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文章鍛錬企画【コラボ即興文】4/22〜

13ガストロンジャー:2004/04/26(月) 22:25
『不思議少女』

「え〜と。今から手品をします」
 公園で遊んでいる私を呼び止めて、友達の千佳ちゃんが突然変なことを言い出した。私とメイちゃんはまたかといった顔をして、千佳ちゃんに付き合った。
「じゃ、鳩をだします」千佳ちゃんはそう言って砂場まで走って移動して、砂をつかんで私達に向かってなげた。「ね? 空飛んだから鳩でしょ? きゃはは」笑っているはずの千佳ちゃんの表情はいつも暗い。
「ちょっと千佳ちゃん……」と私が言いかけたときメイちゃんは私の袖を引っ張り、目で合図した。
 この春。クラス替えもあってそれぞれ友達作りに必死な頃、私とメイちゃんと千佳ちゃんは席が近かったせいもあって‘オトモダチ’になった。千佳ちゃんは小学四年生なのに雑誌‘小学六年生’を買っていてメイクや渋谷事情に詳しかった。私もメイちゃんもそんな大人っぽい千佳ちゃんに憧れた。千佳ちゃんはお金持ちでいつも私たちに何か買ってくれた。初めてスタバに行った時も私はどきどきしたのに千佳ちゃんは堂々とマンゴ・フラペチーノを頼み「優ちゃんたちも何か頼めば? 奢るから」と言って矯正器具のついた歯を見せて得意そうに言った。私はそんな千佳ちゃんを大人だと思っていた。

「じゃぁ。次はワニになりまーす」私たちのしらけた拍手を受けて千佳ちゃんは手品を続けた。巻き貝を模した大きめの滑り台(巻き貝の形がおっぱいに似ているのでこの公園は‘おっぱい公園’と呼ばれている)のてっぺんまで登り、水泳の飛び込みをするように身体をくの字に折って頭から滑り、ざざっと砂場に着地して「ね? ワニでしょ?」と確認した。私は「うん。ワニだね」と答えた。

 千佳ちゃんの本性に気づくのに十日はかからなかった。嘘ばかりつくし、ゲームをしていても勝手にルールをかえてしまうのだ。トランプをしていても‘大貧民一揆無しルール’が千佳ちゃんだけ‘一揆あり’になってしまうのだ。幾ら渋谷やメイク事情に詳しくても、スタバ奢ってくれても、もう‘友達’としては付き合いきれなかった。しばらく無視しようとメイちゃんと話し合った。メイちゃんも「うん。そうだね」と同意してくれた。

 「次はねずみ」初夏に近い強い日差しを受けて、千佳ちゃんは汗を掻きながら、トレーナーの中に頭と両手を引っ込めて、屈み、もぞもぞと動いた。「ねずみ!」―もう手品じゃないじゃない。また勝手にルール作ったな―。メイちゃんは小さな子供を相手にするように「うん。ねずみだね」と拍手しながら言った。


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