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書き込み代行スレ

453犬と彼の十の約束 ◆2nkMiLkTeA:2012/06/01(金) 15:05:58
◆◇◆◇◆

 扉を開ける瞬間、身構える。予想通りの衝撃を、今日もなんとか抱き止めて、ぶつかってきたものの頭を撫でた。
(本当は、ここで撫でるのはよくないんだけどね)
 撫でるということは、褒めることになる。この、『お出迎え』を容認したことに。
 それでもいつも撫でてしまう。だって、可愛いんだもの。
「ただいま、アイ」
 声かけられたアイは、まっすぐこっちに顔を向けて、嬉しそうに舌を出して息を荒くしている。前足は彼の胸に添えられて後ろ足で立っている。アイは断尾しているので尻尾はないが、あれば物凄い勢いで振っていることだろう。
 アイはその体勢から、さらにつま先立ちになり、彼の顔に口を届かせると、思いきり唇と唇を合わせてきた。最初は何度も唇を押し付けるだけだったが、ついには舌を彼の口内に侵入させた。
 彼もそれに素直に応え、アイとのキスを楽しんだ。それを終えるまで数分かかった。
「……ふぅ、落ち着いた?」
 彼の言葉を聞いているのかいないのか、今はもう、彼に寄りかからずに“一人で立った”アイは、まだまっすぐ彼のことを見ていた。
「まったく、アイのせいで帰ったらいつも顔を洗わなきゃいけないじゃないか」
 毎日、よく飽きもせず、自分の顔を涎まみれにできるものだ。
 まあでも、ここまで純粋な親愛の表現をされて、悪い気はしない。彼が犬を好きなのは、人間と違って、犬は嘘をつかないからだ。
 彼が洗面所に向かうと、アイはとことこついてくる。甘えんぼのアイは、家の中で彼から離れることはない撿撿トイレにもついてきて待たれるのは、正直止めてほしいけど。
 洗面所で顔と手を洗い、ついでに少し湿らせたタオルでアイの顔も拭いてやる。アイも既になれたもので、嫌がるそぶりもなかった。
 その後、彼は晩飯の準備を始めた。アイもキッチンの中で待機している。
 犬を料理場にいれるなんて、と思う人もいるかもしれないが、アイはほとんど毛がない種類だし撿撿その為、服を着せるようにしている。昔は犬に服なんてとも思っていたが、実際に愛犬に着せてみると、確かに可愛いし、最近はお洒落をさせる楽しみに目覚めてしまった撿撿、その少し生えている毛もそれほど抜けないので、彼は気にしなかった。
 それになんとアイは撿撿彼女には犬は自分でご飯の準備をできないと言ったが撿撿、賢いので料理の手伝いもできるので、むしろキッチンにいてくれたほうがいい。
「お皿取って。カレーのお皿ね」
 言われてアイは、間違えることなく、いつもカレーを盛り付けるお皿を二つとった。このくらいアイにはできて普通なのだ。

 その後もアイに手伝ってもらって、夕御飯はすぐにできた。持つべきものは賢い愛犬だ。
 彼は正直、これなら恋人もいらないのではないかと思った。
 アイは賢いので、人間とほぼ変わらないくらい家事ができるし、人間と違って素直で、彼を裏切ることなんてありえないのだから。
「じゃあ、食べようか」
 彼がそういうと、アイも彼と同じ食卓に腰かけた。
「いただきます」
「いただきます」
 アイは滅多に鳴かないけれど、たまに聞くその声はとてもかわいい。彼はカレーを食べ始めたアイを見ながらそう思った。


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