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芸人バトロワ2006(長編)

8黒羽菊花 ◆PyB831QpqM:2012/04/02(月) 11:43:47 ID:YmyfsQTk
集合予定時刻からすでに2時間近くが経過していた。
ここまで来ると遅刻じゃなくて、急用とか病気とかで休みなんじゃないのか?とも思ったが、
何せ遅れているのは、うちのクラスでも1,2を争うほどの天然、井上聡だ。
(ちなみにその争ってる相手は陣内で、昔よく「お前の方が天然やろ」とか言い合ってた。
周りからすればどっちもどっちだよ)
どのくらい天然かと言うと、急に「道路の白い所だけを通って家まで帰ろう」とかいう小学生みたいなことを思いつき、
途中、どうしても白い所が途切れているせいで、そこから動けなくなり、(せめてその時点で諦めていれば、
まだ普通なんだけど)なんとわざわざタクシーを呼んで家まで帰ったくらいだ。
本人いわく、「子供のころに諦めたことだからこそ、大人になったら諦めたくなくなった」とのことだけど…
そのセリフだけを聞けば、なんとなく立派なセリフっぽく聞こえるが、その内容があまりにも幼稚すぎる。

「先生、もう2時間ですよ。もういいじゃないですか。何するのか知りませんけど、さっさと始めちゃいましょうよ!
もうここまで経ったら井上は絶対欠席ですって!!」
少しヤケになったような感じで柴田が発言した。
俺としては、これから始まる『何か』が絶対ろくでもないことなのは目に見えてるから、あんまり始めて欲しくないんだけど、
柴田はせっかちな性格だから、もう待ちきれなくなったんだろうな。
多分、良いことだろうが悪いことだろうが、さっさと初めてさっさと終わらせたいタイプなんだろう。

「いや、確かに今朝連絡をしたら、『はい、普通に行けますよ』って言ってたぞ。もし途中で来れなくなったら
必ず電話で連絡するように、とも言っといたしな」
そういえば俺も、その連絡もらったな…それじゃあ、連絡なしで欠席ってことはありえないわけか。
いや、あの井上のことだから、携帯を忘れてきたとか、さらにサイフも忘れて公衆電話もかけられないとか、
さらに言えば電話連絡のこと自体を忘れているとか、考えられることはあり過ぎるくらいにあるんだけど。

その時、河本が手を上げながら、ちょっと言いにくそうな感じで口を開いた。
「あの…井上は間違った電車に乗っただけなんで、多分そろそろ来るとは思うんですけど」
はあ!?間違った電車?いや、井上ならいかにもありえそうだけど、何で河本がそんなこと知ってるんだ。
知ってるってことは、乗るところを見てたってことじゃないのか?じゃあ何で止めなかったんだ。

「なんだ、そうなのか。でも地図は付いてたのにな。何で間違えたりするんだか…」
先生が呆れたように言う。すると河本は…
「いや、実は井上が、『地図見るの苦手だから、電話で行き方教えて』って言ってきたんで、ちょっとしたイタズラで
わざと違う電車に乗せちゃったんですよ」

………なんだか本格的に呆れてきた。周りのみんなも『そんな理由かよ…』とでも言いたげな目をしている。
てっきり遅刻の原因は本人の天然のせいかと思っていたが、まさか河本のせいだったとは。
もっとも、これから始まる『何か』を少しでも先延ばしにして欲しいと思ってる人たちは、内心『よくやった!』とか
思ってるみたいだけど。(俺もどちらかといえば、そっちの方だ)

そういえば河本って昔からよく井上にイタズラを仕掛けていた気がする。
その割には井上は怒りもせず、その上、河本に言われたことは大抵素直に聞いていた。
前に一度だけ中山が「なんで反撃せえへんの?」とか聞いていたが、井上は、「一応怒ろうかとも思うんだけど、
別に腹も立たないし、その内にもういいやって忘れちゃうから」と答えていた。
まあ、何だか変な関係だが、別にいじめってわけじゃないらしいし、本人が納得してるんなら、それでいいだろう。

9黒羽菊花 ◆PyB831QpqM:2012/04/02(月) 11:45:24 ID:YmyfsQTk
その時、ガラッという音と共にドアが開き、ようやく井上が入ってきた。
「あの…すみません、遅刻しましたー」
同じように遅刻した井戸田(その時間はともかく)と、言ってるセリフはあんまり変わらないが、井戸田が慌てて
駆け込んできたのと違って井上は、その遅刻した時間の長さに比例するかのような、のんびりした足取りと口調で
入ってきた。普通は遅刻した時間が長ければ、その分慌てるもんだけど…ここまで遅れるとどうでもいいのか?

「まったく…いくらなんでも遅すぎるぞ。まあいい、これでようやく全員揃ったから同窓会の説明始めるぞー」
ついに始まるのか。絶対ろくでもない事だということ以外は、完全に謎に包まれた『何か』が。

「あれ?先生、あの黒い服着た人たち誰ですかー?」
その前に、この緊張感をぶち壊す井上の、気楽そうなセリフが入った。
来るのも遅ければ、この教室の異状に気付くのも遅すぎる。
しかも、それに気付いても、まったく危機感を感じていないのが彼らしいといえば彼らしい。
井上の頭の中では、銃を持ったボディーガードさえも、同窓会の出し物レベルで片付けられてしまうのだろうか?

「ちょうど今から説明するよ。とりあえずお前は河本の隣にでも座っときなさい」
「はーい、分かりました」

なんでそこで素直に納得するんだ…とツッコミを入れたくなったが、キリがないので止めておいた。
もう『天然だから』という言葉で済む問題ではないような気がするが、もうこうなったら『井上だから』という理由で
何をしてもおかしくない…ということにしておこう。

「実はな、今回の同窓会で先生は、ある『ゲーム』を思いついたんだ。ちょっとそれを皆にやってもらおうと思ってな。
言っておくけどもう拒否権は無いぞ。この日のためにけっこうな金と時間と手間をかけてきたんだしな」

教室全体にさっきの緊張感が戻ってきた。
そして、先生はその『ゲーム』の内容を説明しだした…

10黒羽菊花 ◆PyB831QpqM:2012/04/02(月) 11:46:05 ID:YmyfsQTk
「…というワケだ。せいぜい皆がんばれよ。今から一日だけ時間をやるから、心の準備とかしておけよ」
先生の説明で、今まであった大量の謎と疑問はすべて解けた。
そして、当然のことながら教室中の皆が騒ぎ出した。
「そんなめちゃくちゃな…」「いきなり過ぎますよ!こっちは何の準備もしてないのに」「何でそんなこと…」
さまざまな声が聞こえてくる。しかし先生は「言っただろ。拒否権は無いって」の一言で片付けてしまった。

そして、俺たちはこの教室に泊まることになった。もちろん布団なんてない。
ちなみに先生は「それじゃあ俺は保健室の方で寝るから」と言って、教室に鍵をかけ、出て行ってしまった。
とりあえず、これから最低3日は家に帰れなくなるわけだ。

明日までの時間、いったいどう過ごせばいいんだろう。
周りを見てみると、緊張している人もいれば、けっこう気楽そうな奴もいる。
川島なんて全く気にする様子は無く、持参したらしいゲームで遊んでいたし、井上は「そのゲーム後で貸して」とか
かなり気楽なことを言っている。(さすがに河本に止められていたが)

どうなるのかは分からない。
でも、やるだけやってみれば、案外なんとかなるかもしれない。
隣の中田はやたらと気合、入ってるみたいだしね。
そんなことを考えながら、とりあえず明日までの時間を過ごそうと思った。


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