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169くそ餓鬼:2015/10/13(火) 21:12:56 ID:???0
たずっちの本より。↓長女=次男   弟=シン  と読み変えるべし。

* * * *

加害者の同胞であること

 両親は弟のことで一日一日をこなすのに精いっぱいだった。重大事件であったために、親子関係・家庭環境が大きく取り上げられ、当然のように親の養育態度が問題になった。
長女の目から見て、両親は少しとんちんかんではあったが、普通の親だった。弟も少し変わったところはあったが、普通の子だった。少なくとも彼女はそう思っていた。
だが、普通の家の普通の子が、こんな普通でないことをするだろうか。同じ両親に育てられた自分はどうなのか。落ち着いてきた時に考えたのは、そのことだった。

 裁判所からは、親子関係の修復が強く勧告されていた。それに従って、両親は三か月に一度は弟の面会に行った。家計は苦しく父親は失業したままだった。
施設までの交通費は馬鹿にならなかったはずだが、父親の退職金を切り崩しているらしかった。
 両親は時々長男に手紙を書いた。あたり障りのない内容で、手紙のたびに、両親は長女にも手紙を書くように言った。書く言葉が見つからなかった。長女は仕方なしに、ありきたりの二〜三行の定型文を母親の手紙の最後に添えた。

 家族であの子を待ってあげよう、と両親は言った。長女からすると、ひどく綺麗事に聞こえた。だが、長女はそれを言葉にできなかった。
両親は長男を恐れていたし、長女もそれは同じだった。何か下手なことを言ったら弟がもっと恐ろしいことをするのではないか、そんな不安があった。
弟の異常な行動が自分に向けられないという保証はなかった。やがてまた弟と一つ屋根の下に住むことは耐えられない、と長女は思った。

 高校の修学旅行にも行けなかった。親しかった友人たちに別れも言えないまま、生まれ育った土地をあとにした。あのまま行けば推薦入学で大学に進学できるはずだったのに、その夢も手放さなければならなかった。

 なぜ弟のために私がこんな目にあわなければならないのだろう、私が何をしたというのだろう、長女はそう言いたかった。
だが、それは言ってはならない言葉だった。孤独だった。両親は長男に夢中で、長女が家のことを切り盛りすることを当然と考えているようだった。鬱屈した思いが強まっていった。

 事件は長女に重くのしかかっていた。あの事件の犯人の家族であるといつ暴露されるかという恐怖に、長女はおびえていた。新しい土地で友達を作ろうとは思わなかった。
過去の自分を知っている人とも一切の連絡を断ち切った。だが、ネット上の自分の写真は取り返しがつかなかった。
そのサイトの画像を削除してもらっても、すでにいくつものコピーが作られていることを長女は知っていた。
髪型を変え、必要のない眼鏡をかけるようになった。アルバイトも、コンビニやファストフード店など、若い客の集まる場所は避けた。
 その頃から長女は時々食べ物を吐き戻すようになった。だが、長女の変化に、両親はまったく気が付いていなかった。


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