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バトル・ロワイアル〜罪と罰〜【長編】

11咎目千人:2009/10/28(水) 20:29:28 ID:en4xDozY
「おい、直樹、起きろ。直樹」
 誰かに名前を呼ばれながら肩を揺さぶられる感覚に、月見里直樹(男子九番)は目を覚ましていた。
 寝起きだからか、頭が痛い。そして鼻から吸い込まれる木の匂い……それは、自分がまだ野球部に所属していた頃、毎日のように嗅いでいた匂いだった。朝練で疲労困憊し、寝てばかりいた授業中に、朦朧とする意識の中で嗅いでいた匂い。
 要するに、自分は机に顔を埋めて眠っていたらしい。
 そのことに気付き、ゆっくり顔を上げた直樹が見たのは、不安そうな顔でこちらを振り向いている八木沼透(男子八番)だった。どうやら自分を起こしてくれたのは透らしい、と理解すると共に、直樹は首の辺りに奇妙な違和感があることに気付いていた。
 そっと首に手を当ててみて、そのあまりに冷たい感触に思わずぎょっとする。
 ……直樹の首には、銀色に輝く一つの首輪が巻かれていた。
 さっきまではそうでもなかったが、こうしてそのことに気付くと共に、次第に息苦しさが強くなっていく感じがした。
「な……なんだよこれ。ていうか、お前にも」
「俺たちだけじゃねえ。みんなにもだ」
 どうやら直樹よりもだいぶ早くに目を覚ましていたらしい透が、緊張感に満ちた声でそう呟き、ぐるりと辺りを見回すようにする。そんな透の首にも、直樹に付けられているのとまったく同じ種類の首輪が巻かれていた。そして透に倣って辺りを見回した直樹は、ようやくおおよその状況を把握することとなった。
 ……ここは教室だ。しかし、慣れ親しんだ三年一組の教室ではない。
 もっと古く、もっと錆びれている……いかにも木造といった感じの教室である。
 壁に掛けられた時計の針は、ちょうど十二時を指していた。
 チラリと左に視線を向けると、そこには窓があったが、外の景色は見えなかった。
 カーテンが閉められていたわけではなく、真っ暗闇だったのだ。
 つまり、今は夜の十二時ということになる。あれから半日以上経ったのか……。
 ……そして確かに、そこにはクラスメイト全員がいて、首輪を付けられていない生徒はいなかった。
「どういうことなんだ? これは」
「分かんねー……ただ、予行練習する前に何かいきなり眠くなって、寝ちまって……で、ここで目覚めた」
「この首輪は?」
「だから分かんねえって。でもよ、何か嫌な感じだな。わけわかんねえしよ」
 ごもっともだった。
 現に、クラスメイトの多くは不安そうな様子で、周囲の者と会話を交わしている(ここでようやく、直樹は自分たちが出席番号順に座らされていることに気付いていた。廊下側の一列は女子一番から女子五番、その隣は男子一番から男子五番……といった感じにだ)。
 そんな中でも比較的落ち着いているように見えたのは、陸上部所属でどこか威圧感に満ちている綾宮花音(女子一番)や合気道をやっている広瀬ほたる(女子八番)、それに、詰草麗華(女子六番)くらいだった(いずれもみんな女子だが、女子のほうが男子より精神的に強い場合が多いというのはよく聞く話だ。それにこの三人は普段から感情を表に出さないタイプである)。
「誰がこんなことを? 俺たちを眠らせて……首輪付けて、運び込んだって考えるべきだよな、これ」
「ああ、そうだろうな。何の目的でかはサッパリ分かんねえけどよ」
 透がお手上げとばかりにそう言った、そのときだった。


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