したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

文章鍛錬企画【同一プロット競作】5/15〜

10くろ:2004/05/22(土) 00:07
中途半端宣言!! 今回は参加することに意義があるという考えに基づき、投稿いたしました。

あこがれ  原稿用紙換算約5.8枚

 美由紀はバスの一番後ろのシートに座って、ピンク色のカバーのついたスケジュール帳を開いていた。今日は一件、明日ははしごで二件、明後日はオフ。その次の日にまた一件。ちょうどいい具合に仕事が入って、ちょうどいい具合に休みが挟まる。休みの日にはなにか買い物をしようかと考えながらスケジュール帳を閉じてその上に手を重ね、お気に入りの店で施してもらったネイルアートの出来ばえが目に入ってくると、美由紀はとてもいい気分になった。駅のターミナルでバスを降りて、美由紀はアイボリー色の薄物のジャケットのボタンをしめ、待ち合わせ場所である喫茶店の位置が示された地図を手に爪先の尖ったハイヒールでコツコツと音をたてながら歩いていった。
 道に迷うこともなく喫茶店を見つけ、中に入ると「いらっしゃいませ。一名様ですか」と落ち着いた中年のウェイターに声をかけられたけれど、「待ち合わせなんです」といってさえぎり、店内を見回した。今日の客の目印は紺のスーツに左耳の銀のピアス。店内には紺のスーツを着た客が二人いたが、一方は二人連れで一方は若い女だった。
 「ごめんなさいまだお相手が来ていないみたい」美由紀はそう言ってウェイターに適当な席を案内してもらい、コーヒーを注文した。
「はじめまして。近藤です。あなた美由紀さんでしょ?」
 さっき店内を見回した時に窓際の席に座っていた若い女が話し掛けてくる。たしかにその近藤という女は紺のスーツを着ているし、短く切った髪の合間から左耳に銀の大振りな輪っかのピアスをしているのが見えた。近藤は美由紀の前の席に座り、ウェイターは気を効かせて近藤の座っていたテーブルから水とコーヒーを運んできた。近藤は女というより「女の子」だった。美由紀は煙草に火をつけてゆっくりと一息吸い、ゆっくりと吐き出してから言った。
「どういうこと?」
「どういうことって?」
「なんなの?」
「なんなのって? いけない? 女が女にエスコートを頼んだら」
「意味がわからないわ。あなた幾つ?」
「十六。あなたは? 美由紀さんは?」
「関係ないわ」
(つづく)


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板