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やりスギロワイアル

9Mysterious-Partner-Takashi:2012/06/19(火) 22:35:17 ID:xwSnNkXg

「杉本さん……すみませんね。
 だが俺も希美……あいつの為に負けれないんだ。
 この戦いに勝ったら、夫婦二人で24時間テレビの司会だ!
 待ってろよ、希美!! 愛してるぜぇぇぇ!!」

 カチャリ。

 太陽の背後には天才小学生――出木杉がいた。
 出木杉は支給品のデリンジャーの銃口を太陽の後頭部に向ける。

「チェックメイドだよ……お兄さん」

「……待ってくれ、俺には愛する3人の子供と妻が――」

「じゃあ、お兄さんを生かしてて僕に何の利益があるか教えてよ」

「そ、それは……まだ結構人数残ってるだろ……君ひとりで勝ち残るつもり?
 俺がいれば、だいぶ人数を減らす事ができ――」

「う〜ん……余り魅力的な提案じゃないなぁ……。
 だって、それってそのライフルがあれば僕だって出来るでしょ?」

「くっ……」

「それにお兄さんは愛する妻子がいるんでしょ……なら、いずれは僕を殺さないといけない……僕が見逃す理由は無いよ」

「ま、待ってくれ! 頼む!」

「待たないよ」

 パァン!
 出木杉は杉浦を殺した。




「...Fuck you!」


 低い声だった。
 それは、ボンデージルックに身を包んだヴァン・ダークホームことTDNコスギであった。
 彼は、不機嫌そうな表情で太の遺品であるレミントンを手に取り出木杉に向かって引き金を引いた。
 だが、射程距離の短い散弾銃では出木杉に届くことはない。
 そのことを理解したTDNは、きびすを返して逃げ出した。

「チッ……逃がさないよ……!」

 だが、出木杉が狙撃銃を拾い上げ、スコープを覗き込んだ時、既にTDNの姿はなかった。



出席番号 02 番  小杉太  
出席番号 15 番  杉本彩
出席番号 08 番  杉浦太陽        ――死亡  残り9人

10Mysterious-Partner-Takashi:2012/06/21(木) 21:11:08 ID:xwSnNkXg

第六話「人が堕ちる時」


 それは住宅街での出来事であった。
 銀魂の坂田銀時や涼宮ハルヒの憂鬱のキョン役で有名な声優、杉田智和は溜息をついた。

「24時間テレビって……俺って声優だぜ? 顔出しも少ない裏方の人間だぜ?
 24時間テレビの司会めぐって殺し合えったってなぁ……はぁ……」

 一部では、それなりに名の知れた彼だが、やはり声優。
 他の参加者のお笑い芸人や俳優達に比べると、圧倒的に知名度がない。
 そんな人間が司会をやっても番組がシラケるだろうし、そもそも杉田はそんなものに興味はなかった。
 考え事して、ぼうっとしていたからか、杉田は自らの眼前に迫る異様な光景に目を見開いた。

 それは、槍を手に駆けてくる大物俳優ショー・コスギの姿だった。
 思わず杉田は支給品のウージーサブマシンガンを撃ってしまった。

「……!?」

 まさか、相手が機関銃を持っているとは思わなかったショーはぎょっとする。

 ぱらららら。
 そんなマシンガン特有の銃撃音と共にショーは身体中を穴だらけにされ、死んだ。

「や、やっちまった……」

 人を殺してしまったショックにより、杉田はヘナヘナと倒れる。

「……アンタがやったのか?」

 そこに現れたのは、武闘派中学生、杉村弘樹であった。
 手には、支給品である特殊警棒が握られていた。

「……ちっ!」
(やっちまった以上はもう後戻りは出来ない……)

 すぐさま、銃口を杉村へと向ける杉田。

「アタァ!!」

 だが、杉村は小説版BRでの桐村戦で見せた棒術により、ウージーを叩き落とす。
 その衝撃で仰け反り、尻餅をつく杉田。
 この隙を逃すまいと追撃を仕掛けようとする杉村だったが。

「コイツぅ!」

 杉田は、ショーの落とした槍を力任せに薙ぎ払った。
 槍の先端の刃が杉村の腹部を切り裂く。
 杉村は苦悶の表情を浮かべ、たたらを踏む。

 ドスッ。
 そんな鈍い音だった。
 腹部を槍で貫かれた杉村は、既に戦意を失っていた。
 死を間近に控えた弱弱しい瞳で、杉田を睨むだけだった。

「終わりだ……!」

 杉田は、力任せに引き抜いた槍を再び杉村に突き刺した。
 それの突きは、杉村の命を奪う決定打となる。

「……くっ、琴弾……――」

 杉村は最後に片思いのクラスメイトの名前を漏らして倒れた。


出席番号 06 番  ショー・コスギ
出席番号 13 番  杉村弘樹        ――死亡  残り7人

11Mysterious-Partner-Takashi:2012/06/24(日) 22:17:16 ID:xwSnNkXg

第七話「第一回定時放送」


「ハァ〜〜イ! 松子よ!
 みなさん、殺し合いをエンジョイしてるみたいで、安心したわ。
 早速だけど、死亡した人の名前を放送するわね」

 杉本哲太
 シェイン・コスギ
 杉村太蔵
 杉内俊哉
 すぎやまこういち
 おすぎ  
 杉田玄白
 小杉太  
 杉本彩
 杉浦太陽
 ショー・コスギ
 杉村弘樹

「――以上12人が死にました。
 生き残りの名前も言った方がいい?
 じゃあ、まあ、一応言っとくわね〜」

 ケイン・コスギ
 TDNコスギ
 スギちゃん
 杉田智和
 高杉晋作
 出木杉英才
 ブラマヨ小杉

「――以上7人が生き残ってるわ。
 ヒントを言うけど、この7人は少なからず最低ひとりは殺してるのよ。
 つまるところ、7人全員が人殺しってワケね。
 だから、今更遠慮はいらないわよ〜! 
 思う存分殺し合いなさいな。
 じゃあ、次は禁止地区の発表ね――」


 放送を切ると、松子は側近のイケメンタレント二宮君を唇を貪るように味わう。
 部屋は二宮君の喘ぎ声で包まれた。

12Mysterious-Partner-Takashi:2012/06/25(月) 23:02:30 ID:xwSnNkXg

第八話「芸人ふたり」


 午後六時過ぎ、周囲は夕焼け色に染まっていた。

「スギちゃん、殺し合いなんて余りやりたくないぜぇ……」

 お笑い芸人スギちゃんは、放送を聞いて落ち込んでいた。
 同じ芸能界を生きる仲間たちが大勢死んだ。
 そして、同じ芸人のブラマヨ小杉やケイン・コスギといった先輩達も人殺しに手を染めている。
 その事がとても悲しいのだ。
 加えて、何よりも悲しいのは、人を笑わす筈の自分が人殺しになってしまった事である。

「でも、スギちゃん、死にたくもないんだぜぇ……」

 スギちゃんは、自分の性格から司会には向いてない事を理解していた。
 故に死にもの狂いで司会の座を手に入れたいわけではない。
 だが、自分の命を奪われるのならば、それは全力で抗うつもりでいた。
 しかし、よくよく考えてみれば、今生き残っているのは皆、人殺しなのだ。
 受け身でいて、生き残れる可能性は少ない。
 ケインはかなりの実力者だろうし、司会の仕事が入るようになってきたブラマヨ小杉などは、24時間テレビの司会の座は喉から手が出る程ほしがるだろう。
 やはり、受け身では駄目だ――そう思い、スギちゃんは杉村太蔵から奪った拳銃ベレッタを握りしめる。



「お前、スギちゃんやろ?」



 突然、背中から声を掛けられたスギちゃんは、ビクリと震えた。
 そして、振り返る。
 そこには、返り血に身を染めたブラマヨ小杉がいた。

「やっぱなぁ……スギちゃん、お前、誰殺した?
 ちなみに、俺は、おすぎさんやったったわ……コイツでぐしゃぐしゃにな……」

 赤く染まった金属バットを掲げてブラマヨ小杉が歪に笑った。
 その表情にスギちゃんの背中に悪寒が走る。

「……スギちゃんは………杉村太蔵さんを……殺したぜぇ……」

 震える声で絞り出す。
 そして、涙を流しながら、拳銃ベレッタを構えた。

「銃を構えたスギちゃん……まるでダーティーハリーみたいに……ワイルドだろォ……」

 銃口を向けられたブラマヨ小杉の興奮が最高潮に達した。

「お前!!」

 右手に金属バット、左手に鉈を持ってスギちゃん目掛けて駆けていくブラマヨ小杉の胸が撃ち抜かれる。
 だが、走り続ける。
 今度は肩、腹部、腕――次々に撃たれていく。
 だが、気力で走り続けた。
 そして、スギちゃんの眼前に迫る。

「杉山ぁぁ!!」

 怒号と共に鉈が振り下ろされた。
 力任せに振り下ろされた極太の刃がスギちゃんの胴体を切り裂く。

「……今度は外さないぜぇ」

 パァン!
 スギちゃんのベレッタはゼロ距離からブラマヨ小杉の脳天を撃ち抜いた。 

 ブラマヨ小杉は死んだ。


「……くぅ、防刃チョッキじゃないから痛いぜぇ……でも着てないよりはマシだぜぇ……」

 切り裂かれた防弾チョッキを脱ぎ捨てながら、スギちゃんは傷口を飲料水で洗った。

「血が止まらないぜぇ……」

 血が止まらない。
 死んだブラマヨ小杉に手を合わせ、衣服をはぎ取って包帯代わりに使えないかと試行錯誤する。
 

出席番号 19 番  ブラマヨ小杉        ――死亡  残り6人

13Mysterious-Partner-Takashi:2012/07/07(土) 23:14:46 ID:UzVg1EBs

第九話「夜間激闘」


 山中にある目立たない山小屋で男が支給品のフランスパンをかじる。

「Fuck you.....松子め……俺は未だ誰も殺しちゃいないぜ……!」

 全身をボンデージルックに身を包んだTDNコスギは吐き捨てるように言った。
 半日で19人中12人も死んだ。
 残った人間は、敵から武装を奪ったりしてるだろうし、かなりの武器を持っている可能性がある。
 TDNの支給品は青酸カリだったが、銃や刃物を持った相手と戦うのは余りにも辛い。
 故にレミントンショットガンを入手できた事はラッキーであった。

「あのスナイパーごっこしてるガキは注意しとかないとな……」

 不機嫌そうに独り言をつぶやく。
 辺りは既に闇夜に包まれており、明かりもない今から戦闘行為を行うのは危険だ。
 彼は早朝から行動を開始するために、体を休めようと腰を下ろす。

 だが、簡単に安息の時間はやってこない。
 山小屋の戸がいきなり開いたのだ。

「……誰かいるのか?」

 それは声優の杉田智和であった。
 手には血の付いた槍を持っている。

「Fuck you...!! 恥知らずの人殺しが安息の地を求めてここまで来たってかい!?」

 不愉快そうな表情を浮かべたまま、TDNはレミントンを発射した。
 咄嗟にそれを避ける杉田。
 入口の戸がはじけ飛び、木片が杉田に飛び散った。
 だが杉田はそんな事おかまいなしに腰のベルトに挿していたベレッタを発砲した。

「……ぬぅッ!」

 それはTDNの肩を撃ちぬく。
 苦悶の声を漏らすTDN。

「ざまぁみろ!」

 杉田は顔を歪めて笑う。
 そして、身体を隠しながらベレッタでの銃撃を続ける。
 TDNはすぐさまテーブルを蹴り倒し、それを盾に籠城の構えを取った。

「……何てこった……油断しちまったぜ……Shit!!」

 TDNは肩の痛みを堪えて打開策を考える。
 しかし、思い浮かばない。

「……捨て身で突っ込むか?」

 そう思って、自分の愚策を捨てる。
 今はまだ肩を負傷しただけだ。
 まだ十分戦える。
 ここで致命傷を負ってしまっては、あとは死ぬのを待つだけだ。
 ここは、これ以上傷を負わずに勝つ。
 最悪、これ以上の被害を追わずに逃げるのが上策だとTDNは考えた。

 だが、全ては彼の頭の中で考えられた事であった。
 彼はまだ杉田のすべての手の内を知らない。


 ぱららららららら。
 ベレッタの銃声が鳴りやみ、ウージーサブマシンガンの弾がガシガシと分厚いテーブルを削っていった。
 そして、あっという間に貫通。
 TDNの腹部が血に染まる。

「Fuck.......」

 TDNは終わったと思った。
 だが、最後に敵も一緒に地獄に叩き落とす。
 そう考えて、ショットガンを構えて立ち上がった。

「...Fuck you!」

 レミントンを構えて、ドアへ特攻した。

「……何!?」

 ドアまでは、ほんの4メートル。
 数秒の出来事であった。
 杉田は一瞬呆けるが、すぐさまウージーをTDNに撃った。
 足から腹部、胸、そして頭を撃ちぬいていく。
 だが、頭へ――そこへ到達する寸前に放たれた散弾が杉田の頭を吹っ飛ばしていた。


「......Fcck you..........つまんねぇ幕切れだぜ……」

 最後まで不愉快そうな表情のまま、TDNは息を引き取った。




出席番号 12 番  杉田智和
出席番号 04 番  TDNコスギ        ――死亡  残り4人


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