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文章鍛錬企画【三語即興文】4/12〜
26
:
森羅万象
:2004/04/18(日) 15:13
>にゃんこさん
「スカートの中の〜」というと某フェミニストでしょうか?(笑 いえ、あちらは女性でしたね。風刺がきいていると思います。にゃんこさんは名前と裏腹に黒いユーモアが得意なんですねえ。面白かったです。
「化粧、季節風、街」追加テーマ「せつない話にする」
彼が私家版の辞書を作りはじめたのには、ただ一度だけ、私淑するD博士に「そんな言葉は辞書に載っていない」と言われたからだった。在野の錬金術師にとって、博士の言葉は絶対だった。
「人生は葉脈に似て多岐に渡る」と彼はいつも自戒していた。そのあと心の中で「葉は太陽の光を受けいつも瑞々しい、だが葉は幹の一部分に過ぎず、樹が冬を迎える頃には塵芥に還るのだ」と呟くのだった。彼のその言葉は自虐ではなく、ユーモアだと――おそらく本人だけがそう思っていた。
彼の辞書が「季節風」の項に辿り着いたときのことだった。錬金術師的対応としては、街の無知蒙昧な連中が口にするが如き「シルフが気まぐれに大陸を眺め渡る」だの「妖精のコーラスがさざなみとなって、いずれ溢れ出すのがそうだ」だのという説はばっさりと切り捨てたいところだった。彼は島から出たことがなく、だからこそ大陸のことは伝聞の形でしか知らなかったのだが、おそらく温度差がこれを生み出しているのだろう、風とはつまり空気の流れで、流れとは高きところから低きところに向かう、自然の摂理に他ならないのだから、と考えた。実際に、そう記すことにした。
だが、彼は真実を求める錬金術師である前に、また理想を追う一介のロマンチスストでもあった。簡潔に事実を記すべき辞書に、推測と推論、世界のあるべき指針で化粧した文章を、つらつらと書き連ねた。黴の生え始めた五大元素を持ち出して、書き上げて、それから笑みが漏れた。
――私は、辞書に載らない言葉しか載っていない辞書を作り上げようとしているのだ。だから博士よ、もうあんな台詞は言わせない。
*
その辞書が発見されたのは、埋もれていたメガリスの、祭壇の傍らだった。メガリスというのは、巨大な石の遺跡のことである。ストーンヘンジといったほうが通りがいいだろうか。
それが辞書だと思われたのは、しかし最初だけであった。半ば朽ちかけた表紙に「ユニサイクロペディア」とあったからだが、しかしこれは辞書の体裁を借りた散文詩であろう、ということに落ち着いた。作者は不詳である。(了)
事故ってなければ次のお題は
「黒」「赤」「金」
追加テーマは「ストーリー重視」で。
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