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文章鍛錬企画【コラボ即興文】4/22〜

28うり:2004/05/04(火) 16:03
<つづき>
 「お坊様、本当に助かりました」
 親子は深々と頭を下げる。二時間ほどで湯治場に着いたのだが、私はふらふらで、一歩も歩けなかった。足も腰も背中も、母親の重さが堪えたらしく、鋼の様に張っている。早く湯に浸かって疲れをとりたいと、挨拶もそこそこに腕で這う様にしてその場を離れた。
 隠れ湯治場と言うだけあって、湯には誰もいなかったし、宿にも人影は見えなかった。宿とは言っても、掘っ立て小屋に毛が生えた感じで、いわゆる商売の宿とは趣が違っている。湯に来た人間が一休みするだけの雰囲気だ。
「お背中、流しましょうか」
 女の声に振り返ると、いつの間にか娘が立っている。透けるほどの白い肌、ちいさな乳首がつんと天を向いた、型のいい乳房。しかも、乳輪は赤子の肌に似た淡いピンク。縦に切れた小さな臍。腰は贅肉の欠片も窺えない締まりよう。そして、儚げな黒い茂み。一糸纏わぬ姿で私の前に立っている。もちろん、私自身も立っている。
「あ、ああ、いや。結構。お気使いは無用です」
 しどろもどろになって、視線をあらぬ方向にそらす。
「そんな事をおっしゃらずに。こんな事でしかお礼を出来ませんから」
 娘は乳房をやんわりと背中に当て、股間に手を伸ばす。
「あ、あ、いや。お礼など本当に結構、あ、あれ、い、いや、本当に、あうっ」
「お坊様、ここは、お言葉通りではありませんよ」
 くすりと笑いながら、熱く猛ったものを柔らかく握り締める。
「あ、あ、ああああ」
 ――パンパンパン、パンパンパンと、肉を弾く音が山中に響き渡った。
  *
「本日午前八時頃、○○県××町の山中で、女性二人の遺体が発見されました。遺体には、銃器によると思われる複数の傷があり…………なお警察では、付近に逃げ込んだと思われる、銀龍組組長、安田剛毅さん殺害犯との関連も含めて捜査中です」
私は、食堂でテレビを見ながら、首を竦めて辺りを窺った。
あれは人間じゃなくて化け物だったんだ。
   *
「『長き箸にて飯を食う』とは、これ如何に?」
 娘は耳に息を吹きかけながら、握り締めた手を、ゆっくりと上下に動かしはじめた。
「『長き箸にて飯を食う』とは、これ如何に?」
「ああ、あうっ。め、面倒だから、箸を捨てて手掴み」
 我慢の限界だった。振り返って娘の唇を奪った。その時だ、娘の舌が、口の中にぬるっと入って来た。先が二つに割れた舌が、だ!
「きゃはは。坊主っても、色仕掛けにはこんなモンだ。ねえ、兄貴」
 目の前に、二つの舌をべろんと垂らした、河豚の様にふくれた体長二メートルばかりの大蛙がいた。その後ろに、角と牙を生やした蜥蜴が……。
「坊さんよお、『長き箸にて飯を食う』とは、これ如何に?」
 にやにや笑いながら蜥蜴が言った。その瞬間、私は行李から拳銃を取り出し、ぶっ放した。
  *
「だから、さっさと食っちまえばよかったんだ」
「すまねえ、兄貴」
 俺は、消え行く命の灯を惜しむ間もなく文句を言った。
「おめえみてえなバカは、あの世で長い箸で飯でも食ってろ」
「……でも、死んだら飯なんか食えないじゃないっすか」
「バカ、だからオマエはバカなんだ。生きてたって、長い箸じゃ飯を食えねえんだよ」

 <了>


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