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新人賞スレッド@避難所

356:2005/11/16(水) 03:48:16
 神貴は、鬱病なのだ。
 中学校の頃、元々成績が良くはなかった兄は、その日何故か0点という通常ではありえないような点数を取ったのだ。そしてその同じテストで私は100点を取っていた。双子の私達の間に開いた100という数字は父を怒らせるのには十分だ。父は兄を殴りつけた。普段から兄に怒鳴る事が多かった父、しかし手を挙げたのは始めてだった。
 それだけでも肉体的にも精神的にもショックが大きかったはずだけど、小学校から続いていたイジメが中学に入ってエスカレートしていたのもそれに拍車をかけた。ある日の通学時、何の前触れもなく兄はかんしゃくを起こし、手から血が出る程暴れ回り、そして酸欠で意識がなくなる程わめきちらしたのだ。そして落ち着くと今度は一転して今にも手首か首筋にナイフを当てるのではないかと不安になるほど落ち込んだ。
 それから不登校になり、人と会うのを避けるように家に引き籠もった。そして五年前から兄と父は口をきかず、それどころか互いに我が家には息子はいない、父はいない、と互いの存在を一つ屋根の下で否定しあった。
 全て、私のせいだ。兄が鬱病になってしまったのも、家の中がゴチャゴチャになってしまったのも、全てあの時真面目だった私が悪いのだ。もしあの時、私も兄と一緒に0点を取っていればこんな事にはならなかったろうに。悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。
「何だよ真理亜、元気だせよ。もう少しでおいしいものいっぱい喰わせてやれるようになるからさ」
 私の不安気な顔を察して薬を飲んだ後の兄はいつもそんな事を言う。
 兄は本気なのだ。本気で私を心配して、そして私を楽させてやろうと思っている。だからこそ、辛い。だからこそ、かわいそうで仕方ない。そしてそんな風にしてしまった私自身が憎らしい。
 兄の作品が少しでも理解できればと短大に通う通学中や講義の合間にライトノベルという物を何冊か読んだ。最近人気だというアニメも見たり、そういうのに詳しい友達から話を聞いたりした。……それでも、私には兄の作品が理解できなかった。わけのわからない単語が大量に並び、高校物理の知識しかない私でもわかる誤った理論、意味のない会話、そして突拍子もない展開、魅力のないおかしなキャラクタ。最初の時はこういうのがライトノベルなのだと思っていたけれど、今の私にははっきりと言える。こんな小説が一次予選なんて通るはずもない。
 ……でも、それでも兄は信じているのだ。自分の作品は名作だと、最低でも二次予選は突破できると。
 応募した作品はこれとは別の物だ。しかし、今作っている、つまり以前よりうまくなっているはずの作品でこれなのだ。結果は火を見るよりあきらかだった。




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