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F世界との交流その6

1reden:2013/01/14(月) 20:24:19 ID:Gpzc7RXM0
異世界と接触して起きそうな事態を、日常のレベルから適当に
妄想してみるスレです。

エルフ〜癒しの森の音楽集〜とか、コロポックルの「ご家庭用
フキノトウパック」とか、そんなもんが売られたらどうなる
だろ。ってな感じでネタや議論・考察してみませんか?

・荒らしは華麗に異世界へ転送。
・SSでもネタカキコでもなんでもあり。
・息抜きが目的のスレなので、リアルを求めずともよし。

2reden:2013/01/14(月) 20:45:35 ID:Gpzc7RXM0
 スレ立てさせていただきました。
 遅くなりましたが、前スレのレス返しをさせていただきます。

>>前スレ991‐992さん
自分たちが既に詰んでる状況と理解できている者もいますが、事ここに至っては後戻りのしようが無い状態ですね。
心理的には追いつめられた鼠といったところでしょうか……

>>前スレ993さん
ちょうど、WW2でのドイツにおけるナチ党のような扱いになるでしょうね。
一切合財の責任を主戦派に被せることで王国政府に対するソ連の制裁を僅かでも緩和しようとするかと。
宰相たちにしても王家の存在をどうにか護持しようと思えば、対ソ戦の責任を主戦派のごり押し&暴走と位置付けたほうが戦争責任追及を回避しやすいですし。

>>陸士長さん
>>前スレ996さん
仰る通り、主戦派の心理状態はまさに窮鼠といった感じですね。
しかし死傷者に関しては……まぁ独ソ戦クラスの損害を出したりしたら、戦後の収奪が期待できない分、ソ連自体が一気に傾きかねませんしw

>>前スレ995さん
今回の空挺作戦自体が政治的要求から立ち上がった、かなりの博打です。
相応の損害は発生するでしょうが……しかし数においては優ってますし、講和派も現状ではまだ抵抗を続けていますから、全体としてみればやはりソ連側が優勢かな…

3名無し三等陸士@F世界:2013/01/15(火) 00:29:15 ID:B.rs.Hi20
投下乙です

>>白い人工の華が無数に咲き乱れるのを
その次は地上で両軍と民間人の赤い血の花が咲き乱れるのですな・・・

今回の作戦で反乱軍は王党派と赤軍の両方に挟まれる形になりましたな

4陸士長:2013/01/15(火) 13:51:26 ID:VnbxNAXM0
reden様
多少大きな会戦レベルでという範囲ですw
戦史を見ると一回の会戦で死傷者20〜30万人はざらですからソ連は。
圧倒的優位な筈のバグラチオン作戦ですら死傷者は70万人近く逝ってますしね。

5名無し三等陸士@F世界:2013/01/15(火) 21:22:20 ID:zvdxqyhE0
なんだろう、この陸自mad↓のせいか空挺シーンがMGS2のop曲で再生される…w
ttp://www.youtube.com/watch?v=8Za8m9Mpd1k

6reden:2013/01/16(水) 23:40:35 ID:0JUd.wh.0
>>3さん
叛乱軍としては外から救援が駆けつけて来る前に勝負を決したいところでしたが…まさか政府が敵国の軍隊を引き込んできたのは予想外でしたw


>>陸士長さん
ですねw
いわゆる【圧勝】した戦いでも敵より死傷者数が多かったりしますし……
そういう損害にもかかわらず、最終的に物量で敵側を圧倒してしまえるのは、まぁ人口の多さもありますが、やはり国家体制の成せる業でしょうか。


>>5さん
良MAD紹介感謝です。
ちなみに赤軍のイメージ曲というと、私の中ではこんな感じ↓ですねw

ttp://www.youtube.com/watch?v=4I-JEU5RUeE

7F世界逝き:F世界逝き
F世界逝き

8F世界逝き:F世界逝き
F世界逝き

9名無し三等陸士@F世界:2013/01/27(日) 19:14:07 ID:6IV0Utpk0
前スレ誘導くらいはしてもバチは当たらんぞ

F世界との交流その5
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1246308177/

10reden:2013/01/28(月) 17:06:34 ID:0JUd.wh.0
>>9さん
乙です。というか済みません、スレ立てのときに入れとくべきでした(汗



それでは続き……ではなく閑話をp投下します。
まだ戦争終わってないのにアレですが、時間軸的には戦後の話になります。

11reden:2013/01/28(月) 17:07:11 ID:0JUd.wh.0
 1941年12月20日
 ソヴィエト連邦 モスクワ

 灰色の空から微かに雪のちらつく中。
 モスクワ市街の中心地たるクレムリン宮殿より、南へ6街区ほど跨いだ先にあるクズネツキー・モスト通りの道路脇に、一台の公用車が停車した。
 後部のドアが開き、中から厚手の灰色コートに身を包んだ青年が降り立った。
 厳冬の曙光に染め上げられたような艶やかな金髪。そして透き通った碧緑の瞳が印象的な、何処となしに典雅な雰囲気を漂わせた青年だった。
 
「それでは同志。後ほどお迎えにあがります」

「ありがとう。ヴォロージャ」

 運転席から顔をのぞかせた運転手の言葉に小さく笑みを浮かべて礼を言うと、青年―――クラウス・クリッツェン・ハウスヴァルドは走り去っていく車を見送ると、踵を返した。
 そのまま迷いのない足取りで、通りに面じたひとつの建物に向かう。
 コートに付着した雪を払い落してから、クラウスは扉をくぐった。

(いつ来ても、見事なものだね)
 
 建物内の印象を一言で表すなら、それはさながら小宮殿といったところだろう。
 磨き抜かれた大理石の床を踏みしめ歩きつつ、クラウスはここに来て何度目になるか分からない同じ感想を抱く。
 この建物がつくられたのは、今から70年ほど前。異世界人たちにとって、この場所は重要な憩いの、そして社交の場でもある。
 モラヴィア東部属州の都市ブルーノでNKVDに徴募された後、モスクワでクラウスの職場として用意されたのはモスクワ大学地質学部における研究員としての席だった。
 もっとも、正規の研究員とは待遇も自由度も大きく異なる。
 高官用のアパート。運転手付きの車―――代わりに行動の自由という点で制限もあるが、もとよりクラウスにとっては監視付きで有ろうと無かろうと、自分の見たい異世界の技術を好きなように見聞させてもらえるのならば不満などない。
 元々、モラヴィア諸侯であったころから社交そっちのけで、研究者として屋敷に籠っていることのほうが多かった男である。
 今では魔法銀(ミスラル)、虹魔鉱(イェローリル)、緑輝石(リライト)などといった魔鉱石の特性や分布、利用法、製錬法などをロシア人に教える一方で、自身はソ連が有する先進的科学技術や自然科学の理論を学び取ることに夢中になっていた。
 そして、一人のテクノクラートとしてソ連邦の内情を知れば知るほどに、その桁違いの国力・技術力に圧倒されていく自分がいることをクラウスは感じ取っていた。
 恐らく大陸列強国すべて、いや、この世界の人類国家全てを合わせたとしても半分にすら届かないであろう桁違いの鉄鋼生産能力。国民すべてを対象とする厳格極まりない兵役制度。
 知れば知るほどに、この国に降った己の判断は誤っていなかったのだと認識させられる。
 頭の回転の悪い男ではないから、このソヴィエトという国家が厳格な監視国家であるということを薄々感じとってはいた。
 それでも未知の知識の宝庫という魅力は些かも色褪せる事はなかったし、投降すること無く抵抗を続けていた場合に自分や妹、領民たちが見舞われたであろう災厄を思えば選択の余地などなかったのだ。
 吹き抜けのエントランスを通過し、2階へと続く階段を登りながら、モラヴィアの有力貴族であった青年は、周りを見てふと眉を顰める。
 
「今日は人が多いな…」

 そして気づく。
 今日は金曜の夕刻。
 施設は仕事帰りの労働者や役人たちで多いに賑わう時間帯だ。
 彼がいつも通っている早朝の時間帯ならまた違っただろう。 
 階段を登りきり、大勢いる客たちの中でもおよそ一握りの人々が利用する一等の区画へと足を踏み入れる。

12reden:2013/01/28(月) 17:07:42 ID:0JUd.wh.0
 気を取り直し、クラウスは手続きを済ませると脱衣室に入り、コートを含めた衣類全てを脱ぐと、部屋の隅に積まれたバスタオルと白樺の枝の束をとり、目的地へと続く扉を押し開いた。
 この国に来て、彼が学んだことがひとつ…宿酔覚ましと冬の暖を取るにはこれが一番効くのだ。

 開くと同時に、扉の先から真っ白な蒸気が溢れ出て、クラウスの全身を包み込んだ。
 ―――モスクワ・サンドゥノフスキー浴場。
 【蒸し風呂】それは、異世界人たちの生活習慣のなかでクラウスが諸手をあげて賛同したいものの代表格であった。

「………―――ぅぁ〜」

 端整な顔をすっかりだらしなく緩ませて、クラウスは蒸し風呂の片隅の椅子に腰掛けた。
 自身がかつて領有していた土地も相当な寒地ではあったが、ロシアの冬も負けず劣らず長く、そして厳しい。
 平均的な最低気温は零下10度。酷い時には零下40度近くにも達するのだ。
 モスクワに住居を移して、はや3ヶ月。この青年貴族にとって、スチームサウナはほとんど欠かせぬ日課となっていた。
 蒸し風呂内の温度は70度、湿度は100%近い。
 ふと周りを見れば、クラウス以外にも数人の先客がいた。
 プールで冷水を浴びながら大声で政治の議論をしている年嵩の男たち。 
 一方で、サウナの椅子に腰掛けながらぼそぼそと会話している者もいるが、濛々と立つ蒸気の音によって詳しい内容は聞き取れない。
 クラウスは気にすることなく、身体の力を抜いてサウナの片隅にある椅子に背を凭せ掛けた。
 手に握る白樺の枝からは水滴が滴り、爽やかな樹の薫りが鼻腔を擽る。 
 全身から吹き出る汗が肌を伝い落ちていくのを感じ、クラウスは手に握った枝で自身の肩を、背中を叩く。
 その姿を見て、この青年がモラヴィア東部属州有数の大貴族の当主であったなどと察せる者はまずいまい。

「おや、これはお珍しいですな同志」

 ふと、横から声がかけられる。
 目尻に伝った汗の粒を指先で払いつつ顔を向けると、常連客らしい30代半ばの男が隣の椅子に腰かけたところだった。

「ああ、どうも。今日は少しばかり仕事が早く片付きましてね。あなたはいつもこの時間に?」

(たしか、ヴァレンティン・ペトローヴィチ……なんとかいったな)

 弛緩した思考でぼんやりと、以前聞いた男の名前を思い出そうとする。
 いつもは出勤前にこの蒸し風呂に寄るクラウスが、朝方によく顔を合わせる男だ。
 然して親しいわけでもないが、軽く世間話をする程度の間柄ではある。

「ええ。といっても、この後は直ぐに職場に戻って仕事ですがね」

「大変ですね」

 タオルで顔を軽く拭いつつ、クラウスは男の言葉に相槌を打った。
 詳しく話したわけではないが、言葉の端々から、どことなく研究者らしい雰囲気が感じ取れる男だ。
 クラウスがあたりをつけたところでは、恐らく軍の研究機関かなにかではなかろうかと思っている。

13reden:2013/01/28(月) 17:08:13 ID:0JUd.wh.0
 もっとも、お互いに各省の守秘義務もあるから、みだりに仕事の話などすることはない。
 熱を上げていたボリショイバレエのジゼルがどこぞの工場長とくっついただの、何処そこで食べたボルシチがこの世のものとも思えぬほどに不味かっただの…他愛のない雑談が殆どだ。
 ロシアの事に詳しくないクラウスは大概は聞き役に回っているが、どんな些細な話題でもモラヴィア人のクラウスには興味深いものが大変に多く、けっこうこの雑談時間を楽しんでもいた。
 どんな話題を振ってもしきりに頷いたり、相槌を打ったり、あるいは驚いてくれるクラウスは世間話の相手としては最高の人物だったらしく、最初は軽く挨拶を交わす程度だった男のほうも、今ではクラウスを見かけるたびに親しげに声をかけてくるようになった。
 二人揃って椅子にだらりと腰掛けながら、今日も今日とて他愛のない世間話に花を咲かせていると、入口の扉が開いて従業員らしい男が顔をのぞかせた。

「どなたか、飲まれる方はおられますか」

 大声で室内の客たちに聞く。
 いる!と室内に居る男たちの半分以上が手を挙げて言った。
 おや?とクラウスは首をかしげた。
 確か、ここの規則では…

「浴室での飲酒は禁止されているのでは?」

 自分は手を上げることなく些か戸惑ったように隣の男に聞くクラウスに、隣の男―――こちらも手を上げてはいない。仕事があるからだろう―――は腕を組んで顰めつらしく頷いた。

「その通りです同志。しかし私はこうも思うのですよ。こういった規則は、かえってウォトカの味を良くする効果しかないのではないかとね」

 あまりにも大真面目な顔でのたまうものだから、クラウスは思わず吹き出してしまった。
 二人の会話が聞こえたのか、酒を頼んだ男たちがクラウス達を見てにんまりと笑みを浮かべた。

「あなたは飲まれないのですか」

 男に聞かれ、クラウスは少し考えてから首を横に振った。

「この後、自宅の荷物をまとめなくてはなりませんのでね。あまり酒が入っているのは宜しくない」

 実のところ、クラウスが此処に通うのは以後暫く無くなるだろう。
 今日、鉄類金属人民委員部からの通達があり、ソ連南部の特別研究施設に移ることになったのだ。
 今日・明日中に荷物を纏め、明後日にはヴヌコヴォ空港からソ連南部のスターリングラード市行きの便に乗らなくてはならない。 

「引っ越しですか」

「ええ。暫くモスクワを離れることになりそうです。アパートは残しておいてもらえるそうなので、いずれは戻ってこられると思いますが」

 頑張ってください、と男は言い、クラウスも当たり障りのない礼を返した。
 自分を徴募したNKVD大佐の話では、どうやらモラヴィアの秘跡魔術を解析するための研究施設が漸く形を整えたらしい。
 モラヴィア戦役が終結し、戦時中・戦後でソ連側に降った魔術師達をどう扱うかについては、政治局でも意見が分かれていた。

 ソ連において、能力と同じかそれ以上に重要視されるのは政治的信頼性だ。
 そういった意味で、大量のモラヴィア人魔術師を国の枢要に近い部分とどこまで関わらせるべきかについては、今もって政治局でも意見が分かれている。
 だが、モラヴィアの秘蹟魔道に限らず、魔術とは生来人間がもつ魔力がものをいう技術であり、魔力を持たないロシア人がこれを運用することは不可能。
 とはいえ、此の世界における軍事を含めた様々な技術が魔術の力によって成り立っている以上、その能力をソ連邦が持たないというのは国防上無視できない問題だった。

【透視】

【遠見】

【洗脳】

14reden:2013/01/28(月) 17:08:46 ID:0JUd.wh.0

 更には召喚魔術による物質の瞬間転移など。
 魔道技術のなかには、ソ連邦の科学技術では現在どころか将来に渡ってさえ実現できる目処の立ちそうもない技術が多数存在する。
 そして、現在のソ連邦がそれらに対抗しようと思えば、必然、魔術を頼らざるえないのだ。
 こうした事情から、モラヴィア人魔術師のうち、かなりの数がソ連への半ば強制的な移住を余儀なくされ、以後、将来長くに渡って国内各地に造られた秘密都市―――地図上にも記載されず、内外の出入りを厳しく制限された閉鎖行政地域―――において、ソ連の国益のために魔術研究に従事させられることとなる。
 もっとも、現段階では魔術師を囲いこむための都市というほどに大規模なものはなく、クラウスが赴こうとしているのもNKVD軍が警備しているスターリングラード郊外に新設された研究施設である。
 
(ここに通えなくなるのは、少し残念かな)

 少しばかり名残惜しむように、クラウスは周囲を見渡し、次いで雑談相手となってくれた男を見た。

「そろそろ、出ることにしますよ。また、機会があればお会いしましょう」

「ええ。お元気で、同志」

 最後にそれだけ言葉を交わすと、クラウスは椅子から立ち上がり、来る前より幾分軽くなった身体でサウナをあとにした。 
 7年後、二人はカザフスタンの閉鎖都市レニンスクで再開を果たすことになる。

 一方は鉄類金属人民委員部における魔鉱石の権威として。

 一方はロケットエンジン設計の権威として。

15reden:2013/01/28(月) 17:09:26 ID:0JUd.wh.0
投下終了です。

16名無し三等陸士@F世界:2013/01/28(月) 17:37:57 ID:B.rs.Hi20
乙です
ロシア名物バーニャ(サウナ)での微笑ましい会合ですなw

死霊魔術や専従魔術が効かない等のように、相手の体内の魔力を利用した魔術には
滅法強いので、それらを利用した魔術師や種族には最悪の天敵になりえそうですが、
透視や遠見など国防に関わるものはモラヴィア人に頼らざるを得ないのが辛い所
ですね>ソ連人

いかに持ち前の科学と技術と革命でこの問題を乗り切るか・・・

17名無し三等陸士@F世界:2013/01/28(月) 18:46:39 ID:1mPodNWE0
投下乙です。

完全に馴染んでますね>クラウス
妹君の生活の方も是非!

旧モラヴィアの魔術師の登用、痛し痒しですね・・・・
クラウスみたいに有意義に協力している者はいいですが、反骨心溢れすぎると・・・・

18名無し三等陸士@F世界:2013/01/30(水) 00:31:51 ID:8v7u8K3U0
投下乙。
>モラヴィア人魔術師を国の枢要に近い部分とどこまで関わらせるべきか

至急モラヴィア人に代わる、より信頼性があり、より共産党及びソ連人民に対し忠実で、
より革命精神に満ちた、模範的かつ向上心溢れる魔法世界の同志が必要になってきますな。

ちょっとそこら辺の奴隷商ブッ飛ばして、保護した奴隷をオルグ(ry

19reden:2013/01/30(水) 23:34:19 ID:0JUd.wh.0
>>16さん
魔術師とMrヒドラジンの出会いのお話でした。
そのうち魔鉱石素材を使ったスカッドでも開発してくれるやもしれませんw
まぁ、ドイツのV2をはじめとした外国からの技術情報がないので、史実通りには行かないかもしれませんが…


>>17さん
ロシアならではのご当地ネタを閑話で出していきたいですね。
蒸し風呂は今回やったので…後はウォトカとかロシア料理とか……
ブルーノで投降した人々などは、焦土戦や屍兵投入を行った王国中央政府への反発とも相まって比較的ソ連に協力的ですが、やはり面従腹背な方々も中には……


>>18さん
共産主義とか、まさに劇薬に等しい思想ですからねw
階級社会の下層に位置する人々から見れば良いことづくめ……に見えますし。

20reden:2013/02/07(木) 18:34:11 ID:8aRvpqr.0
では、次話投下します。






1941年9月17日
モラヴィア王国 王都キュリロス 東部城壁



 
 モラヴィア王都キュリロス。
 その東側城壁を守備していたのは、叛乱軍側に寝返った王都守備軍の大隊に軽武装の衛視隊を加えた2000名程度の混成部隊だった。
 小規模の砦や城塞都市の警備ならば問題のない兵数と言えるが、人口90万、城壁の直径70平方kmに達する大都市の側面防御を担うには到底足りぬ。
 もとより、叛乱軍が城壁を占拠した目的は、王都全域に張り巡らされた結界とともに王国政府と外部の通信・伝令を物理的に遮断するためであり、それ以上のものではなかった。
 モラヴィア魔道軍の主力は対ソ国境付近に張り付けられており、王都近辺に残された僅かな予備戦力を決起部隊によって撃破してしまえば、叛乱軍側にとって目的の妨げとなるような障害はなくなる。
 言ってみれば、王都の内側に向けて監視の目を光らせるのが目的であり、王都の外から―――しかも空挺降下によって、万単位の大軍が目と鼻の先に突如送り込まれてくるなど想像の埒外であった。
 只でさえ数の少ない兵力は、王都からの脱出を図る講和派を警戒して小部隊ごとに城壁上の望楼へと散っており、敵機襲来を受けて彼らが防御施設へと配置に着く前に、ソ連側の攻撃が始まってしまった。
 
 ソ連赤軍のうち、真っ先に戦闘を開始したのは都市外に降り立った主力ではなく、城址内へ降下した中隊規模の先遣部隊だった。
 防禦結界が展開される暇もなく、城門の内側に降下した落下傘兵によって迫撃砲が門扉へ、衛視隊屯所へと撃ち込まれ、たちまちのうちに城門周辺は混戦状態となる。
 城門の内側に降下したソ連兵はせいぜい中隊規模と少数であり、兵数的にはモラヴィア側が勝っていたが、その半ばは剣や槍で武装しただけの衛視隊であり、しかも広域に分散していた。
 慌てて駆けつけてきた少数の魔術師たちが火炎弾、魔力弾で応戦し、数人を吹き飛ばしたが、たちまち短機関銃の掃射を受けて薙ぎ倒されてしまった。

「ええい、狼狽えるな!侵入した敵は寡兵だ、四方から押し包んで塵殺せよ!」

 叛乱軍指揮官の怒声に近い命令が飛び、守備兵たちは数の優位を頼みに四方から侵入者たちを取り囲むように動くと、槍の穂先をそろえて一斉に突きかかり、城壁の上からは配置についた弓箭兵の矢が降り注ぐ。
 不意を打たれたとはいえ、見通しの良い城壁上に陣取った弓兵たちからは地上の落下傘兵を好きなように狙い撃ちにできるうえ、準備さえ整えば防御塔の魔道槍をはじめとした対軍用の魔道兵器による援護も期待できる。
 たちまち数人が矢衾に射抜かれて地に倒れる。
 一方の赤軍も負けておらず、地上からの応射を加える一方で、事前情報をもとに城門の防御施設を制圧すべく一斉に動き出した。
 使用する武器の威力において、ソ連兵のそれは守備軍を圧倒しており、寡兵にもかかわらず優位に戦闘を進めていくが、モラヴィア側もただやられているばかりではない。
 城門の防御施設という強固な【トーチカ】を有し、弓兵にしても見晴らしの良い城壁上から矢を撃ち下せば脅威となる。
 ましてや、赤軍将兵が身に着けている軍服は、防御力という点でこの世界の甲冑より遥かに劣るのだ。
 自軍に数倍する損害を敵に与えながらも城門上からの矢衾と魔術師による攻撃でだんだんと討ち減らされていく赤軍だったが、それも迫撃砲の榴弾によって門扉が破壊されたことで形勢逆転した。
 十分な数の結界魔術師を配し、結界防御が万全に行われていたならば重砲の破甲榴弾すら防いでのけるモラヴィア式城塞も、肝心の結界がなくては本来の防御力を発揮することはできない。
 防禦結界の展開も成されていなかった門扉は完全に破壊され、そこから城外の空挺軍主力が雪崩れ込むと、形勢は一気にソ連側に傾いた。
 破られた城門から城址へと乱入したソ連空挺部隊は、小隊ごとに素早く分かれると城址内へ突入し、この世界の歩兵の基準からすれば異常というしかない手際の良さで次々と防御施設を無力化していく。

21reden:2013/02/07(木) 18:34:45 ID:8aRvpqr.0


 
 このとき、城門周辺の守備隊を城壁上から指揮していたのは王都守備軍に所属するマリオン・グライフス准男爵という魔道兵少佐だったが、突然現れた敵によって瞬く間に自分の部下たちが駆逐されていく光景に顔面蒼白となっていた。

 ―――――なんだ、これは。

 空から地上に降り立つや、忽ちのうちに小部隊ごとの集結を済ませ、まるで何処に何があるかを把握しているかのような手際の良さで守備隊の屯所を叩いていく異界軍。
 こちらが城壁上から矢を射かけようとすれば、素早く遮蔽物に身を隠し、場合によっては―――俄かに信じ難いが、地面を這いながら進んでいく。それも集団ごとの統制を崩さずにだ!
 この世界の歩兵が一般的に取るであろう横隊陣形とはまるで違う。
 秩序だった隊列も、指揮官の喇叭や号令による統制もないそれは、戦の知識を持たぬものが見れば一見して無秩序にさえ見えるかもしれない。
 だが、仮にも王都守備軍の魔道兵―――つまりは常備軍有数の精鋭であるグライフス准男爵には、それが恐ろしいまでに統制された戦術行動であることが直観的に理解できた。
 事実、敵の降下地点付近からバラバラに駆けつけようとした衛視隊の兵は、まともな損害を敵に与えることもできずに次々と異界軍の鉄礫によって撃ち倒され、いまやその敵は城門近辺にまで進出しつつあった。

「馬鹿な……これが只の歩兵の戦い方か!?いったい異界人は―――」

 異界軍のそら恐ろしいまでの練度を前に、愕然と呻くグライフス。
 その胸中に、得体のしれないモノに対する恐怖の感情が急速に広がっていく。
 これほどの統制がとれた戦術行動。
 同じことをモラヴィア魔道軍の歩兵が行おうとして、果たして出来るだろうか?
 理屈の上では、できるだろう。
 数人単位の小班にまで魔道兵を配し、そのうえで上位部隊が各小部隊を統制できるだけの強力な指揮通信機能を持てば――――馬鹿馬鹿しい。
 そんな無茶苦茶な編成をやろうと思えば、どれほど金と魔術師があっても足りるものではない。
 小部隊を有機的に機動させ、上位部隊が魔力波通信によって統制する。
 陣形に頼ることなく幅広い戦術を可能とするその発想自体は、この世界にもないわけではない。
 しかしそれは、実験的な試みの域を脱するものではない。
 いま、異界軍がやっているような戦術をこの世界で実現しようと思えば、通信手段である魔力波通信技術を有した魔術師を歩兵隊に大量配備し、そのうえで兵自体も十分な訓練を受けた精鋭で固めなくてはならない。
 それらのうち後者を実現するだけでも膨大な資金が必要となるであろうし、ましてや貴重な魔術師を、大量消耗を覚悟しなくてはならない歩兵部隊に多数配備するなどできるわけもない。
 魔法王国と呼ばれるモラヴィアであっても、それは同じことだ。
 
「くっ、弓箭兵は城門に近づく侵入者を狙い撃て!防御塔は結界を魔力遮断から物質遮断に切り替えろ。通信は決起軍本営に増援の要請を――!」

 陣頭に立って声を張り上げるモラヴィア貴族将校。
 さらに言葉を続けようとしたところで、足元を揺るがす轟音が轟き、グライフスは体勢を崩して前につんのめった。
 壁に手をついてどうにか転倒を免れた准男爵の目に映ったのは、魔道槍の直撃でも食らったように、無残に吹き飛ばされた城門の門扉だった。

(ま、ずい…!)
 
 崩れた体勢から身を起こし、旗下の守備兵たちに迎撃を命じようと口を開きかけるグライフス。
 しかし、その言葉が口をついて出ることはなかった。
 胸に何かが当たる衝撃。
 視線を落とせば、自身の軍衣――その胸元に赤い点が穿たれていた。
 傍らで控えている自らの従卒。その、まだ少年と言ってよい年頃の顔には信じられないといった表情が浮かんでいた。
 何かを言おうとして、言葉が出ない。


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