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こちら葛飾署亀有公園前派出ロワイアル
15
:
トンダゴメンッス
:2010/05/08(土) 21:56:35 ID:???
第九話「窮鼠猫を噛んで絶対なる弱肉強食の摂理に飲まれる」
ボルボは、遠くで何かが崩れる音を聞いて多少動揺する。
だが、狙撃手との戦いの最中に、余所へ注意を向ける事は、それは死を意味すると考え、目の前の敵に集中した。
彼は、慎重に身を隠しつつ進軍し、狙撃手が籠城する商店の直ぐそばまで接近していた。
狙撃手の影は、窓際にある。
壁を背にこちらからの攻撃には死角となるように姿を隠している。
時折、敵の行った狙撃をボルボはことごとく回避していた。
だが、ボルボの接近と共にその狙撃は起こらなくなっている。
敵は、依然窓際に姿を隠したままだ。
ボルボは、それを敵の罠だと認知した。
狙撃種は、家屋の中にボルボを誘っている。
狭い屋内戦に持ち込まれては、銃という兵器の有用性は半減する。
という事は、狙撃手は格闘戦に大きな自信を持った相手だと彼は判断した。
「俺は、自分の顔とこのランサーアサルトライフルの存在を見せてここまで来た……」
ボルボは、素早い動作でライフルの銃口を窓際の影に目掛けて撃った。
銃弾の雨は、木造建築の壁を容易く貫通し、敵に命中した。
両津は、格闘戦も強いが、銃火器にも詳しい。
故に、この分厚いコンクリートをも容易く撃ち抜くライフルを見れば、そんな手は取らないだろう。
という事は狙撃手の正体は絞られる。
キックボクシング元チャンプのマリア。
もしくは、柔道師範の左近寺であったのだろう。
「奴等が相手ならば、幾ら俺でも格闘戦に持ち込まれれば、危ないところだっただろうな…………ん?」
勝利の気分に浸りかけたボルボに疑問が浮かんだ。
壁ごと撃ち抜いた筈の人影が微動だにしないのだ。
まさか、と思いボルボは警戒しつつ狙撃手の根城へと踏み込んだ。
入り口の戸を蹴破り、銃を構えながら階段を駆け上がり、狙撃手のいるだろう部屋の壁を蹴破る。
次の瞬間、彼の視界が真っ白に染まった。
ボルボは、何が起きてるのか分からず、パニックに陥ったように銃を乱射する。
息を吸い込み、喘息のようにむせて咳き込む彼には、その白いモノの正体を理解した。
それは、小麦粉であった。
どこにでもある市販の小麦粉。
ドアを開けると小麦粉がばら撒かれる単純な目潰しトラップであった。
そして、窓際の影の正体は、ハンガーに掛けられた背広。
自分は、こんな間抜けで幼稚な罠にかかったのだ。
ボルボは、苛立ちを隠せずに部屋の中の家具を蹴り飛ばす。
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