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バトル・ロワイアル〜罪と罰〜【長編】
21
:
咎目千人
:2009/11/02(月) 21:12:09 ID:en4xDozY
「ははははははは! ひゃはははは、ははは、ははは、うひひ、ひひ、ひ、ひひ、はは、は――――」
『自殺大全』を放り出し、廊下にぺたんと尻餅をついて狂ったように笑う。
その目は天井に向けられていたが、もはや何も見ておらず。
その心もまた、何も感じてはいなかった。
……周平の脆い心には、プログラムという非日常の到来によって亀裂が走った。
そんな中、彼の壊れかけた頭が見つけ出した、彼にとっての唯一の希望こそが、ミミを殺すということだったのだ。
しかしそれすらも不可能だと分かった瞬間が、周平の精神的な終焉だった。
すべての希望を奪われ、深い絶望に落ちることを恐れた心が、自ら崩れる道を選んだのだ。
周平は笑う、笑い続ける。
……自分の傍らまで、コロコロとピンを抜かれた手榴弾が転がされたことにも気付かずに。
――――次の瞬間、生徒による逆襲を警戒した政府が爆薬量を減らしているとはいえ、それでも、人間一人この世から葬り去るには十分すぎるほどの威力を秘めた手榴弾が爆発し、周平を肉体的にも終焉へと誘った。
爆風と爆音は分校全体に響き渡り、木製の床や壁から火が上がる。
専守防衛軍の兵士たちが消火器などを持って慌てて廊下に出てくるのを、周平の二分前に教室を出発した白髪の少女――――詰草麗華(女子六番)は、ニヤニヤとした笑みを浮かべて見つめていた。
「貴様! 校舎内で手榴弾など――――」
「使ったらダメなんて、ミミさんは言ってませんでしたよ。それとも、だからって今ここで私を殺しますか?」
「っっ! ――――さっさと校舎から出て行け!」
一瞬、言葉に詰まり、苦し紛れにそう指示した兵士に舐めるような視線を向けてから、麗華はスタスタと出口に向かって歩き始めていた。
周平もろとも、彼が持っていたデイパックは木っ端微塵になってしまったものの、麗華はそのことを大して後悔はしていなかった。彼女には、手榴弾がまだあと一個残されていたし、それに――――
和藤忠志のデイパックに入っていた、アメリカ軍の正式採用銃という経歴を持つ名銃・ベレッタM92Fがあるからだ。
「ふふふふふ……」
麗華にとって、殺人というものに対する抵抗感や罪悪感など皆無だった。
三年間、共に学校生活を送り続けたクラスメイトを葬ることなど、彼女にとっては飛び回る蚊を叩き潰すのとさほど変わりはないことなのだ。
そういう意味ではまさに彼女こそ、殺しの神に愛された人間だと言える。
後悔もしないし躊躇もしない、精神的な弱点などまったくもって皆無。
ただひとつ、欠陥があるとするならば……人間らしい感情の一部を、まったく理解できないということくらいか。それは例えば愛だったり絆だったりするが、麗華にとってそんなものは、自分以外の人間の意味不明な妄想というような認識だった。
――――こうして、生徒同士の殺し合いによる初の死亡者は、手榴弾によってこの世から跡形もなく消し去られるという壮絶な死を迎えた目黒周平となった。
そして彼を殺した生徒、詰草麗華は、愉しげに鼻歌を奏でながら、校舎内から洩れる炎の明かりに照らされた真夜中のグラウンドを歩いて行く。
オレンジ色に照らされた白髪を夜風になびかせながら歩く麗華の後ろで、兵士たちが慌ただしく指示を出し合う声だけが響き続けていた。
【男子七番・目黒周平 死亡】
【残り17人】
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