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文章鍛錬企画【コラボ即興文】4/22〜

24海猫:2004/05/02(日) 13:35
 コラボ即興文、初参加です。
 皆さんへの感想批評は、SIDE-Bに書きますので、気長にお待ち下さい。

○次回のタイトルと書き出し。

 ――犬も歩けばニャンとやら――

「……………………」


 では作品に移ります。
 

『サイレント』

 初めて彼女を見た時、身動きができなかった。全ての音が消え、色は失われた。
 そして、僕は、気が付くと保健室の白い天井を見つめていた。
「う……あ……?」
 自分の呟きが必要以上に大きく聞こえた。遠く、体育館の方から、歓声や喧騒が聞こえる。まるで自分だけ片隅に忘れ去られたような、そんな不安感がじわりと湧いた。
 その時、シャッ、という歯切れの良い音がして、カーテンが開かれた。それにつられてそちらを見ると、そこには保健委員の鹿山ユカが心配そうな表情で立っていた。
「あ、良かった。タイチくん、気が付いたんだ」
「…………ッ!」
 僕は返事をしようとして、咽喉が引き攣った。言葉が出ない。
「びっくりしたんだよ。覚えてる? 体育の授業中、いきなり倒れちゃったんだから。ひょっとして、貧血持ち? ……あ、今ちょっと先生いないの。だから悪いけど、独りで休んで先生待っててくれる? 私、授業に戻らないと。女子バスケなんだけど、人手が足りなくてさ」
 鹿山がそう言っている間も、僕は彼女から目を離す事が出来なかった。僕は何か言おうと口を動かしたものの、ぱくぱくと反復を繰り返すばかりで声が出ない。
「じゃ、ゴメンね。おやすみ〜」
 そう呑気に言い残し、鹿山はカーテンを閉めた。待って! と心の中で悲鳴を上げる。が、それは無論鹿山に届く事もなく、ドアの閉じる音によって、僕は世界と隔絶された。
 静寂の中、僕は相変わらず視線を外す事も出来ず、彼女を見つめ続けた。何だ? これは、何なんだ? 自問が心を埋め尽す。が、返ってくるのは谺ばかり。何なんだ?
 白いカーテンで四角く切り取られた世界の中、彼女はその隅に佇んでいた。……彼女? あれは本当に「彼女」なのだろうか? はっきりとは分からない。「彼女」はまるで不定形な靄のように境界線の曖昧な、ただ人を象っているだけのモノなのだから。しかし何故か、僕にはその靄が「彼女」であるという確信があった。根拠もなく。
 ……幽霊? ふと僕の脳裏に、そんな単語が思い浮かんだ。これが俗に言う、幽霊という奴なのだろうか。そんなものがこの世に? しかし現に、鹿山には「彼女」の姿は見えていないようだった。自分のすぐ隣に「彼女」が立っていたというのに。

 ↓


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