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こちら葛飾署亀有公園前派出ロワイアル

20トンダゴメンッス:2010/05/09(日) 01:52:39 ID:???

 エピローグ


 どしゃ降りの雨の中、ふたりの間に言葉はなかった。
 約5メートルの距離を空けて、纏とマリアは、静かに互いを見つめていた。
 その眼には憎悪がこもっているわけでもない。
 何故なら、ふたりの間に相手を憎むという感情はなかったから。
 たまたま好きな人間が同じで、失った愛おしいものが同じで、それで、ただ取り戻したいモノが一緒なだけだったから。

 無論、ふたりとも黒幕の存在が気にならない訳ではない。
 だが、その黒幕の誘惑は、二人にとって、楽園の蜜を凌駕する程までに魅力的なものであったのだ。

 最初に動いたのは、纏だった。
 手に持った拳銃の銃口をマリアに向け、引き金を引こうとする。

 同時にマリアが動き、足元にあったガレキの破片を蹴り飛ばす。
 弾丸のように放たれたガレキの破片は纏の手に握られた拳銃を弾いた。
 そして、マリアは、一瞬にして5メートルもの距離を詰めると、纏の懐まで潜りこむ。
 更に、鋼のような硬さで握った拳を纏の胴に叩きこんだ。

 纏は息をする事も出来ずに、身体を”く”の字に曲げた。
 ストマックへの強烈な一撃により、胃液が逆流し、纏は無様に吐癪物を撒き散らした。
 そして、後方へ下がり、立つ事すら出来なくなってそのまま崩れ落ちた。

 いや、崩れ落ちそうになった瞬間に、マリアは纏の髪の毛をひったくるように掴み、その顔面に膝蹴りを見舞った。

 打撃音などという生易しいものではない。
 何かが潰れるような重苦しい音と共に、地面に纏の血が飛び散る。

 髪を掴んだ手を放されてしまい、支えを失った纏は、吹っ飛んで、倒れた。
 地面に飛び散った血も降り注ぐ雨で、消えていく。

 マリアが纏を本気で殺しにかかっている事は誰が見ても明らかである。

 マリアは、カツカツとハイヒールのかかとを鳴らし、纏の傍まで近づく。
 そして、マリアは纏の頭を掴もうと手を伸ばそうとした。
 その狙いは、纏の首の骨をへし折りとどめを刺すためだ。

 だが、マリアは地面に転がる纏と眼が合ってしまった。
 まだ意識があるのか――そう思ったマリアは、すぐさま纏の顔面に蹴りを放つ。

 纏は、奇跡的にも両手で蹴りをガードしていた。
 だが、彼女は両手を防御に使った為に受け身すら取る事すら出来ずにごろごろと、にこにこ寮の敷地の中を転がり、倒れる。

 ごほごほと咳き込む纏は、全身を駆けめぐる鈍い痛みを耐え辺りを見回した。
 纏は、まだ諦めていなかったのだ――それが何に対しての諦めか――生きるという事に対してか、両津をか。
 だが、纏には微かにだが、戦う意思が残っていた。
 彼女は、すがるように辺りを見回す。
 すると、視界の隅にそこそこの長さの鉄パイプを見つける。
 それは、日暮が辺りに放ったモノの一本であった。
 それが手を伸ばせば、手に届く距離にある事を知り、纏の心に再び闘志が沸いた。

 纏が最も得意とする武器は、薙刀である。
 全長一メートルと五十程度の長さの鉄パイプ――薙刀に比べれば程遠いリーチだが、銃よりは扱いやすい。
 そう思い、鉄パイプを手にとって、素早く立ち上がり、構えを取る。

 だが、纏が自慢の薙刀術を披露する事はなかった。
 ぱん、ぱん、と乾いた音が鳴り響き、纏はずるりとすっ転んだ。

 何が起きたのか――纏の両の脚が撃ち抜かれていたのだ。

 纏の目の前に立つのは、硝煙を吐く拳銃を構えるマリアだった。

 その武器がマリアの支給品だったのか、それとも、どこかで手に入れたのか、纏の手から弾かれたものなのか、分からない。

 だが、マリアの眼は余りにも冷徹で、纏はその瞳を見ているだけで、身体中に震えが走った。


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