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バトル・ロワイアル〜罪と罰〜【長編】

12咎目千人:2009/10/28(水) 20:30:08 ID:en4xDozY
「はいはいはいはい、静かにしーましょーねー」
 ――――ざわめきを一瞬にして掻き消したのは、そう言いながら教室に入ってきた一人の女性だった。年齢は二十歳そこそこだろうか、可愛らしい丸顔の女性である。しかしその女性の服装は、あまりにも異質だった。キワモノと言ってもいい。
 ……その女性は、フリルがふんだんに付けられた、いわゆるメイド服を身に纏っていた。
 ニコニコと笑顔を浮かべているものの、彼女の登場はクラスメイトたちにさらなる不安と疑問を呼び起こさせることとなり、何人かの生徒が互いに顔を見合わせるのを直樹は見た。かくいう直樹も、透と顔を見合わせていたのだが。
「私の名前はー、ミミっていいまーす。兵庫県立三つ葉中学校三年一組の皆さん、こんにちはー。あ、こんばんはだったね、こんばんはー」
「これは一体どういうことなんですか」
 最前列にいた花音が、気だるそうに挙手してそう尋ねた。
 その言葉は、この場にいる全員の今の心境をこの上なく代弁している。
 いきなり眠らされて、連れ去られて、首輪まで付けられて。
 そのことについて説明を求めたいと、誰もが思っているはずだった。
 しかし、ミミとか名乗ったこの得体の知れない女にいきなり堂々と質問する辺り、さすがは綾宮花音だ。
「んー、あなたは綾宮花音さんね。うん、いい質問だね。そうだよね、色々分かんないことだらけで不安だろうね。てなわけで、ジャーン」
 ミミは、懐に手を突っ込んで何かを取り出していた。
 黒い筒のようなもの……それを真上に掲げ、ニヤリと笑う。
 ――――次の瞬間、ぱあああん、という鼓膜に響くような音が教室中に鳴り響いていた。
 女子だけではなく男子の何人かも叫び声を上げたが、直樹は後ろのほうの席ということもあってびくんと肩を震わせただけだった。
 しかし……あのミミとかいう女が右手に持っている、アレは!
「驚いた? うふふ、よく見てごらんなさい、ちゃんと天井に穴空いてるよ。要するにこれ、本物の拳銃。あなたたちにはこれから、今、私がしたみたいなことしてもらいます。つまり」
 ミミは、恐らく意図的にだろう、そこで一旦言葉を区切り、直樹たち全員の顔をぐるりと見回した。それから、まだうっすらと煙の立ち昇っている拳銃を机の上に置き、言い放つ。
「これからみんなに、ちょっと殺し合いをしてもらいます。戦闘実験プログラム、中学生だったらもう授業でも習ってるよねー?」
「プログラム!?」
 あのポーカーフェイスな花音が、裏返りそうなほど上擦った声で叫んでいた。
 しかしそれも納得だった……直樹だって、叫び出したい気分だった。
 俺たちが……あの、あのプログラムに選ばれただって!?
「そう。プログラム。我らが大東亜共和国が国防上の必要から、中学三年生のクラスを毎年五十クラス、ランダムに選んで実行する戦闘実験。あなたたちもニュースで見るでしょ? 優勝者決定のニュース。つまり、あなたたちは晴れて今年度最後の、戦闘実験プログラム対象クラスに選ばれたってわけ」
「そんな――――」
 絶望的な表情で呟く花音。これまた、珍しいことだった。
 しかし……やはりそれも、仕方のないことだった。
 ここ、大東亜共和国は全体主義の軍事国家でありながら、いわゆる徴兵制というものは設けていない。その代わりにこうして、毎年中学三年生のクラスが五十クラス、戦闘実験と銘打たれた生き残りゲームをさせられるのだ。
 それに、この三つ葉中学校三年一組が選ばれたっていうのか!?
 冗談じゃない!


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