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バトル・ロワイアル〜罪と罰〜【長編】

17咎目千人:2009/10/29(木) 18:32:30 ID:en4xDozY
「津田深雪さん、だよね? ダメだなあ、そんな反政府的言動は。ゲームに参加したくないっていうなら、その願い、叶えてあげてもいいけどぉ?」
 ミミもまた、机の上に置いていた拳銃を手に取り、深雪に向ける。
 ……合計三つの銃口が、深雪をポイントしている状態だった。
「み、深雪……ダメだ。ここは、大人しく、引き下がるんだ」
 あすかが緊張した口調でそう促したものの、深雪はハッキリと首を横に振って拒否する。
 その瞳は、自らに向けられた銃口すら意識してはいなかった。
 ただ、怒りと非難に満ちた眼差しを、ミミにまっすぐ向けていた。
「こんな狂った国、滅んでしまえばいいんだ!」
 深雪が吐き捨てるように叫んだのと、ぱああん、という銃声が三つ同時に響いたのとはほぼ同時だった。それほど距離が離れていない上、ミミと兵士たちは拳銃の扱いに手慣れている――――弾丸はすべて例外なく深雪の顔面を捉え、彼女のクラス、いや、学年で一番美しい顔はまるで割れたスイカのように血と肉をぶちまけ、砕け散った。そしてその体も、跳ねるように背中から倒れる。またしても悲鳴のハーモニーが響き渡るが、それを制するようにミミはまたも天井めがけて発砲していた。
「はいはいはいはい静かに! 静かに! これ以上殺したくはないけど、プログラムが潤滑に進むためなら私は五人でも十人でも殺しまーす! だからもう静かに!」
「深雪……! ――――畜生! このメイド野郎!」
 あすかが拳を握り締め、うっすらと涙すら浮かべて叫んでいるのを、直樹は少し意外に感じたが、今にして思い返してみれば、あすかは体が弱い深雪を常に気にかけていた。
 体育館での一件だけではない、あすかは深雪が困っているとき、いつも気さくに声をかけ、そして親身になって力を貸していたのだ。
 その深雪が目の前で撃ち殺されたのだから、あすかが憤慨するのも分かる。
 しかしこの状況においては、友の死を怒る気持ちすら命取りだ。
「あなたも死にたいの? 白鳥あすかさん」
 ミミと兵士二人は冷静に、まだ煙が立ち昇っている銃口をあすかに向ける。
 あすかはなおも何かを叫びかけたが、すんでのところで思い留まり、顔を伏せて舌を噛んでいた。その頬を涙が伝い落ちるのを、彼女のグループである『ホワイトバード』のメンバーであるところの伊谷恭四郎(男子二番)と八木沼透(男子八番)はいたたまれなさそうに見つめていた。
「そう、それでいいんだよー、白鳥あすかさん。案外大人で助かったわー。……これでデイパックは二つ空いたわね。詰草さんに両方あげるってことで、他のみんなはいい?」
「いや、そういうことなら片方は俺にくれ」
 ドスの効いた低い声で静かにそう言って挙手したのは、空手の有段者でもある千賀尚人(男子五番)だ。小さい頃から喧嘩一辺倒であり、背も高く体もがっしりしているので、年上からさえも恐れられていたという。
 その尚人もまた――――麗華と同じように、デイパックの追加を要求した。
 あすかはそんな尚人を咎めるように睨み付けたが、彼はそれに気付いてはいるだろうがまるで意に介さず、「いいだろう? 詰草だけ三つというのはさすがに不公平だからな」とミミに意見していた。
 それを聞いたミミは、尚人の提案をどう思ったか無表情のままなので窺い知れない麗華と、そんな麗華をチラリと見やる尚人とを見比べ、嬉しそうに舌なめずりをした。
「いいよ、ヤル気のある生徒が大好きなの、私。そういうことなら、和藤君と津田さんの分のデイパックは、千賀君と詰草さんに配ることにするね」
「ありがとうございます、ミミさん」
 そう答えたのは、麗華のほうだった。
 ……直樹は、まずいことになってきた、と心の中で密かに考える。
 麗華と尚人、共にポテンシャルが高く、武器を手にすればかなり厄介な生徒である。
 どうやら二人とも、自分が生き残るためにクラスメイトを積極的に殺し回る覚悟などとうに決めてしまっているようだし、こんな二人の様子を目の当たりにしてしまえば、他の生徒たちも『殺される前に殺すしかない』と考えてしまうだろう。
 畜生、なんてことだ、このままじゃ、このゲームは凄まじい勢いで加速する――――
「はいはいはい、それじゃあこの話はこれで終わり! 改めて女子一番、綾宮花音さん」
 ……ミミの言葉に、もう誰も何も言わなかった。
【女子五番・津田深雪 死亡】
【残り18人】


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