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他人が書いた小説の一部を批評するスレ

1イラストで騙す予定の名無しさん:2004/02/20(金) 16:17
 書いてみたはいいけど、この表現どうなの?会話シーンに自信ないんだけど、ちょっと見てもらいたい・・・。
 そんな悩みを抱えるあなたは、このスレに、書いた作品の一部を載せてみましょう。
 ついでに、執筆上の悩みもガンガンぶちまけましょう。
 
 投稿する際には、あまりに長いのは避けてください。また、このスレはオリジナル限定とします。
 その他は、ライトノベルであれば、ジャンルその他は問いません。

682666:2005/01/18(火) 20:00
最後に、イクが水から出られない理由、満月の夜に秋を誘った理由ですが、
↓こんなんです。先の場面から大分あと、秋とイクが夜の町でしばらく遊んで、イクが秋にキスをしたあとのシーンです。


「さ、そろそろ行こうか、秋さん!!」
「行くって、どこへなんだよ?」
「えー、だってさー・・・」
イクは僕の右手を、小さな両手で包み込むように握ってから、いたずらっぽく笑って言った。

「こんな水の底にいつまでもじっとしてたって、どうしようもないでしょう?」

そしてイクは僕の手を引きながら、ふわり、と、夜空に浮かび上がっていった。


僕の体は、夜空に浮いている。その僕の右手を、イクがやさしく握っている。下を見下ろせば、山裾に広がる家々の光が・・・僕達の町が、足元に見える。イクの顔を見ると、やさしく笑って僕を見つめている。もう虫の声は聞こえない。
「あ・・・泣いてる」
イクが、下を見下ろして言った。
「え、誰が?」
「ふふふ、ないしょ」
イクは舌を出した。もう山すらも小さくなっている。僕達は、一体どこまで昇っていくのだろう?
イクは僕の手を握っていた両手のうち右手を離した。僕はイクとは細い一本の腕だけで繋がれることになり、少し不安になった。イクはそんな僕の心を読み取ったのか、
「大丈夫だよ、私に任せておいて」
と得意げに言った。
もう空気もだいぶ薄くなってきているはずだと思うのだが、少しも寒さは感じなかった。僕とイクの体はどこまでも昇っていき、止まりそうにもない。このまま、宇宙にでも行ってしまうのだろうか?そしたら、息が出来なくなるんじゃないのか?でも、昇っている途中、呼吸はまったく普通にすることが出来た。これはひょっとして、イクにもらったキスの効果だろうか。
「なあイク、これから、どこにいくんだ?」
ようやく、僕はイクに話しかけることが出来た。
「いいところだよ。きっと秋さんも気に入ってくれるよ」
イクは鳥のように両手を広げて、星空の中を天使のように舞っていた。その様子は幻想的でやもすれば儚げであったものの、一緒に夜道を歩いていた時のような頼りなさは微塵も感じなかった。こんな信じられないような体験をしながらも、僕は、イクが隣にいてくれたおかげであまり不安は感じなかった。
イクは、川の中よりもずっとかわいかった。


僕とイクは月にやってきた。
僕達は地球の大気圏を抜けて宇宙空間にまで到達し、そして僕達の頭上でどんどん大きくなっていったクレーターだらけの灰色の球体、月に着陸した。
と言っても上手く文字通りに着陸できたのはイクだけで、僕の方はというと生まれて初めて体を襲った慣れない感触に戸惑い、しりもちをついてしまった。
「あーあー、だめだなー秋さんは」
イクは僕を指差して、呆れたように笑った。そのイクは、月の地面に、しっかりと両足で支えなしで立っていた。

683イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/18(火) 23:57
>>682
「最後」が続きますね(笑)。

イクは月のウサギだったということなんでしょうか。
これ、萌王じゃなくて普通の短編に仕上げた方かと思いました。
せっかく綺麗な話なのに。

空を飛んでから月に着陸するところは、もう少し書いてほしかったです。
あと、「かわいかった」って書いてしまうと、想像の余地がなくなってしまうのではないですかね。

684666:2005/01/20(木) 23:23
>>683
色々とご指摘ありがとうございます。
確かに今考えてみると、枚数の少ない萌王より短編向きに書いたほうがよかったかもしれません。
そもそも自分は萌えを十分理解していなかったようですし。

皆さんに頂いたご指摘を顧みて、もっと読者の側に立った描写を意識して次回の萌王に臨みたいと思います。

685119です:2005/01/22(土) 11:13
冬の朝のさわやかさを表現したくなりました。伝わるでしょうか。

 「じゃあ、行ってくるよ」
 望は自転車の荷台に、豆腐をつめたブリキ缶をのせると、サドルに腰かけ、
ペダルを踏み、朝の冷たい空気の中へと飛び出していった。
 いつも手入れのいきとどいている自転車は、毎朝主人を乗せての仕事がうれ
しくてたまらないようで、風をうけて回る車輪が、朝日にキラキラと輝き、道
路に影絵のような軌跡を残す。
 一気に坂道を滑り下りて、ガードレールにぶつかるギリギリのところでカー
ブを曲がると、そこに小さな竜巻が起こり、すれちがう人は自転車の少年を、
つむじ風か何かのように錯覚するのだ。この素晴らしいスピードは豆腐売りに
しか出せないものである。牛乳配達とも新聞配達とも違う。朝飯の用意をはじ
めた、まな板で葱を刻む音と、味噌の香りのする下町へやって来る、白く四角
い幸福の販売人。
 望は合図に自転車のベルを鳴らし、腰に紐で結びつけたラッパを吹き鳴らす。
 「豆腐だよーっ!」
 すると、あちこちの家々の戸が開いて、顔なじみの奥さんたちが顔を出し、
鍋を片手に、ぞろぞろと望のまわりに集まってくる。
 「おはよう、お豆腐屋さん。今日はいいとこ持ってきてくれた?」
 「うん」
 と、望はそっけなく答えて、おかみさんたちが差し出す鍋に、ブリキ缶から
豆腐を手づかみで取り出し、ひょいひょい放り込むように入れていく。素人目
にはずいぶん乱暴に扱っているように見えるが、そうでない証拠に、鍋の中に
投げ入れられた豆腐は少しも崩れていない。
 「ひとつ二百円」
 おかみさんたちも慣れたもので、自転車のカゴにすえつけた木箱に百円玉を
ふたつ落としていく。二十個あった豆腐は全部売れた。一度だって売れ残った
ことはない。
 木箱の金はちょうど四千円あるのを確かめてから、望は自転車にまたがり、
その場を後にしようとすると、客の一人に呼び止められた。
 「ちょっと! 待って望ちゃん」
 それは他のおくさん連中よりふたまわりは若い、髪の長い女性だった。
 酒屋の長女の保美さんである。望のことは小学校にあがる前から知っている。

686イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/23(日) 01:02
>>685
情報は伝わってくるのですが、情報止まりで、映像になりませんでした。
伝わっているかどうかということについて回答するなら、伝わりませんでしたということですね。
書いてある文章が、説明であって、描写になっていないからだと思います。
イメージを殺さないような書き方にしてみてはどうでしょうか(具体的にどうだとはいえませんが)。

687イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/24(月) 00:01
>>685
冬の朝のさわやかさは感じませんね。
自転車と豆腐屋の描写ばかりだから。
主人公の近辺や忙しさは見えるが、遠景や気温に伴う描写にも気を配らないと。

688イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/24(月) 08:27
>>685

豆腐を載せたまま、そんなに速く走ったら
ウリモノの豆腐がぐちゃぐちゃになるよと思う。

689119です:2005/01/24(月) 09:37
ご指導ありがとうございます。

>686
よく言われることですが、やはり説明を脱していませんか…。
どうすれば描写になるのかよくわからないのです。
自分の場合、小説作法の本なんか読んで、
これが「描写」だというような例文とかを読んでも、
頭の中で映像にならないことがあります。
脳に問題でもあるのでしょうか。
>687
たしかに自転車と豆腐についてしか書いてませんね。
冬の冷気の中を突っ切るイメージを描きたかったのですが、
ポイントをはずしていました。
>688
これも言われて初めてそうだなと思いました。
あれだけ速く走ったのに豆腐は崩れていない、
とでも付け加えたほうがよかったでしょうか。

690イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/25(火) 00:17
とりあえずわかることだけ書きますが、たとえば
>朝の冷たい空気の中へと
これ、説明です。
これ、望が冷たいと感じてる文章じゃないですよね。
作者が、今空気は冷たいんですよって書いてるだけですよね。
「冷たい」では感覚になりません。
「冷たい」を感じている主人公を書く、「冷たい」を読者に感じさせる、それが描写だと思います。
あと、冬の冷気の中を突っ切るイメージを書きたかったということですが、
そのことに言及しているのはここしかないように見受けられます。
これではイメージは伝わらないのでは?

691イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/25(火) 16:22
地球とは別の惑星。
その星に二つある大陸
といっても、実際のところ大陸は一つと言ってもいい。
片方の大陸は、もう片方の大きな大陸の北東に、ぷかりと浮かんだ小さな陸地。
赤道から離れているため、四角い地図だと大きく見えるが、楕円を使った面積が正しく表される地図だと、大陸というより島といった印象だ。
自然、名称などというものはその印象で変わってしまうもので、世間では大きな大陸は大大陸、小さな大陸は小大陸と言われている。
だが、七年前の戦争で、その小大陸を修めているステインが、大大陸の連合軍を倒してしまった。
きっかけは海洋中のメタンハイドレートの埋蔵地の土地所有権についての諍いだった。
国家間で取り決められた立ち入り禁止海域に、たまたま入ってしまった連合加盟国の調査船を、たまたま勝手に示威行動をしに入ったステインの巡視船が、沈めてしまったという。
よくある戦争の理由づけだ。
だがそれが通じるのは戦勝国の場合のみであって、戦敗国がそんな言い訳をして通る道理はない。

戦勝の理由としては、
ステイン独自の技術によって量産された、歩兵用の気化爆弾
安価で、かつ高確率で当たるミサイル迎撃システムを、すでに実用段階にしていた事
初めて船舶の砲に大口径のレールガンを仕込んで、海戦で常勝を誇った事などがある
だが相手は大大陸の半分以上を占める連合国家、それらの技術をいくら上手く活用したと言っても、限界はある。
裏側で戦勝に大いに貢献したという、ハッキング。
それは気まぐれな一人の女性によってもたらされたと言われる。
それと並び、暗殺屋。
連合軍幹部が死んだ施設の幾つかで、監視カメラが光学迷彩特有の歪みを捉えていた。

692イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/25(火) 18:26
>>691
プロットのようには見えんので本編冒頭か。
似たようなの見ても思うんだが、初っ端から世界観説明するのやめとけ。
ラノベ用なら尚更だ…ってかコレ何用なんだ?

693イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/26(水) 20:10:45
>>689
冬の朝の風の中を自転車でつっぱしりたければ、

★ 自転車通学の学生
★ これ以上に遅刻すると必要な単位がピンチかも

↑のような設定にしとけ。

694イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/30(日) 20:45:51
何となく。(状況描写と心理描写が混ざって解りにくいよと言われる)漏れならこんな風に書くかも。
---
 「じゃあ、行ってくるよ」
 望は自転車の荷台に豆腐を詰めたブリキ缶を載せ、サドルについた霜を手で払った。それに跨り、――缶の中の豆腐が崩れないように――ゆっくりと、持ち上げられた後輪のスタンドから下ろす。軍手に着いた霜の膜を払い落とし、機関車の様に湯気をはき出しながら、ゆっくりと漕ぎ始めた。
 キィ、キィ、と一定間隔で耳に届く自転車の声。まるで歓喜の声を上げているかの様だ、というのは整備している者の惚気だろうか。冬特有のキンと響く空気の中、道路にはダイアモンドダストの様な光の瞬きが現れては消え、自転車は誰もいない道を加速する。
---
元々持ってるいいテンポを崩さないように気を配ってみたら崩れるという言い見本だけど。('A`)
状況描写が少々ウザいのは自覚してるんだけど、余り削ると自分でもよくわからなくなるるるるるるるるるるるるるる



…偉そうなこと言いつつ多分自分のがヘタレだ、ご安心めされよ!

695119です:2005/01/30(日) 22:59:35
>690
「冷たい」と感じる主人公を書くことが描写ですか、なるほど…。
>693
主人公は中学生で、朝にひと仕事終えた後、学校に向かうんですが、
最初の段階で年齢とかにも触れておくべきですかね。
でも、例として示してくれてもののほうがわかりやすいかも。
>694
いえ、こういう視点もあるなあと、新たに気づかせられました。
むしろ、そっちのほうが「冷たさ」に関する具体的な描写があります。

問題はこの後、どう話を膨らませていくかだなあ。
皆様、ご教授ありがとうございます。

696イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/31(月) 01:56:51
今書いてる長編の冒頭を曝します。
他人に読んでもらったこと無いんでかなり独り善がりな文になったかも。

 月輪は天を抜いて青白く、今宵は夜陰の勢威も人心を覆うに至らぬと見える。
時は慶応二年春未き、春草挙って萌す夜半の山麓に、一人童子の姿が在った。
親より受けた名は称(たたえ)。物心付いて直ぐ母を亡くし、今は父と二人、この地に樹果を狩って暮す。
既に亥の下刻である。幼子は皆夢を結ぶ刻限とて、称も一度空寝をしてから抜け出してきた。
故在っての奇行ではない。単なる子供の酔狂だ。当て所無くさすらうと、遂には一本の桜の前に辿り着いた。
今だ五分咲きのままである。
「桜がお好きなのですか」
 突然の声だった。顧みた背に女が一人。年の頃二十歳ばかりで、風貌は子供の目にも美しい。
見知った顔である。
 女は、名を薄緋(うすあけ)と言う。称の父に仕える家来――のようなものらしい。委細は知らぬ。
父が教えないからだ。
不思議な娘だった。
称はこの女を、今を引いて二度しか目にした事が無い。
一度は今日日と同じく、夜中に床を抜け出したときの事だった。
薄緋が言うに、心配した父に命じられて称を連れ戻しに来たのだとか。名はその時聞いた。
二度目は、母を埋葬した時の事である。初め薄緋は手伝いに来たのだと思った。
墓穴の掘削というのはそれなりの重作業であるから。
あの細腕に鍬は重かろうと称は案じたのだが、杞憂だった。薄緋は穴など掘らなかった。
鍬を振る父をじっと見詰める称の傍らで、彼女も同じ光景をただ眺めているだけだった。
広がる墓穴、寡黙な父、埋もれてゆく亡骸。
称の肩には白い手がそっと置かれていた。薄緋が何の為に居たのか、称には未だに判らない――。

697イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/31(月) 01:58:23
先程から一尺の間を後ろに控え、女は身動ぎ一つしない。
場に満ちた奇妙な沈黙に耐え兼ねて、称はとうとう口を開いた。
「別に……桜は、好きじゃない」
 そのぎこちない口調が可笑しかったのか、薄緋は小さく笑う。
「好きでもない物を、わざわざ夜中に眺めに来る事もありますまいに」
「花見に来たんじゃあないよ」
「では何をしにいらしたので」
 理由など無かったものが、ふと今になって思いついた。
「母様(かかさま)は桜が好きだったから、枝の一本でもお供えしようかと思って……薄緋?」
 薄緋が哀しげな微笑を浮かべた。確か母様を埋めた時もこんな顔をしていたな、と称は思う。
母の死は薄緋にとって悲しい事なのだろうか。
母が生きていた日の事を、言い換えるなら死につつあった日々の事を、称は今でも覚えている。
褥の上に横たわった母は、一昼夜に十年を老いていった。
髪は抜け落ち、骨は秀で、日毎醜くなる母が遂に目覚めなくなった時、父は悲しむよりまず安堵していた。
死因は判らない。
しかし、母は老いで、老いがもたらす衰弱ではなく老いそのもので死んだのだと、称はそう考えている。
その日の内に母は埋められた。父の作業を眺めていたら、気付かぬ内に薄緋が居た。
ふと振り返った一瞬に目が合った。その時見たのがこの表情だ。何が哀しいのか称には判らなかった。
今もそうだ。
薄緋の顔にはまたいつもの、柔らかな笑みが戻りつつあった。
「枝に手は届きますか? 何なら私が」
「いいよ。そこまでしなくても」
「私の手間などは気になさらないで下さい」
「満開になってないから止めたんだ」
「満開ではなくとも喜ばれると思いますよ」
 薄緋はそう言うと、称の傍らを離れて桜の幹に歩み寄った。手を伸ばす。
掴まれた枝はよく撓って、薄緋の頭まで垂れ下がった。

698イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/31(月) 01:59:14
「咲き切らない桜というのも美しいものです。でも――やはり満開の方が人には喜ばれるのでしょうね」
 薄緋は、何を拘っているのだろう。自分からしてみれば今し方の思い付きに過ぎぬものを。
称はそう思わずにいられない。桜に何か思い入れでもあるのだろうか。
「薄緋も桜が好きなの?」
 答えは返らなかった。
 静寂が二人を囲んだ。
 天空に満ち満ちて絶える事なく思われた月の光も、いつしか羊雲に隔てられて寸刻途絶えた。
夜の帳が何もかもを抱いた。
ただ、在るか無いかの雲間から漏れる僅かな輝線が、射干玉の闇の中、幽かに白いものを照らし出した。
桜の花である。
「称様。この桜」
薄緋が口を開いた。
「私が咲かせて見せましょうか」
「何だって」
 何を言っているのだ、この人は。
膨れ上がった暗がりの所為だろうか。
不意に、称には目の前の女が自分の見知らぬ、全くの他人のように思えてきた。
闇の中、輪郭すらつかめないその陰が、己が隣に添うていた薄緋と同一だとは思えない。
寒気が称の身を握り締めた。
「称様は先程、この花が好きか、とお尋ねになりましたね」
風の音さえ聞こえない。
薄緋の声だけが夜気を震わせる。
聞き覚えは確かにある声。
「お答えします」
 青月を厳しく包んだ雲も、やがて立ち退き始めた。
闇は過ぎ去って行った。再び現われた光景は、しかし安堵をもたらす事無く、ただ驚愕のみを称に与えた。

「私は桜が、嫌いです」

 月光の中浮び上がる花弁の群れ。
 五分咲きだった桜が、満開になっている。
それどころか、その美を存分に誇示した花弁たちは次の瞬間早々と、先を争うように散ってゆくではないか。
春風薫る山の裾野、称の視線の先で、薄緋は一人、満開の桜の傍に佇んでいる。その真上――
十六夜の月を抱く春宵の空高く、風に舞う薄紅色の斑雪は、人肌に触れて溶けもしない。

699696:2005/01/31(月) 02:04:21
以上です。批評して欲しいのは空気が書けてるか、
あと主語を結構省いているので意味が伝わっているかどうか。

700イラストで騙す予定の名無しさん:2005/01/31(月) 06:08:03
>>696
> 女は、名を薄緋(うすあけ)と言う。称の父に仕える家来――のようなものらしい。委細は知らぬ。
から>>697-698の「私は桜が、嫌いです」までが別作品みたいな雰囲気になってる気がする。
そこをうまくできたら、独特の雰囲気が出ていいと思う。


んで意味は伝わってるから大丈夫。

批評初ワナビ歴半年の戯言でした。

701696:2005/01/31(月) 23:28:52
レスどうもです。
>別作品みたいな雰囲気
自分では全然気付いてなかった……これは前半と中盤以降でやや文体が異なるせい、でしょうか?
自分としては中島敦みたいな文体で京極夏彦みたいな雰囲気を出そう、
とか考えてたのですが、結果、文にまとまりが無くなったのかも。

やはり他者の視点というのは重要ですね。皆様どうか引き続きご指南下さいまし。

702イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/01(火) 00:12:10
これラノベですか?
時代物を間違ってここにあげられたのかと思ってしまいました。

意味がとれないところはないようですが、登場人物の顔が浮かびませんでした。
それから、私は読めましたけど、ラノベ読者はルビないとよめないでしょうね。
漢字が多いと、ルビがあっても敬遠されがちですよ。
これ、手で書いてからワープロに起こしたのでしょうか。
ワープロの変換機能に頼って書いてませんか?

あと、結構段落替えのあとの一字あけがされてない場所が多いです。
それは気をつけた方がいいかと。

703702:2005/02/01(火) 00:15:49
あー、アンカー付け忘れた…。
>>702>>696宛です。

704696:2005/02/02(水) 23:04:29
702さん。批評どうもです。

>これラノベですか?
ラノベです。そのわりには地味な冒頭でしょうか。
ただ、どうすれば『派手』になるのかが判らないのです。
派手ならいいと言うものでもないのでしょうが。

>登場人物の顔が浮かびませんでした
書いてる時に勝手に脳内補完してました。
指摘されなかったら全然気付いてなかったと思います。

>漢字
確かに変換機能に頼ってます。
設定が明治初期の伝奇物なので雰囲気を出そうと思ったのですが、
止めた方がいいですかね? 他の批評者さんの意見が聞きたいところです。

>一字空け
書く時はちゃんとしてるのですが、投稿する際に長すぎる文を切ったりしてるうち、
めちゃくちゃになってしまいました。気を付けます。

705イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/03(木) 00:29:12
>>704
私見ですが。
派手である必要はないと思いますよ。独特の雰囲気を出すのはいいことだし。
ただ、山場がないというか。つらーっと話が進んで、「桜が嫌いです」。
…で?という感じで終わってしまうので、その当たりを気にしてみてはどうかと思いました。
それよりも、文体があまりに硬いので、これ本当にラノベか?と思った次第です。

漢字について。
手軽に、気安く読んで楽しめる、それがライトノベルの骨子だと思うのです。
陰陽ノ京なんかもあるし、一概にはいえないのですが、それでも、
「こぞって」なんていうのはひらがなでいいと思いますし、
ぬばたまって、そもそもあまり見ない言葉ですよね。
わからない言葉、読めない言葉が出てきたら、普通は読み飛ばしちゃうと思いますよ。

706イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/03(木) 00:47:21
>>>これラノベですか?
>>ラノベです。
いやいやいや、こんな文章と内容読む子供いないって。ラノベじゃないよ。
とりあえず話合いばかりで動きが無いのはラノベとしては退屈する。
主人公がどんな人かよく分からないので読者としては感情移入出来ない。
入り易さを意識しないと駄目でしょう。

707イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/03(木) 22:39:16
いやでもある程度本好きな層には受け入れられる気がするな。
ていうか俺が読みたい。

708イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/03(木) 23:57:22
ラノベ読者の中で「ある程度本好きな層」が占める割合って、そんなに高くないと思うのね。
それを、商売でやってる出版社が認めるか?っていうと、やっぱり認めづらいじゃん。
実際ああいう文章のラノベって、希少じゃね?

709イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/04(金) 00:56:06
所詮、資本主義国では利益の出ない出版物は認められんさ。
希少ってだけでは売れないだろうしな

710696:2005/02/04(金) 21:10:35
昨日は来れませんでしたが、皆さんレスありがとうございます。
>>705
>…で?という感じ
作者の頭の中では後に続くストーリーがフラッシュバックして
素晴らしい余韻を残す冒頭!みたいな感じになってるのですが
やはり読者には全然伝わってないのでしょうね。
ここで批評してもらうことで、自分がいかに読者を置き去りに
していたか思い知らされます。
漢字についてもルビがあるからいいか、とか考えてましたし。

>>706
>主人公がどんな人かよく分からない
最近ラノベをあまり読んでなかったので感覚を取戻そうかと
二三冊読んでみて愕然としました。
主人公に限らず大抵のキャラが、出てきた瞬間読者がその人物像を
つかめるように出来ているではありませんか。
……つーかそんな基本的なことにも気付いてなかったのかよ、私は……
ラノベ書き失格ですな

>>707
そう言ってもらえる人が一人でもいるだけで励みになります。

>>708
>>709
私としては、ラノベを卒業しそうなんだけど、やっぱりまだ
ラノベ的要素のあるものを読みたい、
という思いのある読者層を狙っていて、
C・NOVELSファンタジアあたりに送ろうかと思っていました。
今の段階では独り善がりの部分が強すぎて読者層を考える以前の問題でしょうが。
あと、こういう文体の作品があるなら参考にしたいのでぜひ教えて欲しいです。

711イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/07(月) 01:29:57
書いているSFの冒頭1場面を晒してみます。
後を読みたくなる文章かどうか、食いつきが心配ですので。
送る賞はまだ決めていません。

――――――――――――――――――――――――――――
 意思の介在しない現象ほど、人の定めた壁を無視できるものはない。道理が通用するのは人に対してのみで、物理現象は国境を渡る鳥のように、貴賎も上下も善悪も貫いてしまうのだ。生じた結果の差は、運で片付けられてしまう。
 そしていまも、人の運を試す現象が起こる。
 少女の世界が赤く染まった。
(え?)
 オープンカーの正面で生じた閃光は、赤から青そして白へと移ろった。太陽を直視するに等しかったから、高貴な少女の目は瞬時にやられていた。浮遊車の後部座席で目をつむり、彼女は混乱した。
(なに?)
 少女はレフォーレ星系第二惑星の入植一〇周年を祝う式典に、主賓の一翼として招かれていたはずだった。新型の惑星緑化技術によって開拓された新天地は、最大の街といえどもビルと呼べるレベルのものは一棟もなく、建物の大半は平屋の一軒家だ。道路は式典に合わせて清掃はされていたものの、周囲の畑から飛んでくる土ぼこりをすべて除くのは無理で、うすく汚れていた。郊外には有機栽培の畑が地平まで広がり、自動機械が作業に当たっている。暦は初夏であったが、第二惑星の首都があるその地域はちょうど秋で、実りの時季だった。都会に疲れた人が憧れる田舎の風景だ。
 式典の最後にあたるパレードは、快晴の陽気を受け、のんびりと進んでいた。余裕を持ったまばらな車列は全長五〇〇メートルほどで、前列に少女の長兄が、真ん中に主賓の母が、後列に少女がいた。

712711:2005/02/07(月) 01:30:44
 道端では入植者たちが、パレードを見物していた。シアム王家の紋章である風吹く丘が、手旗に揺れる。星の人口はわずか一〇万人で、少女の侍女長サリィの情報によると、うち四万人ほどが見に来てくれていた。パレードの要所を追う報道陣が目立つほど、少女にとって観衆は少なかった。より大規模なものをいくらでも経験し、場慣れしていたからだ。そのような呑気な雰囲気の中でいきなり発生した、眩しい火の玉だった。
 見えなくなる寸前の青い輝きが、少女を不安にさせていた。それは彼女の学んだ軍事知識の断片から、遺伝子を集中的に破壊するある兵器を浮かばせたからだ。
「ミーアさま!」
 若い女性の声がして、閃光から少女を守るように抱いてきた。隣の席にいた侍女長のサリィだった。
 サリィが動いた直後には、記念パレードを先導する行進曲の演奏も、旗振る民衆の歓声も、自然肥料の臭いを運ぶ風の音も、すべてが消えた。耳から脳に届いた爆音はほんの一瞬だけである。だがその一瞬はあまりにも巨大で、ミーアの経験したことがない、気が狂いそうな暴力的音響と、痺れだった。
 光ってから音が届くまで、二秒もなかった。さらに爆風が届くまでも、たいした差はなかった。視覚と聴覚を奪われたミーアを支配したのは、衝撃と熱波であった。全身を脳天からつま先まで抜ける震えと熱さに、そして痛みである。どれほどの体感ゲームも遠く及ばない、慈悲の欠片も存在し得ないリアルだった。守っていたはずの、サリィの感触は熱風と共に消えていた。

713711:2005/02/07(月) 01:31:05
 ミーアにとってこれは悪夢でしかなかった。貴い身分ゆえこれまで特別扱いを受け、躾でも叩かれたことさえなかった。だが、現象には通用しない。物理は誰にも平等であり、無差別で絶対なのだ。暴力は激しく、真顔で耐えられるものではなかった。痛さでミーアは悲鳴をあげていた。しかし自身の声も耳に届かない。鼓膜が破れているからだ。
 悪夢はさらに地獄へ進化した。激痛がミーアを貫いたのである。全身にまんべんなく痛打の津波が寄せ、脳髄にまで達して思考が停止した。衝撃で浮遊車から弾かれた、身長一三ニセンチしかない軽い体が、ニ〇メートル以上飛ばされた末に硬い舗装路に打ち据えられたのだ。肺の空気の大半が吐き出されるほどであった。涙がたちまち溢れるのを感じた。地に落ちた後も、あらたな痛みの元がミーアを囲んでいた。その燃える空気を、うかつにも吸ってしまった。縮んだ肺が空気を求め、本能で呼吸してしまったからだ。喉と肺に熱波を呼び込んだことで、死ぬような火傷の痛みが内側から襲ってきた。
 ミーアの幼い意思はこの仕打ちに耐え切れなくて、気を失った。ようやく地獄から開放されたのである――

714711:2005/02/07(月) 01:35:33
・炸裂したのは中性子爆弾です(敵対国によるテロ)。
・ミーア(姫さん)は助かりますが、母親と王太子が死にます。
・ミーアは主人公です。

715イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/07(月) 21:14:12
>>714
冒頭2行目で読む気が失せたが頑張ってみた。


ネーミングでまた失せた('A`)
ところで、オープンカーってのは主人公が乗ってんだよな?
仮にも一翼ならそんな無防備な物に乗らないぞ。
後、中性子爆弾は遺伝子破壊を主に置いちゃいない。主人公微妙な軍事知識だな。
アレは生物殺傷のための水素爆弾だ。
んで全部読むとなんとなーく展開予想できてしまうな…いや、コレは伏線として取っておこう

716無名人:2005/02/07(月) 23:08:11
久しぶりのカキコになります。いつかのゾンビ映画オタクでございます。
ディズニーランド上空を通り過ぎるヘリ部隊を見上げるゾンビの群れから
先をUP致しますので、批評の方、よろしくお願いいたします。

参考スレ
>>244

 交差する二つの剣の上に日章旗と星条旗が描かれた濃緑色の猛禽たち。
 AH−64アパッチ攻撃ヘリ五機と、UH−60ブラックホークヘリ六機の
計十一機は、新木場を右に臨みながら、有明方面へ向かっていた。
 ブラックホークのドアは総て開け放たれ、機内には迷彩服を着込み、自衛隊
と米軍双方の武器を装備した兵士達でひしめいているのがはっきりと見えた。
 三〜四人を除いて、あと全員十代後半の少年・少女達で占められている。
 彼ら初年兵達は、同じグループ同士で固まって話をしたり、武器のチェック
を念入りに行ったりしていた。

 十八歳になったばかりの山本宏樹は、武器のチェックも仲間同士の話の環にも
加わらず、一人壁にもたれて機外を食い入るように見つめていた。
眼下に流れる荒廃した街、路上に次々と現れるおびただしい数のゾンビを凝視
する目には殺気が満ち、M−16ライフルを抱える手は力が入りすぎて震えて
いた。
「大丈夫か?」
 宏樹の真正面で同じ様に座って乾パンを食べていた三十代半ばの男、酒巻直哉
が轟音の中、大声で話し掛けてきた。
「え!? は、はいっ!!」
「怖いのか?」
「いいえ! そうじゃないんです。 ただ…」
 宏樹はそこまで言いかけると、苦痛に耐えるかのように顔をゆがめた。
 その様子に直哉も先を促さなかった。
「ただ…。やつらが憎いだけです」
 暫くして、宏樹はそれだけを吐き出すように言った。
「そうか…」
 直哉の呟きはヘリの轟音にかき消され、宏樹の耳には届かなかった。
「やつらへの復讐を望むなら、まずは生き延びる事を考えろ。俺たちの後ろに
ついて、やる事為す事を一つひとつ見て憶えていけ、いいな」
 そう言って直哉は、乾パンの缶を宏樹の方に差し出す。
「分かりました、有難うございます」
 宏樹は礼を言って手を出すと、直哉は乾パンを手のひら一杯に出したので、
落とすまいと慌てて両手で受け止めた。
二個ほどを口に入れて頬張っていると、軍曹の階級章を付けた五十前の白人
の男、宏樹の小隊長であるジェームズ・アルドリッチの低い声がヘリの轟音
を圧して響く。
「目標まであと十分だ!」
その声に、宏樹は慌てて残りの乾パンを服のポケットに押し込んだ。

717無名人:2005/02/07(月) 23:09:29
東京ビッグサイトの西隣に位置する港湾地区、有明四丁目。
錆び付いたコンテナや大型トラックが路肩を埋め尽くす目抜き通りに、
無数のゾンビが溢れていた。
路上をうろつくゾンビは場所柄を反映して、ヘルメットを被った作業員や
トラックの運転手だった者が殆どだった。
東京フェリーターミナルのビルの上から五機のアパッチが現れて、
一斉にロケット弾をゾンビが群がる目抜き通り目掛けて発射する。
ロケット弾は次々と路上で炸裂、炎が総てを呑み込み、爆風と破片がゾンビ
たちを薙ぎ倒していく。
ロケット弾から逃れたゾンビたち目掛けて、今度は機首に取り付けられた
機関砲が火を噴く。
雨あられと降り注ぐ機関砲弾に、頭が破裂して脳漿を撒き散らし、どてっ腹に
穴を開けられて臓物を路上にこぼしながら、次々とゾンビが倒れていく。
アパッチはターミナルビルから有明埠頭橋へかけて目抜き通りを掃射し、
再び反転して同じ攻撃を繰り返した。

アパッチが持てる弾薬総てを使い切った時、路上には燃え上がる車やトラック
の残骸と、焼け焦げ、ミンチにされた多数のゾンビで埋め尽くされていた。
未だ致命傷を受けずに動いているゾンビも見えるが、先程とは比べ物にならない
ほど減少しており、もはや脅威ではなかった。

今度はブラックホークが有明埠頭橋上空でホバーリングする。
都内からやってくるゾンビの群れを、そのうちの一機が備え付けの重機関銃で
釘付けにしていた。
「ロープを降ろせ!」
 軍曹の命令に、宏樹と直哉はナイロンロープの束を機外へ放り投げた。
「よーし、行け、行け!」
 号令と共に、直哉と火炎放射器を持った四十初頭の自衛隊員が、煙と巻き
上がる埃で霞む地上へ降下した。
彼らの様子は、機内からは分からなかったが、銃火と立ち昇る炎は見えた。
「よーし、小僧ども、お前達の番だ! 行け行け!」
 軍曹の声に、宏樹は真っ先にロープを掴み、地上へとその身を躍らせた。
 
 ブーツが地面に着くのを感じると同時に、宏樹はライフルを構えて走り出した。
 自分に課せられた任務を心の中で確認しながら走っていると、突然左足首を
何かに掴まれて、うつ伏せに倒れた。
「な・何だぁ!?」
 見ると、焼け焦げた下半身のないゾンビが、足に食いつこうとしていた。
「こ・このやろっ!!」
 宏樹は左足でゾンビを蹴りつけ、引き剥がそうとするが、相手は唸り声を
あげながら手を離さない。
 悪戦苦闘している宏樹のところへ、兵士が一人駆けつけて、ゾンビの横腹
を思いっきり蹴りつけた。
 横からの思わぬ一撃に体が一回転し、その拍子にゾンビは手を離す。
仰向けに転がったゾンビを兵士は足で押さえつけると、ライフルの台尻でゾンビの
頭を殴り始めた。
殴り続けるうちに頭の皮が剥がれ、頭蓋骨が露出する。台尻が骨を突き破って脳を
潰すと、ゾンビはようやく動きを止めた。
「宏樹、大丈夫か?」
 兵士がそう言って宏樹の方へ顔を向け、手を差し出す。
 同年代の、柔道部員のようながっしりした体格と、いかつい顔立ちの少年。
同じ部隊の親友、豊田隆であった。
「あ・ああ。隆、有難う」
 差し出した手を宏樹が掴むと、隆は一気に引っ張り上げて立ち上がらせた。

718無名人:2005/02/07(月) 23:10:16
「一、ニ、三!」
 号令と共に乗用車やワゴン車がひっくり返され、即席のバリケードが築かれる。
そのすぐ後ろでは、眼鏡をかけた小柄な少女が、楽しそうに路面に開けられた
穴の中へ爆薬をセットしている。
 その傍らへ爆薬を抱えて、隆と宏樹が駆け込んできた。
「源田、持ってきたぞ」
 源田由紀子と言う名前の少女は、宏樹が差し出した爆薬を受け取ってうなずく
「おれ、もうダメ…」
 隆は息も絶え絶えにへたり込んだ。
「豊田君、あと一つでセット完了だから頑張って」
 由紀子は微笑みながらそう言うと、電気コードを巻いたリールを持って軽快
に駆け出した。
「体は強い方じゃないのに、こういう時だけは元気だよな」
 隆はへたり込んだまま呟く。
「大丈夫か?」
 宏樹はそれに答えず、呼吸を整えながら言った。
「ああ、ちょっと休めば大丈夫だ」
 
「ねえ、誰かこっち手伝ってよ!」
 突然上から降ってきた声に宏樹と隆が見上げると、色白で日本人形のように
端正な顔立ちをした少女が、バリケードの上から二人の方を見詰めていた。
「俺はこっちを手伝うから、まだ休んでていいぞ」
 宏樹がそう言うと、隆は弾みをつけて立ち上がった。
「そういう訳にもいかないだろ、俺は源田を手伝うよ」
 隆が爆薬を拾い上げて由紀子のところへ駆け出すのを見送ると、宏樹は古賀
と呼ばれた少女のほうを振り向いた。
「で、俺は何をしたらいいんだ?」
 古賀美里は宏樹を手招きして、傍らの重機関銃を指す。
「コレ据え付けるのを手伝って」

 可動式の銃座に、二人掛りで重機を設置し、美里が固定するのを宏樹は銃
を支えて助ける。
 美里が作業をしている間、宏樹は外の世界に視線を向けた。
 外装がボロボロに剥げた東京ビッグサイト。
 焼け焦げ、地上に落下して横倒しになったゆりかもめの車両。
 腐食が進み、今に倒壊しそうなレジャーランドの観覧車。
 乗り捨てられた乗用車の列を縫い、こちらを目指してヨタヨタ歩いてくる
無数のゾンビたち。
 眼前の光景に、宏樹の目つきが自然に険しくなっていく。
 怖い表情で外を見詰める宏樹の肩を、美里は軽く揺さぶった。
 次の瞬間、宏樹は腰のホルスターから拳銃を引き抜き、美里の眉間に銃口
を突きつけた。
 ヒッと短い悲鳴をあげ、息を呑む美里。
 宏樹はその悲鳴で我に返り、慌てて銃を仕舞う。
「ご・ごめん…」 
 美里は固まったまま動かない、気まずい空気が二人の間に流れた。
「俺、他の所を手伝うから。休んでてくれ」
 宏樹はそう言って、逃げるようにバリケードから飛び降りて駆け出した。
「あっ、待って!」
 美里の声は、遠ざかる宏樹の耳には届かなかった。

719無名人:2005/02/07(月) 23:11:58
以上になります。
できるだけロメロ作品的な雰囲気を意識したつもりで書きました。

720イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/08(火) 00:43:03
>>711
SFということですから、普段から翻訳物をよく読まれるのでしょうか。
翻訳物によくある文体に見えました。
代名詞を主語にするとか、ものを主語にした受動態なんていうのは、日本語としてはまず見かけないものですよね。
一番最初からそう来られると、ちょっとつらいものが…。
あと、視点がぶれまくってます。
視点がぶれると読んでいて疲れますので、視点は統一していただけるといいかと。

>>716
ミリタリーはよくわからないので、用語は読み飛ばしました。
All You Need Is Killを少し前に読んだせいか、初陣にしては、ずいぶん落ち着いている印象を受けました。
戦場臭さがないっていうか、硝煙のにおいがしないっていうか…。
もうちょっと切迫した戦闘シーンだと、用語がわからなくても楽しめると思うのですが。
そこが残念でした。
書きたいこととか雰囲気は伝わってくるので、もうちょっと軍事用語がわからなくても楽しめるお話だといいなあ(希望)。

721711:2005/02/08(火) 01:00:45
>>715
サンクス。
やはり最初の数行は余分ですな。消す。
オープンカーなんたらと「未来技術による」中性子爆弾は
ここで説明されていない細かい事情が後発で出ます。
展開というかどんな物語(ずばり復讐)かは冒頭で予感させないと
ダメと言われてきたのですが、かえっていけないのかな……
冒頭の「被爆」は最後のどんでん返しにおける伏線となる予定です。


>>716-718
私の好みのせいかもしれませんが、
ゾンビの雰囲気を出したいのか、人間を書きたいのか、
両方とも狙って、印象に残る描写がないように思えます。
冒頭であれば、ひとつのことに集中してみるのが手かな、と。
つまり主要人物紹介に集中するか、あるいはどういう状況かの
描写と、主人公(+せいぜい1人)のみの紹介に努めるか。

722711:2005/02/08(火) 01:02:46
>>720 上
最近、ちょっとそっち系を読書しすぎてました。
日本語の勘を取り戻すべく勉強しなおしてきます。

723711:2005/02/12(土) 21:19:10
>>715
名前で読む気が〜〜が気になっていたのですが、
今日はじめて知りました。ガンダムデスティニーは
見たことないので名前は偶然です。ってツウヨウシネエナ。

724イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/15(火) 04:24:27
 今まで創作活動には縁がなかったんだげっちょ、思う所あって書き始めてみた話の冒頭です。
 批評は勿論、文法の誤り・勘違いとかも指摘してください。

===========================================================================

 バリ、という乾いた音が、深夜のコンビニに響いた。
 紙を裂いたような音と感触に、山崎直人(ヤマザキナオト)は慌てて手元の
雑誌を見やる。
 ページをめくる際に力が入りすぎたのか、グラビアページが真ん中から縦に
破れてしまっていた。大股開きで笑顔を浮かべるアイドルの豊満な体が、ちょ
うど股ぐらから二つに裂けてしまっているその姿は、いささかシュールである。
その光景に直人は、こみ上げてくる笑いを抑えきれず、ついには吹きだしてし
まった。
「あ」
 呟き、慌ててレジへと視線を滑らせる。幸いなことに――というか都合のよい
ことに、店員の姿はない。次いで店内を見回したが、店員はおろか自分以外の客
の姿も見えない。深夜とはいえ、なんとも寂しい光景である。
 少なくとも、今の行為を見咎められはしていないようだ。直人はホッと表情
を緩め、そして無残なアイドルの肢体へと視線を落とした。
 これをどうするべきか。否、どうにもするべきではない。
 逃げよう。
 まずは静かに雑誌を閉じ、そ知らぬ顔でマガジンラックへと戻そう。そして、
店内のどこかに居るであろう店員に気取られることなく、可及的速やかにこの
店を出るのだ。それだけで良い。
 店と、やがてあの雑誌を購入する気の毒な客には済まなく思うが、かといっ
て顔も知らぬ者のために、ろくに興味もない――時間潰しのために読んでいた
雑誌に身銭を切るつもりは一切ない。悪いのはたやすく破れる紙質であり、粗
末な媒体を商品に利用する出版社、そしてそんな商品を閲覧可能な状態に陳列
する店舗だ。むしろ自分は粗雑な管理体制の犠牲者である。
 判決、無罪。帰ってよし。
 完璧な自己弁護の組成に満足した直人は、今しがた考察したプランを最速最
短で実行せんと、雑誌を閉じ、顔を上げて――耳元に囁かれた言葉に硬直した。
「困るんですよねぇ、お客さん」
 冷ややかな声音に、その表情に焦りの色が浮かぶ。皮膚が泡立つ感触。いつの
間に店員が? 疑問を抱く間もなく、直人は弾かれたように振り向いた。
 そして彼の意識は断たれた。
 首と一緒に。

725724:2005/02/15(火) 04:25:01

「……なんつって」
 床に突っ伏した死体を背にひとりごちると、男はレジへと向かって歩き出した。
 べっとりと血に濡れた銀髪をかきあげ、片手の『戦利品』を見やる。驚愕と焦
燥に彩られたその『表情』に、男は満足げに顔を綻ばせる。
「今日はいい日だ。いやマジで」
 男は『戦利品』を目の高さまで掲げ、その双眸を見つめながら微笑んだ。
「これなら6000、いや7000は堅いかぁ? ウッハウハだわなぁ、『死に損ない』殺しは」
 『戦利品』の額を小突きながら、愉快そうに笑い続ける。
 レジにたどり着いた男は、カウンターを乗り越えると、足元に転がる店員の死
体を踏みながら、もう一つの『戦利品』を拾い上げた。
 二つの『戦利品』を掲げた男は、まるでほお擦りでもするかのように顔を近づ
け、むせかえるような血の臭いを胸いっぱいに吸い込んで嘆息した。
「みんなお前らのおかげだよ。ん〜? 聞ッいッてッまッすッかッ、マクフラ
イ?」
 『戦利品』同士の額をクラッカーのように小刻みに叩き合わせてリズムをとり、
男はとても愉快そうに嘲笑う。ひとしきり笑い終えると、男は二つの『戦利品』
を脇に抱え、床に転がる二つの首なし死体をそれぞれ見やり、にんまりと笑った。
「毎度あり」
 生首を抱えた男は、弾む声でそう言って、コンビニを後にした。

726猫丸:2005/02/16(水) 08:44:54
 ここに書き込むのも久しぶりです。ここんとこ受験だったもので。でも
一昨日とある法学部に合格したので、これからは小説も書きまくりたいと思います。

727イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/17(木) 09:07:26
>>724
首切り直後辺りの描写がちょい足りない風味。

出来るだけ簡潔に日常から非日常へ転換させたいのはわかるけど、
情景の情報が足りなくて、首を切られたってのが実感しにくく、いまいち転換に驚けない。

他はわりかし良い感じだと思う。
きどった言葉多いのも、全体に通せばくせのうちだとは思うし

728724:2005/02/20(日) 06:30:47
>>727
はい、そうです。いきなりポンッと転換させたかったんです。
ですが、読み返したら確かにブツ切りというか、情報不足ですね。
最大限情景が伝えられるようにリライトしてみます。

>きどった言葉多いのも
書いてて、自分の読書の中から好きな言い回しを拾って、それを
余り消化せずに切り貼り継ぎ接ぎで書き出してる感がありました。
我ながら感心できる傾向じゃないんで出来れば矯正したいんです
が、クセなのかな……

ありがとうございました。

729イラストで騙す予定の名無しさん:2005/02/23(水) 09:34:57
>>724-725
全体の批評よりも細かい部分を突っつくほうが簡単、というか
おれの文章力じゃ批評なんて無理、ということで細かいところを指摘してみる。

>いささかシュールである。
>深夜とはいえ、なんとも寂しい光景である。
こういうテンプレートで中身のない文はむしろない方がいいのでは。
もし書くならもうちょっと実感がもてるような表現がいいなあ。

 >これをどうするべきか。否、どうにもするべきではない。
 >逃げよう。
いや、どうにかしてるよ。逃げてるよ。逃げてる時点でもう「どうにか」しちゃってるよ。

>冷ややかな声音に、その表情に焦りの色が浮かぶ。
省略した部分を埋めると
(店員の)冷ややかな声音に、(山崎直人の)表情に焦りの色が浮かぶ。
となるわけで。
前半と後半で動作の主体が違うのに、それを省略しちゃってるもんだから状況がかなり取りにくい。
「その表情」=「山崎直人の表情」ってのは前後の文脈から推理しないと分からないし。
文法的にもちょっと危ないかも(俺も大して文法知らないけどね)

前半よりも後半の方がよく書けてると思う。
後半はノッて書いてたのだと予想。

730イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/06(日) 22:15:30
今書いている長編の書き出しです。
全く話の中身に触れていない書き出しなのですが、文章作法の突っ込み等をいただければと思って書き込みました。
宜しく御願いします。
-----------
 祭と云う物に興味はない。いつもの通り道である境内が人間で溢れ、草木の隙間を縫って歩かねば為らぬのだ、寧ろ、煩わしい。数が寄ると小さき物に気を配りもせぬ。
 茂みを抜け、静かな本殿の裏手へ。先客が居た。社の張り出した板の上に、人間が二つ。片方が腰をかけ、片方がその膝に頭を載せて居る。腰をかけた人間は知っている。
チリリと私の首の鈴が鳴ると、腰をかけた人間が、
「おいで」
 手招きをする。私はニャアと鳴く。立てかけてあったリアカーに飛び乗り、板を伝ってかの人間の元へ。躊躇無く膝の上に乗り、手を丸めて落ち着く。乗っている人間の頭が少々邪魔である。大きな手が私でなく、その頭を撫でているのも気に食わぬ。
 もう一度、ニャアと細く鳴く。彼の手は私には来ない。直ぐ横にある顔を見た。人間の女と云う者。目蓋は閉じている。
 挨拶代わりに鼻先を舐めてやった。
 冷たい。
-----------
いくらなんでも短すぎ?('A`)

731イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/09(水) 16:14:38
感じたことをいくつか。

うお、旧仮名かと思ったら違った。
なんか既視感がある。
漢字を多用しているので、この猫にはそれくらいの学はある→なのに
人間を「ふたつ」と勘定するという点。
ひざに頭を乗せているのは男のほうだと、読み進める前から勝手に
決め付けていた→誤読はおれだけか、それともミスリードを誘うつくり
なのか。
ということはこの猫は雌か? 嫉妬しとるのか? 人間の女とこの男を取り
合うのか、とかいらん想像をさせる余地があるのはいいことだと思う。

732イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/13(日) 21:31:11
通りすがりの者です。

誰かが膝枕してる膝に猫も乗る? 不自然のような。
もしかして膝枕がミスリードなら、なおさら中途半端な不自然さ。

細かい文章作法としては、
>チリリと私の首の鈴が鳴ると
の前は一字下げるのでは?
あと、
>茂みを抜け、静かな本殿の裏手へ。先客が居た。
の文章はなんていうのだろう。体言止めじゃないけど、
転調のような効果で使うものだろうと思う。
でもその前の文が短すぎて効果がなく、ただぶつ切り感を受ける。
その直後にまた「かの人間のもとへ」と同じように使っているし。
そういうのは効果的に用いないと、文章力を疑われそうだ。
とくに擬古文調?な文章だから目についてしまう。
これが軽いタッチのコメディ調なら、たぶん気にならないんだろうけど。

733猫丸:2005/03/22(火) 08:38:34
 今書いているラノベの冒頭です。批評よろしくお願いします。

 バス停のある団地から少し歩くと、小さな山が間近に迫ってきた。雨が降っているということもあって、辺りは薄暗く人影もほとんどない。閑静な小道には、雨粒が木の葉を揺らす音だけがしつこく響いている。
 そんな中を犬笠蓮太は、大きなリュックを背負ってぼちぼち歩いていた。隣には、小学生が持つような真っ黄色の傘を持った十二歳そこそこの少女。艶やかな黒髪が腰の辺りまで伸びていて、眼前の風景を見つめる物憂い表情は小柄な体に似合わない大人びた印象を与える。
「いやじゃのう、こんなに雨が降って」
ふと、少女が年寄りくさい口調で言った。
「恵みの雨、とでも考えれば?」
どうでもいいや、とばかりに肩をすくめる蓮太。
「…ナウなヤングなのか年寄りなのか分からん返答じゃな」
「奈々姫は100%年寄りくさいけどね」
二人の足元で溜まった水が撥ねる。奈々姫と呼ばれた少女は濡れた靴を恨めしそうに見つめてため息をつく。

734イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/23(水) 01:16:47
>>733
せっかく特色あるキャラなんですから、
先に会話があって、あとで人物描写や
風景描写に持って行ったほうが
インパクトあるかもしれません。

735イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/23(水) 23:33:05
>>733
主人公と思われる犬笠蓮太の描写がないのは、わざとでしょうか?
彼の顔が浮かばなかったので、頭に絵が描けませんでした…。
文章の量が少なくて、内容についてはあまり書けないので、文章的なことを書きますと、
十二歳そこそこというのは、違和感を覚えました。
十歳そこそこ…が普通ではないかと思います。

736猫丸:2005/03/24(木) 08:29:10
 批評ありがとうございます。

 蓮太の描写がないことについてですが…やっぱり必要ですかね。いろんなラノベ見
ても、たいした特徴のない男キャラの描写はほとんどない気がするのですが。参考に
なりそうな作品を知ってたら教えてください。

737イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/24(木) 14:44:54
私も蓮太の描写がないことが気になりました。
外見よりも、年齢がわかりません。
女の子より(外見が)年上か同年配かさえわからないのでは、
すんなり彼の視点に移入できないのでは。
さらされている部分が短すぎるせいかもしれませんが、
導入としては弱いように感じます。
セリフと人物描写を先に持ってきて、そのあと情景描写の方がいいと思う。

それから、細かいことですが、セリフのあと(間)の地の文は一文字下げるのが
一般的だと思います。掲示板だからこうなったのかもしれないけど。

738イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/24(木) 23:31:29
>>736
これといって特徴がない、とか、いまいちぱっとしない顔だ、とか、
いくら地味で目立たない男キャラであっても、何かしら書いてあると思うのです。
さすがに主人公に関する情報が皆無というのは、ないんじゃないでしょうか…。

739猫丸:2005/03/25(金) 11:34:17
>>738

うっ…。そう言われてみれば多少の描写はありました。今まで特に気にしませんでしたが
こういう描写もそれなりの必要性を持って書かれているんですね。以後精進します。

740イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/25(金) 22:32:04
「……です――」
 今、彼女はなんと言ったのだろうか。まともな考えが、うるさく鳴く蝉の声にかけされていく。彼女は夕日に赤く染まった顔を俯かせている。これ以上の言葉は聞けそうにないし、もう一回言って貰うのもなんだか憚られた。
 考えよう。まず俺が帰ろうとすると、下駄箱に手紙が入っていた。そこに丸っこい字で五時に体育館裏へ来てくれと書いてあった。俺は、藪か冬子辺りがからかっているのではないかという不安と、もしかしたらと言う期待でここへ来た。そこで待っていたのが鈴白春だった。
鈴白春――その名前を思い浮かべると、俺の心臓は激しい音を立てて胸を叩きはじめる。脈打つそれを数えると、少しずつ静まっていってくれた。彼女はなんと言ったのだろうか。彼女が言った台詞。それは告白と言う奴じゃなかったろうか。もし、そうであるなら答えは一つしかない。が、冬子や薮の悪戯という可能性も捨てきれない。なにせあいつらは俺の気持ちを知っている。
風が吹いた。それは彼女の腰まで伸びた黒髪を揺らす。肩は震えている。彼女の白い頬が赤いのも夕日のせいだけではない。期待が不安を塗りつぶしていく。
「鈴白さん――」
 彼女が顔を上げると、黒目がちな大きな目が現れた。その目に考えていた答えが吸い込まれていく。「あ……その……」なんと言えば良いのか。答え? なんの答えなのだろう。彼女の目、きれいな長髪、すっと通った鼻筋、白い肌、潤んだ桜色の唇。に入る彼女の全てが、俺の頭を真っ白に染め上げて行く。
「えっと、その……」わけもわからずうめきを漏らすと、彼女がくすりと微笑んだ。
「なに? 秋山君」彼女のその言葉に、口が勝手に動いてくれた。
「その――俺も前から君のことが……」彼女の目はこちらをじっと見ている。どこか、不安はあるのだけど、それ以外の何かで満たされている、そんな目。まるでその目に促されるように、俺の口は動く。
「……好きだった」
 蝉の鳴き声が一際大きくなった気がする。
「その、よろしく」
 俺はにっこりと笑って手を伸ばすと、彼女の白い手が答えてくれた。
「よろしくね」
 彼女の手はとても暖かかった。

おねげーします。

741イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/26(土) 03:36:23
>>740
>蝉の声が一際大きくなった気がする。
この部分なんかは、私としては好みの表現です。
ですが、全体的に表現過多のような気がしないでもない。
この量で一冊続くとなると、斜め読みしてしまう箇所が増えそうです。
もう少しこざっぱりしていてもいい感じかな、などと。
素人考えですがご参考になれば。

742猫丸:2005/03/26(土) 10:18:26
>>740

 確かに私も少々回りくどい気がします。でもこれがラストシーン、あるいは
ストーリーの根幹となるシーンだったりしたらいいのかなとも思います。

743イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/26(土) 18:03:28
>>741

あ、これでもくどかいんですね。レスありがとうございます。
是非参考にさせていただきます。

>>742

冒頭で結構重要な部分です。伏線にもなっているのでw。もう少しあっさりと行ったほうが良さげですね。

744イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/26(土) 19:34:36
>>740
私は蝉などの分量はさほど気にならなかったのですが、経緯を語るのが説明的すぎる気がちょっと…。
それと、これジャンルとしては何小説になるんでしょうか。
怪奇小説っぽい文章に見えてしまったのですが…。

745イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/26(土) 20:17:52
>>740
私はわかりやすい文章で、丁寧に書いてあって好感が持てました。
私に関しては、怪奇小説ぽいとは感じませんでしたが……。
ただまだ書きなれていらっしゃらないのかな? と思うところがいくつか。
一字抜けているところがこれだけの文章で二箇所あるし↓
>蝉の声にかけされていく
>に入る彼女の全てが
そのほかにもちょっと読んでいてひっかかるところがありました。

>考えよう。まず俺が帰ろうとすると
という文で、短い回想に入るのですが、私は最初、回想と思わずに、
現在から続いた状況と読みかけてしまいました。
「ちょっとさかのぼって考えてみよう」みたいに直すと
スムーズに読める?かも?

重箱の隅をつつくようなレスですいません。
自分の文を推敲するようなつもりで読んでいますので。

丁寧に書いてあるだけに、ほかの方々がくどいと感じられるのかもしれません。
でももっと書き慣れていけば、
徐々にメリハリのきかせ方や、描写の抜き方などが
自然に身についていかれるのではないかと思います。

746イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/26(土) 21:45:17
>>744です。
>>745のレスを読んで気づきましたが、言葉が足りていないようでしたので、補足します。
怪奇小説にぴったりの文体だ、ということではないのですが、文章全体に漂う緊張感が、
恋愛小説のどきどき感ではなく怪奇小説の緊迫感のように感じられてしまったのですね。
わくわくよりどきどきが前に来てしまって、恋しているふわふわみたいなものが追いやられているというか。
皆さんの書かれている蝉も、期待を高めるよりは不安や緊張を煽るような要素に感じました。
もっと楽しい空気も感じ取れれば、恋愛小説だということがわかったかと思うのです。

747イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/27(日) 14:58:15
みなさん、ご意見ありがとうございます。

>>744
自分でも、ちょっと分野がわかりません。広義なミステリーになるのかな。
章末で主人公は死にますし。ただ、最初は恋愛小説なようなノリで進める予定なので精進が必要ですね。
ただ、ヤオイかオオツキかそんな感じのお話なので、広義のミステリというかw
回想シーン、もうちょっと考えてみますね。ありがとうございます。

>>745
誤字については、なんと言って良いやら。気をつけます。
三人称で短編を一つ書いたことしかなく、二作目なのですが一人称が全然なじまないみたいで……目下研究中です。
やはり、回想は考えないと駄目ですね。それに書きなれないと。

>>746
う〜ん。恋するふわふわ……。む、難しい。変な汁が出そうです。

748イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/29(火) 21:15:50
冒頭文晒します。批評をお願いします。

"実験台募集中!
 貴方の魔力を高めて高位な魔道士になってみませんか?"
 その広告には、そんな見出しが大きく書かれていて、下の方に
"興味のある方は、トルシェの街郊外 魔女・シルフィエルの館まで"
 という文句とともに、簡単な地図が描かれていた。
 この広告が貼られているのは、トルシェの街の中央広場にある掲示板。
 貼られている広告はこれだけではなく、酒場のウエイトレスの募集や、近隣のモンスター退治依頼、行方不明になったペットの捜索依頼等々、多種多様な広告や依頼記事が並んでいる。
 その中でも、最も目に留める人が居ないであろうこの実験台募集広告を見て、雑踏の中、足を止める一人の少女の姿があった。
 
「『実験が成功すれば、貴方の魔力は格段に高まります。危険は一切ありませんので、お気軽にご応募下さい』と」
 そこは、警備兵の控え室のような簡素な一室だった。
 窓は無く、壁には扉が一枚と、その向かいに、殺風景な部屋を写し出す鏡が備え付けられているのみ。
 部屋の中にはある物は、テーブルと一対の椅子だけだった。
 木製の椅子にもたれかかりながら、男は手にした広告の内容を読み上げている。
 年の頃は二十代後半といったところか。金(ブロンド)の短髪に、たれ目気味で、軽薄そうな印象を受ける。
 服装は、麻の服の上からジャケットを羽織った、街によくいる若者のようなラフな格好だ。
 男は、誰に言うでもないような口調で続ける。
「いやー、流石にこれで『実験台になりたいですっ!』なんちゅー奇特な奴は、そうそうおらへんのと違うかなぁ?」
 言って男が目を向けた先には、テーブルを挟んだ向かい側に、同じような椅子に座り、腕を組んだまま沈黙しているもう一人の男。
 こちらは三十代前半程の、精悍な顔つきをした男である。目の前の男よりはやや長めの黒髪で、額の傷が印象的だ。
 服の上に軽鎧を着込んでおり、腰にはミドルソードが一振り。見た目の印象としては、経験豊富な剣士といったところか。
 黒髪の男の反応が無いのを気にする様子も無く、手元の広告に目を戻し、金髪の男は再び口を開く。
「あのばーさんも、もーちょいまともな文句を考えて欲しいもんやなぁ」
「不満があるのか」
 ここで、黒髪の男が、唐突に口を開いた。
 金髪の男は、やっと反応を示した黒髪の男に向き直る。
「いや、不満とはちゃうねんけど──」
「俺達は、ただシルフィエル様の指示に従うだけだ」
「……はぁ、やっぱりあんさんと話しててもおもろないなぁ」
「そう思うなら黙っていろ」
 そう言って、黒髪の男は口を閉ざし、金髪の男は大袈裟に肩をすくめる。
 特にやることも無いため、再び先程の広告でも眺めようと、手元に目を移し──
 コンコン
 突然、ノックの音が鳴り、続けてくぐもった声が響き渡った。
『すいませーん。街の広告を見て来たんですけど……』
 その声を聞くと、男達は同時に顔を上げ、壁に備え付けた鏡へと視線を向ける。
 先程までは部屋の中を写していたそれには、今は一人の少女の姿が映し出されていた。
「奇特な奴がいたようだな」
「……そのようやなぁ」
 それを確認すると、二人は席を立ち、扉を開けて部屋を出た。

749イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/30(水) 21:33:52
>748
はっきり言うと、かなり読みにくいです。
気づいただけで、あまり必要もなく受動形になってる文がいくつかあるし、
使用している語句も重複ぎみで、描写も多いわりに風景が目に浮かびません。

細かい突っ込みをするようですが、部屋の描写からは
警備兵の控え室みたいには思えないとか、
「読み上げている」という描写から、
実際に読み上げている台詞が離れすぎているとか、
印象的というだけでは額の傷がどんなものか想像できないとか、
そういう細かな点が積み重なって、フラストレーションを感じます。

冒頭としては、謎の広告というのが印象的でいいです。
つかみはOK!という感じなのに、文章で損をしてらっしゃるように思います。

750748:2005/03/30(水) 23:05:36
>749
ご意見ありがとうございます。
描写は自分で苦手気味な自覚があったので、具体的なご指摘に感謝です。
受動態が余分、語句が重複気味ですか……気をつけてみます。

部屋は、例え方の方がまずかったみたいですね。こちらは例えを変えてみます。
「読み上げている」の部分は、実は最初は台詞のすぐ近くにあったんですが、読み返してるうちに、部屋の描写を入れた方がいいなと思って、間に足してしまった結果、こうなってしまいました。完全に裏目でしたね。
修正で元の文を壊してしまっては本末転倒でした。気をつけます。
額の傷の細かい描写を入れなかったのは、描写漏れというか、単純にミスですね。追加修正したいと思います。

最初の部分は印象的に見せることを重視して考えていたので、そこを評価していただけたのはうれしいです。ありがとうございます。
しかし、肝心の文が読みにくかったら意味が無いですよね。
折角色々助言をいただいたので、ご指摘を受けた部分に注意して、修正してみようと思います。

751イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/31(木) 12:56:49
くぐもった声が響き渡った

これがおかしくね?

752イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/31(木) 13:03:16
二つの文章に分けず、一つの文章を纏められる希ガスるところがいくつかあったとおも。
あと、情景のイメージが作者さんの頭の中で固まってないか〜って感じもあり。
それと、場面転換のタイミングのせいか??となった。
描写に関しては、視覚だけじゃなく、音と匂いと肌触りあたりを入れると厚みが出て良くなると思われ。
読みやすい文章ではあると思うしね。がんがれ。

乱文だけど、箇条書きのほうがやりよかったんでw。

753イラストで騙す予定の名無しさん:2005/03/31(木) 19:39:10
情景描写、人物描写、私も苦手ですw
もしかしたらそうすると不都合があるのかもしれませんが、
たとえば視点人物を決めて、その人視点で描写したらどうでしょう?
色気もそっけもない部屋だ→向かいに座ってる人物も負けず劣らずそっけない
などと視点人物の感想を地の文に混ぜると、描写に味付けすることができて、
無味乾燥になりがちな文を救ってくれることがあります。
最初のブロックはともかく、次のブロックでは有効かと。

754ブラッド・レイン 1/3:2005/04/01(金) 00:33:59
習作ぽく書き始めた作品ですが、思いのほか興が乗ってきたので、
どなたか批評をお願いします。タイトルは「ブラッド・レイン」です。

----------------------------------------------------------------

「雨、やまないね」
 いったい何度目だろうか。うっすら埃の積もった机に頬をくっつけて、僕の向かいに
座った奈里子(なりこ)は言った。汚いからやめろと僕はいつも言うのだが、奈里子は
やめようとしない。だって図書室の机だから大丈夫だよ、というのが、奈里子のよく
分からない言いぶんだった。
 奈里子の指は、机に伏せた『鏡の国のアリス』の上で、何やら奇っ怪な文様を描き続
けている。
「やまないな」
 僕も応えて窓の外を見る。真っ黒な雲から真っ赤な雨。この三日間、飽きもせず弱ま
りもせず、かと言って「天の底が抜けた」というほどの激しさもなしにだらだらと降り
続いている。
「またモドキが増えるかな、昼雄(ひるお)」
「……かもな」
 僕は校庭にできた小さな川を眺めながら言った。「かもな」も何もあったもんじゃない。雨が降れば降っただけ、人間は減ってモドキは増えるに決まっている。
「嫌だね。ほんっとに嫌」
 奈里子は顔を上げ、頬の埃をぬぐった。指先の灰色を見て顔をしかめる。仕方がないさ、
と言いかけて、僕は口をつぐんだ。奈里子は一七歳。毎週の〈儀式〉が憂鬱になる時期だ。
歳をとるということがどういうことなのか。まさか忘れているということはないだろう
けれど、奈里子自身はあまり気にしている風もない。実感が湧かないのかもしれないし、
とっくに諦めているのかもしれない。何にせよ、僕にはそれを奈里子に訊く勇気はなかった。
「今夜も見張りを立てるのかな」
「……多分な。勇一とか克美、張り切ってるし。身を守らないわけにもいかないし」
「嫌だね。ほんっとに嫌」
 とんとんとん。指先でアリスの額を小突きながら、奈里子は口を尖らせる。同感だった。
嫌なものだ。どんなに繰り返しても慣れないものだ。「もともと人間だったもの」を殺すのは。

755ブラッド・レイン 2/3:2005/04/01(金) 00:34:37
「それ」が初めて降ったのは、もう五年も前のことになる。鉄錆の味がする、赤い雨。
すわ天変地異か、と、騒動にはならなかった。もっと深刻な問題が時を同じくして持ち
上がったからだ。
 あのときのことは今でもよく覚えている。何かに憑かれたような目をした大人たちが、
家やビルや電車や車の中から、傘も差さずに屋外へと歩みでた。箸や書類や鞄や携帯電
話を持ったままの大人たちは、みな空を見上げて、びっくりしたような表情で雨を顔に
受け続けていた。子供が泣きながらその脚にすがっても、こうるさげに蹴り飛ばされる
のが関の山だった。
 そして、大人たちは変わり始めた。何に変わったのか、と問われたらこう答えるしかない。
あらゆるものだ。僕たちの見ている目の前で、大人たちはこの世の、そしてこの世以外
のあらゆるものに変わり始めたのだ。
 たとえば、ある大人は巨大なダチョウに変わった。ただしそのダチョウには目も羽毛
もなく、代わりに強酸を噴きだす円形の口と、死人を思わせる冷たい土気色の皮膚があ
った。
 別の大人は服も身体も風化したかと思うと、転瞬、数万匹の蛾に変わった。その蛾は
猛毒の鱗粉を持っていて、群れで人を襲った。獲物が鱗粉をたっぷり吸いこんで麻痺す
ると、おもむろに長い産卵管を突き刺すのだ。体表を蛾が覆った数十秒後には、獲物は
幼虫のためのベッド兼エサに成り果てているという具合。無数の卵が孵った後は、生き
たままむさぼり食われることになる。
 また別の大人は犬に変わった。その犬の身体は、実は無数の長い長い線虫の絡み合った
代物で、どういう方法かは分からないが犬の形状を保っているのだ。与し易しと見て
うっかり近づこうものなら、全身の穴という穴から進入されて苦悶のうちに息絶えることになる。
 そのほか体高一〇メートルもある真っ黒な象に変わった大人もいたし、サソリと蜘蛛を
掛けあわせてカゲロウの羽を生やしたような節足動物に変わった大人もいた。――例を
挙げればきりがない。そいつらの姿に共通点があるとすれば、どこかしら生物らしき
外見をそなえているということくらいだった。だから生き残った者たちは、生物に似たもの
という意味で、いつからかそいつらを〈モドキ〉と呼ぶようになっていた。
 モドキの特徴は千差万別だが、大抵の個体に共通する点もある。たとえば、かなり
積極的に人を襲うこと。たとえば、明かりに群がる性質を持つこと。
 そしてたとえば、夜になると活発に活動すること――。

756ブラッド・レイン 3/3:2005/04/01(金) 00:35:14
 ごつり。
何か硬いものが肩に当たって、僕は目を覚ました。
「当直だぜ、大将」
 克美だった。僕が寝床と定めている理科準備室に照明はないが、低い声と「大将」と
いう口癖でそれと知れる。さっきは何かが肩に当たったと思ったが、克美が軽く蹴った
ようだ。そう言えば、今夜の見張りは克美と一緒だった。気を利かせて起こしに来てく
れたのだろう。
「ん……ああ」
 僕はあくびを噛み殺しながら机の下から這いだした。気分が悪い。不快で混乱した夢の
微かな記憶が、アスファルトにへばりついたガムよろしく、頭蓋骨の内側に黒くわだかまっている。
――夢トハ、昼ノ間ニ見聞キシタ事柄ヲ長期記憶ヘト移行スル際、脳ノ活性化ニヨッテ惹
起サレル、あとらんだむナ記憶ノ再生ニ過ギナイ。
そんないかめしい文章をふと思い出す。確か、そうやって再生された記憶を覚醒後につぎ
はぎして辻褄を合わせたものが夢の正体だとかなんだとか。もしそれが本当だとすれば、
ある夢が悪夢かそうでないかは、起きた後の気分次第ということになる。さて、どの本に
書かれていたことだっただろうか。
「おい、どうした? 早く行こうぜ」
 思わず目をつぶる。克美が懐中電灯で僕の顔を照らしたのだ。電池も豆電球も貴重品だ
から、普段から点けっぱなしというわけにはいかない。
 謝ろうとして目を開けると、克美は机の下の布団を舐めるように照らしている最中だった。
「……何してるんだよ」
「いやぁ」
 克美は岩から削りだしたような顔をにやりと歪め、
「てっきり、寝るときも奈里子と一緒だと思ってたんだけどな」

「そんなに怒るなよ、大将。悪かったって」
 背後からの謝罪は、しかし悪気のないからかい混じりだ。僕も別に怒っているわけじゃない。
ないのだが、照れ隠し半分に肩を怒らせて歩きだしてしまうと、歩調を緩めるきっかけが
どうにもつかみにくかった。
「しかし、よく降るな」
 怒っていないことを伝えるつもりで、僕は言った。事実、克美が気まぐれに振り回す
懐中電灯の光を反射して、血塗りの針のような雨が窓の外に見えていた。
「ああ、まったくだ。モドキも随分ざわついてるみたいだぜ」
 追いついてきた克美に、これと言って変わった様子はない。克美は僕や奈里子とは違う。
身を守るのに何のためらいもないタイプだ。こんな世界ではそっちの方が正常なのだろうか。
「ま、さすがにそろそろやむだろ。今夜を乗りきっちまえば、また降りだすまではのんび
りできるさ」
 そういうわけだから今夜はよろしく頼むぜ、大将。克美はそう言って僕の背中をどやし
つけた。
 そうこうするうち屋上に着いた。僕たち二人の今夜の持ち場だ。用意のいい克美が大き
な傘を広げ、僕を入れてくれた。
「遅かったじゃないか」
 合羽のフードを跳ねあげて近づいてきたのは勇一だった。見張りのための暗視鏡を着け
た勇一は普段にも増して威圧的な印象だ。背が高いから、では恐らくない。背なら克美の
方がさらに高いが、克美はどんな格好をしても威圧感など少しもない。
「まともに動く時計が少ないもんでね」
 克美がひょいと肩をすくめる。まぁ、嘘ではない。
「……早く持ち場に着け。俺は休ませてもらう」
 勇一は暗視鏡を乱暴に剥ぎ取りながら言った。頭をひとつ振って滴を跳ねとばし、暗視
鏡を克美に押しつける。作の一つ一つを嫌みったらしいものに感じるのは、やはり僕が勇
一を嫌いだからだろうか。

757754:2005/04/01(金) 00:50:18
……失礼。

>>756の最後から二行目、
>作の一つ一つを嫌みったらしいものに感じるのは、やはり僕が勇一を嫌いだからだろうか。
は、
>動作の一つ一つを嫌みったらしいものに感じるのは、やはり僕が勇一を嫌いだからだろうか。

の誤りです。

758イラストで騙す予定の名無しさん:2005/04/01(金) 03:22:26
>>754〜756
すごく面白いです。先が知りたくてたまりません。
文章も読みやすく、リズムがいいです。

ただ、モドキの具体的な説明が早すぎるように感じました。
この時点ではもっと漠然と恐ろしげな感じで触れるだけにとどめて、
個々の細かな描写は実体が出てからの方がいいと思います。
そこはもっとひっぱって、それより少年たちの現状を説明するのを
先にした方が、より読者の期待が高まるのではないかと。

また、具体的な描写が、一般的な話として語られて、浮いてしまっているような。
「誰々の父親はこんなモドキになった」「担任の教師はこうなった」
という具体的な例示にしてしまえば浮かないと思いますが、
なんだか筆が乗って書き込んでしまったかな?という感じを受けてしまいます。
でもその描写がとてもユニークです。楽しんで読みました。
それだけに、もっと効果的にかましていただきたい。
期待しています。

759754:2005/04/01(金) 08:33:15
>>758
どうもでございます。

>また、具体的な描写が、一般的な話として語られて、浮いてしまっているような。
>「誰々の父親はこんなモドキになった」「担任の教師はこうなった」
>という具体的な例示にしてしまえば浮かないと思いますが、

うーん、ごもっとも。
主人公にとって、モドキへの変身は実際に自分の目で目撃した事件な
わけですから、身近な話として語らせた方が臨場感が出ますね。
的確な指摘、ありがとうございます。

760イラストで騙す予定の名無しさん:2005/04/01(金) 09:21:29
キャラクターの外観がまったく描かれていないね。
別に細々と描写する必要はないと思うけれど、例えば
「奈里子の大きな瞳が」とか、「克美のひょろ長いシ
ルエットが浮かびあがる」とか、こちらが想像する助け
をくれるとありがたい。とくに克美は真っ白けだし。

761748:2005/04/01(金) 10:25:39
>751
家の外から中の人に呼びかけたのを、中で聞くのをイメージしたんですが、おかしいでしょうか?
言葉自体がおかしいかな……?

>752
読みやすいように一つの文に表現を詰め込まないようにしてるつもりだったのですが、度が過ぎたみたいですね。修正してみます。
イメージが固まっていない……うーん、そうかもしれないです。それに、視覚でしかイメージして無かったって言うのは正にそうでした。
音と匂い、肌触り等ですか……なるほど。
激励のお言葉感謝です。がんがります。

>753
視点を特定の人物寄りにする。ですか。
初心者が、視点の切り替えを多用しすぎると、視点がぶれて、読みづらく・わかりづらくなるっていうのを聞いたことがあるので、敬遠してたんです。
私ごときが使うと、正にそうなってしまうんじゃないかと不安だったり……でも一案ですよね。試してみます。

>>754-756
全体的に、描写も良いし、読みやすくていい感じだと思います。
ただ、ちよっと説明不足な点があるかなと。自分の読解力不足かもしれませんが。
というのは、奈里子に関する事が、後半語られてないこと。
奈里子といたのは夢の中で、実際奈里子はそばにいないというのはわかるのですが、
主人公が奈里子のことに直接触れていないので、ちょっと戸惑ってしまいました。
未熟者故、的外れな意見でしたらすいませんです。

762添削屋さん:2005/05/04(水) 10:45:04
>タイトルは「ブラッド・レイン」?

----------------------------------------------------------------

「雨、やまないねぇ」
 もう何度同じ台詞を彼女は繰り返したことになるだろう――
 うっすらと埃の積もった机に頬をくっつけて、奈里子(なりこ)は、また
消え入りそうな小さな声でそう囁いていた。
 汚いからやめろと僕はいつも注意するのだが、奈里子はそれを決して
やめようとしない。
 だって図書室の机だから大丈夫だよ、というのが、奈里子の言い分。
 奈里子の指は、机に伏せた『鏡の国のアリス』の上で、何やら奇っ怪な
文様を描き続けている。
「確かに、やまないよな」
 僕もそう応えて窓の外を見た。
 真っ黒な雲から真っ赤な雨。この三日間、飽きもせず弱まりもせず、
かと言って「天の底が抜けた」というほどの激しさもなしにだらだらと
降り続いている。
「またモドキが増えるのかな、昼雄(ひるお)――」
 彼女は漸く、思い出したかのように、僕の名前を口にした。
「……かもな」
 僕は校庭にできた小さな川を眺めながら言った。
「かもな」も何もあったもんじゃない。
雨が降れば降っただけ、人間は減ってモドキは増えるに決まっている。
「嫌だね。ほんとに、嫌――」
 奈里子は顔を上げ、頬の埃をぬぐった。
そして指先の灰色を見て顔をしかめた。
言わんこちゃない――仕方ないだろうよ?
と言いかけて、僕は口をつぐんだ。
奈里子は一七歳。毎週の〈儀式〉が憂鬱になる時期だ。
歳をとるということがどういうことなのか、まさか忘れているという
ことはないだろうけれど、奈里子自身はあまり気にしている風もない。
実感が湧かないのかもしれないし、とっくに諦めているのかもしれない。
何にせよ、僕にはそれを奈里子に訊く勇気はなかった。
「今夜も見張りを立てるのかな」
「……多分な。勇一とか克美、張り切ってるし。身を守らないわけにも
いかないし」
「嫌だね。ほんっとに嫌」
 とんとんとん。指先でアリスの額を小突きながら、奈里子は口を尖らせる。同感だった。
嫌なものだ。どんなに繰り返しても慣れないものだ。
「もともと人間だったもの」を殺すのは。。。


  <<<正直、良く分からんが―――>>>

763添削屋さん:2005/05/04(水) 10:52:37


 根本的に、時間経過? が、おかしいんでないのかい この文章は――

764イラストで騙す予定の名無しさん:2005/05/04(水) 11:38:50
あ、HNが変わってる

765イラストで騙す予定の名無しさん:2005/05/15(日) 18:40:00
>奈里子は顔を上げ、頬の埃をぬぐった。
>そして指先の灰色を見て顔をしかめた。

顔に埃が付いたら、皮脂があるので指でぬぐっても頬に汚れがこすれる。
指先が灰色になるくらい汚れたなら、顔にも筆で書いたような線が引かれたはず。
奈里子がプラスチック製とかなら別だけど。

766砂漠の星のオプティミスト?:2005/06/15(水) 07:32:19
 ぶわんぶわん、ぶわんぶわんと、音が響く。
「ねえちょっとオーガスト、もっとスピード出ないの?」
「無茶言うなメリウェザー、これが限界だ! これ以上出したらエンジンが
火を噴きかねん!」
 赤く広大な砂の大地を、砂上クラフトが疾駆していた。
 通称『ホバー』と呼ばれる型。旧時代の二輪車めいた形をした、随分と
古いモデルである。
 超速に舞い上がる砂と熱気を呑み込んで、ホバーを操舵する男が喚いた。
「火を噴くの? それは派手だね、なかなかいい。少なくとも、ガリッと
齧られて死ぬよりはいい散り様だなあ」
「派手って何だ派手って、花火じゃないんだぞ!? 大体落ち着き払ってる
場合なのかこれが!?」 
 重力制御装置が砂をかき分け、ホバーの通った後に浅い轍(ワダチ)を
作る。限界を超える速度から来る揺れが、轍の形を時折歪ませる。

          (以下 略)

 例えばこういうさくひんっていうのは、確かに素人衆の中では筆力が
ある方で、おそらく作者自身は、さぞや「これは、かなりイケテル!」
と、確信していることだろうが――

 その分、傍から見ればというか、プロの人間ならば思いっきりシビアに
内容の精査に入る訳で――「果たしてこの登場人物の在り方ってどうよ?」
みたいな処から入って、よくよく見てみれば……嵐の駄目出し百連発! 位
は何時でも直ぐに出されてしまう、みたいな――典型的な素人騙し的な物だね


※何処かの賞に応募しているのなら、二次選考突破、位までは赦してあげても
全然構わないとは思うけど、一応編集部としては電話で呼び出して、二時間位
プロの作家として認められる為の条件――みたいなものを懇々と説教してあげ
て欲しいよなぁ〜 是非 今の内に――とか、思うタイプの 奴 かなぁ〜※

767イラストで騙す予定の名無しさん:2005/06/16(木) 15:11:24
初投稿用に見栄えのするバトル物に挑戦してみたのですが、正直、今までと文体などが全然変わったものになってしまったので、少々不安です。
批評、よろしくお願いします。
なお、これは中盤で盛り上がる場面のバトルシーンの一部です。

「運命とやらもなかなか粋なことをしてくれるわね。ここなら余計な邪魔が入ることもない」
 ちょうど空自身、まったく同じことを考えていた。
「グラディウス王子の暗殺者、剣(レイピア)だな」  
「そういう貴方はアウレイリア姫の飼い犬ね」
 挑発するように切り返してくる。
 今さら精神戦が無意味なことなど知っているだろうに。
 だが、その小気味の良さは悪くない。
 彼女は小振りな剣を両手に構えている。 
 すらりと伸びた長身に、最低限の防具を身につけた動きやすそうな服装を身につけている。
 闇夜にも鮮やかな長い金髪を後ろで束ねて、その美貌は獲物を前にした女豹のように活き活きとしている。
 碧眼に灯る焔の刃は、剣の二つ名にふさわしい。
「千載一遇とはこのことだわ。そう思わない?」
 澄んだ声音だが、女性としては少し低めだ。
「ああ。まったく同感だ」
 一目見た時から分かっていた。
 彼女は自分と同じ、剣のみで戦う暗殺者だ。
 騎士などと違い、暗殺者は様々な得物を使い多種多様な戦い方をする。彼らは状況や相手に合わせて、自身の戦闘のスタイルを調整しなければならない。だから、一流の暗殺者が『全力』で戦い己の技量の全てを尽くすには、自分にとってもっとも見合った状況で、もっとも相性の良い相手と対峙し、しかもその敵が自身と同レベルの技量を備えていなければならない。
 力量が上がれば上がるほど、ただでさえ稀少なその確率は0に近づいてゆく。
 それが、この瞬間。
 奇跡にも等しい可能性の積み重ねの果てに、今、彼らは最高の敵と相対しているのだ。
「そろそろ始めましょうか」
「そうだな。間合いの駆け引きですら名残惜しいところだが、いつまでもこうしているわけにもいかない」 
 その微笑、
「きみに会えたことを__」
「__神々に感謝するわ」
 どちらかの主が居合わせれば、嫉妬したに違いない。
 闇夜に剣戟の音が高鳴って、火花が散る。
 交叉する刃を力任せに吹っ飛ばすと、彼女は地を蹴ってくるりと宙を舞う。
 こちらも右足にあらん限りの力をこめて跳躍し、必殺の突きを繰り出す。
同時の雄叫び。稲妻のような金属音。
 ズザッ、と地を滑りつつ着地する。
 頬を伝う一筋の血。あと一瞬遅ければ、下顎の付け根から上が空を舞っていたはずだ。
 実際のところ。
 心の底から眼前の敵の首を欲するその一時の間だけ、彼らは恋に落ちていたのだから。

768767:2005/06/16(木) 15:30:44
ついでに冒頭も晒しておきます。ラノベの投稿においては冒頭シーンはかなり大事だと聞いたので。

月のない、星明りだけがうっすらと闇を照らす夜だった。
 かすかな夜風に、水面がさざ波立つ。
 そんな湖畔の草原に、白馬が一頭寝そべっている。
「ごめんね、カイ。遅くまで付き合わせてしまって」
 ささやくような女性の声。白馬はかすかに首をもたげると、指し出される細腕に顔を寄せる。その影をよく見れば、白馬の額には一本の角が生えていることが分かっただろう。
 額に角持つ白馬の主人は、まだうら若い鎧姿の女性だった。と言っても、少女と言うほど幼いわけでもないし、淑女と言うにはまだあどけない面影を残していた。
 星明かりに青白く映える、ほっそりした輪郭。腰まで届く栗色の髪に、美しいというよりは愛らしい小造りな顔立ち。そして、雲一つない夜のように澄んだ、深い黒曜の瞳。
 艶やかな花と言うよりは、繊細な装飾を施された宝剣のような印象を受ける佳人だった。だが、どういうわけか女性の左目は、布に巻かれて隠されていた。
「ここに来るのは七年ぶりか」
 傍らの白馬に話しかけるとも、独り言ともつかぬことを呟きながら、湖の向こうに切なげな視線を向ける。 
 ややあって、なにかを振り切るような微笑を浮かべて
「帰ろうか、カイ。城まで乗せていってくれる?」
 ぴくりと耳を立てて、唐突に白馬が立ち上がる。主人の声に反応してのことではない。
 しゃらん、と鞘から抜く時に剣が鳴るように。
 形の良い眉が吊り上がって、黒曜の瞳の色が変わる。
 射抜くような視線が、何もないはずの闇に向けられる。
 足音一つ聞こえなかったはずであった。
 だが剣士である以上、これだけの数の殺気を向けられれば、嫌でも気づく。
「カイ。下がっていて」
 額に角持つ白馬は主人を信じきっているらしい。とくに脅える様子も見せず、主人の一歩後ろに控えると、そのまま彫像のように動かなくなる。
 女性は剣を抜くと、あたりに気を配りながら正眼に構える。装飾一つない実戦用のものだが、鋭くも澄みきった銀月の刃はその身にふさわしい。
「どうしました?娘一人に数人がかりで、近寄ることさえできないとでも?」
 揶揄するような言葉を、闇の向こうに投げかける。
「……女だてらに多少は使えるという噂、嘘ではないらしいな」
壮年の男のものらしき、かすれた低い声。
「別に逃げたければ止めはしません。お前達には敵に背を向けてはならない義理などないのですから」
負けじと言い返す女性。いや。鈴の鳴るような音でありながら、その口調は剣士のものだ。
 がさりと草を踏む音。二人、横手にまわった。
 だが、まだ動くわけにはいかない。
「ふん。数々の武勲も白昼での話よ。騎士など闇夜では、我らに捕われ喰われる者に過ぎぬ」
 反対側の横手に……たぶん三人。
 彼女の額に、大粒の汗が流れる。
 人数を正確に把握できるほどの腕は、彼女にはない。ただ予想していたよりも、ずっと多い。
「フレイル王国が第二王位継承候補、アウレイリア姫殿下とお見受けするが、相違ないか?」
 刺客の言葉に、一瞬だけ場の流れが止まる。
 女性は一息つくと、
「いかにも。我が名はアウレイリア。今は亡き、サーレイス王の遺志を継ぐ娘です」
 高らかと、誇らしげですらあるかのように彼らの誰何に答えた。
 それが、宣戦布告だった。

769イラストで騙す予定の名無しさん:2005/06/18(土) 19:11:16
>>768 冒頭としてはちょっと……人物描写の連続で入りづらいと思う。
>美しいというよりは愛らしい小造りな顔立ち と、
>艶やかな花と言うよりは、繊細な装飾を施された宝剣のような印象を受ける佳人
という描写がイコールしないような気がするんですが。
「いうよりは」が2文連続してるし。こういう表現の重複が多いです。
そのせいか、なんかゴタゴタした印象。

>>767の文の方がテンポアップして感じられる。
でもバトルものなのにバトル描写より人物描写の方が多いって……。
>間合いの駆け引きですら名残惜しいところだが
って台詞で言ってないで、黙って間合いの駆け引きをするところを
描写した方が、緊張感が伝わると思うんだけど。
敵同士の殺気と、男女間に漂う艶っぽさをかけたところはいいと思う。
でも暗殺者はうんぬんの下りは、言いたいことが伝わらないし、
いまいち読者を納得させる力を持ってないと思う。

文体を変えたということだけど、まだこの文体に慣れてないのかな?

770イラストで騙す予定の名無しさん:2005/06/18(土) 20:53:43
CivというゲームのWikiにアップした物です。そのゲームを下敷きにして書いたものなのですが・・・
どうか批評をお願いします。

まずガレー船5個船隊が九州南部に召集された。そして本土中の部隊−弓兵7部隊、戦士1部隊、槍兵2部隊が続々と到着し、我先にと乗り込んでいく。その近くの小高い丘の上に、厳重に警備された指揮所があった。中にいたのは、将軍・徳川と、軍事担当・神原の姿があった。
「どうですか、閣下!見事な眺めでしょう。規模は以前の大陸進出と同じ程度ですが、あの時はほとんどが槍兵部隊でしたからな。しかも今度は、わが国が大陸諸国に負けぬ力を持っていることを証明できる戦いです。兵の意気込みも違います」
興奮しながら語る神原を横目に、徳川は冷静だった。この軍事担当は必ず勝てると言い、それを信じてみようとあの時思ったが−正しかったのだろうか?中国の戦力を見下しているのではないか?やはり、他の策も講じておく必要があるな。
「どうかしたのですか、閣下?」
顔を急に覗き込まれ、今考えたことを感ずかれていなければいいなと思いつつ、平静を装った。
「いや、なんでもない。ところでこの春嵐計画は、対中国戦争計画と聞いたが、北京強襲しか考えていなかったのか?」
神原は眉を少し吊り上げた。気分を害したらしい。
「そんなことはありません。現在進行している、海上から北京を強襲・制圧する“鈴蘭作戦”の他に、大陸自国都市よりインド領を通過し、中国各都市を占領する“秋桜作戦”がありました。しかし、大陸侵攻はわが軍の機動力が不足していることと、本土が南から攻撃される恐れがあるため、この“鈴蘭”を採用しました」
「なるほど、ありがとう。頼もしい限りだな。ところで本当に君も、この侵攻船団に乗っていくというのは本当か?」
ある程度機嫌が直ったのか、苦笑しながら答えた。
「はい。ただ、ずっと船の上に乗っているだけです。わが軍が勝利するところを間近で見ようと、私は船から降りる、と言ったら部下から猛反発を受けました」
「それはそうだろう。もし万が一のことがあれば大事だからな」
「大丈夫です。閣下。わが軍は必ず勝利します。吉報をお待ちください」

それから2日後、強襲船団は出航した。

船団が出航してすぐ、徳川は執政室に内務、通商、外交、文化の各担当官を呼び出した。
「もし万が一の事も考えなければならない。負けた場合の事をだ。国内は混乱に陥るだろう。今本土の都市の大半が無防御状態だ。反乱でも起こされたらどうすることも出来ない」
徳川は椅子から立ち上がり、両手を後ろで組んで足早に歩き出した。
「混乱を最小限に抑えるには、君たちに尽力してもらわなければならない。やってくれるだろうか?」
物静かな紳士である東郷外交担当が、顔を真っ赤にして言った。
「一体、何を、どうやってですか!負けた場合の事などと。閣下はあの時、神原殿の言うことしか聞かなかったではないですか。それを今更−」
「すまなかったと思っている。あの時軍事担当を止めればよかったのだ。許してくれ」
東郷は目を丸くした。将軍の口から謝罪の言葉を聴くのはどれだけ振りだろうか。室内が静まりかえる中、小野文化担当が口を開いた。
「閣下、一国の主ともなると決して謝罪をしてはなりません。民の目の前では特にそうです。さあ、それでわれわれは何をすればいいのですか?」
徳川は再び椅子に座りなおした。
「・・・負けた場合、わが国は永遠に中国の属国になりかねない。そこで、中国に圧力をかけ、最悪の事態を回避したい。加藤内務担当、ガレー船と開拓団をひとつずつ用意してくれ。大至急だ。辻通商担当、大陸都市の影響圏内にある贅沢品を戦争中、奪われることの無い様。東郷外交担当、中国といつでも交渉できるよう、経路を確保していてくれ。小野文化担当、中国の政治宣伝に国民が惑わされるないように、愛国心を高い状態で維持してくれ。難しいとは思うが、頼む。日本が日本であり続けるために!」

開戦前夜午後7時。侵攻船団は台湾沖に停泊していた。中国に発見された様子はない。すべて手筈どうりいけば、明日深夜0時に宣戦布告し、午前3時に北京市郊外に上陸する事になっていた。

771イラストで騙す予定の名無しさん:2005/06/19(日) 14:33:37
>>770
あの、これはライトノベルとして投稿する予定の作品ですか?
それとも趣味で書いてるだけ?
作品のどの部分?

あと、ここ覗いてる人、いまあまりいないみたいだから、たくさんの批評欲しいなら、
新人賞スレにでも「批評求む」って言ってここに誘導した方がいいと思いますよ。
>>768の人も。

772767:2005/06/19(日) 21:23:28
>>769
的確な批評、感謝します。

>冒頭としてはちょっと……人物描写の連続で入りづらいと思う。
 最初に見せ場を持ってくると同時にヒロインの凛々しさを印象づける……というつもりだったのですが、たしかに人物描写の比重が多すぎだったかもしれません。

>描写がイコールしないような気がするんですが。
 愛らしく、かつ凛々しいというイメージだったのですが、改めて読み返すとたしかに読み手にはそれが分かりずらい表現になっていたかもしれませんね。

>表現の重複が多いです
 これは僕も自覚しています…orz。直してもいくつか残ってしまうのですよね…精進します……。

>バトル描写より人物描写の方が多いって
 この点については説明不足でした。これはバトルの冒頭シーンで、この後、電撃三枚分ほどバトルが続くのです。

>暗殺者はうんぬんの下りは、言いたいことが伝わらないし、
 いまいち読者を納得させる力を持ってないと思う。
 これは読んでもらった友人にも指摘されたことです。自分、設定魔のくせにそれを物語に活かす技術がまだ未熟なのですよね……。

>まだこの文体に慣れてないのかな?
 うーん、冒頭はともかく、767の場面あたりから慣れてきた…という感覚はあったのですが……。バトル物を書いたのも投稿を意識して書いたのもこれが初めてなので、やはりぎこちなさがあるのでしょうね。

>>770
 僕は批評はまったく素人なので、一つだけにしておきます。参考程度に考えておいて下さい。

 ちょうど作品の世界状況や戦略等を説明するための場面を書いているから、というのもあるかもしれませんが、少し登場人物の個性の描写がおざなりであるように感じました。
 戦記物だから、というのもあるかもしれませんがどんな作品であっても、登場人物の魅力は重要な要素かと思います。
 群雄劇の中で登場人物を個性を巧みに書いた作品には、ラノベでは『銀河英雄伝説』、一般小説だと『ローマ人の物語』や司馬遼太郎の日本史ものあたりがあるので、参考にしてみてはどうでしょう。
 同じ内容のことを言わせるのでも、ちょっと演出に凝ってみたり台詞廻しを工夫させてみるのも手かもしれません。同じ陣営や同志でもキャラごとに微妙に異なる信念や気質をもたせて、常にそれに基づいて描写することを心がけておくのもいいかと思います。

>>771
 そうすることにしましょう…。
 助言感謝です。

773769:2005/06/20(月) 15:50:56
>>767
>これはバトルの冒頭シーンで、この後、電撃三枚分ほどバトルが続くのです。

なるほど。いや、私も「長い」という言い方をしたのがいけなかったですね。
つまりアクションの描写が、人物描写の書き込み方と比べて、浅すぎるということです。
これ以降も同じような書き方をしているとしたらですが。
たとえばマンガのバトルシーンなら、コマごとに、打ち合わされる剣、互いの表情、
踏み切る足などを描いて効果線を入れれば、それなりに雰囲気は出せる。
でも小説では、アクションを体感させるような描き方が必要になる。
さらされている部分に限って言えば、この描写ではマンガどまりということです。
恋愛ものやコメディとかならともかく、バトルものなら、これでは不十分じゃないかな。

いや、バトルは本当に書くのたいへんだから、初投稿作というならがんばっていると思う。
読者が登場人物の動きを体感できるように書く、しかもテンポよく読ませる、
できればさらに「あっといわせる」。ぜんぶクリアするのは本当にたいへんだから。
プロのアクションシーンを読み込んで、参考にしてみたらどうでしょう?

774767:2005/06/20(月) 16:54:33
なるほど……そういうことでしたか。

<登場人物の動きを体感できるように書く、しかもテンポよく読ませる、
 できればさらに「あっといわせる」。
 さしあたって、僕に一番必要なのは最初の項目のようなので、そのあたりを中心に意識してみます。

775イラストで騙す予定の名無しさん:2005/06/21(火) 14:41:03
初書きしてみたのですがどうでしょうか?

 彼の気分は2,3日雨が降り続いていることもあってかいつにもまして憂鬱な気分だった。
何を見るわけでもなく窓からグラウンドに落ちていく大粒の雨を横目に軽いため息をひとつ演じてみた。そのため息は窓ガラスを曇らせ、雲のように窓に滞在している。
それを見ながらまた一つ、今度はさっきより大きいため息を出してみた。ため息は窓ガラスを更に曇らせ、その音は先生にまで届いてしまっていた。彼の身長はクラスで2番目という中々の長身のため、嫌でも目に付いてしまう。
「これで3度目ですよ。ため息をしている暇があったらノートを取ったらどうですか?神谷君。それとも校庭で走ってきますか?」
先生の3度目の台詞は怒りを通り越して呆れ口調になってしまっていた。
肘を机につけていた手を思わず滑らせ、頭を思わずぶつけそうになってしまいながら反射的に立ち上がった。
「す、すみません、先生。」
その3度目の台詞は頭をぶつけまいとしていた状態で言ったためなんともおかしい音程になってしまっていた。
1,2度はクラスメイトも笑っていたが、3度目になるともう飽きてしまい。ただこちらを見て彼のあわてた顔をしているだけだった。
「顔を洗ってすっきりしてきなさい。」
その呆れ顔も先生が滅多に言わない言葉もに神谷とってはもはやお決まりの台詞であった。
神谷はいつものように頭を縦に振るといつもとように立ち上がり、いつものようにトイレへ向かった。
神谷の中学校は私立のために回りは比較的綺麗で、特にトイレは今年作り直されたばかりでとても学校とは思えないでデパートの1室のようなトイレだった。手洗い場もまるで大理石かのようにピカピカに磨いてある。
神谷は蛇口勢いよくをひねり、その蛇口からとめどなく出る水を見ながら頭の中でただ一言、言葉を発してみた。
「俺は何をやっているんだろう・・・・。」
いくら外の景色を眺めても何も起こらないし、何百回ため息をついても何も変わらないのは彼もわかっていた。だがため息とは自分の気持ちに嘘偽りなく出るものである。ため息を消すためには、彼の体の中の憂鬱を消すしかなかった。
神谷は心の中で自分を軽く罵倒しながら勢いよく出る水を手ですくい、それを一気に顔へ押し付けた。水は自分が思っていた以上に勢いがよかったために手から飛び跳ね、ピカピカの台を水で汚してしまった。
その行為は何回も続けられたが、表面上の眠気は洗い流せても憂鬱を洗い流すことはできるわけがなかった。
洗い流せていない自分の憂鬱を感じながらふと自分の顔を鏡で見てみた。そこにはいつもと変わらない自分が写っていた。こんなに自分のことをまじまじと見つめるのは久しぶりかもしれないな。鏡の自分はさっきの水のせいでその髪の毛の先から顎までびしょびしょで眠気もすっかり覚めたはっきりとした黒い眼で自分を見つめ返している。だが、その目の下にはクマが出てきている。それになんだか元気がなさそうだ。○○はそんな自分を見て、またため息をついた。
その瞬間親友の言葉が頭の中を一気に駆け抜けていった。
「神谷は本当に一生ここにいるつもりなの?」
その言葉は、ふざけているわけでもなく、からかっていたような素振はまったくない。そして真剣な眼差しで神谷に向けられていた。あれが本気だとしたら俺は行きたいのだろうか?それともここに残り続けていつも通りの変わらない生活を送り続けるのがいいのだろうか?
その考えは永久に続くかとも思われた。だが、彼の考えは決まっていた。そしてこの憂鬱を消すためにはこの無限に続く構想に自ら終わりを告げるしかないことも気が付いていた。
もう引き返せはしない。本能的にそう感じていた。



冒頭だけうpしてみました。なんかキャラの気持ちがごたごたになってわかりづらい気がします。

診断お願いします。

776イラストで騙す予定の名無しさん:2005/06/21(火) 23:53:45
>>775
読点使いましょう。例えば最初の文なら、
「彼の気分は2,3日雨が降り続いていることもあってか、いつにもまして憂鬱な気分だった」
これだけで多少わかりやすくなったかと思います。
さらに言うなら、私であればこの文、
「2,3日雨が降り続いていることもあってか、彼の気分は憂鬱だった」
という具合に、倒置を使って主語と述語を近い位置に置きます。
また見ていただければわかるでしょうが、重複表現もカットしてあります。
とにかく、読者にわかり易い文章を心がけるのが吉かと。

777イラストで騙す予定の名無しさん:2005/06/22(水) 01:31:20
>>775
はじめてだから当然ですが、基本的な文章力がまだ……。
>神谷の中学校は私立のために回りは比較的綺麗で、
 特にトイレは今年作り直されたばかりでとても学校とは思えないで
 デパートの1室のようなトイレだった。
とくにこの文、長すぎるせいかミスが目立ちます。
「トイレは…(略)…トイレだった」(主語繰り返し)
「回り」(造り?)
「綺麗で」「ばかりで」(「で」重複)
「学校とは思えないで」(入力ミス?)
「デパートの一室」(「デパートのトイレ」では? 一室という表現はどうかと?)

書き換え例。
「神谷の中学校は私立だけに、比較的綺麗な造りだった。
 特に、今年作り直されたばかりのトイレは、手洗い場もまるで大理石のようにピカピカに磨かれ、
 学校というよりデパートのトイレを思わせる。」
……難易度高いです。書き換えにも苦労しました。
それ以前に、「トイレの描写なんていいよ。とっとと先に進めよ」
っていうのが読者の本音かもしれない……。

776も言ってるけど、
まず簡潔でわかりやすい文章を書くことを心がけ、それをクリアしたのちに、
徐々にニュアンスをつけ加える書き方をめざしていった方がいいと思う。

778775:2005/06/22(水) 18:43:11
診断ありがとうございます!
今一から読み直してみました。やっぱり読みづらいですね・・・・。
濁点や重複、さらには書き間違いまで・・・・(´・ω・`)
なるべく簡潔に、それでいてわかりやすくするように頑張ってみます。
ついでに辞典とかで勉強もしておきますね・・・・

後板違いなんですがやっぱりそのキャラ主点に動く時は、そのキャラのする行動等は
意味を持たせたほうがいいでしょうか?

779イラストで騙す予定の名無しさん:2005/06/22(水) 19:04:15

動機?ストーリーに対する意味?
後者は確実に必要かと思われ。

780イラストで騙す予定の名無しさん:2005/06/24(金) 02:20:57
冒頭シーンなのですが
多少なりとも「続きを読みたい」と思わせられる文章を作るのに四苦八苦してまして、ご教授頂けたら幸いです。

――

高級マンション。
築五年の二十二階建て。駅から徒歩五分。敷金礼金ゼロ。部屋割りはY3LDK(約二十三坪・賃料五十万円)からADF(約九坪・賃料十五万円)まで。
システムキッチン、ユニットバス、オートロック、ルームサービス、CS・BSアンテナ、セキュリティまで完備。利便性を重視した好立地。溢れ出す高級感を質素に抑えた無駄のない構造。住む人々に上質な暮らしを約束する最高の物件である。
その上なんと凄い事に――


――住民が全員ヤクザ。


「はぁ・・・・・・これ終わってから学校・・・・・・間に合うか?」
 げんなりと、大して高級でもない腕時計に視線をやる。
自分の事ながら、時計を身につける習慣は今時の高校生にしては珍しいと思う。
時刻は午前五時。
時計の文字盤を覆うガラスに反射する俺の顔は、誰がどう見ても疲れているようにしか見えないだろう。普段はさらさらストレートを保っているセミロングの黒髪が、へたれたワカメみたいになってる。友人に鷹のようだと言われる眼も、今は死んだ魚に例えた方が的確だ。眠気の無い時なら引き締まっているはずの口元も半開きだし、その上涎まで垂れている。
口元を拭い、時計の日付表示を見た。
日付は七月の一日。
既に至福の日曜日は終わりを告げて、学校の始まる憂鬱な月曜日に差し掛かっている。
だというのに、なぜ俺は自宅から遠く離れた高級マンションの非常階段前に居るのだろう。
(これから菊池組の組長の所に乗り込んで、手打ちを申し入れるためっすよ?)
 鼓膜を介さず、脳に直接響き渡る声。いや、声と言うには語弊があるかもしれない。これは俺と《意識同調》している上条 遊佐と言う名の若衆・・・・・・つまり俺の部下にあたる人物から送られてきた意思である。
送られてきたという表現も、適切では無いか?
俺と遊佐は今、俺の肉体を二人で共有している。
つまり、「お前が俺で、俺も俺で」状態なのだ。
(なんか、わかりにくい表現っすね・・・・・・)
 俺もそう思う。一つの肉体に二つの高次元霊的意識構造体、通称《霊識》を入れている状態と言った方が、良かったか。
(若ぁ、前から疑問だったんすけど・・・・・・高次元なんとかって何すか?)
「まあ・・・・・・便宜上の造語だから、深い意味は無い。《霊識》が幽霊やら魂みたいなもんだと分かっていれば充分だ。それより若って呼ぶなっ。俺は組の跡を継ぐつもりなんて無いんだから」
(でも若が若じゃなくなるってことは、若の部下やってるボク達は、仕事がなくなって破門されちゃって路頭に迷ってダンボールハウス作りの名人になって空き缶拾いに就職して、月に一度の安いお酒を楽しむ世知辛い生活を送るはめに・・・・・・いえ、今のは聞かなかった事にしてください。若は若のやりたい事をやってくれれば、ボクたちにとってはそれが一番なんです・・・・・・ううっ・・・・・・ぐすん・・・・・・ひっく・・・・・・うぇぇ)
「ああああ、やめっ! 《意識同調》してる時に落ち込むな! 感情も共有してんだから、こっちまでなんかヘコんでくるだろ・・・・・・」
 全身に纏わりつく切なくて寂しい感情に胸を痛ませながら、なんとか遊佐をなだめようと試行錯誤する。「遊佐、元気出せ」(・・・・・・若ぁ)「わかった、俺が悪かった、若でいいから」(やたっ! 若、これからもよろしくっす!)「・・・・・・」
今更ながら、今回の行動のパートナーに遊佐を選んだのは大きな失敗だったのかもしれないと後悔してます。ああ、帰ろうかな・・・・・・
(し、失敗とか言わないで下さいよ! ボク、仕事はちゃんと頑張りますから!)
「とりあえず、期待してるぞ・・・・・・?」

781イラストで騙す予定の名無しさん:2005/06/25(土) 03:31:19
>>778
質問の意味がよくわからない。
それよりまず「自分ならどうするか」考えて書いてる?
たとえば、冬のさなかでも、相当意図的にやらないと窓ガラスが曇るほどのため息って出ないとか、
自分がそんな巨大なため息をついておきながら、しかも三度めであるにもかかわらず、
教師に注意されてびっくりするかとか、
そんな生徒がいて、自分が教師とかクラスメイトだとしたらどうリアクションするかとか。
ごめん。どうも不自然。




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