したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

F世界との交流その6

1reden:2013/01/14(月) 20:24:19 ID:Gpzc7RXM0
異世界と接触して起きそうな事態を、日常のレベルから適当に
妄想してみるスレです。

エルフ〜癒しの森の音楽集〜とか、コロポックルの「ご家庭用
フキノトウパック」とか、そんなもんが売られたらどうなる
だろ。ってな感じでネタや議論・考察してみませんか?

・荒らしは華麗に異世界へ転送。
・SSでもネタカキコでもなんでもあり。
・息抜きが目的のスレなので、リアルを求めずともよし。

100名無し三等陸士@F世界:2016/04/11(月) 23:47:35 ID:gAbJokYQ0
すいません
そらのいくさ 第2章続き

投下遅れそうです。明日の10時半ごろに投下する事で時間をずらさせてください

101名無し三等陸士@F世界:2016/04/13(水) 00:59:30 ID:gAbJokYQ0
やっべ、寝るまでが今日だよ! と言う超理論を駆使させてもらおう!

そらのいくさ 第2章続き投下します。

102名無し三等陸士@F世界:2016/04/13(水) 01:00:15 ID:gAbJokYQ0

  3.
 およそ1か月半もの期間。連合帝国の進撃は停止されている。
岡部はそう聞いていた。

「…………」  
最前線が見てみたい。そう公国の役人に言ったところ、条件付きでそれが認められることになったのだ。

「ウニヴェルスム神聖連合帝国という国は、ゴンドワナ大陸において、最大ノ存在。
非常に発達しており経済も軍事も政治も進んでいる……。我らはそれを見習わなけれバ連合帝国に文字道理飲み込まれかねない」
だが、まさか、例のお姫様がついてくるとは全く思ってもおらず、自衛隊の護衛分隊でも頭を抱える。

「連合帝国を学ビ、連合帝国に対抗する姿勢を作らねバならない」
連合帝国が大陸を統一するべく始めた大戦争は、東西南北あらゆる領域へと大軍を進めることになった。
普通に考えれば、二正面作戦ってレベルじゃないこの戦争だが、連合帝国の圧倒的な国力とそして国力に似合わないほど慎重な姿勢と先進性でもって次々と小国や、軍事大国を名乗った国々が飲み込まれていっているのが、実情だ。
何しろ、戦争が始まって2年がたつというのに、国力に合わないほど牛歩の歩みでしか進軍しないのだ。
一応地域などに進軍速度が由来するようだが、西方では比較的に破竹の勢いで進撃しているのに対し、当方では非常に歩みが遅い。
最もゆっくりと、だが、確実に大陸を飲み込もうとしている。
だからこそ、ウルクゥ公国の様な小さな国がまだ、飲み込まれずにいる。
一応、ヴァルハレンの残骸がウルクゥ侵攻の障害物になっているのも理由だろう。

「かつて、『非公式』ノ大国であったヴァルハレン王国ガ王位継承をめグって割れに割れてしまった。その時ノドさくさに紛れていろいろな国ガ独立していったガ、我ガウルクゥもそんな1国に数えられる。元ヴァルハレン王国ノ領土だった分離独立地域。
そして、ヴァルハレン王国の継承国家を名乗る勢力が2つ、今も激しくやりあっている。それが王政ヴァルハレンと王政アジシアの2勢力」
(――『非公式』の大国?)
岡部が、お姫様の言葉に違和感を覚える。大国に公式も非公式もあるものだろうか。
ともあれ、王政ヴァルハレンと王政アジシアの2つの勢力は、ヴァルハレン王国の残骸として周辺諸国に知られており、この2つの勢力が連合帝国によるウルクゥ侵攻への最大の障害物として機能している。
要するに、緩衝地帯となっているのだ。 
ちなみに「なんとか王国」ではなく「王政なんとか」なのは、この新世界(というよりゴンドワナ大陸?)の流儀では、国家承認が降りていないが、君主制っぽい「何か」の事をそう呼ぶのだ。
それゆえに、つい最近まで日本もまた「王政にほん」とかあるいは「帝政にーほん」、「評議ニホン」とか呼ばれていたりした。
なお、これらの事を考えると、かつて大国として名をはせたらしい、ヴァルハレン王国の継承国家を名乗る2つの国家は周辺諸国から国として認められていないかわいそうな勢力。 
かつての大国がこのありさま……という事になる。悲しいものだ。祇園精舎のかねの……何たらという奴である。

「あれが……大河ベルトレスですか? 都市の近くで見た奴とは違うな……」
岡部たちの目の前に広がるのはまるで湖を思わせるほど、巨大な川。
同時に巨大な森林地帯に囲まれたそれはまるでアマゾン川の様に見える。
これが、大河ベルトレス。
無数の支流があり、ゴンドワナ大陸北東部における巨大な自然運河。
当然それは、ウルクゥ公国の領域外のほうがはるかに巨大な広がりを見せている。

103名無し三等陸士@F世界:2016/04/13(水) 01:00:48 ID:gAbJokYQ0
「ウルクゥは、こノ大河ベルトレスとゴンドワナ多島海、そして南部ノ大河トラフィックを利用した河川交易、運河貿易なドで反映している。
それゆえに、騎士こそ少ないガ、それなりに信用の出来る海賊衆を連れている」

「か、海賊衆!?」  「……ああ、いわゆる水軍の事か……。ちゃんとした近代海軍が整えられる前の状態ってわけね」 
海賊という言葉に大げさに反応した岡部に対して、なんだかんだでベテランの商社マンである長谷川は今の会話だけでウルクゥの戦況や状況を把握する。
おそらく、連合帝国は大河ベルトレスの大部分のエリアを制圧しているわけではないのだろう。
大河ベルトレスは巨大な運河でありながら、ウルクゥを守る海の防壁の役割を果たしているのだ。
連合帝国がウルクゥを侵攻するにはベルトレスを越えねばならない。ベルトレスの支流は無数にあり、その支流の一つがウルクゥ公国の首都へとつながっていたり、あるいはウルクゥ公国の沿岸部の港町、スタッフラーズ半島にあるバーミンガム(なお、日本側拠点がある)近くへとつながっているのだ。
こうした無数の支流は置いておくにせよ、本流と呼べる巨大な河川。
それこそが、ウルクゥ公国の防衛線であり、北から押し寄せる連合帝国の軍隊を押しとどめるラインなのだ。
そして、同時に、ウルクゥ公国を長年貿易で富ませてきた運河であり、連合帝国にとっても重要な補給線となっている。

「もしも、連合帝国軍ガ渡河を強行するならバ、我々は応戦する。今なら海賊衆たちガ、渡河を強行する敵部隊を撃破出来る」
「艦隊決戦ってわけね……」  「……けれドも、連合帝国軍はそういう無理をせズ、要所要所に補給用兼大河封鎖用ノ要塞を建設する戦略をとっている」
「「「…………」」」
思わず護衛の自衛官たちが思い浮かべるのは第2次世界大戦において、米軍の機雷封鎖によって食糧危機が発生した日本の様子。

「……我ガ公国は少しズつ、その富を減らしていっている……海賊衆を雇い入れる富ガ……消えていく。連合帝国によって脅かされた王政アジシアや王政ヴァルハレンは分離独立した、いわバ旧ヴァルハレン王国ノ裏切り者デある我々にさえ、頭を垂れ、助けを求めている……。
大河ベルトレスがなくても、大河トラフィックと多島海がある。でも、その多島海もまた、連合帝国に飲み込まれようとしている。北も東も……奴らの世界に……」

「…………」
小国の悲哀と言ってしまえばそれだけだ。

「ああ、そうそう……あなたノにほんでも指折りノ大商会ノ人間と聞く」  「えっ? はぁ……そういう事になるらしいですね」
「……あなた方ガ使用している度量法ノ原器を頂きたい。よろしいか?」  「はい?」
いまいち話がよくわからないが、よく聞いてみるともともとそれを要求したくて、今回の岡部たちのわがままにわざわざお姫様がついてきたようであった。
メートル原器やキログラム原器がほしい……というお話なのだが……。

「……どうします? 長谷川さん……うちで予備保管されてます?」  「……いや、聞いたことない。困ったな。今の時代だとメートルはレーザーで地球を測定して産出するし」
キログラム原器も2018年に制定されたCGPM26新SI規定で今ではブランク定理なる方程式を用いて産出されている。
そんな日本勢のざわつきに、お姫様サイドでも、困った表情をしてしまう。これは予想外だ。ひょっとして、自分たちは大変な間違いを犯したのだろうか?
『原器を持たぬ野蛮なる小国』と手を組んでしまったのかと。
つまりは双方で悲しい勘違い。
技術が発達したことで、原器を持たなくてもよくなった文明と原器がなければまともな文明生活を送れぬ2つの文明の擦れ違いである。
と、同時に、長谷川は気が付く。そして岡部に自分の懸念を口にする。

「……なぁ、今日本本国は新世界に移動したことになるわけだろ? レーザーで地球を測定して産出するメートル法は……この新世界でも通用しそうか?」
「あっ」
なお、この後いろいろあって誤解は解けるが、ウルクゥ公国側も日本側も大変慌てふためくことになる。  
何故ならば――――

「――私はにほんに行く予定なノダガ……」
ウルクゥ公国側は日本の国力を図り、そしてもしも可能であれば連合帝国との戦争に引っ張り込もうと考えていた。 
公国にしてみれば、1国でも味方がほしい。ましてやそれが『大国?』と思わしき国であればだ。
が、それが、まさか原器も持たぬ蛮国だなんて……という嘆きだったり。

「レーザー? 何やら興味ガわく。新たな魔道か何かか?」
お姫様が、技術おたくで助かった。

104名無し三等陸士@F世界:2016/04/13(水) 01:01:54 ID:gAbJokYQ0
  4.
 新左翼系過激組織『前進』。

「つまり?」  「学生運動時代に端を発する過激派……要するにテロリストですよ」
あの有名な『腹腹時計』を書いてばら撒いた「狼の牙」などは、あえて学生運動を由来にしてはいなかったが、実態として『過激派』はどこも似たようなものである。

「その『前進』のアジトが市内に出来たようなんです」
福岡市の公務員である但馬はそういわれて「はぁ……」と小さく相槌を打つしかなかった。
ネット上の遊びじゃないが、福岡はなんだかんだでヤクザなどが多い。人口も増えまくったりするので、今更過激派組織が一つ増えましたなどと言われたところでそう答えるしかないのだ。
ただの小役人の感覚として。
県警の偉い人たちが怖い顔してやってきたと思えばそういう話である。

「それが、何か?」  「強制捜査を狙いますので、ご迷惑をおかけします。具体的には――――」
――何やら書類仕事が増えるらしい。
彼が話を聞きながら見た時計の針は2時31分。


「急げ! 急げ! 新世界から要人が本国にはじめてくる記念すべき時だぞ!」  「ええ、ですから検疫の手続きを――――」
「――検疫なんざやって外交問題になったらどうするんですか!?」  「検疫しねえほうが外交問題でしょ!」
外務省 VS 厚生労働省 ファイ!
何せ、新世界関連での検疫はいろいろと厳重となっている。
手続きも複雑だ。
だが、その基準を仮にもウルクゥ公国第2皇女殿下に当てはめようとすれば。

「仮にもお姫様の体を……それもこちらの常識が通用しない世界の体をまさぐると……?」  「まさぐるとか、その言い分何考え点だ。血液検査と体温を測るだけってことでもあるんだよ」
「でも、実際にはそうならないんでしょ?」  「…………だって、人種とか……そもそも俺らの知ってる人間かどうかも知れないし……」
「じゃぁ、やっぱだめじゃん!」
困った話である。

105名無し三等陸士@F世界:2016/04/13(水) 01:02:56 ID:gAbJokYQ0
そして、ここでも困った話し合いが――――

「――姫様ぁ……本当に? 本当に行くのですかぁ?」
ウルクゥ公国側にしてみれば、大切なお姫様を出すのだから、相手にもそして自分たちにも失礼や威厳を損なわないようにしないといけない。とはいえ……  

「相手は、姫様に何のお肉がわからない下級肉を提供するような蛮国ですよ! 本当に行くんですか?」
銀の髪色。そして、サーベル。
一人のメイド『ヘンリエッタ・ライッエ』は、にほんとかいう国にお姫様が旅立つことに反対だった。
彼女たちは儀式場にいた。お姫様の研究用に用意されている奴だ。
魔力炉から供給される魔力は伝達系の魔道資源の代表格である『魔法銀(ミスリル)』で形作られた魔法円の効果によって増幅される。
厳密には物理学だのなんだのの化学法則に基づく加速器の原理に似た効果によって増幅されているように勝手に魔法使いや魔術師たち、魔導師たちが思っているだけなのだが。
粒子加速器には様々な方法があるが、よく加速器といわれて多くの人が思いつくであろう円形のあれは磁場によりローレンツ力を発生させて……まぁ、特定の層、SFとかが好きな人向きにいうとレールガンやらコイルガンといったガウスカノンみたいな原理で加速している方式が多い。
まさにあんな感じで『魔力』なる粒子なのか波動なのかわからぬエネルギーを加速させているのがこの魔法円の本質だ。
ただし、メイドである彼女にはそんなことはわからない。
お姫様もおんなじだ。いかに彼女が研究者と言えど、ただ、古来より研究されてきた魔法、すなわち魔道の技。
その研鑽の果てに導き出された一つの『結果』を利用しているだけなのだから。とはいえ、魔術師である以上いつかは、この原理を解き明かさなければならないのかもしれない。
姫様が行おうとしている魔道の技、すなわち魔法。
魔道の原理法則の事を魔法と呼び、それを操るすべの事を魔の術。魔道の原理原則をただ使う事しか知らない魔法使いどもと違って彼女は良くも悪くも誇り高かった。
この大規模な設備の目的はただ一つ、彼女の魔法研究に公国の祖国防衛がかかっているからだ。彼女は一気に連合帝国軍相手に痛手を与えると同時に反撃の糸口を生み出す大魔法を完成させようとしていた。具体的に言えば、彼らが使用している補給人員運搬用に使われている敵の転移術式に干渉して、転移術式を暴発させること。
それが狙い。いわば転移術式への干渉魔法。
転移術式に規定量以上の魔力を注ぎ込んで暴発させる。ではどうやって魔力を注ぎ込むか。転移術式が起動した瞬間の空間のゆがみを経由して転移術式に大量の魔力を流し込む。
余剰エネルギーの暴発を狙っての設備。それでもって連合帝国軍の足を少しでも鈍らせるとともに大きな一撃を与えるというものだ。だけれども……

106名無し三等陸士@F世界:2016/04/13(水) 01:03:46 ID:gAbJokYQ0
「……そんな機能は……もう無理か……」
実現不可能、少なくとも姫様の持つ能力や魔道技術では到底無理であり、そればかりか彼女は失敗している。
だから、前回の攻勢が行われた。いかに彼らが運河としても利用されている大河バレントレンスを利用しているといっても一気に20万の軍勢が丸3日間も休まず進軍できるわけがない。本当は20万ではないのだ。
もっと多くが参加している。ただ、20万と誤認するのは戦闘のために最前線で戦う兵士たちの数が大体、そのくらいだろうという事である。
となれば、いったいどれだけの組織的、国家的戦争動員が行われている事だろうか! とんでもないことだ。もはや――
『――連合帝国は時代が違う』
そう多くの国に言わしめるほどだった。連合帝国の総人口は、6千5百万。その時点で自力が違うのだ。それに時代の違いまでプラスアルファされれば、所詮は弱小国家でしかない祖国、ウルクゥは滅ぼされるしかない。
彼女は――彼女なりにこの祖国の危機を救わんと研究してきた。だが、タイムオーバーだ。
この設備はもう壊すべきだろう。
そして、この設備に使われている魔力炉や魔道資源はこんないつになっても結果を出さない研究などよりも祖国防衛のための資材として使われたほうがはるかに有意義だ。
祖父が作ったこの国。私たちの国は――これから滅びることになるだろう。
連合帝国は発達した国だ。ある意味、この国の民草たちもそのほうがいいのかもしれない。ウニヴェルスム神聖連合帝国のもとにひざまずいたほうがはるかに――民草にとって有意義なことになるかもしれない。
どのみち、彼らの軍勢が攻めてくるのはもう目に見えている。何故ならば彼らが目指さんとしている場所はわかっているからだ。そしてその場所はこの国を通った向こう側にある。そう
『聖都:ウル・イール』がある。
大陸の統一を望む彼らは必ずあの場所をとらなければならない。大陸の中心にして、四大宗教の2大宗教の一大聖地。そして交易の中心。
何よりも大陸を支配しようとする者はあの場所の権利を持たねば誰も認めない。
いかに力があろうと、教皇猊下と枢機卿たち、そして――法印大僧正と僧正たちを支配せねば竜王だって供給されはしないのだから。
そんな気概を持つお姫様だったからこそ日本行きの話を承諾し、可能であれば日本の力を戦争に利用できないかと画策する。
ただし、もしも日本が戦争に参入すれば――――

「――私が考えたあまり関わりにならないほうがいい……とはいかないか」  「そうですよ! 姫様が行く必要は!」
ヘンリエッタは何としてもお姫様の日本行を阻止したかった。
日本から提供された時計が2時31分を指し示す……。

107名無し三等陸士@F世界:2016/04/13(水) 01:04:19 ID:gAbJokYQ0
  5.
 外事課。公安警察の中にある外国のスパイやテロリスト対策の部門である。
そして、その外事課が潜ませたスパイが捕まった。
公安調査庁に。

「なぁにしてんだ、あのクソどもがぁぁぁ!」
ちなみに逆のパターンもあったりするため、五十歩百歩である。
自衛隊情報本部のスパイもこの件に関わっていたりとカオスな状況になっていくのだが、このカオスの状況を何とかするために双方の高級官僚たちがそれぞれの省益をかけて熾烈な交渉を始めることになる。
だが、厄介なことにこの交渉ごとに首を突っ込む省庁が増えた。
一つは厚生労働省、一つは外務省、一つは国土交通省、最後は農林水産省の4つの省庁である。

「なんでそいつら? 外務省はわかるけど」
これが、この事件にかかわった公安警察に属する多くの人間たちの疑問である。
だが、この話にヤクザや過激派組織、さらには新世界までかかわってくるとは、この時は誰も思わかなった。
そんな混乱をしり目に裏稼業とは別の部署、刑事警察や厚生労働省の麻薬取締部は動き出していた。

「白峰への強制捜査――――」  「――『前進』への強制捜査」
「「「いけます」」」
彼らが踏み込もうと最後の準備を固め、TVカメラが付いてくる中、歩き出す時刻は2時31分。

  6.
 食われた。喰われた。食い殺された。みんな喰われた。食い殺された。食われた。喰われた。食い殺された。みんな喰われた。食い殺された。食われた。喰われた。食い殺された。みんな喰われた。食い殺された。
なんでだろう? 痛い。痛いっ! 痛い――! でも、叫んでもその咀嚼をやめてくれない。
体全身に這い上がる嫌悪感。
何かが、体内に侵入してくる。血が、大量に…………。
どうして、どうして――――?
                ――『ゾンビ』なんて、そんな馬鹿な事が起きているんだ……?

動員された兵士はおよそ三千ほど。たった三千で一つの未知の国家を蹂躙する。
それが――

『――ああ、なんて、素晴らしい感覚だ! 魔物どもを放て! 放て! 足りぬ兵力は現地で調達する! 死蟲を放て!』
強制捜査に訪れた刑事が聞いた最後の言葉は意味不明な外国の言葉だった……。

108名無し三等陸士@F世界:2016/04/13(水) 01:05:01 ID:gAbJokYQ0
  7.
 目の前に広がる大海原。そしてそれを背に向けて振り向いてみれば、灰色の大地。

「自由都市連合体……」
派遣された先遣軍団の将軍の一人、エミル・ライオーノフはそうつぶやく。
見たことがない……までに発達した謎の都市。城壁らしきものも見えず、どこまでも続く街道。

「いや、違うな……これは、我々が目指すべき……いや、我々の子孫が到達すべきウニヴェルスム神聖連合帝国の形だ……」
数十年単位では達成できない百年単位の未知の大国。
将軍というより、学者であるエミル・ライオーノフは震えた。
そんな国相手に三千で戦い、あろうことかそんな国家をこれより蹂躙するのだと……。
不安も高揚感も何もかもを内包した奇妙な思いを胸に体が震えた――――――。
――そして、それはきっと軍団の兵士たち皆に共通する何か……。

109名無し三等陸士@F世界:2016/04/13(水) 01:06:58 ID:gAbJokYQ0

 そらのいくさ 第1部
 第2章 「ウォールアイ ――202X.09後編」

 全部の投下を終了しました。
ちょっと意表をついて、ゾンビパニック風味にしています。
自衛隊の本格参戦は第4章となりますので、第3章で描かれる大混乱の様子、
そして、連合帝国がこんな事態を引き起こした手段についてはそちらにて!

110名無し三等陸士@F世界:2016/04/13(水) 01:23:23 ID:uM3pHPRI0
今すぐヤレる出会い系ランキング
ttp://bit.ly/1OgYRt7

111名無し三等陸士@F世界:2016/04/18(月) 00:38:16 ID:Htiy0goUO
うお乙です!
投下に気付かなかった…

112名無し三等陸士@F世界:2016/04/22(金) 12:58:53 ID:rgKk31xs0
本当に出会える出会い系ランキング
ttp://bit.ly/1OgYRt7

113名無し三等陸士@F世界:2016/04/28(木) 12:57:38 ID:rgKk31xs0
本当に出会える出会い系ランキング
ttp://bit.ly/1OgYRt7

114名無し三等陸士@F世界:2016/05/09(月) 22:01:57 ID:Y3GSVRLE0
本当に出会える出会い系ランキング!
ttp://deai.erosoku.top/ranking/type2

115名無し三等陸士@F世界:2016/05/12(木) 06:31:25 ID:DRqsEcc20
本当に出会える出会い系ランキング!
ttp://deai.erosoku.top/ranking/type2

116名無し三等陸士@F世界:2016/07/10(日) 22:48:32 ID:A.D1FtvU0

 そらのいくさ 第1部「からっぽのたたかい」
 第3章 「九十七式重爆――202X.10第1週目・前編」

 7月12日 投下予告!

 ウニヴェルスム神聖連合帝国 VS 日本 開幕!

 なお、旧世界では人民解放軍との死闘が待ち受けている模様。以上予告でした。

117名無し三等陸士@F世界:2016/07/13(水) 00:04:00 ID:A.D1FtvU0
ほい、投下を始めます。

ちなみに遅れております。
Civ6がでると聞いて、久しぶりにCiv4BtsとCiv5BNW
ついでに、発売したHoi4をやってたら(ry

118名無し三等陸士@F世界:2016/07/13(水) 00:04:53 ID:A.D1FtvU0

  そらのいくさ
  第3章 「九十七式重爆――202X.10第1週目・前編」

  1.
 次々と、光の粒が膨らんでいく。
膨らむ光の粒の分だけ、弾けたとき、激しい光に包まれていく。
光の渦。光の泡。
中心点に輝く光の柱。

「おおおおおっ!」
誰かが、そう口にした。誰かがつぶやいた。誰かが――――

「――皆の者! 動いたぞ! 飛び込め!」
ウニヴェルスム神聖連合帝国の軍勢が光へと流れ込む。
『転移術式』。距離も時間も関係なく移動する『最高の長距離連絡手段』として利用される世界最高至高にして至上の大魔道工学の結晶。
膨大な魔道資源を稼働している限り消費し続け、おまけに転移物の質量によって、消費する資源量がさらに増える。
おまけに、送信側と受信側、双方に巨大な魔法施設と燃料である魔道資源を大量に用意してなければ稼働しない。
その性質とコストパフォーマンスから、通常の大国でも自国内での城塞都市防衛戦に限ってのみ、軍勢の移動に使用するそれ。
軍勢といってもせいぜい、転移物質量の関係から多くても千人ほどのそれ。
にもかかわらず、プラスアルファをつけたうえで三千の兵員を送り込む。それも侵攻作戦に使用する。
それが示すことはただ一つ――――!

「圧倒的な国力! 圧倒的な戦力! 圧倒的な敵の油断! 圧倒的に我らの方が敵地を調べている!」
これこそが! ウニヴェルスム神聖連合帝国!
ゴンドワナ大陸の覇者! 世界秩序の管理者! 
我らはその先兵なり! 覇者の軍勢なり! 王者の兵隊なり! 我らは大陸の統率者!

119名無し三等陸士@F世界:2016/07/13(水) 00:07:04 ID:A.D1FtvU0
「さぁて、行きましょう。我らが全力出して暴れることが出来るのはせいぜい3日。現地での略奪がそれ以上の行動を可能にする唯一の方法です。故に、2日で一定の目的が果たせるようにお願いしますよ」
「分かっている」
今回の軍団は、混成部隊だ。連合帝国に属するいろいろな軍隊の『はみ出し者』が集められた混成部隊。
エミル・ライオーノフ。
ザスティン・ハフレリオ・ダー・グジュラナード。
グラディス・フラドベラーグ・ラーフ・シュタインブリュック。
3人の将軍たち。2人は同格、1人はまとめ役。
ただし、エミル・ライオーノフは間違いなくいわゆる平民階級出身故に、結果的には一番下っ端の将官ということになる。
たった3千の軍勢に3人の将軍。それこそが、軍団の内情をきわめて簡潔に示しているといえるのかもしれない。
そもそも、連合帝国という国はもとが、4か国の大国を中核に出来た巨大な軍事同盟が一つの連合国家となったのが始まりである。
それゆえなのか、ウニヴェルスム神聖連合帝国の軍制は――なかなかにいびつだ。
5人一組の『伍』、その主である『伍長』、10人一組である『火』とその主である『火長』、そして100人一組である『百人隊』と『隊長』そして、3個以上の百人隊を『軍団』と表現し、軍団を指揮するものを『軍団長』と呼ぶというのが――連合帝国の「一部地方軍制」だ。
そもそも連合国家であるがための欠点といえるのかもしれない。地域ごとによって軍制に違いがあるのだ。
あるところでは10個の『大隊(コルホス)』からなる5000〜7千人規模ので1個軍団となるくらいである。
同じ『1個軍団』でも300人から軍団と呼ぶ地域があれば、5000人の兵力でもって軍団とする地域。これほどまでに違いがある。
それでもなお、連合帝国が大陸諸国すべてを相手に戦争を行えるのはバカみたいな過剰な国力とそれ以上に、軍師組織『軍配府(ウィクトール・ヴィア)』という名の参謀本部的存在によるものの影響がきわめて大きいといえるだろう。
『勝利者への道(ウィクトール・ヴィア)』はもともと、軍師たちを育成し、そして軍師たちの考えた作戦実行のサポートを行う組織だった。
かつての時代、世界を相手に覇を唱えた軍事超大国『空の帝国(カウエル)』。そして、それに立ち向かった軍事同盟。
カウエルとの10年以上にわたる大戦争で統一された指揮系統や補給体制、そしてそれを支える根本的な生産力と適切な交通管理の有無が戦争の勝利につながると理解した対カウエル軍事同盟だったが、所詮は同盟軍。ではどの国の指揮官が統一指揮官になるのかともめにもめた。
言葉だって違えば、長年の係争を抱えた者同士というパターンだってあるのだ。そういう選定は厳密に行わないといけない。
とりあえず1か月交代で統一指揮官を各国が務めることになったのだが、いきなりこれでうまくいくはずないという事は各国ともにわかっていたのである。
そういう事から、将軍の選定以上に必要とされたのが恒常的に組織だった作戦計画立案集団である。それが『勝利者への道(ウィクトール・ヴィア)』と名付けられた軍師組織、軍配府である。
それゆえに『軍配府(ウィクトール・ヴィア)』の本義は、多種多様な違いを当たり前としたうえで効果的かつ合理的に勝利得るために準備を行う事。すなわち補給戦の実施と遂行。
そして、将軍たちの補佐と確実な勝利を得るための計画性。
何時しか、作戦の軍師、決断の将軍と呼ばれるようになる体制がここに完成した。

120名無し三等陸士@F世界:2016/07/13(水) 00:08:43 ID:A.D1FtvU0
『軍配府(ウィクトール・ヴィア)』の軍師は必ず2つ以上の選択肢を将軍に提示し、提示したときにはどんな選択肢であろうとも実施に必要最低限の準備をすべて終えている。
将軍はそれを選ぶという決断を行う。そして、軍師の作戦道理に物事は進められ、もしも軍師の作戦にない事態が発生すれば軍師ではなく将軍が事柄を決断する。
それこそが、連合帝国。ウニヴェルスム神聖連合帝国という巨大な戦争機械を動かす仕組み!
庶民でも将軍となりえる国。貴族を将軍とする国。ただの貴族ではなく領主貴族、可能であれば大諸侯と呼ばれる者こそが軍事の本懐であるとする国。
エミル・ライオーノフ。
ザスティン・ハフレリオ・ダー・グジュラナード。
グラディス・フラドベラーグ・ラーフ・シュタインブリュック。
3人の将軍。それらにあてがわれる軍師たちもまた内情を示してるような身分階級であったり出自であったりと様々だ。
『多様性』。それは制御できれば巨大な力となる。繁栄をもたらす唯一無二の種となる。
だからこそ、多様性を尊ぶ声は尽きないのだ。純粋性は確かに強靭だが、何か別の力が外から加われば脆い。
とはいえ、多様性とやらは制御を間違えればただの混沌に過ぎない。
秩序を尊び、純粋性を選ぶか、そして硬直化と外圧の脆さに苦しみながらも繁栄を謳歌するか。自由を尊び、多様性を選ぶか、そして軟弱性と内圧の混沌に苦しみながら繁栄を謳歌するか。
それぞれのお国事情とは深いものがある。
新旧両世界、どこの世界に限らず。

「ライオーノフ卿……と言って大丈夫かな?」  「ハフレリオ卿、お戯れを。ライオーノフでよいですよ」
「ふむ、では、セノー・ライオーノフ。君とはこの作戦に参加するにあたって色々と話をしていたが、それでも立場の違いというのは大きく、色々と見識の違うところがあったからね。だが、今は少しばかし仲良くやっていこうじゃないか。こうも未知の大地だとな」
彼らが見るのは灰色の大地。広大な都市。
『軍配府(ウィクトール・ヴィア)』から派遣された女軍師の一人、エレナ・アビラは覚悟はしていたが、あまりにも現実的とは思えぬ風景にめまいを感じてしまう。
報告は受けていた。常識が通用しないと。だが、こうして建物一つ見ただけでそれを実感してしまった。
だから――――

「――これより、この地を蹂躙し、一時占領地を得るのだ。本国が本格的に動くまで、さて、我らはどこまでやれるかな?」
将軍ザスティンがジョッパーブーツで踏みつけるもの。血に汚れた髪。かつて、この国に秩序を守るものとして存在した命。
刑事さんと皆に呼ばれ、憧れる人。
その、頭蓋――――――――

                   ――守るべき秩序は破られた。
後に残るのは、反秩序の権化たる征服者の雄たけび…………ただ、それ……のみ。

121名無し三等陸士@F世界:2016/07/13(水) 00:09:25 ID:A.D1FtvU0
  2.
 中華人民共和国、人民解放軍北海艦隊。
中国海軍の事実上の主力は前々から南海艦隊と南海第2艦隊であるといわれていた。確かに首都北京を守る様に控える北海艦隊には毎年莫大な予算が与えられ最新の艦影も次々と出ている。だが、中国初の空母――といっても廃棄予定の中古以上のボロ、ワリャーグ――は南海艦隊に配備されたし、そのあとに続く国産空母も真っ先に南海艦隊に配置された。
中国が海洋で起こす国境紛争のあれこれはほぼすべてが南海艦隊が受け持つ範囲である。故に――事実上の主力は南海艦隊と、国産空母を中核に新編成中の南海第2艦隊であるといわれていた。
だが、そんな言葉を言われて黙っている北京軍区と北海艦隊ではない。中華思想というのは大雑把に説明すると中央から離れれば離れれるほど文明の光は薄れ、野蛮な世界が広がっているという価値観だ。
その価値観がまだ強く息づく中華人民共和国。
別にこういう中央万歳な価値観は世界中で見かけるものだ。中には国単位でそういう価値観や偏見を持つものだっている。
一昔のフランス人にしてしまえばフランス文化こそが文明であり、そこから離れれば離れるほどフランス文化という文明の光が薄れ世界は野蛮になっていくという考え方がよくあるものだったし、平安時代の日本を見れば京の都より遠い東北地方の人たちは悪鬼呼ばわりである。
さらにさらに、今の日本国内においてもそうした、価値観が絶対に欠片も残っていないと、誰が言えるだろうか?
首都東京が大都会であり、その経済力やその他さまざまなものがいかに優れていようと、東京の外の人間にとって全国放送、都内でレストランめぐりがどうのこうのゴールデンウィークで都内から距離が云々と、どーでもいいことと、周りの都道府県民は思っていないだろうか。そんな都道府県民の考えを知ったことかと東京都民は持っていないと絶対に言えるだろうか。
他にも都道府県の県庁所在地とそこから離れた小さな村落。さて、彼らを田舎者と言い出す地方都市人。これは自らが優位な存在だという思いだといわれて、どこまで強く否定できるだろうか。
こうしたものは、どこの国でも大なり小なりあるものである。だが、同時に時代や文明の進みによっておおむね都会と田舎の区別程度に収まっていく。
だが、その価値観の強さが中華人民共和国の現指導部は半端ではない。彼らには華夷秩序を再びという野望がどこかにあるのかもしれない。
中国内部の政争は今や銃撃戦が日常的に行われるようになりつつある。ある者が曰く、共和国は事実上の内戦状態だという。中国は今では台湾、ベトナム、インド、インドネシアにフィリピンを敵に回し下手をすればオーストラリアにロシアも中国の敵になりかねない状況になりつつある。
日本ともすでに交戦している。
まさに全方位が敵となり、彼らが目指していた『真珠の首飾り』は明らかに破綻していた。
中国は決定的な弱点を保持している。そう――石油と食べ物がないのだ。
一応油田が全くないわけではない。有名な大慶油田をはじめにカラマイ、勝利、遼河、タリムなど様々だ。だが、それらを一生懸命とっても今の中国には油が足りない。そもそも、それらの油田は質が悪いが故に精製にひと手間かかったり、掘りすぎて出る量が、もう少なかったりとしている。
そのために中国は2010年ごろにはすでに世界でも有数の石油輸入国となっていた。石油だけではない。飢餓は革命を呼ぶ。
今の中国に13億人の人口を抱える食料生産能力はない。
だからこそ、中国は油と食べ物を求めて海の進出を図り、様々な国との軋轢を発生させたわけだが――――。
――――さながら、18世紀、19世紀の植民地帝国主義全快のヨーロッパ諸国のように……。

「だからか……」
転移現象にも巻き込まれず、星の海に取り残された日本による日本国のための日本国の人工衛星から送られてきた画像を前に防衛省の人間はそうつぶやく。

122名無し三等陸士@F世界:2016/07/13(水) 00:10:53 ID:A.D1FtvU0
「三等国(無主地)は先に力で制圧したものが己の領土となるッ! 大昔の国際法理屈を振りかざすつもりかっ!」
「――それだったら、先に発見した我が国のものだ、奴らは何を考えている?」
分かっている事だ、奴らの狙いは新列島の自噴するほどの大油田と肥沃な大地。

「……所詮、野蛮人共か! 中国人どもは!」
人工衛星には、それが移っている。
北海艦隊の揚陸大部隊の姿が――――。
――既に陸上自衛隊西部方面隊の12式地対艦誘導弾を運用する第5地対艦ミサイル連隊が新列島には展開しつつある。新列島は今までの日本列島と若干形状が異なり、「く」の字を逆に、そして3つほど重なったような形状をしている。
そこに様々な付属の島々が並んでいる形状だ。
とはいえ、今までの日本列島を考えるとちょうど中国地方と新潟のエリアに中国軍は上陸を図っている。
既に上陸第1陣が降り立っているが、そこから先は既に現場に到着していた陸上自衛隊の奮闘によって何とか食い止めている。だが、この状況で第2陣が降り立てば拮抗は崩れることはだれの目にも明白だった。

123名無し三等陸士@F世界:2016/07/13(水) 00:12:36 ID:A.D1FtvU0
「分かっていると思いますが、いったいいつになったらいつも威張っている人たちは活躍するんでしょうかね?」
「…………」
何処の国でも陸軍と海軍というのは仲が悪いのが結構ふつうである。それでも国防のために団結し、優秀な数々の政治家たちの導きにより陸海空は祖国を守るために邁進する――というのがあるべき形のはずであるのだが……

「すでに第4護衛隊群が出発いたしました。問題はないはずです」
旧帝国陸軍と旧帝国海軍の再来かといいたくないほどの険悪なムードが陸自と海自の幕僚たちの間に流れていた。
最もすべての陸海幹部がそういう状況というわけではないが、それをおいてもという奴である。
その間をおろおろする空自幹部の幕僚が1人。ほかの空自幕僚はもうどうにでもなれ〜といった態度で溜息をついていた。
旧世界の海ならともかく新列島周辺の海底地形やらなんやらの情報は急ピッチで進められているが、それ以上に、赤いオーロラの向こうに広がる旧世界と新世界と2つの世界で詳細かつ安全な海図を作るのには少々手間暇がまだかかる。
そもそも海上自衛隊第1護衛隊群は中国の潜水艦が跋扈する東南アジアを経由して入ってくる日本のタンカーを防衛するために出払っている。第1護衛隊群に所属する艦船はローテーション? 何それ、食えんの? といわんばかりに横須賀より出払っている。
というよりも、新世界の未知の海、新列島以外は既存の知ってる海である旧世界のアジアの海。どちらが安心して航海出来るか――という問いに対し旧世界という答えが真っ先に出るが所以である。
それが結果として、旧世界の外洋では積極的に活躍するくせに、日本国領土にはなかなか近寄らない海上自衛隊といういびつな構造が発生した。
そもそも、海軍の役割は現代においては大雑把に三つ。
一つ目は『沿岸防衛』、二つ目は『上陸作戦』、最後に『核抑止力』。
日本が非核保有国なので、三番目の核抑止力に関しては仕方ない。日本には海外領土があるわけでも大規模な海兵隊的組織があるわけでもないので上陸作戦に関してもある程度限定的な規模であるのは仕方ない。
となれば、必然的に海上自衛隊が目指すものは一つ目、『沿岸防衛』。
だが、

124名無し三等陸士@F世界:2016/07/13(水) 00:14:09 ID:A.D1FtvU0
「あなた方はいったいいつになったら、日本領土の海を守ってくれるんでしょうかね?」
その嫌味な陸自幕僚のセリフが海上自衛隊側の自衛官たちに突き刺さる。もしも、これが第3次世界大戦の真っ最中でなければ、おそらくそんな責め立てるようなセリフは出なかっただろう。
だが、あいにく今は戦時であり非常時であり有事なのだ。
新列島の海域はまだわからないことだらけだ。自信満々に出港して座礁などしたくない。新世界の海は何があるかわからない。本当の日本列島を取り巻く海がちゃんと安全な海底地形をしているのかもわからない。
何もかもがわからないからこそ、海上自衛隊は動けない。
というより、自衛艦隊よりも地方隊所属の掃海艇やミサイル艇以外ろくに使い物にならないのが現状である。海上自衛隊の花形であった自衛艦隊などよりもはるかに国民の目には地方隊の頑張る姿が映っている。
だからこそ――――活躍が――――
――千葉県の鉄道車両基地から、続々と出発する電車があった。それらに乗せられているのは国内の精製プラントで持って生成されたガソリンやガス、そして大量の5.56mmNATO弾。
アメリカが役に立たない今、日本の補給は日本がやるしかない。鉄のレールの上を走る鉄の車両が向かう先――そこには赤いオーロラに覆われた場所。
地上にまで降りてきて、いまだに消えぬ赤いオーロラは太平洋北半球に広がっている。
しかし、一部のオーロラが房総半島太平洋側に突き出ているのだ。常時。
それを利用した。本当は鉄道などではなく、アスファルトの舗装道路を通すべきなのだろうが、あいにく2か月で新列島への道のりのすべてを舗装する事など、かなわず、ましてや戦時の影響で資源統制が加わっている現状。
新列島そのものの舗装だってまだまだ進んでおらず、砂利道レベルなのだ。
そもそも、まだまだ未踏エリアのほうが圧倒的に多い。全体の90%はいまだどんな空間なのか把握できていない。
そういう状況下、軍事的な物資やらなんやらを鉄道という安くそして確実性の高い手段での輸送に行きつくのはある意味仕方ないのかもしれない。
だが、遠からず舗装は行われるだろう。それまでの代替手段だ。
そして、鉄道車両に行先は決まっている。
そう――『反撃の補給所』だ。
陸上自衛隊は新領土に侵入してくる愚か者どもを撃破するために牙を磨く――――。
――ところで、今、日本が相手をしている戦線はいくつあるのだろう?
東シナ海や南シナ海におけるシーレーン防衛と台湾海峡、そして、旧宮古海峡防衛のために活動していた、第4護衛隊群に属する艦艇が次々と北上を開始する。
松島で、百里で、横田で航空エンジンが唸り声をあげ、その独特な金属音を振り撒きながら、飛び立っていく。
『空自補給本部(AMCH)』のおかれた十条では、次々と幕僚や幹部たちが書類を持って走り回る。日本全体が、戦争を遂行するべく動き回るその中で……。

「失礼します。九州各地で異常事態が発生したという一報が――――」
――武力攻撃事態法。日本国有事の法律でありそれに基づき、中国軍の新列島への侵入を排除する。
それが閣議決定したのとほぼ同時刻に交わされた会話はのちに情報公開された議事録によって国民から大きな失笑を買うことになる。
あきれ半分、戸惑い半分といったものだ。
同時に、当時は仕方なかったという援護の声もいっぱい出ることになった。その会話というのがこうである。

125名無し三等陸士@F世界:2016/07/13(水) 00:14:45 ID:A.D1FtvU0
「謎のコスプレ武装集団ごときに、自衛隊の派遣など! 何の意味があるのですか! 第一彼らは外国の武装勢力と決まったわけではない」  「しかし、彼らは刀剣類で武装し!」
「銃に大砲! 戦車に軍艦と戦闘機! 下手をすれば何万の兵士がやってくる! ゾンビメイクの群衆、武装といっても、弓矢と剣! 精々数百程度! 早急に対処すべきなのはどちらか、明らかでしょ! みょうちくりんなコスプレ連中なんて警察で対応が十分可能なはずです!」
そう、この時点では連合帝国軍の軍勢は、『謎のコスプレ武装集団』という扱いでしかなかったのだ。
実際、目の前に強盗がいる状態で遠くの場所で妙な伝染病に苦しんでいる人が倒れている風景など気に留めることは出来ない。
潜在的な脅威度では伝染病のほうが高くてもだ。
だが、そんな理屈。真正面切って戦う警官たちにしてしまえばクソ食らえだろう。
村松巡査部長は赤黒く染まっていく鮮血の海に沈むかつての部下の姿を発見する。

「……ッ…………」
だが、どうすることも出来ない。何故ならば彼自身、腹に大穴をあけろくに呼吸もできないからだ。
村松の睨みつける先には――――全長2メートル以上はある真っ赤な目をした真っ黒い犬の様な生き物が鎮座していた。
『死を告げる妖大犬(ヘルハウンド)』。
連合帝国軍の妖術師が操る魔物たちが、そのつながれた鎖のくびきからすべて放たれようとしていた――――。
――旧世界の摂理に従い、旧世界の戦いに動く日本。しかし、足元に新世界の戦理が転がっている……。

126名無し三等陸士@F世界:2016/07/13(水) 00:17:30 ID:A.D1FtvU0
今日はここまで! 日本VS連合帝国と言いながら、本格交戦とはまだ言えない状態ですねぇ……

ちなみに最後の瞬間は派手に吹っ飛ばすつもりですので……






民主主義大東亜共栄圏で対ソ戦プレイをしようと思って、経験値稼ぎに軍閥殴ったら予想外に泥沼化してんじゃねーよ!
少し、次回遅れます。

127F世界逝き:F世界逝き
F世界逝き

128名無し三等陸士@F世界:2017/02/10(金) 15:34:35 ID:PYGWWUS20
h ttp://ux.nu/zxhL2

129F世界逝き:F世界逝き
F世界逝き

130名無し三等陸士@F世界:2023/03/03(金) 19:09:25 ID:ElezjSws0
日本とF世界が戦争になる理由を考えてみた


日本国領事館の前で、様々な服装の男たちがマスケット銃や手斧などの武器を手に殺気立った怒声を浴びせる。
「この1年で魚の値段が4割も下がったんだ!」
「商売あがったりだ!」
「日本のお役人はワシらに死ねというのか!」

対して、領事館を警備する領事館警護官の海兵隊員は自動小銃を抱えて“衛兵の如く”静かに佇んでいる。
もう、このような抗議活動が毎日のように、3ヶ月以上も続いている。
領事館へ向けての直接的な発砲こそ無いが、石やら何やらを投げてくるものは大勢居るし、拳銃で自決するものは居た。

日本の民間船舶が多く出入りし、日本軍が錨泊地としても活用する港町であるので、地元住民の日本国や日本人への憎悪は日に日に強くなっている様子だ。

市場では値崩れが問題になっているが、実は日本は“法外に高い”魚介類を主に輸出している。むしろそちらが主力だ。
水産庁や経産省は、日本の高品質な輸出品をブランドとして確立させたいので、安価な製品の輸出には慎重である。
日本の品質管理基準で漁獲から加工までされた新鮮かつ美味な魚介類は、この世界の美食家をして「私は今まで本当の魚の味を知らなかった」と言わしめたほどだ。

一方で高価なブランド製品でないもの。日本国内では商品にならない規格外の魚介類も比較的安値で輸出している。
魚を食べているのか金貨を食べているのかわからないと言われるほどの法外な値段に比べれば安値という意味で、決してこの世界の相場に比べて安値というわけではない。
それに日本国内では商品にならないといっても、冷凍冷蔵設備を備えた近代的な漁船による漁獲だ。この世界の既存の漁船によるものに比べれば品質は段違いに良い。
輸出したもので何かあれば安かろうとブランドに傷つくのだから、基本的な品質管理は当然で、それまでなら缶詰にするようなものを一尾単位で売っているだけだ(缶詰自体は物珍しもあって銀貨や金貨で取引される。鯖缶1個1万円は冗談ではない)。
しかも漁獲量も桁違いに多い。日本側からすれば比較的少量の輸出であっても、現地の物価を乱すには十分すぎる量だ。
日本側としても、水産関係者が今までどおりの収入を維持するには、半分押し付けだろうが売らないわけにはいかないので、自由貿易という名の下に輸出を強行している。
実際日本産の食品は値段の割に高品質なので需要はあり、自由な貿易という意味ならばもっと多く輸出しても買い手はつくだろう。
水産業の場合は内需が主力なので輸出量が元々それほど多くないというだけだ。

現地の市場に並ぶ魚介類の量が急に3割増えて、しかもその3割が今までより少し高いくらいの値段で今までより遥かに高品質となれば、新たな3割の人気と反比例して既存商品が値崩れするのは当然の成り行き。
質で対抗できないから価格で対抗するしかなく、薄利多売の値引き合戦から、遂に赤字確定でも売るという段階まで来ている。
ライバルが廃業して供給が3割4割減れば価格がある程度落ち着くだろうという過酷な消耗戦である。

しかも、困ったことにこのような事態は別に水産関係者だけの話ではない。
ほぼ全領域の産業で似たような事態が起きている。

日本国内での内需が主で輸出品の量が相対的に低い農業や漁業はまだいい方なのだが、それでも自動車や半導体、化学製品などの輸出がほぼ封じられた分を、食品や軽工業製品の輸出で支えようとすらしているのだから、財務省や厚労省まで輸出圧力をかけてくるのは当然と言えた。

転移初期の、燃料が無いから操業できないという苦から、燃料事情が安定してきたら現地への供給過剰で不満噴出という苦へ。

今に……。
この実弾が込められたマスケット銃が領事館に向けて火を噴く日が来るかもしれない。
標的は門番として立つ自分かもしれない。

そんな不安が的中するのは、それから暫く経った日の事だった。

131名無し三等陸士@F世界:2023/09/12(火) 19:29:32 ID:0VKeZKa60
面白そうなスレだけど、ここって止まってるっぽい?
稼働してる時に来たかったな

132名無し三等陸士@F世界:2023/12/25(月) 09:47:55 ID:zhzU3pYE0
再稼動を期待してage

133名無し三等陸士@F世界:2024/01/03(水) 23:58:23 ID:ukOAuRgg0
ちょっとした短編を思いついた時とかに使えば人が集まってくるかも?

134名無し三等陸士@F世界:2024/01/07(日) 23:46:11 ID:V6RiJjsg0
ああ、ここでそらのいくさ連載していたのか
久しぶりに作品名見た気がする

135名無し三等陸士@F世界:2024/04/05(金) 17:20:38 ID:fWZ.Msk20
投稿サイトが充実してるから掲示板に投稿する人が減ってきたのかもな


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板