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文章鍛錬企画【三語即興文】4/12〜

24海猫:2004/04/18(日) 10:30
 長文防止の為、他の方への感想は天井桟敷へ。

>上珠さん
 タイトルの如く、店主にそんな笑顔向けられたら逃げられませんね。僕も洋服とかパソコン買う時接客されるの凄く嫌なんですよ。何か買わなきゃならないような、義務を背負わされた気分になるので。そういう時はわざと無愛想にして追っ払うんですが。ところでお題の使い方が、もう少し捻っても良かったと思いました。そういう意味では、お題の消化に追われたという感が否めません。ちょっとマヌケな神田のキャラも、もう少し活かしてほしかったです。

○お題:「辞書、コーラス、遺跡」
○追加:「中世ヨーロッパを舞台にする」


 この子は奇形の忌み児で御座いました。近親相姦などという背徳の罷り通る時代の犠牲者にして、賑わいが移ろい、また私のようなモノが棲みついた遺跡に捨てられた、哀れな幼子で御座いました。ところがこの子は、私のようなバンシーの姿を見ても恐れもせず、私の後をついてくるので御座います。私はほとほと困りましたものの、ついかつて己が人の子の母であった事を思い出し、この子の世話をする事にしたので御座います。
 この子は言葉を喋りませんでした。それは口が利けぬのではなく、言葉を知らぬようなので御座います。私はまず言葉を教えるため、何事となく話し掛け、また地面に文字を書いてはそれを教え、辞書を枕に眠らせる事にしたので御座います。ところが一向にその子は言葉を話さず文字も書かず、ただ私を見て切なくなるような笑顔を向けるばかりで御座いました。
 ある時――そう、それが一週間前の事で御座います。私が目を離した隙に、この子はいなくなったのです。しかし私は愚かにも、また森に遊びにでも行ったのだろうと思っておりました。ところが夕刻過ぎてもこの子は帰らず、とうとう心配になった私は、森の中を駆けながらこの子の姿を探す事にしたのです。
 ――が、私はそこで凍りつきました。何と言う事でしょう、私はこの子の名を呼ぶ術を知らなかったので御座います。私は、ああ私は……――この子に、名前すら与えていなかったので御座います。そして途方に暮れた私の目に、この子の姿が飛び込んで来たので御座います。身体中を殴りつけられ、血に塗れた、この子の姿が。
 この子は、森向こうの教会に行っていたようでした。この子は言葉が話せぬ故か、教会から聞こえてくるコーラスに心惹かれているようで御座いました。いつも定刻になると聞こえるそのコーラスに、この子は微笑みながら耳を澄ませていたのです。そしてその日、とうとう我慢し切れずに街へと赴いたこの子は……。この子の面妖なる姿を見た人間がどんな仕打ちを与えたかなど、私は想像したくも御座いませぬ。
 私が駆け寄るとこの子は、うっすらと目を開き、私を見ました。そして、何事か呟いたのです。私は急いでその口元に耳を寄せました。……しかし、その口からはもう、呼吸すら聞こえませんでした。今一度見たこの子の死に顔は――……何とも穏やかな、笑顔で御座いました。
 私は泣き続けるでしょう。一時でも涙を忘れさせてくれたこの子の笑顔を思い出し、私は泣き続けるでしょう。またこの子のような子供がいる限り、私は泣き続けるでしょう。そして人間達は、そんな私の存在など、知る事もないでしょう。


※備考:バンシーとは、ゲール語で「妖精の女」を意味し、家に住み着いて死者が出る時には泣いて教えてくれる。身篭ったまま死んだり、出産中に死んだ女性であるという伝説があり、バンシーの養子となる方法も伝えられている。
 以上、某サイトからの情報の概要です。一応参考までに。
 次回は、
○お題:「花束、太陽、塵芥」
○追加:「作者オリジナルの諺を挿入する」でお願いします。

 ……にしても長いな。短くしようと心掛けているつもりなのに……。


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