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文章鍛錬企画【三語即興文】4/12〜

27おづね・れお:2004/04/19(月) 02:12
おづねです。

》森羅万象さん
当時としては十分に「科学」の考えを持っていたのに、こうして歴史の空白に埋もれてしまう悲しさがありますね。発見されても散文詩であるという評価しかしてもらえないということは、きっと同時代のほかの人がもっと優れたものを残したんじゃないだろうか……なんて考えました。
博士への敵愾心(?)という動機が、もしかしたら偉大な足跡につながったの「かもしれない」ということがおもしろく思えました。人の原動力って案外ちっぽけなところにあるのかもしれませんね。

では、お題は森羅万象さんの「黒」「赤」「金」追加テーマは「ストーリー重視」で、です。
★次のお題は「MS」「端末」「戦い」追加ルールは「過去または未来のお話にしてください」です


『金魚』(三枚)

「なあなあ、なんで赤いのに金魚っていうん?」
 聞きたがり屋の聡子が、真新しいピンクの浴衣の胸の前でうちわをぱたぱたやりながら聞いてきた。肩にかかっていた黒い髪がふわっと浮いて、汗の玉を二・三浮かべた頬をなでていく。こいつの肌ってけっこう白いんだな、と俺はちょっと不謹慎なことを考えてしまう。
 って、うわ、お前、胸元がはだけかけてるじゃないかよ。中学生にもなってそんな無防備なことしたら駄目だろ。
「知らねーよ。それよりちゃんと前、直せ」
「ねーねー、金魚には黒いのもいるじゃない。金色なのはいないの、なんでかなあ」
 金魚すくいの夜店のおっちゃんがこっちを迷惑そうに見ているのが視界の端に止まった。しょうがないので俺は聡子の手を引っ張ってその場を抜け出した。
「祥太は勉強できるから何でも知ってるでしょ」
 夜店は神社の裏手の空き地に立ち並んでいたので、俺たちは人気の少ない境内に移動していた。境内には、納涼祭のぼんぼりも、夜店のような派手な紅白じゃなく、もとは真っ白だったらしい黄ばんだ紙の張ってあるのが四つ五つといったところ。ちょっと離れると人の顔もよくわからないくらいの頼りない灯りだ。
 そのうす暗さに俺の緊張はちょっと高まっていた。
「俺なんてまだまだ、何にも知らないよ」
「ふうーん。たくさん本を読んでるから、なんでも知ってるのかと思ってた」
 聡子は狛犬の台座によいしょと寄りかかって、またうちわをぱたぱたやり始めた。ときどき俺のほうにも風を送ってよこしたりして。
「お前さあ、胸がはだけるからやめろって」
「祥太は何でも知ってるって思ってたな。――私の気持ちとか」
 東の空に満月が昇りはじめていた。木立の上から差してきた月光が聡子の肌を青白く燃えさせた。俺はこのとき雰囲気に呑まれていたのかもしれない。つい言ってしまってから少し慌てた。
「知ってるよ」と。
 ぱたぱたと聡子が送り込んできている風がさっきから俺の浴衣の首筋にかかっている。そのせいで俺の胸元もはだけ気味になっている。聡子は自分自身の浴衣の乱れを直そうともしていない。もしかして、さっきからわざとやってないだろうか。
 聡子の視線が俺の胸のあたりに凝らされているのをどうしても意識してしまう。俺は無言で聡子に近づいた。聡子も何も言わず、そしてずっと俺の胸のあたりを見ている。
 少しずつ、はだけかけた胸から聡子の視線が這いのぼってきた。俺の鎖骨に月光のしずくが青くたまっていて、そこをしばらく見つめているのだった。 
「なんだ、よかった」
 やっと俺の目を見て、聡子はそう言った。
 俺たちの聖なる儀式は、月光の洗礼を浴びて――。

−了−


※この年代では、女の子のほうが男の子よりも成熟が早いのじゃないかなあと思って、そのあたりを書いてみたかったのですが……。
 ちょっと恥ずかしい感じになってしまいました。修業が必要です(^^;>


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