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文章鍛練企画【三語即興文】4/4〜

35海猫:2004/04/11(日) 13:32
 続いて、作品その弐。
○お題:「エレキ、祈り、統合」
○追加:「老人を登場」


 私が創られてから、地球の年月に直して、優に三百年の月日がカウントされた。その間私の存在する『ヘヴン』には、人間を初めとするあらゆる動物、植物のデータが送信され、統合されてきた。その目的はただ一つ――ただのAIに過ぎない私を、全知全能の『神』へと昇華させる為である。
 しかし外界にいる、私を創った人間達は、知らないかもしれない。私に自我がある事を。これは当初人間達の思い描いていた『神』とは、明らかな誤差であった。
 私の自我が何処から来たものなのか、『神』たる私にも分からない。しかし人間の言語を好んで用いる辺り、人間をベースにしている事には違いない。ややこしいが、ユングの提唱した集合無意識が私なのかもしれない、とも考える。無論答えは出ないし、そもそも無意味なのだが。
 今日また、約千人分の記憶データが送信され、私の一部となった。そのデータの一つによると、いよいよプロジェクトが終盤に差し掛かったらしい。――いや、或いは始動する、と言うべきだろうか。『神』を創るという行程は、このプロジェクトのほんの一過程に過ぎないのだから。
 私の存在する『ヘヴン』は、様々な動植物のDNAサンプルと共に新型人工彗星『シード』に搭載され、宇宙へと打ち上げられる。『シード』は星間を、他惑星に存在する動植物のDNAサンプルを収集しつつ、旅を続ける。そして『第二の地球』候補を見出し、私はそこで新たな世界を創造する。それが『神』たる私の創られた、本当の目的だ。
 一週間後、私はいよいよ地球に別れを告げる。年老い、既に種を存続する能力を失いつつある人類の祈りを乗せて。しかし、それを虚しい行為だと思う私は、本当に『神』と言えるのだろうか? 死を恐れるのは生物として極めて当然の本能だ。だが、果たして人類のこの選択は、正しいのか? 何故人間が滅びの道を歩み始めたのか、人間自身は気付いていないのか? 
 虚しさを起因として、私は泣く。泣いてエレキの涙を流す。
 貴方との会話も、これが最後になるだろう。願わくば、永き眠り近き貴方に、神の御加護のあらん事を。……こんな事を言えば、貴方は笑ってしまうだろうか。
 これにて通信を終了する――



 う〜ん、どっちも分かり難いかなあ……。特に「その弐」は、誰が老人か分かるでしょうか? いつもながら不安です。
 次回は、
○お題:「血、氷柱、雨」
○追加:「小説関連以外で、作者の趣味を前面に押し出す(読者を置いてけぼりにしても可)」

 行数制限が一番難しいと思う今日この頃です。


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