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文章鍛錬企画【コラボ即興文】4/22〜

2にゃんこ:2004/04/22(木) 17:44
『コラボ即興文』をさっそく、書かしてもらいましたヽ(^。^)ノ

最初なので、前の人の作品の批評はありません。


―― 四月のクロス ――
それを見つけたのは、千尋が十五の時だった。
学校からの帰り道、塾までの時間を潰すために遠回りして偶然にみつけたのだ。

……どうも違うな、これは俺のイメージじゃあないよ、と吉岡は書き直した。
石塚は涼子と別れると携帯を妻にかけた。
「いま、部長と別れたところだ、あと、一時間ほどで帰るから」
「あなた、洋介が学校で……」
「なに、洋介がまた、何か問題を起こしたのか」
石塚は帰ってから洋介のことは聞くといって、携帯をきった。
もちろん、妻にかけた電話の内容はうそである。彼は涼子と不倫をしている。家のことも仕切れないのか、あの女は。石塚は妻と涼子を天秤にかけた。しかし、中身よりも、外見を判断材料にしてしまう、石塚はそんな悲しい男だった。妻の冷たい肌と涼子の熱い肌……。
くらべるだけ無駄だな……、涼子のほうがよいに決まっているじゃあないか。
石塚は自嘲気味に笑うと、家路についた。
「パパぁ〜」
いきなり背中から抱きつかれて、吉岡はキーボードを打ち損ねた。五歳になる愛娘のひなこが、背中に張り付いていた。
「ママはどうしたのかなぁ」
「ママね、パパと遊んでもらいなさいって」
吉岡がひなこをおんぶしながら、居間に行くと、妻の浩子は電話をかけていた。ヤフーBBに加入しているので、電話代が無料になったとかで、時間があれば友達とだべっている。
「ひろこさ〜ん」
吉岡があてつけがましく、声をかけると、浩子は、吉岡を見てにんまりすると、「じゃ〜ね」といって、電話を切った。
「俺、小説を書いているのだからさ、たのみますよ」
「ああっ、ごめ〜ん、一応、ノーベル飴、目指しているのだったわね」
「違うよ、ノーベル賞だよ」
「ごめんごめん、ひなこママとあそぼ」
吉岡がひなこを下ろすと、ひなこはつぶらな瞳で吉岡をうらやましげに見上げた。
書斎に戻った吉岡は、ディスプレーを見た。
すると、ワードには、先ほどまで書かれていなかった文章がいつのまにか書かれていた。
それは、緑の小石だった。キラキラ輝いており、千尋はしばらく見つめていたが、上着のポケットにその小石を入れた。
するとどうだろうか、塾で抜き打ちにあった、数学と英語のテストが完璧にできたのだった。
「完璧じゃん」
千尋はにんまりした。それにしても、おかしい、勉強をしていないところが出たのに、どうして問題が解けたのかしら……。ポケットにある緑の小石がなんだか温かい。まさか、さっきの小石が、もしかして、小石は守り神なのかしら。
なんなのだぁ、俺は、こんな文章を書いていないぞ。吉岡は頭をかしげながら、ディスプレーを覗き込んでいる。
吉岡は知らない間に書き込まれた文章を削除した。するとどうだろうか、削除した尻から、次から次へと先ほどの文書が書き込まれる。
「おかしい、これは……」
自分が書いた文章の続きを、あわてて打ち込んだ。
駅を降りると、石塚はバス停でバスの来るのを待った。
「あれっ、おかしい」
キーを叩いても、ワードを書き込めなくなった。吉岡はあわてた。急にパソコンが自分の思い通りに動かなくなった。
そして、ディスプレーには、吉岡の知らない文章が次々に、叩き込まれていく。
千尋は駅前にある塾が終わり、バス停にいくと中年の男が立っていた。
「別れてやる、あの女とは……」
「えっ……」
千尋は男の顔を見た。そこには停留場の電灯に照らされて、ムンクの「カールヨハン通りの夕べ」に描かれたような、顔面蒼白の男が立っていた。
千尋は、自分が持っている緑の小石をこの男に、なぜか、あげなければならないと思った。自分には小石がなくても、まだ未来がある。しかしこの男には小石の助けが必要だ。それは理屈ではなかった。
千尋は、そう思うと、緑の小石を石塚に差し出していた。
「ありゃ、交差しちゃったよ、二つの作品がクロスしたよ」
吉岡が驚いて、ディスプレーを見ていると、最後に「にゃんこさん、お疲れ様でした、風杜」と、あった。
「えっ、どういうことなのだ、これは」
にゃんこは、文章鍛錬企画の掲示板で風杜に質問をしたが、彼はそれを、「風杜マジックです」といって、答えを教えてくれようとはしなかった。

―― 了 ――


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