんなこと・・・目の前にご馳走があるのにお預けだなんて・・・」

心底残念そうに『ツインテールのお嬢様』がへたり込む。 なんだか戦意喪失のようだ。

(ん?)

自分の思考に軽く疑問を覚え、反芻するように再思考を開始する。

(ん、いまなんか聞き覚えのあるキーワードがでたような・・・・・なんだっけか)

神妙な顔をして考え込む上条の短パンのポケットから例の借り人指令書がひらりと落ちた。

「殿方、なにやら落ちましたわよ、風紀委員としてポイ捨ては見逃せませんわ」と白井は紙を拾ってその内容を見た。

「・・・?ツインテールのお嬢様?・・・なんですの?これ」

 刹那、上条の頭の中の疑問が氷が解けるようにきれいさっぱり無くなった。

上条は不思議そうな顔をして例の紙を上条に差出てきた。

(いたじゃないですか・・・ここに丁度条件にぴったしなのが・・・)

にやりとあまり品のよくない笑いを浮かべると上条は

 神速の動きで紙を差し出す体勢のままの白井に迫り、その手をガシィっと固く包み込んでこう言った。

「白井・・・俺と付き合ってくれ!!いますぐ」

 風紀委員の支部に連絡していた初春の手から携帯電話がずり落ち、地面と当たって軽い音をさせた。

予想外の上条の言葉に固まった白井を無視し膝の裏と背中に手を回しすばやくお姫様だっこの体勢に移行する。

腕の中で白井がなっ!わたくしにはお姉様というあいてが・・・とかいろいろ抗議していたがそれをすっぱりと無視して

大きく息を吸い込んで、上条当麻は競技場に向かって走り始めた。

◇◇◇

982 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 18:33:29 [ MZZbBJXo ]

 な、なんなんですのー

白井黒子はいまだに混乱を続ける自分の思考に振り回されて現状が把握できなかった。

いきなり手を掴まれて、一方的に告白されて、強引にお姫様だっこで攫われてしまった、そこまでは分かっている。

 白井自身は[残骸]争奪戦などの経緯で上条と何度か会っており、彼女が敬愛するお姉様[御坂美琴]がこの少年に淡い恋心を抱いていて

しかもそれが美琴の意地っ張りで素直になれない性格のせいでさんざんちょっかいをかけてるのにいつも空周りしていることも当然知ってる。

 自分の命も顧みないで、倒壊しかけたビルを駆け上がり、圧倒的な大質量[座標移動]で殺されそうになっていた白井をこの少年は拳ひとつだけで

助けに来てくれたこともあった。

(はっ!?なにを赤くなってますのわたくしは!?わたくしが照れてどうするんですの!!??)

 上条の腕に抱えられて、普段と違う目線で見る風景は少女自身に不思議な安心感を与えていた。

道行く人々が上条と白井を見て驚きの表情を作るが少年にはそれは目に入ってないようだ。

「ちょ、ちょっと、まってくださいま、へぶ」

「喋ると舌噛むぞ」

 せめて説明だけでもしてもらいたくて抗議の声を上げようとしたら、丁度上条が道路の段差を飛び越えた為、思わぬ衝撃で自分の舌を噛んでしまった。

おもわず涙目になって両手を自分の口に当ててしまう。

傍目には顔を真っ赤にして上目遣いで目をウルウルさせて恥ずかしがる女子中学生にしか見えないのだが。

 上条は走ることに集中しているので腕の中の白井のことは見ていない。

(ま、まぁ殿方にしては頼りになるほうなんですわよね、たぶん)

 なんだかとても自己完結した答えをだして自分を抱えている少年の顔を見上げた。

抱えられて下から見上げる少年の顔は太陽を背に受けて輝いて見えた。

 また舌を噛むのは嫌だったのであとで詳しく聞くことにして、体制を安定させる為に上条の首に自分の細い腕を回した。

◇◇◇

983 名前:641 投稿日:2007/02/04(日) 18:34:31 [ t.msWuDE ]
一ヶ月ぶりにこのスレに帰ってくることができたけど…、すごい賑やかになってますね。
ほんとに嬉しい限りです。
これは、GJの嵐なのか?!
アンカーをつけるのが間に合わないくらいなので、皆さんにGJ。

衣替えインパクトを引き起こした12巻ショックから長く書き込みできませんでしたが、
これ以上言うと言い訳の繰り言にしかならんので作品をあげることで平にご容赦を。
毎度長文ですいません。それではどうぞ。

984 名前:とある授業の社会見学 投稿日:2007/02/04(日) 18:35:15 [ t.msWuDE ]
 年に数回学園都市が外部に向けて公開されるうちの一つである社会見学祭。
 その会場の一つである建物の中へ開始時刻に合わせて続々となおも人が入り込んでいく。そのため現
在は少々人ごみで混雑が生じかけているのだが、ある一角だけは奇妙な空白のスペースが生じてい
た。
 その中心にいるのは二人の人物。
 周りにいる学生服姿の子供や大学生らしき大人たちがそこからやや距離を置いて注目しているのは、
主に一人の人物である。
 周りから注目されている当の女性はしかし、そんなことはこれっぽっちも気にせずに相手の少年である
上条に向かってさらに詰め寄っていく。
「おいおい、ほんとに大丈夫か? こんな開始前からボーっとしてるようだと祭りが始まったらもっと大変
じゃんよ」
 未だ突然の出来事に思考が追いつかずに硬直している上条に対して、ズズイッと身を乗り出してくる女
性。
 上条の顔を覗き込んでくるために、こちらもつい相手を見返してしまう訳だが、

(って、その姿勢はやばーーーっ!!)

 長身の女性が一般男子高校生の平均身長と同じかそれより少し低い背の上条の顔を覗き込もうとし
ているのである。当然、女性は身を屈めないといけない訳なのだが、その体勢をとると何だか先ほどより
も胸が余計に強調されているような気がする。
 さらに、女性はスーツの下に着ているシャツのボタンを二つ目まで外してある為に、首元から覗く鎖骨
のくぼみやらその下の何やら谷間まで見えてしま


 ズバン!! という効果音が聞こえそうな勢いで首を逸らすことで目の前の人物のある一点に集中しか
けた視線を無理やりねじり切る。
 嘲るなかれ。
 上条当麻さんだって若さを持て余す年頃の青少年なんですから。
 むしろ目が行きかけた途中で鉄の精神で阻止した自分を褒めてやりたいです。


 が、しかし。
 そんな上条の行動を見て女性の眉が僅かに寄せられる。
「こらこら、少年。どういうつもりじゃんよ?」
 屈んでいた身体を伸ばし、腕を組みながら上条に問いかけてくる。
 心なし声色も不機嫌そうなものになっている。
 それはそうだろう。あれではあからさまに女性の事を蔑ろにした行為と言えよう。
 対峙している上条がなおもそわそわと落ち着き無く視線をさまよわせている為に、イライラ度は現在進
行形で上昇中のようである。
「人が話をしてるときはちゃんとこっちを見るべきじゃん」
 そう言われても上条はそちらを見られないでいる。
 女性が腕を組んでいるために先ほどとはまた違う仕方で胸が強調されているからである。
(あれ、でもこの口調、どっかで聞いたことがあるような……?) 
 と、考え込んでいた上条に対し、ついに女性が行動に出た。
 おもむろに後ろから手を伸ばすと、上条の首を巻き込んで脇に絞めにかかる。
 視線をまともに向けられないでいた上条は気付くのが遅れたためあっさりと捕まり、完璧にロックされる。
「あくまでシカトとはずいぶんじゃん、少年」
 それに答えられるはずも無く、とにかくまずは女性の腕の中から抜け出そうと試みるが、細身な外見か
らは意外なほどにがっちりとホールドされているために徒(いたずら)に暴れてしまうだけとなってしまう。
 さらに言えば体勢的に上条の顔の横に何やらが当たっているようなのだが、上条はすでに半分パニッ
クになっているため気付いておらず、当の女性本人はそもそもそういうことには無頓着のようで全然気に
していないようだった。


 ところで、この状況を周りから見るとどのように映るのか?


 当初こそ何事かと見ていた周囲の人だかりも、今では単に学生が女性に可愛がられている様にしか
見えないために半分以上はあきれ返り、さらには上条がもがいているのが自分から女性に抱きついて
いるように見えるために半分近くは嫉妬を抱き、ごく一部は殺意すら立ち上らせている。
 そんな事とは露知らず、あいからわずじゃれあっている(ようにしか見えない)上条だったが、何とか腕
の拘束から逃れようと必死でもがき、とうとう次の瞬間、



 周囲の人だかりから高速で飛来した何かの直撃を後頭部に受けて吹っ飛び、そのまま床に沈んだ。

985 名前:とある授業の社会見学 投稿日:2007/02/04(日) 18:35:49 [ t.msWuDE ]


(ぐおぅ、な、なんだぁ…?)

 何とか必死で首をめぐらせると、ゴトリ、と音を立てて目の前に自身を襲った凶器が落ちてきた。
「社会見学祭案内パンフレット……?」
 倒れこんだままそれに書かれている名前を呟く上条。
 いや、あれをパンフレットと呼んでいいのか?
 見ればそのパンフレットなる物の厚さは、ともすれば手の平よりはみ出るかもしれない位ある。
(誰だよあんなの投げつけてきたのは!)
 ようやく思考が追いついてフツフツと怒りが湧いてきた上条の視線の先に革靴を履いた足が現れ、そ
の投擲鈍器に手を伸ばして拾い上げた。
 持ち上げられる本を追うままに視線を上げて持ち主を見ると、先程別れた吹寄制理が本の埃を払いな
がら周囲の人だかりを解散させているところだった。
 周りの人の流れが幾分元に戻ったのを見てから女性に向かって頭を下げる吹寄。
「どうも、この馬鹿がご迷惑をおかけしたようで申し訳ありません」
「あっはっは、迷惑って事は無いじゃん。……それにしても、相変わらず小萌センセのとこには面白いの
が集まってるみたいじゃん」
「いえ…、うちのクラスの全員がこんな馬鹿ばっかりではありませんから」
 自分を無視して冷静な応対をしている吹寄に対して
「おい、俺に対しては何にも無しなのかよ……?」
 恨みがましく上条が下から呟くと、
「黙れ馬鹿、今度は角でどつくわよ?」
「何でもないです」

 さすがは鉄の女。見事なまでの対処の仕方です。ハイ。
 っていうか、あんなものを角を使ってどつくとかあんたは鬼ですか?



 と、起き上がりながら先程の吹寄の言葉を思い出して
「なぁ、知り合いなのか?」
 上条が尋ねると、
「あんたね、体育の黄泉川先生でしょうが」
 あっさりと言われた答えに固まる上条。
「……え? 体育の黄泉川先生って、あの、いっつもジャージで過ごしてるあの……? うそだろー!?」
「何であんたは分かんないのよ?」
「いやむしろわかんない方が普通だろ!? いつもと違うかっこうしてるし体育の授業だって俺らのクラス
の担当じゃ無いし! むしろ吹寄の方が何で分かったのか聞きたいくらいだし!」
「私は大覇星祭の運営委員や一端覧祭の実行委員で警備員(アンチスキル)の先生方と打ち合わせる
機会も多かったし、そもそも自分の学校の先生が分からないっていうのはそもそもどういうことなのよ?
……ということは貴様は相手が誰かも知らないのにあんな事をやってたっていうのね? これはやはり制
裁を加えるべきかしら?」
 言いながら手に持つ本(と言っていいのか疑問に思える代物)を構えだす吹寄。
 対して上条は必死で弁解を始める。
「待って待って、吹寄さんのその認識にはちょっとした誤解がありませんか?!」
 そんなものは聞く耳持たぬとばかりにジリジリと間合いを詰めてくる吹寄に対して、会話の外にいた黄
泉川から声が掛かる。
「こらこら、いいのか? そんなふうに扱ったらせっかく苦労して貰ってきた『パンフレット』が台無しになっ
ちゃうじゃん?」
 ピタリ、と吹寄の動きが止まる。
 常に冷静な彼女にしては珍しく、動揺が割と顔に出ている表情で黄泉川に向き直る。
「いやぁ、いるもんじゃん、わざわざ『パンフレット』を持とうとする学生も。なんだ、やっぱり小萌センセの
トコは面白くてイイ子ばっかりじゃんよ」
 なぜか物凄く嬉しそうな黄泉川と、恥ずかしのを悟られまいとしてうろたえ気味な吹寄。
 まあ実際、直前に否定した自分がその範疇に入っていると指摘されたのなら無理も無いことではある
のだが。
 ただまあ、吹寄にとっての救いは黄泉川に向き直っているために上条に背を向けている事であろう。
 そんな心情など露知らず、突然動きを止めた吹寄に対して上条が横から顔を窺(うかが)うように、
「どうした吹寄。あ、そうだ。その『パンフレット』ってなんなの?」
 と尋ねてきたために、反射的に鈍器による制裁を加えたのは不可抗力であろう、と納得している吹寄。
 そんな吹寄とその足元にのびている上条を見ながら黄泉川は一人頷いているのであった。

986 名前:とある授業の社会見学 投稿日:2007/02/04(日) 18:40:39 [ t.msWuDE ]
 吹寄からの理不尽ともいえる制裁を喰らった上条だが、常日頃から食欲シスターさんからの噛み付き
攻撃を受けている身としては回復も早いわけで、早々に復活した上条は先程から話題に出ている『パン
フレット』について今度は黄泉川に尋ねる。
「っつーか、ほんとに何なんですか? 『パンフレット』なんて見たことありませんよ?」
「ああ、そりゃそうじゃん。ありゃ主に学園都市外から来た『祭り』参加者に向けて用意されてるもんだか
らなぁ。もともと学園都市内にいて、しかも学生だったらまず見かけることは無いだろうじゃん」
「???」

 そう言われてもいまいち理解し切れていない上条。
 そんな上条に向かって苦笑しながら説明を続けていく黄泉川。
 ちなみに、件の『パンフレット』を持っている吹寄はあまりこの話題を続けて欲しくは無さそうだが、教師
である黄泉川に対して強く出る事が出来ず、居心地が悪そうである。

「少年に聞くけど、今日は何しにここへ来たんじゃん?」
「? 社会見学ですけど?」
 唐突な黄泉川からの質問に戸惑いながらも上条が答える。
「なら、その社会見学は何をするもんじゃん?」
「え? 社会見学ってのは、だから、自分たちがいる社会の仕組みを見て学ぶって事でしょう?」
 何だかつい最近似たような説明をした覚えがあるなあ、と思いながら答えると、
「じゃあ、その見学する社会ってのはどういうもんなんじゃん?」
 さらに黄泉川が尋ねてくる。
「それは、えっと……自分の周囲にある環境とか、生活基盤の仕組みの事じゃないんですか?」
 黄泉川からの質問の意図が分からないまま答える上条。それに対して、なおも質問が被せられる。

     ・・・・・・・・・・・・・
「なら、学園都市にいる学生にとって、学ぶべき周囲の環境とか生活基盤の仕組みは何処のことだと思
う?」


 その質問に、未だ意図は分からないままながらも何か引っかかりを覚える上条。
 そう、そもそも社会見学とは、自分たちが生活している社会がどのように成り立っているのかを理解す
るために様々な業種の現場に赴き、実際に見学したりその仕組みを体験したりする事が多い。
 ただし、それはあくまで一般的なものである。
 上条たちが住んでいるこの学園都市は超能力開発の為に一般社会とは隔絶されたものである。
 さらには数多くの研究機関が集まって独自の科学技術を擁しており、その生活基盤の仕組みもかなり
『外』とは違ったものとなっている。
 そうした結果、都市内における科学技術は『外』のそれより二十年進んでいるとされ、さらに、独自の倫
理観、価値観といったものが存在する。
 その結果はどうなるのか?
 普段学園都市内で生活している学生にとってはあまり意識する事は無いが、都市内にいる人間と『外』
においては様々な認識のズレ、というものが確かに生じているのである。
 ならば、学ぶべき社会とはどちらのことを指すのか?

 そうした事についてようやく考えが至った上条を見ながら、黄泉川は説明を続ける。

987 名前:とある授業の社会見学 投稿日:2007/02/04(日) 18:42:06 [ t.msWuDE ]
「学園都市にいる少年たちにとって、身近な環境ってのはもちろん学園都市の中の事なんだろうけどさ、
いつまでもここにいるってわけでもないじゃん。なら、学ぶべき社会ってのは自ずと解るもんじゃん」

 そう、いくら超能力開発の目的のために集め入れられた学生たちであろうと、一生をこの学園都市の中
で過ごすというわけではない。
 大半の者はいずれここから『外』に出て行くことになる。(逆に言えば、一生を学園都市内で過ごす事に
なる者もいることはいるのだが…)
 つまり、学生たちにとって、知っておくべき社会とは、自分が住まう学園都市の中だけでなく、『外』につ
いてもそれが言えるのである。

「まあそんなわけで『外』の情報についても知っておいてもらいたい訳だけども、学園都市から『外』に学
生を集団で出すのは難しいじゃん」
「あ、はい」
 過去、といっても記憶にあるのは夏休み以降からだが何度か学園都市から『外出』している上条はそ
のときにクリアした様々な条件を思い出しながら頷く。
 ある意味機密データの固まりである生徒に対して行われた措置を、一人や二人ならともかく大量に行う
のは不可能ではないが、しかし、非常に煩雑なものとなるだろう。
「その代わりと言っちゃなんだけど、生徒を『外』に出すよりも、逆に『外』にあるものを都市内に入れた方
が情報の管理や対策、制限も掛けやすいわけじゃん。けど、そうやって『外』の企業やらを都市内で見学
させると、今度は都市内にある企業や研究機関からも自分たちも関心を持ってもらいたいって考え出し
たのさ。そうなると、いっそのことまとめてやった方が便利だってことでこうやって何箇所かの会場で集め
てそこに参加してもらうようになったわけじゃん」


「黄泉川先生、あの、そのことは今関係ないんじゃないですか?」
 早くこの場から離れたい、というよりも、自分の持つ『パンフレット』について話されるのに抵抗があった
吹寄だが、あまりにもかけ離れた話題が続いているように思えるために、思わず会話に参加してしまう。
「まあまあ、話しはこれからじゃん。いきなり本題に入ってもいいけど、そこに行くまでの背景についても
知っていて欲しいわけじゃんよ。なんでそうなったのか、それを知っているといないとではえらい違いがあ
るもんじゃん」

(あー、この人もやっぱ教師なんだなぁ……)
 吹寄の言葉に答えてから説明を続ける黄泉川を見ながら、上条はそんな事を考えていた。

988 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 18:43:06 [ MZZbBJXo ]
大覇星祭IF SS 「Festival of large star IF」をお届けします。

途中でSSのタイトルを「やりすぎのヲークライ」→「Festival of large star IF」に変えたもののですが
流れ的にビリビリがやっぱり空回りする羽目にw

おっかしいなぁ・・・美琴ENDのはずなのに姫神とか白井においしいところ持ってかれてる。

ワードで書いてるときはきにならないのですが掲示板に投下するときに長すぎて変なところで改行されて
読みにくいですねぇ(;´Д`)

お目汚しですが楽しんでいただければ幸いです。

このままの勢いで一気にベネツィアまで御坂妹を・・・・(ぐっ)

それとも・・・当麻が旅行中のビリビリの話とか

ああ、困った、世界中の木を切り倒しても足りなくなりそう

では次回をお楽しみに

989 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 18:48:08 [ MZZbBJXo ]
Σヽ(゚Д゚; )ノ  誤字発見・・・・981>

上条は不思議そうな顔をして例の紙を上条に差出てきた。

白井は不思議そうな顔をして例の紙を上条に差出てきた。

誤字スマソです・・・・

990 名前:641 投稿日:2007/02/04(日) 18:48:17 [ t.msWuDE ]
とりあえず今書き込んでもいいと思えるところまでです。
あ、社会見学祭の解説は>641のたわ言と思って読み流してくださいね。
あまり本気にしないでください。
一応黄泉川先生の説明は続いていますがここでぶち切ります。
今度は早く書き込めるといいなぁ。

で、ここから別件なんですが、そろそろ次スレについてどうするかと思ってるんですが、
いいスレタイとテンプレどうしますか?>>990以降でもいいかなとは思うんですが…。

991 名前:641 投稿日:2007/02/04(日) 18:50:23 [ t.msWuDE ]
ゴメン……。何のコントだよ……。ほんとどうしましょうか?

992 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 19:10:34 [ MZZbBJXo ]
とあるSSの禁書目録でいいんでないでしょうか?

別段特別なタイトルが必要とは思いませんが

993 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 22:21:24 [ MZZbBJXo ]
◇◇◇

 大覇星祭の運営委員である吹寄制理は自分の参加してない競技の際は積極的に運営に参加する。

しかしこの時ばかりは自分の積極性を恨まずにいられなかった。 先ほどゴールテープを切ったばかりの一着の選手を見て吹寄は不快な気分になった。

それこそこれみよがしに大きな舌打ちを打つのだが、当の本人はまったく気づいていない。

 本来なら自分の所属する学校の選手が一着でゴールしたのだ、これは素直に喜ぶべき事柄なのだろう。

控えていた他の運営委員の女子が一位の選手―上条当麻に手馴れた様子でスポーツタオルを頭から被せて臨時の待機場所に誘導する。

(カ、カルシウム・・・カルシウムが足りないんだきっと)

自分の運営委員のパーカーのポケットをごそごそと漁り、コンビニなどで売ってる小さな栄養剤の入った容器を取り出して蓋を開ける。

ザザザザァァァ、ためらうことなく大きく口を開けてカルシウムの錠剤を流し込む。

近くにいた運営委員のパーカーを着た女子がヒィッ!?っと御機嫌斜め45度な吹寄の様子に気づき小さな悲鳴を上げる。

 カルシウムの錠剤を乱暴に噛み砕き、同じようにパーカーのポケットから取り出したスポーツ飲料の小さなペットボトルの中身を使って強引に飲み込む。

ばりごりごり・・・・ぐび・・ぐび・・・ぐび・・・ごっくん

「ふー・・・カルシウム補給完了」

さきほどの黒いオーラを鎮めてみる。 沈静化成功。と声に出さずに呟く。

到着選手の待機場所に向かいながら吹寄制理は考える。

(確かにこの競技は人を借りてくる競技だけど、あの体勢でずっと運んできたのかしら、上条当麻)

別に彼女が不機嫌になる理由なんて何もない、あの少年は彼女にとってはクラスにいる三バカの一人

 ちなみに[クラスの三バカ]というのはほかならぬ吹寄自身が彼ら―上条当麻 土御門元春 青髪ピアスの少年に対して付けたものだ。

目を離すとすぐに規格外の事をして彼女の仕事を増やす。いわばトラブルメーカーなのだ、しかし同時にムードメーカーでもある。

それは吹寄自身も認めてる。 あの少年は夏休みからなのだがしょっちゅう大怪我をしては入院してすぐに退院するという奇妙なサイクルを送っている。

しかもそれらのすべてが女の子絡みだ。 上条当麻の行くところ女の子あり、といった揶揄もあながち間違っていない。

今回だってそうだ、スポーツのエリート校の嫌味な教師に彼のクラスの担任である月読小萌が酷く傷つけられたことが切欠でやる気がなくなっていたクラスの

嫌味な教師風にいえば―[落ちこぼれ]達をどんな相手にも屈しない最強の[猛者]に変えてしまったのだ。

あいかわらずとんでもない影響力だ。

 吹寄制理はカルシウムを摂取して幾分かマシになった頭で考えを整理して例の少年に視線を向けてみた。

「―――で―――」

「あら―が――――だ――わ」

 なにやら連れて来たツインテールの少女と話してるようだがここからは遠くて聞き取れない。ただでさえ雑音が多いのだ。

 自分の不機嫌さを隠すかのように吹寄は新たな選手の為にゴール地点へ向かって歩いていった。

◇◇◇

994 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/04(日) 22:29:14 [ vognkS1E ]
Festivalの人GJ!!!
で、予想外の高速化でスレ残量僅かですが、続きは次スレ?ここの埋め?

995 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/04(日) 23:23:21 [ MZZbBJXo ]
(。・x・)ゝどうもFestival of large star IFの作者:空です

続きはいくらでも出来てたりしますが次スレに書こうかと計画中です。

あと旧「やりすぎのヲークライ」部分とFestival of large star IFの誤字部分は手元に改正版というか手直ししたものがあったりもします。

むしろ最後を狙って次回予告とかいうのも考えています。

正直世にも珍しい 当麻×黒子というレアな状況が出来てしまって楽しくて仕方ありません。

鬼門なのはオリアナ=トムソン戦
如何にして違和感無くつなげるか・・・てか棒倒しの時点を書きたかっただけなのに・・・

まあいいかそのまま突っ走ります。

そして一方さんの出番やいかに!

996 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/04(日) 23:56:46 [ 5OGnWZBo ]
次スレのテンプレ案ですが、現状を見る限りそんなに書くことはないと思います。
感想のマナーや職人募集中とか、あとWikiのSSまとめについて言及してれば十分だと思います。
って本当はよくわからないのですがそのへんはスレ立てた人のセンスでいいんじゃないでしょか

997 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/05(月) 00:13:44 [ AKVNfZhQ ]
新スレ>>1
ということで梅

998 名前:169 投稿日:2007/02/05(月) 00:13:45 [ f4cy.Ibw ]
流石に余裕ないっぽいので次スレ立てちゃいました。
拙いテンプレですがそれは今後直していくという方向でどうか……
では移動&埋めをお願いします。

999 名前:Festival of large star IF 投稿日:2007/02/05(月) 00:52:29 [ XYTP3xKE ]
嘘予告で華麗に埋めてみたりする。


「やべェな、素敵にきまッちまッたぞッ、ぎャッはははは!!前衛的なオブジェにしてやるよォ三下がァ!!」

「お姉さんはまだまだイケルわよ、坊や」


「間に合わない!? とりゃああああああああ」

「お、お姉様、いくらなんでもそれは!?」


「奇遇だね、僕も君とは馴れ合うつもりこれっぽっちもないのさ、出番だ・・・[魔女狩りの王]」

「指先に電気を集めて・・・・ばーん、ミサカは新必殺技を披露してみます」


「よければ一緒に昼食をいかがですか?」

「いやぁ、それは助かります丁度場所を探していたところでして、あははは」

「あらあら、刀夜さんたら、どこにいってもこんな感じ一体どうして欲しいのかしらバスケットごとお弁当を投げつけて欲しいのかしら?」


「いろいろと事情がありけるのよ、いろいろとね」


「お、おいちびっ子、そっちはあぶないぞ!なんていうかとにかく危険が危ない!!不幸の気配がする」

「ダー!!ミサカはミサカはこれで世界が取れるかもって戦慄してみる」


「ゲブゥ、カミやん、それはアカンやろ・・・パタ」
「あ、青髪ィィィ、お、オリアナ=トムソン・・・・まずは貴様のその腐った幻想を打ち殺す!」

「フフフ。また出番無し・・・・本当に救われない・・・」

次回 Festival of large star IF 第24話

「フェイク ザ エスケープ」

お楽しみに・・・・・


























































(。・x・)ゝ嘘です、嘘予告です。

1000 名前:■■■■ 投稿日:2007/02/05(月) 02:05:55 [ zgmpaZu2 ]
1000ゲットー

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