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他人が書いた小説の一部を批評するスレ
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書いてみたはいいけど、この表現どうなの?会話シーンに自信ないんだけど、ちょっと見てもらいたい・・・。
そんな悩みを抱えるあなたは、このスレに、書いた作品の一部を載せてみましょう。
ついでに、執筆上の悩みもガンガンぶちまけましょう。
投稿する際には、あまりに長いのは避けてください。また、このスレはオリジナル限定とします。
その他は、ライトノベルであれば、ジャンルその他は問いません。
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仰るとおり「オレ女」です、ハイ。第一章のクライマックスで、米国O∴S∴S(オーダー・オブ・ソーサリー・ソルジャー)所属の魔女との対決で、性別の誤解を呪文の失敗に繋げようと考えてこうなりました。
それまでは出来るだけ仄めかすだけに止めたくて、どうしても知り合い同士の会話は控え目に成ります。冒頭を少し追加しましたがどうでしょう?
昭和20年3月9日午後6時。ベトナムの寝苦しい昼が明け、俺は棺桶寝台で目を覚ました。何か悪夢を見ていた気がする。これは何かの啓示だろうか? しかし思い出す傍から夢は揮発し、意味を掴みきれぬまま、言い知れぬ不安だけが残る。
いや、出撃前に後ろ向きな事を考えるのは止そう。初めて実戦で作戦指揮を任され、緊張しているだけだ。神経質な自分が少し情けない。
気分を改める為、俺は出立前に体を清める事にした。手拭いに塩と水を含ませ、祝詞を唱えながら略式の禊ぎを済ませる。水は生ぬるかったが、心身は清涼な氣で包まれた。
俺は着替えを取り出し身支度を始めた。鏡に写った俺の顔は、日本人離れして目鼻立ちが整い、その肌は抜けるように白い。と言うより本当に背後の調度品が透けて見え、俺が半ば幽界の者である事を示していた。
我ながら体型もなかなかだ。陸軍らしからぬ長髪は耳に被り、あたかも宝塚の男装の麗人……って俺は出撃前に何をやっているんだ? 馬鹿馬鹿しい、さっさと服を着てしまおう。鏡に写る半透明な顔は赤面し、血色の良い幽霊なんて矛盾した表現を思いついた。
胸元からサラシをきっちりと巻くと、不思議と気持ちも引き締まるものだ。手早く軍服を着て長靴を履きゲートルを巻く。腰には伝統的な97式三鈷柄軍刀、そして私物だが万州経由で入手したモーゼル一号拳銃を装着した。
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昭和20年〜というのは要らないと思う。泥臭くしてる。
レシプロ機で戦争中ってだけで、第二次大戦くらいというのは普通の人でもわかるし。
ベトナムって書いてる割に、ベトナムの気候が感じられません。
感覚の描写が少ないせいか、平坦に感じます。
書いて削ってを繰り返した方がいいと思います。
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>>819
ちょっと「――」を使いすぎかな。
それを含め、某氏の影響がもろに出すぎかなあ、と。(違ってたらごめんなさい)
多分ライトノベル系を目指してるのだと思いますが、
それだともっとシンプルな文体のほうが受け入れてもらいやすいかと思いますよ。
むろん、よほど文章力に自信があるというのなら話は別ですが。
>>820-821
僕は軍ヲタではないのでちょっと好みに合わなかったかも知れません。
それを差し引いても、冒頭としてはやや説明臭すぎるかな、と。
ライオノベルってライトノベルのことですよね?
だとしたら中高生が主な読者となるわけですし、
冒頭での引き込みというのは一般作品よりもさらに大事になってくると思います。
ところで、>>808の文章を大幅に修正してみたのですが、また晒してもいいでしょうか?
あまり僕ばかり晒すのもどうかと思ったりもするのですが……
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>>827
GO。成果を見てみたい。
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ではお言葉に甘えて……
といっても、絶対に前より良くなっているという確信があるわけではないので、
もし期待はずれであってもあしからず。
ああ、やっぱりこうなってしまうのか。
ぼんやりとした意識の中で、春樹真人は小さく自嘲した。
春が近いとはいえ、まだまだ夜は底冷えする。地面は氷のように冷たく、吹き付ける風は容赦なく体温を奪ってゆく。
まるで世界の全部から見捨てられたようだと真人は思った。ここで今まさに息絶えようとしている人間が居るというのに、誰もそのことを知らないし、助けようともしてくれない。今まで俺が生きてきた世界って、こんなにも冷たいところだったのか。
出血はかなり酷い。斬られたのは腹の部分だけなのに、うつぶせに倒れた地面には血糊が大きく広がっていて、地面にくっついた頬の部分までぬらりとした感触に覆われている。今日び、こんな戦国時代みたいな殺され方をするなんてある意味貴重な体験じゃないだろうか。そんな馬鹿げた思考が頭をよぎって、真人は思わず苦笑した。こんな時だっていうのに、まったく俺という奴は。
うつぶせに倒れた姿勢のまま、真人は視線だけを動かした。人気のない、川辺の公園。聞こえる音といえば川の流れる音ぐらいだ。街灯もろくにないから、あたりは一面の闇に覆われている。やはり自分は世界から断絶されてしまったのだ。そんなことを思いながら、真人はぐるりと闇を見渡した。左側からゆっくりと右へ行って、ちょうど真人の右肩あたりまで来た時、真人の視界に何かが映りこんだ。暗闇に溶け込むように真っ黒なズボン、真っ黒な靴。
――あいつの足だ!
その瞬間、まるで雷に撃たれたかのように真人は正気に戻った。自分は何のためにここへ来たのか、何故こんな目にあっているのか。そうだ、その目的はまだ果たされてはいないのだ。
足は、ゆっくりとある方向へと歩いてゆく。彼女のほうへ向かっているのだ。
真人は手を伸ばして、足を掴もうとした。痛みと寒さで全身が震えて、うまく力が入らない。それでも無理やりに動かそうとするものだから、余計なところにまで力が入ってしまって、腹の傷がひどく疼いた。
血が足りなくなってきたのだろう、いよいよ意識が薄れてきた。正気に戻るのが遅すぎたのかもしれない。ぼんやりと霞んだ視界の中、それでも足だけを見据えて必死に手を伸ばした。今まで俺はなんのために生きてきて、なんのために死ぬのか。その意味を奪わせはしない。
クモの糸。ふと、そんなことを思った。あれは、この地獄から俺を助けるために垂らされたクモの糸。だけど果たして俺は、助けるに値するような善行を今までやってきただろうか――
そうして、指先に何かが触れたような気がした次の瞬間、全てが闇に閉ざされた。最後の瞬間に触れたのは本当にクモの糸だったのか、それとも何か他のものだったのか。そのことを真人が知るのは、もう少し後のことになる。
こんな感じです。前と比べてどこがどう良いか、あるいは悪いか。
そして、全体を見て前とどちらがよいかのご意見を頂ければ嬉しいです。
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全体的に良くなってるよ。
覆われているの後に「にも関わらず痛みは無い。いかれちまってる」なんて一文をいれて、感覚の無さをアピールすべきかと。そんな状態なのに淡々としすぎ、って思った直後に正気を取り戻して、あ、そういう事って思う感じだった。
あと、最後に三人称に切り替わるのは、混乱した。三人称をいれないか、工夫すべきかと。
キャラクターの感じも出てるし、引きもある。冒頭としてはいい感じだと思います。
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>>827
批評、待ってました。ありがとうございます×2!!
確かに、こうしてみると「――」多すぎますね。
意識して、少なくしていってみようと思います。
ちなみに、ご指摘の通り、某氏の影響をかなり受けてます…orz
というか、今回小説というより、シナリオと意識して書いてみたもので。
シンプルな文体とは、どんなものでしょうか?
僕の文章で言うと、どのあたりをどのように変えてみたら良いと思いますか?
指摘して頂けたら光栄っす。
あと>>829の文章、すげえサクサクと読めました。
テンポがよくて、長い文章でも飽きなさそうですね。
俺は勉強が足りん!きぁーーーっ!
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>>830
最後の一文はやっぱり変ですか。
最初は「よく分からなかった」とだけ書いてたんですが、
なんか納まりが悪い気がして上記のものに変えたんです。
やっぱり素直に最初のほうでよかったのかな。
>>831
シンプルな文章……というのを言い表すのは難しいですね。
他の作家の作品を読んでみてはどうです?
シンプルな文体というのでは宮部みゆき、
難しい文章を使いこなすというのでは村上龍なんかがお勧めです。
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>>832
閉ざされた。で、終わりじゃなダメなのか?
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>>833
それこそ納まり悪くないすか?
僕の考えすぎなんでしょうか……
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ん〜、確かに収まりは悪いけど、三人称にいきなりなって混乱するよりまし。
過ぎたるは〜って言うけど、過ぎてるほうが大概悪い。
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まあこれは元々一人称寄りの三人称
(いや、三人称寄りの一人称と言ったほうが近いかな?)ですからね。
唐突ではないかな、と自分では思っていたのですが、人の目に晒してみるとダメだった、と。
問題の箇所はプロローグ部分の締めになるわけですから、
書き出しの部分と同じくらい気をつかうべきでしょう。
まし、では片付けたくないなあ……
なんかいい方法がないか、考えてみます。
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>>832
宮部みゆきはよく読みますねー。
あんな感じですか、ふむふむ。
今度、村上龍も読んでみようと思います。
もっと、飽きさせない文章を書けるように、努力することにします。
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・私なぞが批評するのも気が引けますが「あいつの足」を描写する目的であれば、
>そんなことを思いながら、真人はぐるりと闇を見渡した。
ではなく、砂利音とか物音で誘導してやっては如何でしょうか?
・私も>820-821、及び>825を全面改稿しましたので晒してみます。ポイントとしては、
オープニングのインパクトを増す事と『ベトナム』の描写、読者が主人公に興味を
持つよう気を配るといった点です。
>826の
>昭和20年〜というのは要らないと思う。泥臭くしてる。
については、戦記物らしく成るよう故意に西暦から変更しておりまして、効果的なので
そのままにしております。
昭和20年3月9日午後5時。ようやく熱い陽の陽の氣が退くのを感じて、俺は箱形寝台から起き出した。人の気配に気が付くと、配膳係が薄気味悪そうな顔で俺を見ている。何故箱に入って寝てるのかと訝しそうだ。
「居らしたんですか?」
しまった、寝起きを見られた。
見られていると意識して、寝ぼけ頭がいきなりはっきりする。俺は慌てて手洗いに行き顔を洗った。水は生ぬるかったが、指先は氣を流されて感覚が薄れていく。俺は手拭いで顔を拭きながら、照れ隠しに小言をこぼした。
「済まないが入る前に一言いってくれないか」
配膳係は恐縮して答えた。
「申し訳有りません。ノックはしたのですが、ご返事が無く不在かと思いまして」
そうか、熟睡していて気付かなかった。初の部隊指揮を控え、緊張でなかなか寝付けなかったせいだ。俺は鏡を見て寝乱れた髪を整えた。
鏡に写った俺は日本人離れして目鼻立ちが整い、肌は抜けるように白い。と言うより本当に透き通り、俺が幽界の者である事を示していた。寝間着の裏地が透けて見えている。
寝間着? 着替えを持って入るべきだった。まぁ仕方がない。少なくともそれ程乱れていないし、彼は気付いていなかったようだ。俺は牙磨きを済ませて手洗いを出た。
「失礼ですが、何故あんな棺桶みたいな箱に?」
朝食を並び終えて、配膳係が尋ねてきた。
「底が土間に成ってるんだよ」
「土間ですか、つまり土が敷いてある?」
俺はそれ以上答えずに窓に向った。鎧格子を上げると、水牛に牽かれた荷馬車や、天秤棒を担いだ物売り達の帰宅姿が見える。水田の上を鳥達も森に帰って行く。
ベトナムの夕暮れ時。3月は乾期にあたり、気温は日本の秋並に涼く過ごしやすい。だが遮るものの無い日差しは鋭く俺には辛い。俺は鎧格子を下ろして夕日を遮り、食卓に向かった。
朝食の献立はご飯とみそ汁、米粉の春巻きとサラダ。それに鉄籠に入った数匹の活ネズミ。
またネズミだ。インドシナでは食用ネズミの飼育が盛んで、これもさっきの行商の誰かから買い取ったものだろう。
貧しい農村では大事な蛋白源らしいが、日本人の俺にはどうしても馴染め無い。生きた人間からとは言わないが……それはそれで今だ抵抗が有る……たまには鶏か兎くらい口にしたいものだ。本国や餓島の事を思えば文句も言えないか。
食欲が進まぬまま俺は食卓に着いた。配膳係が興味深そうな視線を向けている。
「食べる間外してくれないか」
「食べ終えたら片付けるよう言い付かっていますが」
指示に忠実そうだが本心は見え透いている。俺がネズミをどうしてるのか知りたいのだろう。
「食べ終えたら声を掛けるよ」
俺は重ねて出て行くようほどこした。
「分かりました」
そう残念そうな顔をするな。見れば興味を持った事を後悔するのだから。
俺は籠の蓋を開けるとネズミに手を伸ばした。畜生でも命の危険が分かるのか、狂乱して逃げまどう。1匹捕まえると、そいつはキィキィと哀れげに鳴いて藻掻き、掌に噛み付いてくる。
俺はその程度では傷付かないし痛みも感じない。そういう体なのだ。ネズミの足掻きに怒りよりむしろ感動を覚える。生き延びようと懸命に努力するその姿が、今の日本の境遇に重なるからだろうか。
俺はトリを絞めるようにそいつの首を捻り、一息に止めを刺してやった。
俺は服を汚さぬよう気を付けながら4匹ばかり”平らげ”た。死体を籠に戻し、サラダを烏龍茶で胃に流し込む。ご飯とみそ汁、春巻きには手を出さず、俺は簡素な食事を終えた。
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>>838
ん〜、ストーリーの流れが見えないです。
推敲して再投稿されるのが良いのではないでしょうか?
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そりゃ冒頭の、そのまた始まりだけでは判らないでしょう。小説で言えば1Pと半分だけですから。
この後>>820の出撃に繋がります。
出撃前に血と死の穢れを清めなくてはならない。俺は服を脱ぐと手拭いに塩と水を含ませ、祝詞を唱えて略式の禊ぎを済ませた。
俺は着替えを取り出し身支度を始めた。胸元からサラシをきっちりと巻き、軍服を着てベルトを絞める。左腰には伝統的な97式三鈷柄軍刀、右には私物のモーゼル一号拳銃を装着し、長靴を履きゲートルを巻く。
身支度を終えた俺は、背嚢を持って部屋を出た。出掛けに厨房に寄って、あの配膳係に後片づけを頼んで外へ出た。
発動機がプロペラを回す音が聞こえ、土と牛糞の臭いに混じって、排気と焼けたオイルの臭いが漂ってくる。滑走路から電源車が戻り、格納庫に戻っていくのが見えた。
滑走路には異形の機体が駐機し、暖気運転を始めている。
キ58襲撃機『降龍』
元は100式重爆『呑龍』の派生型で、3機だけ試作された、編隊翼端防衛用の多座重戦闘機だった物だ。今回の作戦に合わせ、両側面と後下方銃座は『ア号兵器』に換装され、対空砲火に備えて下面に装甲を加えている。
左舷下方からは、銅管を束ねた剣山のようなア号照射管が、その禍々しい姿を見せていた。
米国でもB-25やB26爆撃機を改装し、地上攻撃に特化した機体を運用している。だがこの機ほど洗練された、独創的な武装を載せてはいまい。
降龍は言わば空飛ぶ加持祈祷の祭壇であり、呪術・魔法の増幅と機動力とを合わせ持つのだ。
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いや、そういうストーリーじゃなくて、
情景は浮かぶんだけど、映像の一貫性みたいなものがないってことを言いたいのよ。
たとえば、最初のところだけど、メイドさんが入ってきて超絶スルーをかます主人公とかさ。
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了解。主人公が会話を拒否しているのを明確にします。
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ここの指導を受けて、自作の方向性に疑問が出ました。ちょっと説明が過ぎるかなと。
>>840の続きを載せますので、ご意見お願いします。
設定としては魔法が科学と平行進化し『黄金の夜明け団』や『ユング』のにより、
体系だった学問として確立した世界でのWWⅡです。まだ構想中ですが、歴史も多少の
変化を見せています。
なお、主人公の許嫁である土門さんは、処理が難しいので基地に残す事にしました。
画期的な兵器ではあったが、戦局の悪化で改装とフエへの搬入は遅れに遅れた。
俺の任務はホー・チン・ミ率いるベトナム独立同盟、略称ベトミン(越盟)の呪的懐柔であったが、これも本来なら明号作戦の前に着手したかった。
俺は短い脚立を昇って機内に搭乗した。俺の鋭敏な耳には、発動機の喧騒に混じって、操縦席の話し声が聞こえてくる。あの2人は、出発前に紹介を受けた操縦手兼編隊長の天宮と、無線・航法手の大久保だ。
「随分と華奢な士官さんだな、あれで隊長だとよ」
「術法部の妖怪だって聞いてますよ。何でも毎日生き餌を食べてるそうで」
妖怪か。確かにその通りだ。この作戦も、夜間で無くては全力を出せない俺と犬飼に合わせ、
夜間に設定されている。その犬飼が念話を送って寄越した。
「「出撃準……終えま……熊……少し遅れ……。ウェン・カムイ(悪霊)……フッ……」」
念話は言語に相当するものが無く、訓練を受けた者同士でも不鮮明に成りがちだ。敵の妨害を受けている現状では尚更。最後のは薬草を使ったアイヌのお祓い、フッサラの事だろう。
北海州出身の熊楠は優れた祈祷師で、樺太アイヌの先祖からキムン・カムイ(山の神=熊)への獣化能力と優れた霊感を受け継いでいる。その霊感聴力が何か聞き付けたのだろうか? 。
「「君の犬神は何か知らせたか?」」
胸騒ぎを覚えて俺は犬飼に問い返した。我々帝国術法員は、着任時から敵に目を付けられており、呪的妨害で霊感が鈍らされている。危険と言うなら既にして危険な状態ではある。
「「犬神……無……りません」」
犬飼の使役する犬神も、何も嗅ぎ付けられないようだな。
もちろん我々は、越盟の潜伏地に式神を送り、調査を試みている。そして失敗した。遠く重慶に本部を置く米国O∴S∴S(オーダー・オブ・ソーサリー・ソルジャー)は、術者を動員してカオバン省一帯に結界を敷いていたのだ。
出来たのは占術による間接的な調査と、現世の情報部による地道な活動だけだった。それでも越盟の潜伏地を、3カ所にまで絞り込んだ。動員する降龍も3機、搭乗する術者も3名。
その3人目がようやく現れた。熊楠は恰幅の良い大柄な男で、痩せ狼の犬飼とは対象的だ。丸々とした顔に総髭を伸ばした姿は、獣化する前から羆を連想させる。そのノンビリとした性格と仕草も。搭乗の遅れを気にする風もなく、ゆっくりと自機へ歩いて行く。
仕方が無い奴だ。肩の煌びやかなエムシアッ(太刀帯)から、これ又華やかなエムシ(宝刀)を下げ、落ち着き払った姿からは危機感を感じ取れない。俺の思い過ごしだったか?
「「遅いぞ熊楠」」
俺の念話に熊楠は弾かれたように振り向き、頭を掻きながら遅刻を詫びた。いそいそと脚立を昇って自機に搭乗する。
これでア号最後の部品が揃った。これより我々帝国術法部員3名は、中国国境のカオバン省を目指す。往復5時間を超える長旅となるだろう。
天宮の指示で、滑走路の整備員が輪留めを外す。ベトナムの初春には珍しく冷え込み、彼らの吐く息が白く煙っているのが見えた。
機体が発進位置を目指し誘導路を進む。俺は大久保に呼ばれて操縦席に赴いた。
「榊大尉どの、管制室から通信です「貴官ノ武運ト作戦成功ヲ祈ル」とのこと」
「貴官ラ」ではなく「貴官」の。きっと土門からだ。俺は許嫁の思いやりに感謝した。土門はウ号作戦(インパール作戦)の失敗で、過失も無しに作戦から外され、意気消沈していた。土門の為にも、術法員の有効性を証明しなくてはならない。
俺は重要任務を与えられた責任と、重責を得た名誉とを等しく思い出した。もう日本の敗北は避けられない。しかし独逸や伊太利亜のようには成らないし、させない。名誉ある敗戦を受け入れて、荒廃した国を立て直すのだ。
見ていてくれ。祖国日本と君の為に、俺はやり遂げて見せる。そして戦争が終わったら除隊して結婚しよう。
俺は既に除隊後の計画も考えていた。根強い女性蔑視の習慣を改める、社会活動に奉仕するのだ。土門はどう思うだろうか。
「有り難う。こう返信を頼む「我ラ期待ニ背クマジ」」
「了解しました」
これからは作戦開始まで無線封鎖となる。語りたい事は沢山有ったが、それは胸に秘めて俺は出撃に向かった。
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作戦全体の指揮は俺の任務だが、この機の操縦と編隊の指揮は、操縦手兼編隊長の天宮小尉の担当となる。狭い操縦室で邪魔になっても悪い。俺はまた後に引き下がることにした。
後ろに下がるといっても降龍は旅客機ではないから、後ろの席と言えば尾部か、後上方にある銃座しか無く、そちらは既に射手が座って警戒に当たっている。
俺の席はア号兵器の操作盆だが、これは結跏趺坐して操作するので座席は付いてないし、2重に密閉されたオルゴン箱の中で狭苦しい。目標空域到着まで2時間は掛かる。狭い所で寝るので慣れているが、現地までオルゴン箱に隠り切る気はしてこない。
結局、通路の操縦室近くで胡座を組むことにした。この方が楽だし状況も掴み易い。床几でも持ち込めば良かったのだが。
発進位置に着いた降龍は速度を増し、俺は通路の壁に捉まって加速に耐えた。降龍は中島発動機の不安定な音を響かせ、急角度で滑走路を離床する。
基地を出てしばらくすると新市街上空に達した。新市街と旧市街を隔てる、フオン川越えに備えて心の準備をする。人丹術『氣血吸入』で鍛え上げた俺は半ば鬼仙と化しており、霊肉一致しかけた体は流水を苦手とするのだ。
風水的に河川は氣の流れとされ、地脈と違って激しい乱流は霊体に及ぼす影響が大きい。直接触れさえしなければ不快感だけで済むが、体が浸かると霊体を掻き乱され仮死状態に成ってしまう。降龍の機上にあっても、俺は戦慄を伴う悪寒を感じて竦み上がった。
やがて旧市街に入り王宮を越え、フエを出る頃には高度も4000mまで上がった。ここまで上がれば河川の氣流も心配要らない。俺はようやく緊張を弛めることが出来た。
春先とはいえ日没が早かったのは有り難い。鬼仙の俺は流水だけでなく日光にも弱い。正確には日照に伴う陽の氣にだが。これは高度が上がるほど強くなるものだから、熱帯地方の高空ともなれば、魂魄に酷い火傷を負う事がある。
左道の外法を身に付けた報いだ。鬼仙と成り、得た物は多かったが失う物もまた多かった。
俺は変わっていく体以上に、心も変わっていく事を恐れている。今でさえ生き物の氣血を奪う事に、性的な快感を感じているのだ。尸解して本当の鬼仙に成った時、俺は最後の人間性さえ失い、妖怪と成り果てる事だろう。その時は土門よ、俺を滅ぼしてくれるか?
降龍は北上を続ける。作戦開始まではまだ時間が有るので、俺は作戦計画書を読み直そうと思い、背嚢をまさぐった。中に入れた覚えの無い包みが有る。良く見ようと体を捻ったが、サラシをきつく巻き過ぎて思うようにいかない。
仕方無く取り出して見ると、それは笹に包まれた弁当だった。夜間飛行は危険な夜間着陸を避け、早朝に終えるのが常だから、配膳係が気を利かせてくれたのだろう。彼に少々冷たく当たり過ぎたかも知れない。戻ったら礼を言わなくては。
その時不意に足下が頼り無くなり、体が落下する感覚に襲われた。しばらくすると機体は身震いして落下を止め、続いて床を突き上げる勢いで上昇する。機体は波に揉まれる船のように、上下左右へ不規則に揺れ、軋み音を立て振動した。
俺は驚いて操縦室へ向かった。この季節のベトナムは気象が安定しており、基地の気象予報も快晴と伝えていた筈だ。
「乱気流です! 申し訳有りません」
操縦手の天宮が報告する。大久保の怪訝そうな視線に気付くと、自分がまだ弁当を持っている事に気が付いた。俺は慌てて軍服の物入れに仕舞った。
「自然現象では仕方がなかろう」
俺は出来るだけ威厳が出るよう願いながら返事を返した。考えて見れば、彼ら搭乗員とは余り話す機会が無かった。通路で作戦計画書を読み返すより、ここで意思疎通を深める方が有意義かも知れない。邪魔に成らなければだが。
俺は愛想良く笑みを浮かべながら、軍服の物入れを探り弁当……では無い、煙草を取り出して勧めた。
「もう少し力を抜きたまえ、恩寵の煙草でもどうかね?」
天宮は視線を合わさず、前方を見据えたまま答えた。
「ハッ頂きます。申し訳無いが、火を付けて頂けませんか」
夜間飛行の操縦手に強い明かりは禁物だ。目が眩み、再び闇に目が慣れるまで時間がかかる。
しかし上官の俺が、部下の煙草に火を付けてやっては立場がない。それに、どうも彼の態度には意図的なものを感じる。俺は自分の分を引き抜くと箱ごと大久保に預けた。大久保は心得え顔で2人分の煙草に火を付け、1本を天宮に手渡した。
俺のような士官学校出は、どうしても叩き上げの部下に気を使う。意気高になって反感を買うのも拙いが、舐められるのもまた良く無い。操縦手の要望を無視する形になったが、天宮は気にする風もなく煙草を吸うと、おもむろに尋ねてきた。
「この作戦の目的は一体何でありますか?」
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天宮の緊張と反感はその為か。駐留軍による仏植民政府への軍事クーデター、明号作戦ならば彼も知っている筈だが、この特別任務は極秘事項として扱われてきた。俺自身、まさか明号開始当日に飛ばされるとは思わなかった程だ。
天宮の質問は分を超えかけていたが、彼にはそれを知る権利があるだろう。
「ユング博士は知っているかな? 欧羅巴は瑞西の真理学者だ」
俺は一端はぐらかすことにした。
「いえ、存知あげません」
天宮は反抗的な返答でそれに不満を表したが、大久保がなだめるように間の手を入れてくれた。
「その学者さんが、この作戦に何か関係有るのでありましょうか?」
俺は大久保の質問に答える形で話を続けた。
「その学者さんは、呪術や魔法を科学的に理論付けたんだよ。つまり仏教でいう阿頼耶識、インドではアカシャーと呼ばれるものが、人類の集合的無意識だと突き止めた」
2人は怪訝そうな顔をしている、無理もない。こんな知識は陰陽寮の得業生にでも成らない限り、一般人が知る機会は少ない。大戦以来、軍事機密に指定されていれば尚更だ。
「誰しも”思わず”とか”魔が差す”とかして、自分自身でも説明し切れない行動をする事があるだろう。普段は意識していないが、心の奥深くに澱のように溜まって、人に影響を与えるものを無意識と呼ぶ。ここまでは聞いた事があるかな?」
呪術・魔術の技法とは、正にその無意識に接触する手段の追求である。
術は無意識層でなくては発動しないが、無意識は自我の殻に囲まれて普段は表に出てこない。術者はその殻を潜り抜け、或いは打ち破る技を身に付けて、無意識に接触せねばならない。しかも無意識は言語や数字を理解出来ず、様々な象徴や観念の体系を用いねばならないのだ。
俺は説明を続けた。
「その無意識を仏教では末那識呼ぶ。しかしこれは個人単位のもので、それより奥底には家族が共有する無意識、更に一族郎党や各地域、民族や人類のと、下に行く程広がり、互いに繋がり合っていく」
それこそが呪術・魔法が、時間や空間を超越して伝播する理由であった。小宇宙は大宇宙に影響を与え、大宇宙は小宇宙の動きを左右する。
「つまり山のてっぺんみたいなものですな」
天宮もようやく興味を持ってくれたらしい、自分なりの解釈を交えて話を促した。流石に叩き上げで士官に成っただけあり頭が切れる。
「どちらかと言えば海に浮かぶ島々に例えた方が良いな。例えば日本列島は一見するとバラバラだが、海面下では繋がっている。これが民族的無意識だ」
個々の民族が共有する文化や宗教によって、形成される無意識層も異なるものとなる。その為に術者が操る術も、地域ごとに特色が出る。神道と仏教では術の形態が異なるし、同じ耶蘇(キリスト)教であっても、朝鮮やベトナムでは精霊信仰等が混じった独特の信仰だ。
「成る程。しかしそれを言うなら、大陸とだって繋がっているでしょう?」
地球そのものとも。無意識層の深奥には、ほ乳類や動物層、更には生物的無意識層まで存在する事が確認されている。
「それを人種的無意識とでも呼ぼうか。つまり亜細亜人は亜細亜人なりの価値観があり、それに沿った考え方をする」
天宮は小さく顔をしかめた。
「ハン、大東亜共栄ですか?」
天宮は非公式に、軍の宣伝を胡散臭いと言っている。
俺自身は大東亜共栄の理想に、賛同はしても鵜呑みにはしていない。どの国だってそれぞれ事情というものが有るのだから。
西欧の植民地支配から民族を解放すると言えば聞こえが良いが、日本がそうするのは政治・軍事的に都合が良いからに過ぎない。逆に連合側は「日本の侵略・拡張主義から守ってやる」とでも宣伝していることだろう。
大体カンボジアやラオスなど、タイ王国……一時は日本と共に蒋介石と戦火を交えた友軍……の支配から、仏蘭西の保護国となって独立した過去を持つ。ベトナムのように強制的に植民地化された訳ではない。
そのタイ王国は日本から戦車や軍艦を輸入し、時には肩を並べて戦いながらも、連合軍とも通じる抜け目なさだ。万州国は承認せず、1933年にはハッキリと中立を宣言し、日本と袂を分かっている。
そして当初の敵である蒋介石は、我らが陸軍士官学校の出身なのだ!
しかし上官として、天宮の軍隊組織への批判を肯定する訳にはいかない。もちろん作戦飛行中に、操縦手・編隊指揮官に手を出すのは論外だし、そこまでする気も無いのだが。
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「それはしばらく置いて、文化や思想の話さ。」
俺は天宮の挑発に取り合わず、気付かなかったふりをして続けた。
「例えば日本では、古くから女性は汚れとされて、神域には入れなかった。東洋全体でもその身分は低いとされているが、西洋ではそれ程ではない」
俺は京都の帝国陰陽寮『中町学校」』で学んだ時のことを思い出しながら、2人に説明を続けた。女にとっては失礼で迷惑な例えだ。
「しかし母と言えば、洋の東西を問わず”暖かい”とか”優しい”ものを連想する。それが人類という種族の集合的無意識だ。ずっと突き詰めていけば”死を恐れる”ことなど生物全体の集合的無意識にまで辿り着く。そうした無意識層をインドの古代語でアカシャーと呼ぶんだ。日本には仏教とともに伝わり、阿頼耶識と呼ばれている」
天宮は、乱気流に揉まれ軋み音を立てる降龍を操りながら、苛ただし気に先を促した。勿論、腹立だしいのは俺ではなく乱気流だろう。
「その”嵐”とやらは何の関係が有るんです?」
煙草は指もとまで燃えて、チリチリと音を立てている。俺は摘んでもみ消した。なめし革のようになっている俺の皮膚は、少々の事では痛みも感じない。天宮が不気味そうに見る視線を感じる。
「ア号兵器を使い、ホー・チン・ミ率いるベトナム独立同盟、略称ベトミン(越盟)に呪術的攻撃を加える」
呪術攻撃といっても呪殺を意味する訳ではないが、2人は明らかに誤解したらしい。問い返すように振り向いた天宮に、俺は初めて正面から顔を見合わせた。操縦席の窓硝子には、燐光を放つ俺の眼が写っている。天宮は唾を飲み込んで眼を逸らした。
結構、ようやく主導権を握ることが出来たようだ。脅すような真似はしたく無かったが、こうも反抗的では仕方がない。親睦を図るという訳にはいかなかったが”意思疎通”には充分だ。
「我が軍は米英の援蒋補給路を遮断し、作戦・兵站基地を確保する為に、仏領インドシナ(仏印)に進出し、仏蘭西の主権を認める代わりに駐留を許可された。」
俺は機外前方に向き直り、何気なさを装いながら話を続けた。
「本来なら独立派勢力と手を組んで植民地を解放し、親日政権を立てるのが理想的なのだろう。だが同盟独逸の占領により、仏蘭西は名目上とはいえ味方となった。植民地解放を掲げて、親独ヴィシー政権と対立する訳にはいかない、これまでは。」
戦局の流動により……よりはっきりと言うなら枢軸の凋落により……事態は一変した。連合軍によるパリ解放とドイツの敗北で、ヴィシー政権が解散したのだ。新たに首班となったドゴールは、日本=ヴィシー政府間協定の無効を宣言した。
今でこそ旧ヴィシー政権派が植民地の実権を握っているが、じきにドゴール派が取って代わるのは間違いない。既に水面下にあった対立が表面化していた。
我が国はレイテ沖で連合艦隊を失い、第15軍はインパールで密林に漉し取られて消えた。米海軍・英陸軍の侵攻に植民軍が呼応して決起すれば、我が軍の組織的抵抗は不可能となり、仏印の作戦・兵站基地も手放す事になる。
対抗手段は各個撃破しかない。そこで大本営は、政権交代による指揮系統の混乱に乗じ、植民地の解体と傀儡政権の樹立を目論んだ。仏印駐留軍は第38軍に改編され、軍司令官となった土橋中将は、仏印武力処理「明号作戦」を計画。その決行こそ今日この日なのだ。
「漸くやっつける機会が来たって事ですな。あいつ等東洋人を馬鹿にしやがって」
「吠えるな、そう簡単にいくものか。越盟だけでも苦労してるんだぞ」
大久保は勇ましいことを口にするが、天宮は冷静に戦況を把握していた。大戦から取り残され、無傷の仏蘭西植民軍は強力だ。主力は2万に過ぎないが、現地人の徴用は7万にも及ぶのだ。
そう、現地の人心を掴まねばならない。最悪なのは、仏蘭西政府がベトナム独立と引き替えに、越盟と共闘する事だ。その前にこちらが同盟を結ばねば。
「民族独立の志と、大東亜共栄の理念は融合し得る。この作戦は、今まで敵対してきた越盟を味方に付ける為のものだ」
そして仏印三国を独立させ日本との同盟関係に置けば、防衛力を増強しつつ、進駐軍を減らして他に転用することが叶う。
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「那賀」から「長過ぎ」に改名したら?
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まぁ、確かに乗せる量もだが、ワンシーンに置ける文章量も多すぎだな。
つーか、ここは推敲して貰う場所じゃないと思う。だから推敲してから乗せてくれ。
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まともに感想がつかないのは、単に長すぎるからというだけではないとオモ。
なんというか、惹き付けられるものがない。
残念ながらとてもじゃないが全部読む気にはなれない。
連続だったのでどうしても>>829と比べてしまうが、
きっと>>829の文章ならもう少し読む気になるんじゃないかと思う。
俺の好みの問題もあるだろうが、
多分10人に見せたとするとそのうちの7、8人は>>829のほうが面白いと言うんじゃないだろうか。
同じ素人の文章と比べてもそうなんだから、プロと比べてどうかは言うまでもない。
たぶん何かの賞に応募する予定なんだと思うけど、
ライトノベル系ならMFがいいんじゃないだろうか。
評価シートをもらえるし、きっと参考になるよ。
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いや自分でも読み進める吸引力に欠けてるのは痛感しまして、応募は見合わせます。
先ず問題は、一人称で背景とか歴史を説明するのが難しくて、その為に機内の会話が説明になってしまった事ですね。
つまりストーリーでは無く、説明に成ってしまっている。
元の構想からどんどん離れていくし、矢張り三人称で改訂します。
わざわざ批評して頂いて申し訳有りませんが「冒頭の甘さ」「流れが判らない」等、有益なアドバイスを有り難う御座いました。
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始めまして。オリジナルとしては初めて人目に晒すので
かなりどきどきしております。書き進めているうちに
「ちょっとくどいかな?」と心配になったので、思い切って
ご意見を頂こうと思った次第です。どうぞよろしくお願いします。
四月某日日曜日、晴れ。朝早くから西田家の台所は戦場と化していた。
大きな物音やら、叫び声やら、焦げた匂いやら、黒っぽい煙やら。
料理を作っているのか、実験をしているのか、はたまた何かを燃やしているのか、
判断に苦しみそうな光景だった。
こっそりと様子を窺うお母さん。『この後一体誰が片付けるんだろう』とか、
『食材が勿体無い』とか、『ちゃんと家事を教えておけば良かった』等等、
言いたいのを堪えているのがありありと解る。それでも口に出さないのは、
我が子可愛さからなのだろうか。有難くて涙が零れるよ。
ところが弟の敦には、そんな優しさは微塵も備わっていないようだった。
「……これ食わされる奴、気の毒だな。」
例えその通りだったとしても、第三者から言われると無性に腹が立つのは世の常で。
しかも、これ見よがしにため息までつかれたりして。言返そうにも本当の事なので、
ただ顔を赤くしてわなわなと振るえる事しか出来なかった。我ながらなんて情けない。
お父さんに至っては、無言でテーブルの上に胃薬を置いて行った。……これが一番
傷付くんですけれど。なんで我が家の男達はこうもデリカシーがないんだろう?
がっくりと肩を落とす私に、とうとうお母さんが声を掛けてきた。
「幸子ちゃん、お母さんが作ってあげようか?」
なんて甘い誘惑をするんだ、お母さん。思わず『うん』と言いそうになったではないか。
作ってもらいたいのは山々なれど、あの優次の事だ。あんまり上手に作っても、
『母親に作らせるな、0点』位は言いそうだ。いや、奴なら絶対に言うに違いない。
ただ首を横に振ると、再びフライパンと格闘を始めた。
タイムリミットまであと一時間――――。
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>>851
多分、章か小説自体の冒頭だと思うんだけど、概ね良いと思う。
小説全体の雰囲気も伝わってくる。
気になるところは二つ。
>わなわな
一人称なのに、語り手が客観視しすぎていて文章から浮いてるように感じた。
>――――
なんとなく微妙。終わらせられなくて無理やり切ったように見える。
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なんと、早速レス頂けて感激しております。
小説全体の雰囲気が伝わってくると言って頂き、天にも昇る気持ちです。
正直、かなりの酷評を覚悟していましたので。
さて、ご指摘の二点ですが。
「わなわな」
これはあまり考えずに入れた言葉ですね。読み返した時はさほど疑問にも
思いませんでしたが、言われてみると、ですね。もう少し表現を考えて見ます。
「――――」
これは、「タイムリミットまであと一時間」も込みのご指摘でしょうか?
ここでの終わり方は、割と早くから決めていまして、無理やりに切った訳では
ないのですが、唐突過ぎる、って事なんですよね?う〜ん、ここもちょっと
再考が必要なのかな。
予定では原稿用紙換算で150前後になるかと思うのですが、この調子で進めても
くどくはないでしょうか?(恐らく始終この調子で話は進むと思われます)
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>>853
天に昇って頂いたところで地獄に引きずり込んでおきます。
注)酷評しようとして酷評してます↓
まず、雰囲気が伝わってくるのは、ライトノベルのテンプレート的な雰囲気だからです。
わなわなの部分、柔らかく言ってますが、致命的だと思います。わなわな震えているのは、作者、読者の視点であって、語り手の視点ではありません。この量の文章で出てくると言うことは、この先そのような事態が頻発してると予測します。少しではなく良く考えてください。
また、――ですが、ここに関しては文章の続きがわからないのでなんとも言えません。尻切れトンボ的な印象を与えたいなら良いと思います。
この調子で進めたらダメに決まってます。文章のノリが一定であると言うことは、メリハリがなく単調で平板な文章になって行くことでしょう。
それと書き出しは三人称風一人称なのに、自分が出てくる分岐点の描写がでてきません。
視点の混線はプロがやるなら許されますが、ワナビがやると叩かれます。
基本的に描写が足りてないとも思いますが、この手のノリの文章なら量的には問題ないと思います。ただ質を高めたいなら、短い文で適切に状況を表そうとすべきでしょう。ノリの良い文章が身上でしょうから、質を高めるのは逆に難しいと思いますが。
まぁ、言いたいことは勝って兜の緒を締めよ的な事です。
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再びの書き込み、ありがとうございます。
酷評をみてちょっとだけほっとしていたりします(笑)
わなわなについて
仰せの通り、自分でも書いている途中で「あ……」と
思う事がしばしばあります。今回のご指摘の部分などは
自分だけで読み返してもさほど疑問に思っていなかった
部分ですので、おっしゃる通り、かなりの数で同様な事が
起こっていそうです。書き進める前に、その辺りのチェックを
もっともっとしてみます。
描写ですが、どんな話を書く時でも必ず苦しめられるんですよね。
自分でいうのも何ですが、このノリで逃げている面もあるな、と。
でも、どんな内容であれ、小説を書くのであれば描写はちゃんと
できないとダメですよね。もっといろいろな本を読まなきゃ。
この調子で進めたら、くどいよりも単調になる……。確かにそうですよね。
最終的には幸子がしおらしくなる予定なんですが、その辺りで進め方を
考え直してみます。
また機会がありましたら続きを出して見ます。その際はどうぞよろしくお願いします。
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>>851
某日日曜日>同じ漢字が被るのは避けましょう。
判断に苦しみそうな>判断に苦しむことを迷いそうな、では分かりにくいです。
苦しむ、でOKです。
こっそりと様子を伺う>どこから様子を伺っているのか分からないので、あまり想像しやすくないです。
等等>等々
そういう優しさ>『そういう』が何を指すのかあまり明確に示唆されてないので、分かりにくいです。
言返す>でも、言返す
振るえる>震える
母親に作らせるな、0点>ならば、『あまり上手く作らせても』という文章は不要だと思います。
横に振る>否定の意を少しでもいいので、書いておきましょう。
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その日、僕は放課後の中庭にいた。中庭からは赤くなったグラウンドが見えて、駆け回るサッカー部の連中の姿が土の上に揺らめく空気で歪んでいた。
7月に入ると、蝉も鳴き声で自分を主張する。蒸し暑さに溶けそうな肌をなでる風が心地よかった。プールに溶けた塩素と、しめった埃の臭いと、夏の校舎だけがもつ有機的で無機質な臭いとが僕の気持ちを落ち着くとも沈めるとも言えない気持ちにさせた。
時間はとうに過ぎていた。待ちぼうけかと何度思ったか数えようとした時、一人の女子が校舎から駆けてくる。すぐにわかった。長く黒い髪。彼女だ。普段の白い肌は夕焼けに赤く染まっている。
彼女は僕の目の前で止まった。うつむき、息を整えている。見慣れない懸命な仕草に胸が鳴った。
彼女の顔が上がる。見上げる顔が夕日で影になり彼女の印象を幽かにさせている。
「秋白君、急に呼び出してごめんね。お待たせしました」
息を落ち着かせて彼女が言った。いつもの様に明瞭な声の響きに、胸が高鳴る。心臓の音が大きい。彼女に聞こえてしまいやしないか。
「いや、いいよ」
声が震えないよう気を使うのに精一杯のセリフの淡白さに、堪らなく恥ずかしくなる。
「えっと、そのね……言いたいことがあって」
夕日が地平に流れていって、彼女の顔に表情が浮かびあっていく。
「付き合ってる人……いる?」
少し太めの眉が、ちょっと困ったように、付け根に寄っている。夕焼けのせいか赤く染まっている白い頬。黒く大きい瞳は強い光を放っていて、僕を射抜く。
「え……いないけど」
蝉の大合唱、捨てられたペットボトル、風が運ぶ彼女の甘い臭い。堪らず頭に血が上り眩暈がする。
「そっか……それなら――」
彼女の少し湿り気を帯びた桃色の、唇が目に入った。惹きつけて離さない。
小さく開く唇に、ゆっくりと空気が吸い込まれていく。白いシャツが空気が押し上げていき、ついに止まる。蝉の鳴く声だけが辺りを満たしている。
「――です、付き合ってください」
辺りが静とした。心臓の音だけが浮ついている。彼女の声が頭の中でなんども繰り返す。言葉の意味を理解するまで何度と繰り返したのか、僕は気づき、焦る。彼女は僕を見つめている。頭の中では泡みたいな答えが生まれては消えていく。決まっているに決まっている答えが、泡の海に沈んでいって思考が窒息する。彼女の姿だけが意味も無く頭の中を支配した。
あ、彼女が微笑んだ。
おながいします。
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>>856
書き込みいただいていたのに、気付かずに失礼しました。
またしても疑問にすら思っていないところで、ご指摘の箇所は
言われてみて初めて気付いたものばかりでした。
やはり、書いたものはこうして添削して頂かないと、いろいろな
あらが見えてこないものなのですね。
今回頂いたアドバイスを胸に、日々精進します。どうもありがとうございました。
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>>829
俺も>>833の意見に賛成。
あと、言おうか言うまいか、迷ったけど、言ってしまおう。
文章が削った分に、ぐんと引き締まった。それはいい。
でも、代わりに、読者に与える時間間隔があまりにも短く
なりすぎて、真人の苦痛が伝わりにくくなっている。
腹を刺されたら、どうなるかの話で、時間を稼いでほしい。
空手の試合でレバーに後ろ蹴りをカウンターで叩き込まれて
ダウンした個人的経験から推測するに……。
痛いこともあるだろうけど、その痛みで呼吸ができなくなって、
しまう。これが辛い。
痛みで筋肉が痙攣してしまって、肺が作動不能状態。
ともかく酸素がほしい。
頭の中は、そればかり。
首に手をかけられて締められる方がまし。
腹の中に重い石が入っているというか、そういう痛み?
うわ、やっぱ、人間、酸素が必要ダヨ。
おそらく腹を刺された場合にも、そういう呼吸困難の苦しみ
があると思う。
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>>857
批評とかあんましたことないから感想だけど。
主人公の緊張というかいっぱいいっぱいな感じは伝わってると思う。
気になったのは、彼女の名前。
伏せなきゃならない理由がないなら名前を出した方がいいんじゃないか。
顔見知りで「彼女」とだけ呼ぶのはちょっと他人行儀すぎる気がする。
-
俺のもお願いします。以前本スレまわりで上げたことがある奴の微修正版。
稲妻のように駆ける赤毛の犬が、獲物を捕らえた。
騎乗した猟師と勢子、十数匹の猟犬に追われながら、獲物の野兎はよく逃げ回っていたほうだった。
だが、安全な木々の下生え、暗い茂みへの逃走路は、常に先行する騎手か犬によって塞がれていた。数十頭もの馬と犬。野兎は知らず知らずのうちに、追う者達が狩猟場と呼ぶ場所をぐるぐると駆けめぐって、彼らの思う壺に嵌まっていた。
「マヴルーシカ!」
ひときわ、大きな掛け声が狩猟場に響いた。反応したのは、それほど見栄えの良くない、赤毛の猟犬だった。マヴルーシカは疾走する騎手達の足もとを恐れる風もなく駆けぬけると、他のどの犬よりも速く、隙を見せた獲物へと飛びかかった。
「よおし、よし、よし!」
赤毛と野兎がごろごろと転がり、追いついた他の犬どもがそれを囲んだ。マヴルーシカが取り押さえたところで、ころあいを見て下馬していた猟師の一人が、手早く野兎を縛り上げた。力強く尾を降る赤毛の頭をひと撫でして、猟師は周囲に集まってきた仲間に見えるようにと、獲物を高々と持ち上げた。何十もの好奇の視線が集まる中で、脚を縛られ身動きをとれなくなった野兎は、透きとおった目で周囲の者たちを見つめていた。
ざわめき、興奮して甲高くしゃべる皆の間を抜けて、狩りの主催者である子爵令嬢が姿を見せた。すでに両親をなくしており、戦争でただ一人の兄も失った令嬢は、子爵家の事実上の主人であると見なされていた。遠慮する皆に片手で楽にするようにと示して、令嬢は乗っていた鹿毛の上から腕を伸ばした。とらわれの野兎を受け取った令嬢は、野兎を顔の前にぶらさげてまじまじと見つめて、満足そうな笑みを浮かべた。
「よし」
傍らの騎手に獲物をほおって、令嬢は言った。
「よくやった。皆の酒代を上乗せする。マヴルーシカにはあとで脚を一本おやり」
猟師と勢子が上げる歓びの声をうけて、もう一度にこりと微笑んでから、令嬢は鹿毛の頭をめぐらせた。マヴルーシカを遣っていた猟師が、仲間に背中を叩かれていた。
夏から秋にかけての、毎日が変化に富んだ、あの魔法のような時季のことだった。明け方に降った雨はほどなく止んで、狩猟には絶好の上天気になっていた。
子爵家の有する狩猟場は、いまだひとの手の入ったことのない森の脇の、さほど広くない一角だった。周辺には村の一つもなく、子爵家の領地における邸宅からは、馬で二時間ほどの場所にあった。
令嬢は次の狩りの段取りをつけるために、馬丁と猟犬監督の姿を探した。馬丁には勢子の仕切りを、猟犬監督には猟師と猟犬のそれを任せていた。
令嬢を乗せた鹿毛は狩猟場をゆるゆると進んでいった。さほど広くはないとはいっても、そこは貴族の有する場所だった。緩やかに起伏する狩猟場の各処に、この狩猟に参加しているひとびとの姿が散見できた。放した犬をまとめている猟師の一団。先の獲物のことをしゃべっている何人かの手隙の騎手。馬から下りて蹄鉄の具合を調べている勢子の奥手では、今回の狩りの獲物を鞍にくくりつける作業がつづけられていた。令嬢は狩猟場を見渡した。
ほどなく、令嬢は思い思いの格好をして猟師達の指示を待つ犬どもの向こうに、猟師の一人と放す馬丁の姿を見出した。鹿毛の首筋をひとつ優しく叩いて、令嬢は馬丁のもとへと馬を進めた。
「猟犬監督からの知らせです」
話していた猟師を示しながら、馬丁が言った。
「少し向こうの、森に入ったところです。猟犬監督が、お嬢さんに来てほしいと」
うなずき、令嬢は知らせを持ってきた猟師と馬丁と共に、猟犬監督のところへと馬を駆った。
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>>860
感想ありがとうございます。好感触を得られたようなのでなによりです。
もう少し描写を足して削って質を高めたいと思います。
名前もどうにもリズムを悪くしてしまうので、書くか書かないか考えていたのですが、やっぱり書くべきですね。
気合いれて作ってきます。
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>>861
猟師⇒近隣の貴族(騎士階級以上)とその子弟
勢子⇒従者
子爵令嬢⇒女伯爵
にしておけ……。
ただの猟師の財力では、馬ほど食う動物を飼育し続ける
ことはできない。
仮にできたとしても、猟師は、高い身分の女性の前に
出して恥ずかしくないだけの礼儀作法やマナーを心得て
いない。
ちょっと検索してみたが、
貴族の狩りについては、「トム・ジョーンズの華麗な冒険」
とかいう映画が参考になるっぽいぞ。
-
>>863
猟師の財力っつっても、放牧してるなら餌代はかからなくない?
現代日本とかで馬を飼うとなると、餌の問題はあるだろうが。
背景からするとそう難しいとはおもわないけど、やっぱきついものなの?
あと、俺は馬丁がいちいち間に入ってるのが雰囲気出てていいと思ったけどなぁ。
身分の低い物にどう令嬢が当たるかでキャラ立ても出来てるし。
それなりに扱う、貴族にしては礼儀がなってる人と読んだ。
ところで、これ誰がやってる狩りなんだろ?
お嬢さんは犬を遣ってないし、楽しいんだろうか。
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>>864
もしも、作品舞台が、野生の馬を放牧できるような草原地帯だとしたら、
それは遊牧民の世界だよ。
遊牧民は、家畜が牧草を食い尽くしたら、次から次へと移動しつづける。
その結果として、領土に結びついた封建貴族制度は、普通ありえない。
このあたりの関係は、多少、勉強していなければ、わからないか……。
でも、↓は常識的なセンスでわかってほしい。
ぶっちゃけた話、ウサギ狩りみたいなことに馬を使うのは
あくまでヨーロッパ貴族のお遊びのスタイルであり、
狩りとして実用性は、全くと言っていいほど、ない。
狩猟でメシを食っている猟師ならば、そんな金と時間と労力のかかる
ような手法はとらないよ。
-
あー、狩猟シーンは全体的にトルストイの戦争と平和の影響を受けています。
当時のロシア貴族の場合、猟師も勢子も猟犬も馬匹も「貴族のお遊び」のための、
自分持ちの雇い人だったりします。貴族が狩りをしないときは食卓を豊かにするために頑張ります。
贅沢なもんです。そりゃ革命も起こるわい。
>>863氏の意見は概ね正しいっつーか俺がorzな感じなのですが、一つ反論すると、
封建社会が拡張過程で遊牧民族の生活圏を領土に組み込むと、封建制と遊牧民の存在が両立します。
また、大規模な放浪型社会が拡張過程で定住型社会を領土に組込み、影響を受ける事例はよくあります。
(前者はロシア帝国、後者はモンゴル帝国)
-
あ、ロシア帝国の場合タタールのくびきがあるから逆かも。
そして名前ミス
-
>>866
一応、ロシア帝国などの例外の存在は想定していたよ。
だから、>>865では「普通」ありえない……と書いた。
でも、そんな感じですな。
>封建社会が拡張過程で遊牧民族の生活圏を領土に組み込むと、
>封建制と遊牧民の存在が両立します。
そのあたり、資料を集めて、世界をつくりこめば、真面目に
面白いね。
ただ、年齢の若いライトノベルの読者はついていけないかも
しれない。
-
>>865
あれ、そうなのか。
なんかヨーロッパの貴族が狩りをしてるっていうイメージだと、
黒い森だの出てくるようで、なんとなく馬も飼えるだけの緑があるんだと勘違いしてたよ。
んでさ、ウサギ狩りに馬遣うのは貴族の遊び、っていうのは分かる。
イギリスのキツネ狩りとかもそうだよね。
でも、>>861って猟師が狩りしてるんだよ。
普通、スポーツとして楽しむなら貴族様が犬を使って追い込みまでしないか?って
思ったんだ。(少なくとも止めは貴族がとらないか?と)
それとも、これも思いこみで実は貴族は見てるだけ?
-
だいたい869氏の認識で合っています。が、地域・文化にもよりますが、
貴族の狩猟の場合、スポーツとしての側面の他に、尚武的な、軍事訓練的な側面もあります。
大勢の騎乗した部下を駆って目的を達成するという手段自体が、もう一つの目的だったりするのです。
俺が書いたシチュでは、お嬢は暇をかこっていた狩猟用の被雇用者のために
狩猟をやっとるわけです(本来彼らを率いるはずの彼女の兄は戦死している)。
猟師が犬を遣うように、彼女は部下を遣っている訳です。
まぁ、そのあたりは裏設定的というか書いている人間だけ知っていればいい情報なので
>>861では特に描写していませんが。
読んだ方にそういう疑問を抱かせたなら、説明を入れるべきなんじゃろか。
-
>>870
ああ、なるほど。
書き込んだあとにその可能性もあるな、と思ったんだけど。
この時代は出てくる猟師はお囲い、ってのは説明入れて、
夜あたりに令嬢が狩りについてなにか感想を洩らすといいかもね。
使用人Aが夜風に吹かれる令嬢に近づき、
「お嬢、一日中馬に乗ってお疲れでしょう。明日もあることですし、おやすみになられてはどうですか?」
ぼんやりとした顔で令嬢は振り返り、ため息を吐く。
「……あれで良かったのかしら? 私は兄さんの代わりになれてた?」
みたいな。
もしくは、野ウサギに同情するとか。その辺は令嬢のキャラクター次第で。
ただ、これをやるなら狩りのシーンのあとに猟犬監督と話す場面を入れる、ってのは辛いかな。
>>861を一段落、二段落、三段落と分けて、
一段落、夜のシーン、次の日にかわって二段落、三段落って感じか、
二段落の状況説明は一段落のすぐあとに持ってきて、次に繋がる部分を三段落の頭にくっつけるとか。
-
嫌々じゃなければ、「楽しそうだったから、明日は追い込みに参加する」ぐらいかな。
-
正直言って、設定に口を挟むのは見当違いでは無いかな。まだ書いてないだけで、
背後にどんな設定が有るのか知れたものでは無いし、時代や地域によって条件が違う。
作者が資料を集め設定を練り込むのと、読者の嗜好には因果関係が無いんだし。
違和感を感じない限り、普通はお抱えかも知れない猟師が、馬を持てる程豊かか
そうで無いかなど気にしない。同様に、お嬢が直々に狩りをしないのが変とも思うまい。
ただ描写された内容から、背景の設定を推察するだけで、その意図は達成されてる。
-
パサパサと、髪を軽く叩かれる感触があった。
寝ぼけたまま、机に突っ伏した顔を上げると、髪の毛に紙が貼り付けてあった。
授業は既に終わってしまっているらしいのだが、窓は開けっ放しで、そこから入る海風が紙を揺すっていた。
その海風が無神経にも午後の惰眠を貪る僕を起こしたらしい。
紙を手に取ると、そこには素っ気ないルーズリーフに見覚えの筆跡が綴られていた。書かれている内容は。
『最後のロケット・ライダー募集中 至急、裏山のガレージに来たれ』
彼女は僕の前に誇らしげに立つと。
「じゃっじゃーん。これが前世紀の廃棄物、宇宙への夢の遺骸、ロケットで〜す」と宣言した。
ガレージから台車に乗って現われたロケットは白く塗装され、外壁にはUSAの文字が赤色に刻み込まれていた。
アポロ計画で使用されたサターンVロケットを模したデザインなのだろうか。
海風で補強の甘いパーツが揺れているという欠点を除けば総ダンボール製とは思えない、なかなかのできだ。
「さぁ、乗りなさい」
「えっ? どこから乗るの?」
彼女は黙ってサターンVに近づくと、第二段ロケットの壁面を外した。
雰囲気ぶち壊しだよと思いつつ、中をのぞくと、そこには自転車の車体があった。
ロケットの下部の隙間からタイヤが地面に付いていた。
外壁をなんなく乗り越えて、サドルに座るとペダルに足を乗せた。
心の中で『準備完了かな』と唱える。
「もしかしたら、ロケットエンジンなのかと淡い期待をしてしまった自分が恥ずかしい」
「それはいくらなんでも私でも無理」
「君はどうするの? この恥ずかしいさまを見ているだけ?」
彼女は第一段ロケットの壁面を外すと、僕の後ろに座った。
「万事オーケー」
「で、このあとはどうするの?」
「サカキ山から海岸までの下り坂をノーブレーキで突っ走る」
前の席に座る僕が間抜けな疑問を尋ねた。
「とりあえず、ロケットの中で遊んでないで、ロケットから降りて、これをサカキ台まで運ばないとね」
「うん」
後ろの席に座る彼女ははっきりとした間抜けな返答をよこした。
サカキ山のチキンレースというのは、この辺では有名な話だ。
年に一、二回は開かれる子供たちだけの秘密の遊び。
サカキ山の頂上から開眼へと続く坂道をノーブレーキで下り、波打ち際でぴったりと停車するというゲーム。
前輪に海水が付いたら負け。
もしも、坂の途中でブレーキを使おうものなら問答無用にチキンと呼ばれる。
そして、最も波打ち際に近づくことの出来た、このゲームの真の勝者は、この年、最も勇気を持つ者という栄誉が与えられる。
が、そんなことをしているのがもしも大人にばれたら、大変。
次の日には学校で臨時集会が開かれ、校長があの話をするのだ。
チキンレース中、失踪してしまった少年の話を。
海岸に着いてもブレーキをかけず、そのまま、波打ち際を越えて、その海のむこう、地平線の果てまで自転車で走り抜けて行った少年の話を。
その話を僕も彼女も一度は聴いたはずだ。
忘れもしない、その少年の友人たちが、彼がブレーキをかけないことを不審に思い始めたくだりだ、そこで彼女は。
『それは浮いたままいったのですか? それと潜水して行ってしまったのですか?』と話の展開を見抜いた質問を、全校生徒の前で校長に訊いてしまった。
-
>>874
掴みとしてはけっこう面白いと思う。
ただ、展開が早すぎて(場面が変わりすぎて)ちょっと理解するまでに時間を要する。
あとは……「手紙の内容は。」は要らない気がする
-
オリジナル作品を人の前に出すのは初めてなのですが、批評の方をよろしく
お願いいたします。あんまりラノベらしくないかもしれませんが……では次レ
スから始めさせていただきます。
-
出会いなんて、たいしたきっかけが必要なわけじゃない。
パンをくえた女子高生と曲がり角でぶつかったりだとか、幼馴染がいるだとか、そんな夢みたいなことは
龍二の人生に起きなかったし、起きることを期待もしていなかった。
厳密に言えば彼には、幼馴染がいないわけではない。ただそれは男で、幸いにも男好きというわけでは
なかった。幼稚園の頃に知り合って、小学校、中学校、高校と、クラスが別なことはあっても、家が近かっ
たから、互いの家を行き来して遊んでいた。
ただ最近、雄太というその幼馴染とツルむことは少なくなっていた。それは彼に、恋人が出来たから。美幸
という名前のその少女は、龍二と雄太、共通の知り合いで、高校のクラスメイトだった。龍二もまた美人だな、とは
思っていて、仄かに憧れを覚えていたから、幼馴染と彼女が付き合いだしたと聞いた時は、軽くショックでは
あった。だがまだ、好きという程までには深入りしていなかったから、割とあっさりと諦めることも出来たし、二
人を祝福することも出来た。
とはいえ、二人の仲に入りづらくなったのもまた、事実だった。雄太は相変わらず誘いの電話をくれるし、
美幸もまた、
「龍二君も一緒に遊ぼうよ」
と声をかけてくれるのだが、何となく気が引けて、適当な言い訳を付けて三回に二回は断るようにしていた。
「悪いな、何か」
二人きりの時に雄太からそう言われて、龍二は苦笑で返す。そして、
「気にすんなよ。美幸ちゃんのこと、大事にしてやれって」
本心からの言葉ではあったが、どこか嘘っぽいな、と彼はふと思う。が、他に言いようがないのも、また事実
なのだった。
そんな彼が、最近、気になり出したのは、クラスで隣に座る少女、美咲だった。
-
『町田君、タバコ吸ってた?』
そう書かれた紙を美咲から手渡されたのは、夏休みも近い、うだるような暑さに龍二が吐き気を覚えて
いた午後のことだった。もっともその気持ち悪さは、昼休みに生まれて初めて吸ったマイルド
セブンのせいかもしれなかったが。
渡された紙に目を通し、その内容を理解して、龍二の背中に冷や汗がにじむ。それでも何とか驚きの
声を挙げるのを押し殺し、隣を睨むが、美咲は何事もなかったかのように前を見ている。が、彼の反応には
気付いていたのだろう。ノートの切れ端にまた、何かを書き込むと、龍二の方を見ることなくそれをこっそ
りと回す。
『放課後、待ってて』
今度はその内容を理解することが出来ず、戸惑ったまま彼女を見つめるが、美咲はやはり、それに何の
反応も示さなかった。
「ん……くぅ」
何度目になるかわからない試行錯誤の後、ようやく龍二は美咲の中に自分の分身を突き刺すことが出来た。
「……痛いのか?」
唇を噛み締め、スーツを強く握り締める彼女の様子に、ホテルに入って初めて彼は言葉を発する。緊張に
口の中が渇いていたせいか、ややかすれたその声は、それでも美咲の耳に届いたらしい。
「だい、じょうぶ……」
明らかに嘘とわかるその言葉と共に、涙のにじんだ目で美咲は彼自身を見つめてくる。深い黒の瞳の中に
透けて見える少女の必死さに、龍二は言葉を失う。
「いい、よ……動いて」
むしろ自ら腰を押し付けるような美咲に、彼はただ彼女の髪を優しく撫でることしか出来なかった。
安いラブホテルの一室に、二人が来ているのは、美咲が誘ったからだった。
わけもわからぬままに、龍二は彼女の言葉どおり教室に残っていた。誰もいなくなった頃に、一度教室を
出て戻って来た美咲が、こう告げたのだ。
「町田君。私のバージン、もらってくれない?」
-
気になっていた少女からの言葉に、龍二は驚くと同時に、幻滅を覚えもした。美咲は美人とは言えない
までも整った顔立ちで、少し染めたのだろう、淡い茶色の髪を肩の長さまで伸ばしている。やや大人びた
印象と清楚な雰囲気に、龍二は惹かれていたのだった。
だからこそ、反動から来る失望は激しかった。何だよ、それ。そう心の中で呟く、いや、吐き捨てる。
「タバコのこと、黙っててあげるから。お願い」
彼の沈黙を勘違いしたのだろうか、そう続ける美咲から目をそらして、龍二は言った。
「いいぜ、わかった」
そのまま二人は、学校を出てホテル街へと向かう。龍二が先を歩き、美咲がその後に続く。一度、彼が
振り向くと、彼女は俯いたまま立ち止まった。
「何?」
か細い声で言われるのに、龍二は答えず、また歩き始めた。
龍二と美咲、二人の持ち金を合わせても大したことはなく、結局いつ建ったのかわからないような古い
ラブホテルしか見つからなかった。もっとも、学生服を着たままの二人が引き止められなかったのは、
そのせいかもしれなかったが。
鍵を受け取り、上るエレベーターの中でも、二人は言葉を交わさない。少しずつ冷静さを取り戻して
きていた龍二は、この状況に異常さを覚えてきてもいたが、かといってここで引き返すのは癪だった。
抱かれたいんだったら、抱いてやるよ。そんな風に心の中で言ってみても、何だか言い訳のような気が
して、余計に苛立つばかりだった。
部屋は狭く、ただベッドと、申し訳程度のバスルームがあるばかりだった。
「シャワー浴びてくる」
そう言う美咲を、龍二はベッドに押し倒す。
「ちょ、町田君」
構わず彼は、少女の制服を脱がし始める。わずかばかりの抵抗も、すぐにあきらめたかのように止ん
で、程なく龍二の目の前には、美咲の眩しいばかりに白い裸体が露になっていた。
「電気……消して」
一瞬、見惚れていた彼は、彼女の言葉に頷いて、電気を消す。真っ暗な部屋の中、それでも龍二の
瞳には、少女の美しい姿が残っていた。
-
「大丈夫か?」
「う、ん……痛く、なくなってきた」
嘘だと、龍二にはすぐにわかった。涙は流れ続けているし、声もかすれている。AVでしか知識のない龍二
だったが、それでも美咲が感じてなどいないことぐらいは察することが出来た。
「止めるか?」
「ううん……本当に、大丈夫だから」
気丈な少女の言葉が、あまりに胸をしめつけてきて。
龍二は彼女を強く抱きしめながら、激しく腰を振り始める。
「……ん!……ぅ!……ぁ!」
声にならない悲鳴をあげながら、それでも美咲は彼の抱擁に答えるように、抱きしめ返す。あまりに意地ら
しくて、龍二は早く果てようとするが、緊張しているせいか、全く射精の瞬間は来ない。気持ちよさも、また。
ただ突く度に、彼女の体を傷つけている、そんな罪悪感と後ろめたさが襲うばかり。
「……ん!んぅぅ!」
ようやく彼が果てたのは、挿入からどれぐらいの時間が経ってからのことだろう。快感のない射精は、自慰
よりも空しい思いだけを、彼の心に刻んだのだった。
「初めて、だったんだね。町田君も」
後始末を終えた後、シャワーを浴びて出てきた美咲は、まだ上半身裸の龍二から、恥ずかしそうに目をそら
して言った。
「ん……ああ」
改めて見た少女の、意外に豊満な胸と、その先の小さな突起に目を奪われかけた彼は、曖昧にそう答える。
が、すぐに、
「俺も、初めてだったから……その、悪いな」
言わないといけないような気がして、龍二は言った。それは彼が、罪悪感から逃れようとして口にしたのかも
しれなかったが。
-
「いいよ、別に……こっちこそ、ゴメン」
そう言ってから、恥ずかしそうに自分の体をバスタオルで隠した美咲は、そのままベッドに潜り込んでくる。
そして端に腰掛けていた龍二の背中に、そっと額を押し当てた。
「本当に、ゴメン。無理なお願いして」
「だから、いいって」
理由を、聞きたいと龍二は思った。だが、何故か、聞くのが怖かった。
あの時……二人が、繋がっていた時。セックスの快感も、一つになることの高揚も、いわゆるセックスで
得られると言われている感覚を、彼は何も得られなかった。
だが、確かに、あの瞬間は、特別なものだったのだ。
果てる寸前に、美咲の方から求めてきたキス。そのぬくもりは、まだ龍二の唇に残っている。
その日、結局、二人は会話らしい会話をすることもなく、別れた。何事もなかったかのように家に戻った
龍二が、部屋に戻って携帯を見ると、メールが一通、届いていた。差出人は、アドレスを交換したばかりの、
美咲からだった。
「今日は、本当にありがとう。また明日、学校でね」
どう返事を返そうか、迷って龍二は結局、何も送らないことにした。
夜、彼の夢の中に、美咲が出てきた。だが一度も、彼女はその顔をこちらに見せることがなかった。
-
以上です。導入部なのですが、どうかよろしくお願いいたしますm(_ _)m
-
短い間に時系列が行ったり来たりして、話の流れが理解し辛い。特に最初の濡れ場は、
始め何が起きているのか、すんなり分からなかった。そもそも告白して、いきなり肉体
関係を要求するのは、流石に不自然で違和感を感じる。
煙草と肉体関係。ブギーポップに似たシチュエーションが有ったが、あれは独特の
乾いた文体に合わせたものだし、女性の方が放煩な性格で、しかも交際を進めた末に、
という仄めかしが有ったはず。
-
しかし、ここで晒す人も本当に様々だね。
ある程度のレベルに達していると思われる人も居れば
(>>829なんかはこれにあてはまると俺は思うのだが)、
本当にいかにも「自信ありません」という感じの人もいる
(これは具体例を挙げると失礼になるので自粛しとく)。
むろんその中間も居る(ここで晒すほとんどの人がここにあてはまるだろう)。
俺も一応小説書いてるけど、俺は中間よりちょっと下ぐらいかな。
「良き作家であるためには、良き評論家であれ」という言葉を信じてここを覗いてるんだが、
たまに自信なくしそうになったりするから悲しい。
-
濡れ場は書かないほうがいい気がするけどね。
これじゃ、それなんてエロゲ? って話になっちまうから。
具体的に作品名を挙げておくと「SEXFRIEND」つーエロゲがあって、
切ない感じのなかなか良いゲームだった。
で、こっからちょっと真面目に言うと、
導入としての引きが弱い。
理由は、キャラクターの行動が意味不明、無味乾燥としてる、エロシーンとして面白くない(描写がたりてないし、エロくないし、テンプレート的過ぎ等など)、主人公の心の痛みに共感できない(リアリズムが無い)
読みづらい、文頭と回想に矛盾を感じる、文章的な強弱が無いので読んでるだけでの面白さがない等々。
感想としては、
ライトノベルに濡れ場はイラネ、かな。エロゲだったら続けるけど、本だったら閉じる。
-
>>884
文章力なんて主観的な判断なんだから(文章力という言葉の定義自体があやふやだし)
気にしないで書いて書いて直して直せば良いんじゃなかろうか。
で、ここに書き込むのは1つ2つくらいしか突っ込みも無いだろうと思った時とかじゃない。
それで、自分の主観と世間の主観が噛み合ってるか噛み合ってないか、確かめる手段と言う感じじゃないかと。
-
>>859
しばらくここを覗いてなかったもので……返信が遅れてしまって申し訳ありません。
少し考えた結果、「こんな戦国時代みたいな……」の部分を消して、そこに感覚の描写を入れることにしました。
戦国時代うんぬんの部分は主人公が正気を失っている感じを出そうと思って入れていたのですが、
死にかけのくせにやたら落ち着いてるな、
というのは他の部分で十分に伝わると思うので敢えて入れる必要はないかなと。
-
専門用語解説でひっかかったので、ツッコミお願いします。前後の流れを崩しすぎてないかが特に知りたいです。
「牡って……あ、タマついてるんだ。タマ」
「里香……あんたも一応は女子高生なんだから、そういうセリフを平気で吐くっていうのはどうかと思うけど」
「他に言いようがないでしょ」
「セン馬じゃないんだ、とか」
シルフの股間を覗き込んで言う里香に、綾華の冷静なツッコミが入る。
もっとも綾華も慣れっこなのか、一瞬呆れた顔をした後、すぐにいつもの表情に戻った。
セン馬――闘争心を抑えるために去勢された牡馬のことである。
闘争心が重要な要素を占める競争馬と違って、穏やかな気性が必要とされる乗用馬は、大半がこのセン馬で構成される。“ついている”牡馬は珍しいのだ。
「ま、やんちゃな子だったらタマとっちゃえばいいんだけど」
「いや、だからそういうことをあっさりと言う女子高生ってどうかと思う」
-
すいません、あと一つ
知らない人にもきちんと理解させられるような解説になっているか
これも知りたいです
-
僕は競馬漫画大好きなのではっきりしたことは言えませんが、問題ないと思い
ますよ。でもシルフと聞いてシルフィードを思い浮かべた僕は末期なのか?
-
>>890
まあ、風の妖精という意味は同じなんで…
一応、馬術風の名前(できるだけ簡潔な名前)で設定してみました
-
競馬関連さっぱりな人間ですが、特に分からないという点はないです。
-
>>892
ありがとうございます
ではこれで行きます
-
「2ch文章アリの穴」
http://ana.vis.ne.jp/ali/index.html
に投稿したプロローグを改訂したものです。台本か設定資料じみていた文体を工夫し、
会話を増やして、小説らしく成るよう手を加えました。どうか宜しくご指導下さい。
運命の交差路〈ラスプーチ〉
世界は死の断末魔に喘いでいた。迷信に満ちてはいるが、古き良き浪漫の時代が。そして不死鳥が自らを火にくべるかの様に、再誕の鉄火に身を投げようとしていた。
この時代〈トキ〉この帝国〈バショ〉の中心に居たのは、延び放題の髪と総髭を生やした、肩幅の広い痩せた中背の男で、不潔な体に地味な黒い僧服を纏った姿からは”奇跡の人”と呼ばれた偉大な霊能力も、一国を左右する権力も想像出来ない。
グリゴリー・エフィモビッチ・ノヴィーク。トボリスクとチウメンの交差路(ラスプーチ)に位置するポクロフスコエ村出身。元々は住民の大半と同じラスプーチン姓だったが、難病の皇太子を救った功績から、皇帝より豪華な邸宅とノヴィークの姓を下賜されている。
そしてこの成り上がりの似非僧侶こそ、この年代〈アイオーン〉の中心の一つであり、歴史の転換点そのものであった。それ故にそれを知る一人の男の深慮と、それを知らぬ多数の者達の短慮とで、彼自身も運命の交差路に立たされる事と成ったのである。
-
服をまさぐられているのに気付いて、グレゴリーは目を覚ました。自分がなぜ横たわっているのかは分からなかったが、茶菓子〈ケーキ〉を食べながらマディラワインを一瓶空け、良い気分に成って食前の……実際には少し摘んだ後だったが……祈りをしたのは覚えている。
ただ茶菓子もワインも、妙な苦みが舌を刺激し、お世辞にも美味いとは言いかねた。グレゴリーは口直しにお代わりを要求したが、ユスポフ公爵は声を裏変えして、抗議の叫びを上げたものだ。
ワインが傷んでいると仄めかしたのが、貴族の矜恃を傷付けたのかも知れない。だからと言って接待役の主人〈ホスト〉が、招待客に凄むなど無礼極まりない話だが。まして後ろから殴り掛かるなど、帝国屈指の大貴族だとて許されがたい……殴り掛かる?
怒りがグレゴリーの意識を鮮明にさせ、何が起こったのかを思い出させた。殴られた拍子に受けた、耳が麻痺する程の衝撃。あれは銃声だ。と言う事は彼の背を殴りつけ、息を詰まらせたのは銃弾だったのだろう。
その時、服をまさぐっていた男が宣言した。
「呼吸、心拍共に確かに停止しています」
グレゴリーはその声に聞き覚えが有った。確かラゾヴェルトとか言う藪医者だ。その博士に遮られて良く見えないが、視界の陰にもう一人居るのに気が付く。
「本当に確かだろうな? 君の調合した青酸カリは効かなかったぞ」
その声こそユスポフ公爵だった。彼の会話の内容が引っ掛かる。医者がここに居るのは、激昂して思わず”奇跡の人”に不敬を働き、後悔して治療を任せたからでは無いのか?
グレゴリーは暫し迷った。事情が飲み込めるまでもう一度目を瞑って死んだふりをするか、それとも雰囲気タップリに起きあがり、2人に事情を説明させるか。しかし先程から金縛りに遭った様に体の自由が効か無い。息も苦しい、と言うより息をしていない。
このままでは、本当に死んだと思われて埋葬されかねない。
グレゴリーが迷っていると、公爵がヒョイと博士を避けて、グレゴリーの視界に歩み出た。 目が合う。
「ぎゃぁ!」
「うわっ」
途端にユスポフ公が仰け反って短く悲鳴を上げた。公爵も驚いた事だろうが、その反応にグレゴリー自身も驚いて声を上げる。それでようやく、歯車が噛み合う様に、グレゴリーの体が正常な活動を開始した。息を吸い起きあがろうとする。
振り向いたラゾヴェルト博士が、グレゴリーを見て腰を浮かし、呟いた。
「そ、そんな馬鹿な! 有り得ない」
「だから聞いたんだ。お前には何一つ確かなものが無いのか!」
ユスポフ公は博士を間に挟む位置に後退した。
「”復活”を信じぬ不信心者め等が!」
大体ご大層な医者が役に立たぬから、自分の様な者が帝国に必要となるのだ。公爵がグレゴリーを招待したのも、奇跡の力で夫人の治療を願ったからではないか。
公爵がポケットから銃を取り出すのを見て、グレゴリーは博士を突き飛ばした。浮き足だっていたラゾヴェルト博士は、転びかけて公爵にしがみ付こうとしたが、銃把で頭を殴られて気を失い、床に倒れ込んだ。
グレゴリーは哀れなラゾヴェルトを踏み付て、公爵目掛けて突進した。だがユスポフ公は、グレゴリーより一瞬早く、銃のスライドを引いて身構える。銃を突きつけられ、ギクリと立ち止まるグレゴリー。2人の間に緊張が走った。
-
毒入りの”最後の晩餐”はお気に召さなかった様だな」
「毒入りだと!」
ユスポフ公爵は初めから彼を暗殺する積もりだったのだ。グレゴリーは、公爵の口車に乗った事に後悔した。公爵夫人のイリーナはニコライ2世の姪で、美女と名高かったのだ。
「クソ! それでか。儂の神通力が弱ったのも、この頭痛・腹痛・生理痛も」
「生理痛は違うだろ、意味分かって言っているのか?」
「ぶっ無礼者、文字くらい読めるわい!」
実際には、公爵達が茶菓子とワインに仕込んだ青酸カリは、常人の致死量を遙かに超えていた。体調不良位で済むはずも無かったのだが、それでもグレゴリーは平然とし、お代わりまで要求したのだ! 焦った公爵が背後から銃撃しても、仮死状態に成っただけで蘇生してのけた。
このグレゴリーの不死身ぶりに、ユスポフ公は迷信的な恐怖心を抱いていたが、全く効いてない訳でも無いと気を取り直した。公爵は改めて抹殺の決意を固めた。もはや病死に見せ掛けられずともやむを得ない。
「槍の代わりに鉛弾をくれてやる。十字架に張り付けるのは省略だ」
余裕を取り戻した公爵は、不敵な勝利の笑みを浮かべて引き金を引いた。カチリッと撃鉄が落ちる小さな音がして……いや、それだけだ。何も起きない。
肩透かしを食らったグレゴリーとユスポフは、キョトンとした顔をして、2人を遮る銃に視線を下げた。ユスポフが手首を捻ると、弾倉が抜けて空に成ったグリップが見えた。
ブローニング32口径。サラエボ事件でも使われた最新の自動拳銃だが、この銃はマガジン・キャッチがグリップの下に有る。ユスポフが博士を殴りつけた際に、その固定が解除され、弾倉が抜け落ちてしまったのだ。
2人の視線が床を彷徨い、ラゾヴェルトの腹の上、落ちた弾倉で止まった。
再び視線を合わせる2人。ユスポフがばつの悪い思いを笑って誤魔化せば、グレゴリーも応じて愛想笑いを返す。
「アハハハッ……」
「ホッホッホッホ……」
っと、緊張が戻り死闘が再開された。
ユスポフ公は素早くグレゴリーの脇を潜り抜け、地下室を閉ざす扉に飛び付いた。取手を回し、力一杯押したが開かない。
扉はグレゴリーが生きていた場合に備え、逃亡を防ぐため外から閉ざされていたのだ。
ユスポフ公は扉を叩き、外に向かって解錠を求めた。
「外の者、扉を開けよ。私だ、フェリックス・ユスポフの命令だ!」
誰も居ないのか?
情報漏れを防ぐ為に、衛兵を遠ざけたのは間違いだった。空し取っ手を握る彼の心に、後悔の念が過ぎる。だが後悔していられたのは束の間だった。
グレゴリーが背後に詰め寄り、猫を持ち上げる様に襟首を掴み上げたのだ。公爵の悲鳴は喉元で詰まり、押し殺したか細い呼吸と、少量の唾となって口から溢れた。
「待たせたな、荒縄と銀貨30枚は省略じゃ」
ユスポフ公が不自由な首を回すと、グレゴリーの顔が間近に迫って見えた。痘痕だらけの不潔な顔に、瞳孔の窄まった不気味な視線。必死に空気を求める彼の鼻腔に、グレゴリーの不快な体臭が飛び込んできた。
これまでか? ユスポフ公の瞳が絶望に曇った。彼は君側の奸を取り除き、英雄と成る事を夢想していたのだ。
帝国の貴族男子は、軍務か宮廷に付くのを慣例としている。彼は命の危険の無い宮廷勤務を選んでいたが、内心ではオリンピック選手にして近衛軍将校の、親友ドミトリーの名声を羨んでいた。
-
しかしその時扉が開いて、外の光が地下室に飛び込んできた。
「そこまでだ。テーブルを下ろせ、黒い悪魔め!」
ユスポフ公爵の同士、国会議員のウラジミール・プリュシケヴイッチが到着したのだ。
「恩知らずめが! そなたが議員に成れたのも、儂が陛下に国会の開催を言上したからだぞ」
腹を立てたグレゴリーは、銃を構えたプリュシケヴイッチに、ユスポフ公を放り投げた。
地下室に再び轟音が鳴り響き、グレゴリーは踏鞴を踏んだ。プリュシケヴイッチは吹き飛ばされながらも発砲し、その内一発が運良く命中したのである。
屋敷から逃げなくてはならない。体の前後に被弾して、流石の彼も弱気に成った。かつて短剣で刺されながらも、刺した相手を即座に呪殺してのけた彼だが、今日はどうにも体調が悪い。毒を盛られたせいだろうか?
ユスポフ公爵が燭台に取りすがって立ち、配下の衛兵を呼ぶ声び寄せる。
「ラスプーチンを殺し帝国を救え!」
グレゴリーは臼に跨る己の姿を想像〈イネージ〉した。両手にそれぞれ杵と箒を持ち、森を飛翔する姿を連想する。
ユスポフ公とプリュシケヴイッチ議員、そして意識を取り戻したラゾヴェルト博士ら3人は、公爵邸の地下室に、暗いタイガの森林の光景が重なるのを見ておののいた。彼等は不思議と、それがロシア民謡の魔女「バーバ・ヤーガ」が住むという、ザグの森だと確信していた。
黒い森の木陰とグレゴリーの僧服が解け合い、その遙か向こうに異形の館が陰を見せる。人骨の柵に囲まれて、一本の巨大な鶏の脚に支えられた小屋が。窓に覗く人影は……
突如として地下室に突風が吹き荒れ、グレゴリーは姿を消していた。暗殺者達は呆然として、声も無く立ちつくしている。衛兵達が到着したが、今の出来事を説明する気に成れなかった。
-
あくまでも個人的な意見
フリガナでカタカナ連発はちょっと厨臭く感じる
ついでに、少し読みづらいかも
-
キャラの発言について相談です。
多少世間ズレしたキャラですが、以下の文章で発言に違和感を感じたら教えて下さい。
ついでに文章について意見をいただけたら幸いです。
「合理主義は優香にはわからないかもね。空手なんて非合理的なものをやってる時点で」
「空手まで馬鹿にしないでよ。少ない手数でいかにして相手を倒すか。十分合理的……」
「礼は無し。いや、それ以前に試合会場も時間も決めずに不意打ちで相手を倒す。それが一番合理的でしょ?」
いかにも度の強そうなメガネをかけながら、優香の反論をぴしゃりと封じる。確かに正論ではある。それがすでにスポーツではなくなっているという問題点を除けば。
「お姉……私に特殊部隊にでも入れと?」
-
文章、主述関係がはっきりしていないのでかなり読みにくい
-
会話には違和感を覚えないけど、字の文の補填がちょっと気になる。
視点と主語の関係がはっきりすればわかりやすくなるかも。
-
>いかにも度の強そうなメガネをかけながら、
↑これが意味不明なんだが。どこかに容姿に関する描写を入れたくて無理やり
挿入したのかな?
-
特に違和感無い。
ついでに、合法・非合法でのやり返しも入れてみたら?
スポーツなら、合法的に殴り合えて、「不幸な事故」がおこっても仕方ないが、
スポーツでない場合、それは犯罪でこれほど非合理極まりないものはない。
殴り合いを総合的に合理化したものが空手とかボクシング。
とか何とか言い返したり。
-
>>900-901
じゃあそこに気をつけて修正します
>>902
当初は「メガネをかけながら」だったけど、目が極度に悪いってことを強調するためにやりました
やめたほうがよかったかな…
-
>>904も自分です
>>903
場面は主人公と妹の会話シーンなんですが、
妹が主人公の好物にケチつける→合理性をとく→妹「わからん」
→主人公「空手とか、非合理的よね」→妹「合理的だし」→主人公に強引な理論に論破されて妹黙る
っていう流れです
あ、でも妹の強気さを強調するには再反論させたほうがいいかな…
-
>>904
分厚い度の強そうな〜〜
牛乳瓶の瓶底みたいな眼鏡を〜〜
とかの方が通じる気がする。
あと「礼はなし」より「まず挨拶から入るなんて非合理的よ、」のが良いかもしれん。
なんだかお前さんの文は一言足りなく感じる。
-
>>906
だったら多少しつこいくらいの描写のほうがいいっすかね?
練り直ししてみます
-
>>899
いや、そうじゃなくて描写を挿入する場所がおかしい。
眼鏡かけていることにその時点まで気づかなかったのか?
-
>>908
いや、言葉のまま。どこからか取り出した眼鏡をかけたんじゃないのか?
流石に「かけている」くらいのボキャブラリーはあるだろうし。
と適当ぶっこいてみる
-
>>908
いや、ここで初めてメガネをかけます
……もう少し描写力を向上させないと
-
お? ほんとにその時点でかけたのか。じゃあ眼鏡を取り出す描写を入れた方がいいよ。
-
>>911
・メガネを取り出す描写を加える
・メガネに関する描写が変
・発言はもう少しわかりやすく
・主語と述語をもう少しわかりやすく
こんな感じかな。後は自分アレンジすればいいか
-
勝手にリライトしてみる。
「優香には『合理主義』はわからないかもね。空手なんて非合理的なものやってるし」
「空手まで馬鹿にしないで。十分合理的だよ。少ない手数でどうやって相手を倒すかって」
お姉は度の強そうな眼鏡を胸ポケットから取りだしてかけた。
「まず試合前の礼とか必要ないでしょう。それ以前に、試合会場も時間も決めずに不意打ちで
相手を倒す。それが一番合理的でしょ?」
優香の反論をぴしゃりと封じる。
確かに正論ではある。それがすでにスポーツではなくなっているという問題点を除けば。
「お姉……特殊部隊にでも入れと?」
-
>>894-897
目を覚ましたら、虫になってたわけじゃないのか。
まぁ、それはともかく、一番初めに思ったのは読みにくい。誤字はおいとくとして、文章の長さとリズムが一番の問題かね。
>この時代〈トキ〉この帝国〈バショ〉の中心に居たのは、延び放題の髪と総髭を生やした、肩幅の広い痩せた中背の男で、不潔な体に地味な黒い僧服を纏った姿からは”奇跡の人”と呼ばれた偉大な霊能力も、一国を左右する権力も想像出来ない。
例えばこの文章だと、二つの文章に簡単に分けられる。けど、分けてないから一息に読まなくてはいけなくなって、読みづらさを感じさせている。他に、
>それ故にそれを知る
であるとか、
>ユスポフ公が仰け反って短く悲鳴を上げた。公爵も驚いた
であるとか、ところどころに読者を混乱させる作用を持つ言葉の使い方が見られる。
また、風景や気候、心理等などの描写がない為、ストーリーを「解読」しなければならなくなっている。
もう少し、読者の目を意識して、書いてみるべきではないだろうか。
-
なんで眼鏡を掛けるのか分からない、というとあれだろうか?
視力が悪いなら普段から掛けてるはず。
-
>>913
一瞬、なぜに一人称? とか思った。
ここでは主人公の名前が出てないから当たり前か……
妹の口調はそっちのほうがらしいような気もしてきた
基本設定は「強気なスポーツ少女」だからなあ…
-
「ありがとうございます」も言えない人間に、みんな優しいな。
お礼なんて、非合理的か?
-
>>915
晒してない部分で描写しているんですが、これ朝食シーンです
-
>>918
お前さん眼鏡かけてる?
眼鏡の世話になってる人間が起きてまずすることは眼鏡を掛けることなんだ。
特に、視力が弱ければ弱いほど。
-
>>917
すいません。落ちる前に言うつもりだったんですが……
-
>>919
そうなのか?
俺も目が悪くてメガネかけてるが、左目と右目の視力が一緒じゃないのと、
左目がまさにビンゾコなんで、授業中であるとか以外メガネかけないが。
-
>>919
免許は要眼鏡等ですけど、私生活には支障が無い程度の視力です
根本から変えて、あんまり視力悪くないor最初からかけてる設定にしたほうがいいかなあ
-
>>899
一人称じゃないぞ。地の文に一人称出てないだろ。お姉の名前がわからんから
お姉って書いただけだ。つーか主人公(妹)って優香だろ?
>>917
べつだん口調悪くないから気にならない。お礼が言って欲しくてやってるわけじゃないし。
-
オネエって名前にしちゃえよ。
苗字は地主で
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