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芸人バトロワ2006(長編)

1黒羽菊花 ◆PyB831QpqM:2012/04/02(月) 11:15:42 ID:YmyfsQTk
実在の芸人たちがもし元同級生で普通の仕事に就いていたとしたら……
という設定です。
2006年に構想を始めたもので、タイトルに2006とついてます。
アメブロでも同じ内容のブログを連載中です。

おまけですが、この小説をもし気に入ってくださり、
褒め上手な感想を書く自信のある方がいらっしゃいましたら、
下記のアドレスを見てみてください。(頭にhをつけてください)
ttp://jmty.jp/tokyo/rec-oth/article-97yu
わずかですが、謝礼金が貰えるチャンスがあります。

2黒羽菊花 ◆PyB831QpqM:2012/04/02(月) 11:35:01 ID:YmyfsQTk
最後に生き残るのは1人ですが、出発はペア制のルールです。

【参加者】
阿部智則・吉田大吾 石田明・井上裕介
板倉俊之・堤下敦  井戸田潤・小沢一敬
井上聡・河本準一  植松俊介・大熊啓誉
大水洋介・飛永翼  小木博明・矢作兼
川島明・田村裕   菊地秀則・山田一成
久保孝真・高倉稜  児嶋一哉・渡部建
今野浩喜・高橋健一 佐々木優介・永沢喬之
品川祐・庄司智春  柴田英嗣・山崎弘也
陣内智則・中山功太 田中卓志・山根良顕
徳井義実・福田充徳 中田敦彦・藤森慎吾

【主催者】関根勤

3黒羽菊花 ◆PyB831QpqM:2012/04/02(月) 11:38:02 ID:YmyfsQTk
第1話

きっかけは一通の手紙からだった。
何の変哲もない同窓会の招待状。ただ一つおかしいと思ったのは、その会場だった。
「どこだよ…沖木島って」
手紙に書かれていたのは、ほとんど聞いたこともない島の名前だった。
いや、もしかしたら昔、地理の時間に名前くらいは聞いたことがあったかもしれない。
確か香川県の方にある小さな無人島。
でも、少なくとも自分達の母校からはだいぶ離れた場所だし、ましてや有名な観光スポットとは程遠いところのはずだ。
しかも指定されている場所は、その島に一つだけある廃校だった。
なんでそんなところを選んだのか。
それはよく分からなかったが、別に行けない距離ってわけじゃないし、地図もついているから迷う心配もない。
理由なんて先生に直接聞けばいいだろう。
その時はそんな軽い気持ちだった。

それから1週間後、俺たちはその『同窓会場』に来た。予想通りほとんどの人が迷わずに会場にたどり着いた。
まあ『ほとんど』ってことは全員じゃないってことなんだけど。

しかし、この場所はあまりにも殺風景すぎる。
しばらくの間使われた形跡のない教室は、一部蛍光灯が壊れているところもあって薄暗い。
無人島の廃校なんだから当たり前だと言われればその通りなんだけど、仮にも同窓会場なのに。
机は全部かたづけられていたので、さほど狭くは感じなかった。
その代わりに、後ろの方にはちょうど俺たちの人数くらいあるリュックサックが重ねられ、黒板の横には
この教室には不釣合いな大画面のテレビと、やたら高級そうなDVDの機械があった。
あんなもの用意する余裕があるなら、もっとマシな所で同窓会できるだろ!
いや、そもそもここに来るまでの交通費を考えたら、近くの会場を選んだ方が効率がいいのは招待状を
見たときから思っていたことだから、すごく今さらなんだけど。

いったい先生は何を考えているのか。
実際に行ってみれば分かると思っていたのに、来たらよけいに分からなくなってしまった。
周りのみんなもその点については疑問らしく、いろいろ理由を考え合ったり文句を言ったりしていたが、
そのうちその話題に飽きてきたのか「結局は先生に聞けばいいだろう」ということで話をまとめ、後は
それぞれの雑談に移ってしまった。

4黒羽菊花 ◆PyB831QpqM:2012/04/02(月) 11:38:50 ID:YmyfsQTk
「おー!福田久しぶりやなー」
「久しぶりって…他のやつらはそうかもしれんけど、俺らこの前会ったばっかりやん!」
「他のやつに比べたらそうやけど、一ヶ月くらいは直接会ってなかったぞ!」
「そんくらいで騒ぐなよ!電話でしょっちゅう何時間もしゃべっとったやろ」
「それだけで足りるか!もっと何とかして時間作れ!!」

どうやらあの2人は卒業後も、よく会ったり電話したりしてるらしい。
まあ昔からやたらと仲良かったから、あんまり違和感はないけどね。
それどころか、休み時間になるたびに2人でトイレに行って話し込んでたらしいから、学校中の噂になってた。
結局あの噂の真相は謎のままだけど、あんまり関わらないほうがいいような気がする。

「今野、いま仕事なにやってんの?」
「フリーターだよ!お前こそ何だよ!!」
「何で逆ギレなんだよ………キャノンの工場でコピー機に静電気が起きても誤作動がないか試験する仕事だよ」
「何だ、その訳の分からない仕事内容は!」
「フリーターよりマシだろ!ちゃんと仕事探しなよ。面接とか行って」
「面接なら行ったよ!就職する気も無い会社や企業だけど」
「お前の行動は相変わらず意味わかんないよ…」
「お前には言われたくない!!前、白衣着て変なアンケート無意味に配ってたくせに!」
「それは2人でやったことだろ!」

あの2人も昔からあんな感じだ。話を聞いていると、どっちがおかしいのか分からなくなってくる。
いや、むしろ両方おかしいから会話が成り立ってるのか?変わり者同士って感じで。
その『変なアンケート』の内容は妙に気になったが、正直こっちは別の意味で関わりたくないので無視することにした。

「永沢は今なにやってんの?」
「何って同窓会に決まってるだろ。そうじゃなきゃお前は何しに来た!」
「いや、そういう意味じゃなくてさ。仕事だよ仕事!」
「自慢じゃないけど、学校の先生だな。しかも大学のだぞ。自慢じゃないけど」
「思いっきり自慢に聞こえるけど…じゃあとりあえず金貸してくれ」
「何でそうなるんだお前は!ちなみにお前の仕事は何だ?」
「一応俳優…なんだけどまだ売れてないからさ。絶対先生のほうが給料いいって!だから金貸してくれ!」
「だから何でそうなるんだ!じゃあ売れるように俺が規則を作ってやる!とりあえず髪染めるな、あと皮パンは履くな!」
「完全に学校の規則じゃんか…逆に地味にしてどうすんだよ。って言うか、何でお前が勝手に俺の売り出し方を決めてんの?」
「うるさい!口答えするな!!」

そういえば佐々木は、永沢にかけた最初の言葉が「金貸してくれ」だったらしい。
その時の永沢はパチンコでけっこう稼いでたからいっぱい貸したとか。
多分今回も文句を言いつつ結局貸すはめになるんだろうな。

5黒羽菊花 ◆PyB831QpqM:2012/04/02(月) 11:39:32 ID:YmyfsQTk
まったくどうしてうちのクラスは、こう変わり者ぞろいなんだろう。
まあ俺の友達の中田も相当(と言うかむしろ他のみんな以上に?)変わり者なんだけどね。
なんせ俺ににかけた最初の言葉が「好きなSMプレイなに?」だったし。
正直あれには引いた。どうせなら「金貸してくれ」のほうが、まだまともな返事が返せるだけマシかもしれない。
俺もよくそんなやつと友達になったよな。まあ、もともと俺はいろんな人と友達になれるタイプだったけど。
でもそれも中田の「程度の低い奴等と付き合うな」のセリフで帳消しになってしまった。
だから中学時代は俺も、中田以外のやつとはあんまり話した記憶がない。
幸い(?)にもこのクラスは、特定の人としかしゃべらない奴がやたらと多かったから、特に浮くことはなかったけど。
でもそれを除いても中田は変わってたと思う。
とりあえず「一緒にコンビニ行こう」って誘ったら「ええっ!?コンビニって友達と行くものなの!?」だし、
「ガム食べる?」って聞いてみたら「ええっ!?赤の他人であるオレにガムくれるの!?」 だし。
人との付き合い方を知らなかったから、ああなったんだろうか?

「おい藤森、何考えごとしてんだよ」
「えっ!…いや、何でもないよ」

あー、びっくりした。ちょうど今こいつの事を考えてたから、心を読まれたのかと思った。
まあ実際にはそんなことありえないんだろうけど、彼なら妙にありえるような気がするから不思議だ。
きっと普段からよく変わった発言をしてるからそんなふうに思えるんだろうな…

「あー、それにしても先生来るまでヒマだなー。あと5分くらいか。そうだ藤森、俺の描いた絵見るか?」
「あ…うん、見るけど…」

正直彼の絵はワケがわからない。上手いことは上手いんだが、その内容は首吊ってたり、腐ってたり、撃たれてたりと
とにかく暗い。率直なことを言うと、見ていて愉快にならない感じだ。
昔、絵を見せられて感想を求められた時はとりあえず「キレイっちゃー、キレイなんだけど…」と返しておいた。

そんな俺の気を知ってか知らずか、中田は持参したカバンの中から絵を取り出し始めた。
「どうだ?」
「あれっ?意外と明るいじゃん!」
「お前のおかげだよ。藤森と出会ってからは割と明るい絵も描けるようになった」
「良かったじゃん!じゃあもう昔みたいな絵は描いてないの?」
「いや、今でもあの首吊りの絵は気に入っているんだけどな」
「やめてよ、あれ癒されないから…」

そんなことを話していると、突然ガラッとドアが開いて先生の姿が見えた。
よし、今まで溜まってたたくさんの疑問を全部聞いてやろう。
みんなもそう思っているらしく、急に雑談が止まり(一部のマイペースな奴は除いて)ドアのほうに意識が集中するのを感じた。
多すぎてどれから聞いていいのかは、ちょっと混乱しそうだけど。

しかし、その次に見た光景は驚くべきものだった。
先生の後ろには何人かのボディーガードみたいな人たちがいて、その手には銃が握られていた。
これにはさすがのみんなも驚愕のあまり絶句していた。今度は、一部のマイペースな奴も含めて。
(とは言っても、元々無言だった川島や阿部は、いぶかしげにその様子を見るだけだったし、ぼんやりと窓の外を見ていた
大水は、飛永に指摘されてようやくその様子に気づいたみたいだったけど)
いったいこれから何が起こるんだ。
疑問を聞くどころか、さらに新しい疑問が増えてしまった。しかも、とてつもなく大きくて危なそうな疑問が。

6黒羽菊花 ◆PyB831QpqM:2012/04/02(月) 11:40:31 ID:YmyfsQTk
「やあ、みんな久しぶりだな。もう全員揃ったか?」

先生は昔と変わらないような調子でそう言った。
中学時代はごく普通に聞いていた声。だがその明るさは、この異常な状況には合わなすぎて逆に怖い感じがした。

「えっと…井上と井戸田がまだですけど、それより先生、それ何の冗談ですか」
割と冷静そうに渡部が質問する。もっとも内心どこまで冷静なのかは分からなかったが。
「ああ、このボディーガード達のことか?ちょっと雇ってきたんだよ。今回の『同窓会』に必要だから」

もう本格的にワケが分からない。何で同窓会にボディーガードなんだ。そもそもどこから雇ってきたんだ。
そして…何で銃なんか持ってるんだ。
母校からだいぶ離れた、小さな無人島の廃校の、後ろのほうに大量のリュックサックが重ねられた、
TVとDVDだけはやたら豪華な薄暗い教室で、謎のボディーガード達に囲まれたままやる同窓会?
謎があまりにも多すぎて、もう質問する気もふっとんでしまったような感覚だ。
もしかしたら、おかしくない事のほうが少ないんじゃないか?いや、むしろここにおかしくない事なんて無いんじゃないか?
ここまでくるとそんな事まで考えてしまう。

「それよりも…まだ来てないやつがいるのか。困ったなー、この同窓会は全員揃わないと意味がないのに」

何で意味がないんだろう。もうこうなったら今までの疑問はいったん忘れて、新たに出てきた疑問だけに集中
するようにしよう。そうしないとさすがに頭の回転が追いつかない。

「どうしてボディーガードが要るんですか!いったいこれから何をする気なんですか!?」
とりあえずみんなの言いたいことは渡部がまとめてくれているので、しばらくは任せておこう。
「それは全員揃ってから説明するから、とりあえず今は…さっきの雑談続けてていいぞ」

そんなことを言われても続けられるわけがない。こんな殺伐とした雰囲気で何を話せって言うんだ。
そう思った矢先に、後ろのほうから庄司の気楽そうな声が聞こえてきた。
「じゃあ…とりあえず続き話そっか?」
「お前この状況分かってんのか!!」
「いや…だって雑談続けてていいって言われたから」
「ちょっとは空気読めよー、バカかお前は!」
「仕方ないだろ!他に何しろって言うんだよ」

確かに他にどうすればいいのかは分からない。でも、だからってよくこんな時に雑談する気になるよなあ…
ちょっとはどうするべきか考えてみるとか、そうじゃなくても少し緊張する素振りくらいあってもいいのに。
あれじゃあ品川じゃなくても注意するよ…
一瞬、場をなごませようとしてるのかとも思ったけど、そんなに器用なタイプには見えない。
度胸が良いというか何も考えてないというか、多分そんなとこだろう。

その時、まだいなかった奴の一人の井戸田が慌てて入ってきた。
「あの、すみません。遅刻しました!……!?」
井戸田は教室内の状態を、ちょっと呆然としたまま見つめていた。
そりゃあ当たり前だろう。何せ、最初からここにいた俺たちだってワケが分からないんだから。
後から来てこの状況をすんなり理解できる奴なんて、会えるものなら会ってみたい。

7黒羽菊花 ◆PyB831QpqM:2012/04/02(月) 11:41:11 ID:YmyfsQTk
「あの…先生、これって………」
「ああ、井戸田やっと来たのか。遅いぞ。とりあえず、まだ一人来てない奴がいるから、そこらへんに座ってなさい」
「いや座ってなさいって言われても…何なんですか、これは!何でボディーガードみたいな人たちがいるんですか?」
「いいから全員揃うまで待ってなさい。理由はそのうち分かるから」
「揃うまでって、もしかしてまだ同窓会始まってなかったんですか?いや、遅刻した俺が言うのもなんですけど、
時間になったなら始めちゃっても良かったのに」

始めちゃってもって…あのボディーガードみたいな人たちに疑問を持ったんなら、そんな発想は普通かき消されるだろ…
井戸田は一見しっかりしているようにも見えるが、こういうところは結構天然だ。

「とにかく、この同窓会は全員揃わないと無意味なんだよ」

先生はそれだけ言うと後は黙ってしまった。井戸田はイマイチ納得していない様子だったが、
とりあえずそのまま小沢の横に座った。

「もう!何でよりによってこんな時に遅刻するのさ!すっごい怖かったんだからね!」
小沢が小声で井戸田に注意している。昔は井戸田が遅刻するたびに、
「遅刻界のイチローだね。遅刻をヒットで換算したら首位打者だもん」
とか冗談を言っていたが、今そんなことを言う余裕は全くないようだ。すごく当たり前のことだけど。
そういえばあの人、昔からかなりの怖がりだったな。
今日、すっごい怖い夢を見たとか言って半べそで井戸田に相談してたくらいだし。いったい年いくつなんだ。

なんだか、このやたらとユニークなクラスメート達のことを考えていたら、この状況があまり深刻なものじゃない
ような錯覚を感じる。
それは、ある意味気楽でいいのかもしれないけど、それが命取りになりそうで怖いから、慌てて気持ちを切り替えた。

それにしても、何でさっきから先生はやたらと『全員揃うこと』にこだわっているんだろう。
さっきの井戸田の発言には少し呆れたものの、確かに何をする気にせよ、時間がとっくに過ぎてるんだから、
一人や二人来なくても気にせずに始めるのが普通だ。
そう思ったけど、この状況では普通という言葉自体がすでに無意味な気がしてきた。

結局みんなでしばらく残りの一人を待つことにした。
最初は警戒していた人たちも、あれ以来何も起こらないせいか、時間が経つに連れ普通に談笑するようになっていった。
とは言え、どうしても視界に入るボディーガードたちのことを、『本気で』気にしていない人は…さすがに少なかったけど。
(ここで「さすがにいなかったけど」とは言えないのが、このクラスらしいところだ)


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