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こちら葛飾署亀有公園前派出ロワイアル
16
:
トンダゴメンッス
:2010/05/08(土) 21:58:01 ID:???
ボルボは、顔にかぶり、口の中で唾液を含んでネチャネチャと不快な存在となった小麦粉を洗い流す為に水場へと向かった。
行き着いた先は、台所。
水道の蛇口をひねり、口に含もうとしたところで、彼の手が止まる。
何故手を止めたのか。
それは彼の中の苦々しい記憶だった。
傭兵時代に、戦場で敵のゲリラに井戸に毒を撒かれて、味方が大きな打撃を被ったのだ。
無論、常識的に考えれば、在り得ない思考だった。
在り得ない程までに慎重であり、実は臆病な性格である彼特有の思考である。
ボルボは、舌打ちしながら、蛇口を締めて冷蔵庫の中を探る。
そして、何の躊躇もなくひとつのペットボトルを選んだ。
そして、封の閉じられたキャップを開けて口に含み、口内の不快な存在を洗い流そうとした瞬間――。
ボルボは、吐血して倒れた。
「な、なぜ―――」
そして、ボルボは苦しげな表情のまま息を引き取った。
「うひひひひひひひひ………やった!
やったぞ! 僕の勝ちだぁぁあぁ!!!」
家屋の裏手へと続くドアから、狂喜の笑いと共に顔を出したのは、寺井だった。
彼は、絶叫をあげながら、ボルボの死体を蹴飛ばすと、麗子の支給品だった毒の入った小瓶を取り出して、にやりと笑った。
ボルボは、慎重な性格。
その戦闘能力は全てにおいて、寺井のポテンシャルを上回っていた。
そんな中、寺井にとって、ボルボに対して唯一、優位に立てるものがあった。
それは、情報だった。
寺井は、自分の敵がボルボである事を知っていたし、彼の性格や内面の事も両津を通じてよく知っていた。
対するボルボの持っていた情報は、この家屋に狙撃手が隠れているという事だけ。
狙撃手の正体も分からないし、窓際の背広を例えフェイクだと思っても、慎重な性格の彼は、それを警戒せざるを得ない。
そして、小麦粉の目潰し。
全ては、フェイクだった……本命である毒の入った水を飲ませる為の。
慎重なボルボは、必ず封を切っていないペットボトルを選ぶと思っていた。
だから、わざとひとつのペットボトルを残し、他のボトルの封を切り、封を切ってないペットボトルの底に小さなあなを開ける。
あとは、そこから麗子から奪った毒を入れてテープで塞ぎ、あとは毒を飲んでボルボが死ぬのを待つだけ。
大原部長が口に含んだと同時にその命を奪った毒だ、口に含めさえば良かった。
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