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書き込み代行スレ

388毒怪竜と私:2011/02/26(土) 02:49:12
一見すると生物の住めないような場所にもモンスターが生息するように、それを狩る狩人も様々な狩場で見かけることができる。
昼夜で違う顔を見せその両方で訪問者を悩ませる砂原、豊富な鉱物資源と圧倒的な熱さで来るものを出迎える火山、そして雪と氷に閉ざされた凍土など常人なら踏み入れるのを躊躇うような場所へも平然と立ち入るのが狩人だ。
時間さえ凍ると例えられる凍土。その中でも上位と呼ばれるその地の寒さと静けさ、それを打ち割るような採掘音が響いている。ピッケルを握り締める手は細くて繊細だが力強く、それが女性の狩人のものであることが分かる。
白い息を吐きながらも一心不乱に採掘を続ける姿は獲物を追い求める狩人のイメージからはかけ離れているが、これも立派な狩人の仕事のうちである。
というのも、普段人が足を踏み入れないような場所には鉱物や昆虫など様々な資源が眠っていることが多い。
それらが狩りに必要な武器や防具の素材として、あるいは研究のための資料や実験の材料として珍重されることからこれらを追い求める狩人も少なくないのだ。
今ピッケルを振るっている彼女――歳は20に届くか届かないかといったところだろうか。周囲から『案内人』という二つ名で呼ばれるハンターも、そうした素材目当ての狩人の一人だ。
身軽さを重視した片手剣と、このこの寒さの中だというのに露出の少なくないレザーS装備一式、更には採集した骨や鉱物で膨れ上がったポーチにと、その姿はまさに欲張りを体現するかのようだ。
周囲は凍てつくような寒さだがあらかじめホットドリンクを飲んだ身体に重労働は熱いらしく、短く切りそろえた金髪を逆撫でるように拭えば汗が水滴となって周囲に散った。

「お、これが噂のグラシスメタルかな。やっぱり凍土に来て正解だったなぁ!」

ようやくお目当ての品を掘り当てたのかピッケルを振るう手にも力が入っている。嬉々として採掘を続けるそんな彼女を静かに見下ろす影があった。
這いずるような独特の足音は硬質な金属音にかき消され、人さえ丸呑みに出来るその巨体は洞窟の暗い影に覆われ、獲物を狙う気配は興奮にかき消される。
冷たい洞窟の中で一際大きな熱をと共に動き続ける物質――目標された彼女の真上に来たところで、それが伸ばした長く滑らかな首が鞭のように大きく振るわれた。

「え、え? え!?」

重厚な装備を身に纏った狩人でさえ大型のモンスターの一撃に吹き飛ばされることは多い、ましてや採集用の軽装でしかも完全に奇襲された形となった『案内人』の身体はあっさりと宙を舞った。
だが驚きの声を上げたところで獲物を狙う「それ」の攻勢が止む筈も無く、次なる一手……いや、一口が彼女に覆いかぶさった。

(痛っ……まさかこれ、ギギネブラ!? 採集ツアーなのになんで!?)

凍った地面に叩きつけられたショックと予期せぬ敵の襲撃に混乱しながらも、とっさに身体を動かして拘束から逃れようとする。
ギギネブラ特有の口の中にびっしりと生えた歯によって幾つもの切り傷が出来たものの、何とか毒を吐かれる前に素早く逃れることが出来た。
ドスンと大きな音を立てて着地したそれを眼前に『案内人』は腰の片手剣を抜きながら状況を再確認する。

(まいったなぁ……解毒薬なんて持って来てないし回復薬も最低限、あと使えるものは……)

体内に猛毒を持ちそれを多用することで多くの狩人から恐れられるギギネブラ。対抗策が無いわけではないが、今の手持ちで相手に出来る自信は無い。
幸い今回は討伐の依頼で来たわけではないのだし逃げるのが得策、と腰元のポーチに忍ばせたこやし玉とモドリ玉を探って……ポーチの感触が異常なことに血の気が引いた。
採集した素材を入れるものとは別に必要最低限の道具が入っているはずのそれは、先ほどまでそれなりに膨らんでいたはずだ。その膨らみが無くて、地面に何も落ちていないとなれば……


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