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バトル・ロワイアル〜罪と罰〜【長編】
9
:
咎目千人
:2009/10/26(月) 22:03:31 ID:en4xDozY
「つーか卒業式にも来ないのかな、アイツ」
「……ああ、和藤か」
「他に誰がいんだよ」
透はそう言って直樹の頭を軽くはたいたが、その顔には微かな恐れの色が浮かんでいた。
無理もない……たった今、話題に挙がった和藤忠志(男子十番)は、大変な事件を起こして不登校になった、誰もが恐れる要注意人物なのだ。
長い前髪をいつも垂らし、ニヤニヤと笑いながら真正面の一点のみを見つめていた忠志の顔が脳裏に浮かぶ。両親は早くに他界し、親戚に育てられていたというが、その親戚は忠志が小学校を卒業する頃に謎の死を遂げている。忠志が殺したのだ、という説が、三つ葉中学校ではまことしやかに囁かれていたが、その噂の信憑性を増させるような事件が去年、起こった。
何が原因かは知らないが、忠志に因縁を付けた三年生が変死体で見つかったのだ。
教師たちも忠志を問い詰めたが、忠志はニヤニヤしながら「知りませんよ、そんなこと」と繰り返すばかりだったという。そしてそれから一週間も経たないうちに、忠志は学校に来なくなった。
今ではその事件のことが生徒の話題に上がる機会も減ったものの、和藤忠志という人間の異常性、危険性に関しては、一年生から三年生まで誰もが理解している。
そしてその忠志は、卒業式前日にさえ姿を現さなかった。
まあ、姿を現したら現したで問題だが、と直樹は考える。
それにしても、たった二十人しかいないクラスなのに、どうしてこうも変わり種揃いなんだろう。白鳥あすかや和藤忠志にしてもそうだが、何より異彩を放っているのは――――
「おい詰草、そこはアタシの席だ。それにさっきからずっと深雪が座りたがってるのが分かんねーのかよ」
……張りのある声が聞こえ、雑談に興じていた女子たちがシンと静まり返るのに気付いた直樹と透は、沈黙を作り出した張本人であるところのあすかに視線を向けていた。
いつの間にか、体育館に到着していたらしい。
『ホワイトバード』のリーダーであり、金髪にピアスという校則に真っ向から反発したルックスをした男勝りな少女、白鳥あすか。
そのあすかが絡んだ相手は、彼女と、それに津田深雪(女子五番)の席を独占して横になっていた詰草麗華だ。
……そう、三つ葉中学校三年一組随一の異端は、詰草麗華その人だ。
まず外見上の最大の特徴として、その真っ白な髪が挙げられる。
先天性の病気か何かで、髪の色素が抜け落ちているのだそうだ。
しかしそれが、彼女の異彩を帯びた美しさを引き立てているように思われる。
このクラスの女子で彼女より美しいと断言できるのは、それこそ今、彼女に席を奪われている津田深雪くらいのものだろう。
しかし詰草麗華が異端たる所以はむしろ髪ではなく性格にある。
なんというか、女の子に対して失礼な言い方ではあるが、人間とは思えないのだ。
忠志のように事件を起こしたわけでもなく、校則は一応守るし授業にも参加している(ほとんど寝ているが)――――なのに何故か、彼女には得体の知れない何かがある。
それは直樹だけではなく、クラスメイト全員の共通した認識だった。
その麗華を、あすかは睨み付ける。
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