したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

文章鍛錬企画【三語即興文】4/12〜

35作家志望:2004/04/21(水) 14:59
名前:小山田
こちらに初めて参加させていただきます。新参者で投稿の仕方がよくわからず(汗)ちょっと気が引けるのですが。これでいいのかなあ? 

 にゃんこさん へ
 お久しぶりです。時々ここを覗かせていただいていましたが、相変わらず勢力的にご活躍されていますね。
 小4の女の子といえば、どこで習ったのか媚びることを覚えたり、冷淡になってみたりと、ちょうど猫の感じに近くなるのでしょうか? そのうち「お父さん、汚い! 臭い!」などと言うようになって(足の匂いなんて、とんでもない)、お父さんの相手をしてくれるのは良助だけ、という期間がしばらく続くのでしょうね。成長の過程だとわかっているけど、覚悟してるけど、なんとも淋しい父親業というものです。嵐の前の静けさ、ひと時の平和な日常、という感じを受けました。

  ●次のお題は 「あり地獄」「サッカー」「情操教育」
  ●追加ルール 「平安時代を舞台に」

 お題は「こいのぼり」「カイト(洋凧)」「漫才」
 追加ルールは「女の子を主人公にする」

―― カイト ――

 「かわった凧だなあ、ぼうず」
五月晴れの大空をダイヤ型の凧が優美に舞うのを見て、男は思わず声をかけた。
「おっちゃん、知らんの? カイトっていうねんで」
振り返った顔を見て男は少なからず戸惑った。ふっくらと柔らかそうな唇の優しげな面差しは少女のものだったからだ。しかし、切れ長の目は生き生きと輝き、何も頓着していないようであった。
「男の子かと思ってしまったよ、悪いことを言ったね」
「かまへん、かまへん」カイトはゆっくりとはちの字を描く。
「スカタンの男の子はみーんな家でゲームばっかりしてるんや、そこへいったらウチはホンマもんの男みたいやからね。おっちゃん、東京の人?」
「東京じゃないけど、まあ、近いところに住んでるよ。しかし、見事に飛ぶものだねえ」
「そやろ? ウチ、大好きやねん、楽しいってのもあるけど、きれいやなあって思うもん。絵もウチが描いたんやで」
まさに飛び立とうとしている白鳥が描かれている。ああ、きれいや、と少女はつぶやいた。
「いつも上げてるの?」
「うん」少女はあごを突き出した。
「ほら、でっかいこいのぼり上がっとるやろ、あそこがウチの家やねん。あのこいのぼり、ウチのやで」愉快そうに笑う。
「女の子なのに?」
「お雛さんはおねえちゃんにやったらええ、うちはこいのぼりが欲しい、いうて今年買うてもらったん」
「ふうん、君のおとうさんも面白い人だねえ」男も愉快になっていた。
「うん、おとうちゃんと話してると掛け合い漫才みたいやってよく言われるねん」
 しばらく二人は並んで伸びやかに旋廻するカイトを見上げていたが、次第に空の青が濃くなって風が張り詰めてきたころ、少女はカイトを手繰り寄せはじめた。
「おっちゃん、もう帰るわ。おとうちゃん、掛け合い漫才待ってるさかいに」
「うん、おっちゃんも帰ることにしよう」
「おとうちゃん、な」うつむいて凧糸を巻きながら言った。
「去年の冬から一人ぼっちやねん。おかあちゃん、ロクに何も言わずにおねえちゃんだけ連れて家を出ていったん。おとうちゃん、毎日泣いて……だから、ウチ、男になることに決めたんよ。ダンマリのずるいおかあちゃんみたいには、なりたないんや」
 剥き出しの細い首がこまかく震え、長いまつ毛の影がいっそう濃くなった。
丁寧に糸を巻き上げ、カイトを小脇に抱えると、少女は再びにっこりと男を見上げた。
「じゃね、おっちゃん、さいなら」
男はただ頷き、軽やかに駆け出した少女の後姿を見送った。

―― 了 ――


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板