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文章鍛錬企画【三語即興文】4/12〜

2有志:2004/04/12(月) 05:33
(――前のスレッドの最後の作品を転載しました――)

タイ・カップさん 投稿日: 2004/04/12(月) 05:07
お題「血・氷柱・雨」追加「小説関連以外で、作者の趣味を前面に押し出す」

「危ないですよ、危ない危ない!」
放送席で格闘プロデューサー谷山が叫びを上げている。挑戦者デビル・ブラックはチャンピオン・ロードルにパンチの雨を浴び、額からたらりと血をしたたらせていた。氷の拳とよばれるロードルのパンチはいつにも増して切れ味鋭く、さながら氷柱の雨といった様相である。
 バーリ・トゥードのチャンピオンを決めるグライド・グランプリ・ヘビー級タイトルマッチは馬乗りでパンチを繰り出すロードルが圧倒的優勢を築き上げようとしていた。デビルの意識は朦朧とし、視界が白い霧に覆われつつある。このまま死ぬのも俺らしくていいかもしれねえな――消えかける意識の中、デビルはふとそんなことを思った。
 子供時代から悪事の限りを尽くしてきたデビルにとって、相手をぶちのめせば名声を得られる格闘技こそは天職であった。この白豚野郎をぶっ殺せば俺がチャンピオンだ。チョロいもんよ、と挑んだこの試合であったが、白豚野郎はバカみたいに強く、さすがのデビルも打つ手なしであった。
 その時、白い霧の中から一本の糸とともに何かが降りてくるのが見えた。タランチュラである。毒蜘蛛は言った。
「天の裁決によるとあなたはこれから地獄に送られる運命にあります。しかしあなたは生前私が暖炉の火に落ちかけているところを助けてくださいました。そこであなたの望みをかなえようと思います。もしよければ私の糸を上って天国に来てください」
 デビルはこの申し出に大喜びし、毒蜘蛛に言った。
「望みをかなえてくれるといったな。糸はいいからこの白豚野郎を一刺ししてくれねえか。ぶん殴られたままじゃ気がおさまらねえんだ。たむぜ毒蜘蛛さんよ」
 毒蜘蛛は哀しそうな目で頷くと、ロードルのうなじを一刺しした。すると彼は熊のような叫び声をあげて首に手をやった。その隙に乗じてデビルはロードルを組み伏せ、鬱憤をはらすかのごとくめった打ちし見事KO勝ちをおさめた。
「新チャンピオンの誕生です。デビルがタイトルを奪取しました!」
「VTRを見てみましょう。おや? 何か首に黒いものが見えたような気がしましたが、うーん、気のせいですかねえ」
「ええ。大方カメラにごみでも入ったんでしょう。それにしてもデビル、すばらしいファイトでした」

 天の蓮の間から事の成り行きを眺めていた神様はあきれ顔でつぶやいた。
「やれやれ、救われないやつよのう」

――了

 感想は桟敷板に記します。

本文17行目の「たむぜ毒蜘蛛さんよ」は「の」が抜けていました。正しくは「たのむぜ毒蜘蛛さんよ」です。どうもすいませんでした。
新たなお題は「雀・火山・海苔」追加「季節は春」でお願いします。


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